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JP6508766B2 - 誘電体セラミックス粒子および誘電体セラミックス - Google Patents
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JP6508766B2 - 誘電体セラミックス粒子および誘電体セラミックス - Google Patents

誘電体セラミックス粒子および誘電体セラミックス Download PDF

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Description

本発明は、誘電体セラミックス粒子および誘電体セラミックスに関する。
スマートフォン、タブレット等の普及にともない、これらに使用される電子部品の小型高性能化が進められており、積層コンデンサとして使用されるMLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor:積層セラミックコンデンサ)も当然のように、小型大容量化が求められている。
現在、MLCCの小型大容量化のために、誘電体層を薄膜化し、積層数の増加を図るのが主流である。そのためには、誘電体材料として使用しているチタン酸バリウム(BaTiO:BT)等の誘電体セラミックスを微粒子化(小粒径化)することができる技術が求められている。
チタン酸バリウムを含む誘電体セラミックスの微粒子化技術として、たとえば、特許文献1では、粒度分布が5〜50nm程度の微細なチタン酸ストロンチウム(SrTiO:ST)ナノキューブの表面にチタン酸バリウムを析出させる技術が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、所謂コア粒子としてのチタン酸ストロンチウム、当該コア粒子を被覆するシェル相としてのチタン酸バリウムを含む、非常に粒径の小さいチタン酸バリウム含有微粒子を作製することができる。
特開2012−240860号公報
一方で、MLCCの小型大容量化のためには、誘電体セラミックス粒子の小粒径化以外にも、当該粒子が集積した誘電体セラミックス(粒子の集積体)を作製した際、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成可能であり、高い誘電率を有するものが求められる。
したがって、本発明の目的は、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成可能な誘電体セラミックス粒子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを提供することにある。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子の粒径を所定の範囲内とし、さらに、当該コア粒子の表面上に特定の格子定数を有する金属酸化物を主成分とするシェル相を形成することにより、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成可能な誘電体セラミックス粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子と、前記コア粒子の表面上に形成された金属酸化物を主成分とするシェル相と、を有し、前記コア粒子の粒径は50nmを超えて500nm以下であり、前記チタン酸バリウムのa軸方向の格子定数(aBT)に対し、前記金属酸化物のa軸方向の格子定数(a)が、0.5%以上大きい、誘電体セラミックス粒子;
2.前記金属酸化物の室温における結晶構造が、ペロブスカイト型である、上記1.に記載の誘電体セラミックス粒子;
3.前記金属酸化物は、ジルコン酸バリウムである、上記1.または2.に記載の誘電体セラミックス粒子;
4.前記チタン酸バリウムに対する前記ジルコン酸バリウムの含有モル比(MBZ/MBT)は、1以下である、上記3.に記載の誘電体セラミックス粒子;
5.上記1.〜4.のいずれかに記載の誘電体セラミックス粒子を含む、誘電体セラミックス。
本発明によれば、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成可能な誘電体セラミックス粒子が提供される。また、本発明によれば、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスが提供される。
実施例2に係る誘電セラミックス粒子のSTEM像である。 図1Aと同一視野で測定したTiのマッピングデータである。 図1Aと同一視野で測定したZrのマッピングデータである。 図1Aと同一視野で測定したBaのマッピングデータである。 比較例3に係る誘電体セラミックスのSEM像である。 実施例1に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例2に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例3に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例4に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例5に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例6に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例7に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例8に係る誘電体セラミックスのXRDスペクトルである。 実施例に係る誘電体セラミックスの比誘電率と、チタン酸バリウムに対するジルコン酸バリウムの含有モル比(MBZ/MBT)との関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一の形態は、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子と、前記コア粒子の表面上に形成された金属酸化物を主成分とするシェル相と、を有し、前記コア粒子の粒径は50nmを超えて500nm以下であり、前記チタン酸バリウムのa軸方向の格子定数(aBT)(以下、単に「格子定数(aBT)」とも称する)に対し、前記金属酸化物のa軸方向の格子定数(a)(以下、単に「格子定数(a)」とも称する)が、0.5%以上大きい、誘電体セラミックス粒子を提供する。
