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JP6473992B2 - モータ制御装置及び発電機制御装置 - Google Patents
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Description

本発明は、モータ制御装置及び発電機制御装置に関する。
従来から、3相モータの駆動方法としては、種々の方法が知られている。3相モータの駆動方法の一例は、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)である。速度制御系で構成された直接トルク制御の一例では、図18に示すようなモータ制御部903が用いられる。モータ制御部903では、u,w/α,β変換部906によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。モータ磁束推定部908によって、モータ磁束が推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα,Ψβと記載する。速度・位置演算部962によって、推定磁束Ψsから、3相モータの速度及びモータ磁束の位相が推定される(推定速度ωr及び推定磁束Ψsの位相θsが求められる)。トルク推定部963によって、推定磁束Ψs及び軸電流iα,iβから、モータトルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。速度制御部964によって、現在の推定速度ωrが指令速度ωref *に一致するように、指令トルクTe *が生成される。振幅特定部961によって、指令トルクTe *から指令振幅|Ψs *|が生成される。トルク偏差演算部911によって、推定トルクTeと指令トルクTe *との偏差(トルク偏差)ΔTが求められる。指令磁束特定部912によって、指令振幅|Ψs *|、トルク偏差ΔT及び位相θsから、指令磁束ベクトルΨs *が求められる。指令磁束ベクトルΨs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα *、β軸指令磁束Ψβ *と記載する。α軸磁束偏差演算部913aによって、α軸指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαとの偏差(磁束偏差)ΔΨαが求められる。β軸磁束偏差演算部913bによって、β軸指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβとの偏差(磁束偏差)ΔΨβが求められる。電圧指令演算部907によって、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、軸電圧vα *,vβ *が求められる。α,β/u,v,w変換部909によって、軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に対応する電圧ベクトルが3相モータに印加されるように、インバータのスイッチングがなされる。速度制御系の構成は、冷凍空調装置における圧縮機の駆動の際等に用いられる。
直接トルク制御によれば、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを省略できる。
特許文献1、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3には、直接トルク制御を用いたモータ制御装置に関連する技術が記載されている。
特許第4972135号明細書
井上征則、森本茂雄、真田雅之、武田洋次、「直接トルク制御による埋込磁石同期モータのトルクリプル低減と弱め磁束制御(Torque ripple reduction, and flux-weakening control for interior permanent magnet synchronous motor based on direct torque control)」,平成18年電気学会全国大会講演論文集,電気学会,平成18年3月,第4分冊,4−106,p.166−167 松山哲也・吉本淳貴・富樫仁夫・井上征則・森本茂雄:「直接トルク制御を用いたモータドライブシステムにおける離散化誤差補償方法」,電学研資, MD−14−086/RM−14−049/VT−14−021,pp.75−79 (2014) 井上征則、森本茂雄、真田雅之、「永久磁石同期モータを駆動する直接トルク制御のためのトルクと磁束の指令値作成法とトルク制御器のワインドアップ対策(A reference value calculation scheme for torque and flux and an anti-windup implementation of torque controller for direct torque control of permanent magnet synchronous motor)」電気学会論文誌D,130巻,6号,p.777−784(2010年)
従来のモータ制御装置には、設計の煩雑さの点で改善の余地がある。また、制御性能の点でも改善の余地がある。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。
すなわち、本開示は、
3相モータのモータ磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相モータに電圧ベクトルを印加するモータ制御装置であって、
指令速度を用いて前記モータ磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する振幅特定部と、
前記位相特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、前記振幅特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、
を備えたモータ制御装置を提供する。
上記のモータ制御装置によれば、設計の煩雑さを緩和することが可能となる。また、制御性能の低下が防止され得る。
モータ制御装置のブロック図 dq座標系及びαβ座標系を説明するための図 第1の実施形態のモータ制御部のブロック図 第1の実施形態の位相特定部のブロック図 インバータの構成図 変形例1−1のモータ制御部のブロック図 変形例1−1のトルク推定部のブロック図 変形例1−1の位相特定部のブロック図 変形例1−2Aのモータ制御部のブロック図 変形例1−2Bのモータ制御部のブロック図 変形例1−2Aの振幅修正量生成部のブロック図 変形例1−2Bの振幅修正量生成部のブロック図 変形例1−3のモータ制御部のブロック図 第2の実施形態のモータ制御部のブロック図 第2の実施形態の位相特定部のブロック図 変形例2−1Aのモータ制御部のブロック図 変形例2−1Bのモータ制御部のブロック図 変形例2−1Cのモータ制御部のブロック図 変形例2−1Dのモータ制御部のブロック図 変形例2−1Aの位相特定部のブロック図 変形例2−1Bの位相特定部のブロック図 変形例2−1Cの位相特定部のブロック図 変形例2−1Dの位相特定部のブロック図 変形例2−2のモータ制御部のブロック図 変形例2−3のモータ制御部のブロック図 従来のモータ制御部のブロック図
本発明者らの検討によると、従来のモータ制御装置では、速度制御部の存在がモータ制御装置の設計を煩雑にしている。また、速度制御部の存在は、制御性能を低下させていた。制御性能の低下は、3相モータの速度が低い場合には顕在化する。本発明者らは、このような事情に鑑み、速度制御部を必須としないモータ制御装置を提供することを検討した。
すなわち、本開示の第1態様は、
3相モータのモータ磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相モータに電圧ベクトルを印加するモータ制御装置であって、
指令速度を用いて前記モータ磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する振幅特定部と、
前記位相特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、前記振幅特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、
を備えたモータ制御装置を提供する。
第1態様によれば、速度制御部を必須としないモータ制御装置を容易に構成できる。従って、モータ制御装置の設計を煩雑さを緩和できる。また、制御性能の低下が防止され得る。
本開示の第2態様は、第1態様に加え、前記移動量を積算することによって、前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、モータ制御装置を提供する。
第2態様によれば、指令磁束ベクトルの位相を容易に特定することができる。また、第2態様によれば、フィードフォーワード制御によって指令磁束ベクトルの位相を特定することができる。このことは、モータ制御装置の演算負荷の軽減に繋がる。
本開示の第3態様は、第1態様に加え、
前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流と、前記3相モータに印加されるべき前記電圧ベクトルを前記2相座標によって表したものである軸電圧と、を用いて前記3相モータに印加されている前記モータ磁束を推定するモータ磁束推定部と、
推定された前記モータ磁束を用いて、前記モータ磁束の前記位相を推定する位相推定部と、をさらに備え、
前記位相特定部は、前記位相推定部で推定された前記モータ磁束の前記位相と、前記移動量と、を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、モータ制御装置を提供する。
第3態様によれば、指令磁束ベクトルの位相を容易に特定することができる。また、第3態様では、指令磁束ベクトルの位相の特定に推定されたモータ磁束が用いられ、その推定には軸電流が用いられる。このことは、指令磁束ベクトルの位相の特定にモータ電流の情報が反映されることを意味し、指令磁束ベクトルの位相を適切に設定することに寄与し、3相モータの駆動を安定させることに役立つ。
本開示の第4態様は、第1から第3態様のいずれか1つに加え、
