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JP6520166B2 - 赤外線検出素子、その製造方法及び赤外線検出器 - Google Patents
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赤外線検出素子、その製造方法及び赤外線検出器 Download PDF

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Description

本発明は、光吸収層内に半導体量子ドットが形成された赤外線検出素子、その製造方法及び赤外線検出器に関する。
近年、熱源の検知や温度測定、特定ガスの検知、暗視用カメラ等のセンサとして、赤外線検出素子が注目されている。また、この赤外線検出素子を1次元又は2次元状に配置した構成されたイメージセンサ(赤外線検出器)も注目されている。
このような赤外線検出素子の構造や材料については、多くの提案がなされている。光吸収層に半導体量子ドットが形成された量子ドット赤外線検出素子(QDIP:Quantum Dot Infrared Photodetector)は、その一例である。
このQDIPは、量子ドットの構成材料よりも大きいバンドギャップを持つ半導体材料により、当該量子ドットを3次元的に囲んだ構造となっている。これにより、量子ドットに電子や正孔が強く閉じ込められて、離散的なエネルギー準位(サブバンド)が形成される。そして、サブバンド間のエネルギー差に相当する波長の赤外線が入射すると、低いエネルギーレベルから高いエネルギーレベルにキャリアが遷移されるバンド間遷移が生じて、励起電流が検出できる。この励起電流は、入射光の波長に依存するので、QDIPは離散的な分光感度を持つようになる。
そこで、温度に依存したスペクトルの特定、ガス検知においては、ガス物質に依存したスペクトルの抽出等を高精度で行うために、QDIPの分光感度が、当該スペクトルで生じるようにする必要がある。
先に述べたように、QDIPは光吸収により電気伝導度が変化する赤外線検出素子であり、その性能指標である比検出能Dは、
Figure 0006520166
の式1で表される。ここで、Rは検知波長λに対する受光感度、Aは赤外線検出素子の受光面積、Δfは赤外線検出素子の帯域幅、iはノイズ電流である。
ノイズ電流iの主因は、暗電流であり、
Figure 0006520166
の式2で表される。ここでeは素電荷、Iは暗電流である。
式1,式2から、所望の波長に対して高い比検出能Dを持つ赤外線検出素子を構成するためには、特定波長λにおける受光感度Rを大きくすると共に、暗電流Iを小さくすることが有効であることがわかる。
また、光伝導型の赤外線検出素子であるQDIPの受光感度Rは、
Figure 0006520166
の式3で表される。ここで、ηは量子効率、gは光伝導利得g、eは素電荷、hはプランク定数、cは暗電流である。
式3から、ら所望の波長λに対して大きい受光感度Rを持つためには、量子効率η及び光伝導利得gを大きくすることが有効であることがわかる。
光伝導利得gは、
Figure 0006520166
の式4で表される。ここで、τは赤外線検出素子を流れるキャリア走行時間、τはキャリアの再結合時間である。
従って、大きな光伝導利得g持つためには、キャリア走行時間τを短くし、かつ、再結合時間τを長くすることが必要となる。
ここで、赤外線検出素子の長さをL、印加電圧をV、電気伝導度をμとすると、キャリア走行時間τは、
Figure 0006520166
の式5で表される。
以上により、電気伝導度μが高いほど、キャリア走行時間τが短くなって、光伝導利得gが大きくなる。そして、光伝導利得gが大きいほど赤外線検出素子は高い受光感度及び比検出能を持つことになる。
QDIPにおいて受光感度の向上を行った赤外線検出素子に関する技術として、特許文献1や非特許文献1がある。例えば、非特許文献1においては、QDIPの1つである量子ドットが量子井戸内にDWELL(Dot−in−Well)構造を設け、量子ドットにおける電子の遷移確率を向上させることで、赤外線検出素子の高感度化を図っている。
特許第4066002号公報
