以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施形態における摩擦撹拌接合部材及びその製造方法につき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成し、z軸の正方向を上方向とする。
(第1の実施形態)
まず、図1から図3を参照して、本発明の第1の実施形態における摩擦撹拌接合部材の構成につき、詳細に説明する。
図1は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材の斜視図を示し、図2は、図1のA−A拡大断面図である。また、図3は、図2の部分拡大図である。
図1から図3に示すように、摩擦撹拌接合部材1は、金属製の基材10、典型的には鋼製、アルミニウム製又は銅製で矩形板又は矩形ブロック状の基材10と、金属製の相手部材20、典型的には鋼製、アルミニウム製又は銅製で基材10に装着された相手部材20と、を備える。なお、ここで基材10及び相手部材20に用いるアルミニウム及び銅は、各々、それらの合金であってもよい。また、摩擦撹拌接合部材1を軽量化を重視する必要がある場合は、基材10及び相手部材20には樹脂材(合成樹脂材)を用いてもよく、かかる樹脂材は、基材10及び相手部材20のいずれにも適用可能である。本実施形態においては、基材10がアルミニウム合金製であり、相手部材20が銅製である構成について説明する。
基材10は、典型的には中実部材であり、そのz軸の正方向側の面である上面に相手部材20を突設させる一方で、それと対向するz軸の負方向側の面である下面は、図示を省略する機械部品や電気部品等を装着する装着面として利用可能である。
相手部材20は、典型的には矩形平板状で基材10の上面から上方に突設された単数又は複数の相手部材要素から成り、図中では、一例として、2個の相手部材、つまり、共に矩形平板状の第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22を示す。第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22は、x軸の方向に列を成して配列される。相手部材20を構成する相手部材要素の個数が多い場合には、各相手部材要素は、複数の列を併置してもよい。
第1の相手部材要素21は、そのy−z平面に平行な主平面をx軸の方向に陥設して形成された凹部21cを有し、第2の相手部材要素22は、そのy−z平面に平行な主平面をx軸の方向に陥設して形成された凹部22cを有する。原理上、かかる凹部21c及び凹部22cは、基材10内に位置する第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各々の部分のみに対応して1個ずつ設けられていれば足りるが、便宜上、これらを複数の凹部21c及び複数の凹部22cとして説明する。また、凹部21c及び凹部22cは、y軸の方向やz軸の方向に陥設するものであってもよい。また、凹部21c及び凹部22cは、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22が中実部材である場合には、機械加工や表面処理等の外部からの加工処理で形成された凹部であってもよい。また、凹部21c及び凹部22cは、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22が鋳造品や焼結品等である多孔質部材である場合には、それらに形成される気孔が対応する主平面に開口した開口凹部であってもよい。
ここで、基材10と、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22と、は、基材10内に位置する第1の相手部材要素21の一端部及び第2の相手部材要素22の一端部に沿って上下方向に延在する接合領域Wにおいて、互いに接合される。
具体的には、図2及び図3に示すように、かかる接合領域Wは、詳細は後述する摩擦撹拌接合により、基材10の上面に達していなくともよいが、基材10の下面から上面に向かって第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の周囲を囲ってそれらに収束するような先細りの固相接合領域として形成される領域である。詳しくは、接合領域Wは、基材10の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域10wと、接合領域W内に位置する第1の相手部材要素21の複数の凹部21cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部21f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第1の相手部材要素21の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第1の相手部材要素21の凹部21c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部21pを含むアンカー領域21eと、接合領域W内に位置する第2の相手部材要素22の複数の凹部22cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部22f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第2の相手部材要素22の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第2の相手部材要素22の凹部22c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部22pを含むアンカー領域22eと、から成る。なお、アンカー部21fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部21cに侵入する際に凹部21cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよく、アンカー部22fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部22cに侵入する際に凹部22cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよい。
つまり、第1の相手部材要素21のアンカー領域21eは、接合領域W内に残存する第1の相手部材要素21の複数の凹部21cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入してその後固相化された部分であるアンカー部21fを備える。かかるアンカー部21fは、第1の相手部材要素21と基材10との間の固相接合状態を補強してこれらを係止するアンカーとして機能する。併せて、基材10の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域10wは、それが第1の相手部材要素21の壁面を擦りながら移動した後に固相化する際に、接合領域W内に残存する第1の相手部材要素21の複数の凹部21c以外の部分に接合すると共にかかる部分を押圧してかしめるため、かかる部分はアンカー領域21eにおけるかしめ部21pとなる。ここで、基材10内に位置する第1の相手部材要素21の凹部21cが複数個であれば、アンカー部21fも複数個形成されて第1の相手部材要素21と基材10との間の係止力が増強されるため、より好ましい。なお、アンカー部21fにおいても、基材10が第1の相手部材要素21に接合していてもよい。