前記位相特定部は、(i)推定されたモータトルクの振動成分を用いて前記指令速度を補正し、補正された前記指令速度を用いて前記移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、又は、(ii)前記指令速度を用いて前記移動量を特定し、特定された前記移動量を推定されたモータトルクの振動成分を用いて補正し、補正された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、モータ制御装置を提供する。
第4態様によれば、指令磁束ベクトルの位相を特定する際にモータトルクの振動成分の情報が反映される。このことは、3相モータの駆動を安定させることに役立つ。
本開示の第5態様は、第1から第4態様のいずれか1つに加え、
前記振幅特定部は、
前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
(a)推定された前記モータ磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第1内積、又は、(b)前記3相モータの永久磁石の推定された磁石磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第2内積、を用いたフィードバック制御を実行することによって、前記仮振幅を補正して前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として補正振幅を特定する補正部と、を有する、モータ制御装置を提供する。
第5態様における第1内積及び第2内積は、指令磁束ベクトルの振幅(仮振幅)を補正をするための有効な指標である。第5態様に係るモータ制御装置は、そのような第1内積又は第2内積を用いて指令磁束ベクトルの振幅を補正する。このような補正によれば、目的に応じた制御を容易に実現できる。
本開示の第6態様は、第1から第4態様のいずれか1つに加え、
前記振幅特定部は、
前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として前記仮振幅よりも小さい補償用振幅を特定する離散化誤差補償部であって、前記3相モータの速度が高くなればなるほど前記仮振幅と前記補償用振幅との差が大きくなるように前記補償用振幅を特定する離散化誤差補償部と、を有する、モータ制御装置を提供する。
離散系でモータ制御装置を構成する場合、3相モータに実際に印加される指令磁束ベクトルの振幅は、指令磁束ベクトルの振幅よりも大きくなる。つまり、離散系でモータ制御装置を構成する場合、いわゆる離散化誤差が生じる。離散化誤差は、3相モータの速度が高くなればなるほど大きくなる。第6態様のモータ制御装置では、離散化誤差を考慮して、実際に3相モータに印加されるべき磁束ベクトルの振幅(仮振幅)よりも小さな振幅(補償用振幅)が指令磁束特定部に与えられる。結果として、離散化誤差が緩和される。
本開示の第7態様は、第1から第4態様のいずれか1つに加え、
前記振幅特定部は、
前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
(a)推定された前記モータ磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第1内積、又は、(b)前記3相モータの永久磁石の推定された磁石磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第2内積、を用いたフィードバック制御を実行することによって、前記仮振幅を補正して補正振幅を特定する補正部と、
前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として前記補正振幅よりも小さい補償用振幅を特定する離散化誤差補償部であって、前記3相モータの速度が高くなればなるほど前記補正振幅と前記補償用振幅との差が大きくなるように、前記補償用振幅を特定する離散化誤差補償部と、を有する、モータ制御装置を提供する。
第7態様によれば、第5態様の効果と第6態様の効果の両方を得ることができる。
本開示の第8態様は、
3相発電機の発電機磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、コンバータを用いて前記3相発電機に電圧ベクトルを印加する発電機制御装置であって、
指令速度を用いて前記発電機磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する振幅特定部と、
前記位相特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、前記振幅特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、
を備えた発電機制御装置を提供する。
本開示の第9態様は、
3相モータのモータ磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相モータに電圧ベクトルを印加するモータ制御方法であって、
指令速度を用いて前記モータ磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定するステップと、
前記指令磁束ベクトルの振幅を特定するステップと、
特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定するステップと、
を備えたモータ制御方法を提供する。
本開示の第10態様は、
3相発電機の発電機磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、コンバータを用いて前記3相発電機に電圧ベクトルを印加する発電機制御方法であって、
指令速度を用いて前記発電機磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定するステップと、
前記指令磁束ベクトルの振幅を特定するステップと、
特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定するステップと、
を備えた発電機制御方法を提供する。
第8〜第10態様によれば、第1の態様の効果と同様の効果が得られる。
モータ制御装置に関する技術は、発電機制御装置に適用できる。発電機制御装置に関する技術は、モータ制御装置に適用できる。両方の場合において、制御の態様はよく似ているためである。モータと発電機とでは、モータ/発電機を流れる電流の位相が逆となる等の相違があるが、当業者であればこれらの相違を考慮しつつ両制御装置を構成できる。
モータ制御装置及び発電機制御装置に関する技術は、モータ制御方法及び発電機制御方法に適用できる。モータ制御方法及び発電機制御方法に関する技術は、モータ制御装置及び発電機制御装置に適用できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、モータ制御装置100は、第1電流センサ105a、第2電流センサ105b、モータ制御部103及びデューティ生成部104を含んでいる。モータ制御装置100は、インバータ101及び3相モータ102に接続される。
モータ制御部103は、3相モータ102の位置センサレス運転を実行するように構成されている。位置センサレス運転は、エンコーダ、レゾルバ等の位置センサを用いない運転である。モータ磁束は、3相モータ102に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。また、特に断りがない場合は、「速度」は、3相モータ102の回転子の角速度(単位:rad/s)を表す。
モータ制御装置100は、DSP(Digital Signal Processor)又はマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供される要素を含んでいてもよい。DSP又はマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路及び通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、モータ制御装置100は、論理回路によって構成された要素を含んでいてもよい。
(モータ制御装置100を用いた制御の概要)
図1を参照しながら、モータ制御装置100を用いた制御の概要を説明する。電流センサ105a,105bによって、相電流(モータ電流)iu,iwが検出される。モータ制御部103によって、指令速度ωref *及び相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *が生成される。指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧及びW相電圧に対応する。デューティ生成部104によって、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。インバータ101によって、デューティDu,Dv,Dwから、3相モータ102に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令速度ωref *は、上位制御装置からモータ制御装置100に与えられる。指令速度ωref *は、3相モータ102の速度が追従するべき速度を表す。このような制御により、3相モータ102は、速度が指令速度ωref *に追従するように制御される。
以下では、α−β座標(2相座標)に基づいてモータ制御装置100を説明することがある。図2に、α−β座標、U−V−W座標及びd−q座標を示す。α−β座標は、固定座標である。α−β座標は、静止座標とも交流座標とも称される。α軸は、U軸と同一方向に延びる軸として設定される。また、d軸はロータの回転子と一致する軸として定義されており、その位置をθで定義している。また、d軸から90度進んだ位置をq軸として定義している。
(モータ制御部103)
図3に示すように、モータ制御部103は、u,w/α,β変換部(3相2相座標変換部)106、電圧指令演算部107、モータ磁束推定部108、位相特定部111、振幅特定部115、指令磁束特定部112、α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b及びα,β/u,v,w変換部(2相3相座標変換部)109を含んでいる。
