JP6512662B2 - 未分化性維持培養材料 - Google Patents
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Description
分化多能性の間葉系幹細胞は、患者自身の骨髄、脂肪組織、滑膜、歯槽骨、歯根膜等の組織からだけでなく、胎盤、臍帯血、臍帯の種々の細胞等から単離することができることから、間葉系幹細胞の利用は生命倫理上のハードルが低い。また間葉系幹細胞は、ES細胞やiPS細胞に比べ癌化リスクが低いとされ、早期の臨床応用が期待される。
間葉系幹細胞を細胞組織医薬品や細胞組織医療機器として臨床用途に利用するとき、例えば自家移植を想定すると、患者の体内より細胞を取り出し、生体外で培養して増殖させ、患者へ自家移植するという工程を経ることになる。このとき、培養期間やその後の保管期間中に、目的以外の形質を持った細胞に変化することなく、患者に戻される細胞の有効性及び安全性を確保することが重要となる。しかしながら、間葉系幹細胞は分化や細胞老化を起こし易いため、その品質コントロールが難しいことが挙げられ、細胞の品質管理に大きな課題が残されている。
一般に、生体内において細胞の周囲環境を構成する細胞外マトリクスは、結合組織細胞の分化状態に化学的及び物理的に影響を与えることが知られており、間葉系幹細胞の分化の系統決定にも影響することが報告されている。
例えば弾性をin vivoの生物環境に類似するようにコントロールされたハイドロゲル上において間葉系幹細胞を培養することによる、神経性、筋原性、骨原性の細胞への分化誘導が研究されている(非特許文献1)。この知見は、間葉系幹細胞を1kPa以上の弾性率を持つハイドロゲル基材上で培養するだけで、培養環境の弾性特性等に依存した系統へと分化し、すなわち未分化状態が崩れ、品質が劣化することを意味する。
これに対して、間葉系幹細胞を、250Paの弾性を有するI型コラーゲン及びフィブロネクチンによりコーティングされたアクリルアミドゲル上で培養することにより、幹細胞の細胞周期を静止状態へと誘導又は維持し、生物活性を持続させる方法が提案されている(非特許文献2、特許文献5)。
また、前述の細胞外マトリクスとしてハイドロゲルを使用した分化誘導にあっては、検討がなされている培養基材の弾性が高い数値範囲にあることから、細胞が静止状態となることや細胞の保存性能について見出されていない。
さらに培養基材として提案されているアクリルアミドゲルを構成するアクリルアミドモノマーについては、神経毒性や肝毒性があることが指摘されている。一般に、生体適合性を示す水溶性ポリマーやヒドロゲルを構成する重合性モノマーは細胞毒性を示すことが多く、これらモノマーから得られる高分子ゲルから未反応モノマーを完全に除去することは事実上困難といえ、こうした高分子ゲルを生体安全性が求められる細胞培養基材等として採用するには課題が残る。
本発明における間葉系幹細胞の未分化性維持培養の原理は、間葉系幹細胞の細胞周期を静止期に止め休眠状態での培養を実現することにより、細胞分裂及び増殖に伴う細胞寿命の短縮並びに老化の進行を抑制するだけでなく、望まぬ表現型への分化に伴う細胞変化の可能性を排除することにある。このような培養状態は、間葉系幹細胞が生体において、幹細胞ニッシェと呼ばれる天然の細胞外環境に置かれているときの生存状況に近いものであり、本発明に従う培養法は、生体模倣的手段により課題を解決するものである。
さらに本発明は、休眠培養による間葉系幹細胞の品質劣化の回避、休眠状態を解除して用いる際の回収方法の確立、及び回収された間葉系幹細胞の品質保持の確認を含む。高品質な間葉系幹細胞を保存し活用するために必須となる品質保持及び回収のために、天然物由来の多糖類を用いることで、これらの課題を解決する。
第2観点として、前記多糖類がナノファイバー形状の多糖類である、第1観点に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第3観点として、前記多糖類が増粘性多糖類である、第1観点に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第4観点として、前記増粘性多糖類がメチルセルロース又はダイユータンガムである、第3観点に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第5観点として、前記体性幹細胞が間葉系幹細胞である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第6観点として、37℃、5体積%二酸化炭素雰囲気の培養条件下での使用において、1日間乃至30日間培養後の体性幹細胞の未分化性及び多分化能を、該幹細胞の採取直後のそれと同等の活性度で保つことができる、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第7観点として、前記培養条件下で体性幹細胞の培養を為したとき、酵素処理により体性幹細胞の回収が可能である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第8観点として、前記多糖類が、1nm乃至100nmの平均繊維径(D)を有するナノファイバーの形態にある、第2観点及び第5観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第9観点として、前記多糖類が、0.01μm乃至10μmの平均粒子径(d)を有するナノファイバーの形態にある、第2観点及び第5観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第10観点として、前記多糖類が、平均繊維径(D)に対する平均繊維長(L)の比(L/D)が2乃至500であるナノファイバーの形態にある、第8観点に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第11観点として、前記未分化性維持培養材料が、セルロース由来の天然物ナノファイバーである、第2観点及び第5観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料に関する。
第12観点として、第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料が液中に溶解又は分散されてなる、培養液に関する。
