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JP6497745B2 - 光学材料、光学素子、及び物品の屈折率を変化させる方法 - Google Patents
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JP6497745B2 - 光学材料、光学素子、及び物品の屈折率を変化させる方法 - Google Patents

光学材料、光学素子、及び物品の屈折率を変化させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学材料、光学素子、及び物品の屈折率を変化させる方法に関する。より具体的には、光照射を受けることで生じる構造変化により屈折率が大きくなる有機化合物を使用した、光学材料、そのような光学材料を含む光学素子、及び物品の屈折率を変化させる方法に関する。
自身の屈折率を変化させる機能を有する材料は、高分子導波路や光スイッチのような光通信デバイスや、光ディスクのように高密度な記録容量を有する記録デバイス等の開発に有用である。近年、通信技術や情報技術の急激な発展に伴い、光信号を光のまま変換、加工することのできるデバイスの中核を担うこうした材料の開発が強く求められている。
このような材料の一つとして、例えば、非特許文献1には、高分子中にフォトクロミック色素を分散させたものが提案されているが、フォトクロミック色素は光を吸収する性質があるとの観点や、デバイス作製のために十分な成膜性を確保する必要があるとの観点から、高分子中に分散させることのできるフォトクロミック色素の上限量が存在し、得られる屈折率変換性能には限界がある。
また、自身の屈折率を増加させる材料については数例しか知られておらず、例えば、非特許文献2には、ナフチルエステル化合物の光フリース転位反応を利用した屈折率変換材料が提案されている。しかし、この光フリース転位反応は、ナフチルエステル化合物の転化率は高いものの、屈折率の増加した転位生成物であるヒドロキシケトンの生成率は低く、屈折率の増加に寄与しない、脱炭酸によって生じた化合物が主生成物になるという問題を有する。この問題は、材料を実用化する上で大きな障害となる。
Murase,S.;Shibata,K.;Miyashita,Y.;Horie,K.Polym.J.,2003,35,203−207. Griesser,T.;Hofler,T.;Jakopic,G.;Belzik,M.;Kern,W.;Trimmel,G.J.Mater.Chem.,2009,19,4557−4565
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、光照射を受けることによって屈折率が大きくなる特性を有する光学材料、及びそれを用いた光学素子を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、光照射を受けることによって、屈折率が大きくなる特性を有する化合物を利用して物品の屈折率を変化させる方法を提供することを第2の目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表す化合物が、紫外線の照射を受けた際にラジカル的な転位反応による構造変化を生じてC=Xで表される極性基(XはS又はOである。)を生成し、その屈折率が大きくなることを見出した。このような屈折率の変化は、次のような理由によりもたらされるものと考えられる。すなわち、有機化合物の屈折率nは、Rを分子屈折とし、Vを分子体積とすると、下記数式で表されるLorents−Lorenzの式に基づいて理解することができるが、上記構造変化をもたらす反応前後において分子体積(V)が殆ど変化しないとすると、屈折率は化合物がもつ官能基の分子屈折の変化に依存することになる。分子屈折は、化学構造中の原子団や官能基の原子屈折から予想することができ、大きな原子屈折を示す原子団や官能基が存在すると分子屈折は大きくなる。構造変化後に生じるカルボニル基(C=O)やチオカルボニル基(C=S)中に含まれる酸素原子や硫黄原子は、そのような構造変化を生じる前よりも大きな原子屈折を持つので、上記のような構造変化でこれらの極性基を生じると分子全体の屈折率が大きくなることになる。
本発明は以上のような知見により完成されたものであり、具体的には以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、光照射を受けることで構造変化を生じる下記一般式(1)で表される化合物を含み、その構造変化により屈折率が大きくなることを特徴とする光学材料である。
(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。)
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
(上記一般式(2)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Arは置換されていてもよいアリール基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。)
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
(上記一般式(3)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。)
(2)また、本発明は、上記の光学材料を、光照射を受けることにより屈折率を変化させる部材として含む光学素子でもある。
