以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、損傷していない新品のタービン用部品の断面の模式図である。損傷していないタービン用部品1の基材10の内表面102(以下、内表面ともいう)上には、ボンドコート11が形成されている。ボンドコート11の表面上には、トップコート12が形成されている。なお、本明細書において、ボンドコート11およびトップコート12を含む層をコーティング層14という。
図2は、実施の形態のタービン用部品の補修方法を概略的に示す工程図である。材質劣化とともに疲労損傷等を受けたタービン用部品を補修して再使用するために、タービン用部品の使用後に、タービン用部品を受入れて、タービン用部品の損傷検査を行う(受入検査工程S1)。図3は、受入検査工程S1で受入れる、損傷しているタービン用部品2の損傷部を拡大した断面の模式図である。熱疲労によって損傷しているタービン用部品2の基材10の外表面101(以下、外表面ともいう)には、損傷部10aが形成されている。さらに、損傷部10aを含む基材10の外表面101上には、自然に形成された酸化層13が形成されている。
なお、本明細書において、特に説明のない限りにおいて、基材の内表面とは、タービンの作動流体と接する表面であり、基材の外表面とは、タービンの冷却流体と接する表面である。
基材10は、例えば、Nimonic263(ヘインズアロイ社製)やハステロイX(ヘインズアロイ社製)などのニッケル基耐熱合金で構成されている。
ボンドコート11は、例えば、NiCoCrAlYなどの合金で構成されている。ボンドコート11は、例えば、高速フレーム溶射(HVOF)、真空プラズマ溶射(VPS)などによって形成される。また、ボンドコート11の表面に積層して形成されたトップコート12は、例えば、微小量のY2O3を含有して安定化したZrO2などのセラミックスで構成されている。トップコート12は、例えば、大気プラズマ溶射(APS)などによって形成される。
受入検査工程S1では、損傷しているタービン用部品2を目視によって観察し、基材10の外表面101に形成されたき裂や高温酸化により生じた減肉などの損傷部10aの有無、損傷部10aの発生箇所などを確認する。さらに、例えば、浸透探傷検査によって、損傷部10aの有無、損傷部10aの発生箇所などを検査する。なお、損傷部10aを確認および検査する前に、損傷しているタービン用部品2に対して、後述する第1の洗浄工程S4で実施する洗浄と同様の洗浄を施してもよい。以下では、損傷部10aがき裂である態様について説明するが、実施の形態においては、このような形態に限定されない。
図4は、酸化層除去工程S2において、酸化層13を除去した基材10の断面の模式図である。受入検査工程S1の後、損傷部10aを有する基材10の外表面101上に形成された酸化層13を除去する(酸化層除去工程S2)。
基材10の外表面101上に形成された酸化層13は、例えば、アルミナなどからなる研磨剤の粒子を高速で吹き付けるブラスト処理などによって除去される。また、ブラスト処理では酸化層13を完全に除去できない場合、酸化層13は、例えば、フッ化水素雰囲気中で熱処理(例えば、温度が1000℃)して還元されることで除去される。
図5は、コーティング層除去工程S3において、コーティング層14を除去した基材10の断面の模式図である。酸化層除去工程S2の後、損傷部10aを有する基材10の内表面102上に形成された、劣化したコーティング層14を除去する(コーティング層除去工程S3)。
タービン用部品の使用で劣化したコーティング層14の除去については、まず、基材10の内表面102上の最も外側に形成されたトップコート12を除去する。トップコート12は、例えば、アルミナなどからなる粒子を高速で吹き付けるブラスト処理などによって機械的に除去される。そして、トップコート12を除去した後、ボンドコート11を除去する。ボンドコート11は、トップコート12と同様に、アルミナなどからなる粒子を高速で吹き付けるブラスト処理などによって機械的に除去される。また、ボンドコート11は、例えば、ボンドコートを除去することの可能な塩酸やリン酸などの溶液を使用する化学処理などで除去されてもよい。
なお、上記では酸化層除去工程S2の後にコーティング層除去工程S3を実施しているが、酸化層除去工程S2とコーティング層除去工程S3とを同時に実施してもよいし、コーティング層除去工程S3の後に酸化層除去工程S2を実施してもよい。例えば、酸化層除去工程S2における酸化層13を除去するためのブラスト処理によって、コーティング層除去工程S3におけるトップコート12またはトップコート12とボンドコート11の除去を行ってもよい。