第13観点として、前記未分化性維持培養材料が、前記培養液の全体積量に対して0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度で溶解又は分散されてなる、第12観点に記載の培養液に関する。
第14観点として、体性幹細胞が第12観点又は第13観点に記載の培養液の液中を漂ってなる、体性幹細胞含有培養液に関する。
第15観点として、前記未分化性維持培養材料が、単位体積(1mL)当たり1.0×103〜1.0×106の幹細胞を含む前記体性幹細胞含有培養液の全体積量に対して0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度で培養液中を漂ってなる、第14観点に記載の体性幹細胞含有培養液に関する。
第16観点として、更に血清を含む、第14観点又は第15観点に記載の体性幹細胞含有培養液に関する。
第17観点として、前記血清が、ウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清及びニワトリ血清からなる群から選択される、第16観点に記載の体性幹細胞含有培養液に関する。
第18観点として、前記血清が、前記体性幹細胞含有培養液の全体積に対して0.1体積%乃至50体積%の濃度で含まれる、第16観点又は第17観点に記載の体性幹細胞含有培養液に関する。
第19観点として、更に細胞機能調節因子を含む、第14観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の体性幹細胞含有培養液に関する。
第20観点として、天然物由来の多糖類の存在下、間葉系幹細胞を生体外で培養することにより、1日間乃至30日間培養後の該間葉系幹細胞の未分化性及び多分化能を該幹細胞の採取直後と同等の活性度で保つことを特徴とする、間葉系幹細胞の培養方法に関する。
また本発明の未分化性維持培養材料を使用することにより、生体から採取し、選別し、そして純化した間葉系幹細胞を、実際の治療に用いる時点まで高品質にて保つことが可能となる。ここで“高品質にて保つ”とは、幹細胞を定義する上での性質となる未分化性及び多分化能を維持すること指す。また本発明の間葉系幹細胞の培養方法によれば、一定期間の間葉系幹細胞の保存培養後には、特殊な操作を必要とせず、細胞培養の技術分野において一般的に用いられている方法、例えばトリプシンなどのプロテアーゼを作用させる方法により、高い細胞回収率を達成することができる。
このように、本発明の未分化性維持培養材料は、間葉系幹細胞の高品質にての保存培養と、利用に際しての回収及び調製の容易さという二つの主要な効果を有する。
なお本明細書において「休眠培養」とは、幹細胞が生体内に存在している際の特徴である、幹細胞の細胞周期が静止期にある状態にて維持され、未だ分化せずに待機してなる状態を、生体外培養条件下においても実現すること、すなわち幹細胞を未分化の状態(初期状態)にて維持する(細胞を休眠状態とする)培養を指す。
本発明の未分化性維持培養材料は、天然物由来の多糖類を含有するものであり、前記多糖類がナノファイバー形状の多糖類(以下、単に“ナノファイバー”と称する)であるか、或いは増粘性多糖類であることが好ましい。
本発明の未分化性維持培養材料に使用される天然物由来のナノファイバーとしては、微細化されたセルロースナノファイバーが挙げられる。
上記セルロースナノファイバーの原料は、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、コットン、農作物又は食物残渣など植物由来のセルロース、又はバクテリアセルロース、シオグサ(クラドフォラ)、灰色植物(グラウコキスチス)、バロニア、ホヤセルロースなど、微生物産生若しくは動物産生のセルロースを使用することができる。
上記植物由来のセルロースはミクロフィブリルと呼ばれる非常に細い繊維がさらに束になりフィブリル、ラメラ、繊維細胞と段階的に高次構造を形成しているものであり、バクテリアセルロースは菌細胞から分泌されたセルロースのミクロフィブリルが、そのままの太さで微細な網目構造を形成しているものである。
本発明において、上述したようにこれらセルロース原料を粉砕して得られる微細化したセルロースナノファイバーを用いることが好ましい。セルロース原料の粉砕方法は限定されないが、本発明の目的に合う後述する繊維径及び繊維長にまで微細化するには、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼)、あるいはビーズミルなどの媒体撹拌ミルといった、強いせん断力が得られる方法が好ましい。
圧送圧力(処理圧力)は、通常、50〜250MPaであり、好ましくは150〜245MPaである。圧送圧力が50MPa未満の場合には、セルロースの微細化が不充分となり、微細化により期待される効果が得られない。
また、微細化処理時の水分散液中のセルロース濃度は0.1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜10質量%である。水分散液中のセルロース濃度が0.1質量%未満だと生産性が著しく低く、30質量%より高い濃度だと粉砕効率が低く、所望のセルロースナノファイバーが得られない。
微細化(粉砕化)の処理回数は、特に限定されず、前記水分散液中のセルロース濃度にもよるが、例えば、セルロース濃度が0.1〜1質量%の場合には処理回数は1〜100回程度であり、1〜10質量%では1〜1000回であり、好ましくは10〜200回である。また、分散液のセルロース濃度が30質量%を超える高濃度な場合は、微細化するのに数千回以上の処理回数が必要となることや、取扱いに支障をきたす程度まで分散液の高粘度化が進むため、工業的観点から非現実的である。
また本発明に用いるセルロースナノファイバーの平均繊維長(L)は、0.01μm乃100μm、好ましくは0.05μm乃至10μmである。
・平均粒子径(d):後述する製造例において作製したセルロース分散液を0.01〜0.1質量%となるように超純水にて希釈し、超音波洗浄機にて30分間分散させて、大塚電子(株)製動的光散乱測定器(FDLS−3000、キュムラント法)、又はマルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、累積体積50%通過径(D50))を用いて平均粒子径(d)を測定した。
なお平均粒子径(d)は下記アインシュタイン・ストークスの式を用いて、拡散係数Dから流体力学的直径として求められる。
d=kT/3πη0D
