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JP6447778B2 - 発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置 - Google Patents
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発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置に関する。
従来、エンジンとモータジェネレータとの間に第1クラッチを備えると共に、モータジェネレータと駆動輪との間に変速機を備えた車両が知られている。変速機は、複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を内蔵している。変速段毎に、複数の摩擦締結要素のうち、3つの摩擦締結要素が締結される。その3つの摩擦締結要素のうち、一つが滑り要素(回転差吸収要素)である第2クラッチとなる。この車両において、EVモードからの変速を伴うエンジン始動時に、第1クラッチを解放状態から締結させるに際して、第2クラッチを完全締結状態から滑り締結させ、回転差吸収要素として用いる。即ち、第2クラッチの滑り締結は、滑り状態を維持することである。(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−131071号公報
しかしながら、従来の車両にあっては、発進時に、第2クラッチを発進クラッチとして滑り締結させる。また、傾斜路での発進時においては、重力によって変速機ケース内の変速機オイルが偏ってしまう。このため、傾斜路での発進時、傾斜路に沿って上方位置となる摩擦締結要素が発進クラッチとして選定されると、その発進クラッチは変速機オイルに完全に浸かっていないことがある。そして、傾斜路での発進時に、その発進クラッチを滑り締結させると、変速機オイルによる発進クラッチの冷却が不十分となり、発進クラッチが発熱して耐久性が低下するおそれがある、という問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、傾斜路での車両発進時に、発進クラッチを滑り締結させても、変速機オイルによって発進クラッチを十分冷却でき、発進クラッチが発熱して耐久性が低下することを抑制する発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、駆動源と駆動輪との間に変速機を備えている。その変速機は、複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を有している。車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を、滑り締結する発進クラッチとする。
この発進クラッチ制御方法において、まず、車両発進時、傾斜路発進か否かを判断する。次いで、傾斜路発進と判断した場合、車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素のうち、変速機オイルに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定する。そして、選定された摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する。
よって、車両発進時、傾斜路発進か否かを判断し、傾斜路発進と判断した場合、車両発進時に締結される前記複数の摩擦締結要素のうち、変速機オイルに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、選定された摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する。
即ち、傾斜路の傾きによって、変速機ケースの下方へ変速機オイルが移動する。このため、変速機オイルに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定するので、変速機オイルによる発進クラッチの冷却性能が確保される。
この結果、傾斜路での車両発進時に、変速機オイルによって発進クラッチを十分冷却でき、発進クラッチが発熱して耐久性が低下することを抑制できる。
実施例1における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1の統合コントローラのモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。 実施例1での変速用の複数の摩擦締結要素を内蔵した自動変速機の一例を示すスケルトン図である。 実施例1における自動変速機での変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示す締結作動表である。 実施例1におけるATコントローラに設定されている自動変速機のシフトマップの一例を示す図である。 実施例1の統合コントローラにて実行される発進クラッチ制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1における平坦路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用を説明する作用説明図である。 実施例1における降坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用を説明する作用説明図である。 実施例1における平坦路での後退発進時に選択されるWSCモードからHEVモードへモード遷移が行われる流れを示すタイムチャートである。 実施例1における登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用を説明する作用説明図である。 実施例1における車両発進時に選択されるWSCモードからEVモードへモード遷移が行われる流れを示すタイムチャートであって、後退用発進クラッチの保護作用を説明する作用説明図である。 実施例2の統合コントローラにて実行される発進クラッチ制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2における登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用を説明する作用説明図である。 実施例3の統合コントローラにて実行される発進クラッチ制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3における登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用を説明する作用説明図である。
以下、本発明の発進クラッチ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置は、1モータ・2クラッチ形式によるFRハイブリッド車両に適用したものである。以下、実施例1のFRハイブリッド車両の発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置の構成を、「全体システム構成」、「自動変速機の概略構成」、「発進クラッチ制御処理構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1における発進クラッチ制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両を示し、図2は、統合コントローラ10のモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す。以下、図1及び図2に基づいて、全体システム構成を説明する。
FRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEng(駆動源)と、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMG(モータ、駆動源)と、第2クラッチCL2(摩擦締結要素)と、自動変速機AT(変速機)と、変速機入力軸INと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、M-O/Pはメカオイルポンプ、S-O/Pは電動オイルポンプ、FLは左前輪、FRは右前輪、FWはフライホイールである。
前記第1クラッチCL1は、エンジンEngと/ジェネレータMGとの間に設けられた締結要素であり、CL1油圧を加えないときにダイアフラムスプリング等による付勢力にて締結状態であり、この付勢力に対抗するCL1油圧を加えることで解放するタイプ、いわゆるノーマルクローズのクラッチである。
前記自動変速機ATは、前進7速/後退1速の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機である。また、自動変速機ATは、図1に示すように、車両前後方向に配置される縦置きとされている。モータ/ジェネレータMGから左右後輪RL,RRまでの動力伝達経路に介装される第2クラッチCL2としては、自動変速機ATから独立した専用のクラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATを変速させるための摩擦締結要素(クラッチやブレーキ)を用いている。すなわち、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、締結条件等に適合する要素として選択した摩擦締結要素を第2クラッチCL2としている。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる主なモードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、モータ使用スリップ走行モード(以下、「MWSCモード」という。)と、を有する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、駆動源をモータ/ジェネレータMGのみとするモードであり、モータ駆動モード(モータ力行)・ジェネレータ発電モード(ジェネレータ回生)を有する。この「EVモード」は、例えば、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、駆動源をエンジンEngとモータ/ジェネレータMGとするモードであり、モータアシストモード(モータ力行)・エンジン発電モード(ジェネレータ回生)・減速回生発電モード(ジェネレータ回生)を有する。この「HEVモード」は、例えば、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
前記「WSCモード」は、駆動形態は「HEVモード」であるが、第2クラッチを滑り締結状態に維持しつつ、第2クラッチのトルク伝達容量をコントロールするモードである。この「WSCモード」を選択する必要がある理由は、トルクコンバータのような回転差吸収要素を有さないハイブリッド駆動系において、回転差吸収機能を第2クラッチのスリップ差回転により確保するためである。「WSCモード」での第2クラッチのトルク伝達容量は、第2クラッチを経過して伝達される駆動力が、ドライバーのアクセル操作量にあらわれる要求駆動力となるようにコントロールされる。この「WSCモード」は、「HEVモード」を選択した状態で、停車からの発進時のように、駆動源回転数(第2クラッチ入力回転数N2in)が変速機出力回転数(第2クラッチ出力回転数N2out)を上回り第2クラッチCL2にスリップ差回転ΔNが発生する領域において選択される。なお、「WSC」とは、「Wet Start Clutch」の略である。
前記「MWSCモード」は、エンジンEngを作動させたまま第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2を滑り締結させ、駆動源をモータ/ジェネレータMGのみとするモードである。
FRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。
前記各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。なお、12はエンジン回転数センサ、13はレゾルバ、15は油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ、19は車輪速センサ、20はブレーキ踏力センサである。
