JP6481364B2 - 核酸除去法 - Google Patents
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Description
数コピーといった微量サンプルからでも標的核酸を何十万倍に増幅することができ、研究分野のみならず、遺伝子診断、臨床診断といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等においても、広く用いられるようになってきている。
また、このようなコンタミ核酸が30サイクルを超えるPCRサイクルでは、原因不明の非特異的な増幅を生じる原因にもなっていた。
また、PCRの反応には不可欠なdNTPsは、高エネルギーのため環境菌がコンタミしやすいことや、サケの精子ゲノムから製造されるため、生物由来のコンタミ核酸を含む場合があることがわかっている。その他、PCR反応の緩衝剤やBSAなどのPCRの促進因子についても、核酸のコンタミを規定した製品はなく、環境菌による汚染によってコンタミ核酸が含まれている場合があった。
EMAやPMAなどは死菌と生菌を区別するために使用されているが、このようなDNAと強固に結合する試薬はPCRを阻害すると考えられ、通常、PCR前に除去する(非特許文献3)か、十分に希釈して使用している(特許文献1)。また、光感受性架橋剤を作用させたポリメラーゼの核酸除去を実施した例(非特許文献4)があるが、こちらについても、精製工程を追加し、光感受性架橋剤を除いた後にPCRを行っている。
そのため、PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に光感受性架橋剤を添加し、前記溶液中で光を照射し光感受性架橋剤を作用させた例は報告されていない。
[項1]
PCR反応液に含まれるコンタミナント核酸の除去方法であって、前記PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液中で光感受性架橋剤を加え、光エネルギーを作用させる工程を含む方法。
[項2]
光エネルギーを作用させる手段が可視光線の照射である、項1に記載の方法。
[項3]
コンタミナント核酸がDNAおよび/またはRNAである、項1または項2に記載の方法。
[項4]
光感受性架橋剤が、エリジウムモノアジド(EMA)、プロピジウムモノアジド(PMA)、EMA誘導体およびPMA誘導体からなる群から選ばれる1つ以上である、項1〜項3のいずれかに記載の方法。
[項5]
PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるEMAおよびEMA誘導体を合計した濃度が2μg/ml以上である、項4に記載の方法。
[項6]
PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるPMAおよびPMA誘導体を合計した濃度が1μM以上である、項4に記載の方法。
[項7]
項1〜項6のいずれかに記載の方法で核酸除去を実施するための試薬。
[項8]
項1〜項6のいずれかに記載の方法で核酸除去を実施したPCR反応液。
[項9]
項1〜項6のいずれかに記載の方法で得られたPCR反応液にプライマーを添加し、遺伝子増幅を行う方法。
本発明の実施形態の一つは、PCR反応液に含まれるコンタミナント核酸の除去方法であって、前記PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液中で光感受性架橋剤を加え、光エネルギーを作用させる工程を含む方法である。
可視光線を照射する場合、光照射処理に使用される光の波長は特に限定されないが、例えば、350〜700nmの波長の単波長光、又は、350〜700nmの波長を含む多波長光が使用できる。光照射処理の光強度及び照射時間は、使用する光感受性架橋剤、光源に応じて適宜設定することが可能であるが、例えばEMAを使用する場合、1〜1000Wのランプを使用し、試料との距離を1〜50cmに設定し1〜20分間照射する条件で光照射処理を実施できる。さらに消費電力が少なく強光度のLED(Light Emitting Diode)ランプが開発されており、本発明に使用できる。また、本発明の光照射処理は氷上で実施するなど低温で行うことが好ましい。
一方、EMAおよびEMA誘導体を合計した濃度の上限は50μg/ul以下であることが望ましい。またPMAおよびPMA誘導体を合計した濃度の上限は10μM以下であることが望ましい。好ましくは、EMAおよびEMA誘導体を合計した濃度の上限が20μg/ul以下であることが望ましい。またPMAおよびPMA誘導体を合計した濃度の上限は4μM以下であることが望ましい。
本発明の核酸除去法において、PCR反応液またはRT−PCR反応液の組成は特に限定されない。例えば、以下の(a)から(e)を含む組成が挙げられる。
(a)緩衝剤
(b)金属塩
(c)dNTPs
(d)DNAポリメラーゼ
(e)光感受性架橋材
(a)緩衝剤としては、トリス(Tris)やビシン(Bicine)などが挙げられる。
(b)金属塩としては、マグネシウム、マンガン、カリウムなどが挙げられる。
