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JP6478375B2 - 高発現プロモーター遺伝子 - Google Patents
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JP6478375B2 - 高発現プロモーター遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は、高発現プロモーター遺伝子に関する。
現在、化石資源枯渇、地球温暖化の促進などの問題から、持続可能な社会の構築を目指し、化石資源由来の工業原料やエネルギーを再生可能資源由来へとシフトする試みが行われている。このような試みのうちの一つとして、再生可能資源由来の原料として農作物廃棄物やおがくず、廃紙、木屑などのリグノセルロース系バイオマスの利用が挙げられる。
リグノセルロース系バイオマスを有用物質に変換するプロセスとして、合成ガスプラットフォームがある。これは国内の生物廃棄物の約8割を占める糖化が難しいバイオマスを微生物によって発酵して乳酸、エタノールなどの有用物質に変換するプロセスである。
このような状況のなか、合成ガス資化性好熱性細菌であるモーレラ(Moorella)属細菌が注目されてきた(特許文献1)。これまで、モーレラ(Moorella)属細菌を用いた乳酸またはエタノール生産能の向上を目指し、遺伝子組換え技術の開発が行われてきた結果、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株のオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)を破壊した、5−フルオロオロト酸耐性を示すウラシル要求性変異株(dpyrF株)が作製され(特許文献2、3)、これを宿主として、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子導入株が作製されている(特許文献4、5)。なお、dpyrF株(pyrF破壊株)は、受託番号「NITE P−1057」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている。
特開2010−017131号公報 特開2012−249572号公報 特開2012−249573号公報 特開2013−090600号公報 特開2013−252057号公報
しかしながら、より効率的な物質生産を行うため、合成ガス資化性好熱性細菌における外来遺伝子の高発現技術が求められている。
そこで、本発明は、合成ガス資化性好熱性細菌での外来遺伝子発現を強化することができる高発現プロモーターを提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく遺伝子プロモーターに着目して鋭意検討を重ね、mRNA相対発現量および遺伝子産物であるタンパク質の酵素活性を合わせて検討したところ、合成ガス資化性好熱性細菌において、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(CODHプロモーター)を外来遺伝子に付加して宿主細菌に導入した場合に、高い翻訳量を示すことを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(13)を提供する。
(1)合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター。
(2)前記一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列が、配列番号1により示されるヌクレオチド配列のうち、連続する少なくとも5ヌクレオチドによって表されるヌクレオチド配列を含む、(1)に記載の一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター。
(3)前記一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列が、配列番号1により示されるヌクレオチド配列のうち、第65番目から第90番目までのヌクレオチドによって表されるヌクレオチド配列を含む、(1)に記載の一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター。
(4)前記一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列が、配列番号1により示される一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域のヌクレオチド配列に含まれる、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター。
(5)前記一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターによって発現される外来遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の活性を、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターによって発現される前記外来遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の活性を基準にして評価する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター。
(6)サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いる、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターをスクリーニングする方法。
(7)前記レポーター遺伝子の転写量および翻訳産物の活性の両方を評価する、(6)に記載の方法。
(8)プロモーター本来の遺伝子の転写量および前記レポーター遺伝子の翻訳産物の活性の両方を評価する、(6)に記載の方法。
(9)クエン酸合成酵素遺伝子プロモーター、DNAプライマーゼ遺伝子プロモーター、DNAアデニンメチラーゼ遺伝子プロモーターおよび一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択される少なくとも一つの遺伝子プロモーターである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法によってスクリーニングされた、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーター。
(10)β−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ属細菌。
