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JP6439607B2 - 非石綿系摩擦材 - Google Patents
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Description

本発明は、例えば、車両用ブレーキ装置に用いられる非石綿系摩擦材に関するものである。
従来、オートマチック(AT)車の運転中、サービスブレーキでの停止中に、ブレーキペダルを少し緩めてブレーキを完全に解放する過程において、クリープ現象によって進行方向にトルクが発生して、ブレーキパッドとロータ間の相対速度の変化に伴って発生する振動が足回り、車体に伝わり、放射することで発生する不快な異音、所謂、クリープグローン(あるいはクリープ異音)が知られている。このクリープグローンは、マニュアル(MT)車においても、下り坂にてサービスブレーキでの停車中にブレーキを緩めた際にも発生する。
このクリープグローンの発生中、パッドとロータとの間にはスティックスリップ現象が起きている。このスティックスリップの発生エネルギーを小さくすることが、クリープグローンを抑制する主要な対策である。経験的に、パッドの静摩擦係数と動摩擦係数の差を小さくすることなどが一つの対策例である。また雨上がりや夜間放置後、絶対湿度の高い雰囲気下で発生しやすいなど、水分の影響も考えられているが、根本的なメカニズムは詳細には分かっていないのが現状である。
クリープグローンを解消するための技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この技術では、パッドに吸水材と撥水材(ゼオライト、酸化アンチモン及びフッ素系ポリマー)をバランスよく配合することで摩擦界面に存在する水分の量を調整し、これによってクリープグローンの抑制を図っている。
また、特許文献2には、成形前の原料をシラン系の撥水性物質で表面処理した摩擦材が開示されている。特許文献3には、撥水性を有するフッ素系ポリマーを有する摩擦材が開示されている。これら文献の技術は、撥水性を有する材料によって吸湿、吸水を抑制して、摩擦係数の上昇を抑制することで、ノイズの低減を図るものである。
特開2001−181607号公報 特開2000−53945号公報 特開2000−191800号公報
しかしながら、これらの技術は、高温でのブレーキの効きの確保が困難となったり、撥水材が高価であったりなど、改善の余地を残すものであった。
本発明の課題は、制動時に発生するクリープグローンと呼ばれる不快音を、高温でのブレーキの効きを確保しつつ安価な構成にて減少させることのできる非石綿系摩擦材を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、配合材として基材繊維、結合材、潤滑材、無機の摩擦調整材、pH調整材、及び充填材を含んでなる非石綿系摩擦材であって、前記充填材及び前記無機の摩擦調整材の少なくとも一方が、脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方によってのみコーティングされることを要旨とする。
請求項1の発明によれば、摩擦材(例えばブレーキパッド)と被摩擦材(例えばディスクロータ)との摩擦によって発生する摩耗粉の凝集が脂肪酸や金属石鹸によって抑制され、その結果、クリープグローンの発生が抑制される。また、本構成では、高温でのブレーキの効きを確保しつつ安価に上記の効果を得ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記配合材のうち前記充填材及び前記無機の摩擦調整材以外のものは、前記コーティングがなされていない部分が残存することを要旨とする。
請求項2の発明によれば、例えば、摩擦材自体の強度や成形性を高く維持しながら上記請求項1の発明による効果を奏することが容易となる。
また、請求項3に記載されるように、前記コーティングに用いられる脂肪酸及び金属石鹸の融点は30℃以上であることが望ましい。
請求項4に記載の発明は、配合材として基材繊維、結合材、潤滑材、無機の摩擦調整材
、pH調整材、及び充填材を含んでなる非石綿系摩擦材の製造方法であって、前記充填材
及び前記無機の摩擦調整材の少なくとも一方は、あらかじめ脂肪酸及び金属石鹸の少なく
とも一方によってのみコーティングされた後に他の配合材と混合されることを要旨とする。
請求項4の発明によれば、前記配合材のうち前記充填材及び前記無機の摩擦調整材以外のものについて、前記コーティングがなされていない部分を容易に残存させることができる。
本実施形態に係る非石綿系摩擦材のスティックスリップ現象を説明する図である(クリープグローン大の場合)。 同じくスティックスリップ現象を説明する図である(クリープグローン小の場合)。 同じく実施例及び比較例の摩擦材原料の組成とその性能評価を要約した図である。
以下、本発明の実施形態により具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施形態によって限定されるものではない。
1.摩擦材
以下、本発明に係る摩擦材の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態の非石綿系摩擦材は、基材繊維、結合材、潤滑材、無機の摩擦調整材、pH調整材、及び充填材を含んでなる。
ここで、基材繊維としては、有機繊維や金属繊維、天然または人造の無機繊維を挙げることができる。具体的には、有機繊維は芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)やアクリル繊維、金属繊維はスチール繊維、ステンレス繊維、銅や亜鉛、スズなどの単独金属やそれぞれの合金金属による金属繊維が例示される。これらを単独または2種類以上を併用してもよい。
