以下に、本発明の各実施形態の断熱導波装置を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の断熱導波装置100の構成例を示す断面図である。
本実施形態の断熱導波装置100は、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく、低損失かつ断熱的に伝送するための断熱導波装置であって、高温部側に配置された第1の共振器101と、低温部側に配置された第2の共振器102と、スペーサ103とを備えている。
共振器101と共振器102とは、空隙104を介して互いに対向するように配置される。さらに、共振器101と共振器102とが、空隙104を介して電磁界結合されることによって、共振器101と共振器102との間に、導波路が形成されるようにしている。
図2は、これら2つの共振器101,102の構成例を示す斜視図である。
共振器101は、下面にグランドプレーン200aを有する誘電体基板202aと、そのグランドプレーンの一部を切り欠くことで形成された共振器パターン201aにて構成されたスロット共振器である。
共振器パターン201aは、一例として、幅W1=0.7mm、折り曲げ間隔R1=1mmであるヘアピン形状である。また、共振器101の共振周波数は約9GHzである。誘電体基板202aの上面にはマイクロストリップ型の入力線路203aが形成されており、共振器パターン201aの共振モードを励起する。
共振器102は、マイクロストリップ型共振器であり、下面にグランドプレーンを有する誘電体基板202bの上面に共振器パターン201bが形成されている。ただし、図2においてグランドプレーンは共振器102を見易くするために記載を省略している。
共振器パターン201bには出力線路203bが接続されており、共振器パターン201bに励起された共振モードをピックアップする。共振器パターン201bは、一例として、幅W2=0.5mm、折り曲げ間隔R2=0.6mmのメアンダ形状である。
共振器パターン201aが形成された誘電体基板202aと、共振器パターン201bが形成された誘電体基板202bとは、空隙104を介して略平行に配置されており、前述したように空隙104を介して電磁界結合している。
空隙104の間隔(長さ)は、例えば約1mmである。ただし空隙104は、図2においては、共振器101,102の形状を見易く表示するために誇張して図示している。
入力線路203a、出力線路203b、共振器パターン201b、およびグランドプレーンはすべて金薄膜を用いて形成されており、誘電体基板202a、202bは、例えば厚さ0.5mmのアルミナ基板である。
共振器パターン201aは、入力線路203aに入力されたマイクロ波信号を、共振器102側に向けて伝送するための発信部として機能する。
また、共振器パターン201bは、発信部である共振器パターン201aから発信されたマイクロ波信号を受信し、出力線路203bから出力させるための受信部として機能する。
このような構成によって、入力線路203aに入力されたマイクロ波信号が、共振器101から、前述した導波路を介して、共振器102へ伝送され、共振器102の出力線路203bから出力されるようにしている。
再び図1に示すように、共振器102は、冷凍機(図示せず)のコールドヘッド105の先端に接触して配置されたスペーサ103に接触して配置されている。スペーサ103は、共振器101と共振器102との間の距離を所定値に保つための部材であり、薄板構造をしている。共振器101と共振器102との間の距離を所定値に保つために、異なる厚みを有する複数のスペーサ103を準備しておき、共振器101と共振器102との間の距離が所望の値になるような厚みを有するスペーサ103を、共振器102とコールドヘッド105との間に配置することにより、スペーサ103は、発信部である共振器パターン201aと、受信部である共振器パターン201bとの間の位相差を調整する位相差調整手段として機能するようになる。
スペーサ103は、例えば銅、アルミニウム、銀のように、高い熱伝導特性を有する物質からなる。少なくとも、コールドヘッド105と同程度、もしくは、コールドヘッド105よりも高い熱伝導特性を有する物質で形成することが好ましい。これによって、共振器102は、コールドヘッド105との間にスペーサ103が配置されていても、コールドヘッド105によって効率的に冷却されるようになる。
さらに、このように冷却された共振器102を低温状態に維持するために、共振器102、スペーサ103、コールドヘッド105は、真空容器110内に収納されている。
一方、共振器101は、真空容器110の一部を構成するように、図1に示すように上部側が常温に曝されて配置されている。