d:粒子径(流体力学的直径)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、η0:溶媒の粘度
・平均繊維径(D):応研商事(株)製コロジオン支持膜を日本電子(株)製イオンクリーナ(JIC−410)で3分間親水化処理を施した。この支持膜に、後述する製造例において作製したセルロース分散液(超純水にて希釈)を数滴滴下し、室温乾燥させ、試料とした。この試料を(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM、H−8000)(10,000倍)にて加速電圧200kVで観察した。得られた画像を用いて、標本数:200〜250本のセルロースナノファイバーについて各々の繊維径を計測し、その数平均値を平均繊維径(D)とした。
・平均繊維長(L):後述する製造例において作製したセルロース分散液を、セルロース濃度が0.001質量%となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)により希釈し、セルロースを分散させた。これを予め濃硫酸を用いて表面を親水化処理したシリコンウェハー上へキャストし、110℃にて1時間乾燥させて試料とした。得られた試料の日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−7400F)(2,000倍)で観察した画像を用いて、標本数:150〜250本のセルロースナノファイバーについて各々の繊維長を計測し、その数平均値を平均繊維長(L)とした。
天然物由来のメチルセルロースやダイユータンガム等の増粘性多糖類は、高濃度領域では増粘剤として作用する。一方1%以下といった低濃度領域では細胞などに対して分散剤として作用する。そしてこれら増粘性多糖類をこうした低濃度にて細胞培養に使用すると、培養操作等のハンドリングに大きな影響を与えることなく、細胞増殖を安定化させることができることが知られている。これは、増粘性多糖類を低粘度にて(謂わば分散剤として)添加することで、細胞の培養容器への接着や細胞同士が接着し合うことによる細胞塊形成などを、抑制する作用によるものである。そしてこの作用により、細胞接着による細胞機能喪失や増殖阻害、及び細胞塊中心部の栄養不足や酸欠によるネクローシスを抑制することができる。
本発明の未分化性維持培養材料に使用される天然物由来の増粘性多糖類としては、例えばヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガム、ヘキスロン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等アルギン酸誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム等の塩、メチルヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース等のセルロース誘導体、キトサン、ポリクオタニウム−10等のカチオン化セルロース、カチオン化デキストラン及びグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等のカチオン化多糖等が好ましいものとして挙げられる。
中でも、本発明の未分化性維持培養材料として、メチルセルロース又はダイユータンガムを好適に使用できる。
[間葉系幹細胞]
本発明の未分化性維持培養材料が培養対象とする体性幹細胞には間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)、臍帯血幹細胞、神経幹細胞などがあるが、特に間葉系幹細胞(MSC)を対象とする。
いろいろな型の細胞に分化可能で、治療に活用され得る間葉系幹細胞は通常、成体から採取し、選別し、そして純化したものを用いる。本発明の未分化性維持培養材料を適用できる間葉系幹細胞としては、患者から直接採取される臨床用の初代ヒト間葉系幹細胞ばかりでなく、試験研究用に用い得る細胞バンクより入手できる間葉系幹細胞や、不死化された間葉系幹細胞株も挙げられる。
当業者であれば既知の通り、これら間葉系幹細胞は、臨床上の適用の観点から捉えると、自家ソース由来、同種異系ソース由来又は異種間ソース由来の何れの細胞であってもよい。また採取源は、ドナー骨髄、組織生検、胚性ソース、出生後ソース等の何れの採取源であってもよい。具体的には腸骨稜の骨髄、大腿頸骨、脊椎、肋骨又は他の骨髄腔由来、或いは胚性卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児及び青年期の皮膚及び血液を含む組織生検由来などの採取源が挙げられる。
本発明は、前記未分化性維持培養材料が液中に分散されてなる培養液にも関する。
前記培養液は、緩衝液及び/又は液体培地を含む。
上記液体培地としては、天然培地、半合成培地、合成培地などのうち、動物細胞の培養に用いられる培地を好適に使用できる。このような培地としては、例えばウィリアム培地E(William’s E培地)、ハムF10培地(Ham’s Nutrient Mixture F10)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、RPMI1640培地、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium;EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium;DMEM)、アルファ改変イーグル培地(α-Modified Eagles’s Medium;α-MEM)などが挙げられる。
また該液体培地は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、サイトカイン、ホルモン、抗生物質、血清、脂肪酸、糖などを含有してもよい。また液体培地には目的に応じてその他の化学成分あるいは生体成分を一種類以上組み合わせて添加することもでき、例えばウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清、ニワトリ血清インシュリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、コレステロール、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、2−メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、寒天、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、各種サイトカイン、各種増殖因子、細胞機能調節因子などを添加できる。
