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JP6524810B2 - 耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、衝突変形時のスポット溶接部の耐破断性に優れた鋼板とその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保護のために自動車の燃費向上が求められ、車体の軽量化及び乗員の安全性確保の観点から、高強度鋼板のニーズが高まっている。自動車用部材に供される鋼板は、良好なプレス成形性と高強度が求められるとともに、部材同士を結合するスポット溶接部が衝突変形時に破断せず、十分な衝撃吸収能を持つことが、乗員の安全性を確保する観点で重要である。
衝撃吸収部位に使用する伸びが良好かつ高強度な鋼板として、残留オーステナイトのTRIP効果を利用する鋼板が知られている。例えば、特許文献1には、強度及び延性の両方が優れた鋼板が開示されている。しかし、高強度化にした上で、耐スポット溶接部破断特性をどのように向上させるのかについては明らかでない。
特許文献2や特許文献3には、スポット溶接時の溶接条件を工夫し、スポット溶接の通電が終了して一定の時間が経過した後に、再度通電を行い、形成されたナゲット周囲の材料組織を改質することで、継手試験強度を向上させる手法が開示されている。しかし、衝突変形時のスポット溶接部の破断回避に直接関連するものではなく、また、鋼板に関する知見は記載されていない。
特許文献4には、スポット溶接時に形成されるナゲットの曲率を制御することにより、継手強度を向上させる方法が開示されている。しかし、衝突変形時のスポット溶接部破断回避に直接関係するものではなく、また、鋼板に関する知見は記載されていない。
特許文献5には、継手強度を、鋼板側の改良で向上させる方法が開示されている。これによると、溶接時に形成されるナゲット内の介在物密度と粒子径、及び、ナゲットのミクロ組織を適切に制御すると、十字引張強さに代表される継手強度が向上するとしている。しかし、特許文献5の方法も、衝突変形時のスポット溶接部破断回避に直接関係するものではない。
特許文献6には、ホットスタンプ用の鋼板について、0.7%以上のSiを含有させ、さらに、還元性雰囲気で焼鈍した後、めっきを施す製造方法が開示されている。Siの含有が継手強度を向上させるとしているが、衝突変形時のスポット溶接部破断回避については記載されていない。
特許文献7には、鋼板に脱炭焼鈍を施し、次いで、鋼板をAc1点以上に加熱する方法が開示されている。この方法によれば、鋼板表層は、C含有量が0.1%以下の軟質層となり、曲げ性が向上するが、特許文献7に、衝突変形時のスポット溶接部の破断回避については記載されていない。
特開平11−279691号公報 特開2010−115706号公報 特開2010−172946号公報 特開2014−180686号公報 特開2014−180698号公報 特開2014−185395号公報 特開平05−195149号公報
本発明は、鋼板に、乗員の安全性確保の観点から、高強度とともに、衝突変形時のスポット溶接部の耐破断特性が求められていることに鑑み、高強度を最大限に活かすために、衝突変形時に危惧されるスポット溶接部の耐破断性を向上させることを課題とし、該課題を解決する鋼板と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、衝突変形時のスポット溶接部破断特性を向上させる方法について鋭意検討した。高強度材と低強度材を接合した場合、予想に反して、低強度材側でなく、高強度材側のナゲット周囲で破断が生じることが解った。さらに検討を進めたところ、高強度材の表層を軟質化すと、破断の発生を回避できることが解った。しかし、高強度材の表層の軟質化を進め過ぎると、再び破断が発生することが解った。
即ち、鋼板表層と鋼板中心部の硬度を適切に制御すれば、耐スポット溶接部破断特性が飛躍的に向上することが判明した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmとの比(Hs/Hm)が0.4以上0.8以下であることを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(2)前記(1)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板において、
化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
鋼板表面から深さ5μm以上200μm以下までの鋼板表層が、焼戻しマルテンサイトを1体積%以上含有し、残部が主に平均結晶粒径20μm以下のフェライトからなる脱炭フェライト層からなり、
鋼板中心部が、3.0体積%以上の焼戻しマルテンサイトと5.0体積%以上の残留オーステナイトとを含有する組織からなり、
圧延直角方向の引張試験における引張強度が980MPa以上の機械特性を有する
ことを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(3)前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(2)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(4)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(5)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(6)前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
(8)化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、400℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
上記冷却工程の後、冷却した鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻し施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(9)前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(8)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(10)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(8)又は(9)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(11)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(12)前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(13)化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.000%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、450〜600℃の温度域まで冷却する第1冷却工程、