このように、本実施形態では、共振器101が高温部側(常温)に配置され、共振器102が低温部側(冷凍機側)に配置されている。
このような配置構成において、例えば、冷凍機によって、共振器102が約70Kの低温まで冷却されている場合、約300Kである常温とは約230Kの温度差がある。すなわち、共振器101は、共振器102に対して約230K高温である。
次に、以上のような構成を有する本実施形態の断熱導波装置100の作用について説明する。
図3は、本実施形態の断熱導波装置100によって得られるマイクロ波特性の一例を示す図である。
図3において横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は通過および反射量(dB)を示す。また、曲線S31が通過量を、曲線S32が反射量を示している。曲線S31から、本実施形態の断熱導波装置100は、およそ8.7GHzから9.3GHzに通過帯域を持つ導波路として機能することが分かる。
本実施形態の断熱導波装置100は、高温(常温)部側に配置された共振器101と、低温部側(コールドヘッド105側)に配置された共振器102とが電磁的に結合することで、特定の周波数範囲を通過帯域として有する導波路を有するようになる。通過帯域の幅は、空隙104の大きさを変えることによって調整される。
例えば、空隙104を小さくして共振器101と共振器102との間の結合強度を強めれば、通過帯域が広がる。なおその際に、入力線路203aおよび出力線路203bと、それぞれの共振器101および共振器102との結合強度(外部Q値)を所定の値に調整することで、通過帯域内の周波数特性を平坦にするようにすれば、さらに望ましい。
また、本実施形態の断熱導波装置100では、通過帯域における挿入損失が0.2dB以下となる。一方、同一の通過帯域を有する従来技術による誘電体装荷型ギャップ導波管の場合、通過帯域における挿入損失が0.4dBである。したがって、本実施形態の断熱導波装置100によれば、従来技術に比べて、通過帯域における挿入損失が半分以下にまで低減され、低損失化が達成される。
さらに、本実施形態の断熱導波装置100によれば、図2に示すように、共振器パターン201bを含む領域Aの面積は約11mm2となる。一方、従来技術による誘電体装荷型ギャップ導波管の場合、対応する領域の面積(導波管の断面積)は約20mm2である。このように、本実施形態の断熱導波装置100によれば、従来技術に比べて、共振器パターン201bを含む領域Aの面積が約半分まで低減され、小型化が達成される。
さらにまた、本実施形態の断熱導波装置100によれば、マイクロ波信号の伝送による熱輻射によって、共振器101から共振器102へと流入する熱流入は、約2mWとなる。一方、従来技術による誘電体装荷型ギャップ導波管の場合、熱流入は、約67mWである。このように、本実施形態の断熱導波装置100によれば、従来技術に比べて、格段に優れた断熱性が達成される。
それに加えて、本実施形態の断熱導波装置100によれば、以下に説明するように、スペーサ103が、共振器パターン201aと共振器パターン201bとの間の位相差を調整する位相差調整手段として機能することにより、出力位相ずれも回避される。
例えば、図1の構成においてスペーサ103がない場合、共振器102はコールドヘッド105の先端に直接的に固定され配置されることになる。しかしながら、現実的には、真空容器110とコールドヘッド105との位置関係には、有限の設計からのずれが存在するために、例えば±0.1mm程度の位置ずれが生じる。
このような位置ずれが生じた場合には、共振器101と共振器102との間の空隙104の大きさにもずれが生じ、これに起因して、出力線路203bから出力されるマイクロ波信号の出力位相が、設計値からずれてしまう。
図4は、このような位相ずれの一例を示す図であって、本実施形態の断熱導波装置100の通過帯域内における、出力位相の設計値からの位相ずれの大きさを、位相差(deg)で示している。なお、横軸は周波数(GHz)である。
図4において曲線F41は、空隙104の値が設計値から0.1mmずれた場合の位相差を示している。一方、曲線F42は、空隙104の寸法を設計値に合わせるように補正するために、図1の構成の通り、共振器102とコールドヘッド105の間に、厚さ0.1mmの銅製のスペーサ103を挿入した場合の位相差を示している。
空隙104の寸法が設計値から0.1mmずれたことによって、曲線F41のように、周波数に依存して位相差が生じるのに対し、スペーサ103を挿入することによって空隙104の寸法を設計値に一致させることによって、曲線F42のように、位相差がなくなることが示されている。