(11)β−ガラクトシダーゼ遺伝子および前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するためのプロモーターが染色体上に組み込まれた、(10)に記載のモーレラ属細菌。
(12)前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するためのプロモーターが、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、クエン酸合成酵素遺伝子プロモーター、DNAプライマーゼ遺伝子プロモーター、DNAアデニンメチラーゼ遺伝子プロモーターおよび一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択されるいずれか1つである、(11)に記載のモーレラ属細菌。
(13)前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子がサーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株に由来するβ−ガラクトシダーゼ遺伝子である、(11)または(12)に記載のモーレラ属細菌。
本発明によれば、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターが提供される。
また、本発明によれば、合成ガス資化性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターをスクリーニングする方法およびその方法によりスクリーニングされた合成ガス資化性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターが提供される。
さらに、本発明によれば、β−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ属細菌が提供される。
図1は、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株の遺伝子転写量を表すグラフである。横軸に遺伝子を、縦軸に各遺伝子の転写量をgyrB転写量に対する相対値として示す。 図2は、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株に、相同組換えによりlacZおよびG3PDを導入して形質転換株を作製する方法を表す模式図である。 図3は、G3PDプロモーターを付加したlacZ導入株のPCR結果を示す電気泳動像である。 図4は、LacZ発現の結果を表すSDS−PAGEゲル像である。 図5は、LacZ活性測定結果を表すグラフである。 図6は、cisプロモーター候補株のPCR結果を表す電気泳動像である。 図7は、CODHプロモーター候補株のPCR結果を表す電気泳動像である。 図8は、primaseプロモーター候補株のPCR結果を表す電気泳動像である。 図9は、各プロモーターを付加したlacZ転写量を表すグラフである。横軸に付加したプロモーターを、縦軸にlacZ転写量をgyrB転写量に対する相対値として示す。ただし、横軸のControl−1およびControl−2は、それぞれ、ATCC 39073株(野生株)およびdpyrF株を表す。 図10は、各プロモーターを付加したlacZ活性測定の結果を表すグラフである。横軸に付加したプロモーターを、縦軸に比活性(U/mg)を示す。ただし、横軸のControl−1およびControl−2は、それぞれ、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)のATCC 39073株(野生株)およびdpyrF株を表す。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の第一の態様は、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターである。
合成ガスとは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および不可避的不純物からなるガスをいう。水素、一酸化炭素および二酸化炭素の組成比は特に限定されない。
合成ガス資化性好熱性細菌とは、上記合成ガスを唯一の炭素源として増殖が可能な好熱性細菌をいい、好熱性細菌とは、至適生育温度が45℃以上、あるいは生育限界温度が55℃以上の細菌をいう。合成ガス資化性好熱性細菌としては、例えば、モーレラ(Moorella)属細菌を挙げることができ、中でもモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、とりわけ、ATCC 39073株またはそれに由来する株が、技術的な観点および命名法上の観点から扱い易いため、好ましい。
本発明において、高発現とは、遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の活性が、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(G3PDプロモーター)を用いて外来遺伝子を発現させた場合に比べて高いことをいう。一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(CODHプロモーター)を用いて外来遺伝子を発現させた場合には、G3PDプロモーターを用いて外来遺伝子を発現させた場合と比べて、遺伝子の翻訳産物であるタンパク質が、少なくとも1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上の高い比活性を示す。
上記CODHプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号1により示されるヌクレオチド配列のうち、連続する少なくとも5ヌクレオチドによって表されるヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
上記CODHプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号1により示されるヌクレオチド配列のうち、第65番目のヌクレオチドから第90番目のヌクレオチドまでのヌクレオチド配列を含むことが好ましい。この部分は、CODHプロモーターにおいて、遺伝子を発現する上で重要な部分だからである。
また、上記CODHプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号1により示されるヌクレオチド配列に含まれることが好ましい。
