以下に、本発明に係るモータ制御装置の実施の形態を図1〜図21を用いて説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではなく、各実施の形態を適宜変更してもよく、適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。以下の実施の形態では、駆動力としてトルクを発生させる回転型のモータを例に挙げて説明しているが、リニアモータのように直線的な推力を駆動力として発生させる装置に関しても、本発明のモータ制御装置を同様に適用可能である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。モータ装置は、モータ制御装置1、モータ2、モータ2の駆動軸の回転状態(動作状態)を検出する位置検出器3、及び伝達機構100を有する。
モータ2は、モータ制御装置1により制御されて駆動する。伝達機構100は、モータ2のトルクを負荷4に伝達し、駆動軸101を介してモータ2と接続され、負荷軸102を介して負荷4と接続される。位置検出器3は、モータ2の駆動軸の回転状態を検出して位置信号Spとして出力する。位置検出器3は例えばロータリエンコーダである。なお、本実施の形態では、位置検出器3とモータ制御装置1とを別構成としたが、モータ制御装置1が位置検出器3を有する構成であってもよい。また、ロータリエンコーダに代えて速度センサ又は加速度センサ等を用いてもよい。
モータ制御装置1は、駆動指令生成器10、トルク指令生成器11、電流制御器12、接触検出器13、及びバックラッシ推定器14を有する。駆動指令生成器10は、トルク指令生成器11に対して駆動指令Cdを出力する。トルク指令生成器11はまず、位置信号Sp及び駆動指令Cdを用いて、位置検出器3が出力する位置信号Spが駆動指令Cdを追従するように、トルク指令Ctを生成する。さらに、このトルク指令Ctを電流制御器12及び接触検出器13に出力する。電流制御器12はトルク指令Ctに対応する電流Imをモータ2に出力する。
接触検出器13は、入力されたトルク指令Ctを用いて、伝達機構100における接触を検出して検出結果を接触信号Scとして出力する。バックラッシ推定器14は、接触信号Scと位置信号Spを用いて、伝達機構100におけるバックラッシを推定する。
ここで、伝達機構100の構成について図2により説明する。図2は、実施の形態1に係るモータ装置の伝達機構100の内部構造と、正転駆動及び逆転駆動によるバックラッシの計測過程とを示した図である。図2(a)、(b)及び(c)が、それぞれバックラッシを計測する前の歯車の状態、正転駆動した歯車の状態、及び逆転駆動した歯車の状態を示す。なお、本実施の形態では、図中(b)の矢印で示す反時計回りの方向を正転方向とし、(c)の矢印で示す時計回りの方向を逆転方向としているが、正転方向及び逆転方向の方向を入れ替えてもよいことは言うまでもない。以下、回転型モータによる駆動は、「正転駆動」及び「逆転駆動」に対応する。また、回転型モータ又はリニアモータによる駆動は、「正駆動」及び「逆駆動」に対応する。
駆動軸101は、モータ2の駆動回転軸であり、この駆動軸101に駆動側歯車(駆動側伝達部)101aが取付けられる。負荷軸102は、伝達機構100を介して駆動軸101から負荷4に対してトルクを伝達するための被駆動回転軸である。この負荷軸102に負荷側歯車(負荷側伝達部)102aが取付けられる。伝達機構100において、駆動側歯車101a及び負荷側歯車102aが噛みあうことで、モータ2のトルクが負荷4に伝達される。
なお、本実施の形態の伝達機構100として、2つの歯車を備えた減速機を例に挙げて説明しているが、歯車を3つ以上有する伝達機構を用いてもよい。また、2つの歯車の代わりに、ラックアンドピニオン、ボールネジなどにより構成されていてもよい。駆動側歯車101a及び負荷側歯車102aを、両歯車と呼ぶ場合がある。
次に本実施の形態で、モータ2の正転駆動及び逆転駆動により伝達機構100のバックラッシを計測するモータ制御装置1の動作手順を説明する。
本実施の形態において、バックラッシは角度バックラッシを意味するものとして以下説明を行う。ここで、角度バックラッシとは、一方の歯車が固定されたとき、他方の歯車が動くことができる角度の最大値のことである。図2(c)に示す点線間の角度θがバックラッシである。従って、図2(b)に示す状態から図2(c)に示す状態になるまでに、駆動軸101が回転する角度すなわち位置信号Spの変化量からバックラッシを測定することができる。角度バックラッシの代わりに、法線方向バックラッシ、円周方向バックラッシなど異なる種類のバックラッシを用いてもよい。
なお、以下では図2(b)から図2(c)の状態になるまでの時間を接触所要時間Tcと呼ぶ。また、接触所要時間Tcでのモータ2の位置信号Spの変化量を接触位置変位Pcと呼ぶ。さらに、バックラッシを測定するに際し、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの接触には2つの場合があり、以下では両者を区別して説明を行う。「測定前接触」とはバックラッシの測定を開始するため、両歯車101a及び102aが図2(b)に示す状態となったことであるとする。より詳細には一方の方向に駆動軸101を正転駆動することで、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとが接触することであるとする。「測定完了接触」とは、図2(c)に示す状態となったことであり、逆転駆動による接触である。より詳細には両歯車101a及び102aが「測定前接触」した後、モータ2が駆動軸101を一方の方向とは反対の他方の方向に逆転駆動させることで、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとが接触することである。
図2(a)に示したように、正転駆動開始時には、両歯車101a及び102aが機械的に互いに接触しているとは限らない。そこでまず、駆動指令生成器10の生成する図中矢印で示す正転方向の駆動指令Cdにより、モータ2は駆動軸101を反時計回りに回転させることで、駆動側歯車101aが正転駆動する。駆動指令Cdは、例えばモータ2に対する位置指令値、速度指令値、加速度指令値などのパラメータにより構成される。図2(b)に示したように、正転駆動することで、両歯車101a及び102aが測定前接触する。
ここで、逆転駆動の開始時刻の検出方法の一例を説明する。負荷軸102と負荷軸102を支える軸受け等との間に発生する摩擦力により、両歯車101a及び102aが接触する際に減速して停止するように、駆動指令Cdにおける加速度指令値及び速度指令値が調整される。これにより、バックラッシ推定器14は位置信号Spにより逆転駆動の開始時間を検出する。バックラッシ推定器14が例えば、位置信号Spが変化しない状態すなわちモータ2の停止状態を予め設定された時間検知した後、さらにモータ2の停止状態の直前とは逆の方向における位置信号Spの変化を検出した場合、その検出した時刻を逆転駆動の開始時間とする。なお、位置信号Spから逆転駆動の開始時間を判断する代わりに、駆動指令Cdがバックラッシ推定器14に入力される構成とし、バックラッシ推定器14が、この駆動指令Cdにより、逆転駆動の開始時間を判断するようにしてもよい。