同様に、第2の相手部材要素22のアンカー領域22eは、接合領域W内に残存する第2の相手部材要素22の複数の凹部22cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入してその後固相化された部分であるアンカー部22fを備える。かかるアンカー部22fは、第2の相手部材要素22と基材10との間の固相接合状態を補強してこれらを係止するアンカーとして機能する。併せて、基材10の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域10wは、それが第2の相手部材要素22の壁面を擦りながら移動した後に固相化する際に、接合領域W内に残存する第2の相手部材要素22の複数の凹部22c以外の部分に接合すると共にかかる部分を押圧してかしめるため、かかる部分はアンカー領域22eにおけるかしめ部22pとなる。ここで、基材10内に位置する第2の相手部材要素22の凹部22cが複数個であれば、アンカー部22fも複数個形成されて第2の相手部材要素22と基材10との間の係止力が増強されるため、より好ましい。なお、アンカー部22fにおいても、基材10が第2の相手部材要素22に接合していてもよい。
なお、図3中で示すアンカー部21f及びアンカー部22fの個数は模式的なものであり、実際には、接合領域W内に残存する第1の相手部材要素21の凹部21c及び第2の相手部材要素22の凹部22cの個数に応じた個数のアンカー部21f及びアンカー部22fが生成される。
次に、以上の構成を有する本実施形態における摩擦撹拌接合部材1を製造するための製造方法につき、更に図4をも参照しながら、詳細に説明する。
図4は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材を製造するための製造方法の各工程を示すもので、図4(a)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に対向させた状態を示す断面図であり、図4(b)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に侵入させて摩擦撹拌接合している状態を示す断面図である。なお、図4(a)及び図4(b)は、断面の位置として図2に相当する。
摩擦撹拌接合部材1を製造するには、図4(a)に示すように、まず、予め、中実の基材10、複数の凹部21cを有する第1の相手部材要素21及び複数の凹部22cを有する第2の相手部材要素22を各々用意し、基材10の上面側(図中では下側)にその上面から内方に陥設してy軸の方向に延在する第1の挿入溝11に第1の相手部材要素21の一端部を挿入し、かつ、基材10の上面側にその上面から内方に陥設してy軸の方向に延在する第2の挿入溝12に第2の相手部材要素22の一端部を挿入した状態で、これらを典型的には金属製の載置ブロック35上に載置して、基材10の下面側(図中では上側)に摩擦撹拌接合用の接合ツール30を対向させる。ここで、第1の挿入溝11は、第1の相手部材要素21の一端部がそれに挿入される際に、所定の遊び代を与えるように、第1の相手部材要素21の一端部のサイズよりも大きいサイズを有する典型的には矩形凹部である。同様に、第2の挿入溝12は、第2の相手部材要素22の一端部がそれに挿入される際に、所定の遊び代を与えるように、第2の相手部材要素22の一端部のサイズよりも大きいサイズを有する典型的には矩形凹部である。なお、この際、接合ツール30は、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に対して、y軸の負方向側の端部に位置させるものとする。
ここで、接合ツール30は、典型的には工具鋼製であり、ショルダ32、及びショルダ32の下端部から下方に突出するプローブ34を備える。かかるプローブ34は、その基端から先端までにおいて、プローブ34の回転軸と直交する断面における円形の半径が同一である円柱形状を有するが、その基端から先端に向かって先細りとなるテーパ状、つまり円錐形状を有していてもよい。
また、載置ブロック35には、2つの挿入溝36が設けられ、基材10の上面側(図中では下側)から突出した第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の部分は、2つの挿入溝36に対応して挿入される。かかる状態の第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22は、対応する挿入溝36の内周部で、x軸の方向、y軸の方向及びz軸の方向に移動しないように固定される。この際、載置ブロック35の下面(図中では上側の面)は、基材10の上面(図中では下側の面)に当接されている。また、載置ブロック35上に載置された基材10の下面側(図中では上側)の縁部は、典型的には金属製の保持具50で保持される。このような構成により、結果として、基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22は、互いに相対移動しないように保持される。
次に、図4(b)に示すように、図示を省略する移動機構を動作させて、図4(a)の状態から、接合ツール30を上下軸を回転軸として回転させながら基材10に向けて接近させていき、プローブ34の先端部が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間に侵入するまで、接合ツール30を基材10内に侵入させる。この際、プローブ34は、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に接触しない。よって、プローブ34は、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22を不要に押圧してそれらの姿勢や位置を移動させることもない。なお、接合ツール30の回転速度が大きい場合には、プローブ34の先端部を、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間まで侵入させずにその手前の基材10内でとどめてもかまわない。
そして、このようにプローブ34の先端部を第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間に侵入させたならば、接合ツール30の回転を所望の回転数に維持しながら、図示を省略する移動機構を動作させ、y軸の正方向側に向けて移動させて走査させる。
