カムシャフトの端部には、カムスプロケットとカムシャフトとの回転位相を変更するバルブタイミング可変機構等の回転位相可変機構が設けられることがある。回転位相可変機構は、油圧によって駆動されるものが多く、作動油(潤滑油)の一部が外部に漏出するものや、作動油の一部を積極的に外部に排出するものがある。しかしながら、ヘッドカバーの下面においてカムスプロケットの側方に対応して突片を設けた構成では、回転位相可変機構から飛散する潤滑油を効率的に捕集することができないという問題がある。そのため、回転位相可変機構から流出する潤滑油を効率良く捕集することができれば、チェーンに供給可能な潤滑油量が増加する。
本発明は、以上の背景を鑑み、飛散する潤滑油を利用してチェーンの潤滑を行う潤滑構造において、チェーンに供給可能な潤滑油量を増加させることを課題とする。
上記課題を解決するために本発明の一態様は、内燃機関の潤滑構造であって、前後方向に延びる回転軸と、前記回転軸の前端に設けられたスプロケット、及び前記スプロケットに巻き掛けられたチェーンを含む伝達機構と、前記スプロケット及び前記回転軸の間に設けられ、前記スプロケット及び前記回転軸で回転を伝達すると共に、油圧によって前記スプロケットと前記回転軸との回転位相を変更可能な回転位相可変機構と、前記チェーンに摺接するチェーンガイドと、前記スプロケット及び前記回転位相可変機構の上方に設けられた上壁、及び前記上壁から垂下したガイド壁を有するカバー部材とを有し、前記ガイド壁は、前記回転位相可変機構の前方に位置する前壁部から、前記スプロケットの側方に位置する側壁部にかけて横方向に延在し、前記側壁部の下縁は前記チェーンガイド又は前記チェーンの上方に位置する突端を有することを特徴とする。
この態様によれば、ガイド壁が回転位相可変機構の側方から正面に延びているため、回転位相可変機構から流出し、飛散した潤滑油がガイド壁に捕集される。ガイド壁に捕集された潤滑油はガイド壁の側壁部の下縁に設けられた突端からチェーンガイド又はチェーンに落下してチェーンの摺接部が潤滑される。例えばバルブタイミング可変機構等である回転位相可変機構は、油圧によって駆動されるため、作動油(潤滑油)の一部が外部に漏出する、或は作動油の一部を積極的に外部に排出することがある。そのため、回転位相可変機構から流出する潤滑油をガイド壁で捕集することによって、チェーンに供給可能な潤滑油量が増加する。
また、上記の態様において、前記ガイド壁の下縁は、前記突端に向けて下方に傾斜しているとよい。
この態様によれば、ガイド壁に捕集された潤滑油を、重力によって面上を下方に流し、かつ下縁に沿わせて突端に集めることができる。
また、上記の態様において、前記ガイド壁の前記回転位相可変機構及び前記スプロケット側を向く側面は、前記前壁部から前記側壁部にかけて湾曲しているとよい。
この態様によれば、前壁部に捕集された潤滑油が側壁部に円滑に流れることができる。
また、上記の態様において、前記カバー部材は、前記上壁から垂下し、チェーン室の一部を画定する外側壁を有し、前記ガイド壁は、前記外側壁の内側に配置されているとよい。
この態様によれば、ガイド壁がチェーン室を画定する外側壁の内側に設けられるため、ガイド壁を回転位相可変機構及びスプロケットに近づけることができる。これにより、ガイド壁は回転位相可変機構及びスプロケットから飛散する潤滑油を確実に捕集することができる。
また、上記の態様において、前記ガイド壁の前記前壁部は、前記外側壁に一体に形成されているとよい。
この態様によれば、外壁部の一部がガイド壁の一部を兼ねるため、カバー部材の小型化が可能になる。
また、上記の態様において、前記ガイド壁の前記前壁部の下縁は、前記外側壁に対して凸又は凹となり、前記側壁部に向けて下方に傾斜して延びているとよい。
この態様によれば、上壁及びガイド壁の前壁部に捕集された潤滑油は、重力によって前壁部の面上を下方に流れ、前壁部の下縁を伝って側壁部側に流れることができる。
