発明の詳細な説明
A.定義
特に明記しない限りは、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
本明細書中で言及する特許、公開されている特許出願、他の刊行物、ならびにGenBankおよび他のデータベースによる配列は全て、関連する技術に関してそれらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
特に明記しない限りは、当業者の能力の範囲内にある本提供の態様の実施では、分子生物学などの従来技術を利用する。そのような技術は、文献の中に十分に説明されている。例えば、以下を参照のこと:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(J.Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989);Current Protocols in Molecular Biology(F.Ausubel et al.eds., 1987、および最新版);Essential Molecular Biology(Brown ed., IRL Press 1991);Gene Expression Technology(Goeddel ed., Academic Press 1991);Methods for Cloning and Analysis of Eukaryotic Genes(Bothwell et al.eds., Bartlett Publ.1990);Gene Transfer and Expression(Kriegler, Stockton Press 1990);Recombinant DNA Methodology(R.Wu et al.eds., Academic Press 1989);PCR:A Practical Approach(M.McPherson et al, IRL Press at Oxford University Press 1991);Cell Culture for Biochemists(R.Adams ed., Elsevier Science Publishers 1990);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Miller & M.Calos eds., 1987);Mammalian Cell Biotechnology(M.Butler ed., 1991);Animal Cell Culture(Pollard et al.eds., Humana Press 1990);Culture of Animal Cells, 第2版(Freshney et al.eds., Alan R.Liss 1987)。
本明細書中で使用する場合は、「一つ(a)」または「一つ(an)」は、「一つ(one)」、「少なくとも一つ」、あるいは「一つまたは複数」を意味する。
本明細書中で使用する場合は、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」は互換的に使用し、これには、リボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の両方、および修飾された核酸分子(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)、および他の修飾された核酸分子(cDNA、ゲノムDNA、およびmRNAを含むがこれらに限定されない)、ならびに合成の核酸分子(例えば、化学合成されるもの、または組換えにより産生されるもの)が含まれる。核酸分子は二本鎖であっても、また一本鎖であってもよい。一本鎖の場合は、核酸分子はセンス鎖であっても、またアンチセンス鎖であってもよい。加えて、核酸分子は環状であっても、また直鎖状であってもよい。
本明細書中で使用する場合は、「制限エンドヌクレアーゼ部位」は、制限酵素により認識され、切断される標的核酸配列をいう。制限酵素は、当該技術分野で周知である。
本明細書中で使用する場合は、「ゲノム」には、全(完全な)ゲノム(例えば、全細胞ゲノム、全ウイルスゲノム、および細胞小器官の全ゲノム)が含まれ、これには、少なくとも1セットの環境条件下で、細胞の生存能力を達成するおよび/または維持するために十分な核酸配列を有している全ゲノムの一部(最小の細胞ゲノム)、生存能力を宿主細胞に依存する生物の、宿主細胞内での生存能力を達成するおよび/または維持するために十分な核酸配列を有している全ゲノムの一部(例えば、最小のウイルスゲノム)、あるいは、宿主細胞内での細胞小器官の機能を達成するおよび/または維持するために十分な核酸配列を有している全ゲノムの一部(最小の細胞小器官のゲノム)が含まれる。したがって、用語ゲノムは、全ゲノム、および少なくとも最小ゲノムであるその一部をいう。特定の環境条件と、ゲノムにより生じるかまたは維持される特性は特別なものであり得る。細胞小器官もしくはウイルスゲノム、または増殖および生存能力を宿主に依存する他のゲノムの場合には、環境条件に、適している機能性の宿主細胞の環境が含まれ得る。したがって、用語ゲノムには、最小ゲノムおよび最小複製性ゲノム(minimal replicative genome)、ならびに、そのような最小ゲノムの中で見られる核酸配列より長いさらなる核酸配列を含むが、全ゲノムの中に存在する核酸配列を全て含むわけではないさらなる核酸配列を含むゲノムが含まれる。用語「ゲノム」には、自然界に存在している自然界に存在しているゲノムおよび合成のゲノムが含まれ、自然界には、または研究室にはこれまでは存在していなかったゲノムのような遺伝学的に変更された(修飾されたゲノム、および2種類以上の種に由来する核酸および/またはゲノムの一部を含むハイブリッドゲノムを含む)ゲノムが含まれる。用語「ゲノム」には、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリアゲノムおよび葉緑体ゲノム)、自己複製する生物(原核生物および真核生物、真菌、酵母、細菌(例えば、マイコプラズマ)、古細菌、脊椎動物、哺乳動物、ならびに他の生物を含む)のゲノム(細胞ゲノム)、ならびに、ウイルスゲノムおよび増殖を宿主に依存する他のゲノムが含まれる。ゲノムにはさらに、任意の公知のLinneanカテゴリーには入らない生物のゲノム、および合成の生物のゲノムが含まれる。例示的なゲノムは、細菌および酵母を含む単細胞生物のゲノムのような微生物のゲノムであり得る。
本明細書中で使用する場合は、「細胞ゲノム」は、細胞の生存性を生じるおよび/または維持するために十分な核酸配列を含むゲノムをいう。そのような核酸配列には、複製、転写、翻訳、エネルギー生産、輸送、膜および細胞質成分の産生、ならびに細胞分裂に必要な分子をコードする核酸配列が含まれる。細胞ゲノムとしては、最小の細胞ゲノム、全細胞ゲノム、および最小の細胞ゲノムに加えてさらなる核酸を有しているが、全細胞ゲノムの核酸の全てではないゲノムが挙げられる。少なくとも、細胞ゲノムは、細胞の複製および/または生存能力に十分な核酸を含むが、ウイルスゲノムおよび細胞小器官ゲノムは、例えば、宿主細胞の中でウイルスもしくは細胞小器官を維持するかまたは複製するために必要な核酸を含むが、宿主細胞の生存能力もしくは複製を維持するための核酸を含まない点で、細胞ゲノムは、「ウイルスゲノム」および「細胞小器官ゲノム」とは異なる。
本明細書中で使用する場合は、「最小ゲノム」は、少なくとも1セットの環境条件下で、細胞の生存能力を達成するおよび/または維持するために十分な核酸の最小のセット(最小の細胞ゲノム)、生存能力を宿主細胞に依存する生物の、宿主細胞内での生存能力を達成するおよび/または維持するために十分な核酸の最小のセット(例えば、最小のウイルスゲノム)、あるいは、宿主細胞内での細胞小器官の機能を達成するおよび/または維持するために十分な核酸の最小のセット(最小の細胞小器官のゲノム)からなるか、あるいは本質的にそれらからなるゲノムをいう。さらに、細胞小器官の全ゲノムが、必ずしも細胞小器官を持続させるために必要な全てのタンパク質をコードするというわけではないこと、そしてそれらのタンパク質のうちのいくつかが、細胞小器官を含む細胞の核内の遺伝子によりコードされることが理解される。したがって、最小の細胞小器官のゲノムには、細胞の環境内での細胞小器官の機能に必要なそのような遺伝子だけが必要である。同様に、ウイルスは、生存能力を宿主細胞に依存すること、したがって、必要な最小のウイルスゲノムは、宿主細胞内のウイルスの生存能力をサポートするにすぎないことが理解される。「最小の複製性ゲノム」は、生存のために十分な最小の核酸配列に加えて、さらに、細胞または生物の自己複製のために十分な核酸配列を含む最小ゲノムである。
本明細書中で使用する場合は、合成のゲノムまたはその全体もしくは一部を含む合成の核酸配列は、インビトロで化学合成された遺伝学的成分またはそのような成分のコピーから構築する。上記コピーは、当該技術分野で公知であるように、多数の方法のうちの任意のものにより産生することができ、これには、インビボまたはインビトロでの方法によるクローニングおよび増幅が含まれる。完全に合成の核酸配列またはゲノムは、核酸全体もしくはゲノム全体がインビトロで化学合成されたもの、あるいは、そのようなインビトロで化学合成された核酸のコピーから産生されたかまたはアセンブリされたものである。対照的に、一部が合成の核酸配列またはゲノムは、遺伝学的成分の一部が、自然界に存在している核酸からクローニングした核酸を含む自然界に存在しているものである、合成のゲノムである。
本明細書中で使用する場合は、外来または異種のゲノムまたは核酸配列は、宿主細胞中に存在するが、宿主細胞とは異なる種のものであるドナー生物に由来する、ゲノムまたは核酸配列である。ドナー生物は、様々な属、目、界、または他の遺伝学的分類のものであり得るか、あるいは単純に、同じ属の異なる種であり得る。
本明細書中で使用する場合は、「標的核酸配列」は、例えば、本明細書中に記載する、当該技術分野で公知の修飾方法による修飾のために標的化される核酸配列をいう。標的核酸配列の一つまたは複数の修飾は、標的核酸配列中への一つまたは複数の突然変異、一つまたは複数の欠失、一つまたは複数の置換、および/または一つまたは複数の挿入の導入を含む。標的領域は、修飾の対象である単一の遺伝子座、多数の遺伝子座、またはその一部のような標的核酸配列の特定の領域である。一つの例においては、標的領域は、例えば、相同組換えによるように、別の核酸配列で置き換えた標的核酸配列の領域を含む。標的核酸配列の修飾後に、修飾した核酸配列中の標的領域全体が、もとの標的領域と比較して修飾されていることは必ずしも必要ではない。例えば、標的領域の修飾には、標的領域の中の一つの標的位置/残基での単一の挿入、欠失、または置換が含まれていてもよく、また、標的領域の一つまたは複数の標的部分の中の多数の位置/残基の修飾が含まれていてもよい。
B.ゲノムおよび大きな核酸のクローニングおよび操作のための方法
ドナーゲノムと他のドナー核酸配列とを異種宿主細胞に導入するための、ドナーゲノムと核酸配列とを宿主細胞の中で修飾するための、ドナーゲノムと核酸配列とを宿主細胞から回収するための、および回収したドナーゲノムと核酸配列とをレシピエント細胞に導入するための、核酸、方法、ならびにシステムを本明細書中で提供する。ドナー、宿主、およびレシピエントの核酸配列、細胞、および遺伝子システムの間での不和合性、および/または例えば、それらの間での毒性を最小限にする局面が、提供する核酸配列、方法、およびシステムの範囲に含まれる。本提供の方法の一つの例示的な態様を図1に説明する。ここでは、上記方法を、酵母宿主細胞を細菌のドナーゲノムで形質転換するために、上記細菌のドナーゲノムを、酵母宿主ベクターと連結し、酵母宿主細胞の中でドナーゲノムを修飾し、そしてこの修飾したドナーゲノムを細菌のレシピエント細胞に移植し、それによって変更した細菌を作製することにより使用する。図1に示すように、変更した細菌中に存在する修飾したゲノムを単離し、これに続いて行う反復様式での一連の方法においてドナーゲノムとすることができる。この態様の多数のバリエーションを検討し、これらは本明細書中に記載するように、本出願の範囲に含まれる。本提供の方法の別の例示的な方法を図16に説明する。ここでは、上記方法を、宿主酵母ベクターを細菌のゲノムに挿入するため、組込み型酵母ベクターを用いてゲノムを単離するため、細菌のゲノム/酵母ベクターを用いて酵母宿主細胞を形質転換するため、細菌のゲノムを修飾するため、修飾したゲノムを単離するため、任意で、上記ゲノムをメチル化するため、そしてドナーゲノムをレシピエント細胞に移植するために使用する。
実施例5は、ドナーである細菌のゲノムで酵母宿主細胞を形質転換すること、ドナーゲノムを酵母細胞の中で修飾すること、その後、得られた修飾したドナーゲノムをレシピエント細胞に移植することによる(その際、修飾したドナーゲノムからの遺伝子発現が誘導された)、新しい細菌生物を作製するための本提供の方法の優れた組み合わせを記載する。結果を、ネガティブコントロールと、レシピエント細胞中のゲノムの配列決定により確認した。この実験は、その利用できる天然の遺伝子システムを使用する当該技術分野の方法の最新技術を使用してもマイコプラズマの中で作製することができなかった、III型制限酵素遺伝子のシームレスな欠失を含むM.ミコイデスLCゲノムの作製の成功を明らかにした。移植により、研究室にも、また自然界にもこれまでに存在していなかったM.ミコイデスLC株が得られた。したがって、本提供の方法は、変更しようとするゲノムをコードする細胞の外での遺伝学的変更をうまく行うために使用することができる。
例えば、有用な化合物(例えば、ワクチン、薬物、生物学的に産生したタンパク質または化学物質、およびバイオ燃料)を産生できるように生物を変更し、変化させるための、ゲノムおよび大きな核酸を操作するための方法およびツール、ならびに得られる細胞を提供する。特に、これらの方法は、エネルギー生産および医薬剤に有用な産物などの新しい遺伝子産物を産生する修飾した遺伝子、ゲノム、および生物を生じさせるための、扱いにくい生物などの乏しい遺伝子システムを有している生物のゲノムおよび染色体の操作に必要である。
本出願の以前は、ゲノムおよび他の大きな核酸の操作に利用できる方法は限られていた。望ましい特性/特徴/表現型(例えば、有用な化合物を産生する能力および厳しい環境で機能する能力)を持つ多くの生物(原核生物のような単細胞生物を含む)は、極めて乏しい遺伝子システムを有するか、または存在しない遺伝子システム(研究室において生物の核酸の修飾を可能にするシステム)を有する。したがって、本開示は、これらのゲノムおよび核酸を、より望ましい遺伝子システムを有する他の細胞(宿主細胞)に移入するために、ならびに、望ましいシステムを使用してゲノムおよび核酸をこれらの他の細胞の中で修飾するために必要な方法とツールを提供する。
修飾した核酸から新しい遺伝子産物を産生させるために、本発明はまた、修飾した核酸を、宿主細胞から遺伝子産物を発現することができる環境(例えば、適切なレシピエント細胞)に移植するための方法も提供する。宿主細胞中での発現が十分である場合もあるが、例えば、ドナーゲノムを宿主細胞から、天然のまたは合成のドナーゲノムが由来するもとのドナー細胞または生物のものにより近いように複製する細胞環境を有するレシピエント細胞へと移植することが所望される場合がある。一般的には、ゲノムおよび他の核酸(特に、大きな核酸)を操作し、変更するために使用することができる、改良した移入、クローニング、修飾、および移植の方法、核酸、ならびにシステムを、本明細書中で提供する。
同様に、本出願の以前は、利用できる方法による、宿主細胞への大きな核酸(ゲノムを含む)の移入は限られていた。核酸をクローニングするための従来の方法は周知である(優れた遺伝子システムを有している細菌および酵母を、多数の生物から核酸セグメントをクローニングするための宿主として使用する)が、これらの方法に伴う限界により、これらは、ゲノムおよび大きな核酸の操作および変更に望ましくないものとなり得る。例えば、従来の方法を使用して宿主細胞にクローニングすることができる核酸の大きさは限られている。従来の方法によりクローニングした核酸は、一般的には、数種類より多くの遺伝子を含まない。
不和合性と毒性の問題もまた、利用できるクローニング方法を限定し得る。例えば、ドナー核酸は宿主細胞にとって毒性であり得(例えば、毒性タンパク質がドナー核酸により発現される場合)、そして宿主の遺伝子システムを使用する宿主細胞の複製および/または修飾のような事象の間に不安定になる可能性がある。そのような事象は、宿主細胞の中で核酸を操作する能力を限定し得る。さらに、修飾プロセスの間に起こり得る、ドナーゲノムにとって望ましくない修飾が、多くの場合に、宿主細胞の生存能力に対してネガティブな影響を有さないという事実は、宿主細胞中のドナーゲノムおよび他の核酸を不安定にする可能性がある。
不和合性の問題もまた、宿主細胞から、遺伝子産物の発現のためのより自然な環境へと(例えば、ドナーと同じ種またはより近い関係にある種のレシピエント細胞へと)ドナーゲノムを戻す効率的な移植を損なう可能性がある。中でも、遺伝学的に異なる宿主細胞(例えば、もとのドナーゲノムの種とはより異なるレシピエント細胞への移植のための酵母宿主細胞)の中でドナー核酸(ゲノムを含む)の増殖および修飾をうまく行うためにそのような問題を克服する修飾方法が、提供する態様である。
宿主細胞からのドナーゲノムの回収と、ドナーゲノムのレシピエント細胞へのさらなる導入(ドナー、宿主、およびレシピエント細胞は、あまり近い関係にはない(例えば、生命の異なる分岐に由来する)場合)は、さらなる課題を引き起こす場合がある。例えば、原核生物レシピエントへの真核生物宿主中で増殖させたドナーゲノムの導入は、不和合性と毒性の問題により限定され得る。レシピエント細胞中に存在する(ドナー細胞中にもおそらく存在する)が、宿主細胞中には存在しない制限修飾システムは、ドナーゲノムを宿主細胞の中で増殖させると、移植の際に不和合性を引き起こす可能性がある。一部の宿主細胞(例えば、酵母)は制限修飾システムを含まないが、これらは、宿主細胞中で増殖されつつあるドナー核酸を修飾することができるDNAメチルトランスフェラーゼを発現することができ、それにより、レシピエント細胞に移植すると、ドナー核酸(例えば、ゲノム)の活性化を阻害する。宿主細胞中での増殖および修飾後に単離したドナーゲノムの構造と立体構造もまた、ドナー生物とより近い関係にある細胞の中で増殖させた同じゲノムの立体構造および構造とは異なる可能性がある。このような差異は移植にネガティブな影響を及ぼし得る。
ドナーゲノムのクローニング、宿主細胞中でのドナーゲノムの修飾および/または増殖、ドナーゲノムの回収、ならびにレシピエント細胞へのドナーゲノムの導入をうまく行うことについてのそのような制限を克服する方法を、本明細書中に記載する。一つの局面においては、宿主細胞から回収したドナーゲノムを、遺伝学的に異なるレシピエント細胞に(例えば、真核生物宿主から原核生物レシピエントに)導入する。
ドナー核酸配列(例えば、ドナーゲノム)を選択し、合成し、アセンブリし、および/または単離し(例えば、ドナー細胞から)、そして宿主細胞にクローニングする。これらの方法は、一つまたは複数の断片としてドナーゲノムを合成するか、またはドナー細胞からドナーゲノムを得る工程、およびドナーゲノムと宿主ベクターとを異種宿主細胞に導入する工程を含む。ここで、上記宿主細胞への導入の前に上記ドナーゲノムと上記宿主ベクターとを任意で連結し、それにより、上記宿主ベクターを含む上記ドナーゲノムを含む宿主細胞を作製する。さらに、上記ドナーゲノムは、本質的に、インタクトな細胞ゲノム、ウイルスゲノム、または細胞小器官ゲノムであり、これは、少なくとも最小ゲノムであり、かつ約300kbを上回る長さである。
第1の態様は、典型的には、ドナーゲノムを含有している細胞への宿主ベクターの導入、ドナーゲノムの宿主ベクターへの連結、宿主ベクターを含むドナーゲノムの回収、および宿主細胞の形質転換を含む。その結果、宿主ベクターを含むドナーゲノムは、宿主細胞の複製の間、宿主細胞の中で維持される。
第2の態様においては、宿主ベクターと直線化したドナーゲノムとで宿主細胞を同時形質転換する。この場合、宿主ベクターとドナーゲノムは、宿主細胞の中で相同組換えにより連結される。
第3の態様においては、重複しているDNA断片(天然のものまたは合成のもの)と宿主ベクターとで宿主細胞を同時形質転換する。この場合、宿主ベクターとDNA断片は、宿主細胞の中で相同組換えにより連結される。
本発明の方法で使用しようとするドナーゲノムは、本質的に、全細胞ゲノム、全ウイルスゲノム、または細胞小器官の全ゲノムであり得る。
ドナーゲノムと宿主ベクターとを、同時に、またはいずれかの順序で連続して宿主細胞に導入することができる。一つの態様においては、宿主ベクターは、ドナーゲノムを含むドナー細胞を宿主ベクターで形質転換することにより、宿主細胞への導入の前に、ドナーゲノムと連結させる。
本発明の態様で使用するための宿主細胞は、真核細胞であってよく、また原核細胞であってもよい。宿主細胞としては、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、または藻類細胞が挙げられるが、これらに限定されない。宿主細胞としてはまた、酵母細胞も挙げられる。
宿主ベクターは、相同組換えに有用なベクターである。本発明の態様で使用するための宿主ベクターは、セントロメアプラスミドであり得る。一つの態様においては、宿主ベクターは酵母セントロメアプラスミドであり、宿主細胞は酵母細胞である。
本発明の態様での使用について企図されるドナーゲノムは、例えば、細菌ゲノム、真菌ゲノム、酵母ゲノム、古細菌ゲノム、シアノバクテリアゲノム、藻類ゲノム、バクテリオファージゲノム、ミトコンドリアゲノム、葉緑体のゲノム、ウイルスゲノム、細胞小器官ゲノム、または合成ゲノムであり得る。
別の局面においては、上記方法はさらに、ドナーゲノムを宿主細胞内で修飾する工程を含む。
別の局面においては、上記方法はさらに、宿主細胞から宿主ベクターを含むドナーゲノム回収する工程を含む。
別の局面においては、上記方法はさらに、回収したドナーゲノムをレシピエント細胞に導入する工程を含む。
なお別の局面においては、上記方法はさらに、レシピエント細胞の内因性ゲノムを分解するまたは除去する工程を含む。
任意で、回収したドナーゲノムを、レシピエント細胞への導入の前にメチル化することができる。
任意で、レシピエント細胞の制限エンドヌクレアーゼ機能は、存在しないか、除去されているか、または不活化されている。
本発明の態様での使用について企図されるレシピエント細胞は、例えば、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、または藻類細胞であり得る。
なお別の局面においては、上記方法はさらに、第2のドナーゲノムを宿主細胞に導入し(ここでは、第2のドナーゲノムは第1のドナーゲノムとは異なる)、それにより、2種類の異なるドナーゲノムを含有している宿主細胞を得る工程を含む。第2のドナーゲノムの導入には、第1のドナーゲノムを含有している宿主細胞と、第2のドナーゲノムを含有している第2の宿主細胞とを接合させることが含まれ得る。回収したドナーゲノムをレシピエント細胞へ導入することにより、レシピエント細胞の表現型を、任意の修飾を組み入れているドナーゲノムに対応する表現型へと形質転換することができる。
本明細書中に記載する方法のいずれかにより産生した、単離した細胞、合成の細胞、または組換え細胞を、本明細書中で提供する。
ドナーゲノムによりコードされる表現型を示す細胞を作製するためのプロセスを本明細書中で提供する。上記プロセスは、以下の工程を含む:(a)宿主ベクターを含むドナーゲノムを含有している産物が得られるように、宿主細胞に、ドナーゲノムと、上記宿主細胞中での上記ドナーゲノムのクローニングに適している宿主ベクターとを導入する工程;(b)工程(a)で得た宿主ベクターを含むドナーゲノムを含む産物を宿主細胞から回収する工程;(c)(b)の産物を、レシピエント細胞が上記産物によりコードされる表現型を示すようになる条件下で、レシピエント細胞に導入する工程;および(d)工程(c)により得られた細胞を回収する工程。ここでは、ドナーゲノムは、本質的に、インタクトな細胞ゲノム、ウイルスゲノム、または細胞小器官ゲノムであり、これは、少なくとも最小ゲノムであり、かつ約300kbを上回る長さであり、かつドナーゲノムは、該ドナーゲノムによりコードされる表現型をレシピエント細胞が示すのに必要な核酸材料の最小限の構成要素を含む。一つの局面においては、上記方法はさらに、宿主細胞中で(a)のドナーゲノムを修飾する工程を含む。別の局面においては、上記方法はさらに、レシピエント細胞の内因性ゲノムを分解するかまたは除去する工程を含む。なお別の局面においては、上記方法はさらに、宿主細胞中で(a)のドナーゲノムを修飾する工程と、レシピエント細胞の内因性ゲノムを分解するかまたは除去する工程とを含む。
ドナーゲノムによりコードされ、そうでなければその細胞が示すことがない所望の表現型を示す細胞を本明細書中で提供する。ここでは、上記細胞は、本明細書中に記載するプロセスにより産生される。
ドナーゲノムを含む細胞であって、ドナーゲノムによりコードされ、そうでなければその細胞が示すことがない所望の表現型を示す細胞もまた、本明細書中で提供する。ここでは、上記ドナーゲノムは、300kbより大きい外来ゲノムの核酸材料と、所望の表現型を細胞が示すのに必要なゲノムの最小限の構成要素とを含む。
上記修飾方法およびツールは、修飾の間の宿主細胞内でのドナー核酸配列の不安定性のリスクを最小限にする局面を含む。第3の態様においては、ドナー核酸配列を、宿主細胞からレシピエント細胞に移植する。レシピエント細胞は、ドナー細胞および宿主細胞とは異なる種および/または異なる生命の分岐のものであり得るか、あるいは、ドナー細胞と同じ種のものであり得る。移植方法は、ドナーゲノム、宿主細胞、およびレシピエント細胞間での不和合性ならびに毒性のリスクを最小限にする局面を含む。
移入方法、修飾方法、および移植方法は別々に行うことができ、また、組み合わせて連続して行うこともできる。したがって、一つの態様においては、ドナーゲノムを宿主細胞に移入し、宿主細胞内で修飾し、レシピエント細胞に移植して新しい細胞を作製し、それにより、研究室にも、また自然界にもこれまでは存在しなかったゲノムまたは細胞を作製する方法において、3つの工程を組み合わせることができる。レシピエント細胞を、これまでには存在しなかった非ヒト生物になるように増殖させることができ、また、これまでには存在しなかった非ヒト生物に導入することもできる。したがって、本提供の方法、核酸、およびシステムを、新しい生物を産生するために使用することができる。新しく作製した生物およびその核酸配列もまた提供する。
本提供の方法および組成物は、遺伝学的に扱いにくい生物由来のゲノムを操作および変更するために特に有用である。一つの例においては、上記方法、核酸配列、およびシステムは、マイコプラズマ・ゲニタリウム、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、およびマイコプラズマ・ミコイデス(Mycoplasma mycoides)LC由来の細菌の全ゲノムを、酵母の中で環状のセントロメアプラスミドとしてクローニングするために、不和合性を最小にする修飾を有している酵母の遺伝子システムを使用して酵母の中でドナーゲノムを修飾するために、およびさらに、修飾した細菌のゲノムを、異なる種のレシピエント細胞に移植し、それにより、研究室にも、また自然界にもこれまでは存在していなかったゲノムおよび生物を作製するために、使用する。
本提供の方法、核酸配列、システム、および生物は、バイオ燃料を合成するように生物を変更するために使用することができる。例えば、細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli))を遺伝学的に修飾することができるが、産業的に有用な化合物を産生するか、または厳しい環境で機能する可能性を有している多くの原核生物は、極めて乏しい遺伝子システムを持つか、または遺伝子システムが存在しない。中でも、プロクロロコッカス・マリヌス(Prochlorococcus marinus)は、地球上に最も豊富に存在する光合成生物である。バイオ燃料を産生するようにこの生物および他のそのような生物を操作および変更することが望ましいが、そのような生物を操作および変更する能力は、それらを遺伝学的に変化させるために利用できる方法がないことにより限定される。本提供の方法を、そのような操作を実行するために使用することができる。例えば、一つの態様においては、新しい代謝経路の成分をコードする核酸配列を、宿主細胞への導入およびその中での修飾により、そのような生物のゲノムに導入することができる。そのように再度変更したゲノムを、新しい細胞(例えば、太陽光と二酸化炭素をバイオ燃料に転換することができる新しい細胞)を得るために、適切なレシピエント細胞に移植することができる。そのように変更した細胞および生物もまた、本明細書中で提供する。
本提供の方法はまた、古細菌の変更、真核生物への新しい細胞小器官のクローニング、ならびに、細胞および生物への染色体の付加にも有用であり得る。例えば、真核生物のミトコンドリアおよび葉緑体は、それらの宿主の中に捕捉された内共生細菌の名残である。本提供の方法は、相同組換えを使用して、宿主の中でそのような細胞小器官のゲノムを変更するために(例えば、プラスミドを使用して酵母中で)使用することができ、それにより、例えば、酵母または藻類の中で、エネルギー生産効率および/または代謝が改善された新しいミトコンドリアおよび葉緑体のゲノムを作製することができる。
別の態様においては、本提供の方法は、ウイルス(例えば、単一のプラスミドの中での操作には大きすぎる大きなゲノムを持つもの)を、治療上の用途を有しているウイルスおよびバクテリオファージが得られるように操作するために使用することができる。一つの局面においては、ウイルスゲノムをクローニングし、操作して、それらの免疫原性および他の治療上の利点を改善する。
別の態様においては、本提供の方法は、例えば、ワイン、パン、ビール、および医薬剤の産生に有用な真菌が得られるように、真菌を操作するために使用することができる。一つの局面においては、真菌のゲノムを、それらの温度に対する耐性、病原生物、および他の利点を改善するように、クローニングし、操作する。別の態様においては、本提供の方法は、エタノール燃料、栄養補助剤、プロバイオティックに有用な酵母、飲料(アルコール飲料および非アルコール飲料)の産生のためのまたはパン焼きにおける使用のための醗酵に有用な酵母が得られるように、酵母を操作するために使用することができる。
特定の態様を本明細書中に提供するが、本発明の方法およびプロセスは、対象となる任意の所望の表現型または産物を得るために使用することができる普遍的なツールである。
本発明の方法およびプロセスは、自動化しやすく、また、ハイスループット法にも適応しやすく、例えば、ヒトの介入が必要ないコンピューターに媒介される方法および/またはロボットによる方法により、多数の核酸分子を連結し、宿主またはレシピエント細胞を同時に形質転換することができる。
したがって、本発明は、ゲノムを含む核酸分子の、ハイスループット様式での効率的かつ広範囲に及ぶアセンブリ、クローニング、修飾、および形質転換を可能にし、ロボットによる実行に容易に適応することができる、体系的方法とその産物に関する。別の態様においては、核酸のアセンブリ反応を、マイクロ流体工学を使用した反応チューブの中で(例えば、チップ上で)の反応に対抗するものとして、固体上表面で行うことができる。
C.ドナーゲノムおよび核酸の選択および単離
本提供の方法の最初の工程において、ドナーゲノムまたは他の核酸配列を、移入、修飾、および/または移植のために選択する。本明細書中に記載する方法により移入する、修飾する、移植する、そして作製する核酸配列は、任意の天然または合成の生物のものであり得る。したがって、ドナーゲノムは、任意の所望の細胞、またはその任意の核酸を含むサブユニットからの、単離または化学合成のいずれかに由来する。例えば、核酸配列としては、ゲノム(例えば、全ゲノム、全ゲノムの一部分(例えば、少なくとも最小ゲノムおよび/または少なくとも最小の複製性ゲノム、細胞ゲノム、細胞小器官ゲノム、およびウイルスゲノム))、染色体、および既知の生物および新しい生物由来の他の大きな核酸配列が挙げられる。ゲノムを含む核酸配列は、生物の中にある任意の供給源のものであり得、これには、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリアゲノムおよび葉緑体ゲノム)、染色体、植物および動物、藻類である供給源のゲノムまたは染色体の一部分、ならびに、細胞の生存能力をサポートする任意の遺伝学的材料(細菌および他の原核生物および真核生物の全細胞ゲノムならびに最小の細胞ゲノムを含む)が含まれる。
以下の実施例の概要と、本明細書中に提供する考察から、本記載の方法の適用性が、自然界に存在しているものを模倣する合成のゲノムを構築することに限定されないことが明らかである。上記方法は、例えば、自然界にも、また研究室にもこれまでは存在していなかった新しいゲノムおよび生物を作製するために、同じDNA分子において様々な生物のゲノムの部分を連結するために使用することができる。ドナーゲノムおよび他の核酸をクローニングし、増殖させ、および/または細胞(例えば、細胞または組織(遺伝学的に変更された生物を含む))から単離することができるか、あるいは、インビトロで化学合成することができる。核酸およびゲノムを単離し、調製するための方法を以下に記載する。
i.ドナー生物、ゲノム、および他の核酸
本提供の方法で使用し、作製するゲノムおよび他の核酸配列(例えば、ドナー核酸)としては、真菌、酵母、細菌、他の原核生物、および藻類に由来するものが挙げられるが、そのような生物に限定されない。これらは、任意の生物の、天然のものであっても、合成のものであってもよい。例えば、原生生物界、古細菌界、真正細菌界、真菌界、植物界、および動物界の生物、ならびに、バクテリオファージを含むウイルスのものであり得る。
例示的な核酸配列は、細菌、古細菌、シアノバクテリア(例えば、プロクロロコッカス・マリヌス、シネコシスティスPCC6803など)、藻類、ウイルス(例えば、ヘモフィルス・インフルエンゼのゲノム)、真菌(例えば、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロミセス・ボウラディ(Saccharomyces boulardii)、アカパンカビ(Neurospora crassa)など)、およびバクテリオファージ由来の核酸配列である。例示的なマイコプラズマ株としては、以下が挙げられる:マイコプラズマ・ゲニタリウム(例えば、実施例1に記載するM.ゲニタリウムMS5株、M.ゲニタリウムG37(GenBank No.L43967))、マイコプラズマ・ミコイデス(例えば、M.ミコイデス亜種ミコイデスラージコロニー(LC)GM12株(実施例1)、マイコプラズマ・カプリコルム(Mycoplasma capricolum)亜種カプリコルム(California Kid(商標)株)(ATCC 27343)、マイコプラズマ・ミコイデス亜種ミコイデス(GM12株)(Damassa et al., 1983)、マイコプラズマ・カプリコルム亜種カプリコルム(M.カプリコルム(M.capricolum))(例えば、野生型M.カプリコルムおよびM.カプリコルム突然変異体(M.カプリコルム-ΔRE)、およびマイコプラズマ・ニューモニエ(例えば、M.ニューモニエM129-B170株(ATCC 29343);M.ニューモニエM129, GenBankアクセッション番号U00089.2(GI:26117688))、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)(ATCC 15302)、マイコプラズマ・ニューモニエEaton(ATCC15531)、ならびにそれらの派生物。
例示的なゲノムおよび核酸としては、そのゲノム配列を公に入手することができ、本開示の方法とともに使用することができる多数の生物の全ゲノムおよび部分的なゲノムが挙げられる。例えば、以下の生物の核酸であるが、これらに限定されるわけではない:アエロピュルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix);アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens);アナベナ(Anabaena);ガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae);ミツバチ(Apis mellifera);アクイフェクス・エオリクス(Aquifex aeolicus);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana);アルカエオグロブス・フルギドゥス(Archaeoglobus fulgidus);アシュビア・ゴシッピー(Ashbya gossypii);炭疽菌(Bacillus anthracis);セレウス菌(Bacillus cereus);バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans);バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis);枯草菌(Bacillus subtilis);バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis);バクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron);バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae);バルトネラ・クインターナ(Bartonella quintana);ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(Bdellovibrio bacteriovorus);ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum);ブロヒマニア・フロリダヌス(Blochmannia floridanus);ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica);ボルデテラ・パラペルツッシス(Bordetella parapertussis);ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis);ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi);ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum);マルタ熱菌(Brucella melitensis);ブルセラ・スイス(Brucella suis);ブフネラ・ アフィディコラ(Buchnera aphidicola);バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei);バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei);ブリグサ線虫(Caenorhabditis briggsae);線虫(Caenorhabditis elegans);カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni);カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata);イエイヌ(Canis familiaris);カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus);クラミジア・ムリダルム(Chlamydia muridarum);クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis);クラミドフィラ・カビアエ(Chlamydophila caviae);クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae);クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum);クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum);ユウレイボヤ(Ciona intestinalis);クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum);ウェルシュ菌(Clostridium perfringens);破傷風菌(Clostridium tetani);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens);コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii);クリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis);クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum);シアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae);デバリオミセス・ ハンセニイ(Debaryomyces hansenii);デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans);デスルホタレア・サイクロフィラ(Desulfotalea psychrophila);デスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris);キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster);エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi);エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis);エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora);大腸菌(Escherichia coli);フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum);ニワトリ(Gallus gallus);ゲオバクター・スルフレデュセンス(Geobacter sulfurreducens);グロエオバクター・ビオラセウス(Gloeobacter violaceus);ギラルディア・テータ(Guillardia theta);ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi);ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae);ハロバクテリウム(Halobacterium);ヘリコバクター・ヘパティカス(Helicobacter hepaticus);ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori);ヒト(Homo sapiens);クリヴェロミセス・ワルチ(Kluyveromyces waltii);ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii);ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum);レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila);レイフソニア・キシリー(Leifsonia xyli);ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis);レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans);リステリア・イノキュア(Listeria innocua);リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea);マンヘミア・サクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciproducens);メソプラズマ・フローラム(Mesoplasma florum);メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti);メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum);メタノコッコイデス・ブルトニ(Methanococcoides burtonii);メタノコッカス・ヤナシイ(Methanococcus jannaschii);メタノコッカス・マリパルディス(Methanococcus maripaludis);メタノゲニウム・フリギダム(Methanogenium frigidum);メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri);メタノサルシナ・アセチボランス(Methanosarcina acetivorans);メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei);メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus);マウス(Mus musculus);ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis);ライ菌(Mycobacterium leprae);パラ結核菌(Mycobacterium paratuberculosis);ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis);マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum);マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium);マイコプラズマ・ミコイデス(Mycoplasma mycoides);マイコプラズマ・ペネトランス(Mycoplasma penetrans);マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae);マイコプラズマ・プルモニス(Mycoplasma pulmonis);マイコプラズマ・モービレ(Mycoplasma mobile);ナノアルカエウム・エクゥィタンス(Nanoarchaeum equitans);髄膜炎菌(Neisseria meningitidis);アカパンカビ(Neurospora crassa);ニトロソモナス・ユウロペア(Nitrosomonas europaea);ノカルジア・ファルシニカ(Nocardia farcinica);オセアノバチルス・イヘイエンシス(Oceanobacillus iheyensis);タマネギ萎黄病ファイトプラズマ(Onions yellows phytoplasma);イネ(Oryza sativa);チンパンジー(Pan troglodytes);パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida);ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium);フォトラブダス・ルミネッセンス(Photorhabdus luminescens);ピクロフィルス・トリダス(Picrophilus torridus);熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum);プラスモディウム・ヨエリ・ヨエリ(Plasmodium yoelii yoelii);ブラックコットンウッド(Populus trichocarpa);ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis);プロクロロコッカス・マリヌス(Prochlorococcus marinus);プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes);プロトクラミジア・アモエボフィリア(Protochlamydia amoebophila);緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida);シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae);ピロバキュラム・アエロフィラム(Pyrobaculum aerophilum);パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi);パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus);パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii);ピロロブス・フマリイ(Pyrolobus fumarii);ラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum);ラット(Rattus norvegicus);ロドピレルーラ・バルティカ(Rhodopirellula baltica);ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris);リケッチア・コノリイ(Rickettsia conorii);リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi);リケッチア・プロワツェキイ(Rickettsia prowazekii);リケッチア・シビリカ(Rickettsia sibirica);サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae);サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus);サッカロミセス・ボウラディ(Saccharomyces boulardii);サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea);サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica);サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium);シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis);シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneria);シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti);黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis);ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae);ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans);肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae);化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes);ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus);ストレプトミセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis);ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor);スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus);スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii);シネココッカス(Synechococcus);シネコシスティス(Synechocystis);トラフグ(Takifugu rubripes);ミドリフグ(Tetraodon nigroviridis);タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana);サーモアネロバクター・テングコンジェンシス(Thermoanaerobacter tengcongensis);サーモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum);サーモプラズマ・ウォルカニウム(Thermoplasma volcanium);サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongatus);サーモトガ・マリティマ(Thermotagoa maritima);サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus);トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola);トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum);トロフェリマ・ウィッペリ(Tropheryma whipplei);ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum);コレラ菌(Vibrio cholerae);腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus);ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus);ウィグレスウォルシア・グロッシニディア(Wigglesworthia glossinidia);ボルバキア・ピピエンティス(Wolbachia pipientis);ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes);ザントモナス・アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis);ザントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris);キシレラ・ファスティディオーサ(Xylella fastidiosa);ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica);エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis);およびエルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)の核酸。
