次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに図1を参照して、本実施形態のEGRシステム70を備える内燃機関であるエンジン1について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るEGRシステム70を備えるエンジン1の構成を模式的に示した概略図であり、図中の2点鎖線で示した円の中には、シリンダ11内の構成を示している。
図1に示す本実施形態のエンジン1は、移動体であるトラクタ(農業用作業車両、作業車両)に搭載され、当該トラクタの駆動源となるものである。エンジン1は、エンジン本体10と、燃料噴射装置20と、EGR装置(排気ガス再循環装置)30と、排気タービン式の過給機40と、排気浄化装置50と、エンジン1を制御するECU(エンジンコントロールユニット)60と、を備える。EGR装置30は、本実施形態のEGRシステム70の一部をなしている。
本実施形態において、エンジン1は直列4気筒型のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン本体10は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、を主たる構造体とし、これらに種々の部品を組み付けることにより構成されている。シリンダブロックには、4つのシリンダ11が形成される。それぞれのシリンダ11の内部には燃焼室12が形成され、当該燃焼室12にはピストン13がスライド可能に配置されている。このピストン13は、ロッド19を介して、エンジン1の出力軸であるクランク軸14に連結される。
また、エンジン本体10は、吸気マニホールド15と、排気マニホールド16と、を備えている。吸気マニホールド15には、当該吸気マニホールド15に吸気を導入する吸気側の通路としての吸気管17が接続されている。排気マニホールド16には、当該排気マニホールド16からの排気ガスが排出される排気側の通路としての排気管18が接続されている。
燃料噴射装置20は、各シリンダ11に対応するインジェクタ21を備える。インジェクタ21には、図略の燃料噴射ポンプによって圧送された燃料が、コモンレール(図略)を介して分配される。インジェクタ21が備える電子制御弁はECU60に電気的に接続されており、インジェクタ21から燃焼室12内に適宜の量の燃料が適宜のタイミングで噴射されるようになっている。燃料を燃焼室12内に噴射することにより、ピストン13は燃焼室12での吸気・圧縮行程後の爆発から得られる推進力によってシリンダ11内を往復運動し、ピストン13の往復運動がロッド19を介してクランク軸14の回転運動に変換されて動力が得られる。
EGR装置30は、EGR通路としてのEGR管31と、EGRクーラ32と、EGR弁33と、を備えている。EGR管31は、吸気管17と排気管18とを接続しており、当該EGR管31を介して排気ガスの一部が吸気に還流(再循環)される。EGR弁33は、EGR管31の内部に設けられており、当該EGR弁33はECU60のEGR制御部61(図2参照)に電気的に接続されている。このEGR制御部61は、本実施形態のEGRシステム70の一部をなしている。具体的には、EGR弁33は、例えば電磁式流量制御弁により構成することができる。EGR制御部61によりEGR弁33の開度を適宜に調整(変更)することにより、吸気側に還流される排気ガスの量(以下、「EGR量」と称する。)が調整される。
過給機40は、排気管18を流れる排気ガスによって回転するタービン41と、当該タービン41と一体的に回転するコンプレッサ42と、を備える。コンプレッサ42は、吸気管17の内部に配置されており、当該コンプレッサ42の回転によって吸気が圧縮され、吸気マニホールド15を介してシリンダ11内に送り込まれる。
排気浄化装置50は、排気管18の出口に設けられる。排気浄化装置50は、例えばDOC(ディーゼル用酸化触媒)51及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)52を備えて構成される。排気ガスは、排気浄化装置50を通過することにより浄化された後、外部に排出される。
