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JP6493082B2 - 遷移金属水酸化物の製造方法 - Google Patents
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JP6493082B2 - 遷移金属水酸化物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、遷移金属水酸化物の製造方法に関する。
遷移金属、特に第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛を含む遷移金属水酸化物は、様々な用途に供される機能性粉体、あるいはその前駆体として、広範囲に使用されている。
特に、携帯電子機器や電気自動車などの電源用途のリチウムイオン二次電池の正極材料として、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質が用いられており、このリチウム遷移金属複合酸化物の前駆体として、遷移金属複合水酸化物が用いられる。これらの携帯電子機器や電気自動車などの電源用途の二次電池には、高いエネルギ密度、高出力、優れた初期容量特性、サイクル特性などのさまざまな電池特性が高いレベルで要求されている。
正極活物質の一般的な製造方法としては、中和晶析法により前駆体である遷移金属複合水酸化物を作製し、得られた遷移金属複合水酸化物をリチウム化合物と混合して焼成し、リチウム遷移金属複合酸化物を得る方法が採用されている。リチウムイオン二次電池の電池特性は、正極活物質の粉体特性に大きな影響を受けるが、正極活物質の粉体特性は、前駆体である遷移金属複合水酸化物の粉体特性により大きな影響を受ける。特に、正極活物質の最も基本的な粉体特性である粒度分布は、前駆体の粒度分布をほぼ反映するため、優れた粉体特性を有する正極活物質を得るためには、その前駆体を得るための中和晶析の制御が極めて重要となる。
正極活物質の前駆体としての遷移金属水酸化物を含む、遷移金属水酸化物を得るための中和晶析法としては、生産性に優れた連続晶析法が広く用いられている。連続晶析法において生産性をさらに向上させるための手段としては、原料を添加する速度を上昇させる、すなわち、反応槽内で生成した粒子が反応槽内に滞留する時間(以下、「粒子滞留時間」という)を短くする方法が考えられる。しかしながら、粒子滞留時間の短縮は、原理的に粒度分布の低粒径化と狭小化の原因となるため、この方法では、従来の粒度分布を維持したまま生産性を向上させることには限界がある。
原料を添加する速度を上昇させつつ、粒子滞留時間を維持する手段としては、反応槽内のスラリー濃度を濃縮する方法が考えられる。すなわち、晶析反応を行いつつ固液分離して液のみを排出することにより、粒子滞留時間が延長される。
このような方法として、たとえば、特表2010−536697号公報には、清浄エレメントあるいはフィルタエレメントを用いて、反応槽内において反応溶液の濃度を150g/L以上となるように制御することで、タップ密度の高い粒子により構成された遷移金属水酸化物を得る方法が開示されている。また、特開2013−18705号公報にも、傾斜板沈降装置を使用して、反応槽内において反応溶液を濃縮することにより、タップ密度の高い粒子を得る方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法によって、従来と同様の粉体特性を備えた遷移金属水酸化物を得ようとしても、反応溶液を濃縮することによって粒子滞留時間が延長されており、粒子滞留時間の延長は、原理的に粒度分布の大粒径化と広大化の原因となることから、得られた粒子の粒度分布が変化してしまい、従来品と同等の粒度分布を有する粒子によって構成される遷移金属水酸化物を得ることは困難である。
特表2010−536697号公報 特開2013−18705号公報
本発明の目的は、このような問題に鑑みて、従来品の粒度分布を変化させることなく、生産性を大幅に向上させることができる、遷移金属水酸化物の製造方法を提供することにある。
特に、本発明は、優れた電池特性を発揮する従来の正極活物質の粒度分布を変化させることなく、その生産性を大幅に向上させることを可能とする、その前駆体としての、遷移金属複合水酸化物の製造方法を提供することにある。
本発明の第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛を含む遷移金属水酸化物の製造方法は、
反応容器内で、反応溶液を撹拌しながら、金属塩を含む混合水溶液と、苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを供給して反応させ、晶析した粒子を固液分離し、水洗し、乾燥することにより、遷移金属水酸化物を得る中和晶析工程において、
前記反応容器から遷移金属水酸化物を含む前記反応溶液を連続的にオーバーフローさせつつ、該反応容器内の溶媒を連続的に除去し、該反応容器内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮しながら、遷移金属水酸化物の晶析を継続し、かつ、
所定の粉体特性、すなわち、所定のD10、D50、およびD90の値、もしくは、所定の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕の値を有する粒子により構成される遷移金属水酸化物を、前記反応容器内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮することなく、前記反応溶液を連続的にオーバーフローさせることによって得る際に設定される、前記金属塩を含む混合水溶液と、前記苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の添加速度、および、前記遷移金属水酸化物スラリーの濃度を基準条件とした場合に、前記基準条件に対する、前記添加速度の倍率と、前記遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比:(原料添加速度の倍率)/(反応容器内の遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率)が、0.8〜1.2の範囲となるように、前記添加速度を設定し、かつ、前記反応容器内の溶媒を連続的に除去することを特徴とする。
また、前記基準条件に対する、前記添加速度の倍率と、前記遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比:(原料添加速度の倍率)/(反応容器内の遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率)が、0.9〜1.1の範囲となるようにすることが好ましい。
前記反応容器内の溶媒を連続的に除去するために、湿式サイクロンを用いることが好ましい。
前記遷移金属としては、Ni、Co、Mn、Fe、およびZnより選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明は、不可避的不純物を除き、単一の遷移金属のみを含む遷移金属水酸化物のみならず、特に、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体として用いられる、複数の遷移金属およびその他の金属元素を含む、遷移金属複合水酸化物にも好適に適用される。