次に、駆動軸101が逆転駆動されると、両歯車101a及び102aは、図2(b)に示す測定前接触とは反対の面で、図2(c)で示す通り測定完了接触する。この測定完了接触を、接触検出器13が検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。接触信号Scを電圧で表す場合、例えば非接触状態を0Vの電圧とし、接触状態を0Vとは異なる値、例えば2Vの電圧として接触信号Scを出力する。
駆動軸101の回転により両歯車101a及び102aが接触すると、モータ2が駆動する慣性モーメントが増大し、モータ2の駆動に大きなトルクが必要になる。そのため、トルク指令生成器11は位置信号Spが駆動指令Cdに追従するために必要なトルク指令Ctを逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)に増加させる。接触検出器13は、このトルク指令Ctの増加を検出して、伝達機構100の測定完了接触を検出する。
なお、測定前接触及び測定完了接触を確実に生じさせるためには、伝達機構100の実際のバックラッシよりも大きく正転駆動及び逆転駆動させるための駆動指令Cdが必要である。そのため、予め許容する最大のバックラッシ(最大バックラッシ許容量)を定めておき、駆動指令生成器10は、駆動軸101を許容する最大のバックラッシに相当する角度より十分大きく駆動させる駆動指令Cdを生成してもよい。
図3は、実施の形態1に係るモータ制御装置1の逆転駆動時における時系列波形の一例を示した図である。すなわち、図中(a)〜(d)において横軸は時間である。縦軸は、それぞれ(a)がトルク指令Ctを、(b)がトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量を、(c)が位置信号Spを、(d)が接触信号Scを示す。
位置信号Spがバックラッシに相当する角度分変化すると、両歯車101a及び102aが接触する。ここで、トルク指令Ctが一時的に増大(あるいは減少)するため、図3(a)に示すピークA1が現れる。トルク指令Ctの変化を示す時間微分値もまた一時的に増大(あるいは減少)するため、図3(b)に示すピークB1が現れる。図3(c)に示す位置信号Spの変化量Cは、接触所要時間Tcにおける位置信号Spの変化量であり、バックラッシに相当するものである。
接触検出器13による測定完了接触の検出方法の一例について説明する。トルク指令Ctの単位時間当たりの変化量が予め設定されたしきい値を逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)に超えた場合に、接触検出器13が測定完了接触を検出して、両歯車101a及び102aの接触状態を示す接触信号Scをバックラッシ推定器14に出力する。ここで、予め設定されたしきい値は例えば図3(b)の破線b1である。なお、接触検出器13は、トルク指令Ctの単位時間当たりの変化量ではなくトルク指令Ctが予め設定されたしきい値(破線a1)を逆転駆動させる方向に超えた場合に、測定完了接触を検出したとするようにしてもよい。換言すると、接触検出器13は、トルク指令Ct又はトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量が予め設定されたしきい値を逆転駆動させる方向に超えた場合に、測定完了接触を検出したとする。また、しきい値の決定方法としては、例えば、トルク指令Ctに基づき、動的に設定してもよい。なお、トルク指令Ct及びトルク指令Ctの変化量において逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)は、例えば図3(a),(b)ではマイナスの方向である。
図3(d)において、T1は駆動軸101が逆転駆動している期間(以下、「逆転駆動期間」と呼ぶ。)を示している。また、T2は両歯車101a及び102aが接触していない非接触状態である期間(以下、「非接触期間」と呼ぶ。)であり、この時間において駆動側歯車101aのみが回転し、負荷側歯車102aは停止している。一方で、接触期間T3は両歯車101a及び102aが接触している接触状態の期間(以下、「接触期間」と呼ぶ。)であり、接触期間T3では負荷側歯車102aが駆動側歯車101aとともに回転している。なお、非接触期間T2から接触期間T3に切り替わる点が測定完了接触の開始時間であり、接触期間T3の間は駆動側歯車101aが負荷側歯車102aを駆動させるが、接触期間T3から時間がさらに経過すると両歯車101a及び102aが離れるため、接触信号Scは非接触状態を示す。また、非接触期間T2は上述した接触所要時間Tcでもある。
ここで、バックラッシ推定器14によるバックラッシの推定方法について説明する。図3(a)、(b)に示すトルク指令Ct又はトルク指令Ctの変化量の値により、接触検出器13により接触信号Sc(図3(d))が生成される。バックラッシ推定器14は、まず、逆転駆動の開始から接触信号Scが立ち上がるまでの非接触期間(接触所要時間Tc)T2を求める。次に、図3(c)に示すように、測定前接触から測定完了接触までの時間(接触所要時間Tc)における位置信号Spの変化量Cを求め、この変化量Cからバックラッシを推定する。
さらに、トルク指令Ctが最大(あるいは最小)すなわち図3(a)に示すピークA1になる場合、又はトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量が最大(あるいは最小)すなわち図3(b)に示すピークB1になる場合に、接触検出器13が測定完了接触を検出する構成としてもよい。これにより測定完了接触を検出する際に、しきい値の設定が不要になる。
本実施の形態では、トルク指令生成器11は、駆動指令Cdと位置信号Spとに基づいて、トルク指令Ctを生成する。これにより、トルク指令Ct又はトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量が、予め設定されたしきい値を逆転駆動に対応する方向に超えた場合、あるいは最大になる場合に、接触検出器13が測定完了接触を検出したとすることでバックラッシの推定が可能となっている。トルク指令Ct又はトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量が最大であることを判定する方法の例としては、予め最大値を定義しておく方法、又は逆転駆動期間TIで最も大きいトルク指令Ct又はトルク指令Ctの単位時間当たりの変化量の値を最大とする方法が挙げられる。