次に、図2を参照して、エンジン1の電気的構成及び制御に関する構成を説明する。図2は、エンジン1の主要な電気的構成を示すブロック図である。
ECU60は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータとして構成され、前記ROMには、制御プログラムや制御パラメータ等の各種データが記憶されている。ECU60は、種々のセンサや前記トラクタの操作具から情報を取得し、これらの情報に基づいてエンジン1に関する制御を行う。
ROMに記憶されている上記のプログラム等をRAMにロードし、CPUで実行することで、ECU60を、EGR制御部61、アイドリング継続時間取得部62、及び遅延時間算出部63等として動作させることができる。また、本実施形態では、上記の種々のセンサとして、エンジン1のエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ9と、燃料噴射装置20の燃料噴射量を検出する燃料噴射量センサ22と、EGR弁33の開度を検出する開度検出センサ34と、がECU60に電気的に接続されている。
以下、エンジン1の制御系の各部の構成についてより詳細に説明する。図2に示すように、ECU60は、上述したEGR制御部61、アイドリング継続時間取得部62、及び遅延時間算出部63の他に、アイドリング領域算出部64、エンジン回転数取得部65、燃料噴射量取得部66、及びアイドリング状態判定部67を備える。
EGR制御部61は、EGR弁33に信号を送信することにより、EGR弁33を所望の速度で開き又は閉じることができる。これにより、例えば、EGR弁33の上流側と下流側の圧力のバランスをとりながらEGR弁33の開度を変更して所望の開度(目標開度)に設定することができる。そうすることにより、EGR管31の流路断面積を適宜に設定して、EGR量を調整することができる。
アイドリング領域算出部64は、エンジン回転数及び燃料噴射量の2つのパラメータでみたときにエンジン1の稼動状態がアイドリング状態にあると判断される領域を算出するものである。本実施形態のアイドリング領域算出部64は、このエンジン1が前記トラクタに用いられている旨の情報を取得して、このことを考慮してアイドリング状態にある領域(アイドリング領域)を算出する。具体的には、アイドリング状態にあると判断されるエンジン回転数の低速側の閾値Na及び高速側の閾値Nb、並びにアイドリング状態にあると判断される燃料噴射量の低噴射量側の閾値Fa(N)及び高噴射量側の閾値Fb(N)を算出する(図3参照)。なお、燃料噴射量の低噴射量側の閾値Fa(N)及び高噴射量側の閾値Fb(N)は、エンジン回転数Nを入力変数とする関数として求められる。ただし、エンジン1がどのような用途で用いられるかについての情報(例えば、本実施形態では、前記トラクタに用いられる旨の情報)の他に、吸気の温度等の他の情報も考慮に入れて、アイドリング領域を算出することとしても良い。なお、図3には、エンジン回転数及び燃料噴射量の関係でみたときに、アイドリング状態にあると判断される領域(アイドリング領域)がハッチングにより示されている。
なお、図3では示していないが、アイドリング領域算出部64の境界には適宜のヒステリシスが設けられている。これにより、エンジン1の運転状態がアイドリング領域の境界付近で小さく変動した場合でも、アイドリング状態とそうでない状態とで頻繁に切り換わるのを防止することができる。
図2に示すエンジン回転数取得部65は、エンジン回転数センサ9で検出したエンジン1のエンジン回転数の情報を取得するものである。
燃料噴射量取得部66は、燃料噴射量センサ22で検出した燃料噴射装置20の燃料噴射量の情報を取得するものである。
アイドリング状態判定部67は、現在のエンジン1の稼動(運転)状態をエンジン回転数及び燃料噴射量の2つのパラメータでみたときに、アイドリング状態であるか否かを判定するものである。具体的には、本実施形態では、(i)エンジン回転数取得部65で取得した現在のエンジン回転数Nが、Na≦N≦Nbを満たし、(ii)燃料噴射量取得部66で取得した現在の燃料噴射量FがFa(N)≦F≦Fb(N)を満たし、かつ、(iii)Na≦N≦Nb及びFa(N)≦F≦Fb(N)を同時に満たしている状態が所定時間以上続いているか否かを判定する。上記(i)から(iii)までを全て満たす場合、アイドリング状態判定部67は、現在のエンジン1の稼動状態がアイドリング状態であると判定する。