つまり、断熱導波装置100の製作後に、出力線路203bから出力されるマイクロ波信号の出力位相の、設計値からの差を測定し、その位相差に応じた厚みのスペーサ103を共振器102とコールドヘッド105の間に挿入することによって、出力位相を設計値通りに調整することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の断熱導波装置100によれば、従来技術による導波管を用いないので、従来技術よりも小型の構成とすることが可能となる。さらに、スペーサ103によって、空隙104の値を調整することによって、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく伝送することが可能となる。しかも、本実施形態の断熱導波装置100は、従来技術による導波管に比べて、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、低損失かつ断熱的に伝送することが可能となる。
このような効果を奏する本実施形態の断熱導波装置100は、例えば常温部に配置されたアンテナからのマイクロ波信号を、超伝導フィルタや低雑音増幅器などの極低温で動作するデバイスへ伝送のために適用することが好適である。
また、本実施形態の断熱導波装置100は、前述したように、優れた断熱性を有しており、熱流入も極めて低く抑えられるので、仮に冷凍機の熱負荷を下げた場合であっても、これらデバイスを、従来技術よりも低温度で動作させる環境を実現することが可能となる。これによって、冷凍機のダウングレードをも可能にするという副次的な効果も得られる。
さらにまた、本実施形態の断熱導波装置100は、フェーズドアレイアンテナのように、各々の位相関係が重要となる複数のアンテナ素子からのマイクロ波信号の伝送のために適用することも好適である。
なお、本実施形態では、図1に示すように、対向配置された1対の共振器101、102を備えた断熱導波装置100を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態は、図1に示すような構成に限られるものではなく、他の構成の断熱導波装置にも同様に適用される。その一例として、図5に示すように、空洞共振器を備えた断熱導波装置300がある。
図5に示される断熱導波装置300を、図1に示される断熱導波装置100との相違点について説明する。
すなわち、断熱導波装置300は、共振器101、102に代えて、空洞共振器301、302を備えている。空洞共振器301は、共振器101と同様に、真空容器110の上面に設定され、空洞共振器302は、共振器102と同様に、スペーサ103を介してコールドヘッド105に固定されている。
空洞共振器301と、空洞共振器302とは、互いの結合口(それぞれ結合口310、結合口312)を対向して配置されており、これによって空洞共振器301と、空洞共振器302とは電磁界結合している。
そして空洞共振器301へのマイクロ波信号の入力は、空洞共振器301の内部に挿入され、先端にループ形状を設けた同軸励振線314によってなされる。また、空洞共振器302からのマイクロ波信号の出力は、空洞共振器302の内部に挿入され、先端にループ形状を設けた同軸励振線316によってなされる。すなわち、同軸励振線314が発信部として機能し、同軸励振線316が受信部として機能する。
このような構成をなす断熱導波装置300であっても、スペーサ103によって、空洞共振器301と空洞共振器302との間の距離が所望の値に調節することによって、発信部である同軸励振線314と、受信部である同軸励振線316との間の位相差を調整することができる。
したがって、図5に示すような断熱導波装置300であっても、図1に示すような断熱導波装置100と同様に、小型化を達成しつつ、マイクロ波信号を高温部側から低温部側へと、低損失かつ断熱的に、かつ出力位相ずれを引き起こすことなく伝送することが可能となる。
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態の断熱導波装置200の構成例を示す断面図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、位相差調整手段としてスペーサ103の代わりに、ネジ505を用いた点が異なる。したがって、図1と同一部位については同一付番を付して、その説明を省略し、以下では、第1の実施形態と異なる点にのみについて説明する。
すなわち、本実施形態では、位相差調整手段としてスペーサ103の代わりに、ネジ505を用いているので、スペーサ103はない。したがって、図6に示すように、共振器102が、コールドヘッド105の先端部105(#a)に直接的に固定されて配置されるようにしている。
