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JP6499562B2 - 湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法、及びそのシステム - Google Patents
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JP6499562B2 - 湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法、及びそのシステム - Google Patents

湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法、及びそのシステム Download PDF

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Description

本発明は、農業用の水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部で発生する硫化水素を無害化する方法、及びそのシステムに関するものである。
例えば、島根県の宍道湖は、日本海に面した汽水湖であって、ヤマトシジミの生産で著名であり、その生産高は、昭和48年の19,234トンを最高に、徐々に減少し、平成20年には、3 ,700トンまで減少したが、平成20年の時点で、日本全体の生産高の37%を占め、依然として日本最大のヤマトシジミの生産地である。
汽水湖である宍道湖におけるヤマトシジミの生産高の減少の原因は、種々考えられるが、周辺の複数の河川の末端が位置する地理的条件と相俟って、富栄養化による青潮の発生が一因と考えられている。なお、平成24年9月には、宍道湖の西岸においては、スズキ、フナ、ハゼ等の魚類の大量へい死が発生し、青潮が原因と考えられている。なお、青潮は、本来的に、潮流の動きの少ない東京湾、大阪湾、三河湾等の都市近郊の内湾において発生するものを指し、夏から秋にかけて表層の水の色が青白色に見えることで認識される。青潮は、貧酸素状態の底層域で形成された硫化水素が水流によって上層に湧昇し、酸素との接触によって、粒子状硫黄に変化することで発生する現象である。
宍道湖に限られず、湖の場合、当該湖に注ぐ複数の河川を通して、栄養塩類や有機物等を含有する生活廃水や工場廃水が流入し、湖水が富栄養化し、栄養塩類等を栄養源とする植物性プランクトンが増殖し、これに伴い、動物性プランクトンも増殖する。両プランクトンは、活動を終えると死骸となった有機物及び外部流入した有機物は、水温の低い冬場は、微生物が不活性なので、湖底部に沈積したままとなる。宍道湖のような汽水湖において、海水と淡水との密度差により、両者の間に淡塩境界とも称せられる密度躍層が生成されて、海水と淡水とは、分離された状態を維持する。一方、春から夏にかけては、微生物が活発化する時期であり、海水中の酸素を利用して、湖底に沈積している有機物を分解することで、湖底周辺の大量の溶存酸素が消費され、前記密度躍層の存在により、上層の淡水と下層の海水とで湖水交換が行われないので、湖底は、溶存酸素量の乏しい貧酸素状態又は無酸素状態に至る。
貧酸素・無酸素状態に至った湖底では、好気活性の微生物に代って、嫌気活性の硫酸還元菌が湖水中の硫酸イオンを利用して有機物が酸化分解されることで、硫酸イオンは還元されて硫化水素となり、湖底部の硫化水素濃度は高められる。このため、湖の浅瀬で生息しているヤマトシジミに被害を及ぼすと共に、湖底部の貧酸素・無酸素の水塊は、前記密度躍層がはっきり存在しない部分において、強い風により上層部に湧昇されると、その途中で存在する魚類を死滅させることがある。
昭和30年頃には、硫化水素による藻貝(さるぼう貝)やかきのへい死が、宍道湖の下流である中海で発生しており、その対策として、近くの陸地から赤土を運搬して漁場や筏下に散布して生存率を改善させていた。これは、赤土に含まれる「赤鉄鉱」が湖水中に溶出して発生する鉄イオンと、湖底部に存在する硫化水素とが反応して硫化鉄を生成させ、硫化水素の濃度を低減させることで、藻貝、かき等の水産物に対して硫化水素を無害化させるものであった。
また、湾、又は汽水湖の汽水域底泥に発生している硫化水素の濃度の別の低減方法として、人工的に加工した鉄粉を汽水域底泥に播くことで、硫化水素と反応して硫化鉄になることは既に知られており、硫化水素が発生する老朽化水田において、鉄粉を播くことで、土壌が改良されることも確認されている。しかし、この硫化水素濃度の低減方法を汽水域底泥に実施する場合には、人工的に多量の鉄粉の加工が必要であるため、大量の鉄粉の加工のために多大なコストがかかると共に、周辺の流域への鉄粉の流失を防止して、汽水域底泥のみに鉄粉を播く作業に多くの人手と設備を要する問題がある。