一態様として、一般式:Ni1−x−yCoAl(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、0≦α≦0.5)で表される、ニッケル複合水酸化物の製造方法に、本発明を適用することが可能である。
また、別の一態様として、一般式:NiCoMn(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02、0≦α≦0.5、Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法にも、本発明を適用することが可能である。
なお、いずれの態様においても、前記苛性アルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましく、また、前記アンモニウムイオン供給体を含む水溶液として、アンモニア水を用いることが好ましい。
本発明により、第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛を含む遷移金属水酸化物の生産性を、粒度分布を変化させることなく大幅に向上させることが可能となる。特に、本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる、ニッケル複合水酸化物、およびニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の生産性を、これらを前駆体として得られる正極活物質の粉体特性、すなわち、この正極活物質を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池の電池特性を維持したまま、大幅に向上させることが可能となる。したがって、本発明の工業的価値はきわめて高いものといえる。
図1は、本発明による遷移金属水酸化物を製造するための装置の概略説明図である。
本発明者は、遷移金属、特に、第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛を含む遷移金属水酸化物の製造方法、特に、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体となる、ニッケル複合水酸化物、およびニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法に関して、鋭意研究を重ねた結果、反応容器内に投入する原料の添加速度と、反応容器内における遷移金属水酸化物スラリーの濃度を、従来条件に対する原料の添加速度の倍率と反応容器内の遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比が、所定の範囲となるように制御することにより、従来よりも高い生産性を有し、かつ、同等の粒度分布を有する遷移金属水酸化物を得ることができるとの知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。以下、本発明の遷移金属水酸化物の製造方法を詳細に説明する。
図1に、本発明の遷移金属水酸化物を製造するための装置の概略説明図を示す。本発明の遷移金属水酸化物の製造方法においても、従来の連続晶析法と同様に、反応容器1内で、撹拌翼2を用いて、反応溶液3を撹拌しながら、原料投入口4から投入された、金属塩を含む混合水溶液と、苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを供給して反応させ、反応容器1から遷移金属水酸化物を含む反応溶液3を、オーバーフロー口5から、連続的にオーバーフローさせて、その後、晶析した粒子を固液分離し、水洗し、乾燥することにより、遷移金属水酸化物を得る、中和晶析工程を備える。
特に、本発明の製造方法においては、反応容器1から反応溶液3を連続的にオーバーフローさせるのと同時に、反応容器1から反応溶液3の一部を、排液口6からポンプ7により引き抜き、この反応溶液3の一部を固液分離装置8に送り込む。固液分離装置8において、反応溶液3の一部から溶媒9のみを排液として排出し、濃縮スラリー10を、反応容器1内に再投入することを特徴とする。このような工程を追加することにより、反応容器1内の反応溶液3を濃縮化する、すなわち、反応容器1内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮化する。
本発明の製造方法において、第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛からなる遷移金属の金属塩、および必要に応じてその他の遷移金属以外の添加元素の金属塩を含む混合水溶液は、遷移金属水酸化物を構成する金属の供給源である。なお、本発明において、第12族の亜鉛についても、遷移金属に含まれるものとする。
また、苛性アルカリ水溶液は中和反応のpH調整剤である。苛性アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などを用いることができるが、一般的には、取り扱いが容易で、かつ、入手が容易である、水酸化ナトリウム水溶液が用いられる。
一方、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液は、錯形成剤として、生成する遷移金属水酸化物を構成する粒子の粒径と形状を制御する役割を担うもので、しかもアンモニウムイオンは生成する遷移金属水酸化物内には取り込まれないため、不純物のない遷移金属水酸化物を得るために好ましい錯形成剤として機能する。なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液としては、アンモニア水のほか、硫酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液などを挙げることができるが、一般的には、取り扱いが容易で、かつ、入手が容易である、アンモニア水が用いられる。
なお、本発明において、使用する反応容器1の仕様、およびそれぞれの溶液の供給量の調整方法は、特に限定されるものではないが、上述の通り、反応容器1は、撹拌翼2、オーバーフロー口5、および温度制御手段(図示せず)を備え、金属塩を含む混合水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を定量的に連続供給しつつ、そこに添加量を調整した苛性アルカリ水溶液を供給することによって、反応容器1内の反応溶液3を所定のpHに保持しながら連続晶析反応を行って遷移金属水酸化物を生成し、生成した遷移金属水酸化物を、オーバーフロー口5を介して、連続的に排出することができるように構成される。
このような連続晶析反応において、得られる遷移金属水酸化物の粒度分布や結晶構造の制御は、反応時の反応液のpHをコントロールすることが一般的である。また、連続晶析反応では、供給された金属塩を含む水溶液に含まれる金属の濃度が、反応系内の金属の溶解度を上回った場合に、その溶解度を上回った量の金属が析出することで、目的とする遷移金属水酸化物を得ることができる。また、供給された原料溶液の金属塩の濃度に対する、反応系内の金属の溶解度の差の大小が結晶核の生成速度、容積あたりの発生密度、生成した結晶核の成長速度、結晶形状などを左右するため、反応系内の金属の溶解度を変えることで、様々な結晶形状、粉体物性を持った遷移金属水酸化物を得ることが可能である。
ただし、本発明では、これらの条件の設定については、その要旨に直接関係しないため、上記の条件については、目的とする用途に応じて適宜設定すればよく、その説明は省略する。