(3)また、本発明は、光照射を受けることにより生じる構造変化により屈折率が大きくなる下記一般式(1)で表される化合物を利用して物品の屈折率を変化させる方法でもある。
(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。)
上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
(上記一般式(2)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Arは置換されていてもよいアリール基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。)
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
(上記一般式(3)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオアルキル基、N−置換アミド基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。)
本発明によれば、第1には、光照射を受けることによって屈折率が大きくなる特性を有する光学材料、及びそれを用いた光学素子が提供される。また、本発明によれば、第2には、光照射を受けることによって、屈折率が大きくなる特性を有する化合物を利用して物品の屈折率を変化させる方法が提供される。
図1は、poly−1a及び1bの各フィルムに対して波長280nmの紫外線を照射した際の時間経過に伴う吸収波長の変化を示すスペクトルであり、図1(a)は、poly−1aのフィルムについてのスペクトル変化であり、図1(b)は、poly−1bのフィルムについてのスペクトル変化である。 図2は、poly−1a及び1bの各フィルムについて、波長280nmの紫外線を60分間にわたって照射した際の赤外吸収の変化を示すスペクトルであり、図2(a)は、poly−1aのフィルムにおけるFT−IRスペクトルの変化を示し、図2(b)は、poly−1bのフィルムにおけるFT−IRスペクトルの変化を示す。
以下、本発明の一実施形態について、光学材料、光学素子、及び物品の屈折率を向上させる方法の順に説明する。
<光学材料>
本発明の光学材料は、光照射を受けることで生じる構造変化により屈折率が大きくなる有機化合物を含む。このため、本発明の光学材料は、光照射を受けることにより屈折率が大きくなる特性を備える。本発明の光学材料で用いられる上記有機化合物は、下記一般式(1)で表される。
上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。
上記一般式(1)においてAで表される芳香環は、芳香族性を備えた環構造であり、単環であってもよいし、複数の環が縮合した縮合多環であってもよい。このような芳香環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラン環、チオフェン環、ナフタレン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、アクリジン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環等を挙げることができる。
上記一般式(1)においてArで表されるアリール基は芳香族基であればよく、このような芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピラニル基、チオフェニル基、ナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、アクリジリル基、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等を挙げることができる。なお、これらの芳香族基は1又は複数の一価の有機基によって置換されていてもよい。このような一価の有機基としては、通常の有機化合物における一価の置換基を挙げることができ、これにはハロゲン原子等、炭素を含まない置換基も含まれる。このような有機基の一例として、水素原子が置換されてもよい主鎖の炭素数1〜8のアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のチオアルキル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。なお、上記一般式(1)で表される化合物は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。上記一般式(1)で表される化合物が高分子化合物である場合、上記一価の有機基はポリマーの主鎖若しくは側鎖そのもの、又はこれらに結合する基となる。
上記一般式(1)で表される化合物は、光照射を受けることにより、転位反応を生じてC=Xという基を分子内に生成する。この基を生成することにより、この化合物の分子屈折が大きくなり、屈折率が増加する。光照射に用いる光は、上記一般式(1)で表される化合物が吸収することのできる波長のものが用いられ、典型的な例としては紫外線が挙げられる。次に、この転位反応について説明する。
以下の説明では、理解を容易にするために、上記一般式(1)におけるA環をベンゼン環とし、Xを硫黄原子とし、Arをポリスチレンとしたものを例示するが、本発明で用いられる上記一般式(1)の化合物はこれに限定されるものではない。この例示のポリマーに紫外線を照射すると、下記の化学反応式に示す転位反応を生じる。なお、以下の説明で例示するポリマーは、上記一般式(1)におけるArをスチリル基とした化合物を合成し、これを常法によってラジカル重合させることによって得ることができる。