上記CODHプロモーターは、それによって発現される外来遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の活性を、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターによって発現される前記外来遺伝子の翻訳産物であるタンパク質の活性を基準にして評価することが好ましい。mRNA発現量だけでは、真に、外来遺伝子を高発現するものであるか否かを確定できないからである。
CODHプロモーターにより外来遺伝子を発現する合成ガス資化性好熱性細菌を作製する方法としては、例えば、特開2013−90600号公報に記載の外来遺伝子導入方法において、G3PDプロモーター領域の代わりにCODHプロモーター領域を用い、さらに、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ldh)の代わりに、所望の外来遺伝子を用いることができる。外来遺伝子としては、例えば、後述する実施例にも記載した、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus)のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)などが挙げられる。
本発明の第二の態様は、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(以下「lacZ」という。)をレポーター遺伝子として用いる、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターをスクリーニングする方法である。
本発明のスクリーニング方法は、G3PDプロモーターよりも遺伝子の転写量が少ないCODHプロモーターの方が、遺伝子の翻訳産物の活性が高かったという驚くべき実験事実に基づくものである。これは、CODHプロモーターの配列の中にmRNAからタンパク質への翻訳を特に活性化する仕組みがあるためと推察される。
本発明のスクリーニング方法においては、レポーター遺伝子またはプロモーター本来の遺伝子、好ましくはプロモーター本体の遺伝子の転写量、およびレポーター遺伝子の翻訳産物の活性の両方を評価することが好ましい。遺伝子の転写量によって予備的なスクリーニングを行い、高発現が予想されるものについてのみ翻訳産物の活性を評価して本スクリーニングすることで、工程数を省くことができるからである。
このスクリーニング方法は、次の(1)〜(4)の工程を含んでもよい。
(1)定量RT−PCRを用いてmRNAの転写量を測定して、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子以外の候補遺伝子について、転写量が多い方から5〜10程度の遺伝子にまで絞り込む工程
(2)合成ガス資化性好熱性細菌において、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(以下「G3PDプロモーター」という。)を付加したサーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)を染色体上に組み込んだ形質転換株(以下「対照株」という。)およびG3PDプロモーター以外のプロモーターを付加したlacZを染色体上に組み込んだ形質転換株(以下「試験株」という。)を準備する工程
(3)対照株および試験株においてlacZを発現させ、LacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性を測定する工程
(4)試験株のLacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性と、対照株のLacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性とを比較し、試験株のLacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性が対照株のLacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性よりも高い場合に、前記試験株に組み込んだ遺伝子プロモーターを、合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターとして選択する工程
本発明のスクリーニング方法によってスクリーニングされたプロモーターとしては、クエン酸合成酵素遺伝子プロモーター、DNAプライマーゼ遺伝子プロモーター、DNAアデニンメチラーゼ遺伝子プロモーターおよび一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターを挙げることができる。
本発明の第三の態様は、β−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ(Moorella)属細菌である。モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073 株のゲノム情報(GenBankアクセッションNo.CP000232)を参照しても、染色体上にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子は存在していないなど、野生型のモーレラ属細菌はβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を持たないため、β−ガラクトシダーゼを発現させるためには、β−ガラクトシダーゼ遺伝子およびそれを発現するためのプロモーターを導入する必要がある。
β−ガラクトシダーゼ遺伝子およびそれを発現するためのプロモーターは、容易に脱落しないように、プラスミド上ではなく、染色体上に組み込まれることが好ましい。
前記プロモーターは、特に限定されるものではないが、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、クエン酸合成酵素遺伝子プロモーター、DNAプライマーゼ遺伝子プロモーター、DNAアデニンメチラーゼ遺伝子プロモーターおよび一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択されるいずれか1つであることが好ましく、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター、DNAプライマーゼ遺伝子プロモーターおよび一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択されるいずれか1つであることがより好ましい。これらのプロモーターにより、比較的高い発現量が得られるからである。