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16、車速センサ17、選択されているレンジ位置(Nレンジ,Dレンジ,Rレンジ,Pレンジ等)を検出するインヒビタスイッチ18、等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、シフトマップ(図5参照)上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。この変速制御に加えて、統合コントローラ10からの指令に基づき、第1クラッチCL1の完全締結(HEVモード)/スリップ締結(エンジン始動)/解放(EVモード)の制御を行う。また、第2クラッチCL2の完全締結(HEVモード)/μスリップ締結(EVモード)/回転差吸収スリップ締結(WSCモード、滑り締結)/変動トルク遮断スリップ締結(エンジン始動モード・エンジン停止モード)の制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や前後Gセンサ22や自動変速機ATのATF油温を検出する油温センサ23や他のセンサ・スイッチ類24からの必要情報及びCAN通信線11を介して情報を入力する。この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により検索したモードを目標モードとして選択するモード選択部を有する。そして、「EVモード」から「HEVモード」へのモード切り換え時においては、第2クラッチCL2のスリップインを確認し、エンジン始動制御を行う。また、「HEVモード」から「EVモード」へのモード切り換え時にエンジン停止制御を行う。
[自動変速機の概略構成]
図3は、実施例1における自動変速機ATの一例をスケルトン図により示し、図4は、自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示し、図5は、ATコントローラ7に設定されている自動変速機ATのシフトマップの一例を示す。以下、図3〜図5に基づいて、自動変速機ATの概略構成を説明する。
前記自動変速機ATは、前進7速後退1速の有段式自動変速機であり、図3に示すように、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGのうち、少なくとも一方からの駆動力が変速機入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦締結要素を有する変速ギア機構によって、回転速度が変速されて変速機出力軸Outputから出力される。また、変速機ケースAT1内には、変速機オイルATFが溜められている(図7〜図8と図10参照)。
前記変速ギア機構としては、同軸上に、第1遊星ギアG1及び第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1と、第3遊星ギアG3及び第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2と、が順に配置されている。また、油圧作動の摩擦締結要素(複数の摩擦締結要素)として、第1クラッチC1(I/C)と、第2クラッチC2(D/C)と、第3クラッチC3(H&LR/C)と、第1ブレーキB1(Fr/B)と、第2ブレーキB2(Low/B)と、第3ブレーキB3(2346/B)と、第4ブレーキB4(R/B)と、が配置されている。また、機械作動の係合要素として、第1ワンウェイクラッチF1(1stOWC)と、第2ワンウェイクラッチF2(1&2OWC)と、が配置されている。
前記第1遊星ギアG1、第2遊星ギアG2、第3遊星ギアG3、第4遊星ギアG4は、サンギア(S1〜S4)と、リングギア(R1〜R4)と、両ギア(S1〜S4),(R1〜R4)に噛み合うピニオン(P1〜P4)を支持するキャリア(PC1〜PC4)と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
前記変速機入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの少なくとも一方からの回転駆動力を入力する。前記変速機出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪(左右後輪RL,RR)に伝達する。
第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
変速機ケースAT1(Case)内において、ギアトレーン(シングルピニオン型遊星ギア)と第1クラッチC1は車両前後方向の中央位置に配置されている。そのギアトレーンを挟んで、車両前側位置には、第1ブレーキB1と第3ブレーキB3が配置され、車両後側位置には、第2クラッチC2と第3クラッチC3と第2ブレーキB2と第4ブレーキB4が配置されている。また、複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4うちいくつかの摩擦締結要素は、変速機ケースAT1内の変速機オイルATF(自動変速機ATの作動油、図7〜図8と図10参照)に浸漬されている。
図4は締結作動表であり、図4において、○印はドライブ状態で当該摩擦締結要素が油圧締結であることを示し、(○)印はコースト状態で当該摩擦締結要素が油圧締結(ドライブ状態ではワンウェイクラッチ作動)であることを示し、無印は当該摩擦締結要素が解放状態であることを示す。また、ハッチングにて示される締結状態の摩擦締結要素は、各変速段にて「第2クラッチCL2」として用いる要素を示す。ここで、この第2クラッチCL2は、発進時や走行中に滑り要素として用いられる。第2クラッチCL2が発進時に滑り要素として用いられる場合、第2クラッチCL2を発進クラッチという。
隣接する変速段への変速については、上記各摩擦締結要素のうち、締結していた1つの摩擦締結要素を解放し、解放していた1つの摩擦締結要素を締結するという架け替え変速により、図4に示すように、前進7速(以下、「前進変速段」ともいう。)で後退1速(以下、「後退変速段」ともいう。)の変速段を実現することができる。さらに、ギア段が1速段及び2速段のときには、第2ブレーキB2が第2クラッチCL2とされる。3速段のときには、第2クラッチC2が第2クラッチCL2とされる。4速段及び5速段のときには、第3クラッチC3が第2クラッチCL2とされる。6速段及び7速段のときには、第1クラッチC1が第2クラッチCL2とされる。後退段のときには、第4ブレーキB4が第2クラッチCL2と選定される。また、発進クラッチは、通常時すなわち平坦路での発進時、各変速段で締結される複数の摩擦締結要素のうち、最もトルク容量の大きいものが選定される。これは発熱によるクラッチの耐久性低下を抑制するためである。ここで、「平坦路」とは、勾配路でない路面であり、勾配路については後述する。
図5はシフトマップであり、車速VSPとアクセル開度APOで特定されるマップ上での運転点が、アップ変速線を横切ると、アップ変速指令が出力される。例えば、変速段が1速段のとき、車速VSPの上昇により運転点(VSP,APO)が1-2アップ変速線を横切ると、1-2アップ変速指令が出力される。なお、図5はアップ変速線のみを記載しているが、勿論、アップ変速線に対してヒステリシスを持たせてダウン変速線も設定されている。
[発進クラッチ制御処理構成]
図6は、実施例1の統合コントローラ10にて実行される発進クラッチ制御処理の流れを示す。この処理は、車両発進時に「START」する。
ステップS1では、WSCモードか否かを判断する。YES(WSCモード)の場合はステップS2へ進み、NO(EVモード)の場合はステップS11へ進む。
ここで、「WSCモード」か否かは、統合コントローラ10により判断される。即ち、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGが駆動され、第1クラッチCL1が締結され、第2クラッチCL2が滑り締結されていれば、「WSCモード」と判断される。
また、車両発進時に「WSCモード」が選択されるシーンについて説明する(図9等参照)。車両停車時に、ブレーキONの状態にて、ドライバーによってアクセルが踏み込まれていると、エンジンEngが始動されると共に「HEVモード」が選択される。この「HEVモード」を選択した状態で、停車からの車両発進時(ブレーキOFF時)、第2クラッチ入力回転数N2in(駆動源回転数)が第2クラッチ出力回転数N2out(変速機出力回転数)を上回り、発進クラッチ(第2クラッチCL2)にスリップ差回転ΔNが発生する。このため、車両発進時、発進クラッチにスリップ差回転が発生する領域において、「WSCモード」が選択される。即ち、車両発進時、発進クラッチが滑り締結される。なお、「WSCモード」の場合には、バッテリ4のバッテリ充電容量(バッテリSOC)が少ないときでも、モータ/ジェネレータMGにおいて発電することができる。このため、バッテリ充電容量が減少することを抑制できる。
ステップS2では、ステップS1での「WSCモード」との判断に続き、インヒビタスイッチ18から統合コントローラ10へ入力されるレンジ位置情報から前進発進か否かを判断する。YES(前進発進)の場合はステップS4へ進み、NO(後退発進/後進発進)の場合はステップS3へ進む。
ステップS3では、ステップS2での「後退発進」との判断に続き、前後Gセンサ22からの統合コントローラ10へ入力される情報に基づき、登坂路(上り勾配)発進か否かを判断する。YES(登坂路発進)の場合はステップS5へ進み、NO(平坦路発進または降坂路(下り勾配)発進)の場合はステップS6へ進む。
ここで、登坂路発進か否かの判断は、前後Gセンサ22等から統合コントローラ10へ入力される情報に基づき、車両前後方向に傾斜角α(勾配)を持つ勾配路100(図10等参照、傾斜路)を推定する。次いで、推定された勾配路100が登坂路(坂道)判断閾値(例えば、10%勾配)以上のときに、登坂路発進と判断する。なお、登坂路判断閾値は、発進クラッチの変速機オイルATF浸漬具合と勾配路の関係等を予め実験等により求め、このような実験等から得た情報に基づいて設定される。その「勾配路100」とは、例えば、車両発進時に、変速機オイルATFのオイル油面ATF1の傾きにより、発進変速段で締結される複数の摩擦要素のうち、1つの摩擦締結要素(B1)しか変速機オイルATFに漬からず、残りは全く漬からなくなる傾き(α1)を持つ勾配路である。即ち、図10において「α>α1」のとき、「登坂路での後退発進」と判断される。
ステップS4〜ステップS6において、複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、発進クラッチとして選定される摩擦締結要素は、以下の方法で選定する(選定条件)。
即ち、勾配路100での車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4(例えば、前進1速段または後退変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4)のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図7〜図8と図10参照)。このように選定され、「WSCモード」が選択された車両発進時、滑り締結される発進クラッチが、第2クラッチCL2である。ここで、図7〜図8と図10において、登坂路や平坦路や降坂路にかかわらず、各摩擦締結要素に付した2つの符号のうち1つの符号が、変速機オイルATFのオイル油面ATF1よりも下側にある場合には、摩擦締結要素が変速機オイルATFに浸漬されているものとする。このように変速機オイルATFに浸漬されている摩擦締結要素が、「勾配路100での車両発進時、発進変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素」となる。
ステップS4では、ステップS2での「前進発進」との判断に続き、前進用の発進クラッチ(前進用発進クラッチ)として、第2ブレーキB2を選定し、ステップS7へ進む。
ここで、図4に示すように、前進1速段(発進変速段)で締結される摩擦締結要素は、実施例1において1つしかなく、複数ない。このため、上記選定条件は適用されず、前進1速段で締結される摩擦締結要素は、第2ブレーキB2が前進用発進クラッチとして自動的に選定される。