上記第1冷却工程の後、冷却した鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき工程、
上記めっき工程の後、めっきした鋼板を、平均冷却速度5℃/秒以上で、200℃以下の温度域まで冷却する第2冷却工程、
上記第2冷却工程の後、冷却しためっき鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(14)前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(13)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(15)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(13)又は(14)に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(16)前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする前記(13)〜(15)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
(17)前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする前記(13)〜(16)のいずれかに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
本発明によれば、衝突変形時のスポット溶接部の耐破断性に優れた鋼板を製造し提供することができる。
ハット型成形部材において、スポット溶接部の破断態様を確認する衝突試験を模式的に示す図である。
本発明の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板(以下「本発明鋼板」ということがある。)は、鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmとの比(Hs/Hm)が0.4以上0.8以下であることを特徴とする。
また、本発明鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする。
本発明の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、
化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、400℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
上記冷却工程の後、冷却した鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻し施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする。
また、本発明製造方法は
化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.000%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、450〜600℃の温度域まで冷却する第1冷却工程、
上記第1冷却工程の後、冷却した鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき工程、
上記めっき工程の後、めっきした鋼板を、平均冷却速度5℃/秒以上で、200℃以下の温度域まで冷却する第2冷却工程、
上記第2冷却工程の後、冷却しためっき鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする。
以下、本発明鋼板と本発明製造方法について説明するが、最初に、本発明者らの、上記課題を解決する手法についての検討について説明する。
通常、スポット溶接部の衝突時の耐破断性は、せん断引張強さ(TSS)や十字引張強さ(CTS)などの、継手試験での破断荷重で評価されることが多い。これらの継手試験強度は、鋼板の高強度化とともに増加するが、せん断引張強さは、590MPa級の鋼板までは、鋼板強度の増加とともに増加し、鋼板強度が590MPaを超えると、増加率が低くなる。
十字引張強さは、590MPa級の鋼板までは、鋼板の高強度化とともに増加するが、鋼板強度が590MPaを超えると、減少していく。
従来、高強度鋼板のスポット溶接部の衝突時の破断は、鋼板の高強度化で減少する十字引張強さと関連した現象であると捉え、それを前提に、十字引張強さの向上を目指す取り組みがなされてきた(例えば、特許文献5、参照)。
しかし、本発明者らが衝突実験を行った結果によれば、1470MPa級(引張強さ)の鋼板と軟鋼板のスポット溶接部において、本来、高強度で変形が小さく、破断の危険性が小さいはずの1470MPa級鋼板の溶接部(ナゲット)周囲の母材に破断が生じた。
そこで、1470MPa級鋼板の表層を軟質化する処理を行い、再度、衝突実験を行った結果、鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmとの比(Hs/Hm)が、所要の範囲内にあるときに、高強度材側の破断を回避することができ、優れた耐破断特性が発現することを知見した。
鋼板表層の硬度Hsは、鋼板表面から深さ5μm以上100μm以下までの鋼板表層の平均硬度であり、鋼板中心部の硬度Hmは、板厚中心部の平均硬度である。
鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)の上限は0.8とする。これは、上記比(Hs/Hm)が0.8を超えると、表層軟質化効果が発現しなかったためである。硬度比(Hs/Hm)の下限は0.4とする。これは、硬度比(Hs/Hm)が0.4未満では、再び、破断が生じ始めたためである。
鋼板表層を軟質化することにより、高強度材側のスポット溶接部の破断を回避できる理由は明確でないが、次の二つの機構が想定される。
一つは、破断が局所的な曲げ変形によるものであると考える機構である。即ち、鋼板表層を軟質化することにより曲げ性が向上し、破断を回避できたと考える機構である。硬度比(Hs/Hm)の上限は、十分な曲げ性を確保できる臨界値であり、硬度比(Hs/Hm)の下限は、鋼板表層が軟らかくなり過ぎて、鋼板表層の拘束効果が消失する臨界値であると捉えることができる。
他の一つは、応力三軸度の高い領域での破断限界の向上効果である。スポット溶接部の周囲の母材は、溶接部により複雑な応力関係の下で拘束されているため、単軸引張よりも、応力三軸度の高い状態にあると考えられる。応力三軸度の高い領域において、鋼板表層の軟質化が、破断限界を飛躍的に向上させる可能性がある。
この場合も、硬度比(Hs/Hm)の範囲(0.4以上0.8以下)は、破断限界の飛躍的向上効果が発現する領域として考えることができる。
本発明鋼板において、最も重要な点は、鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)を適切な範囲(0.4以上0.8以下)に制御することで、衝突変形時のスポット溶接部の破断を回避できることにある。