S.Krishnaほか、APPLIEDPHYSICSLETTERS83巻、14号、2745〜2747頁(2003年発行)
上述したように、QDIPの受光感度を向上させるためには、量子効率ηと光伝導利得gを改善することが必要となる。
しかし、非特許文献1による量子効率の向上方法では、光吸収により量子ドットを抜け出して伝導する電子が、他の量子ドットに捕獲されてしまう確率が大きい問題がある。このことは、再結合時間が短くなるために光伝導利得が小さくなって、受光感度が改善できないことを意味する。
先に述べたように、受光感度Rを向上させるためには光伝導利得gを大きくする必要がある。しかし、光伝導利得gは暗電流Iに比例するため、光伝導利得gを大きくするとノイズ電流iが増大して、比検出能Dを効率良く向上させることができない。
そこで、本発明の主目的は、高い比検出能を持つ赤外線検出素子、その製造方法及び赤外線検出器を提供することである。
上記課題を解決するため、半導体量子ドットを含む赤外線検出素子にかかる発明は、赤外線検出素子を伝導する電子を捕獲する量子準位のエネルギーレベルを含むキャリア供給層と、半導体量子ドットを含み、該半導体量子ドットがキャリア供給層からの電子を捕獲するエネルギーレベルの第1量子準位、該第1量子準位よりエネルギーレベルが低く、当該第1量子準位に捕獲されている電子とクーロン相互作用してエネルギーレベルが第4量子準位に変化する第2量子準位、該第2量子準位よりエネルギーレベルの低い第3量子準位の少なくとも3つの量子準位を持つ光吸収層と、キャリア供給層における量子準位と概ねエネルギーレベルの等しいサブバンド準位を持つキャリア伝導層と、を備え、光吸収層が所定波長の光を吸収して第1量子準位に捕獲されている電子が第3量子準位に励起されて第1量子準位に捕獲されている電子数が減少することにより、第4量子準位がキャリア供給層における量子準位とサブバンド準位とに概ね等しいエネルギーレベルになると、キャリア供給層における量子準位に捕獲されている電子が、第4量子準位を経てサブバンド準位を伝導することを特徴とする。
また、赤外線検出装置にかかる発明は、上記赤外線検出素子を1次元又は2次元に配置して形成したことを特徴とする。
さらに、半導体量子ドットを含む赤外線検出素子の製造方法にかかる発明は、赤外線検出素子を伝導する電子を捕獲する量子準位のエネルギーレベルを含むキャリア供給層を形成し、半導体量子ドットを含み、該半導体量子ドットがキャリア供給層からの電子を捕獲するエネルギーレベルの第1量子準位、該第1量子準位よりエネルギーレベルが低く、当該第1量子準位に捕獲されている電子とクーロン相互作用してエネルギーレベルが第4量子準位に変化する第2量子準位、該第2量子準位よりエネルギーレベルの低い第3量子準位の少なくとも3つの量子準位を持つ光吸収層をキャリア供給層に対して積層して形成し、キャリア供給層における量子準位と概ねエネルギーレベルの等しいサブバンド準位を持つキャリア伝導層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、効率よく比検出能を向上させた赤外線検出素子、その製造方法及び赤外線検出器を提供することが可能になる。
第1実施形態にかかる赤外線検出素子の断面図である。 機能部に正のバイアス電圧を印加したときのバンド構造を示した図である。 第1量子準位の電子が第3量子準位に遷移した際の様子を示すバンド構造である。 赤外線検出素子におけるキャリア供給層、光吸収層、キャリア伝導層の詳細な構造を示した図である。 正バイアス電圧が印加されたときのコラムナ量子ドットを含まない断面でのエネルギーバンド構造を示した図である。 赤外線検出器を製造する際に用いられる分子線エピタキシャル装置の概略図である。 第2実施形態にかかる赤外線検出素子のエネルギーバンド構造を示す図である。 第3実施形態にかかる赤外線検出素子のエネルギーバンド構造を示した図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。図1は、第1実施形態にかかる赤外線検出素子2の断面を示す模式図である。なお、赤外線検出器は、この赤外線検出素子2を1次元又は2次元状に配置することにより構成される。
赤外線検出素子2は、基板部10、機能部20、この機能部20を挟むように設けられたコンタクト部30を備える。
