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JP6498074B2 - 超硬合金 - Google Patents
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本発明は超硬合金に関し、特にダイヤモンド製の被膜を形成するのに適した超硬合金に関するものである。
炭化物の硬質相とCoを含む結合相とを含有するWC−Co等の超硬合金は、高硬度で耐磨耗性に優れるため、切削工具やチャック治具などの各種部材に用いられている。耐磨耗性や耐久性をさらに向上させるため、超硬合金からなる基材の表面をダイヤモンド製の被膜でコーティングした部材が知られている。しかし、結合相に含まれるCoが、ダイヤモンドの同素体であるグラファイトを生成する触媒となり得るので、ダイヤモンドを気相合成して基材のコーティングを試みても、基材の表面に専らグラファイトが生成されてしまう。そこで、基材の表面に存在するCoを珪化して珪化物とした後にダイヤモンド製の被膜を形成する技術がある(特許文献1)。
国際公開第2005/121398号
しかしながら上記従来の技術では、基材の表面に存在するCoを珪化物にする処理を要するので、被膜を形成する工程が煩雑化するという問題点がある。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、被膜を形成する工程を簡素化できる超硬合金を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の超硬合金によれば、WC粒子を主体とする硬質相と、硬質相を結合するCoを主体とする結合相と、Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上の元素とを含有する。WC粒子は、フィッシャー法で測定される平均粒子径が0.4μm〜0.6μmの細粒と、フィッシャー法で測定される平均粒子径が1.2μm〜1.4μmの粗粒とから実質的に構成される。細粒および粗粒は質量比が細粒/粗粒=25/75〜15/85なので、粗粒のWC粒子の隙間に細粒のWC粒子が入り込み、WC粒子を密に配列できる。元素は含有量が0.09質量%〜0.9質量%なので、WC粒子の粒成長を抑制して、密に配列したWC粒子の粒度を維持し易くできる。WC粒子を結合するCoは含有量が0.7質量%〜1.7質量%なので、表面に露出するCo量を少なくできる。触媒となり得る表面のCo量を少なくできるので、ダイヤモンド製の所期の被膜を表面に形成できる。表面に存在するCoを珪化物にする処理を要しないので、被膜を形成する工程を簡素化できる効果がある。
請求項2記載の超硬合金によれば、0.09質量%〜0.9質量%のTaを含有するので、請求項1の効果に加え、耐酸化性を向上できる効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。超硬合金はWC粒子を主体とする硬質相を含有するWC基超硬合金である。硬質相は、WC粒子のみから、又は、WC粒子および化合物粒子から実質的に構成される。WC粒子のみから実質的に硬質相が構成されると、超硬合金は耐熱亀裂性、靭性、強度に優れる。「実質的に構成される」とは、不可避不純物を除き、構成元素が固溶していることを意味する。
硬質相の化合物粒子は、周期律表4a,5a,6a族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、炭素および窒素の少なくとも1種との化合物(但しWCを除く)の粒子、即ち上記の金属の炭化物(但しWCを除く)、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体から選択される1種または2種以上の化合物の粒子である。例えば、TaC,(Ta,Nb)C,VC,Cr,NbC,TiCN等が挙げられる。WC粒子および化合物粒子から実質的に硬質相が構成されると、超硬合金は耐摩耗性に優れる。化合物粒子に含まれる金属の超硬合金に対する含有量は0.05質量%〜5質量%が好ましい。超硬合金の耐摩耗性および耐熱亀裂性を確保するためである。
WC粒子は、フィッシャー法で測定される平均粒子径が0.4μm〜0.6μmの細粒と、フィッシャー法で測定される平均粒子径が1.2μm〜1.4μmの粗粒とから実質的に構成される。フィッシャー法は、TMIAS 0001:1999に規定される粒度試験方法であり、試料に空気を透過して流速および圧力降下の測定から比表面積を求め、平均粒子径を算出する方法(透過法)である。細粒および粗粒の割合は、質量比が細粒/粗粒=25/75〜15/85である。これにより、粗粒のWC粒子の隙間に細粒のWC粒子が入り込み、WC粒子を密に配列できる。その結果、超硬合金の靭性、強度および硬度を確保して、被膜の密着性を確保できる。