前記培養液は、前記未分化性維持培養材料が、該培養液の全体積量に対して0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度、好ましくは0.0005%(w/v)乃至1%(w/v)の濃度で分散されてなるものが望ましい。
さらに本発明は、体性幹細胞が前記培養液の浴中を漂ってなる体性幹細胞含有培養液にも関する。
前記体性幹細胞含有培養液は、単位体積(1mL)当たり1.0×103〜1.0×106の幹細胞を含む前記体性幹細胞含有培養液の全体積量に対して、前記未分化性維持培養材料が0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度、好ましくは0.0005%(w/v)乃至1%(w/v)の濃度で培養液中を漂ってなるものが望ましい。
例えばウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清、ニワトリ血清などの血清の場合、体性幹細胞含有培養液の全体積に対して0.1体積%乃至50体積%、好ましくは0.5体積%乃至20体積%の濃度で添加することが望ましい。
本発明の未分化性維持培養材料を用いた体性幹細胞の培養方法(休眠培養)の一例を以下に記す。
まず、上述の本発明の未分化性維持培養材料を、前述の培養液(緩衝液及び/又は上記液体培地、またこれら培地に牛胎児血清やヒト血清等を添加した液体培地)に添加し、該未分化性維持培養材料を培養液中に溶解又は分散させ、溶解液又は分散液の状態とする。
こうして準備した本発明の未分化性維持培養材料を含有する培養液を、動物細胞の培養に一般的に用いられる培養器:シャーレ、フラスコ、ウェルプレート、プラスチックバック、テフロン(登録商標)バックなどの適当な容器中に準備し、ここに適切な緩衝液等に懸濁させた間葉系幹細胞を、単位体積(1mL)当たりの培地に幹細胞数が1.0×10 3〜1.0×106となるように播種する。このとき、血清や細胞機能調節因子等を培養液に更に添加してもよい。
未分化性維持培養材料の分散培養液に播種された間葉系幹細胞は、通常10℃乃至40℃、好ましくは35℃乃至38℃、例えば37℃にて、0体積乃至10体積%、好ましくは3体積乃至7体積%、例えば5体積%の二酸化炭素雰囲気にて、細胞培養用インキュベーター内において培養することができる。
細胞培養中は必要に応じて、培養液を交換し、培養環境を新鮮に保つこともできる。培養液交換に際しては、例えば未分化性維持培養材料としてナノファイバーを用いた場合、所定の遠心力条件にて遠心分離し、細胞培養液中に分散しているナノファイバーと細胞との両者を沈降回収し、新鮮な培養液に再分散することにより行うことができる。
例えば上述の手順にて、37℃、5体積%二酸化炭素雰囲気の培養条件下で本発明の未分化性維持材料を使用し間葉系幹細胞等の体性幹細胞を培養することにより、1日間乃至30日間培養後の体性幹細胞の未分化性及び多分化能を、該幹細胞の採取直後と同等の活性度で保つことができる。
本発明の未分化性維持材料を使用した培養条件下で体性幹細胞の培養を為したとき、トリプシン処理により体性幹細胞の回収が可能である。
前述の[0026]に記載の手順に従い、動的光散乱測定より下記製造例1乃至製造例3で得られたセルロースナノファイバーの平均粒子径dを求めた。
[平均繊維径D及び平均繊維長Lの測定]
前述の[0026]に記載の手順に従い、TEM画像及びSEM画像より下記製造例1乃至製造例3で得られたセルロースナノファイバーの平均繊維径D及び平均繊維長Lを求め、これらの値よりアスペクト比L/Dを求めた。
市販の微結晶セルロース(フナコシ(株)製 カラムクロマトグラフィー用 フナセル粉末II)1.5質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、245MPaにて50回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC1)を得た。
市販の微結晶セルロース(フナコシ(株)製 カラムクロマトグラフィー用 フナセル粉末II)15質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、245MPaにて150回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC2)を得た。
市販の微結晶セルロース(フナコシ(株)製 カラムクロマトグラフィー用 フナセル粉末II)15質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、245MPaにて300回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC3)を得た。
市販のクラフトパルプ(国際紙パルプ商事(株)製 LBKP D−8、固形分46質量%)22質量部に純水978質量部を加えて分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、245MPaにて200回粉砕処理を行い、パルプ由来セルロースナノファイバーの水分散液を得た。得られた分散液をシャーレに測りとり、110℃にて1時間乾燥を行い、水分を除去して残渣の量を測定し、濃度を測定した。その結果、水中のセルロース濃度(固形分濃度)は、1.0質量%であった。この分散液を純水にて10質量倍となるように希釈し、0.1質量%水分散液(PC)を得た。
市販のバクテリアセルロース(UTAMA社製 PT.NIRAMAS、酢酸水溶液中セルロース固形分約0.5質量%)200質量部を家庭用ミキサーにて5分間解砕した。得られたスラリーをろ過し、純水へ分散させた後にpHを測定し、pHが中性(6〜7)となるまで同様の水洗を繰り返した。全量を1000質量部となるように純水を加えた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、200MPaにて300回粉砕処理を行い、バクテリアセルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(BC)を得た。
[培養液の調製]