基板部10は、半導体基板11、この半導体基板11の上に設けられた緩衝層13により形成されている。
機能部20は、下部層21、キャリア供給層23、光吸収層25、キャリア伝導層27を順次積層して形成されている。なお、光吸収層25は、複数の量子ドット25aaを含んでいる。
コンタクト部30は、下部層21と緩衝層13との間に設けられた下部コンタクト層31、この下部コンタクト層31に接合された下部電極33、キャリア伝導層27の上に設けられた上部コンタクト層35、この上部コンタクト層35に接合された上部電極37により形成されている。
なお、緩衝層13は、半導体基板11と同じ材料から形成されている。また、下部コンタクト層31は、n型にドープされた半導体である。
図1においては、下部電極33と上部電極37との間に、電源4と電流計6とが直列に接続されている。これにより、機能部20に所定の電圧が印加される。この状態で、光吸収層25の量子ドット25aaが赤外線を吸収すると、機能部20の電気伝導度が変化して、電子が伝導する。従って、伝導電子の大きさは、量子ドット25aaで吸収された赤外線量に比例する。電流計6は、伝導電子による電流を検出することで、赤外線量が電流として検出される。
図2は、機能部20に正のバイアス電圧が印加されたときの当該機能部20のバンド構造を示した図である。なお、図2において左右方向が、図1における上下方向に対応し、左側が下部コンタクト層31側、右側が上部コンタクト層35側に対応している。また、同図において「○」印は、電子を示している。
キャリア供給層23は、状態密度の大きい量子準位Laを持つ。このため、下部コンタクト層31から伝導してきた殆どの電子は、量子準位Laに捕獲される。しかし、熱励起により、僅かの電子は、中間層連続状態準位Lbに遷移して光吸収層25に到達する。
光吸収層25は、少なくとも3つ以上の離散的な量子準位を持っている。図2では第1量子準位L1、第2量子準位L2、第3量子準位L3の順番でエネルギーが低くなる3つの量子準位が示されている。
キャリア伝導層27は、例えば複数の量子構造から形成されるサブバンド準位Lmと中間層連続状態準位Lbとを有する。そして、キャリア伝導層27に到達した殆どの電子は、中間層連続状態準位Lbより低いサブバンド準位Lmを伝導して上部コンタクト層35に到達する。この結果、サブバンド準位Lmの電気伝導度は、中間層連続状態準位Lbよりも大きくなる。
(動作原理)
次に、上記構成の赤外線検出素子2の動作を説明する。図3は、第1量子準位L1の電子が第3量子準位L3に遷移した際の様子を示すバンド構造である。
第1量子準位L1の電子が、第1量子準位L1と第3量子準位L3とのエネルギー差に等しいエネルギーの光(赤外線)を吸収すると、この電子は第3量子準位L3に遷移する。
第2量子準位L2のエネルギーレベルは、第1量子準位L1に存在する電子の個数により変化する。従って、第1量子準位L1の電子が第3量子準位L3に遷移して、当該第1量子準位L1の電子数が少なくなると、クーロン相互作用が弱まって第2量子準位L2のエネルギーレベルは下がる。このエネルギーレベルの下がった第2量子準位L2を第4量子準位L4と記載する。このとき第2量子準位L2と第4量子準位L4とのエネルギー差が、量子準位La及びサブバンド準位Lmのエネルギーレベルより高くなることがある。
そして、第4量子準位L4が、キャリア供給層23の量子準位La及びキャリア伝導層27のサブバンド準位Lmに一致すると、キャリア供給層23の電子は第4量子準位L4とサブバンド準位Lmとを伝導して上部コンタクト層35側に伝導するようになる。
即ち、第1実施形態の構造にかかる赤外線検出素子2では、第1量子準位L1と第3量子準位L3とのエネルギー差に等しいエネルギーの赤外線を第1量子準位L1の電子が吸収すると、量子準位Laの電子が第4量子準位L4とサブバンド準位Lmとを伝導するようになる。この伝導は、赤外線検出素子2が赤外線を吸収したことにより、機能部20の電気伝導度が変化したとみなせる。
一方、第1量子準位L1の電子が赤外線を吸収しないとき、量子準位Laの電子うちの僅かな電子が熱励起されて電気伝導度の低い中間層連続状態準位Lbのエネルギーレベルに遷移して上部コンタクト層35に到達する。このときの電子の伝導は、暗電流として検出される。