また、コールドヘッド105は、先端部105(#a)と中間部105(#b)と本体部105(#c)とからなる略コの字型のバネ形状をしている。ネジ505は、コの字の先端側(すなわち、図中右側)において、本体部105(#c)を図中下側から貫通して、先端部105(#a)に固定されている。
そして、このネジ505は、順回転されると、コールドヘッド105の先端部105(#a)を図中上側に押し上げ、先端部105(#a)の図中右側を、本体部105(#c)からより離す。一方、その状態から、ネジ505が逆回転されると、先端部105(#a)を押し上げる力が弱まるので、先端部105(#a)の図中右側が下降する。さらにネジ505が逆回転され、先端部105(#a)の図中右側が初期位置に戻ると、ネジ505は以上逆回転されないようになっている。
本実施形態は、このようなネジ505の回転方向および回転量を調整することによって、共振器101と共振器102との間の距離、すなわち、空隙104の大きさを調整する。
なお、コールドヘッド105は、コの字の先端側(すなわち、図中右側)において、先端部105(#a)と本体部105(#c)とが接触していないが、先端部105(#a)と本体部105(#c)とは図中左側において中間部105(#b)によって接続されている。よって、先端部105(#a)は、本体部105(#c)および中間部105(#b)を介して、冷凍機(図示せず)によって冷却されるようになっている。
前述したように、共振器101と共振器102との間の空隙104の大きさが設計値からずれてしまうと、これに起因して、出力線路203bから出力されるマイクロ波信号の出力位相もまた、設計値からのずれが生ずる。
しかしながら、本実施形態では、第1の実施形態の変形例として、出力位相を設計値通りに調整するために、ネジ505の回転方向および回転量を調整することによって、空隙104の値を、設計値に一致させることができる。
なお、このようなネジ505を用いた空隙104の値の調整は、先端部105(#a)の図中右側を上げることによってなされる。したがって、共振器102の共振器101に対する平行性が悪化する。しかしながら、共振器101と共振器102との平行性に対するマイクロ波信号の伝送特性の感度は低く、共振器102の共振器101に対する平行性の悪化は、マイクロ波信号の伝送特性に悪影響を及ぼすことはない。
したがって、本実施形態の断熱導波装置200であっても、第1の実施形態と同様に、従来技術よりも小型の構成で、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく、低損失かつ断熱的に伝送することが可能となる。
しかも、本実施形態のようにネジ505を用いて空隙104の値を調整する場合、ネジ505を回転させることによって、連続的な調整が可能となる。一方、第1の実施形態では、同じような調整を行う場合、スペーサ103の厚みを変えることによって行わねばならないので、連続的な調整は困難であり、どうしても離散的な調整となってしまう。
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態よりも、空隙104の値を、容易に、かつきめ細やかに調整することが可能となる。
なお、図6では、1本のネジ505しか示していないが、ネジ505の本数は複数であっても良い。
また、図7に示す変形例のように、コールドヘッド105を、中間部105(#b)を設けずに、本体部105(#c)と先端部105(#a)に分離する一方、コールドヘッド105と同じ材質からなる2本のネジ505(#1)505(#2)を用いて本体部105(#c)と先端部105(#a)との距離を変化させることができるような構成としても良い。
このような構成によれば、ネジ505(#1)とネジ505(#2)とを同じ方向に同じ量だけ回転させることにより、先端部105(#a)を平行移動させることができるので、空隙104の値を、共振器101と共振器102との平行性を維持しながら調整することが可能となる。しかも、本体部105(#c)と先端部105(#a)とは分離されているものの、本体部105(#c)と先端部105(#a)とは、本体部105(#c)と先端部105(#a)と同じ材質、すなわち、高い熱伝導特性を有する材質からなるネジ505(#1、#2)によって接続されているので、先端部105(#a)もまた、本体部105(#c)およびネジ505(#1),505(#2)を介して、冷凍機(図示せず)によって冷却されるようになるので、冷却特性が低下することはない。
さらに、図8は、別の変形例であり、図7と同様に、コールドヘッド105を、中間部105(#b)を設けずに、本体部105(#c)と先端部105(#a)とを分離しているが、本体部105(#c)と先端部105(#a)とを一対の蛇腹506(#1),506(#2)によって両端部をともに接続するとともに、中央側に、前述したようなネジ505を設けている。