図4は、駆動指令Cdにおける加速度指令値を一定とした場合における時系列波形の一例を示した図である。図中(a)〜(d)において横軸は時間である。縦軸は、それぞれ(a)が駆動指令Cdによる加速度指令値を、(b)がトルク指令Ctを、(c)が位置信号Spを、(d)が接触信号Scを示す。また、図4(a)に示すように、予め設定された時間Taだけ、駆動指令生成器10は逆転駆動時にモータ2の加速度が一定になるように駆動指令Cdを与える。これにより、図4(b)に示すように、モータ2の逆転駆動時において、測定完了接触した時点を除きトルク指令Ctの変化が小さいため、トルク指令CtのピークA11が顕著に現れるようになる。なお、加速度指令値を大幅に変化させる駆動指令Cdを用いた場合には、測定完了接触した時点以外でもトルク指令Ctが大きく変化して、トルク指令Ctのピークができる。このトルク指令Ctのピークがノイズとなり、測定完了接触であると誤検出される場合がある。一方で、本実施の形態のように加速度指令値を一定にすることで、このようなノイズの問題を解決することができる。なお、図4(d)のT1、T2、T3は、図3(d)と同様に、それぞれ逆転駆動期間、非接触期間、接触期間である。
図5は、駆動指令Cdにおける速度指令値を一定とした場合における時系列波形の一例を示した図である。図中(a)〜(d)において横軸は時間である。縦軸は、それぞれ(a)が駆動指令Cdにおける速度指令値を、(b)がトルク指令Ctを、(c)が位置信号Spを、(d)が接触信号Scを示す。さらに、図5(a)に示すように、期間Tbでは、速度指令値を一定にする駆動指令Cdにより、測定完了接触した時点を除きトルク指令Ctがほぼ一定の値になる。従って、このような駆動指令Cdを用いることで、図5(b)に示すように、バックラッシ分だけ駆動側歯車101aが回転したときに、トルク指令CtのピークA12がさらに顕著に現れるようになる。このときの接触信号Scの時間変化は、理想的には図5(d)に示すようになる。なお、図5(d)のT1、T2、T3は、図3(d)と同様に、それぞれ逆転駆動期間、非接触期間、接触期間である。
特許文献2に挙げた従来技術では、両歯車101a及び102aの機械的な接触を、駆動軸101のトルクセンサを用いて測定し、同時に位置信号Spを用いてバックラッシを計測する必要があった。しかし、本実施の形態のモータ制御装置では、トルク指令生成器11が、駆動指令Cdと位置信号Spとに基づいてトルク指令Ctを生成し、電流制御器12がトルク指令Ctに基づいてモータ2に電流Imを供給し、モータ2を駆動する。従って、本実施の形態のモータ制御装置では、センサから得られる情報として、位置信号Spさえ得られればバックラッシの計測が可能である。これにより、より幅広い構成の装置に接続することができる。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。本実施の形態では、接触検出器13aがトルク指令Ctの代わりに位置信号Spを用いて測定完了接触を検出する点が実施の形態1と異なる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
本実施の形態では、接触検出器13aが、モータ2の回転状況を示す位置信号Spから求めたモータ2の加速度を用いて、伝達機構100の内部の測定完了接触を検出する。
本実施の形態では、接触検出器13aが、モータ2の速度、加速度、及びジャークを、それぞれ位置信号Spを時間についてそれぞれ1回微分、2回微分、及び3回微分することで導出する。上述のように速度、加速度、及びジャークを微分して導出する代わりに、離散時間での差分をとるようにしてもよい。また、微分または離散時間における差分をする前に位置信号Spにハイパスフィルタを適用してもよい。これにより、位置信号Spの変動成分をより明確にすることができる。
接触検出器13aは、逆転駆動時の加速度を用いて、伝達機構100における測定完了接触を検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。
図7は、実施の形態2に係るモータ制御装置の逆転駆動時の時系列波形の一例を示した図である。図中、縦軸については、(a)が位置信号Spにより算出された加速度、(b)が加速度の単位時間当たりの変化量であるジャーク、(c)が位置信号Sp、(d)が接触信号Scを示す。
接触検出器13aは、加速度が予め設定されたしきい値(例えば図7(a)の破線a2)を正転駆動させる方向(正転駆動に対応する方向)に超えた場合に、測定完了接触を検出したとする。これは、両歯車101a及び102aが接触することで、駆動側歯車101aの加速度が一時的に減少(あるいは増大)するためである。また、接触検出器13aは、加速度の代わりにジャークが図7(b)に示す破線b2を正転駆動させる方向に超えた場合に、測定完了接触を検出したとしてもよい。しきい値の決定方法としては、例えば、トルク指令Ctに基づき、動的に設定してもよい。なお、加速度及びジャークにおいて正転駆動させる方向(正転駆動に対応する方向)は、例えば図7(a),(b)ではプラスの方向である。
なお、しきい値を設定する代わりに、加速度が最大(あるいは最小)すなわち図7(a)に示すピークA2になる場合、又はジャークが最大(あるいは最小)すなわち図7(b)に示すピークB2になる場合に、測定完了接触を検出したとしてもよい。これによりしきい値の設定が不要になる。
本実施の形態では、接触検出器13aが位置信号Spにより算出された加速度、又は位置信号Spにより算出されたジャークが予め設定されたしきい値を逆転駆動に対応する方向に超えた場合、あるいは最大となった場合に、測定完了接触を検出したとすることでバックラッシの推定が可能となっている。そのため、トルク指令生成器11は、必ずしも駆動指令Cd及び位置信号Spに基づいてトルク指令Ctを生成する必要はなく、駆動指令Cdのみに基づいてトルク指令Ctを生成する構成も考えられる。位置信号Spにより算出された加速度、又は位置信号Spにより算出されたジャークが最大であることを判定する方法の例としては、予めこれらの最大値を定義しておく方法、又は逆転駆動期間TIで最も大きい加速度又はジャークの値を最大とする方法が挙げられる。
特許文献2に挙げた従来技術では、両歯車101a及び102aの機械的な接触を、駆動軸101のトルクセンサを用いて測定し、同時に位置信号Spを用いてバックラッシを計測する必要があった。しかし、本実施の形態では、接触検出器13aが、位置信号Spを用いて算出した加速度あるいはジャークを用いて、両歯車101a及び102aの機械的な接触を検出している。すなわち、接触検出器13aは、位置信号Spに基づいて算出した信号を用いてモータ2に接続する駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間の接触を測定完了接触として検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。さらに、バックラッシ推定器14が、接触信号Sc及び位置信号Spに基づき、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間のバックラッシを推定する。従って、本実施の形態では、センサから得られる情報として、位置信号Spさえ得られればバックラッシの計測が可能である。これにより、より幅広い構成の装置に接続することができる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。本実施の形態では、接触検出器13bがトルク指令Ctに加えて位置信号Spを用いて測定完了接触を検出する点が実施の形態1と異なる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