(c)dNTPsとしては、例えばdATP、dGTP、dCTPおよびdTTPが適宜好ましいバランスで含まれていれば良いが、それ以外のものを含んでいてもかまわない。例えばdTTPの代わりにdUTPを含ませることもできる。
(d)PCRのDNAポリメラーゼとしては、α型、PolI型のいずれでもよく、α型であればKOD、Pfuなど、PolI型であればTaq、TTHなどが挙げられる。前記のDNAポリメラーゼのアミノ酸配列をさらに改変したものであってもよい。
RT−PCRのDNAポリメラーゼとしては、上記のDNAポリメラーゼとMMLV由来のRT酵素やAMV由来のRT酵素などRT(逆転写)活性をもつポリメラーゼを併用して用いても良い。またTTHなどのDNA合成活性とRT活性とを併せ持つDNAポリメラーゼを用いても良い。
例えば、前記の(a)〜(d)のうちいずれか1つ以上を含む組成に光感受性架橋剤を加え、光照射を行った後に、欠けていたものを添加しても良い。この場合、光感受性架橋剤を加え、光照射を行った後に添加する成分は、コンタミがないことが予め確認されているものを用いることが好ましい。
光架橋剤以外の成分については特に限定されない。一本鎖DNA結合タンパク質やdUTPase、PCNAなどPCRを促進する因子やDMSO、グリセロールなどの特異性向上に関係する因子が含くまれていてもよい。
なお、本発明の試薬の形態は特に限定されず、いわゆるキットの形態も含まれる。
(実施例1)
EMA、PMAにおけるPCR反応への阻害効果
Taq DNA Polymerase(Taq)、または、KOD DNA Polymerase(KOD)を用いてHbg遺伝子746bpを増幅するPCRの反応系に、それぞれEMAやPMAを添加し、阻害が生じる濃度を確認した。
PCR反応液に光感受性架橋剤を加えて光エネルギーを作用させた光照射サンプルを、以下の手順で作製した。
(1)1×rTaq DNA Polymeraseに添付のBuffer、2mM dNTPs、抗体と混合した2.5Uの酵素を含むPCR反応液を作製した。
(2)前記(1)で作製した反応液に、滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度100、50、20、10、5、2、0μg/mlになるように、またはPMA(Biotium)を20、10、4、2、1、0.4、0μMになるように加えた。
(3)その後、前記(2)で作製した液に対し、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をした。
(4)前記で得られた光照射サンプル50μlに、10pmolのプライマー(配列番号1および2)、10ngのヒトゲノムDNA(Roche社製)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。
反応は94℃、2分の前反応の後、94℃、10秒→62℃、30秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
光照射サンプルは、PCR反応液を以下の(1)の手順で作製する以外は、前記のTaqの場合と同様に行った。
(1)1×添付のBuffer、2mM dNTPs、1.5mM MgSO4、1Uの酵素を含むPCR反応液を作製した。
反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
その結果、TaqのPCRではEMAで20μg/ml、PMAでは4μM以上で阻害により増幅が見られなかった(図1)。一方、KODのPCRでは、Taqより阻害に強く、EMAでは20μg/ml、PMAでは4μMまでは増幅が確認された。それ以上の濃度になるとKODでも阻害が生じる結果となった(図2)。これらの濃度以下であれば、Taq、KODそれぞれの反応系を阻害せずPCRを実施できることが示された。
EMA、PMAにおけるPCR反応液中のコンタミ核酸除去(TaqのPCR)
TaqのPCRにおいて、阻害の生じなかったEMA終濃度2μg/ml、および5μg/ml、PMA終濃度1μM、および0.4μMでPCR反応系にコンタミするバクテリア由来の核酸を除去できるか検討した。
通常、バクテリアの16S rRNA共通領域を増幅するプライマーを用いてPCRを実施するとテンプレートを入れていないコントロール(NTC)でも増幅が見られる。コンタミ核酸が除去されていればNTCで増幅が確認できないはずである。