製造例1で得られたセルロースナノファイバー(MC1)の0.1質量%水分散液100mLに、市販の高圧蒸気滅菌可能な粉末培地(日水製薬(株)製 ダルベッコ変法イーグル培地2)100mL分を添加した。これを30分程マグネチックスターラーで撹拌して該粉末培地を水分散液に溶解させた後、121℃で15分間高圧蒸気滅菌した。この溶液を室温まで冷却したのち、この溶液に市販のL−グルタミン溶液(和光純薬工業(株)製 200mmol/L L−グルタミン溶液(×100))を終濃度2mMとなるように添加し、さらに滅菌した10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を1mL加えた。溶液から少量を取りだし、pH試験紙を使用して溶液のpHがおよそpH7.0〜8.0であることを確認した。この溶液に、使用前に10体積%となるようにウシ胎児血清(以下本明細書中ではFBSと記載する)を加え、0.1%(w/v)MC1培養液とした。また、目的に応じて10体積%のFBSを含むDMEM培地(Gibco(登録商標)DMEM、Powder、Low Glucose、Pyruvate31600−034)をMC1培養液に追加混合することで、培養液中のセルロースナノファイバー濃度を調節した(表2及び図1乃至図4におけるNF濃度参照)。
親水性処理をしていないポリスチレンシャーレである直径10cmの低接着性アズノール滅菌シャーレ(アズワン(株)製 GD90−15)に、培地として0.025〜0.1%(w/v)MC1培養液を10mL入れ、ヒト間葉系幹細胞(Lonza PT−2501;以下本明細中ではhMSCと記載する)を5.0×105個/dishで播種した。この播種した細胞を5体積%二酸化炭素中、37℃で1日間培養したのち、シャーレに接着した細胞を取り除くため、培養液を新しいアズノール滅菌シャーレに移し、さらに4週間培養を続けた。途中、1週間おきに培地交換のため培養液を遠心管に回収して10℃で300g、5分間遠心分離し、上清を除去したのち10体積%FBSを含む新しいDMEM培地10mLに再懸濁させて新しいアズノール滅菌シャーレに移した。
培養後1〜4週間の各時点で培養液を回収し、以下の手順に従い、カルセイン−AM/PI法による細胞の生死判定、トリプシン処理による細胞の回収、未分化マーカーによる免疫染色を行った。
1〜4週間の培養後に回収した各培養液から0.5mLを取り出し、10℃で300g、5分間遠心分離して上清を除去し、ナノファイバー(以下、NFと称する)沈殿物を1mLのリン酸緩衝液(以下、PBSと称する)で洗浄した。2回洗浄を繰り返したのちNF沈殿物にカルセイン−AM/PI液を0.5mL加えて混合し、5体積%二酸化炭素中、37℃で30分間インキュベートした。次に、PBS洗浄を2回行い、NF沈殿物に0.5mLのDMEM培地を加えて懸濁させ、その懸濁液を24ウェルプレートに移して位相差顕微鏡観察及び蛍光顕微鏡下で緑蛍光(生細胞)・赤蛍光(死細胞)を確認した。得られた結果を図1及び図2に示す。
1〜4週間の培養後に回収した各培養液1ディッシュ分を遠心管に移し、10℃で300g、5分間遠心分離して上清と沈殿物に分けた。沈殿物を10mLのPBSで2回洗浄し、この上清も回収し、すべての上清を10℃で430g、3分間遠心し、沈殿物を得た。得られたすべての沈殿物を一つにまとめ、ここに沈殿物とおよそ等量のトリプシン液(和光純約工業(株)製、0.25%(w/v)Trypsin−1mmol/l EDTA・4Na Solution with Phenol Red)を加え、37℃で5分間インキュベートした。その後、10体積%FBSを含むDMEM培地をトリプシン液の倍量加え、混合したのち10℃で300g、5分間遠心して上清と沈殿物に分けた。上清をさらに10℃で430g、3分間遠心分離した後、上清を除去した。得られた沈殿物と先に分けた沈殿物をともに、新しい10体積%FBSを含むDMEM培地10mLに懸濁させ、直径10cmの親水処理された細胞培養用ポリスチレンディッシュ(Tissue culture polystyrene、以下本明細書中ではTCPSと記載する)に再播種した。この再播種した細胞を5体積%二酸化炭素中、37℃で一晩インキュベートしたところ、ディッシュに生着した細胞が確認された。この生着した細胞を上記と同じトリプシン液にて処理し、37℃で5分間インキュベートしたのち、10体積%FBSを含むDMEM培地をトリプシン液の倍量以上〜最大さらに10mL程度加え、混合し、10℃で430g、3分間遠心分離し、そして、得られた沈殿細胞を新しい10体積%FBSを含む数mLのDMEM培地に懸濁させた。この懸濁物をヘマトサイトメーターを用いて計測した。
また細胞播種時に、比較対象として、hMSCを直径10cmのTCPSに10体積%FBSを含むDMEM培地に5.0×105個/dish播種し、播種翌日に細胞を回収及びカウントした。この時の細胞数を回収率100%として、前述の培養に供した細胞の回収率を算出した。得られた結果を下記表2に示す。ここで未分化性維持材料への細胞の付着率は、ナノファイバー分散液で培養した翌日の時点で、分散ナノファイバーへ付着せずに培養ディッシュに沈降付着した細胞数を上述のトリプシン処理による回収を行って計測した細胞数を、比較対象の細胞数から差し引くことで求めた。これは浮遊した細胞の数を直接に計測することの困難性のためである。
間葉系幹細胞の性質を維持した休眠状態での培養が行われたかどうかについて、間葉系幹細胞を特徴づける各種マーカータンパク質の発現状態を観察し、評価した。
1〜4週間の培養後、トリプシン処理によって実施例1のMC1から回収した細胞を24ウェルプレートに5.0×103個/cm2(9.5×103個/ウェル)で播種し、播種した細胞を5体積%二酸化炭素中、37℃で一晩インキュベートした。
この細胞に、ヒト間葉系幹細胞のマーカー抗体(ポジティブマーカー:6種、ネガティブマーカー:5種)を用いて免疫蛍光染色を行い、細胞の休眠性を評価した。免疫蛍光染色は以下の方法で行った。細胞をPBSで洗浄後、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液で固定し、洗浄後に1%(w/v)ウシ血清アルブミン及び10体積%ロバ血清を含むPBS(ブロッキングバッファー)でブロッキング処理した。この処理した細胞を適宜の濃度に希釈したマウスモノクローナル抗体と4℃で一晩反応させ、1次抗体を洗浄除去後、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗マウス抗体と室温で1時間反応させた。洗浄後、標識された細胞が蛍光顕微鏡下で緑蛍光(陽性及び発現強度)を発するか否かを確認した。4週間培養後の免疫染色結果を図3及び図4に示す。