なお、本明細書中、「チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子」とは、コア粒子の全量に対して、チタン酸バリウムを90質量%以上含むことを意味する。なお、コア粒子がチタン酸バリウムを90質量%以上含むことは、蛍光X線による分析により確認される。また、「金属酸化物を主成分とするシェル相」とは、シェル相の全量に対して、金属酸化物を90質量%以上含むことを意味する。したがって製造上含まれてしまう不純成分がコア粒子中またはシェル相中に微量含まれていても良い。なお、シェル相が金属酸化物を90質量%以上含むことは、蛍光X線による分析により確認される。
さらに、本明細書中、「粒径」は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、50個の粒子を抽出して該粒径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
また、格子定数「aBT」および「a」は、室温(25℃)における、チタン酸バリウム(BT)および金属酸化物(M)のa軸長(a軸方向の格子定数)をそれぞれ指すものとする。またこれらの格子定数は、X線回折により得られた回折強度から、リートベルト法により算出された値を採用するものとする。
本発明の誘電体セラミックス粒子は、チタン酸バリウムを主成分とし、その粒径が50nmを超えて500nm以下であるコア粒子と、当該コア粒子をコーティングするシェル相とを有している。
上述の通り、従来、MLCCの小型大容量化のために、誘電体セラミックスを微粒子化(小粒径化)する技術について検討されてきた。しかしながら、本発明者らは、特許文献1のようなコア−シェル構造を有する粒子の小粒径化を進めると、誘電体セラミックスを作製した際に、十分な相対密度および誘電率が得られない場合があることを見出した。そこで、上記問題点について検討を進めたところ、コア粒子の粒径を特定の範囲とし、さらに、特定の金属酸化物によって当該コア粒子をコーティングすることにより、高い誘電率を示し、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成可能な誘電体セラミックス粒子が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
上記の本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは、以下のように推測される。
以下で詳説するように、コア−シェル構造を有する誘電体セラミックス粒子を製造する際、コア粒子を予め準備し、シェル相を構成する金属酸化物でコア粒子を被覆する方法が好ましく用いられる。ここで、誘電体セラミックスの小粒径化を図る上では、コア粒子の粒径もまた小粒径化する方が好ましい。しかしながら、このような製造過程において、コア粒子の粒径が小さすぎると、コア粒子同士が凝集してしまう場合があることが判明した。さらに、上記のように製造過程においてコア粒子同士が凝集してしまう結果、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成することができず、高い誘電率を得ることが難しくなるという知見が得られた。そして、かような傾向は、チタン酸バリウムをコア粒子とした際に特に顕著となることも明らかとなった。
加えて、チタン酸バリウムの微粒子は、微粒子化(小粒径化)すると、誘電率が低下する「サイズ効果」と呼ばれる現象が生じる。よって、小粒径化を図る一方で、粒径を小さくしすぎると、十分な誘電率を得ることが難しくなる。
これに対し、本発明者らは、コア−シェル構造体において、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子の粒径を、50nmを超えて500nm以下とすることにより、上記不都合を解消することができると考えた。すなわち、本発明の誘電体セラミックス粒子に含まれるコア粒子の粒径を、上記範囲とすることにより、製造過程におけるコア粒子の凝集を抑制すると共に、サイズ効果の影響を小さくすることができる。その結果、高い相対密度を有し、高い誘電率を示す誘電体セラミックスを作製することができる。
さらに、本発明の誘電体セラミックス粒子は、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子の表面上に、特定の格子定数の関係を満たす金属酸化物を主成分とするシェル相が形成されてなる。具体的には、シェル相を構成する金属酸化物は、その格子定数(a)が、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に対して0.5%以上大きいことを特徴とする。
このように、シェル相を構成する金属酸化物として、コア粒子を構成するチタン酸バリウムよりも格子定数の大きいものを用いることにより、コア粒子とシェル相との界面において、シェル相の金属酸化物の単位格子に引っ張られるように相互作用してチタン酸バリウムの単位格子が歪む。その結果、コア粒子であるチタン酸バリウム格子中心に位置するチタン原子が移動しやすくなり、これにより自発分極が向上し、コア−シェル構造体の誘電率が向上すると考えられる。したがって、本発明によれば、特定の金属酸化物を主成分とするシェル相を有することにより、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子を有する、誘電率の高い誘電体セラミックスを得ることができる。
なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の誘電体セラミックス粒子の構成要素、および本発明を実施するための形態・態様について詳細に説明する。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
≪誘電体セラミックス粒子≫
本発明の誘電体セラミックス粒子は、コア粒子と、当該コア粒子の表面を被覆するシェル相と、を有するコア−シェル構造体である。ここで、コア−シェル構造体であることは、STEM−EDS分析やSEM観察により確認することができる。特に、STEM−EDS分析により、元素分布を測定することにより、より明確に確認することができる。
コア粒子は、その表面の全体がシェル相で被覆されていると好ましいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、表面の一部が露出していてもよい。好ましい実施形態において、コア粒子の表面の50面積%以上がシェル相で被覆されていると好ましく、より好ましくは60面積%以上、さらに好ましくは70面積%以上、特に好ましくは80面積%以上、最も好ましくは90面積%以上がシェル相で被覆されていると好ましい。
また、誘電体セラミックス粒子の粒径(コア粒子上にシェル相が形成された状態の粒径)は、特に制限されないが、50〜500nmであると好ましく、60〜400nmであるとより好ましい。
(コア粒子)
コア粒子は、チタン酸バリウムを主成分とする粒子である。「主成分とする」の用語の定義は上述の通りであって、製造上含まれてしまう不純成分がコア粒子中に微量含まれていても良い。不純成分としては、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、ニオブ、鉄、鉛などの金属由来成分、ガラス成分および炭化水素系の有機成分などが挙げられる。
コア粒子は、コア粒子の全量に対して、チタン酸バリウムを93質量%以上含んでいると好ましく、95質量%以上含んでいるとより好ましく、98質量%以上含んでいると特に好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には100質量%である。チタン酸バリウムの含有量が多いほど、シェル相を構成する金属酸化物と相互作用しやすくなり、誘電率の向上に寄与するため、好ましい。
また、コア粒子は、その粒径が50nmを超えて500nm以下である。コア粒子の粒径を50nm以下とすると、サイズ効果により誘電率が低下し、誘電率の高い誘電体セラミックス粒子を得ることが難しくなる。また、上述したように、粒径が小さすぎる場合、製造段階においてコア粒子同士が凝集して、コア粒子の表面をシェル相で十分に被覆することができず、高い相対密度を有する誘電体セラミックスを形成することが難しい。一方、粒径を大きくすると誘電率を向上させることができるが、500nmを超えると良好なコア−シェル構造を形成することが難しいだけでなく、MLCCにおける実用的な観点から好ましくない。
したがって、サイズ効果の影響を抑制し、良好なコア−シェル構造体を形成することにより誘電率を向上させると共に、誘電体セラミックス粒子の小粒径化を図るという実用的な観点から、コア粒子の粒径は、80〜400nmがより好ましく、100〜450nmがさらにより好ましく、200〜400nmが特に好ましい。
(シェル相)
シェル相は、特定の金属酸化物を主成分とし、上記コア粒子の表面を被覆するように形成されている。「主成分とする」の用語の定義は上述の通りであるが、シェル相は、シェル相の全量に対して、金属酸化物を93質量%以上含んでいると好ましく、95質量%以上含んでいるとより好ましく、98質量%以上含んでいると特に好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には100質量%である。金属酸化物の含有量が多いほど、コア粒子に含まれるチタン酸バリウムと相互作用しやすくなり、誘電率の向上に寄与するため、好ましい。
シェル相を構成する金属酸化物は、その室温におけるa軸方向の格子定数(a)が、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に対して0.5%以上大きいものである。すなわち、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に対する金属酸化物のa軸方向の格子定数(a)の比(a/aBT)が1.005以上である。
格子定数(a)の大きさの割合が0.5%未満であると、誘電率を向上させることができる程度に、コア粒子中のチタン酸バリウムの単位格子を歪ませることが難しい。一方、シェル相を構成する金属酸化物の格子定数(a)が、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に比して大きいほど、界面におけるチタン酸バリウムの単位格子を大きく歪ませることができ、結果として誘電率を向上させることができるため、好ましい。したがって、格子定数(a)の、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に対する大きさの割合の上限は、特に制限されるものではないが、実質的に使用可能な金属酸化物種を考慮すると、45%程度である。