また、上記の態様において、前記ガイド壁の前記側壁部は、前記外側壁の内面に対して隙間をおいて配置され、左右方向に延びる補強壁によって前記外側壁に結合され、前記補強壁の下縁は前記外側壁側に対して前記側壁部側が下方に位置するように傾斜しているとよい。
この態様によれば、ガイド壁をスプロケットの側部に近づけることができる。また、補強壁によってガイド壁の剛性が高められる。外側壁及び補強壁に捕集された潤滑油は、補強壁の下縁を伝ってガイド壁の側壁部に集められる。
また、上記の態様において、前記回転位相可変機構は、その前面に開口した油排出孔を有するとよい。
この態様によれば、油排出孔から排出される潤滑油は、油排出孔から前方及び径方向に飛散し、一部が上壁に捕集される。上壁に捕集された潤滑油は、ガイド壁の前壁部の面上を重力によって下方に流れ、前壁部の下縁を伝って側壁部側に流れ、突端に集められる。
また、上記の態様において、前記回転位相可変機構は、前記スプロケットと一体に回転する第1回転部と、前記回転軸と一体に回転し、前記第1回転部との間に油室を画定する第2回転部と、前記第1回転部及び前記第2回転部の互いに対向する位置に形成されたロックピン孔と、前記ロックピン孔に、前記第1回転部及び前記第2回転部の両方に係合するロック位置と、前記第1回転部及び前記第2回転部の一方のみに係合した解除位置との間で変位可能に受容されたロックピンと、前記ロックピン孔に接続した油供給路とを有し、前記油排出孔は、前記ロックピン孔に接続しているとよい。
この態様によれば、ガイド壁の前壁部は、回転位相可変機構のロックピン孔から流出する潤滑油を捕集することができる。
また、上記の態様において、前記チェーンガイドの上端部は、上下方向から見て前記スプロケットの側方に突出し、前記突端は前記チェーンガイドの上端部の上方に配置されているとよい。
この態様によれば、潤滑油はガイド壁の突端からチェーンガイドの上端部に落下し、上端部からチェーンとの摺接部に流れる。
以上の構成によれば、飛散する潤滑油を利用してチェーンの潤滑を行う潤滑構造において、チェーンに供給可能な潤滑油量を増加させることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る内燃機関の潤滑構造を適用した内燃機関について説明する。以下の説明では、クランクシャフトの軸線方向を前後方向、鉛直上下方向を上下方向、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向とする。また、内燃機関は、使用状態における姿勢で記載されている。なお、前後方向及び左右方向は説明の便宜上のものであり、当該内燃機関が搭載される車両の進行方向との関係を限定するものではない。
図1に示すように、内燃機関1は、複数のシリンダ及びクランク室が形成されたシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に結合されたシリンダヘッド3と、シリンダブロック2の下端部に結合されたオイルパン4と、シリンダヘッド3の上端部に結合されたヘッドカバー5(カバー部材)と、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3に結合されたチェーンケース6とを有する。シリンダブロック2のクランク室には、前後方向に延びたクランクシャフト7が回転可能に支持されている。
オイルパン4は、上方に開口した箱形に形成され、その前端部はシリンダブロック2の前端壁であるブロック前壁2Aよりも前方に延出している。ヘッドカバー5は、下方に開口した箱形に形成され、その前端部はシリンダヘッド3の前端壁であるヘッド前壁3Aよりも前方に延出している。チェーンケース6は、主面が前後方向を向き、上下方向に延びたケース前壁6Aと(図3参照)、ケース前壁6Aの左右側縁のそれぞれから後方に突出し、各側縁に沿って上下方向に延びたケース縁壁6Bとを有する。チェーンケース6は、左右のケース縁壁6Bにおいてブロック前壁2A及びヘッド前壁3Aに結合され、下縁においてオイルパン4の前部に結合され、上縁においてヘッドカバー5の前部に結合される。チェーンケース6とブロック前壁2A及びヘッド前壁3Aとの間の上下方向に延びる空間、オイルパン4の内側の前端部、及びヘッドカバー5の内側の前端部は、協働して上下方向に延びるチェーン室10を画定する。