なお対照試験として、実施例1乃至実施例3において使用したものと同等の継代数6のhMSCを実施例で行ったのと同様の播種条件にて培養し、マーカー抗体に対する免疫蛍光染色を行った。
製造例2で得られたセルロースナノファイバー(MC2)の0.1質量%水分散液を用いて、実施例1と同様の方法で培地調製を行い、0.1%(w/v)MC2培養液を調製した。これを用いて実施例1と同様の方法でhMSCの播種及び培養を行い、1〜4週間の培養の後、カルセイン−AM/PI法による生死判定、トリプシンによる細胞の回収及び休眠性の確認について行った。
製造例3で得られたセルロースナノファイバー(MC3)の0.1質量%水分散液を用いて、実施例1と同様の方法で培地調製を行い、0.1%(w/v)MC3培養液を調製した。これを用いて実施例1と同様の方法でhMSCの長期培養、カルセイン−AM/PI法による生死判定、細胞の回収及び休眠性の確認を行った。
製造例4で得られたセルロースナノファイバー(PC)の0.1質量%水分散液を用いて、実施例1と同様の方法で培地調製を行い、0.1%(w/v)PC培養液を調製した。なお、hMSCの培養にはTCPSを用い、細胞の生死判定、及びトリプシンによる細胞の回収を行った。また本実施例では、培養翌日の時点についても細胞の回収を行った。
製造例5で得られたセルロースナノファイバー(BC)の0.1質量%水分散液を用いて、実施例1と同様の方法で培地調製を行い、0.1%(w/v)BC培養液を調製した。なお、hMSCの培養にはTCPSを用い、細胞の生死判定、及びトリプシンによる細胞の回収を行った。
メチルセルロース(M0387、Aldrich社製:ME)を用いて1.0質量%水分散液を調製し、これを用いて実施例1と同様の方法で培地調製を行い、1.0%(w/v)メチルセルロース培養液を調製した。なお、hMSCの培養にはアズノール滅菌シャーレを用い、細胞の生死判定、及びトリプシンによる細胞の回収を行った。また本実施例では、培養3日後の時点についても細胞の回収を行った。
ダイユータンガム(KELCO CRETE DG−F、三晶株式会社製:DU)の1.0質量%水分散液を用いて、実施例1と同様の方法で培地調製を行い、1.0%(w/v)ダイユータンガム培養液を調製した。なお、hMSCの培養にはアズノール滅菌シャーレを用い、生死判定、及びトリプシンによる細胞の回収を行った。また本実施例では、培養3日後の時点についても細胞の回収を行った。
図1及び図2に示すように、実施例1乃至実施例3のいずれの系においても、生細胞(緑蛍光)を示すカルセイン−AM染色像は4週間後も観察されるのに対し、死細胞(赤蛍光)を示すPI染色細胞はごく低頻度の観察にとどまった。すなわち、この観察結果より、MC1〜MC3のナノファイバー分散培養液によって、hMSCを4週間以上培養可能であることが示された。また実施例4及び実施例5においても、1週間後にカルセイン−AM染色像が観察され、PC及びBCのナノファイバー分散培養液によってもhMSCを培養可能であることが示された。
また実施例1及び実施例2では培養中に細胞同士が数個から十個程度凝集している様子が顕著であるが、実施例3では4週間後の生細胞の分散状態がよいことから、MC3のナノファイバー分散培養液が特に個々の幹細胞に対して均質な培養環境を提供しているものと理解される。
表2に示すように、実施例1乃至実施例5のいずれにおいても、播種翌日に未分化性維持培養材料が細胞に付着していることが確認でき、特に実施例1乃至実施例3及び実施例5では80%を超える細胞付着率が確認できた。なお実施例6(メチルセルロース)及び実施例7(ダイユータンガム)においても、後述するように一定の培養期間後において細胞を回収できていることから、これら実施例においても播種翌日に未分化性維持培養材料が細胞に付着しているといえる。
また実施例1乃至実施例3では、4週間後において約40〜60%の細胞を回収できるとする結果が得られた。特に実施例1のMC1を用いた培養において、最も高い回収率が得られ、4週間の長期培養後において61.2%の細胞が回収できた。
また実施例4、実施例6及び実施例7においても、一定の培養期間後に細胞を回収できることが確認された。
これらの結果より、ナノファイバー分散培養液及び増粘性多糖類分散培養液のいずれも、hMSCの回収・再播種の再生着に有効であると理解される。特に同じ微結晶セルロース由来ナノファイバーの水分散液(MC1乃至MC3)を使用した実施例1乃至実施例3においては、使用したナノファイバーの長さが長い条件において細胞回収率が上昇し、とりわけ微結晶セルロース由来ナノファイバーのナノファイバー分散溶液にあっては、hMSCの回収・再播種後の再生着に有効であると理解される。
図3に示すように、ナノファイバー分散培養液を用いた培養後4週間の時点で、ポジティブマーカーであるSTRO−1、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105に対して、実施例1−3のいずれの細胞においても対照試験と同程度の正常な発現を示した。
また図4に示すように、ネガティブマーカーであるCD11b、CD14、CD19、CD34、CD45に関しても、対照試験と同程度の免疫染色蛍光強度を示し、hMSCの性質を4週間培養後においてもほぼ正常に保持していることが確認できた。
実施例1と同様の条件及び手順に従って培養液を調製した。
[間葉系幹細胞MSCの播種]
直径10cmの細胞無接着培養シャーレ(グライナー製 CellStar664970)に、培地として0.02質量%、0.017質量%、0.0125質量%のMC1培養液を10mL入れ、hMSCを5.0×105個/dishで播種した。1週間おきに培地交換のため培養液を遠心管に回収して10℃で300g、5分間遠心分離し、上清を除去したのち沈殿物を10質量%FBSを含む新しいDMEM培地10mLに再懸濁させて、もとの細胞無接着培養シャーレに戻した。培養後1〜4週間の各時点で培養液を回収し、段落[0046][0047][0048]に記載の手順に従い、カルセイン−AM/PI法による細胞の生死判定、トリプシン処理による細胞の回収及び未分化マーカーによる細胞の免疫染色を行った。