なお、アイドリング状態判定部67で現在のエンジン1の稼動状態がアイドリング状態であると判定された場合、低温の排気ガス(アイドリング状態のときは、排気ガスが低温となることが知られている。)に含まれる未燃燃料成分(未燃燃料に由来する成分)がEGR装置30に流れて凝縮してEGRシステム70に悪影響を及ぼすことを抑制するために、EGR弁33を閉鎖してEGRシステム70を非作動とすることとしている。この制御の詳細については後述する。
アイドリング継続時間取得部62は、アイドリング状態判定部67の判定結果に基づいて、アイドリング状態が継続している時間(以下、「アイドリング継続時間」と称する。)を取得するものである。
遅延時間算出部63は、エンジン1がアイドリング状態ではなくなったとアイドリング状態判定部67が判定した場合に、アイドリング状態のあいだ閉鎖していたEGR弁33を開き始めるまでの時間を、アイドリング継続時間取得部62が取得したアイドリング継続時間に基づいて算出するものである。なお、EGR弁33の開弁タイミングの制御については、後に詳述する。
次に、EGR弁33の制御のためにECU60により行われる処理について、図4を参照して詳細に説明する。図4は、ECU60により行われる処理を示すフローチャートである。
図4のフローがスタートすると、ECU60のエンジン回転数取得部65は、エンジン回転数センサ9で検出したエンジン回転数Nを取得し、燃料噴射量取得部66は、燃料噴射量センサ22で検出した燃料噴射量Fを取得する(ステップS101)。
続いて、ECU60のアイドリング状態判定部67は、上記の条件(i)〜(iii)で述べたとおり、ステップS101で取得したエンジン回転数NがNa≦N≦Nbを満たし、かつ、燃料噴射量FがFa(N)≦F≦Fb(N)を満たした状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS102)。言い換えれば、エンジン1の稼動(運転)状態をエンジン回転数及び燃料噴射量の2つのパラメータでみたときに、所定時間前から現在まで、アイドリング領域算出部64が計算したアイドリング領域にエンジン回転数N及び燃料噴射量Fが含まれている状態が続いているか否かを判定する。
ステップS102の判断で、エンジン1の稼動状態がアイドリング領域内に含まれている状態が所定時間以上継続している場合は、ECU60のアイドリング状態判定部67は、エンジン1の稼動状態がアイドリング状態であると判定する(ステップS103)。この場合、ECU60のEGR制御部61は、エンジン1の直前の状態がアイドリング状態であったか否かを判定する(ステップS104)。
ステップS104の判断で、直前のエンジン1の状態がアイドリング状態でなかった場合は、エンジン1が非アイドリング状態からアイドリング状態に切り換わったことを意味する。そこで、EGR制御部61は、排気ガスに含まれる未燃燃料成分(未燃燃料に由来する成分)が(アイドリング状態のため)低温の状態でEGR装置30に流れてきて凝縮したりしてEGRシステム70に悪影響を及ぼすことを抑制するために、EGR弁33を直ちに全閉状態にするようにEGR弁33を制御する(ステップS105)。更に、ECU60のアイドリング継続時間取得部62は、アイドリング継続時間をゼロにリセットする(ステップS106)。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS104の判断で、エンジン1が直前も現在もアイドリング状態である場合は、ステップS105及びステップS106の処理は行われない。その代わりに、ECU60のアイドリング継続時間取得部62は、アイドリング継続時間のカウントアップ処理を行う(ステップS107)。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS102の判断で、エンジン1の稼動状態がアイドリング領域内に含まれていないか、含まれていてもその状態が所定時間以上継続していない場合は、ECU60のアイドリング状態判定部67は、エンジン1の稼動状態がアイドリング状態でないと判定する(ステップS108)。この場合、ECU60のEGR制御部61は、エンジン1の直前の状態がアイドリング状態であったか否かを判定する(ステップS109)。