用語「藻類」としては、シアノバクテリア(ラン藻綱(Cyanophyceae))、緑色の藻類(緑藻綱(Chlorophyceae))、黄緑色の藻類(黄緑藻綱(Xanthophyceae))、金色の藻類(黄金色藻綱(Chrysophyceae))、茶色の藻類(褐藻綱(Phaeophyceae))、赤色の藻類(紅藻綱(Rhodophyceae))、珪藻類(珪藻綱(Bacillariophyceae))、ならびに「ピコプランクトン」(プラシノ藻綱(Prasinophyceae)および真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae))が挙げられる。用語藻類にはまた、渦鞭毛藻綱(Dinophyceae)、クリプト藻綱(Cryptophyceae)、ユーグレナ藻綱(Euglenophyceae)、灰色藻綱(Glaucophyceae)、およびプリムネシウム藻綱(Prymnesiophyceae)の分類学上のクラスのメンバーも含まれる。微細藻類は、顕微鏡を用いた時のみ単一の生物として観察することができる、単細胞の藻類またはコロニー状の藻類である。微細藻類には、真核生物および原核生物の両方の藻類(例えば、シアノバクテリア)が含まれる。光合成細菌としては、シアノバクテリア、緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、および緑色非硫黄細菌が挙げられる。
例示的なゲノムおよび核酸としては、そのゲノム配列を公に入手することができ、本開示の方法とともに使用することができる、多数の藻類生物の全ゲノムまたは部分的なゲノムが挙げられる。例えば、以下の種が挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アルテロモナス(Asteromonas)、ボエケロヴィア(Boekelovia)、ボロディネラ(Borodinella)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、 クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クロコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、キクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスフェラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヒメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポキンクリス(Lepocinclis)、ミクラクティニウム(Micractinium)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナヴィクラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、 オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パスケリア(Pascheria)、ファエオダクチラム(Phaeodactylum)、ファガス(Phagus)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボツリス(Pyrobotrys)、セネデスムス(Scenedesmus)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、スケレトネマ(Skeletonema)、スピロギラ(Spyrogyra)、スティココッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)、タラシオシラ(Thalassiosira)、ビリジエラ(Viridiella)、またはボルボックス(Volvox)。いくつかの態様においては、例えば、緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、またはシアノバクテリアを含む光合成細菌を使用することができる。使用することができるシアノバクテリア種としては、以下の種が挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アグメネルム(Agmenellum)、アナベナ(Anabaena)、アナベノプシス(Anabaenopsis)、アナシスティス(Anacystis)、アファニゾメノン(Aphanizomenon)、アルスロスピラ(Arthrospira)、アステロカプサ(Asterocapsa)、ボルジア(Borzia)、カロスリックス(Calothrix)、カマエシフォン(Chamaesiphon)、クロログロエオプシス(Chlorogloeopsis)、クロオコッキディオプシス(Chroococcidiopsis)、クロオコッカス(Chroococcus)、クリナリウム(Crinalium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)、シアノビウム(Cyanobium)、シアノシスティス(Cyanocystis)、シアノスピラ(Cyanospira)、シアノセイス(Cyanothece)、シリンドロスペルモプシス(Cylindrospermopsis)、シリンドロスペルムム(Cylindrospermum)、ダクティロコッコプシス(Dactylococcopsis)、デルモカルペラ(Dermocarpella)、フィッシェレラ(Fischerella)、フレミエラ(Fremyella)、ゲイトレリア(Geitleria)、ゲイトレリネマ(Geitlerinema)、グロエオバクター(Gloeobacter)、グロエオカプサ(Gloeocapsa)、グロエオセイス(Gloeothece)、ハロスピルリナ(Halospirulina)、エンガリエーラ(Iyengariella)、レプトリングビア(Leptolyngbya)、リムノスリックス(Limnothrix)、リングビア(Lyngbya)、ミクロコレアス(Microcoleus)、ミクロシスティス(Microcystis)、ミクソサルシナ(Myxosarcina)、ノドゥラリア(Nodularia)、ネンジュモ(Nostoc)、ノストコプシス(Nostochopsis)、ユレモ(Oscillatoria)、フォルミジウム(Phormidium)、プランクトスリックス(Planktothrix)、プレウロカプサ(Pleurocapsa)、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、プロクロロン(Prochloron)、プロクロロスリックス(Prochlorothrix)、シュードアナベナ(Pseudanabaena)、リブラリア(Rivularia)、シゾスリックス(Schizothrix)、スキトネマ(Scytonema)、スピルリナ(Spirulina)、スタニエリア(Stanieria)、スタリア(Starria)、スティゴネマ(Stigonema)、シンプロカ(Symploca)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis)、トリポスリックス(Tolypothrix)、トリコデスミウム(Trichodesmium)、チコネマ(Tychonema)、またはゼノコッカス(Xenococcus)の種。
ゲノムおよび他の核酸配列としては、そのようなゲノムに由来する、修飾した核酸配列、および合成の核酸配列が挙げられる。本明細書中に記載する方法は、これらを利用できる限りは、高等植物(例えば、トウモロコシおよびイネ)、哺乳動物(例えば、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギなど)、ブタ、ウシ、雄牛、ウマ、霊長類、ヒツジ、およびペット(例えば、イヌ、ネコなど)などの多細胞生物の特徴である核酸配列を含む、まだ公開されていない核酸配列にも同様に適応する。一つの態様においては、ヒトから単離した細胞を、ドナーゲノムを得るために使用することができる。これらの多くを現在利用することができる。核酸配列およびゲノムには、自然界に存在しているものを模倣しないものが含まれる。
一つの態様においては、上記方法による操作のために選択したゲノムおよび他の核酸配列は、扱いにくい生物、または乏しい遺伝子システムもしくは宿主生物のものよりも望ましくない遺伝子システムを持つ他の生物に由来する。そのような生物としては、特定の原核生物および他の酵母以外の生物(ダブル・クロスオーバー(double crossover)相同組換えおよびトランスポゾン突然変異誘発のような一般的な遺伝学的技術が有効ではないもの)が挙げられる。これらの技術は、例えば、特定の細菌生物(例えば、マイコプラズマ種)においては有効ではない。M.ミコイデスLCの中での遺伝子の標的化した付加および破壊のために、1回のクロスオーバー事象によるプラスミドDNAの組込みが行われている(Janis, C, et al.2005, Appl Environ Microbiol 71:2888-93)が、この生物は選択マーカーを少数しか含まず、一つのM.ミコイデスLC細胞の中で行うことができる遺伝学的修飾の数は限られている。
産業上有用な化合物を産生する能力および/または厳しい環境(例えば、高温、高圧など)で機能する能力を有している、乏しい遺伝子システムを有しているものを含む、原核生物のような生物が対象である。例示的な生物として、バイオ燃料を産生するために使用することができる生物が挙げられる。他の例示的な生物としては、光合成プロセスを受ける生物が挙げられる。ゲノムおよび生物は、本明細書中に記載する、バイオ燃料の産生のための新規のゲノムおよび生物を作製するための、当該技術分野で公知の方法を使用して遺伝学的に修飾することができる。例えば、光合成および他の代謝プロセスに関係している遺伝子を、グルコースまたは別の炭素源の代わりに油(例えば、バイオ燃料)を産生する生物を生じるように修飾することができる。したがって、日光と二酸化炭素をバイオ燃料に転換する能力を持つように操作された生物のゲノムは、本明細書中に含まれるゲノムである。一つのそのような例示的な生物は、プロクロロコッカス・マリヌスであり、これは中でも、地球上に最も豊富に存在する光合成生物であるが、非効率的な遺伝子システムを有する。
一つの態様においては、上記方法は、ゲノム(例えば、全(完全な)ゲノム(例えば、全細胞ゲノム、全ウイルスゲノム、および細胞小器官の全ゲノム)、および全ゲノムの一部分(少なくとも1セットの環境条件下で、細胞の生存性を達成するおよび/または維持するために十分な遺伝学的材料(最小の細胞ゲノム)、生存能力を宿主細胞に依存する生物の、宿主細胞内での生存能力を達成するおよび/または維持するために十分な遺伝学的材料(例えば、最小のウイルスゲノム)、または宿主細胞内での細胞小器官の機能を達成するおよび/または維持するために十分な遺伝学的材料(最小の細胞小器官のゲノム)を含む)を修飾および変更するために行う。一つの局面においては、ゲノムは、最小ゲノムまたは最小の複製性ゲノムである。別の局面においては、上記ゲノムは、最小ゲノム中で、または全ゲノム中で見られる核酸配列に加えて、さらなる核酸配列を含む。
ゲノムは、自然界に存在しているものであってもよく、または、遺伝学的に変更したゲノム(2種類以上の種に由来する複数の核酸配列および/またはゲノムの複数の部分を含む、修飾されたゲノムおよびハイブリッドゲノムを含む)のような、合成のものであってもよい。
一つの局面においては、ゲノムは、細胞の生存性を生じるおよび/または維持するために十分な核酸配列(例えば、複製、転写、翻訳、エネルギー生産、輸送、膜および細胞質成分の産生、ならびに細胞分裂に必要な分子をコードする核酸配列)を含む細胞ゲノムである。
別の局面においては、ゲノムは、ウイルスゲノムまたは細胞小器官ゲノムである。
一つの態様においては、核酸配列は、細胞小器官の核酸配列、例えば、プラスミドのような細胞小器官のゲノム(例えば、葉緑体のゲノムおよびミトコンドリアのゲノム)である。真核生物の細胞小器官(例えば、ミトコンドリアおよび葉緑体)は、それらの宿主の中に捕捉された内共生細菌の名残であると考えられる、細胞質DNAを含有している膜結合区画である。一般的には、ミトコンドリアは、全ての真核細胞の中に自然界において見られ、葉緑体および他のプラスチドは、植物および藻類の中に、自然界において見られる。プラスチドゲノムは、35kb〜217kbの大きさで変化し、大部分が115kb〜165kbの間である。ミトコンドリアゲノムは、様々な種の間で大きさが大きく変化し、20kb未満〜350kbを超えるまでであり得る。本出願の方法により、宿主細胞内の核酸および遺伝子システムを使用して、宿主細胞の中で細胞小器官のゲノムを変更することができる。例えば、細胞小器官を、酵母プラスミドおよび相同組換えを使用して酵母宿主の中で修飾することができる。本提供の方法は、例えば、真核細胞(例えば、酵母および藻類)の中でエネルギー生産または代謝を増大させる目的で、新規のミトコンドリアゲノムまたは葉緑体のゲノムを作製するために使用することができる。
別の態様においては、核酸は、ウイルス核酸およびバクテリオファージ核酸(例えば、ウイルスゲノムおよびバクテリオファージゲノム)である。例えば、ウイルスおよび細菌の核酸ならびにゲノムを、治療上の用途を有するウイルスを作製するために、本提供の方法により修飾し、変更することができる。別の例として、ウイルスゲノムを、本明細書中に記載する方法を使用してクローニングし、操作することができる。ウイルスは、遺伝子治療に、ワクチンに、および医学的用途においてトロイの木馬(Trojan horses)として、使用されている。しかし、ウイルスゲノムは、単一のプラスミドの中で操作するには大きすぎる。同様に、バクテリオファージが、数十年前から抗生物質として使用されている。それにもかかわらず、T-ファージのゲノムは、簡単に作業するには大きすぎる。
別の態様においては、本提供の方法により修飾した核酸配列、変更した核酸配列、および作製した核酸配列は、ゲノムではない。例えば、上記核酸としては、染色体および他の核酸配列が挙げられる。
典型的には、上記核酸配列およびゲノムは大きい核酸配列である。一つの局面においては、上記ゲノムまたは他の核酸配列は、少なくとも、または約100kb、150kb、200kb、250kb、300kb、350kb、400kb、450kb、500kb、550kb、600kb、650kb、700kb、750kb、800kb、850kb、900kb、950kb、1メガベース(MB)、1.1MB、1.2MB、1.3MB、1.4MB、1.5MB、1.6MB、1.7MB、1.8MB、1.9MB、2MB、2.1MB、2.2MB、2.3MB、2.4MB、2.5MB、2.6MB、2.7MB、2.8MB、2.9MB、3MB、3.1MB、3.2MB、3.3MB、3.4MB、3.5MB、3.6MB、3.7MB、3.8MB、3.9MB、4MB、4.5MB、5MB、6MB、7MB、8MB、9MB、10MB、15MB、または20MBの長さ、あるいはこれらの中の任意の特定の数または範囲である。本提供の方法はまた、例えば、約100kb未満の核酸配列などの、より小さな核酸配列の操作およびクローニングにも有用である。
ii.ドナーゲノムおよび他の核酸の増幅、単離、および合成
移入の前に、上記核酸配列を増幅させる、および/または細胞もしくは組織から単離することができる。ドナー核酸配列は、ドナー細胞もしくは組織(例えば、ドナー生物由来の細胞および組織)から単離することができるか、または、周知のクローニング、細胞、およびプラスミド技術と、システムとを使用して、他の細胞を形質転換し、その中で増殖させることができる。細胞の中の核酸配列は、天然のものであっても、また、合成のもの(一部が合成のものを含む)であってもよい。いくつかの場合には、核酸配列を、細胞または組織からの単離の後で、(例えば、PCRにより)増幅する。
ドナー核酸はまた、化学合成およびアセンブリ方法を使用してインビトロで化学合成することもできる。この場合、ドナー核酸は、本記載の方法で使用する前に任意の特定の組織または細胞から単離されることはない。DNAおよびRNAの化学合成、ならびに核酸のアセンブリのための方法は公知であり、これには、本明細書中に記載し、そして2008年10月7日に提出されたGibson et alの米国特許出願第12/247,126号に記載されている方法のような、オリゴヌクレオチドの合成、アセンブリ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および他の増幅方法(例えば、ローリングサークル増幅、全ゲノム増幅のような方法)が含まれる。例えば、DNAの合成は、DNAから行うことができ(例えば、PCRによる)、または、RNAから行うこともできる(例えば、逆転写による)。中でも、上記核酸は合成のゲノムである。合成のゲノムは、例えば、本明細書中に記載し、そして2008年10月7日に提出されたGibson et alの米国特許出願第12/247,126号に記載されているように産生することができる。
iii.核酸配列、ベクター-宿主システム、および培養条件
上記核酸配列は、様々な供給源から単離することができる、遺伝学的に変更することができる、増幅することができる、および/または組換えにより発現させる/作製することができる。これらの核酸配列から作製した組換えポリペプチドを、個別に単離またはクローニングし、所望の活性について試験することができる。細菌、哺乳動物、真菌、酵母、昆虫、または植物細胞の発現システムを含む任意の組換え発現システムを使用することができる。
あるいは、上記核酸配列を、インビトロで、例えば、周知の化学合成技術により合成することができる、および/または商業的供給源から得ることができる。そして任意で、例えば、2008年10月7日に提出されたGibson et alの米国特許出願第12/247,126号に記載されているように、例えば、大きな核酸およびゲノムにアセンブリすることができる。
例えば、サブクローニング、プローブの標識(例えば、Klenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を使用するランダムプライマー標識)、配列決定、ハイブリダイゼーションなどのような、核酸配列の操作のための技術は、科学文献および特許文献に十分に記載されている。
本提供の方法を実施するために使用する核酸配列を得て、かつ操作する別の有用な手段は、ゲノム試料からクローニングすること、および所望される場合には、例えば、ゲノムクローンもしくはcDNAクローンから単離または増幅した挿入断片をスクリーニングおよび再クローニングすることである。記載するシステムおよび方法で使用する核酸配列の供給源としては、例えば、哺乳動物の人工染色体(MAC)(例えば、米国特許第5,721,118号;同第6,025,155号を参照のこと);ヒトの人工染色体(例えば、Rosenfeld(1997)Nat.Genet.15:333-335を参照のこと);酵母の人工染色体(YAC);細菌の人工染色体(BAC);P1人工染色体(例えば、Woon(1998)Genomics 50:306-316を参照のこと);P1由来のベクター(PAC;例えば、Kern(1997)Biotechniques 23:120-124を参照のこと);コスミド、組換えウイルス、ファージ、またはプラスミドの中に含まれる、ゲノムライブラリーあるいはcDNAライブラリーが挙げられる。
核酸配列(例えば、ゲノムDNA)の単離のための方法は周知である。当業者に明らかであるように、単離方法は、単離する配列のタイプと大きさ、生物のタイプ、および配列が単離される組織または細胞のタイプに依存する。様々な生物からの遺伝学的材料の単離のための方法は周知であり、ドナー核酸配列(ゲノム)を単離するために本発明の態様において使用することができる。例えば、DNAの単離のための従来の方法は周知であり、大きさに応じて本提供の方法とともに使用することができ、核酸配列の単離のための多数の市販されているキットを用いて行うことができる。例えば、市販されているキットは、細胞からのゲノムDNAの単離のために使用することができる。
天然の核酸配列および合成の核酸配列を複製する、例えば、増幅によりコピーすることができる。増幅はまた、提供する核酸配列をクローニングまたは修飾するためにも使用することができる。したがって、提供する核酸配列を増幅するための増幅プライマー配列の対を提供する。当業者は、これらの配列の任意の部分または全長について、増幅プライマー配列の対を設計することができる。増幅により、試料中の核酸配列の量(例えば、宿主細胞中のドナーゲノムの量)を定量化することもできる。
適切な増幅プライマーを選択し、設計することができる。増幅方法もまた当技術分野で周知であり、これには、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅(例えば、Kwoh(1989)Proc.Natl.Acad.Sci USA 86:1173を参照のこと);および自家持続配列複製法(例えば、Guatelli(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874を参照のこと);Qβレプリカーゼ増幅(例えば、Smith(1997)J.Clin.Microbiol.35:1477-1491を参照のこと)、自動Qβレプリカーゼ増幅アッセイ(例えば、Burg(1996)Mol.Cell.Probes 10:257-271を参照のこと)、および他のRNAポリメラーゼに媒介される技術(例えば、NASBA、Cangene、Mississauga、Ontario)が含まれる。Berger(1987)Methods Enzymol.152:307-316;Sambrook;Ausubel;米国特許第4,683,195号、および同第4,683,202号;ならびにSooknanan(1995)Biotechnology 13:563-564もまた参照のこと。
一つの態様においては、核酸配列は、細菌細胞(例えば、大腸菌(例えば、大腸菌DH1OB[F--mcrAΔ(mrr-hsdRMS-mcrBC)φ80dlacZΔM15ΔlacX74 deoR recA1 endA1 araD139Δ(ara, leu)7697 galU galKλ- rpsL nupG](Invitrogen)))中、プラスミドを使用してクローニングし、増殖させる。大腸菌および他の研究室株の中での核酸のクローニングおよび増殖のための方法ならびにプラスミドは周知であり、本提供の方法と組み合わせて使用することができる。一つの例においては、大腸菌細胞を、培地(例えば、Luria-Bertani(LB)培養液培地)中またはLB寒天中で、37℃で増殖させる。
核酸配列は、例えば、マイコプラズマ細胞中で増殖させることができる。マイコプラズマ細胞は、自然界においてドナー核酸を含有するドナーマイコプラズマ細胞、またはドナー核酸(例えば、合成のゲノム)で形質転換されたマイコプラズマ細胞のいずれかであり得る。例示的なマイコプラズマ種としては、例えば、マイコプラズマ・カプリコルム亜種カプリコルム(California Kid(商標)株)(ATCC 27343)およびマイコプラズマ・ミコイデス亜種ミコイデス(GM12株)(Damassa et al., 1983)、マイコプラズマ・カプリコルム亜種カプリコルム(M.カプリコルム)(例えば、野生型M.カプリコルム、および実施例において以下に記載するように野生型M.カプリコルム中のCCATC制限酵素遺伝子の不活化により得たM.カプリコルム突然変異体(M.カプリコルム-ΔRE)が挙げられる。これらおよび他のマイコプラズマ細胞ならびに他の細胞の増殖のための方法は公知である。一つの例においては、マイコプラズマドナーを、17%のウシ胎児血清(Invitrogen)を含有している液体または固体のSP4培地(Tully et al.1977)の中で37℃で増殖させる。
細胞培養物およびプラスミドシステムは、公知の方法を使用してクローニングし、増殖させた所望の核酸を含有している細胞の選択を容易にするために変更することができる。一つの例においては、細菌細胞(例えば、大腸菌)の増殖を、クローニングおよび増殖に使用した核酸(例えば、プラスミド)の中に存在する耐性遺伝子に応じた抗生物質または他の選択試薬(例えば、50μg/mlのアンピシリン、5μg/mlのテトラサイクリン、または125μg/mlのピューロマイシン)を補充した培地の中で行う。同様に、プラスミド、ドナーゲノム、または他の核酸で形質転換されたマイコプラズマ細胞を、培地(例えば、5μg/mlのテトラサイクリンまたは8μg/mlのピューロマイシンを補充したSP4培地)中で増殖させることができる。
細胞内での所望の遺伝子産物の発現は、周知の方法を使用して検出することができる。例えば、β-ガラクトシダーゼ活性を、150μg/mlの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-gal、Promega)を含有している固体培地上にマイコプラズマまたは他のタイプの細胞を播種することにより検出することができる。当業者は、遺伝子産物の発現が可能である他の条件および方法が、従来技術を使用して本明細書中で意図されることを理解すると考えられる。
a.アガロースプラグ中での核酸配列の単離
核酸配列は、損傷を最小限にするためにアガロースプラグの中で単離することができる。大きな核酸配列(例えば、数千塩基対〜10MBの範囲のDNA、およびそれより大きいDNA(例えば、ゲノム))は、従来の単離手順の間に機械力(例えば、ピペッティング)により剪断されることがあり、これによって損傷が生じる。そのような核酸配列のアガロース中での単離は、損傷を最小限にすることができる。この態様においては、ドナーDNAを含有している細胞をアガロースに包埋し、溶解させる。アガロース(例えば、低融点アガロース)中でゲノム核酸配列を単離するための方法もまた周知であり、市販されているキット(例えば、CHEF Mammalian Genomic DNA Plug Kit(カタログ番号170-3591)、CHEF Bacterial Genomic DNA Plug Kit(カタログ番号170-3592)、およびCHEF Yeast Genomic DNA Plug Kit(カタログ番号170-3593)(全て、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)による)を使用して行うことができる。このようなキットを使用するDNAの調製は、供給業者が推奨する条件とプロトコールを使用して行うことができる。
ドナー核酸配列(例えば、細菌、マイコプラズマ、酵母、または藻類のゲノム)もまた、低融点アガロースとBio-Rad CHEF Mammalian Genomic DNA Plug Kitとを使用し、製造業者が推奨するプロトコールに従って、アガロースプラグ中で単離することができる。一つの例においては、細胞を、血清を含まない培地またはPBS中に懸濁し、多数の細胞(例えば、5×107または5×108個/mLのアガロースになるようにする)を遠心分離し、作製しようとするアガロースの最終容量の2分の1に再懸濁する。それと同時に、低融点アガロース(例えば、Bio-Radの2%のCleanCut(商標)アガロース)を、滅菌水中に調製し、融解させ、50℃で平衡化させる。この細胞懸濁液を同じ温度で平衡化させ、アガロースとともに穏やかに混合する。上記混合物をプラグ型(plug mold)に移し、固化させる。一つの例においては、溶解のために、プロテイナーゼKを含有する混合物を添加し(例えば、プラグ1mLあたり、100mMのEDTA、pH8、0.2%のデオキシコール酸ナトリウム、1%のラウリルサルコシンナトリウム、および1mg/mLのプロテイナーゼKを含有する5MLのプロテイナーゼK反応緩衝液中)、そして50℃で一晩インキュベーションする。別の例においては、溶解のために、アガロース中の細胞を、一晩から2日間の期間にわたり、50℃で、0.4MのEDTA、0.4%のN-ラウリルサルコシン、2mg/mLのプロテイナーゼKの中でインキュベーションし、続いて、緩衝液を交換し、同じ時間の間、同じ条件下で2回目の処理を行う。
溶解後、ドナー核酸を含有するアガロースプラグを、10mMのTris(pH 8.0)(任意で、1mMまたは50mMのEDTAを含有する)に対して、例えば、1時間透析することができる。一つの例においては、この透析に続いて、2回の、それぞれ2時間の、10mMのTris、50mMのETDA、0.1mMのPMSF中での透析と、保存のための、10mMのTris、50mMのEDTAの中での再透析を行う。別の例においては、その後、試料を、移入の前に、Katsura et al., Electrophoresis 21, 171(2000年1月)により記載されているように、10mM(6%)のPEG6000(United States Biochemical)、0.6MのNaClに対して、数時間透析する。一つの例においては、プラグをさらに、65℃で5分間融解させ、続いて、2倍容量の65℃のTEを添加し、穏やかに撹拌し、その後、65℃で5分間インキュベーションする。
いくつかの局面においては、プラグを融解させ、例えば、β-アガラーゼを使用して、宿主細胞の形質転換の前に消化する。一つの例においては、プラグを、CHEF(Bio-Rad)により2回(例えば、最初は1%のパルスフィールドアガロースゲル上で、0.5×TBEおよび50秒〜90秒のスイッチ時間を用いて、20時間にわたり、2回目は、1%の低融点ゲル上で、1×TAEおよび60秒〜120秒のスイッチ時間を用いて、24時間にわたり)電気泳動して、分解したDNAを除去してインタクトなゲノムを残し、続いて、滅菌の1×TAEに対する透析、73℃での融解、42℃での平衡化、およびβ-アガラーゼ(New England Biolabs)での、例えば、1.5時間の消化を行う。
b.細胞小器官ゲノムの単離
ドナー核酸配列は、細胞小器官のゲノム(例えば、ドナー細胞から単離した細胞小器官のゲノム)であり得る。細胞小器官のゲノムを単離するための方法は当技術分野で公知である。細胞からの細胞小器官の単離のためのキットは、Pierce(Rockford, III.)、Sigma-Aldrich(St.Louis, Mo.)などを含む様々な製造業者から入手することができる。
細胞小器官のゲノムおよび他の核酸は、様々なタイプの細胞(例えば、酵母細胞、植物細胞、藻類、および哺乳動物細胞を含む真核細胞および原核細胞)から単離することができる。当技術分野で公知であるように、細胞小器官の核酸を単離される細胞の生物、および単離される細胞小器官のタイプに応じて、単離手順が変わり得ることが理解される。細胞小器官の核酸の単離手順には、全ゲノムDNA試料中の核DNAからの細胞小器官のDNAの分離(例えば、分画またはゲル上での分離による分子量に基づく)が含まれ得る。特定の態様においては、細胞小器官を、DNAを抽出する前に全細胞性画分から精製することができる。
植物からの葉緑体(および他のプラスチド)ゲノムの単離のための方法は公知である。単離は、典型的には、(1)プラスチドを他の細胞小器官から分離すること、(2)葉緑体を溶解させること、および(3)核酸を精製することにより行う。一つの例においては、スクロースまたはPercollの段階的勾配を、細胞溶解物から葉緑体を得るために使用し、これをその後溶解させて、DNAを回収するために使用する。特定の例においては、植物を、葉緑体のデンプンレベルを下げるために暗所に置き、緑色の葉を水道水で洗浄し、予め冷却しておいたブレンダーの中でのホモジナイゼーションのために単離緩衝液に入れ(10g〜100g)、続いて、チーズクロスを通して濾過し、遠心分離する。ペレットを、18mLの52%スクロースを用いる一つの一段階の勾配に充填(load)し、7mLの30%スクロースを重層し、任意で、200gの出発材料を含む少なくとも6つのスクロース勾配のような、収量を増大させるためのさらなるスクロース勾配にかける。上記段階的勾配を遠心分離し(例えば、4℃、25,000rpmで30分〜60分間)、そして葉緑体のバンドを、wide-boreピペットを使用して30%〜52%の界面から取り出す。その後、葉緑体を記載するように溶解させ、遠心分離して破片を取り除く。その後、DNAを、例えば、CsCl勾配を使用して記載するように精製する。DNAseIでの処理を、スクロース勾配法を改変するため、および核DNAを分解するために使用することができる。あるいは、当技術分野で公知であるように、高塩濃度(例えば、NaCl 1.25M)法を、段階的勾配遠心分離を伴わない単離に使用することができる。葉緑体は、蛍光活性化セルソーター(FACS)分離を使用して、ミトコンドリアおよび核から選別することができる。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)(高度に精製されたmtDNAを含む)の単離のための方法は公知であり、ミトコンドリアゲノムを単離するために、本提供の方法と組み合わせて使用することができる。高度に精製されたmtDNAは、スクロースパッド勾配と塩化セシウム勾配を使用して、脊椎動物または無脊椎動物の組織から調製することができる。一般的には、組織(例えば、脊椎動物の脳、精巣、卵巣、肝臓、腎臓、心臓、骨格筋、および無脊椎動物の胚)を、必要に応じて、組織をホモジナイズすること、続いて、細胞の破片と核を取り除くために低速での遠心分離を繰り返すこと、これに続く、高速での遠心分離とペレットの溶解により、生物から調製する。スクロースの段階的勾配を、4℃で1時間の、25,000rpmでの超遠心分離によりペレットにかける。この場合、上記勾配は、10mLの、TE緩衝液中の1.5Mスクロースパッドと、10mLの1Mスクロースの層を含む。このプロセスのために、上記ペレットをTE緩衝液中に再度懸濁し、勾配上に層を重ね、続いて、4℃、27,000rpmで1〜2時間遠心分離する。1Mおよび1.5Mのスクロースパッドの界面に乳白色のバンドとして現れる高度に精製されたミトコンドリアを、パスツールピペットを用いて収集し、高速遠心分離(例えば、4℃で13,000rpm)によるさらなる濃縮のためにチューブに入れる。
その後、ペレット状にしたミトコンドリアを、例えば、TE緩衝液中に再度懸濁し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(例えば、TE 1mLあたり0.3mLの10%SDS)を添加することにより、溶解させる。この溶液が透明になった後、飽和CsClを添加し、この混合物を氷上で20分間インキュベーションし、続いて、12,000rpmで10分間遠心分離し、上清をとっておく。DNAを、CsCl-ヨウ化プロピジウム(PI)(または臭化エチジウム)勾配(例えば、8mLの上清あたり、8gのCsClおよび0.6mLの2mg/ml PI、混合し、1.56g/mLになるように密度を調整する)を用いて精製する。36,000rpmでの遠心分離後、上のバンドは、核DNAを含有しており、そして下のバンドは、mtDNAを含有しており、これらを収集することができ、任意で、この後、さらにCsCl勾配にかける。mtDNAの単離のためのキットは、市販されている。一つの例においては、ミトコンドリアDNAを、哺乳動物組織(例えば、筋肉または肝臓組織)から、mtDNA Extractor CT Kit(Wako, Osaka Japan, カタログ番号291-55301)を使用して調製する。真菌(例えば、酵母)のミトコンドリアDNA(これは、通常、スーパーコイル状の環状DNAであるので、細胞のホモジネートになるように効率よくほぐすことができない)の単離のためのプロトコールも公知である。一つの例においては、粗DNA調製物のCsCl密度勾配遠心分離を、ATを多く含むDNAに優先的に結合する色素(例えば、DAPIまたはビス-ベンズイミド)の存在下で行う。別の例においては、mtDNAを、単離したミトコンドリアから抽出し、これを、200Ogで20分間の溶解物の遠心分離、これに続く、スクロース勾配上での上清の分離(例えば、2mLの60%スクロース、4mLの50%スクロースを重層し、4mLの44%スクロースを重層し、続いて、スイング・アウト・ローターでの120,00Ogで90分間の遠心分離、および44/55%界面からのミトコンドリアの収集)により、核と細胞の破片をペレット状にすることにより単離する。
D.ドナーゲノムおよび核酸配列の宿主細胞への導入
中でも、例えば、宿主細胞の機構を使用する宿主細胞内での修飾のための、ドナー核酸(ドナーゲノムを含む)を宿主細胞に導入するための方法と核酸が、提供する態様である。上記宿主細胞は、ドナーゲノムの起源である細胞の中には通常存在しない所望の能力(例えば、組換え機構)を提供する異種宿主細胞である。上記のように、ドナー核酸は、移入の前に細胞もしくは組織から単離してもよく、またはインビトロで化学合成および/もしくはアセンブリしてもよく、ならびに/またはインビトロもしくはインビボでの方法により単離もしくは合成した核酸からコピーしてもよい。
典型的には、ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)の宿主細胞への移入は、宿主細胞内で増殖させ、修飾することができる、ドナー核酸と宿主ベクターとを含む核酸を作製するために、最初に、ドナー核酸(環状であっても、直線化されていても、または断片化されていてもよい)を宿主核酸(これは、典型的には宿主ベクターである)に連結させることにより行う。ドナー核酸と宿主ベクターとの連結は、ドナー細胞中もしくは宿主細胞中で、インビトロまたはインビボで行うことができる。一つの例においては、宿主ベクターでドナー細胞を形質転換し、ここで宿主ベクターをドナーゲノムと組換え、続いて、ベクターが挿入されたゲノムを単離する(例えば、図2Aを参照のこと)。別の例においては、ドナーゲノムと宿主ベクターとで、別々に宿主細胞を同時形質転換し、ドナー核酸と宿主核酸とを宿主細胞内で組換える。上記ドナーゲノムは、ベクターによる宿主細胞の同時形質転換の前に、直線化されても(例えば、図2Bを参照のこと)、または断片化されてもよい(例えば、図2Cを参照のこと)。
i.宿主細胞
宿主細胞は任意の宿主細胞であり得、かつ典型的には、研究室での核酸の修飾のために望ましい遺伝子システム(例えば、ドナー生物または細胞と比較して改良された遺伝子システム)を有している異種細胞である。所望される遺伝子システムの例示的な局面は、相同組換え(ダブル・クロスオーバー相同組換えおよびトランスポゾン突然変異誘発を含む)をサポートする能力、定義した十分に特性決定されている選択マーカーおよび他のマーカーのセット、ならびに、大きな核酸をクローニングする能力である。宿主細胞が、それを、宿主細胞内での核酸のクローニング、増殖、および修飾の際にドナー核酸と適合するようにする特性を有することもまた望ましい。
例えば、特定の宿主細胞を、遺伝子の毒性を最小限にするために選択することができる。宿主/ドナーの組み合わせを、ドナー核酸からの遺伝子発現が宿主細胞の中で起こらないように、またはドナー核酸からの遺伝子発現が、ドナー細胞中と比較して宿主細胞中で低下するように選択することができる。一つのそのような局面においては、宿主とドナーが、異なる翻訳および/または転写シグナルならびに/あるいは機構を含む(例えば、酵母生物と細菌生物)。別の局面においては、一つまたは複数のコドンが、ドナーによってはアミノ酸として翻訳されるが、細胞機構によっては終結コドンとして処理される。一つの例においては、ドナーは、コドン(例えば、UAG)をアミノ酸(例えば、トリプトファン)として翻訳するが、宿主細胞は、同じコドンを終結コドンと読む(例えば、マイコプラズマ対真核生物)。これらの局面においては、ドナーゲノムおよび他の核酸を、ドナーゲノムによりコードされる遺伝子産物を発現することなく(または最小限にしか発現せず)望ましい遺伝子システムを有している宿主細胞の中で、維持する、複製する、および修飾することができる。
宿主細胞としては、クローニングしたドナーゲノムまたは核酸と適合する任意の細胞を挙げることができる。したがって、例えば、藻類由来のゲノムを酵母にクローニングし、同じまたは異なる藻類のレシピエント細胞に再度導入する際により好ましい特徴を提供するように操作することができる。システムが適合する程度で、これらの藻類の遺伝子を操作し、植物細胞培養物を提供することもできる。同様の操作が、脊椎動物および無脊椎動物の細胞についても実現可能である。
一つの好ましい態様においては、宿主細胞は酵母細胞である。酵母宿主としては、「役に立つ種」、サッカロミセス・セレビジエ、および他の酵母種(例えば、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)(これは、さらに大きなゲノムをクローニングするために使用することができる))が挙げられる。酵母宿主は、それらの特有の遺伝子操作ツールのセットの理由から、ドナーゲノム材料の操作に特に適している。酵母細胞の天然の能力と数十年に及ぶ研究により、酵母の中でDNAを操作するためのツールの恵まれた(rich)セットが作製された。これらの利点は当技術分野で周知である。例えば、恵まれた遺伝子システムを持つ酵母は、相同組換え(多くの容易に利用できる生物が共通して持つものではない能力)により、ヌクレオチド配列をアセンブリおよび再アセンブリすることができる。酵母細胞は、他の生物の中ではクローニングすることができないDNAの大きな断片(例えば、全細胞ゲノム、細胞小器官の全ゲノム、および全ウイルスゲノム)をクローニングするために使用することができる。したがって、本記載の方法の一つの態様は、扱いにくい生物および他の生物のゲノム、ならびに合成のゲノムの操作のための宿主として酵母を使用することにより、合成生物学および合成ゲノミクスを進歩させるために、酵母の遺伝学的な計り知れない能力を利用する。
酵母宿主細胞の例は、もとの株よりも高い形質転換効率を持つように開発された酵母VL6-48N株:VL6-48株(ATCC番号MYA-3666TM))、W303a株、および組換え欠損(recombination-deficient)酵母株(例えば、RAD54遺伝子欠損株、VL6-48-Δ54G(MATα his3-Δ200 trp1-Δ1 ura3-52 lys2 ade2-101 met14 rad54-Δ1::kanMX)(これは、酵母人工染色体(YAC)の中での様々な組換え事象の発生を減少させる可能性がある)である。
酵母宿主細胞の中での多数回(無限の反復回)のシームレスな核酸の変更を行うことを可能にする、酵母突然変異体の選択および対抗選択のための、検証され、実証された、信頼できる選択マーカーの大きなセットが存在する。したがって、酵母を、多数の様々な遺伝学的修飾(単一のヌクレオチド変化(例えば、挿入、欠失、突然変異)を含む)を導入するため、標的核酸部分および領域の修飾、ならびに完全に新しい染色体の構築のために使用することができる。そうでなければ扱いにくいゲノムまたは他の大きな核酸のクローニングしたコピーについての連続的な修飾を、間断なく酵母の中で行うことができる。酵母の接合能力が、ゲノムおよび他の大きな核酸を修飾するために好ましい。酵母の組換え機構は、酵母の接合の間に活性化されると、ライブラリー(例えば、クローニングしたゲノムまたは核酸の変異体を含有しているコンビナトリアルライブラリー)を作製するために使用することができる。
例えば、酵母人工染色体(YAC)ライブラリーが、いくつかの異なる細菌について構築されている(Azevedo et al., PNAS USA 90, 6047(1993);Heuer et al., Electrophoresis 19, 486(1998);Kuspa et al., PNAS USA 86, 8917(1989))。原核生物の大きなDNAセグメントを、普遍的遺伝子コードを使用して酵母にクローニングすることができる。毒性の遺伝子の発現は、典型的には、酵母の中でドナー核酸をクローニングすることに対する障壁ではない。細菌および古細菌のゲノムを用いる実験は、例えば、真核生物が、これらの細菌とは異なるタンパク質発現機構を使用するので、クローニングしたゲノムから発現されるタンパク質により酵母宿主が傷つくリスクがほとんどないことを示す。酵母中の転写シグナル(Kozak, Gene 234, 187(1999))および翻訳シグナル(Kornberg, Trends Cell Biol 9, M46(1999))は、細菌のものとは異なる。実際、原核生物の遺伝子のほとんどが、酵母の中では発現されないようである。酵母の中には、制限となるような障壁は存在しない(Belfort and Roberts, Nucleic Acids Res 25, 3379(1997))。障壁が存在するとしても、遺伝子発現についての障壁ではなく、複製についての障壁であると考えられる(Stinchcomb et al., PNAS USA 77, 4559(1980))。遺伝子の毒性は、酵母のような真核生物の中での遺伝子発現の調節が原核生物の中での調節とは異なるとの理由から、最小限となる。また、マイコプラズマは、コドンUGAを、翻訳終結シグナルとしてではなくトリプトファンとして使用する。したがって、マイコプラズマ遺伝子のほとんどは、発現されると、酵母の中で短縮型のタンパク質を生じると考えられる。これにより、毒性の遺伝子産物の可能性が大幅に回避される。
ドナーは、ドナー生物からそれらの天然の形態で得ることができ、かつ酵母の形質転換の前に酵母ベクターを用いて修飾することができる。または、ドナーは、酵母細胞の形質転換の前に酵母ベクターとともに天然もしくは合成の断片からアセンブリすることも、または同時に酵母細胞を同時形質転換することもできる。新しい生物を、(所望される場合は任意で操作した)これらのゲノムを、適合するレシピエント細胞に移入することにより作製する。したがって、一つの態様は、最初に、ゲノムを酵母宿主細胞に移入するため、それらの安定性および完全性を維持したまま、宿主細胞の中でゲノムを修飾するため、ならびに、酵母宿主細胞からクローニングし、操作したゲノムを、もとのドナーにより似ているレシピエント細胞に移植して戻し、それにより、これまでは存在していなかった、ならびに/あるいは利用できる遺伝子変更ツールおよびクローニングツールを用いても、それらのもとの細胞の遺伝子操作によって作製することができなかった生物を作製するために適している技術を提供する。
ii.宿主ベクター
典型的には、宿主ベクターを使用してドナー核酸で宿主細胞を形質転換し、ドナー核酸を宿主細胞内で増殖させる。したがって、宿主細胞は一般的には、宿主細胞内でのドナー核酸の移入、維持、および修飾のための宿主ベクターを含むか、またはその導入をサポートすると考えられる。一つの態様においては、宿主ベクターは、ドナー細胞への、ならびにドナー細胞から宿主細胞、およびレシピエント細胞、および他の細胞(例えば、クローニングおよび増殖に使用する細菌細胞(例えば、大腸菌))への、ドナー核酸の移入を容易にするための核酸配列を含む(例えば、本明細書中の実施例に記載するトリ-シャトル(tri-shuttle)ベクター(例えば、図3を参照のこと))。
一つの局面においては、ベクターは、1種類または複数種の所望の細胞のタイプの中でのベクターの複製を促進するために必要な任意の核酸(例えば、複製起点)と、異なる細胞のタイプとともに使用するための選択マーカーおよび/または耐性マーカーとを含む。
耐性マーカーは周知である。当業者は、異なる宿主/ドナーの組み合わせについて適している耐性マーカーを決定することができると考えられる。いくつかの場合には、臨床的には関係がないマーカーを使用することが望ましい場合がある。他の場合は、耐性マーカーの選択は、ドナー、宿主、および/またはレシピエント細胞の特性に依存する。例えば、細胞壁を標的とする抗生物質は、細胞壁を持たないマイコプラズマおよび他の生物においては有用ではない場合がある。耐性マーカーの中には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性、およびテトラサイクリン耐性)をコードする遺伝子、例えば、テトラサイクリン耐性タンパク質(TetM)、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アミノグリコシド耐性タンパク質(aacA/aphD)、ならびにそれらの組み合わせがある。例えば、tet-耐性マーカーは、マイコプラズマのような細菌において有用であり、ここでは、テトラサイクリンは強い作用を有し、低いレベルの自然耐性を示す。ピューロマイシン耐性を付与する遺伝子もまた、例えば、マイコプラズマ核酸のクローニングおよび修飾、ならびにマイコプラズマ細胞の使用のために、使用することができる。
ピューロマイシンは、アミノアシル化されたtRNAの3'末端を模倣し、タンパク質合成を終結させるため、成長しつつあるタンパク質鎖のカルボキシル末端に付着する抗生物質である。ピューロマイシンは、細胞中の様々なtRNAの全てが使用するrRNA認識エレメントを徴収する(conscript)ので、自然な抗生物質耐性が、いくつかの場合には他のマーカーとともに起こり得る単純な点突然変異により獲得されうる可能性は低い。ピューロマイシンは容易に入手することができ、比較的安価であり、臨床においては使用されておらず、原核生物および真核生物の両方において翻訳の強力な阻害因子である。rRNAに基づく耐性が存在することは明らかにはなっていない。
コドン最適化されたカセットが、5種類のマイコプラズマ種においてピューロマイシン耐性を付与するために開発され、これは、シャトルベクター中でこれが機能するように、大腸菌の中で機能することができる。このカセットを作製するために、597bpのピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ85遺伝子(PAC)を、Smith et al, PNAS USA 100:15440-5(2003)に記載されているように、重複しているオリゴヌクレオチドを使用して合成する。簡単に説明すると、(M.ゲニタリウムの中での発現のために)コドン最適化したバージョンの両方の鎖をコードする5'リン酸化オリゴヌクレオチドを、IDT(Coralville, IA)に注文する。オリゴは、24塩基の重複を含む、48塩基88の長さである。上の鎖と下の鎖のオリゴを混合し、95℃に加熱し、ゆっくりと冷却して重複部分をアニーリングさせる。この反応物を12時間かけて連結し、PCRの鋳型として使用する。PCRアンプリコンを、pGEM-3Zf(+)(Promega, Madison, Wisconsin)にクローニングし、正確なPACクローンを同定するために配列決定する。その後、最適化したPAC遺伝子を、スピロプラズマ・シトリ(Spiroplasma citri)スピラリンプロモーター(Ps)の制御下にクローニングし、Mini-Tn4001tetの誘導体中のtetM遺伝子、ならびにpMyco1中のtetM遺伝子を置き換えるために使用する(Lartigue et al.(2003), Nucleic Acids Res 31:6610-8)。新しいプラスミド(Mini-Tn4001PsPuro)は、M.ゲニタリウム、M.ガリセプチカム(M.gallisepticum)、およびM.ニューモニエを形質転換するために使用することができ、一方、pMycol誘導体(pMycoPuro)は、M.ミコイデスLCおよびM.カプリコルムを形質転換するために使用することができる。
上記ベクターはさらに、上記ベクターとドナー核酸との連結を可能にする核酸を含む。一つの例においては、宿主ベクターは、相同組換えによる連結を容易にするための、ドナーゲノムまたは核酸の一部分に対する相同領域(例えば、ドナー核酸内の隣接領域に対して相同である直鎖状ベクターの3'および5'末端にある相同領域)を含む。別の例においては、上記宿主ベクターは、例えば、ドナー細胞内での、ドナー核酸への連結(例えば、挿入)を容易にするために、トランスポザーゼおよび/または逆位反復配列をコードする核酸を含む。宿主ベクターにはさらに、制限酵素認識部位と、宿主細胞および他の細胞内での複製および分離をサポートするための核酸とを含めることができる。
一つの局面においては、酵母宿主ベクターは、複製起点(例えば、pUC19由来の高コピーの起点);一つまたは複数の耐性マーカーおよび/または選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子および選択可能な宿主細胞(例えば、酵母)マーカー)(例えば、宿主細胞中、ドナー細胞中、およびレシピエント細胞中での選択のためのマーカー)を含む。耐性マーカー/選択マーカーの例は、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、および他の周知の抗生物質耐性遺伝子)、ならびに、他の抗生物質耐性遺伝子;選択可能な酵母もしくは他の宿主細胞のマーカー(例えば、HIS3)および/または選択マーカー;ドナー核酸への挿入を容易にするための核酸(例えば、マイコプラズマゲノムへの転位のための、トランスポザーゼおよび逆位反復配列);宿主細胞の中での複製および分離をサポートするための核酸(例えば、自律複製配列(ARS)、セントロメア配列(CEN))である。一つの態様においては、ベクターは、テロメア配列を含む。
例示的なベクターとしては、酵母セントロメアプラスミド(例えば、以下の実施例1A(i)(a)に記載し、図3Aに説明するpmycYACTn、および図3Bに示すように構築したminiTn-Puro-JCVI-1.7ベクターのような酵母人工染色体(YAC)ベクター)を含む酵母ベクターが挙げられる。pmycYACTnベクターの特徴としては、以下が挙げられる:(i)pUC19由来の高コピーの起点、および大腸菌中での増殖のためのアンピシリン耐性マーカー、(ii)IS256、(iii)大腸菌およびマイコプラズマの中での選択およびスクリーニングのための、いずれも、スピラリンプロモーターから発現されるtetMマーカーおよびlacZマーカー(16、17)、ならびに、(iv)酵母の中での複製および分離のためのARSおよびCEN、および選択可能な酵母マーカーとしてのHIS3。miniTn-Puro-JCVI-1.7ベクターは、以下のようにpmycYACTnとは異なる:(i)lacZを含まず、tetMがピューロマイシン耐性マーカーで置換されている。そして、(ii)大腸菌の中でのクローニングを可能にするための細菌の人工染色体(BAC)ベクターを含む。