接触検出器13bは、まず、伝達機構100の内部で両歯車101a及び102aの接触等により発生するトルクを示す抽出外乱Deを算出する。次に、抽出外乱Deを用いて、測定完了接触を検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。なお、抽出外乱Deは式(1)のように算出される。
De=Jm・Ac−Ct・・・式(1)
ここでまた、右辺の第一項は、実際にモータ2が加速されるのに用いられた慣性分のトルクを示す。Jm及びAcは、それぞれモータ2の回転子の慣性モーメント及び位置検出器3により得られた加速度を示す。位置検出器3により得られた加速度は加速度信号とも呼ばれる。右辺の第二項はトルク指令生成器11が生成したトルク指令Ctである。式(1)のように、トルク指令Ctと慣性分のトルクとの差をとることで算出された伝達機構100のトルクすなわち抽出外乱Deを用いている。従って、駆動指令Cdにおける加速度指令値が変化してトルク指令Ctが変動する場合でも、モータ2の回転による慣性分のトルクとの差をとることで、測定完了接触を検出する際に誤検出の原因となるピークの生成を抑制することができる。従って、伝達機構100の内部の測定完了接触によるトルクの変化を精度良く抽出することができる。
図9は、実施の形態3に係るモータ制御装置の逆転駆動時における時系列波形の一例を示した図である。図中、縦軸については、(a)が抽出外乱Deを、(b)が抽出外乱Deの単位時間当たりの変化量を、(c)が位置信号Spを、(d)が接触信号Scを示す。位置信号Spがバックラッシに相当する角度分変化すると、両歯車101a及び102aが測定完了接触して抽出外乱Deが急増する。これにより抽出外乱Deの時間微分値も急増する。
本実施の形態の接触検出器13bは、抽出外乱Deが図9(a)の破線a3で示す予め設定されたしきい値を正転駆動させる方向に超えた場合、又は抽出外乱Deの時間微分値が図9(b)の破線b3で示す予め設定されたしきい値を正転駆動させる方向に超えた場合に、測定完了接触の検出を行ったとする。なお、抽出外乱Deにおいて正転駆動させる方向(正転駆動に対応する方向)は、例えば図9(a),(b)ではプラスの方向である。
なお、抽出外乱Deが図9(a)のピークA3のように最大(あるいは最小)になる場合、又は抽出外乱Deの時間微分値が図9(b)のピークB3のように最大(あるいは最小)になる場合に、接触検出器13bが測定完了接触の検出を行ったとしてもよい。これにより、しきい値の設定が不要になる。
本実施の形態では、接触検出器13bは、位置信号Sp及びトルク指令Ctにより算出された抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値が、予め設定されたしきい値を逆転駆動に対応する方向に超えた場合、あるいは最大となった場合に、測定完了接触を検出したとすることでバックラッシの推定が可能となっている。そのため、トルク指令生成器11は、必ずしも駆動指令Cd及び位置信号Spに基づいてトルク指令Ctを生成する必要はなく、駆動指令Cdのみに基づいてトルク指令Ctを生成する構成も考えられる。抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値が最大であることを判定する方法の例としては、予めこれらの最大値を定義しておく方法、又は逆転駆動期間TIで最も大きい抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値を最大とする方法が挙げられる。
本実施の形態の接触検出器13bは、トルク指令Ct及び位置信号Spにより算出された抽出外乱Deに基づき、測定完了接触を検出している。従って、トルク指令Ctに対する応答速度が遅いモータ装置を利用している場合でも、トルク指令Ctのみを用いている場合に比べて、接触検出に遅れが生じない。よって、バックラッシの計測精度の低下が抑制できる。
特許文献2に挙げた従来技術では、両歯車101a及び102aの機械的な接触を、駆動軸101のトルクセンサを用いて測定し、同時に位置信号Spを用いてバックラッシを計測する必要があった。しかし、本実施の形態では、接触検出器13bが、位置信号Spを用いて算出した加速度と、トルク指令Ctとに基づき抽出外乱Deを算出し、モータ2に接続する駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間の接触を測定完了接触として検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。さらに、バックラッシ推定器14が、接触信号Sc及び位置信号Spに基づき、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間のバックラッシを推定する。従って、本実施の形態では、センサから得られる情報として、位置信号Spさえ得られればバックラッシの計測が可能である。
上述の構成により、本実施の形態のモータ制御装置は、実施の形態1の効果に加え、トルク指令Ctに対する応答速度が遅いモータ制御装置であっても、バックラッシを正確に測定でき、駆動指令Cdによる指令値が大きく変動した場合でも安定してバックラッシを測定できるという効果を奏する。
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。電流検出器15は、電流Imを電流信号Simとして検出する。本実施の形態のモータ制御装置は、位置信号Spの代わりに電流信号Simを用いて測定完了接触を検出する接触検出器13cを有する点が実施の形態1とは異なる。
図11は、本発明の実施の形態4に係るモータ制御装置の逆転駆動時における時系列波形の一例を示した図である。すなわち、図中(a)〜(d)において横軸は時間である。縦軸は、それぞれ(a)が電流信号Simを、(b)が電流信号Simの時間微分値を、(c)が位置信号Spを、(d)が接触信号Scを示す。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
本実施の形態の接触検出器13cは、電流信号Simから伝達機構100の内部の測定完了接触を検出する。バックラッシに相当する角度分だけ位置信号Spが変化する場合に、両歯車101a及び102aが接触する。この接触によりモータ2が駆動する慣性モーメントが増大するため、モータ2を駆動するためのトルクが非接触状態に比べ大きくなる。従って、モータ2に供給される電流Imも急激に増加する。ここで、電流信号Simの電流値が増大(あるいは減少)し、電流信号Simの時間微分値も増大する(あるいは減少)。例えば、図11(a)に示す通り、電流信号Simも一時的に増大し、ピークA4が現れる。図11(b)に示す通り、電流信号Simの変化を示す時間微分値もまた一時的に増大(あるいは減少)し、ピークB4が現れる。
