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JP6512574B2 - ジェミニ型界面活性剤を分散剤として用いたナノカーボン物質の水性分散液及びその製造方法 - Google Patents
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JP6512574B2 - ジェミニ型界面活性剤を分散剤として用いたナノカーボン物質の水性分散液及びその製造方法 - Google Patents

ジェミニ型界面活性剤を分散剤として用いたナノカーボン物質の水性分散液及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ナノカーボン物質の水性分散液及びその製造方法とそれに用いられる分散剤に関するものである。
カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボン物質は、その優れた電気特性や機械特性、光学特性、電気化学特性、抗酸化作用から、ナノテクノロジーの有力な素材として様々な分野で応用の可能性が検討され、実用化も開始されている。例えば、カーボンナノチューブは高い導電性を有することから電子材料分野で応用され、フラーレンは高いラジカル捕捉能や活性酸素消去能を有し、この特性はスキンケア成分や癌予防効果の観点から注目されており、化粧料、医薬品等への応用が期待されている。
ナノカーボン物質がより少量で特性を十分に発揮し各種用途への応用を容易にするためには、ナノカーボン物質を分散媒(水又は有機溶媒等)へ均一に分散させた分散液とすることが求められている。しかし、ナノカーボン物質は、その大きさがナノサイズであるが故に凝集する傾向が強く、単純な分散媒への分散は困難なことが多い。
さらに、カーボンナノチューブは、一本一本はアスペクト比の大きいチューブ状の物質であるが、チューブ同士が絡まりあった状態で凝集し塊状の粉末として存在しており、束状のカーボンナノチューブ一本一本のレベルまでほぐして、本来の特性が発揮するように分散させる必要があった。フラーレンは、多数の炭素原子がかご状に結合した球状の中空構造を持ち、極性が極めて低く非水溶性の溶媒でしか取扱うことができず、その用途開発に大きな制約があった。
ナノカーボン物質の分散方法としては、ナノカーボン物質自体を修飾して分散させる方法、界面活性剤、高分子化合物等の分散剤を用いて分散させる方法の大きく2つに分類される。
ナノカーボン物質自体を修飾して分散させる方法(特許文献1、2)は、化学修飾しているため本来有している立体的構造や物理的特性を損なうという問題があり、未変性のナノカーボン物質を利用したい場合には好ましくない。
分散剤を用いて分散させる方法では、例えば、カーボンナノチューブの分散剤として、カルボキシメチルセルロース及びその塩(CMC)等の高分子分散剤やドデシル硫酸エステルナトリウム塩(SDS)等の低分子型の界面活性剤が用いられている(特許文献3)。しかし、SDS等の低分子型の界面活性剤は高分子分散剤と比較すると分散力や分散安定性が劣り、カーボンナノチューブが低濃度でないと分散効果を発揮せず、高濃度で分散することができない。
CMC等の高分子分散剤は、比較的分散力があり、汎用的にカーボンナノチューブの分散剤として用いられているが、分散媒に水を用いた場合、高分子分散剤は水に対する溶解性が高くなくダマになってしまうため、予め均一に溶解させた状態でカーボンナノチューブの分散を行うことが望ましく、高分子分散剤を完全に溶解させるためには大きなエネルギーと時間を要するとともに、カーボンナノチューブの濃度に依存して添加量を増加させる必要があり、水溶液の粘度が高くなってしまうなど、ハンドリング性に課題がある。
また、カーボンナノチューブ分散工程では、高分子分散剤水溶液のカーボンナノチューブに対する濡れ性が低いために、カーボンナノチューブが容器壁面に付着してしまい、より大きなスケールで分散を行う場合、均一に分散できない可能性があるとともに、機械的分散力が、低エネルギーではカーボンナノチューブの凝集あるいは高濃度分散が困難であるため、高エネルギーを加えなければならず、分散工程中にカーボンナノチューブの欠陥が生じやすく、ネットワーク形成が損なわれ、カーボンナノチューブの特異な特性の一つである導電性が低くなってしまう虞がある。
更に、カーボンナノチューブの応用例である透明導電性フィルムを作製する際、高分子分散剤を用いたカーボンナノチューブの水性分散液はPETフィルム等の基材に対する濡れ性が低く、はじきが生じてしまうため、均一な塗布膜を形成させる事は容易ではない。
また、特許文献4には、疎水部−親水部−疎水部の構造を有する化合物をアルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキルエーテル硫酸塩等の分散剤と併用することでカーボンナノチューブの水性分散液の安定性を高める技術が提案されているが、カーボンナノチューブの含有量が多くなると分散安定性が低下する懸念があるとともに、分散剤が金属塩であるため電子材料分野への適用が困難であり使用できる分野が限られてしまう。
一方、フラーレン水分散液の調製法には、フラーレンをトルエン等の有機溶媒に溶解させた後、水を加え超音波照射と同時に有機溶媒を留去する方法(特許文献5)があるが、低濃度であるとともに、溶媒を完全に除去することが困難であるという問題があった。
その他、特許文献6、7には、有機溶媒を含まず、ポリビニルピロリドン等の両親媒性高分子化合物をフラーレンの分散剤として用いたフラーレン可溶化組成物が提案されている。特許文献8には、疎水基と親水基とを複数有する特定の両親媒性化合物を利用して、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレン等を安定して分散する技術が提案されている。
特開2004−002156号公報 特開平9−235235号公報 特開2010−254546号公報 特開2003−238126号公報 特開2001−348214号公報 特開2005−060380号公報 国際公開第2003/099716号 特開2012−148970号公報
しかしながら、ナノカーボン物質の分散性に優れ、ハンドリング性が良好で、かつ分散液製造後のカーボンナノチューブの欠陥低減やネットワーク形成を促進することができたり、高濃度フラーレン分散液の透明性や抗酸化作用を向上することができる分散剤がなく、このような性能を有する新規な分散剤が望まれている。そして以上のような課題については、カーボンナノチューブやフラーレンに代表されるナノカーボン物質一般にも同様のことが言える。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、ハンドリング性を損なうことなく水性溶媒にナノカーボン物質を均一に分散でき、分散液製造後のナノカーボン物質の欠陥低減やネットワーク形成を促進することもできるナノカーボン物質の水性分散液及び水性分散液の製造方法とそれに用いられる分散剤を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のナノカーボン物質の水性分散液用の分散剤は、下記式(I):
(式中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、Rは炭素数1〜22のアルキレン基、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。但し、R及びRはR−CH−CH−R−部分の炭素数が9〜25となるように選択される。X及びYは、(1)XとYのいずれもが−O−SO(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)、(2)XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)、(3)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OM(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)、(4)XとYのいずれか一方が−OPOであり(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)他方が水酸基、(5)XとYのいずれか一方が−NR6+であり(R、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、又はヒドロキシエチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、又はジヒドロキシプロピル基を示し、Aはハロゲンを示す。)