ステップS109の判断で、直前のエンジン1の状態がアイドリング状態であった場合は、エンジン1がアイドリング状態から非アイドリング状態に切り換わったことを意味する。そこで、ECU60の遅延時間算出部63は、アイドリング状態のあいだ閉鎖していたEGR弁33を開弁せずに待機する時間を、アイドリング継続時間取得部62がステップS107等において計算したアイドリング継続時間に基づいて算出する(ステップS110)。より具体的には、遅延時間算出部63は、通常の運転が開始されてからEGR弁33を開き始めるまでの時間(開弁を遅延させるべき時間。以下、開弁遅延時間と呼ぶことがある。)を、アイドリング継続時間を用いて算出する。
アイドリング継続時間と、遅延時間算出部63が算出するEGR弁33の開弁遅延時間と、の関係が図5にグラフで示されている。この図5に示すように、開弁遅延時間はアイドリング継続時間が長いほど長くなるように定められるが、これは以下の理由による。
図6は、アイドリング継続時間を様々に変化させた場合について、その後に通常の運転を開始した場合に排気ガスに含まれて排出される未燃燃料成分濃度の時間変化を示すグラフである。この図6に示すように、アイドリング状態のあいだに排気側の通路(例えば、排気管18)に堆積した未燃燃料成分が、アイドリング状態から通常の運転に切り換わるのに伴って排気ガスとともに排出される量は、通常運転開始直後に大きく増加するが、その後は時間の経過とともに減少していく。そして、未燃燃料成分の排出量のピークは、その前のアイドリング状態の継続時間が長いほど(即ち、アイドリング状態において上記のように堆積した未燃燃料成分が多量であるほど)大きくなり、当該排出量(排出濃度)が所定値まで低下するまでの時間も長くなる。このような傾向を考慮して、本実施形態では、アイドリング状態のあいだに排気側の通路(排気管18等)に堆積した未燃燃料成分の量を推定し、通常の運転を開始してから排気側の通路に堆積していると推定される未燃燃料成分の量が閾値未満にまで減少するまでに掛かると推定される時間を、上記の開弁遅延時間として求め、この開弁遅延時間をアイドリング継続時間との関係で表した制御情報(具体的には、テーブル)を予め作成して遅延時間算出部63に記憶している。なお、この制御情報は、図5に例示するような関係を表すことができれば、テーブルに限らず、例えば関数で表現されても良い。ECU60の遅延時間算出部63は、このテーブルを参照することにより、アイドリング継続時間に対応する開弁遅延時間を取得する。
その後、ECU60のEGR制御部61は、ステップS110において得られた開弁遅延時間が経過するまで、EGR弁33の全閉状態を維持する(ステップS111)。開弁遅延時間が経過すると、EGR制御部61は、EGR弁33を高速で(例えば、最大速度で)全開状態として(ステップS112)、続いて、EGR量の調整のためにEGR弁33の通常の制御を行う(ステップS113)。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS109の判断で、直前のエンジン1の状態がアイドリング状態でない場合は、エンジン1が非アイドリング状態(通常の運転状態)を継続していることを意味する。この場合は、ステップS110〜ステップS112の処理がスキップされ、EGR量の調整のためにEGR弁33の通常の制御が行われる(ステップS113)。その後、処理はステップS101に戻る。
以上のフローにより、本実施形態では、エンジン1の稼動状態が通常の運転状態になったら直ちにEGR弁33を開き始めるのではなく、開弁遅延時間だけ遅らせてからEGR弁33を開き始めることとしている。しかも、排気管18に堆積した未燃燃料成分の影響が十分に少なくなるまで(未燃燃料成分の含有量が閾値未満となるまで)開弁が遅延されるように、アイドリング継続時間に応じて開弁遅延時間を異ならせることとしている。これにより、様々な状況に応じて、EGRシステム70を非作動とする時間を極力短くしつつ、当該EGRシステム70が排気ガスに含まれる未燃燃料成分により悪影響を受けることを抑制することができる。