モータ制御部103では、u,w/α,β変換部106によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、3相モータ102のα−β座標上におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβをまとめて記載したものである。モータ磁束推定部108によって、軸電流iα,iβ及び軸電圧(指令軸電圧)vα *,vβ *から、モータ磁束が推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分及びβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα,Ψβと記載する。位相特定部111によって、指令速度ωref *から指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *が特定される。振幅特定部115によって、指令磁束ベクトルΨs *の振幅|Ψs *|(指令振幅|Ψs *|)が生成される。指令磁束特定部112によって、振幅|Ψs *|と位相θs *から、指令磁束ベクトルΨs *が求められる。指令磁束ベクトルΨs *のα軸成分及びβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα *、β軸指令磁束Ψβ *と記載する。α軸磁束偏差演算部113aによって、α軸指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαとの偏差(磁束偏差)ΔΨαが求められる。β軸磁束偏差演算部113bによって、β軸指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβとの偏差(磁束偏差)ΔΨβが求められる。電圧指令演算部107によって、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、軸電圧vα *,vβ *が求められる。軸電圧vα *,vβ *は、3相モータ102のα−β座標上におけるα軸指令電圧vα *及びβ軸指令電圧vβ *をまとめて記載したものである。α,β/u,v,w変換部109によって、軸電圧vα *,vβ *が、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換される。
このような制御により、3相モータ102の速度が指令速度ωref *に追従し、モータ磁束が指令磁束ベクトルΨs *に追従するように、インバータ101を介して3相モータ102に電圧ベクトルが印加される。
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に3相モータ102を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。軸電圧vα *,vβ *、推定磁束Ψs、指令速度ωref *、指令磁束ベクトルΨs *、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *等も同様である。
本実施形態の制御に関する各構成要素について、以下で説明する。
(第1電流センサ105a、第2電流センサ105b)
図1に示す第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bとして、公知の電流センサを用いることができる。本実施形態では、第1電流センサ105aは、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ105bは、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ105a及び第2電流センサ105bは、u相及びw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。
(u,w/α,β変換部106)
図3に示すu,w/α,β変換部106は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的に、u,w/α,β変換部106は、式(1)及び(2)により、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
(モータ磁束推定部108)
モータ磁束推定部108は、軸電流iα,iβ及び軸電圧vα *,vβ *から、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)を求める。具体的に、モータ磁束推定部108は、式(3)及び(4)を用いて、推定磁束Ψα,Ψβを求める。式(3)及び(4)におけるΨα|t=0、Ψβ|t=0は、それぞれ推定磁束Ψα,Ψβの初期値である。式(3)及び(4)におけるRは、3相モータ102の巻線抵抗である。モータ磁束推定部108がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合は、式(3)及び(4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成され得る。この場合の典型例では、1制御周期(1タイムステップ)前における推定磁束Ψα,Ψβに、現在の制御周期に由来する値を加減算する。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
(位相特定部111)
位相特定部111は、指令速度ωref *から指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。具体的には、図4に示すように、位相特定部111は、積分器114を有しており、指令速度ωref *を積分して指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を求める。本実施形態では、位相特定部111はディジタル制御装置に組み込まれており、積分器114は離散系で構成されている。従って、本実施形態の位相特定部111は、位相特定部111に入力された指令速度ωref *を用いてモータ磁束Ψsの位相θが移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された移動量を用いて指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定すると言える。具体的に、位相特定部111は、移動量を積算することによって指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定すると言える。ディジタル制御装置としては、DSP、マイクロコンピュータが例示される。
(振幅特定部115)
振幅特定部115は、指令磁束ベクトルΨs *の振幅|Ψs *|を特定する。具体的には、振幅特定部115は、式(5)に示すように、磁束パラメータΨaに任意の磁束ΔΨを加算して、振幅|Ψs *|を求める。磁束パラメータΨaは、3相モータ102における永久磁石が作る磁石磁束の振幅として与えられた定数(モータパラメータ)である。磁束ΔΨは、正の値、負の値又はゼロである。磁束ΔΨは、定数であってもよく、変数であってもよい。
Figure 0006473992
通常、モータ制御部103は、制御の目的に応じて構成される。指令磁束ベクトルΨs *の振幅|Ψs *|には、制御の目的に応じた最適値が存在する。従って、磁束ΔΨは、振幅|Ψs *|が最適値付近の値となるように設定されることが望ましい。
振幅|Ψs *|を特定するための考え方の一例を以下に記載する。従来のモータ制御部903(図18)においては、最小の電流で最大のトルクを発生できる最大トルク/電流制御(MTPA)が行われることがある。MTPAを実行する場合に振幅特定部961において生成される振幅|Ψs *|は、以下の考え方に基づいて設定される。3相モータとして磁気的突極性を有さないモータを用いる場合、モータ磁束の振幅|Ψs|及びモータトルクTは、式(6A)及び(6B)で概算される。|Ψa|は、磁束パラメータである。Lは、3相モータの電機子巻線の一相当たりのインダクタンスである。iqはq軸電流である。Pnは、モータの極対数である。式(6A)及び(6B)から、式(6C)が導かれる。Tを図18の指令トルクTe *に、|Ψs|を振幅|Ψs *|にそれぞれ置き換えることで、指令トルクTe *と振幅|Ψs *|との関係式が導かれる。この関係式を用いれば、指令トルクTe *から振幅|Ψs *|を求めることができる。当然ながら、変換テーブルを作成することもできる。3相モータとして磁気的突極性を有するモータを用いる場合、モータ磁束の振幅|Ψs|及びモータトルクTは、式(6D)及び(6E)で概算される。Ldは、d軸インダクタンスである。Lqは、q軸インダクタンスである。idはd軸電流である。d軸電流id及びq軸電流iqは、式(6F)の関係を概ね満たす。式(6D)、(6E)及び(6F)によって、変数id,iqを用いることなくモータトルクTからモータ磁束の振幅|Ψs|を特定可能な変換テーブルが得られる。Tを図18の指令トルクTe *に、|Ψs|を振幅|Ψs *|にそれぞれ置き換えることで、指令トルクTe *から振幅|Ψs *|を特定することができる。本実施形態においては、振幅特定部115は指令トルクTe *を用いない。従って、指令トルクTe *を用いたフィードバック制御によるMTPAを行うことはできない。しかしながら、厳密な意味ではMTPAとは言えないまでも、MTPAに準じた制御を行い3相モータ102を効率的に動作させることは可能である。例えば、3相モータ102の速度に対してモータトルクが一意に定まる等、運転ポイントが分かっている場合がある。詳細は省略するが、このような場合には、3相モータ102の速度と、MTPAを実現するための振幅|Ψs *|との関係も概ね分かっているということになる。このため、振幅特定部115として、指令速度ωref *から振幅|Ψs *|を特定する近似式又はルックアップテーブルを用いることができる。また、3相モータ102の速度とモータトルクとの関係を事前の測定などを通じて把握することもできる。このようにすれば、同様の近似式又はルックアップテーブルを設けることができる。また、上述のように運転ポイントが分かっている場合等には、振幅|Ψs *|を定数としても、ある程度高効率に3相モータ102を動作させることは可能である。なお、MTPAに関しては、公知の文献『武田洋次、森本茂雄、松井信行、本田幸夫、「埋込磁石同期モータの設計と制御」、株式会社オーム社、2001年10月25日発行』、等が参考になる。