上記β−ガラクトシダーゼ遺伝子は、特に限定されるものではないが、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株に由来するβ−ガラクトシダーゼ遺伝子であることが好ましい。モーレラ属細菌で遺伝子発現させた実績があるとともに、モーレラ属細菌の培養温度でも十分な活性を有する酵素をコードしているからである。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、合成ガス資化性好熱性細菌であるモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株について、定量的RT−PCRを用いてmRNA相対発現量を測定し、発現量上位5位までの遺伝子について、そのプロモーター領域をサーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)に付加してモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株に導入して、LacZタンパク質を発現させ、そのβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。
1.モーレラ用基本培地
表1−1に示す成分をイオン交換水に溶解し、5N HClでpHを6.9に調整し、イオン交換水で900mLにメスアップし、培地の色が青から赤に変色するまで20分間ボイルし、窒素ガス/炭酸ガス(80:20)を注入しながら氷中で20分間冷却した後、予め炭酸ガスを注入しておいた125mLバイアル瓶に45mLずつ分注し、さらに3分間、炭酸ガスを注入し、ブチルゴム栓とアルミシールで密封し、オートクレーブ(121℃、15分間)してモーレラ用基本培地を調製した。
なお、完全合成培地調製時には酵母エキスを加えずに培地を調製した。
モーレラ用基本培地は、クロストリジウム・リュングダーリィ(Clostridium ljungdahlii)の培養に用いられるATCC 1754 PETC培地を改変したものである。改変として、L−システイン塩酸塩一水和物の最終濃度を0.3g/Lに減らし、硫化ナトリウム九水和物(NaS・9HO)を除いた。培地作製は、還元剤(システイン塩酸塩一水和物、60g/L)と基質(フルクトース等)とを別々に調製した。嫌気的に培地を調製する方法として、ハンゲートの方法(Hungate, R. E.: A roll tube method for cultivation of strict anaerobes. Methods Microbiol.; 3B: 117-32 (1969))を改変したミラーらの方法(Miller, T. L. and Wolin, M. J.: A serum bottle modification of the Hungate technique for cultivating obligate anaerobes. Appl. Microbiol.; 27 (5): 985-7 (1974))を用いた。各成分の組成および調製手順は上記したとおりである。
2.定量的RT−PCRによるモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株のmRNA相対発現量の測定
2−1)転写量を測定する遺伝子の選択
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株の全ゲノム情報から、発現量が多いと考えられる一次代謝関連遺伝子およびハウスキーピング遺伝子を中心に、表2−1に示す23遺伝子を選択した。表2−1には、選択した23遺伝子の産物のORFの開始位置および終端位置(GenBankアクセッションNo.CP000232での位置)も示す。
プロモーターの選択をするために定量的RT−PCR(qRT−PCR)を用いて、選択した23遺伝子のmRNA相対転写量を測定した。
表2−2には、選択した23遺伝子の定量的RT−PCRで使用するプライマーの名称、配列、ゲノムの開始位置および終端位置(GenBankアクセッションNo.CP000232での位置)、長さ(mer)を示す。
2−2)定量的RT−PCR
NucleoSpin(R) RNA II(MACHEREY−NAGEL)を用いてトータルRNAを抽出した。抽出方法は付属の標準プロトコルに従った。定量的RT−PCRの条件を以下に示す。
2−3)結果
選択した23遺伝子のmRNA相対発現量を、gyrBを基準として、図1に示す。
選択した23遺伝子から高いmRNA相対発現量を示した5遺伝子を選抜した(表2−4)。これらの遺伝子のプロポーターについて、さらに検討を行った。
3.レポーター遺伝子の選定
3−1)概要
レポーター遺伝子として、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株由来の耐熱性β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)のモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株への導入を試みた。
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(本明細書において「G3PDプロモーター」という場合がある。)およびSD配列により転写および発現を制御し、ダブルクロスオーバーの相同組換えを利用してオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pyrF)と共にモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株株の染色体上に組み込んだ(図2を参照)。
製作したlacZ(遺伝子)導入株(本明細書において「lacZ−G3PD株」という場合がある。)からHisTagを用いてLacZ(タンパク質)を精製し、SDS−PAGEを用いて発現を確認し、精製LacZの活性測定によって、lacZがレポーター遺伝子として使用可能か否かの検討を行った。
3−2)使用菌株およびプラスミド
使用した菌株およびプラスミドを下記に示す。
3−3)実験方法
3−3−1 大腸菌の培養
大腸菌は2×YT培地およびSOB培地を使用し、37℃で培養した。培地にはカナマイシンを20μg/mLを含み、カナマイシン耐性のスクリーニングを行った。
3−3−2 コンピテントセルの作製
コンピテントセルの作製は、井上の方法(Inoue, H., Nojima, H., and Okayama, H. (1990). Gene 96 (1): 23-28)を参考に以下の手順で行った。
まず、大腸菌を寒天末に塗布し、37℃で1晩培養した。得られたシングルコロニーを2×YT培地 5mLに植菌し、6〜8時間振とう培養(37℃、280rpm)した。