他方が水酸基、又は(6)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHR−NR・HX(Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルチオアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基にチオール基が結合したチオール含有アルキル基、フェニル基、炭素数1〜3で1級もしくは2級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシフェニル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。Xは塩となる対アニオンを示す。)である。Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−、又は−O−を示す。)で表わされる。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液は、式(I)で表わされる分散剤及びナノカーボン物質を含有する。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液の製造方法は、水性溶媒中に、式(I)で表わされる分散剤及びナノカーボン物質を混合し分散処理することを特徴としている。
本発明によれば、カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボン物質の分散性に優れ、一般的な分散剤ではカーボンナノチューブ等のナノカーボン物質を分散することができない低添加量であっても、カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボン物質が凝集・沈降せず効果的に分散することが可能である。また、ハンドリング性に優れ、低粘度で高濃度のナノカーボン物質の水性分散液を得ることが可能で、分散剤水溶液のナノカーボン物質に対する濡れ性が高く、分散工程中における壁面等へのナノカーボン物質の付着も抑制できる。更に低エネルギーでの高濃度分散が可能であることから、欠陥が少なく、良好なネットワークを形成する特徴や透明性や抗酸化作用が向上する特徴を有するナノカーボン物質の水性分散液が得られる。
実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、SW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件10W、10分)の分散直後と1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、SW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件30W、10分)の分散から1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、DW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件10W、10分)の分散直後と1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、MW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件10W、10分)の分散直後と1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、MW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件30W、10分)の分散から1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、MW−CNT濃度1.0質量%、超音波分散条件10W、10分)の分散直後と1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、MW−CNT濃度1.0質量%、超音波分散条件30W、10分)の分散直後と1日後の光学顕微鏡写真である。 実施例(分散剤1)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 実施例(分散剤3)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 比較例(分散剤10)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 比較例(分散剤12)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 比較例(分散剤13)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 比較例(分散剤14)のフラーレンの水性分散液(分散剤濃度1.0質量%、フラーレン濃度1.0質量%、薄膜旋回型高速ミキサー分散条件:周速40m/s、60秒×5回)の分散直後の写真(目視、光学顕微鏡)である。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、MW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件10W、10分)の乾燥試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真下の数値は倍率を示す。 実施例及び比較例のカーボンナノチューブの水性分散液(分散剤濃度0.1質量%、MW−CNT濃度0.1質量%、超音波分散条件30W、10分)の乾燥試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。写真下の数値は倍率を示す。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明では上記式(I)で表されるジェミニ型界面活性剤を分散剤として用いている。このジェミニ型界面活性剤は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸や不飽和脂肪族アルコール等を原料に用いて、その末端のカルボキシル基やアルコール由来のアルコキシド等の官能基に、脂肪族アルコールや脂肪族アミン、ハロゲン化アルキル等のアルキル基含有化合物を導入して、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アルキルエーテル基等とした炭化水素鎖と、不飽和脂肪酸や不飽和脂肪族アルコール等の原料由来の炭化水素鎖との2鎖疎水基を有し、かつ、原料の二重結合部位がジェミニ型界面活性剤で言う連結基となり、その二重結合部分を酸化して得られた2つの水酸基部分の少なくともいずれかに、硫酸エステル又はその塩、アルキレンオキシド、コハク酸モノエステル又はその塩、アンモニウム塩、リン酸エステル又はその塩、あるいはアミノ酸を導入した2つの親水基を有するジェミニ型の分子構造を備えている。
式(I)において、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。
アルキル基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基等が挙げられる。
これらの中でも、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ノナデシル基が好ましい。
式(I)において、Rは炭素数1〜22のアルキレン基を示す。
アルキレン基Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ぺンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−テトラデシレン基、n−ペンタデシレン基、n−ヘキサデシレン基、n−ヘプタデシレン基、n−オクタデシレン基、n−ノナデシレン基、n−イコシレン基、n−ヘンイコシレン基、n−ドコシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−ペンタデシレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基がより好ましい。