iii.クローニングストラテジー:宿主核酸とドナー核酸の連結、およびドナーゲノムと核酸の宿主細胞への移入
本提供の移入方法においては、ドナーゲノムまたは他の核酸を宿主核酸(典型的には、宿主ベクター)に連結して、宿主細胞の中で増殖させ、操作することができる、ドナー核酸と宿主核酸とを含む核酸を作製する。宿主核酸とドナー核酸の連結は、周知のクローニング方法を引用して、多数のアプローチを使用して行うことができる。3つの一般的アプローチを以下にさらに詳細に記載する。
上記に記載したように、酵母細胞は例示的な宿主細胞である。大きいDNA分子が、酵母セントロメア(CEN)の付加により酵母に安定にクローニングされている。酵母セントロメアは、酵母染色体に沿って分子を分離することができる。このような分子は、末端へのテロメアの付加により直鎖形態でクローニングされており、また、環状としてもクローニングされている。細菌のゲノムは一般的には環状であり、環を直鎖状の酵母染色体から容易に分離することができるので、これは、細菌のゲノムを環状のものとしてクローニングするために有利であり得る。
ドナーゲノムおよび核酸を宿主ベクターと連結させるための第1のアプローチにおいては、ドナーゲノムを、ドナー細胞またはドナーと類似している他のタイプの細胞の中で宿主ベクターに連結させ、続いて、ドナーゲノムと宿主ベクターとを含む核酸を単離し、その後、宿主細胞に移入する。一例を図1に説明する。このアプローチは、例えば、宿主細胞にゲノムおよび他の大きな核酸を移入するために使用することができる。一つの例においては、宿主ベクターは、細胞の中でのドナーゲノムまたは他の核酸への挿入を容易にするための、逆位反復配列および/またはトランスポザーゼをコードする核酸を含む。
ドナー核酸と宿主核酸とを、ドナー細胞またはドナーと類似している細胞(例えば、同じ属の異なる種)の中で連結することは利点をもたらす。例えば、これにより、ドナー細胞の生存能力を低下させるかもしくはそうでなければドナー細胞の生存能力に影響を与えることがない、またはそのような可能性がないベクターの挿入(例えば、ドナー核酸の長さ方向に沿ったベクターの挿入の部位)を選択することができる。しかし、このアプローチには、ベクターをドナー核酸(例えば、ゲノム)に組込むことができるように、ドナーまたは類似する細胞が、外来核酸の導入(例えば、形質転換)に適していることが必要である。様々なタイプの細胞への核酸の導入のための様々なアプローチが周知である。一つの例においては、以下の実施例1Aに記載するように、酵母宿主ベクターにより、PEGの存在下で細菌細胞を形質転換する。ドナー核酸が組込まれた宿主ベクターを含有するドナー細胞を、例えば、宿主ベクター中の耐性マーカーまたは他の選択マーカーに基づいて選択する。核酸は、宿主ベクターの挿入の確認のために、例えば、上記に記載したようなアガロースプラグの中で、例えば、本明細書中に記載するようなPCRまたはサザンブロットにより、ドナー細胞から単離することができる。一つの局面においては、核酸を移植することができ、かつこの核酸が特定のレシピエント細胞と適合することを確認するために、宿主細胞への移入の前に、ドナーゲノムと宿主ベクターとを含む核酸をレシピエント細胞に移植する。例えば、一つの細菌種から別の細菌種へのゲノムDNAの移植は、Lartigue et al., Science 317, 632(2007)に記載されているように、および以下の実施例1A(ii)(b)に記載するように行うことができる。
図2Aに説明する実施例においては、直鎖状の酵母宿主ベクターを、細菌細胞の中で環状の細菌ゲノムに連結する。得られる環状の核酸は、例えば、上記のようにアガロースプラグの中で単離され、これで酵母宿主細胞を形質転換する。このプロセスの一例を、以下の実施例1Aに記載する。
第2のアプローチ(その一例を図2Bに説明する)においては、ドナーゲノムと宿主ベクターとで、宿主細胞を同時に形質転換するか、一緒に形質転換するか、または別々に形質転換する。その際、これらは宿主細胞内で、例えば、相同組換えにより連結する。このアプローチは、その単純さにおいて有利であり、これには、最小限の試料の取り扱いと、最小限の工程が伴う。典型的には、図2Bに示すように、ベクターを、相同組換えによりドナーゲノムまたは核酸に挿入する。
図2Bに示す例においては、直鎖状の酵母宿主ベクターと、環状の細菌のゲノム(例えば、合成のゲノム、またはドナー細胞から、例えば、上記に記載するようにアガロースプラグの中で単離したもの)とで酵母宿主細胞を同時形質転換する。典型的には、宿主ベクターは、ドナーゲノムまたは核酸に対する相同領域を含む。図2Bに示す例においては、直鎖状の酵母ベクターは、それぞれの末端に、細菌のゲノムの一部分に対する相同領域を含む。一つの例においては、図2Bに示すように、細菌のゲノムは、宿主細胞の形質転換の前に、宿主ベクターに対する相同領域の近くで切断を行う制限酵素で切断する。このプロセスにより、ベクターの挿入部位の近くに二本鎖の断裂が生じ、宿主細胞内での(ゲノムへのベクターの挿入による)宿主ベクターとドナーゲノムの連結の効率が大幅に改善する。典型的には、その部位でのベクターの挿入後にゲノムまたは核酸の完全性を維持することと適合する制限酵素認識部位を、ドナーゲノムまたは他の核酸の中で選択する。このプロセスの一例を以下の実施例1Bに記載する。
第2のアプローチの改変である第3のアプローチの一例を、図2Cに説明する。このアプローチは、宿主細胞を、宿主ベクターと、複数の重複している核酸断片(これらは、ドナーゲノムまたは核酸の断片である)とで同時形質転換することにより行う。言い換えると、これらの断片はそれぞれ、ドナーゲノムまたは核酸の一つの領域に対する相同性を含み、上記相同領域は、上記ドナーゲノムまたは核酸の長さ方向に沿って重複する。宿主細胞の形質転換時に、上記断片およびベクターは、例えば、相同領域を介した相同組換えにより組換わる。
図2Cに説明する例においては、環状の細菌のドナーゲノムの重複している断片と、直鎖状の酵母ベクターとで酵母宿主細胞を同時形質転換する。さらに、上記酵母ベクターは、細菌のゲノムの一部分に対する相同領域をその末端に含む。ドナーゲノムの断片と酵母宿主ベクターとを宿主細胞に導入すると、上記断片とベクターとが組換わり、これにより、ドナーゲノムと宿主ベクターが連結する。一例を、以下の実施例1Cに記載する。
いくつかの態様においては、宿主ベクターとの連結の後(例えば、第1のアプローチ)または前(例えば、第2および第3のアプローチ)のいずれにおいても、上記のように、ドナー核酸をドナー細胞または類似する細胞から単離する。例えば、ゲノムを含む大きなドナー核酸は、ドナーおよび他の細胞から、上記に記載したようにアガロースプラグの中で単離することができる。単離または合成、およびアセンブリの後、ドナー核酸で宿主細胞を形質転換する。宿主ベクターは、ドナー核酸に予め連結しない場合は、同じ形質転換方法を使用して、同時に、またはいずれかの順序で連続して宿主細胞へと形質転換により導入することができる。
形質転換方法は当技術分野で周知であり、宿主細胞に応じて変わると考えられる。一つの例においては、宿主細胞が酵母宿主細胞である場合は、酵母スフェロプラストを、例えば、以下に記載するように酵母宿主細胞から調製し、核酸をこのスフェロプラストと混合することにより形質転換する。いくつかの場合には、形質転換は、PEGの存在下で行う。例えば、ドナー核酸および/または宿主ベクターを、室温で10分間、スフェロプラストとともにインキュベーションし、続いて、800μLのPEG 8000を添加し、室温でさらに10分間、反転させることにより穏やかに混合することができる。
一つの例においては、スフェロプラストの調製および形質転換を、Kouprina and Larionov, Nat Protoc 3, 371(2008)に記載されているように行う。増殖させる細胞のODを変更することができる。これらの方法を用いる場合は、形質転換の前に、酵母培地を、酵母宿主の単細胞コロニーとともに接種し、適切なOD660に達するまで、十分なエアレーションを確保するために激しく振盪させながら、30℃で一晩増殖させる。試料を遠心分離し、ボルテックスにより撹拌することによりソルビトール中に再度懸濁し、遠心分離し、例えば、SPE溶液(1Mのソルビトール、0.01Mのリン酸ナトリウム、0.01MのNa2EDTA(pH 7.5))中に再度懸濁することができる。酵母の細胞壁を、例えば、Zymolase(商標)を使用して除去する。スフェロプラスト化のレベルは、2%のSDS溶液(この中でスフェロプラストを溶解させる)に対して、ソルビトール溶液中での細胞懸濁液の光学密度の比較により評価することができる。スフェロプラストを遠心分離し、極めて穏やかに振盪させることにより1Mのソルビトール中に再度懸濁し、洗浄し、そしてSTC溶液(1Mのソルビトール、0.01MのTris-HCl、0.01MのCaCl2(pH 7.5))中に再度懸濁することができる。形質転換は、任意でPEGの存在下で、上記に記載するように、核酸をスフェロプラストと混合することにより行う。
形質転換後、典型的には、ドナー核酸と宿主ベクターとによりうまく形質転換された細胞を選択するための選択手順を行う。例えば、上記プロセスにおいては、形質転換後に、スフェロプラストを遠心分離し、SOS溶液中に再度懸濁し、30℃で40分間、振盪させずにインキュベーションすることができる。スフェロプラストを選択培地(例えば、本明細書中に記載する融解させたSORB-TOP-His選択培地)中に入れ、50℃で平衡化させ、選択培地を含有するプレート上に播種し、形質転換体を見ることができるようになるまで、例えば、30℃で増殖させることができる。
iv.宿主細胞からのドナー核酸の単離および分析
本提供の方法を用いて、宿主細胞を形質転換させたドナー核酸を、本提供の修飾方法による宿主細胞内での修飾の前および後の両方で、単離し、分析することができる。ドナー細胞および他の細胞からの単離を用いる場合は、単離方法は、細胞のタイプに応じて異なると考えられる。いくつかの例においては、例えば、ドナー核酸を単離するかまたは富化させるために、天然の宿主核酸を、単離した核酸試料から除去するかまたは減少させる。このプロセスは、染色体宿主DNAを除去するためのプレ電気泳動により、または宿主核酸を消化するがドナー核酸は消化しない制限酵素での消化により行うことができる。
一つの例においては、ドナー核酸を、例えば、Bio-Rad CHEF-DR IIIのマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用し、そして本明細書中の実施例に記載するように、アガロースプラグの中で単離する。いくつかの例においては、宿主細胞由来のDNAを含有しているアガロースプラグを、酵母宿主の染色体DNAを除去するために、数時間、一定の電圧でプレ電気泳動する。一つの局面においては、宿主DNAの除去は、最初に、AsiSI、FseI、およびRsrII、または酵母染色体を切断するがドナー核酸(例えば、M.ゲニタリウムまたはM.ミコイデスLC)中には認識部位を有さない他の酵素によって、プラグの中でDNAを消化することにより、行うことができる。
ドナー核酸の分析は、DNAを分析するための多数の周知の方法のうちのいずれかにより行うことができる。典型的には、核酸のサイズおよび/または配列、ならびにベクターおよび他の核酸の正確な挿入および方向を確認する(任意の修飾の確認を含む)ための方法を実施することが所望される。一つの例においては、単離したDNAを、加熱および/または制限酵素消化により直線化し、続いて、ゲル電気泳動(例えば、フィールド・インバージョン電気泳動(Bio-Rad FIGE Mapper)またはパルスフィールド電気泳動(Bio-Rad CHEF-DR IIもしくはIIIシステム))による分離を行う。
分析は、所望されるドナー核酸または修飾されたドナー核酸の長さ方向に沿って様々な領域に結合するように設計したプライマーを用いるPCR(例えば、マルチプレックスPCR)により行うことができる。典型的には、プライマーはまた、宿主ベクターを認識するように設計する。他の例においては、分析は、ゲル上での単離した核酸のサイズの観察により、または制限酵素消化と、サザンブロットもしくはGibson et al., Science 319, 1215(2008)に記載されているような他のハイブリダイゼーション法とを実施することにより行う。単離したドナーゲノムのMPCRおよびサザンブロット分析の特別な例を実施例に記載する。分析方法の改変は、当業者には明らかであると考えられる。配列決定方法は周知であり、宿主細胞に導入し、増幅させたドナー核酸を分析するためにも使用することができる。
v.複数のドナーゲノムを含有している宿主細胞の作製
一つの態様においては、複数のドナー核酸(例えば、異なるドナーに由来する複数のゲノム)を、単一の宿主細胞に導入する。一つの局面においては、一つのドナーゲノムまたは他のドナー核酸を含有する宿主細胞を、異なるドナーに由来する核酸が導入された別のそのような宿主細胞と交配して、両方の核酸を含有する宿主細胞を作製する。例えば、異なるドナーに由来する2つのドナーゲノム(例えば、異なる種に由来する2つのマイコプラズマゲノム)を含有している二倍体酵母株は、それぞれが一つのドナーゲノムを持っている2つの異なる一倍体株同士を接合させることにより作製することができる。一倍体酵母株の接合は、周知の方法を使用して行うことができる。接合後に両方のゲノムを含有している細胞の選択ができるように、多数の異なる選択マーカーをそれぞれの一倍体において使用することができる。例えば、HIS3マーカーとTRPマーカーとを、異なるドナーゲノムを持っている2種類の異なる一倍体細胞にそれぞれ導入することができ、続いて、本明細書中で実施例に記載するように、ヒスチジンおよびトリプトファンを含まない培地上で二倍体細胞を選択することができる。
E.宿主細胞中でのドナーゲノムの修飾
中でも、宿主細胞の中でドナーゲノムおよび他の核酸を修飾するための方法ならびに核酸が、提供する態様である。一つの態様においては、この方法は、一つまたは複数の標的化構築物をドナー核酸に導入することにより行う。上記構築物は、ドナー核酸に対する相同部分、耐性遺伝子、選択マーカー、酵素(例えば、制限酵素)をコードする核酸、制限酵素部位、ならびに/またはクローニングおよび相同組換えに使用する他の核酸を含む。典型的には、上記構築物を、ドナー核酸を含有している宿主細胞に導入する。
上記構築物を設計するために、ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)の標的領域を修飾のために選択する。上記方法によって、標的領域の個々の残基を修飾することは必ずしも必要ではない。例えば、標的領域内の一つもしくは複数の標的部分または標的部位を修飾することができる。修飾としては、標的領域内の一つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、突然変異、置換、および/または他の修飾が挙げられる。一つの局面においては、ドナー核酸をシームレスに修飾する。
典型的には、標的領域またはその一部分を、マーカー(例えば、対抗選択マーカー)を含む核酸構築物で最初に置き換える。その後、上記マーカーを上記核酸から、上記マーカーを欠失させること、または別のヌクレオチド配列で上記マーカーを置き換えることにより除去する。一つの局面においては、マーカーと周辺部分を、マーカー付近にあるかもしくはマーカーに隣接する標的領域の一部に対して相同性を有している第2の核酸構築物を導入することにより置き換える。この第2の構築物は、標的領域の一部に対して100%未満の相同である必要はない。例えば、上記構築物は、標的領域の一部分と比較して、一つもしくは複数の突然変異、欠失、または挿入を含み得、これにより、標的領域を上記構築物で置き換えて修飾する。上記方法は、典型的には、一つまたは複数の相同組換え工程を含む。
一つの局面においては、マーカーの除去は、マーカーを持つ構築物を含むドナー核酸の核酸配列中に断裂(例えば、二本鎖の断裂)を導入することにより促進される。この断裂は、標的領域の近くに、例えば、標的領域に隣接して、または標的領域内に導入する。典型的には、上記断裂は、所望の核酸配列を認識し、切断する酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)を誘導により発現させることによって作製する。典型的には、上記酵素は、標的領域内の、または標的領域に挿入した構築物の核酸によりコードされる。
一つの局面においては、マーカーの除去は、ドナー核酸に核酸配列を導入することにより促進される。この場合、核酸配列の挿入により、標的領域またはその一部の側方にタンデム反復領域が生じる。典型的には、上記核酸配列は、標的化構築物の一部として含まれる。
一つの態様においては、上記方法は、断裂の導入と、タンデム反復領域を生じる配列の導入との両方を含む。一つの局面においては、上記方法は、エンドヌクレアーゼ切断を伴うタンデム反復(Tandem Repeat with Endonuclease Cleavage)(TREC)法であり、ここでは、誘導により発現された酵素によって生じる二本鎖の断裂とタンデム反復とを、組換え事象を促進し、損傷および望ましくない突然変異を回避するために使用する。
本提供の方法は、特に、異なる種、属、および目の宿主の中でのドナー核酸の修飾のための、従来の方法および他の利用できる方法と比較して利点をもたらす。一つの局面においては、ドナー核酸(乏しい遺伝子システムを有しているドナー生物に由来し得る)を、恵まれた遺伝子システムを有している宿主(例えば、酵母宿主細胞)内で、例えば、相同組換え法により修飾する。例えば、数百kbの長さの核酸断片を、周知の方法と標準的な遺伝学的ツール(直鎖状および環状の形態の酵母人工染色体(YAC))とを使用して、酵母(サッカロミセス・セレビジエ)宿主細胞にクローニングし、操作することができる。修飾したドナー核酸のレシピエント細胞(もとの細胞および異なる種の細胞を含む)への移植は、例えば、遺伝子および遺伝子調節の機能的研究に、ならびに修飾した遺伝子産物の産生に使用することができる。本提供の方法は、遺伝学的に扱いにくい生物に由来するゲノムを変更および修飾するために、宿主細胞中でドナーゲノムの修飾をうまく行うために使用することができる。
以下に記載するように、上記修飾方法は、ワクチン、薬物、生物学的タンパク質、および化学物質、バイオ燃料、およびタンパク質治療薬(例えば、酵素および抗生物質)の産生のような、商業的に有用であるゲノム、生物、および商業的に有用な生物により産生される遺伝子産物を産生するために使用することができる。一つの例においては、ドナーゲノムは、免疫応答を誘発するための新しい免疫学的組成物(例えば、生存しているウイルスおよび他の免疫原)を産生するように修飾する。別の例においては、ドナーゲノムは、バイオ燃料の産生のために、例えば、油の生合成経路に関与している酵素をコードするDNAを導入することにより、例えば、バイオ燃料の産生のための遺伝子で、代謝経路の遺伝子を置き換えることにより修飾する。一つの例においては、ドナーゲノム(例えば、光合成細菌のドナーゲノム)は、レシピエント細胞に移植すると、レシピエント細胞が、通常の光合成産物(例えば、グルコース)の代わりにバイオ燃料を産生するように修飾する。他の用途を本明細書中以下で考察する。したがって、本提供の方法を、合成の細菌のゲノムをインビボで(例えば、酵母宿主細胞中で)直接変更するまたは再設計し直すために使用することができる。
本提供の修飾方法は、そうでなければ異なる種の宿主細胞の中で操作されるドナー核酸の不安定性および望ましくない突然変異を生じる可能性がある、ドナーと異なる種の宿主生物との間での不和合性の問題を克服するための局面を含む。例えば、ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)を宿主細胞に導入する場合は、ドナー核酸は、典型的には、宿主細胞の生存能力には寄与しないか、または、クローニングベクター中に存在する個々の選択マーカーとは別に、宿主の生存能力には寄与しない。これは、ドナーと宿主とが異なるタイプの生物(例えば、異なる目または界の生物)である場合、例えば、ドナーが原核生物であり、宿主が真核生物(例えば、酵母)である場合には、特にそのとおりである。例えば、以下の実施例4に記載する実験において考察するように、酵母の中で環状YAC(ヒスチジンマーカーを持つ)として増殖させたM.ゲニタリウムのゲノムは、ヒスチジン栄養要求性を除き、その宿主との機能相補を有さない。細菌のゲノム中の任意の欠失および再構成は、酵母宿主にとってはおそらく無害(neutral)である。
利用できる方法を用いる場合は、宿主細胞は、生存能力をドナー核酸の完全性には依存しないので、これを宿主細胞中で操作する際の、ドナー核酸に対する望ましくない突然変異および損傷のリスクが高い。本提供の方法はこれらの問題を克服し、宿主細胞内でドナーゲノムを増殖させ、修飾するために使用し、それと同時に、ドナーゲノム内での望ましくない突然変異のリスクを最小限にすることができる。本提供の方法は、酵母宿主細胞中にクローニングしたドナーゲノム(例えば、細菌のゲノム)を、高い効率で正確に修飾することができる。
本提供の方法はさらに、ドナー核酸の標的領域内でのヌクレオチドの突然変異、欠失、および/または挿入を含む、宿主細胞内でのドナー核酸のシームレスな修飾に使用することができる。ここでは、望ましくないさらなる核酸配列は付加されないか、または除去される。
i.対抗選択マーカー
典型的には、上記方法の最初の工程は、ドナー核酸への対抗選択マーカーの導入を含む。典型的には、上記マーカーを相同組換えにより挿入し、これにより、標的領域の一部分を対抗選択マーカーで置き換える。対抗選択マーカーは、マーカーの有無の両方を選択できる点で有利である。1セットの増殖条件を用いて、上記マーカーの存在を選択し、一方、存在しないことは、異なるセットの増殖条件を用いて選択する。例として、周知の対抗選択マーカーはURA3酵母遺伝子である。酵母宿主中にURA3遺伝子が存在することにより、ウラシルを含まない培地上でのその増殖が可能となる。したがって、このマーカーによるドナー核酸の標的領域の置き換えの成功は、ウラシルマイナス培地上での増殖によって選択できる。対照的に、URA3遺伝子が存在しないこと(例えば、別の相同組換え事象による置き換えの後)は、5-フルオロオロチン酸(5-FOA)を含む培地上での対抗選択により選択することができる。
例えば、遺伝子マーカーURA3は、宿主細胞中にクローニングしたドナー核酸内の標的領域に、例えば、相同組換えにより組込むことができる。上記マーカーの組込みは、ウラシルを含まない培地上での増殖により選択する。例えば、2回目の相同組換えにおけるマーカーの除去(例えば、欠失、または別のヌクレオチド配列での置き換えによる)を、例えば、5-FOA上での対抗選択により選択する。
対抗選択マーカーを利用する方法は、これらをシームレスな修飾に使用できる点で望ましい。さらに、対抗選択マーカーの置き換えまたは除去により栄養要求性(auxotrophy)(例えば、ウラシルに対する依存性)が回復し、その結果、宿主細胞を、さらなる回の修飾において同じ方法を使用して修飾することができる。
多くの方法を、酵母宿主細胞中での対抗選択マーカーの導入および置き換えに利用できる。例えば、1回目の相同組換えによるURA3マーカーの導入、および2回目の相同組換えの際の上記マーカーの置き換えのための方法が公知である。そのような方法の一例を、以下の実施例4Aに記載する。ここでは、部位特異的突然変異誘発を、2回の連続的な相同組換え事象を含むこの従来法を使用して酵母の中に維持したドナーである合成のM.ゲニタリウムゲノムのCDS139遺伝子座の中に見られる単一塩基のシチジン欠失(309、388)を修正するために行った。この実施例に記載するように、突然変異体である細菌ドナーゲノムを含有している酵母宿主を、URA3マーカーと、標的領域の一部分に対して相同である50bpの末端部分を含むカセットで形質転換して、一塩基欠失CDS139遺伝子座を含む標的領域を置き換えた。2回目の形質転換により、突然変異体ではないDNA配列を含む構築物を同じ遺伝子座に導入して戻して、マーカーを置き換えた。
対抗選択マーカーを利用する従来法には、特定の宿主細胞中で特定のドナー核酸を効率よく修飾するそれらの能力に限界がある。例えば、これらの方法は、生存能力をドナーゲノムの完全性に依存しない宿主細胞内でドナーゲノムを修飾するためには不十分である場合がある。宿主細胞がドナーゲノムの完全性に依存しない場合は、多数の自発的な欠失が修飾の間に起こる可能性がある。これらの欠失は、典型的に、対抗選択マーカーの喪失を生じ、これにより、これらの欠失を選択する。本提供の方法はこの問題を克服し、従来法と比較して効率の向上をもたらす。
ii.誘導することができる酵素発現および断裂の導入
一つの態様においては、選択マーカーを導入した後、断裂(例えば、二本鎖の断裂(DSB))を、標的領域の近くに(例えば、標的領域に隣接して)または標的領域内に導入する。このプロセスは、典型的には、標的領域の近位もしくは標的領域内にあるヌクレオチド配列を認識し、切断する酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ、例えば、I-SceI)を誘導により発現させることによって行う。典型的には、上記酵素は、エンドヌクレアーゼであるか、または二本鎖の断裂を生じる他の酵素である。相同組換えの部位付近への二本鎖の断裂の導入が、相同組換えの効率を約20倍増大させることが報告されている(Leem et al, Nucleic Acids Res 31, e29(2003))。したがって、標的領域付近での二本鎖の断裂の導入は、上記修飾方法の効率を高めるため、および望ましくないバックグラウンドの突然変異を減少させるために行う。
典型的な例においては、選択マーカーを含む標的化構築物はさらに、誘導性プロモーターの制御下に酵素をコードする遺伝子を含む。典型的には、上記構築物はさらに、上記酵素の認識配列を含む。この構築物を、宿主細胞内でドナー核酸に導入する。上記酵素の発現を、誘導性プロモーターからの発現を誘導する特定の条件下で、宿主細胞の増殖により誘導する。一つの例においては、上記プロモーターはGAL1プロモーターであり、このGAL1プロモーターからの発現は、唯一の炭素源としてガラクトースを含有している培地上での増殖により誘導することができる。
利用できる方法としては、酵母の中での組換えに基づく修飾の効率を改善する目的のための二本鎖の断裂の誘導による導入が挙げられる。一つのそのような方法である完全欠失(Delitto perfetto)が、Storici et al., Nat Biotechnol, 19, 773-776(2001)に記載されている。この方法の例を、以下の実施例4B(i)に記載する。この方法は、標的核酸の中での二本鎖の断裂(DSB)の導入が組換えを桁違いに刺激することが示されていること(Storici et.al, PNAS USA, 100, 14994-99(2003))に基づく。実施例4B(i)においては、完全欠失(Dilletto perfetto)を、M.ゲニタリウムドナーゲノムのCDS139遺伝子座の中の同じ一塩基欠失を修正する試みにおいて使用した。このプロセスを図1OAに説明する。
酵母の中での従来の組換え方法と組み合わせたDSBの誘導による導入が、特定のドナー核酸の修飾については限定されることを本明細書中で明らかにする。以下の実施例4B(i)を参照のこと。この限定は、ネガティブ(対抗)選択マーカーの自発的喪失の高いバックグラウンドが原因である。本提供の方法は、効率を改善し、そして望ましくないバックグラウンドの突然変異(例えば、自発的欠失)を減少させる。
iii.タンデム反復
一つの態様においては、相同組換えによる選択マーカーの除去を、マーカーを含む領域の側方にあるタンデム反復領域の存在により促進する。一つの局面においては、マーカーを導入するための標的化構築物はさらに、その導入により、挿入されたマーカーを含む標的領域またはその一部分の側方にタンデム反復領域を生じる核酸配列を含む。上記構築物を最初に、標的領域またはその一部分の上流あるいは下流のいずれかに挿入する。そして上記構築物は、標的領域またはその一部分の下流あるいは上流部分に対してそれぞれ相同性を有している核酸部分を含む。標的核酸中のこの相同部分付近へのこの部分の挿入により、タンデム反復が生じる。
一つの例においては、上記構築物の挿入により、標的領域の3'部分に対して相同性を有している部分が、上記マーカーの5'に、標的核酸内に生じる。別の例においては、上記構築物の挿入により、標的領域の5'部分に対して相同性を有している部分が、上記マーカーの3'に、標的核酸内に生じる。したがって、導入すると、上記修飾したドナー核酸(例えば、修飾したドナーゲノム)は、選択マーカーを含む核酸の側方にあるタンデム反復配列を含む。
タンデム反復配列の存在は、例えば、対抗選択マーカーを含む構築物の一部分の除去のための、2つの配列間での相同組換えを促進する。このような方法は周知であり、2つのタンデム反復配列間での相同組換え(HR)による核酸セグメントの正確な除去に基づく。「タンデム反復ポップアウト」法として知られている一例が、Akada, R.et al, Yeast, 23, 399-405(2006)に記載されている。このようなアプローチの例を、以下の実施例4B(ii)に記載し、M.ゲニタリウムのドナーゲノム中のCDS139遺伝子座の一つの領域を欠失させるために使用する。このプロセスを図1OBに説明する。この技術は、遺伝子の置き換えにおける使用に適応させることができる。
選択マーカーを使用するより一般的な相同組換えとは異なり、タンデム反復により誘導したHRを使用する方法は、1回の形質転換事象により、対抗選択マーカーを含むカセットを導入し、続いて除去することができる。例えば、対抗選択マーカーと、タンデム配列を生じる配列とを保有しているカセットを、形質転換と、これに続く、カセットとゲノムとにおける相同領域の間での自発的な相同組換えについての選択とにより、酵母宿主の中のドナーゲノムに導入することができる。
上記マーカーの最初の導入についての選択は、上記に記載したように、例えば、URA3の場合にはヒスチジンの非存在下での増殖により、行うことができる。これに続く、対抗選択培地(例えば、5-FOA)への細胞の導入により、タンデム反復配列間での相同組換えによるマーカーの自発的な「ポップアウト」を選択する。このような方法は、標的核酸と相同性を共有しているカセットの部分を変化させることにより、欠失、点突然変異、および遺伝子の置き換えに適応させることができる。
従来の組換え方法と組み合わせた、「ポップアウト」のためのタンデム反復の導入が、酵母の中の特定のドナー核酸の修飾については限定されることを本明細書中で明らかにする。以下の実施例4B(ii)を参照のこと。この限定は、ネガティブ(対抗)選択マーカーの自発的喪失の高いバックグラウンドが原因である。本提供の方法は、効率を改善し、そして望ましくないバックグラウンドの突然変異(例えば、自発的欠失)を減少させ、酵母宿主細胞中で細菌のゲノムを修飾するために使用することができる。
iv.タンデム反復-エンドヌクレアーゼ切断(TREC)
タンデム反復と標的領域付近での酵素による切断との両方を、選択マーカーの除去を促進するために使用することができる。「タンデム反復エンドヌクレアーゼ切断(TREC)」法と考える一つのそのような態様は、対抗選択マーカーを使用する従来の相同組換えによる置き換え、エンドヌクレアーゼの発現による標的領域付近または標的領域への二本鎖の断裂の誘導による導入、およびマーカーを含む核酸配列の側方にあるタンデム反復配列の導入と組み合わせる。上記方法は、高い効率で、酵母宿主細胞中にクローニングした細菌のドナーゲノムおよび大きな核酸を正確に修飾するために使用することができる。
TREC法を用いる場合は、側方にあるタンデム反復配列と、近位または隣接する二本鎖の断裂との組み合わせにより、標的特異的組換えの効率が大幅に高まり、酵母宿主の中での細菌ゲノムの遺伝学的変更が可能となる。この方法を、酵母の中で増殖させたM.ゲニタリウムゲノム中のCD 139遺伝子座をシームレスにうまく欠失させるために使用した例を、以下の実施例4Cに記載する。この方法を図1OCに説明する。
本明細書中に記載する方法は、宿主細胞中のドナー核酸(例えば、酵母宿主細胞中の細菌ゲノム)の標的領域に対して任意の修飾(例えば、点突然変異(例えば、保存的置換および非保存的置換を含む核酸ならびにコドンの置換)、欠失、挿入、および他の修飾)を導入するために使用することができる。
v.標的化カセット、およびそのカセットの作製
上記修飾方法での使用のための核酸(例えば、標的化カセット)を設計し、作製するための方法を提供する。上記方法での使用のための構築物および他の核酸も提供する。典型的には、選択マーカーを導入するための標的カセットは、ドナー標的領域の一部分に対する相同部分(これは、任意で、上記相同部分と比較して、一つまたは複数の突然変異、欠失、挿入、置換、または他の修飾を含む)および選択マーカー(典型的には、URA3のような対抗選択マーカー)を含む。典型的には、上記カセットは、標的領域の5'部分に対して相同である部分と、標的領域の3'部分に対して相同である部分とを含む。
いくつかの態様においては、標的核酸に対して相同性を有している核酸で選択マーカーを置き換えるための第2の標的化構築物を作製する。この第2の標的化構築物は、標的領域またはその一部に対する相同性を含み、任意で、標的領域内の相同部分と比較して、一つまたは複数の突然変異、欠失、挿入、置換、または他の修飾を含む。
いくつかの態様においては、標的領域付近、その中、またはそれに隣接する二本鎖の断裂の導入のために、上記標的化カセットはさらに、特定の配列でdsDNAのような核酸を切断するエンドヌクレアーゼのような酵素をコードする遺伝子を含み、さらに、典型的には、上記カセットの末端または末端付近に、上記酵素により認識されるヌクレオチド配列を含む。典型的には、上記遺伝子の発現を特定の環境条件(例えば、唯一の炭素源としてのガラクトースの存在下)で宿主細胞の増殖を誘導することができるように、上記エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、誘導性プロモーター(例えば、GAL1プロモーター)の制御下にある。
いくつかの態様においては、タンデム反復配列の作製のために、上記標的化カセットは、上記標的核酸に対するさらなる相同部分を含む。これは、相同組換えにより上記カセットが組込まれると、タンデム反復配列が標的核酸中に存在するように、標的核酸の長さに沿って、標的領域の上流または下流に存在する。
切断とタンデム反復配列とを使用する場合は、上記カセットは、(タンデム反復を作製するための)標的核酸の長さに沿って標的領域の上流または下流にある標的核酸の一部分に対する第1の相同部分と、(相同組換えによるカセットの挿入のための)それぞれ標的領域の3'部分および5'部分に対する第2および第3の相同部分と、誘導性プロモーターの制御下にある酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)をコードする核酸と、エンドヌクレアーゼにより認識されるヌクレオチド配列と、選択マーカー(典型的には、対抗選択マーカー)とを含む。典型的には、(標的領域の3'および5'部分に対する)第2および第3の相同部分は、第1の相同部分(タンデム反復を生じる)を含む配列の側方にある。一つの局面においては、第2および第3の相同部分はさらに、酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)をコードする核酸を含む配列の側方にある。これらはまた、典型的には、選択マーカーを含む配列の側方に存在する。
一つの局面においては、酵素により認識されるヌクレオチド配列は、第2または第3の相同部分に隣接して配置し、これは、第1の相同部分(タンデム反復領域を生じる)に対して構築物の反対側の末端上にある。
一つの局面においては、(カセットの組込みのための)第2または第3の相同部分の一方または両方が、上記標的核酸中の相同部分と比較して、一つまたは複数のヌクレオチドの突然変異、挿入、または欠失を含む。
以下の実施例においてTREC中で使用した例示的な標的化カセットを、図1OCに説明する。この例示的な構築物は、I-SceI認識部位、GAL-1プロモーターの制御下にあるI-SceIエンドヌクレアーゼをコードする核酸、URA3対抗選択マーカー、および標的領域の上流の標的核酸配列の一部分(標的核酸の中で「反復」と表示し、また図示する)に対して相同である部分(「反復」と表示する)を含む。上記カセットはさらに、I-SceI部位の5'である標的領域に対する50bpの相同部分と、「反復」相同部分の3'である上記標的領域に対する50bpの相同部分とを含む。認識部位、エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子および誘導性プロモーター、ならびに選択マーカーを含む標的化カセットの部分を、「CORE」カセットと呼ぶ。このカセットを、ゲノムの標的領域の450塩基対部分を欠失させることにより、本提供の方法を使用して酵母宿主に移入したM.ゲニタリウムドナーゲノムを宿主細胞内で修飾するために、以下の実施例4Cに記載するように使用した。類似する構築物を、本提供の方法を使用して酵母宿主細胞内でM.ミコイデスLCゲノム中のII型制限酵素遺伝子を欠失させるために使用した。
図10A〜Dに記載し、本明細書中の別の場所に記載するもののようなこれらの標的化カセットのバリエーションもまた、本提供の方法とともに使用することができる。例えば、カセットのバリエーションは、標的核酸に、突然変異、置換、挿入、および他の修飾(例えば、修飾ヌクレオチド)を導入するために使用することができる。提供するカセットおよび方法のこのような修飾は当業者に明らかであろう。
上記カセットは、本明細書中に記載する方法および市販されている方法のような、多数の周知の核酸合成方法、増幅方法、連結方法、ならびにアセンブリ方法のうちの任意のものを使用して作製することができる。一つの態様においては、上記カセットは、上記カセットの一部分を構成する核酸断片の増幅および/またはアセンブリによる。上記断片は、周知の方法(例えば、化学合成または所望のヌクレオチド配列を含むプラスミド、ゲノムDNA、もしくは他の核酸からの増幅(例えば、PCR))を使用して作製することができる。
一つの局面においては、上記断片を、融合PCRを使用し、組換えPCR技術を使用して、Shevchuk, N.A.et al, Nucleic Acids Res, 32, e19(2004)に記載されているように、カセットを形成するようにアセンブリする。
この方法を用いる場合は、キメラ融合プライマーを、連結させようとする2つの異なる断片を増幅するために使用し、これを次いで、プライマーレスポリメラーゼ反応(primer-less polymerase reaction)(例えば、プライマーレスPCR)において連結させる。キメラプライマーはそれぞれ、連結させようとする第1の断片に対する相同部分と、連結させようとする第2の断片に対する相同部分とを含む。したがって、プライマーを使用して両方の断片を増幅させることにより、増幅産物の間に重複する相同領域(例えば、産物の末端にある40bpの相同性)が生じる。
次に、これらの産物を、重複部分の伸長により産物を連結させるために、プライマーの非存在下で、低いアニーリング温度(例えば、56℃でまたは約56℃で)を用いる多数回(例えば、10回、11回、12回、13回、またはそれ以上)のサイクルのPCRに使用する。この様式で連結させた多数の産物を、その後、続く融合PCR工程において連結させることができる。典型的には、上記融合産物を、さらなるPCR反応(例えば、所望のカセットの末端に付加しようとするさらなる配列を含むプライマーを用いて)において再度増幅する。
他のアセンブリ方法が公知であり、カセットを作製するために使用することができる。例えば、上記カセットは、記載するような従来の合成方法を使用して調製することができ、また、商業的な供給業者から購入することもできる。他のアセンブリ方法を使用することができ、例えば、5'エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、およびDNAリガーゼの協調した作用による、1工程の等温DNAアセンブリ法(isothermal DNA assembly method)が、Gibson et al, Nature Methods 6, 343-345(2009)に、および2009年2月19日に提出された米国特許出願第12/371,543号に記載されている。この方法を用いる場合は、DNA断片に、最初に、5'エキソヌクレアーゼによって凹みを作り(recess)、これにより、一本鎖の突出を生じさせる。次に、これを特異的にアニーリングさせ、続いてギャップを埋め、ポリメラーゼとリガーゼを使用して共有結合により連結させる。他のアセンブリ方法は、米国特許出願公開第US2007/0037197A1号および同第US2007/0037196A1号に記載されている。
vi.形質転換および修飾の分析
修飾のために、上記カセットにより、ドナーゲノム(例えば、本提供の方法に従って産生したもの)を含有している宿主細胞を形質転換する。形質転換方法は周知である。一つの例においては、上記カセットを、2μg〜3μgのPCR産物と25μgのキャリアDNA(サケの精巣DNA, Sigma, St.Louis, MO)とを用いて、公開されている方法(Gietz, D.et al., Nucleic Acids Res, 20, 1425(1992))にしたがって、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用してドナーゲノムを含有している酵母宿主細胞に導入する。
カセットが標的核酸に組込まれた細胞を選択するために、細胞をウラシルを含まない培地中で増殖させ、個々のURA+形質転換体を選択し、任意で、カセットが挿入される領域の側方にある標的ドナー核酸の一部に特異的に結合する診断用プライマーを使用して、PCRにより分析する。カセットが正確に挿入されているかどうかを、カセットが挿入されているかどうかに応じて異なるサイズのアンプリコンを生じるそのようなプライマーを使用してアンプリコンの存在とサイズとを評価することにより決定する。例を、以下の実施例4C(ii)に記載する。正確な挿入を含む細胞を、次回の相同組換えに使用する。
dsの断裂を生じる酵素の誘導性発現を行う場合は、その後、対抗選択マーカーを含有している細胞を、誘導性プロモーターからの酵素の発現を誘導する条件下で増殖させる(例えば、ガラクトースを含有している培地中での増殖)。一つの例においては、dsの断裂を導入する酵素の発現を誘導するために、細胞を、唯一の炭素源としてガラクトースを含有しているSG(合成ガラクトース)-His培地上で、例えば、4時間または24時間増殖させる。ガラクトース含有培地上での増殖を、対照として行うことができる。
いくつかの態様においては、選択マーカーを置き換えようとする、標的核酸に対して相同である配列を含む第2の核酸を、細胞に形質導入する。いくつかの場合には、この第2の核酸は、標的核酸と比較して、一つまたは複数の突然変異、欠失、挿入、または置換を含む。実施例4Aおよび4Bを参照のこと。他の場合は、第2の相同組換え事象が、ベクターの挿入後に標的核酸中に生じたタンデム反復を介して、自発的に起こる。TREC法を用いる場合は、これらの方法の組み合わせを、選択マーカーの除去のために使用する。
対抗選択マーカーの喪失を、喪失に有利である条件下での増殖により選択する。いくつかの局面においては、URA3をマーカーとして使用する場合は、そのような選択の前(例えば、2回目の形質転換の後)に、細胞を、URA3遺伝子を失った酵母細胞中に残っているオロチジン-5'-ホスフェートデカルボキシラーゼ(URA3遺伝子によりコードされる)を枯渇させるために、ウラシルの存在下で30℃で一晩増殖させる。その後、対抗選択マーカーを失った細胞を、URA3遺伝子の喪失を選択するために、喪失に有利である環境下(例えば、5-FOAの存在下、例えば、5-FOAを含有しているHISプレート上)で選択する。挿入部位の側方にある同じまたは異なる診断用プライマーを使用するPCR分析を、上記カセットの欠失を確認するために行うことができる。
マルチプレックスPCRを、本提供の修飾方法を使用して修飾したドナー核酸(例えば、ゲノム)の完全性を分析するために行うことができる。例えば、マルチプレックスPCR(MPCR)は、D.G.Gibson et al, PNAS USA, 105:20404-9(2008)に記載されているように行うことができる。
PCRおよびMPCR分析のための、宿主細胞からの全DNAの単離は、宿主細胞のタイプに応じて、本明細書中に記載する単離方法を使用して行うことができる。一つの例においては、酵母宿主細胞からのゲノムDNAの単離を、実施例3に記載するように行う。それぞれのアンプリコンの存在を確認できるように、ドナーゲノムの長さに沿った(例えば、酵母の中の環状の細菌ゲノムの周囲の)様々な部分に対する相同性を持ち、様々なサイズを有しているMPCRプライマーのセットを設計することができる。例えば、D.G.Gibson et al, PNAS USA, 105:20404-9(2008)を参照のこと。マルチプレックスPCRは、Qiagen Multiplex PCR Kitのような市販されているキットを含む周知の方法を使用して行うことができる。例示的な反応を以下の実施例4Aに記載する。各アンプリコンの存在は、修飾したゲノムが完全であることを示し、これは、典型的には、自発的な望ましくない組換え事象が起こらず、望ましくない修飾が生じないことを確実にするために行う。
ドナー、宿主、およびレシピエント細胞のタイプに応じて、他の修飾方法を、本提供の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、周知のCre-LoxPシステムを使用することができる。Cre-loxPシステムは、多数の様々な生物の中の選択マーカーおよび大きなゲノムDNAセグメントを除去するためにうまく使用されている、公知の効率的な部位特異的組換え法である。突然変異体loxP遺伝子を持つCre-loxP突然変異誘発構築物を、他の方法について記載するように例えば2回のPCR反応により産生することができる。loxPの突然変異は、Araki, K.et al, Nucleic Acids Res, 25, 868-872(1997)に記載されているように、逆の組換え事象を妨げる。例を以下の実施例4Dに記載する。一つの例においては、上記修飾方法は、Cre-LoxPシステムによる修飾と同じく効率的であるか、実質的に同じく効率的であるか、または修飾よりもさらに効率的である。
F.修飾したドナーゲノムおよび核酸の、レシピエント細胞への移植
宿主細胞またはレシピエント細胞へのドナー核酸(ドナーの染色体および/またはドナーゲノムを含む)の移植のための方法を本明細書中で提供する。ドナー核酸は、宿主細胞からレシピエント細胞へと移植することができる。ドナー核酸には、宿主細胞内で修飾したものが含まれる。別の態様においては、上記ドナーゲノムを、例えば、レシピエント細胞への天然のゲノムの移植により、ドナー細胞からレシピエント細胞に直接移植する。複数の移植方法が、宿主細胞内で増殖させ、修飾したドナーゲノムを、遺伝子産物をゲノムから発現させることができる環境に移植により効率よく戻すために有用である。レシピエント細胞は、ドナー細胞または生物と比較して、同じ種の細胞であっても、また近い関係にある種の細胞であってもよい。
小さい核酸断片(例えば、遺伝子セグメント)を宿主細胞にクローニングし、それらを、もとの細胞もしくは近い関係にある細胞に移植して戻すための方法は公知であるが、一般的には、その後で単離し、もとのドナー細胞のゲノムに挿入して戻す小さい核酸の操作(例えば、一つの核酸断片の修飾)に限定される。Lartigue et al., Science 317, 632(2007)により記載されているように、マイコプラズマの全ゲノムが、ドナーであるマイコプラズマ細胞から、異なる種の近い関係にあるレシピエントであるマイコプラズマ細胞に直接うまく移植されており、この移植には遺伝子産物の発現の成功が伴っていた。
しかし、利用できる移植方法は、大きな核酸(例えば、ゲノムおよび染色体)を、宿主細胞からあまり近い関係にはないレシピエント細胞(例えば、その中でゲノムを増殖させる宿主細胞と比較して、異なる生命の分岐の細胞)に移植するそれらの能力に関して限定される。例えば、利用できる方法は、真核生物宿主から原核生物レシピエントへの移植に限定される。
例えば、真核生物宿主中で増殖させた原核生物のドナーゲノムを原核生物のレシピエントへと移植することは、核酸の回収、メチル化、不和合性および毒性の問題により限定され得る。移植されたドナー核酸(検出可能数)を含有している十分な数のレシピエント細胞を生じさせるためには、十分な量の精製した、インタクトなドナー核酸を宿主細胞から回収する方法が必要である。
レシピエント細胞中に存在する(おそらく、ドナー細胞中にも存在する)が、宿主細胞中には存在しない制限修飾システムによって、宿主細胞内で増殖させたドナー核酸を移植すると不和合性を生じる可能性がある。例えば、サッカロミセス・セレビジエ酵母宿主細胞は、いくつかの細菌細胞の中に存在する制限修飾システムを含まないので、酵母宿主中での増殖後に単離した細菌のゲノムは、細菌のレシピエント細胞の制限修飾システムの影響を受ける可能性がある(Holt et al., Bioessays 29, 580(2007))。したがって、酵母細胞中で修飾し、増殖させた細菌のゲノムを、ドナー遺伝子産物をその中で発現させることができる細胞(例えば、ドナー細胞および他の細菌のレシピエント細胞)へと移植することには、移植したゲノムがレシピエント細胞と不和合性であるというリスクがある。
さらに、それにもかかわらず、制限修飾システムを含まないそのような酵母宿主は、ドナー核酸(例えば、細菌のゲノム)を修飾することができるDNAメチルトランスフェラーゼを発現することができ、それにより、レシピエント細胞(例えば、細菌)に移植するとそれらの活性化(例えば、遺伝子産物の発現)を阻害する。
さらに、宿主細胞中での増殖および修飾後に単離したドナーゲノムの構造と立体構造は、ドナー生物とより近い関係にある細胞中で増殖させた同じゲノムの立体構造および構造とは異なる可能性がある。このような差異は、ドナー核酸をレシピエント細胞に移植により戻すことにネガティブな影響を及ぼし得る。本明細書中に記載する移植方法は、宿主細胞中で修飾したおよび/または増殖させたドナーゲノムの、遺伝学的に異なるレシピエント細胞への(例えば、真核生物宿主から原核生物レシピエントへの)移植の成功についてのそのような限定を克服する局面を含む。中でも、これらの局面は、インビトロでのメチル化、宿主細胞のタンパク質を分解させるための酵素での処理、および制限修飾システムを欠いている(例えば、レシピエント細胞中でのこれらのシステムの突然変異による)レシピエント細胞への移植である。本提供の移植方法の成功を示している例示的な研究を、以下の実施例3および実施例5に詳細に記載する。
図8は、本提供の移植方法の3つの局面を模式的に説明する。第1のアプローチ(「1」と表示する矢印で示す)においては、ドナーDNAを、例えば、β-アガラーゼでの処理を用いて、融解させたアガロースプラグの中で単離し、レシピエント細胞に直接移植する。この第1のアプローチは、通常、核酸を、類似する細胞間で移植し、不和合性の問題が懸念されない場合に使用する。第2のアプローチ(「2」と示す)においては、第1の方法と同様に、レシピエント細胞を、ドナー核酸の移植の前に制限酵素を突然変異させるために修飾する。第3のアプローチ(「3」と示す)においては、レシピエントのR-Mシステムと立体構造の変化とからドナー核酸を保護するために、アガロースプラグ中のドナー核酸について、メチル化反応と除タンパク質反応を行い、その後、融解と移植を行う。別の局面においては、メチル化は、除タンパク質を伴わずに行う。
図16は、本提供の移植方法のさらなる局面を模式的に説明する。細菌のゲノムを酵母に移動させ、変更し、そしてゲノムの移植により細菌にインストールして戻すことができる。酵母ベクターは、形質転換により細菌のゲノムに挿入することができる。この細菌のゲノムを酵母にクローニングする。クローニング後、酵母の遺伝学的方法のレパートリーを、細菌のゲノムの中に一つまたは複数の挿入、欠失、再構成、またはそれらの任意の組み合わせを作製するために使用する。この変更したゲノムを、その後、単離し、変更した細菌を作製するためにレシピエント細胞に移植することができる。いくつかの場合は、移植前に、レシピエント細胞の制限システムからドナーである細菌DNAを保護するために、ドナーである細菌DNAをメチル化することが必要であり得る。このサイクルは、新しく変更したゲノム(点線の矢印)から出発する反復様式において繰り返すことができる。
i.宿主細胞またはドナー細胞からのドナー核酸の単離
第1の工程において、ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)を宿主細胞またはドナー細胞から単離する。細胞からの核酸の単離のための方法は周知であり、これには、ゲノムDNA(全ゲノムを含む)の単離のための方法、および細胞小器官のゲノムを単離するための方法が含まれる。本明細書中に記載する方法を含む任意のそのような方法を、ドナー核酸を単離するために使用することができる。当業者は、方法の選択が、単離しようとする核酸のタイプ、およびそれを単離する細胞のタイプに依存することを理解すると考えられる。
典型的には、大きな核酸(例えば、ゲノム)の単離は、以下の実施例に記載するように、アガロースプラグの中で行う。
記載する移植方法のいくつかの局面は、効率と、多量の質の高い移植した核酸とを提供する。一つの局面においては、ドナー核酸を含有している細胞を、ドナー核酸の単離の前に、クロラムフェニコールまたは類似する物質の存在下で増殖させる。クロラムフェニコールは、単離した核酸試料(例えば、アガロースプラグ)中でコンパクトな、完全に複製されたドナーゲノムおよび染色体を得るために使用する。進行中の複製の回と同調させるために、さらなる回の複製を阻害すること(Drakulic and Errera, Biochim Biophys Acta 31, 459(1959);Skarstad et al, EMBO J 5, 1711(1986);Bernander et al., J Bacteriol 177, 1670(1995);Skarstad et al., Flow cytometry applications in cell culture A.N.E.Mohamed Al-Rubeai, Ed.(CRC Press, New York, 1996)pp.241-255)、およびコンパクトな核様体を阻害すること(Murphy and Zimmerman, J Struct Biol 133, 75(2001);Seto and Miyata, J Bacteriol 181, 6073(1999))が公知である。マイコプラズマ培養物中のクロラムフェニコールの存在は、アガロースプラグ中でコンパクトな、完全に複製されたゲノムを得るための手助けとなり得る。