ステップS5では、ステップS3での「登坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第1ブレーキB1を選定し、ステップS7へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段(発進変速段)で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。登坂路での後退発進時では、この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する(図10参照)。これに該当するのが、3つの摩擦締結要素のうち第1ブレーキB1となる。このため、登坂路での後退発進時、第1ブレーキB1が後退用発進クラッチとして選定される。なお、図10では、変速機オイルATFが、自動変速機ATのギアトレーンの前側位置に偏るので、自動変速機ATのギアトレーンの前側位置に配置される摩擦締結要素が、変速機オイルATFに浸漬されている。
ステップS6では、ステップS3での「平坦路発進または降坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第4ブレーキB4を選定し、ステップS7へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する(図7と図8参照)。平坦路での後退発進時では、変速機オイルATFに浸漬される摩擦締結要素は、3つの摩擦締結要素のうち第4ブレーキB4となるため、第4ブレーキB4が平坦路での後退用発進クラッチとして選定される。また、降坂路での後退発進時では、変速機オイルATFに浸漬される摩擦締結要素は、平坦路と同様に、3つの摩擦締結要素のうち第4ブレーキB4となるため、第4ブレーキB4が平坦路での後退用発進クラッチとして選定される。このように、平坦路または降坂路での後退発進時、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される。なお、図8では、変速機オイルATFが、自動変速機ATのギアトレーンの後側位置に偏るので、自動変速機ATのギアトレーンの後側位置に配置される摩擦締結要素が、変速機オイルATFに浸漬されている。このときの降坂路における「勾配路100」も、登坂路と同様に、傾き(α1)を持つ勾配路である。また、平坦路での後退発進時においても降坂路での後退発進時においても、同一の摩擦締結要素が発進クラッチとして選定されるので、同一のステップS6とした。
ステップS7では、ステップS4〜ステップS6のいずれかの発進クラッチの選定、或いは、ステップS9での「WSCモード中」との判断に続き、ステップS4〜ステップS6のいずれかにて選定された発進クラッチの温度を推定し、ステップS8へ進む。
ここで、発進クラッチの温度を推定する方法は、油温センサ23から統合コントローラ10へ入力される「発進クラッチが滑り締結される前後の油温情報」や「発進クラッチのスリップ差回転ΔNの情報」や「発進クラッチのトルク伝達容量の情報」等に基づき、発進クラッチの温度を推定する。
ステップS8では、ステップS7での発進クラッチ温度推定に続き、発進クラッチ推定温度が、許容温度閾値(所定温度)未満か否かを判断する。YES(発進クラッチ推定温度<許容温度閾値)の場合はステップS9へ進み、NO(発進クラッチ推定温度≧許容温度閾値)の場合はステップS10へ進む。
ここで、許容温度閾値は、発進クラッチの耐久性等を予め実験等により求め、その実験等から得た情報に基づいて設定される。例えば、実験は、所定の温度条件下に発進クラッチを置いたら何秒で熱劣化するか等である。
ステップS9では、ステップS8での「発進クラッチ推定温度<許容温度閾値」との判断に続き、「WSCモード」が終了したか否かを判断する。YES(WSCモード終了)の場合はエンドへ進み、NO(WSCモード中)の場合はステップS7へ戻る。
ここで、「WSCモード」が終了したか否かの判断は、統合コントローラ10により判断される。なお、「WSCモード終了」の場合とは、「WSCモード」から「HEVモード」へモード遷移が行われた場合である。即ち、発進クラッチが滑り締結状態から完全締結された場合である。
ステップS10では、ステップS8での「発進クラッチ推定温度≧許容温度閾値」との判断に続き、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移が行われ、エンドへ進む。
ここで、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移が行われる場合には、例えば、第1クラッチCL1が完全締結状態から解放され、発進クラッチが滑り締結状態から完全締結される(図11参照)。または、第1クラッチCL1が完全締結状態から徐々に解放されつつ、発進クラッチが滑り締結状態から徐々に完全締結させる。なお、発進クラッチのトルク伝達容量が完全締結容量よりも小さい場合でも、スリップ差回転ΔNがゼロになると、発進クラッチは自動的に滑り締結状態から完全締結される。
また、「発進クラッチ推定温度≧許容温度閾値」の場合、「WSCモード」から「EVモード」へモード遷移が行われるが、これはドライバーの意図しないモード遷移である。このため、「WSCモード」から「EVモード」へモード遷移が行われる場合、メータパネル等に「ハイブリッドシステムオーバーヒート」等と表示され、ドライバーに知らされる。これにより、ドライバーの違和感が低減される。
ステップS11では、ステップS1での「EVモード」との判断に続き、「EVモード」で車両が発進し、その後、走行に合わせて「EVモード」と「HEVモード」等のモード間で通常のモード遷移が行われ、エンドへ進む。
次に作用を説明する。
実施例1における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置における作用を、「発進クラッチ制御処理作用」と、「後退用発進クラッチ制御作用」と、「後退用発進クラッチ保護作用」と、「発進クラッチ制御の特徴作用」に分けて説明する。
[発進クラッチ制御処理作用]
以下、図6のフローチャートに基づき、発進クラッチ制御処理作用を、「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」と、「登坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」、「平坦路または降坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」に分けて説明する。なお、いずれの処理作用においてもステップS1において「WSCモード」と判断されるものとする。また、ステップS1において、「WSCモード」と判断されない場合には、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS11へと進み、ステップS11では、通常のモード遷移が行われ、図6のフローチャートにおいて、ステップS11→エンドへと進む。即ち、「WSCモード」と判断されない場合には、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS11→エンドへと進む。
(前進発進時の発進クラッチ制御処理作用)
まず、図6のフローチャートにおいて、「HEVモード」が選択されている前進発進時には、「WSCモード」と判断され、「前進発進」と判断されると、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS4へと進む。ステップS4では、前進用発進クラッチとして、第2ブレーキB2が選定され、ステップS4からステップS7へと進む。このため、第2ブレーキB2が前進用発進クラッチとして、WSCモードにおいて完全締結状態から滑り締結される。ステップS7では、その発進クラッチの温度が推定され、ステップS7からステップS8へと進む。ステップS8では、発進クラッチ推定温度が、許容温度閾値未満か否かが判断される。「発進クラッチ推定温度<許容温度閾値」の場合には、ステップS8からステップS9へと進む。一方、ステップS8において「発進クラッチ推定温度≧許容温度閾値」と判断されると、ステップS8からステップS10へと進む。
そして、ステップS9では、「WSCモード」が終了したか否かが判断される。「WSCモード」が継続されている間であって、「発進クラッチ推定温度<許容温度閾値」が成立する間は、図6のフローチャートにおいて、ステップS7→ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返される。ただし、この間に、発進クラッチが滑り締結されているので、発進クラッチ推定温度は上昇する。このため、「発進クラッチ推定温度≧許容温度閾値」が成立すると、ステップS8からステップS10へと進む。一方、「WSCモード」が終了すると、ステップS9からエンドへと進む。
また、ステップS10では、発進クラッチ推定温度が許容温度閾値を超えているため、発進クラッチに熱劣化が生じる前に、発進クラッチが滑り締結状態から完全締結されて、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移が行われる。このとき、メータパネル等に「ハイブリッドシステムオーバーヒート」等と表示される。即ち、前進発進時の発進クラッチ選定では、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS4→…→エンドへと進む流れである。
(登坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用)
まず、図6のフローチャートにおいて、「HEVモード」が選択されている後退発進時には、「WSCモード」と判断され、「後退発進」と判断されると、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。ステップS3では、登坂路発進か否かが判断される。ここでは、「登坂路発進」と判断され、ステップS3からステップS5へと進む。ステップS5では、登坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第1ブレーキB1が選定され、ステップS5からステップS7へと進む。このため、第1ブレーキB1が後退用発進クラッチとして、WSCモードにおいて完全締結状態から滑り締結される。即ち、登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ選定では、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS5→…→エンドへと進む流れである。なお、図6のフローチャートにおいて、ステップS7〜ステップS10→エンドへと進む流れは、「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」と同様であるから説明を省略する。
(平坦路または降坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用)
まず、図6のフローチャートにおいて、「HEVモード」が選択されている後退発進時には、「WSCモード」と判断され、「後退発進」と判断されると、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進む。ステップS3では、登坂路発進か否かが判断される。ここでは、「平坦路発進または降坂路発進」と判断され、ステップS3からステップS6へと進む。ステップS6では、平坦路または降坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第4ブレーキB4が選定され、ステップS6からステップS7へと進む。このため、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして、WSCモードにおいて完全締結状態から滑り締結される。即ち、平坦路または降坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御では、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS6→…→エンドへと進む流れである。なお、図6のフローチャートにおいて、ステップS7〜ステップS10→エンドへと進む流れは、「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」と同様であるから説明を省略する。