式(I)において、R及びRは、−R−CH−CH−R部分の炭素数が9〜25となるように選択される。
−R−CH−CH−R部分としては、例えば、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−CH、−CH−CH−CH−(CH−CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH13CH、−(CH−CH−CH−(CH12CH、−(CH−CH−CH−(CH10CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH10−CH−CH−(CHCH、−(CH11−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH12−CH−CH−(CHCH、−(CH13−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CH18CH、−(CH15−CH−CH−(CHCH、−(CH15−CH−CH−(CHCH等が挙げられる。
これらの中でも、−CH−CH−CH−(CH−CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH11CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−CH−CH−CH−(CH13CH、−(CH−CH−CH−(CH12CH、−(CH−CH−CH−(CH10CH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH−CH−CH−(CHCH、−(CH10−CH−CH−(CHCH、−(CH11−CH−CH−(CHCHが好ましい。
式(I)において、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
これらの中でも、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
式(I)において、X及びYは、上記(1)〜(5)のいずれかの基を示す。
上記(1)において、X及びYは、XとYのいずれもが−O−SO(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)である。
の塩となる対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
のアルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
の第2族元素イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。
の遷移元素イオンとしては、例えば、イットリウムイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、銀イオン等が挙げられる。
の第12族元素イオンとしては、例えば、亜鉛イオン、カドミウムイオン等が挙げられる。
のアンモニウムイオンとしては、例えば、アンモニア、ヒドロキシアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン由来のアンモニウムイオン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピロールなどの環状アミン由来のアンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウムイオン等が挙げられる。
以上の対カチオンの中でも、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
上記(2)において、X及びYは、XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)である。
AOのアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが用いられ、これらは併用することができる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドを併用した場合、ポリオキシアルキレン鎖はエチレンオキシドとプロピレンオキシドがランダムに付加重合したものであってもよく、ブロック状に付加重合したものであってもよい。
式(I)で表される分散剤の水酸基1個当たりのアルキレンオキシドの付加重合モル数は、100モル以下であるが、50モル以下が好ましく、2つの水酸基へのアルキレンオキシドの付加重合の合計モル数は、1〜200モルであるが、1〜100モルが好ましい。
各水酸基にアルキレンオキシドを付加重合させて形成されるポリオキシアルキレン鎖は、アルキレンオキシド付加モル数が同モル数であっても異なるモル数であってもよく、異なるアルキレンオキシドが付加重合して構成されていてもよい。
上記(3)において、X及びYは、XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OM(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)である。
の塩となる対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。これらの対カチオンとしては、上記Mに例示したものを用いることができる。
以上の対カチオンの中でも、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンやアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等に由来するアンモニウムイオンが好ましい。
上記(4)において、X及びYは、XとYのいずれか一方が−OPOであり(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)他方が水酸基である。
の塩となる対カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン等の無機陽イオン又は有機アンモニウムイオン等が挙げられる。
上記(5)において、X及びYは、XとYのいずれか一方が−NR6+であり(R、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、又はヒドロキシエチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、又はジヒドロキシプロピル基を示し、Aはハロゲンを示す。)他方が水酸基である。
Aのハロゲンとしては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素が挙げられる。
上記(6)において、X及びYは、XとYのいずれもが−OC(=O)−CHR−NR・HX(Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルチオアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基にチオール基が結合したチオール含有アルキル基、フェニル基、炭素数1〜3で1級もしくは2級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシフェニル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。Xは塩となる対アニオンを示す。)である。
が水素原子以外の場合、Rに結合する炭素原子は不斉炭素中心であり、D体、L体、又はD,L体混合物を示す。
の炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
の炭素数1〜4のアルキルチオアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、例えば、−CHCH―S−CH等が挙げられる。
の炭素数1〜3のアルキル基にチオール基が結合したチオール含有アルキル基は、アルキル基が直鎖状又は分岐状であり、例えば、−CHSH等が挙げられる。