本発明の遷移金属水酸化物の製造方法においては、単に反応溶液3の一部を抜き出して、固液分離して、濃縮スラリー10を反応容器1に戻すことにより、反応容器1内の溶媒を連続的に除去し、反応容器1内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮するだけでなく、原料投入口4から投入される原料、すなわち、金属塩を含む混合水溶液と、苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液との合計の添加速度を調整しつつ、遷移金属水酸化物の晶析を継続する点に特徴がある。
すなわち、本発明では、前提として、所定の粉体特性、すなわち、所定のD10、D50、およびD90の値を有する粒子、あるいは、所定の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕を有する粒子により構成される遷移金属水酸化物を、反応容器1内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮することなく、反応溶液3を連続的にオーバーフローさせることによって得る際に設定される、原料、すなわち、金属塩を含む混合水溶液と、前記苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液との合計の添加速度、および、遷移金属水酸化物スラリーの濃度を、基準条件として設定する。
そして、この基準条件に対する、原料の添加速度の倍率と、遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比、すなわち、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内の遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率)が、0.8〜1.2の範囲となるように、原料の添加速度および反応容器内の溶媒の連続的な除去量を設定する。すなわち、反応容器1内の遷移金属水酸化物スラリーの濃度を所定範囲に制御している。
遷移金属水酸化物、特に、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体としての遷移金属複合水酸化物では、その粉体特性として、遷移金属水酸化物あるいは遷移金属複合水酸化物を構成する粒子のD10、D50、およびD90の値、あるいは、遷移金属水酸化物あるいは遷移金属複合水酸化物を構成する粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕の値を、所定範囲に制御することが必要とされる。
ここで、D10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を、D50は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の50%となる粒径を、D90は、同様に各粒径における粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を、それぞれ意味する。また、MVは、体積平均粒径を意味する。なお、D10、D50、D90、および体積平均粒径(MV)は、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求められる。
特に、正極活物質の粒度分布は、その前駆体である遷移金属複合水酸化物の基本的な粉体特性である粒度分布の影響を強く受ける。このため、遷移金属複合水酸化物を構成する粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕を所定の範囲に制御することにより、リチウムイオン二次電池に要求される出力特性やサイクル特性などの電池特性に応じた、所定の粒度分布を有する正極活物質が得られる。
本発明は、原料の添加速度の倍率とスラリー濃度の倍率を上記範囲に制御することで、従来と同等の粒度分布を持つ遷移金属水酸化物を高い生産性で得ることを可能としている。具体的には、従来条件(基準条件)で得られる金属水酸化物を構成する粒子に対する、本発明により得られる金属水酸化物を構成する粒子のD10、D50、およびD90の変化率を、20%以下に抑制することが可能となる。
(原料の添加速度の倍率)/(スラリー濃度の倍率)が1.2を超える場合、粒子滞留時間が従来と比べて大幅に短くなるため、得られる粒子の粒度分布が、小粒径化および狭小化し、D10、D50、およびD90のいずれかの変化率が20%以上となるため好ましくない。
一方、(原料の添加速度の倍率)/(スラリー濃度の倍率)が0.8を下回る場合、粒子滞留時間が従来と比べて大幅に長くなるため、得られる粒子の粒度分布が大粒径化および広大化し、同様にD10、D50、およびD90のいずれかの変化率が20%以上となるため好ましくない。
特に、(原料の添加速度の倍率)/(スラリー濃度の倍率)を0.9〜1.1の範囲とすることで、従来条件で得られる粒子に対するD10、D50、D90の変化率を10%以下に抑制することができる。
本発明が、不可避的不純物を除き、単一の遷移金属のみを含む遷移金属水酸化物の製造方法に適用される場合、この遷移金属には、第12族の亜鉛のほか、第7族〜第11族の遷移金属が広く包含されるものと解釈される。しかしながら、第7族〜第11族の遷移金属のうち、特に、Ni、Co、Mn、およびFeと、Znは汎用性が高いことから、これらを含む遷移金属水酸化物の製造方法に本発明を適用して、その生産性を向上させることは、工業的にきわめて有用である。
なお、反応容器内の溶媒を除去する方法としては、湿式サイクロンが好ましい。クロスフロー式ろ過装置や遠心濾過装置等の一般的な固液分離装置および濃縮装置を使用することも可能であるが、クロスフロー式ろ過装置はフィルタの閉塞が起こりやすく、また遠心濾過装置は装置が高価で大型化しやすい欠点がある。湿式サイクロンを用いることで、長時間の反応においても閉塞が起こらず、低コストで安定した粒子製造が可能となる。
本発明は、不可避的不純物を除き、単一の遷移金属のみを含む遷移金属水酸化物以外にも、第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛からなる複数の遷移金属を含み、さらに、必要に応じて、遷移金属以外のその他の添加元素(金属元素)を含む、遷移金属複合水酸化物、特に、非水系電解質二次電池用正極活物質の前駆体として用いられる、主としてニッケル水酸化物からなり、他の遷移金属および任意の添加元素も含む、ニッケル複合水酸化物、主としてコバルト水酸化物からなり、他の遷移金属および任意の添加元素も含むコバルト複合水酸化物、主としてマンガン水酸化物からなり、他の遷移金属および任意の添加元素も含むマンガン複合水酸化物、さらには、主として、ニッケル、コバルト、およびマンガンの水酸化物からなり、他の遷移金属および任意の添加元素も含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物に、好適に適用される。なお、添加元素には、第7族〜第11族の遷移元素に限らず、第3族〜第11族の遷移元素、あるいは、遷移元素以外のアルミニウムなどの金属元素を、用途に応じて選択的に添加することが可能であり、このような場合でも本発明を適用することは可能である。それぞれの遷移金属複合水酸化物における、ニッケル、コバルト、マンガンなどの主となる成分の組成、および、添加元素の種類およびその添加量などは、上述の通り、これらの金属元素の機能、および正極活物質などの最終製品の用途に応じた特性に従って、適宜設定されるものである。ただし、これらについては、本発明の要旨に直接関係しないため、その説明は省略する。