一対の蛇腹506(#1),506(#2)は、ネジ505の回転方法および回転量に応じて先端部105(#a)が移動することに伴って伸び縮みする構成となっており、好適には、コールドヘッド105と同様に高い熱伝導特性を有する物質から構成されることが好ましい。また、ネジ505も、コールドヘッド105と同様に高い熱伝導特性を有する物質から構成されることがこのましい。
このような構成によっても、ネジ505の回転方向および回転量に関わらず、先端部105(#a)を平行移動させることができるので、空隙104の値を、共振器101と共振器102との平行性を維持しながら調整することが可能となる。また、蛇腹506(#1),506(#2)およびネジ505を、コールドヘッド105と同様に高い熱伝導特性を有する物質で構成することによって、先端部105(#a)は、本体部105(#c)およびネジ505ならびに蛇腹506(#1、#2)を介して、冷凍機(図示せず)によって冷却されるので、冷却特性が低下することもない。
なお、上記では、図6を用いて、図1に示す断熱導波装置100からの相違の観点から説明した。しかしながら、本実施形態のように、ネジ505を用いて位相差を調整する概念は、図5のように空洞共振器301,302を備えた構成の断熱導波装置300に対しても同様に適用することができる。
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態の断熱導波装置に適用される共振器101,102の構成例を示す断面図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、図9に示すように、位相差調整手段としてスペーサ103の代わりに、共振器101と共振器102との間に、共振器パターン201a、201bの間を遮断しないように配置された誘電体ブロック605a,605bを備えた点が異なる。したがって、図2と同一部位については同一付番を付して、その説明を省略し、以下では、第1の実施形態と異なる点にのみについて説明する。
誘電体ブロック605a,605bは損失を軽減するために誘電正接が小さいほど好ましい。このため材質としては、例えばアルミナ、サファイア、酸化マグネシウム等のように誘電損失が少ない(例えば、0.01%以下)物質とする。あるいは、誘電体基板202a、202bよりも誘電損失が少ない物質とする。
さらに、誘電体ブロック605a,605bは、共振器101、102の共振周波数に影響をおよぼさないように、共振器パターン201a、201bと空間的に重ならない、すなわち共振器パターン201a、201bの間を遮断しない場所に配置されるようにする。
また、誘電体ブロック605a,605bの厚みは、空隙104の間隔よりも小さくする。例えば、空隙104の間隔が1mmであれば、誘電体ブロック605a,605bの厚みを例えば0.8mmとする。図9の例では、誘電体ブロック605a,605bは、誘電体基板202b上に固定されている。これによって、図10に示すように、誘電体ブロック605a,605bの先端と、誘電体基板202aとの間に0.2mmの隙間Hが確保される。この隙間Hによって、誘電体基板202aと誘電体基板202bとの間の直接的な熱移動を阻止するようにしている。なお、図9および図10では、誘電体ブロック605a,605bは、誘電体基板202bの上に固定されている例を示しているが、誘電体ブロック605a,605bは、誘電体基板202aの下に固定されるようにしても良い。
また、図9および図10では、箱状の誘電体ブロック605a,605bを示しているが、これは一例であって、誘電体ブロック605a,605bの形状は箱状に限定されることはなく、少なくとも、誘電体基板202aと誘電体基板202bとの両方に接触していなければ、その形状およびサイズは任意でよい。すなわち、誘電体ブロック605a,605bは、空隙104内にさえ配置されていれば、後述するような位相調整効果を奏することができる。
次に、以上のような構成を有する本実施形態の断熱導波装置の作用について説明する。
図11は、誘電体ブロック605a,605bの有無による断熱導波装置の出力位相特性の一例を示す図であって、横軸は周波数(GHz)であり、縦軸は誘電体ブロック605a,605bがない場合を0(deg)とした場合の位相差を示す。
曲線F51は、誘電体ブロック605a,605bがない場合における位相差を示し、曲線F52は、前述したように誘電体ブロック605a,605bを設けた場合における位相差を示す。
図11は、誘電体ブロック605a,605bを設けたことにより、−4(deg)の位相差が生じることを示している。さらに、この位相差は、前述した図4に示すような周波数に対する依存性はなく、周波数に対してほぼ一定となっている。