特許文献1には、航路等の人工水底窪地の浮泥を海水と共に揚泥して、除砂処理、曝気処理を行うことで改善泥とし、当該改善泥を元の人工水底窪地に返泥して、当該改善泥中に含まれる三酸化二鉄と、人工水底窪地に存在する硫化水素とを反応させて硫化鉄にすることで、人工水底窪地の硫化水素量を低減させて、青潮発生を抑制する技術が開示されている。特許文献1に開示の技術は、海中に存在する鉄イオンと硫化水素との接触機会を人為的に形成して、人工水底窪地における硫化水素濃度を低減させることで、水産物に対して硫化水素の無害化を図る点において、上記した中海における硫化水素の無害化対策と関連している。
一方、自然界には、土壌微生物の一種である鉄バクテリアが存在し、農業用水路を含む一般の水路、排水溝等において、赤褐色又は茶褐色の沈殿物、或いは寒天状の鉄バクテリア泥として現れ、鉄バクテリアは、鉄イオンを酸化させて、水面における水流の殆どない静止した部分において、油模様の酸化鉄(赤鉄鉱)を生成することは、古来より知られている。例えば、トンネルに接続する狭隘な水路において当該鉄バクテリア泥が年月をかけて発生すると、当該水路を閉塞させたり、余剰の鉄バクテリア泥がトンネル内の軌道上に漏れ出たりするため、鉄バクテリア泥の発生を抑制する薬剤の開発がなされている(特許文献2)。即ち、従来では、鉄バクテリア泥は、無用物又は有害物とみなされることが多く、当該鉄バクテリア泥の特性を積極的に利用しようとする発想は見られなかった。
宍道湖のような汽水湖に注ぐ農業用水路は、多数あり、農業用水路の淡水内において鉄バクテリアと鉄イオンとが反応して生成された鉄バクテリア泥(赤鉄鉱)は、降雨時において水量が増加すると、通常時よりも流量が多くなって、汽水湖に注がれるが、前記鉄バクテリア泥は淡水中に存在しているために、湖水中では、淡塩境界よりも上方の淡水域において水中又は表面に浮遊することになる。従って、汽水湖への流入により淡水域に存在することになった鉄バクテリア泥が、湖底部である淡塩境界よりも下方の海水域の底部に存在する硫化水素と接触する機会は、殆どないと言える。なお、漁業関係者の間では、汽水湖に流入して淡水域において浮遊している前記鉄バクテリア泥は、単に「泥」と俗称されている。
特に、宍道湖の西方に位置する出雲平野(「簸川平野」とも言われる)は、地下水に含まれる鉄分の割合が高いことを、本願の共同発明者の原昭二と武田育郎は確認しており、その情報を元に、本願の共同発明者の井上祥一郎は、上記出雲平野の農業用水路中の鉄バクテリア泥は、通常よりも遥かに含有割合の多い370g/ kgの鉄分を含有することを、分析の結果確認した。なお、本願の共同発明者の上野薫は、潜在硫酸塩土壌を研究において、当該土壌中の黄鉄鉱(パイライト)が、鉄及び硫酸の各バクテリアの働きを受けて、赤鉄鉱(ヘマタイト)と硫酸に変化することを報告している。
また、上記したように、宍道湖のような汽水湖は、密度躍層の存在により、上層の淡水と下層の海水とで湖水交換が行われず、青潮発生の原因とする硫化水素は、密度の大きな下層の海水中における湖底に近い部分に集中して存在していることが分かっている。
特許第4842781号公報 特開平10−54721号公報
本発明は、上記した各知見に基づいて、農業用水路に存在する鉄バクテリアの作用により生成された自然界の赤鉄鉱を含む泥水を、密度躍層の下層の海水の部分に導入することで、赤鉄鉱と硫化水素との接触機会を人為的に作って、両者を反応させることで、当該硫化水素の濃度を低減させることを課題としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、農業用水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化する方法であって、
前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽に珪酸ナトリウムを添加させることで、前記赤鉄鉱の非沈殿状態を維持して貯泥し、
前記泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流して、当該泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素とを反応させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させることを特徴としている。
地下水に溶存している鉄分は、二価の鉄イオンの状態で、農業用水路等の自然界に存在する鉄バクテリアの作用により水酸化鉄の鞘状の殻を作って、鞘状赤鉄鉱となること〔鉄気(カナケ)として存在すること〕が知られており、農業用水路では、鞘状赤鉄鉱は、その泥水中に含まれる。本願の共同発明者の井上祥一郎は、上記の鞘状赤鉄鉱を含む泥水は、海水程度の比重(1.03程度)を有しているため、当該鞘状赤鉄鉱を含む泥水を、湖底部又は湾底部に放流させると、当該泥水に含まれる鞘状赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部で発生している硫化水素とを化学反応させることで、硫化鉄を生成させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させる発想に至った。ここで、鞘状赤鉄鉱を含む泥水は、比較的短時間で、赤鉄鉱を含む泥分が沈殿することで、上澄水と比重分離されてしまい、パイプ、ホース等を用いた赤鉄鉱を含む泥分の送泥が難しい。このため、鞘状赤鉄鉱を含む泥水は、長時間に亘って、全体をほぼ均一に濁った状態にしておく必要があり、請求項1の発明では、この手段として、窯業で解膠剤として使用される珪酸ナトリウム(水ガラス)を、赤鉄鉱を含む泥分に添加することで、貯泥時における赤鉄鉱を含む泥水の比重分離を防止すると共に、その流動性を高めることで、パイプ、ホース等による送泥容易性を確保した。