さらに、得られた培養液を100mLのSOB培地に2mL植菌し、OD600=0.55程度になるまで振とう培養(18℃、120rpm)した。
得られた培養液を50mLずつ分注し、10分間氷上静置した。10分後、遠心分離(2500×g、4℃)し、上清を取り除いた後、氷冷した16mLのInoue Transformation Bufferで菌体ペレットをタッピングにより静かに懸濁した。懸濁後、氷上で10分間静置し、遠心分離(2500×g、4℃)した。遠心分離後、上清を取り除き、氷冷した4mLのInoue Transformation Bufferで菌体ペレットをタッピングにより静かに懸濁した。300μLのDMSO(ジメチルスルホオキシド)を添加し、混合した後、適当量分注し、液体窒素により急速冷凍した。作製したコンピテントセルは−80℃で保存した。
3−3−3 プラスミドの構築
まず、G3PDプロモーターを付加したlacZを、G3PDプロモーターを連結したlacZを含むpK18mobプラスミドを鋳型として、表3−2に示すプライマーセット「pk18−G3PD−in−F/pk18−G3PD−in−R」およびDNAポリメラーゼとしてKOD FX Neo(東洋紡製)を用いてPCRにより増幅した。
上記G3PDプロモーターを連結したlacZを含むpK18mob プラスミドの構築は、次のとおり行った。
サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223 株の全DNA、およびプライマーpyrF−1765−FとpyrF−1764−Rとを用いて、pyrF相補ベクターpK18−epyrFを鋳型として、pyrF領域を含むベクター領域をPCR増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD FX(PCR酵素)、2×PCR Buffer for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
プライマーG3PD−F11とG3PD−SD−R12とを用いて、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株由来のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のSD配列を含むプロモーター領域(G3PDプロモーター領域)を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR Buffer for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株のトータルDNA、およびプライマーlacZ−F−1とlacZ−R−1との組合せを用いて、サーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)領域を増幅した。PCRの条件は以下の通りである。PCR反応終了後、各PCR産物をゲル抽出した。なお、KOD−Plus−Neo(PCR酵素)、10×PCR Buffer for KOD−Plus−Neo、2mM dNTPsおよび25mM MgSOは、KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
下記表に記載の反応溶液でIn−Fusion PCRを行った。反応条件は、37℃30分→50℃15分とした。なお、5×In−Fusion Reaction BufferおよびIn−Fusion Enzymeは、In−Fusion(R) Advantage PCR Cloning Kit(タカラバイオ社製)に含まれるものを用いた。
In−Fusionサンプルに滅菌水を50μL加えて希釈した。
希釈したサンプル10μLを形質転換に用いた。
ダイレクトPCRによりコロニーを選択した。
In−Fusion PCRおよび形質転換の結果、複数のコロニーを得た。
lacZ−F−1およびlacZ−R−1をプライマーとしたコロニーダイレクトPCRの結果、全ての株において目的のバンドが確認できた。それらの株の中から3株ずつを培養し、プラスミドを抽出した。制限酵素(EcoRI、EcoRV、またはPstI)処理、および電気泳動による確認の結果、全ての株においてlacZの挿入が確認できた。
なお、上記pyrF相補ベクターpK18−epyrFは、次に記載する方法で作製した。
以下に示すプライマーpyrF−up−F1とpyrF−dn−R1との組み合わせを用いて、以下の条件でPCRを行い、pyrF遺伝子翻訳領域とその5’側の約1000bp、3’側の約1000bpを含む約2.7kbの遺伝子断片を増幅した。なお、KOD FX(PCR酵素)、2×PCR Buffer for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
得られたPCR産物についてMagExtractor Kit(東洋紡製)を用いてゲル抽出を行った。
2μLのSmaI処理をしたプラスミド pK18mobを、8μLのゲル抽出したPCR産物、10μLのLigation high Ver.2(東洋紡製)と混合し、16℃で1時間インキュベートした。Escherichia coli HST08 Premium コンピテントセル(タカラバイオ製)にライゲーション溶液10μLを添加して軽く攪拌した。
氷中に10分静置した。
42℃で1分間ヒートショックを与えた後、すぐに氷中に静置した。
SOC培地を1mL加え、37℃で1時間インキュベート後、LB寒天培地(カナマイシン、X−gal、IPTG含有)に塗沫した。
37℃で一晩培養後、生えてきたコロニーを取得した。
生育が見られたコロニーをカナマイシン添加LB寒天培地に移植した後、コロニーダイレクトPCRを行い、インサートの確認を行った。プライマーはpyrFup−F1およびpyrF−dn−R1を用いた。コロニーダイレクトPCRの条件を以下に示す。なお、KOD FX(PCR酵素)、2×PCR Buffer for KOD FXおよび2mM dNTPsは、KOD FX(東洋紡社製)に含まれるものを用いた。
電気泳動によりバンドを確認した。
バンドが確認できた株について、カナマイシンを添加したLB液体培地で一晩培養し、プラスミド抽出を行った。
吸光度による濃度測定、およびEcoRIまたはPstI処理サンプルの電気泳動を行った。
さらに、シーケンスによる塩基配列の解読を行って目的のpyrF遺伝子相補ベクターpK18−epyrFが構築できていることを確認した。
さらに、上流および下流配列を含むpyrF、およびG3PDプロモーターを連結した耐熱性カナマイシン耐性遺伝子(kanR)を含むpk18mobプラスミドを鋳型に、表3−3に示すプライマーセット「pK18−pyrF−inv−F/pk18−pyrF−inv−R」およびDNAポリメラーゼとしてKOD FX Neo(東洋紡)を用いてインバースPCRにより線状ベクターを構築し、In Fusion HD Cloning Kit(クロンテック)を用いてG3PDプロモーターを付加したlacZと線状ベクターをつなげ、プラスミドを構築した。