シリンダヘッド3の上面とヘッドカバー5との間には、動弁室11が形成され、動弁室11には吸気バルブ及び排気バルブを開閉するための吸気カムシャフト13(回転軸)及び排気カムシャフト14が設けられている。吸気カムシャフト13及び排気カムシャフト14は、前後方向に延び、シリンダヘッド3の上部に設けられた軸受に回転可能に支持されている。吸気カムシャフト13及び排気カムシャフト14の前端は、ヘッド前壁3Aとヘッドカバー5の前端部との間、すなわちチェーン室10の上端部に配置されている。吸気カムシャフト13は、排気カムシャフト14に対して右方に配置されている。内燃機関1は、吸気カムシャフト13側が排気カムシャフト14側に対して上方に位置するように、左方に傾斜している。すなわち、内燃機関1のシリンダ軸線は左方に傾斜している。内燃機関1の傾斜角度は、例えば5°程度であってよい。
クランクシャフト7の前端は、ブロック前壁2A及びチェーンケース6を貫通してケース前壁6Aの前方に突出している。クランクシャフト7のチェーン室10内に位置する部分には、クランクスプロケット16が結合されている。吸気カムシャフト13の前端にはバルブタイミング可変機構17(回転位相可変機構)を介して吸気スプロケット18が設けられ、排気カムシャフト14の前端には排気スプロケット19が結合されている。クランクスプロケット16、吸気スプロケット18、及び排気スプロケット19は、それぞれ前後方向に延びる軸線を中心として回転可能であり、チェーン20が巻き掛けられている。クランクスプロケット16、吸気スプロケット18、排気スプロケット19、及びチェーン20は、クランクシャフト7の回転力を吸気カムシャフト13及び排気カムシャフト14に伝達する動力伝達機構22を構成する。チェーン20は、サイレントチェーン又はローラーチェーンであるとよい。クランクスプロケット16、チェーン20、吸気スプロケット18、バルブタイミング可変機構17、及び排気スプロケット19は、図1に示すように前方から見て右回りに回転する。
バルブタイミング可変機構17は、吸気スプロケット18の回転を吸気カムシャフト13に伝達すると共に、油圧によって吸気スプロケット18と吸気カムシャフト13との回転位相を変更可能にする。図5及び図6に示すように、バルブタイミング可変機構17は、吸気カムシャフト13の前端に相対回転可能に支持されたハウジング31(第1回転部)と、吸気カムシャフト13の前端に一体に回転するように結合され、前記ハウジング31内に受容されたベーン32(第2回転部)とを有する。ハウジング31は、円筒形をなし、吸気カムシャフト13と同軸に配置されたハウジング本体34と、ハウジング本体34の前端及び後端に設けられたフロントプレート35及びリヤプレート36とを有する。ハウジング本体34、フロントプレート35及びリヤプレート36は、ボルト37によって互いに締結されている。リヤプレート36は、吸気スプロケット18と共通の部材であり、リヤプレート36の外周部に吸気スプロケット18の歯部18Aが形成されている。リヤプレート36の中央部には、吸気カムシャフト13が貫通する透孔38が形成されている。フロントプレート35の中央部には、円形状の貫通孔である開口39が形成されている。ハウジング本体34の内周面には径方向外方に向けて凹み、周方向に所定の幅を有する複数の凹部41が形成されている。
ベーン32は、ボルト42によって吸気カムシャフト13の前端面に一体回転するように締結された円柱状の軸部32Aと、軸部32Aの外周から径方向外方に突出し、凹部41内に突入する複数の翼部32Bとを有する。翼部32Bは凹部41を周方向において進角油室41Aと遅角油室41Bとに区画する。ハウジング31に対してベーン32が相対回転することによって、進角油室41A及び遅角油室41Bの容積が変化する。ボルト42の頭部は、開口39を通過してフロントプレート35の前方に突出している。ハウジング31の軸線上に配置された単一のボルト42によってベーン32が吸気カムシャフト13に締結されることによって、バルブタイミング可変機構17は吸気カムシャフト13に締結されている。