結合材としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂などを挙げることができ、それぞれエラストマー、炭化水素樹脂、エポキシなど変性した樹脂も使用できる。
潤滑剤としては、例えば、黒鉛、金属硫化物(三硫化アンチモン、二硫化モリブデン、硫化錫など)、コークス、カーボンブラックなどを挙げることができる。
また、有機の摩擦調整材としては、例えば、カシューダスト、ゴム粉を挙げることができ、pH調整材としては例えば水酸化カルシウムを挙げることができる。
無機の摩擦調整材としては、例えば、セラミック粉、金属粉、金属酸化物粉(酸化鉄など)、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウムなどを挙げることができ、充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを挙げることができる。
こうした材料を配合した摩擦材においては、上述したように、制動時においてクリープグローンが発生し得ることが知られており、これが車両の運転者に不快感を与えるなどの問題が生じている。そうしたなか、本発明者らは、鋭意研究の結果、クリープグローンの発生原因として挙げることのできる摩擦材(例えばブレーキパッド)と被摩擦材(例えばディスクロータ)との間のスティックスリップ現象の発生メカニズムを突き止めた。
より詳細には、このスティックスリップ現象に、摩擦材と被摩擦材との摩擦にて発生する摩耗粉の凝集生成物(プラトー)の挙動が影響していることを突き止めた。すなわち、摩耗粉は摩擦材と被摩擦材との摩擦面にて凝集・破壊を繰り返し、排除されていくが、その際、これらによりブレーキトルクの変動が生じる。特に、プラトーが破壊されて例えば非摩擦材であるロータとの剥離が生じるときにブレーキトルクの抜けが発生し、これがスティックスリップ現象を引き起こしている。プラトーの成長が小さい状態で破壊と排除が繰り返されていればトルク変動は小さく、スティックスリップも小さいが、プラトーが大きく成長すると、それが破壊されるときブレーキトルク抜けも大きくなるため、スティックスリップも大きいことになる。
これを図1及び図2を用いて説明すると、図1のように、プラトーが大きく成長した場合、プラトーの全面がロータに固着した「1.スティック」の状態からプラトーの全面がロータから剥離する「3.スリップ開始」の状態に移る途中の「2.スリップ準備」の状態において、プラトーの面積が大きいため、剥離開始とともに発生する剥離波は大きなものとなり、その分だけスティックスリップが大きくなりクリープグローンが大きくなる。
一方、図2のように、プラトーが比較的小さい場合、「2.スリップ準備」の状態において発生する剥離波は比較的小さくなるため、その分だけスティックスリップが小さくなりクリープグローンが小さくなる。
つまり、摩耗粉を凝集させ難くすることが、スティックスリップの発生エネルギーを小さくすることとなり、その結果、クリープグローンを抑制できることになる。摩耗粉は粉体であるため水分が介在すると凝集しやすく、雨上がりや夜間放置後、絶対湿度の高い雰囲気下であると凝集体が大きく成長し、クリープグローンが発生しやすくなる。
本発明者らは、これに着目するとともに研究を重ね、摩擦材配合材のうち、充填材及び無機の摩擦調整材の少なくとも一方に脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方をコーティングすることで、摩耗粉凝集を抑制可能であることを見出した。脂肪酸及び金属石鹸は、その特性として滑性を持っており、これが粉体の耐ブロッキングに効果を発揮する。
本発明において用いる脂肪酸としては、飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもよい。但し、コーティングした原材料の保存性や製造時のハンドリング性を考慮して融点が30℃以上の脂肪酸が好ましい。
飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘン酸などを例示できる。また、不飽和脂肪酸としては、エライジン酸、ネルボン酸、エルカ酸、ソルビン酸などを例示できる。
一方、金属石鹸は、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸などの脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などの金属とを用いて生成したものを挙げることができ、具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム 、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛を挙げることができる。
コーティングの方法は、一般的な方法を用いればよい。脂肪酸あるいは金属石鹸の融点以上に加温した攪拌機にてコーティング対象の各原料を個々に撹拌しても良いし、コーティング対象の原料を一括で撹拌してもよい。
なお、摩擦材配合材のうち充填材及び無機の摩擦調整材以外のものは、上記コーティングがなされていない部分が残存することが望ましい。例えば、基材繊維に非コーティング部分を残存させることで、摩擦材自体の強度を高く維持することが容易となる。また、結合材に非コーティング部分を残存させることで、成形性を良好に維持することが容易となる。潤滑材については、その潤滑機能を良好に保つことが容易となり、pH調整剤については、錆固着防止性能を好適に保つことが容易になる。