よって、農業用水路の泥水に珪酸ナトリウムを添加して貯泥槽に貯泥しておいて、ポンプの作用によって、当該泥水をパイプ、ホース等を用いて、湖底部又は湾底部に放流すると、当該泥水は、海水と同等の比重を有しているために、赤鉄鉱を含む泥分が浮上することなく、そのまま湖底部又は湾底部に滞留すると共に、珪酸ナトリウムの解膠作用によって、赤鉄鉱を含む泥水の流動性が増しているために、当該泥水は、放流されたその場所のみに沈降することなく、湖底部又は湾底部に水流が発生している場合には、当該水流によって、広い場所に散布される。これにより、泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に発生・存在している硫化水素とが反応して硫化鉄が生成されることで、湖底部又は湾底部は、その部分の硫化水素濃度が低減されることで、富栄養化による青潮環境が改善されて、水産生物の生息に好ましい環境に変質される。
一方、赤鉄鉱を含む泥水の解膠剤として混入された珪酸ナトリウムを含む泥水が汽水湖の湖底部又は湾底部に供給されると、汽水中に存在する珪藻に対して珪素が供給されることで、珪藻類の珪素不足が解消されて、珪藻類を餌とするヤマトシジミ、アサリ等の貝類、魚類に対して餌が安定的に確保されると共に、汽水中に供給された珪酸ナトリウムは、貝類、魚類に対して無害である。
請求項2の発明は、農業用水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化する方法であって、
前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽に貯泥し、
前記泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流して、当該泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素とを反応させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させることを特徴としている。
請求項1の発明において赤鉄鉱を含む泥水のポンプによる放流が可能であれば、珪酸ナトリウムを使用しなくても、農業用水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化することが可能となり、請求項2は、請求項1において、珪酸ナトリウムを使用しない場合の発明である。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記貯泥槽内の泥水の放流前に、当該貯泥槽内において泥水を攪拌し、その直後に放流することを特徴としている。
請求項1又は2の発明において、貯泥槽内の放流前の泥水を攪拌することで、底部に沈殿している泥部と、上部の上澄水の部分とが混合されて、赤鉄鉱を含む泥水の放流を行い易くなる。
請求項4は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記湖は汽水湖であって、赤鉄鉱を含む泥水を、淡水と海水との淡塩境界よりも下方の部分に密度流を利用して放流することを特徴としている。
請求項4の発明によれば、赤鉄鉱を含む泥水の放流先が汽水湖であると、当該密度流よりも僅かに下方の部分に放流された赤鉄鉱を含む泥水は、淡水と海水との境界に流れる密度流の作用により、汽水湖の広い部分に拡散させて湖底部に沈殿されるので、赤鉄鉱の飛散効果が高まることで、汽水湖の広い範囲に亘って硫化水素の無害化が可能となる。
また、段落「0010」に記載のように、汽水湖に注がれる農業用水路に発生する鉄バクテリア泥(赤鉄鉱)は、淡水中に含まれるために、汽水湖に注がれた後においては、淡塩境界よりも上方の淡水域に存在し続けることになって、硫化水素が発生している湖底部(海水域の底部)に達することがなく、硫化水素と赤鉄鉱とが接触して反応する機会は、殆どないが、請求項4の発明によれば、赤鉄鉱を含む泥水を、淡水と海水との淡塩境界よりも下方の部分に密度流を利用して放流するので、淡水域において鉄バクテリア泥(赤鉄鉱)が浮遊することはなく、海水域である湖底部に滞留し続けて、当該湖底部に存在する硫化水素と反応して硫化鉄となって、湖底部の硫化水素濃度が低減される。
請求項5は、請求項4の発明において、前記汽水湖は、島根県の宍道湖であって、前記泥水の放水場所は、斐伊川の河口近辺であることを特徴としている。