翼部32Bの1つには、前後方向に貫通するベーン側ピン孔45が形成されている。進角油室41Aの容積が最小となる最遅角状態において、リヤプレート36のベーン側ピン孔45と対向する部分には、有底のハウジング側ピン孔46が凹設されている。ベーン側ピン孔45には、ハウジング側ピン孔46に嵌入可能なロックピン47が変位可能に収容されている。ロックピン47は、フロントプレート35との間に設けられた圧縮コイルばねであるばね48に付勢されて、初期状態においては、ロックピン47の後端がハウジング側ピン孔46に嵌入したロック位置にある。ベーン32の前面には、ベーン側ピン孔45の前端からベーン32の軸線側に径方向に延び、フロントプレート35の開口39に延びる油排出溝49が形成されている。
シリンダヘッド3には、吸気カムシャフト13の軸受部に延びるヘッド側進角油路51及びヘッド側遅角油路52が形成されている。ヘッド側進角油路51及びヘッド側遅角油路52は油圧制御弁(不図示)を介して油圧源であるオイルポンプ(不図示)に接続している。ヘッド側進角油路51は、吸気カムシャフト13に形成されたカム側進角油路53、及びベーン32に形成されたベーン側進角油路54を介して進角油室41Aに接続している。ヘッド側遅角油路52は、吸気カムシャフト13に形成されたカム側遅角油路56、及びベーン32に形成されたベーン側遅角油路57を介して遅角油室41Bに接続している。ハウジング側ピン孔46は、リヤプレート36に形成された進角室接続油路58を介して進角油室41Aに接続し、リヤプレート36に形成された遅角室接続油路59を介して遅角油室41Bに接続している。
油圧制御弁が、ヘッド側進角油路51をオイルポンプに接続し、ヘッド側遅角油路52をドレーンに接続すると、進角油室41A及びハウジング側ピン孔46に油圧が供給され、遅角油室41Bから油圧が排出される。これにより、ロックピン47がハウジング側ピン孔46から離脱した解除位置に移動し、ハウジング31に対してベーン32が回転可能になり、進角油室41Aの容積が増加してハウジング31に対してベーン32が進角する。油圧制御弁が、ヘッド側遅角油路52をオイルポンプに接続し、ヘッド側進角油路51をドレーンに接続すると、遅角油室41B及びハウジング側ピン孔46に油圧が供給され、進角油室41Aから油圧が排出される。これにより、遅角油室41Bの容積が増加してハウジング31に対してベーン32が遅角する。進角油室41A又は遅角油室41Bに油圧が供給されるときには、ハウジング側ピン孔46に油圧が供給され、ロックピン47が解除位置に移動する。ハウジング側ピン孔46に供給された潤滑油の一部はベーン側ピン孔45及び油排出溝49を介してハウジング31の前面中央に形成された開口39とボルト42との隙間からハウジング31の外部に排出される。すなわち、バルブタイミング可変機構17は、内燃機関1の駆動状態において開口39から常に潤滑油を外部に排出する。
ハウジング31の後端をなすリヤプレート36が吸気スプロケット18を構成するため、バルブタイミング可変機構17は吸気スプロケット18の前側に設けられている。吸気スプロケット18、バルブタイミング可変機構17、及び吸気カムシャフト13は互いに同軸に配置され、吸気カムシャフト13は吸気スプロケット18から後方に延びている。
図1に示すように、ブロック前壁2A及びヘッド前壁3Aには、チェーンテンショナ60及び第1チェーンガイド61が設けられ、シリンダヘッド3の上部には第2チェーンガイド62が設けられている。チェーンテンショナ60はクランクスプロケット16及び吸気スプロケット18間のチェーン20に摺接し、第1チェーンガイド61は排気スプロケット19及びクランクスプロケット16間のチェーン20に摺接し、第2チェーンガイド62は吸気スプロケット18及び排気スプロケット19間のチェーン20に摺接する。