換言すると、室温におけるチタン酸バリウムの格子定数(aBT)は、3.992Åであるため、シェル相を構成する金属酸化物の格子定数(a)は、3.992×(100+0.5)/100=4.012Å以上である。一方、格子定数(a)の上限は、3.992×(100+45)/100=5.79Å程度である。
本発明におけるシェル相を構成する金属酸化物の格子定数(a)については、上記の通りであるが、格子定数(a)は、格子定数(aBT)に対してより大きい方が好ましい。格子定数(a)が大きい金属酸化物を用いることで、コア粒子とシェル相との界面におけるチタン酸バリウムの単位格子がより大きく歪み、より誘電率を高くすることができるためである。したがって、格子定数(a)は、格子定数(aBT)に対し、0.6〜8%大きいと好ましく、1〜7%大きいとより好ましく、3〜6%大きいと特に好ましい。すなわち、チタン酸バリウムの格子定数(aBT)に対する金属酸化物のa軸方向の格子定数(a)の比(a/aBT)が1.006〜1.08であると好ましく、1.01〜1.07であるとより好ましく、1.03〜1.06であると特に好ましい。
シェル相を構成する金属酸化物としては、上記格子定数(a)を有するものであれば、いかなる金属酸化物であってもよいが、たとえば、ジルコン酸バリウム(BaZrO:BZ aBZ=4.193Å)、ジルコン酸ストロンチウム(SrZrO:SZ aSZ=4.103Å)、ニオブ酸カリウム(KNbO:KN aKN=4.016Å)、ニオブ酸リチウム(LiNbO:LN aLN=5.148Å)、チタン酸カルシウム(CaTiO:CT aCT=5.381Å)ビスマスフェライト(BiFeO:BF aBF=5.631Å)が挙げられる。なお、上記金属酸化物は、単独であっても、または2種以上が併用されてもよい。
上記金属酸化物は、室温(25℃)における結晶構造が、ペロブスカイト型であるものであると好ましい。コア粒子の構成するチタン酸バリウムがペロブスカイト構造をとるため、シェル相を構成する金属酸化物もまた同様に、ペロブスカイト型構造をとるものであると好ましい。このような金属酸化物を用いることにより、チタン酸バリウムと金属酸化物とが相互作用しやすくなり、界面においてチタン酸バリウムの単位格子が歪みやすくなるため、結果として高い誘電率を得ることができる。
したがって、上記格子定数の規定を満たす金属酸化物であって、チタン酸バリウムと共にコア−シェル構造を形成しやすいという観点から、シェル相を構成する金属酸化物としては、ジルコン酸バリウム、ニオブ酸カリウムが好ましく、ジルコン酸バリウムがより好ましく用いられる。
シェル相を構成する金属酸化物の含有量(モル量)は、本発明の効果を得られる限りにおいて、特に制限はないが、金属酸化物が、コア粒子を構成するチタン酸バリウムに対して、等モル量であるか、または少ないモル比で含有されていると好ましい。すなわち、コア粒子を構成するチタン酸バリウムに対する、シェル相を構成する金属酸化物の含有モル比(M/MBT)は、1以下であると好ましい。より好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.65以下である。
上述したように、本発明のシェル相を構成する所定の金属酸化物は、チタン酸バリウムと相互作用することにより、チタン酸バリウムの単位格子を歪ませて誘電率を向上させることができる。しかしながら、その一方で、金属酸化物自体は誘電率が比較的小さいものがあるため、金属酸化物量を多くしてしまうと、誘電体セラミックス粒子全体としての誘電率が低下する可能性がある。したがって、チタン酸バリウムの含有量に対する金属酸化物の含有量を少なくして上記範囲とすることにより、誘電体セラミックス粒子全体としての誘電率の低下を抑制することができる。
一方、コア粒子を構成するチタン酸バリウムに対する、シェル相を構成する金属酸化物の含有モル比(M/MBT)の下限は特に制限されないが、本発明の効果を十分に得るため、M/MBTは、0.005以上であると好ましく、0.1以上であるとより好ましく、0.2以上であると特に好ましい。
なお、金属酸化物を二種類以上用いる場合は、すべての金属酸化物の和が、チタン酸バリウムに対して上記範囲内であると好ましい。
特に、金属酸化物をジルコン酸バリウムとした場合、チタン酸バリウムに対するジルコン酸バリウムの含有モル比(MBZ/MBT)は、1以下であると好ましい。また、このとき、MBZ/MBTは、0.85以下であるとより好ましく、0.7以下であるとさらにより好ましく、0.6以下であると特に好ましい。一方で、その下限は、特に制限されないが、本発明の効果を十分に得るため、MBZ/MBTは、0.01以上であると好ましく、0.15以上であるとより好ましい。
このように、チタン酸バリウムに対するジルコン酸バリウムを上記範囲とすることにより、チタン酸バリウムの単位格子が歪むことに起因する誘電率向上効果を最大限に引き出すことができると共に、それ自身は誘電率の低いジルコン酸バリウムの含有量を最小限に抑えることができる。
また、シェル相は、構造的な欠陥を抑制するために、コア粒子上に略均一の厚みで被覆されていると好ましい。
≪誘電体セラミックス≫
本発明の第二の形態は、上記誘電体セラミックス粒子を含む、誘電体セラミックスを提供する。
誘電体セラミックスは、上記誘電体セラミックス粒子を含むものであれば、その形態は限定されるものではないが、上記誘電体セラミックス粒子の集合体であると好ましく、たとえば、球状物、板状物、ペレット、またはこれらの混合物の形態をとることができる。
本発明の誘電体セラミックスは、比誘電率(ε)が、89以上であると好ましく、100以上であるとより好ましく、150以上であるとさらにより好ましく、200以上であると特に好ましい。
また、本発明の誘電体セラミックスは、相対密度が90%以上であることが好ましい。相対密度が90%以上であると、十分な誘電特性や機械的強度を得ることができる。さらに、相対密度は、95%以上であるとより好ましく、96%以上であるとさらにより好ましく、97%以上であると特に好ましい。また、その上限は特に制限されないが、実質的には100%である。なお、相対密度は、実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