段落「0011」に記載したように、宍道湖の西方に位置する出雲平野は、地下水に含まれる鉄分の割合が高いことが知られており、この出雲平野を流れる農業用水路の泥水中には、外の地域よりも多くの赤鉄鉱が含まれることになると共に、出雲平野を流れる斐伊川の河口近辺は、ヤマトシジミが豊富に生産される場所でもある。よって、請求項5の発明のように、赤鉄鉱を含む泥水を、斐伊川の河口近辺に放流すると、当該河口近辺の湖底部に存在する硫化水素発生域における硫化水素の無害化効果が高まって、湖底で生息するヤマトシジミの生産性が高められる。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、汽水湖の淡塩境界よりも下方の海水域の比重の大きな湖水を前記貯泥槽に戻して、農業用水路を通して当該貯泥槽に流入した赤鉄鉱を含む泥水と混合させた状態で汽水湖に放流することを特徴としている。
請求項6の発明によれば、汽水湖に放流する赤鉄鉱を含む泥水は、淡水よりも比重の大きな淡塩境界よりも下方の海水域の湖水を含んでいるため、放流に係る泥水の比重が淡水に比較して一層に大きくなるので、湖底部に滞留する時間が長くなって、硫化水素との接触機会が一層に大きくなるか、又は接触時間が一層に長くなって、硫化水素濃度の低下が促進される。
請求項7の発明は、請求項1に記載の発明を実施するためのシステムであって、
前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を貯泥するために、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽と、
当該貯泥槽に貯泥される前記泥水に対して珪酸ナトリウムを設定量だけ供給するために、当該貯泥槽に付設された珪酸ナトリウム供給装置と、
前記湖底部又は湾底部に赤鉄鉱を含む泥水を送泥するために、基端部が前記貯泥槽に接続されて、湖又は湾の沿岸部に沿って配設される送泥パイプと、
前記送泥パイプから分岐されて、先端部が前記湖底部又は湾底部に達している多数の分岐ホースと、
前記貯泥槽内の珪酸ナトリウムが加えられた泥水を吸引して、前記送泥パイプを通して湖底部又は湾底部に送泥させるための送泥ポンプと、
を備えていることを特徴としている。
請求項7の発明によれば、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽には、農業用水路の最下流端が接続されていて、赤鉄鉱を含む泥水が常時流入して貯泥され、赤鉄鉱を含む泥水の放流時には、当該泥水に珪酸ナトリウム供給装置から珪酸ナトリウムが添加される。硫化水素の発生の恐れのある湖又は湾の沿岸には、送泥パイプが沿岸に沿って配設されていて、当該送泥パイプから分岐された多数本の分岐パイプの先端部は、湖底部又は湾底部に達していて、送泥ポンプの吸引作用により、珪酸ナトリウムが添加された赤鉄鉱を含む泥水は、前記送泥パイプ及び分岐パイプを介して、湖底部又は湾底部に放流される。
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記貯泥槽内の泥水を攪拌させるための攪拌機を備えていることを特徴としている。
請求項8の発明によれば、赤鉄鉱を含んだ泥水の放流直前に、攪拌機により、貯泥槽に貯泥された赤鉄鉱を含む泥水を攪拌すると、下部に沈殿している泥部と、上部の上澄水とが混合されることで、全体がほぼ均一濃度となって、貯泥槽の底部に、赤鉄鉱を含んだ泥部が大量に残存することなく、貯泥槽に貯泥された泥水を放流できる。
請求項9の発明は、請求項7又は8の発明において、前記湖は汽水湖であって、前記分岐ホースの先端部は、淡水と海水との境界に流れる密度流よりも下方の部分に配置されることを特徴としている。
汽水湖において河川と接続されている部分には、淡水と海水との密度差により、両水の境界に密度流が発生しており、当該密度流の部分に、分岐ホースの先端部を配置すると、当該分岐ホースから放流される赤鉄鉱を含んだ泥水は、前記密度流の流れにより、遠方まで流されることで広範囲に拡散されて、湖底に沈殿する。よって、自然水流である密度流の利用によって、硫化水素を無害化できる範囲が拡大される。
本発明は、農業用水路等に存在する自然界の赤鉄鉱を含む泥水を、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽に、必要に応じて珪酸ナトリウムを添加させることで、前記赤鉄鉱の非沈殿状態を維持して貯泥し、前記泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流して、即ち、鉄バクテリアの作用により自然界で生成された赤鉄鉱を含む泥水を、ポンプの作用により湖底部又は湾底部に放流して、当該泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素との接触機会を人為的に作って、両者を反応させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させることで、硫化水素を無害化している。このように、自然界で生成された赤鉄鉱を泥水に含ませたままの自然状態で、当該泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流することで、人工的に鉄を加工したり、或いは赤鉄鉱を含む大量の赤土を搬入すること等をなくして、ポンプの動力を除いて、農業用水路等で自然生成された赤鉄鉱を泥水に含ませたままで、湖底部又は湾底部に放流することで、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化できるため、実施のための諸設備も少なくて済み、低コストで実施できる。