具体的には、本発明の遷移金属水酸化物の製造方法は、一般式:Ni1−x−yCoAl(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、0≦α≦0.5)で表される、ニッケル複合水酸化物の製造方法にも適用可能である。
このニッケル複合水酸化物の製造方法では、基本的には、上述した連続晶析法で、ニッケル複合水酸化物が中和晶析により得られる。この場合にも、前提として、所定の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕を有する粒子により構成されるニッケル複合水酸化物を、反応容器内のニッケル複合水酸化物スラリーを濃縮することなく、反応溶液を連続的にオーバーフローさせることによって得る際に設定される、原料、すなわち、金属塩を含む混合水溶液と、前記苛性アルカリ水溶液、およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液との合計の添加速度、および、ニッケル複合水酸化物スラリーの濃度を、基準条件として設定する。
そして、この基準条件に対する、原料の添加速度の倍率と、ニッケル複合水酸化物スラリー濃度の倍率の比、すなわち、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度の倍率)が、0.8〜1.2の範囲となるように、原料の添加速度および反応容器内の溶媒の連続的な除去量を設定する。すなわち、反応容器内のニッケル複合水酸化物スラリーの濃度を所定範囲に制御する。
本発明の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を、上記組成のニッケル複合水酸化物の製造方法に適用した場合、(原料の添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.8〜1.2の範囲とすることで、従来条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を10%以下に抑制することができる。好ましくは、(原料の添加速度の倍率)/(スラリー濃度の倍率)を0.9〜1.1の範囲とすることで、従来条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を5%以下に抑制することができる。
また、本発明の遷移金属水酸化物の製造方法は、一般式:NiCoMn(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02、0≦α≦0.5、Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法にも適用可能である。
この態様のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物では、ニッケルは、電池容量の向上に寄与し、コバルトは、サイクル特性の向上に寄与し、マンガン(Mn)は、熱安定性の向上に寄与する。これらの添加量が適正な範囲にないと、その機能が十分に発揮されないか、あるいは、他の電池特性が損なわれる。また、添加元素(M)は、このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を前駆体として得られる正極活物質が使用される二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択される。
このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法でも、基本的には、上述した連続晶析法で、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物が中和晶析により得られる。この場合にも、前提として、所定の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕を有する粒子により構成されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を、反応容器内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリーを濃縮することなく、反応溶液を連続的にオーバーフローさせることによって得る際に設定される、原料、すなわち、金属塩を含む混合水溶液と、前記苛性アルカリ水溶液、およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液との合計の添加速度、および、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリーの濃度を、基準条件として設定する。
そして、この基準条件に対する、原料の添加速度の倍率と、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度の倍率の比、すなわち、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度の倍率)が、0.8〜1.2の範囲となるように、原料の添加速度および反応容器内の溶媒の連続的な除去量を設定する。すなわち、反応容器内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリーの濃度を所定範囲に制御する。
本発明の遷移金属複合酸化物粒子の製造方法を、上記組成のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法に適用した場合、(原料の添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.8〜1.2の範囲とすることで、従来条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を10%以下に抑制することができる。好ましくは、(原料の添加速度の倍率)/(スラリー濃度の倍率)を0.9〜1.1の範囲とすることで、従来条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を5%以下に抑制することができる。
実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、粒度分布の測定は、レーザ回折式粒度分布計(日機装株式会社製、マイクロトラック)の測定結果より評価した。
なお、本実施例では、遷移金属水酸化物あるいは遷移金属複合水酸化物の製造には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
(実施例1)
まず、基準条件として、邪魔板を4枚取り付けた槽容積10Lのオーバーフロー式晶析反応槽に、工業用水5L、24%苛性ソーダ溶液を添加して、槽内pHを10.0にした。40℃に保持した反応槽内を直径10cmの3枚羽根プロペラ翼(傾斜角30度)を用いて800rpmの回転速度で攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、ニッケルモル濃度1.0mol/Lの硫酸ニッケル水溶液(以下、原料溶液という)を40ml/minで供給し、併せて24%苛性ソーダ溶液を断続的に添加し、25℃でのpHが9.9〜10.1になるように制御した。原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値は50ml/minであり、槽容積/合計添加流量(スラリー排出流量)で求めることができる平均粒子滞留時間は200minであった。