チェーンテンショナ60は、上下方向に延びるベース64と、ベース64のチェーン20側の側面に支持された板状のシュー65とを有する。ベース64は、上端部64Aに設けられたピボット部66において前後方向に延びる軸線を中心として回動可能にヘッド前壁3Aに支持され、下端部64Bにおいてブロック前壁2Aに支持された付勢装置63によって付勢されている。付勢装置63は、ばねを内部に備えベース64の下端をチェーン20側に付勢する。
図3、図6及び図7に示すように、ベース64は前後方向において、クランクスプロケット16及び吸気スプロケット18と同位置に配置されている。ベース64は、上端部64Aと下端部64Bとの間に、チェーン20側に凸となる円弧状に湾曲した円弧部64Cを有する。上端部64Aのチェーン20側の側面は、円弧部64Cのチェーン20側の側面に対してチェーン20から離れる側(右方)に傾斜している。上端部64Aのチェーン20側の側面は、ピボット部66の上方を左右に延び、上下方向から見て吸気スプロケット18の外周における右端部よりも右方に突出している。ベース64のチェーン20側の側面の幅方向(前後方向)における中央部には、上端部64Aから上下方向に所定の長さ延びる油溝67が凹設されている。ベース64の上端部64Aのチェーン20側の側面の両側縁には、上端部64Aの延在方向に沿って延びる一対の縁壁68が突設されている。一対の縁壁68によって、上端部64Aのチェーン側は溝形の横断面を有する。一対の縁壁68は、上端部64Aの下端において突出高さが0となるように突出高さが漸減している。
シュー65は、ベース64の上端部64Aを除くチェーン20側の側面に配置される。シュー65の両側縁にはシュー65の延在方向に延びる縁壁65Aが突設されている。縁壁65Aは、チェーン20の両側部に係合し、チェーン20のシュー65に対する位置ずれを防止する。チェーンテンショナ60は、シュー65においてチェーン20に摺接し、ベース64はチェーン20に摺接しない。シュー65の表面の幅方向(前後方向)における中央には、上端から下端まで上下方向に延びる油溝65Bが凹設されている。ベース64の油溝67は、上端部64Aからシュー65の上端部裏面に対応する位置まで延びている。
図1及び図2に示すように、ヘッドカバー5は、シリンダヘッド3の上部と対向して前後方向に延びる上壁71と、上壁71の前縁、左右側縁、後縁のそれぞれから垂下した前外側壁72、左外側壁73、右外側壁74、及び後外側壁(不図示)を有し、下方に向けて開口した箱形をなす。前外側壁72は、バルブタイミング可変機構17及び排気スプロケット19の前方に隙間をおいて配置されている。
図4は、ヘッドカバー5の内、ガイド壁76を除いた構成を透視して示す説明図である。図2〜図4に示すように、上壁71の下面には垂下するガイド壁76が設けられている。ガイド壁76は、バルブタイミング可変機構17の前方に位置する前壁部77から、吸気スプロケット18の右側方に位置する側壁部78にかけて横方向(左右方向)に延在している。前壁部77は面が略前後方向を向き、左右に延びている。側壁部78は面が略左右を向き、前後方向に延びている。ガイド壁76は、前壁部77から側壁部78にかけて滑らかに湾曲しつつ延びている。すなわち、前壁部77及び側壁部78の境界部は滑らかな曲面に形成され、前壁部77及び側壁部78のバルブタイミング可変機構17側の面であるガイド壁76の内側面76Aは滑らかに連続した面を形成している。
図6に示すように、本実施形態では、前壁部77は前外側壁72の内側面に一体に形成されている。側壁部78は、前壁部77との境界部において前外側壁72の内側面から後方に向けて突出し、右外側壁74の内側(右方)に隙間を介して配置されている。側壁部78と右外側壁74とは、左右に延びる補強壁79によって互いに結合されている。補強壁79の下縁79Aは、側壁部78側が右外側壁74側に対して下方に位置するように傾斜している。