測定完了接触の検出の方法としては、図3で説明した方法と同様に、電流信号Simが、予め設定されたしきい値を逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)に超えた場合に、測定完了接触を検出したとする。図11(a)では、破線a4が予め設定されたしきい値である。電流信号Simを用いる代わりに、電流信号Simの時間微分値を用いてもよい。この場合、図11(b)の破線b4が予め設定されたしきい値である。なお、電流信号Sim及び電流信号Simの時間微分値において逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)は、例えば図11(a),(b)ではマイナスの方向である。
なお、予め設定されたしきい値を用いる代わりに、電流信号Simが最大(あるいは最小)すなわち図11(a)に示すピークA4になる場合又は電流信号Simの時間微分値が最大(あるいは最小)すなわち図11(b)に示すピークB4になる場合に、測定完了接触を行ったとしてもよい。これにより、しきい値の設定が不要になる。
本実施の形態では、トルク指令生成器11は、駆動指令Cdと位置信号Spとに基づいて、トルク指令Ctを生成する。さらに、電流制御器12がトルク指令Ctに基づきモータ2に電流Imを供給し、電流検出器15が電流信号Simを検出する。これにより、電流信号Sim又は電流信号Simの単位時間当たりの変化量が、予め設定されたしきい値を逆転駆動に対応する方向に超えた場合、あるいは最大になる場合に、接触検出器13cが測定完了接触を検出したとすることでバックラッシの推定が可能となっている。電流信号Sim又は電流信号Simの単位時間当たりの変化量が最大であることを判定する方法の例としては、予めこれらの最大値を定義しておく方法、又は逆転駆動期間TIで最も大きい電流信号Sim又は電流信号Simの単位時間当たりの変化量の時間微分値を最大とする方法が挙げられる。
特許文献2に挙げた従来技術では、両歯車101a及び102aの機械的な接触を、駆動軸101のトルクセンサを用いて測定し、同時に位置信号Spを用いてバックラッシを計測する必要があった。しかし、本実施の形態のモータ制御装置では、トルク指令生成器11が、駆動指令Cdと位置信号Spに基づいてトルク指令Ctを生成し、電流制御器12がトルク指令Ctに基づいてモータ2に電流Imを供給し、モータ2を駆動する。さらに接触検出器13cが、電流信号Simを用いて測定完了接触を検出する。従って、本実施の形態では、センサから得られる情報として、位置信号Spさえ得られればバックラッシの計測が可能である。
上述の構成により、本実施の形態のモータ制御装置は、実施の形態1の効果を奏する。
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5に係るモータ装置を説明するブロック図である。本実施の形態の接触検出器13dは、電流信号Simに加えて位置信号Spを用いて測定完了接触を検出する点が実施の形態4とは異なる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
接触検出器13dは、まず、伝達機構100の内部で発生する機械的な接触等の外乱を含む抽出外乱Deを算出する。次に、抽出外乱Deを用いて、測定完了接触を検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。抽出外乱Deは式(2)のように算出される。
De=Jm・Ac−Kt・Sim・・・(2)
但し、式(2)において、右辺の第一項は、式(1)の右辺の第一項と同様に実際にモータ2が加速されるのに用いられた慣性分のトルクである。式(2)の右辺の第二項は、電流信号Simから算出されたモータ2において発生する合計のトルクである。ここでKtは、モータ2に供給される電流Imに対応する電流信号Simと発生するトルクとの関係を示すトルク定数である。式(2)のように、モータ2における合計のトルクと慣性分のトルクとの差を取ることで、伝達機構100を駆動するために用いられたトルクを導出できる。
接触検出器13dは、トルク指令Ctの代わりに電流信号Simより導出されたトルクを用いて、測定完了接触を検出している。よって、トルク指令生成器11及び電流制御器12の応答性の影響を減じ、伝達機構100の内部の測定完了接触による外乱を精度良く算出することができる。
接触検出器13dによる測定完了接触の検出方法としては、抽出外乱De又は抽出外乱Deの単位時間当たりの変化量が、しきい値を超えた場合に、測定完了接触を検出したとしてもよい。また、抽出外乱De又は抽出外乱Deの変化量が最大(あるいは最小)になる場合に、測定完了接触を検出したとしてもよい。これにより、しきい値の設定が不要になる。
本実施の形態では、接触検出器13dは、位置信号Sp及び電流信号Simにより算出された抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値が、予め設定されたしきい値を逆転駆動に対応する方向に超えた場合、あるいは最大となった場合に、測定完了接触を検出したとすることでバックラッシの推定が可能となっている。そのため、トルク指令生成器11は、必ずしも駆動指令Cd及び位置信号Spに基づいてトルク指令Ctを生成する必要はなく、駆動指令Cdのみに基づいてトルク指令Ctを生成する構成も考えられる。抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値が最大であることを判定する方法の例としては、予めこれらの最大値を定義しておく方法又は、逆転駆動期間TIで最も大きい抽出外乱De又は抽出外乱Deの時間微分値を最大とする方法が挙げられる。
実施の形態4の接触検出器13cは、接触の判定に電流信号Simを用いており、トルク指令生成器11の位置信号Spに対する応答性又は電流制御器12のトルク指令Ctに対する応答性が低い場合には、接触検出に遅れが生じ、バックラッシの計測精度が低くなる場合がある。また、実施の形態2の接触検出器13aは、接触の判定に位置信号Spの加速度を用いており、駆動指令Cdの加速度指令値を大きく変動させた場合には、接触を誤検出する場合がある。本実施の形態では、位置信号Sp及び電流信号Simを共に用いているため、接触検出の遅れ又は接触の誤検出を低減できる。
特許文献2に挙げた従来技術では、両歯車101a及び102aの機械的な接触を、駆動軸101のトルクセンサを用いて測定し、同時に位置信号Spを用いてバックラッシを計測する必要があった。しかし、本実施の形態では、接触検出器13dが、位置信号Spを用いて算出した加速度と、電流信号Simに基づき抽出外乱Deを算出し、モータ2に接続する駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間の接触を測定完了接触として検出し、検出結果を接触信号Scとして出力する。さらに、バックラッシ推定器14が、接触信号Sc及び位置信号Spに基づき、駆動側歯車101aと負荷側歯車102aとの間のバックラッシを推定する。従って、本実施の形態では、センサから得られる情報として、位置信号Spさえ得られればバックラッシの計測が可能である。
上記の構成により、本実施の形態のモータ制御装置は、実施の形態4の効果に加え、接触検出器13dが位置信号Sp及び電流信号Simを共に用いて測定完了接触を検出するため、高精度かつ簡易にバックラッシを測定可能である。
実施の形態6.