その結果、プローブ34により塑性流動を起こした基材10の材料が、凹部21c及び凹部22cの中に流れ込んでいく状態になると共に、凹部21c及び凹部22c以外の部分では、塑性流動を起こした基材10の材料が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22を相対的に強く擦りながら移動する。
併せて、プローブ34が通過した後の基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各材料は、それらの温度が塑性流動を起こす温度よりも低下していき、最終的には固相化していくことになる。
そして、接合ツール30が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に対して、y軸の正方向側の端部に到達したならば、接合ツール30を基材10内から退避させ、回転を停止する。なお、接合ツール30を基材10内に侵入させる際、及びそれらを基材10内から退避させる際の回転数は、接合する際の回転数よりも小さく設定してもよい。
このように接合ツール30を退避させた後では、基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各材料は、それらの温度がより低下して完全に固相化しており、図1から図3に示す構成のアンカー部21f及びかしめ部21pを有するアンカー領域21e、並びにアンカー部22f及びかしめ部22pを有するアンカー領域22eの各々を備える摩擦撹拌接合部材1が得られることになる。
ここで、接合領域Wでは、基材10の上面は、摩擦撹拌接合中に載置ブロック35の下面がそれに当接し保持していたために平坦面に維持されており、基材10の下面側ではy軸の方向に延在する直線上の塑性流動痕が見られた。また、第1の相手部材要素21のアンカー領域21e及び第2の相手部材要素22のアンカー領域22eには、第1の相手部材要素21の凹部21cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部21f及び第2の相手部材要素22の凹部22cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部22fが対応して形成されていた。併せて、接合領域W内の第1の相手部材要素21の複数の凹部21c以外の部分には、基材領域10wと接合してこれに押圧されてかしめられたかしめ部21pが形成されると共に、接合領域W内の第2の相手部材要素22の複数の凹部22c以外の部分には、基材領域10wと接合してこれに押圧されてかしめられたかしめ部22pが形成されていた。
かかる本実施形態における実験条件の一例を挙げると、基材10には、板厚5mmの純アルミ板を用い、これに深さ2mm及び幅2mmの第1の挿入溝11及び第2の挿入溝12の溝加工を行った。かかる溝加工は、切削加工、板鍛造、押出、異形圧延、及びフォトエッチングのいずれでもよい。これらに20mmx60mmの厚み2mmの多孔質銅板を、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22として嵌め込み、基材10の下面側から摩擦撹拌接合を行った。この際の接合条件は、接合ツール30の回転数が1200rpm、接合ツール30の送り速度(走査速度)が300mm/min、及びプローブ34の挿入量が4.8mmであった。そして、接合行程が完了した後、図2のように切断した摩擦撹拌接合部材1の断面について、走査型電子顕微鏡を用いて詳細に観察したが、接合欠陥や拡散接合で見られるようなアルミニウム−銅系金属間化合物は認められず、良好な固相接合物が得られた。
最後に、本実施形態における摩擦撹拌接合部材の相手部材を構成する相手部材要素の配列方向の個数が増えた場合の一例を、更に図5をも参照しながら、詳細に説明する。
図5は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材の相手部材を構成する相手部材要素が6個設けられた場合のツール挿入領域を示す断面図であり、断面の位置としては図2に相当する。
図5に示すように、接合前の摩擦撹拌接合部材100の相手部材20を構成する相手部材要素が6個設けられる場合には、基材110に第1の挿入溝111から第6の挿入溝116を設け、第1の挿入溝111から第6の挿入溝116に対して、複数の凹部121cを有する第1の相手部材要素121から複数の凹部126cを有する第6の相手部材要素126を対応して挿入することになる。
ここで、第1の相手部材要素121と第2の相手部材要素122との間のツール挿入領域S1、第3の相手部材要素123と第4の相手部材要素124との間のツール挿入領域S2、及び第5の相手部材要素125と第6の相手部材要素126との間のツール挿入領域S3に、接合ツール30を挿入させれば、相手部材要素の個数の半分の3箇所のツール挿入領域を設けるだけで足りるため効率的である。
つまり、相手部材要素の個数が偶数である場合には、基材の一方の端部側から2個ずつの相手部材要素の対を作り、各対の間にツール挿入領域を設ければ、接合領域の総数が抑制できて相手部材要素と基材との摩擦撹拌接合を効率的に行うことができる。また、相手部材要素の個数が奇数である場合には、相手部材要素の個数が偶数である場合と同様に相手部材要素の対を作っていけばよいが、残余の1個の相手部材要素では対を作ることはできないため、その残余の1個については、そのx軸の方向の側方領域の一方又は双方に同様にツール挿入領域を設ければよい。なお、相手部材要素の配列方向の個数が減って相手部材要素の個数が1個である場合には、そのx軸の方向の側方領域の一方又は双方に同様にツール挿入領域を設ければよい。
以上の本実施形態の構成によれば、中実部材である基材10と、基材10内にその一端部が収容されながらその他端部が基材10から突出するように突設されると共に、接合領域Wで基材10と一端部とが接合された相手部材20と、摩擦撹拌接合ツール30で撹拌される基材10を構成する材料が、相手部材20の一端部の凹部21c、22cに侵入しながら固相化することにより、接合領域Wにおいて形成されたアンカー部21f、22f、及び摩擦撹拌接合ツール30で撹拌される基材10を構成する材料が、相手部材20の一端部における凹部21c、22c以外の残部で固相化することにより、残部がかしめられたかしめ部21p、22pを有するアンカー領域21e、22eと、を備えるものであるため、簡便な構成で、充分なアンカー効果を発揮させながら、中実部材の基材10と相手部材20とを確実に接合した摩擦撹拌接合部材1を実現することができる。
また、本実施形態の構成によれば、接合領域Wが、基材10内に収容された相手部材20の一端部に沿って延在することにより、アンカー領域21e、22eに複数のアンカー部21f、22fを確実に形成することができ、アンカー効果をより増大することができる。
また、本実施形態の構成によれば、摩擦撹拌接合ツール30が、相手部材20が突設される基材10の第1の面に対向する基材10の第2の面から、基材の内方に侵入されて基材を構成する材料を撹拌することにより、アンカー領域21f、22fが形成されるものであるため、簡便な構成で、充分なアンカー効果を発揮させながら、中実部材の基材10と相手部材20とを確実に摩擦撹拌接合することができる。また、摩擦撹拌接合ツール30をこのような方向から基材10内に侵入させた場合には、相手部材20が突設される側の第1の面を盛り上がらせずに平坦面にすることも可能である。