3−3−4 大腸菌の形質転換
大腸菌への遺伝子導入はコンピテントセルを用いて以下の手順でヒートショックにより行った。
まず、コンピテントセルを−80℃から取り出し、氷上で10分間静置し、解凍した。
コンピテントセル 100μLに対して5μLのDNA溶液を添加し、氷上で30分間静置した。30分後、42℃で90秒間インキュベートし、ヒートショックを行った。ヒートショック後、直ぐに氷上に移し、1〜2分間静置した。
その後、SOC培地を800mL添加し、37℃で45分間培養した。45分後、抗生物質を含む2×YTプレートに塗布し、37℃で12〜16時間培養した。
形成されたコロニーを5mLの2×YTブロスに植菌し、プラスミド抽出を行った。
3−3−5 大腸菌からのプラスミド抽出
大腸菌からのプラスミド抽出はQuantum Prep Plasmid Miniprep Kit(バイオラッド)を用いて、付属のプロトコルに従って行った。抽出したプラスミドは制限酵素処理により目的のプラスミドが構築されていることを確認した。
3−3−6 バイアルを用いた回分培養
バイアル瓶への還元剤の添加や植菌、サンプリングには22G×1・1/4、あるいは27G×1・1/4の注射針(ニプロ)を付けたプラスチック注射器(テルモ)を用いて嫌気的に行った。操作はクリーンベンチ内で行い、注射針を刺すブチルゴム栓の部分は、ガスバーナーであぶって滅菌した。フルクトースで培養する場合は、植菌直前にフルクトース水溶液(200g/L)を培地に対し1%(v/v)、還元剤(60g/L)を2%(v/v)、クエン酸チタン(III)水溶液を1、2滴添加し、前培養液を5%(v/v)植菌した。培養は55℃で、静置培養を行った。
3−3−7 ロールチューブ法によるコロニー形成
ロールチューブの作成はハンゲートの方法(Hungate, R. E.: A roll tube method for cultivation of strict anaerobes. Methods Microbiol.; 3B: 117-32 (1969))に従った。ロールチューブ作成にはモーレラ用基本培地が18mL入ったバイアルに、0.37gの低温ゲル化用寒天末(ナカライテスク、ゲル化温度30−31℃)を添加し、オートクレーブ(125℃、15分間)した培地を使用した。使用前に培地を湯煎により融解し、40℃程度に保ちながら還元剤を0.4mL、フルクトース水溶液を0.2mL、クエン酸チタン(III)溶液を1滴添加した後、菌体を気泡ができないように植菌した。植菌後、氷水を入れたロールチューブ作成装置で回転させながら寒天をバイアルビン側面に固めた。その後、55℃で5〜7日間静置培養した。形成されたコロニーは、クリーンベンチ内で滅菌済みのパスツールピペットを用いて培地ごと取り出し、5mLの培地に植菌し、フルクトースを基質として静置培養した。
3−3−8 エレクトロポレーションを用いたモーレラ・サーモアセティカへの遺伝子導入
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株への遺伝子の導入はエレクトロポレーションを用いた。
まず、dpyrF株をH−COでOD600=0.1程度まで培養し、5800×g、4℃で10分間遠心して上清を除去した。残った菌体にエレクトロポレーション緩衝液を10mL加え、再懸濁後、5800×g、4℃で10分間遠心して上清を除去した。
この操作をもう一度繰り返した後、OD600=1.0程度になるように菌体をエレクトロポレーション緩衝液により再懸濁した。
プラスミド(pK18−lacZ−G3PD)のDNA 2μgを含む溶液を加えた菌体懸濁液 400μLをエレクトロポレーション用キュベット(2mmギャップ)に移し、1500V、500Ω、50μFの条件でパルスをかけた。パルス後、すぐにキュベットを氷中に移し、3〜5分間静置して冷却した。冷却後、菌体懸濁液を、ウラシルを1μg/mL含む培地に植菌し、フルクトースにより55℃で48時間静置培養した。培養後、ロールチューブ法(ウラシルを含まない培地を使用)により形質転換体の単離を行った。
3−3−9 モーレラ・サーモアセティカからのゲノムDNAの抽出
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)からのゲノムDNAの抽出は、定常期まで培養した菌体を使用して行った。ゲノムDNA抽出は、NucleoSpin(R) Tissue キット(Macherey−Nagel)を用いて行った。抽出プロトコルは一部添付のマニュアルを改変して行った。改変としては、Pre−lyseの段階で、180μLのBuffer T1で再懸濁するところを、リゾチーム(東京化成工業)とアクロモペプチダーゼ(和光純薬)を、それぞれ10mg/mLになるように溶解させたTE緩衝液 180μLに菌体ペレットを懸濁し、37℃で10分間反応させた。その後、25μLのプロテイナーゼKを加え、37℃で15分間反応させた。このあとの操作は添付のマニュアルに従った。抽出したゲノムは−20℃で保存し、必要なときに適宜解凍して使用した。
3−3−10 PCRによる形質転換体の確認
形質転換体の確認は、抽出したゲノムを鋳型にPCRすることにより行った。PCRに使用したプライマーを表3−4に示す。PCR反応用酵素は、KOD FX Neo(東洋紡)を用いた。
3−3−11 超音波破砕機による粗酵素液の抽出
粗酵素液の抽出にはH−COでOD600=0.1〜0.15、フルクトースでOD600=0.4〜0.8まで培養した菌体を使用した。
培養液を、5800×g、4℃で10分間遠心し、上清を取り除いた。その後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0) 10mLで菌体ペレットを再懸濁し、5800×g、4℃で5分間遠心し、上清を取り除いた。
この洗浄操作を再度行った後、ソニケーション緩衝液 3〜5mLに菌体ペレットを再懸濁し、超音波破砕機(デジタルソニファイアー、ブランソン)により破砕した。
破砕液を、20400×g、4℃で30分間遠心し、上清を回収した。
回収した粗酵素液を用いて、その後のタンパク質濃度測定や、酵素活性測定に用いた。
3−3−12 HisTagを用いたLacZ精製