の炭素数1〜3で1級もしくは2級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキメチル基、n−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、n−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
及びRは、水素原子同士の組み合わせ、水素原子とメチル基の組み合わせ、メチル基同士の組み合わせが好ましい。
塩となる対アニオンXとしては、例えば、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
ハロゲン化物イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
カルボン酸イオンとしては、例えば、炭素数1〜4のモノカルボン酸イオンやジカルボン酸イオン(ヒドロキシカルボン酸イオンを含む。)、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸イオン、芳香族カルボン酸イオン等が挙げられる。具体的には、例えば、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、マレイン酸イオン、リンゴ酸イオン、コハク酸イオン、グリコール酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(キナ酸)イオン、安息香酸イオン、ピロリドンカルボン酸イオン等が挙げられる。
以上のような構成の式(I)で表わされる分散剤は、例えば、次の方法によって製造することができる(特開2009−007340号公報、特開2010−037308号公報、特開2010−070467号公報、特開2010−138119号公報、特開2010−138120号公報、特開2010−229223号公報、特開2011−132418号公報、特開2011−157354号公報、特開2011−190184号公報、特開2011−236347号公報、特開2012−062246号公報を参照)。
まず式(I)に対応するXY部分が水酸基であるジヒドロキシ化合物、例えばジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステル、(ジヒドロキシアルキル)脂肪酸エステル、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルアミド、(ジヒドロキシアルキル)アルキルエーテルを合成する。
一般には、二重結合を一個有する不飽和脂肪酸と脂肪族アルコールとの反応物である不飽和脂肪酸アルキルエステル、二重結合を一個有する不飽和脂肪族アルコールと脂肪酸との反応物であるアルケニル脂肪酸エステル、二重結合を一個有する不飽和脂肪酸と脂肪族アミンとのアミドである不飽和脂肪酸アルキルアミド、二重結合を一個有する不飽和脂肪族アルコールとハロゲン化アルキルとのエーテル化物であるアルケニルアルキルエーテル等の不飽和化合物を、過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物と反応させて二重結合を酸化し、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基を作用させ、水酸基を導入することにより、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステル、(ジヒドロキシアルキル)脂肪酸エステル、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルアミド、(ジヒドロキシアルキル)アルキルエーテル等のジヒドロキシ化合物を合成する。
あるいは、最初に不飽和脂肪酸に過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物を反応させて二重結合を酸化し、水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基を作用させ、水酸基を導入することによりジヒドロキシ脂肪酸を合成し、このジヒドロキシ脂肪酸と、脂肪族アルコールを酸触媒又はアルカリ触媒下でエステル合成反応を行い、あるいは、このジヒドロキシ脂肪酸と脂肪族アミンを、ジシクロヘキシルカルボンジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド及びその塩酸塩、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩、ジフェニルホスホリルアジド等の縮合剤、あるいはこれらの縮合剤とともに、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)や3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン等の添加剤を用いて、縮合してアミド結合を形成してジヒドロキシ化合物を得ることもできる。
式(I)におけるX及びYが(1)の化合物は、上記ジヒドロキシ化合物の水酸基に、三酸化硫黄ピリジン錯体を反応させることにより得ることができる。更にMを水素イオンから塩となる対カチオンとする場合には、得られた化合物にブタノールを加え、対応するアルカリ金属、第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン等の水酸化物やアミン等と中和反応させ、水洗することにより得ることができる。その後、有機層を留去して得た結晶を必要に応じてメタノール、エタノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いた再結晶等で精製してもよい。
式(I)におけるX及びYが(2)の化合物は、上記ジヒドロキシ化合物の水酸基に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合させて得ることができる。
式(I)におけるX及びYが(3)の化合物は、上記ジヒドロキシ化合物を無水コハク酸と反応させることにより得ることができる。
更にMを水素イオンから塩となる対カチオンとする場合には、例えば、得られた化合物を水やエチルアルコール等の溶媒中で、対応するアルカリ金属や第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン等の水酸化物やアミン等と中和反応させることにより得ることができる。
式(I)におけるX及びYが(4)の化合物は、上記ジヒドロキシ化合物に有機溶媒中でポリリン酸を反応させ、二重結合を開いた位置にリン酸基と水酸基とを隣接して導入することにより得ることができる。更にMを水素イオンから塩となる対カチオンとする場合には、得られた化合物を、アミンやアルカリを加えて中和し、水洗することにより得ることができる。またシリカゲルを固定相とし、クロロホルム・メタノール混合溶媒を移動相とするカラムクロマトグラフィー等によって精製してもよい。
式(I)におけるX及びYが(5)の化合物は、1個の二重結合を有する炭素数10〜26の不飽和脂肪酸と、炭素数1〜20のアルキルアミンとの反応により得られる不飽和脂肪酸アルキルアミドの二重結合部分を一旦エポキシ化した後、二級アミンを反応させ、アミノ基と水酸基を隣接して導入したN−アルキル(もしくはN−ヒドロキシアルキル)アミノヒドロキシ脂肪酸アルキルアミドと、ハロゲン化アルキル(水酸基を持つものを含む)との反応により得ることができる。
式(I)におけるX及びYが(6)の化合物は、上記ジヒドロキシ化合物と、HOC(=O)−CHR−NR(R〜Rは前記と同義である。)で表されるアミノ酸をN−保護したN−保護体とのエステル合成反応を触媒の存在下で行い、その後、脱保護することにより得ることができる。チオール基、ヒドロキシ基を有するアミノ酸を用いる場合は、チオール基、ヒドロキシ基も保護して反応に用いる。
例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒中で、上記ジヒドロキシ化合物であるジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルと、2〜5倍mol当量のN−保護したアミノ酸とを、2〜5倍mol当量の1−エチル−3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、0.01〜2倍mol当量の4−ジメチルアミノピリジン存在下に、窒素雰囲気下、室温で12〜48時間反応させる。