さて、以上説明した本実施形態の構成において、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22と基材10とを固相接合し、かつ、第1の相手部材要素21のアンカー領域21e及び第2の相手部材要素22のアンカー領域22eを生成させる際に用い得る接合ツール30の構成、特にプローブ34の形状には、種々の変形例が考えられる。
そこで、図6を参照して、本実施形態の変形例における摩擦撹拌接合部材を製造するための接合ツールのプローブの構成につき、詳細に説明する。
図6は、本変形例における摩擦撹拌接合部材を製造するための製造方法の各工程を図4に対応させて示すもので、図6(a)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に対向させた状態を示す断面図であり、図6(b)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に侵入させて摩擦撹拌接合している状態を示す断面図である。
具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、本変形例における接合ツール130においては、プローブ134の先端部が、球状の形状を有しており、つまり、プローブ134は、円柱の先端に半球等の球状部を有した形状であり、かかる点が本実施形態の構成との相違点であって、残余の構成は同一である。かかる同一な構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
かかる接合ツール130を用いて摩擦撹拌接合部材1を製造するには、図6(a)に示すように、本実施形態と同様に、基材10の上面側(図中では下側)にその上面から内方に陥設して設けられた第1の挿入溝11に第1の相手部材要素21の一端部を挿入し、かつ、基材10の上面側にその上面から内方に陥設して設けられた第2の挿入溝12に第2の相手部材要素22の一端部を挿入した状態で、これらを載置ブロック35上に載置して固定し、基材10の下面側(図中では上側)に摩擦撹拌接合用の接合ツール130を対向させる。
次に、図6(b)に示すように、図示を省略する移動機構を動作させて、図6(a)の状態から、接合ツール130を上下軸を回転軸として回転させながら基材10に向けて接近させていき、プローブ134の先端部が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に接触しないでそれらの間に侵入するまで、接合ツール130を基材10内に侵入させる。この際、プローブ134の先端形状は球状であるため、プローブ134は、基材10の材料を不要に乱すことなく均等にかき分けながらスムースに基材10内に侵入し得ると共に、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22を不要に押圧してそれらの姿勢や位置を移動させることもない。
そして、このようにプローブ134の先端部を第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間に侵入させたならば、接合ツール130の回転を所望の回転数に維持しながら、図示を省略する移動機構を動作させ、y軸の負方向側の端部からy軸の正方向側端部へと移動させて走査させる。
その結果、プローブ134により塑性流動を起こした基材10の材料が、第1の相手部材要素21の凹部21c及び第2の相手部材要素22の凹部22cの中に流れ込んでいく状態になると共に、凹部21c及び凹部22c以外の部分では、塑性流動を起こした基材10の材料が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の壁面を相対的に強く擦りながら移動する。
この際、先端形状が球状のプローブ134は、基材10の材料を不要に乱すことなく均等にかき分けながらスムースに第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22間に侵入し得ているため、塑性流動を起こした基材10の材料は、よりスムースに第1の相手部材要素21の凹部21c及び第2の相手部材要素22の凹部22cの中に流れ込む。併せて、このようにスムースに第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22間に侵入し得る先端形状が球状のプローブ134は、その摩耗もより小さくなる。
そして、接合ツール130が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に対して、y軸の正方向側の端部に到達したならば、接合ツール130を基材10内から退避させ、それらの回転を停止する。
このように接合ツール130を退避させた後では、基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各材料は、それらの温度がより低下して完全に固相化して、図1から図3に示す第1の相手部材要素21のアンカー領域21e及び第2の相手部材要素22のアンカー領域22eを有する摩擦撹拌接合部材1が同様に得られる。
以上の本変形例の構成によれば、摩擦撹拌接合ツール130のプローブ134が、球状の形状を有することにより、摩擦撹拌接合ツール130、特にプローブ134の摩耗を抑制することができると共に、摩擦撹拌接合ツール130で撹拌される基材10を構成する材料が塑性流動する流れを不要に乱す現象を抑制することができ、アンカー領域21e、22eにおけるアンカー部21f、22fをより迅速かつ確実に形成することができる。
(第2の実施形態)
次に、図7から図9を参照して、本発明の第2の実施形態における摩擦撹拌接合部材の構成につき、詳細に説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態における摩擦撹拌接合部材の斜視図を示し、図8は、図7のB−B拡大断面図である。また、図9は、図8の部分拡大図である。
図7から図9に示すように、本実施形態における摩擦撹拌接合部材101においては、接合領域W’が第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22から下方に向かって先細りの領域であることが、第1の実施形態の構成との相違点であって、残余の構成は同一である。かかる同一な構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