LacZ精製はcOmplete His−Tag Purification Resin(ロシュ・アプライド・サイエンス)のプロトコル、また、回収した精製LacZを脱塩するために、Centrifuge filter unit(ミリポア)のプロトコルに従って行った。まず、レジン(150μL)をマイクロ試験管に移し、分取したレジンの20倍容の結合バッファーAを添加し、十分に撹拌した。次に、500×gで10秒間遠心し、上清を取り除き、レジンを平衡化し、そこにHisTagタンパク質を含む溶液を平衡化したレジンに加え、1h転倒混和での穏やかな撹拌を実施した。その後、500×gで10秒間遠心し、上清を取り除いた。次に、レジン量の5倍容の洗浄バッファーを加え、十分に混和し、穏やかに遠心し、上清を取り除いた。本操作を5回繰り返した。レジン量と同量の溶出バッファーを添加し、10分間撹拌し、遠心上清を回収した。次に、脱塩するため、回収した上清をフィルターに入れて、14000×gで10分間遠心した。次にフィルターを逆にして1000×gで2min遠心を行い、バッファー500μLで洗浄を2回行った。LacZを精製した後、SDS−PAGEにて、発現の確認を行った。
3−3−13 タンパク質濃度の測定
粗酵素液のタンパク濃度の測定は、サンプルをソニケーション緩衝液で適宜希釈したうえで、Pierce 660nm Protein Assay Kit(サーモサイエンティフィック)を用いて行った。定量のための標準タンパク溶液にはウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を用い、検量線を求めた。
3−3−14 精製LacZ活性測定
精製LacZ、試薬および滅菌水を混合して試料を調製し、55℃でインキュベートした後、OD405を測定した。精製LacZ活性測定用試料の組成を表3−5に示す。
3−4)結果および考察
3−4−1 G3PDプロモーターを付加したlacZ導入株の作成
モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株由来のG3PDプロモーターおよびSD配列により転写および発現を制御し、ダブルクロスオーバーの相同組換えを利用して、pyrFと共にdpyrF株の染色体上に組み込んだ。
作製した変異株をPCRにより確認した結果、レーン1の野生株(約4.8kb)と比べて、約2.5kb長いバンドが検出された。G3PDプロモーターを付加したlacZの長さが2.5kbであることから、正しく組換えが行われたことが確認出来た(図3)。図3は、G3PDプロモーターを付加したlacZ導入株のPCR結果を示す電気泳動像である。また、PCR産物のシーケンスによっても、正しいDNA配列であることが確認出来た。
3−4−2 SDS−PAGEによる精製LacZ発現の確認
HisTagを利用してLacZ(タンパク質)の精製を行い、SDS−PAGEを用いてLacZ発現の確認を行った。LacZは分子量約87kDaのタンパク質であり、レーン5のバンドが約87kDaの位置に検出されたため、LacZの発現が確認出来た(図4)。
3−4−3 LacZ活性測定
3−3−14に示したプロトコルと組成によってLacZの活性測定を行った。図5から、精製LacZの活性を確認することが出来た。下記表にその結果を示した。
3−4−4 考察
3−4−2および3−4−3の結果によれば、LacZの発現が確認でき、活性が見られた。これにより、lacZをレポーター遺伝子として利用出来ることが確認された。そこで、以下では、lacZの転写量および翻訳量に及ぼすプロモーターの影響を調べた。
4.lacZ転写量に及ぼすプロモーターの影響
4−1)概要
3の結果からlacZをレポーター遺伝子として使用できることが確認できたため、3で選択したプロモーターおよびそのSD配列を付加したlacZをダブルクロスオーバーの相同組換えを利用して、pyrFとともにdpyrF株の染色体上に組み込んだ。
次に、プロモーターを付加したlacZ導入株のmRNAを抽出し、定量的RT−PCRを用いてlacZ転写量を測定した。
4−2)実験方法
4−2−1 使用菌株およびプラスミド
4−2−2 プラスミドの構築
プラスミドの構築は3−3−3と同様に行った。2の結果からlacZに5つのプロモーターとプロモーター由来のSD配列を付加したプラスミドの構築を行った。選択した転写量の高かった遺伝子を下記表に示す。
各プロモーターを付加したlacZを作成するために、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) lacZ−G3PD株のゲノムを鋳型として、表4−3に示すプライマーセット「pk18−cis−in−F/pk18−cis−in−R」、「pk18−primase−in−F/pk18−primase−in−R」、「pk18−M1737−in−F/pk18−M1737−in−R」、「pk18−CODH−in−F/pk18−CODH−in−R」を用いてPCRにより各プロモーターを増幅した。さらにpk18−lacZ−G3PDを鋳型にプライマーセット「pk18−pyrF−inv−F/pk18−pyrF−inv−R」を用いてインバースPCRにより線状ベクターを構築し、In Fusion HD Cloning Kitを用いて各プロモーターと線状ベクターをつなげ、プラスミドを構築した。
4−2−3 各プロモーターを付加したlacZのモーレラ・サーモアセティカへの遺伝子導入
構築したプラスミドを3−3−1と同様に大腸菌の形質転換を行い、3−3−2から3−3−10までの同様の工程を経て、各プロモーターを付加したlacZのモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)への遺伝子導入を行い、lacZ導入株を構築した。
形質転換体の確認は、抽出したゲノムを鋳型にPCRすることにより行った。PCRに使用したプライマーを表4−4に示す。PCR反応用酵素はKOD FX Neo(東洋紡)を用いた。
4−2−4 プロモーターを付加したlacZ導入株のmRNA抽出
製作したプロモーターを付加したlacZ導入株をバイアルを用いてフルクトースを基質として回分培養を行い(3−3−6参照)、OD600=0.5〜0.65でmRNA抽出を行った。NucleoSpin RNA IIを用いてトータルRNAを抽出した。抽出方法は付属の標準プロトコルに従った。一部改変した点は、抽出の前処理としてリゾチームとアクロモペプチダーゼをそれぞれ10mg/mLになるように溶解したTE緩衝液 100μLに菌体ペレットを懸濁し、37℃で10分間反応させた。抽出したトータルRNAは−20℃で保存した。
4−2−5 定量的RT−PCR
まず、抽出したmRNAを鋳型として、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT−PCR Kit(タカラバイオ)を用いて、cDNAへの逆転写反応を行った。逆転写反応はReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡)を用いて行った。逆転写に用いた反応液の組成と反応条件を表4−5に示す。