次いで塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水の順で有機層の洗浄・抽出操作を行い、その後有機層を留去して粘体を得た後、脱保護する。脱保護は従来より知られている方法によって行うことができる。例えば、N−Boc保護したアミノ酸を用いた場合は、4N 塩酸/酢酸エチル溶液を加えて室温で0.5〜6時間反応させて脱保護し、濃縮、精製することによってXが塩化物イオンである式(I)の分散剤が得られる。塩となる対アニオンXを塩化物イオンから他のアニオンにする場合には、イオン交換等の従来より知られている方法によって行うことができる。例えば、Xが塩化物イオンである化合物と、目的の化合物のアニオンに対応する無機酸もしくは有機酸とを、水中又は有機溶媒中でXが塩化物イオンである化合物に対して等モル量のトリエチルアミンやピリジン等の塩基と共に反応させる。反応温度と反応時間は原料の種類等にもよるが、例えば、室温下、1日程度で反応させることにより、目的とする式(I)の分散剤を得ることができる。
アミノ酸HOC(=O)−CHR−NRとしては、グリシン、N−メチルグリシン、N,N−ジメチルグリシンやアルキル基を側鎖に持つアミノ酸、アルキルチオアルキル基を側鎖に持つアミノ酸、チオール含有アルキル基を側鎖に持つアミノ酸、フェニル基を側鎖に持つアミノ酸、ヒドロキシアルキル基を側鎖に持つアミノ酸、ヒドロキシフェニル基を側鎖に持つアミノ酸等が挙げられる。Rが水素原子以外のアミノ酸の場合、D体、L体、又はD,L体混合物であってもよい。
これらの中でも工業的に入手しやすく、親水基部分であるため疎水的になりすぎず、構造が立体的に嵩高くない構造のアミノ酸が好ましく、このようなアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、セリン、トレオニン、システインが挙げられる。
上記アミノ酸のN−保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Z又はCbz)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)等が挙げられる。ヒドロキシ基の保護基としては、例えば、ベンジルエーテル基(Bzl)、ターシャルブチル基(t−Bu)、p−メトキシベンジルエーテル基(PMB)、メトキシメチルエーテル基(MOM)、シリルエーテル基、テトラヒドロピラニルエーテル基(THP)等が挙げられる。チオール基の保護基としては、例えば、p−メトキシベンジルエーテル基(PMB)、4−メチルベンジル基、トリチル基(Trt)、アセトアミドメチル基(Acm)、ターシャルブチル基(t−Bu)等が挙げられる。
N−保護されたアミノ酸は、市販品を用いることができる。あるいは、入手したアミノ酸をN−保護することもできる。例えば、N−Boc保護は次のようにして行うことができる。アミノ酸をジオキサン、NaOH(2当量)水溶液に溶かし、激しく攪拌しながらBoc無水物(1.1当量)をゆっくり滴下する。反応終了後、t−ブタノールを除去するために反応溶液をある程度まで濃縮した後、溶液を酸性にして抽出し、有機層を濃縮して得られた粗結晶をエーテルで洗浄して得られたN−Bocアミノ酸を用いることができる。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液は、式(I)で表わされる分散剤及びナノカーボン物質を含有する。
本発明に用いられるナノカーボン物質としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ナノグラフェン、フラーレンC60、フラーレンC70等のフラーレンを挙げることができる。ナノカーボン物質は、炭素原子の共有結合によって形成する六員環グラファイト構造の一層(グラフェンシート)からなるナノサイズの形状を持つ物質あるいは、炭素原子の共有結合によって形成する五員環および六員環からなる閉殻空洞状の物質である。
ナノカーボン物質の一種であるカーボンナノチューブは、グラフェンシートが丸まって円筒の形状をしたナノカーボン物質である。その種類としては、一層のみからなる単層カーボンナノチューブ、二層からなる二層カーボンナノチューブ、同心円状にカーボンナノチューブが重なった構造の多層カーボンナノチューブがある。その直径は、概ね1〜100nmで、長さは概ね1nm〜10μmのものが使用できる。カーボンナノチューブの製法も特に限定されるものではなく、例えば、炭素アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長(CVD)法、直噴熱分解合成(DIPS)法、CoMoCAT(R)法、HiPco(R)法、スーパーグロースCVD法等によるものを用いることができる。また、カーボンナノホーンは、カーボンナノチューブのようにグラフェンシートが丸まった形状であるが、真っ直ぐな円筒状ではなくチューブの先端が閉じてホーン(角)の形状をしたナノカーボン物質である。ナノグラフェンは、ナノサイズのグラフェンシートそのものであり、1原子の厚みしかない薄膜形状のナノカーボン物質である。フラーレンとは、多数の炭素原子がかご状に結合した球状の中空構造を持つナノカーボン物質である。
本発明におけるナノカーボン物質としては、フラーレンの他、グラフェンシートからなるナノサイズの形状を持つ物質であれば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ナノグラフェンのいずれも用いることができ、その形状、大きさ、製造方法は特に限定されるものではない。また、それらの混合物でもすべて使用することができる。本発明におけるナノカーボン物質としては、単層、二層、多層のカーボンナノチューブ、フラーレンC60であることが好ましい。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液における式(I)で表わされる分散剤の使用濃度は、特に限定されるものではないが、ナノカーボン物質の水性分散液の利用可能性、分散安定性等を考慮すると、ナノカーボン物質に対して10〜2000質量%が好ましく、30〜1500質量%がより好ましく、80〜1000質量%が特に好ましい。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液におけるナノカーボン物質の濃度は、特に限定されるものではないが、ナノカーボン物質の水性分散液の利用可能性、分散安定性等を考慮すると、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液における水性溶媒は、水を単独で使用することができるが、水にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、アセトン等のケトン類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の酸、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等を混合して用いてもよい。これらの中でも、取り扱い性や環境面を考慮すると、水単独か、水を主成分とする水性溶媒が好ましい。
また、本発明のナノカーボン物質の水性分散液には、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて塩、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、界面活性剤等を添加してもよい。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液を製造する方法は、水性溶媒中に、式(I)で表わされる分散剤及びナノカーボン物質を混合し、分散処理することにより得られる。
ナノカーボン物質を水性溶媒中に分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、超音波ホモジナイザー等による超音波分散処理、撹拌ホモジナイザーによる高速撹拌分散処理、薄膜旋回型高速ミキサー等による撹拌分散処理、粉砕媒体を用いた撹拌ミル等の粉砕分散処理、ジェットミルによる分散処理及び高剪断撹拌による分散処理等が挙げられるが、ナノカーボン物質にダメージを与えない分散方法を用いることが好ましい。超音波ホモジナイザーを用いた分散処理の場合は、カーボンナノチューブの切断等を伴わない程度の出力であることが好ましい。例えば、出力は100W以下が好ましく、50W以下がより好ましく、10〜30Wが特に好ましい。また、超音波を照射する時間は、カーボンナノチューブの量及び分散剤の種類等により適宜設定すればよいが、例えば、1分以上3時間以下が好ましく、10分以上1時間以下がより好ましい。