a.宿主細胞からの単離
ドナー核酸を宿主細胞から単離する場合は、ドナー核酸を、宿主細胞と適合するプロトコールを使用して、アガロースプラグ中で単離することができる。一つの局面においては、宿主細胞が酵母である場合は、アガロースプラグを、酵母DNAの抽出のために製造業者が推奨する説明書にしたがって、任意の改変を加えて、例えば、CHEF mammalian Genomic DNA Plug Kit(Bio-Rad)を用いて調製することができる。一つの非限定的な例においては、細菌のドナー核酸を含有している酵母宿主細胞の培養物を、OD600がおよそ1.5に達するまで、選択培地中で30℃で増殖させる。一つの例においては、プラグあたりに利用できるドナー核酸の量を増大させるために、(製造業者が推奨する6×lO8個の細胞の代わりに)6×lO9個の酵母細胞を、1mLのプラグあたりに使用する。アガロースプラグ中に包埋した酵母宿主の細胞壁を消化する。細胞壁の消化は、CHEFキットの製造業者が推奨するように、リチカーゼ(lyticase)(Biorad)を使用して、または1OOT(β-1,3-グルカンラミナリペンタオヒドロラーゼ(β-1,3-glucan laminaripentaohydrolase);USB, Cleveland, OH)を使用して行うことができる。一つの例においては、Zymolase(商標)酵素を、5mg/mLの濃度でプラグの中および外に添加する。上記混合物を、37℃で2時間置いておくことができる。
一つの例においては、1×TE緩衝液(20mMのTris-HCl(pH 8);50mMのEDTA)での洗浄後、包埋した酵母細胞を溶解させ、1mLのプラグあたり200μlのプロテイナーゼKを補充した、5mlのプロテイナーゼK反応緩衝液[100mMのEDTA;0.2%のデオキシコール酸ナトリウム;1%のラウリルサルコシンナトリウム;pH 8.0]とともに50℃で24時間の2回のインキュベーションにより、タンパク質を消化する。上記アガロースプラグを、40mLの1×TE緩衝液を用いて撹拌しながら室温で4回、それぞれ1時間洗浄する。その後、試料を、同じ緩衝液中で4℃で保存する。いくつかの場合には、(例えば、宿主DNAの除去またはドナーゲノムを直線化するための)続く工程において単離した核酸を消化することが所望される。そのような場合は、1mMのフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)を、2回目の洗浄の間に添加する。
ドナー核酸が細胞小器官のゲノムである場合は、単離プロトコールを、本明細書中で考察する細胞小器官のゲノムの単離方法と同様に、細胞小器官のゲノムを単離するように改変する。
b.宿主核酸の除去
宿主細胞からのドナー核酸の単離のためには、宿主核酸を除去することが所望される場合がある。一つの例においては、酵母宿主細胞からの細菌ドナーゲノムの単離のために、酵母のゲノムDNAもまた、宿主細胞から抽出する細菌の核酸とともに単離される。一つの局面においては、単離には「浄化」工程が含まれる。ここでは、混入している宿主核酸を、例えば、宿主核酸を認識するが、ドナー核酸は認識しない制限酵素を用いて除去する。一つの例においては、混入している酵母のゲノムDNAを除去するために、プラグを、酵母のゲノムDNAを特異的に消化する制限酵素のカクテルで処理する。
一つの例においては、内因性の宿主DNAプラグの除去を、宿主のゲノムDNAを特異的に切断するが、ドナーのDNAはインタクトなまま残す制限酵素(例えば、500μLの反応容量中の50ユニットのAsiSI、RsrII、およびFseI酵素(New England Biolabs, Ipswich, MA))とともに、37℃で一晩のプラグのインキュベーションすることにより行う。その後、プラグを、1mLの1×TE緩衝液で1時間、室温で洗浄し、プラグから消化した宿主DNA断片を除去するために、1%のTAEアガロースゲル上に充填する(120分間、120ボルト)。
宿主のゲノムDNAが直鎖状であり、ドナーのゲノムが環状である別の例においては、宿主のゲノムDNAを、パルスフィールドアガロースゲル電気泳動により除去し、これによって、宿主のゲノムDNAをウェルの中に留め、ドナーのゲノムDNAを電気泳動によりウェルの外に流し出す(Lartigue et al., Science 317, 632(2007))。一つのそのような例においては、酵母のプラグについて、外形クランプ均一電界電気泳動(contour-clamped homogenous electric field)(Chu et al, Science 234, 1582(1986))を用いて、Bio-RadによるCHEF DR IIIIを使用して、1×TAE緩衝液中の1%のLMPゲルの中で電気泳動を行う。典型的には、パルス時間を、3.5V/cmで、24時間かけて60秒から120秒までの傾斜をつける。電気泳動後、プラグをウェルから取り出し、1×TE緩衝液中で4℃で保存する。
いずれかの方法による宿主DNAの分離後、さらなる処理のために、アガロースプラグをウェルから取り出すことができる。一つの例においては、取り出したプラグを、1mLの0.1×TE緩衝液中、1時間を2回洗浄し、BSA(100μg/mL)を補充した1mLの1×NEB緩衝液2(New England Biolabs, Ipswich, MA)中で1時間、平衡化させる。ドナーゲノムDNAを、これをアガロースゲル上で泳動するために直線化するためには、プラグを制限酵素とともにインキュベーションすることがある。一つの例においては、プラグを、50ユニットのPspXI制限酵素とともに37℃で一晩インキュベーションする。インキュベーション後、プラグを、1mLの1×TE緩衝液で室温で1時間洗浄し、パルスフィールドゲル上に充填する。
別の例においては、宿主DNAを、形質転換の前に除去しない。
c.ドナー細胞からの単離
ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)を、ドナー細胞からレシピエント細胞に直接移植する別の態様においては、ドナー細胞と適合する単離方法を使用する。一つの例においては、ドナー細胞からのドナー細菌ゲノムの単離のために、ゲノムDNAを含有しているアガロースプラグを、CHEF mammalian Genomic DNA Plug Kit(Bio-Rad)を改変を加えて使用して調製する。
一つの例においては、細胞(例えば、ドナーゲノムを含有しているM.ミコイデスLC細胞またはドナーゲノムを含有している酵母細胞)を、所望のODまで、適切な培地の中で増殖させ、その後、90分間、100μg/μlのクロラムフェニコールとともにインキュベーションし、この後、回収する。
マイコプラズマドナー細胞からのインタクトな全ゲノムDNAの単離のための例示的なプロトコールを、任意の改変(例えば、単離前の細胞培養物に対する修飾)を加えて、Lartigue et al, Science 317, 632(2007)に記載されているように行う。一つのそのような例を実施例2B(ii)に記載する。
d.単離したドナー核酸の定量化
単離したドナー核酸の量は、移植の前に定量化または推定することができる。一つの態様においては、宿主細胞から単離したドナー核酸をアガロースゲル上に泳動し、既知の量のドナー細胞から単離したドナー核酸と比較する。例を実施例2Bに記載する。別の態様においては、単離したドナー核酸の量を、例えば、UV分光光度法により定量化する。一つのそのような例を実施例2B(iv)に記載する。
ii.単離したドナーゲノムおよび/またはレシピエント細胞の処理
本提供の方法は、宿主、ドナー、およびレシピエント細胞/核酸の間での不和合性の障害を克服するための工程を含む。このような障壁は、本明細書中に記載され、宿主細胞由来のドナーゲノムのような大きな核酸を、その中でドナーの遺伝子産物を発現させることができるレシピエント細胞へと移植することを制限し得る。これは特に、宿主細胞がドナーおよびレシピエント生物と近い関係にはない(例えば、異なる生命の分岐に由来する)場合にそうである。このような障壁は、真核生物宿主中で増殖させた原核生物のゲノムの、原核生物レシピエントへの移植に関係する。
上記障壁は、不和合性および毒性を含む多数の要因により起こり得る。例えば、レシピエント細胞中に(およびおそらくはドナー細胞中にも)存在するが、宿主細胞中には存在しない制限修飾(R-M)システムが、宿主細胞の中で増殖させたドナー核酸を移植する際に不和合性を引き起こす可能性がある。制限修飾システムは周知であり、外来DNAから生物を防御するために、通常は細菌生物により使用される。制限修飾システムは、一般的に、外来DNA中の特定の核酸配列を認識および切断するためのタンパク質と、修飾(例えば、メチル化)のための酵素を含み、これにより、上記生物自身の核酸中のそのような配列を保護する。制限修飾システムとしては、I型システム、II型システム、およびIII型システムが挙げられる。I型システムは、一般に、核酸配列を個別に認識する(特異性)、切断する(制限)、および修飾する(修飾)3つのタンパク質の複合体を含む。したがって、同じ複合体がDNAをメチル化し、そして切断する。II型システムは、一般に、それぞれ、DNA配列をメチル化する、および切断する、2つの別々の修飾酵素と制限酵素を含む。III型システムは、修飾および切断のためのヘテロ二量体複合体を形成する、制限酵素と修飾酵素とを含む。上記修飾酵素はまた、それら自身のDNAをメチル化することもできる。
さらに、宿主細胞(制限修飾システムを含まないものを含む)によるDNAメチルトランスフェラーゼの発現が、レシピエント細胞への移植後にドナー核酸を修飾し、それらの活性化(例えば、遺伝子産物の発現)を阻害し得る。宿主細胞中での増殖および修飾後のドナー核酸の構造および立体構造の変化は、ドナー核酸をレシピエント細胞に移植により戻すことにネガティブな影響を及ぼす可能性がある。
本提供の移植方法は、宿主細胞中で修飾および/または増殖されたドナーゲノムを、遺伝学的に異なるレシピエント細胞に(例えば、真核生物宿主から原核生物レシピエントへ)うまく移植するために、そのような制限を克服するための工程を含む。上記工程としては、(1)単離したドナー核酸の処理、および(2)レシピエント細胞の修飾が挙げられる。
a.制限修飾システムの不和合性を評価するためのインビトロアッセイ
インビトロでのアッセイを、宿主細胞、ドナー核酸、およびレシピエント細胞間に、例えば、様々な生物間での制限修飾システムの不一致が原因である不和合性の問題が存在するかどうかを決定するために利用することができる。ドナーゲノムにより、またはレシピエント細胞により発現される制限修飾システムは、宿主細胞へのドナーゲノムの移植および活性化の成功を損なう可能性を有し得る。
異なるタイプの生物の宿主細胞中で増殖させたドナーゲノム(例えば、酵母の中で増殖させた細菌ゲノム)について起こり得る制限修飾の問題を試験するために、ドナー、宿主、および/またはレシピエント細胞を、制限修飾システムに関して評価する。ドナーおよび/またはレシピエント中の制限修飾システム(ならびに、上記システムの認識部位特異性)の存在は、公知の方法を使用してドナーゲノムの配列から同定することができる。World Wide Webアドレス:rebase.neb.com/rebase/rebase.html.で入手することができるREBASE(The Restriction Enzyme Database)もまた参照のこと。
R-Mシステムの存在をさらに確認するために、修飾酵素の存在をインビトロで試験することができる。この目的のために、予想した部位を認識する市販されている制限酵素を使用して、予想した認識部位のメチル化状態をプローブすることができる。例えば、予想した制限酵素システムに対応している市販されている制限酵素アイソシゾマーを、ドナーゲノムおよびレシピエントゲノムが、適切な制限酵素部位でメチル化されるかどうかを決定するために、消化反応において使用することができる。予想した部位でメチル化されるゲノムDNAを、複数の部位を認識する市販されている酵素による切断から保護することができる。レシピエントゲノムDNAが切断から保護されている場合は、R-Mシステムの修飾酵素の存在が確認される。このプロセスはまた、ドナーゲノムが上記システムから保護される可能性が高いかどうかを評価するために、ドナー細胞から単離したゲノムDNAについて行うこともできる。一例を以下の実施例2Dに記載する。
さらに、レシピエント細胞およびドナー細胞から調製した、細胞を含まない抽出物を、予想した制限酵素が細胞中に存在するかどうか、および細胞中で活性であるかどうかを決定するために使用することができる。細胞を含まない抽出物を作製するための方法は周知であり、細胞のタイプに応じて任意のものを、本提供の方法とともに使用することができる。一つの非限定的な例においては、マイコプラズマ細胞を含まない抽出物を、以下の実施例2D(ii)(b)に記載するように調製する。予想した制限酵素部位を含むDNAを、その配列でDNAを認識して切断する酵素が抽出物中に存在することを決定するために、制限消化において、細胞を含まない抽出物とともにインキュベーションする。消化した試料を、切断を決定するためにアガロースゲル上で泳動する。所望する場合は、特定の部位でメチル化したDNAまたは特定の部位でメチル化していないDNAを、上記アッセイにおいて比較することができる。細胞を含まない抽出物はまた、ヌクレアーゼを阻害するためのEDTA(例えば、10mMのEDTA)の添加により、メチルトランスフェラーゼ活性の供給源として使用することができる。あるいは、組換えメチルトランスフェラーゼ(例えば、大腸菌のdamメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)を、消化アッセイの前にDNAをメチル化するために使用することができる。メチルトランスフェラーゼもまた精製することができる。このような消化アッセイの一例を、以下の実施例2D(ii)(b)に記載する。
b.ドナー核酸のメチル化
ドナー核酸は、ドナー細胞からの単離の後、レシピエント細胞への移植の前に、インビトロでメチル化することができる。ドナーゲノム(例えば、宿主細胞中で増殖させたもの)のメチル化により、宿主細胞の制限修飾システム、および/またはドナーゲノムによりコードされる制限修飾システムからそれらを保護することができる。一つの局面においては、レシピエントのR-MシステムおよびドナーによりコードされるR-Mシステムからの、宿主細胞中で増殖させたドナー核酸の保護の方法を提供する。他の局面においては、これらの生物のうちの一つのR-Mシステムからドナーゲノムを保護する方法を提供する。例えば、多くの場合は、レシピエントのR-Mシステムからドナーゲノムを保護するであろう酵素でドナーゲノムをメチル化することが可能である。これは、対応するドナー制限酵素の致死濃度に達する前に、ドナーのメチルトランスフェラーゼによりドナー核酸がメチル化される場合にそうである。
以下の実施例2に記載するように、M.カプリコルムレシピエント細胞に移植する際には、M.ミコイデスLCドナーゲノムDNAをそれ自身の制限システムから保護する必要はなかった。このことは、制限酵素活性が致死レベルに達する前にドナーゲノムがメチル化されることを暗に意味している。ほとんどのエンドヌクレアーゼ遺伝子とメチルトランスフェラーゼ遺伝子の対を、大腸菌の中で同時にクローニングできるので、これは驚くべきことではない。Holt et al, Bioessays 29, 580(2007)を参照のこと。当業者は、ドナー細胞、宿主細胞、およびレシピエント細胞を、ドナーゲノムを移植前に保護すべきかどうかを評価するために、それらの制限修飾システムに関して評価できることを理解すると考えられる。
酵母由来の他の細菌ゲノムを移植する場合は、その自身の制限酵素からドナーゲノムを保護するために、(例えば、以下に記載するように、ドナー由来の細胞を含まない抽出物もしくは精製したメチルトランスフェラーゼを使用するインビトロでのメチル化によるか、または、ドナーゲノム中での制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の不活化により)インビトロでドナーゲノムをメチル化することが必要な場合がある。インビトロでのメチル化および制限消化は、以下に記載するように、どのメチル化反応が特定の移植研究に必要であり得るかを決定するために使用することができる。
典型的には、メチル化は、それからの保護が所望されるR-Mシステムのものと同じ、またはそれと類似するメチルトランスフェラーゼを使用して行う。メチル化は、細胞抽出物(例えば、レシピエント細胞抽出物)から単離したメチラーゼ、または組換えにより産生し、精製したメチラーゼを使用して行うことができる。
一つの局面においては、レシピエントおよび/またはドナー細胞のR-Mシステムのメチラーゼを、組換え法を使用して外生的に発現させ、精製する。R-Mの予想により同定した全てのメチルトランスフェラーゼのコード配列を、酵母細胞または細菌細胞のような所望するシステムの中での発現のために、コドン最適化することができる。コード配列を含む断片を、本明細書中に記載する方法のような、多数の周知の合成合法および/またはアセンブリ方法のうちの任意のものを使用して構築することができる。一つの非限定的な例を実施例2E(i)(a)に記載する。ここでは、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸を、1工程の等温DNAアセンブリ法を使用して作製した。構築後、選択した細胞中での発現のために、この断片を発現ベクターにクローニングする。
複数のベクターを、遺伝子産物の発現のために細胞を形質転換するために使用することができる。例示的な発現システムとしては、BL21(DE3)コドンプラス(codon plus)細胞(Stratagene, La Jolla, CA)が挙げられる。メチルトランスフェラーゼの発現は、例えば、IPTGとのインキュベーションにより、細胞の中で誘導することができる。メチルトランスフェラーゼを、周知の方法を使用して細胞から精製することができる。一つの例においては、細胞溶解物を明澄化し、カラムで精製し、そしてメチルトランスフェラーゼを含有している画分を次のメチル化反応に使用する酵素緩衝液(例えば、50mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、50mMのNaCl、0.1mMのEDTA、10%のグリセロール)に対して透析する。その後、必要に応じて試料を濃縮することができる。例示的な発現プロトコールおよび精製プロトコールを、以下の実施例2E(i)(b)に詳細に記載する。
別の局面においては、R-Mシステムを有している細胞(例えば、レシピエント細胞またはドナー細胞)由来の粗抽出物を、宿主細胞から単離したドナー核酸をメチル化するために使用する。この局面は、レシピエント細胞または宿主細胞のR-Mシステム全てが決定されているかどうか不明である場合に有利であり得る。例えば、レシピエント細胞のR-Mシステムが明らかにはなっていない場合は、レシピエント細胞由来の粗抽出物を使用するメチル化により、全ての関連するメチルトランスフェラーゼがメチル化反応の中に存在することを確実にできると考えられる。適切な細胞抽出物を調製するための任意の周知の方法を使用することができる。マイコプラズマレシピエント細胞由来のメチルトランスフェラーゼを含有している粗細胞抽出物の調製の一例を、以下の実施例2E(ii)に記載する。細胞抽出物中のヌクレアーゼを、メチル化反応でそれらを使用できるようにするために、例えば、10mMのEDTAの添加により阻害することができる。
精製したメチルトランスフェラーゼまたはメチルトランスフェラーゼを含有している粗細胞抽出物を、宿主細胞から単離したドナー核酸をメチル化するために使用することができる。一つの例においては、ドナー核酸を含有しているアガロースプラグを洗浄し、メチル化緩衝液(例えば、100mMのTris-HCL(pH 7.5);10mMのEDTA;3μMのDTT、200μMのS-アデノシルメチオニン(SAM))中で平衡状態とすることができる。その後、プラグを、メチル化緩衝液と、粗細胞抽出物または精製したメチルトランスフェラーゼのいずれかを含有しているメチル化反応においてインキュベーションすることができる。SAMを含めずに並行して行った反応を対照として使用することができる。一つの局面においては、メチル化反応は、damメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)の存在下で行うことができる。メチル化後、各酵母プラグを、40μlのプロテイナーゼKを補充した1mlのプロテイナーゼK反応緩衝液中で、50℃で4時間インキュベーションすることができる。このプラグを、その後、45分間を4回、それぞれ1mLの1×TE緩衝液で洗浄し、そして、30分間を2回、それぞれ0.1×TE緩衝液上で、室温で穏やかに撹拌しながら洗浄することができる。最後の洗浄緩衝液を除去した後、プラグを融解させることができる。例を実施例3A(iii)に記載する。レシピエントR-Mシステムからのドナー核酸の保護についてのメチル化反応の有効性は、移植研究の前にインビトロで試験することができる。R-Mシステムの評価の結果に基づいて調整を行うことができる。このプロセスは、ドナーゲノムDNAまたはドナー核酸を含むプラスミドについてメチル化反応を実施することにより行うことができる。メチル化反応に続いて、メチル化によりドナー核酸を確実に保護するために、レシピエント細胞の制限酵素を使用して制限消化反応を行うことができる。一例を実施例2Eに記載する。
c.除タンパク質
粗抽出物とともにインキュベーションすることにより、続いて、移植の際に不和合性を起こす可能性があるドナーDNAの立体構造を変化させることができる。このような立体構造の変化は、実施例2B(iv)に記載するように、細胞抽出物の存在下または非存在下でインキュベーションしたドナーゲノムDNAを視覚化することにより評価することができる。したがって、いくつかの態様においては、ドナー核酸について、メチル化の後、移植の前に、粗抽出物中のタンパク質を除去するための除タンパク質工程を行うことができる。一つの局面においては、タンパク質は、プロテイナーゼ(例えば、プロテイナーゼK)を使用して除去することができる。例示的な処理においては、メチル化反応を行ったアガロースプラグを、プロテイナーゼK反応緩衝液およびプロテイナーゼK中で、50℃で4時間、さらにインキュベーションすることができる。プラグは、そのプラグの融解および移植に進む前に洗浄することができる。実施例2B(iv)および3A(iii)を参照のこと。
d.レシピエント細胞のR-Mシステムの遺伝学的修飾
いくつかの場合は、レシピエント細胞の制限修飾システムを、ドナー核酸またはゲノムの移植の前に不活化させることが必要であり得る。R-Mシステムの修飾は、インビトロまたはインビボで行うことができる。インビトロでのメチル化の代わりに、制限修飾システムを少なくともレシピエント細胞(およびおそらく、ドナーゲノムまたは核酸)から除去するか、または不活化させることができる。
レシピエント細胞のR-Mシステムの一つまたは複数の制限酵素を、酵素をコードする遺伝子の突然変異により不活化させることができる。このプロセスは、典型的には、移植前のドナー核酸のインビトロでのメチル化の代わりとして使用することができる。
しかし、ドナーゲノムの制限修飾システムの不活化は、いくつかの場合には実用的でない場合がある。例えば、移植の直後のドナーゲノムによりコードされる制限エンドヌクレアーゼの発現は、レシピエント細胞の常在性ゲノムを分解することにより、移植の駆動に役立ち得る。したがって、ドナーの制限修飾システムの除去はそのような場合には望ましくなく、メチル化を使用すべきである。当業者は、ドナー細胞、宿主細胞、およびレシピエント細胞のそれぞれを、R-Mシステムの不活化のための最良のシステムを同定するために、移植の前にこれに関して評価できることを理解すると考えられる。
任意の突然変異プロセスを、R-Mシステムを不活化させるために使用することができる。一例を以下の実施例2Fに記載する。ここでは、マイコプラズマレシピエント細胞中の単一の制限酵素をコードする遺伝子を、ドナー核酸の移植前に不活化した。その例においては、上記遺伝子を、ピューロマイシン耐性マーカーを割り込ませることにより突然変異させ、突然変異した遺伝子を含有している細胞の選択を可能にした。他の不活化方法を本明細書中で検討し、これには、突然変異した遺伝子を含有している細胞の選択にも使用することができる様々な耐性マーカーが含まれる。そのようなマーカーを本明細書中に記載し、これらは当技術分野でも公知である。そのような突然変異体レシピエント細胞から調製した細胞抽出物は、本明細書中に記載するようにメチル化反応において対照として使用することができる。
あるいは、ドナーゲノムを、インビボで、例えば、宿主細胞中に留めたままメチル化することができる。宿主細胞内でのインビボでのメチル化は、宿主ベクターにクローニングしたドナーまたはレシピエントのメチラーゼの発現により行うことができる。この局面は、ドナーゲノム中で望ましくない変化を起こす可能性があるので、あまり望ましくない場合がある。例えば、酵母の中での細菌のメチラーゼの発現は、酵母人工染色体(YAC)または酵母セントロメアプラスミド(YCp)のいずれかの中に入れたドナーである細菌ゲノムの変更を導く可能性がある、酵母の相同組換えを増加させることが示されている。この結果は、酵母宿主細胞が、上記細菌ゲノム(細菌のゲノムの、挿入された酵母ベクター配列の領域を除く)の完全性を維持するための選択圧下にはないという理由から起こり得る。当業者には、インビトロでのメチル化、インビボでのメチル化、または例えば、耐性マーカーの挿入によるR-Mシステムの不活化を、レシピエント細胞のR-Mシステムを不活化するために使用すべきかどうかを評価できることが理解されるであろう。
iii.レシピエント細胞への移植
単離および処理の後、ドナー核酸を、本明細書中に記載する方法または当技術分野で公知の方法を使用して、レシピエント細胞にさらに移植することができる。一つの例示的な移植プロトコールを、以下の実施例3に記載する。ドナーからマイコプラズマレシピエントにマイコプラズマゲノムを移植するために使用する一つの方法は、Lartigue et al, Science 317, 632(2007)に記載されている。このような方法は、ドナーゲノムに特別な特性を付与するために、扱いにくい細胞もしくは生物に由来するゲノムまたは核酸を、別の宿主の中で修飾するために使用することができる。その後、この修飾したゲノムを、同じドナー細胞に、またはある一定のドナー細胞に移植して戻し、それにより、レシピエント細胞に修飾したゲノムの表現型を付与することができる。
レシピエント細胞は、典型的には、ドナー核酸(例えば、ドナーゲノム)からの遺伝子発現をサポートするそれらの能力に基づいて選択する。真核生物宿主への細菌ゲノムの移入を、例示的な方法として本明細書中で提供するが、これは限定とは意図されない。例えば、細菌ゲノムを、好ましい遺伝子操作システムを有している真核生物宿主細胞(例えば、酵母)に移入し、その中で修飾した後、修飾したゲノムから遺伝子産物を発現させるために、上記ゲノムを細菌のレシピエント細胞に移植して戻す必要がある場合がある。本明細書中で考察するように、他のエレメントの中でも、翻訳および転写の差異、ならびに異なるコドン使用法が、宿主細胞内でのドナー遺伝子産物の発現を妨げる可能性がある。したがって、上記レシピエント細胞は、ドナー細胞もしくは生物と同じ種または類似する種のものであり得る。これは、多くの場合は、ドナーと同じ目または界のものである。当業者は、そこからの発現が所望されるドナーゲノムまたは他の核酸に基づいて、適切なレシピエント細胞を決定することができると考えられる。
アガロースプラグ中でのドナー核酸の単離後、宿主DNAを任意で除去する(例えば、消化および/または電気泳動による)ことができ、任意で、メチルトランスフェラーゼおよび/またはプロテイナーゼで処理することもできる。
アガロースプラグは、例えば、以下の実施例3A(ii)(b)に記載するように、β-アガラーゼI(New England Biolabs)とのインキュベーションにより融解させることができる。
移植は、形質転換を促進するために、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG-6000もしくはPEG-8000、または他のPEG)の存在下で行うことができる。最適なPEGを決定するために、PEGの供給源、量、およびサイズを変えることができる。一つの例においては、PEGは、PEG-2000、PEG-4000、PEG-6000、PEG-8000、PEG-10000、PEG-20000などである。PEGの濃度は、移植の条件に応じて変えることができる。濃度としては、例えば、5%もしくは約5%、または10%もしくは約10%が挙げられる。一例を以下の実施例3A(ii)(c)に記載する。融解させたプラグを、ゆっくりと振盪させながら、PEGの存在下にあるレシピエント細胞に添加して混合物とすることができる。細胞を回収することができ、遠心分離し、そして移植されたドナー核酸を含有しているレシピエント細胞を選択するための適切な選択培地を含有している培地中で増殖させることができる。一つの局面においては、細胞を培地上に播種し、コロニーが現れるまで、そのレシピエント細胞のタイプに適している条件下で増殖させる。コロニーを、突いて採取し(picked)、移植したゲノムまたは他のドナー核酸を含有しているレシピエント細胞の望ましい量が得られるまで、選択培地の中でさらに増殖させることができる。
必要に応じて、ドナー核酸に対するレシピエント細胞の特定の割合を維持することができる。一つの例においては、2μgのゲノムDNAあたり、107もしくは約107から108もしくは約108個のレシピエント細胞の割合を維持することができる。本提供の移植方法を、200ngの内因性ゲノムDNAについておよそ30の形質転換体、または一つの反応あたり500から1500の移植体、あるいは、宿主またはドナー細胞から得た他の適切な量となるように使用することができる。一つの非限定的な例においては、移植は、〜107個のレシピエント細胞、100ng/μlでドナーゲノムを含有している20μlの融解させたアガロースプラグを用いて行う。当業者は、ドナー核酸に対するレシピエント細胞の割合を、細胞のタイプに応じて変えることができ、実験的評価をこの比を最適化するために使用できることを理解すると考えられる。
例示的な移植方法を図8(「3」)に説明する。この方法では、宿主細胞およびレシピエント細胞中での増殖に適しているマーカーおよびエレメントを含むゲノムDNAを、アガロースプラグ中で宿主細胞から単離し、粗抽出物または精製したメチルトランスフェラーゼでメチル化し、そしてプロテイナーゼKで除タンパク質処理する。アガロースプラグを融解させ、DNAをレシピエント細胞とともにインキュベーションし、これをその後、選択培地上に播種する。例として、YCpエレメント、テトラサイクリンマーカー、およびβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を含むインタクトな全M.ミコイデスLCドナーゲノムDNAを、アガロースプラグ中で酵母宿主から単離し、M.ミコイデスLC粗抽出物でメチル化し、その後、プロテイナーゼKで除タンパク質処理することができる。メチル化されたゲノムDNAを含有しているアガロースプラグを融解させ、M.カプリコルムレシピエント細胞とともにインキュベーションし、その後、形質転換体を選択するために、テトラサイクリンを含有しているSP4培地上に播種した。
G.反復方法
本明細書中に記載する方法は、反復様式での多数回のゲノムまたは他の核酸の修飾に使用することができる。
一つの態様においては、上記方法により産生した変更した細胞(例えば、本提供の方法により、例えば、宿主細胞の中で修飾した、移植修飾ゲノムを含有しているレシピエント細胞)を、次の回の形質転換、修飾、および移植においてドナー核酸の供給源として使用することができ、これにより、さらなる修飾したゲノムおよび生物が得られる。
図1に説明するような一つの非限定的な例においては、上記方法により産生した変更細菌細胞(例えば、本提供の方法により、例えば、酵母の中で修飾した、移植修飾細菌ゲノムを含有しているレシピエント細胞)を、次の回の形質転換、修飾、および移植においてドナー核酸の供給源として使用することができ、これにより、さらなる修飾したゲノムおよび生物が得られる。
宿主細胞にドナーゲノムを移動させ、これを変更し、そしてこれをゲノムの移植によりドナーにインストールして戻す代替えの反復的な態様においては、宿主ベクターを、形質転換によりドナーゲノムに挿入する。そのゲノムを宿主細胞にクローニングする。クローニング後、宿主の遺伝学的方法のレパートリーを、ドナーゲノム中に挿入、欠失、再構成、または修飾の任意の組み合わせを作製するために使用する。その後、この変更したゲノムを単離し、表現型が変化した変更したレシピエント細胞を作製するために、レシピエント細胞に移植する。移植前に、レシピエント細胞の制限システムからドナーDNAを保護するために、ドナーDNAをメチル化することが必要な場合がある。このサイクルを、新しく変更したゲノムから出発して繰り返すことができる。
細菌のゲノムを酵母に移動させ、これを変更し、そしてこれをゲノムの移植により細菌にインストールして戻し、酵母ベクターを形質転換により細菌のゲノムに挿入する非限定的な例を、図16に提供する。そのゲノムを酵母にクローニングする。クローニング後、酵母の遺伝学的方法のレパートリーを、細菌のゲノム中に挿入、欠失、再構成、または修飾の任意の組み合わせを作製するために使用する。その後、この変更したゲノムを単離し、変更した細菌を作製するためにレシピエント細胞に移植する。移植前に、レシピエント細胞の制限システムからドナーDNAを保護するために、ドナーDNAをメチル化することが必要な場合がある。このサイクルを、新しく変更したゲノム(点線の矢印)から出発して繰り返すことができる。
酵母突然変異体の選択および対抗選択のための多数の利用できる、確認された、実証された信頼できる選択マーカーは、酵母宿主細胞内での多数回、例えば、無限の反復回のシームレスな核酸の変更を行うために本提供の方法を使用することを可能にする。そうでなければ扱いにくいゲノムまたは他の大きな核酸のクローニングしたコピーに対する連続的な修飾を、間断なく酵母の中で行うことができる。酵母の接合能力が、ゲノムおよび他の大きな核酸を修飾するために好ましい。酵母の組換え機構は、酵母の接合の間に活性化されると、ライブラリー(例えば、クローニングしたゲノムまたは核酸の変異体を含有しているコンビナトリアルライブラリー)を作製するために使用することができる。本明細書中に記載する態様は宿主細胞として酵母細胞を利用するが、本提供の方法は、例えば、宿主細胞の突然変異体の選択および対抗選択のための選択マーカーに関してすでに理解されているか、あるいはこれに関して評価する他の宿主細胞を含むことが理解されるであろう。この態様の多数のバリエーションを検討し、本出願の範囲に含む。
H.本提供の方法および組成物の使用
本提供の方法および組成物を、環境、エネルギー生産、および医薬剤に関する問題を解決するために使用することができる。本提供の方法および組成物は、商業的使用(例えば、免疫原、生物学的タンパク質および化学物質、ワクチン、バイオ燃料、および酵素のような有用なタンパク質)のために、ゲノムおよび生物ならびに他の産物を産生する、変更する、ならびに修飾することにおいて有用である。例えば、本提供の方法を、任意の生物(特に、そのゲノムを従来の方法によっては容易には操作できない生物のような、乏しい遺伝子システムを有している生物)由来の核酸を操作および変更するために使用することができる。本提供の方法は、合成のゲノムを構築すること、および合成の細胞を作製するために上記ゲノムをレシピエント細胞に移植することにおいて有用である。したがって、上記方法を、医学的に有用なタンパク質(酵素、タンパク質、および核酸治療薬、抗体、免疫原、ワクチン、および他の細胞性の産物を含む)を産生するために使用することができる。
ワクチンは、一般的には、疾患と関係がある特定の微生物(細菌またはウイルス)に対する免疫性を改善する免疫原性調製物をいう。ワクチンは、典型的には、微生物と共通点がある少量の作用物質を含む。上記作用物質は、上記作用物質を外来のものとして認識し、これを崩壊させ、これを記憶する体の免疫システムを刺激する。結果として、上記免疫システムは、のちに遭遇するこれらの任意の微生物をより容易に認識し、崩壊させることができる。ワクチンは、予防用(例えば、任意の天然のもしくは「野生型」の病原体による将来の感染の作用を防ぐかまたは改善するため)であり得るか、または、治療用(例えば、癌ワクチン)であり得る。ワクチンは、一価(monovalent)(一価(univalent)ともいう)であっても、また、多価(multivalent)(多価(polyvalent)ともいう)であってもよい。一価のワクチンは、単一の抗原または1種類の微生物に対する免疫化のために設計することができる。多価(multivalent)または多価(polyvalent)のワクチンは、同じ微生物の2種類またはそれ以上の株に対して、あるいは、2種類またはそれ以上の微生物に対して免疫化するために設計することができる。特定の場合には、一価のワクチンは、強い免疫応答を迅速に生じさせるために使用することができる。ワクチンは、有用な免疫応答を誘導する能力を保ったまま、疾病のリスクを低下させようとする試みに使用する。ワクチンは、死滅した生物もしくは不活化した生物、またはそれらに由来する精製した産物を含み得る。免疫原性組成物は、ヒトおよび非ヒト集団(例えば、霊長類、獣医学上の動物など)の処置に有用である。
本提供の技術は、生物から免疫応答を誘発するための免疫学的組成物(例えば、以下を含むが、これらに限定されない生存している細胞およびウイルスを含有しているものなどの免疫原性組成物)の産生に有用である:修飾したアデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、様々なタイプの単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、フラビウイルス科(C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、西ナイルウイルスなど)、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルスなど)、パピローマウイルス科(例えば、パピローマウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス)、およびパルボウイルス科(例えば、ヒトボカウイルス、パルボウイルスB19)、インフルエンザ(例えば、H1N1インフルエンザ、B型ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae type B)など)、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、ならびにBCG。
本提供の技術は、生物から免疫応答を誘発するための免疫学的組成物(例えば、以下を含むがこれらに限定されない生存している細胞および細菌を含有しているものなどの免疫原性組成物)の産生に有用である:修飾したボルデテラ属(Bordetella)(例えば、ボルデテラ・ペルツッシス)、ボレリア属(Borrelia)(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ)、ブルセラ属(Brucella)(例えば、ウシ流産菌(Brucella abortus)、イヌ流産菌(Brucella canis)、マルタ熱菌、およびブルセラ・スイス)、カンピロバクター属(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ)、クラミジア属(Chlamydia)(例えば、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumonia)、クラミジア・シタッシ(Chlamydia psittaci)、およびクラミジア・トラコマチス)、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌、および破傷風菌)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(例えば、ジフテリア菌)、エンテロコッカス属(Enterococcus)(エンテロコッカス・フェカーリス、およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecum))、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、大腸菌)、フランシセラ属(Francisella)(例えば、野兎病菌(Francisella tularensis))、ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenza))、ヘリコバクター属(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ)、レジオネラ属(Legionella)(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ)、レプトスピラ属(Leptospira)(例えば、レプトスピラ・インテロガンス)、リステリア属(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(例えば、ライ菌、およびヒト型結核菌)、マイコプラズマ属(例えば、マイコプラズマ・ニューモニエ)、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば、緑膿菌)、リケッチア属(Rickettsia)(例えば、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii))、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、およびサルモネラ・チフィムリウム)、赤痢菌属(Shigella)(例えば、ソンネ菌(Shigella sonne))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、表皮ブドウ球菌、およびスタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus))、連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、ストレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎連鎖球菌、および化膿連鎖球菌)、トレポネーマ属(Treponema)(例えば、トレポネーマ・パリダム)、ビブリオ属(Vibrio)(例えば、コレラ菌)、およびエルシニア属(Yersinia)(例えば、エルシニア・ペスチス)は、これらを魅力的なワクチン候補にする免疫原性の特徴を有する。
利用できるワクチンの調製方法では、それらの免疫原性を保ったまま、多くの生物のそれらの病原性を効率よく取り除くことはできていない。大きな核酸および遺伝子を変更および操作するために(例えば、組み合わせて)使用することができる本提供の方法ならびに組成物は、そのようなワクチンを変更するために使用することができる。
本明細書中に記載する方法は、以下の生物学的影響を処置する、予防する、または実質的に減少させるために有効な組成物を産生するために使用することができる:水疱瘡、帯状疱疹、インフルエンザ、ポリオ、麻疹、ムンプス、風疹、毒性ショック、コレラ、腺ペスト、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、黄熱病、マラリア、結核、破傷風、脳炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、ライ病、イヌジステンパー、イヌパルボウイルス、感染性イヌ肝炎、アデノウイルス-2、レプトスピラ症、百日咳、イヌパラインフルエンザウイルス、デング熱、ライム病、ならびに、ワクチンが一つまたは複数の症状の処置および/または管理に有用である別の他の疾患。
本明細書中に記載する方法での使用について企図されるさらなるウイルスのタイプ、ファミリー、および関連する疾患を、以下の表に提供する。
本明細書中に記載する方法での使用が企図されるさらなる細菌種および関連する疾患を、以下の表に提供する。
本明細書中に記載する方法はまた、細菌であるマイコプラズマ・ミコイデススモールコロニーにより起こる疾患である牛肺疫(CBPP)を処置または予防するために有効な組成物を産生するためにも使用することができる。この疾患は肺ペストとしても知られており、ウシ、ヤク、バッファロー、およびゼブの主要な病原体である。この疾患は、アフリカ、中東、南ヨーロッパ、ならびにアジアの一部に広まっている。改良型のワクチンが真に求められている。病原生物は、本提供の方法の局面を明らかにするために本明細書中で使用する細菌M.ミコイデスラージコロニー株GM12とは系統発生学的に近い。M.ミコイデススモールコロニー細菌の抗原遺伝子および/またはゲノムを、生ワクチンとして機能する細胞(例えば、突然変異体)を作製するために、本提供の技術を使用してクローニングし、操作することができる。
本提供の方法は、マイコプラズマの病原性および生物学を調査するためのモデルシステムとして、例えば、M.ミコイデスLCおよび近い関係にある種とともに使用することができる。マイコプラズマのミコイデスグループは、反芻動物の主要な病気を引き起こし、ワクチンが緊急に求められている。本提供の方法は、生ワクチン株の構築を加速することができる。上記方法はまた、特に、M.ミコイデスゲノムのような小さいゲノムの中での生存に必要な最小の遺伝子相補体(gene complement)を決定するために使用することができる。
ワクチンの投与方法は当技術分野で公知であり、これには、免疫原性ワクチン組成物の被検体への注射およびエアゾール送達が含まれる。組成物は、任意の薬学的に許容される担体または賦形剤とともに処方し、投与することができる。本明細書中で同定した疾患または症状の処置のための医薬剤の中に処方した免疫原性ワクチンを含む組成物もまた、本明細書中で提供する。被検体への投与後の免疫原性ワクチン組成物の効果は、免疫応答の一つまたは複数の局面に関して測定することができる。免疫応答としては、例えば、抗体応答の誘導(増大した抗体力価)、サイトカイン応答、Tヘルパー(TH1およびTH2)細胞の分化および増殖の誘導などが挙げられる。このような応答のそれぞれを定量化することができる。免疫応答はまた、患者の全細菌量またはウイルス量の減少を含む。
本明細書中で開示する方法はまた、バイオ燃料の開発にも有用である。
バイオ原油(biocrude)は、原油もしくは石油の他の形態の代用またはそれらを補うものとして製油所で原料として使用される生物学的に産生された化合物、あるいは様々な生物学的に産生された化合物の混合物である。必ずしもそうではないが、一般的には、これらの原料は、石油精製への導入に適している液体状態になるように、生物学的、化学的、機械的、または熱処理により前処理されている。
微生物は、バイオ燃料組成物にするためにさらに処理されうるバイオ原油を産生するように、本明細書中に記載する方法を使用して修飾することができる。その後、バイオ燃料を、仕上げた燃料(finished fuel)または燃料添加剤とすることができる。
「仕上げた燃料」は、優れた燃料または燃料添加剤としてエンジンにおいて直接使用しようとする適切な化学的および物理的状態である、(化学的、熱化学的、または生物学的経路を通じて産生された)化学的化合物または化学的化合物の混合物をいう。常にそうではないが、多くの場合は、エンジンでの用途における使用についての仕上げた燃料の適合性は、満たされなければならない必要な物理的および化学的特性を記載している規格により決定される。エンジンのいくつかの例は以下である:内燃機関、ガスタービン、蒸気タービン、外燃機関、および蒸気ボイラー。仕上げた燃料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:圧縮点火(ディーゼル)内燃機関で使用されるディーゼル燃料、航空用タービンで使用されるジェット燃料、蒸気を生じさせるためにボイラーの中で、または外燃機関で使用する燃料油、flex-fuelエンジンで使用するエタノール。燃料規格の例は、ASTM基準(主に米国で使用されている)およびEN基準(主に欧州で使用されている)である。
「燃料添加剤」は、様々な理由(バイオ燃料の使用の指令書(mandate)に従うこと、化石燃料由来の産物の消費量を減少させること、または燃料もしくはエンジンの性能を向上させることを含むがこれらに限定されない)のために別の燃料と組み合わせて使用される化合物あるいは組成物をいう。例えば、燃料添加剤を、凝固点/ゲル化点、曇り点、潤滑性、粘性、酸化安定性、発火性、オクタンレベル、および引火点を変えるために使用することができる。添加剤はさらに、抗酸化剤、解乳化剤、含酸素添加剤(oxygenate)、熱安定性向上剤(thermal stability improver)、セタン価向上剤、安定剤、低温流動性向上剤、燃料油助燃剤、消泡剤、ヘイズ防止(anti-haze)添加剤、氷結防止剤、インジェクター清浄添加剤(injector cleanliness additives)、防煙剤、抗力減少添加剤、金属不活性化剤、分散剤、界面活性剤、解乳化剤、色素、マーカー、静電気拡散剤(static dissipater)、殺生物剤、および/または防蝕剤として機能し得る。
いくつかの真核生物である藻類は、それらの乾燥重量の70%ほどの量の油を合成する。光合成の産物であるこれらの油は、理想的なバイオ燃料の候補である。これらの油を産生する生物は、耕作地がバイオ燃料の産生のために失われてしまうことがないように、荒れ地の池の中で増殖させることができる。このような藻類の使用は、典型的には、それらの遅い増殖により限定される。しかし、本提供の方法は、例えば、転写プロモーター、翻訳シグナルを操作すること、およびコドン最適化により、油の合成経路に関係している酵素を発現するように新しい生物(例えば、原核生物)を変更するために、生物のゲノムを操作するために使用することができる。上記方法は、光合成の通常の産物(グルコース)の代わりにバイオ燃料(例えば、藻類により産生された油)を産生するキメラゲノムを有している新しい細菌を変更するために、光合成細菌のゲノムを修飾するために使用することができる。
本開示の方法を使用して作製した組換え体である微生物は、リグノセルロース系バイオマスに由来するグルコースおよび他の糖をゲラニオールに転換することができる変更された生合成経路を含み得る。
本開示の方法を使用して作製した組換え微生物(例えば、光合成微生物の株)を、分岐鎖のアルコール(例えば、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、およびイソブタノールを含む)を生物学的に産生するために使用することができる。一つの局面は、2-ケト分岐鎖酸(2-keto branched-chain acid)の産生および脱カルボキシル化を促進し、対応する分岐鎖のアルデヒドの産生を誘導する酵素をコードする異種遺伝子の導入による組換え体である光合成微生物の産生を含む。さらなる遺伝子導入は、その後、分岐鎖のアルデヒドを、対応する分岐鎖のアルコールに効率よく還元するために行うことができる。加えて、分岐鎖のアルコールがインビボで酵素により脱水されて様々な分岐鎖のα-オレフィンが生じるように、上記微生物を変更することができる。
植物のアシル-ACPチオエステラーゼをコードするように、組換え体である微生物を、本開示の方法を使用して作製した。このような核酸分子は、脂肪酸および脂肪酸産物(例えば、脂肪アルデヒド、脂肪アルコール、脂肪族エステル(蝋エステルを含む))、および炭化水素を合成するために、生物(例えば、光合成生物および原核生物)を形質転換するために使用することができる。本明細書中に提供する方法を使用して形質転換した生物もまた含まれる。
組換え体である微生物(例えば、組換え体である光合成微生物)を、少なくとも一つの外因性のアシル-ACPチオエステラーゼを産生する少なくとも一つの組換え発現システムを含む核酸分子を含むように、本開示の方法を使用して作製した。ここでは、上記アシル-ACPチオエステラーゼは、6個〜20個の炭素を含む脂肪酸鎖を遊離状態とし、上記微生物は、アシル-ACPチオエステラーゼにより遊離状態となった脂肪酸を培地中に分泌する。チオエステラーゼは、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の炭素を含む脂肪酸鎖を遊離状態にするために使用することができる。このように回収した脂肪酸を、合成によりさらに修飾するか、またはバイオ燃料もしくは化学薬品の成分として直接使用することができる。
そのような構成においては、プラスチド輸送ペプチドの領域をコードする遺伝子の部分を除去することが所望される場合がある。なぜなら、この領域は、原核生物においては不適切であるからである。あるいは、発現を真核細胞内で行う場合は、宿主生物に適しているプラスチド輸送ペプチドをコードする領域で置換することができる。好ましいコドンもまた、宿主に応じて利用することができる。
微生物のゲノムを、中鎖の長さを有しているアシル-ACPを優先的に産生するβ-ケトアシルシンターゼ(KAS)をコードする異種遺伝子の発現システムを含むようにさらに修飾することができる。このようなKAS酵素は、異種の中鎖のアシル-ACP TEによる認識および切断に適している長さのアシル-ACP分子の利用可能性を増大させるために役立つと考えられる。別の例は、異種のアシル-ACP TE遺伝子を含有している光合成宿主細胞を、多機能性アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする異種遺伝子、またはマルチサブユニット型のアセチル-CoAカルボキシラーゼの様々なサブユニットをコードする異種遺伝子のセットについての発現システムを含むように、さらに修飾することができることである。脂肪酸生合成経路のさらなる酵素または成分をコードする他の異種遺伝子もまた、アシル-ACP TEを含有している宿主細胞に導入し、その中で発現させることができる。