生成した水酸化ニッケルをオーバーフローにて連続的に取り出し、反応開始から48〜72時間にかけて取り出された水酸化ニッケルを水洗し、乾燥して粉末状の水酸化ニッケル粒子を得た。同時間帯における反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度は、47g/Lであった。得られた水酸化ニッケルの粒度分布を測定したところ、D10:3.9μm、D50:8.6μm、D90:15.9μmであった。
上記基準条件に対し、原料溶液の添加速度を80ml/min、原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値を100ml/minとして、単位時間当たりの生産量を2倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度が90g/Lとなるように濃縮を行った。その結果、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)は1.04であった。それ以外は、前記基準条件と同様の条件で試験をした結果、得られた水酸化ニッケルの粒度分布は、D10:3.7μm、D50:8.0μm、D90:14.9μmとなり、D10、D50、D90のいずれも前記基準条件に対する変化率が10%以下に収まっていた。
(実施例2)
実施例1のニッケルをコバルトに変えたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化コバルト粒子の粒度分布を測定したところ、D10:5.8μm、D50:10.6μm、D90:17.3μmであった。本例により得られた水酸化コバルト粒子の粒度分布は、D10:5.6μm、D50:10.0μm、D90:16.8μmとなり、D10、D50、D90のいずれも前記基準条件に対する変化率が10%以下に収まっていた。
(実施例3)
実施例1のニッケルをマンガンに変えたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化マンガン粒子の粒度分布を測定したところ、D10:4.3μm、D50:9.6μm、D90:16.0μmであった。本例により得られた水酸化マンガン粒子の粒度分布は、D10:3.9μm、D50:8.9μm、D90:15.0μmとなり、D10、D50、D90のいずれも前記基準条件に対する変化率が10%以下に収まっていた。
(実施例4)
実施例1のニッケルを鉄に変えたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化鉄粒子の粒度分布を測定したところ、D10:2.8μm、D50:5.7μm、D90:9.9μmであった。本例により得られた水酸化鉄粒子の粒度分布は、D10:2.6μm、D50:5.4μm、D90:9.5μmとなり、D10、D50、D90のいずれも前記基準条件に対する変化率が10%以下に収まっていた。
(実施例5)
実施例1のニッケルを亜鉛に変えたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化亜鉛粒子の粒度分布を測定したところ、D10:3.8μm、D50:8.4μm、D90:14.4μmであった。本例により得られた水酸化亜鉛粒子の粒度分布は、D10:3.6μm、D50:8.1μm、D90:13.9μmとなり、D10、D50、D90のいずれも基準条件に対する変化率が10%以下に収まっていた。
(実施例6)
原料溶液の添加速度を120ml/min、原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値を150ml/minとして、単位時間当たりの生産量を3倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度が123g/Lとなるように濃縮を行った。その結果、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)は、1.15となった。これ以外は、実施例1と同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化ニッケルの粒度分布である、D10:3.9μm、D50:8.6μm、D90:15.9μmに対して、本例により得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布は、D10:3.4μm、D50:7.5μm、D90:13.6μmとなり、D10、D50、D90のいずれも基準条件に対する変化率が20%以下であった。
(実施例7)
原料溶液の添加速度を160ml/min、原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値を200ml/minとして、単位時間当たりの生産量を4倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度が221g/Lとなるように濃縮を行った。その結果、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)は0.85となった。これ以外は、実施例1と同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布である、D10:3.9μm、D50:8.6μm、D90:15.9μmに対して、本例により得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布は、D10:4.5μm、D50:10.0μm、D90:18.9μmとなり、D10、D50、D90のいずれも基準条件に対する変化率が20%以下であった。
(比較例1)
原料溶液の添加速度を80ml/min、原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値を100ml/minとして、単位時間当たりの生産量を2倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度が72g/Lとなるように濃縮を行った。その結果、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)は1.31となった。これ以外は、実施例1と同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布である、D10:3.9μm、D50:8.6μm、D90:15.9μmに対して、本例により得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布は、D10:3.2μm、D50:6.4μm、D90:11.4μmとなり、D50、D90の基準条件に対する変化率が20%を超えていた。
(比較例2)