Figure 0006473992
振幅|Ψs *|を特定するための考え方の別の一例を以下に記載する。インバータが出力できる電圧には上限がある。このため、インバータから出力される電圧が所定値以下の範囲で制御されるようにモータ制御部を動作させるべき場合がある。この場合には、振幅特定部を、式(7)を用いて振幅|Ψs *|を定めるように構成することができる。つまり、振幅特定部を、弱め界磁制御用の振幅|Ψs *|を特定するものとすることができる。なお、式(7)におけるVomは、弱め界磁制御において3相モータ102に印加される電圧(電圧ベクトルの振幅)の上限値である。ωは、3相モータ102の回転子の速度(d軸の電気角速度)である。本実施形態においては、振幅特定部115は3相モータ102の回転子の速度ωを用いない。従って、速度ωを用いたフィードバック制御による弱め界磁制御を行うことはできない。しかしながら、式(7)の速度ωに代えて指令速度ωref *を用いて、フィードフォーワード制御による弱め界磁制御を行うことはできる。このようなフィードフォワード制御を行う場合、振幅特定部115として、指令速度ωref *から振幅|Ψs *|を求める演算子を用いたり、指令速度ωref *から振幅|Ψs *|を特定するルックアップテーブルを用いたりすることができる。
Figure 0006473992
(指令磁束特定部112)
指令磁束特定部112は、振幅|Ψs *|及び位相θs *から、指令磁束ベクトルΨs *(指令磁束Ψα *,Ψβ *)を求める。具体的には、式(8)及び(9)を用いて、指令磁束Ψα *,Ψβ *を求める。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
(α軸磁束偏差演算部113a、β軸磁束偏差演算部113b)
α軸磁束偏差演算部113aは、指令磁束Ψα *と推定磁束Ψαを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨα:Ψα *−Ψα)を求める。β軸磁束偏差演算部113bは、指令磁束Ψβ *と推定磁束Ψβを取得し、これらの偏差(磁束偏差ΔΨβ:Ψβ *−Ψβ)を求める。磁束偏差演算部113a,113bとしては、公知の演算子を用いることができる。
(電圧指令演算部107)
電圧指令演算部107は、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβ及び軸電流iα,iβから、軸電圧vα *,vβ *を求める。具体的に、電圧指令演算部107は、式(10)を用いて、α軸指令電圧vα *を求める。また、電圧指令演算部107は、式(11)を用いて、β軸指令電圧vβ *を求める。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
(α,β/u,v,w変換部109)
α,β/u,v,w変換部109は、軸電圧vα *,vβ *を、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換する。具体的に、α,β/u,v,w変換部109は、式(12)により、軸電圧vα *,vβ *を指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *に変換して、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を出力する。
Figure 0006473992
(デューティ生成部104)
図1に示すデューティ生成部104は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施形態では、デューティ生成部104は、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形インバータに用いられる方法を用いることができる。例えば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu *,vv *,vw *を、直流電源118(図5)の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu */Vdcである。デューティDvは、2×vv */Vdcである。デューティDwは、2×vw */Vdcである。デューティ生成部104は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
(インバータ101)
本実施形態では、インバータ101はPWMインバータである。図5に示すように、インバータ101は、スイッチング素子119a,119b,119c,119d,119e,119f及び還流ダイオード120a,120b,120c,120d,120e,120fが対になった変換回路、ベースドライバ116、平滑コンデンサ117及び直流電源118を含む。直流電源118は、ダイオードブリッジ等によって整流された出力を表す。なお、本明細書では、変換回路及び平滑コンデンサ117を併せた構成をインバータと記載する。
インバータ101は、PWM制御によって3相モータ102に電圧ベクトルを印加する。具体的には、3相モータ102への給電は、スイッチング素子119a〜119fを介して、直流電源118から行われる。より具体的には、まず、デューティDu,Dv,Dwがベースドライバ116に入力される。次に、デューティDu,Dv,Dwがスイッチング素子119a〜119fを電気的に駆動するためのドライブ信号に変換される。次に、ドライブ信号に従って各スイッチング素子119a〜119fが動作する。
本実施形態では、インバータ101は、スイッチング素子119a〜119fを用いた3相スイッチング回路である。スイッチング素子119a〜119fとしては、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。
(3相モータ102)
図1に示す3相モータ102は、モータ制御装置100の制御対象である。3相モータ102には、インバータ101によって、電圧ベクトルが印加される。「3相モータ102に電圧ベクトルが印加される」とは、3相モータ102における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、3相モータ102が制御される。
本実施形態における3相モータ102は、同期モータである。詳細には、本実施形態における3相モータ102は、永久磁石同期モータである。3相モータ102は、SPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)であっても、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)であってもよい。SPMSMでは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが同じである。IPMSMは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する突極性(一般には、Lq>Ldの逆突極性)を有する。IPMSMは、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。このため、IPMSMの駆動効率は極めて高い。
本実施形態に係るモータ制御装置100は、速度制御部(図18の速度制御部964)を必須としない。従って、速度制御部に由来する設計の煩雑さを回避できる。また、速度制御部の存在による制御性能の低下も回避できる。
本実施形態では、位相特定部111は、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を容易に特定することができる。本実施形態では、位相特定部111は、指令速度ωref *を用いたフィードフォーワード制御によって位相θs *を特定する。フィードフォーワード制御によれば、フィードバック制御に比べて、演算負荷が軽減される。
(変形例1−1)
以下、変形例1−1のモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−1では、第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図6に示すように、変形例1−1のモータ制御部203は、位相特定部111に代えて位相特定部211を有している。また、モータ制御部203は、トルク推定部216を有している。
モータ制御部203では、トルク推定部216によって、推定磁束Ψα,Ψβと、軸電流iα,iβから、トルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。位相特定部211によって、指令速度ωref *と推定トルクTeとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *が特定される。
(トルク推定部216)
図7に示すように、トルク推定部216は、式(13)を用いて、推定トルクTeを求める。式(13)におけるPnは、3相モータ102の極対数である。
Figure 0006473992
(位相特定部211)
位相特定部211は、指令速度ωref *と推定トルクTeとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図8に示すように、位相特定部211は、ハイパスフィルタ261と、ゲイン乗算部262と、速度偏差演算部223と、速度偏差積分器214と、を有している。位相特定部211は、離散系で構成されている。
(ハイパスフィルタ261)
ハイパスフィルタ261は、推定トルクTeの振動成分(トルク振動成分)THのみを特定(抽出)する。
(ゲイン乗算部262)
ゲイン乗算部262は、トルク振動成分THにゲインK1を乗じて速度振動成分K1Hを特定する。
ハイパスフィルタ261及びゲイン乗算部262の動作は、式(14)によって表現される。gはカットオフ周波数であり、単位は[rad/s]である。sはラプラス演算子である。
Figure 0006473992
(速度偏差演算部223)