上記化学反応式において、左辺に示す化合物(S−ベンジル体)に紫外線を照射すると、炭素−硫黄結合間で均一開裂がおき、炭素ラジカル(C・)と硫黄ラジカル(S・)がそれぞれ生成する。前者のラジカルはベンジルラジカルでありベンゼン環における共鳴効果により安定化され、後者のラジカルは芳香族複素環による共鳴効果により安定化されるので、いずれのラジカルもある程度の寿命を持ち、上記化学反応式における右辺に向けて転位反応を生じてN−ベンジル体を生じる。つまり、上記一般式(1)におけるArがアリール基であり、A環が芳香環でありさえすれば、いずれのラジカルについても共鳴構造を書くことができて安定化されるので、Arはどのようなアリール基でもよく、A環はどのような芳香環であってもよいことになる。転位反応の結果生じた、右辺に示すN−ベンジル体の化合物は、原子屈折の大きなC=S結合を備えるので、既に述べたように、転位前のS−ベンジル体の化合物よりも大きな屈折率を示すようになる。
上記一般式(1)で表される化合物のより具体的な例として、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(2)中、X、X及びArは上記一般式(1)におけるものと同様であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。このような一価の有機基としては、通常の有機化合物における一価の置換基を挙げることができ、これにはハロゲン原子等、炭素を含まない置換基も含まれる。このような有機基の一例として、水素原子が置換されてもよい主鎖の炭素数1〜8のアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のチオアルキル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物のより具体的な例として、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(3)中、X、X、R及びnは上記一般式(2)におけるものと同様であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、mは0〜5の整数である。このような一価の有機基としては、通常の有機化合物における一価の置換基を挙げることができ、これにはハロゲン原子等、炭素を含まない置換基も含まれる。このような有機基の一例として、水素原子が置換されてもよい主鎖の炭素数1〜8のアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のチオアルキル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。また、上記一般式(1)についての説明でも述べたように、Rは、ポリマーの主鎖若しくは側鎖そのもの、又はこれらに結合する基であってもよい。この場合、上記一般式(3)で表される化合物はポリマーとなる。さらには、一価の有機基であるRは、カリックスアレーンやカリックスレゾルシンアレーンを含む基であってもよい。この場合、カリックスアレーンやカリックスレゾルシンアレーンの持つ独特な立体構造に基づく、独特な機能を発現することが期待される。さらに、一価の有機基であるRは、シルセスキオキシル基を含む一価の基であってもよい。この場合、シルセスキオキサンの有する独特な立体構造に基づく、独特な機能を発現することが期待される。なお、「シルセスキオキシル基を含む一価の基」とは、当該一価の基がシルセスキオキサン構造を有するということを意味する。
次に、上記一般式(1)で表される化合物(以下、単に「上記有機化合物」とも呼ぶ。)を含む光学材料の製法について説明する。上記有機化合物を含む光学材料の製法としては、光学材料を構成するための基材に上記有機化合物を添加する方法、上記有機化合物に重合性基を導入した重合性前駆体を重合させ、上記有機化合物自体を光学材料とする方法、光学材料を構成するための基材に上記重合性前駆体を塗布し重合させる方法等が例示できる。なお、結果として上記有機化合物が光学材料に含まれていればよいので、これ以外の方法で本発明の光学材料を作製してもよい。
まず、光学材料を構成するための基材に上記有機化合物を添加する方法から説明する。この方法では、樹脂やガラス等の基材に上記有機化合物を添加し混合することにより、光学材料が製造される。
基材としては、光学材料を構成する際に使用される公知のものを特に制限なく使用することができる。このような基材としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンが例示されるが限定されない。これらの基材に上記有機化合物を添加し混合するには、公知の手段を適宜使用すればよい。
また、重合することにより基材となる「基材の前駆体」に上記有機化合物を添加して重
合性の組成物を作製し、得られた重合性の組成物を重合硬化させたり、得られた重合性の
組成物を他の基材に塗布して重合させたりする方法によって光学材料を作製してもよい。
このような用途に使用される基材の前駆体としては、公知の(メタ)アクリルモノマー及
び/又はオリゴマーに重合開始剤を添加したものや、公知のエポキシ樹脂に硬化剤又は重
合開始剤を添加したものが例示される。