検討は実施例1と同様、rTaq DNA Polymerase(TOYOBO)とAnti−Taq High(TOYOBO)と混合したものを用いた。PCR反応液に光感受性架橋剤を加えて光エネルギーを作用させた光照射サンプルは、1×rTaq DNA Polymeraseに添付のBuffer、2mM dNTPs、抗体と混合した2.5Uの酵素を含むPCR反応液に、滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度5、2μg/mlになるように、またはPMA(Biotium)を1、0.4μMになるように加え光照射サンプルを調製した。その後、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をし、16S rRNA共通領域を増幅する10pmolのプライマー(配列番号3および4)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。光感受性架橋材を含まないコントロール、および光感受性架橋材による阻害を確認するため、光照射後、5ngのE.coliゲノムを添加したコントロールも同時に実施した。反応は94℃、2分の前反応の後、94℃、10秒→50℃、10秒→68℃、1分を40サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
それぞれ反応終了後、MaltiNA(島津製作所)をもちいて、DNA−1000のゲルで泳動を行い、800bp付近のDNA断片を確認した(図3)。
EMA、PMAにおけるPCR反応液中のコンタミ核酸除去(KODのPCR)
Taqと同様、KODのPCRにおいても、阻害の生じなかったEMA終濃度20μg/ml、PMA終濃度4μMでPCR反応系にコンタミするバクテリア由来の核酸を除去できるか検討した。
検討は、KOD −Plus− Ver.2(TOYOBO)用いた。1×添付のBuffer、2mM dNTPs、1.5mM MgSO4、1Uの酵素を含むPCR反応液に滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度20μg/mlになるように、またはPMA(Biotium)を4μMになるように加え光照射サンプルを調製した。その後、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をし、16S rRNA共通領域を増幅する10pmolのプライマー(配列番号3および4)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。光感受性架橋材を含まないコントロール、および光感受性架橋材による阻害を確認するため、光照射後、5ngのE.coliゲノムを添加したコントロールも同時に実施した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→50℃、10秒→68℃、1分を40サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
それぞれ反応終了後、MaltiNA(島津製作所)をもちいて、DNA−1000のゲルで泳動を行い、800bp付近のDNA断片を確認した(図4)。
EMA、PMAにおけるPCR反応液中のコンタミ核酸除去(TTHのPCR)
TTH DNA Polymerase(TTH)はマンガン存在下で逆転写活性を保持しており、RNAからの増幅が可能である。コンタミ核酸がRNAでも除去できるのか、TTHを用いて検討した。
検討は、RNA−direct Realtime PCR Master Mix(TOYOBO)を用いた。2×のMasterMixに滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度10、5μg/mlになるように、またはPMA(Biotium)を2、1μMになるように加え光照射サンプルを調製した。その後、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をし、16S rRNA共通領域を増幅する10pmolのプライマー(配列番号3および4)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。光感受性架橋材を含まないコントロール、および光感受性架橋材による阻害を確認するため、光照射後、5ngのE.coliゲノムを添加したコントロールも同時に実施した。反応は90℃、15秒、50℃、20分の逆転写反応の後、95℃、30秒の前反応、95℃、10秒→50℃、10秒→76℃、1分を40サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてRT−PCRを行った。
それぞれ反応終了後、MaltiNA(島津製作所)をもちいて、DNA−1000のゲルで泳動を行い、800bp付近のDNA断片を確認した(図5)。
EMA、PMAにおけるコンタミ核酸除去能の評価
EMA、PMAでどの程度の核酸が除去できるかを確認した。
検討にはKOD FX(TOYOBO)を用い、1×添付のBuffer、4mM dNTPs、1Uの酵素を含むPCR反応液にヒトゲノム(Roche)をそれぞれ10、1、0.1ng加え、滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度20μg/mlになるように、またはPMA(Biotium)を4μMになるように添加し光照射サンプルを調製した。その後、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をし、Hbg領域481bpを増幅する10pmolのプライマー(配列番号5および6)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。光感受性架橋材を含まないコントロールも同時に実施し、光照射をせずにPCRするコントロールも実施した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1分を40サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