具体的には、図8及び図9に示すように、本変形例における摩擦撹拌接合部材101の接合領域W’は、詳細は後述する摩擦撹拌接合により、基材10の下面に達していなくともよいが、基材10の上面の第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22からそれらの周囲を囲って下面に向かって先細りの固相接合領域として形成される領域である。詳しくは、接合領域W’は、基材10の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域110wと、接合領域W’内に位置する第1の相手部材要素21の複数の凹部21cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部21f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第1の相手部材要素21の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第1の相手部材要素21の凹部21c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部21pを含むアンカー領域21eと、接合領域W内に位置する第2の相手部材要素22の複数の凹部22cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部22f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第2の相手部材要素22の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第2の相手部材要素22の凹部22c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部22pを含むアンカー領域22eと、から成る。なお、アンカー部21fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部21cに侵入する際に凹部21cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよく、アンカー部22fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部22cに侵入する際に凹部22cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよい。
つまり、かかる接合領域W’は、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22から下面に向かって先細りの領域であるため、第1の実施形態における摩擦撹拌接合部材10の接合領域Wよりもその容積が小さな固相接合領域として形成されれば足りる。よって、摩擦撹拌接合により接合領域W’を形成するための加工エネルギ量や加工時間が、より低減され得るものである。
次に、以上の構成を有する本実施形態における摩擦撹拌接合部材101を製造するための製造方法につき、更に図10をも参照しながら、詳細に説明する。
図10は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材を製造するための製造方法の各工程を図4に対応させて示すもので、図10(a)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に対向させた状態を示す断面図であり、図10(b)は、接合ツールを、相手部材を装着した基材に侵入させて摩擦撹拌接合している状態を示す断面図である。
摩擦撹拌接合部材101を製造するには、図10(a)に示すように、まず、予め、中実の基材10、複数の凹部21cを有する第1の相手部材要素21及び複数の凹部22cを有する第2の相手部材要素22を各々用意し、基材10の上面側にその上面から内方に陥設して設けられた第1の挿入溝11に第1の相手部材要素21の一端部を挿入し、かつ、基材10の上面側にその上面から内方に陥設して設けられた第2の挿入溝12に第2の相手部材要素22の一端部を挿入した状態で、これらを典型的には金属製のテーブル140上に載置して、基材10の上面側に摩擦撹拌接合用の接合ツール230を対向させる。
ここで、接合ツール230は、典型的には工具鋼製であり、ショルダ32、及びショルダ32の下端部から下方に突出するプローブ234を備える。かかるプローブ234は、円柱形状を有するものであるが、第1の実施形態におけるプローブ34よりも長尺である。また、第1の実施形態の変形例におけるプローブ134のように、プローブ234の先端形状が球状であってもよい。
また、テーブル140には、嵌装凹部142が設けられ、基材10の下部は、嵌装凹部142に嵌め込まれて固定される。また、基材10の上部は、典型的には金属製の保持具150で押さえられて保持されると共に、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22は、保持具150で各々の側方を押さえられて保持される。このような構成により、結果として、基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22は、互いに相対移動しないように保持される。
次に、図10(b)に示すように、図示を省略する移動機構を動作させて、図10(a)の状態から、接合ツール230を上下軸を回転軸として回転させながら第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間に向けて接近させて、プローブ234をそれらの間を通過させ基材10内に侵入させていき、プローブ234の先端部が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各下端よりも下方に侵入するまで、基材10内に侵入させる。この際、プローブ234は、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に接触しない。なお、接合ツール230の回転速度が大きい場合には、プローブ234の先端部を、基材10内における第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間でとどめてもかまわない。
そして、このようにプローブ234の先端部を第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間又はそれらの下端の下方に侵入させたならば、接合ツール230の回転を所望の回転数を維持しながら、図示を省略する移動機構を動作させ、接合ツール230を基材10におけるy軸の方向の負方向の端部からy軸の方向の正方向の端部に移動させて走査させる。
その結果、プローブ234により塑性流動を起こした基材10の材料が、第1の相手部材要素21の凹部21c及び第2の相手部材要素22の凹部22cの中に流れ込んでいく状態になると共に、凹部21c及び凹部22c以外の部分では、塑性流動を起こした基材10が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の壁面を相対的に強く擦りながら移動する。なお、アンカー部21fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部21cに侵入する際に凹部21cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよく、アンカー部22fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部22cに侵入する際に凹部22cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよい。