酸化層およびコーティング層を除去した後、基材10を洗浄する(第1の洗浄工程S4)。第1の洗浄工程S4では、例えば、炭化水素などの有機溶剤を浸み込ませたウエスなどを用いて、基材10の内表面102や外表面101に付着した油分などの汚れを拭き取る。また、基材10を有機溶媒に浸漬させた後、有機溶媒中の基材10を超音波処理して基材10を洗浄してもよい。なお、第1の洗浄工程S4は、実施の形態のタービン用部品の補修方法における必須の工程ではないものの、後述の補修材配置工程S5において、シート状のろう付け補修材15を基材10の表面上に配置するときに、基材10が第1の洗浄工程S4の実施によって洗浄されていることが好ましい。
図6は、補修材配置工程S5において、シート状のろう付け補修材15を外表面101上に配置した基材10の断面の模式図である。第1の洗浄工程S4の後、基材10の外表面101に形成された損傷部10aを覆うように、基材10の外表面101上にシート状のろう付け補修材15を配置する(補修材配置工程S5)。補修材配置工程S5では、例えば、基材10の外表面101に有機溶剤を塗布した後、有機溶剤の塗布面にシート状のろう付け補修材15を貼り付けることにより、シート状のろう付け補修材15を配置する。また、損傷部10aの深さや減肉の程度に応じて、シート状のろう付け補修材15を複数枚積層してもよい。このとき、後述する拡散ろう付け工程S6においてシート状のろう付け補修材15を溶融したときに、少なくとも損傷部10a内をシート状のろう付け補修材15の溶融物で充填できる程度に、シート状のろう付け補修材15が配置される。
図7は、拡散ろう付け工程S6において、ろう付け補修材の溶融固化物17をろう付けした基材10の断面の模式図である。補修材配置工程S5の後、基材10に配置されたシート状のろう付け補修材15を拡散熱処理し、シート状のろう付け補修材15を溶融してシート状のろう付け補修材15の融液を損傷部10aに充填し、ろう付け補修材の融液を固化してろう付け補修材の溶融固化物17を損傷部10aにろう付けする(拡散ろう付け工程S6)。拡散熱処理は、シート状のろう付け補修材15を配置した基材10を真空熱処理炉内に装入して実施される。
シート状のろう付け補修材15は、拡散熱処理によって溶融する低融点のニッケル基溶融合金粉末と、ニッケル基溶融合金粉末よりも融点が高く、かつ、拡散熱処理によって溶融しない高融点のニッケル基非溶融合金粉末とを配合して構成された配合粉末とを含む。シート状のろう付け補修材15の厚さは、例えば、0.5mm〜1.5mm程度である。
シート状のろう付け補修材15は、例えば、次のようにして製造される。まず、有機物系などのバインダーに上記した配合粉末を添加して混合し、混合物を調製する。そして、得られた混合物を、例えばスプレーなどによって、剥離紙に塗布する。続いて、塗布した混合物を、例えばローラなどによって、所定の厚さに圧延し、所定のサイズに切断することで、シート状のろう付け補修材15が製造される。
ニッケル基非溶融合金粉末の融点よりも低融点のニッケル基溶融合金粉末は、例えば、JIS Z3265で規定されているBNi−1、BNi−1A、BNi−2、BNi−3、BNi−4、BNi−5、BNi−6、BNi−7などのニッケル基合金や、Ni−Cr−W−Fe−Si−B系、Ni−Si−B系、Ni−Co−Cr−Mo−Fe−B系、Ni−Cr−B系、Ni−Co−Si−B系などのニッケル基合金などで構成される。
ニッケル基溶融合金粉末の融点よりも高融点のニッケル基非溶融合金粉末は、例えば、Nimonic263(Praxair社製)、ハステロイX(Praxair社製)、IN617(Praxair社製)、IN740(Praxair社製)、IN738LC(Praxair社製)などのニッケル基耐熱合金などで構成される。
シート状のろう付け補修材15について、ニッケル基溶融合金粉末とニッケル基非溶融合金粉末とを合計した質量に対するニッケル基溶融合金粉末の質量は、10以上35%以下であることが好ましい。当該質量比が10%未満の場合には、シート状のろう付け補修材15の溶融時における基材10の外表面101に対するシート状のろう付け補修材15の融液のぬれ性が低下し、シート状のろう付け補修材15の融液が損傷部10aへ十分に充填できないことがある。一方、当該質量比が35%を超えると、シート状のろう付け補修材15の融液のぬれ性が過剰に増加し、シート状のろう付け補修材15の融液が基材10の外表面101から流れ落ちてしまい、損傷部10aに充填されるシート状のろう付け補修材15の融液の量が十分でないことがある。