即ち、例えばエンジン1がアイドリング状態であるトラクタについて作業を開始する操作がされ、エンジン1が通常の運転に移行した場合、排気ガスに含まれる窒素酸化物の量を低減するという観点だけでみると、できるだけ早くEGRシステム70を作動することが望ましい。しかし、一般的にエンジン1をアイドリング状態から通常の運転状態に切り換えたときには、アイドリング状態のあいだに排気管18に堆積した未燃燃料成分の影響により、排気ガス中の未燃燃料成分の濃度が一時的に高まることとなる。この高濃度の未燃燃料成分が、通常の運転状態の開始に伴ってEGR弁33が開かれることによりEGR装置30に侵入すると、未燃燃料成分がEGR管31の内面やEGR弁33の周辺等で凝縮して、排気ガスの吸気側への円滑な還流を妨げてしまう場合がある。更に、未燃燃料成分がEGR管31の内面等で凝縮すると、その上に硫黄成分(煤等)が多孔質状に堆積して、EGR装置30の硫酸腐食を引き起こしてしまう場合もある。そこで、本実施形態のEGRシステム70では、排気管18に堆積している未燃燃料成分が少なくなるまでEGR弁33を開くタイミングを遅らせる(遅延させる)こととしている。この結果、当該EGRシステム70を未燃燃料成分から良好に保護することができる。
以上に説明したように、本実施形態のEGRシステム70は、トラクタ(図略)のエンジン1の排気ガスを吸気側に還流させるものである。このEGRシステム70は、EGR管31と、EGR弁33と、EGR制御部61と、アイドリング継続時間取得部62と、遅延時間算出部63と、を備える。EGR管31は、エンジン1の排気側の通路と、吸気側の通路と、を接続する。EGR弁33は、EGR管31に設けられ、開度を変更することにより排気ガスのうち吸気側に還流されるEGR量を調整可能である。EGR制御部61は、EGR弁33の開度を制御する。アイドリング継続時間取得部62は、エンジン1のアイドリング状態の継続時間を取得する。遅延時間算出部63は、エンジン1がアイドリング状態から通常の運転状態に切り換えられてから、アイドリング状態のときに閉じられていたEGR弁33を開き始めるまでの時間である開弁遅延時間を、アイドリング継続時間取得部62の取得結果に基づいて算出する。EGR制御部61は、エンジン1がアイドリング状態から通常の運転状態に切り換えられてから前記開弁遅延時間だけ遅延させたタイミングで、EGR弁33を開き始める。
これにより、以下の効果が奏される。即ち、一般的に、エンジン1をアイドリング状態から通常の運転状態に切り換えたときには、アイドリング状態のあいだに排気管18等に堆積した未燃燃料成分の影響により、排気中の未燃燃料成分の濃度が一時的に高まる。その点を考慮して、上記の構成では、アイドリング状態から通常の運転状態に切り換えられたとき、アイドリング状態のときに閉じられていたEGR弁33を直ちに開き始めるのではなく、遅延時間算出部63により算出した開弁遅延時間だけ遅延させてからEGR弁33を開き始める。これにより、未燃燃料成分がEGR管31内等で凝縮する等してEGRシステム70に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、本実施形態のEGRシステム70において、遅延時間算出部63は、アイドリング継続時間取得部62の取得結果に基づいて、アイドリング状態の間に排気管18等の排気側の通路に堆積した未燃燃料成分の量を推定し、通常の運転を開始してから排気管18等の排気側の通路に堆積していると推定される未燃燃料成分の量が閾値未満にまで減少するまでに掛かると推定される時間を、前記開弁遅延時間として算出する。
これにより、アイドリング状態から通常の運転に切り換えられた場合に、アイドリング状態の間に排気管18等の排気側の通路に堆積した未燃燃料成分の量が十分に減少してからEGR弁33が開かれることになる。従って、高濃度の未燃燃料成分がEGR管31等に侵入することを確実に防止することができ、未燃燃料成分がEGRシステム70に及ぼす悪影響を一層少なくすることができる。
また、本実施形態のEGRシステム70においては、遅延時間算出部63は、開弁遅延時間を、アイドリング継続時間取得部62により取得されたアイドリング状態の継続時間が長いほど長くなるように算出する。