回収された細胞に対して、多分化能を保持した休眠状態での培養が行われたかどうかを確認するため、市販の分化誘導培地(R&D Systems製 ヒト間葉系幹細胞 分化誘導キット sc006)を用いて脂肪細胞、骨細胞及び軟骨細胞への分化誘導を夫々行った。この分化させた細胞をマーカー抗体を用いて免疫染色し、これら細胞がそれぞれの細胞系への分化能を有しているか確認した。
〈MC1培地での培養と細胞の回収〉
hMSCを0.02%MC1培養液で2週間培養後、段落[0047]に記載の手順と同様にトリプシン処理によって回収した。
MC1培地から回収したhMSCをαMEM(life technologies製
MEMα 12560−056)に10%FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン、グルタミンを添加した基本培地に再懸濁し、滅菌したカバーガラスの入った24ウェルプレートに2.1×104個/cm2で再播種した。100%コンフルエントになるまで培養した後、基本培地に脂肪細胞の分化誘導剤を添加したものへ培地を交換した。3、4日おきに分化誘導剤入り培地を新鮮なものに交換し、3週間培養を続けた。1〜3週間目にカバーガラスを取り出し、培養したhMSCのオイルレッドO染色及び抗FABP4抗体による免疫染色を行った。
骨細胞への分化誘導中の細胞の剥がれを防ぐため、1μg/mLのフィブロネクチン溶液を滅菌したカバーガラスの入った24ウェルプレートに加え、37度で3〜30時間処理した。MC1培地から回収したhMSCを、αMEM(life technologies製 MEMα 12560−056)に10%FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルタミンを添加した基本培地に再懸濁し、そして準備しておいた24ウェルプレートに4.2×103個/cm2で再播種した。一晩培養後、基本培地に骨細胞の分化誘導剤を添加したものへ培地を交換をした。3、4日おきに分化誘導剤入り培地を新鮮なものに交換し、4週間培養を続けた。2〜4週間目にカバーガラスを取り出し、培養細胞のアリザリンレッドS染色を行った。
MC1培地から回収したhMSCをDMEM(FBS−)で1.0×106個/mLに調整し、それを、細胞凝集塊を形成するため、TCPSに適量入れた3%メチルセルロース/DMEM中に10μL(10,000個)ずつ注入した。一晩培養後、火炎滅菌した薬匙で細胞塊を掬い出し、PBSで洗ってチェンバースライドシステム(Nunc製 ラブテック チェンバースライドシステム 178599JP)の各ウェルに1個ずつ移した。DMEM/F−12(Life Technologies製 DMEM/F−12
11320−033)にITS Supplement(sc006付属品)、ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルタミンを加えた基本培地にさらに軟骨分化誘導剤を加えたものを各ウェルに100μLずつ加えた。2〜3日おきに培地交換をして4週間培養を続けた。3、4週間目に抗アグリカン抗体による細胞の免疫染色を行った。
市販の微結晶セルロース(セオラス、PH−101、旭化成ケミカルズ社製))1.5質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、220MPaにて50回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC4)を得た。
市販の微結晶セルロース(セオラス、PH−101、旭化成ケミカルズ社製))1.5質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、220MPaにて100回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC5)を得た。
市販の微結晶セルロース(セオラス、PH−101、旭化成ケミカルズ社製))1.5質量部に純水1,000質量部を加え分散させた後、(株)スギノマシン製高圧粉砕装置(スターバーストシステム)を用いて、220MPaにて150回粉砕処理を行い、微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの水分散液(MC6)を得た。
超純水50mLへ市販の高圧蒸気滅菌可能な粉末培地(日水製薬(株)製 ダルベッコ変法イーグル培地2)100mL分を添加した。これを30分程マグネチックスターラーを用いて撹拌して該粉末培地を水分散液に溶解させた後、121℃で15分間高圧蒸気滅菌した。この溶液を室温まで冷却したのち、この溶液に市販のL−グルタミン溶液(和光純薬工業(株)製 200mmol/L L−グルタミン溶液(×100))を終濃度4mMとなるように添加し、さらに滅菌した10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を1mL加えて2倍濃度DMEMを調製した。この溶液から少量を取りだし、pH試験紙を使用して溶液のpHがおよそpH7.0〜8.0であることを確認した。
製造例6で得られたセルロースナノファイバー(MC4)の蒸気滅菌済み0.1質量%水分散液に、滅菌済みの2倍濃度DMEM(ペニシリン・ストレプトマイシンも2倍濃度)を等量混合して0.05%の培養液を調整した。この培養液に10%FBSとなるようにFBSを加え、実施例1と同様の方法で低接着性アズノールディッシュ(アズワン社製)にhMSCの播種して培養を行い、細胞を回収し、そして未分化マーカーによる細胞の免疫染色を行った。
製造例7で得られたセルロースナノファイバー(MC5)の蒸気滅菌済み0.1質量%水分散液に、滅菌済みの2倍濃度DMEM(ペニシリン・ストレプトマイシンも2倍濃度)を等量混合して0.05%の培養液を調整した。この培養液に10%FBSとなるようにFBSを加え、実施例1と同様の方法で低接着性アズノールディッシュにhMSCを播種して培養を行い、細胞を回収し、そして未分化マーカーによる細胞の免疫染色を行った。
製造例8で得られたセルロースナノファイバー(MC6)の蒸気滅菌済み0.1質量%水分散液に、滅菌済みの2倍濃度DMEM(ペニシリン・ストレプトマイシンも2倍濃度)を等量混合して0.05%の培養液を調整した。この培養液に10%FBSとなるようにFBSを加え、実施例1と同様の方法で低接着性アズノールディッシュにhMSCを播種して培養を行い、細胞を回収し、そして未分化マーカーによる細胞の免疫染色を行った。