速度偏差演算部223は、指令速度ωref *と速度振動成分K1Hの速度偏差ωref *−K1Hを演算する。ωref *−K1Hは、補正された指令速度と考えることができる。
(速度偏差積分器214)
速度偏差積分器214は、速度偏差ωref *−K1Hを積分する。これにより、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を得る。変形例1−1の速度偏差積分器214は離散系で構成されている。従って、速度偏差積分器214は、速度偏差(補正された指令速度)ωref *−K1Hを用いてモータ磁束Ψsの位相θが移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された移動量を用いて(具体的には積算して)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定すると言える。
速度偏差演算部223及び速度偏差積分器214の動作は、式(15)によって表現される。
Figure 0006473992
変形例1−1では、トルク推定部216において、推定されたモータ磁束(推定磁束Ψs)と、軸電流iα,iβと、を用いてモータトルクを推定する(推定トルクTeを求める)。位相特定部211は、ハイパスフィルタ261によって、推定トルクTeから、モータトルクの振動成分(トルク振動成分)THを推定(特定)する。位相特定部211は、推定されたトルク振動成分THを用いて指令速度ωref *を補正し、補正された指令速度ωref *−K1Hを用いて移動量を特定し、特定された移動量を用いて(具体的には、積算して)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定している。変形例1−1によれば、3相モータ102の速度が指令速度ωref *から逸脱することを防止することができる。従って、モータ制御部203を用いれば、モータ制御部103を用いる場合よりも、3相モータ102を安定して駆動させることができる。
なお、位相特定部211に多少の変更を加えても変形例1−1の効果と同様の効果を得ることができる。例えば、ハイパスフィルタ261とゲイン乗算部262との間にトルク振動成分THに−1を乗ずる符号反転部を設けるとともに、速度偏差演算部223を加算部に置き換えてもよい。このような変更を加え、トルク振動成分THに代えて該振動成分に−1を乗じたもの(−TH)を用いても、同様の効果が得られる。
(変形例1−2A)
以下、変形例1−2Aのモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−2Aでは、変形例1−1と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図9Aに示すように、変形例1−2Aのモータ制御部303aは、振幅特定部115に代えて振幅特定部315aを有している。
(振幅特定部315a)
振幅特定部315aは、軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として補正振幅|Ψs **|を特定する。振幅特定部315aは、仮設定部330と、振幅修正量生成部317aと、加算部331とを有している。
(仮設定部330)
仮設定部330では、指令磁束ベクトルΨs *の仮振幅|Ψs *|が設定(特定)される。本実施形態では、仮設定部330に、予め仮振幅|Ψs *|が格納されている。仮振幅|Ψs *|は、先の実施形態で説明した振幅特定部115で特定される振幅|Ψs *|に対応する。本実施形態では、仮振幅|Ψs *|は、前述のMTPAに準じた制御の例に倣い、事前に指令速度ωref *と対応づけられている。ただし、変形例1−2Aでは、振幅修正量生成部317aを用いるので、仮振幅|Ψs *|を定数としても、高い精度でMTPAを実現することができる。例えば、仮振幅|Ψs *|を、磁束パラメータΨaとすることができる。
(振幅修正量生成部317a)
振幅修正量生成部317aは、軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、振幅修正量ΔΨを特定する。図10Aに示すように、振幅修正量生成部317aは、誤差パラメータ演算部321aと、誤差パラメータ偏差演算部322と、PI補償部323とを有している。
振幅修正量生成部317aは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する場合でも、一致する場合においても、同じ動作を実施する。具体的には、インダクタンス差がある場合において、インダクタンスLとして、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスとの間の値を用いることができる。また、磁気的突極性が大きくない場合は、L=Ldと取り扱っても差し支えがない。つまり、インダクタンスの値として、d軸インダクタンスの値、d軸インダクタンスよりも大きくq軸インダクタンスよりも小さい値、又はd軸インダクタンスよりも小さくq軸インダクタンスよりも大きい値を用いることができる。
特許文献1は、上記のようにインダクタンスLを設定する上で参考になる。特許文献1には、dm−qm座標系に関する技術が記載されている。dm−qm座標系は、埋込磁石構造の永久磁石同期モータ等の磁気的突極性を有するモータを、磁気的突極性を有していない永久磁石同期モータと同様に扱うことを可能とする。dm−qm座標系を用い、dm軸電流(制御座標系ではγ軸電流)をゼロにすることによって、最大トルク制御(最大トルク/電流制御)を行うことができる。3相モータ102が磁気的突極性を有する場合、d軸電流をdm軸電流に、磁石磁束Ψaを拡張鎖交磁束ベクトルΦexmに、インダクタンスLを仮想インダクタンスLmに、それぞれ置き換えることができる。dm軸電流、拡張鎖交磁束ベクトルΦexm及び仮想インダクタンスLmの詳細については、特許文献1(数式36及び段落0182〜0183等)を参照されたい。なお、Lmは、Ld≦Lm<Lqを満たす。また、インダクタンス差がない場合においては、dm−qm座標系と、一般的なd−q座標系とは一致し、Lm=Ld=Lqとすればよい。すなわち、インダクタンス差がある場合についての考え方は、インダクタンス差がない場合の考え方を包含することになる。
(誤差パラメータ演算部321a)
誤差パラメータ演算部321aは、仮想インダクタンス(3相モータ102のインダクタンス)Lmと軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、誤差パラメータεを演算する。具体的には、まず、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Lmaを求める)。推定電機子反作用磁束Lmaのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβと記載する。推定電機子反作用磁束Lmα、推定電機子反作用磁束Lmβは、仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとの積である。次に、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)及び推定電機子反作用磁束Lma(推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβ)から、磁石磁束を推定する(推定磁石磁束Ψ’aeを求める)。推定磁石磁束Ψ’aeのα軸成分及びβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと記載する。具体的には、式(16)及び(17)に示すように、推定磁束Ψα,Ψβから推定電機子反作用磁束Lmα,Lmβを減じることにより推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβを求める。次に、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとから誤差パラメータεを式(18)のように計算する。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
Figure 0006473992
(誤差パラメータ偏差演算部322)
誤差パラメータ偏差演算部322は、指令誤差パラメータε*と誤差パラメータεを取得し、これらの偏差(誤差パラメータ偏差Δε:ε*−ε)を求める。誤差パラメータ偏差演算部322としては、公知の演算子を用いることができる。指令誤差パラメータε*は、任意の値とすることができる。変形例1−2Aでは、振幅修正量生成部317aは、MTPA用に構成されている。MTPAが成立するには、推定磁石磁束Ψ’aeと軸電流iα,iβとを直交させる必要がある。そこで、変形例1−2Aでは、推定磁石磁束Ψ’aeと軸電流iα,iβとの内積をゼロにするために、指令誤差パラメータε*をゼロに設定している。
(PI補償部323)
PI補償部323は、誤差パラメータ偏差Δεを取得し、これがゼロとなるように振幅修正量ΔΨを特定する。具体的には、式(19)に示すように、誤差パラメータ偏差Δεを入力とする比例・積分演算を実施することにより振幅修正量ΔΨを求める。上述のように、変形例1−2Aでは、誤差パラメータ偏差演算部322において、MTPA用の誤差パラメータ偏差Δεが生成される。従って、PI補償部323において、MTPAに適合した振幅修正量ΔΨが生成される。
Figure 0006473992
(加算部331)
加算部331は、仮振幅|Ψs *|と振幅修正量ΔΨとから、補正振幅|Ψs **|を特定する。補正振幅|Ψs **|は、仮振幅|Ψs *|と振幅修正量ΔΨとの合計である。
加算部331(振幅特定部315a)で特定された補正振幅|Ψs **|は、指令磁束特定部112によって用いられる。指令磁束特定部112では、先の実施形態で説明した振幅|Ψs *|に代えて補正振幅|Ψs **|を用いて、指令磁束ベクトルΨs *(指令磁束Ψα *,Ψβ *)を特定する。
