JP6474998B2 - 転倒抑制工法および橋脚 - Google Patents
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Description
このような既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法としては、例えば、地盤と橋脚とをグラウンドアンカーで一体化させる工法(例えば特許文献1参照)や、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法などが考えられる。
地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法の場合、橋脚が河川や海に設置されている際には、接触面積を増加させる部材を設置するために遮水しなければならず、遮水のための大掛かりな設備が必要となるため、費用が嵩む、工期が長くなる等の問題が生じる。また、漏水が発生して、安全に施工できない場合もある。
また、本発明の他の目的は、転倒しにくい橋脚を提供することである。
地盤に直接設けられた既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法であって、
前記地盤の揺れが発生した際、切断位置から上側の上側部分と当該切断位置から下側の下側部分とが相対的にスライドして当該上側部分と当該下側部分との位置関係にずれが生じた場合に、当該位置関係を元に戻す復元力を生じさせる切断面が形成されるように、前記既設橋脚を切断するように構成されている。
また、上側部分と下側部分とが相対的にスライドして当該上側部分と当該下側部分との位置関係にずれが生じても、復元力が発生して自然と元の位置関係に戻ることができる。
前記上側部分と前記下側部分との間に、スライド部材を設置するように構成することが可能である。
地盤に直接設けられた橋脚であって、
上下に分離されており、
分離境界にスライド構造を有し、
前記分離境界でスライドして上下の位置関係にずれが生じた場合に、当該位置関係を元に戻す復元力を生じるように構成されている。
また、分離境界でスライドして上下の位置関係にずれが生じても、復元力が発生して自然と元の位置関係に戻ることができる。
また、転倒しにくい橋脚を提供することができる。
まず、既設橋脚10について説明する。
図1は、既設橋脚10の構成の一例を示す図である。
既設橋脚10は、無筋コンクリート製の鉄道用橋脚であり、図1に示すように、四角柱状をなし、その上端部に軌道を敷設可能な床版1が橋桁2を介して架設されている。
構造物を傾斜させようとするモーメントは、当該構造物の重心と転倒支点との間の距離に比例する。すなわち、地震の慣性力として同じ大きさの力が重心に作用した場合、重心と転倒支点との間の距離が短い構造物ほど、当該構造物を傾斜させようとするモーメントが小さくなる。下側部分22の重心位置が低いほど、下側部分22の重心と転倒支点との間の距離は短くなるため、下側部分22の重心位置は低い方が好ましい。
また、上側部分21の重量が大きいほど、下側部分22を傾斜させようとするモーメントを打ち消す方向の力が大きくなるため、上側部分21の重量は大きい方が好ましい。
上側部分21と下側部分22とが相対的にスライドしにくいほど、上側部分21は、摩擦力の大きさだけ慣性力として作用し、下側部分22の動きに合わせて揺れたり傾斜したりしやすくなる。よって、上側部分21が地震発生前の状態を維持しにくくなるため、下側部分22を傾斜させようとするモーメントを打ち消す方向の力が小さくなる。さらに、上側部分21が受ける慣性力の大きさだけ、下側部分22に反力として作用し、下側部分22または橋脚全体を傾斜させようとするモーメントが大きくなる。
一方、上側部分21と下側部分22とが相対的にスライドしやすいほど、上側部分21の状態が下側部分22の状態に影響されず、上側部分21が地震発生前の状態を維持しやすくなるため、下側部分22を傾斜させようとするモーメントを打ち消す方向の力が大きくなり、より転倒しにくくなる。よって、例えば図3(a)に示すように切断面をそのまま用いてもよいが、よりスライドしやすくするために、上側部分21と下側部分22との隙間に潤滑油を注入する等して切断面を潤滑剤でコーティングしたり、上側部分21と下側部分22との間にスライド部材を設置したりすることが好ましい。
なお、何れのスライド構造を採用するかは、切断面の状態、既設橋脚10のサイズ、既設橋脚10の設置場所の形状、既設橋脚10の設置場所において要求される耐震性能等に応じて適宜設定可能である。
図4は、上側部分21と下側部分22との間にスライド部材としてフリーボールベアリング23を設ける場合の転倒抑制工法の手順の一例を示す図である。
次いで、図4(b)に示すように、ワイヤーソー等の切断機を用いて既設橋脚10を切断する。切断機を用いて既設橋脚10を切断すると、上側部分21と下側部分22との間に当該切断機の刃の厚み(例えば、切断機がワイヤーソーの場合はワイヤーの直径)分程度の切断幅が形成されるが、例えば、上側部分21と下側部分22との間に当該切断幅よりも厚いスライド部材を設置する場合、上側部分21と下側部分22とを当該切断幅よりも大きな間隔で離間させる必要があるため、図4(b)に示すように、切断位置は2つになる。一方、切断面をそのまま用いる場合(図3(a)参照)や、上側部分21と下側部分22との隙間に潤滑油を注入する場合や、当該切断幅以下の厚さのスライド部材を設置する場合などは、上側部分21と下側部分22とを当該切断幅よりも大きな間隔で離間させる必要がないため、切断位置は1つでよい。
そして、図4(d)に示すように、上側部分21と下側部分22との間にフリーボールベアリング23を設置して、支持部材Sを取り外す。このようにして、既設橋脚10を耐転倒性橋脚20に変えることができる。
なお、既設橋脚10を切断する途中で、当該切断により生じた隙間にフラットジャッキ等の公知の支持機を設置して、スライド部材を設置した後等に当該支持機を取り外すことも可能である。また、既設橋脚10を切断する途中で、当該切断により生じた隙間にフリーボールベアリング23や板24などを設置し、それをそのままスライド部材として用いることも可能である。これらの場合、既設橋脚10を切断する前に、支持部材Sを設置しなくてもよい。