[後退用発進クラッチ制御作用]
以下、図7〜図10に基づいて、「平坦路または降坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用」と、「登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用」に分けて説明する。なお、図7と図8と図10の発進のとき、発進変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である(図4参照)。
(平坦路または降坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用)
平坦路での後退発進の場合には、図7に示すように、第4ブレーキB4が変速機オイルATFに浸漬されている。また、降坂路での後退発進の場合には、図8に示すように、第4ブレーキB4が変速機オイルATFに浸漬されている。しかし、3つの摩擦締結要素のうち第1ブレーキB1と第3クラッチC3は、図7と図8に示すように、変速機オイルATFに完全に浸かっていない。よって、平坦路または降坂路での後退発進時、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される。このため、その後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。
以下、平坦路での後退発進時に、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定された場合について、図9を用いて説明する。
車両停車時に、ブレーキONの状態にて、ドライバーによってアクセルが踏み込まれ、エンジンEngが始動されると共に「HEVモード」が選択される。そして、この「HEVモード」を選択した状態で、停車からの車両発進時(ブレーキOFF時)である時刻t1において、第2クラッチ入力回転数N2inが第2クラッチ出力回転数N2outを上回り、発進クラッチにスリップ差回転ΔNが発生する。このため、車両後退発進時、発進クラッチにスリップ差回転ΔNが発生する領域において、「WSCモード」が選択される。即ち、車両発進時、発進クラッチが完全締結状態から滑り締結される。なお、「第2クラッチ入力回転数N2in」と「第2クラッチ出力回転数N2out」は、発進クラッチが動力伝達経路の途中に配置されたものと仮定した場合の回転数となっている。また、滑り締結される発進クラッチが摩擦締結要素のうちブレーキである場合には、一方が固定されているため、もう一方の回転数がそのままスリップ差回転ΔNとなる。さらに、「第2クラッチ入力回転数N2in」は、駆動源回転数と、駆動源から発進クラッチの入力までの変速比と、から演算される。また、「第2クラッチ出力回転数N2out」は、車輪速と、車輪から発進クラッチの出力までの変速比と、から演算される。
時刻t1から時刻t2までの間に、発進クラッチを経過して伝達される駆動力が、ドライバーのアクセル操作量にあらわれる要求駆動力(例えば、アクセル開度APOで判断される)となるように、統合コントローラ10により発進クラッチのトルク伝達容量がコントロールされ、発進クラッチが滑り締結されている。このように発進クラッチ(第4ブレーキB4)が滑り締結されても、発進クラッチが変速機オイルATFに浸漬されているので、発進クラッチは変速機オイルATFによって冷却される。
時刻t2のときにおいて、スリップ差回転ΔNがゼロになると、発進クラッチは自動的に滑り締結状態から完全締結され、「WSCモード」から「HEVモード」へモード遷移が行われる。なお、発進クラッチ推定温度が許容温度閾値未満の間に、「WSCモード」から「HEVモード」へモード遷移が行われたので、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移は行われない。
ここで、図9において、降坂路での後退発進時では、降坂路の勾配によって、図9の第2クラッチ出力回転数N2outを表す傾きよりも急な傾きになる。このため、時刻t1から時刻t2までの時間が、平坦路での後退発進時よりも短くなる。即ち、発進クラッチが滑り締結されているが時間が、平坦路での後退発進時よりも短くなる。
(登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用)
登坂路での後退発進の場合には、図10に示すように、第1ブレーキB1が変速機オイルATFに浸漬されている。しかし、3つの摩擦締結要素のうち第3クラッチC3と第4ブレーキB4は、図10に示すように、変速機オイルATFに完全に浸かっていない。よって、登坂路での後退発進時、第1ブレーキB1が後退用発進クラッチとして選定される。このため、その後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。
ここで、図9において、登坂路での後退発進時では、登坂路の勾配によって、図9の第2クラッチ出力回転数N2outを表す傾きよりも緩やかな傾きになる。このため、時刻t1から時刻t2までの時間が、平坦路での後退発進時よりも長くなる。即ち、発進クラッチが滑り締結されているが時間が、平坦路での後退発進時よりも長くなる。
[後退用発進クラッチ保護作用]
以下、図11に基づいて、後退用発進クラッチの保護作用について説明する。
前述したように、登坂路での後退発進時では、発進クラッチが滑り締結されている時間が平坦路での後退発進時よりも長いため、発進クラッチ推定温度が許容温度閾値を超えるおそれがある。このような場合、後退用発進クラッチ(例えば、第1ブレーキB1)の熱劣化を防止する必要がある。
車両停車時から図11の時刻t11の後退発進時(例えば、登坂路での後退発進時とする)までと、図11の時刻t11のときは、図9の車両停車時から時刻t1までと、図9の時刻t1のときと同様であるから説明を省略する。
時刻t11から時刻t12までの間に、発進クラッチを経過して伝達される駆動力が、ドライバーのアクセル操作量にあらわれる要求駆動力(例えば、アクセル開度APOで判断される)となるように、統合コントローラ10により発進クラッチのトルク伝達容量がコントロールされる。これにより、発進クラッチは回転差吸収機能を発揮する。
また、発進クラッチとして選定された第1ブレーキB1の滑り締結により、第2クラッチ出力回転数N2outが上昇し、車両が発進する。次いで、アクセル開度APOに応じて、第2クラッチ入力回転数N2inと第2クラッチ出力回転数N2outが上昇する。次いで、アクセル開度APOが一定に維持されると、第2クラッチ入力回転数N2inと第2クラッチ出力回転数N2outの上昇が緩やかになる。次いで、時刻t11から時刻t12までの後半では、第2クラッチ入力回転数N2inと第2クラッチ出力回転数N2outが、ほぼ一定になる。このため、スリップ差回転ΔNが、ほぼ一定となる。つまり、実施例1では後退変速段が1速の車両であるから、後退時には変速されない。このため、登坂路が続くと、登坂路では車速が上がらず、スリップ差回転ΔNがほぼ一定となる。また、登坂路では、平坦路や降坂路に比べて大きな駆動力が要求されているので、発進クラッチに要求されるトルク伝達容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されると、発進クラッチ推定温度が上昇する。さらに、登坂路が続くと、第1ブレーキB1が変速機オイルATFに浸漬されているとはいえ、滑り締結の時間(時刻t11から時刻t12までの間)が長くなるほど、滑り締結による発熱によって発進クラッチ推定温度が上昇する。
時刻t12のときにおいて、発進クラッチ推定温度が許容温度閾値以上になる。このため、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移が開始される。
時刻t12から時刻t13までの間に、例えば、エンジンEngを作動させたまま、第1クラッチCL1が完全締結状態から解放される。次いで、発進クラッチが滑り締結状態から徐々に完全締結される(MWSCモード)。そして、エンジンEngが停止される。このため、第2クラッチCL2入力回転数CL2inが、第2クラッチCL2出力回転数CL2outまで低下する。また、この間、時間経過と共に発進クラッチのスリップ差回転ΔNが減少するが、発進クラッチ推定温度がわずかに上昇する。なお、この間がモード遷移過渡期となるので、第1クラッチCL1が完全締結状態から徐々に解放されつつ、発進クラッチが滑り締結状態から徐々に完全締結されても良い。
時刻t13のときにおいて、エンジンEngが停止されると共に発進クラッチが滑り締結状態から完全締結され、「WSCモード」から「EVモード」へのモード遷移が完了し、発進クラッチ推定温度が低下する。
時刻t13より後において、「EVモード」が継続される。また、図11の発進クラッチ推定温度において、時刻t13以降の破線と実線が、発進クラッチの滑り締結を続けた場合(破線)と続けなかった場合(実線)との温度差になる。
このように、滑り締結による発熱によって発進クラッチ(第1ブレーキB1)に熱劣化が生じる前に、発進クラッチが滑り締結状態から完全締結される。これにより、発熱による発進クラッチの熱劣化が防止される。
[発進クラッチ制御の特徴作用]
例えば、従来、エンジンとモータジェネレータとの間に第1クラッチを備えると共に、モータジェネレータと駆動輪との間に変速機を備えた車両を比較例とする。この比較例の車両によれば、変速機は、複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を内蔵している。また、変速段毎に、複数の摩擦締結要素のうち、3つの摩擦締結要素が締結される。その3つの摩擦締結要素のうち、一つが滑り要素(回転差吸収要素)である第2クラッチとなる。この車両において、EVモードからの変速を伴うエンジン始動時に、第1クラッチを解放状態から締結させるに際して、第2クラッチを完全締結状態から滑り締結させ、回転差吸収要素として用いる。即ち、第2クラッチの滑り締結は、滑り状態を維持することである。
しかし、比較例の車両にあっては、発進時に、第2クラッチを発進クラッチとして滑り締結させる。また、傾斜路での発進時においては、重力によって変速機ケース内の変速機オイルが偏ってしまう。このため、傾斜路での発進時、傾斜路に沿って上方位置となる摩擦締結要素が発進クラッチとして選定されると、その発進クラッチは変速機オイルに完全に浸かっていないことがある。そして、傾斜路での発進時に、その発進クラッチを滑り締結させると、変速機オイルによる発進クラッチの冷却が不十分となり、発進クラッチが発熱して耐久性が低下するおそれがある、という課題がある。
これに対し、実施例1では、車両発進時、勾配路100発進か否かを判断し、勾配路100発進と判断した場合、車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、選定された摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する(図6〜図8と図10)。
即ち、勾配路100での傾きによって、変速機ケースAT1の下方へ変速機オイルATFが移動する。このため、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定するので、変速機オイルATFによる発進クラッチの冷却性能が確保される。
この結果、勾配路100での車両発進時に、変速機オイルATFによって発進クラッチが十分冷却され、発進クラッチが発熱して耐久性が低下することが抑制される。
実施例1では、発進クラッチを滑り締結させるモード中、発進クラッチが許容温度閾値以上かどうかを判断し、発進クラッチが許容温度閾値以上になった場合、発進クラッチは滑り締結させるモードから完全締結させるモードへ移行される(図6と図11)。
即ち、滑り締結による発熱によって発進クラッチに熱劣化が生じる前に、発進クラッチが完全締結される。
従って、発熱による発進クラッチの熱劣化を防止し、発進クラッチの耐久信頼性を向上させる。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の発進クラッチ選定方法及び発進クラッチ選定装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 駆動源(エンジンEngとモータ/ジェネレータMG)と駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)との間に変速機(自動変速機AT)を備え、