変形例1−2Aでは、振幅特定部315aは、指令磁束ベクトルΨs *の仮振幅|Ψs *|を特定する仮設定部330を有している。また、振幅特定部315aは、3相モータ102の永久磁石の推定された磁石磁束(推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβ)と軸電流iα,iβとの内積(第2内積)を用いたフィードバック制御を実行することによって、仮振幅|Ψs *|を補正して指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として補正振幅|Ψs **|を特定する補正部a(振幅修正量生成部317a及び加算部331)を有している。具体的に、変形例1−2Aでは、仮振幅|Ψs *|はMTPA用に設定されており、その仮振幅|Ψs *|がMTPAに適合した振幅修正量ΔΨにより補正されることによって補正振幅|Ψs **|が生成される。従って、変形例1−2Aによれば、高い精度でMTPAを行うことが可能となる。すなわち、変形例1−2Aのモータ制御部303aを用いれば、モータ制御部203を用いる場合よりも、3相モータ102を効率よく駆動させることができる。
変形例1−2Aでは、振幅特定部315aがMTPA用に構成されている場合について説明した。しかし、振幅特定部315aを、弱め界磁制御用等、他の制御用に構成することもできる。振幅修正量生成部317aは、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβから、3相モータ102の無効電力に相関のある物理量を求め、その物理量を所望の値に制御するための振幅修正量ΔΨを生成できる構成を有していればよい。なお、変形例1−2Aにおいては、無効電力に相関のある物理量は、推定磁石磁束Ψ’aeα,Ψ’aeβと軸電流iα,iβとの内積である。
(変形例1−2B)
以下、変形例1−2Bのモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−2Bでは、変形例1−2Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図9Bに示すように、変形例1−2Bのモータ制御部303bは、振幅特定部315aに代えて振幅特定部315bを有している。振幅特定部315bは、振幅修正量生成部317aに代えて振幅修正量生成部317bを有している。
(振幅修正量生成部317b)
図10Bに示すように、振幅修正量生成部317bは、誤差パラメータ演算部321bと、誤差パラメータ偏差演算部322と、PI補償部323とを有している。
(誤差パラメータ演算部321b)
誤差パラメータ演算部321bは、仮想インダクタンスLm(3相モータ102のインダクタンス)と軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、誤差パラメータεを演算する。具体的には、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)と軸電流iα,iβとの内積Ψαα+Ψββを特定する。仮想インダクタンスLmと、軸電流iα,iβとから、仮想インダクタンスと電流の振幅の2乗との積Lm(iα 2+iβ 2)を特定する。内積Ψαα+Ψββから積Lm(iα 2+iβ 2)を減じて差Ψαα+Ψββ−Lm(iα 2+iβ 2)を特定し、誤差パラメータεを得る。誤差パラメータ演算部321bが行う演算は、式(20)により表現される。
Figure 0006473992
変形例1−2Bでは、振幅特定部315bは、指令磁束ベクトルΨs *の仮振幅|Ψs *|を特定する仮設定部330を有している。また、振幅特定部315bは、推定されたモータ磁束(推定磁束Ψα,Ψβ)と軸電流iα,iβとの内積(第1内積)Ψαα+Ψββを用いたフィードバック制御を実行することによって、仮振幅|Ψs *|を補正して指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として補正振幅|Ψs **|を特定する補正部b(振幅修正量生成部317b及び加算部331)を有している。変形例1−2Bの振幅修正量生成部317bでは、変形例1−2Aの振幅修正量生成部317aで用いた式とは異なる式を用いるものの、変形例1−2Aのときと同じ振幅修正量ΔΨを特定する。従って、変形例1−2Bのモータ制御部303bを用いれば、モータ制御部303aを用いる場合と同じ効果を得ることができる。
変形例1−2Bでは、振幅特定部315bがMTPA用に構成されている場合について説明した。しかし、振幅特定部315bを、弱め界磁制御用等、他の制御用に構成することもできる。振幅修正量生成部317bは、推定磁束Ψα,Ψβと軸電流iα,iβから、3相モータ102の無効電力に相関のある物理量を求め、その物理量を所望の値に制御するための振幅修正量ΔΨを生成できる構成を有していればよい。なお、変形例1−2Bでは、無効電力に相関のある物理量として、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)と軸電流iα,iβとの内積Ψαα+Ψββを求めている。
また、振幅修正量生成部は、3相モータ102の無効電力を求め、その無効電力を所望の値に制御するための振幅修正量ΔΨを生成できる構成を有するものであってもよい。この場合、無効電力は、内積Ψαα+Ψββに指令速度ωref *を乗じることで求めることができる。推定磁束Ψsの位相を微分して3相モータ102の速度を推定し、その速度を内積Ψαα+Ψββに乗じることで無効電力を求めることもできる。また、軸電流iα,iβと軸電圧vα *,vβ *とから無効電力を求めることもできる。
(変形例1−3)
以下、本発明における変形例1−3のモータ制御装置について説明する。なお、変形例1−3では、変形例1−2Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図11に示すように、変形例1−3のモータ制御部403は、振幅特定部315aに代えて振幅特定部415を有している。
(振幅特定部415)
振幅特定部415は、軸電流iα,iβと推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)とから、指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として補償用振幅|Ψs ***|を特定する。振幅特定部415は、仮設定部330、振幅修正量生成部317a及び加算部331に加え、離散化誤差補償部432を有している。
(離散化誤差補償部432)
離散化誤差補償部432は、補正振幅|Ψs **|から、補償用振幅|Ψs ***|を特定する。具体的に、離散化誤差補償部432は、式(21)又は式(22)を用いて、補償用振幅|Ψs ***|を特定する。式(22)は、式(21)の近似式である。Tsは、制御周期(サンプリング周期)である。ωは、3相モータ102の速度である。
Figure 0006473992
Figure 0006473992
式(21)及び(22)の役割について、簡単に説明する。3相モータ102に実際に印加されるモータ磁束Ψsの振幅|Ψs|と指令磁束ベクトルΨs *の振幅|Ψs *|とは、厳密には一致しない。つまり、いわゆる離散化誤差が生じる。離散化誤差は、高速駆動時等のように、1サンプリング周期Tsにおける3相モータ102の移動量が大きい場合に顕在化する。そこで、変形例1−3では、この誤差を緩和するべく、式(21)又は(22)を用いた制御を行っている。式(21)又は(22)の意味の詳細については、非特許文献2を参照されたい。なお、式(21)又は式(22)に基づく制御は、演算により行われてもよく、テーブルを用いて行われてもよい。また、式(21)又は式(22)で用いられる速度ωとしては、例えば、指令速度ωref *を用いることができる。また、推定磁束Ψsの位相を微分して3相モータ102の速度を推定し、推定した速度を式(21)又は式(22)の速度ωとして用いることもできる。推定磁束Ψsの位相の特定には後述の位相推定部518を用いることができ、その位相の微分には公知の演算子を用いることができる。
変形例1−3では、変形例1−2Aで説明した仮設定部330、振幅修正量生成部317a及び加算部331に加え、離散化誤差補償部432が用いられている。式(21)及び(22)から理解されるように、離散化誤差補償部432は、指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として、補正振幅|Ψs **|よりも小さい補償用振幅|Ψs ***|を特定するものであって、3相モータ102の速度が高くなればなるほど補正振幅|Ψs **|と補償用振幅|Ψs ***|との差が大きくなるように、補償用振幅|Ψs ***|を特定するものである。変形例1−3の振幅特定部415は、このような離散化誤差補償部432を有している。従って、離散化誤差が緩和される。
なお、変形例1−3における振幅特定部415から、振幅修正量生成部317a及び加算部331を省略することもできる。このようにした場合、離散化誤差補償部432は、仮振幅|Ψs *|から、補償用振幅|Ψs ***|を特定することになる。つまり、式(21)及び(22)の補正振幅|Ψs **|が仮振幅|Ψs *|に変更されることになる。この場合には、離散化誤差補償部432は、指令磁束特定部112に与えられるべき振幅として、仮振幅|Ψs *|よりも小さい補償用振幅|Ψs ***|を特定するものであって、3相モータ102の速度が高くなればなるほど仮振幅|Ψs *|と補償用振幅|Ψs ***|との差が大きくなるように補償用振幅|Ψs ***|を特定するものということになる。
なお、振幅修正量生成部317aに代えて、振幅修正量生成部317bを用いてもよい。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態のモータ制御装置について説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図12に示すように、第2の実施形態のモータ制御部503は、位相特定部111に代えて、位相特定部511を有している。また、モータ制御部503は、位相推定部518を有している。
(位相推定部518)
位相推定部518は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)から推定磁束Ψsの位相θsを特定する。具体的に、位相推定部518は、式(23)により、推定磁束Ψsの位相θsを求める。
Figure 0006473992
(位相特定部511)