光合成微生物はまた、β-酸化経路の酵素をコードする一つもしくは複数の遺伝子を不活化するまたはダウンレギュレートするように修飾することができるか、あるいは、酵素自体をアシル-ACPから遊離状態となった脂肪酸の分解を防ぐために阻害することができ、それにより、分泌された脂肪酸の収量が増加する。所望する産物が中鎖の脂肪酸である場合は、これらの鎖長を優先的に基質として使用するアシル-CoAシンターゼおよび/またはアシル-CoAオキシダーゼ酵素をコードする遺伝子の不活化あるいはダウンレギュレーションが有効であると考えられる。酵素の活性を低下させるような、中鎖特異的アシル-CoAシンターゼおよび/または中鎖特異的アシル-CoAオキシダーゼ酵素をコードしている遺伝子の突然変異もまた、分泌される脂肪酸の収量を増加させることにおいて有効であると考えられる。さらなる修飾は、アシル-ACPシンターゼ遺伝子を不活化またはダウンレギュレートするか、あるいは、上記遺伝子もしくはタンパク質を不活化する。
光合成微生物はまた、貯蔵炭水化物(storage carbohydrate)もしくはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)生合成経路の酵素をコードする一つまたは複数の遺伝子を不活化またはダウンレギュレートするように修飾することができるか、あるいは酵素自体を阻害することもできる。例として、グリコーゲン、デンプン、またはクリソラミナリンの合成に関与している酵素(グルカンシンターゼおよび分岐酵素を含む)が挙げられる。他の例としては、PHAの生合成に関与している酵素、例えば、アセトアセチル-CoAシンターゼおよびPHAシンターゼが挙げられる。
本開示の方法はまた、工業用酵素および工業用生物の産生にも有用である。本開示の方法は、キメラゲノム(例えば、クロストリジウム・アセトブチリクムとクロストリジウム・セルロリチカム(Clostridium cellulolyticum)のキメラであり、グルコースからエタノールを合成するために必要な酵素をコードする前者の種に由来する遺伝子と、セルロースを効率よく分解することができるセルラーゼをコードする後者の種に由来する遺伝子を有するゲノム)を持つ新しい生物を作製するために使用することができる。したがって、本提供の方法および組成物を、エタノールを産生するために効率よくセルロースを分解する細胞および生物を得るために使用することができる。
他の用途を以下に記載し、本明細書中で検討する。上記方法はまた、一般的に、全ゲノムおよび部分的なゲノムのクローニングにおいても有用であり、これは、培養することが難しい生物に由来するゲノムの研究を容易にし、合成ゲノムの構築および増殖に役立つ。特定の好ましい工業的用途を本明細書中で記載するが、本発明の方法およびプロセスは、変更したゲノムからの、対象となる任意の表典型または産物の産生に広く適用可能なツールである。
I.実施例
以下の実施例を、提供する態様を説明するために提供する。これらは、本出願の範囲を限定するようには意図されない。
実施例1
酵母宿主細胞への細菌ドナーゲノムの移入
本実施例は、本明細書中に提供する3種類の様々なクローニングアプローチ(図2)を使用した、酵母宿主細胞中での細菌ゲノムのクローニングの成功を記載する。以下に記載するように、それぞれのアプローチにより、酵母宿主ベクターと連結したドナーである細菌ゲノムを含む核酸を有している宿主細胞が得られた。これらのアプローチによる宿主細胞へのドナーゲノムの移入は、宿主細胞中でのドナーゲノムの増殖および修飾、ならびに宿主細胞からレシピエント細胞へのドナーゲノムの移植のために、本提供の方法とともに使用することができる(図1)。
図2Aに示す第1のクローニングアプローチを、酵母の形質転換の前にドナーである細菌ゲノムに酵母宿主ベクターを挿入し、それにより、連結された分子(これを用いてその後、酵母を形質転換する)を得ることにより行った。それぞれ図2Bおよび図2Cに示す第2および第3のアプローチは、ドナーである細菌ゲノムと酵母ベクターとを相同組換えを使用して宿主細胞内で連結させることにより行った。第2のアプローチを用いた場合には、細菌ゲノムと酵母(宿主)ベクターとで酵母宿主細胞を同時形質転換した(図2B)。上記宿主ベクターは、細菌のドナーゲノム中の一つの部位に対して相同である末端領域を含む直鎖状の酵母ベクターであり、それにより、宿主ベクターを相同組換えにより挿入した。第3のアプローチを用いた場合(図2C)は、細菌ゲノムの多数の重複している断片と、酵母ベクターとで、酵母宿主細胞を形質転換した。酵母細胞内での相同組換えにより相同組換えが起こり、上記断片と酵母ベクターとが連結して、酵母ベクターと連結したドナーである細菌ゲノムを含む分子が得られた(図2C)。それぞれのアプローチを利用した研究を以下に詳細に記載する。
それぞれのアプローチを用いて、M.ゲニタリウムのゲノムを酵母宿主細胞にクローニングした。さらに、マイコプラズマ・ミコイデスLCのゲノムとマイコプラズマ・ニューモニエのゲノムを、図2Aに示すように、第1のアプローチを使用して酵母に移入した。M.ゲニタリウムのゲノムとM.ミコイデスLCのゲノムを、さらに、第1のアプローチ(図2A)を使用して、一つの酵母細胞に別々の分子(それぞれを酵母宿主ベクターと連結させた)として移入した。
実施例1A
組込み型酵母ベクターを使用した、酵母宿主細胞へのマイコプラズマ全ドナーゲノムの移入
本実施例は、ドナーゲノムの宿主細胞への導入のための第1のアプローチを使用した、3種類の異なるマイコプラズマドナーゲノム(M.ゲニタリウム株MS5;M.ミコイデス亜種ミコイデス、ラージコロニー株GM12;およびM.ニューモニエ株M129-B170(ATCC 29343))の、宿主である酵母細胞へのクローニング(移入および増殖)の成功を記載する。M.ゲニタリウム株MS5は、M.ゲニタリウムG37(GenBank No.L43967)の派生株であった。これは、Dhandayuthapani et al., J Bacteriol 183, 5645(2001)に記載されているように、G37株の中での一つの遺伝子の割り込みにより作製した。M.ミコイデス亜種ミコイデス、ラージコロニー株GM12(Genbankアクセッション番号NZ_AAZK01000004.1(GI:149364882)を有しているゲノム配列)は、DaMassa et al, Am J Vet Res 44, 322(1983)およびLartigue et al., Science 317, 632(2007)に記載されている。M.ニューモニエ株M129-B170(ATCC 29343)は、M.ニューモニエM129, GenBankアクセッション番号U00089.2(GI:26117688)の派生株であった。
それぞれのマイコプラズマドナーゲノムの移入は、ゲノムと宿主ベクターとを含む核酸分子を作製するために、ドナーゲノムに酵母ベクターを挿入し、その後、この分子を形質転換により宿主細胞に導入することにより行った。
i.酵母の中でのマイコプラズマゲノムのクローニングのためのトリ-シャトル宿主ベクターの構築
2つのトリ-シャトル酵母宿主ベクターを、図2Aに示す方法を使用する酵母宿主細胞へのマイコプラズマゲノムのクローニングのために設計した。これらのベクター(pmycYACTnとminiTn-Puro-JCVI-1.7)を、図3に模式的に示す。
a.pmycYACTnベクターの構築
ベクターpmycYACTn(図3A)は10kbの長さであり、これには以下を含めた:(i)大腸菌中での増殖のための、pUC19由来の高コピーの複製起点(ori)およびアンピシリン耐性マーカー;(ii)マイコプラズマゲノムへの転位のための、IS256トランスポザーゼ遺伝子および逆位反復配列;(iii)Lartigue et al., J Bacteriol 164, 1094(1985)に記載されているような、大腸菌およびマイコプラズマの中での選択とスクリーニングのための、tetMマーカーおよびlacZマーカー(いずれも、スピラリンプロモーターから発現される);ならびに(iv)酵母の中での複製および分離のための、自律複製配列(ARS)およびセントロメア配列(CEN);ならびに(v)HIS3(選択可能な酵母マーカー)。
上記ベクターは、図3Eに説明する重複している断片(断片1、2、および4〜7と示す)から、公開されているインビトロでのアセンブリ法(Gibson et al., Science 319, 1215(2008)、米国特許出願第12/247,126号、およびWO09/048885(全て引用により本明細書中に組み入れられる))を使用して構築した。断片1(1846塩基対(bp))には、大腸菌アンピシリン耐性(bla)、pUC19複製起点(これは、高収量のプラスミドの単離を容易にするために含めた)を含めた。断片2(1256bp)には、マイコプラズマIS256トランスポザーゼおよびプロモーター、ならびに、IS256逆位反復配列(図3Eに「3」と示す)(これは、転位によるベクターの挿入を容易にするために含めた)を含めた。断片4(2294bp)および断片5(3335bp)にはそれぞれ、マイコプラズマのスピラリンプロモーターを含め、それぞれ、マイコプラズマテトラサイクリン耐性遺伝子(tetM)およびLacZ遺伝子(これらは、ドナーゲノムへのベクターの挿入の選択を容易にするために含めた)を含めた。断片5にはさらに、IS256逆位反復配列を、転位による挿入を容易にするために含めた。断片6(847bp)には、S.セレビジエ(S.cerevisiae)HIS3遺伝子およびプロモーター(これは、宿主細胞の形質転換の選択を容易にするために含めた)を含めた。断片7(505bp)には、S.セレビジエのARSH4遺伝子とCEN6遺伝子(これは、複製と分離を容易にするために含めた)を含めた。図3Eを参照のこと。
これらの重複している断片を、表1に列挙するプライマーを使用して、PCRにより構築した(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)。表1においては、他の断片との重複領域に下線をつけた。IS256逆位反復配列(図3Eに「3」と示す)を太字体にする。以下のプラスミドを、個々の断片のPCRにおいて鋳型として使用した。断片1、4、および5については、鋳型は、pMYCO1PSlacZプラスミド(これは、Lartigue and Blanchard, et al.(2003), Nucleic Acids Res 31(22):6610-8に記載されているpMYCO1プラスミドから修飾した)のpBS+(Stratagene, San Diego, CA)部分であった。断片2については、鋳型は、Pour-El et al, Plasmid 47(2):129-37(2002)に記載されているpISM31.1ベクターの3.7kbのPciI-SalI断片であった。断片6と断片7については、鋳型は、Noskov et al., BMC Genomics 4(1):16(2003)に記載されているpARS-VNプラスミドであった。
(表1)大腸菌-マイコプラズマ-酵母シャトルベクターpmycYACTnの構築に使用した断片のPCRのためのプライマー
それぞれの断片(アンプリコン)を得るために、PCRを、10ngのプラスミド鋳型を使用して100μLの反応容量の中で行った。プライマーを表1に示し、Phusion DNAポリメラーゼ、HF緩衝液(New England Biolabs, Ipswich, MA)を、製造業者のプロトコールに従う量で含め、さらなるMgCl2を、2.0mMまたは3.0mMの最終濃度になるように添加した。サイクル条件(Cycling condition)は以下とした:98℃で30秒間、続いて、30サイクルの、98℃で10秒間のインキュベーション、30秒間のアニーリング、および72℃で90秒間のインキュベーション、その後、72℃で5分間。アニーリング温度は、以下のように、サイクル間で、そして様々な断片についてのPCRの間で変えた。アニーリング温度は、サイクル1〜5については46℃〜59℃の間とし、サイクル6〜30については5℃上昇させた(51℃〜64℃の間)。具体的には、サイクル1〜5のアニーリング温度は、断片1については56℃および59℃、断片5については46℃および48℃;断片4については46℃および50℃;断片2については46℃;そして断片6と断片7については、48℃および52℃とした。サイクル6〜30については、それぞれの温度を、サイクル1〜5についての温度よりも5℃高くした。それぞれの断片について、PCR産物をプールし、アンプリコンを、β-アガラーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)を使用してゲル精製した。
鋳型pISM31.1から増幅したトランスポザーゼ遺伝子を含む断片2については、PCRプライマーのうちの一つに、所望する位置に鋳型に対して相同である標準の20塩基対を含め、さらに、これもまたプラスミドの他の部分に存在するIS256逆位反復配列の2つのさらなるコピーに対して相同である26塩基対を含めた。正確な断片の特異的な増幅を促進するために、これらのIS256コピーを、所望するpISM31.1の鋳型部分から、PciIとSalIでの二重制限酵素消化、その後の正確に生じた3.7kbの断片のアガロースゲルによる精製により分離し、その後、これを、断片2のPCR増幅において鋳型として使用した。
精製した断片を、D.G.Gibson et al., Science 319, 1215-1220(2008), 米国特許出願第12/247,126号、およびWO09/048885(全て引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されている公開されているインビトロでのアセンブリ法を使用してpmycYACTnベクターが生じるようにアセンブリした。「チュー・バック・アセンブリ(chew back assembly)」(CBA)反応全体を、Taq DNAリガーゼおよびTaq DNAポリメラーゼとともに、5%のPEG-8000、50mMのTris-Cl(pH 7.5)、10mMのMgC12、10mMのDTT、25ug/mlのBSA、200uMの各dNTP、および1mMのNADの存在下で45℃で15分間、このアセンブリをインキュベーションすることにより、記載されている(Gibson et al., Science 319, 1215-1220(2008);米国特許出願第12/247,126号;およびWO09/048885)ように修復した。その後、反応物をフェノール抽出し、イソプロパノールで沈殿させ、再度懸濁し、そしてEPI300細胞(Epicentre Biotechnologies, Madison, WI)にエレクトロポレーションした。形質転換体を、カルベニシリンで選択した。選択したクローンに由来するDNAを、3種類の別々の制限酵素消化を使用して正確なサイズのプラスミドについてスクリーニングした。上記プラスミドの様々なエレメントの存在を、表現型について以下のように試験した。大腸菌中での増殖により、pUC19複製起点の機能性を確保した。カルベニシリンおよびテトラサイクリンでの大腸菌中での選択、ならびにX-galでのスクリーニングにより、bla、tetM、およびlacZマーカーのインタクトなコピーが存在することを確認した。そして、単離したベクターでの酵母の形質転換の成功は、HIS3、ARSH4、およびCEN6マーカーが生きていることを明らかにした。機能性のトランスポゾンの存在を、以下に記載するように、マイコプラズマの形質転換により確認した。
b.miniTn-Puro-JCVI-1.7ベクターの構築
miniTn-Puro-JCVI-1.7ベクター(図3B)は14kbの長さであり、これは、以下の例外はあるものの、pmycYACTnと同じであった:(i)これにはlacZを含めなかった;(ii)tetMマーカーの代わりに、これにはピューロマイシン耐性マーカーを含めた;そして、(iii)これには、細菌の人工染色体(BAC)ベクターを含めた。
ii.ドナーゲノムへの宿主ベクターの挿入
a.M.ゲニタリウムMS5
M.ゲニタリウム株MS5のドナーゲノムの酵母宿主細胞への移入のための準備において、ベクターpmycYACTnベクターを、J.I.Glass et al, PNAS USA 103, 425(2006)に記載されているように、M.ゲニタリウムドナー細胞へのエレクトロポレーションによりドナーゲノムに挿入した。形質転換体を、テトラサイクリンの存在下での増殖により選択し、単一クローンをさらなる分析のために選択した。上記ベクターに対して内部にあるプライマーを使用した直接のゲノム配列決定(J.I.Glass et al., PNAS USA 103, 425(2006)に記載されている)を、ベクターの挿入部位を決定するために行った。選択したクローンは、pmycYACTnの2つのIS256逆位反復配列の間の配列と、pmycYACTnの2つのIS256逆位反復配列を含んでおり、これは、設計したとおりに、転位が起こったことを示していた(図3C)。トランスポザーゼ、pUC19複製起点、およびアンピシリン耐性遺伝子は、転位の際に失われた。宿主ベクターを、不可欠ではないMG411遺伝子(J.I.Glass et al., PNAS USA 103, 425(2006);C.A.Hutchison et al., Science 286, 2165(1999))内のドナーゲノムに挿入した。
b.M.ミコイデス亜種ミコイデス, ラージコロニー株GM12
M.ミコイデス亜種ミコイデス, ラージコロニー株GM12のゲノムの酵母宿主への移入のための準備において、マイコプラズマドナー細胞を、K.W.King and K.Dybvig, Plasmid 26, 108(1991)に記載されているように、PEGを使用してpmycYACTnで形質転換した。形質転換体を、テトラサイクリンを補充したプレート上での増殖により選択した。
4つの選択したクローンを、ドナーゲノムへの宿主ベクターの挿入部位を位置決定するために、直接のゲノム配列決定により分析した。結果は、4つのクローンそれぞれにおいて、転位によるpmycYACTn構築物の一部分の組込みの代わりに、宿主プラスミド全体がドナーゲノムに組込まれていたことを明らかにした。4つのクローンのうちの3つにおいて、ベクター(pmycYACTn)が、pUC複製起点の中に、またはpUC複製起点の極めて近くに交叉事象により挿入されていた。4つ目のクローンにおいては、交叉が酵母のHIS3遺伝子内で起こり、したがって、これは、その後のゲノムでの酵母の形質転換には使用しなかった。全ての場合において、宿主ベクターの挿入は、IS1296エレメントに隣接する位置で起こった。
図3Dに模式的に説明するクローン1.1を確実に増殖させた。このクローンのゲノムを効率よく移植できることを確認するために、C.Lartigue et al., Science 317, 632(2007)に記載されている塩化カルシウム形質転換手順を、M.ゲニタリウムドナー細胞からM.カプリコルムレシピエント細胞にこれを移植するために行った。クローン1.1のゲノムは、M.カプリコルム宿主細胞に効率的に移植された。これにより、このクローンを、ドナーであるマイコプラズマから酵母宿主細胞へのゲノムの移入のために選択した。
c.M.ニューモニエ株M129-B170(ATCC 29343)
M.ニューモニエ株M129-B170のドナーゲノムの酵母宿主細胞への移入のための準備において、マイコプラズマを、J.I.Glass et al, PNAS USA 103, 425(2006)に記載されているようにエレクトロポレーションによりMiniTn-Puro-JCVI-1.7で形質転換した。ピューロマイシン耐性形質転換体のプールを、液体培地中で選択した。
iii.挿入された酵母ベクターを含むドナーゲノムの単離
断裂を最小限にするために、酵母ベクターの挿入断片を含むドナーゲノムを、低融点アガロースとBio-Rad CHEF Mammalian Genomic DNA Plug Kit(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)とを使用し、製造業者により推奨されているプロトコールに従って、アガロースプラグ中で単離した。挿入断片を持つマイコプラズマゲノムを含有しているアガロースプラグを、10mMのTris(pH 8.0)(場合によっては、1mMのEDTA)に対して1時間透析した。その後、プラグを、S.Katsura et al, Electrophoresis 21, 171(2000)に記載されているように、10mM(6%)のPEG 6000(United States Biochemical)、0.6MのNaClに対して、数時間透析した。このPEG/NaCl処理は、W303a細胞への移入のためのベクターを含むM.ミコイデスLCゲノムの単離について(以下を参照のこと)、またはVL6-48N細胞への移入のためのベクターを含むM.ニューモニエゲノムの単離(以下を参照のこと)については、行わなかった。
その後、プラグを65℃で5分間融解させ、その後、2倍容量の65℃のTEを添加し、混合物を穏やかに撹拌し、そして65℃でさらに5分間インキュベーションした。20μlを形質転換に使用した。
iv.酵母ベクターを用いた、酵母宿主細胞へのドナーゲノムの移入
ドナーゲノムの宿主細胞への導入のために、酵母スフェロプラストを、推奨されているOD未満にしか培養物を増殖させなかった場合があったことを除き、N.Kouprina and V.Larionov, Nat Protoc 3, 371(2008)に記載されている公開されている方法を使用して、プラグ由来のDNAで形質転換した。
この方法を使用して、酵母ベクター挿入断片を含む3種類のゲノム全てを用いて、高い形質転換効率のために開発された酵母株VL6-48N(V.Larionov et al., PNAS USA 94, 7384(1997))を形質転換した。挿入断片を持つM.ゲニタリウムcl16-2ゲノムおよびM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムを用いてまた、一般的に使用されているW303a株(MATa his3 leu2 ura3 trp1 ade2)も形質転換した。挿入断片を持つM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムはまた、組換え欠損酵母株VL6-48-Δ54G(これは、RAD54遺伝子が欠損している(MATα his3-Δ200 trp1-Δ1 ura3-52 lys2 ade2-101 met14 rad54-Δ1::kanMX)))にも移入した。VL6-48-Δ54G株の形質転換は、多数のほぼ同一の1.5kbのIS1296コピー間での組換えが原因でこのゲノムが他の酵母の中で不安定である可能性に対処するために行った。RAD54遺伝子が欠損している酵母株は、酵母の人工染色体(YAC)の中での様々な組換え事象の発生を減少させることができる(Y.Le and M.J.Dobson, Nucleic Acids Res 25, 1248(1997))。rad54突然変異株(VL6-48Nとほぼ同質遺伝子型である)は、Vladimir Larionov(Laboratory of Molecular Pharmacology, National Cancer Institute, National Institutes of Health)から譲り受けた。
v.全ゲノムの移入の分析および確認
形質転換した酵母宿主細胞のそれぞれに由来するDNAを、完全な宿主ベクターを含むドナーゲノムの宿主細胞への移入を確認するために分析した。酵母にクローニングしたマイコプラズマゲノムを、完全性を確認するためにマルチプレックスPCR(MPCR)によりスクリーニングした。MPCRは、IDT由来のプライマーを使用し、Qiagen(Valencia, CA)によるMultiplex PCR Kitを用いて、1セットまたは2セットの10種類のアンプリコンそれぞれを使用して行った。個々の反応を以下にさらに詳細に記載する。
挿入断片を含むゲノムのサイズを確認するために、マイコプラズマゲノムを含有している個々の酵母クローンから全DNAを単離し、以下に記載するようにゲル電気泳動により分析した。一般的には、DNAを、Bio-Rad CHEF-DR IIIマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用してアガロースプラグ中で単離した。指示される場合、酵母の染色体DNAを除去するために、プラグを、数時間一定電圧でプレ電気泳動した。指示される場合、この工程の効率を高めるために、プラグを最初に、酵母の染色体を切断するが、M.ゲニタリウムまたはM.ミコイデスLC中には認識部位を持たないAsiSI、FseI、およびRsrIIで消化した。単離したDNAについて、(示した酵素を用いて)制限酵素消化を行い、続いて、示すように、フィールド・インバージョン電気泳動(Bio-Rad FIGE Mapper)またはパルスフィールド電気泳動(Bio-Rad CHEF-DR IIまたはIIIシステム)、あるいは、55℃で1時間の直線化を行った。指示される場合、ゲルについてサザンブロットを行った。サザンブロットは、プローブの標識と検出にAmersham AlkPhos Direct Labeling and Detection System with CDP-Star(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を使用したいくつかの場合を除き、D.G.Gibson et al., Science 319, 1215(2008)に記載されているとおりに行った。
a.酵母宿主のPCRによるM.ゲニタリウムゲノムの単離および分析
酵母ベクターを含むM.ゲニタリウムcl16-2ゲノムを株VL6-48Nへと移入した後に回収した24個の個々のクローンに由来するゲノムDNAと、M.ゲニタリウムをW303a株へと移入した後に回収した8個の個々のクローンとを、アガロースプラグ中で単離し、完全性を確認するためにPCRによって分析した。M.ゲニタリウムの合成ゲノム(D.G.Gibson et al., Science 319, 1215(2008)に記載されているように作製した、sMgTARBAC37)およびM.ゲニタリウムの天然のゲノムを、ポジティブコントロールとして使用した。
以下の表2に列挙するPCRプライマーを、酵母ベクター挿入断片を含むM.ゲニタリウムゲノムを取り囲むように一定の間隔をあけたアンプリコンを作製するためのMPCR反応において使用した。ゲノムの長さ方向に沿ったアンプリコンの位置を図4Aに示す。ここでは、アンプリコンを、黒色のバーで示し、数字はアンプリコンのサイズを示している。VL6-48NおよびW303a中のクローンから回収したDNAについてのPCRの結果(データは示さず)を表5にまとめる。24個のVL6-48N株から単離した24個のクローンのうちの22個、およびW303a株から単離した8個のクローンのうちの5個が完全なもの(それぞれのアンプリコンについての正確なサイズの産物)と見られることが、PCR分析により明らかになった(現時点で示されるデータ)。
(表2)M.ゲニタリウムのマルチプレックスPCR用プライマーの配列(セット1)
サイズの分析
VL6-48N株由来の完全なクローン中の酵母ベクターを含むM.ゲニタリウムcl16-2ゲノムが正確なサイズであることを確認するために、CHEFゲル分析を、MPCRにより完全であると考えた3つのクローン(11、16、および24)について行った。この目的のために、DNAを、Bio-Rad CHEF-DR IIIマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用して、アガロースプラグ中でクローンから単離した。染色体DNAを除去するために、プラグを、数時間、一定電圧でプレ電気泳動して、酵母染色体DNAを除去した。この工程の効率を高めるために、プラグを最初に、酵母染色体を切断するが、M.ゲニタリウム中には認識部位を持たないAsiSI、FseI、およびRsrIIで消化した。
プレ電気泳動後、DNAを、EagIまたはBssHIIのいずれかで消化した。これらの酵素により産生される、ベクター挿入断片を持つM.ゲニタリウムゲノムの断片と、それらのサイズを、図4Aにおいてマップ上に、そしてマップに並べて示す。消化したDNAを、フィールド・インバージョンゲル電気泳動(Bio-Rad FIGE Mapper)により分離した。結果を表5にまとめる(ゲルは示さず)。これらの3つのクローンのうちの2つ(11および16)は予想したサイズであった。
W303a株由来の完全なクローン中の酵母ベクターを含むM.ゲニタリウムcl16-2ゲノムが正確なサイズであることを確認するために、CHEFゲル分析を、5個の完全なクローンについて行った。この目的のために、これらのクローンに由来するDNAを、VL6-48N株について上記に記載したように、上記に記載した酵母ゲノムを除去するための数時間の一定電圧でのプレ電気泳動を用いて、アガロースプラグ中で単離した。その後、単離したDNAを、EagIで直鎖化した。
試料をパルスフィールド電気泳動により分離した。合成のsMgTARBAC37ゲノム(上記を参照のこと)をNotIで切断し、ポジティブコントロールとして使用した。結果を表5にまとめる(ゲルは示さず)。5つのクローンのうちの4つは予想したサイズであった。クローン4は、約300kbのぼんやりとしたさらなるバンドを含んでいた。
b.PCRによる酵母宿主からのM.ミコイデスcl1.1の単離および分析
酵母ベクター挿入断片を含むM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムを株VL6-48Nへと移入した後に回収した48個の個々のクローンから単離したゲノムを、完全性を確認するために、上記のようなマルチプレックスPCRによって分析した。DNAを、Bio-Rad CHEF-DR IIIマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用して、アガロースプラグ中でクローンから単離した。
表3に列挙したPCRプライマーを設計し、これを、移入したM.ミコイデスゲノムの完全性を評価するためのアンプリコンを作製するために使用した。図5に示すように、アンプリコンは、IS1296エレメントのほとんどの対の間に位置しており、図5に説明する挿入断片とともにゲノムのマップ上に矢印で示した。一つのさらなる230bpのアンプリコンは、酵母ベクターのHIS3マーカーの領域であった。別のプライマーのセット(NSF1179/18およびNSR1642/16;表3を参照のこと)は464bpのアンプリコン(S.セレビジエrDNAの領域)を生じ、これをアッセイについてのポジティブコントロールとして使用した。これらのプライマーのセットと、それにより生じたアンプリコンのサイズとを表3に列挙する。
類似する結果が、Δ54組換え欠損株を形質転換した酵母ベクター挿入断片を含むM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムのマルチプレックスPCR分析を用いて得られた(ゲルは示さず)。
酵母ベクター挿入断片を含むM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムで形質転換したW303a細胞由来のDNAのマルチプレックスPCR分析により、15個のクローンのうちの8個が完全なものであることが明らかになった(ゲルは示さず)。
(表3)M.ミコイデスLCのマルチプレックスPCR用のプライマーの配列
サイズの分析
VL6-48N株由来の完全なクローンの中の酵母ベクターを含むM.ミコイデスcl1.1ゲノムが正確なサイズであることを確認するために、CHEFゲル分析のサザンブロット分析を、6つの完全なクローンについて行い、6つのうちの5つが正確な大きさであることを明らかにした。
酵母ベクターを含むM.ミコイデスcl1.1ゲノムでのVL6-48N株の形質転換後に回収したこれらの5個のクローンのうちの3個のCHEFゲル分析を、以下のように行った:クローン(07、14、および38)由来のDNAを、上記のようにアガロースプラグ中で、プレ電気泳動を行わずに単離した。単離したDNAをBssHIIで消化し、その後、パルスフィールドゲル電気泳動(CHEF)により分離した。それぞれのクローンについて、もとのクローンと3〜4個のサブクローンを分析した(ゲルの結果は示さず)。これらの分析において使用したマーカーおよび対照は以下であった:(1)Low Range PFG Marker(New England Biolabs, Ipswich, MA);(2)S.セレビジエマーカー(Bio-Rad);VL6-48N(未消化のもの(3)およびBssHIIで消化したもの(4));ならびに、M.ミコイデスLC cl1.1(未消化のもの(5)およびBssHIIで消化したもの(6))。結果は、3つのクローン全てが正確なサイズであり、安定であることを示していた。
CHEFゲル分析を、酵母ベクター挿入断片を含むM.ミコイデスLC cl1.1ゲノムでのW303a細胞の形質転換後に回収した8個の完全なクローンについて、サイズを確認するために行った。この目的のために、上記クローンに由来するDNAを、上記のようにアガロースプラグ中で、酵母ゲノムを除去するための上記のプレ電気泳動を行って単離した。DNAは、未処理のままとした(-)か、またはBssHIIで消化した(+)かのいずれかとした。その後、DNAをパルスフィールドゲル電気泳動によって分離した。M.ミコイデスLC cl1.1のDNAをポジティブコントロールとした。結果を表5にまとめる(ゲルの結果は示さず)。結果は、8個のクローンのそれぞれが正確なサイズのゲノムを含むことを示した。
c.PCRによる酵母宿主からのM.ニューモニエの単離および分析
酵母ベクターを含むM.ニューモニエゲノムを株VL6-48Nへと移入した後に回収した20個の個々のクローンから単離したゲノムを、完全性を確認するために、上記のようにマルチプレックスPCRによって分析した。2種類の異なるマルチプレックスPCRを行った。セット1およびセット2についてのプライマーと、それによって生じたアンプリコンのサイズとを、表4に列挙する(ゲルの結果は示さず)。図4Aに示すように、アンプリコン(黒色のバーと数字で示す;内側:セット1、外側:セット2)を、ベクター挿入断片を含むM.ニューモニエゲノムを取り囲むように均等な間隔をあけて配置した。結果は、20個の形質転換体のうちの13個が完全なものであることを示した。
(表4)M.ニューモニエのマルチプレックスPCR用のプライマーの配列
サイズの分析
CHEFゲル分析を、これらの完全な形質転換体のうちの9個について行った。この目的のために、これらのクローンに由来するDNAを、Bio-Rad CHEF-DR IIIマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用して、アガロースプラグの中で単離した。染色体DNAを除去するために、プラグを、数時間一定電圧でプレ電気泳動して、酵母の染色体DNAを除去した。その後、DNAを、NotIまたはSbfIで消化した。これらの酵素により生じたベクター挿入断片を持つM.ニューモニエゲノムの断片(番号1〜6)を、図4Bにおいてマップ上に示し、断片とそれらのサイズとを、マップの横に並べて列挙した。
消化したDNAを、パルスフィールド電気泳動(Bio-Rad CHEF-DR IIまたはIIIシステム)により分離した。結果を表5にまとめる(ゲルの結果は示さず)。制限断片に、図4Bのように番号をつける。酵母クローン8は完全には消化されていなかった(データは示さず)。
表5に実施例1(A)の結果をまとめる。ここでは、酵母ベクターが組込まれている3種類のマイコプラズマゲノムを酵母に移入した。クローンを、それぞれ10個のアンプリコンの1つのセットまたは2つのセットを用いて、マルチプレックスPCRにより完全性についてスクリーニングした。クローンを、制限酵素消化およびゲル電気泳動、いくつかの場合にはその後のサザンブロットにより、サイズについて試験した。
(表5)酵母ベクターを含有する3種類のマイコプラズマゲノムの、酵母へのクローニング
実施例1B
全ゲノムおよび酵母宿主ベクターの相同組換えによる、酵母宿主細胞へのM.ゲニタリウムゲノムの移入
M.ゲニタリウムの直線化した全ゲノムを、図2Bに示した方法を使用して、宿主細胞内での酵母ベクターを用いたゲノムの相同組換えにより、酵母細胞に導入した。M.ゲニタリウムゲノムは、3つの、1箇所で切断される制限酵素部位を含み、そのうちの2つはそのrRNAオペロンの中にある。3つ目は、tRNAコード配列の3'末端にある。クローニングを、tRNAの完全性を保存するように設計することができたため、ベクターを、AscI部位に隣接するように相同組換えにより挿入した。
酵母クローニングベクターpARS-VN(V.N.Noskov et al, BMC Genomics 4, 16(2003)に記載されている)を、一対のプライマー(それぞれが、M.ゲニタリウムゲノム中の挿入部位の側方にある領域に対する60bpの相同性と、ベクターに対する20bpの相同性とを含む)を用いたPCRのための鋳型として使用した。プライマーは、IDT PAGE精製されて供給された。これらの配列は以下であり、ベクター配列を太字体で示し、ClaI部位(第1のプライマー)またはXhoI部位(第2のプライマー)に下線をひいた:
。これらのプライマーを用いたベクターのPCRにより、固有のClaI制限酵素部位とXhoI制限酵素部位の間の9bpを除くベクター全体を増幅し、6.5kbの産物を得た。
この直鎖状ベクターのDNAとM.ゲニタリウム株MS5由来のDNAとの混合物を、酵母株VL6-48Nのスフェロプラストの同時形質転換のために調製した。M.ゲニタリウムのDNAを以下のようにアガロースプラグ中で単離して、断裂を最小限にした。M.ゲニタリウムのゲノムDNAを、SP-4培地中で増殖させた株MS5から、低融点アガロースプラグの中で2つのバッチ中で単離した。バッチ2の培養物には、200μg/mlになるようにゲンタマイシンを補充した。粘着細胞をPBSで2回リンスし、その後、こすり取って8.0mMのHEPES(pH 7.4)、272mMのスクロース、および10%のグリセロールを含有している緩衝液中に入れた。各プラグには、約6cm2(バッチ1)または約10cm2(バッチ2)のコンフルエント細胞由来のDNAを含めた。溶解のために、アガロース中の細胞を、0.4MのEDTA、0.4%のN-ラウリルサルコシン、および2mgs/mlのプロテイナーゼK中で50℃で一晩から2日間、インキュベーションし、続いて緩衝液を交換し、同じ条件下で同じ時間、2回目の処理を行った。プラグを、10mMのTris、50mMのEDTAに対して十分に透析し、その後、2時間を2回、それぞれ、0.1mMになるようにPMSFを補充した10mMのTris、50mMのEDTAの中で透析し、その後、10mMのTris、50mMのEDTA中で再度透析し保存した。
形質転換前に、プラグを融解させ、以下のようにアガラーゼで消化した。プラグの第1のバッチを、CHEF(Bio-Rad)により2回電気泳動し、これによって分解したDNAを除去し、一方、環状のゲノムはインタクトなままとした(プラグの中のインタクトな環状ゲノムの割合を増大させるため)。第1回目の電気泳動は、0.5×TBE、50〜90秒のスイッチ時間を用いて20時間にわたり、1%のパルスフィールドアガロースゲル上で行った。2回目の電気泳動は、1×TAEと60〜120秒のスイッチ時間を用いて、24時間にわたり、1%の低融点ゲル上で行った。いずれのゲルも、120°、6V/cm、14℃で泳動した。2つのバッチのそれぞれから3つのプラグを、滅菌した1×TAEに対して十分に透析し、73℃数分間融解させ、42°に平衡化し、その後、β-アガラーゼI(New England Biolabs, Ipswich, MA)で1.5時間消化した。各容量の2分の1を、新しいエッペンドルフチューブに移した。形質転換の前に、ゲノムを、20UのAscI(1×NEB緩衝液4(New England Biolabs, Ipswich, MA)中)37℃で一晩消化し、これにより、図6Aに示すように、宿主ベクターとの意図した組換え部位の付近に二本鎖の断裂が生じた。
ドナーゲノムの(酵母ベクターを用いた同時形質転換による)宿主細胞への導入のために、酵母のスフェロプラストをプラグ由来のDNAで、場合によっては培養物を推奨されるOD未満に増殖させたことを除き、Kouprina and Larionov, Nat Protoc 3, 371(2008)に記載されている公開されている方法を使用して形質転換した。上記のようなこの公開されている方法を用いた場合は、酵母細胞を1Mのソルビトール中に懸濁し、Zymolyase(商標)(β-1,3-グルカンラミナリペンタオヒドラーゼ(β-1,3-glucan laminaripentaohydrolase))で処理し、その後、細胞壁を取り除くために形質転換した。アガロースプラグから回収したDNAを、スフェロプラストとともにインキュベーションした。増殖培地中での回収後、細胞を選択培地に播種した。
クローンを突いて採取し、1セットの代わりに2セットの10個のアンプリコンを使用したことを除き、上記実施例1A(v)(a)に記載したように、マルチプレックスPCRおよびゲル電気泳動によって評価した。第1のアンプリコンのセットを作製するために使用したプライマーは、上記の表2に列挙したものであった。アンプリコンの第2のセットを作製するために使用したプライマーと、それにより得られたアンプリコンのサイズとを、以下の表6に列挙する。
(表6)M.ゲニタリウムのマルチプレックスPCR用のプライマーの配列(セット2)
AscIで消化したDNAでの形質転換により、45個の形質転換体が得られた。これらを全て、上記で考察した20個のアンプリコン(表2、表6)を得るためのプライマーを用いて、マルチプレックスPCRによって試験した。21個が完全であるように思われた。これらの21個の形質転換体を、CHEFゲルのサザンブロットによって試験し、15個が正確なサイズであると思われた。未消化のM.ゲニタリウムゲノムでの形質転換により、50個の形質転換体を得た。これらを全て、同じマルチプレックスPCRによって試験し、7個が完全なものであると思われた。これらのうちの一つは正確なサイズであった。これらの結果は、認識部位での制限酵素を用いた消化、および宿主酵母ベクターでの同時形質転換、これに続く酵母宿主細胞内でのインビボでの組換えによる、マイコプラズマの全ドナーゲノムの移入の成功を示している。
実施例1C
酵母宿主細胞中でのインビボでの組換えによる、重複しているゲノム断片と酵母宿主ベクターとのアセンブリによる酵母宿主細胞へのM.ゲニタリウムゲノムの移入
本実施例は、図2Cに説明する方法を使用した、酵母宿主細胞中へのM.ゲニタリウムドナーゲノムの導入と、その中でのその増殖の成功を記載する。この方法では、ゲノムを、多数の重複しているゲノム断片の相同組換えにより宿主細胞(酵母)の中でアセンブリする。
このステラテジーを、大腸菌BACクローン由来の断片を使用して行った(Gibson et al., Science 319, 1215(2008)(オンラインで補った項目(supplemental online materials)を含む;Gibson et al., PNAS USA, (2008)105:20404-9;および米国特許出願公開第12/247,126号、発明者らによるネーミング:Gibson et alを参照のこと)。
本研究においては、合成のM.ゲニタリウムゲノムを、6つの断片から、上記に記載した公開されている第1の方法(Gibson et al, Science 319, 1215(2008)およびオンラインで補った事項に記載されている、多段階プロセス)を使用して、最初に、インビトロでの組換えを使用した3段階のアセンブリによって、クォーターゲノム(それぞれおよそ144kb)を作製し、BACベクターを使用して大腸菌中でクローニングすることにより、アセンブリした。これらの4つの「クォーターゲノム」(1〜4)を図6Bに説明する。
宿主酵母細胞由来のゲノムDNAの単離を、プレ電気泳動を行わずに、そして酵母のゲノムDNAを欠失させるための酵母特異的酵素での消化も行わずに、実施例1Aに記載したように行った。試料を、上記のようにCHEF分析を使用して分析した。サザンブロットもまた行った(データは示さず)。
(表7)重複している断片を使用する相同組換えを使用した、酵母細胞へのM.ゲニタリウムゲノムの移入を分析するためのプライマー
結果は、これらの形質転換体のうちの6つが正確な配列を含んでいたことを明らかにした。消化しなかった試料を用いた場合には、わずかに2つの形質転換体しか得られなかったばかりではなく、PCRおよびサザン分析において完全なM.ゲニタリウムゲノムを示すものもなかった。AscIでの消化の代わりに、クォーター3を、このクォーター中の特有のBsmBI部位で切断したことを除いて、上記と同じプロセスを使用して、別の研究を行った。同じ形質転換および分析方法を使用した。BsmBI消化を用いたこの研究により73個の形質転換体が生じ、これらのうちの44個は、PCRによりアッセイした場合には、正確であった。サザンブロットによって試験した28個のこれらのクローンのうちの5個が正確であった。これらの結果は、ドナーゲノムを酵母宿主細胞に導入するためのこの方法(重複している断片とベクターの宿主内でのインビボでの組換えによる)が、DNAの末端での相同組換えのより高い効率がおそらく原因で、形質転換の前にこれらの断片のうちの一つを制限酵素で切断する場合にはより効率的であることを明らかにした。(Orr-Weaver et al, PNAS USA 78, 6354(1981))。
実施例1D
2種類のマイコプラズマ(M.ゲニタリウムおよびM.ミコイデス)ドナーゲノムを持つ二倍体酵母株の構築
本実施例は、図2Aに示す方法(上記実施例1Aを参照のこと)を使用して導入した2種類のマイコプラズマゲノムを持つ二倍体酵母宿主株の産生を記載する。このプロセスのために、それぞれが上記ゲノムのうちの一方を持つ2つの一倍体株同士を、D.C.Amberg et al., Methods in Yeast Genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, ed.2005, 2005), pp.230に記載されているように接合させた。
M.ゲニタリウムcl16-2を含有しているW303a株(接合型a)を、M.ミコイデスLC cl1.1を含有しているVL6-48株(接合型α)と接合させた(上記実施例1Aおよび表1を参照のこと)。接合の前に、以下のように、M.ゲニタリウムゲノム中のHIS3マーカーをTRPマーカーで置き換えて、ヒスチジンおよびトリプトファンを含まない培地上で、両方のゲノムを持つ二倍体を選択できるようにした。
TRP1によるHIS3マーカーの置き換えのために、1059bpのTRP1断片を、プラスミドpRS304(Sikorski and Hieter, Genetics 122, 19(1989), Genbankアクセッション番号U03436.1, gi番号416305に記載されている)からPCRにより増幅させた。M.ゲニタリウムMS5 cl16-2に対して相同性を有している断片を、以下の配列を持つプライマーを使用してプラスミドから増幅させた。
それぞれのプライマー配列の中で、M.ゲニタリウムcl16-2配列に対する相同部分を太字体とする。1059bpの断片で、Gietz et al, Nucleic Acids Res 20, 1425(1992)に記載されている技術を使用して酢酸リチウムを使用して酵母を形質転換した。
TRP1によるHIS3の置き換えを、2つのプライマー
を用いた増幅により確認した。これらを用いた増幅により、HIS3がTRP1で置き換えられていれば1207bpの断片が、そして置き換えが起こっていなければ927bpの断片が生じた。結果は、正確な置き換えを明らかにした。
置き換えの後、2種類の異なるドナーゲノムを持つ一倍体株同士を、Amberg et al, Methods in Yeast Genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual.(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, ed.2005), pp.230に記載されているように接合させた。接合後、個々のクローンに由来するDNAを、Bio-Rad CHEF-DR IIIマニュアルによるプロトコール「Preparation of Agarose Embedded Yeast DNA」を使用して、アガロースプラグ中で単離した。プラグを、酵母の染色体DNAを取り除くために、一定電圧で数時間、プレ電気泳動した。単離したDNAを55℃で1時間の加熱により直線化を行った。対照試料は加熱しないままとした(データは示さず)。結果は、この研究において生じた5個の二倍体のうちの5個がM.ゲニタリウムゲノムとM.ミコイデスゲノムの両方を含んでいることを示し、これにより、異なる種の2つの全長のマイコプラズマドナーゲノムを含有している二倍体酵母宿主細胞の作製の成功を確認した。
実施例1E
ARS配列の存在を伴わない酵母宿主細胞中でのマイコプラズマドナーゲノムの維持
Gibson et al., Science 319, 1215(2008)に記載されており、上記実施例1Cに記載するように作製した、合成のM.ゲニタリウムゲノム中の酵母ベクターを、RNaseP遺伝子内のそのもとの部位から、必須の遺伝子を遮断しないようにMG411中の新しい部位に移動させた。この目的のために、上記実施例1Cに記載したような、合成のM.ゲニタリウムを含む酵母クローンを、2つの断片で同時形質転換した。第1の断片は1842bpの長さであり、URA3、GAL1プロモーター、およびセントロメアを含む酵母ベクター配列をMG411に挿入した。この断片は、以下の配列を持つプライマーを使用して、PCRによって作製した:
(M.ゲニタリウム配列は太字体とする;NotI部位に下線をひく)。このPCRのための鋳型は、SEQ ID NO:137(表8)に提供する配列を有している構築物であった。
(表8)酵母ベクター配列を作製するためのPCR鋳型の配列
第2の断片は302bpの長さであり、以下の配列を有していた:
。この断片を、M.ゲニタリウム配列によりRNaseP中の酵母ベクター挿入断片を置き換えるために使用し、その結果、この遺伝子のコード領域を回復させた。この断片は、以下の配列を持つプライマーを使用して、M.ゲニタリウムDNAからPCRによって作製した。
同時形質転換の前に、以下のようにTRP1をMG411に挿入した:MG411に対して相同性を有している1177bpのTRP1遺伝子断片を、プラスミドpRS304(Genbankアクセッション番号U03436.1、gi番号416305)から、以下の配列を持つ2つのプライマーを使用して増幅した
。個々のプライマー中で、M.ゲニタリウムゲノムに対する相同部分を太字体で示す。TRP1遺伝子の挿入断片を、挿入断片が存在する場合には1739bpを増幅し、存在しない場合は680bpを増幅する1セットのプライマー
を使用して、PCRにより確認した。同時形質転換体(これは、His- Trp- Ura+であった)を選択した。RNasePの回復を、配列
を持つプライマーを使用して、513bpの産物のPCR増幅により確認した。酵母ベクター配列によるTRP1の置き換えを、配列
を持つプライマーを使用して、1841bpの産物のPCR増幅により確認した。
新しい部位に挿入したベクターは、ARSを含んでいなかった。これらの研究の結果により、M.ゲニタリウムドナーゲノムを含むベクターが、酵母宿主細胞中での維持のためにはARS配列の存在を必要としないことを確認した。M.ゲニタリウムはATを多く含み、したがって、酵母の中でARSとして機能することができる配列を含む可能性がある。ARS様配列は、真核生物のATを多く含むDNAの中に頻繁に存在する(Montiel et al., Nucleic Acids Res 12, 1049(1984);Stinchcomb et al., PNAS USA 77, 4559(1980)を参照のこと)。
まとめると、本実施例に記載する研究により、3種類の異なるドナーであるマイコプラズマの全ゲノム(最も大きいものは1.1MBのサイズである)が、本提供の方法を使用して、酵母宿主細胞中にうまく移入され、増殖され、そして維持されたことを確認する。それぞれの場合において、完全なクローンを回収し、不安定性の兆候がないことを検出した。さらに、いくつかの研究においては、約2MBのような大きな分子を回収し、サザンブロッティングにより検出した。これらの分子はおそらく、コンカテマーのクローンを示し、本提供の方法が、酵母宿主細胞に大きなゲノムおよび核酸分子をクローニングならびに移入するために使用できることを明らかにする。このような方法は、ドナーゲノムを含有している宿主細胞を作製するために使用することができ、このドナーゲノムは、その後、本提供の方法を使用して、宿主細胞の中で増殖させ、修飾し、そしてレシピエント細胞に移植することができる。
実施例1F
酵母の中での増殖の間のM.ミコイデスMCpMmyc1.1ゲノムの安定性および評価
酵母の中での増殖の間のM.ミコイデスYCPMmyc1.1ゲノムの安定性を評価した。図18Aは、YCpMmyc1.1ゲノムの概略図を提供し、組込まれたYCpの位置を示す。PCR増幅において使用した9個の個々のプライマー対を、ゲノム中にそれらのおおよその位置に示し、図18Bにおいてアンプリコンに対応する番号をつける。酵母の中での増殖の間のM.ミコイデスゲノムの安定性を、2つの方法によって試験した。第1の方法においては、ゲノムを含有しているクローンの酵母培養物を、ヒスチジンを含まない固体の合成培地上に2日間播種し、その後、個々のコロニーを新しいプレート上に継いだ。第2の方法においては、ゲノムを含有しているクローンの酵母培養物を飽和状態まで増殖させ、1/100の割合に希釈し、再び飽和状態まで増殖させた。次いで、この培養物を、ヒスチジンを含まない固体の合成培地上に2日間播種し、その後、個々のクローンを新しいプレート上に継いだ。いずれの方法においても、ゲノムDNAを単離し、図18Aに示す9個の個々のプライマー対を使用したマルチプレックスPCR増幅において鋳型として使用した。得られたアンプリコンをゲル電気泳動により分析した。ゲルの右側の数字は、図18Bに示す個々のプライマー対のアンプリコンに対応させた。レーンGはポジティブコントロールであり、レーンNはゲノムを含まないネガティブコントロールである。分子量マーカーをレーンMに示す。示す結果は、分析した40個の試料のうちの典型となるものである。40個のクローン全てが完全なゲノムを含むと見られ、このことは、上記細菌のゲノムが酵母の中での日常的な増殖の間、安定であることを示している(図18B)。