拡散熱処理において、シート状のろう付け補修材15に含まれるニッケル基溶融合金粉末が溶融し、溶融したニッケル基溶融合金の融液とともにニッケル基非溶融合金粉末が損傷部10aの内部を充填する。融液を冷却した後、ニッケル基溶融合金の融液は固化し、ニッケル基溶融合金の溶融固化物およびニッケル基非溶融合金粉末からなるろう付け補修材の溶融固化物17が損傷部10aを含む基材10の外表面101にろう付けされる。このとき、補修材の溶融固化物17は、損傷部10aの内部を充填している。
シート状のろう付け補修材15の拡散熱処理を真空雰囲気中で施すことで、後述する予酸化工程S8における酸化保護皮膜18の形成の制御を容易かつ精度よく行うことができる。拡散熱処理の条件については、温度が1000℃以上1200℃以下、時間が20分以上1時間以下であることが好ましい。拡散熱処理の温度を1000℃以上1200℃以下とすることで、ニッケル基溶融合金粉末を十分に溶融することができ、溶融したニッケル基溶融合金粉末やニッケル基非溶融合金粉末を構成する原子を基材10内へ拡散させることができる。また、拡散熱処理の時間を20分以上1時間以下とすることで、補修するタービン用部品の温度がほぼ均一になり、各部位で生じている損傷の補修が同時に達成することができる。
なお、上記では、シート状のろう付け補修材15を用いる態様について説明したが、シート状のろう付け補修材の代わりにスラリー状のろう付け補修材を用いてもよい。スラリー状のろう付け補修材は、ニッケル基溶融合金粉末、ニッケル基非溶融合金粉末、有機物系などのバインダーなどを含む。スラリー状のろう付け補修材は、バインダーに、シート状のろう付け補修材15と同様のニッケル基溶融合金粉末およびニッケル基非溶融合金粉末を添加して、例えば、混合機などによって混合することで製造される。
図8は、表面仕上げ工程S7において、外表面101を仕上げ加工した基材10の断面の模式図である。拡散ろう付け工程S6の後、ろう付け補修材の溶融固化物17をろう付けした基材10の外表面101を仕上げ加工する(表面仕上げ工程S7)。仕上げ加工は、基材10の外表面101側に突出したろう付け補修材の溶融固化物17を除去し、基材10の厚さを均一にする。仕上げ加工は、例えば、砥石などを用いたグラインダなどを用いて行う。
図9は、予酸化工程S8において、基材10の外表面101上およびろう付け補修材の溶融固化物17の表面上ならびに内表面102上に、酸化保護皮膜18,19を形成した基材10の断面の模式図である。表面仕上げ工程S7の後、ろう付け補修材の溶融固化物17を熱処理し、ろう付け補修材の溶融固化物17の表面上に酸化保護皮膜18を形成する(予酸化工程S8)。予酸化工程S8では、ろう付け補修材の溶融固化物17の耐酸化性を向上させるために、ろう付け補修材全体を熱処理することにより予酸化させる。ろう付け補修材の溶融固化物17が予酸化されると、酸化保護皮膜18がろう付け補修材の溶融固化物17の表面上に形成される。酸化保護皮膜18は、高温時であっても構造的に安定である。予酸化工程S8におけるろう付け補修材の溶融固化物17の熱処理は、大気中で実施される。例えば、予酸化は、損傷部10aにろう付け補修材の溶融固化物17を充填した基材10を大気炉内に装入して実施される。熱処理の条件については、温度が700℃以上900℃以下、時間が1時間以上2時間以下であることが好ましい。熱処理の条件が上記範囲内であると、表面に強固な酸化保護皮膜が形成され、かつ不要な熱処理の工数が削減できる。なお、予酸化工程S8では、予酸化工程S8の熱処理によって、ろう付け補修材の溶融固化物17の表面上に加えて、基材10の外表面101上および内表面102上にも酸化保護皮膜が形成される。
図10は、酸化保護皮膜除去工程S9において、内表面102上に形成された酸化保護皮膜19を除去した基材10の断面の模式図である。予酸化工程S8の後、予酸化工程S8で形成された基材10の内表面102上の酸化保護皮膜19を除去する(酸化保護皮膜除去工程S9)。酸化保護皮膜除去工程S9は、上述の酸化層除去工程S2における酸化層13の除去の方法と同様に、アルミナなどからなる研磨剤の粒子を高速で吹き付けるブラスト処理や、フッ化水素雰囲気中で熱処理(例えば、温度が1000℃)して還元されることで、酸化保護皮膜19を除去する。