位相特定部511は、指令速度ωref *と推定磁束の位相θsから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を求める。図13に示すように、位相特定部511は、乗算部520と、位相加算演算部542とを有している。
(乗算部520)
乗算部520は、指令速度ωref *に制御周期Tsを乗ずることによって、移動量Δθを特定する。
(位相加算演算部542)
位相加算演算部542は、移動量Δθと推定磁束Ψsの位相θsを加算することで、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を求める。
第2の実施形態のモータ制御部503は、3相モータ102における3相交流座標上の相電流(モータ電流)iu,iwを2相座標によって表したものである軸電流iα,iβと、3相モータ102に印加されるべき電圧ベクトルvu,vv,vwを2相座標によって表したものである軸電圧vα *,vβ *と、を用いて3相モータ102に印加されているモータ磁束を推定する(推定磁束Ψsを求める)モータ磁束推定部108を備えている。モータ制御部503は、推定されたモータ磁束を用いて、モータ磁束の位相θsを推定する位相推定部518を備えている。位相特定部511は、位相推定部518で推定されたモータ磁束Ψsの位相θsと、移動量Δθと、を用いて(より具体的には、位相θsと移動量Δθと足し合わせて)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。第2の実施形態のモータ制御部503によれば、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を容易に特定することができる。また、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *の特定に推定されたモータ磁束が用いられ、その推定には軸電流iα,iβが用いられる。このことは、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *の特定に、3相モータ102で実際に流れているモータ電流が反映されることを意味する。すなわち、このことは、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を適切に設定することに寄与し、3相モータ102の駆動を安定させることに役立つ。
(変形例2−1A)
以下、変形例2−1Aのモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−1Aでは、変形例1−1又は第2の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図14Aに示すように、変形例2−1Aのモータ制御部603aは、第2の実施形態(図12及び図13)の位相特定部511に代えて位相特定部611aを有している。また、モータ制御部603aは、変形例1−1(図6〜図8)で説明したトルク推定部216を有している。
(位相特定部611a)
位相特定部611aは、指令速度ωref *と、推定トルクTeと、推定磁束Ψsの位相θsとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図15Aに示すように、位相特定部611aは、ハイパスフィルタ261と、ゲイン乗算部262と、速度偏差演算部651と、乗算部620と、位相加算演算部642とを有している。
(速度偏差演算部651)
速度偏差演算部651は、指令速度ωref *と速度振動成分K1Hの速度偏差(補正された指令速度)ωref *−K1Hを演算する。
(乗算部620)
乗算部620は、速度偏差ωref *−K1Hに制御周期TSを乗ずることによって移動量Δθを求める。
(位相加算演算部642)
位相加算演算部642は、推定磁束Ψsの位相θsに移動量Δθを加算することによって、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を求める。
変形例2−1Aの位相特定部611aは、推定されたトルク振動成分THを用いて指令速度ωref *を補正し、補正された指令速度ωref *−K1Hを用いて移動量Δθを特定し、特定された移動量Δθを用いて(具体的には、位相推定部518で推定されたモータ磁束Ψsの位相θsと移動量Δθとを足し合わせて)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。変形例2−1Aによれば、変形例1−1の効果と第2の実施形態の効果との両方を得ることができる。
(変形例2−1B)
以下、変形例2−1Bのモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−1Bでは、変形例2−1Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図14Bに示すように、変形例2−1Bのモータ制御部603bは、変形例2−1Aの位相特定部611aに代えて、位相特定部611bを有している。
(位相特定部611b)
位相特定部611bは、指令速度ωref *と、推定トルクTeと、推定磁束Ψsの位相θsとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図15Bに示すように、位相特定部611bは、乗算部660と、ハイパスフィルタ261と、符号反転部662と、PI補償部663、加算部664と、位相加算演算部642とを有している。
(乗算部660)
乗算部660は、指令速度ωref *に制御周期TSを乗ずることによって移動量ωref *Sを求める。
(符号反転部662)
符号反転部662は、トルク振動成分THに−1を乗ずることによって振動成分−THを求める。
(PI補償部663)
PI補償部663は、振動成分−THを取得し、これがゼロとなるように補正量Δωref *Sを特定する。具体的には、式(24)に示すように、振動成分−THを入力とした比例・積分演算を実施することにより補正量Δωref *Sを求める。
Figure 0006473992
(加算部664)
加算部664は、補正量Δωref *Sを用いて移動量ωref *Sを補正する。具体的には、移動量ωref *Sに補正量Δωref *Sを加算することによって、移動量Δθを求める。
変形例2−1Bでは、トルク推定部216において、推定されたモータ磁束(推定磁束Ψs)と、軸電流iα,iβと、を用いてモータトルクを推定する(推定トルクTeを求める)。位相特定部611bにおいて、振動成分THを推定する。位相特定部611bにおいて、指令速度ωref *を用いて移動量ωref *Sを特定し、特定された移動量ωref *Sを推定された振動成分THを用いて補正し、補正された移動量Δθを用いて(具体的には、位相推定部518で推定されたモータ磁束Ψsの位相θsと、補正された移動量Δθとを足し合わせて)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。
図15A及び図15Bから理解されるように、変形例2−1Aの位相特定部611aの動作と変形例2−1Bの位相特定部611bの動作とはよく似ている。ゲイン乗算部262でトルク振動成分THにゲインK1を乗じ、速度偏差演算部651で−1を乗じ、乗算部620で制御周期TSを乗じて得られる演算結果(図15A)と、符号反転部662でトルク振動成分THに−1を乗じ、PI補償部663においてその機能一部として比例制御を行って得られる演算結果(図15B)と、は対応するためである。ただし、変形例2−1Bでは振動成分−THを入力とした積分制御(PI補償部663の機能の一部)を行う点が、変形例2−1Aと相違する。位相特定部611bは、積分制御を行うため、位相特定部611aよりも、精度よく指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定することができる。また、PI補償部663に代えてP補償部を用いたりI補償部を用いたりすることもできる。
(変形例2−1C)
以下、変形例2−1Cのモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−1Cでは、変形例2−1Bと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図14Cに示すように、変形例2−1Cのモータ制御部603cは、変形例2−1Bの位相特定部611bに代えて、位相特定部611cを有している。
(位相特定部611c)
位相特定部611cは、指令速度ωref *と、推定トルクTeと、推定磁束Ψsの位相θsとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図15Cに示すように、位相特定部611cは、乗算部660と、ローパスフィルタ671と、減算部672と、PI補償部663と、加算部664と、位相加算演算部642とを有している。
(ローパスフィルタ671)
ローパスフィルタ671は、推定トルクTeから定常成分TLを抽出する。
(減算部672)
減算部672は、定常成分TLから推定トルクTeを減じることにより、振動成分−THを求める。
変形例2−1Cでは、位相特定部611cにおいて、振動成分−TH(モータトルクの振動成分THに−1を乗じたもの)を推定する。位相特定部611cにおいて、指令速度ωref *を用いて移動量ωref *Sを特定し、特定された移動量ωref *Sを推定された振動成分−THを用いて補正し、補正された移動量Δθを用いて(具体的には、位相推定部518で推定されたモータ磁束Ψsの位相θsと、移動量Δθとを足し合わせて)指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図15B及び図15Cから理解されるように、変形例2−1Bの位相特定部611bの動作と変形例2−1Cの位相特定部611cの動作は同じである。従って、変形例2−1Cによれば、変形例2−1Bと同じ効果が得られる。
(変形例2−1D)
以下、変形例2−1Dのモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−1Dでは、変形例2−1Cと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図14Dに示すように、変形例2−1Dのモータ制御部603dは、変形例2−1Cの位相特定部611cに代えて、位相特定部611dを有している。