変速機(自動変速機AT)は、複数の変速段(前進変速段、後退変速段)を切り替える複数の摩擦締結要素(C1〜C3,B1〜B4)を有し、
車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素(C1〜C3,B1〜B4)のうち、1つの摩擦締結要素を発進クラッチ(後退用発進クラッチ、第2クラッチCL2)として滑り締結する発進クラッチ制御方法において、
車両発進時、傾斜路(勾配路100)発進か否かを判断し、
傾斜路(勾配路100)発進と判断した場合、車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素(第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4)のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、
選定された摩擦締結要素(登坂路での後退発進時は第1ブレーキB1、平坦路または降坂路での後退発進時は第4ブレーキB4)を発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として滑り締結する(図6〜図8と図10)。
このため、傾斜路(勾配路100)での車両発進時に、変速機オイルATFによって発進クラッチ(後退用発進クラッチ)を十分冷却でき、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)が発熱して耐久性が低下することを抑制する発進クラッチ制御方法を提供することができる。
(2) 発進クラッチ(後退用発進クラッチ)を滑り締結させるモード中、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)が所定温度(許容温度閾値)以上かどうかを判断し、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)が所定温度(許容温度閾値))以上になった場合、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)を滑り締結させるモードから完全締結させるモードへ移行する(図6と図11)。
このため、(1)の効果に加え、発熱による発進クラッチ(後退用発進クラッチ)の熱劣化を防止でき、発進クラッチ(前進用発進クラッチ、後退用発進クラッチ)の耐久信頼性を向上させることができる。
(3) 駆動源(エンジンEngとモータ/ジェネレータMG)と駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)との間に変速機(自動変速機AT)を備え、
変速機(自動変速機AT)は、複数の変速段(前進変速段、後退変速段)を切り替える複数の摩擦締結要素(C1〜C3,B1〜B4)を有し、
車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素(C1〜C3,B1〜B4)のうち、1つの摩擦締結要素を発進クラッチ(後退用発進クラッチ、第2クラッチCL2)として滑り締結する発進クラッチ制御装置において、
車両発進時、傾斜路(勾配路100)発進か否かを判断し、
傾斜路(勾配路100)発進と判断した場合、車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素(第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4)のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、
選定された摩擦締結要素(登坂路での後退発進時は第1ブレーキB1、平坦路または降坂路での後退発進時は第4ブレーキB4)を発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として滑り締結するコントローラ(統合コントローラ10)を有する(図6〜図8と図10)。
このため、傾斜路(勾配路100)での車両発進時に、変速機オイルATFによって発進クラッチ(後退用発進クラッチ)を十分冷却でき、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)が発熱して耐久性が低下することを抑制する発進クラッチ制御装置を提供することができる。
実施例2は、発進クラッチとして複数選定できる場合の発進クラッチ選定に関する変形例である。図12と図13に基づき、実施例2の要部を以下に説明する。
まず、構成を説明する。
実施例2における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置は、実施例1と同様に、1モータ・2クラッチ形式によるFRハイブリッド車両に適用したものである。このため、実施例2の構成のうち、「全体システム構成」と「自動変速機の概略構成」については、実施例1と同様であるから説明を省略する。以下、実施例2の「発進クラッチ制御処理構成」について説明する。
[発進クラッチ制御処理構成]
図12に基づき、実施例2の統合コントローラ10にて実行される発進クラッチ制御処理の流れを説明する。また、この処理は、実施例1と同様に、車両発進時に「START」する。なお、図12のステップS21〜ステップS24の各ステップは、図6のステップS1〜ステップS4の各ステップと同様であるから説明を省略する。図12のステップS27〜ステップS211は、図6のステップS7〜ステップS11の各ステップと同様であるから説明を省略する。ただし、図12のステップS23において、実施例2の「勾配路100」とは、例えば、車両発進時に、変速機オイルATFのオイル油面ATF1の傾きにより、発進変速段で締結される複数の摩擦要素のうち、少なくとも1つの摩擦締結要素(C3)が変速機オイルATFに漬からなくなる傾き(α2)を持つ勾配路である。このため、実施例2の傾き(α2)は、実施例1の傾き(α1)より緩やかである(α2<α1)。以下、図12のステップS25とステップS26について説明する。
ステップS25とステップS26において、複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、発進クラッチとして選定される摩擦締結要素は、以下の方法で選定する。
即ち、まず、実施例1と同様に、勾配路100での車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4(例えば、前進1速段または後退変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4)のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図13参照)。ここで、図13において、実施例1と同様に、登坂路や平坦路や降坂路にかかわらず、各摩擦締結要素に付した2つの符号のうち1つの符号が、変速機オイルATFのオイル油面ATF1よりも下側にある場合には、摩擦締結要素が変速機オイルATFに浸漬されているものとする。このように変速機オイルATFに浸漬されている摩擦締結要素が、「勾配路100での車両発進時、発進変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素」となる。
次いで、実施例2では、発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図4参照)。このように選定され、「WSCモード」が選択された車両発進時、滑り締結される発進クラッチが、第2クラッチCL2である。
ステップS25では、ステップS23での「登坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第4ブレーキB4を選定し、ステップS27へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段(発進変速段)で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。登坂路での後退発進時では、この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する(図13参照)。これに該当するのが、第1ブレーキB1と第4ブレーキB4となる。このため、登坂路での後退発進時、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する。そして、図4において、第1ブレーキB1は前進7速段で使用されている。一方、第4ブレーキB4は前進変速段で使用されていない。即ち、第4ブレーキB4が、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素に該当する。従って、第4ブレーキB4が、登坂路(α>α2)での後退用発進クラッチとして選定される。
ステップS26では、ステップS23での「平坦路発進または降坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第4ブレーキB4を選定し、ステップS27へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。平坦路または降坂路での後退発進時では、この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する。これに該当するのが、平坦路での後退発進時では、変速機オイルATFに浸漬される摩擦締結要素は、3つの摩擦締結要素のうち第1ブレーキB1と第4ブレーキB4となる。これは、登坂路と同様であるから、第4ブレーキB4が、平坦路での後退用発進クラッチとして選定される。一方、降坂路での後退発進時では、変速機オイルATFに浸漬される摩擦締結要素は、第4ブレーキB4となる。なお、降坂路における「勾配路100」も、登坂路と同様に、傾き(α2)を持つ勾配路である。従って、第4ブレーキB4が、平坦路または降坂路での後退用発進クラッチとして選定される。
次に、作用を説明する。
実施例2における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置における作用を、「発進クラッチ制御処理作用」と、「後退用発進クラッチ制御作用」と、「発進クラッチ制御の特徴作用」に分けて説明する。なお、「後退用発進クラッチ保護作用」は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
[発進クラッチ制御処理作用]
以下、図12のフローチャートに基づき、発進クラッチ制御処理作用を説明する。
まず、図12のフローチャートにおいて、「登坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」を説明する。図12のフローチャートでは、「HEVモード」が選択されている後退発進時には、「WSCモード」と判断され、「後退発進」と判断されると、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS21→ステップS22→ステップS23へと進む。ステップS23では、登坂路発進か否かが判断される。ここでは、「登坂路発進」と判断され、ステップS23からステップS25へと進む。ステップS25では、登坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第4ブレーキB4が選定され、ステップS25からステップS27へと進む。このため、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして、WSCモードにおいて完全締結状態から滑り締結される。即ち、登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ選定では、図12のフローチャートにおいて、START→ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS25→…→エンドへと進む流れである。また、図12のフローチャートにおいて、ステップS27〜ステップS210→エンドへと進む流れは、実施例1の「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」のステップS7〜ステップS10→エンドへと進む流れと同様であるから説明を省略する。なお、図12における「平坦路または降坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」は、上記において、ステップS25がステップS26となることが異なり、その他は同様であるから説明を省略する。また、図12のフローチャートにおいて、「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」は、実施例1と同様であるので説明を省略する。そして、図12のフローチャートにおいて、START→ステップS21→ステップS211→エンドへと進むながれは、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS11→エンドへと進む流れと同様であるから説明を省略する。