こうした充填材及び無機の摩擦調整材以外の摩擦材配合材につき上記コーティングがなされていない部分を残存させる製造方法としては、あらかじめ充填材及び無機の摩擦調整材の原料をコーティングし、その後、このコーティングされた充填材及び無機の摩擦調整材の原料と、上記コーティングのなされていない他の摩擦材配合材の原料とを混合する、といった方法が望ましい。
上記コーティングは、比較的細かい粒子に対してなされていることが望ましい。細かい粒子は凝集し易いため、これを防止することがクリープグローン抑制効果をより好適なものとすることに繋がる。
本発明の摩擦材は、上述のように例えば車両等のディスクブレーキ用パッドに適用できるが、これに限定されるものではない。例えば、ドラムブレーキ用のブレーキシュー等、従来公知の摩擦材に適用することができる。
2.摩擦材の製造方法
以下、本発明の摩擦材の製造方法についての実施形態を説明する。本実施形態の摩擦材の製造方法は、上述した配合材の原料をレディゲミキサーで10分混合し、この混合物を成形温度160℃、成形圧力200kgf/cm、成形時間10分の条件において加圧加熱成形し、成形物を200℃、4時間の条件において硬化させる。なお、上述のように、充填材及び無機の摩擦調整材の少なくとも一方については、あらかじめ脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方でコーティングしておき、その後、他の配合材原料と混合する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例では、図3に示す配合量に従って摩擦材原料を配合し、実施例1〜6及び比較例1の摩擦材組成物を得た。なお、表中の各摩擦材原料の配合量の単位は、摩擦材組成物全体に対する重量%である。また、無機の摩擦調整材欄及び充填材欄において各原料名の右側に記載されている「処理無」は上記コーティングがなされていないことを示すものであり、この「処理無」の下方に記載されている脂肪酸や金属石鹸の名称は上記コーティングに用いられるものである(各実施例欄に数値(重量%)の記載されたものがコーティングに使用されたもの)。この摩擦材組成物を上記のように混合・加圧加熱し、硬化させた。
作製した実施例1〜6及び比較例1の摩擦材について下記の項目について評価を行った。
(平均摩擦係数(効力))
JASO C406に従って23℃、湿度65%環境下で、第2効力試験の制動前速度50km/hにおける平均摩擦係数を測定した。
(温度別摩耗量)
JASO C427に準拠して各温度における摩耗試験を行い、摩擦材の摩耗量(mm)を測定し、制動回数1000回あたりの摩耗量に換算後、0.20mm未満を◎、0.20mm以上0.25mm未満を○、0.25mm以上0.30mm未満を△、0.30mm以上を×の4段階で評価した。
(クリープグローン試験)
実車を使用し、JASO C406相当の摺り合わせを実施し、一晩屋外放置後、クリープグローンの音圧レベルの比較試験を行った。なお、クリープグローンの評価は、パッド面圧1.0MPaにて車両停止中の状態でブレーキペダルを徐々に緩め、車両が動き出した際のブレーキペダルの踏み下げ力を維持し、その際に発生するクリープグローンを騒音計で測定することにより行った。この手順を10回繰り返した。評価基準は以下のとおりである。すなわち、◎:異音発生全くなし、○:異音発生はあるがかすかな音圧、△:異音発生はあるが許容レベルの音圧、×:異音発生があり音圧が不快なレベル、である。
上記放置試験終了後に引き続き、ホースで水を30秒間キャリパー背中部に流した直後、1,3及び5分後の計4回クリープグローン評価を実施した。
結果を図3に示す。本発明の実施例1〜6では、いずれについても、平均摩擦係数(効力)、温度別摩耗量、及びクリープグローンにおいて良好な結果が得られた。これにより、無機の摩擦調整材及び充填材の少なくとも一方を脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方にてコーティングすることで平均摩擦係数(効力)、温度別摩耗量、及びクリープグローン抑制に優れた摩擦材が得られることが判明した。そして、これに対して、上記コーティングを施さない比較例1では、クリープグローン試験結果が劣ることから、本発明の実施例で確認されたクリープグローン抑制性能が上記コーティングによってもたらされたものであることが明らかとなった。
本発明の摩擦材及び摩擦材の製造方法は、車両等のディスクブレーキ用パッドやブレー
キシュー等、従来公知の摩擦材が要求されるものに適用することができる。

Claims (4)

  1. 配合材として基材繊維、結合材、潤滑材、無機の摩擦調整材、pH調整材、及び充填材を含んでなる非石綿系摩擦材であって、前記充填材及び前記無機の摩擦調整材の少なくとも一方が、脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方によってのみコーティングされることを特徴とする非石綿系摩擦材。
  2. 前記配合材のうち前記充填材及び前記無機の摩擦調整材以外のものは、前記コーティングがなされていない部分が残存することを特徴とする請求項1に記載の非石綿系摩擦材。
  3. 前記コーティングに用いられる脂肪酸及び金属石鹸の融点は30℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非石綿系摩擦材。
  4. 配合材として基材繊維、結合材、潤滑材、無機の摩擦調整材、pH調整材、及び充填材を含んでなる非石綿系摩擦材の製造方法であって、前記充填材及び前記無機の摩擦調整材の少なくとも一方は、あらかじめ脂肪酸及び金属石鹸の少なくとも一方によってのみコーティングされた後に他の配合材と混合されることを特徴とする非石綿系摩擦材の製造方法。
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