図13は、本発明の実施の形態6に係るモータ装置を説明するブロック図である。本実施の形態のモータ制御装置は、図13に示すように、図1に示した駆動指令生成器10およびバックラッシ推定器14の代わりに、それぞれ駆動指令生成器10aおよびバックラッシ推定器14aを有する点が異なる。本実施の形態のモータ制御装置は、負荷4及びこれに連結した負荷軸102に外部から外力Fdが加わる場合でもバックラッシを計測可能とする構成である。
駆動指令生成器10aは、後述する複数回の試験駆動を行わせるための駆動指令Cdを生成する。バックラッシ推定器14aは、詳細は後述するが、外力Fdに応じて変化する負荷軸102の位置も考慮してバックラッシを推定する。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
上記構成により、本実施の形態では、外力Fdによって負荷軸102が回転する場合でも、複数回の正転駆動及び逆転駆動によって、負荷軸102の位置を推定し、バックラッシを精度良く計測できる。
図14は、実施の形態6に係るバックラッシ計測手順を表したフロー図である。計測の手順を、図14に示すフローに沿って説明する。フロー図中の符号Si(i=1,2,・・・)は各ステップを示す。
まず、ステップS1において、駆動指令生成器10aは、正転駆動及び逆転駆動の方向、繰り返し回数(試験駆動の回数)、加速度、及び正転駆動時と逆転駆動時における駆動軸101の回転量などの設定条件を、図示しない記憶部から取得する。なお、設定条件を記憶部から取得する代わりに、外部の入力端末を介して取得してもよい。
図15は、本発明の実施の形態6に係るモータ制御装置の伝達機構100の負荷軸102が外力Fdを受けて回転する方向とバックラッシ測定時の駆動方向を示した図である。図中、外力Fdによる負荷軸102の回転方向が予め設定されており、この負荷軸102の回転を妨げる方向の駆動が正転駆動として設定され、正転駆動の逆方向の駆動が逆転駆動として設定される。
図16は、本発明の実施の形態6に係るモータ制御装置が複数回の試験駆動を行う駆動指令Cdを生成した場合の時系列波形の一例を示した図である。図中、(a)、(b)、(c)は、それぞれ縦軸が位置指令値、速度指令値、及び加速度指令値を示す。(a)〜(c)において、正転駆動及び逆転駆動からなる試験駆動を3回行うように駆動指令Cdが生成されている。なお、以下では3回の試験駆動に対応する期間を、それぞれ試験駆動期間Td1、試験駆動期間Td2、及び試験駆動期間Td3として説明する。また、試験駆動期間Td1、Td2、Td3における接触所要時間をそれぞれTc1、Tc2、Tc3としている。接触所要時間Tc1、Tc2、Tc3に対応する接触位置変位をそれぞれPc1、Pc2、Pc3としている。試験駆動期間Td1〜Td3では、加速度指令値などのパラメータが互いに異なるように駆動指令Cdが生成される。図16(c)に示す通り試験駆動期間Td1〜Td3それぞれにおいて、一点鎖線の両矢印及び実線の両矢印がそれぞれ、正転駆動期間及び逆転駆動期間を示す。図16(c)に示す通り、試験駆動期間Td1、試験駆動期間Td2、試験駆動期間Td3の順に、逆転駆動期間での加速度指令値が大きくなるようにしている。また、図16(a)に示す接触所要時間がTc1、Tc2、Tc3の順に短くなっている。
図17を用いて、ステップS2及びS3を説明する。図17は、実施の形態6に係るモータ装置の伝達機構100の内部構造と、バックラッシの計測過程を示した図である。
ステップS2において、モータ2の正転駆動により、伝達機構100の内部で両歯車101a及び102aは互いに接触すなわち測定前接触する。
次に、ステップS3において、まず、モータ2の逆転駆動により、図17(b)に実線で示すように、両歯車101a及び102aを測定前接触のときに接触していた歯面と反対の面に接触させる。ここで、接触検出器13は測定完了接触を検出し、接触信号Scを出力する。なお図中、負荷側歯車102aの位置は外力Fdによる影響で、図17(b)の点線で示す逆転開始時の位置から、接触所要時間Tc後には実線で示す位置へと回転している。
ステップS4において、バックラッシ推定器14aは、ステップS1で設定された繰り返し回数と、測定完了接触の検出回数を比較して、測定完了接触の検出回数が繰り返し回数に到達したか否かを判断する。測定完了接触の検出回数が繰り返し回数より小さい場合(NO)には、再度前回とは別の試験駆動にて再度ステップS2〜S3を繰り返す。一方、測定完了接触の検出回数が繰り返し回数以上の場合(YES)には、ステップS5に進む。
ステップS5において、負荷軸位置の推定を行う。ステップS5を説明するに当たり、まず、負荷軸位置及び推定負荷軸位置を説明する。
図17を用いて、本実施の形態での負荷軸位置について説明する。負荷軸位置は、逆転駆動の開始時における駆動軸101の回転位置を基準とし、負荷軸102の回転位置を両歯車101a及び102a間の減速比を用いて駆動軸101の回転角に換算して表現したものである。
例えば、図17(a)では、負荷軸位置は、線分O−a(実線)と線分O−b(点線)とのなす角であり、バックラッシBに相当する回転角である。但し、線分O−a(実線)は、逆転駆動の開始時における駆動軸101の回転位置である。また、線分O−b(点線)は、逆転駆動の開始時における負荷軸位置である。
また、図17(b)では、負荷軸位置は、線分O−a(実線)と線分O−b1(実線)とのなす角であり、負荷軸102の回転により線分O−b(点線)が線分O−b1(実線)に移動し、負荷軸102の回転により負荷軸位置が大きくなることがわかる。なお、線分O−a(実線)は基準の回転位置であるので、逆転駆動の開始時から変化しない。また、図17(b)のように両歯車101a及び102aが接触する場合は、負荷軸位置が接触位置変位Pcに相当する。
次に、推定負荷軸位置を説明する。図18は、本発明の実施の形態6に係る推定負荷軸位置Ple(t)を説明するための図である。推定負荷軸位置Ple(t)は、任意の時刻tにおける負荷軸位置を推定したものである。但し、時刻tは逆転駆動開始時間からの時間を示す。