本発明の誘電体セラミックスは、上記誘電体セラミックス粒子を含むため、高い誘電率を示す。また、高い相対密度を有するため、高い誘電率を有するだけでなく、強度(特に機械的強度)もまた向上する。
≪誘電体セラミックス粒子(誘電体セラミックス)の製造方法≫
本発明の誘電体セラミックス粒子(誘電体セラミックス)の製造方法は、(1)コア粒子を準備する工程、(2)シェル相を形成する工程に大別される。また、これら以外に、必要に応じて(3)洗浄・乾燥工程を行ってもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)コア粒子準備工程(工程(1))
本工程では、チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子を準備し、必要に応じて当該コア粒子を他の材料と混合する。さらに、必要に応じてバインダーを用いて成型を行ってもよい。
原料としてのコア粒子は、市販のチタン酸バリウム粉末を用いてもよいし、従来公知の方法により製造してもよい。このとき、原料としてのコア粒子の粒径は、50nmを超えて、500nm以下である。用いるコア粒子の粒径が50nm以下であると、以下で詳述するシェル相形成工程時、コア粒子同士が凝集してしまい、シェル相を均一に形成することができず、相対密度や誘電率の向上効果を得ることが難しくなる。
また、本工程において、コア粒子となるチタン酸バリウム粉末以外にも、必要に応じて、シェル相を形成するための他の材料、すなわち、金属酸化物の原料を予め添加してもよい。このとき、添加されうる他の材料としては、シェル相を構成する金属酸化物種により決定されるが、たとえば、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムアルコキシド、酸化ニオブ(Nb)等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易であり、比較的安価である、酸化ジルコニウムを添加することが好ましい。
ここで、チタン酸バリウム粉末以外に添加されうる他の材料(金属酸化物原料)と、チタン酸バリウム粒子の添加量により、上述のM/MBTを制御することが可能である。
より具体的には、チタン酸バリウム中のチタンの含有量と、金属酸化物原料中に含まれる金属の含有量で、M/MBTを制御することが可能である。
たとえば、最も好ましい形態の一つであるジルコン酸バリウム(BaZrO)を主成分とするシェル相を形成する場合、チタン(Ti)とジルコニウム(Zr)の全量がそれぞれ誘電体セラミックス粒子の形成に用いられるため、酸化ジルコニウム(ZrO)/チタン酸バリウム(BaTiO)を0.25/1のモル比で混合した場合、MBZ/MBT=0.25である誘電体セラミックス粒子を得ることができる。
さらに、上記のようにチタン酸バリウム粉末と金属酸化物原料を混合する際、溶媒を添加してもよい。このとき用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、たとえば、水系溶媒、有機系溶媒を適宜選択することができる。使用可能な溶媒として、たとえば、水(純水);エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。なかでも、後で行われるシェル相形成工程の操作性を考慮すると、水やアルコール溶媒を用いることが好ましい。
上記溶媒を用いてチタン酸バリウム粉末と金属酸化物原料を湿式混合する場合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルにより行われると好ましい。湿式ボールミルにおいてジルコニアボールを用いる場合には、直径1〜10mmの多数のジルコニアボールを用いて8〜24時間、好ましくは10〜20時間湿式混合すると好ましい。
原料となるチタン酸バリウム粉末または上記のようにして得られた金属酸化物原料との混合物をさらに乾燥させ、適当なバインダーを用いてプレス成型してもよい。
このとき使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。添加するバインダーの量は、チタン酸バリウム粉末と金属酸化物原料の全質量(合計質量)に対して、0.01質量%〜10質量%であると好ましく、成型体の密度を向上させるという観点から、0.5質量%〜5質量%であるとより好ましい。
上記バインダーを用いて成型した後は、脱バインダー処理を行う。当該脱バインダー処理は、成型体を300〜800℃に加熱することにより行われると好ましく、より好ましくは、400〜600℃である。
(2)シェル相形成工程(工程(2))
本工程では、上記の工程において準備されたコア粒子に対してシェル相を被覆する。このとき、コア−シェル構造体を形成することができるものであれば、その方法は限定されず、従来公知の方法を採用することができる。たとえば、固相法、液相法、噴霧熱分解法等、種々の方法を適用することができるが、特に、粒径が均一である微細な粒子を得るには、噴霧熱分解法、晶析法、ゾルゲル法、ソルボサーマル法等により合成する方法が好ましく、なかでも、ソルボサーマル法が特に好ましく用いられる。
以下、ソルボサーマル法による本発明の誘電体セラミックス粒子(および誘電体セラミックス)の製造方法の一例について説明する。
ソルボサーマル反応とは、中〜高程度の圧力(通常、0.10〜1,000MPa)と中〜高程度の温度(通常100℃〜1000℃)の下で行われる反応であり、水を溶媒として使用する場合は特に「水熱反応」と呼ばれる。本発明の誘電体セラミックス粒子(および誘電体セラミックス)は、この工程を経ることにより、コア粒子を被覆するシェル相を形成することができる。