従って、第1量子準位L1の電子が赤外線を吸収したときにのみ、量子準位Laの電子が第4量子準位L4を経てサブバンド準位Lmを伝導し、これが光電流として検出される。このときの伝導は、再結合時間を経て第1量子準位L1に再び捕獲されるまで継続する。
以上により、赤外線検出素子2は、赤外線の吸収により電気伝導度が変化し、赤外線検出素子2が光吸収層で赤外線を吸収したときに流れる電流(光電流)に対しては、高い電気伝導度を示す。一方、赤外線を吸収しない場合には、赤外線検出素子2は低い電気伝導度を示す。このとき流れる電流は暗電流となる。暗電流が流れているときのキャリア走行時間τは、式5及び式4から小さくなる。これにより暗電流に対する光電流の光伝導利得が大きくなり、赤外線検出素子2の比検出能が向上する。
(構成例)
次に、上記赤外線検出素子2の構成例を詳細に説明する。図4は、図1に示す赤外線検出素子2におけるキャリア供給層23、光吸収層25、キャリア伝導層27の詳細な構成を示す図である。
キャリア供給層23は、厚さ数十nmの第1中間層23a、該第1中間層23aの上に形成された厚さ数nmの量子井戸層23b、その上に形成された厚さ数十nmの第2中間層23cにより形成されている。
量子井戸層23bは、第1中間層23a及び第2中間層23cよりもバンドギャップの小さい材料で形成される。第2中間層23cのバンドギャップは、第1中間層23aと比較して大きい。
第1中間層23aは例えばAlGaAs、量子井戸層23bは例えばGaAs、第2中間層23cは例えば第1中間層23aよりもAl成分比の多いAlGaAsが例示できる。
量子井戸層23bの上下は、量子井戸層23bよりも大きいバンドギャップを持つ材料により覆われて形成された量子井戸である。量子力学に基づけば、量子井戸に束縛された電子は、離散的な準位を形成する。この準位が、図2における量子準位Laとなる。
光吸収層25は、第2中間層23c上に平面的に形成された複数の量子ドット25aaと該量子ドット25aaの下部及び周囲を囲う量子ドット埋込層25abとからなる量子ドット層25a、量子ドット層25aの上部に積層された厚さ数十nmの第3中間層25bによって形成されている。量子ドット層25aは、例えばGaAs量子ドット埋め込み層中に形成されたInAs量子ドット、第3中間層25bはAlGaAsが例示できる。
量子力学に基づけば、量子ドットに束縛された電子は離散的なエネルギー準位しかとることができない。そして、量子ドット層における複数の準位のうち3つの量子準位が、第1量子準位L1、第2量子準位L2、第3量子準位L3に対応している。また、量子ドットの伝導帯の離散的な量子準位は、一般に波長が数μm〜10数μmの赤外線のエネルギーに等しい。
キャリア伝導層27は、複数の量子ドットを縦方向に連結してなるコラムナ量子ドット27aを含み、コラムナ量子ドット27aの周囲は第4中間層27bで覆われている。
殆どのコラムナ量子ドット27aは、光吸収層25の量子ドット25aaの直上に積層されている。第4中間層27bは、例えばAlGaAsであり、コラムナ量子ドット27aはInGaAsが例示できる。コラムナ量子ドット27aにおいては、それを形成する複数の量子ドットの離散的エネルギー準位が図中上下方向に結合し、図2におけるサブバンド準位Lmに対応した結合準位を形成する。
図5は、コラムナ量子ドット27aを含まない赤外線検出素子のエネルギーバンド構造を示した図である。図2の場合と同じように、図5の左右方向は図4の上下方向に対応し、図5の左側が下部コンタクト層31側、右側が上部コンタクト層35側に対応している。
但し、コラムナ量子ドット27aを含まないためキャリア伝導層には量子準位は形成されておらず、このためサブバンド準位も形成されていない。
このような構成で、光吸収層25で第1量子準位L1と第3量子準位L3とのエネルギー差に等しいエネルギーの赤外線が吸収された場合を考える。このとき、第1量子準位L1の電子は第3量子準位L3に遷移する。これにより、第2量子準位L2のエネルギーレベルが下がり、量子準位Laと一致又は近接したとする。