具体的には、既設橋脚10を切断するだけなので、施工時の補強が不要あるいは小規模な補強で足りる。よって、地盤と橋脚とをグラウンドアンカーで一体化させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価な施工が可能となる。
また、既設橋脚10を切断するだけなので、既設橋脚10が河川や海に設置されている場合であっても、切断位置を水面上にすれば、水面上で作業できる。よって、遮水のための大掛かりな設備が不要であり、また、漏水に対する安全性の考慮も不要であるので、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法等の従来の転倒抑制工法と比較して、安価で安全な施工が可能となり、かつ、工期の短縮が可能となる。
さらに、地盤と橋脚との接触面積を増加させる工法であって、橋脚が鉄道用橋脚の場合、線路付近の狭隘な空間では、施工が煩雑になる、接触面積を増加させる部材を設置する箇所を確保できない等の問題が生じるが、既設橋脚10を切断するだけなので、線路(軌道)に影響されない施工が可能となる。
第1実施形態では、既設橋脚10を、当該既設橋脚10よりも転倒しにくい耐転倒性橋脚20に変えるために、切断面が鉛直方向に対して直交するように既設橋脚10を切断し、切断位置から上側の上側部分21と当該切断位置から下側の下側部分22とが相対的にスライド可能となるよう構成したが、第2実施形態では、既設橋脚10を、当該既設橋脚10よりも転倒しにくい耐転倒性橋脚30に変えるために、切断面が既設橋脚10の中心軸線Cに向かって傾斜する傾斜面からなるように既設橋脚10を切断し、切断位置から上側の上側部分31と当該切断位置から下側の下側部分32とが相対的にスライド可能となるよう構成する。このように構成した場合も、地震発生時に、傾斜するメカニズムよりもスライドするメカニズムを支配的とすることが可能となるため、転倒しにくくなる。さらに、このように構成することによって、上側部分31と下側部分32とが相対的にスライドして上側部分31と下側部分32との位置関係にずれが生じても、重力による復元力が発生して自然と元の位置関係に戻ることができる。
また、中心軸線Cに向かって傾斜する2つの傾斜面からなる切断面を複数有するように構成することも可能である。この場合、図5(c)に示すように、一の切断面を構成する傾斜面の傾斜方向と、他の切断面を構成する傾斜面の傾斜方向と、が異なるように構成すると、複数方向のずれに対応できるため好ましい。ここで、図5(c)に示す耐転倒性橋脚30において、上側の切断面と下側の切断面とに挟まれた部分は、上側の切断面から見れば下側部分32であるし、下側の切断面から見れば上側部分31であるので、図5(c)では「31,32」と符号を付している。
また、図5(a)に示す耐転倒性橋脚30の切断面も、例えば図6(c)に示すように、湾曲していてもよい。図5(c)に示す耐転倒性橋脚30の切断面においても同様である。
また、切断面の形状として何れの形状を採用するかは、既設橋脚10の設置場所において想定されている地盤が揺れる方向や既設橋脚10の設置場所において要求される耐震性能などに応じて適宜設定可能である。
また、切断面の状態、既設橋脚10のサイズ、既設橋脚10の設置場所の形状、既設橋脚10の設置場所において要求される耐震性能等に応じて、上側部分31と下側部分32との間にスライド部材を設置することも可能である。
なお、本実施形態において、耐転倒性橋脚30は、中心軸線Cに向かって下り傾斜する傾斜面からなる切断面を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、中心軸線Cに向かって上り傾斜する傾斜面からなる切断面を有していてもよい。
また、本実施形態において、耐転倒性橋脚30は、中心軸線Cに向かって傾斜する複数の傾斜面からなる切断面を有しているが、これに限定されるものではなく、中心軸線Cからずれた位置にある線に向かって傾斜する複数の傾斜面からなる切断面を有していてもよい。
また、本実施形態においては、1本の線を設定し、当該線に向かって傾斜する傾斜面からなる切断面が形成されるように既設橋脚10を切断したが、これに限定されるものではなく、複数本の線を設定してもよい。すなわち、本実施形態では、既設橋脚10を一側面から見て略V字状に切断したが、これに限定されるものではなく、例えば略W字状に切断してもよい。
また、既設橋脚10は、鉄道用橋脚に限定されるものではなく、その他の橋脚であってもよい。
また、既設橋脚10の形状に制限はなく、多角柱状であってもよいし、円柱状であってもよいし、裾広がり形状(多角錐台や円錐台など)であってもよい。また、既設橋脚10の側面には、凹凸があってもよい。また、既設橋脚10は、鉛直方向に立設されたものでも、鉛直方向に対して斜めに立設されたものでもよい。
20,30 耐転倒性橋脚(橋脚)
21,31 上側部分
22,32 下側部分
23 フリーボールベアリング(スライド部材)
24 切断面よりも表面の摩擦係数が小さい板(スライド部材)
Claims (3)
- 地盤に直接設けられた既設橋脚を転倒しにくくする転倒抑制工法であって、
前記地盤の揺れが発生した際、切断位置から上側の上側部分と当該切断位置から下側の下側部分とが相対的にスライドして当該上側部分と当該下側部分との位置関係にずれが生じた場合に、当該位置関係を元に戻す復元力を生じさせる切断面が形成されるように、前記既設橋脚を切断することを特徴とする転倒抑制工法。 - 前記上側部分と前記下側部分との間に、スライド部材を設置することを特徴とする請求項1に記載の転倒抑制工法。
- 地盤に直接設けられた橋脚であって、
上下に分離されており、
分離境界にスライド構造を有し、
前記分離境界でスライドして上下の位置関係にずれが生じた場合に、当該位置関係を元に戻す復元力を生じることを特徴とする橋脚。
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