基材10の内表面102上に形成された酸化保護皮膜19を除去した後、基材10を洗浄する(第2の洗浄工程S10)。第2の洗浄工程S10は、上述の第1の洗浄工程S4の洗浄の方法と同様に、炭化水素などの有機溶剤を浸み込ませたウエスなどを用いて、基材10の内表面102や外表面101、酸化保護皮膜18の表面に付着した汚れを拭き取る。また、基材10を有機溶媒に浸漬させた後、有機溶媒中の基材10を超音波処理して基材10を洗浄してもよい。なお、第2の洗浄工程S10は、実施の形態のタービン用部品の補修方法における必須の工程ではないものの、後述のリコーティング工程S11において、リコーティング層22を基材10の表面上に形成するときに、基材10が第2の洗浄工程S10の実施によって洗浄されていることが好ましい。
図11は、リコーティング工程S11において、内表面102上にリコーティング層21を形成した基材10の断面の模式図、すなわち、損傷部10aを補修したタービン用部品3の断面の模式図である。第2の洗浄工程S10の後、酸化保護皮膜19を除去した基材10の内表面102上に、リコーティング層22を形成する(リコーティング工程S11)。リコーティング層22は、ボンドコート20およびトップコート21を含む層である。リコーティング工程S11は、基材10の内表面102上にボンドコート20を形成した後、ボンドコート20の表面上にトップコート21を形成する。リコーティング工程S11で形成されるボンドコート20は、上述のボンドコート11と同様に、例えば、高速フレーム溶射(HVOF)、真空プラズマ溶射(VPS)などにより金属粉末を溶射することによって形成され、NiCoCrAlYなどの合金で構成される。また、リコーティング工程S11で形成されるトップコート21は、上述のトップコート12と同様に、例えば、大気プラズマ溶射(APS)などによって形成され、微小量のY2O3を含有して安定化されたZrO2などのセラミックスで構成される。なお、ボンドコート20の組成は、ボンドコート11の組成と同じであってもよいし、異なってもよい。また、トップコート21の組成は、トップコート12の組成と同じであってもよいし、異なってもよい。
以上の工程を経て、タービン用部品の損傷部の補修が完了する。ただし、本発明の効果を損なわない限りにおいて、既知の工程を適宜追加してもよい。
なお、上記において、基材10の外表面101に形成された損傷部10aが基材10の内表面102に至っていない一例について説明したが、損傷部10aが基材10の内表面102に至っている場合においても、上記した方法と同様の方法で損傷部を補修することができる。
実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用されるタービン用部品としては、例えば、ガスタービンの構成部材であるトランジションピースが挙げられる。図12は、実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用されるトランジションピース30を有するガスタービン90の一部断面の模式図である。
図12に示すように、ガスタービン90は、外気を圧縮する圧縮機60と、圧縮機60で加圧された空気と燃料とを混合して燃焼させる燃焼器ライナ70と、燃焼器ライナ70で生成した燃焼ガスをタービン部80に導くトランジションピース部50と、トランジションピース部50を通過した燃焼ガスにより回転駆動するタービン部80とを備えている。
圧縮機60は、圧縮機ケーシング61内に、動翼62を植設した圧縮機ロータ63を備えている。動翼62は、周方向に複数植設され、軸方向に複数段の動翼翼列を構成している。また、圧縮機ケーシング61の内周には、静翼64が複数配置され、静翼翼列を構成している。そして、静翼翼列と動翼翼列とが軸方向に交互に構成されている。動翼62が回転することで、外部の空気が圧縮されつつガスタービン90内に導かれる。
燃焼器ライナ70は、例えば、カン型の燃焼器からなり、圧縮機60の外周側に均等に複数備えられている。燃焼器ライナ70では、圧縮機60で加圧された空気と燃料とを混合して燃焼させて、燃焼ガスが生成する。
トランジションピース部50は、詳細に後述するが、燃焼器ライナ70の出口側端部に接続され、燃焼器ライナ70からの燃焼ガスを整流しつつタービン部80に導く。