また、放流先が汽水湖の場合には、密度流を利用して、赤鉄鉱を含む泥水を流すことで、無動力でもって、赤鉄鉱を含む泥水を広く拡散させることが可能となって、硫化水素を無害化できる範囲が拡がる。更に、赤鉄鉱を含む泥水の放流前に、珪酸ナトリウムを添加することで、泥水中の赤鉄鉱の非沈殿状態を維持できて、泥水の放流が容易になると共に、珪酸ナトリウム自体は、湖水、淡水、海水中に存在する珪藻類が不足している珪素の供給に寄与すると共に、貝類、魚類等の海洋生物に対して無害であるため、湖水環境又は湾岸水環境を害さない。
本発明に係る農業用水路で生成された赤鉄鉱を用いた湖底部の無害化システムの模式的平面図である。 同じく模式的断面図である。 赤鉄鉱を含む泥水の貯泥槽Aの平面図である。 同じく断面図である。 図3のX矢視図である。 (a),(b)は、それぞれ貯泥槽A内に設置された攪拌機Mの平面図、及び正面図である。 (a),(b)は、それぞれ貯泥槽A内に設置された珪酸ナトリウム供給塔Eの平面図、及び正面図である。 密度流Dを利用して泥水W0 を放流する原理を示す模式的断面図である。 比重の大きな海水域W2 の湖水(海水)を貯泥槽Aに戻して、放流する泥水W0 の比重を大きくさせるシステムの模式的平面図である。
図1及び図2は、島根県の宍道湖の西岸に本発明に係る硫化水素の無害化システムを実施した模式的平面図、及び模式的断面図である。「背景技術」の項目で述べたように、宍道湖は、日本で最大のヤマトシジミの生産高を有しているが、その生産高は年々減少しており、しかも貧酸素状態のために硫化水素が発生している湖底部も存在していて、ヤマトシジミの生育環境を悪化させていると共に、宍道湖の西方に位置する出雲平野は、地下水に含まれる鉄分の割合が通常の地域よりも高く、当該出雲平野の水田地域の農業用水路中の鉄バクテリア泥は、通常よりも遥かに含有割合の多い370g/ kgの鉄分を含有しているために、泥水中における鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱の含有割合が高くなっているために、宍道湖の西岸は、本発明の実施が強く望まれている地域である。
宍道湖の堤防61の外側の平野部は、湖面よりも低くなっていて、堤防61に近接した平野部における比較的大きな農業用水路62の最下流部には、当該農業用水路62を流れる泥水(泥部を含む水)W0 を貯留させる貯泥槽Aが設置されている。農業用水路62は、現実の田圃に形成されている比較的幅広の水量の大きな1本の水路を用いてもよいし、水路幅が狭い場合には、近接して流れる複数本の水路を合流させて形成することで、必要水量を確保することが望ましい。貯泥槽Aの形状は、その周辺の地形との関係で任意に定められるが、模式図では、方形状をなしている。貯泥槽Aの方形状の周壁1における農業用水路62と接続する部分は、当該農業用水路62の幅に対応した方形状の流入口2が形成され、貯泥槽A内には、当該流入口2から農業用水路62の泥水が常時流入し、送泥ポンプP1 の作用により、貯泥槽Aに貯留された泥水W0 を湖底に放流するまでの間に、貯泥槽Aの容量を超える泥水が流入した場合には、泥分の沈降により生成された上澄水を、貯泥槽Aの周壁1の任意の部分に設けられたせき3を通して外部に放流して、上澄水排水路63を通して貯泥槽Aに最も近い河川に流す構造になっている。図1〜図4の模式図では、せき3は、貯泥槽Aに対する農業用水路62からの泥水W0 の流入方向と平行な周壁1の一箇所に形成されている。
貯泥槽Aに貯留された赤鉄鉱を含む泥水は、送泥ポンプP1 の作用により、送泥パイプQa,Qb及び当該送泥パイプQbから分岐して湖水中に配置される複数本の分岐ホースQcを通して、湖岸部に近い湖底部に放流される。送泥パイプQaは、堤防61を跨いで貯泥槽Aから湖岸部の間に配管される部分であり、送泥パイプQbは、1本の送泥パイプQaから両側に分岐されて、湖岸部に沿って配管される部分である。上記した各送泥パイプQa, Qb及び分岐ホースQcは、露出配管のままでもよいが、景観保全、及び接触事故防止の観点からは、地中埋設しておくことが望ましい。また、汽水湖である宍道湖では、ほぼ全域において、淡水域W1 の下方に海水域W2 が深さ方向に分離して存在して、両水域W1 ,W2 の境界が淡塩境界Bとなっており、本発明は、淡水域W1 よりも比重が大きいために、当該淡水域W1 の下方に位置している海水域W2 に、自然界で生成された赤鉄鉱を含む泥水をそのままの状態で放流させて、湖底部に存在している硫化水素と赤鉄鉱との接触機会を人為的に形成して、両者を反応させて硫化鉄とすることで、硫化水素の濃度を低減させることを要旨としており、具体的には、貯泥槽Aに貯留された赤鉄鉱を含む泥水W0 を前記送泥ポンプP1 の動力により、前記貯泥槽Aから吸引して、湖底部の海水域W2 に定期的に放流させる。なお、図1において、W10は、汽水湖の湖水部を示し、64は、湖水部と湖岸部の境界線を示す。