このような状態で第2量子準位L2の電子が伝導しようとしても、第2量子準位L2と中間層連続状態準位Lbとのエネルギー差が大きいため中間層連続状態準位Lbに遷移できないので、第2量子準位L2の電子は伝導できない。従って、光吸収層25で赤外線の吸収が起きても、光電流を検出することが困難になる。無論、熱励起により中間層連続状態準位Lbに遷移する電子も皆無ではないが、非常に少ないことはいうまでもない。
よって、コラムナ量子ドット27aを形成することにより、光電流がサブバンド準位Lmを伝導して、効率よく検出できるようになる。
(製造方法)
次に、赤外線検出素子2の製造方法を説明する。図6は、赤外線検出素子2を製造する際に用いられる分子線エピタキシャル(MBE)装置の概略を示している。
面方位(001)の半絶縁性のノンドープGaAsの半導体基板11を真空チャンバ50内の基板ホルダ51に装着する。基板ホルダ51には、半導体基板11の温度調整するための電気ヒータが設けられている。また、基板ホルダ51は、供給される原料が原料供給源52〜53の位置に拠らず均一な厚さになるように、半導体基板11を回転させるための回転機構が設けられている。
第1原料供給源52はIII族元素であるIn、第2原料供給源53はIII族元素であるGa、第3原料供給源54はV族元素であるAsが、ターゲット材としてセットされている。以下、特に記載の無い場合には半導体基板11を回転させながら製造する。
続いて、GaAsからなる半導体基板11に第3原料供給源54からV族元素であるAsを照射しながら、半導体基板11の温度を上昇させることにより、半導体基板11に形成された自然酸化膜を除去する。酸化膜の除去処理後、基板温度を580℃程度に設定し、厚さ500nmの緩衝層13を形成する。緩衝層13は、半導体基板11と同じノンドープGaAsとする。
次に、Si原子を濃度2×1018cm−3程度ドーピングしたGaAsからなるn型の下部コンタクト層31を500nmの厚さで形成する。
さらに、ノンドープGaAsで構成されるi型の下部層21、AlGaAsで構成されるi型の第1中間層23aを50nmの厚さで積層した後、Si原子をドーピングしたGaAsからなる量子井戸層23bを代表値として5nmの厚さで積層する。その後、ノンドープAlGaAsで構成されるi型の第2中間層23cを積層する。
続いて、第2中間層23cの上部に厚さ2nmのGaAsを形成した後、基板温度を490℃程度まで下げる。そして、第3原料供給源54からAsを照射しながら、第1原料供給源52からInを厚さが2原子層相当となる量だけ供給し、InAsからなる量子ドット25aaを形成する。
このとき、InAsとGaAsとの格子定数の違いから発生する歪みによって、InAs層は2次元薄膜ではなく島状の3次元形状に成長する。この成長モードはSK(Stranski−Krastanov)モードと呼ばれる。
このようにして量子ドットが高密度に平面上に並んで形成されて、これが量子ドット25aaの層となる。量子ドットの典型的な直径は20〜30nm、高さ3〜7nm程度であり、1平方センチメートルあたりの数密度は1×1011個程度である。
続いて、量子ドット25aaの上部にドーピングを行う。ドーパントは例えばSi原子を用い、このSi原子を照射することにより量子ドットを層表面に散布した状態で形成する。Si原子の散布面密度は、量子ドットの面密度と同じ程度にする。即ち、量子ドットの面密度Ncm−2としたとき、Si原子の散布面密度もNcm−2程度にする(Nは正性の自然数である)。
量子ドット25aaを成長させた後、In及びGaの供給を停止し、基板温度を50℃程度に下げて、量子ドット埋込層25abを形成する。量子ドット埋込層25abは、厚さが5nmであり、材料はGaAsである。
その後、再び基板温度を少なくとも30℃以上に保持しながら、Asのみを照射した状態を数分間維持する。なお、このときの基板温度は、量子ドット25aa及び量子ドット埋込層25abが、ダメージを受けない温度(熱的影響を受けない)に設定する。
量子ドット25aaの高さにはバラツキが存在するため、幾つかの量子ドットの頂部は量子ドット埋込層25abから突出することがある。そして、突出部分の高さにもバラツキが存在する。しかし、本工程を行うことにより、量子ドット埋込層25abから突出している量子ドット25aaにおける頭頂部が蒸発し、又は、水平方向に拡散して平坦化される。これにより、量子ドット25aaの高さは均一化されて、量子ドット埋込層25abの厚さと略一致するようになる。