図2に示すように、前壁部77の下縁77Aは、前外側壁72の内側面に対して後方に凸となる段部を形成している。すなわち、前壁部77の表面(後面)は前外側壁72の内側面に後方にオフセットして配置されている。他の実施形態では、前壁部77の下縁77Aは、前外側壁72の内側面に対して前方に凹となる段部を形成してもよい。すなわち、前壁部77の表面(後面)は前外側壁72の内側面に前方にオフセットして配置されてもよい。
前壁部77の下縁77Aは、側壁部78側(右側)が側壁部78側と相反する側(左側)に対して下方に位置するように傾斜している。前壁部77の下縁77Aの側壁部78側と相反する側の端部は、左右方向においてバルブタイミング可変機構17の回転中心よりも左方向に延び、上壁71に接続している。前壁部77の下縁77Aの側壁部78側の端部は、側壁部78の下縁78Aに接続している。
図4に示すように、前後方向に沿った方向から見て、前壁部77及び側壁部78を含むガイド壁76はバルブタイミング可変機構17のハウジング31と重ならないように配置されている。これにより、前壁部77とハウジング31との干渉を避けつつ、前後方向においてハウジング31と前外側壁72とを近接させることができる。また、前後方向に沿った方向から見て、前壁部77の下縁77Aは、バルブタイミング可変機構17の中心の上方を傾斜しつつ左右に延びている。また、上下方向に沿った方向から見て、前壁部77は前方に凸となるように湾曲し、前壁部77の側壁部78側の端部は、バルブタイミング可変機構17のフロントプレート35の前面よりも後方に延出している。
図6に示すように、側壁部78は、上方から見てチェーンテンショナ60のベース64の上端部64Aと重なる、具体的には交差するように配置されている。側壁部78の下縁78Aは、前後方向における一部に最も下方に位置する突端78Bを備え、突端78Bに向けて傾斜している。突端78Bは、ベース64の上端部64Aの直上方に配置されている。すなわち、突端78Bは、上方から見て側壁部78がベース64の上端部64Aと交差する部分に配置されている。また、突端78Bは上方から見て、吸気スプロケット18の歯部18Aの側方に配置されている。側壁部78の下縁78Aの前壁部77側の端部は、下縁77Aの側壁部78側の端部に接続している。前壁部77の下縁77Aの水平面に対する傾斜角度は、側壁部78の下縁78Aの水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されている。これにより、前壁部77の左右方向における延在長さを、側壁部78の左右方向における延在長さに対して長く設定することが可能になる。また、前壁部77の下縁77Aの水平面に対する傾斜角度が側壁部78の下縁78Aの水平面に対する傾斜角度よりも小さく設定されているため、前壁部77は、ハウジング31との干渉を避けつつ、左右に延在することができ、バルブタイミング可変機構17から飛散する潤滑油を広範囲に亘って捕集することができる。
図1に示すように、側壁部78の突端78Bは、吸気スプロケット18の回転中心よりも下方に配置されている。側壁部78の突端78Bは、吸気スプロケット18とチェーン20とが噛み始める位置の側方に配置されていることが好ましい。
図1及び図3に示すように、チェーンケース6のケース前壁6Aの後面(チェーン室10側の面)には、油ガイド81が設けられている。油ガイド81は、ケース前壁6Aの後面から後方に突出し、吸気スプロケット18の下方を左右に延びた突条部81Aと、突条部81Aの左端から更に後方に突出した突片部81Bと有する。突条部81Aは、チェーンテンショナ60の前方をチェーンテンショナ60と隙間をおいて左右に延び、その左端はチェーンテンショナ60に接触するチェーン20よりも左方に位置している。突条部81Aは、左端側が右端側に対して下方に位置するように水平面に対して傾斜している。突片部81Bの先端(後端)は、チェーン20の上方に位置している。突片部81Bは、先端側が基端側に対して下方に位置するように水平面に対して傾斜している。