併せて、プローブ234が通過した後の基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各材料は、それらの温度が塑性流動を起こす温度よりも低下していき、最終的には固相化していくことになる。
そして、接合ツール230が、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22に対して、y軸の正方向側の端部に到達したならば、基材10内から退避させ、それらの回転を停止する。
このように接合ツール230を退避させた後では、基材10、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の各材料は、それらの温度がより低下して完全に固相化しており、図7から図9に示す構成のアンカー領域21e及びアンカー領域22eを有する摩擦撹拌接合部材101が得られることになる。ここで、接合領域W’では、基材10の上面側ではy軸の方向に延在する直線上の塑性流動痕が見られたが、基材10の下面側では摩擦撹拌接合ツールによる塑性流動痕が存在しない平坦面にすることができた。また、第1の相手部材要素21のアンカー領域21e及び第2の相手部材要素22のアンカー領域22eには、第1の相手部材要素21の凹部21cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部21f及び第2の相手部材要素22の凹部22cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部22fが形成されていた。
なお、本実施形態における接合領域W’は、第1の実施形態における変形例の構成においても実現し得ることはもちろんである。
以上の本実施形態の構成によれば、摩擦撹拌接合ツール230が、相手部材20が突設される基材10の第1の面から、基材10の内方に侵入されて基材10を構成する材料を撹拌し、基材10内に挿入された相手部材20の凹部21c、22cに材料を侵入させることにより、このような方向から基材10内に摩擦撹拌接合ツール230を侵入させた場合にでも、中実部材の基材10と相手部材20とを確実に摩擦撹拌接合することができる。また、変形例を含む第1の実施形態における摩擦撹拌接合ツール30、130が、相手部材20が突設される基材10の第1の面に対向する基材10の第2の面から、基材10の内方に侵入される態様と併せて評価すると、摩擦撹拌接合ツール30、130、230を基材10に侵入させる自由度を増大すると共に、基材10の第1及び第2の面のいずれの方から対応する摩擦撹拌接合ツール30、130、230を侵入させた場合にでも、中実部材の基材10と相手部材20とを確実に摩擦撹拌接合することができることが理解できる。また、摩擦撹拌接合ツール230を基材10の第1の面からその中に侵入させた場合には、第2の面を摩擦撹拌接合ツール230による加工痕が存在しない平坦面にすることができると共に、形成すべきアンカー領域21e、22eを、相手部材10が突設される第1の面側でそれらを内包した状態から第2の面側に向かって縮小した態様で形成しながら、アンカー領域21e、22eのアンカー機能を必要十分に発揮させることができるため、不要に大きなアンカー領域21e、22eを形成する必要性を排除することができ、摩擦撹拌接合ツール230を作動させるエネルギを減少できると共にその加工時間も短縮することができる。
(第3の実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第3の実施形態における摩擦撹拌接合部材の構成につき、詳細に説明する。
図11は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材の拡大断面図を示し、位置的には図2に相当する。
図11に示すように、本実施形態における摩擦撹拌接合部材201においては、接合領域W’’が基材10の上面側で若干盛り上がっていることが、第1の実施形態の構成との相違点であって、残余の構成は同一である。かかる同一な構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
具体的には、図11に示すように、接合領域W’’は、基材10の下面から上面に向かって第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の周囲を囲ってそれらに収束するような先細りの固相接合領域として形成される領域である。詳しくは、接合領域W’’は、基材10の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域210wと、接合領域W’’内に位置する第1の相手部材要素21の複数の凹部21cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部21f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第1の相手部材要素21の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第1の相手部材要素21の凹部21c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部21pを含むアンカー領域21eと、接合領域W’’内に位置する第2の相手部材要素22の複数の凹部22cの中に基材10の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部22f、及び塑性流動を起こした基材10の材料が第2の相手部材要素22の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより第2の相手部材要素22の凹部22c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部21pを含むアンカー領域22eと、から成る。なお、アンカー部21fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部21cに侵入する際に凹部21cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよく、アンカー部22fにおいては、塑性流動を起こした基材10の材料が凹部22cに侵入する際に凹部22cの内部の壁面を擦りながら侵入して接合していてもよい。
ここで、接合領域W’’では、基材10の下面側ではy軸の方向に延在する直線上の塑性流動痕が存在する一方で、基材10の上面側では塑性流動に起因する若干の盛り上がった盛り上がり部23が形成されている。また、第1の相手部材要素21のアンカー領域21e及び第2の相手部材要素22のアンカー領域22eには、第1の相手部材要素21の凹部21cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部21f、凹部21c以外の部分でかしめられたかしめ部21p、第2の相手部材要素22の凹部22cの中に塑性流動を起こした基材10の材料が流れ込んで固相化したアンカー部22f、及び凹部22c以外の部分でかしめられたかしめ部22pが形成されているが、かかるアンカー部21f及び22f並びにかしめ部21p及び22pを有するアンカー領域21e及びアンカー領域22eは、基材10の上面に形成される塑性流動に起因する若干の盛り上がり部23の中にも存在している。