次に、上記有機化合物に重合性基を導入した重合性前駆体を重合させ、上記有機化合物自体を光学材料とする方法について説明する。このような用途に使用される重合性前駆体としては、例えば、上記一般式(1)又は(2)におけるArが重合性の置換基を備えるものや、上記一般式(3)におけるRが重合性の置換基であるものが挙げられる。重合性の置換基としては、エチレン性の不飽和結合を有する置換基やエポキシ基を有する置換基が挙げられ、具体的には、ビニル基、スチリル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシメチル基、メチル(メタ)アクリロイルオキシメチル基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、チオエポキシ基、チオオキセタニル基等が挙げられる。なお、このような重合性前駆体やそれを重合させた重合体も、上記一般式(1)で表される化合物の一形態である。
重合性前駆体を重合させて光学材料とするには、重合性前駆体に公知の重合開始剤又は硬化剤を添加して、重合又は硬化させればよい。このような例として、上記一般式(1)におけるArとしてスチリル基を導入した化合物(mono−1a)の重合反応を下記の化学反応式で示す。この反応では、ラジカル重合開始剤を用いてスチリル基に含まれるビニル基を重合させている。これにより、上記一般式(1)で表される構造が側鎖となる線状の重合体(poly−1a)が得られる。この重合体は、上記一般式(1)のArが重合体の主鎖に結合したフェニレン基となり、Arが一価の有機基(すなわち重合体の主鎖からの結合子)で置換されていることになる。すなわち、この重合体は上記一般式(1)の一例となる。下記化学反応式におけるV−70とは、和光純薬工業株式会社製より市販されているアゾ系のラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル))である。
(上記化学反応式におけるpoly−1aの一般式中、nは2以上の整数である。)
また、上記一般式(1)におけるArがビニル基で置換された化合物に紫外線を照射して、光ラジカル重合を行うこともできる。この場合、枝分かれの多い、多分岐高分子が得られる。このような一例として、Arがビニル基で置換された化合物(mono−1a)に280nm付近の光を照射したときの化学反応を下記に示す。これらのことから、上記一般式(1)におけるArがビニル基で置換された化合物は、重合方法を選択することにより、1つの化合物から線状高分子と多分岐高分子とを作り分けられることが理解できる。
上記の化学反応式は、一般式を用いて下記のように書き換えることもできる。
(上記化学反応式におけるpoly−2(1)の一般式中、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
この光重合反応の推定反応機構を下記に示す。まず、mono−1のTB基が光により均一開裂し、ベンジルラジカルと芳香族複素環の硫黄ラジカルを発生させる。この時点では、これら2種類のラジカル種は溶媒のかごの中にあり、可逆的に再結合する(元に戻る過程)か、溶媒のかごの外に拡散する。拡散したベンジルラジカルは、他のmono−1のビニル基に付加し、その付加体のスチリルラジカルを生成させる。これが芳香族複素環の硫黄ラジカルに付加すると、見かけ上、mono−1の二量体が生成する。さらに、この二量体のTB基部分に光均一開裂が起これば、前述の2種類のラジカル種の生成、及びその後のmono−1との反応が連鎖的に進行する、いわゆる光イニファーター様式で重合反応が進行する。その結果、多くの分岐構造を有する多分岐高分子が生成すると考えられる。
(上記化学反応式におけるpoly−2(1)の一般式中、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
この光重合で生成した多分岐高分子の末端基は、mono−1a由来のTB基、すなわちS−ベンジル体であることが確認されている。このことは、光重合の間、上述のような芳香族複素環部分のS−ベンジル体からN−ベンジル体への転位が起こらないことを意味する。その理由は必ずしも明らかではないが、溶液のような液相中では、ラジカルが溶媒のかごの中で転位反応を生じるよりも前に溶媒のかごの外へ拡散できるために上記のような重合反応が優勢であるのに対して、光学材料のような固相中では、ラジカルが物質中へ拡散せずに固相のマトリックスの中に留まるために分子内での転位反応が優勢であるためと推察される。
なお、mono−1aを光重合させて多分岐高分子を合成するに際しては、例えば、上記一般式(1)におけるArがp−メトキシフェニル基である下記化合物を共存させることにより、得られる高分子の重合度や分岐の程度を調節することもできる。
最後に、光学材料を構成するための基材に重合性前駆体を塗布し重合させる方法について説明する。これは、既に説明した光学材料を構成するための基材に、上記重合性前駆体と重合開始剤との混合物を塗布し重合させることにより、上記一般式(1)で表される化合物の膜を基材に形成させる方法である。
なお、この方法は、基材の表面に上記有機化合物の膜を形成させるものであってもよいし、複数に分割された基材の接合面に上記有機化合物の膜を形成させるものであってもよい。後者の場合、複数に分割された基材の接合面に上記重合性前駆体と重合開始剤との混合物を塗布し、これらの基材を接合させてから重合性前駆体を重合させればよい。この場合、重合性前駆体は、基材を接合させるための接着剤としても機能することになる。
<光学素子>
上記光学材料から作製された光学素子も本発明の一つである。このような光学素子は、光照射によって屈折率を増加させる能力を有するので、光照射をトリガーとして屈折率を変化させることが求められる用途に好ましく使用される。このような光学素子としては、高分子導波路や光スイッチ等の光通信デバイスや、光ディスクのように高密度な記録容量を有する記録デバイスや、光情報の伝達デバイス、変換デバイス等が挙げられる。