結合相は硬質相を結合するためのものであり、Coを主体とする。結合相はCoに加え、Ni,Fe等の他の鉄族元素を含有することが可能である。Coは、超硬合金に対する含有量が0.7質量%〜2質量%が好ましい。超硬合金の靭性および硬度を確保するためである。超硬合金に対するCoの含有量が0.7質量%未満であると、超硬合金の靭性が低下する傾向がみられる。超硬合金に対するCoの含有量が2質量%を超えると、基材の表面のCo量が増加するので、ダイヤモンドを気相合成して基材のコーティングを試みると、グラファイトが生成され易くなる。これを防ぐために基材を酸洗すると、基材の表面から除去されるCo量が増えるので、基材の表面が脆化し易くなり、被膜の密着性が低下する。
元素は、Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上が挙げられる。超硬合金に対する元素の含有量が0.09質量%〜0.9質量%であると、硬質相を構成するWC粒子の粒成長を抑制できるので、出発原料の大きさや形状を維持し易くできる。よって、粗粒のWC粒子の隙間に細粒のWC粒子が入り込んだ状態が維持され、WC粒子を密に配列できる。その結果、超硬合金の靭性、強度および硬度を確保して、被膜の密着性を確保できる。WC粒子が密に配列されるので、超硬合金に対する含有量が0.7質量%〜2質量%のCoによりWC粒子を結合できる。超硬合金に対する元素の含有量が0.09質量%未満であると、上述の効果が得られ難くなる傾向がみられる。超硬合金に対する元素の含有量が0.9質量%を超えると、熱拡散率が低下する傾向がみられ、耐熱亀裂性や高温での耐磨耗性が低下する。
Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上の元素に加え、超硬合金はTaを含有することが好ましい。Taにより粒成長の抑制効果を向上できると共に、耐酸化性を向上できるからである。超硬合金に対してTaの含有量は0.09質量%〜0.9質量%が好ましい。超硬合金に対するTaの含有量が0.09質量%未満であると、上述の効果が得られ難くなる傾向がみられる。超硬合金に対するTaの含有量が0.9質量%を超えると、熱拡散率が低下する傾向がみられ、耐熱亀裂性や高温での耐磨耗性が低下する。
Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上の元素やTaを超硬合金中に存在させるには、上記の金属元素の単体を原料に混合したり、上記の金属元素を含む炭化物などの化合物(例えばCr,TaC,NbC,TaNbC,VC,ZrC,TiC等)を用いたりすることが挙げられる。原料に用いた化合物は、超合金中にそのまま化合物として存在したり、新たな複合化合物を形成して存在したり、単体の元素となって存在したりする。
超硬合金は、一般に、原料の粉砕および混合、成形、焼結という工程で製造される。原料の粉砕および混合は、ボールミル、アトライタ、ヘンシェルミキサ、ジェットミル等の種々の装置により行われる。原料の粉砕および混合が湿式で処理される場合には、乾燥後、基材の形状に成形される。乾燥、成形および焼結は、公知の一般的な条件で行われる。焼結は、例えば、真空雰囲気で1320〜1500℃で1〜2時間保持することで行われる。
超硬合金からなる基材の表面にダイヤモンド製の被膜を形成する方法は、特に限定されない。例えば、プラズマCVD法、熱フィラメントCVD法、プラズマトーチCVD法などの従来公知の方法が挙げられる。
なお、超硬合金からなる基材と被膜との密着性を向上させるため、被膜を形成する前に、基材を酸洗する前処理を行うことは当然可能である。本実施の形態における超硬合金によれば、基材の表面に存在するCo量を少なくできるので、基材を酸洗したときのCoの除去量を少なくできる。その結果、基材の表面が脆化し難くなるので、被膜の密着性を確保できる。
上記実施の形態によれば、基材と被膜との間に中間層を形成することなく基材の表面に被膜が形成されるので、中間層を形成する場合に生じる密着性不良や熱膨張率の相違に起因する問題を生じなくできる。よって、基材に被膜が形成されたコーティング部材の信頼性を向上できる。また、中間層を形成する処理を要しないので、中間層を形成するための工程および時間を不要にすることができ、ダイヤモンド被膜によるコーティングプロセスを簡素化できる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。この実施例では、種々の超硬合金からなる基材にダイヤモンド製の被膜を形成し、その被膜の密着性を評価した結果を説明する。表1は、WC粒子の細粒および粗粒の平均粒子径、細粒および粗粒の質量比、Co及び元素の含有量を異ならせて製造した超硬合金の組成、及び、超硬合金からなる基材に形成したダイヤモンド被膜の密着性(耐久時間)の一覧表である。WC粒子の平均粒子径はフィッシャー法による測定値である。表1において、*を付した数値は本発明の数値範囲から外れていることを示す。