原料溶液の添加速度を80ml/min、原料溶液と24%苛性ソーダ溶液の合計添加流量の平均値を100ml/minとして、単位時間当たりの生産量を2倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内の水酸化ニッケルスラリー濃度が134g/Lとなるように濃縮を行った。その結果、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)は0.70となった。これ以外は、実施例1と同様の試験を実施した。基準条件で得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布である、D10:3.9μm、D50:8.6μm、D90:15.9μmに対して、本例により得られた水酸化ニッケル粒子の粒度分布は、D10:5.1μm、D50:9.9μm、D90:19.6μmとなり、D10、D90の基準条件に対する変化率が20%を超えていた。
以上より、基準条件に対する(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.8未満、もしくは1.2を超える値とした場合、得られる粒子の粒度分布は基準条件で得られた粒子に対してD10、D50、D90のいずれかの変化率が20%を超えるため、基準条件と同等の粒子を得るという点において好ましくないことが確認された。
(実施例8)
まず、基準条件として、邪魔板を4枚取り付けた槽容積200Lのオーバーフロー式晶析反応槽に、純水170L、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水を添加して、25℃での槽内pHを12.4、槽内アンモニア濃度を12g/Lに調整した。40℃に保持した反応槽内を直径25cmの6枚羽根フラットタービン翼を用いて280rpmの回転速度で攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、ニッケルモル濃度1.4mol/L、コバルトモル濃度0.3mol/Lの硫酸ニッケルコバルト混合水溶液を580ml/min、アルミニウム濃度0.43mol/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液を92ml/minで供給し、併せて25%苛性ソーダ溶液および25%アンモニア水を断続的に添加し、25℃でのpHが12.4、アンモニア濃度が12g/Lに維持されるように制御した。
硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値は960ml/minであり、平均粒子滞留時間は208minであった。
生成したニッケル複合水酸化物をオーバーフローにて連続的に取り出し、反応開始から48〜72時間にかけて取り出されたニッケル複合水酸化物を水洗し、乾燥して粉末状のニッケル複合水酸化物を得た。同時間帯における反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度は、100g/Lであった。得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布を測定したところ、D10:6.9μm、D50:11.8μm、D90:19.5μm、MV:12.7μm、(D90−D10)/MV:0.99であった。
上記基準条件に対し、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度が148g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.02とした。それ以外は、基準条件と同様の試験を実施した結果、得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布は、D10:7.0μm、D50:12.4μm、D90:19.8、MV:13.1μm、(D90−D10)/MV:1.03となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は4%であった。
(実施例9)
実施例8の槽内pHを12.38とし、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液の添加速度を1160ml/min、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1920ml/minとして、単位時間当たりの生産量を2倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度が174g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.15としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布である、D10:6.9μm、D50:11.8μm、D90:19.5μm、MV:、12.7μm、(D90−D10)/MV:0.99に対し、本例のニッケル複合水酸化物の粒度分布は、D10:7.3μm、D50:11.5μm、D90:18.8μm、MV:12.6μm、(D90−D10)/MV:0.91となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は8%であった。
(実施例10)
実施例8の槽内pHを12.42とし、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液の添加速度を1740ml/min、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を2880ml/minとして、単位時間当たりの生産量を3倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度が353g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.85としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布である、D10:6.9μm、D50:11.8μm、D90:19.5μm、MV:、12.7μm、(D90−D10)/MV:0.99に対し、本例のニッケル複合水酸化物の粒度分布は、D10:7.0μm、D50:12.2μm、D90:20.6μm、MV:12.9μm、(D90−D10)/MV:1.05となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は6%であった。
(比較例3)
実施例8の槽内pHを12.47とし、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度が115g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.32としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布である、D10:6.9μm、D50:11.8μm、D90:19.5μm、MV:12.7μm、(D90−D10)/MV:0.99に対し、本例のニッケル複合水酸化物の粒度分布は、D10:7.4μm、D50:11.5μm、D90:18.4μm、MV:12.5μm、(D90−D10)/MV:0.88となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は11%であった。
(比較例4)