<物品の屈折率を向上させる方法>
以上の通り、本発明の光学材料及び光学素子について説明したが、本発明は、光照射により生じる構造変化により屈折率が大きくなる下記一般式(1)で表される化合物を利用して、物品の屈折率を変化させるという点に特徴を有するものである。このような観点から、光照射により生じる構造変化により屈折率が大きくなる下記一般式(1)で表される化合物を利用して、物品の屈折率を変化させる方法も本発明の一つである。なお、下記一般式(1)で表される化合物については既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
(上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。)
また、これも既に述べたように、上記一般式(1)で表される化合物のより具体的な一例として、下記一般式(2)の化合物を挙げることができる。
(上記一般式(2)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Arは置換されていてもよいアリール基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。)
また、これも既に述べたように、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物のさらに具体的な一例として、下記一般式(3)の化合物を挙げることができる。
(上記一般式(3)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオアルキル基、N−置換アミド基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。)
屈折率を変化させる物品としては特に限定されず、また、当該物品に対して本発明で使用される有機化合物を適用する手段も特に限定されない。つまり、本発明で使用される有機化合物が何らかの物品に対して適用され、それによりその物品が屈折率を変化させる能力を獲得する方法であれば、本発明の範囲に含まれる。これらについては、上記で詳細に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
以下、実施例を挙げることにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
・2−(4−メトキシベンジル)チオベンズオキサゾール(4MBTO)の合成
滴下ロートを備え、窒素気流下の200mLの三口フラスコに2−メルカプトベンズオキサゾール4.84g(32mmol)、テトラヒドロフラン(THF)24mL、及びトリエチルアミン(TEA)4.4mL(32mmol)を入れ、撹拌した後に、滴下ロートを用いて4−メトキシベンジルクロリド5.01g(32mmol)のTHF溶液(8mL)をゆっくりと滴下した。その後、反応溶液を室温で24時間撹拌した。反応後、反応溶液を水750mL中に投入し、固体を析出させた。析出した固体を吸引濾過し、85℃のエタノールで溶解してから水を加えて冷却して固体を析出させ、これを吸引濾過することで淡黄色固体の2−(4−メトキシベンジル)チオベンズオキサゾール(4MBTO)を得た(収量3.70g、収率79%)。
FT−IR(KBr,cm−1):2970(Ar−H),2841(Al−H),1608,1512(C=C環伸縮),1242(C−O−C逆対称伸縮),1131(C−H芳香族面外変角)
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)7.62(d,J=9.5Hz,0.97H),7.44(d,J=9.0Hz,1.01H),7.37(d,J=9.0Hz,2.00H),7.26(m,2.67H),6.86(d,J=8.5Hz,2.00H),4.53(s,2.07H,Hd),3.82(s,3.08H)
13C−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)164.59,159.18,151.68,141.69,130.21,127.53,124.20,123.82,118.29,114.04,109.78,55.13,36.09
・2−(4−ビニルベンジル)チオベンゾチアゾール(mono−1b)の合成
滴下ロートを備え、窒素気流下の200mLの三口フラスコに2−メルカプトベンズチアゾール5.35g(32mmol)、THF24mL、及びTEA4.4mL(32mmol)を入れ、撹拌した後に、滴下ロートを用いて4−クロロメチルスチレン4.88g(32mmol)のTHF溶液(8mL)をゆっくりと滴下した。その後、反応溶液を室温で24時間撹拌した。反応後、反応溶液を水750mL中に投入し、固体を析出させた。析出した固体を吸引濾過し、85℃のエタノールで溶解してから冷却して固体を析出させ、これを吸引濾過することで白色固体の2−(4−ビニルベンジル)チオベンゾチアゾール(mono−1b)を得た(収量3.62g、収率57%)。
FT−IR(KBr,cm−1):3052(Ar−H),3000,2928(Al−H),1625(ビニル基C=C),1509,1455(C=C環伸縮)