以上のように構成した内燃機関1の作用について説明する。図1に示すように、内燃機関1の駆動時には、クランクシャフト7が回転し、クランクスプロケット16とチェーン20によって連結された吸気スプロケット18及び排気スプロケット19が回転し、吸気スプロケット18に対して回転位相を変更可能に設けられたバルブタイミング可変機構17が回転する。
バルブタイミング可変機構17は、特定の作動状態において前面に形成された開口39とボルト42との隙間から潤滑油を外部に排出する。本実施形態では、バルブタイミング可変機構17は、内燃機関1の駆動状態においてハウジング側ピン孔46に供給される潤滑油を、ベーン側ピン孔45及び油排出溝49を介して開口39とボルト42との隙間から外部に排出する。この開口39とボルト42との隙間から排出される潤滑油は比較的圧力が高いため、その一部は開口39から前方に噴出して前外側壁72に付着し、下方に流れる。また、開口39とボルト42との隙間から前方に流出した潤滑油の一部は、バルブタイミング可変機構17の回転に起因する遠心力によって径方向に飛散し、上方に飛散したものは上壁71に付着し、右方に飛散したものはガイド壁76の側壁部78又は前壁部77の側壁部側の部分に付着する。上壁71に付着した潤滑油は、重力によって、或は次々に飛散してくる潤滑油に押されて、一部がガイド壁76の前壁部77及び側壁部78に流れる。
前壁部77に付着した潤滑油は、重力によって下方に流れ、前壁部77の下縁77Aに到達する。下縁77Aに到達した潤滑油は、外前側壁に対して突出した下縁77Aに沿って側壁部78に流れる。詳細には、下縁77Aに対して付着(濡れ)した潤滑油が下縁77Aへの付着を維持するために、潤滑油が下縁77Aの凸形状に沿って流れる。側壁部78に付着した潤滑油は、重力によって下縁78Aに流れ、下縁78Aに沿って最下端に位置する突端78Bに集められる。
また、吸気スプロケット18では、回転によって遠心力が発生し、吸気スプロケット18及び吸気スプロケット18に巻き掛けられたチェーン20に付着した潤滑油が吸気スプロケット18の径方向に飛散する。特に、潤滑油の飛散は、吸気スプロケット18とチェーン20とが噛み合っている範囲において多くなる。本実施形態では、吸気スプロケットの右端部から上端部にかけての範囲で潤滑油の飛散量が多くなる。これは、チェーンに付着した潤滑油が吸気スプロケットと噛み始めたときから遠心力を受けて飛散し始めることに起因する。吸気スプロケット及びチェーン20から飛散する潤滑油は、ガイド壁76の側壁部78及び上壁71に付着する。上壁71に付着した潤滑油の一部は、ガイド壁76の前壁部77及び側壁部78に流れ、下縁77A及び下縁78Aによって突端78Bに集められる。ガイド壁76は、吸気スプロケット18及びバルブタイミング可変機構17から飛散する潤滑油を捕集するために、吸気スプロケット18及びバルブタイミング可変機構17の右方から前方にかけて延在し、特に吸気スプロケット18及びバルブタイミング可変機構17の右上方から前上方にかけて延在している。
また、潤滑油の霧散や跳ね返り等によって右外側壁74及び補強壁79に付着した潤滑油は、重力によって補強壁79の下縁79Aを伝ってガイド壁76の側壁部78に流れ、側壁部78の表面及び下縁78Aを伝って突端78Bに集められる。
突端78Bに集められた潤滑油は、突端78Bから落下して、チェーンテンショナ60のベース64の上端部64Aに供給される。このように、上端部64Aは、突端78Bから落下する潤滑油を受ける油受部として機能する。
ベース64の上端部64Aに供給された潤滑油は、一部が油溝67に沿ってベース64のチェーン側の側面とシュー65の裏面との間に流れ、シュー65及びベース64を冷却し、他の部分がシュー65の表面に流れてシュー65とチェーン20との摺接部を潤滑する。シュー65の表面に流れた潤滑油は、一部が油溝65Bに沿って下方に流れると共に、他の部分がチェーン20に付着して持ち去られる。チェーン20に付着した潤滑油は、下流側に位置する吸気スプロケット18及び排気スプロケット19の接触部を潤滑する。