III型制限酵素遺伝子座で操作した酵母の中のM.ミコイデスYCPゲノムを評価した。M.ミコイデスYCpMmyc1.1ゲノムの概略図を図18Cに示す。組込まれたYCpの位置を示す。PCR増幅に使用した9個の個々のプライマー対を、ゲノム中のそれらのおおよその位置に示し、アンプリコンに対応させて番号をつける(ゲルの結果は示さず)。図18Cの中の斜線は、クローン3において欠失しているアンプリコンを示す(ゲルの結果は示さず)。M.ミコイデスYCpMmyc1.1酵母クローンのURA3を含有しているカセットでの形質転換の後、Ura+クローンのゲノムをマルチプレックスPCRにより評価し、得られたアンプリコンを遺伝子の電気泳動により分析した(ゲルの結果は示さず)。アンプリコン5〜8は、クローン3においては欠失しており、このことは、このゲノム中に大きな欠失が存在することを示唆していた。他の4個のクローンは完全なゲノムを含むと見られた。
実施例2
酵母宿主細胞中で増殖させたマイコプラズマの全ドナーゲノムの、マイコプラズマレシピエント細胞への移植
大きな核酸の移入のための方法を提供する。例えば、ゲノムを、様々な生物および様々なタイプの細胞(例えば、ドナー、宿主、およびレシピエント)(これは、異なる種、界、および/または目(例えば、真核生物である酵母細胞に対して、異なる細菌種および細菌)であり得る)に移入する。したがって、いくつかの態様においては、上記方法は、様々なタイプの細胞間で起こり得る不和合性を克服するための工程を含み、例えば、宿主細胞中で増殖させたドナーゲノムをレシピエント細胞にうまく移植するための方法を含む。
以下の実施例3は、酵母宿主細胞中で増殖させた全ドナーゲノム(M.ミコイデスLC(Genbankアクセッション番号NZ_AAZK00000000.1(GI:149364883)の、異なる種のレシピエント細胞(M.カプリコルム)への、本提供の方法を使用した移植の成功を記載する。本実施例は、本提供の方法を使用した、3種類の異なる生物(ドナー、宿主、およびレシピエント)の間での差異の分析、ならびに、これらの差異を克服するために使用することができる様々なプロセスの開発を記載する。
実施例2Bは、精製した、インタクトな、ドナーであるマイコプラズマのゲノムDNAの十分な量を、レシピエント細胞への移植のために、酵母宿主細胞から回収することができることを明らかにする。実施例2Cは、天然の細菌のドナーゲノムを高い効率でレシピエント細胞に移植するための移植方法を提供する。実施例2Dは、宿主およびレシピエント細胞中の制限修飾システム(酵母には存在しない)の評価、ならびに、メチルトランスフェラーゼ(酵母の中で発現される)の発現、およびドナーゲノムに対するメチルトランスフェラーゼの効果、および活性化の評価を記載する。実施例2Eは、制限修飾(R-M)システムに伴う宿主-ドナー-レシピエントの不和合性の問題を克服するために本提供の方法において使用する処理を記載する。実施例2Fは、レシピエント細胞のR-Mシステムの突然変異を記載し、そして実施例2Gは、酵母宿主細胞から異なる種のレシピエント細菌への(マイコプラズマから酵母宿主細胞へと移入した)ドナーゲノムの移植の成功を明らかにする。
実施例2A
細菌株、培養条件、およびベクター
本実施例および以下の実施例3に記載する研究のために、大腸菌DH1OB[F--mcrAΔ(mrr-hsdRMS-mcrBC)φ80dlacZΔM15 ΔlacX74 deoR recA1 endA1 araD139Δ(ara, leu)7697 galU galKλ- rpsL nupG](Invitrogen, Carlsbad, CA)を、クローニング手順およびプラスミドの増幅のための宿主株とした。大腸菌細胞を、Luria-Bertani(LB)培養培地中またはLB寒天中で、37℃で増殖させた。所定のプラスミド中に存在する選択マーカーに応じて、大腸菌形質転換体を、50μg/mlのアンピシリン、5μg/mlのテトラサイクリン、または125μg/mlのピューロマイシンを補充したLB培地中で増殖させた。
以下の2つのマイコプラズマ種を、本実施例および以下の実施例3に記載する研究において使用した:マイコプラズマ・カプリコルム亜種カプリコルム(California Kid(商標)株)(ATCC 27343)およびマイコプラズマ・ミコイデス亜種ミコイデス(GM12株)(Damassa et al., 1983;上記)。マイコプラズマ細胞を、17%のウシ胎児血清(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含有している液体または固体のSP4培地(Tully et al.1977)中で37℃で増殖させた。プラスミドまたは全ゲノムで形質転換したマイコプラズマを、5μg/mlのテトラサイクリンまたは8μg/mlのピューロマイシンを補充したSP4培地中で37℃で増殖させた。β-ガラクトシダーゼ活性を、150μg/mlの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-gal、Promega, Madison, WI)を含有している固体培地上にマイコプラズマを播種することにより検出した。
マイコプラズマ・カプリコルム亜種カプリコルム(M.カプリコルム)の2種類の株を、以下の実施例においてレシピエント細胞として使用した:野生型(wt)M.カプリコルムおよび制限酵素を持たない(restriction-free)M.カプリコルム突然変異体(M.カプリコルム-ΔRE)(野生型M.カプリコルム中のCCATC-制限酵素遺伝子の不活化により得た(以下の実施例2Fに記載する))。移植のためのドナーゲノムDNAは、上記実施例1に記載するマイコプラズマ・ミコイデス亜種ミコイデスLC(M.ミコイデスLC)クローン(cl1.1)由来のものであった。そのゲノムには、テトラサイクリン耐性マーカー、lacZ遺伝子、およびORF04334(lppA)とORF04335(IS1296のトランスポザーゼB)の間に組込まれた酵母セントロメアプラスミドが含まれていた。以下に詳細に記載するように、マイコプラズマゲノムDNAを、M.ミコイデスLC細胞クローン1.1(天然のゲノムDNA)か、または上記実施例1に記載するように作製したM.ミコイデスクローン1.1ゲノムを持っている酵母宿主細胞のいずれかから、アガロースプラグ中で調製した。
以下の実施例で使用したいくつかのベクターは、M.ミコイデスLC(pMYCO1(SEQ ID NO:149))中、およびM.カプリコルム(pMYCO1(SEQ ID NO:149);pSD4(SEQ ID NO:150))(Lartigue et al, Nucleic Acids Res 31, 6610(2003))中で複製することができるoriCプラスミドから誘導した。これらのプラスミドはpBS(+)プラスミド(Stratagene)をベースとし、これには、耐性マーカーとして、スピラリンプロモーターにより駆動されるトランスポゾンTn916由来のtetM遺伝子が含まれている(Lartigue et al, Plasmid 48, 149(2002))。制限酵素緩衝液は、New England Biolabs, Ipswich, MAによるものであった。
実施例2B
宿主酵母細胞からのM.ミコイデスLCドナーゲノムの単離、回収した全ゲノムDNAの量の確認、および移植方法の開発
酵母細胞からインタクトなマイコプラズマドナーゲノムを単離し、分析するために、上記実施例1A(ii)bおよび1A(iv)に記載したようにマイコプラズマ・ミコイデスラージコロニー(M.ミコイデスLC)GM12、クローン1.1のゲノムで形質転換した酵母W303a細胞を、以下に記載するようにアガロースプラグ中に包埋した。このゲノムは、テトラサイクリン耐性遺伝子(tetM)とβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)とを有していた。このプラグからDNAを単離し、評価した。単離した、ドナーゲノムを持たない天然の酵母由来のゲノムDNAおよび天然のドナーであるマイコプラズマ細胞由来のゲノムDNAを、比較のために同様の様式で評価した。
i.ドナーゲノムを含有している酵母のアガロースプラグ
酵母培養物を、OD600がおよそ1.5に達するまで、選択培地中で30℃で増殖させた。酵母細胞をアガロースプラグ中に包埋し、DNAを、Bio-Rad Laboratories(Valencia, CA)によるCHEF mammalian Genomic DNA Plug Kitを使用し、以下の詳細/改変を用いて製造業者が推奨するプロトコールに従って、プラグから単離した。プラグ一つあたりの利用できるM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量を増大させるために、6×109個の酵母細胞(6×108個の細胞の代わりに)を、作製しようとするプラグ1mLあたりに使用して、一つのプラグあたり6×108個の細胞を得た。プラグ中への包埋の後、リチカーゼ(Bio-Rad Laboratories)での処理ではなく、Zymolyase(商標)1OOT酵素(USB Corporation, Cleveland, OH)での消化を、酵母の細胞壁を消化するために使用した。酵素を、5mg/mLの濃度で、プラグの中および外に添加した。この混合物を37℃で2時間置いておいた。1×TE緩衝液(20mMのTris-HCL(pH 8);50mMのEDTA)中での洗浄後、包埋した酵母細胞(スフェロプラスト)を溶解させ、タンパク質を、プラグ1mLあたり200μLのプロテイナーゼKを補充したプロテイナーゼK反応緩衝液(100mMのEDTA;0.2%のデオキシコール酸ナトリウム;1%のラウリルサルコシンナトリウム;pH 8.0)とともに、それぞれ50℃で24時間の2回のインキュベーションを使用して分解させた。その後、アガロースプラグを室温で4回、それぞれ1時間、1×TE緩衝液(20mMのTris-HCL(pH 8);50mMのEDTA)中で撹拌しながら洗浄し、同じ緩衝液中で4℃で保存した。制限酵素(下記を参照のこと)で消化する酵母プラグについて、フェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)を、1mMの最終濃度となるように2回目の洗浄の際に添加した。
M.ミコイデスLCのゲノムDNAを持つ酵母アガロースプラグと、対照である酵母DNAを含有している酵母アガロースプラグを、Bio-Rad(Valencia, CA)によるCHEF mammalian Genomic DNA Plug Kitを使用して分析のために調製した。3つのアガロースプラグの一つのシリーズ(A、B、およびC)を、ドナーゲノムを含有している酵母について(A2、B2、およびC2)、ならびに天然の酵母について(A1、B1、およびC1)作製した。上記プラグを室温で、1mLの1×TE緩衝液中、1時間を2回洗浄し、BSA(100μg/mL)を補充した1mLの1×NEB緩衝液2中で室温で1時間平衡化させた。
内因性の酵母ゲノムDNA(これは、以下に記載するCHEFゲル分析においてM.ミコイデスLCのゲノムDNAと同様の位置に移動した)を除去するために、プラグBおよびプラグC(酵母のそれぞれのセットについて)を、酵母のゲノムDNAを特異的に切断してドナーDNAをインタクトなまま残す50ユニットのAsiSI、RsrII、およびFseI制限酵素(New England Biolabs)とともに、500μLの反応容量の中で37℃で一晩、インキュベーションした。プラグAは、同じ条件下でこれらの酵素を含めずにインキュベーションした。その後、3つのプラグを全て、1mLの1×TE緩衝液を用いて室温で1時間洗浄し、1%のTAEアガロースゲル上に充填して(120分、120ボルト)、プラグから消化した酵母ゲノムDNA断片を除去した。
移動後、アガロースプラグをウェルから取り出し、1mLの0.1×TE緩衝液中、1時間を2回洗浄し、そしてBSA(100μg/mL)を補充した1mLの1×NEB緩衝液2(New England Biolabs, Ipswich, MA)の中で1時間、平衡化させた。M.ミコイデスLCのゲノムDNAを直線化するために(これによりゲルへのDNAの侵入を可能にする)、プラグCを、50ユニットのPspXI制限酵素とともに、37℃で一晩インキュベーションした。プラグAおよびプラグB(酵母のそれぞれのセットについて)を、同じ条件下で酵素を含めない疑似消化のためにインキュベーションした。インキュベーション後、全てのプラグを、1mLの1×TE緩衝液で室温で1時間洗浄し、パルスフィールドゲル上に充填した。
ii.天然のM.ミコイデスLCのアガロースプラグ
回収したDNAの量の比較のために、様々な量のゲノムDNAを含有している天然のドナーであるM.ミコイデスLCのアガロースプラグもまた、CHEF mammalian Genomic DNA Plug Kit from Bio-Rad(Valencia, CA)を使用してM.ミコイデス細胞から調製した。M.ミコイデスLCからのインタクトな全ゲノムDNAの単離は、特に、細胞を単離前に培養した点において、いくつかの改変を加えて、Lartigue et al, Science 317, 632(2007)に記載されているとおりに行った。500mLのM.ミコイデスLC(tetM、lacZ、YCp)細胞を、10μg/μlのテトラサイクリンと1Oμg/μlのストレプトマイシンを補充したSP4培地中で、培地のpHが6.5(およそ109個の細胞/mL)に達するまで増殖させた。細胞の収集の前に、100μg/μlのクロラムフェニコールを培地に添加し、進行中の回の染色体の複製を同調させて、さらなる回の複製を阻害するために、細胞を、この細胞濃度で37℃でさらに90分間インキュベーションした。
細胞を、10mMのTris(pH 6.5)、0.5Mのスクロース中で1回洗浄し、2mLの同じ緩衝液中に再度懸濁した。この細胞懸濁液から、8つのシリーズのM.ミコイデスLCのゲノムDNA(MLC gDNA)のアガロースプラグを、M.ミコイデスLC細胞の2倍の段階希釈により調製した。シリーズ1のプラグには、プラグ一つあたりおよそ1010個の天然のM.ミコイデスLC細胞を含めた。シリーズ7のプラグには、プラグ一つあたりおよそ1.5×108個を含めた。そしてシリーズ8のプラグには、プラグ一つあたりおよそ7×107個の細胞を含めた。酵母由来のゲノムDNAに対する比較のために、天然のDNAを含有しているプラグと、酵母から単離したM.ミコイデスLCのゲノムDNAを含有しているプラグ(上記を参照のこと)とを、パルスフィールドゲル上での分析のために、上記に記載したようにPspXIで消化してMLCゲノムを直線化した。
iii.パルスフィールドゲル上での、回収したゲノムDNAの比較
酵母細胞中のM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量は、アガロースプラグ中の酵母細胞に由来する単離したゲノムDNAの量と、アガロースプラグ中のM.ミコイデスLC細胞の2倍の段階希釈物から単離した天然のゲノムDNAの様々な量とを比較することにより概算した。このプロセスのために、酵母のアガロースプラグ(実施例2B(i)、プラグA1、B1、およびC1、ならびにA2、B2、およびC2)と、8個のM.ミコイデスLCのアガロースプラグ(実施例2B(ii))とを、TAE 1×中の1%の認証されている(certified)パルスフィールドアガロースゲル(Bio-Rad, Valencia, CA)の中で、外形クランプ均一電界電気泳動(contour-clamped homogeneous electric field)(Chu et al, Science 234, 1582(1986))(CHEF DR III;Bio-Rad)を用いて電気泳動した。パルス時間を、4.5V/cmで、27時間かけて60秒から120秒までの傾斜をつけた。電気泳動後、ゲルをSYBR(登録商標)GOLD核酸染色(Invitrogen, Carlsbad, CA)(1/10,000の希釈率)で染色し、PFGEパターンを、GE Typhoon 9410イメージャーでスキャンした。S.セレビジエCHEF DNAサイズマーカーを、DNAのサイズを評価するために使用した。このマーカーは、サッカロミセス・セレビジエの染色体を含んでおり、これを、0.2Mb〜2.2Mbの範囲のサイズ決定に使用する。
プラグA2〜C2(M.ミコイデスドナーゲノムを含有している酵母由来)およびプラグA1〜C1(天然の酵母)を含むレーン(実施例2B(i))を、マーカーレーンとともにゲル上で泳動した。プラグ(シリーズ7および8)には、漸増濃度のM.ミコイデスの天然のDNAを含めた(実施例2B(ii))。1.12MbのM.ミコイデスLCゲノムを、特定のレーンの中のパルスフィールドゲル上の予想した位置で検出した。M.ミコイデスのドナーゲノムを含有している酵母宿主細胞の場合は、酵素のカクテル(AsiSI、RsrII、FseI制限酵素)での酵母のゲノムDNAの選択的消化、これに続く電気泳動(試料B2およびC2;上記実施例2B(i)を参照のこと)により、M.ミコイデスドナーゲノムDNAの回収が改善された(データは示さず)。さらに、M.ミコイデスLCゲノム(C2)を直線化することにより、1.2MbのM.ミコイデス(C2)の回収が大幅に改善された。1.2Mbのバンドは、M.ミコイデスゲノム(B1、C1)を含まない天然の(野生型)酵母細胞に由来する並行して行った試料の中では検出されなかった。このことにより、1.2Mbのバンドが実際に、酵母細胞中のM.ミコイデスゲノムの存在を示すことを確認した。同じバンドは、天然のM.ミコイデスゲノムDNAを含有しているレーンの中に現れた。
酵母細胞から回収したM.ミコイデスLCゲノムDNAの量を、天然のM.ミコイデスLCのゲノムDNA標準物から回収したもの(これもまた、上記のようにPspXIで処理した)と比較した。6×108個の酵母細胞から得たM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量は、シリーズ7の天然のM.ミコイデスLCプラグから回収したゲノムDNAの量と同様であった(プラグ一つあたりおよそ1.5×108個の天然のM.ミコイデスLC細胞)。
iv.回収したDNAの定量化
UV分光光度計を使用して、上記実施例2B(ii)に記載したように、天然のM.ミコイデス細胞から調製した融解させたプラグの中に存在する天然のM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量を決定した。結果を以下の表9に列挙する。この表に示すように、シリーズ7のプラグは、およそ12ng/μlのゲノムM.ミコイデスLC DNAを含んでいた(100μLのプラグあたり1.2μg)。上記のように、パルスフィールドゲルは、この試料を含むレーン(7)および酵母試料から回収したDNAを含有しているレーン(C2)において、比較可能な1.2Mbのバンドの強度を明らかにした(上記実施例2B(iii)を参照のこと)。これにより、ドナーゲノムを含有している宿主細胞から回収した100μLのプラグあたりのM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量が1μgにほぼ等しいことを決定した。
(表9)天然のM.ミコイデスLCゲノムDNAの定量化および移植
実施例2C
プラグから回収したDNAの、レシピエント細胞への移植
融解させた天然のM.ミコイデスLCのアガロースプラグ(実施例2B(iv);表9)のシリーズからのそれぞれの試料について、プラグの1/5(20μL)を、以下のようないくつかの改変を加えて、Lartigue et al., Science 317, 632(2007)に記載されているプロトコールと類似するプロトコールを使用して、M.カプリコルムレシピエント細胞に移植した。
i.レシピエント細胞の培養および調製
6mLのM.カプリコルムレシピエント細胞を、ウシ胎児血清(17%)、グルコース(10g/L)、2mLのフェノールレッド(1%)、および100μlのペニシリンG(5mg/ml))を補充したSOB(+)培地(Bacto SOB培地(Becton Dickinson;Franklin Lakes, NJ)中で、培養物のpHがpH 5.7〜5.85(およそ5×107個の細胞/ml)に達するまで増殖させた。レシピエント細胞を、10℃で15分間、4575gで遠心分離し、S/T緩衝液(10mMのTris-HCl(pH 6.5);および250mMのNaCl)中で1回洗浄し、200μlのCaCl2(0.1M)中に再度懸濁し、そして氷上で30分間インキュベーションした。
ii.アガロースプラグ中での単離したドナーゲノムDNAの調製
移植前に、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを含有しているアガロースプラグ(シリーズ1〜7)を、2回、それぞれ30分間、0.1×TE緩衝液[2mMのTRIS-HCl(pH 8.0)-5mMのEDTA]中で、室温で穏やかに撹拌しながら洗浄した。この緩衝液を完全に除去し、アガロースプラグを、1/10容量の1O×β-アガラーゼ緩衝液[10mMのBis Tris-HCl(pH 6.5);1mMのNa2EDTA]で、65℃で10分間融解させた。この融解させたアガロースを10分間かけて42℃に冷却し、この温度で、プラグ100μlあたり3ユニットのβ-アガラーゼI(New England Biolabs, Ipswich, MA)とともに一晩インキュベーションした。
iii.5%のPEGを使用した移植
氷上で30分の後、200μlのレシピエント細胞を、上記実施例2B(ii)において作製した20μlの融解させたドナーゲノムDNAのアガロースプラグ(プラグの1/5)を含有している400μlのSP4(-)培地[0%のウシ胎児血清、0.45%のNaCl]とともに穏やかに混合した。すぐにプラグを添加し、その後、以下のように次の工程で処理した。
等量(620μl)の2×融合緩衝液(20mMのTris-HCl(pH 6.5)、250mMのNaCl、20mMのMgCl2、10%のFluka PEG-6000(Sigma-Aldrich、St.Louis, MO))を、すぐにSP4(-)、ゲノムDNA、および細胞の混合物に添加し、チューブを30秒間穏やかに揺らすことにより混合物をホモジナイズした。37℃で50分の後、5mLの予め温めておいたSP4を添加し、細胞を穏やかに混合した。37℃でさらに3時間の後、細胞を、10℃で15分間、4,575gで遠心分離し、0.6mLのSP4中に再度懸濁し、4μg/mlのテトラサイクリンと150μg/mlのX-galとを含有しているSP4プレート上に播種した。3〜4日後、個々のコロニーを突いて採取し、10μg/mlのテトラサイクリンを含有している培養培地中で増殖させた。
結果を、上記の表9に示す。これは、回収した移植体(ドナーDNAを持つレシピエント細胞のコロニー)の数が、移植反応中に存在する天然のM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量に比例して増加したことを示す。移植体の数の減少は、試験した最も高いDNA濃度で観察された(シリーズ8)。200ngのゲノムDNAを用いて、30個の移植体が得られた。1μgの天然のM.ミコイデスLCのドナーゲノムDNAあたりおよそ200個の移植体のコロニーが、その後の実験においてこの方法を使用して日常的に得られた。これらのデータは、このプロトコールの効率が非常に高く、酵母宿主細胞から得たドナーであるM.ミコイデスLC DNAの量が、この方法で使用するゲノムの移植における律速要因ではないことを明らかにした。
上記移植方法はまた、溶液中の10μgのプラスミドDNAを20μlの融解させたアガロースプラグで置換することにより、プラスミドDNAでのM.カプリコルムレシピエント細胞の形質転換(アガロースプラグ中ではない)にも使用することができる。
実施例2D
制限修飾(R-M)システムの評価
ドナー細胞、宿主細胞、およびレシピエント細胞間での制限修飾システムの差異が、ゲノムの移植において問題を引き起こす可能性があるため、これらのシステムを調べた。本実施例は、本明細書中で移植に使用したマイコプラズマ細胞のいくつかの中に存在しその中で活性である制限修飾システムの成分を、明らかにし、かつ、移植の成功のためにこれらのシステムを妨害するように使用した本提供の方法の複数の局面を明らかにする。
i.ドナー細胞およびレシピエント細胞中での予想されるR-Mシステムの同定
M.ミコイデスLCゲノム(これは配列決定されている(Genbankアクセッション番号:NZ_AAZK00000000;GI:149364883))が、6種類の異なる制限修飾システム(5つのII型システムと一つのIII型システム)を含むと予想した。M.カプリコルムゲノム配列は、一つのII型システムの存在を示した。II型酵素の認識部位特異性を、遺伝子配列(R.Roberts博士、私信)から、Roberts RJ et al., Nucleic Acids Res.35(Database issue):D269-70(2007)に記載されているように予想した。World Wide Webアドレス:rebase.neb.com/rebase/rebase.html.で利用できるREBASE、The Restriction Enzyme Databaseもまた参照のこと。これらの認識部位と、これらの部位を切断する市販されている制限酵素を、以下の表10に列挙する。III型システムの特異性は予想しなかった。
(表10)M.カプリコルムおよびM.ミコイデスLC配列から予想される制限修飾(R-M)システム
ii.R-Mシステムの確認
a.制限部位のメチル化状態
予想したII型制限酵素システムに対応している市販されている制限酵素アイソシゾマーを、M.ミコイデスLCおよびM.カプリコルムの天然のゲノムが、表10に列挙した予想した部位でメチル化されるかどうかを確認するために使用した。アイソシゾマーでのM.ミコイデスLCのゲノムDNAおよびM.カプリコルムのゲノムDNAの消化は、天然のゲノムDNAが、予想される部位でメチル化されたことを示した(データは示さず)。これらの結果は、M.カプリコルムとM.ミコイデスLCがいずれも、CCATC制限修飾システムを含むことを示していた。
この研究のために、M.ミコイデスLCおよびM.カプリコルム由来のゲノムDNAを、Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit(Promega, Madison, WI)を製造業者の説明に従って使用して精製した。およそ1μgの各M.ミコイデスLCのゲノムDNAおよびM.カプリコルムのゲノムDNAを、製造業者(New England Biolabs, Ipswich, MA)によって記載されているように、BccI、HinfI、HpyAV、MboI、およびSfaNIのぞれぞれとともにインキュベーションした。その後、DNAをアガロースゲル電気泳動によって分析した(データは示さず)。
予想したR-Mシステム(表10を参照のこと)に基づいて予期したとおり、M.ミコイデスLCのゲノムDNAは、試験した5種類の制限酵素アイソシゾマー全てによる切断に対して耐性であり、これは、これらの部位のそれぞれでDNAがメチル化されたことを示していた。一方、M.カプリコルムのゲノムDNAは、両方の生物において同定された制限修飾システムである、制限酵素アイソシゾマー(BccI)による切断に対してのみ耐性があった。これらの結果により、マイコプラズマ種におけるこれらのそれぞれのR-Mシステム(表10)の存在を確認し、例えば、M.ミコイデスLCとM.カプリコルムがいずれも、CCATC制限修飾システムを含むことを示した。
M.カプリコルムから予想した制限酵素システムに対応している市販されている制限酵素アイソシゾマーを利用できることにより、本発明者らは、2つのゲノムを適切な制限酵素部位でメチル化できるかどうかを試験することができた。M.ミコイデスおよびM.カプリコルム由来のゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kitを使用して精製した。およそ1μgの各M.ミコイデスのゲノムDNAおよびM.カプリコルムのゲノムDNAを、BccIとともにインキュベーションした。その後、DNAをアガロースゲル電気泳動によって分析した。予期したとおり、M.ミコイデスのゲノムDNAとM.カプリコルムのゲノムDNAはいずれも、BccI(上記2種類の生物の相同であるR-Mシステムに対応する酵素)による切断に対して耐性があった(データは示さず)。
b.制限酵素活性
M.ミコイデスおよびLC M.カプリコルムから、細胞を含まない抽出物を、制限酵素がいずれの種においても活性であることを明らかにするために調製した。以下に記載するように、上記抽出物を、M.ミコイデスLC、M.カプリコルム、およびM.ゲニタリウムのゲノムDNAを切断するそれらの能力を試験するために、制限酵素アッセイにおいて使用した。
c.細胞抽出物の調製
M.ミコイデスLCについては、SP4培地中の細胞の1リットルの培養物を、6.2〜6.3のpHに達するまで、37℃で増殖させた。細胞を5つの200mLの画分に分け、そしてSLA-1500 Sorvallローターの中で4℃で15分間、5,000×gで遠心分離することにより、培養物を回収した。その後、M.ミコイデスLCペレットをそれぞれ、200mLの8mM Hepes(pH 7.4)および272mMのスクロースで洗浄し、SLA-1500 Sorvallローターの中で4℃で15分間、5,000×gで遠心分離した。得られたペレットをそれぞれ、1mlの抽出緩衝液(20mMのTris-HCl(pH 7.5)、0.1mMのEDTA、150mMのNaCl、1mMのDTT、および10%のグリセロール)の中に再度懸濁し、その後、3の出力制御で、マイクロチップを使用して氷上で5回、10秒〜12秒のバーストを用いて超音波処理した。溶液それぞれを、4℃で30分間、18,000×gで微量遠心機により明澄化した。得られた各可溶性画分を合わせて一つにし、タンパク質濃度を試験し、200μlの画分にアリコートし、-80℃で保存した。この様式で調製した抽出物のタンパク質濃度は、典型的には、15mg/ml〜25mg/mlの範囲であった。
M.カプリコルムについては、10μg/mlのテトラサイクリンを含有しているSP4培地中で1リットルの培養物を増殖させたことを除き、M.ミコイデスLCについて記載した方法と同じ方法を使用して抽出物を調製した。
d.制限酵素活性のアッセイ
M.ミコイデスLC抽出物の制限酵素活性を以下のように試験した。WIZARD(登録商標)Genomic DNA精製キット(Promega Corporation, Madison, WI)を使用してM.カプリコルム、M.ミコイデスLC、およびM.ゲニタリウムから、別々の反応において個別に単離した2μgのゲノムDNAを、1×NEB制限酵素緩衝液4および100μMのデオキシヌクレオチドの中で、8μgの抽出物とともに、100μlの全容量の中で37℃でインキュベーションした。タンパク質を最後に添加し、0分、5分、10分、および15分の時間間隔で、20μlのアリコートを取り出し、20μlの2×停止緩衝液(2%のSDS、20mMのEDTA)に対して添加した。この溶液を、40μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、室温で2分間、18,000×gで遠心分離した。水相を、4μlの1O×Blue Juice(Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに新しいチューブに入れ、18μlの各溶液を、0.8%の1×TAEアガロースゲル上に充填し、そして120V、0.1〜0.6の線形、および80V、0.1〜0.6の線形のFIGE条件下で16時間泳動させた。その後、このアガロースゲルを、SYBR(登録商標)GOLD核酸染色(Invitrogen, Carlsbad, CA)(1/10,000の希釈率)で30分間染色し、GE Typhoon 9410イメージャーでスキャンした。
M.カプリコルム抽出物の制限酵素活性を、1×NEB制限酵素緩衝液1と12μgのM.カプリコルム抽出物をそれぞれの反応において使用し、アリコートを、0分、15分、30分、および45分の間隔で取り出して処理したことを除き、同じ様式で試験した。
実施例2D(ii)(a)に記載した研究による結果(ゲルの結果は示さず)は、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを、M.カプリコルムの制限修飾システムによる切断から保護するべきであること、しかし、M.カプリコルムのゲノムDNAは、M.ミコイデスLCの制限修飾システムによって容易に切断されるはずであることを示唆していた。実際、相同である制限修飾システムにより予想したとおり、M.ミコイデスLC由来のゲノムDNAおよびM.カプリコルム由来のゲノムDNAは切断されず、一方、M.ゲニタリウム由来のゲノムDNA(これは、制限修飾システムを全く含まない)は、容易に切断された。M.ゲニタリウムのゲノムDNAの切断は、M.カプリコルム中での制限酵素の活性が原因であった。これは、M.カプリコルム株由来の粗抽出物(この中では、予想した制限酵素遺伝子が破壊されていた(実施例2Fを参照のこと))が、試験した3種類のマイコプラズマ株のいずれに由来するゲノムDNAも切断しなかったという事実から明らかであった。これもまた予期したとおり、M.カプリコルム由来のゲノムDNAは、M.ミコイデスLCの粗抽出物とともにインキュベーションした場合に切断されたが、M.ミコイデスLCは切断されなかった。これらの結果は、M.カプリコルムおよびM.ミコイデスLCが、活性な制限修飾システムを含み、これが、酵母から単離したメチル化されていないM.ミコイデスLCのドナーゲノムの活性化を達成する可能性があることを示していた。λDNAを、野生型M.カプリコルム抽出物によって消化した。このDNAの、M.カプリコルムRE(-)株から作製した抽出物とのインキュベーションはバンドの出現を生じなかった。これは、この株由来の制限酵素活性が存在しないことを示していた。
e.M.ミコイデスドナーおよび移植体クローンのゲノムの配列決定およびゲノムの比較
2つのM.ミコイデスクローンを配列決定した。一方は、Science(317,362)に公開された2007年の論文「Genome transplantation in bacteria:changing one species to another」の中でLartigue et al.によって記載されたドナーゲノム(1,088,905bp、GenBank#CP001621)であった。他方は、III型制限酵素遺伝子欠失を含む移植されたM.ミコイデスクローン(ΔtypeIIIres;図17)(1,084,586bp、Genbank#CP001668)であった。2007年の論文で使用されたクローンを、Sanger DNA配列決定化学反応だけを使用して配列決定した。本明細書中に記載するIII型制限酵素遺伝子欠失クローンは、Sanger法により8倍の被覆率になるように、また、454 FLXペアード・エンド・リード・ピロシーケンシング化学反応(paired-end read pyrosequencing chemistry)を用いて配列決定した。
移植体が完全なM.ミコイデスであり、酵母配列またはM.カプリコルムレシピエント細胞の配列のいずれかを含むキメラではないことを確認するため、そして細菌ゲノムが酵母にクローニングされた場合に安定であるかどうかを決定するために、2つの配列を比較した。アセンブリしたΔtypeIIIresゲノムは全て、YCpベクターとマッチするこれらの領域を除き、M.ミコイデスとマッチした。さらに、ゲノムの中に意図的に構築した差異を除き、III型制限酵素遺伝子欠失を持つ移植体であるM.ミコイデスゲノム配列は、95個の部位を除き、以前に配列決定したM.ミコイデスゲノムと同じであった。これらの95個の配列の差異は、本明細書中で使用したドナーであるM.ミコイデスと、変更したゲノムの間では異なっていないことに留意しなければならない。これらは、2007年の論文(Id.)において使用されたM.ミコイデス株(Genbank#CP001621)の配列と、本明細書中の変更したゲノム(Genbank#CP001668)との間では異なる。本発明者らは、M.ミコイデスYCpMmyc1.1(これを、もとのM.ミコイデス酵母クローンを作製するために使用した)の中のこれらの95個の部位のうちのそれぞれ一つを配列決定した。それぞれの場合において、移植体の配列は、この移植体の起源であるYCpMmyc1.1ドナーとマッチしていた。したがって、95個の配列の差異は全て、酵母の中でのクローニング、酵母の中での増殖および変更、または変更したM.ミコイデス株を作製するための酵母の外への移植の間に生じたものではない。2つの完全に配列決定したM.ミコイデスゲノムにおいて同じである全ての配列はまた、YCpMmyc1.1ドナー株においても同じであるとの仮定に基づき、意図的に変更したもの以外の配列変化は、酵母の中でのクローニングおよび増殖の間、ならびに細菌へと移植により戻す間には起こらなかったと結論付けた。
これらのデータは、酵母ゲノムまたはレシピエント細胞のゲノムのいずれも、M.ミコイデスのドナーゲノムとの組換えが起こらなかったこと、およびこれらの細菌のゲノム配列が、YCpとしての酵母の中での増殖、変更、および保存の間、安定であることを示す。
実施例2E
制限修飾システムの不和合性からドナーゲノムおよび核酸を保護するための方法
本実施例は、制限修飾システムによる切断からマイコプラズマ(例えば、M.ミコイデスLC)のドナーゲノムを保護するために使用した2種類のメチル化方法を記載する。メチル化アッセイは、効率を確認するために、それぞれの方法について行った。
i.構築および精製したメチルトランスフェラーゼによるメチル化
最初に、以下に記載するように、M.ミコイデスLCゲノムの決定した配列を、同定したメチルトランスフェラーゼそれぞれ(上記表10を参照のこと)を外因的に発現させ、かつ精製するために使用した。M.カプリコルムにおいて同定したR-MシステムだけがM.ミコイデスLCにおいて同定したものと同じであったので、M.ミコイデスLCメチルトランスフェラーゼだけを、この研究のために精製した。
a.メチルトランスフェラーゼの構築
M.ミコイデスLC中の可能性がある制限修飾システムに由来する5つの同定したメチルトランスフェラーゼ(CCATC-M、CCTTC-M、TypeIII-M、GCATC-M、およびGANTC-M)のコード配列を、酵母の中での発現のためにコドン最適化した。その後、これらの配列を、Gibson et al., Nature Methods 6, 343-345(2009)、および2009年2月19日に提出された米国特許出願第12/371,543号に記載されている、1工程の等温DNAアセンブリ法を使用して、5'エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、およびDNAリガーゼの協働作用により、多数の重複している60bpのオリゴヌクレオチドから構築した。簡単に説明すると、この方法を用いる場合は、DNA断片に、最初に、5'エキソヌクレアーゼによって凹みを作り、これにより、一本鎖の突出を生じさせる。次に、これを特異的にアニーリングさせ、続いてギャップを埋め、ポリメラーゼとリガーゼを使用して共有結合させる。構築後、CCATC-M、CCTTC-M、およびbTypeIII-M配列を、pTYB1発現ベクター(New England Biolabs, Ipswich, MA;SEQ ID NO:156)にクローニングした。GCATC-M配列およびGANTC-M配列を、GATEWAY(登録商標)組換えクローニング技術(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてN末端Hisタグ発現ベクターにクローニングした。
b.メチラーゼの精製
CCATC-M、CCTTC-M発現プラスミド
CCATC-M発現プラスミドとCCTTC-M発現プラスミドとで、BL21(DE3)コドンプラス細胞(Stratagene, La Jolla, CA)を形質転換し、形質転換体を使用して、100mg/mlのカルベニシリンと34mg/mlのクロラムフェニコールを含有している250mLのZYM-505培地(Studier, FW, Protein Expr Purific 41:207-34(2005))に別々に接種し、激しく撹拌しながら(315rpm)37℃で増殖させた。およそ4時間後、培養物を16℃に移し、発現を、0.3mMのIPTGの添加により、一晩誘導した。細胞をペレット状にし、50mlのIntein溶解緩衝液(25mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、500mMのNaCl、1mMのEDTA、10%のグリセロール、およびプロテアーゼ阻害剤(Complete protease inhibitor cocktail, Roche Applied Sciences, Indianapolis, IN))に懸濁し、高圧ホモジナイザーに2回通過させることにより溶解させた。
この溶解物を、4℃で20分間の、20,000×gでの遠心分離により明澄化させた。明澄化させた溶解物を、製造業者(New England Biolabs, Ipswich, MA)によって推奨されているように、キチンビーズの1.5mlのカラム上で精製した。適切なメチルトランスフェラーゼを含有している画分をプールし、酵素緩衝液(50mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、50mMのNaCl、0.1mMのEDTA、10%のグリセロール)に対して透析した。透析後、メチルトランスフェラーゼを、Amicon Ultra Centrifugal Filter Unit(Millipore, Billerica, MA)を使用して濃縮した。
Type III-M
Type III-Mタンパク質を、キチンカラム上での精製後に、このタンパク質をHiTrap MonoQカラム(GE Heathcare)を使用してさらに精製したことを除き、同じプロトコールを使用して精製した。このタンパク質を緩衝液A(50mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、50mMのNaCl、1mMのEDTA、10%のグリセロール)に充填し、0%〜100%までの緩衝液B(50mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、1MのNaCl、1mMのEDTA、10%のグリセロール)の線形勾配を用いて溶離させた。Type III-Mを含有している画分をプールし、100mMのNaClを含有している酵素緩衝液に透析し、そしてCCATC-Mタンパク質およびCCTTC-Mタンパク質について記載したように濃縮した。
GCATC-M発現プラスミドおよびGANTC-M発現プラスミド
M.GCATC発現プラスミドM.GANTC発現プラスミドでBL21(DE3)コドンプラス細胞を形質転換し、形質転換体を使用して、100mg/mlのカルベニシリンを含有している2mLのZYM-505培地に別々に接種し、激しく振盪させながら37℃で一晩増殖させた。一晩培養物のうちの1ミリリットルを使用して、250mLのZYM-5052培地(Studier, FW, Protein Expr Purific 41:207-34(2005))に接種した。その後、細胞を、激しく振盪させながら27℃で20時間増殖させた。細胞をペレット状にし、50mlのNickel溶解緩衝液(50mMのHEPES-NaOH(pH 7.2)、500mMのNaCl、30mMのイミダゾール、10%のグリセロール、およびプロテアーゼ阻害剤(Complete protease inhibitor cocktail, Roche Applied Sciences, Indianapolis, IN))中に懸濁し、そして高圧ホモジナイザーに2回通すことにより溶解させた。この溶解物を、4℃で20分間の、20,000×gでの遠心分離によって明澄化させた。明澄化させた溶解物を、Nickel溶解緩衝液をランニングバッファーとして、そして300mMのイミダゾールを含むNickel溶解緩衝液を溶離緩衝液として用いて、5mlのHisTrapカラムを使用して精製した。M.GCATCタンパク質をプールし、100mMのNaClを含有している酵素緩衝液に透析し、そして上記のように濃縮した。M.GANTCタンパク質を、1mlのHiTrap MonoQヘパリンカラムを使用し、M.TypeIIIについての緩衝液AとBを利用してさらに精製した。M.GANTCを含有している画分をプールし、100mMのNaClを含有している酵素緩衝液に透析し、そして上記に記載するように濃縮した。
c.メチルトランスフェラーゼの研究
精製したメチルトランスフェラーゼを、これらが、マイコプラズマDNAを含有しているプラスミドをメチル化できるかどうかを決定するためのメチル化アッセイにおいて使用した。メチル化アッセイは、Wilson and Hoffman, Anal Biochem 191, 370(1990年12月)に記載されている緩衝液条件を使用して行った。反応は、100μlの容量の中で37℃で行った。反応混合物には、100mMのTris-HCl(pH 7.5)、10mMのEDTA、3μMのDTT、200μMのS-アデノシルメチオニン(SAM)、3μgのpSmart-pMYCO1プラスミドDNA(酵母-大腸菌-マイコプラズマトリ-シャトルベクター)を含めた。
精製したメチルトランスフェラーゼによりDNAがメチル化されたかどうかを評価するために、4μlの各試料を、New England Biolabsから購入した制限酵素アイソシゾマーを使用し、製造業者の説明書に従って切断した。制限酵素アイソシゾマーは、メチル化について評価する配列(BccI(認識部位、CCATC)、HinfI(GANTC)、HpyAV(CCTTC)、SfaNI(GCATC))に応じて使用した。試料を、1%の48ウェルアガロースEゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)上で、70Vで25分間泳動させた。ゲルを、GE Typhoon 9410イメージャー上でスキャンした。
結果は、個々のメチルトランスフェラーゼ(表10を参照のこと)およびS-アデノシルメチオニン(SAM)とともにインキュベーションした後のプラスミドDNAを、対応する制限酵素アイソシゾマーが切断することが全くできないことにより判断すると、個々の精製したメチルトランスフェラーゼが、マイコプラズマプラスミドDNAを完全にメチル化できることを示していた(ゲルのデータは示さず)。
別の研究においては、M.ミコイデスの粗抽出物を、SAMを伴って、または伴わずに、pMYC01プラスミドDNAを処理するために使用した。その後、このDNAをBccIによって消化して、上記抽出物中のメチルトランスフェラーゼの活性を試験した(データは示さず)。M.ミコイデスの抽出物はまた、入ってくるドナーDNAを保護した。M.ミコイデスのドナーゲノム中に存在するさらなる制限修飾システムは、移植に影響を及ぼさなかった。
ii.粗抽出物によるメチル化
メチル化後のさらなる、ゲノム配列の中では同定されていない明らかになっていない制限修飾システム由来の酵素による(したがって、精製されたメチラーゼによっては行われない)切断の可能性を排除するために、M.カプリコルムおよびM.ミコイデスLCから調製した粗抽出物を使用してDNAをメチル化するための一つのプロトコールを開発した。上記抽出物は、10mMのEDTA(これはヌクレアーゼを阻害する)の添加により、メチルトランスフェラーゼ活性の供給源として使用することができる。
a.細胞抽出物の調製
M.ミコイデスLCについては、SP4培地中の1リットルの細胞培養物を、6.2〜6.3のpHに達するまで、37℃で増殖させた。この培養物を、細胞を5×200mlの画分に分け、そしてSLA-1500 Sorvallローターの中で、4℃で15分間、5,000×gで遠心分離することにより回収した。その後、M.ミコイデスLCペレットをそれぞれ、200mLの8mMのHepes(pH 7.4)および272mMのスクロースで洗浄し、SLA-1500 Sorvallローターの中で4℃で15分間の、5,000×gでの遠心分離により明澄化した。得られたペレットをそれぞれ、1mlの抽出緩衝液(20mMのTris-HCl(pH 7.5)、0.1mMのEDTA、150mMのNaCl、1mMのDTT、および10%のグリセロール)の中に再度懸濁し、その後、3の出力制御で、マイクロチップを使用して氷上で5回、10秒〜12秒のバーストを用いて超音波処理した。溶液それぞれを、4℃で30分間、18,000×gで微量遠心機により明澄化した。得られた各可溶性画分を合わせて一つにし、タンパク質濃度を試験し、200μlの画分にアリコートし、-80℃で保存した。この様式で調製した抽出物のタンパク質濃度は、典型的には、15mg/ml〜25mg/mlの範囲であった。
M.カプリコルムについては、1リットルの培養物を10μg/mlのテトラサイクリンを含有しているSP4培地中で増殖させたことを除き、抽出物を、M.ミコイデスLCについて記載した方法と同じ方法を使用して調製した。
b.粗抽出物によるメチル化の評価
メチル化アッセイを、以下のように、様々な宿主細胞の中で増殖させたマイコプラズマプラスミドDNAをメチル化する上記粗抽出物の能力を明らかにするために使用した。粗抽出物を使用するメチル化アッセイは、Wilson and Hoffman, Anal Biochem 191, 370(1990)に記載されている緩衝液条件を使用して行った。
c.M.ミコイデスLC抽出物によるCCATC、GANTC、CCTTC、およびGCATCのメチル化の評価
M.ミコイデスLC抽出物によるCCATC、GANTC、CCTTC、およびGCATC部位のメチル化(およびそれによる保護)を評価するために、反応を、100μlの容量の中で37℃で行った。反応混合物には、100mMのTris-HCl(pH 7.5)、10mMのEDTA、3μMのDTT、200μMのS-アデノシルメチオニン(SAM)(示すように、対照試料中には存在しない)、大腸菌から単離した3μgのpMYC01プラスミドDNA(SEQ ID NO:149)、および20μgのM.ミコイデスLC抽出物を含めた。
0時間、2時間、4時間、および16時間の時間間隔で、それぞれの反応混合物から20μlのアリコートを取り出し、2×停止緩衝液(2%のSDS、20mMのEDTA)に対して添加した。DNAの抽出を、それぞれのアリコートについて、40μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)を使用して行い、その後、室温で2分間、18,000×gで遠心分離した。それぞれの水相を新しいチューブに入れ、80μlの氷冷した100%のエタノールおよび1μlのAmbion(登録商標)GlycoBlue(商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)を添加すること、そして-20℃で一晩インキュベーションすることにより、DNAを沈殿させた。その後、試料それぞれを、4℃で15分間、18,000×gで遠心分離し、得られたペレットをそれぞれ、100μlの氷冷した70%エタノールで洗浄した。4℃で5分間の18,000×gでの遠心分離後、上清をそれぞれ廃棄し、ペレットをそれぞれ乾燥させ、20μlのTE(pH 8.0)の中に再度懸濁した。
DNAがそれぞれのII型メチルトランスフェラーゼによってメチル化されたかどうかを評価するために、4μlの各試料を、評価する特定の配列に適しているNew England Biolabsから購入した制限酵素アイソシゾマーを、製造業者の説明書に従って使用して切断した(BccI(認識部位CCATC)、HinfI(GANTC)、HpyAV(CCTTC)、SfaNI(GCATC)。試料を、1%の48ウェルアガロースE-ゲル(Invitrogen)上で、70Vで25分間泳動させた。ゲルを、GE Typhoon 9410イメージャー上でスキャンした。
d.M.ミコイデスLC抽出物によるGATC部位のメチル化の評価
M.ミコイデスLC抽出物によるGATCのメチル化を試験した場合には、上記プロトコールを、最初の工程において、M.カプリコルムから単離した3μgのpMYC01プラスミドDNAを使用すること、およびMboI制限酵素アイソシゾマーを用いて切断したことにより改変した。
e.M.カプリコルムLC抽出物によるCCATC部位のメチル化の評価
M.カプリコルム抽出物によるCCATC部位のメチル化を、それぞれ3μgの、大腸菌から単離したpSmart-pMYC01プラスミドDNA(酵母-大腸菌-マイコプラズマトリ-シャトルベクター)、ならびに、M.カプリコルムおよびM.ミコイデスLCから単離したpMYC01を使用したこと、そして反応を、S-アデノシルメチオニンの存在下または非存在下で4時間行ったことを除き、上記のように試験した。その後、メチル化されたDNAを、上記のようにBccIとともにインキュベートすることによりチェックした。
f.結果
M.カプリコルム粗抽出物は、対応する制限酵素アイソシゾマーBccIが、粗抽出物およびSAMとともにインキュベーションしたプラスミドを切断できなかったという事実により実証されたように(ゲルのデータは示さず)、大腸菌から単離した2種類のプラスミドを完全にメチル化することができた。
M.ミコイデスLC抽出物によるCCATC、GANTC、CCTTC、GCATC、およびGATC部位のメチル化(およびそれによる保護)についてアッセイした研究の結果は以下のとおりである。M.ミコイデスLC抽出物は、4つの制限修飾システムの場合には、マイコプラズマプラスミドDNAを完全にメチル化することができ、一つのシステム(GATC制限修飾システム)の場合には、マイコプラズマプラスミドDNAの一部だけをメチル化することができた(ゲルの結果は示さず)。内因性のM.ミコイデスLC GATCメチルトランスフェラーゼが、M.ミコイデスLC抽出物中で低い活性を示したため、市販されている大腸菌damメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)を、その活性をうまく補うために使用した。
いずれの粗抽出物によるマイコプラズマプラスミドDNAのメチル化も、M.カプリコルム(データは示さず)における形質転換効率を劇的に増大させ、このことは、本提供の方法における粗抽出物とのインキュベーションが、M.カプリコルムレシピエントに移植する、酵母細胞の中で増殖させたドナーゲノムの不和合成の可能性の克服に役立ち得ることを示していた。III型メチルトランスフェラーゼの効果は、その部位特異性が明らかではないとの理由から、M.ミコイデスLC粗抽出物中では評価しなかった。
iii.メチル化による形質転換効率の増大