図18(a)は縦軸が負荷軸位置であり、横軸が逆転駆動の開始時からの時間を示す。図18(b)は、逆転駆動開始時からの駆動軸101における位置信号Spの変化量を示す。また、図中両矢印は、後述する方法で導出されるバックラッシBの大きさを示している。図18(a),(b)にひし形で示したのは、(ステップS1)で繰り返し回数を3回としたときの、接触位置変位Pcと接触所要時間Tcの関係をプロットしたものである。図中、各プロットは、図16に示した試験駆動期間Td1〜Td3に対応する接触位置変位Pcと接触所要時間Tcをプロットしたものであり、それぞれPl1〜Pl3と表記している。例えば、Pl1は(Tc1,Pc1)である。
次に、ステップS5において、バックラッシ推定器14aは、試験駆動期間Td1〜Td3のそれぞれに対応する接触位置変位Pcと接触所要時間Tcとの組Pl1〜Pl3を用いて、推定負荷軸位置Ple(t)を推定する。
本実施の形態では、説明を簡易とするため、負荷軸102に加わる外力Fdが試験駆動期間Td1〜Td3間で同じ大きさであり、外力Fdに伴い駆動される負荷軸102が試験駆動期間Td1〜Td3で同じ加速度で駆動されるものとしている。推定負荷軸位置Ple(t)を、式(3)に示す2次の多項式からなる近似関数で近似する。
Ple(t)=Ka・t2+Kb ・・・式(3)
但し、式(3)においてKa及びKbは、それぞれ外力Fdによる負荷軸102の加速度に関する係数、及び逆転駆動の開始時における負荷軸位置すなわち図18(a)に示すバックラッシBを表す近似係数である。また詳細は後述するが、Ka及びKbの値の導出は、接触所要時間Tcと接触位置変位Pcからなるデータセットを複数組用いてなされる。近似関数は、式(3)以外にも外力Fdによって移動する負荷軸102の位置を近似するのに適していれば次数や項数は問わない。多項式の代わりに、対数、指数、三角関数等による近似関数であってもよい。
近似係数Ka、Kbの導出方法としては、例えば最小二乗法を用いる。最小二乗法では、得られた接触所要時間Tcと接触位置変位Pcの組と、推定負荷軸位置Ple(t)との残差の二乗和が最小になるように近似係数を決定する。なお、近似係数の導出方法として、最小二乗法以外を用いてもよいことは言うまでもない。また、外力Fdの大きさを可変としてもよいことは言うまでもない。
Ka及びKbの決定には、接触所要時間Tc及び接触位置変位Pcのデータセットを最低2組取得すればよい。従って、2組より多くのデータセットを得た場合、異常値の除去を行ってもよい。異常値の除去方法として、例えば近似関数との標準残差が予め設定された値以上になるデータセットが存在する場合に、当該データセットを除去する。これにより、バックラッシ測定結果のばらつきを抑えることができる。本実施例では、試験駆動の回数を3回としたので、最大1組のデータセットを除去することができる。
なお、上述の説明では、逆転駆動時(ステップS3)の加速度が毎回異なるよう、複数回の駆動指令Cdを生成しているが、同じ加速度で複数回の駆動指令Cdを用いることで、複数の接触所要時間Tc及び接触位置変位Pcのデータセットから平均値を算出する構成も考えられる。この場合、外力Fdが時間的に変化する影響等を平均化でき、バックラッシ測定結果のばらつきを抑えることができる。また、同じ加速度で複数回の駆動指令Cdを用い複数の接触所要時間Tc及び接触位置変位Pcのデータセットから異常値を取り除く構成も考えられる。この異常値を取り除く構成としては、加速度が毎回異なる場合と同じく、例えば近似関数との標準残差が予め設定された値以上になるデータセットが存在する場合に、当該データセットを除去する構成が挙げられる。この場合、外力Fdが瞬間的に変化する影響等を除去でき、バックラッシ測定結果のばらつきを抑えることができる。
なお、上述の説明では、逆転駆動(ステップS3)時に測定完了接触の検出を行っているが、逆転駆動と測定完了接触の検出は必ずしも同時に行う必要はない。まずステップS2及びS3で得られた時系列波形のデータ(例えば図3(a)〜(d))を、全試験駆動について記憶部(図示省略)に予め記録しておき、次に記憶部で記録された時系列波形のデータを用いて、各試験駆動における測定完了接触の検出を、ステップS4の後に接触検出器13により一括で行ってもよい。
最後に、ステップS6において、バックラッシ推定器14aは、推定負荷軸位置Ple(t)を用いて、伝達機構100の有するバックラッシを推定する。図18(a)に、3組の接触位置変位Pcと接触所要時間Tcから推定した推定負荷軸位置Ple(t)の例を示す。図18(a)に示す推定負荷軸位置Ple(t)にt=0を代入すると、バックラッシBが算出できる。本実施の形態ではKbの絶対値である|Kb|が推定されたバックラッシBに相当する。
図18(b)では、3つの点線が試験駆動期間Td1〜Td3それぞれの位置信号Spの変化量を示している。図18(b)に示す丸形のプロットは、外力Fdがない場合の逆転駆動開始から測定完了接触までの位置信号Spの変化量である接触位置変位PcすなわちバックラッシBである。外力Fdがない場合には、負荷軸102の位置変化がない。これにより、試験駆動期間Td1〜Td3において、駆動指令Cdにおける加速度指令値を変化させても、接触所要時間Tcは変化するが、接触位置変位Pcは変化しない。従って、図中破線により示すバックラッシBに相当する位置が接触位置変位Pcに等しくなる。よって、図18(b)に示す丸形としてプロットされる。
外力Fdが加わった場合には、駆動側歯車101aの加速度を変化(例えば減少)させて接触所要時間Tcが変化(延長)すると、この接触所要時間Tcの変化(延長)により負荷側歯車102aの回転量が変化(増加)する。従って、この回転量の変化(増加)の分だけ接触位置変位Pcが変化(増加)する。
例えば、試験駆動期間Td3では、逆転駆動時の加速度指令値が最も大きいため、接触所要時間Tc3が最も短くなり、外力Fdにより負荷軸102が最も少なく回転する。これにより、接触位置変位Pcが最も小さくなる。プロットPl3は最も図18(b)で左側かつ上側に配置される。一方、試験駆動期間Td1では、逆転駆動時の加速度が最も小さいため、接触所要時間Tc1が最も長くなり、外力Fdにより負荷軸102が最も多く回転する。これにより接触位置変位Pcが最も大きくなる。図中、プロットPl1は最も右側かつ下側に配置される。
以上の通り、本実施の形態のバックラッシ推定器14aは、推定負荷軸位置Ple(t)を導出してバックラッシを推定する。これにより、本実施の形態のモータ制御装置は、実施の形態1の効果に加え、負荷軸102に外力Fdが加わる環境でも、複数回の正転駆動及び逆転駆動からなる試験駆動によって伝達機構100のバックラッシを高精度かつ容易に計測できるという効果を奏する。
実施の形態7.