続いて、第4中間層27bの下部層を形成した後、基板温度を490℃程度まで下げて、第3原料供給源54からAsを照射し、第1原料供給源52からInを、第2原料供給源53からGaを、2原子層の厚みに相当する量だけ供給し、InGaAsからなる量子ドットを形成する。
この量子ドット25aa及び量子ドット埋込層25abの形成手順と同様の手順でInGaAs量子ドット、AlGaAsからなる埋め込み層の積層工程を複数回繰り返すことで、AlGaAs量子ドットが成長方向に連結したコラムナ量子ドット27a及び第4中間層27bが形成される。
量子ドット25aaの形成による歪みは、第2中間層23cの表面に蓄積されるので、コラムナ量子ドット27aは量子ドット25aaの直上にのみ形成される。
次に、第4中間層27bの上に、Si原子を濃度2×1018cm−3程度ドーピングしたGaAsで構成される200nmの厚さのn型の上部コンタクト層35を積層し、赤外線検出素子2の基板(赤外線検出器用ウエハ)の製造工程が終了する。
続いて、製造した赤外線検出器用ウエハを加工して赤外線検出素子2を製造する工程について述べる。
赤外線検出器用ウエハの加工には、フォトリソグラフィー法、ドライエッチング又はウエットエッチング法を利用する。まず、ウエハにレジストをスピンコート法により塗布し、フォトリソグラフィー法により赤外線検出素子分離のためのパターン(例えば正方形パターン)を形成する。
このパターンをマスクとし、ドライエッチング法又はウエットエッチング法により、図4に示すように上部コンタクト層35、キャリア伝導層27、光吸収層25、キャリア供給層23及び下部コンタクト層31の途中までエッチングし、下部コンタクト層31の表面の一部を露出させる。
本工程により、赤外線検出器用ウエハには複数の赤外線検出素子2が分離して形成される。赤外線検出素子2の受光面の直径は、用途によって異なるが、典型的には20μm〜300μmである。
次に、上部コンタクト層35と下部コンタクト層31との電極を形成すべくAuGe/Ni/Auからなるアロイオーミック電極を形成し、図4に示されるような上部電極37及び下部電極33とする。上部電極37及び下部電極33は、それぞれリソグラフィー、金属蒸着、レジスト剥離等の工程を含むリフトオフ法によって形成し、赤外線を透過する窓構造及び電極構造を所望の形状で所望の位置に形成する。
以上により、図4に示す赤外線検出素子2が完成する。
なお、上記製造方法においては、量子ドット25aaを含む光吸収層やそれらの周辺構造をMBE法によって形成しているが、成長方法はこの方法に限定されるものではない。例えば、これらの構造を有機金属気相成長法(MOCVD法)等の他の結晶成長法を用いて形成してもよい。
また、キャリア伝導層27、光吸収層25、キャリア供給層23等の材料組成、厚さ、材料構成は、本発明の効果を満たすものであれば上記に限定されることはない。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用い説明を適宜省略する。図7は、第2実施形態にかかる赤外線検出素子2の電子のエネルギーバンド構造を示す図である。
第2実施形態にかかる赤外線検出素子の電子のエネルギーバンド構造は、第1実施形態の赤外線検出素子の電子のエネルギーバンド構造に対して、共鳴準位Lcが形成されている点が相違している。この共鳴準位Lcのエネルギーレベルは、第3量子準位L3のエネルギーレベルと等しい。
そして、第1実施形態と同様に光吸収層25の第1量子準位L1の電子が、第1量子準位L1と第3量子準位L3とのエネルギー差に等しいエネルギーの赤外線を吸収して第3量子準位L3に遷移する。
このときキャリア供給層23の量子準位Laの電子は、第4量子準位L4を介して電気伝導度の高いサブバンド準位Lmを伝導して上部コンタクト層35に到達する。
一方、第3量子準位L3に遷移した電子は、第2量子準位L2及び第1量子準位L1に緩和する確率よりも高い確率で、光吸収層25とキャリア伝導層27との間のポテンシャルバリアをトンネルして共鳴準位Lcに移動する。この共鳴準位Lcは、コラムナ量子ドット27aの成長条件を変える(例えば、成長温度を変える)ことで生成できる。