以上のことから、本実施形態では、誘電体ブロック605a,605bを設けることによって、通過帯域内において、ほぼ一様に(平坦に)位相調整することが可能であることが分かる。さらには、誘電体ブロック605a,605bの体積や形状等を調整することによって、位相差を、所望の値に調整することも可能であることが分かる。
このように、本実施形態の断熱導波装置のように、スペーサ103の代わりに誘電体ブロック605a,605bを位相差調整手段として適用した場合であっても、第1の実施形態と同様に、従来技術よりも小型の構成で、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく、低損失かつ断熱的に伝送することが可能となる。
[第4の実施形態]
図12は、第4の実施形態の断熱導波装置に適用される共振器101,102の構成例を示す断面図である。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、図12に示すように、位相差調整手段としてスペーサ103の代わりに、入力線路203aの前段、または出力線路203bの後段のうちの少なくとも一方に移相器805a、805bを備えた点が異なる。そして、これら移相器805a、805bを用いて、位相差を調整する。
その他の構成については、第1の実施形態と同じであるので、重複説明を避ける。
このような構成をなす本実施形態の断熱導波装置によれば、第1の実施形態と同様に、従来技術よりも小型の構成で、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく、低損失かつ断熱的に伝送することが可能となるが、特に、出力位相の調整を、基本構造に大きな変化を加えることなく達成することが可能となる。
なお、上記では、図12を用いて、図1に示す断熱導波装置100からの相違の観点から説明した。しかしながら、本実施形態のように、移相器805a、805bを用いて位相差を調整する概念は、図5のように空洞共振器301,302を備えた構成の断熱導波装置300に対しても同様に適用することができる。
[その他の変形例]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、位相差調整手段として、第1の実施形態ではスペーサ103を、第2の実施形態ではネジ505を、第3の実施形態では誘電体ブロック605a,605bを、第4の実施形態では移相器805a、805bを用いる例について説明した。しかしながら、これらさまざまな位相差調整手段は、必ずしも単独で用いられる場合に限定されず、任意に組み合わせて用いることも可能である。
例えば、前述したように、スペーサ103は、空隙104の値を調整する場合、連続的な調整はできず、離散的に調整することしかできない。一方、ネジ505を用いた場合、ネジの回転方向および回転量を調整することによって、空隙104の値を連続的に調整することができる。
したがって、位相差調整手段として、スペーサ103とネジ505との両方を用いるような構成の断熱導波装置としても良い。そして、このような構成の断熱導波装置によって空隙104の値を調整する場合、先ず、スペーサ103によって粗調整を行い、次にネジ505によって精細調整を行うようにすれば、スペーサ103のみ、あるいは、ネジ505のみを用いる場合よりも、より容易に距離を調整することができるようになる。
同様に、位相差調整手段として、スペーサ103と誘電体ブロック605a,605bとの両方を用いるような構成の断熱導波装置とし、先ず、スペーサ103によって粗調整を行い、次に誘電体ブロック605a,605bによって精細調整を行うようにしても、同じ効果を奏することができるようになる。
また、これまでの説明では、何れの実施形態においても、共振器101が常温雰囲気に配置され、共振器102が冷却されることによって、高温部側である共振器101から、低温部側である共振器102へのマイクロ波信号の導波について説明した。
しかしながら、高温部側と、低温部側とは、必ずしもこのような構成によって実現されるものに限られず、逆に、共振器102を常温環境に配置し、共振器101を加熱することによっても実現される。
このような構成においても同様に、前述した実施形態を適用することが可能であり、位相差調整手段として、スペーサ103や、ネジ505や、誘電体ブロック605a,605bや、移相器805a、805bを単独で、あるいは任意に組み合わせて実現することが可能であることは、当業者であれば容易に想到することができるであろう。
そして、第1の実施形態と同様に、従来技術よりも小型の構成で、マイクロ波信号を、高温部側から低温部側へと、出力位相ずれを引き起こすことなく、低損失かつ断熱的に伝送することが可能となる。