タービン部80は、タービンケーシング81内に、動翼82を植設したタービンロータ83を備えている。動翼82は、周方向に複数植設され、軸方向に複数段の動翼翼列を構成している。また、タービンケーシング81の内周には、静翼84が複数配置され、静翼翼列を構成している。そして、静翼翼列と動翼翼列とが軸方向に交互に構成されている。タービン部80に導入された燃焼ガスは、静翼84を経て動翼82に噴射され、これにより動翼82およびタービンロータ83が回転する。そして、タービンロータ83に連結された発電機(図示しない)において、回転エネルギが電気エネルギに変換される。
次に、トランジションピース部50について説明する。図13は、実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用されるトランジションピース30を有するトランジションピース部50の、燃焼ガスの流れ方向に沿う断面の模式図である。
図13に示すように、トランジションピース部50は、燃焼器ライナ70からの燃焼ガスを内部に流通してタービン部80に導くトランジションピース30と、トランジションピース30の外周を間隙空間を介して覆うように設けられた外筒40とを備える、二重管構造によって構成されている。
外筒40には、圧縮機60からの空気の一部をトランジションピース30の基材10の外表面101に向けて噴出するための複数の噴出孔41が形成されている。圧縮機60からの空気の一部は、冷却空気CAとして機能する。
トランジションピース30の上流側端部(図13ではトランジションピース30の左側端部)は、円形に開口している。この開口端部には、円筒状の燃焼器ライナ70の出口側端部(図13では燃焼器ライナ70の右側端部)が嵌合している。一方、トランジションピース30の下流側端部(図13ではトランジションピース30の右側端部)は、矩形または扇形に開口している。このように、トランジションピース30における、燃焼ガスが流れる方向に垂直な断面の形状は、上流の円形から矩形または扇形に変形している。また、燃焼ガスに曝されるトランジションピース30の基材10の内表面102上には、コーティング層14が形成されている。
外筒40は、トランジションピース30の形状に対応した形状を有し、燃焼器外筒71側の端部(図13では外筒40の左側端部)は、円形に開口し、静翼84側の端部(図13では外筒40の右側端部)は、矩形または扇形に開口している。また、外筒40の燃焼器外筒71側の端部(図13では外筒40の左側端部)には、燃焼器ライナ70の外周を間隙空間を介して覆うように設けられた、円筒状の燃焼器外筒71の出口側端部(図13では燃焼器外筒71の右側端部)が嵌合している。
図14は、実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用されるトランジションピース30の斜視図である。図14に示すトランジションピース30は、発電プラントにおいて長期間に亘って使用されたものである。このトランジションピース30の基材10の外表面101には、き裂や減肉などの損傷部10aが発生している。トランジションピース30の基材10の内表面102上には、コーティング層14が形成されている。コーティング層14は、基材10の内表面102上に形成されたボンドコート、およびボンドコートの表面に積層して形成されたトップコートを備える。
なお、上記説明では、実施の形態の補修方法が適用されるタービン用部品の一例として、トランジションピースを示したが、必ずしもこのようなものに限定されない。実施の形態の補修方法が適用されるタービン用部品としては、ガスタービンの構成部品の中でも、高温の作動流体に曝される高温部品である、燃焼器ライナ、静翼、動翼などが挙げられる。上述したトランジションピース、燃焼器ライナ、静翼、動翼などの基材は、例えばNi基、Co基またはNi−Fe基などの耐熱超合金で形成されている。
なお、実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用される例が静翼および動翼である場合、トランジションピースや燃焼器ライナの構成とは異なり、静翼および動翼の内表面および外表面は、それぞれトランジションピースや燃焼器ライナの外表面および内表面に相当する。つまり、トランジションピースや燃焼器ライナの外表面は、タービンの作動流体と接する表面であり、トランジションピースや燃焼器ライナの内表面は、タービンの冷却流体と接する表面である。それに応じて、トランジションピースや燃焼器ライナを補修する場合には、上記のトランジションピースの外表面に施す各処理を、トランジションピースや燃焼器ライナの内表面に施し、上記のトランジションピースの内表面に施す各処理を、トランジションピースや燃焼器ライナの外表面に施す。