(位相特定部611d)
位相特定部611dは、指令速度ωref *と、推定トルクTeと、推定磁束Ψsの位相θsとから、指令磁束ベクトルΨs *の位相θs *を特定する。図15Dに示すように、位相特定部611dは、ローパスフィルタ671と減算部672との間にトルクリミッタ680が設けられている点で、位相特定部611cとは相違する。
(トルクリミッタ680)
トルクリミッタ680は、定常成分TLから、制限トルクTlimを特定する。具体的に、トルクリミッタ680は、式(25A)及び(25B)を用いて、制限トルクTlimを求める。ここで、Iamは制限電流を意味する。制限トルクTlimの詳細については、非特許文献3を参照されたい。
Figure 0006473992
変形例2−1Dでは、変形例2−1Cの振動成分−THに代えて制限トルクTlimが減算部672に入力される。
変形例2−1Dによれば、モータトルクが制限トルクTlimを超えないようにする構成を、容易に実現することができる。
(変形例2−2)
以下、変形例2−2のモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−2では、変形例1−2A又は第2の実施形態と同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図16に示すように、モータ制御部703は、変形例1−2A(図9A及び図10A)で説明した振幅特定部315aと、第2の実施形態(図12及び図13)で説明した位相推定部518と、変形例2−1A(図14A及び図15A)で説明した位相特定部611aを有している。変形例2−2によれば、変形例1−2Aの効果と変形例2−1Aの効果の両方を得ることができる。
なお、振幅修正量生成部317aに代えて振幅修正量生成部317bを設けてもよい。また、位相特定部611aに代えて、位相特定部611b、位相特定部611c又は位相特定部611dを設けてもよい。
(変形例2−3)
以下、変形例2−3のモータ制御装置について説明する。なお、変形例2−3では、変形例1−3又は変形例2−1Aと同様の部分については同一符号を付し、説明を省略することがある。
図17に示すように、モータ制御部803は、変形例1−3(図11)で説明した振幅特定部415と、第2の実施形態(図12及び図13)で説明した位相推定部518と、変形例2−1A(図14A及び図15A)で説明した位相特定部611aを有している。変形例2−3によれば、変形例1−3の効果と変形例2−1Aの効果の両方を得ることができる。
なお、振幅修正量生成部317aに代えて振幅修正量生成部317bを設けてもよい。また、位相特定部611aに代えて、位相特定部611b、位相特定部611c又は位相特定部611dを設けてもよい。
本発明は、SPMSM、IPMSM等の同期モータに適用できる。それらの同期モータは、冷暖房装置又は給湯機に使用されたヒートポンプ式冷凍装置に適している。
100 モータ制御装置
101 インバータ
102 3相モータ
103,203,303a,303b,403,503,603a,603b,603c,603d,703,803,903 モータ制御部
104 デューティ生成部
105a 第1電流センサ
105b 第2電流センサ
106,906 u,w/α,β変換部
107,907 電圧指令演算部
108,908 モータ磁束推定部
109,909 α,β/u,v,w変換部
111,211,511,611a,611b,611c,611d 位相特定部
112,912 指令磁束特定部
113a,913a α軸磁束偏差演算部
113b,913b β軸磁束偏差演算部
114,214 積分器
115,315a,315b,415,961 振幅特定部
116 ベースドライバ
117 平滑コンデンサ
118 直流電源
119a〜119f スイッチング素子
120a〜120f 還流ダイオード
216,963 トルク推定部
223,651 速度偏差演算部
261 ハイパスフィルタ
262 ゲイン乗算部
317a,317b 振幅修正量生成部
321a,321b 誤差パラメータ演算部
322 誤差パラメータ偏差演算部
323,663 PI補償部
330 仮設定部
331 加算部
432 離散化誤差補償部
518 位相推定部
520,620,660 乗算部
542,642 位相加算演算部
662 符号反転部
664 加算部
671 ローパスフィルタ
672 減算部
680 トルクリミッタ
911 トルク偏差演算部
962 速度・位置演算部
964 速度制御部

Claims (8)

  1. 3相モータのモータ磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、インバータを用いて前記3相モータに電圧ベクトルを印加するモータ制御装置であって、
    指令速度を用いて前記モータ磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
    前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する振幅特定部と、
    前記位相特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、前記振幅特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、
    を備えたモータ制御装置。
  2. 前記位相特定部は、前記移動量を積算することによって、前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流と、前記3相モータに印加されるべき前記電圧ベクトルを前記2相座標によって表したものである軸電圧と、を用いて前記3相モータに印加されている前記モータ磁束を推定するモータ磁束推定部と、
    推定された前記モータ磁束を用いて、前記モータ磁束の前記位相を推定する位相推定部と、をさらに備え、
    前記位相特定部は、前記位相推定部で推定された前記モータ磁束の前記位相と、前記移動量と、を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、請求項1に記載のモータ制御装置。
  4. 前記位相特定部は、(i)推定されたモータトルクの振動成分を用いて前記指令速度を補正し、補正された前記指令速度を用いて前記移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、又は、(ii)前記指令速度を用いて前記移動量を特定し、特定された前記移動量を推定されたモータトルクの振動成分を用いて補正し、補正された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの前記位相を特定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記振幅特定部は、
    前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
    (a)推定された前記モータ磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第1内積、又は、(b)前記3相モータの永久磁石の推定された磁石磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第2内積、を用いたフィードバック制御を実行することによって、前記仮振幅を補正して前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として補正振幅を特定する補正部と、を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記振幅特定部は、
    前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
    前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として前記仮振幅よりも小さい補償用振幅を特定する離散化誤差補償部であって、前記3相モータの速度が高くなればなるほど前記仮振幅と前記補償用振幅との差が大きくなるように前記補償用振幅を特定する離散化誤差補償部と、を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  7. 前記振幅特定部は、
    前記指令磁束ベクトルの仮振幅を設定する仮設定部と、
    (a)推定された前記モータ磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第1内積、又は、(b)前記3相モータの永久磁石の推定された磁石磁束と前記3相モータにおける3相交流座標上のモータ電流を2相座標によって表したものである軸電流との第2内積、を用いたフィードバック制御を実行することによって、前記仮振幅を補正して補正振幅を特定する補正部と、
    前記指令磁束特定部に与えられるべき前記振幅として前記補正振幅よりも小さい補償用振幅を特定する離散化誤差補償部であって、前記3相モータの速度が高くなればなるほど前記補正振幅と前記補償用振幅との差が大きくなるように、前記補償用振幅を特定する離散化誤差補償部と、を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
  8. 3相発電機の発電機磁束が指令磁束ベクトルに追従するように、コンバータを用いて前記3相発電機に電圧ベクトルを印加する発電機制御装置であって、
    指令速度を用いて前記発電機磁束の位相が移動するべき制御周期毎の移動量を特定し、特定された前記移動量を用いて前記指令磁束ベクトルの位相を特定する位相特定部と、
    前記指令磁束ベクトルの振幅を特定する振幅特定部と、
    前記位相特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記位相と、前記振幅特定部で特定された前記指令磁束ベクトルの前記振幅と、を用いて前記指令磁束ベクトルを特定する指令磁束特定部と、
    を備えた発電機制御装置。
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