このような接合領域W’’の構成は、基材10と、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22と、を摩擦撹拌接合する際に、第1の相手部材要素21及び第2の相手部材要素22の間に位置する図4に示した載置ブロック35の下面の部分を、基材10の上面に当接させないで所定の間隙を持たせて離間させる凹形状にすることにより、基材10の上面が塑性流動時に若干盛り上がってその後固相化されたことに起因する。
なお、本実施形態における接合領域W’’は、第1の実施形態における変形例の構成においても実現し得ることはもちろんである。
以上の本実施形態の構成によれば、摩擦撹拌接合ツール30、130を、相手部材20が突設される基材10の第1の面に対向する基材10の第2の面からその中に侵入させた場合に、治具60の設定を調節することにより、相手部材20が突設される側の第1の面を微小に盛り上げることもでき、アンカー領域21e、22eの容積がその分増大され得るため、基材10と相手部材20との接合力をより増大することができる。
(第4の実施形態)
次に、図12及び図13を参照して、本発明の第4の実施形態における摩擦撹拌接合部材の構成につき、詳細に説明する。
図12は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材の上面図を示し、図13は、図12のC−C拡大断面図である。なお、図13は、摩擦撹拌接合部材の右側の断面の構成について主として示すものであるが、図示を省略する左側の断面の構成は、右側の構成に対して左右対称な構成を有する。
図12及び図13に示すように、本実施形態における摩擦撹拌接合部材301においては、一対の基材60の間に相手部材70を配設したことが、第1の実施形態の構成との相違点であって、残余の構成は同一である。かかる同一な構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
具体的には、摩擦撹拌接合部材301は、金属製の基材60、典型的には鋼製、アルミニウム製又はチタン製の基材60と、金属製の相手部材70、典型的には鋼製、アルミニウム製又はチタン製である基材60に装着された相手部材70と、を備える。なお、ここで、基材60及び相手部材70に用いるアルミニウム及びチタンは、各々、それらの合金であってもよい。摩擦撹拌接合部材301は、構造体に適用される強度部材として好適に使用可能である。
また、本実施形態における摩擦撹拌接合部材301として、軽量化の観点からは、樹脂材を用いる構成が挙げられるが、その樹脂材としては、熱可塑性樹脂が好ましく、より高い強度を必要とする場合等には、ガラス繊維又は炭素繊維等の繊維強化プラスチックを用いることがより好ましい。かかる樹脂材は、基材60及び相手部材70のいずれにも適用可能であり、かかる樹脂材を用いた摩擦撹拌接合部材301は、構造体に適用される強度部材として使用が可能な強度を有する。本実施形態においては、一例として、基材60が熱可塑性樹脂製であり、相手部材70がアルミニウム合金製の鋳造品である構成について説明する。
基材60は、典型的には中実部材であり、そのx軸の負方向側の面である側面に相手部材70を突設させる一方で、z軸の正方向側の面である上面、または負方向側の面である下面は、図示を省略する構造体等と装着される装着面として利用可能である。
相手部材70は、典型的には矩形平板状で基材60の左側面から左側方に突設された単数又は複数の相手部材要素から成り、図中では、一例として、1個の相手部材要素で構成される相手部材70を示す。相手部材70を構成する相手部材要素の個数が多い場合には、各相手部材要素は、単数の列に複数配設してもよく、複数の列で併置してもよい。
相手部材70は、そのx−y平面に平行な主平面をz軸の方向に陥設して形成された凹部70cを有する。原理上、かかる凹部70cは、基材60内に位置する相手部材70の部分のみに対応して1個設けられていれば足りるが、接合強度を向上する観点からは、複数の凹部70cを有することが望ましい。また、凹部70cは、更にy−z平面に平行な主平面をx軸の方向に陥設して形成されていることがより好ましい。なお、凹部70cは、相手部材70が中実部材である場合には、機械加工や表面処理等の外部からの加工処理で形成された凹部であってもよい。また、凹部70cは、相手部材70が鋳造品や焼結品等である多孔質部材である場合には、それらに形成される気孔が対応する主平面に開口した開口凹部であってもよい。また、図中では、基材60内に位置する相手部材70の部分のみに複数の凹部70cを配設した構成を示している。
ここで、基材60及び相手部材70は、基材60内に位置する相手部材70の一端部に沿って上下方向に延在する接合領域W’’’において、互いに接合される。
具体的には、図13に示すように、かかる接合領域W’’’は、摩擦撹拌接合により、基材60の上面から下面に向かって相手部材70の端部を囲って収束するような先細りの固相接合領域として形成される領域である。詳しくは、接合領域W’’’は、基材60の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域310w、基材領域310w内に位置する相手部材70の複数の凹部70cの中に基材60の材料が塑性流動により侵入した後に固相化された部分であるアンカー部70f、及び塑性流動を起こした基材60の材料が相手部材70の壁面を擦りながら移動した後に固相化されることにより相手部材70の凹部70c以外の壁面と接合しながらこれを押圧してかしめたかしめ部70pを含む接合領域W’’’から成る。なお、アンカー部70fにおいては、塑性流動を起こした基材60の材料が凹部70cに侵入する際に凹部70cの内部の壁面を擦りながら侵入していてもよい。
つまり、相手部材70のアンカー領域70eは、接合領域W’’’内にある相手部材70の複数の凹部70cの中に基材60の材料が塑性流動により侵入してその後固相化された部分であるアンカー部70fを備える。かかるアンカー部70fは、相手部材70と基材60との間の固相接合状態を補強してこれらを係止するアンカーとして機能する。併せて、基材60の材料が摩擦撹拌接合時に塑性流動を起こした後に固相化された基材領域310wは、それが相手部材70の壁面を擦りながら移動した後に固相化する際に、接合領域W’’’内にある相手部材70の複数の凹部70c以外の部分に接合すると共にかかる部分を押圧してかしめるため、かかる部分はアンカー領域70eにおけるかしめ部70pとなる。ここで、基材60内に位置する相手部材70の凹部70cが複数個であれば、アンカー部70fも複数個形成されて相手部材70と基材60との間の接合強度が増強されるため、より好ましい。なお、アンカー部70fにおいても、基材60が相手部材70に接合していてもよい。