メチル化されていないプラスミド、および上記のようにM.ミコイデスLC抽出物でメチル化したプラスミドで、M.カプリコルム細胞を形質転換し、比較した。結果は、メチル化されたプラスミドの形質転換効率の増大を示し、形質転換の前のDNA修飾のポジティブな効果を示していた。
iv.メチル化後のDNAのさらなる分析、立体構造効果、および処理
粗抽出物は、宿主の制限修飾システムからドナープラスミドDNAを保護し、形質転換効率を増大させたが、粗抽出物はまた、アガロースプラグ中で単離した天然のM.ミコイデスLCのゲノムDNAおよびM.カプリコルム細胞を含むゲノムの移植実験を完全に阻害した(以下の実施例3を参照のこと)。
さらに詳細に阻害を研究するために、M.カプリコルムまたはM.ミコイデスLC マイコプラズマ粗抽出物(上記実施例2E(ii)(a)のように調製した)の存在下または非存在下で、アガロースプラグ(上記実施例2B(ii)に記載したように調製した)中で単離した内因性のM.ミコイデスLCのゲノムDNAを、蛍光顕微鏡によって分析した。M.ミコイデスLCのゲノムDNAのアガロースプラグを、上記(実施例2C(ii))のようにβ-アガラーゼIで融解させた。その後、2μlの希釈した(1/2000)SYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染色(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、5μlの融解させたアガロースに対して穏やかに混合し、室温で5分間置いた。この混合物をガラススライドに1滴落とし、カバースリップで覆った。
その後、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを、AxioCam(登録商標)MRc5カラーカメラ(Carl Zeiss, Inc, Thornwood, NY)を備えた直立型Axioskop(登録商標)2顕微鏡(Carl Zeiss, Inc)(対物レンズ(100×);ローダミンフィルターを持つ)を使用して視覚化した。蛍光顕微鏡画像を撮影し、Carl Zeiss, Inc.によるAxioVision release 4.7.1ソフトウェアで分析した。図7Aは、アガロースプラグの最初の処理、および未処理のアガロースプラグの結果を説明する。メチル化工程および除タンパク質工程の結果を、それぞれ、図7B〜7Cに示す。ここでは、試料および処理を写真の上に示す。
図7Bに示すように、粗抽出物の非存在下で処理した天然のゲノムDNA(レシピエント細胞への移植が可能であることが示された)は、点状のパターンを示した(右側のパネル)が、粗抽出物の存在下で処理した内因性ゲノムDNA(移植を阻害することが示された)は、大きな凝集を形成した(左側の2つのパネル)。この結果は、DNAの立体構造が移植実験に重要であることを示唆した。
立体構造が重要であることを確認するために、試料を、処理後の細胞抽出物を除去するために、以下のようにプロテイナーゼKで処理した。酵母プラグそれぞれを、40μlのプロテイナーゼKを補充した1mLのプロテイナーゼK反応緩衝液[100mMのEDTA;0.2%のデオキシコール酸ナトリウム;1%のラウリルサルコシンナトリウム;pH8.0]中で、50℃で4時間インキュベーションした。その後、プラグを4回、それぞれ45分間、1mlの1×TE緩衝液(2OmMのTris-HCl(pH 8);50mMのEDTA)で、そして2回、それぞれ30分間、0.1×TE緩衝液中で、室温で優しく撹拌しながら洗浄した。最後の洗浄緩衝液を除去した後、プラグをβ-アガラーゼIで融解させ、上記のように蛍光顕微鏡によって分析した。結果を図7Cに示す。これは、アガロースプラグ中でのゲノムDNAとのインキュベーション後のプロテイナーゼKでの処理による粗抽出物の除去によって、未処理のゲノムDNAを用いた場合に最初に観察された点状のパターンが回復したことを示す。さらに、以下に記載する(実施例3)ように、プロテイナーゼK処理により、粗抽出物で処理した天然のゲノムDNAの移植効率がある程度回復した。したがって、粗細胞抽出物中のタンパク質の除去(例えば、プロテイナーゼKでの処理による)は、酵母宿主細胞から単離したM.ミコイデスLCドナーゲノムDNAを、粗抽出物を使用してメチル化することができ、なおもうまくレシピエント細胞に移植することができる手段を提供する。
実施例2F
R-Mシステムの突然変異(M.カプリコルムΔREの作製)
宿主細胞とレシピエント細胞との間での制限の障壁を克服するための手段として、別の方法を利用した。この方法では、M.カプリコルムにおいて同定した一つの制限酵素(上記実施例2D(i)および表3を参照のこと)を、この遺伝子のコード領域への割り込みにより不活化した。制限酵素遺伝子を、この遺伝子のコード領域へのピューロマイシン耐性マーカーの組込みにより割り込ませた。
異種pSD4スピロプラズマ・シトリoriCプラスミド(SEQ ID NO:150)により、M.カプリコルムが形質転換されることが示されている(Lartigue, C.et al.Nucleic Acids Res.31:6610-8(2003))。このプラスミドは、外来配列の組込み、およびM.カプリコルムゲノム中での標的化した突然変異誘発に有効である。M.カプリコルム中の可能性のある制限酵素遺伝子(MCAP0050)を不活化させるために、この遺伝子の内部断片を、オリゴヌクレオチドRE-Mcap-F(5'-gatctctagactaatgttcaattggatgatata G-3'(SEQ ID NO:157))およびRE-Mcap-R(5'-gatctctagactcaagtcttgtaggagaatc-3'(SEQ ID NO:158))(XbaI部位を含む)を使用して、M.カプリコルムのゲノムDNAから増幅させた。その後、この断片をXbaIによって切断し、XbaIで切断したpSD4プラスミド(SEQ ID NO:150)にクローニングして、pSD4-ΔMcap0050.1(SEQ ID NO:159)を得た。10マイクログラムのこのプラスミドを、上記実施例2Cに記載した、5%のPEG媒介性のプロトコールを使用して野生型M.カプリコルム細胞を形質転換するために使用した。形質転換体を、4μg/mLテトラサイクリンを含有している固体のSP4プレート上で選択した。37℃での7日間のインキュベーション後、いくつかのコロニーを、10μg/mlのテトラサイクリンを含有している液体培地中に突いて採取し、細胞を15継代(15P)増殖させた。その後、クローンを、プラスミドの存在と、1回の交叉による相同組換えによる標的遺伝子でのその組込みの可能性を確認するためにサザンブロットにより分析した。
一つのクローンM.カプリコルムΔREクローン10 15Pを、(サザンブロットによって明らかであるように)そのハイブリダイゼーションパターンがこのプラスミドによるMCAP0050遺伝子の割り込みを示したとの理由から、選択した。遊離のプラスミドは検出されなかった。遠心分離により明澄化した溶解物の抽出物もまた、2D(ii)(b)に記載したように調製し、実施例2D(ii)に記載した制限酵素アッセイにおいて使用した。結果は、野生型M.カプリコルムと比較して、クローン10 15Pクローンにおいては制限酵素活性が全く存在しないことを明らかに示していた(データは示さず)。
上記実施例2E(ii)に記載した方法を使用して、M.カプリコルムΔREクローン10を、インビトロでのメチル化実験のための粗M.カプリコルム細胞抽出物を作製するための供給源として使用した。しかし、M.カプリコルムΔREクローン10は、M.ミコイデスLCの移植についてのレシピエント細胞の優れた候補ではなかった。なぜならこれは、酵母中に存在するM.ミコイデスLCドナーゲノムDNAと同じ耐性マーカー遺伝子(tetM)を含むからである。したがって、上記クローニングストラテジーを使用して、YCpと、tetM遺伝子の代わりのピューロマイシン耐性遺伝子を持つ別のM.カプリコルムΔRE突然変異体を構築した。遠心分離により明澄化した溶解物の抽出物を、2D(ii)(b)に記載したように、M.カプリコルムΔREクローン17.5 15Pから調製し、実施例2D(ii)に記載した制限酵素アッセイにおいて使用した。結果は、野生型M.カプリコルムと比較して、クローン17.5 15Pクローンにおける制限酵素活性が全く存在しないことを明らかに示していた。したがって、このクローンを移植のために選択した。
これらの結果は、レシピエント細胞からのM.カプリコルム制限酵素活性の除去により、酵母から単離したドナーであるM.ミコイデスLCのゲノムDNAが、M.カプリコルムの細胞質の中で生き延びることが可能となることを示す。あるいは、上記のように、提供するメチル化方法を、ドナーDNAを保護するために、移植の前のドナーDNAの処理に使用することができる。
実施例3
酵母宿主細胞由来のM.ミコイデスLC-YCpゲノムDNAのM.カプリコルムへの移植
上記実施例1は、酵母宿主細胞の中での完全な細菌ゲノムのクローニングの成功(これらのマイコプラズマを含む)を記載している。本実施例は、全マイコプラズマドナーゲノム(M.ミコイデスLC(Genbankアクセッション番号:NZ_AAZK00000000;GI:149364883))DNA(酵母宿主細胞の中で増殖させた)の、様々な種のマイコプラズマレシピエント細胞(M.カプリコルム)への移植の成功を記載する。ドナーおよびレシピエントは、それらの迅速な増殖に基づいて選択した。しかし、この方法はまた、他のマイコプラズマドナーおよびレシピエント(例えば、上記のM.ゲニタリウムゲノム/細胞)を使用して行うこともできた。さらに、本実施例に記載する方法は、インビボでドナーゲノムを修飾するための工程と組み合わせて、移入の前に、依然宿主細胞の中で使用することができる(例えば、細菌のドナーゲノムの増殖の間に酵母ツールのレパートリーを使用する)。したがって、上記方法は、ドナーゲノム(例えば、比較的あまり開発されていない遺伝子システムを持つ細菌由来のゲノム)を遺伝学的に変更するために使用することができる。
例えば、上記方法は、合成により変更したゲノムを含む合成の細胞を作製するために使用することができる。マイコプラズマ・ゲニタリウムの非病原性株の完全な合成のゲノムが合成されている(Gibson et al., Science 319:1215-20(2008);Gibson et al., PNAS USA 105:20404-9(2008))。その研究においては、上記ゲノムが、最後の工程において、酵母の中でセントロメアプラスミドとしてアセンブリされた。
このような合成により産生されたゲノムと、宿主細胞(例えば、酵母宿主細胞)の中で増殖させた天然のゲノム(例えば、マイコプラズマまたは他の細菌のゲノム)を、本提供の方法(例えば、本実施例に記載する方法)を使用して、合成の細胞を作製するためにレシピエントの細胞質に移植することができる。例えば、細菌の合成のドナーゲノム(酵母の中で増殖させた)を細菌のレシピエントの中で発現させるために、上記方法を、細菌(例えば、マイコプラズマ)レシピエントに酵母由来の細菌の合成のドナーゲノムを移植するために使用することができる。
上記実施例2に記載したように、様々な制限修飾システムが、宿主細胞(その中でドナーゲノムを増殖させる)から様々な種のレシピエント細胞にドナーゲノムを移植する際に不和合性の問題を示す可能性がある。特に、M.ミコイデスLCゲノムの酵母宿主細胞への導入およびその中での増殖(上記実施例1を参照のこと)の際には、これらのマイコプラズマにより内生的に発現されるメチルトランスフェラーゼ(上記実施例2Bを参照のこと)が酵母宿主細胞中で発現される可能性はあまりないことを決定し。この決定は、メチルトランスフェラーゼ遺伝子が、真核生物酵母宿主細胞によっては停止コドンとして処理されるUGAトリプトファンコドンを含むという事実に基づいた。この決定は、酵母から単離したM.ミコイデスLCドナーゲノムDNAがメチル化されず、その細胞に移入されると、M.カプリコルムレシピエント細胞の制限修飾システムの影響を受けることを示した。一つまたは複数のM.ミコイデスLC制限酵素が、移植後に発現されると、ドナーゲノムを切断できる可能性もあった。R-M不和合性の問題を克服するための本提供の方法の様々な局面を、上記実施例2に記載した。このような局面を、酵母の中で増殖させたドナーであるマイコプラズマゲノムの、様々な種のマイコプラズマレシピエント細胞への移植の成功を得るために、以下の研究において選択し、使用した。
実施例3A
移植方法
本実施例は、ドナーであるマイコプラズマゲノムを酵母宿主細胞からマイコプラズマレシピエント細胞にうまく移植するためのこれらの技術の使用を記載する。図8は、全ゲノムDNAを移植するために使用することができる3種類の代替えの移植アプローチを示す。これらの3種類のアプローチのバリエーションを、以下に記載する実施例において使用した。第1のアプローチ(図8において番号「1」で示す矢印で示す)は、ゲノムDNAを含有しているアガロースプラグの消化(例えば、β-アガラーゼでの消化(融解工程))、これに続くレシピエント細胞への直接の移植を含む。この方法は、典型的には、一つの細胞(例えば、ドナーであるマイコプラズマ細胞)から類似する細胞への(例えば、マイコプラズマドナー細胞からマイコプラズマレシピエント細胞への)ドナーゲノムまたは核酸の移植のために、図8に示すように使用する。
第2のアプローチ(番号「2」で示す)は、レシピエント細胞を、制限酵素遺伝子を突然変異させるように修飾した(ΔRE;上記実施例2Fに記載したように作製した)ことを除き、第1の方法と同じである。このアプローチを用いて、図8に示すように、酵母宿主細胞中で増殖させ、酵母プラグの中で単離したマイコプラズマゲノムDNAを、マイコプラズマレシピエント細胞にうまく移植することができる。第3のアプローチ(図8に番号「3」で示す)を用いる場合は、試料を、融解工程(β-アガラーゼでの消化)およびレシピエント細胞への移植の前に、メチル化し、除タンパク質工程(プロテイナーゼKでの処理)を行った。図に示すように、メチル化工程と除タンパク質工程もまた、酵母の中での増殖後に単離したドナーであるマイコプラズマゲノムの、マイコプラズマレシピエント細胞への効率的な移植を容易にする。以下に記載するように、対照研究には、第3のアプローチと同様の条件を含めた。ここでは、試料を、メチラーゼの存在を伴わずに同じ条件下で、並行して処理した(「疑似メチル化」)。これらのアプローチと、それぞれにより得られた結果を以下に詳細に記載する。
i.アガロースプラグの調製
個々のアプローチにおいて、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを、以下のように、酵母株VL6-48N(Larionov et al, PNAS USA 94:7384-7(1997)に記載されている)から、アガロースプラグの中で単離した。
M.ミコイデスLCのゲノムDNAを含有している酵母細胞(実施例1Aに記載するように作製した)を、ODがおよそ1.5に達するまで、選択培地の中で30℃で増殖させた。ドナーゲノムを含まない対照細胞を同じ条件下で増殖させた。アガロースプラグをそれぞれのタイプの細胞から、CHEF mammalian Genomic DNA Plug Kit(Bio-Rad Laboratories, Valencia, CA)を使用し、以下の改変を加えて酵母(真核生物)のDNA抽出について製造業者が推奨する説明書に従って調製した。一つのプラグあたりで利用できるM.ミコイデスLCのゲノムDNAの量を増やすために、一つのプラグあたり6×1O9個の酵母細胞を使用して(キットにより推奨される6×1O8個の細胞の代わりに)、一つのプラグあたり6×lO8個の細胞を得た。プラグへの細胞の包埋の後、細胞壁を消化するために、Zymolyase(商標)1OOT酵素(USB Corporation, Cleveland, OH)を、リチカーゼ(Bio-Rad Laboratories, Valencia, CA)の代わりに使用した。この酵素を、5mg/mlの濃度でプラグの内部および外側に添加し、37℃で2時間そのまま置いた。
1×TE緩衝液(2OmMのTris-HCl(pH 8);5OmMのEDTA)中での洗浄後、包埋した酵母細胞を溶解させ、プラグ1mLあたり200μlのプロテイナーゼKを補充した5mlのプロテイナーゼK反緩衝液[100mMのEDTA;0.2%のデオキシコール酸ナトリウム;1%のラウリルサルコシンナトリウム;pH8.0]とともに、50℃で24時間の2回のインキュベーションによりタンパク質を消化した。その後、アガロースプラグを室温で4回、それぞれ1時間、40mLの1×TE緩衝液で撹拌しながら洗浄し、同じ緩衝液中で4℃で保存した。続いて制限酵素(下記を参照のこと)で消化しようとする酵母のプラグについて、1mMのフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)を、2回目の洗浄の際に添加した。
浄化
これらの研究の以前には、酵母から抽出したM.ミコイデスLCドナーゲノムDNAとともに単離した酵母のゲノムDNAが、移植反応に影響を及ぼすか、または移植反応を無効にするかどうかは明らかではなかった。したがって、それぞれのアプローチを用いて、2セットのドナーゲノムDNAを調製した。これらのうちの一方は、細胞壁の消化およびプロテイナーゼKでの処理後の随意の「浄化」工程にし従った。この「浄化」工程は、試料から酵母のゲノムDNAを除去するように設計した。
「浄化」試料は、酵母のゲノムDNAを特異的に消化する制限酵素のカクテルで処理し、その後、電気泳動により小さい酵母DNA断片を浄化したか、または、環状のゲノムがウェルに受け止められ、直鎖状の酵母染色体をウェルから電気泳動により外に出して、環状のゲノムを分離するために直接パルスフィールドアガロースゲル上に充填したかのいずれかにより処理した(Lartigue et al, Science 317, 632(2007))。
酵素のカクテルでの浄化のために、酵母のプラグを、2回、1mlの0.1×TE緩衝液(2mMのTris-HCl(pH 8.0)-5mMのEDTA)中でそれぞれ1時間洗浄し、BSAを補充した1mlの1×NEB緩衝液2(New England Biolabs, Ipswich, MA)の中で1時間平衡化させた。プラグ中に存在するゲノムDNAを、500μlの反応容量の中で、50ユニットの制限酵素カクテル(AsiSI、RsrII、およびFseI)で一晩消化した。酵母のプラグを、1mLの1×TE緩衝液(2OmMのTris-HCl(pH 8.0)-5OmMのEDTA)で1時間、室温で洗浄し、1%のTAEアガロースゲル上に充填した(120分、120ボルト)。アガロースプラグをウェルから取り出し、4℃で保存した。
電気泳動だけによる浄化のために、他の酵母のプラグについて、外形クランプ均一電界電気泳動(6)(CHEF DR III;Bio-Rad)を用いて、TAE 1×中の1%のLMP中で電気泳動を行った。パルス時間を、3.5V/cmで、24時間かけて60秒から120秒までの傾斜をつけた。電気泳動後、プラグをウェルから取り出し、1×TE緩衝液中で4℃で保存した。
ii.一般的な移植方法
それぞれのアプローチを用いて、第3のアプローチを用いた場合には、以下の実施例3A(iii)に記載したように、β-アガラーゼでの融解の前に試料をメチル化し、プロテイナーゼKでの処理を行ったことを除き、移植を以下のように進めた。
a.レシピエント細胞
12mLのM.カプリコルムレシピエント細胞(野生型またはΔRE(実施例2Fに記載したように産生した))を、ウシ胎児血清(17%)、グルコース(10g/1)、2mLのフェノールレッド(1%)、および100μlのペニシリンG(5mg/ml))を補充したSOB(+)培地(Bacto SOB培地(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)中で、培養物のpHがpH 5.7〜5.85(およそ5×107個の細胞/ml)に達するまで増殖させた。レシピエント細胞を、10℃で15分間、4575×gで遠心分離し、6mLのS/T緩衝液(Tris-HCl 1OmM(pH 6.5);NaCl 25OmM)中で1回洗浄し、400μlのCaCl2(0.1M)中に再度懸濁し、氷上で30分間インキュベーションした。
b.アガロースプラグ中での単離したドナーゲノムDNAの調製
移植の前に、酵母由来のM.ミコイデスLCのゲノムDNAを含有している上記実施例3A(i)(a)に記載したように調製したアガロースプラグを、2回、0.1×TE緩衝液[Tris-HCl 2mM(pH 8.0)、EDTA 5mM]中でそれぞれ30分間、室温で穏やかに撹拌しながら洗浄した。この緩衝液を完全に除去し、アガロースプラグを、1/10容量の1O×β-アガラーゼ緩衝液[10mMのBis Tris-HCl(pH 6.5);1mMのNa2EDTA]で、65℃で10分間融解させた。融解させたアガロースを、10分かけて42℃に冷却し、この温度で一晩、プラグ100μlあたり3ユニットのβ-アガラーゼI(New England Biolabs, Ipswich, MA)とともにインキュベーションした。以下の実施例3A(i)(c)に記載するように、メチル化とプロテイナーゼKでの処理を、第3のアプローチでのβ-アガラーゼでの処理の前に行った(図8(「3」))。
c.5%のPEGの存在下での移植
氷上で30分の後、400μlのレシピエント細胞を、上記実施例2B(ii)において作製した100μlの融解させたドナーゲノムDNAのアガロースプラグを含有している800μlのSP4(-)培地[0%のウシ胎児血清、0.45%のNaCl]とともに穏やかに混合した。このプラグを、以下のように、次の工程の直前に添加した。
1300μlの2×融合緩衝液(20mMのTris-HCl(pH6.5)、250mMのNaCl、20mMのMgCl2、Flukaによる10%のPEG-6000]を、SP4(-)、ゲノムDNA、および細胞の混合物に対して直ちに添加し、この混合物を、チューブを30分間穏やかに揺らすことによりホモジナイズした。37℃で50分の後、10mLの予め温めておいたSP4を添加し、細胞を穏やかに混合した。37℃でさらに3時間の後、細胞を、10℃で15分間、4575×gで遠心分離し、1.2mLのSP4中に再度懸濁し、4μg/mlのテトラサイクリンと150μg/mlのX-galを含有しているSP4プレート上に播種した(一つの試料につき2枚のプレート)。3〜4日後、個々のコロニーを突いて採取し、10μg/mlのテトラサイクリンを含有している培養液培地中で増殖させた。
iii.メチル化およびプロテイナーゼKでの消化(第3のアプローチの特徴)
第3のアプローチを用いた場合は(図8、「3」)、β-アガラーゼでの融解の前に、酵母のアガロースプラグ由来のM.ミコイデスLCのゲノムDNAをメチル化し、続いて、除タンパク質工程を行った。このプロセスのために、プラグを、2回、200mMのTris-HCl(pH 7.5);50mMのEDTA中で30分間洗浄し、メチル化緩衝液(100mMのTris-HCl(pH 7.5);10mMのEDTA、3μMのDTT、200μMのS-アデノシルメチオニン)中で2回、30分間、優しく撹拌しながら平衡化させた。平衡化後、酵母プラグをそれぞれ、4つの断片に切断し、100μlのメチル化反応(1×メチル化緩衝液とメチルトランスフェラーゼ)に添加し、37℃で16時間インキュベートした。100μlの反応について、5μlの野生型M.ミコイデスLC細胞抽出物または7.5μlのM.カプリコルムΔRE(クローン10 15P)細胞抽出物(およそ125μgのタンパク質)または2.5μlのそれぞれの精製したM.ミコイデスLC特異的メチルトランスフェラーゼ(M.GANTC、M.CCATC、M.GCATC、M.CCTTC、M.TypeIII)のいずれかを。細胞抽出物をそれぞれ、上記実施例2E(ii)に記載したように調製し、精製したメチルトランスフェラーゼを、上記実施例2E(i)に記載したように調製した。M.ミコイデスLC細胞抽出物または精製したメチルトランスフェラーゼを含有しているメチル化反応にもまた、5μlのdamメチルトランスフェラーゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)を補充した。
メチル化後、それぞれの酵母プラグを、40μlのプロテイナーゼKを補充した1mLのプロテイナーゼK反応緩衝液[100mMのEDTA;0.2%のデオキシコール酸ナトリウム;1%のラウリルサルコシンナトリウム;pH8.0]中で、50℃で4時間インキュベーションした。その後、これらのプラグを、1mLの1×TE緩衝液(20mMのTris-HCl(pH 8);50mMのEDTA)で4回、45分、そして0.1×TE緩衝液中で2回、30分、室温で優しく撹拌しながら洗浄した。最後の洗浄緩衝液を除去した後、上記セクション(b)に記載したようにプラグをβ-アガラーゼIで融解させ、続いて移植した。
実施例3B
本提供の方法を使用した、移植の成功を明らかにしている研究
上記実施例3Aに記載した一般的方法を使用して、酵母宿主細胞由来のM.ミコイデスLCゲノムドナーDNAの、野生型および制限酵素欠損M.カプリコルムレシピエント細胞への移植を、表11に列挙する以下の条件下で行った。「未処理」の試料は、融解の前に、メチル化を行わず、プロテイナーゼKでの処理も行わなかった。「疑似メチル化」した試料を、メチル化した試料と同じ条件下で、酵素または細胞抽出物を含めずにインキュベーションした。メチル化処理には、ドナーまたはレシピエント細胞抽出物でのメチル化、および精製したメチラーゼでのメチル化を含めた。
結果を、テトラサイクリンを含有しているSP4培地上で37℃での青色のコロニーの増殖を選択することによりスコアし、以下の表12Aに示す。その表に示すように、M.ミコイデス抽出物でのメチル化と、野生型細胞への移植のために(試料2)、いくつかの試料を、上記のように、酵母特異的酵素での消化によるか(b)または電気泳動によるか(c)のいずれかで、酵母DNAを除去するために清浄した。
(表12A)ドナーの表現型を持つ移植コロニーの定量化
a少なくとも3回の実験の平均。報告する誤差は、平均偏差である。
b酵母のプラグを、AsiSI、RsrII、FseIカクテル制限酵素プロトコールを使用して酵母のゲノムDNAの清浄を行った。
c酵母のプラグについて、パルスフィールドゲル電気泳動プロトコールを使用して酵母ゲノムDNAの清浄を行った。
上記表12Aに示すように、M.ミコイデスLC抽出物、または精製したメチラーゼを使用してメチル化し、野生型もしくはΔREレシピエント細胞のいずれかに移植した試料(試料2、3、7、および8)においては、M.ミコイデスLCと表現型が類似する(類似する外観および増殖速度に基づく)コロニーが得られた(Lartigue et al, (2007)Science 317: 632-8(6)により記載されているとおり)。この結果により、酵母の中で増殖させたM.ミコイデスLCドナーゲノムが、M.ミコイデスLCによって産生された制限酵素、およびレシピエント細胞のシステムによって産生された酵素のいずれに対しても耐性であることを確認した。
対照的に、疑似メチル化したM.ミコイデスLCゲノムおよび未処理のM.ミコイデスLCゲノムの移植によっては、M.カプリコルムΔREレシピエント細胞(試料6および試料10)の場合にのみドナーの表現型のコロニーが生じ、野生型レシピエント細胞(試料1および試料5)の場合には生じなかった。例えば、疑似処理したドナーゲノムDNAおよび未処理のドナーゲノムDNAをM.カプリコルムΔREレシピエント細胞に移植した場合(試料6および試料10)には、それぞれ、34個および37個のコロニーが得られた。しかし、疑似処理したM.ミコイデスLCのゲノムDNAまたは未処理のM.ミコイデスLCのゲノムDNAのいずれかを野生型野生型M.カプリコルムレシピエント細胞に移植した場合には、コロニーは得られなかった(表12A)。
同様に、M.カプリコルム抽出物で処理したドナーゲノムを持つレシピエント細胞(試料4および試料9)のタイプのいずれにおいても、コロニーが得られた(32個および9個のコロニー、表12A)。M.カプリコルム抽出物がM.カプリコルムの制限酵素に対する保護を提供するので、この結果は、M.カプリコルムレシピエントの制限システムの回避が、酵母細胞の中で増殖させたM.ミコイデスLCドナーゲノムの形質転換の成功に重要であることを示している。M.カプリコルムの制限システムの不活化(M.カプリコルムΔREレシピエント細胞)が、M.ミコイデスのドナーゲノムの移植の成功および活性化を可能にするためには十分であるという事実は、このレシピエント細胞の制限システムの不活化もまた、これらの事象に十分であることを示唆していた。したがって、ドナーであるM.ミコイデスLC制限システム(これは、レシピエント細胞に移植すると、活性化することができた)は、酵母由来のドナーゲノムのM.カプリコルムレシピエント細胞への移植についての障壁を構成するとは考えられなかった。
移植実験におけるコロニーの回収は、M.カプリコルムレシピエント細胞の存在に依存していた。なぜなら、レシピエント細胞を反応から除いた場合にはコロニーは観察されなかったからである。さらに、移植実験はまた、酵母由来のM.ミコイデスLCゲノムにも依存していた。なぜなら、酵母のゲノムDNAまたは酵母由来のYCpプラスミドだけをドナーDNAとして使用した場合には、コロニーが得られなかったからである。サザンブロットにより、酵母由来のドナーゲノムを受け取ったレシピエント細胞のコロニーが、M.カプリコルム遺伝子型およびM.ミコイデスLC遺伝子型であることを確認した。
「浄化」を行わなかった場合は、酵母DNAが、ゲノムDNAを含有している試料中に存在していた。酵母のゲノムDNAからのドナーゲノムDNAの精製(上記表12Aに「b」および「c」で示す)は、移植の結果を実質的に変更することはなく、レシピエントであるM.カプリコルム細胞が、非特異的DNAまたはキャリアDNAの存在を寛容できることを示していた(表12)。加えて、ポジティブな移植の結果が、2種類の異なる酵母株(VL6-48NおよびW303a)から単離したドナーゲノムDNAを用いた場合に得られ、宿主酵母株の遺伝子型および/または表現型が移植実験には重要ではない可能性があることを示していた。
まとめると、これらの結果は、酵母由来の表現型が現れていないM.ミコイデスLCゲノムを活性化させ、生存しているM.ミコイデスLCの作製を導くM.カプリコルム細胞の能力を明らかにし、これにより、本提供の方法を、ドナーまたは宿主のいずれとも異なる種のレシピエントである原核細胞に、真核生物宿主細胞中で増殖させた原核生物の全ゲノムを移植するために使用できることを明らかにする。
酵母由来のメチル化されていないM.ミコイデスLCゲノムの、M.カプリコルムΔREレシピエント細胞への移植により、形質転換し、選択したレシピエント細胞がドナーゲノムを含み、これらが、ゲノムDNA以外のいくつかのM.ミコイデスLC構成成分の存在が原因で選択されなかったことを確認した。この確認は、M.ミコイデスLC細胞またはゲノムDNA以外の成分が形質転換の際に存在しないという事実によるものであった。
別の例においては、YCpMmyc1.1、ならびに、変更したYCpゲノム(YCpMmyc1.1-ΔtypeIIIres::URA3およびYCpMmyc1.1-ΔtypeIIIres)もまた、酵母株W303aから単離した。3種類のYCpゲノム全てのM.カプリコルムレシピエント細胞への移植により、類似する数のテトラサイクリン耐性である青色のコロニーが生じた(表12B)。上記で考察した大きな欠失を持つクローン(YCpMmyc1.1-Δ500kb)を、これが、多くの必須の遺伝子を欠いているが、なおもYCpエレメントとtetMを留めていると推定されるとの理由から、適切な対照とした。予想したとおり、このゲノムをM.カプリコルムレシピエント細胞に移植した場合には、コロニーは回収されなかった。
これらの移植実験の全てにおけるコロニーの回収は、M.カプリコルムレシピエント細胞とM.ミコイデスゲノムの両方の存在に依存していた。本明細書中に記載する実験では、酵母のゲノムDNAを含む、ドナーであるYCpゲノムDNAを使用した。しかし、酵母のゲノムDNAからのドナーであるYCpゲノムDNAの精製によっては、移植の結果は実質的には変化せず、これは、レシピエントであるM.カプリコルム細胞が、非特異的DNAまたはキャリアDNAの存在を寛容できることを示している(表12B)。ポジティブな移植の結果が、株VL6-48Nの4つの別々の形質転換体の培養物、および株W303aの4つの別々の形質転換体の培養物から単離した、ドナーであるYCpゲノムDNAを用いて得られた。したがって、細菌のゲノムは、いずれの酵母株においても安定であり得る。回収したコロニーがM.ミコイデスであることの確認は、プローブとしてM.ミコイデス特異的IS1296エレメントを使用するサザンブロット分析により行った(データは示さず)。III型制限遺伝子がPCRにより、変更した細菌の中では欠失していたことが、III型制限遺伝子配列をプローブとして使用したサザンブロット分析によって(データは示さず)、そしてその遺伝子座の配列決定によって(図17)示された。
(表12B)
*酵母プラグから、AsiSI、RrsII、およびFseIのカクテルでの消化、続いて、パルスフィールドゲル電気泳動を行うことにより、酵母のゲノムDNAを除去した。
†酵母のプラグから、パルスフィールドゲル電気泳動を使用することにより、酵母のゲノムDNAを除去した。
表12Bは、酵母由来のM.ミコイデスYCpゲノムの、野生型およびRE(-)M.カプリコルムレシピエント細胞への移植の結果を提供する。酵母由来のM.ミコイデスYCpゲノムのM.カプリコルムレシピエントへの移植後に得られたテトラサイクリン耐性である青色のコロニーの数をカウントした。野生型M.カプリコルムおよびM.カプリコルムRE(-)の移植を、図8に記載する方法を使用して行った。未処理の試料について、酵母プラグをβ-アガラーゼで消化し(融解工程)、両方のレシピエント細胞に移植した。処理した試料を、融解工程の前に、メチル化し、プロテイナーゼKで処理した。疑似メチル化した試料を、抽出物または精製したメチルトランスフェラーゼを添加しなかったことを除き、メチル化した試料と同じように処理した。本実験で使用したVL6-48N酵母のアガロースプラグは、YCpMmyc1.1を有していた。W303a酵母のアガロースプラグは、YCpMmyc1.1、YCpMmyc1.1(これは、酵母の中で変更した(YCpMmyc1.1-ΔtypeIIIres::URA3、またはYCpMmyc1.1-ΔtypeIIIres))、あるいは、YCpMmyc1.1-Δ500kbを有していた。移植体の数は、少なくとも3回の実験の平均である。報告する誤差は絶対平均偏差である。
実施例4
酵母宿主細胞内でのドナーゲノムの修飾
本実施例は、酵母宿主細胞にクローニングしたマイコプラズマドナーゲノムにシームレスな修飾を導入するための方法の使用を記載する。
酵母サッカロミセス・セレビジエは、大きなDNA断片(直鎖状および環状の酵母人工染色体(YAC)の両方)をクローニングすることができる宿主として開発された。一旦、酵母にクローニングされると、これらのYACは、標準的な遺伝学的ツールを使用して操作することができる。この修飾したDNAの、発現に適している宿主細胞への移入により、遺伝子の機能的研究およびそれらの調節が可能となる。酵母への細菌の全ゲノムのクローニング、およびその後に、そのようなゲノムをそれらのもとの細胞環境に移植して戻すことにより、この適用を、遺伝子レベルからゲノムレベルに拡大した。
対抗選択マーカーを利用する2工程の組換えプロトコールを、酵母の中でYACを修飾するために使用することができる(Tucker and Burke(1996)Nucleic Acids Res, 24, 3467-3468)。これらの方法においては、対抗選択マーカーを最初にYAC中に組換え、それについて選択する。次に、所望する変更を含む新しいDNA断片を、マーカーの代わりに組換え、これについて選択する。これらの手順において最も頻繁に使用されるマーカーはURA3遺伝子であり、これは、欠損株においてウラシル栄養要求性を回復する。URA3遺伝子の置き換えについての対抗選択は、5-フルオロオロチン酸(5-FOA)での処理により行う(Boeke et al., (1984)Mol Gen Genet, 197, 345-346)。最初に、上記方法によりウラシル栄養要求性を回復させ、これをその後、次の回の修飾のために再び使用することができる。次に、上記方法によりシームレスな修飾を作製する。シームレスな修飾のためのこの基本的な方法は、多数の様式で改良されている。完全欠失(delitto perfetto)法は、エンドヌクレアーゼI-SceIを利用することにより、標的遺伝子座の付近に二本鎖の断裂(DSB)を導入する(Storici et al.(2001)Nat Biotechnol, 19, 773-776)。DSBの形成は、相同組換えの修復の効率を桁違いに刺激する(Storici et al.(2003)PNAS USA, 100, 14994-14999)。タンデム反復ポップアウトと呼ばれる別の方法は、標的部位の側方にタンデム反復配列を作製する(Akada et al.(2006)Yeast, 23, 399-405)。この方法には、わずかに1回の形質転換と、それに続く5-FOA対抗選択が必要であるが、他の方法には2回の形質転換が必要である。これらの方法を、欠失、点突然変異、または遺伝子の置き換えに適応することができる。
合成のM.ゲニタリウムゲノムの、酵母の中での環状のYACとしてのアセンブリおよびクローニングは、Gibson et al.(Science, 319, 1215-1220;およびGibson et al.(PNAS USA, 105, 20404-20409(2008))に記載されている。酵母を、インビボで合成の細菌ゲノムを直接変更するまたは設計するためのプラットフォームとして使用することができる。
以下の個々のサブセクションに記載するように、5種類の様々な部位特異的修飾方法を、Gibson et al., Science 319, 1215(2008)、およびGibson et alによる米国特許公開第20090275086号に記載されているように、そして上記実施例1Cに記載したように、酵母宿主細胞に導入し、その中で維持した合成のsMgTARBAC37 M.ゲニタリウムゲノムのCDS139遺伝子座の中に1塩基のシチジン欠失(309、388)を含む標的領域(標的遺伝子座)を修飾するために行った。
サッカロミセス・セレビジエ株VL6-48N(MATα his3-Δ200 trp1-Δ1 ura3-52 lys2 ade2-101 metl4)およびW303a(MATa ade2-1 ura3-1 his3-11, 15 trp1-1 leu2-3, 112 can1-100 RAD5)は、Gibson et al, Science Id.に記載されているように、そして上記実施例1に提供したように、合成のゲノムを持つ。酵母細胞を、標準的な富化培地(YEPD)および合成のデキストロース(SD)または合成のガラクトース(SG)最小培地(Amberg et al, (2005), "Methods in Yeast genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual., "Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, pp.230)の中で増殖させた。
本実施例(実施例4)を通じて記載する様々な研究において使用したプライマーの核酸配列を、表13に列挙する。プライマー配列中の点線は、そのプライマーがキメラ構造であることを示す。M.ゲニタリウムの一部分と相同であるプライマー配列の部分を、小文字で示す。M.ゲニタリウムと相同ではないプライマー配列の部分は大文字で示す。I-SceI切断部位(下記を参照のこと)は、下線をひいた字体で示す。本実施例に記載する方法においては、全てのプライマーを特注で合成した(Integrated DNA Technologies(IDT))。60bpより長いプライマーは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製した。
PCR構築物を、公開されている方法(Gietz et al., Nucleic Acids Res, 20, 1425(1992))にしたがって、2〜3μgのPCR産物と25μgのキャリアDNA(サケの精子DNA, Sigma)を使用し、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に導入した。
実施例4A
従来の2工程の相同組換え法を使用した修飾
従来の2工程の相同組換え法(Rothstein, R.Methods Enzymol, 194, 281-301(1991))を、酵母の中で維持した合成のM.ゲニタリウムゲノムの中の1塩基のシチジン欠失を修正するための部位特異的突然変異誘発を導入するために使用した。これを、図12Aに模式的に説明する。
i.相同組換えによるURA3遺伝子の導入 - 従来の配列の置き換え
表13に列挙したプライマーを使用して、従来の方法(従来の配列の置き換え)を以下のように行った。最初の工程(これは、2回の連続する形質転換を含む)においては、URA3遺伝子(1,066bp)を、プラスミドpRS306(R.S.Sikorski and P.Hieter, Genetics 122, 19(1989)に記載されている)から、プライマーURA-FおよびURA-RによりPCR増幅した。これらの配列は、上記表13に列挙する。この増幅したURA3遺伝子は、突然変異のために標的化したM.ゲニタリウムゲノム領域の部分に同一である2つの50bpの末端配列を含んでいた。PCR反応は、DNAポリメラーゼ(Takara, Madison, WI)を使用して、製造業者が推奨する条件下で行った。PCR産物を、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に導入した。
個々のUra+形質転換体を選択し、増幅したURA3遺伝子がドナーゲノム内の正確な位置に挿入されたことを確認するために、上記表13に列挙した診断用プライマーSeq-FおよびSeq-Rを使用して、PCRによって分析した。Seq-FプライマーおよびSeq-Rプライマーは、標的遺伝子座(修飾する標的ゲノムの領域)の側方にあり、ゲノムに沿って0.4kbの間隔をあけた。その結果、URA3マーカーの置き換えを含むゲノムからの増幅によって、1.35kbのPCR産物が生じたと考えられる(図12Aに模式的に示す)。PCR反応による産物をアガロースゲル上で分離し、これを視覚化して、URA3遺伝子の正確な挿入を確認した。
ii.2回目の形質転換:野生型断片の導入と選択
2回目の形質転換のために、328bpの野生型DNA断片(標的領域の部分に対して相同であるが、CDS139遺伝子座の1塩基欠失を含まない)を、上記表13に列挙したプライマーAmp-FおよびSeq-Rを用いたPCR増幅により得た。この断片を、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換方法を使用した1回目の形質転換により得たURA3で置き換えた株に導入した。
2回目の形質転換の後、URA3遺伝子を喪失した任意の酵母細胞中に残留しているオロチジン-5'-リン酸デカルボキシラーゼ(URA3遺伝子によりコードされる)を枯渇させるために、細胞を、SD-HISプレート上で30℃で一晩増殖させた。5-フルオロオロチン酸(FOA)を補充したSD培地(FOAを含有しているSD-HISプレート)を、URA3遺伝子の喪失について選択するために使用した(Boeke et al., Mol Gen Genet, 197, 345-346(1984))。
突然変異の修正を、診断用プライマーSeq-FおよびSeq-R(上記、および表13に列挙した)を使用した、選択したクローン由来のゲノムDNAのPCRにより評価した。PCR反応は、Takara DNAポリメラーゼ(Takara, Madison, WI)を使用して、製造業者が推奨する条件下で行った。PCR産物をアガロースゲル上で分離した。これらのプライマーを使用すると、CDS139遺伝子座(1塩基欠失を持つもとの遺伝子座、または置き換えた野生型配列のいずれか)を含むゲノムDNAの増幅により、0.4kbのDNA断片のPCR産物が生じた(データは示さず)。
97個のFOA耐性コロニーをこの方法によって試験した。全ての結果を表14の1列目にまとめる。表14に示すように、FOA耐性コロニーはいずれも、ゲノムDNAのPCR増幅によっては、正確な0.4kbの断片を生じなかった。この結果は、入ってきた野生型DNA断片と標的部位との間では正確な相同組換え(HR)が起こらなかったことを示唆していた。代わりに、これらのFOA耐性コロニーにおけるURA3マーカーの喪失が、望ましくない欠失により起こった可能性があった。この可能性は、酵母の中で環状YACとして増殖させたM.ゲニタリウムゲノムが、ヒスチジン栄養要求性に加えて、その宿主との機能相補を有さないと仮定すると起こり得る。したがって、ドナーである細菌ゲノム中での欠失および再構成は、おそらく、宿主細胞の生存能力にとっては無害であったと考えられる。
iii.マルチプレックスPCR
選択した酵母の中でのM.ゲニタリウムゲノムの完全性を評価することによりこの可能性を試験するために、マルチプレックスPCR(MPCR)を、Gibson et al, PNAS USA, 105(51):20404-9(2008)、およびGibson et al., Science 319, 1215(2008)に記載されているように行った。PCR分析のための酵母からの全DNAの単離は、公開されているプロトコール(Kouprina and Larionov, Nat.Protoc.3, 371(2008))に従い、上記実施例3に記載したように行った。MPCRのためのプライマーセット(セット3)を、およそ60kbのDNAごとにM.ゲニタリウムゲノムを取り囲むように分布させた10種類のアンプリコン(0.1kbの増分で、125bpから1025bpまでの範囲)を生じるように設計した(Gibson et al., PNAS USA, 105(51):20404-9(2008))。マルチプレックスPCRは、Qiagen(Valencia, CA)によるマルチプレックスPCRキットを使用して行った。1/50容量(2μl)のDNA抽出物、およびそれぞれ5μMの20種類のオリゴを含有している1μlの1O×プライマーストックを、10μlの反応物の中に含めた。サイクルのパラメーターは、94℃で15分、その後、35サイクルの、94℃で30秒、52℃で90秒、および72℃で90秒、これに続き、1回の72℃で3分間のインキュベーションであった。その後、2μlの反応物をそれぞれ、2%のE-ゲル(Invitrogen)上に充填し、72Vを30分間かけた。バンドを、Amersham Typhoon 9410 Fluorescence Imagerを使用して視覚化した。
結果は、22個のFOA耐性コロニーのそれぞれについて、全DNAの増幅により、全10種類のアンプリコンが生じなかったことを示した。2種類のアンプリコン(0.55kbおよび0.65kbの長さ(これは、M.ゲニタリウムゲノムと一緒にクラスターを形成する))は、いずれのFOA耐性クローンのMPCRによっても生じなかった。CDS139標的遺伝子座は、0.65kbのアンプリコンの3kb上流に位置している(ゲルの結果は示さず)。
この結果は、いくつかの非特異的欠失または再構成が、酵母の中で増殖させたM.ゲニタリウムゲノムの中で起こったことを示していた。これらのクローンにおけるURA3マーカーの喪失(FOAでのそれらの選択により明らかである)はおそらく、M.ゲニタリウムゲノム中の反復配列間での相同組換えにより生じた。URA3マーカーがこの組換えの結果として欠失した細胞は、FOA培地上で生存することができた。したがって、この従来の方法ではない方法を用いた場合には、導入した野生型DNA断片との意図した組換え事象によるURA3の置き換え以外の、非特異的なURA3遺伝子の喪失の高い可能性があった。
従来の修飾方法に伴うこの問題を図9に模式的に説明する。ここでは、URA3が挿入されたM.ゲニタリウム(図9A)を持つ酵母(上記実施例4A(i)に記載したように作製した)への野生型断片の導入、これに続く、FOAを含有しているSD-HISプレート上での選択により、2種類の異なるタイプの組換え事象(P1(野生型断片とゲノムとの間での組換え)およびP2(ゲノム内の反復間での組換え))の選択が生じる(図9B)。これらの事象により、図9Cに説明する別の産物を持つ細胞が生じる可能性があった。M.ゲニタリウムゲノムが多数の反復を含むので、URA3遺伝子の非特異的喪失の可能性(P2)は、意図した組換え(P1)が原因である喪失の可能性よりも高かった。一般的な非特異的喪失は、この従来の方法を使用して、意図した配列を含有している任意のクローンが失われたことの観察の理由である可能性がある。これらの結果は、酵母宿主細胞中でドナーゲノムを修飾するための改良された方法の必要性を示している。
(表14)FoA
+クローンの間での正確な配列の置き換えおよび完全なマイコプラズマ・ゲニタリウムアンプリコンの数
実施例4B
別のシームレスな修飾の方法
2種類の他のシームレスな修飾方法(これらは、より有効であることが報告されている)を、上記の酵母の中で合成のM.ゲニタリウムドナーゲノムの同じ標的領域を修飾する試みにおいて使用した。
i.完全欠失(Delitto perfetto)
2種類の報告されている効率的な方法のうちの第1のものである完全欠失(delitto perfetto)(Storici, F.et al, Nat Biotechnol, 19, 773-776(2001))を、図1OAに模式的に説明する。この方法では、標的DNA部位への二本鎖の断裂の導入が、組換えを桁違いに刺激する。
本明細書中で使用した完全欠失(delitto perfetto)法では、COREカセットの側方にある標的遺伝子座の上流の領域に相同である50bpの配列と、COREカセットの側方にある標的遺伝子座の下流の領域に対して相同である50bpの配列を有している構築物を使用した。これは、以下を含む:特定のエンドヌクレアーゼによって認識される核酸配列、誘導性プロモーター、誘導性プロモーターの制御下に特定のエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、および選択/対抗選択マーカー(図10A)。したがって、エンドヌクレアーゼの発現を誘導すると、エンドヌクレアーゼがこのカセットの中のその認識部位を切断して、二本鎖の断裂を作製し、所望する部位での組換え効率を増大させるように、カセットを設計する。
a.完全欠失(dellitto perfetto)カセットの作製
完全欠失(delitto perfetto)突然変異誘発カセットを、GAL1プロモーター(誘導性プロモーター)とI-SceI遺伝子(エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子)を含んでいる第1の断片をURA3(選択/対抗選択マーカー)遺伝子断片に対して融合させるための融合PCRにより作製した。URA3遺伝子断片(1,066bp)を、上記実施例4Aに記載したように、プラスミドpRS306から、上記表13に列挙したプライマーURA-FおよびURA-Rを使用して増幅させた。GAL1プロモーターとI-SceI遺伝子(GAL1/I-SceI遺伝子断片)を含むこの1,184bpの断片を、プラスミドpGSKU(Storici et al, PNAS USA, 100, 14994-14999(2003)に記載されている)から、上記表13に列挙したプライマーGal-FおよびGal-Rを使用して増幅させた。融合PCRは、原則としてShevchuk et al., Nucleic Acids Res, 32, e19(2004)に記載されているとおりに、組換えPCR技術を使用して行った。
b.1回目の形質転換
上記カセットを、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して導入した。個々のUra+形質転換体を選択し、遺伝子がドナーゲノム内の正確な位置に挿入されたことを確認するために、上記表13に列挙した診断用プライマーSeq-FおよびSeq-R(図10Aの中で、挿入部位の側方にある小さい一方向の矢印として示す)を使用してPCRによって分析した。これらのプライマーを使用した、カセットが挿入されたゲノムのPCRによって、2.5kbの産物が生じたと考えられる。PCR反応による産物をアガロースゲル上で分離し、これを、URA3遺伝子の正確な挿入を確認するために視覚化した。
c.エンドヌクレアーゼの発現の誘導、おとび2回目の形質転換
診断用プライマーを用いたPCR反応においてポジティブと試験したクローンを、I-SecIエンドヌクレアーゼ(これは、GAL1プロモーターによって制御されており、これにより、唯一の炭素源としてガラクトースを含有している培地中で酵母を増殖させると発現される)の発現を誘導するために、SD/ガラクトース/-HIS培地中で4時間増殖させた。エンドヌクレアーゼの発現の誘導は、ゲノムに相同である領域のすぐ下流に位置するカセット内の18bpの認識配列を切断することにより二本鎖の断裂を生じるように意図した。誘導後、野生型DNA断片で、上記実施例4Aに記載したように細胞を形質転換した。
細胞を、実施例4Aに記載したように、URA3マーカーを喪失した細胞を選択するために、FOAを含有しているSD-HISプレート上で増殖させた。Seq-FプライマーとSeq-Rプライマーを使用した診断用PCRを、選択したFOA耐性細胞が、上記カセットが野生型断片(これは400塩基対のPCR産物を生じると考えられる)で置き換えられたゲノムを含むかどうかを決定するために行った。上記表14に示したように、60個の試験したFOA耐性単離物はいずれも、正確なサイズのアンプリコンを生じなかった。結果は、60個のFOA耐性単離物由来のM.ゲニタリウムゲノムが、CDS139遺伝子座の不正確な欠失を含むことを明らかにした。
ii.タンデム反復ポップアウト
2種類の報告されているシームレスな欠失の方法の第2のものであるタンデム反復ポップアウトは、2つのタンデム反復配列間での相同組換え(HR)による核酸セグメントの正確な除去に基づき、これは、Akada et al, Yeast, 23, 399-405(2006)に記載されている。この技術は、遺伝子の置き換えでの使用に適応させることができる。この方法を用いて、1塩基欠失の修正の代わりに、CDS139遺伝子座のシームレスな欠失を、M.ゲニタリウムゲノムを持つ同じ酵母株において行った。
a.融合PCRによるタンデム反復カセットの作製