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)7.88(d,J=8.0Hz,0.95H),7.73(d,J=8.5Hz,0.94H),7.30(m,6.53H),6.67(d,J=14.5Hz,0.92H),5.72(d,J=8.5Hz,0.95H),5.22(d,J=10.5Hz,0.94H),4.57(s,2.00H)
・p−(2−ベンズオキサゾリル)チオメチルスチレン(mono−1a)の合成
滴下ロートを備え、窒素気流下の200mLの三口フラスコに2−メルカプトベンズオキサゾール4.84g(32mmol)、THF24mL、及びTEA4.4mL(32mmol)を入れ、撹拌した後に、滴下ロートを用いて4−クロロメチルスチレン4.88g(32mmol)のTHF溶液(8mL)をゆっくりと滴下した。その後、反応溶液を室温で24時間撹拌した。反応後、反応溶液を水750mL中に投入し、固体を析出させた。析出した固体を吸引濾過し、75℃のメタノールで溶解してから冷却して固体を析出させ、これを吸引濾過することで白色固体のp−(2−ベンズオキサゾリル)チオメチルスチレン(mono−1a)を得た(収量3.23g、収率61%)。
FT−IR(KBr,cm−1):3049(Ar−H),2930(Al−H),1629(ビニル基C=C),1501,1457(C=C環伸縮),1140(C−H芳香族面外変角)
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)7.62(d,J=9.0Hz,1.00H),7.43(t,J=8.5Hz,3.09H),7.38(d,J=8.5Hz,2.10H),7.29(t,J=8.3Hz,1.06H),7.25(t,J=8.5Hz,2.03H),6.68(d,J=14.3Hz,1.02H),5.73(d,J=17.5Hz,1.07H),5.25(d,J=11.0Hz,1.06H),4.55(s,2.14H)
・p−(2−ベンズオキサゾリル)チオメチルスチレンの熱重合(poly−1a)
重合反応管にmono−1a 0.57g(2.14mmol)、和光純薬株式会社製より市販されているアゾ系のラジカル重合開始剤V−70(2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.0123g(0.04mmol)、及び1,4−ジオキサン4.2mLを入れ、撹拌した。この溶液を凍結脱気した後に、30℃のオイルバスで18時間反応させた。反応後、反応溶液を水300mL中に投入して固体を析出させ、得られた固体を少量のTHFで溶解させ、メタノール250mL中に投入して再沈殿させた。析出した固体を吸引濾過することで白色固体のpoly−1aを得た(収量0.091g、収率91%)。
GPC(THF):Mn=12000,Mw=21000,Mw/Mn=1.8
FT−IR(KBr,cm−1):2923(Ar−H),2851(Al−H),1603(ビニル基C=C),1452(C=C環伸縮),1130(C−H芳香族面外変角)
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)7.47(s,1.00H),7.10(m,6.18H),6.34(m,1.98H),4.40(s,2.00H),1.25(m,4.86H)
・2−(4−ビニルベンジル)チオベンゾチアゾールの熱重合(poly−1b)
重合反応管にmono−1b 0.61g(2.14mmol)、上記V−70 0.0123g(0.04mmol)、及び1,4−ジオキサン4.2mLを入れ、撹拌した。この溶液を凍結脱気した後に、30℃のオイルバスで18時間反応させた。反応後、反応溶液を水300mL中に投入して固体を析出させ、得られた固体を少量のTHFで溶解させ、メタノール250mL中に投入して再沈殿させた。析出した固体を吸引濾過することで白色固体のpoly−1bを得た(収量0.34g、収率56%)。
GPC(THF):Mn=12000,Mw=24000,Mw/Mn=2.0
・p−(2−ベンズオキサゾリル)チオメチルスチレンの熱重合(poly−2(2))
光反応容器にmono−1 0.668g(2.5mmol)、上記4MBTO 0.0136g(0.05mmol)、及びTHF6mLを入れ、撹拌した。この溶液を窒素でバブリングした後に、室温で5時間反応させた。反応溶液を減圧留去した後に残渣をジエチルエーテル300mL中に投入し、再沈殿させた。析出した固体を吸引濾過することで淡黄色固体のpoly−2(2)を得た(収量0.24g、収率35%)。
GPC(THF):Mn=9200,Mw=81900,Mw/Mn=8.86
FT−IR(KBr,cm−1):2922(Ar−H),1601(ビニル基C=C),1452(C=C環伸縮),1129(C−H芳香族面外変角)
H−NMR(500MHz,CDCl,TMS):δ(ppm)7.52−6.39(m,9.56H),4.45(s,2.00H),1.84−1.17(m,5.53H)
上記のように、poly−2(2)は、mono−1aに紫外線を照射して合成された高分子化合物であるが、FT−IRの測定結果からはC=S結合の生成を意味する、1400〜1380cm−1付近の吸収を示すデータが得られなかった。このことから、poly−2(2)では、紫外線照射による重合反応の過程でN−ベンジル体への転位は生じておらず、得られたポリマーではS−ベンジル体構造が維持されていることが示唆された。
[光に対する応答性試験]