[後退用発進クラッチ制御作用]
以下、図13に基づいて、「登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用」について説明する。なお、図13の登坂路での後退発進時、発進変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である(図4参照)。
登坂路での後退発進の場合には、図13に示すように、第1ブレーキB1と第4ブレーキB4が変速機オイルATFに浸漬されている。しかし、3つの摩擦締結要素のうち第3クラッチC3は、図13に示すように、変速機オイルATFに完全に浸かっていない。よって、登坂路での後退発進時、第1ブレーキB1または第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される。このため、その後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。なお、平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合も、登坂路での後退発進の場合と同様に、少なくとも第4ブレーキB4が、後退用発進クラッチとして選定される。このため、平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合、上記の登坂路での後退発進の場合と同様の作用を奏する。また、登坂路での後退発進または平坦路での後退発進の場合、発進クラッチとして複数選定できる。
登坂路での後退発進時のように、発進クラッチとして複数選定できる場合には、変速機オイルATFに浸漬されている第1ブレーキB1と第4ブレーキB4の中から、前進変速段で使用頻度が少ない摩擦締結要素が発進クラッチとして選定される。即ち、第1ブレーキB1と第4ブレーキB4のうち、第1ブレーキB1は前進7速段で使用される(図4参照)。一方、第4ブレーキB4は、後退変速段で使用される。このため、登坂路での後退発進時、第4ブレーキB4が、後退用発進クラッチとして選定される。これにより、その選定された後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結され、仮に後退用発進クラッチに熱劣化が生じても、確実に前進変速段を形成できるので、車両走行に与える影響を小さくできる。なお、平坦路での後退発進時も、登坂路での後退発進時と同様に、発進クラッチとして複数選定できるため、上記の登坂路での後退発進時と同様の作用を奏する。その他の作用については、実施例1の「後退用発進クラッチ制御作用」と同様であるから説明を省略する。
[発進クラッチ制御の特徴作用]
実施例2では、勾配路100での後退発進時、後退用発進クラッチとして複数選定できる場合(登坂路または平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1または第4ブレーキB4)には、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素(第4ブレーキB4)が後退用発進クラッチとして選定される(図4と図12)。
従って、仮に、後退用発進クラッチに熱劣化が生じても、前進変速段を形成でき、走行が可能となる。また、実施例2のように、前進変速段では使用されない第4ブレーキB4を後退用発進クラッチとしている場合には、確実に前進変速段を形成できるので、車両走行に与える影響を小さくできる。
次に、効果を説明する。
実施例2のハイブリッド車両の発進クラッチ選定方法及び発進クラッチ選定装置にあっては、実施例1の(1)〜(3)の効果を得ることができると共に、下記に列挙する効果を得ることができる。
(4) 傾斜路(勾配路100)での発進時、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として複数選定できる場合には、その複数(第1ブレーキB1または第4ブレーキB4)の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素(第4ブレーキB4)を発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として選定する(図4と図12)。
このため、(1)の効果に加え、仮に、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)に熱劣化が生じても、前進変速段を形成でき、走行が可能となる。
実施例3は、発進クラッチとして複数選定できる場合の発進クラッチ選定に関する変形例である。図14と図15に基づき、実施例3の要部を以下に説明する。
まず、構成を説明する。
実施例3における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置は、実施例1と同様に、1モータ・2クラッチ形式によるFRハイブリッド車両に適用したものである。このため、実施例3の構成のうち、「全体システム構成」と「自動変速機の概略構成」については、実施例1と同様であるから説明を省略する。以下、実施例3の「発進クラッチ制御処理構成」について説明する。
[発進クラッチ制御処理構成]
図14に基づき、実施例3の統合コントローラ10にて実行される発進クラッチ制御処理の流れを説明する。また、この処理は、実施例3と同様に、車両発進時に「START」する。なお、図14のステップS31〜ステップS34の各ステップは、図6のステップS1〜ステップS4の各ステップと同様であるから説明を省略する。図14のステップS37〜ステップS311は、図6のステップS7〜ステップS11の各ステップと同様であるから説明を省略する。ただし、図14のステップS33において、実施例3の「勾配路100」とは、例えば、車両発進時に、変速機オイルATFのオイル油面ATF1の傾きにより、発進変速段で締結される複数の摩擦締結要素は全て変速機オイルATFに漬かることが想定されるものの、もっとも上方の摩擦締結要素の変速機オイルATFの漬かり具合が不足する虞がある傾き(α3)を持つ勾配路である。変速機オイルATFの漬かり具合が不足するかどうかは、摩擦締結要素の耐摩耗性や発熱を考慮して、摩擦締結要素の変速機オイルATFに漬かる摩擦面の面積の割合で決められる。このため、実施例3の傾き(α3)は、実施例1の傾き(α1)と実施例2の傾き(α2)より緩やかである(α3<α2<α1)。以下、図14のステップS35とステップS36について説明する。
ステップS35とステップS36において、複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、発進クラッチとして選定される摩擦締結要素は、以下の方法で選定する。
即ち、まず、実施例1と同様に、勾配路100での車両発進時に締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4(例えば、前進1速段または後退変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4)のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図15参照)。ここで、図15において、実施例1と同様に、登坂路や平坦路や降坂路にかかわらず、各摩擦締結要素に付した2つの符号のうち1つの符号が、変速機オイルATFのオイル油面ATF1よりも下側にある場合には、摩擦締結要素が変速機オイルATFに浸漬されているものとする。このように変速機オイルATFに浸漬されている摩擦締結要素が、「勾配路100での車両発進時、発進変速段で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素」となる。
次いで、実施例3では、発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素を発進クラッチの選定から除外し、残りの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図15参照)。ここで、「摩擦締結要素の最下部」について説明する。各摩擦締結要素は、変速機の軸心(Input,Output)を中心に環状になっている。そして、「摩擦締結要素の最下部」とは、各摩擦締結要素の変速機オイルATFに浸かる側の下側である。
次いで、さらに発進クラッチとして複数選定できる場合には、実施例2と同様に、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する(図4参照)。このように選定され、「WSCモード」が選択された車両発進時、滑り締結される発進クラッチが、第2クラッチCL2である。
ステップS35では、ステップS33での「登坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第4ブレーキB4を選定し、ステップS37へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段(発進変速段)で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。登坂路での後退発進時では、この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する(図15参照)。これに該当するのが、3つの摩擦締結要素の全て、すなわち、第1ブレーキB1と第3クラッチC3と第4ブレーキB4を選定することが可能である。このため、登坂路での後退発進時、その複数のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素を発進クラッチの選定から除外する。これに該当するのが、図15に示すように、第3クラッチC3であるから、これを発進クラッチの選定から除外する。そして、残りの摩擦締結要素(第1ブレーキB1と第4ブレーキB4)を発進クラッチとして選定する。さらに発進クラッチとして複数選定できるので、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する。そして、図4において、第1ブレーキB1は前進7速段で使用されている。一方、第4ブレーキB4は前進変速段で使用されていない。即ち、第4ブレーキB4が、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素に該当する。従って、第4ブレーキB4が、登坂路(α>α3)での後退用発進クラッチとして選定される。
ステップS36では、ステップS33での「平坦路発進または降坂路発進」との判断に続き、後退用の発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として、第4ブレーキB4を選定し、ステップS37へ進む。