実施例8の槽内pHを12.35とし、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルト混合水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケル複合水酸化物スラリー濃度が214g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.71としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケル複合水酸化物の粒度分布である、D10:6.9μm、D50:11.8μm、D90:19.5μm、MV:12.7μm、(D90−D10)/MV:0.99に対し、本例のニッケル複合水酸化物の粒度分布はD10:6.4μm、D50:12.0μm、D90:20.6μm、MV:12.9μm、(D90−D10)/MV:1.10となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は11%であった。
以上より、ニッケル複合酸化物の製造方法において、金属塩を含む混合水溶液、苛性アルカリ水溶液、およびアンモニア水の添加速度の合計の基準条件に対する倍率と反応容器内のスラリー濃度の倍率の比を、0.8未満、もしくは1.2を超える値とした場合、得られる粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕の変化率が10%を超えるため、基準条件と同等の粒子を得るという点において好ましくないことが確認された。
(実施例11)
まず、基準条件として、邪魔板を4枚取り付けた槽容積200Lのオーバーフロー式晶析反応槽に、純水170L、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水を添加して、25℃での槽内pHを12.4、槽内アンモニア濃度を12g/Lに調整した。40℃に保持した反応槽内を直径25cmの6枚羽根フラットタービン翼を用いて280rpmの回転速度で攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、ニッケルモル濃度0.7mol/L、コバルトモル濃度0.7mol/L、マンガンモル濃度0.7mol/Lの硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液を580ml/minで供給し、併せて25%苛性ソーダ溶液および25%アンモニア水を断続的に添加し、25℃でのpHが12.4、アンモニア濃度が12g/Lに維持されるように制御した。反応中は槽内に窒素ガスを50L/minで吹き込み、槽内雰囲気を不活性雰囲気となるように制御した。
硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値は960ml/minであり、平均粒子滞留時間は208minであった。
生成したニッケルコバルトマンガン複合水酸化物をオーバーフローにて連続的に取り出し、反応開始から48〜72時間にかけて取り出されたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を水洗し、乾燥して粉末状のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。同時間帯における反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度は、98g/Lであった。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布を測定したところ、D10:5.2μm、D50:7.8μm、D90:11.8μm、MV:8.5μm、(D90−D10)/MV:0.78であった。
上記基準条件に対し、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度が147g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.01とした。それ以外は、基準条件と同様の試験を実施した結果、得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布は、D10:5.0μm、D50:7.5μm、D90:11.4、MV:8,4μm、(D90−D10)/MV:0.76となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は2%であった。
(実施例12)
実施例11の槽内pHを12.38とし、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液の添加速度を1160ml/min、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1920ml/minとして、単位時間当たりの生産量を2倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度が174g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.13としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布である、D10:5.2μm、D50:7.8μm、D90:11.8μm、MV:8.5μm、(D90−D10)/MV:0.78に対し、本例のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布は、D10:4.7μm、D50:6.8μm、D90:10.2μm、MV:7.7μm、(D90−D10)/MV:0.71となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は9%であった。
(実施例13)
実施例11の槽内pHを12.42とし、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液の添加速度を1740ml/min、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を2880ml/minとして、単位時間当たりの生産量を3倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度が353g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.83としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布である、D10:5.2μm、D50:7.8μm、D90:11.8μm、MV:8.5μm、(D90−D10)/MV:0.78に対し、本例のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布は、D10:5.4μm、D50:8.2μm、D90:12.5μm、MV:8.6μm、(D90−D10)/MV:0.83となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は6%であった。
(比較例5)
実施例11の槽内pHを12.47とし、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度が115g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を1.29としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布である、D10:5.2μm、D50:7.8μm、D90:11.8μm、MV:8.5μm、(D90−D10)/MV:0.78に対し、本例のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布は、D10:4.9μm、D50:7.2μm、D90:10.3μm、MV:7.9μm、(D90−D10)/MV:0.68となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は12%であった。