なお、図13中で示すアンカー部70fの個数は模式的なものであり、実際には、接合領域W’’’内にある相手部材70の凹部70cの個数に応じた個数のアンカー部70fが生成される。
次に、以上の構成を有する本実施形態における摩擦撹拌接合部材301を製造するための製造方法につき、更に図14をも参照しながら、詳細に説明する。
図14は、本実施形態における摩擦撹拌接合部材301を製造するための製造方法の各工程を示すもので、図14(a)は、接合ツール30を、相手部材70を装着した基材60に対向させた状態を示す断面図であり、図14(b)は、接合ツール30を、相手部材70を装着した基材60に侵入させて摩擦撹拌接合している状態を示す断面図である。なお、図14(a)及び図14(b)は、断面の位置として図13に相当する。
摩擦撹拌接合部材301を製造するには、図14(a)に示すように、まず、予め、中実の基材60、複数の凹部70cを有する相手部材70を用意し、基材70の左側面側にその左側面から内方に陥設してy軸の方向に延在する挿入溝13に相手部材70の一端部を挿入した状態で、これらを典型的には金属製の載置ブロック37上に載置して、基材60の上面側に摩擦撹拌接合用の接合ツール30を対向させる。ここで、挿入溝13は、相手部材70の一端部がそれに挿入される際に、所定の遊び代を与えるように、相手部材70の一端部のサイズよりも大きいサイズを有する典型的には矩形凹部である。なお、この際、接合ツール30は、相手部材70に対して、y軸の負方向側の端部に位置させるものとする。なお、図14中では、相手部材70の左側面と上面とは、直交した関係にあるが、これらは、互いに交差する関係にあればよい。
ここで、接合ツール30は、典型的には工具鋼製であり、ショルダ32、及びショルダ32の下端部から下方に突出するプローブ34を備える。かかるプローブ34は、その基端から先端までにおいて、プローブ34の回転軸と直交する断面における円形の半径が同一である円柱形状を有するが、その基端から先端に向かって先細りとなるテーパ状、つまり円錐形状を有していてもよい。但し、基材60の撹拌性が良好である場合や過剰な入熱を避ける必要がある場合等はプローブ34を有さない所謂ショルダタイプのツールであってもよい。かかるショルダタイプのツールにおいては、ショルダの下端部が基材60と接触することになるが、その形状は球状であることが好ましい。
また、載置ブロック37上に載置された基材60及び相手部材70の縁部は、典型的には金属製の保持具51で保持される。このような構成により、基材60及び相手部材70は、互いに相対移動しないように保持される。
次に、図14(b)に示すように、図示を省略する移動機構を動作させて、図14(a)の状態から、接合ツール30を上下軸を回転軸として回転させながら基材60に向けて接近させていき、接合ツール30を基材60内に侵入させる。
そして、このように接合ツール30を侵入させたならば、接合ツール30の回転を所望の回転数を維持しながら、図示を省略する移動機構を動作させ、y軸の正方向側に向けて移動させて走査させる。
その結果、プローブ32により塑性流動を起こした基材60の材料が、凹部70cの中に流れ込んでいく状態になると共に、凹部70c以外の部分では、塑性流動を起こした基材60の材料が、相手部材70の壁面を相対的に強く擦りながら移動する。
併せて、プローブ34が通過した後の基材60、相手部材70の各材料は、それらの温度が塑性流動を起こす温度よりも低下していき、最終的には固相化していくことになる。
そして、接合ツール30が、相手部材70に対して、y軸の正方向側の端部に到達したならば、接合ツール30を基材60内から退避させ、回転を停止する。なお、接合ツール30を基材60内に侵入させる際、及び基材60内から退避させる際の回転数は、接合する際の回転数よりも小さく設定してもよい。
このように接合ツール30を退避させた後では、基材60の材料は、その温度がより低下して完全に固相化しており、図13に示す構成のアンカー部70f及びかしめ部70pを有する摩擦撹拌接合部材301が得られることになる。
ここで、接合領域W’’’では、基材60の下面は、摩擦撹拌接合中に載置ブロック37の上面がそれに当接し保持していたために平坦面に維持されており、基材60の上面側ではy軸の方向に延在する直線上の塑性流動痕が見られた。また、相手部材70のアンカー領域70eには、相手部材70の凹部70cの中に塑性流動を起こした基材60の材料が流れ込んで固相化したアンカー部70fが形成されていた。併せて、接合領域W’’’内の相手部材70における複数の凹部70c以外の部分には、基材領域310wと接合してこれに押圧されてかしめられたかしめ部70pが形成されていた。
以上の本実施形態の構成によれば、摩擦撹拌接合ツール30が、相手部材70が突設される基材60の第1の面に交差する第3の面から、基材60の内方に侵入されて基材60を構成する材料を撹拌することにより、アンカー領域70eが、形成されるものであるため、簡便な構成で、充分なアンカー効果を発揮させながら、中実部材の基材60及び相手部材70の接合力をより増強することができる。
さて、以上説明した本実施形態の構成において、相手部材70が装着される基材60の構成には、種々の変形例が挙げられる。
そこで、図15を参照して、本実施形態の変形例における摩擦撹拌接合部材401の構成につき、詳細に説明する。
図15は、本変形例における摩擦撹拌接合部材401の拡大断面図を示し、位置的には図13に相当する。
図15に示すように、本実施形態における摩擦撹拌接合部材401においては、基材80が切欠部14を有し、かつ、これに対応して基材80及び相手部材70を載置する載置ブロック38が適用されることが、第4の実施形態の構成との相違点であって、残余の構成は同一である。かかる同一な構成については同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
具体的には、図15に示すように、本変形例における摩擦撹拌接合部材401は、その左側面側に対して、その左側面から内方に陥設してx軸の方向に延在する相手部材70の厚さと略同一の切欠部14を有する基材80に、その切欠部14に相手部材70の一端部が対応して配設されるものである。切欠部14は、相手部材70の一端部がそれに配設される際に、所定の遊び代を与えるように、相手部材70の一端部の厚さよりも大きく設定されている。
載置ブロック38は、基材80及び相手部材70が載置される載置面が平坦であり、相手部材70を載置した後に、相手部材70の一端部と基材80の切欠部14とを対応させながら載置させる。なお、載置ブロック38に予め基材80を載置してから、相手部材70の一端部を基材80の切欠部14に挿入するように載置してもよい。
以上の本変形例の構成によれば、基材80が、切欠部14を有することにより、載置ブロック38への基材80及び相手部材70の載置が容易になるので、簡便な構成で、摩擦撹拌接合部材401を製造することができる。
なお、本発明は、構成要素の形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。