貯泥槽Aに貯留された赤鉄鉱を含む泥水W0 のうち赤鉄鉱を含む泥分は、時間の経過により比重分離されて、貯泥槽Aの底部に沈殿して、上部は、泥分を含まない上澄水となるために、放流時においては、全体に均一に泥分が含まれるようにして、上記した送泥パイプQa,Qb及び分岐ホースQc内における流動性(送泥性)を高める必要がある。このため、図3〜図6に示されるように、貯泥槽Aの内部に複数の攪拌機Mを設置して、貯泥槽Aに貯留された泥水の放流直前に、攪拌機Mを作動させて、泥水内における赤鉄鉱を含む泥分を均一に分散させることで、送泥パイプQa,Qb及び分岐ホースQc内における泥水の流動性(送泥性)を高めている。
攪拌機Mとしては、泥水内における泥分を均一に分散させることができれば、いかなる構造であってもよく、例えば、図6に示されるように、4本の支柱11から成って、平面視で正方形状のフレーム12の上部支持板13の直下に軸受部14が一体に設けられ、当該軸受部14により垂直回転軸15の上端部が片持ち支持されて、垂直回転軸15における上部支持板13から上方に突出した部分に取付けられた第1減速歯車16と、モータ支持フレーム(図示せず)に、駆動軸17aを下方にして支持されたモータ17の当該駆動軸17aに取付けられた第2減速歯車18とが噛合されることで、前記モータ17の駆動力により垂直回転軸15が駆動回転される。垂直回転軸15には、複数の攪拌羽根19が一体に取付けられ、複数の攪拌機Mの垂直回転軸15が駆動回転すると、複数の攪拌羽根19の回転により、底部に泥部が沈殿した赤鉄鉱を含む泥水が攪拌されて、放流直前の泥水W0 には、泥部が均一に混合された状態となる。なお、図6において、20は、モータ17及び各歯車16,18の部分を覆う屋根板を示し、4は、貯泥槽Aの底壁を示す。
一方、珪酸ナトリウム(水ガラス)は、窯業分野で解膠剤として使用されており、当該珪酸ナトリウムを赤鉄鉱を含む泥分に添加することで、貯泥時における赤鉄鉱を含む泥水の比重分離が抑制されると共に、その流動性が高められることで、上記した送泥パイプQa,Qb及び分岐ホースQcを用いて、泥分に赤鉄鉱を含む泥水W0 を送泥する際に、上記した複数の攪拌機Mによる泥水W0 の攪拌作用と相俟って、泥水W0 の送泥性が高められて、スムーズに送泥できる。
このため、貯泥槽Aの上流側(農業用水路62に近い側)に珪酸ナトリウム供給塔Eが設置されている。即ち、4本の支柱31から成って、平面視で正方形状のフレーム32の上部の水平支持板33の中央部には、円形の供給塔挿入孔34が形成され、珪酸ナトリウム供給塔Eの円筒部に取付けられた複数のブラケット35が前記水平支持板33の上面に支持されて、両者33,35をボルト固定することで、珪酸ナトリウム供給塔Eは、フレーム32に取付けられる。
貯泥槽Aに貯留されている泥水に対する珪酸ナトリウムの供給は、当該泥水の放流直前に、比重分離されている泥水W0 を複数の攪拌機Mにより攪拌して、泥水W0 内に、赤鉄鉱を含む泥部が均一に分散された後に行なうことで、珪酸ナトリウムの解膠作用によって、泥水W0 の比重分離が抑制されて、泥水W0 中に泥部が均一に分散された状態で、当該泥水W0 を湖水中に放流できる。
貯泥槽Aの泥水W0 が上記の状態で、送泥ポンプP1 の作用により、送泥パイプQa,Qb及び分岐ホースQcを通して、貯泥槽Aに貯留されている泥水W0 を、湖岸に近い湖水中の湖底部の海水域W2 に放流させる。ここで、農業用水路62の淡水が、そのまま汽水湖に注がれる場合には、淡水である赤鉄鉱を含む泥水W0 は、淡塩境界Bよりも上方の淡水域W1 内に滞留していて、海水域W2 に入り込んで、湖底部の硫化水素と反応することはないが、当該泥水W0 は、海水と同等の比重(1.02〜1.03)を有していると共に、淡塩境界Bの存在により、上層の淡水域W1 と下層の海水域W2 との間において湖水交換は行なわれないために、赤鉄鉱を含む泥分が浮上することなく、そのまま湖底に滞留すると共に、珪酸ナトリウムの解膠作用によって、赤鉄鉱を含む泥水W0 の流動性が増しているために、当該泥水W0 は、放流されたその場所のみに沈降することなく、湖底部に水流が発生している場合には、当該水流によって、広い場所に散布される。これにより、泥水W0 に含まれる赤鉄鉱と、湖底部に発生・存在している硫化水素とが反応して硫化鉄が生成されて、湖底部は、その部分の硫化水素濃度が低減されることで、富栄養化による青潮環境が改善されて、水産生物、特に、湖底部にのみ生息するヤマトシジミの当該生息に好ましい環境に変質される。なお、図6及び図7に示される2点鎖線は、貯泥槽Aに貯留される泥水W0 の水面Sを示す。