Figure 0006498074
まず、WC粒子、Co粒子、Cr粒子、VC粒子、TaC粒子をそれぞれ準備し、表1に示す組成(質量%)になるように配合した。配合した粒子を混合後、押出成形し真空雰囲気で焼結して、実施例1〜8、比較例1〜17の超硬合金からなる基材を得た。次に、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム10g及び水酸化カリウム10gを100mLの蒸留水に溶かした腐食液(村上試薬)に基材を浸漬し、基材の表面を粗化した(表面の算術平均粗さRa約0.1μm)。次いで、マイクロ波プラズマCVD装置の反応容器内に基材を収容し、ダイヤモンド成膜用の原料ガスを反応容器内に供給して、基材の表面にダイヤモンド被膜(平均膜厚10μm)を形成した。これにより実施例1〜8、比較例1〜17の試料を得た。実施例1〜8、比較例1〜17の試料は、組成が異なる以外、同一の条件で製造されている。
ダイヤモンド被膜の密着性の評価は、サンドブラスト装置を用いて行った。サンドブラスト装置を用いて、被膜の厚さ10μmの箇所に300kPaの吐出圧力(ゲージ圧)で炭化ケイ素(#180)を投射し、被膜が基材から剥がれるまでの時間(耐久時間)を測定した。表1に示すように、比較例1〜17の試料は耐久時間が最長40秒であったのに対し、実施例1〜8の試料は耐久時間が、その3倍以上(120秒以上)であった。
この実施例によれば、平均粒子径が0.4μm〜0.6μmの細粒(WC粒子)及び平均粒子径が1.2μm〜1.4μmの粗粒(WC粒子)を細粒/粗粒=25/75〜15/85(質量比)とし、Coの含有量を0.7質量%〜2質量%、元素(Cr,V)の含有量を0.09質量%〜0.9質量%とすることにより、比較例に比べて、被膜の密着性を3倍以上に向上できることがわかった。さらに、元素(Ta)0.09質量%〜0.9質量%を加えても耐久時間を確保できることがわかった。実施例によれば、基材の表面に存在するCoを珪化物にする処理(従来技術)を不要にできるので、被膜を形成する工程を簡素化できると共に、被膜の密着性を向上できることがわかった。
この実施例ではCr粒子、VC粒子、TaC粒子(元素の炭化物)を配合した場合を説明したが、これに限るものではなく、Cr,V,Taの金属単体を配合しても同様の結果が得られた。また、元素はCr,Vに限るものではなく、粒成長抑制効果のあるNb,Zr,Tiを配合しても同様の結果が得られた。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば超硬合金は、WC粒子以外の化合物粒子を硬質相に加えたり、Co以外の金属材やその他の添加材を結合相に加えたりすることは当然可能である。

Claims (2)

  1. WC粒子を主体とする硬質相と、
    その硬質相を結合するCoを主体とする結合相と、
    Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上の元素とを含有し、
    前記WC粒子は、フィッシャー法で測定される平均粒子径が0.4μm〜0.6μmの細粒と、フィッシャー法で測定される平均粒子径が1.2μm〜1.4μmの粗粒とから実質的に構成され、
    前記細粒および前記粗粒は、質量比が前記細粒/前記粗粒=25/75〜15/85であり、
    前記Coは、含有量が0.7質量%〜1.7質量%であり、
    前記元素は、含有量が0.09質量%〜0.9質量%であり、
    Taを含有しないことを特徴とする超硬合金。
  2. WC粒子を主体とする硬質相と、
    その硬質相を結合するCoを主体とする結合相と、
    Cr,Nb,Zr,V及びTiから選択される1種以上の元素とを含有し、
    前記WC粒子は、フィッシャー法で測定される平均粒子径が0.4μm〜0.6μmの細粒と、フィッシャー法で測定される平均粒子径が1.2μm〜1.4μmの粗粒とから実質的に構成され、
    前記細粒および前記粗粒は、質量比が前記細粒/前記粗粒=25/75〜15/85であり、
    前記Coは、含有量が0.7質量%〜2質量%であり、
    前記元素は、含有量が0.09質量%〜0.9質量%であり、
    0.09質量%〜0.9質量%のTaを含有することを特徴とする超硬合金。
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