この際、上記工程(1)で準備したコア粒子(またはその成型体)に対し、シェル相を形成するための材料がさらに添加される。つまり、上記コア粒子準備工程で添加した金属酸化物原料以外に、シェル相を形成するために必要な元素を含む材料が添加される。ここで添加される材料としては、たとえば、シェル相を構成する金属酸化物種に依存するが、上記工程(1)で添加した金属酸化物原料では補えない元素を含む化合物が挙げられる。当該化合物として、たとえば、バリウム源となる化合物や、カリウム源となる化合物、リチウム源となる化合物等が挙げられる。
上記バリウム源となる化合物の例としては、特に制限されないが、水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)・8HO)等の水酸化バリウム、各種のバリウムアルコキシド、炭酸バリウム、酢酸バリウム、等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いが容易であり、比較的安価である、水酸化バリウム八水和物を添加することが好ましい。
上記カリウム源となる化合物の例としては、特に制限されないが、水酸化カリウム等が挙げられる。また、上記リチウム源となる化合物の例としては、特に制限されないが、水酸化リチウム等が挙げられる。
上記シェル相を形成するための材料の添加量については、特に制限されないが、シェル相を構成する金属酸化物種や、上記工程(1)において添加された金属酸化物原料の種類(組成)に依存して決定される。たとえば、最も好ましい形態の一つであるジルコン酸バリウム(BaZrO)を主成分とするシェル相を形成する場合であって、上記工程(1)において酸化ジルコニウムを添加した場合は、本工程(2)において、当該酸化ジルコニウムに対して、バリウム源となる化合物として最も好ましい材料の一つである水酸化バリウム八水和物を、1.0〜2.0当量(モル比)添加すると好ましい。上記範囲とすることにより、酸化ジルコニウムが残存することなくジルコン酸バリウムに変換され、また、不純物となりうる未反応物の生成を抑制することができる。
このとき用いる溶媒としては、シェル相を構成する材料に応じて、水系溶媒、有機系溶媒を適宜選択することができる。使用可能な溶媒として、たとえば、水(水熱合成);エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。なお、上記溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記溶媒は、容器の腐食などの観点から、非酸性の(すなわち、中性または塩基性の)混合液(反応混合液)とすると好ましい。
上記溶媒の中でも、水およびアルコール系溶媒は、強い極性溶媒であるため、好ましい。さらに、安価という点に加え、より極性が高い溶媒であるという点で、溶媒として水を用いると特に好ましい。ソルボサーマル合成時、極性が高い溶媒を用いることにより、コア粒子とシェル相とがより強固に密着し、界面におけるコア粒子の結晶歪みが大きくなる。
ソルボサーマル反応時の温度は特に限定されないが、150℃〜400℃であると好ましく、200℃〜300℃であるとより好ましい。
また、ソルボサーマル反応を行う時間についても特に限定されないが、好ましくは1〜72時間、より好ましくは5〜50時間、さらに好ましくは10〜30時間である。
ソルボサーマル反応を行う際の圧力は、特に限定されないが、0.10〜4.0MPa程度で行うと好ましい。このような圧力下での反応は、オートクレーブ等の耐圧容器中で行うことができる。
(3)洗浄・乾燥工程
上記工程によりシェル相を形成した後、必要に応じて洗浄・乾燥工程を行ってもよい。本工程は、主として、上記工程(2)により生じた不純物や未反応物を除去するために行われる。したがって、洗浄溶媒は、これらを溶解させることができると共に、生成した誘電体セラミックス粒子に影響しない溶媒が用いられる。たとえば、酢酸水溶液、水(純水)等を用いて洗浄すると好ましい。
また、乾燥条件も特に制限されないが、100〜150℃で乾燥させると好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪誘電体セラミックスの製造≫
(実施例1)
粒径300nmのチタン酸バリウム(BT:BaTiO 品名T−BTO−300:戸田工業株式会社)と酸化ジルコニウム(ZrO 品名UEP−100:第一稀元素化学株式会社)をモル比でZrO:BT=0.25:1.00となるように湿式ボールミル(ジルコニアボール、φ3mm)で16時間混合した(溶媒:純水、固形分濃度30wt%)。得られたスラリーを乾燥させ、乳鉢と乳棒で粉砕し、粉末を得た。当該粉末に対して、PVAバインダーを1質量%の割合となるように添加した。
1cm角の金型を使用して、上記粉末を圧力2tでプレス成型を行い、得られた成型体(ペレット)を500℃で3時間処理し、脱バインダー処理を行った。
上記の通り作製した成型体を25mlのオートクレーブ容器(三愛科学株式会社製:HU−25)に入れ、水酸化バリウム8水和物(Ba(OH)・8HO:キシダ化学株式会社)を成型体中に含まれるZrOと同じモル量の1.2倍添加し、純水を5ml添加した後、乾燥オーブン器にて230℃×18時間の条件で水熱合成処理を行った。
未反応分のBa(BaCOとなっている)を除去するため、取り出した試料を酢酸水溶液(酢酸:水=1:1)により洗浄し、さらに純水で洗浄した後、乾燥した。この一連の操作により、BZ/BTコア−シェル構造を有する誘電体セラミックス(1)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(1)中、BZ/BT=0.25/1.00モル比である。
(実施例2)