cDNAへの逆転写の後、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT−PCR Kit(タカラバイオ)を用いて、定量的RT−PCRで転写量測定を行った。使用したプライマーを表4−6に、定量的RT−PCRの条件を表4−7および表4−8に、それぞれ示す。また、ハウスキーピング遺伝子であるDNA gyrase subunit B(gyrB)のmRNA量を内部標準として各遺伝子の相対転写量を測定した。
4−3)実験結果・考察
4−3−1 各プロモーターを付加したlacZのモーレラ・サーモアセティカへの遺伝子導入
cis、CODHまたはprimaseの各遺伝子のプロモーターを付加したlacZを導入したプラスミドを構築し、ダブルクロスオーバーの相同組換えを利用してpyrFとともにモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) dpyrF株の染色体上に組み込んだ。作成した変異株をPCRにより確認した結果(図6〜8)、レーン1の野生株(約4.8kb)と比べて、約2.5kb長いバンドが検出された。プロモーターを付加したlacZの長さが2.5kbであることから、正しく組換えが行われたことが確認出来た。また、シーケンスでも正しいDNA配列であることが確認出来た。
4−3−2 定量的RT−PCRを用いた転写量測定
定量的RT−PCRを用いて製作したlacZ導入株の転写量測定を行った。
図9に各プロモーターが及ぼす転写量の影響のグラフを示した。
4−3−3 考察
図9からG3PDプロモーターが最もlacZのmRNA転写量に及ぼす影響が大きいことが分かった。他のプロモーターと比較して約3倍もの転写量を示し、他のプロモーターはほぼ同等の値を示した。モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) ATCC 39073株(Control−1)の遺伝子転写量測定と比較すると双方ともG3PDプロモーターが最も転写活性が高いことが確認できた。
5.LacZ(タンパク質)の活性測定
5−1)概要
3、4で製作した株を用いて超音波破砕機による粗酵素液の抽出を行い、タンパク質濃度測定、活性測定を行った。
5−2)実験方法
3−3−11のプロトコルと同様に超音波破砕機による粗酵素液の抽出を行い、3−3−13、14のプロトコルと同様にタンパク質濃度を測定し、活性測定を行った。その際、基質:フルクトース、OD405=0.5〜0.65で粗酵素液の抽出を行った。
5−3)実験結果・考察
驚くべきことに、CODHプロモーターを付加した場合に、最もLacZ活性が高く、他のプロモーターを付加した場合と比較して、約2倍もの活性値の差が得られた(図10を参照)。一方、mRNA転写量が最も高かったG3PDプロモーターを付加した場合には、CODHプロモーターを付加した場合の約1/2に止まり、高い活性値は得られなかった。これは、CODHプロモーターの配列の中にmRNAからタンパク質への翻訳を特に活性化する仕組みがあるためと推察される。
6.総括
lacZをレポーター遺伝子として利用可能であることが確認出来た。
転写活性はG3PDプロモーターを付加した場合に最も高く、他のプロモーターを付加した場合に比べて約3倍以上の転写活性を示した。しかし、産物であるLacZタンパク質のβ−ガラクトシダーゼ活性は、CODHプロモーターを付加した場合が最も高く、G3PDプロモーターを付加した場合に比べて約2倍の比活性を示した。このことから、外来遺伝子を高発現する遺伝子プロモーターをスクリーニングするためには、遺伝子産物のタンパク質の活性を測定することが必須であり、mRNA転写活性は予備的スクリーニングのために有用であることがわかった。
なお、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica) LacZ−G3PD株は、M−G3PD−lacZ株と名付け、独立行政法人評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託を申請した(受領番号:NITE AP−01904)。
識別の表示:M−G3PD−LacZ
受領番号:NITE AP−01904
受領日:平成26年7月29日
受託機関:独立行政法人評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター

Claims (3)

  1. 合成ガス資化性好熱性細菌において外来遺伝子をグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターよりも高発現する一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域であって、
    ヌクレオチド配列が以下により表される、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域
    5'- accagattaccggggtatacggcggggggaaccggagttctctccggaaaaaaatgggtaataacacctgttaacccaacgggtgtaggattaaatgtaccaaggaggtaagcagt -3'
  2. β−ガラクトシダーゼ遺伝子および前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するためのプロモーター領域が染色体上に組み込まれた、β−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ属細菌であって、
    前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するためのプロモーター領域が、以下のヌクレオチド配列で表される一酸化炭素デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域である、β−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ属細菌。
    5'- accagattaccggggtatacggcggggggaaccggagttctctccggaaaaaaatgggtaataacacctgttaacccaacgggtgtaggattaaatgtaccaaggaggtaagcagt -3'
  3. 前記β−ガラクトシダーゼ遺伝子がサーモアネロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudethanolicus) ATCC 33223株に由来するβ−ガラクトシダーゼ遺伝子である、請求項に記載のβ−ガラクトシダーゼを発現するモーレラ属細菌。
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