分散剤やナノカーボン物質等の混合方法も特に制限はなく、必要量を混合後、分散処理を行えばよいが、予め、それぞれの試薬の希釈溶液を調製してから混合してもよい。
超音波処理や攪拌処理によって得た分散液は、遠心分離法によって、例えばカーボンナノチューブの場合は束状のカーボンナノチューブやアモルファスカーボン、金属触媒等を沈殿させ、本発明のナノカーボン物質の水性分散液を上清として回収できる。あるいは、超音波処理や攪拌処理によって得た分散液を精密ろ過膜等によってろ過し、本発明のナノカーボン物質の水性分散液をろ液として回収できる。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液の粘度は、ナノカーボン物質の水性分散液の利用可能性、例えば塗布膜の均一性や膜厚の制御等を考慮すると、前記のような分散剤及びナノカーボン物質の濃度範囲で1mPa・s以上10mPa・s未満が好ましく、1mPa・s以上3mPa・s未満がより好ましい。
本発明のナノカーボン物質の水性分散液は、例えば、単層カーボンナノチューブまたは二層カーボンナノチューブの水性分散液を透明導電性材料として、また多層カーボンナノチューブの水性分散液を塗料、複合材料、潤滑剤、熱伝導性媒体として、またフラーレンの水性分散液を磁性記録媒体、電子部品材料、光学フィルム、化粧品、医薬品等の各種の分野への利用が期待できる。
例えば、基材に塗布して成膜することで、基材表面の導電性を高めることができる。本発明のナノカーボン物質の水性分散液によれば、束状または塊状のナノカーボン物質をほぐして分散することが可能であることから、この分散液を塗布して成膜することで導電性、透明性・紫外線吸収能が高い薄膜が得られる。
また、本発明のフラーレンの水性分散液によれば、フラーレンを均一に分散することが可能であることから、この分散液を基材に塗布して成膜することで紫外線吸収性能、抗酸化作用の高い薄膜が得られる。
基材としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂等の樹脂や、鉄、鋼、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、ステンレス、その他合金等の金属、硼酸ガラス、パイレックス(R)、石英ガラス等のガラス等が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではないが、ディップコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート等の塗布方法を、基材の形状等に合わせて選択することができる。本発明のナノカーボン物質の水性分散液は、いずれの塗布方法を用いても塗りムラが少なく基材への均一な塗布が可能であるが、例えば、ディップコートならば引き上げ速度の調整、スピンコートならば滴下量と回転数の調整、ロールコートならば塗布厚みの調整、スプレーコートならば塗布量の調整によって、各種の基材に均一に塗布することが可能である。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[カーボンナノチューブ及びフラーレンの水性分散液の調製]
実施例1〜28では分散剤として次の分散剤1〜8を用いた。分散剤1〜8は公知の方法に準じて合成した。
比較例1〜34では分散剤として次の分散剤9〜14を用いた。
分散剤9 :ドデシル硫酸ナトリウム(SDS:関東化学社製、製品番号:37203
−31)
分散剤10:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC:WAKO社製、販売元
コード:039−01335)
分散剤11:アセチレングリコールEO30モル付加体(信越化学製)
分散剤12:特開2012−148970製造例1記載化合物
分散剤13:デオキシコール酸ナトリウム(DOC:TCI製、製品コード:C031
6)
分散剤14:ポリビニルピロリドン 分子量40,000(PVP:TCI製、製品 コード:P0472)
カーボンナノチューブとして、単層カーボンナノチューブ(SW−CNT:Aldrich社製、製品番号:704113)、二層カーボンナノチューブ(DW−CNT:Aldrich社製、製品番号:637351)、多層カーボンナノチューブ(MW−CNT:WAKO社製、販売元コード:329−43383)を用いた。
フラーレンとして、フラーレンC60(TCI社製、製品コード:B1641)を用いた。
表1〜表3の評価では、分散剤及びカーボンナノチューブ(SW−CNT、DW−CNT、MW−CNT)を表1〜表3に示す濃度で使用し、分散剤水溶液にカーボンナノチューブを添加後、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、Sonifier 250D)を用いて5℃、10W(低出力)又は30W(高出力)、20kHz、10分にて分散し、その後、超遠心分離機(KUBOTA社製、7780II)を用いて10000rpm、10分にて遠心分離を行い、上澄み液をカーボンナノチューブの水性分散液(以下、「CNT分散液」とも言う。)とした。また、分散から1日後の評価を行う時は、再度同様に遠心分離を行い、上澄み液をCNT分散液とした。
表4の評価では、分散剤及びカーボンナノチューブ(MW−CNT)を表4に示す濃度で使用し、分散剤水溶液にカーボンナノチューブを添加後、超音波洗浄機(ASONE VS−F100、50kHz、100W)を用いて5分間超音波を照射した。その後、25℃にて24時間インキュベーションを行った。孔径1μmのろ紙を用いてろ過を行い、未分散のカーボンナノチューブを除去し、ろ液をCNT分散液とした。
表5〜9の評価では、分散剤及びカーボンナノチューブまたはフラーレンを表5〜9に示す濃度で使用し、分散剤水溶液にナノカーボン物質を添加後、薄膜旋回型高速ミキサー(PRIMIX社製、フィルミックス40−L型)を用いて周速40m/s、60秒または60秒×5回にて分散し、その後、超遠心分離機(KUBOTA社製、7780II)を用いて遠心分離を行い、上澄み液をナノカーボン物質の水性分散液とした。カーボンナノチューブ水性分散液の遠心分離は10000rpm、10分、フラーレン水性分散液の遠心分離は5000rpm、5分で行った。また、分散から1、3、7日後の評価を行う時は、再度同様に遠心分離を行い、上澄み液をナノカーボン物質の水性分散液とした。
[ナノカーボン物質の水性分散液の評価]
1.分散性の評価1(紫外−可視吸収スペクトル測定及び光学顕微鏡観察)
これらのナノカーボン物質分散液について、紫外−可視吸収スペクトル測定及び光学顕微鏡観察より分散性の評価を行った。表1及び表2では、分散剤1、分散剤9、分散剤10を用いた場合について評価を行い、紫外−可視吸収スペクトル測定は、JASCO社製、V−550を用いて分散直後と1日後のCNT分散液の300nm、424nm、500nmでの吸光度を測定した。光学顕微鏡観察はZEISS社製、AxioCam MRC(明視野、倍率:1600倍)を用いて行った。表4では、分散剤1〜4、分散剤9、分散剤10を分散剤に用いた場合について、分散直後のCNT分散液の424nm、500nmでの吸光度を測定した。表7では、分散剤1、6、8、10、12〜14を分散剤に用いた場合について分散直後のフラーレン分散液の低波長側(260nm〜280nmのλmax)、高波長側(340nm〜360nmのλmax)、660nmでの吸光度を測定した。表8では、分散剤1、3、10、12〜14を分散剤に用いた場合について分散直後のフラーレン分散液の低波長側、高波長側、660nmでの吸光度を測定した。なお、吸光度の値が高いほどCNTが高濃度で分散していることを示し、分散性が良好である。また、660nmにおける吸光度は、分散液の濁度を示しており、吸光度が高いと分散液は濁っている事を示している。表7、8にフラーレン分散液中のフラーレン粒子の平均粒径およびフラーレンの濃度を示した。フラーレン粒子の平均粒径は、動的光散乱(DLS、ゼータ電位粒径測定システム、大塚電子製、ELS−Z2)法により測定した重量分布から算出した平均粒径を示した。フラーレンの濃度は、ナノカーボン物質分散液20μLを550℃で窒素ガスをフローさせながら30分加熱して溶媒および分散剤を除去した後、残渣の質量から容器の乾燥質量を差し引く事で、分散液中のナノカーボン濃度を算出した。