これにより、以下の効果が奏される。即ち、一般的に、アイドリング状態の継続時間が長いほど、排気管18等の排気側の通路に堆積する未燃燃料成分の量も増加する。その点を考慮して、アイドリング状態の継続時間が長いほど、アイドリング状態のときに閉じられていたEGR弁33を開き始めるまでの時間が長くなるように制御することで、アイドリング状態の継続時間が短い場合には、EGRシステム70を作動させない期間を短くすることができる。これにより、EGRシステム70が実質的に機能しない期間を短くすることができ、排気ガスに大量の窒素酸化物が含まれてしまう状況を抑制することができる。
また、本実施形態のEGRシステム70においては、EGR制御部61は、エンジン1がアイドリング状態から通常の運転状態に切り換えられてから前記開弁遅延時間だけ遅延させたタイミングで、全閉状態のEGR弁33が全開状態となるように制御する。
これにより、未燃燃料成分がEGRシステム70に及ぼす悪影響が少なくなった時点で、EGR弁33を一気に全開として、即時にEGRシステム70を最大限に作動させることができる。この結果、稼動時間の広い範囲にわたって、排気ガスに含まれる窒素酸化物の量を少なく抑えた状況(EGRシステムが作動している状況)を維持することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、エンジン1はディーゼルエンジンであるものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えばガソリンエンジンであっても本発明を適用することができる。また、気筒の数や配列も上記の実施形態の直列4気筒型に限るものではない。
上記の実施形態では、アイドリング状態判定部67は、現在のエンジン1の稼動(運転)状態をエンジン回転数及び燃料噴射量の2つのパラメータでみることにより、アイドリング状態であるか否かを判定するものとした。しかしながら、アイドリング状態を判定する方法はこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、前記トラクタのアクセルが操作されているか否かをアクセルポジションセンサにより検出し、その検出結果に基づいてアイドリング状態であるか否かを判定することとしても良い。
アイドリング領域算出部64が計算するアイドリング領域は、図3に示す領域とすることに限らず、状況等に応じて変更することができる。
上記の実施形態では、図5に示す制御情報(テーブル)においては、通常の運転が開始されてからEGR弁33を開き始めるまでの時間(開弁遅延時間)は、アイドリング継続時間が長くなるにつれて加速度的に増加するように定めている。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、開弁遅延時間が、アイドリング継続時間が長くなるにつれて直線的に増加するように定めても良い。
上記の実施形態では、通常運転が開始されてから、遅延時間算出部63により算出した開弁遅延時間だけ経過してからEGR弁33を開き始める際には、例えば最大速度でEGR弁33を開いている。しかしながら、これに限るものではなく、EGR弁33の上流側と下流側の圧力のバランスを考慮した所望の速度でEGR弁33を開くものとしても良い。あるいは、遅延時間算出部63により算出した開弁遅延時間だけ経過してからEGR弁33を開き始める際に、算出された当該開弁遅延時間に応じて、EGR弁33の開弁速度や開度を適宜補正することとしても良い。
上記の実施形態では、エンジン1には過給機40が備えられているものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、過給機40を備えないエンジンであっても本発明を適用することができる。
上記の実施形態では、エンジン1が搭載される移動体はトラクタであるものとした。しかしながら、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、移動体をコンバイン等の他の農業用作業車両とすることもできるし、トラックやフォークリフト等の農業用以外の作業車両とすることもできるし、あるいは船舶等とすることもできる。