分岐ホースQcの先端部から放流される赤鉄鉱を含む泥水は、宍道湖を含めて汽水湖におけるヤマトシジミが最も生息し易い浅瀬の湖底部に放流され、この部分の硫化水素を含む湖底泥が硫化水素濃度が低くなるように、集中的に改善されるために、ヤマトシジミの生息環境の改善の程度が高まる。
一方、赤鉄鉱を含む泥水の解膠剤として混入された珪酸ナトリウムを含む泥水が汽水湖の湖底部に供給されると、汽水中に存在する珪藻に対して珪素が供給されることで、珪藻類の珪素不足が解消されて、珪藻類を餌とするヤマトシジミ、アサリ等の貝類、魚類に対して餌が安定的に確保される。なお、汽水中に供給された珪酸ナトリウムは、貝類、魚類に対して無害である。
また、宍道湖の西岸において、当該宍道湖に注ぐ大きな河川として斐伊川があり、その河口においては、淡水域W1 と海水域W2 との間に淡塩境界Bを形成した状態で、河川からの淡水の流れにより、上層の淡水と下層の海水とが淡塩境界Bで分離した状態で独立して流れる「密度流」という現象が発生している。河川の河口の湖底部に上記した泥水W0 を放流させると、上記の「密度流」の作用により、湖底部に放流された泥水W0 は、淡塩境界Bよりも上方の淡水域W1 に流入することなく、海水域W2 に存在したままで「密度流」により更に周辺に放流されて、泥水W0 の放流域が広くなって、硫化水素濃度が低減される領域が広くなる。
上記事項の実施には、例えば、図8に示されるように、河川の河口に川幅方向に沿って所定間隔をおいて本杭41を打ち込んで、当該本杭41の下流側を支持杭42で支持して、複数本の本杭41の上流側に送泥パイプQbを配置して、当該本杭41に結束固定し、当該本杭41に所定間隔をおいて分岐ホースQcを接続させて、分岐ホースQcから、「密度流D」が発生している部分の海水域W2 に泥水W0 を放流させることで実現できる。
宍道湖のような汽水湖においては、海水域W2 の湖水(海水)を貯泥槽Aに戻して、湖水中に放流する泥水W0 の比重を高めることで、硫化水素の発生が多い湖底部に当該泥水W0 が滞留する時間を長くすることができて、硫化水素の無害化の効率を高めることが可能となる。
図9は、上記技術を実施するためのシステムの模式的平面図であって、送泥パイプQaにおける貯泥槽Aに近い部分に、送泥ポンプP1 が組み込まれたパイプ部と並列に、逆流ポンプP2 が組み込まれ、送泥パイプQaにおける逆流ポンプP2 が組み込まれたパイプ部と分岐する部分、及び湖水部と湖岸部の境界線64と平行に配管された送泥パイプQbと交差する部分には、それぞれ三方弁V1 ,V2 が組み込まれ、送泥パイプQbには、前記三方弁V2 との間に1本の分岐ホースQcが存在するように、開閉弁V3 が組み込まれている。
よって、貯泥槽Aの泥水W0 の放流時には、送泥ポンプP1 から吐出された泥水W0 が、送泥パイプQaを通って、その末端で両側の各送泥パイプQbに分岐されるように、各三方弁V1 ,V2 を切り換えると共に、開閉弁V3 を「開」とすることで、送泥ポンプP1 による貯泥槽Aの泥水W0 の吸引・吐出により、貯泥槽Aの泥水W0 は、複数本の分岐ホースQcを通って湖水中に放流される。
一方、海水域W2 の湖水(海水)を貯泥槽Aに戻して、湖水中に放流する泥水W0 の比重を高める場合には、特定の1本の分岐ホースQcで吸引された海水域W2 の湖水が、図9で各矢印で示される経路を経て、貯泥槽Aに戻されるように、各三方弁V1 ,V2 を切り換えると共に、開閉弁V3 を「閉」とすることで実現される。
特に、宍道湖の西岸においては、湖水面よりも低い部分に貯泥槽Aが設置されるために、湖水面と貯泥槽Aの各水面の水位差H(図2参照)は、逆流ポンプP2 により海水域W2 の湖水(海水)を吸引して、当該湖水を、特定の1本の分岐ホースQc、各送泥パイプQb,Qaを通して逆流させて、貯泥槽Aに戻す際に、「サイホン機能」を果すので、湖水の前記逆流が容易になると共に、逆流ポンプP2 の動力が少なくて済む。
また、本発明の実施対象は、宍道湖以外に、湖底部に硫化水素の発生又はその恐れのある汽水湖は勿論のこと、汽水の存在によりシジミ、二枚貝等の貝類が生息している湾、或いは大きな河川の河口部に対しても実施でき、近辺の農業用水路から鉄バクテリア泥を含む泥水を貯泥して放流することで、湾、或いは大きな河川の河口部にに対しても、本発明を実施できる。
このように、本発明は、自然界で生成された赤鉄鉱を含んだ泥水を、農業用水路等を流れる自然状態のままで、送泥ポンプの作用により、湖底部の海水域の部分に放流することで、人工的に鉄を加工したり、或いは赤鉄鉱を含む大量の赤土を搬入すること等をなくして、ポンプの動力を除いて、農業用水路等で自然生成された赤鉄鉱を含んだ泥水を湖底部又は湾底部に放流することで、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化できるため、実施のための諸設備も少なくて済み、低コストで実施できる。特に、本発明を島根県の宍道湖に実施した場合には、周辺の平野の地下水が他の地域よりも多くの鉄分を含むことで、農業用水路等を流れる泥水に含まれる赤鉄鉱の割合が他の地域よりも高くなることと相俟って、湖底部に硫化水素が発生している場合には、その濃度が効果的に低減されることで、ヤマトシジミ等の貝類、魚類の生息環境が改善されるために、現在、日本一であるヤマトシジミの生産量の更なる増大が期待できる。