上記の手順で得られたpoly−1a及び1bのそれぞれについて、アニソールをキャスト溶媒として、フィルム膜厚が約35nmとなるように石英基板上キャストしてフィルムを形成させた。得られたフィルムのそれぞれに対して、60分間にわたって280nmの紫外線を照射して吸収波長の変化を観察した。なお、照射した紫外線の照度はいずれも1.1mW/cmとした。得られたスペクトルの変化を図1に示す。図1は、poly−1a及び1bの各フィルムに対して波長280nmの紫外線を照射した際の時間経過に伴う吸収波長の変化を示すスペクトルであり、図1(a)は、poly−1aのフィルムについてのスペクトル変化であり、図1(b)は、poly−1bのフィルムについてのスペクトル変化である。
図1(a)に示すように、poly−1aのフィルムでは光照射により280nmの吸光度が減少し、310nm付近の吸光度が増加した。また、図1(b)に示すように、poly−1bのフィルムでは光照射により286nmの吸光度が減少し、335nmの吸光度が増加した。また、poly−1aのスペクトル変化では293nmに等吸収点が見られ、poly−1bのスペクトル変化では313nmに等吸収点が確認された。このことから、光照射に伴い、poly−1aとpoly−1bのフィルム内ではそれぞれ単一な光化学反応が進行したことが示唆された。
また、poly−1a及び1bのそれぞれのフィルムについて、光照射前後におけるFT−IRスペクトルの変化を測定した。その結果を図2に示す。図2は、poly−1a及び1bの各フィルムについて、波長280nmの紫外線を60分間にわたって照射した際の赤外吸収の変化を示すスペクトルであり、図2(a)は、poly−1aのフィルムにおけるFT−IRスペクトルの変化を示し、図2(b)は、poly−1bのフィルムにおけるFT−IRスペクトルの変化を示す。
図2(a)及び(b)に示すように、poly−1a及び1bのそれぞれについて、光照射後にはC=S結合の振動を示す赤外吸収が1400〜1380cm−1付近に観察された。このC=S結合は、芳香族複素環のベンジル基への結合形態がS−ベンジル体からN−ベンジル体へ転位した際に生じるものである。このことから、いずれのポリマーについてもS−ベンジル体からN−ベンジル体への転位反応を生じたことが示唆された。
[光刺激による高分子フィルムの屈折率変化]
poly−1a及び1bのそれぞれについて、膜厚0.1μmのキャストフィルムを調製した。これらのフィルムのそれぞれについて、280nmの紫外線を30分間光照射し、その前後の屈折率をエリプソンメーターで測定した。表1にその測定結果を示す。光照射により、poly−1aのフィルムの屈折率は0.0073増加した。また、同様の光照射により、poly−1bのフィルムの屈折率は0.0071増加した。先の実験で明らかになった、光によるS−ベンジル体からN−ベンジル体への構造変化とLorentz−Lorenzの式に基づいて考えると、転位後に芳香族複素環の構造中にC=S基が新しく生成することにより、化合物の分子屈折が大きくなり、その結果高分子フィルムの屈折率が大きくなったものと推察された。

Claims (7)

  1. 光照射を受けることで構造変化を生じる下記一般式(1)で表される化合物を含み、その構造変化により屈折率が大きくなることを特徴とする光学材料。
    (上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。)
  2. 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である請求項1記載の光学材料。
    (上記一般式(2)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Arは置換されていてもよいアリール基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。)
  3. 前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である請求項1又は2記載の光学材料。
    (上記一般式(3)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の光学材料を、光照射を受けることにより屈折率を変化させる部材として含む光学素子。
  5. 光照射を受けることにより生じる構造変化により屈折率が大きくなる下記一般式(1)で表される化合物を利用して物品の屈折率を変化させる方法。
    (上記一般式(1)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Aで表される環構造は芳香環であり、Arは置換されていてもよいアリール基である。)
  6. 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物である請求項5記載の方法。
    (上記一般式(2)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Arは置換されていてもよいアリール基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数である。)
  7. 前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物である請求項5又は6記載の方法。
    (上記一般式(3)中、Xは硫黄原子又は酸素原子であり、Xは硫黄原子、酸素原子又は>NHであり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオアルキル基、N−置換アミド基であり、Rはそれぞれ独立に一価の有機基であり、nは0〜4の整数であり、mは0〜5の整数である。)
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