チタン酸バリウムと酸化ジルコニウムのモル比を、ZrO:BT=0.5:1.00に変更したこと以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス(2)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(2)中、BZ/BT=0.5/1.00モル比である。
(実施例3)
チタン酸バリウムと酸化ジルコニウムのモル比を、ZrO:BT=0.75:1.00に変更したこと以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス(3)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(3)中、BZ/BT=0.75/1.00モル比である。
(実施例4)
チタン酸バリウムと酸化ジルコニウムのモル比を、ZrO:BT=1.0:1.00に変更したこと以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス(4)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(4)中、BZ/BT=1.0/1.00モル比である。
(実施例5)
水熱合成処理に代わり、エタノールを用いたソルボサーマル合成処理とした(水の代わりにエタノールを溶媒として用いた)こと以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス(5)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(5)中、BZ/BT=0.25/1.00モル比である。
(実施例6)
水熱合成処理に代わり、エタノールを用いたソルボサーマル合成処理とした(水の代わりにエタノールを溶媒として用いた)こと以外は、実施例2と同様にして誘電体セラミックス(6)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(6)中、BZ/BT=0.5/1.00モル比である。
(実施例7)
水熱合成処理に代わり、エタノールを用いたソルボサーマル合成処理とした(水の代わりにエタノールを溶媒として用いた)こと以外は、実施例3と同様にして誘電体セラミックス(7)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(7)中、BZ/BT=0.75/1.00モル比である。
(実施例8)
水熱合成処理に代わり、エタノールを用いたソルボサーマル合成処理とした(水の代わりにエタノールを溶媒として用いた)こと以外は、実施例4と同様にして誘電体セラミックス(8)を得た。なお、当該誘電体セラミックス(8)中、BZ/BT=1.0/1.00モル比である。
(比較例1)
粒径300nmのチタン酸バリウム(BT:BaTiO 品名T−BTO−300:戸田工業株式会社)に対して、PVAバインダーを1質量%の割合となるように添加した。
1cm角の金型を使用して、上記粉末を圧力2tでプレス成型を行い、得られた成型体(ペレット)を500℃で3時間処理し、脱バインダー処理を行った。この一連の操作により、BT粒子からなる比較誘電体セラミックス(1)(比較誘電体セラミックス(1)とも称する)を得た。
(比較例2)
粒径300nmのチタン酸バリウム(BT:BaTiO 品名T−BTO−300:戸田工業株式会社)と、水熱合成法により合成した粒径100nmのBaZrOとを、モル比で1:1の割合となるように湿式ボールミル(ジルコニアボール、φ3mm)で混合した(溶媒:純水、固形分濃度30wt%)。得られたスラリーを乾燥させ、乳鉢と乳棒で粉砕し、粉末を得た。当該粉末に対して、PVAバインダーを1質量%の割合となるように添加した。
1cm角の金型を使用して、上記粉末を圧力2tでプレス成型を行い、得られた成型体(ペレット)を500℃で3時間処理し、脱バインダー処理を行った。この一連の操作により、BT粒子およびBZ粒子からなる比較誘電体セラミックス(2)(比較誘電体セラミックス(2)とも称する)を得た。
(比較例3)
水熱合成法により合成した粒子径50nmのチタン酸バリウムと酸化ジルコニウム(ZrO 品名UEP−100:第一稀元素化学株式会社)をモル比でZrO:BT=0.25:1.00となるように湿式ボールミル(ジルコニアボール、φ3mm)で16時間混合した(溶媒:純水、固形分濃度30wt%)。得られたスラリーを乾燥させ、乳鉢と乳棒で粉砕し、粉末を得た。当該粉末に対して、たのち、PVAバインダーを1質量%の割合となるように添加した。
1cm角の金型を使用して、上記粉末を圧力2tでプレス成型を行い、得られた成型体(ペレット)を500℃で3時間処理し、脱バインダー処理を行った。
上記の通り作製した成型体を25mlのオートクレーブ容器(三愛科学株式会社製:HU−25)に入れ、水酸化バリウム8水和物(Ba(OH)・8HO:キシダ化学株式会社)を成型体中に含まれるZrOと同じモル量の1.2倍添加し、純水を5ml添加した後、乾燥オーブン器にて230℃×18時間の条件で水熱合成処理を行った。
未反応分のBa(BaCOとなっている)を除去するため、取り出した試料を酢酸水溶液(酢酸:水=1:1)により洗浄し、さらに純水で洗浄した後、乾燥した。この一連の作業により、比較誘電体セラミックス(3)(比較誘電体セラミックス(3)とも称する)を得た。
≪評価≫
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、以下の通り、評価した。
(STEM−EDS分析)
上記実施例で得られた誘電体セラミックスについて、FE−STEM−EDS分析を行った。なお、測定は、日本電子株式会社 JM2800を用いて行った。一例として、実施例2による誘電体セラミックス(2)に関し、得られたSTEM像を図1Aに示す。なお、図1B〜1Dには、図1Aと同一視野で測定したTi、Zr、Baのマッピングデータをそれぞれ示す。