紫外−可視吸収スペクトル測定の結果を表1、表2、表4、表5、表7及び表8に、光学顕微鏡観察の結果を図1〜図13に示す。
表1より、低出力条件下で分散を行ったところ、分散剤1は分散剤9及び分散剤10と同等以上の分散力を有していた。とりわけ、カーボンナノチューブの中でも凝集力が極めて高いSW−CNTを分散させた場合、分散剤1は分散剤9及び分散剤10と比較して非常に優れた分散力を有しており、更に分散1日後の短期分散安定性においては分散剤9より優れ、分散剤10と同等の分散安定性を有していた。
表2より、高出力条件下で分散を行ったところ、分散剤1は分散性が良好であることが判明した。
表4より、分散剤2〜4も分散性が良好であることが判明した。
表5より、薄膜旋回型高速ミキサーを用いて分散を行った場合も、分散剤1、3、5〜8の分散性が良好であることが判明した。
表7より、フラーレンの分散についても、分散剤1、6、8は分散性が良好であることが判明した。
表8より、分散剤及びフラーレンの濃度を1.0質量%とし、撹拌回数を5回に増加した場合、全体的に低波長側および高波長側の吸光度は高くなったが、濁度を示す660nmにおける吸光度は、分散剤1は0.33であったのに対し、比較物質では1.5以上であり、分散剤10(CMC)や分散剤14(PVP)の高分子分散剤に至っては3〜4と非常に高く、分散剤1は比較例より顕著に低い値である事がわかった。分散液の外観を比較すると、分散剤1を用いた時は透明度の高い分散液を得る事が出来ているが、比較例では非常に濁った分散液が得られている(図8〜図13)。また、分散1週間後の660nmにおける吸光度を比較すると、分散剤1では0.1しか減少しておらず、ほとんど変化していないが、分散剤12〜14では大きく減少している事から、分散剤1のフラーレン分散安定性の高さが実証された。
分散直後の分散液中のフラーレン濃度を比較すると、分散剤1では2.55μg/μLと分散剤10、14よりも高濃度で分散されている事が分かった。分散剤12、13は濃度が高く算出されたが、光学顕微鏡写真から凝集体が多い事が観察された。従って濃度にムラがあるため見かけ上濃度が高くなったと考えられるが、7日後の濃度が高くなったものについても同様の理由によるものと考えられる。
これらの事から、分散剤1を用いるとフラーレンを高濃度でも細かくかつ均一に分散できることが示された。
図1〜13より分散剤1は、比較例に挙げた分散剤と比べて凝集がほとんど観察されず、良好に分散していることが確認された。特に、図7に示した高出力条件下でかつCNT濃度が高い条件の時、分散剤1は良好に分散しているが、分散剤10は明らかに凝集していることが観察された。図8〜13に示した薄膜旋回型高速ミキサーを用いてフラーレンの分散を行った条件の時も、分散剤1は良好に分散しているが、比較例に挙げた分散剤では明らかに凝集していることが観察された。
2.分散性の評価2(走査型電子顕微鏡(SEM))
分散剤0.1質量%及びMW−CNT0.1質量%のCNT分散液を調製した。超音波ホモジナイザーによる分散は、低出力(10W、10分)、高出力(30W、10分)の2条件で行った。
このCNT分散液の乾燥試料を調製し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立社製、S−3400N)を用いて、カーボンナノチューブの損傷・欠陥やネットワーク形成など、分散状態の観察を行った。
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から、カーボンナノチューブの分散性を目視にて以下の基準で評価した。
評価基準
◎:カーボンナノチューブが1本1本確認でき、凝集しておらず、かつ全く切断されて
いない状態
○:カーボンナノチューブが1本1本確認でき、凝集していないが、一部が切断されて
いる状態
△:部分的にカーボンナノチューブが確認できるが、凝集している又は切断されている
状態
×:凝集しているためカーボンナノチューブが確認できない状態
写真を図14及び図15に、分散性の評価結果を表1及び表2に示す。
図14及び図15の右側(20,000〜45,000倍)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真でカーボンナノチューブの状態を比較した。
図14の低出力(10W)の結果より、分散剤1は、30,000倍の写真でカーボンナノチューブの1本1本が糸状に確認できる。この写真から、分散状態が良好で、カーボンナノチューブのネットワークが形成され切断が発生していないことが分かる。分散剤9は、部分的にカーボンナノチューブ1本1本が確認できるが、はっきり見えていない部分もある。これは、分散が不十分で部分的に凝集しているためと考えられる。分散剤10は、カーボンナノチューブ1本1本が確認できず、カーボンナノチューブが凝集して分散が不十分であり、カーボンナノチューブのネットワークが形成されていない。低出力条件で分散させたCNT分散液におけるカーボンナノチューブの状態は、分散剤1を用いた時が最も均一に分散し、欠陥率も低いと考えられ、ネットワークを形成していることが観察された。
図15の高出力(30W)の結果では、分散剤1は、45,000倍の写真で糸状に1本1本はっきりとはしないがカーボンナノチューブの形状は確認でき、ある程度はネットワークを形成していることがわかる。これはカーボンナノチューブが切断されたものもあるためと考えられる。これに対して分散剤9は、カーボンナノチューブの1本1本が確認できず、カーボンナノチューブが切断されたためと考えられ、ネットワーク形成が不十分であると考えられる。
一方、分散剤10は、低倍率(760倍)でも大きなカーボンナノチューブの塊がいくつもあり、凝集していることがわかる。分散剤10は分散工程において、濡れ性が低いため壁面や破砕ホーンに多くのカーボンナノチューブが付着することが確認されており、そのために均一に分散できず、カーボンナノチューブの塊が生じてしまい、ネットワーク形成ができなかったと考えられる。
3.ハンドリング性評価
カーボンナノチューブ分散液、フラーレン分散液のハンドリング性について次の評価を行った。
(1)分散剤の水への溶解性
分散剤を表3、表4及び表6に示す濃度で水に溶解させたときの溶解性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:25℃条件下において直ちに溶解
○:25℃条件下において数分で溶解または40℃条件下で直ちに溶解
△:40℃条件下において数十分で溶解
×:溶解せず
(2)分散剤水溶液のカーボンナノチューブ、フラーレンに対する濡れ性
分散剤水溶液のカーボンナノチューブ、フラーレンに対する濡れ性を、浸透試験により評価した。浸透試験では、表3、表4、表6及び表9に示す濃度の分散剤水溶液に表3、表4、表6及び表9に示す濃度で添加したカーボンナノチューブ(MW−CNT)またはフラーレンが沈むまでの時間を浸透まで要した時間として測定した。
また浸透まで要した時間に基づいて、濡れ性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:浸透まで要した時間が25秒未満
○:浸透まで要した時間が25秒以上45秒未満
△:浸透まで要した時間が45秒以上600秒未満
×:浸透まで要した時間が600秒以上
(3)分散工程中のカーボンナノチューブ、フラーレンの壁面や分散装置(破砕ホーンまたは撹拌羽)への付着量
表3、表4、表6及び表9に示す濃度の分散剤水溶液に表3、表4、表6及び表9に示す濃度でカーボンナノチューブまたはフラーレンを添加した後、分散工程中のカーボンナノチューブまたはフラーレンの壁面や分散装置(破砕ホーンまたは撹拌羽)への付着量を、「ほぼなし」、「少量」、「多」の3段階で目視にて評価を行った。
(4)粘度
表3、表4、表6及び表9に示す濃度でカーボンナノチューブ(MW−CNT)又はフラーレン分散液を調製し、分散液の25℃での粘度(mPa・s)を測定した。粘度の測定条件は次の通りである。
使用粘度計:BROOKFIELD社製、DV−II+Pro
ローターNo.SC4−18
ローター回転数:60rpm
また測定した粘度に基づいて、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:粘度3mPa・s未満
○:粘度3mPa・s以上10mPa・s未満
△:粘度10mPa・s以上60mPa・s未満