また、実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用される例として、ガスタービン用部品を挙げたが、必ずしもこのようなものに限定されない。実施の形態のタービン用部品の補修方法が適用される例としては、CO2タービン用部品であってもよい。CO2タービン用部品としては、ガスタービン用部品と同様の構成部品が挙げられる。実施の形態のタービン用部品の補修方法は、CO2タービン用部品に適用した場合であっても、ガスタービン用部品に適用した場合と同様の効果を得ることができる。
上記したように、実施の形態のタービン用部品の補修方法によれば、タービン用部品に生じたき裂や減肉などの損傷部にろう付けしたろう付け補修材の溶融固化物を予酸化し、ろう付け補修材の溶融固化物の表面上に積極的に酸化保護皮膜を形成することによって、タービン用部品の損傷部をろう付け補修材によって補修し、損傷部に充填したろう付け補修材の溶融固化物の耐酸化性を向上することができる。さらに、ろう付け補修材に、タービン用部品の基材を構成する材料、またはその材料の組成に近い材料を含ませることで、拡散ろう付け工程後において、ろう付け補修材の溶融固化物で充填された損傷部は基材と同等レベルの機械的強度を有することができる。
以下、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されない。
(実施例1)
タービン用部品として、ガスタービンを備える発電プラントに使用された、管理寿命に到達する前のトランジションピースを用いた。トランジションピースの基材は、ニッケル基耐熱合金から形成されている。トランジションピースの基材について、使用前の組成比(質量比)を表1に示す。なお、基材の内表面上には、基材の表面に形成されたNiCoCrAlY系のボンドコートと、ボンドコートの表面に積層して形成されたジルコニア系のトップコートとを有するコーティング層が形成されている。
はじめに、ガスタービンに使用された管理寿命に到達する前のトランジションピースを受入れて、トランジションピースの損傷検査を行った。基材の外表面にはき裂や高温酸化による減肉などの損傷部が生じていた。続いて、アルミナ粒子を用いたブラスト装置で、基材の外表面上に自然に形成された酸化層を機械的に除去した。このとき、劣化したコーティング層を新しくするため、コーティング層も同時にブラスト装置で除去した。酸化層およびコーティング層を除去した後、基材の内表面および外表面全体を洗浄した。基材の洗浄方法は、有機溶剤を浸み込ませたウエスを用いて、基材表面に付着した油分などの汚れを拭き取った。
次に、損傷部を含む基材の外表面に有機溶剤を塗布した後、損傷部を覆うように、有機溶剤の塗布面にシート状のろう付け補修材を貼り付けた。シート状のろう付け補修材は、以下のように製造した。すなわち、拡散熱処理によって溶融する低融点のニッケル基溶融合金粉末(BNi−5)と拡散熱処理によって溶融しない高融点のニッケル基非溶融合金粉末(Nimonic263)とを配合して得られた配合粉末に、既知のバインダーをさらに配合して、混合物を調製した。そして、調製した混合物を剥離紙に塗布した。剥離紙に塗布した混合物を所定のサイズに圧延し、シート状のろう付け補修材を得た。
そして、ろう付け補修材を貼り付けた基材を真空熱処理炉内に装入し、真空雰囲気中でろう付け補修材の拡散熱処理を施した。拡散熱処理の温度は1000〜1200℃、時間は20分〜1時間とした。拡散熱処理を施すことにより、ろう付け補修材に含まれる高融点のニッケル基非溶融合金粉末は溶融せずに低融点のニッケル基溶融合金粉末は溶融され、ニッケル基溶融合金粉末の融液が冷却されて、ニッケル基溶融合金の溶融固化物およびニッケル基非溶融合金粉末からなるろう付け補修材の溶融固化物が損傷部の内部にろう付けされた。ろう付け補修材の溶融固化物が損傷部にろう付けされた後、砥石を用いたグラインダで基材の外表面を仕上げ加工した。