その結果、誘電体セラミックス(2)において、チタン酸バリウム粒子(コア粒子)の表面に、ジルコン酸バリウムからなるシェル相が形成されている(コーティングされている)ことが確認された。また、このようなコア−シェル構造が、他の実施例による誘電体セラミックスにおいても同様に形成されていることをSTEM−EDS分析により確認した。
(SEM観察)
上記比較例3で得られた比較誘電体セラミックス(3)について、SEM分析を行った。なお、測定は、日本電子株式会社 JSM−7800Fを用いて行った。得られたSEM像を図2に示す。
その結果、比較誘電体セラミックス(3)では、成型体(ペレット)の表面上にジルコン酸バリウム粒子が観察され、良好なコア−シェル構造は確認されなかった。これは、コア粒子となるチタン酸バリウム粒子の粒径が小さく、当該チタン酸バリウム粒子同士が凝集した結果、ペレット内部でジルコン酸バリウムが合成されず、コア粒子の表面上にジルコン酸バリウムからなるシェル相が形成されなかったものと考えられる。
(XRD測定)
XRD測定により、水熱合成処理またはソルボサーマル合成処理前後のチタン酸バリウムの構造変化を観察した。測定は、X線回折装置(PANalytical、RAYONS Xを用いて行い、線源はCu−Kα、電圧45kV、電流40mAとした。得られた結果から、2θが44〜46°の領域に観測されたピークについて、図3〜図10に示す。
図のXRDスペクトル中、「反応前」とは、水熱合成反応前またはソルボサーマル合成処理前であって、脱バインダー処理後、「反応後」とは、水熱合成反応後またはソルボサーマル合成処理後を示す。その結果、実施例のすべてのサンプルにおいて、反応後のスペクトルのピーク幅が拡大していることから、チタン酸バリウムのコア粒子と、ジルコン酸バリウムのシェル相との界面において、チタン酸バリウムの結晶構造が変化していることが示唆される。より詳細には、XRDスペクトルにより、チタン酸バリウムのコア粒子表面に、ジルコン酸バリウムのシェル相がコーティングされ、シェル相との界面におけるチタン酸バリウムの結晶構造が歪んでいることが示唆される。
(比誘電率測定)
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、導電性ペーストであるDOTITE(登録商標)TYPE D550(藤倉化成株式会社)を塗布し、300℃×15分の条件で電極を焼き付けし、LCRメーター(Agilent社製 4284A 測定条件:1KHz、1.0V)を用いて比誘電率の測定を行った。得られた結果を表1および図11に示す。なお、表中の「−」は、測定できなかったことを示す。
(密度測定)
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、アルキメデス法を用いて密度を測定した。得られた結果を表1に示す。相対密度は、試料の実測密度を理論密度で除することで算出し、このとき、チタン酸バリウムの密度を6.06g/cm、ジルコン酸バリウムの密度を5.52g/cmとして求めた。なお、表中の「−」は、測定していないか、または測定できなかったことを示す。
上記表1より、実施例のすべてにおいて、通常のチタン酸バリウム粒子(比較例1)よりも、誘電率が向上する結果が得られた。また、チタン酸バリウム粒子とジルコン酸バリウム粒子とを単に混合して得られた試料(比較例2)と比較しても、本発明に係る実施例で得られた試料の方が、誘電率が高かった。このような結果は、XRD測定の結果も考慮すると、チタン酸バリウム粒子がジルコン酸バリウムによりコーティングされてコア−シェル構造が形成され、その結果、界面のチタン酸バリウム結晶が歪んだことに起因して、誘電率が向上したためと考えられる。
さらに、ソルボサーマル合成時、溶媒をエタノールとした場合(実施例5〜8)よりも、溶媒を水とした場合(実施例1〜4)の方が、高い誘電率を示す試料が得られた。この理由は、水の方がエタノールよりも極性が大きい溶媒であるため、合成反応における反応性が高くなり、ジルコン酸バリウムシェル相がより強くチタン酸バリウムに密着することでチタン酸バリウム結晶の歪み割合が大きくなったためであると考えられる。
また、チタン酸バリウムに対するジルコン酸バリウムのモル比(MBZ/MBT)が小さくなるほど、比誘電率が向上する傾向があるという結果も示された。
さらに、相対密度を評価したところ、実施例では、相対密度も高い誘電体セラミックスが得られたことが示されている。このように、相対密度が高いこともまた、誘電率の向上に寄与していると考えられる。

Claims (5)

  1. チタン酸バリウムを主成分とするコア粒子と、
    前記コア粒子の表面上に形成された金属酸化物を主成分とするシェル相と、を有し、
    前記コア粒子の粒径は50nmを超えて500nm以下であり、
    前記チタン酸バリウムのa軸方向の格子定数(aBT)に対し、前記金属酸化物のa軸方向の格子定数(a)が、0.5%以上大き
    前記金属酸化物の室温における結晶構造が、ペロブスカイト型であり、
    前記チタン酸バリウムに対する前記金属酸化物の含有モル比(M /M BT )は、1以下である、
    誘電体セラミックス粒子。
  2. 前記チタン酸バリウムに対する前記金属酸化物の含有モル比(M /M BT )は、0.65以下である
    請求項1に記載の誘電体セラミックス粒子。
  3. 前記金属酸化物は、ジルコン酸バリウムである、請求項1または2に記載の誘電体セラミックス粒子。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の誘電体セラミックス粒子を含む、誘電体セラミックス。
  5. 相対密度が90%以上である、請求項4に記載の誘電体セラミックス。
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