第3量子準位L3に遷移した電子は高い確率で共鳴準位Lcにトンネルするため、第3量子準位L3から第1量子準位L1に緩和する確率が低下する。即ち、赤外線の吸収で励起された電子を効率よくキャリア伝導層に伝導させることが可能になる。このため、第1実施形態と比較して式4におけるキャリアの再結合時間τが大きくなり、赤外線検出素子2の光伝導利得が増加する利点がある。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態を説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用い説明を適宜省略する。
図8は、第3実施形態にかかる赤外線検出素子の電子のエネルギーバンド構造を示した図である。第3実施形態にかかる赤外線検出素子のエネルギーバンド構造は、第1実施形態にかかる赤外線検出素子のエネルギーバンド構造に対して、第1量子準位L1の波動関数W1と第2量子準位L2の波動関数W2との偶奇性が等しくなるように形成されている点が相違する。
量子力学によれば、量子準位間の光の放出、吸収を伴う光学遷移は偶奇性の異なる波動関数の間でのみ許容されるので、波動関数W1と波動関数W2との偶奇性が等しい場合には、電子は第1量子準位L1と第2量子準位L2との間で光放出に伴う緩和、光励起に伴う励起を起こさない。そこで、第1量子準位L1の波動関数W1と第2量子準位L2の波動関数W2とは、対称な波動関数(即ち、偶のパリティ)を持つ構成となっている。
このような構成で、光吸収層25の第1量子準位L1と第3量子準位L3とのエネルギー差に等しいエネルギーの赤外線を第1量子準位L1の電子が吸収すると、電子は第3量子準位L3にのみ遷移する。そして、キャリア供給層23の量子準位Laの電子は、第2量子準位L2を介して電気伝導度の高いサブバンド準位Lmを優先的に伝導して、上部コンタクト層35に到達する。
第1実施形態においては、第3量子準位L3に遷移した電子は、第2量子準位L2に緩和した(準位を下げる)後、第1量子準位へと緩和をする。しかし、本第3実施形態においては、第1量子準位L1の波動関数W1と第2量子準位L2の波動関数W2とは偶奇性が等しいため、光放出に伴う緩和が起こらず、第2量子準位L2の電子の寿命は長くなるため、サブバンド準位Lmに伝導する確率が向上する。即ち、光吸収による第2量子準位が効率よく第4量子準位に変わり、赤外線の検出感度が向上する。
また、第2量子準位L2から第1量子準位L1に緩和する確率が小さくなるので、式4におけるキャリアの再結合時間τが大きくなり、赤外線検出素子2の光伝導利得が増加する効果がある。
上記各実施形態において説明した赤外線検出素子は、中赤外及び中遠赤外領域において高感度な赤外線検出装置や光トランジスタに適用することが可能である。
また、特定の波長を選択的に受信することが必要となる通信用の受光器といった用途にも適用可能であることを付言する。
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
2 赤外線検出素子
10 基板部
11 半導体基板
13 緩衝層
20 機能部
21 下部層
23 キャリア供給層
23a 第1中間層
23b 量子井戸層
23c 第2中間層
25 光吸収層
25a 量子ドット層
25aa 量子ドット
25ab 量子ドット埋込層
25b 第3中間層
27 キャリア伝導層
27a コラムナ量子ドット
27b 第4中間層
30 コンタクト部
31 下部コンタクト層
33 下部電極
35 上部コンタクト層
37 上部電極

Claims (10)

  1. 半導体量子ドットを含む赤外線検出素子であって、
    前記赤外線検出素子を伝導する電子を捕獲する量子準位のエネルギーレベルを含むキャリア供給層と、
    前記半導体量子ドットを含み、該半導体量子ドットが前記キャリア供給層からの前記電子を捕獲するエネルギーレベルの第1量子準位、該第1量子準位よりエネルギーレベルが低く、当該第1量子準位に捕獲されている電子とクーロン相互作用してエネルギーレベルが第4量子準位に変化する第2量子準位、該第2量子準位よりエネルギーレベルの低い第3量子準位の少なくとも3つの量子準位を持つ光吸収層と、