A:貯泥槽
B:淡塩境界
D:密度流
E:珪酸ナトリウム供給塔
H:水位差
M:攪拌機
1 :送泥ポンプ
2 :逆流ポンプ
Qa,Qb:送泥パイプ
Qc:分岐ホース
S:貯泥槽の泥水の水面
1 ,V2 :三方弁
3 :開閉弁
0 :赤鉄鉱を含む泥水
1 :淡水域
2 :海水域
10:湖水部
62:農業用水路

Claims (9)

  1. 農業用水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化する方法であって、
    前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽に珪酸ナトリウムを添加させることで、前記赤鉄鉱の非沈殿状態を維持して貯泥し、
    前記泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流して、当該泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素とを反応させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させることを特徴とする湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  2. 農業用水路に存在する鉄バクテリアにより生成された赤鉄鉱を用いて、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素を無害化する方法であって、
    前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽に貯泥し、
    前記泥水をポンプの作用により、湖底部又は湾底部に放流して、当該泥水に含まれる赤鉄鉱と、湖底部又は湾底部に存在する硫化水素とを反応させて、湖底部又は湾底部の硫化水素濃度を低減させることを特徴とする湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  3. 前記貯泥槽内の泥水の放流前に、当該貯泥槽内において泥水を攪拌し、その直後に放流することを特徴とする請求項1又は2に記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  4. 前記湖は汽水湖であって、赤鉄鉱を含む泥水を、淡水と海水との淡塩境界よりも下方の部分に密度流を利用して放流することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  5. 前記汽水湖は、島根県の宍道湖であって、前記泥水の放水場所は、斐伊川の河口近辺であることを特徴とする請求項4に記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  6. 汽水湖の淡塩境界よりも下方の海水域の比重の大きな湖水を前記貯泥槽に戻して、農業用水路を通して当該貯泥槽に流入した赤鉄鉱を含む泥水と混合させた状態で汽水湖に放流することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化方法。
  7. 請求項1に記載の発明を実施するためのシステムであって、
    前記農業用水路の赤鉄鉱を含む泥水を貯泥するために、湖又は湾に近い部分に設置された貯泥槽と、
    当該貯泥槽に貯泥される前記泥水に対して珪酸ナトリウムを設定量だけ供給するために、当該貯泥槽に付設された珪酸ナトリウム供給装置と、
    前記湖底部又は湾底部に赤鉄鉱を含む泥水を送泥するために、基端部が前記貯泥槽に接続されて、湖又は湾の沿岸部に沿って配設される送泥パイプと、
    前記送泥パイプから分岐されて、先端部が前記湖底部又は湾底部に達している多数の分岐ホースと、
    前記貯泥槽内の珪酸ナトリウムが加えられた泥水を吸引して、前記送泥パイプを通して湖底部又は湾底部に送泥させるための送泥ポンプと、
    を備えていることを特徴とする湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化システム。
  8. 前記貯泥槽内の泥水を攪拌させるための攪拌機を備えていることを特徴とする請求項7に記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化システム。
  9. 前記湖は汽水湖であって、前記分岐ホースの先端部は、淡水と海水との境界に流れる密度流よりも下方の部分に配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載の湖底部又は湾底部で発生する硫化水素の無害化システム。
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