ここで、図4に示すように、後退変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である。平坦路または降坂路での後退発進時では、この3つの摩擦締結要素のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を後退用発進クラッチとして選定する。これに該当するのが、平坦路での後退発進時でも降坂路での後退発進時でも、3つの摩擦締結要素の全て、すなわち、第1ブレーキB1と第3クラッチC3と第4ブレーキB4を選定することが可能である。このため、平坦路または降坂路での後退発進時、その複数のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素を発進クラッチの選定から除外する。これに該当するのが、平坦路での後退発進時では、第3クラッチC3であり、降坂路での後退発進時では、第1ブレーキB1であるから、それぞれ発進クラッチの選定から除外する。そして、残りの摩擦締結要素(平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1と第4ブレーキB4、降坂路での後退発進時では第3クラッチC3と第4ブレーキB4)を発進クラッチとして選定する。さらに発進クラッチとして複数選定できるので、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する。そして、図4において、第1ブレーキB1は前進7速段で使用されている。また、図4において、第3クラッチC3は複数の前進変速段で使用されている。一方、第4ブレーキB4は前進変速段で使用されていない。即ち、第4ブレーキB4が、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素に該当する。従って、第4ブレーキB4が、平坦路での後退用発進クラッチでも降坂路での後退用発進クラッチでも後退用発進クラッチとして選定される。なお、降坂路における「勾配路100」も、登坂路と同様に、傾き(α3)を持つ勾配路である。
次に、作用を説明する。
実施例3における発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置における作用を、「発進クラッチ制御処理作用」と、「後退用発進クラッチ制御作用」と、「発進クラッチ制御の特徴作用」に分けて説明する。なお、「後退用発進クラッチ保護作用」は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
[発進クラッチ制御処理作用]
以下、図14のフローチャートに基づき、発進クラッチ制御処理作用を説明する。
まず、図14のフローチャートにおいて、「登坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」を説明する。図14のフローチャートでは、「HEVモード」が選択されている後退発進時には、「WSCモード」と判断され、「後退発進」と判断されると、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS31→ステップS32→ステップS33へと進む。ステップS33では、登坂路発進か否かが判断される。ここでは、「登坂路発進」と判断され、ステップS33からステップS35へと進む。ステップS35では、登坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第4ブレーキB4が選定され、ステップS35からステップS37へと進む。このため、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして、WSCモードにおいて完全締結状態から滑り締結される。即ち、登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ選定では、図14のフローチャートにおいて、START→ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS35→…→エンドへと進む流れである。また、図14のフローチャートにおいて、ステップS37〜ステップS310→エンドへと進む流れは、実施例1の「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」のステップS7〜ステップS10→エンドへと進む流れと同様であるから説明を省略する。なお、図14における「平坦路または降坂路での後退発進時の発進クラッチ制御処理作用」は、上記において、ステップS35がステップS36となることが異なり、その他は同様であるから説明を省略する。また、図14のフローチャートにおいて、「前進発進時の発進クラッチ制御処理作用」は、実施例1と同様であるので説明を省略する。そして、図14のフローチャートにおいて、START→ステップS31→ステップS311→エンドへと進むながれは、図6のフローチャートにおいて、START→ステップS1→ステップS11→エンドへと進む流れと同様であるから説明を省略する。
[後退用発進クラッチ制御作用]
以下、図15に基づいて、「登坂路での後退発進時の後退用発進クラッチ制御作用」について説明する。なお、図15の登坂路での後退発進時、発進変速段で締結される摩擦締結要素は、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4である(図4参照)。
登坂路での後退発進の場合には、図15に示すように、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4が変速機オイルATFに浸漬されている。よって、登坂路での後退発進時、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される。このため、その後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。なお、平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合も、登坂路での後退発進の場合と同様に、第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4が、後退用発進クラッチとして選定される。このため、平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合、上記の登坂路での後退発進の場合と同様の作用を奏する。また、登坂路での後退発進または平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合、発進クラッチとして複数選定できる。
登坂路での後退発進時のように、発進クラッチとして複数選定できる場合には、変速機オイルATFに浸漬されている第1ブレーキB1・第3クラッチC3・第4ブレーキB4のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素が発進クラッチの選定から除外される。即ち、第3クラッチC3が発進クラッチの選定から除外される。よって、登坂路での後退発進時、残りの摩擦締結要素(第1ブレーキB1と第4ブレーキB4)が後退用発進クラッチとして選定される。このため、発進によって車両が走行して、オイル油面ATF1が揺れても、第3クラッチC3よりも変速機オイルATFに浸かっている摩擦締結要素が発進クラッチとして選定される。これにより、その後退用発進クラッチが滑り締結されている車両走行中、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。なお、平坦路での後退発進時も、登坂路での後退発進時と同様に、第3クラッチC3が発進クラッチの選定から除外される。そして、平坦路での後退発進時、残りの摩擦締結要素(第1ブレーキB1と第4ブレーキB4)が後退用発進クラッチとして選定される。また、降坂路での後退発進時では、第1ブレーキB1が発進クラッチの選定から除外される。そして、降坂路での後退発進時、残りの摩擦締結要素(第3クラッチC3と第4ブレーキB4)が後退用発進クラッチとして選定される。このため、平坦路での後退発進時も降坂路での後退発進時も上記の登坂路での後退発進時と同様の作用を奏する。また、登坂路での後退発進または平坦路での後退発進または降坂路での後退発進の場合、さらに発進クラッチとして複数選定できる。
登坂路での後退発進時、さらに発進クラッチとして複数選定できる場合には、変速機オイルATFに浸漬されている残りの摩擦締結要素(第1ブレーキB1または第4ブレーキB4)の中から、前進変速段で使用頻度が少ない摩擦締結要素が発進クラッチとして選定される。即ち、第1ブレーキB1と第4ブレーキB4のうち、第1ブレーキB1は前進7速段で使用される(図4参照)。一方、第4ブレーキB4は、後退変速段で使用される。このため、登坂路での後退発進時、第4ブレーキB4が、後退用発進クラッチとして選定される。これにより、その選定された後退用発進クラッチが完全締結状態から滑り締結され、仮に後退用発進クラッチに熱劣化が生じても、確実に前進変速段を形成できるので、車両走行に与える影響を小さくできる。なお、平坦路または降坂路での後退発進時も、登坂路での後退発進時と同様に、発進クラッチとして複数選定できるため、上記の登坂路での後退発進時と同様の作用を奏する。なお、第3クラッチC3は、前進変速段でも使用される(図4参照)。その他の作用については、実施例1の「後退用発進クラッチ制御作用」と同様であるから説明を省略する。
[発進クラッチ制御の特徴作用]
実施例3では、勾配路100での後退発進時、後退用発進クラッチとして複数選定できる場合(第1ブレーキB1または第3クラッチC3または第4ブレーキB4)には、その複数のうち各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素(登坂路または平坦路での後退発進時では第3クラッチC3、降坂路での後退発進時では第1ブレーキB1)が発進クラッチの選定から除外され、残りの摩擦締結要素(登坂路または平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1または第4ブレーキB4、降坂路での後退発進時では第3クラッチC3または第4ブレーキB4)が発進クラッチとして選定される(図14と図15)。
即ち、発進によって車両が走行して、オイル油面ATF1が揺れても、除外される摩擦締結要素よりも変速機オイルATFに浸かっている摩擦締結要素が発進クラッチとして選定される。これにより、その後退用発進クラッチが滑り締結されている車両走行中、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。
従って、発進クラッチが滑り締結されている車両走行中、変速機オイルATFによって発進クラッチが十分冷却され、発進クラッチが発熱して耐久性が低下することが抑制される。
実施例3では、上記選定によっても、さらに発進クラッチとして複数選定できるので、勾配路100での後退発進時、その複数(登坂路または平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1または第4ブレーキB4、降坂路での後退発進時では第3クラッチC3または第4ブレーキB4)の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素(第4ブレーキB4)が後退用発進クラッチとして選定される(図4と図14)。
従って、仮に、後退用発進クラッチに熱劣化が生じても、前進変速段を形成でき、走行が可能となる。また、実施例3のように、前進変速段では使用されない第4ブレーキB4を後退用発進クラッチとしている場合には、確実に前進変速段を形成できるので、車両走行に与える影響を小さくできる。
次に、効果を説明する。
実施例3のハイブリッド車両の発進クラッチ選定方法及び発進クラッチ選定装置にあっては、実施例1の(1)〜(3)の効果を得ることができると共に、下記に列挙する効果を得ることができる。
(5) 傾斜路(勾配路100)での発進時、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として複数選定できる場合(第1ブレーキB1または第3クラッチC3または第4ブレーキB4)には、その複数のうち各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素(登坂路または平坦路での後退発進時では第3クラッチC3、降坂路での後退発進時では第1ブレーキB1)を発進クラッチの選定から除外し、残りの摩擦締結要素(登坂路または平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1または第4ブレーキB4、降坂路での後退発進時では第3クラッチC3または第4ブレーキB4)を発進クラッチとして選定する(図14と図15)。
このため、(1)の効果に加え、発進クラッチが滑り締結されている車両走行中、変速機オイルATFによって発進クラッチが十分冷却でき、発進クラッチが発熱して耐久性が低下することが抑制できる。