本実施形態に係る内燃機関1では、ヘッドカバー5のガイド壁76及び上壁71が吸気スプロケット18及びバルブタイミング可変機構17から飛散する潤滑油を捕集し、ガイド壁76からチェーンテンショナ60に潤滑油を供給することができる。ガイド壁76は、バルブタイミング可変機構17の側方から正面にかけて延びているため、バルブタイミング可変機構17から流出し、飛散した潤滑油を広い範囲において捕集することができる。そのため、チェーンテンショナ60に供給可能な潤滑油量が増加する。
ガイド壁76は湾曲して前壁部77及び側壁部78が滑らかに接続しているため、前壁部77に付着した潤滑油が側壁部78に移動することができる。また、前壁部77には、付着した潤滑油を側壁部78に導くための下縁77Aが形成されているため、バルブタイミング可変機構17から流出した潤滑油を前壁部77で捕集して側壁部78に流すことができる。下縁77Aに付着した潤滑油は、濡れによって下縁77Aへの付着した状態を維持するため、凸状の段部に形成された下縁77Aに沿って側壁部78側に流れることができる。
バルブタイミング可変機構17が吸気スプロケット18に設けられているため、バルブタイミング可変機構17の位相変更に起因する荷重がチェーン20に加わり、チェーン20の流れ方向において吸気スプロケット18の上流側に設けられたチェーンテンショナ60とチェーン20との摩擦が発生し易くなる。本実施形態では、バルブタイミング可変機構17及び吸気スプロケット18から飛散する潤滑油をガイド壁76によって捕集し、チェーンテンショナ60に積極的に供給するため、チェーンテンショナ60とチェーン20との摩擦が低減される。
バルブタイミング可変機構17から前外側壁72に直接に飛散した潤滑油、及び上壁71から前外側壁72に流れた潤滑油の大部分は、重力によって前外側壁72の面上を下方に流れ、続いてチェーンケース6のケース前壁6Aの後面上を下方に流れ、油ガイド81に到達する。その後、潤滑油は油ガイド81の傾斜した突条部81Aを伝って左端側に流れ、傾斜した突片部81Bの先端からチェーン20上に落下してチェーン20を潤滑する。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、下縁77Aの形態は、段部に限らず、リブ等の突条や溝等、様々な凹凸形状とすることができる。また、バルブタイミング可変機構17に対向するガイド壁76の前壁部77は、バルブタイミング可変機構17の回転軸線に直交する必要はなく、傾斜していてもよい。例えば、前壁部77の内側面は、側壁部78側に向けて後方に傾斜していると、側壁部78と滑らかに接続することができる。
上下方向から見て、前壁部77がバルブタイミング可変機構17と前後方向に重なりを有することは必須の構成ではなく、同様に側壁部78がバルブタイミング可変機構17と左右方向に重なりを有することは必須の構成ではない。前壁部77及び側壁部78はバルブタイミング可変機構17から潤滑油が飛散する前方及び側方に配置されているとよい。
また、上記実施形態は、駆動スプロケットにクランクスプロケット16、従動スプロケットに吸気スプロケット18を適用した例であるが、駆動スプロケット及び従動スプロケットには、他の様々なスプロケットを適用することができる。例えば、駆動スプロケットはクランクシャフト7の回転力を受けて回転する他のスプロケットであってよく、従動スプロケットは排気スプロケット19や、他のアイドラスプロケットであってよい。回転位相可変機構は、吸気スプロケット18と吸気カムシャフト13との間の回転位相を変化させるものに限らず、排気スプロケット19と排気カムシャフト14との回転位相を変化させるものや、異なる二つのスプロケット間の回転位相を変化させるものであってよい。
また、突端78Bから落下する潤滑油の供給先は、チェーンテンショナ60に限らず、チェーン20や、他のチェーンガイドであってもよい。この場合、突端78Bをチェーン20や他のチェーンガイド等の上方に配置するとよい。