×:粘度60mPa・s超
(5)総合評価
ハンドリング性について以下の基準で総合評価を行った。
評価基準
◎:上記(1)〜(4)より全体的にハンドリング性非常に良好
○:上記(1)〜(4)より全体的にハンドリング性良好
△:上記(1)〜(4)より全体的にハンドリング性低い
×:上記(1)〜(4)より全体的にハンドリング性非常に低い
以上の評価結果を表3、表4、表6及び表9に示す。
表3及び表4より、分散剤1は、水に対する溶解性が非常に高く、分散剤水溶液のカーボンナノチューブに対する濡れ性も、分散剤9及び分散剤10と比べて非常に高く、分散工程中における容器壁面へのカーボンナノチューブの付着が少なく、壁面への付着を抑制することができた。また、分散剤1を用いたCNT分散液の粘度は低く、分散剤1についてハンドリング性は全体的に非常に良好であった。
分散剤2〜4についても分散剤1と同様にハンドリング性は全体的に非常に良好であった。
表6より、分散剤1〜8は、水に対する溶解性が非常に高く、分散剤水溶液のカーボンナノチューブに対する濡れ性も、分散剤9〜12と比べて非常に高く、分散工程中における容器壁面へのカーボンナノチューブの付着が少なく、壁面への付着を抑制することができた。
表9より、分散剤1、6、8は分散剤水溶液のフラーレンに対する濡れ性も、分散剤10、13、14と比べて非常に高く、分散工程中における容器壁面へのフラーレンの付着が少なく、壁面への付着を抑制することができた。
4.カーボンナノチューブ水性分散液の基材に対する濡れ性
基材としてPETフィルムを用い、CNT分散液を基材表面に滴下して接触角計(KRUSS社製、DSA10−Mk2)を用いて、接触角(°)を測定した。
また接触角に基づいて濡れ性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:接触角45°未満
○:接触角45°以上60°未満
△:接触角60°以上65°未満
×:接触角60°以上
評価結果を表3及び表6に示す。
表3及び表6より、CNT分散液の基材に対する濡れ性は、分散剤1、3、5、7を用いた場合が分散剤9〜12を用いた場合に比較して最も高く、換言すれば、分散剤9〜12より基材への塗りムラが少なく、均一な塗布が可能となる。
このように、式(I)で表わされる分散剤はナノカーボン物質を効果的に分散することができる。
すなわち、式(I)で表わされる分散剤を用いることにより、低エネルギーで高濃度のナノカーボン物質を分散できるとともに、損傷・欠陥が少なく、優れたネットワークを形成するナノカーボン物質の水性分散液を得ることができる。
5.フラーレン分散液の紫外線吸収性能
表7、8に示した、フラーレン分散液の3箇所の波長帯での吸光度から、紫外線吸収能の評価を行った。表7では、分散剤、フラーレン濃度を0.1質量%で使用した場合、実施例化合物を用いた分散液は低波長側及び高波長側での吸光度が高く、フラーレンを高濃度で分散できていることが確認された。表8では、分散剤、フラーレン濃度を1.0質量%で使用すると、分散液のフラーレン濃度が増加し、低波長側、高波長側の吸光度は高い値を示したが、本発明の分散剤では660nmの吸光度は低い値を示し、紫外線を選択的に吸収していることが確認された。特に分散剤1を用いた実施例23では、分散液のフラーレン濃度が高いが、660nmの吸光度が低い。これは、本発明の分散剤がフラーレンを細かく均一に分散しているためであり、そのため図8に示した分散剤1を使用したフラーレン分散液は、透明度の高い分散液が得られた。
6.フラーレン分散液のDPPHラジカル消去法による抗酸化作用
DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)ラジカル試薬のエタノール溶液(250μM)1500μLに、分散剤1、10〜14及びフラーレンを1.0質量%で分散させたフラーレン分散液1500μLを添加した。24時間後、遠心分離(13500rpm、15分)によりフラーレンを取り除いた後、紫外−可視分光光度計(日本分光製、V-550)による515nmの吸光度を測定し、抗酸化作用を判定した。
抗酸化作用は、DPPHの同濃度の吸光度に基づいて、以下の基準で評価した。
評価基準
○:吸光度の減少が0.2以上
×:吸光度の減少が0.2未満
評価の結果を表10に示す。
表10より、分散剤1のフラーレン分散液は、紫外−可視分光光度計による測定結果からDPPHの515nmの吸光度が0.2以上減少したことが観察され、抗酸化作用があることが確認された。これは、分散剤1を用いた時は、フラーレンを高濃度で分散されているだけでなく、フラーレンが均一にかつ微細に分散されており、フラーレンの表面積が大きくなるため、抗酸化作用がより高くなったものと考えられる。

Claims (5)

  1. 炭素原子の共有結合によって形成する六員環グラファイト構造の一層(グラフェンシート)からなるナノサイズの形状を持つ物質あるいは、炭素原子の共有結合によって形成する五員環および六員環からなる閉殻空洞状の物質である、ナノカーボン物質の水性分散液用の分散剤であって、
    下記式(I):
    (式中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、Rは炭素数1〜22のアルキレン基、Rは炭素数1〜22のアルキル基を示す。但し、R及びRはR−CH−CH−R−部分の炭素数が9〜25となるように選択される。X及びYは、(1)XとYのいずれもが−O−SO(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)、(2)XとYのいずれか一方が−O−(AO)Hであり他方が−O−(AO)H(AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシドより誘導されるオキシアルキレン基を示し、pは0〜100の整数、qは0〜100の整数を示し、pとqとの和は1〜200である。)、(3)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHCHC(=O)OM(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)、(4)XとYのいずれか一方が−OPOであり(Mは水素イオン又は塩となる対カチオンを示す。)他方が水酸基、又は(6)XとYのいずれもが−OC(=O)−CHR−NR・HX(Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルチオアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基にチオール基が結合したチオール含有アルキル基、フェニル基、炭素数1〜3で1級もしくは2級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシフェニル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。Xは塩となる対アニオンを示す。)である。Zは−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−C(=O)−、又は−O−を示す。)で表わされる、ナノカーボン物質の水性分散液用の分散剤。
  2. 前記ナノカーボン物質がカーボンナノチューブである、請求項1に記載の分散剤。
  3. 前記ナノカーボン物質がフラーレンである、請求項1に記載の分散剤。
  4. 炭素原子の共有結合によって形成する六員環グラファイト構造の一層(グラフェンシート)からなるナノサイズの形状を持つ物質あるいは、炭素原子の共有結合によって形成する五員環および六員環からなる閉殻空洞状の物質である、ナノカーボン物質の水性分散液であって、
    請求項1から3のいずれかに記載の分散剤及び前記ナノカーボン物質を含有するナノカーボン物質の水性分散液。
  5. 炭素原子の共有結合によって形成する六員環グラファイト構造の一層(グラフェンシート)からなるナノサイズの形状を持つ物質あるいは、炭素原子の共有結合によって形成する五員環および六員環からなる閉殻空洞状の物質である、ナノカーボン物質の水性分散液の製造方法であって、
    水性溶媒中に、請求項1から3のいずれかに記載の分散剤及び前記ナノカーボン物質を混合し分散処理するナノカーボン物質の水性分散液の製造方法。
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