次に、基材を大気炉内に装入し、ろう付け補修材の溶融固化物に対して大気中で予酸化を施した。予酸化の温度は700℃〜900℃、時間は20分〜1時間とした。予酸化を施すことにより、ろう付け補修材の溶融固化物の表面上および基材の外表面上に高温で安定な酸化保護皮膜を形成させた。その後、予酸化によって基材の内表面上に形成された酸化保護皮膜について、アルミナ粒子を用いたブラスト装置で機械的に除去した。基材の内表面上に形成された酸化保護皮膜を除去した後、有機溶剤を浸み込ませたウエスを用いて、基材の内表面および外表面を洗浄した。その後、酸化保護皮膜を除去した基材の内表面上に、リコーティング層を形成した。こうして、トランジションピースの損傷部を補修した。
損傷部を補修したトランジションピースについて、耐酸化性および機械的強度の評価試験を行った。耐酸化性の評価試験では、評価試験前後の試験片の質量変化量を測定した。すなわち、トランジションピースの各部位を補修した中から3個の試験片を採取し、評価試験前の試験片の質量(m1)を測定した。次に、各試験片に対して電気炉を用いて、800℃で最大1000時間までの大気中で酸化試験を行い、その後、評価試験後の試験片の質量(m2)を測定した。そして、評価試験後の試験片の質量(m2)から評価試験前の試験片の質量(m1)を引いて、試験片の質量変化量(m2−m1)を求めた。また、機械的強度の評価試験では、トランジションピースの各部位を補修した中から3個の試験片を採取し、各試験片の引張強さを測定した。引張強さは、JIS Z 2241に基づいて、同じ試験環境下で実施した。なお、実施例1の試験片は、基材、ろう付け補修材の溶融固化物および酸化保護皮膜を含む。
(比較例1)
実施例1において、予酸化を施さない以外は、実施例1と同じ方法でトランジションピースの損傷部を補修し、実施例1と同じ方法で耐酸化性および機械的強度の評価試験を行った。なお、比較例1の試験片は、基材およびろう付け補修材の溶融固化物を含み、酸化保護皮膜を含まない。
図15は、実施例1および比較例1における、補修したトランジションピースの耐酸化性の評価試験の結果を示すグラフである。比較例1に比べて、実施例1で補修したトランジションピースについては、いずれも質量変化量がほぼ半分に減少した。また、図16は、実施例1および比較例1における、補修したトランジションピースの機械的強度の評価試験の結果を示すグラフである。実施例1で補修したトランジションピースは、比較例1とほぼ同等の引張強さであった。
(実施例2)
実施例1において、管理寿命に到達する前のトランジションピースを用いる代わりに、管理寿命を超過した約40,000時間使用後のトランジションピースを用いた以外は、実施例1と同じ方法でトランジションピースの損傷部を補修し、実施例1と同じ方法で耐酸化性および機械的強度の評価試験を行った。なお、実施例2で用いたトランジションピースのき裂および減肉の深度は、実施例1で用いたトランジションピースに比べて、使用時間が長いため、より深くなっていた。この場合でもトランジションピースの損傷部を補修することができた。さらには、トランジションピースの補修部は、実施例1と同様に、耐酸化性に優れていた。
(実施例3)
実施例1において、管理寿命に到達する前のトランジションピースを用いる代わりに、管理寿命を超過した約50,000時間使用後のトランジションピースを用いた以外は、実施例1と同じ方法でトランジションピースの損傷部を補修し、実施例1と同じ方法で耐酸化性および機械的強度の評価試験を行った。なお、実施例3で用いたトランジションピースのき裂および減肉の深度は、実施例1および実施例2で用いたトランジションピースに比べて、使用時間が長いため、より深くなっていた。
(比較例2)
実施例3において、予酸化を施さない以外は、実施例3と同じ方法でトランジションピースの損傷部を補修し、実施例1と同じ方法で耐酸化性および機械的強度の評価試験を行った。
図17は、実施例3および比較例3における、補修したトランジションピースの耐酸化性の評価試験の結果を示すグラフである。比較例3に比べて、実施例3で補修したトランジションピースについては、いずれも質量変化量がほぼ半分に減少した。また、図18は、実施例3および比較例3における、補修したトランジションピースの機械的強度の評価試験の結果を示すグラフである。実施例3で補修したトランジションピースは、比較例3とほぼ同等の引張強さであった。つまり、実施例3では、実施例1および実施例2と同様に、トランジションピースの損傷部を補修することができ、トランジションピースの補修部は耐酸化性に優れていた。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。