(6) 傾斜路(勾配路100)での発進時、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として複数選定できる場合には、その複数(登坂路または平坦路での後退発進時では第1ブレーキB1または第4ブレーキB4、降坂路での後退発進時では第3クラッチC3または第4ブレーキB4)の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素(第4ブレーキB4)を発進クラッチ(後退用発進クラッチ)として選定する(図4と図14)。
このため、(1)または(5)の効果に加え、仮に、発進クラッチ(後退用発進クラッチ)に熱劣化が生じても、前進変速段を形成でき、走行が可能となる。
以上、本発明の発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、実施例1〜実施例3に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜実施例3では、自動変速機ATを、モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に備える例を示した。しかし、自動変速機ATは、駆動源(エンジンEng、モータ/ジェネレータMG)と左右後輪RL,RRとの間に備えても良い。
実施例1〜実施例3では、第1クラッチCL1を有する例を示した。しかし、第1クラッチCL1を有さなくても良い。
実施例1〜実施例3では、自動変速機ATを、前進7速/後退1速の変速段を自動的に切り替える有段変速機とする例を示した。しかし、前進7速や後退1速に限られない。例えば、前進5速や9速や11速等でも良いし、後退2速等でも良い。要するに、前進7速/後退1速以外の有段変速段であっても良い。
実施例1〜実施例3では、車両発進時、第2クラッチCL2が滑り締結される場合を、「WSCモード」か否かにより判断する例を示した。しかし、「MWSCモード」か否かにより判断しても良い。この場合、車両発進時、第1クラッチCL1は解放されている。
実施例1〜実施例3では、前進発進時の変速段を前進1速段とする例を示した。しかし、前進発進時の変速段を前進2速段等としても良い。この前進2速での車両発進時における発進クラッチは、後退発進時を参考に選定すれば良い。
実施例1〜実施例3では、複数の摩擦締結要素のうち、3つの摩擦締結要素を用いて各変速段を構成する例を示した。しかし、複数の摩擦締結要素のうち、2つの摩擦締結要素を用いて各変速段を構成しても良い。
実施例2では、登坂路または平坦路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第4ブレーキB4が選定される例を示した。しかし、登坂路または平坦路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第1クラッチB1が選定されても良い。この場合でも、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される場合と同様に、その後退用発進クラッチ(第1クラッチB1)が完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。
実施例2において、発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する例を示した。しかし、その選定方法に代えて、発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1に最も近い摩擦締結要素を発進クラッチの選定から除外し、残りの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定しても良い。
実施例3では、登坂路/平坦路/降坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第4ブレーキB4が選定される例を示した。しかし、登坂路/平坦路/降坂路での後退発進時、後退用発進クラッチとして第1ブレーキB1または第3クラッチC3が選定されても良い。この場合でも、第4ブレーキB4が後退用発進クラッチとして選定される場合と同様に、その後退用発進クラッチ(第1ブレーキB1または第3クラッチC3)が完全締結状態から滑り締結される際、変速機オイルATFによるクラッチ冷却性能が確保される。
実施例2〜実施例3では、勾配路100での車両発進時、発進変速段(例えば前進1速段または後退変速段)で締結される複数の摩擦締結要素C1〜C3,B1〜B4のうち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する例を示した。そして、さらに発進クラッチとして複数選定できる場合には、種々の選定方法により、その複数の中から、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する例を示した。しかし、勾配路100での発進時、発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数のうち、各摩擦締結要素の最下部が変速機オイルATFのオイル油面ATF1から最も遠い摩擦締結要素を発進クラッチとして選定しても良い。
実施例1〜実施例3では、それぞれ異なる勾配路100の傾き(α1、α2、α3)とする例を示した。即ち、各実施例では、変速機オイルATFの油量を変更することにより説明した。しかし、3つの勾配路の傾き(α1、α2、α3)を組み合わせても良い。例えば、3つの勾配路の傾き(α1、α2、α3)の関係は、「α1>α2>α3」であることから、推定した登坂路の傾きα毎に、以下のように発進クラッチを選定しても良い。なお、この場合、平坦路とは、「α<α3」の場合となる。このため、「α<α3」の場合には、ステップS36が適用される。登坂路での後退発進と判断される場合、「α3≦α<α2」の場合には、ステップS35が適用され、「α2≦α<α1」の場合には、ステップS25が適用され、「α1≦α」の場合には、ステップS5が適用される。また、降坂路での後退発進と判断される場合、「α3≦α<α2」の場合には、ステップS36が適用され、「α2≦α<α1」の場合には、ステップS26が適用され、「α1≦α」の場合には、ステップS6が適用される。
実施例1〜実施例3では、前進1速段(発進変速段)で締結される摩擦締結要素は1つしかなく、選定方法が適用されない例を示した。しかし、勾配路100での前進発進時、該前進発進時の変速段で締結される複数の摩擦締結要素が有る場合には、その変速段で締結される複数の摩擦締結要素うち、変速機オイルATFに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を前進用発進クラッチとして選定することができる。また、さらに発進クラッチとして複数選定できる場合には、実施例2や実施例3等に示した種々の制御方法で、その複数の中から、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定しても良い。
実施例1〜実施例3では、本発明の発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置を、車両前後方向に配置される縦置きとされる自動変速機ATに対し適用した例を示した。しかし、車両左右方向に配置される横置きとされる自動変速機AT(例えば、前輪駆動によるFFハイブリッド車両)に対しても適用することができる。この場合には、車両車幅方向(左右方向)に傾斜角を持つ左右傾斜路(傾斜路)での車両発進時に、本発明の発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置が適用される。また、横Gセンサを設け、横Gセンサから左右傾斜路情報を統合コントローラ10に入力する。左傾斜または右傾斜発進か否かは、横Gセンサ等からの情報に基づき判断される。そして、例えば、実施例1において、図3において車両前側を車両右側とする場合、車両左側が下がる左傾斜路での後退発進時には、第4ブレーキB4を発進クラッチとして選定し、車両右側が下がる右傾斜路での後退発進時には、第1ブレーキB1を発進クラッチとして選定すれば良い。また、発進クラッチとして複数選定できる場合には、実施例2や実施例3等に示した種々の選定方法で、その複数の中から、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定しても良い。なお、「傾斜路」は、車両前後方向に傾斜角αを持つ勾配路100、または、車両車幅方向(左右方向)に傾斜角を持つ左右傾斜路、或いは、勾配路100と左右傾斜路との両方を含む路面である。
実施例1〜実施例3では、本発明の発進クラッチ制御方法及び発進クラッチ制御装置を、後輪駆動によるFRハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動によるFFハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、駆動源を備えると共に、駆動源と駆動輪との間に複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を有する変速機を備えており、車両発進時に、変速機ケース内の変速機オイルに浸漬される複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を、滑り締結される発進クラッチとする車両であれば適用できる。

Claims (5)

  1. 駆動源と駆動輪との間に変速機を備え、
    前記変速機は、複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を有し、
    車両発進時に締結される前記複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する発進クラッチ制御方法において、
    車両発進時、傾斜路発進か否かを判断し、
    傾斜路発進と判断した場合、車両発進時に締結される前記複数の摩擦締結要素のうち、変速機オイルに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、
    選定された摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する
    ことを特徴とする発進クラッチ制御方法。
  2. 請求項1に記載された発進クラッチ制御方法において、
    前記傾斜路での発進時、前記発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数のうち各摩擦締結要素の最下部が前記変速機オイルのオイル油面に最も近い摩擦締結要素を前記発進クラッチの選定から除外し、残りの摩擦締結要素を発進クラッチとして選定する
    ことを特徴とする発進クラッチ制御方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載された発進クラッチ制御方法において、
    前記傾斜路での発進時、前記発進クラッチとして複数選定できる場合には、その複数の中から、前進変速段での使用頻度が少ない前記摩擦締結要素を前記発進クラッチとして選定する
    ことを特徴とする発進クラッチ制御方法。
  4. 請求項1から請求項3までの何れか一項に記載された発進クラッチ制御方法において、
    前記発進クラッチを滑り締結させるモード中、前記発進クラッチが所定温度以上かどうかを判断し、前記発進クラッチが前記所定温度以上になった場合、前記発進クラッチを滑り締結させるモードから完全締結させるモードへ移行する
    ことを特徴とする発進クラッチ制御方法。
  5. 駆動源と駆動輪との間に変速機を備え、
    前記変速機は、複数の変速段を切り替える複数の摩擦締結要素を有し、
    車両発進時に締結される前記複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結する発進クラッチ制御装置において、
    車両発進時、傾斜路発進か否かを判断し、
    傾斜路発進と判断した場合、車両発進時に締結される前記複数の摩擦締結要素のうち、変速機オイルに浸漬される位置に配置される摩擦締結要素を選定し、
    選定された摩擦締結要素を発進クラッチとして滑り締結するコントローラを有する
    ことを特徴とする発進クラッチ制御装置。
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