図19は、本発明の実施の形態7に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。実施の形態6では、予め外力Fdの方向が設定されていた。一方で本実施の形態では外力Fdが任意の方向に働くものとする。
図中、トルク指令Ctを用いて、負荷軸102に加わる外力Fdの方向を判定し、正転駆動時及び逆転駆動時の駆動方向Ddを出力する駆動方向決定器16を新たに有する点が異なる。また、駆動指令生成器10aに代えて、駆動方向Ddに応じて、逆転駆動毎に加速度が異なるよう駆動指令Cdを生成する駆動指令生成器10bを有する点も異なる。なお、本実施の形態では、実施の形態6とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
本実施の形態では、図14のステップS1において、駆動方向決定器16により負荷軸102に加わる外力Fdの方向を判定する。駆動指令生成器10bにより駆動側歯車101aを停止させる制御が行われ、駆動方向決定器16が、両歯車101a及び102aが接触した状態で生成されたトルク指令を用いて、外力Fdの方向を判断しさらに駆動方向Ddを決定する。
具体的には、位置信号Spが変化しないすなわち駆動側歯車101aが回転しないように、駆動指令Cdが駆動指令生成器10bにより生成される。両歯車101a及び102aが接触しない状態では、駆動側歯車101aにトルクを加える必要がないので、駆動軸101に加わる摩擦等の影響を無視すればトルク指令Ctは0である。その後、一定時間が経過して両歯車101a及び102aが接触した状態では、負荷側歯車102aが外力Fdにより駆動側歯車101aを回転させようとする。しかし、駆動側歯車101aが静止するように制御されているため、駆動側歯車101aは、トルク指令Ctにより、負荷側歯車102aから加わる力を打ち消すように回転しようとする。従って、トルク指令Ctに対応する駆動側歯車101aの回転方向を用いて、外力Fdの方向及び正転駆動の駆動方向Ddを推定できる。
例えば、両歯車101a及び102aが接触し、静止した状態で生成されたトルク指令Ctが駆動側歯車101aを反時計回りに回転させようとするものであれば、駆動側歯車101aを時計回りに回転させる外力Fdが働いているものと判断できる。そのため、負荷側歯車102aの回転方向すなわち外力Fdの方向が図17に示すように反時計回りであることがわかる。さらに外力Fdの方向がわかれば、駆動方向Ddも決定することができる。
なお、駆動側歯車101aを停止させる代わりに、逆転駆動及び正転駆動により駆動側歯車101aを往復運動させて、正転駆動時と逆転駆動時とにおけるトルク指令Ctを比較することで、駆動方向Ddを決定してもよい。なお、駆動方向決定器16がトルク指令Ctに代えてモータ2の電流Imから駆動方向Ddを決定してもよい。
本実施の形態のモータ制御装置は、接触検出器13に代えて、接触検出器13a,13b,13c,13dのいずれか1つを備える構成であってもよく、それらの場合においても、同様にバックラッシを測定可能である。
上記構成により、本実施の形態のモータ制御装置は、実施の形態1の効果に加え、負荷軸102に外力Fdが加わる場合にも、駆動指令Cdの駆動方向を自動的に決定してバックラッシを測定できるという効果を奏する。
実施の形態8.
図20は、本発明の実施の形態8に係るモータ装置を説明するためのブロック図である。本実施の形態では、モータ2の回転状況を示す位置信号Spがあらかじめ設定された最小検出位置と最大検出位置とで決まる範囲で、接触検出器13eが伝達機構100の内部の測定完了接触を検出する点が実施の形態1と異なる。
上記構成により、本実施の形態では、摩擦や減速の影響等、外乱が多い場合にも安定した接触の検出が可能となり、精度良くバックラッシを測定することができる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成のみについて説明を行うこととし、図中、同じまたは対応する構成については同一符号を付し、それらの構成の説明は繰り返さない。
図21は、実施の形態8に係るモータ制御装置の逆転駆動時の時系列波形の一例を示した図である。実施の形態1では、接触検出器13が、位置信号Spの示すモータ2の位置によらず、逆転駆動時の接触を判定している。しかし、トルク指令Ct及びトルク指令Ctの単位時間あたりの変化量は、モータ2が逆転駆動開始後、摩擦の影響によって図21(a)に示すピークX13を持ったり、(b)に示すピークY13を持ったりする場合がある。また、トルク指令Ctの単位時間あたりの変化量が、モータ2が減速する際に両歯車101a及び102aの所望しない接触を原因として、図21(b)に示すピークZ13を持つ場合がある。そのため、実施の形態1では、接触検出器13が、ピークX13、ピークY13又はピークZ13により接触を誤検出し、バックラッシの推定精度が悪化することがある。
本実施の形態の接触検出器13eは、位置信号Spが示すモータ2の位置が、予め設定した最小検出位置S13を逆転駆動方向に超えてから、予め設定した最大検出位置L13を逆転駆動方向に超えるまでの期間に接触を検出する。すなわち、図21(d)に示す期間T13で接触を検出し、測定完了接触を示す接触信号Scを生成する。
測定完了接触の検出方法としては、図3で説明した方法と同様に、トルク指令Ctが、破線で示した予め定められたしきい値a1を逆転駆動させる方向(逆転駆動に対応する方向)に超えた場合に、測定完了接触を検出したとする。トルク指令Ctを用いる代わりにトルク指令Ctの時間微分値を用い、しきい値a1を用いる代わりに破線b1のしきい値を用いても良い。
なお、予め設定されたしきい値を用いる代わりに、トルク指令Ctが最大(あるいは最小)すなわち図21(a)に示すピークA13になる場合、又はトルク指令Ctの時間微分値が最大(あるいは最小)すなわち図21(b)に示すピークB13になる場合に、測定完了接触を行ったとしてもよい。これにより、しきい値の設定が不要になる。
ただし、上記に示した通り、しきい値を超えた場合及びピークを用いる場合も、期間T13以外では接触の検出は行わず、測定完了接触を示す信号は生成しない。
最小検出位置は予め想定されるバックラッシより十分小さい値に設定することが望ましく、トルク指令Ctに摩擦が及ぼす影響及び伝達機構100を製造する際の標準的な加工精度から決定することができる。最大検出位置は、予め想定されるバックラッシより十分大きい値に設定することが望ましく、減速を開始するモータ位置、歯車の歯数、形状等から適切な値を選定することができる。
なお、実施の形態2の接触検出器13aのようにトルク指令Ctの代わりに位置信号Spを用いて測定完了接触を検出する場合、実施の形態3の接触検出器13bのようにトルク指令Ctと位置信号Spとを用いて測定完了接触を検出する場合、実施の形態4の接触検出器13cのように電流信号Simを用いて測定完了接触を検出する場合、及び実施の形態5の接触検出器13dのように電流信号Simと位置信号Spを用いて測定完了接触を検出する場合も本実施の形態と同様に、各実施の形態の接触検出器が最小検出位置と最大検出位置とで決まる範囲で、伝達機構100の内部の測定完了接触を検出することが可能である。
また、実施の形態6のように、駆動指令生成器10に代えて駆動指令生成器10aが複数回の試験駆動を行わせる駆動指令Cdを生成し、バックラッシ推定器14に代えてバックラッシ推定器14aがバックラッシを推定する場合も本実施の形態と同様に、接触検出器13が最小検出位置と最大検出位置とで決まる範囲で、伝達機構100の内部の測定完了接触を検出することが可能である。
上記の通り、本実施の形態のモータ制御装置は、摩擦、減速の影響等、外乱が多い場合にも接触を誤検出せず、伝達機構100のバックラッシを測定することができる。これにより、さらに幅広い構成の装置で精度良くバックラッシを測定することができる。