それぞれ反応終了後、MaltiNA(島津製作所)をもちいて、DNA−1000のゲルで泳動を行い、481bp付近のDNA断片を確認した(図6)。
PCR因子へのコンタミ核酸の確認
KOD −Plus− Ver.2(TOYOBO)におけるコンタミが、どの因子からの持込みか確認した。
[1]2mM dNTPs、1.5mM MgSO4、1Uの酵素を含むPCR反応液
[2]1×添付のBuffer、1.5mM MgSO4、1Uの酵素を含むPCR反応液
[3]1×添付のBuffer、2mM dNTPs、1Uの酵素を含むPCR反応液
[4]1×添付のBuffer、2mM dNTPs、1.5mM MgSO4を含むPCR反応液
の、それぞれに滅菌水で溶解したEMA(ANASPEC)を終濃度20μg/mlになるように加え光照射サンプルを調製した。その後、ハロゲンランプ(岩崎電気)を用い、照射距離20cmで5分間の光照射をし、[1]には添付のBufferを1×になるように、[2]には2mM dNTPを、[3]には1.5mM MgSO4を、[4]には1Uの酵素を加え、さらに16S rRNA共通領域を増幅する10pmolのプライマー(配列番号3および4)を添加することで50μlのPCR反応液を調製した。光感受性架橋材を含まないコントロールも同時に実施した。反応は94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→50℃、10秒→68℃、1分を40サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem社製)にてPCRを行った。
それぞれ反応終了後、MaltiNA(島津製作所)をもちいて、DNA−1000のゲルで泳動を行い、800bp付近のDNA断片を確認した(図7)。
今回のようにポリメラーゼだけでなく、dNTPsなどのPCR因子にコンタミがある場合、ポリメラーゼをいくら精製してもNTCで増幅が生じることになる。本発明はPCR反応系に存在する核酸を除去できる面で非常に有効だといえる。
Claims (11)
- PCR反応液に含まれるコンタミナントRNA核酸の除去方法であって、前記PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液中(但し、該溶液がEA1プロテイナーゼを含む場合を除く)に光感受性架橋剤を加え、光エネルギーを作用させる工程を含む方法。
- 光エネルギーを作用させる手段が可視光線の照射である、請求項1に記載の方法。
- 光感受性架橋剤が、エチジウムモノアジド(EMA)、プロピジウムモノアジド(PMA)、EMA誘導体およびPMA誘導体からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項1又は2に記載の方法。
- PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるEMAおよびEMA誘導体を合計した濃度が2μg/ml以上である、請求項3に記載の方法。
- PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるEMAおよびEMA誘導体を合計した濃度が20μg/ml以下である、請求項3又は4に記載の方法。
- PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるPMAおよびPMA誘導体を合計した濃度が1μM以上である、請求項3に記載の方法。
- PCR反応液を構成する少なくとも1つ以上の成分を含む溶液に含まれるPMAおよびPMA誘導体を合計した濃度が4μM以下である、請求項3又は6に記載の方法。
- PCR反応液が、α型DNAポリメラーゼ及びPolI型DNAポリメラーゼからなる群より選択される少なくとも1つのDNAポリメラーゼを更に含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- PCR反応液が、好熱性プロテイナーゼを含む場合を除く、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の方法でコンタミナントRNA核酸除去を実施するための光感受性架橋剤を含む試薬。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の方法で得られたPCR反応液にプライマーを添加し、遺伝子増幅を行う方法。
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