URA3マーカーと、標的遺伝子座(図10Bの中で「反復」として示す大きな矢印)のすぐ上流の部分に相同である358bpの断片(「反復」断片)を含む融合産物を作製した。1,066bpのURA3マーカー断片は、実施例4Aに記載した方法と同じ方法を使用して、Ura-FおよびUra-Rプライマー(表13)を使用してPCRにより産生した。358bpの反復断片は、表13に列挙したAmp-FおよびSeq-Rプライマーを用いて、PCR増幅により産生した。
上記2つの部分を、上記実施例4B(i)に記載したように、以下のように組換えPCR技術を使用して融合PCRにより連結させた。最初に、上記表13に列挙したキメラ融合プライマーFus1およびFus2(それぞれが、URA3遺伝子に対する相同部分と「反復」断片を含む)を、URA3遺伝子を増幅するためのPCRにおいて、および反復断片を増幅するための別のPCRにおいて使用した。それぞれの反応による産物は、2つの増幅産物の間で共通している重複している相同配列の40塩基対の全てについて、他の反応の産物に対する相同領域を含んでいた。その後、これらの産物について、これらの産物を連結させるための低いアニーリング温度を用いて、プライマーレスPCRサイクルを行い、これにより、連結された複数の断片を含む融合産物を得た。
最終的な突然変異誘発カセット(図10Bを参照のこと)を作製するために、上記融合産物を、上記表13に列挙したキメラプライマーUM2-70およびMUT-70を使用して再度PCR増幅した。その表に示したように、これらのプライマーのそれぞれが、融合産物に対する相同性と、標的領域に対する50塩基対(bp)の相同性(5'末端;小文字)を含んでいた。得られたカセット(図10Bに説明する)は、以下の順序で、標的領域の5'部分に対する50bpの相同性(1塩基欠失の上流)、URA3マーカー、反復カセット、および標的領域の3'部分に対する50bpの相同性を含んでいた。上記カセットは、これで酵母宿主細胞を形質転換すると、M.ゲニタリウムゲノムのCDS139遺伝子座内の450塩基対の標的領域の、このカセットでの(HRによる)置き換えが、URA3選択マーカーの側方にある2つのタンデム反復配列(「反復」として示した図14B中の大きな矢印)を含むゲノム中の領域の中で生じるように、この方向で設計した。上記タンデム反復配列は、2つの反復配列間での相同組換えによるカセットの欠失(ポップアウト)を容易にするために含めた。このような事象によりURA3マーカーを除去し、そしてこのような事象を、FOAを含有している培地上での増殖により選択することができた。
b.形質転換および分析
上記カセットを、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して導入した。個々のUra+形質転換体を選択し、上記遺伝子がドナーゲノム内の正確な位置に挿入されたことを確認するために、上記表13に列挙した診断用プライマーSeq-FおよびM2-detl-R(図10Bの中で、挿入部位の側方にある小さい一方向の矢印として示す)を使用して、PCRによって分析した。これらのプライマーを用いた野生型ゲノムのPCRによって、1kbの産物が生じたと考えられる。一方、カセットが挿入されたゲノムのPCRによっては、1.973kbの産物が生じた。PCR反応による産物をアガロースゲル上で分離し、これを、URA3遺伝子の正確な挿入を確認するために視覚化した。
正確な挿入についてPCRによりポジティブと試験した細胞を、実施例4Aに記載したように、URA3マーカーを喪失した細胞を選択するために、FOAを含有しているSD-HISプレート上で増殖させた。プライマーSeq-FおよびM2-det1を使用した診断用PCRを、選択したFOA耐性細胞が、カセットが欠失した、標的領域の450塩基対部分のシームレスな欠失が残っているゲノムを含むかどうかを決定するために行った。そのような正確な欠失が起こったゲノムについてのこれらのプライマーを用いたPCRによって、0.55kbの産物が生じたと考えられる。上記表14に示すように、38個のFOA耐性単離物はいずれも、このPCR増幅において産物を生じなかった。
MPCRを、9個のFOA耐性単離物由来のDNAについて、実施例4Aに記載したように行った。上記表14に示したように、これらの9個の単離物のうちの一つだけが、完全なレプリコン(10種類の産物全て)を生じた。完全なレプリコンが存在しないことは、ドナーゲノム自体の中で反復配列間で組換えが起こったことを示していた。この結果は、URA3マーカーの側方にあるタンデム反復配列間での組換えの頻度が、M.ゲニタリウムゲノム中の反復配列間での組換えよりもはるかに低かったことを示唆していた。
実施例4Aおよび本実施例(4B)に記載した研究による結果は、まとめると、URA3/FOAシステムをベースとする公知の方法が、これらの酵母宿主細胞中でM.ゲニタリウムドナーゲノムを操作および変更するためのこの特定のシステムにおいては十分ではないこと、そしてこれらの研究において回収したFOA耐性コロニーの大部分が、一連の操作の間の意図しない組換え事象によりURA3マーカーを非特異的に喪失したことを示していた。これらのことは、酵母宿主細胞中でドナーゲノムを修飾するための改良された方法の必要性を示している。
実施例4C
タンデム反復とエンドヌクレアーゼによる切断を使用した修飾方法(TREC)
実施例4Aおよび4Bに記載した研究の結果に基づいて、ポップアウト法(実施例4B(ii))における意図したタンデム反復間での組換え頻度が、標的遺伝子座付近での二本鎖の断裂の導入により増強され得ると理由づけした。タンデム反復とエンドヌクレアーゼによる切断(TREC)を使用し、そして酵母宿主細胞の中でドナー核酸を修飾するために使用することができるそのような方法(TREC)を提供する。本実施例は、酵母の中でのM.ゲニタリウムドナーゲノム中の同じ遺伝子座を修飾するための本提供の方法の使用を記載する。この研究の結果により、標的部位付近への二本鎖の断裂の導入により、このシステムにおけるタンデム反復を介する組換え効率が増大することを確認する。
URA3マーカーに対する対抗選択の際の非特異的喪失のバックラウンドを減少させ、標的部位の付近にタンデム反復配列と二本鎖の断裂(これは、標的特異的組換えの効率と特異性を大幅に増強する)の両方を作製するための一つの方法を設計した。このTREC法は、酵母の中でM.ゲニタリウムゲノムをシームレスに変更するには十分に有効である。
i.TRECカセットの作製
別の例においては、TREC突然変異誘発構築物を、(GAL1/I-SceI)-URA3融合産物(実施例4B(i)に記載したように産生した)を標的遺伝子座の上流に位置する358bpの「反復」断片(実施例4B(ii)に記載した)と融合させることにより作製した。(GAL1/I-SceI)-URA3産物と反復断片の融合は、以下のように、融合PCRにより行った。キメラプライマーFus1およびFus2(上記表13に列挙した)(それぞれが、(GAL1/I-SceI)-URA3融合産物および反復断片に対する相同部分を有している)を、(GAL1/I-SceI)-URA3融合産物を鋳型として用いたPCR増幅において、そして「反復」断片を鋳型として用いた別のPCR増幅において使用した。その後、これらの産物について、上記実施例4Aおよび4Bに記載したように、プライマーを用いないPCRを行って、((GAL1/I-SceI)-URA3)-反復融合産物を作製した。
その後、((GAL1/I-Scel)-URA3)-反復融合産物を、上記表13に列挙したSce-Int1およびMUT-70プライマーを使用して増幅した。その表に示したように、これらのプライマーはそれぞれ、((GAL1/I-SceI)-URA3)-反復融合産物に対する相同性と、標的領域の末端部分に対する5'の50塩基対(bp)相同部分(5'の小文字の部分)を含んでいた。Sce-Int1プライマーはさらに、I-SceI認識部位(下線をひいた)を含んでいた。
得られたTRECカセット(図10Cに説明する)は、以下の順序で、標的領域の5'部分に対する50bpの相同性(1塩基欠失の上流)、COREカセット(18bpのI-SceI認識部位、GAL1プロモーター、I-SceIエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、およびURA3マーカーからなる)、「反復」(標的遺伝子座のすぐ上流にあるゲノムの配列に対して相同である358bpの部分)、および標的領域の3'部分に対する50bpの相同性(1塩基欠失の下流が修正されている)を含んでいた。
したがって、このカセットは、酵母宿主細胞を形質転換すると、M.ゲニタリウムゲノムのCDS139遺伝子座内の450塩基対の標的領域の、このカセットでの(HRによる)置き換えが、URA3選択マーカーと、ガラクトース上での増殖によってエンドヌクレアーゼの発現を促進することにより切断を誘導することができるエンドヌクレアーゼ切断部位との側方にある2つのタンデム反復配列(「反復」として示した図10Bの中の大きな矢印)を含むゲノム中の領域の中で生じるように、設計した。タンデム反復ポップアウト法においてそうであったように、2つの反復配列間での相同組換えによるシームレスな欠失を可能にするために、タンデム反復配列を含めた。完全欠失(delitto perfetto)法においてそうであったように、誘導可能なエンドヌクレアーゼ遺伝子とエンドヌクレアーゼ認識部位を、所望する組換え部位で二本鎖の断裂の生成を誘導できるように含めた。組換えによるシームレスな欠失の選択は、FOAを含有している培地上での増殖により行うことができた。
ii.形質転換および選択
TRECカセットを、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して導入した。個々のUra+形質転換体を選択し、上記遺伝子がドナーゲノム内の正確な位置に挿入されたことを確認するために、上記表13に列挙した診断用プライマーSeq-FおよびM2-det1(図10Cにおいて挿入部位の側方にある小さい一方向の矢印として示した)を使用して、PCRによって分析した。これらのプライマーを使用した、TRECカセットが挿入されたゲノムのPCRによって、2.884kbの産物が生じたと考えられる。PCR反応の産物をアガロースゲルで分離し、これを、URA3遺伝子の正確な挿入を確認するために視覚化した。
iii.エンドヌクレアーゼの発現の誘導、FOA選択、および評価
その後、クローンを、SG(合成のガラクトース)-Hisを含有しているプレート、およびSD-HISを含有しているプレート(グルコースを含有している)上でレプリカ培養し、24時間増殖させた。唯一の炭素源としてガラクトースを含有しているSG培地上での増殖は、GAL1プロモーターにより制御されるI-SecIエンドヌクレアーゼの発現を誘導するために行った。同じ条件下でのSD-HISプレート上での増殖は、対照として行った。エンドヌクレアーゼの発現は、ゲノムに対する相同領域のすぐ下流に位置しているカセットの内部の18bpの認識配列を切断することにより二本鎖の断裂が生じるように意図した。24時間のインキュベーション後、誘導した細胞と対照(誘導しなかった)細胞を、実施例4Aに記載したように、URA3マーカーを喪失した細胞を選択するために、FOAを含有しているSD-HISプレート(SD-HIS+FOA)上でレプリカ培養した。
ガラクトース誘導に提供された細胞は、SD-HIS+FOA上で増殖させると多数のコロニーを生じた。一方、対照細胞は、数個しかコロニーを生じなかった。誘導した細胞と誘導しなかった細胞の両方からFOA耐性の単一コロニーを得るために、細胞を再度画線した。Seq-FおよびM2-det1診断用プライマー(上記表13に列挙した)を使用した診断用PCRを、選択したFOA耐性細胞が、TRECカセットが除去され、継標的遺伝子座の部分のシームレスな欠失を生じたゲノムを含むかどうかを決定するために行った。シームレスな欠失を含むゲノムのPCRによっては、0.55kbの産物が生じた。ガラクトースで誘導した細胞に由来する試験した24個のコロニー全てが、意図した修飾を持つM.ゲニタリウムゲノムを含んでいた。誘導しなかった細胞からは、わずかに2つのポジティブクローンしか単離されなかった。
M.ゲニタリウムゲノムの完全性を、上記実施例4Aおよび4Bに記載したように、診断用PCR分析により試験した最初の10個の誘導したクローンおよび誘導しなかったクローンについてのMPCRによりさらに分析した。10個の試験したガラクトースで誘導したコロニーの全てに由来するDNAのPCRにより、完全なレプリコン(10種類全てのアンプリコン)が生じた。誘導しなかった細胞由来のDNAのPCRによっては、完全なレプリコンは生じなかった(現時点で示されるデータ)。これらの結果を、上記表14にまとめる。この結果は、高い効率での、酵母宿主細胞内での細菌のドナーゲノムの部分のシームレスな欠失の成功を明らかにしている。
iv.例示的なTREC
完全な合成のマイコプラズマ・ゲニタリウムゲノム(〜583kb)を、酵母サッカロミセス・セレビジエの中でアセンブリし、環状プラスミドとしてクローニングした。URA3/5-フルオロオロチン酸(5-FOA)対抗選択を含む標準的な遺伝学的方法によりクローニングしたゲノムを変更する試みは、酵母の中で維持した細菌ゲノムの自発的な欠失に由来する5-FOA耐性クローンの高いバックグラントを示した。ここでは、本発明者らは、高い効率で酵母の中で細菌ゲノムを正確に修飾することができる方法を報告する。この方法は、2回の連続する相同組換え事象を含む。最初に、標的領域を、ノックアウトCORE(18bpのI-SceI認識部位、GAL1プロモーターの制御下にあるI-SceI遺伝子、およびURA3遺伝子)と標的部位の上流にある配列に同一であるDNA断片からなる突然変異誘発カセットで置き換える。この置き換えは、COREの側方にタンデム反復配列を生じる。2番目に、ガラクトースによりI-SceIの発現を誘導する。I-SceIは、I-SceI部位に二本鎖の断裂(DSB)を作製する。このDSBは、反復配列間での分子内相同組換えを促進し、COREの除去を導く。結果として、これはシームレスな修飾を作製する。この方法は、様々なゲノムの修飾に適応させることができ、したがって、酵母の中で合成のゲノムを修飾および設計するための代替え方法を提供する。
材料および方法
酵母株と培地
0.6Mbのマイコプラズマ・ゲニタリウム全ゲノムYACを収容しているサッカロミセス・セレビジエ酵母株VL6-48N(MATα his3-Δ200 trpl-Δ1 ura3-52 lys2 ade2-101 met14)およびW303a(MATa ade2-1 ura3-1 his3-11, 15 trp1-1 leu2-3, 112 can1-100 RAD5)を、以前に記載されたとおりに構築した(Lartigue et al.(2009)Science, 325, 1693-1696;およびGibson et al.(2008)PNAS USA, 105, 20404-20409)。酵母細胞を、標準的な富化培地(YEPD)および合成のデキストロース(SD)または合成のガラクトース(SG)最小培地(Amberg et al.(2005)Methods in yeast genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, pp.230)中で増殖させた。5-フルオロオロチン酸(5-FOA)を補充したSD培地を使用して、URA3遺伝子の喪失を選択した(Boeke et al.(1984)Mol Gen Genet, 197, 345-346)。
突然変異誘発カセットの産生
全てのプライマーは特注で合成した(Integrated DNA Technologies)。60bpより長いプライマーは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製した。全ての突然変異誘発カセットの構築に使用したプライマーを表13にまとめる。URA3遺伝子(1,066bp)をプラスミドpRS306(Sikorski and Hieter(1989)Genetics, 122, 19-27)から増幅した。GAL1プロモーター(450bp)は、プラスミドpYES2(Invitrogen)から増幅した。GAL1プロモーターとI-SceI遺伝子を含む1,184bpの断片は、プラスミドpGSKU(Storici et al.(2003)PNAS USA., 100, 14994-14999)から増幅した。そして、Creリコンビナーゼ遺伝子(1,032bp)は、プラスミドpBS185(Sauer and Henderson(1990)New Biologist 2, 441-449)から増幅した。
全てのPCRは、Takara Ex Taq DNAポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)を用いて、製造業者が推奨する条件を使用して行った。遺伝子の融合は、重要ではない改変を加えて組換えPCR技術(Shevchuk et al.(2004)Nucleic Acids Res, 32, e19)によって行った。PCRによる融合のそれぞれの場合において、相補性末端を40bp重複させた(表13)。それぞれの最終的な突然変異誘発カセットを作製するために、融合産物を、キメラプライマー(それぞれが、標的部位に対する50bpの相同性を含む)により再度PCR増幅した(表13)。
中央に点線を含むプライマーはキメラ構造である。小文字は、M.ゲニタリウム相同配列を示す。大文字は、非相同配列を示す。そして、I-SceI切断部位に下線をつける。
形質転換およびPCR分析
酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を、公開されている方法に従って行った(Gietz et al.(1992)Nucleic Acids Res, 20, 1425)。2〜3μgの組込み型構築物DNAと、25μgのキャリアDNA(サケの精子DNA、Sigma)を、日常的に行う実験において使用した。PCR分析のための酵母からの全DNAの単離は、公開されているプロトコールに従って行った(Kouprina and Larionov.(2008)Nat Protoc, 3, 371-377)。それぞれの突然変異誘発カセットの正確な組込みを、標的部位の上流および下流に位置するプライマー(表13)を使用したPCRにより確認した。マルチプレックスPCRを、以前に記載されたとおりに(Gibson et al.(2008)PNAS USA, 105, 20404-20409)M.ゲニタリウムクローンの完全性を確認するために使用した。マルチプレックスPCRに使用したプライマーのセット(セット3)は、およそ60kbごとにM.ゲニタリウムゲノムを取り囲むように分布させた10種類のアンプリコン(0.1kbの増分で、125bp〜1025bpまでの範囲)を生じるように設計した(Gibson et al.(2008)PNAS USA, 105, 20404-20409)。
結果
伝統的な方法により酵母の中で維持した合成のM.ゲニタリウムゲノムのMG259遺伝子座中の点変異の変更には、2つの相同組換え事象が関係していた(図12A)。最初の相同組換えの後、合成のゲノム中の標的領域のURA3遺伝子での正確な置き換えを、PCRにより確認した。しかし、2回目の相同組換え後は、本発明者らは、5-FOA耐性コロニーからのPCRスクリーニングによっては、DNAセグメントでのURA3遺伝子の正確な置き換えを同定することはできなかった(図12Bおよび表15)。
(表15)酵母中でのM.ゲニタリウムゲノムの変更におけるいくつかの酵母DNA修飾方法の効率
特有のPCRプライマーのセットを、正確な置き換えについてFOA+クローンを分析するために使用した。10種類のプライマー対を、マルチプレックスPCR分析に使用した。10種類全てのアンプリコンの産生を完全なゲノムと考えた。
これらの結果は、正確な相同組換えが、入ってきたDNA断片と標的部位との間では起こらなかったことを示唆している。URA3マーカーの喪失は、予想しなかった欠失が原因である可能性がある。酵母の中で環状YACとして増殖させたM.ゲニタリウムゲノムは、ヒスチジン栄養要求性を除き、その宿主と機能相補を有さない。細菌ゲノム中の任意の欠失および再構成は、おそらく、酵母の生存能力にとっては無害である。マルチプレックスPCRを、酵母の中でのM.ゲニタリウムゲノムの完全性を評価するために使用した。プライマーのセットは、およそ60kbごとにM.ゲニタリウムゲノムを取り囲むように分布させた10種類のアンプリコン(0.1kbの増分で、125bpから1025bpまでの範囲)を生じるように設計した。22個の5-FOA耐性コロニーから調製した全DNAは10種類全てのアンプリコンを生じなかった(図12C)。2種類のアンプリコン(0.525kbおよび0.625kb(M.ゲニタリウムゲノムに隣接する)は、全てのクローンにおいて欠けていた。MG259遺伝子座は、0.65kbのアンプリコンの上流3kbに位置する。この結果は、いくつかの自発的欠失または再構成が、酵母の中で増殖させたM.ゲニタリウムゲノムの中で起こったことを示す。URA3マーカーの喪失は、M.ゲニタリウムゲノム中の反復配列間での相同組換えにより生じた可能性がある。結果として、URA3マーカーの欠失を持つ細胞は、5-FOA培地上で生存することができた。URA3遺伝子の非特異的喪失の可能性は、入ってきたDNA断片によるURA3の置き換えの可能性よりも高い(図12D)。本発明者らはまた、同じ遺伝子座を変更するために2つの他の方法を利用し、完全欠失(delitto perfetto)法またはタンデム反復ポップアウト法(図1OAおよび10Bに概説するストラテジー)によりそれぞれ、点突然変異または450bpの欠失を得た。しかし、本発明者らは、5-FOA耐性コロニーをスクリーニングするPCRによっては、正確な修飾を全く同定できなかった(表15)。したがって、本発明者らは、5-FOA耐性コロニーのほとんどが、一連の操作の間にURA3マーカーを非特異的に喪失した細胞に由来すると結論付けた。
2つのタンデム反復間での組換えの頻度は、標的部位付近でのDSBの導入により大幅に増強され得た。したがって、本発明者らは、2つのストラテジー(タンデム反復ポップアウト法と完全欠失(delitto perfetto)法)を組み合わせた。突然変異誘発構築物を、COREカセットを標的部位の上流の358bpのDNAと融合させることにより作製した。この構築物による450bpの標的領域の置き換えにより、I-SceI認識部位を含む、COREを含む2つの反復配列が生じたと考えられる(図13)。その後、上記反復間での相同組換えにより、シームレスな欠失が生じたと考えられる。酵母の中での突然変異誘発構築物の形質転換後、I-SceIエンドヌクレアーゼの発現を、SG-マイナスHIS寒天上で誘導した。24時間のインキュベーション後、細胞を、SD-マイナスHIS+5-FOA寒天上でレプリカ培養した。ガラクトースで誘導した細胞は、誘導しなかった細胞よりもSD-HIS+5-FOA寒天上で有意に多いコロニーを生じた(データは示さず)。誘導した細胞に由来する5-FOA耐性細胞と、誘導しなかった細胞に由来する5-FOA耐性細胞の両方を、再び画線し、単一コロニーを選択し、分析した。正確な欠失を持つ形質転換体をPCRにより同定した。COREカセットが正確に除去されたDNAは、0.55kbのアンプリコンの生成を生じたと考えられる。ガラクトースで誘導した細胞由来の24個のコロニー全てが、M.ゲニタリウムゲノムの正確な修飾を含んでいた。誘導しなかった細胞由来のコロニーからは、わずかに2個のポジティブクローンしか単離されなかった(データは示さず)。M.ゲニタリウムのゲノムの完全性を、マルチプレックスPCRによりさらに評価した。試験した10個の誘導したクローン由来のDNAは、10種類のアンプリコンの完全なセットを生じた。誘導しなかった細胞由来のDNAは、10種類のアンプリコンの完全なセットを生じなかった(データは示さず)。したがって、いずれのPCR分析による結果も、TREC法により、酵母にクローニングした細菌ゲノムにシームレスな欠失を高い効率で行うことができることを示している(表15)。
最後に、TREC法の効率を、酵母にクローニングした細菌ゲノム中の欠失について、Cre-loxPシステムの効率と比較した。Cre-loxPシステムは、効率の高い部位特異的組換え法である。これは、広範囲の生物において、選択マーカーおよび大きなゲノムDNAセグメントを除去するためにうまく使用されている(Gueldener et al.(2002)Nucleic Acids Res, 30, e23)。突然変異誘発構築物を、2回のPCRにより作製した(Materials and Methods)。これは、URA3マーカー、GAL1プロモーターの制御下にあるCre遺伝子、および標的部位に対して相同である2つの末端配列が側方にある2つの突然変異loxP部位から構成されていた(図15)。上記loxP部位は、逆組換え事象を妨害する(Araki, et al.(1997)Nucleic Acids Res, 25, 868-872)
先に修飾した同じ領域を、この構築物により標的化した。同様の手順と分析を、部位特異的欠失を生じさせ、検出するために行った。PCR分析は、5-FOA耐性単離物の93%(28/30)が所望する欠失を含むことを示し、マルチプレックスPCRの結果は、正確な欠失を持つ単離物の100%(4/4)が完全なM.ゲニタリウムゲノムを含むことを示唆していた(表15)。結論として、TREC法の効率は、酵母にクローニングしたM.ゲニタリウムゲノムの変更においては、Cre-loxPシステムの効率に匹敵する。
シームレスなゲノムの変更には、多くの場合、それについて選択することができ、その後に除去することができる対抗選択マーカーが必要である。対抗選択URA3/5-FOAシステムを採用するいくつかの既存の方法について、酵母の染色体中での修飾の成功が報告されている(Rothstein(1991)Methods Enzymol, 194, 281-301)。しかし、本発明者らは、これらの方法が、酵母の中でエピソームとして維持されたM.ゲニタリウムゲノムを変更するためには適していないことを示した。合成のM.ゲニタリウムゲノムは、そのゲノムが4%までの反復配列を含む場合でもなお、酵母の中で安定に維持されることが示されている(Peterson et al.(1995)PNAS USA, 92, 11829-11833)。したがって、自発的な欠失または再構成が、酵母を維持する間に低い頻度で起こる可能性が依然存在する。これは、一連の操作の間に望ましくないURA3ネガティブクローンを生じる可能性があり、したがって、部位特異的突然変異誘発についての5-FOA選択を複雑にする。
本発明者らは、TREC法により、酵母の中でM.ゲニタリウムゲノムのシームレスな修飾を効率よく作製することができることを明らかにした。これは、わずかに1回しか形質転換を必要とせず、他の種の修飾(挿入、遺伝子の置き換え、または点突然変異)にも適応できる単純な方法である。突然変異誘発構築物の調製には、1日未満しか要さない。実際、本発明者らは、融合反応を行うよりもむしろ、互いに50bpの重複を持つCOREカセットと反復断片の同時形質転換が、正確な遺伝子の置き換えを得るには十分であることを見出した(データは示さず)。TREC法を使用する場合の相同組換えのこの高い頻度は主に、原則として全ての細胞が、DSBの誘導の間に修復に従事していること、および修復物質(反復配列およびDSB)が非常に近位にあることの事実に大きく起因する。TRECの性能は、Cre/loxPシステムに匹敵する。しかし、TRECは痕跡を残さないので、ゲノムの変更においてはCre/loxPシステムよりも有益である。最近、MIRAGEと呼ばれる新しい方法が、酵母ゲノムのシームレスな修飾を高い効率で生じることが示された。この方法は、2つの短いタンデム反復が側方にある、標的部位付近の逆位反復配列の導入に基づく。不安定な逆位反復配列は、2つのタンデム反復の間の除去を大幅に促進する。しかし、逆位反復配列はまた、複製のずれが原因で、不正確な欠失の問題が起こる可能性を導入する(Gordenin et al.(1992)PNAS USA, 89, 3785-3789)。MIRAGE法を使用する別の欠点は、2日間の準備が必要であるとの理由から、ノックアウト構築物の作製に時間がかかることである。
YACとして持つ変更した細菌ゲノムをそのもともとの細胞に導入して戻すことにより、遺伝子および遺伝子クラスターの機能ならびに調節を決定することができる(Vrancic et al.(2008)Food Tech Biotechnol 46, 237-251)。シームレスな修飾が、YACを変更する好ましい手段である。なぜなら、変更した部位に残っているさらなる配列が、予期しない結果を引き起こす可能性があるからである。さらに、多くの高等真核細胞の染色体は、高い割合で反復配列を含む。本明細書中に記載する方法は、酵母にクローニングしたそれらの遺伝子を修飾するために有利であるはずである。本発明者らはまた、この方法を、酵母にクローニングしたマイコプラズマ・ミコイデスラージコロニー(M.ミコイデスLC)ゲノム中のIII型制限酵素のシームレスな欠失を作製するために適用した。正確な欠失を配列決定により確認した。その後のゲノムの移植により、この生物中の限られた遺伝学的ツールが原因で、宿主細胞中で作製することが困難である、ゲノムの欠失を持つM.ミコイデスLC株を作製した(Lartigue et al.(2009)Science, 325:1693)。酵母は、M.ゲニタリウムの全ゲノムのアセンブリのための宿主として成功が実証されている。TRECは、合成の細胞を作製するために使用することができる合成のゲノムを設計するための相補的な手段を提供する。
酵母の使用により、大腸菌を上回る利点がもたらされる。なぜなら、大腸菌においては、300kbより大きい外来DNAのクローニングはあまり一般的ではなく、これがその適用を制限するからである。一方、酵母細胞は、メガ塩基対のクローニングの能力を提供する。
実施例4D
Cre-LoxP修飾システム
比較のために、細菌ゲノムの修飾のための公知の修飾システムであるCre-loxPシステムを、酵母宿主細胞中で同じ細菌ゲノムを修飾するために使用した。Cre-loxPシステムは、多数の様々な生物の中で選択マーカーおよび大きなゲノムDNAセグメントを除去するためにうまく使用されている、公知の効率的な部位特異的組換え方法である。Gueldener et al., Nucleic Acids Res, 30, e23(2002)を参照のこと。
突然変異体loxP遺伝子を持つCre-loxP突然変異誘発構築物を、先の実施例に記載したように、2回のPCR反応により産生した。loxPの突然変異は、Araki, K.et al., Nucleic Acids Res, 25, 868-872(1997)に記載されているように、逆の組換え事象を妨げる。
i.Cre-loxPカセットの作製
loxP-RE-GAL1-Cre-URA3-loxP-LE突然変異誘発カセットを、Cre-FおよびCre-Rプライマー(表13)を使用してプラスミドpBS185(Sauer and Henderson.New Biologist 2, 441-449(1990))から増幅したCreリコンビナーゼ遺伝子のORF断片(1,032bp)、プライマーGal-FおよびGal-R(表13)を使用してプラスミドpYES2(Invitrogen, Carlsbad, CA))から増幅したGAL1プロモーター(450bp)、およびUra-FプライマーおよびUra-Rプライマー(表13)を使用して先の実施例に記載したようにPCRにより産生した1066bpのURA3遺伝子断片を使用して得た。
Gal1-Cre-URA3融合産物を、Cre-Fus2プライマーおよびCre-Fus4プライマー(表13)を使用したPCR融合を使用して作製し、突然変異loxP部位を、GAL1-Cre-URA3融合産物と突然変異LoxP部位に対する相同部分を含むキメラプライマーLox-FおよびLox-R(表13)を使用した融合産物の増幅により導入した。この増幅により、LoxP-RE-GAL1-Cre-URA3-loxP-LE融合産物を作製した。その後、この融合産物を、上記表13に列挙したInt-F2プライマーとInt-R2プライマーを使用して増幅した。その表に示したように、これらのプライマーにはそれぞれ、LoxP-RE-GAL1-Cre-URA3-loxP-LE融合産物に対する相同性と、5'の50塩基対(bp)の標的領域に相同であるセグメント(小文字)を含めた。
得られたLoxP-RE-GAL1-Cre-URA3-loxP-LE突然変異誘発カセット(図10Dに説明する)には、以下の順序で、標的領域の5'部分に対する50bpの相同性(1塩基欠失の上流)、第1のloxP部位(loxP-RE)、GAL1プロモーター、Creリコンビナーゼ遺伝子のORF、URA3マーカー、第2のloxP部位(loxP-LE)、および標的領域の3'部分に対する50bpの相同性(1塩基欠失の下流)を含めた。したがって、このカセットは、これで酵母宿主細胞を形質転換すると、このカセット内のM.ゲニタリウムゲノムのCDS139遺伝子座内の450塩基対の標的領域の置き換え(HRによる)により、ガラクトース上での増殖による同じカセットからCreの発現の誘導によって組換えおよび欠失を標的するように誘導することができるloxP部位を含む一つの領域が、ゲノム中に生じるように、設計した。URA3マーカーを含むカセットの欠失は、FOA培地上での増殖により選択することができた。
ii.形質転換および選択
loxP-Creカセットを、M.ゲニタリウムゲノムを含有している酵母株に、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して導入した。個々のUra+形質転換体を選択し、上記遺伝子がドナーゲノム内の正確な位置に挿入されたことを確認するために、診断用プライマーSeq-FおよびM2-det1(図10Dにおいて挿入部位の側方にある小さい一方向の矢印として示し、表13に列挙した)を使用して、PCRによって分析した。loxP-Creカセットが挿入されたゲノムのこのPCRによって、3.068kbの産物が生じたと考えられる。PCR反応の産物をアガロースゲルで分離し、これを、上記カセットの正確な挿入を確認するために視覚化した。
iii.エンドヌクレアーゼの発現の誘導、FOA選択、および評価
その後、クローンを、SG(合成のガラクトース)-Hisを含有しているプレート、およびSD-HISを含有しているプレート(グルコースを含有している)上でレプリカ培養し、24時間増殖させた。唯一の炭素源としてガラクトースを含有しているSG培地上での増殖は、GAL1プロモーターにより制御されるCreリコンビナーゼの発現を誘導するために行った。リコンビナーゼの発現は、カセットの内部のLoxP部位で組換えを誘導するように意図した。誘導後、実施例4Aに記載したように、URA3マーカーを喪失した細胞を選択するために、細胞を、FOAを含有しているSD-HISプレート(SD-HIS+FOA)上でレプリカ培養した。
5-FOA耐性コロニーについて、選択したFOA耐性細胞が、カセットが除去されて標的遺伝子座の部分のシームレスな欠失を生じたゲノムを含むかどうかを決定するために、Seq-FプライマーおよびM2-det1プライマー(表13)を使用して診断用PCR(実施例4A〜Cに記載したとおり)を行った。表14に示したように、結果は、試験した5-FOA耐性単離物のうちの93%(28/30)が所望する欠失を含むことを示した。
M.genitaliumゲノムの完全性を、上記実施例4Aおよび4Bに記載したように、診断用PCR分析によりポジティブと試験した4個のクローンついて、MPCRによりさらに分析した。上記表14に示したように、これらのコロニーのうちの100%(4/4)が10種類のアンプリコンを全て含み、このことは、ゲノムの完全性が明らかにしている。
実施例4Cおよび4Dに示した研究による結果は、酵母宿主細胞中でのマイコプラズマゲノムの修飾について、提供するTREC法(これは、1回の形質転換により行うことができ、欠失、挿入、遺伝子の置き換え、および点変異に適応することができる簡単な方法である)の効率が、周知のcre-loxP修飾方法の効率に等しく、それよりも高くないことを示した。しかし、Cre-loxP法とは異なり、TREC法によっては、シームレスな修飾も生じ、これによりこの方法は特に有効となる。
実施例5
宿主細胞へのドナーゲノムの移入、宿主細胞内でのTRECによる修飾、およびレシピエント細胞への移植
本実施例は、宿主細胞へのドナーゲノムの移入、宿主細胞内でのドナーゲノムの修飾(TREC修飾)、およびドナーゲノムのレシピエント細胞への移植のための、本提供の方法の組み合わせを使用するドナーゲノムの操作を記載する。上記方法を、研究室また自然界のいずれにもこれまで存在していなかった酵母の中でM.ミコイデスLCゲノムをうまく変更するために使用した。以下に記載するように、III型制限酵素遺伝子を、酵母宿主にクローニングしたドナーであるM.ミコイデスLCゲノムから欠失させた。III型制限酵素遺伝子を、これが生存能力および移植に必須ではないと予想したので選択した。その後、修飾したゲノムをM.カプリコルムレシピエント細胞に移植し、これにより、修飾された全ゲノムを含有している新しい細胞を作製した。
実施例5A
ドナーゲノムの宿主への移入およびゲノムの修飾
M.ミコイデスLC-YCpゲノムを、上記実施例1Aに記載したように、酵母株W303aに導入し、その中で増殖させた。
一つの例においては、III型制限酵素遺伝子を、URA3マーカーを含むカセットで置き換えた。続いてこれを、上記実施例4Cに記載したTREC法を使用して、5-フルオロオロチン酸(5-FOA)選択により除去した。図11に模式的に説明するこのプロセスのために、TRECノックアウトカセットを、以下の詳細を用いて上記実施例4Cに記載したように、PCR融合により作製した。最初に、COREカセット(GAL1遺伝子、SceI遺伝子、およびURA3マーカーをこの順序で含む)を作製した。
タンデム反復配列(TRS)断片もまた、PCRによって作製した。この断片には、III型制限酵素標的遺伝子座の上流に、M.ミコイデスLCゲノムの一部分に対する相同性を含めた。TRS断片と、標的領域の上流にあるゲノム中の対応する相同部分を、図11の中で大きな水平方向の矢印で示す。組換えによる上記カセットのポップアウトを容易にするために、相同組換えによりゲノムに上記カセットが組込まれた後にゲノム中にタンデム反復が存在するように、TRS断片を含めた。
COREカセットを、上記実施例4に記載したように、融合PCRによってTRS断片に融合させた。融合プライマーを、COREカセットを使用したPCRにおいて鋳型として使用し、別のPCRにおいてはTRS断片を鋳型として使用した。その後、産物を合わせて一つにし、これらの産物を連結させるためのプライマーレスPCRを行った。その後、得られた融合産物を、CORE-TRS融合産物に対する相同性と、標的領域に相同である50bp領域もまた含むさらなるプライマーを使用して増幅した。プライマーにはさらに、18bpのI-SceI認識部位を含めた。したがって、TRECノックアウトカセットには、以下の順序で、標的領域の5'部分に対する50bpの相同性、18bpのI-SceI認識部位、COREカセット(GAL1プロモーター、I-SceIエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、およびURA3マーカーから、この順序で構成されている)、TRS反復断片、(標的遺伝子座のすぐ上流にあるゲノムの配列に対して相同である部分;図10Aにおいて大きな水平方向の矢印で示した)、および標的領域の3'部分に対する50bpの相同性を含めた。
酵母W303a宿主中でのM.ミコイデスLC-YCpドナーゲノムの修飾のために、TRECノックアウトカセットにより、上記実施例4C(ii)に記載したように、酢酸リチウムを用いる組込み形質転換を使用して宿主細胞を形質転換した。TRECノックアウトカセットによるタイプR IIIのORF(標的遺伝子座)の置き換え(標的部位に対するカセットの末端にある50bpの相同領域による)を選択するために、細胞を増殖させ、個々のURA+形質転換体を選択し、分析した。このプロセスにより、III型制限酵素遺伝子がカセットで置き換えられたゲノム(ΔtypeIIIres::URA3として図11の中に示す)を得た。
その後、細胞を、SG-His培地を含有しているプレート上で増殖させた。したがって、ガラクトースが唯一の炭素源であった。この工程により、18bpのI-SceI部位(図11中のアスタリスク)の切断を促進するために、GAL1プロモーターの制御下にあるI-SceIエンドヌクレアーゼの発現を誘導して、二本鎖の断裂を作製した。その後、この二本鎖の断裂は、二本鎖の断裂により促進されるタンデム反復配列間での相同組換え(水平方向の大きな矢印)を促進すると考えられる。
この組換え事象を選択するために、細胞を、URA3マーカーを喪失した(これによりおそらくTRECカセットを喪失した)細胞を選択するためのSD-HIS 5-FOA培地上で増殖させた。このプロセスは、typeIIIres遺伝子のシームレスな欠失を持つゲノム(ΔtypeIIIRとして図11中に示す)を選択するために行った。
別の例においては、ノックアウトカセットは3工程で構築することができる。最初に、2.3kbのDNA断片(ノックアウトコア(Knock-Out Core(KOC)と呼ぶ)を、プライマーRCO293
およびプライマーRCO294
を使用してPCRにより得た。得られたPCR産物は、5'末端から初めて、5'標的部位の上流に対して相同である50bpのセグメント(プライマーRCO293の中で太字体で強調した)、18bpのI-SceI認識部位、GAL1プロモーター、I-SceIホーミングエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、およびURA3マーカーを含む。2番目に、標的部位の上流の400bpを、プライマーRCO295
およびプライマーRCO296
によって、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを鋳型として使用して増幅した。PCR産物(タンデム反復配列(TRS)と呼ぶ)は、3'標的部位の下流に対して相同である50bpのセグメント(プライマーRCO296の中で太字体で協調した)を含む。3番目に、互いに50bpが重複している(プライマーRCO294およびRCO295の中に下線をつけた)2つのPCR産物(KOCとTRS)を、PCRによる融合方法により互いに連結させた。融合産物であるノックアウトカセットを、Qiagenによるゲル抽出キットによりゲル精製し、プライマーRCO293およびプライマーRCO296により再度増幅した。その後、最終的な2.7kbの断片で、M.ミコイデスLCゲノム(Benders et al., Science, submitted(2009))を持つ酵母303a株を、記載されているような酢酸リチウム(LioAc)法(Gietz et al., Nucleic Acids Res 20, 1425(1992年3月25日))を使用して形質転換し、ウラシル栄養要求性およびヒスチジン栄養要求性の両方について選択した。全DNAを、記載されているとおりに(Kouprina and Larionov, Nat Protoc 3, 371(2008))形質転換体から調製した。III型RE遺伝子座によるノックアウトカセットの置き換えを、標的部位の上流に位置するプライマー5
およびノックアウトカセットの内部に位置するプライマー6
を使用したPCRスクリーニングにより確認した。III型REのマークレス(mark-less)欠失を作製するために、PCRポジティブ株を、唯一の炭素源としてガラクトースを含有する培地中で増殖させ、続いて、実施例4に記載したように5-FOA対抗選択を行った。上記に記載した全てのPCR増幅実験は、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して行った。移植体から精製したM.ミコイデスLCゲノムを、プライマー5と、標的部位の下流に位置するプライマー7
を使用したPCRにより増幅した。PCR産物をキット(Qiagen)により精製し、プライマー5とプライマー7を使用した配列決定に使用した。
したがって、酵母宿主細胞中で2種類の修飾されたM.ミコイデスLCゲノムが得られるように、修飾方法を設計した。第1の修飾されたゲノムは、TRECカセットの挿入後、I-SecIエンドヌクレアーゼでの消化および5-FOA上での選択により促進される組換えの前に得られたものであった。この第1のゲノムは、III型制限酵素遺伝子座で野生型遺伝子が置き換えられている(ΔtypeIIIres::URA)URA3を含む(TREC)カセットを含んでいた。第2のゲノムは、上記カセットの除去後に得られる最終的な産物であり、これは、III型制限酵素遺伝子のシームレスな欠失(ΔtypeIIIres)を含んでいた。
この研究で生じた修飾されたゲノム(ΔtypeIIIres::URA、ΔtypeIIIres)が正確なサイズであることを明らかにするために、単離したゲノムDNAを以下のようにCHEFゲル上で泳動して、それらのサイズを、未修飾のM.ミコイデスLCゲノムのサイズに対して比較した。このプロセスのために、酵母のプラグを洗浄し、50ユニットのAsiSI、RsrII、およびFseI制限酵素(これらは、上記のように、酵母ゲノムDNAを特異的に切断する)で一晩消化した。その後、このDNAプラグを、消化した酵母ゲノムDNA断片を泳動することによりドナーDNAを精製するために、1%のTAEアガロースゲル上に充填した。プラグをウェルから取り出し、残っているゲノムDNAをPspXI制限酵素(これは、M.ミコイデスLCのゲノムDNAを直線化する)で消化した。この消化の後、全てのプラグを洗浄し、パルスフィールドゲル上に充填した。ゲルをSYBR Gold(1:10,000に希釈した)で染色した。PFGEパターンを、GE Typhoon 9410イメージャーでゲルをスキャンした後で観察した(データは示さず)。
ΔtypeIIIres::URAで修飾したゲノムを持つように設計した試料、およびΔtypeIIIresで修飾したゲノムを持つように設計した試料は、未修飾のゲノムと匹敵するサイズのゲノムを正確に示した。このプロセスはさらに、別のクローン(Δ500kb)がこの研究の過程の間に生じたことを明らかにした。このクローンから回収したバンドのサイズに基づくと、そのゲノムは500kbの欠失を含んでいた。このクローンを、後の研究において対照として使用した。なぜなら、これはおそらく、多くの必須の遺伝子を欠いていたが、YCp(酵母セントロメアプラスミド)エレメントとtetM選択マーカーを留めていたからである。
III型制限酵素欠失の作製の別の例を図19に説明する。YCpMmyc1.1を、必須ではないIII型制限エンドヌクレアーゼ遺伝子中にシームレスな欠失を作製することにより、酵母の中で変更した。簡単に説明すると、YCpMmyc1.1酵母クローンを、最初に、URA3マーカーと、GAL1プロモーターの制御下にSCEIエンドヌクレアーゼ遺伝子を含むカセットで形質転換した。上記カセットのIII型遺伝子への挿入を、選択基準として使用した。5つのクローンのうちの4つはインタクトなゲノムを含んでおり、一つは大きな欠失を持つゲノムを含んでいた(YCpMmyc1.1-Δ500kb)(図11)。URA3カセットを、上記カセットの一方の末端付近にあるI-SceI認識部位での切断により除去した(図19)。5-フルオロオロチン酸(5-FOA)での対抗選択により、URA3カセットを喪失したクローンを得た。これにより、2つのM.ミコイデスYCpゲノムを得た。一方は、URA3カセットを含んでおり、他方は、III型制限酵素遺伝子のシームレスな欠失を含んでいた(図19)。ゲノムへの変化をPCRによって確認した(データは示さず)。
実施例5B
修飾したゲノムのドナー細胞への移植
これらのM.ミコイデスLCの修飾したゲノム(Δ500kbの対照を含む)と未修飾のM.ミコイデスLCゲノムのそれぞれを、上記実施例3に記載した方法を使用してM.カプリコルムレシピエント細胞に移植した。移植は、数字「3」で示した上記実施例3に記載した、図8に説明する第3のプロトコールを使用して行った。実施例3に記載したように、この方法には、メチル化工程、除タンパク質工程(プロテイナーゼKでの処理)、および移植反応の前の融解工程を含めた。移植は、野生型レシピエント細胞への移植である。このプロセスのために、アガロースプラグを、実施例3A(i)に記載したように調製し、制限酵素カクテルとゲル電気泳動の両方を用いて、上記実施例5Aに記載したように清浄した(実施例3A(i)もまた参照のこと)。移植は、実施例3A(ii)および3A(iii)に記載したように、5%のPEGの存在下で、細胞を含まないM.ミコイデスLC抽出物を使用したメチル化とプロテイナーゼKでの消化を用いて行った。ゲノムを、野生型(RE欠失ではない)M.カプリコルム細胞に、上記実施例3に記載したように移植した。移植の成功は、テトラサイクリンを含有しているSP4培地上での、37℃での青色コロニーの増殖を選択することにより評価した。結果を以下の表17に示す。
(表17)修飾したM.ミコイデスLCゲノムの、野生型M.カプリコルムレシピエント細胞への移植
移植体の数は、少なくとも3回の研究の平均を示す。報告する誤差は平均偏差である
表17に示すように、2つの意図するように修飾したゲノム(ΔtypeIIIres::URA3およびΔtypeIIIres)の移植により、未修飾のM.ミコイデスLCゲノム(プラグ一つあたり平均28個のコロニー)を移植した場合に観察された数に匹敵する、類似する数のテトラサイクリン耐性である青色コロニー(それぞれ、プラグ一つあたり平均28個および33個のコロニー)が生じた。予想したとおり、500kbの欠失(およびおそらく、必須のマイコプラズマ遺伝子を欠失しているが、YCpエレメントとtetMを留めている)を含有している対照クローンのM.カプリコルムレシピエント細胞への移植によっては、コロニーは得られなかった。
移植された未修飾のゲノムを含む選択したコロニーの配列を確認するために、これらのゲノム中のIII型遺伝子座を配列決定した。配列決定の結果は、予想した修飾が、いずれの修飾した株(ΔtypeIIIres::URA3およびΔtypeIIIres)の中にも存在することを明らかにした。例えば、ΔtypeIIIresゲノム中のtypeIIIres遺伝子の欠失を、野生型ゲノムにおいてtypeIIIres遺伝子に隣接しており、天然のtypeIIIres遺伝子の下流のDNAである、typeIIImod遺伝子の連結を含む核酸の配列を用いて確認し(図11を参照のこと)、これらの細胞中でのその遺伝子のシームレスな欠失を明らかにした。
回収したコロニーの遺伝子型がM.ミコイデスLCであることを確認するために、選択した青色コロニー由来のゲノムDNAを、サザンブロットにより、IS1296エレメントをプローブとして使用して分析した。IS1296挿入配列のコピーを、M.ミコイデスLC(ドナー)ゲノム全体に分散させるが、M.カプリコルム(レシピエント)ゲノム由来のものは存在しない。修飾したゲノム中のIII型制限酵素配列の完全な喪失を確認するために、ブロットを、M.ミコイデスLC typeIIIres遺伝子配列を含むプローブでさらにプローブした。サザンブロットを以下のように行った。
マイコプラズマの全DNAを、修飾したM.ミコイデスゲノムまたは未修飾のM.ミコイデスゲノムを移植したM.カプリコルムレシピエント細胞の10mlの培養物から抽出した。天然のM.ミコイデスLCクローン1.1ドナー細胞由来のゲノムDNAと、M.カプリコルムレシピエント細胞由来のゲノムDNAを、対照として使用した。抽出は、WizardゲノムDNA精製キット(Promega)を使用して行った。サザンブロットハイブリダイゼーションのために、1.5μgのDNAを、HindIIIまたはEcoRVのいずれかで消化し、得られた試料を、1%のアガロースゲル上での電気泳動により分離した。ゲル由来のDNA断片を、正電荷を持つナイロンメンブレン(Nytran Super Charge, Schleicher and Schuell)上にアルカリ移動(alkali transfer)により移動させた。20ng/mlのジゴキシゲニン標識DNAプローブ(IS1296挿入配列)およびtypeIIIres遺伝子配列を、メンブレンにハイブリダイズさせて、M.ミコイデスの遺伝子型とドナーゲノムの修飾をそれぞれ確認した。
メンブレンを、アルカリホスファターゼに結合させた抗ジゴキシゲニン抗体のFab断片とともにインキュベーションした。その後、ハイブリダイゼーションを、蛍光基質HNPP(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸-2'-フェニルアニリドホスフェート)(Roche Molecular Bio Chemicals)を用いて検出した。化学発光を、画像を撮影するように設計された、カメラとQuantity Oneソフトウェアを用いてUV下で検出した(Bio-Rad Laboratories, Inc.)。
選択した移植したコロニーはそれぞれ、IS1296プローブでプローブしたブロットにおいて同じパターン(8本のバンド)を生じた(データは示さず)。予想したとおり、IS1296パターンは、レシピエント細胞(r)由来の試料を含有しているレーンにおいては検出されなかった。この結果は、回収したコロニーが、実際に、M.ミコイデスLC遺伝子型であることを強く示唆している。さらに、M.ミコイデスのドナーゲノム由来の対照試料を含有しているレーンは、typeIIIresプローブにより認識されるバンドを含んでいた。しかし、このバンドは、移植修飾ゲノム由来の試料を含有しているレーンにおいては検出されなかった。
これらの結果は、酵母宿主細胞中で修飾したドナーゲノムを、ドナーとは異なる種のレシピエント細胞にうまく移植できたことを示していた。これらの結果はさらに、修飾したゲノムがいずれも、意図した修飾(TypeIIIres遺伝子の喪失)を含むことを示している。したがって、本提供の方法を、研究室または自然界のいずれにもこれまでは存在していなかった合成のドナーであるM.ミコイデスLCゲノムが移植された2つの合成のレシピエント細胞を作製するためにうまく使用できた。これらの結果は、酵母中での細菌の全ゲノムの遺伝子操作の第1の例と、新規の細菌を得るためのレシピエント細胞へのそのインストールを示す。
上記から、当業者は、開示する態様の本質的な特徴を確認することができ、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、それを様々な用途および条件に適応し、そして本発明のシステムおよび方法をそれらの最も広い範囲に利用するために変更および改変することができる。上記の特異的な態様は、単なる説明と解釈され、どのような形であってもその適用範囲を限定するようには解釈されない。上記で引用した全ての出願、特許、刊行物(参照マニュアルを含む)、および図面の開示全体が、それらの全体が引用により本明細書中に組み入れられる。