対照試験として、hMSCをDMEM(10%FBS含む)で低接着性アズノールディッシュに播種したものを培養し、細胞の生死判定、培地の遠心分離による細胞の回収を行った。
表4に実施例8乃至実施例13及びDMEM(NFなし)を用いたhMSC培養(対照試験)の細胞付着率及び細胞回収率を示す。
表4に示すように実施例8の0.02質量%のMC1を用いた培養では細胞無接着シャーレを用いた場合、4週間後で83.4%の細胞を回収できるとする結果が得られた。実施例9及び実施例10では、MC1の濃度をそれぞれ0.017%及び0.0125%と希薄な条件で培養を行ったが、いずれも60〜80%と高い細胞回収率が得られた。
一方、工業スケール品MC4乃至MC6のシリーズにおいては、実施例11のMC4を用いた培養と実施例13のMC6を用いた培養では2週間後までの細胞回収率が40%程度に止まったが、実施例12のMC5を用いた培養ではこれらのシリーズのうちで最も高い細胞回収率が得られ、2週間後で72%、4週間後で53%の細胞を回収できた。
これらの結果より、実施例1乃至実施例3及び実施例8乃至実施例13の微結晶セルロース由来のナノファイバー分散溶液は特にhMSCの回収及び再播種の再生着に有効であることが理解できる。
図6に示すように、実施例12の工業スケールMC5を用いた分散培養後、4週間の時点でポジティブマーカーであるSTRO−1、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105は対照試験と同程度の正常な発現を示した。
また図7に示すように、ネガティブマーカーであるCD11b、CD14、CD19、CD34、CD45に関しても、対照試験と同程度の免疫染色蛍光強度を示し、hMSCの性質を4週間培養後においてほぼ正常に保持していることが確認できた。
最も高い細胞回収率を示した実施例8について、分散培養後に回収されたhMSCが多分化能を保持しているかどうかを確かめるため、段落[0061]乃至[0063]に記載の方法と同様に、MSCの幹細胞性保持の基準とされている脂肪細胞、骨細胞及び軟骨細胞の3方向性分化能の有無を夫々調べた。
実施例8で培養したhMSCの脂肪細胞分化試験後、抗FABP4抗体によるhMSCの免疫染色試験の結果(図8参照)及びオイルレッドO染色の結果(図9参照)を示す。
その結果、図8に示すように回収後、脂肪分化誘導を行ったhMSCではFABP4の顕著な発現を示すとともに、図9に示すように脂肪滴の蓄積が認められた(オイルレッドO染色)。これらより分散培養したhMSCの脂肪細胞分化能の保持が確認できた。
また、実施例8で培養したhMSCの骨細胞分化試験後のアザリンレッドS染色試験の結果(図10参照)を示す。
図10に示すように骨細胞分化誘導を行ったhMSCはアリザリンレッドにより強く染色されたことから、分散培養したhMSCの骨細胞分化誘導能の保持が確認できた。
さらに、実施例8で培養したhMSCの骨細胞分化試験3週間後及び4週間後の抗アグリカン抗体による免疫染色を行った(図11及び図12参照)。
図11、12に示すように3週間及び4週間の軟骨細胞分化誘導を行ったhMSCのではアグリカンの顕著な発現が認められ、軟骨細胞分化能の保持が確認できた。
以上により実施例8において回収されたhMSCは脂肪細胞、骨細胞及び軟骨細胞の三方向性分化能を保持していることが確かめられた。
Claims (14)
- 結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーを含有する間葉系幹細胞の未分化性維持培養材料。
- 37℃、5体積%二酸化炭素雰囲気の培養条件下での使用において、1日間乃至30日間培養後の間葉系幹細胞の未分化性及び多分化能を、該幹細胞の採取直後のそれと同等の活性度で保つことができる、請求項1に記載の未分化性維持培養材料。
- 前記培養条件下で間葉系幹細胞の培養を為したとき、酵素処理により間葉系幹細胞の回収が可能である、請求項2に記載の未分化性維持培養材料。
- 前記セルロースナノファイバーが、1nm乃至100nmの平均繊維径(D)を有するナノファイバーの形態にある、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料。
- 前記セルロースナノファイバーが、0.01μm乃至10μmの平均粒子径(d)を有するナノファイバーの形態にある、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料。
- 前記セルロースナノファイバーが、平均繊維径(D)に対する平均繊維長(L)の比(L/D)が2乃至500であるナノファイバーの形態にある、請求項4に記載の未分化性維持培養材料。
- 請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の未分化性維持培養材料が液中に溶解又は分散されてなる、培養液。
- 前記未分化性維持培養材料が、前記培養液の全体積量に対して0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度で溶解又は分散されてなる、請求項7に記載の培養液。
- 間葉系幹細胞が請求項7又は請求項8に記載の培養液の液中を漂ってなる、間葉系幹細胞含有培養液。
- 前記未分化性維持培養材料が、単位体積(1mL)当たり1.0×103〜1.0×106の間葉系幹細胞を含む前記培養液の全体積量に対して0.0001%(w/v)乃至2%(w/v)の濃度で培養液中を漂ってなる、請求項9に記載の間葉系幹細胞含有培養液。
- 結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーの存在下、間葉系幹細胞を生体外で培養することにより、1日間乃至30日間培養後の該間葉系幹細胞の未分化性及び多分化能を該幹細胞の採取直後と同等の活性度で保つことを特徴とする、間葉系幹細胞の培養方法。
- 前記セルロースナノファイバーが、1nm乃至100nmの平均繊維径(D)を有するナノファイバーの形態にある、請求項11に記載の培養方法。
- 前記セルロースナノファイバーが、0.01μm乃至10μmの平均粒子径(d)を有するナノファイバーの形態にある、請求項11又は請求項12に記載の培養方法。
- 前記セルロースナノファイバーが、平均繊維径(D)に対する平均繊維長(L)の比(L/D)が2乃至500であるナノファイバーの形態にある、請求項12に記載の培養方法。
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