    前記キャリア供給層における前記量子準位と概ねエネルギーレベルの等しいサブバンド準位を持つキャリア伝導層と、を備え、
    前記光吸収層が所定波長の光を吸収して前記第1量子準位に捕獲されている電子が前記第3量子準位に励起されて前記第1量子準位に捕獲されている電子数が減少することにより、前記第4量子準位が前記キャリア供給層における前記量子準位と前記サブバンド準位とに概ね等しいエネルギーレベルになると、前記キャリア供給層における前記量子準位に捕獲されている電子が、前記第4量子準位を経て前記サブバンド準位を伝導することを特徴とする赤外線検出素子。
  2. 請求項1に記載の赤外線検出素子であって、
    前記キャリア供給層は、第1中間層、量子井戸層、第2中間層の積層体により形成され、かつ、前記量子井戸層のバンドギャップが前記第1中間層及び前記第2中間層のバンドギャップより小さい材料により形成されて、当該量子井戸層に前記キャリア供給層における前記量子準位が形成されていることを特徴とする赤外線検出素子。
  3. 請求項1又は2に記載の赤外線検出素子であって、
    前記キャリア伝導層は、前記光吸収層から積み上げる方向に複数の量子ドットが連結したコラム量子ドットを含むことを特徴とする赤外線検出素子。
  4. 請求項3に記載の赤外線検出素子であって、
    前記コラム量子ドットは、前記光吸収層における前記量子ドットの直上に形成されていることを特徴とする赤外線検出素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線検出素子であって、
    前記光吸収層に接する前記キャリア伝導層の近傍領域に前記第3量子準位と概ね同じエネルギーレベルの共鳴準位が形成されていることを特徴とする赤外線検出素子。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線検出素子であって、
    前記第1量子準位の結晶成長方向に対する波動関数と前記第2量子準位の結晶成長方向に対する波動関数との偶奇性が等しいことを特徴とする赤外線検出素子。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の赤外線検出素子を1次元又は2次元に配置して形成したことを特徴とする赤外線検出装置。
  8. 半導体量子ドットを含む赤外線検出素子の製造方法であって、
    前記赤外線検出素子を伝導する電子を捕獲する量子準位のエネルギーレベルを含むキャリア供給層を形成し、
    前記半導体量子ドットを含み、該半導体量子ドットが前記キャリア供給層からの前記電子を捕獲するエネルギーレベルの第1量子準位、該第1量子準位よりエネルギーレベルが低く、当該第1量子準位に捕獲されている電子とクーロン相互作用してエネルギーレベルが第4量子準位に変化する第2量子準位、該第2量子準位よりエネルギーレベルの低い第3量子準位の少なくとも3つの量子準位を持つ光吸収層を前記キャリア供給層に対して積層して形成し、
    前記キャリア供給層における前記量子準位と概ねエネルギーレベルの等しいサブバンド準位を持つキャリア伝導層を形成することを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
  9. 請求項8に記載の赤外線検出素子の製造方法であって、
    前記キャリア供給層を第1中間層、量子井戸層、第2中間層の積層体により形成し、かつ、その際に前記量子井戸層のバンドギャップが前記第1中間層及び前記第2中間層のバンドギャップより小さい材料により形成することを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
  10. 請求項8又は9に記載の赤外線検出素子の製造方法であって、
    前記キャリア伝導層を形成する際に、前記光吸収層から積み上げる方向に複数の量子ドットが連結してコラム量子ドットを形成することを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。

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