(比較例6)
実施例11の槽内pHを12.35とし、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液の添加速度を880ml/min、硫酸ニッケルコバルトマンガン混合水溶液、25%苛性ソーダ溶液、25%アンモニア水の合計添加流量の平均値を1453ml/minとして、単位時間当たりの生産量を1.5倍に増加させ、さらに湿式サイクロンによって反応槽内のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物スラリー濃度が214g/Lとなるように濃縮を行って、(原料添加速度の倍率)/(反応容器内のスラリー濃度の倍率)を0.69としたこと以外は同様の試験を実施した。基準条件で得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布である、D10:5.2μm、D50:7.8μm、D90:11.8μm、MV:8.5μm、(D90−D10)/MV:0.78に対し、本例のニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の粒度分布は、D10:4.9μm、D50:8.4μm、D90:12.6μm、MV:8.7μm、(D90−D10)/MV:0.89となり、基準条件に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率は13%であった。
以上より、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の製造方法においても、金属塩を含む混合水溶液、苛性アルカリ水溶液、およびアンモニア水の添加速度の合計の基準条件に対する倍率と反応容器内のスラリー濃度の倍率の比を、0.8未満、もしくは1.2を超える値とした場合、得られる粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕の変化率が10%を超えるため、基準条件と同等の粒子を得るという点において好ましくないことが確認された。
1 反応容器
2 撹拌翼
3 反応溶液
4 原料投入口
5 オーバーフロー口
6 排液口
7 ポンプ
8 固液分離装置
9 溶媒(排液)
10 濃縮スラリー

Claims (8)

  1. 第7族〜第11族の遷移金属あるいは亜鉛を含む遷移金属水酸化物の製造方法であって、
    反応容器内で、反応溶液を撹拌しながら、金属塩を含む混合水溶液と、苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを供給して反応させ、晶析した粒子を固液分離し、水洗し、乾燥することにより、遷移金属水酸化物を得る中和晶析工程において、
    前記反応容器から遷移金属水酸化物を含む前記反応溶液を連続的にオーバーフローさせつつ、前記反応溶液の一部を抜き出して、固液分離して、濃縮スラリーを前記反応容器に戻すことにより、該反応容器内の溶媒を連続的に除去し、該反応容器内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮しながら、前記遷移金属水酸化物の晶析を継続し、かつ、
    所定のD10、D50、およびD90の値を有する粒子、あるいは、所定の粒度分布の広がりを示す指標である〔(D90−D10)/MV〕の値を有する粒子により構成される遷移金属水酸化物を、前記反応容器内の遷移金属水酸化物スラリーを濃縮することなく、前記反応溶液を連続的にオーバーフローさせることによって得る際に設定される、前記金属塩を含む混合水溶液と、前記苛性アルカリ水溶液および/またはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の添加速度、および、前記遷移金属水酸化物スラリーの濃度を基準条件とした場合に、
    前記基準条件に対する、前記添加速度の倍率と、前記遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比が、0.8〜1.2の範囲となるように、前記添加速度を設定し、かつ、前記反応容器内の溶媒を連続的に除去して、前記基準条件で得られる粒子に対するD10、D50、およびD90の値の変化率を20%以下とする、あるいは、前記基準条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を10%以下とする、
    ことを特徴とする遷移金属水酸化物の製造方法。
  2. 前記基準条件に対する、前記添加速度の倍率と、前記遷移金属水酸化物スラリー濃度の倍率の比を、0.9〜1.1の範囲として、前記基準条件で得られる粒子に対するD10、D50、およびD90の値の変化率を10%以下とする、あるいは、前記基準条件で得られる粒子に対する〔(D90−D10)/MV〕の変化率を5%以下とする、請求項1に記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
  3. 前記反応溶液の一部を抜き出して、固液分離して、濃縮スラリーを前記反応容器に戻すことにより、前記反応容器内の溶媒を連続的に除去するための手段として、湿式サイクロンを用いる、請求項1または2に記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
  4. 前記遷移金属として、Ni、Co、Mn、Fe、およびZnより選択される少なくとも1種を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
  5. 前記遷移金属水酸化物が、一般式:Ni1−x−yCoAl(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、0≦α≦0.5)で表される、ニッケル複合水酸化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
  6. 前記遷移金属水酸化物が、一般式:NiCoMn(OH)2+α(x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02、0≦α≦0.5、Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWから選択される1種以上の添加元素)で表される、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の遷移金属複合酸化物の製造方法。
  7. 前記苛性アルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液を用いる、請求項1〜6のいずれかに記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
  8. 前記アンモニウムイオン供給体を含む水溶液として、アンモニア水を用いる、請求項1〜7のいずれかに記載の遷移金属水酸化物の製造方法。
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