鋼板表層の硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)は、鋼板の化学組成や機械特性に、直接、依存する指標でないから、本発明鋼板において、化学組成と機械特性は、特に限定する必要はないが、本発明者らの試験結果によれば、引張強さ980MPa級以上の鋼板において、上記比(Hs/Hm)の効果が大きく発現する。さらに、引張強さが1300MPa級以上の鋼板において、上記比(Hs/Hm)の効果がより大きく発現する。
その理由は、前述のように、曲げ性又は高い応力三軸度の下での耐破断特性が、980MPa級以上、さらには、1300MPa級以上の鋼板で大きく劣化するのに対し、上記比(Hs/Hm)の適切な制御により、上記比(Hs/Hm)の効果が顕著に発現するためであると考えられる。
前述したように、本発明鋼板の化学組成は、特に限定する必要はないが、上記比(Hs/Hm)の効果が確実に大きく発現する好ましい化学組成の限定理由について説明する。以下、化学組成に係る%は質量%を意味する。
(A)化学組成
C:0.03%以上0.70%以下
Cは、高い引張強さを得るために有効な元素である。0.03%未満では、必要な引張強さが得られないので、Cは0.03%以上とする。好ましくは0.05%以上である。一方、0.70%を超えると、鋼板の溶接性が低下するので、Cは0.70%以下とする。好ましくは0.45%以下である。
Si:0.25%以上3.00%以下
Siは、セメンタイトの析出を抑制し、オーステナイトの残留を促進し、伸びを高めるために必須の元素である。また、Siは、フェライトを強化し、組織を均一化して、高強度化に寄与する元素である。
0.25%未満では、添加効果が十分に得られないので、Siは0.25%以上とする。好ましくは0.40%である。脱炭フェライト層の成長とオーステナイトの生成が容易になる点で、0.60%以上が、より好ましい。一方、3.00%を超えると、めっき工程で不具合が生じるので、Siは3.00%以下とする。好ましくは2.50%以下である。
Mn:1.00%以上5.00%以下
Mnは、脱炭層のフェライトにマルテンサイトを分散させるために必須の元素である。また、Mnは、セメンタイトの析出を抑えながらM−Aを生成させ、強度と伸びの向上に寄与する元素である。
1.00%未満では、添加効果が十分に得られないので、Mnは1.00%以上とする。好ましくは1.90%以上である。一方、5.00%を超えると、鋼板の溶接性が低下するので、Mnは5.00%以下とする。好ましくは4.20%以下、より好ましくは3.50%以下である。
P:0.10%以下
Pは、不純物元素で、溶接性を阻害する元素である。0.10%を超えると、溶接性が著しく低下するので、Pは0.10%以下とする。好ましくは0.02%以下である。下限は0%を含むが、Pを0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
S:0.010%以下
Sは、不純物元素で、鋼中にMnSを形成して、穴広げ性を阻害する元素である。0.010%を超えると、穴広げ性が著しく低下するので、Sは0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.002%以下である。
下限は0%を含むが、Sを0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
sol.Al:0.001%以上1.50%以下
Alは、脱酸元素で、鋼材を健全化する元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に発現しないので、sol.Alは0.001%以上とする。好ましくは0.200%以上である。
一方、1.50%を超えると、介在物が増加し、成形性が劣化するので、sol.Alは1.50%以下とする。また、Alは、Siと同様に、セメンタイトの析出を抑えて、残留オーステナイト量を増加させるのにも有効であるので、この点で、sol.Alは1.00%以下が好ましい。
N:0.020%以下
Nは、不純物元素で、連続鋳造中に窒化物を形成して、スラブのひび割れの原因となるので、少ない方が好ましい元素である。0.020%を超えると、スラブのひび割れが頻発するので、Nは0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下である。
下限は0%を含むが、Nを0.0001%未満に低減すると、製造コストが大幅に上昇するので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
本発明鋼板の化学組成は、上記元素の他、本発明鋼板の特性の向上を図るため、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%の1種又は2種以上を含んでもよい。
Ti:0〜0.30%
Nb:0〜0.30%
V :0〜0.30%
Ti、Nb、及び、Vは、結晶粒の核として作用する析出物を形成し、結晶粒の微細化し、強度と靱性の向上に寄与する元素である。
しかし、Ti、Nb、及び、Vのそれぞれが0.30%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Ti、Nb、及び、Vのいずれの元素も0.30%以下とする。好ましくは、いずれの元素も0.20%以下である。
Ti、Nb、及び、Vのいずれの元素も下限は0%であるが、いずれの元素も0.001%未満であると、添加効果が十分に発現しないので、Ti、Nb、及び、Vのいずれの元素も0.001%以上が好ましい。より好ましくは、いずれの元素も0.007%以上である。
TiとNbは、熱処理によって組織を部分的又は完全にオーステナイト化された鋼において、フェライトの生成によるオーステナイトへのC濃化を促進し、M−Aの生成に寄与するので、TiとNbの一方又は両方は0.010%以上が好ましく、0.030%以上がより好ましい。
Cr:0〜2.00%
Mo:0〜2.00%
Cr及びMoは、Mnと同様に、オ−ステナイトを安定化して、変態強化を促進する作用をなし、鋼板の高強度化に寄与する元素である。
しかし、Cr及びMoそれぞれが2.00%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Cr及びMoのいずれの元素も2.00%以下とする。好ましくは、Crは1.00%以下、Moは0.50%以下である。
Cr及びMoのいずれの元素も下限は0%であるが、いずれの元素も0.001%未満であると、添加効果が十分に発現しないので、Cr及びMoのいずれの元素も0.001%以上が好ましい。より好ましくは、Crは0.100%以上、Moは0.050%以上である。
Cu:0〜2.00%
Ni:0〜2.00%
Cu及びNiは、腐食抑制効果を奏する元素であり、また、鋼板の表面に濃化して、水素の鋼板内への侵入を抑制し、鋼板の遅れ破壊を抑制する作用をなす元素である。
しかし、Cu及びNiのいずれの元素も2.00%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Cu及びNiのいずれの元素も2.00%以下とする。好ましくは、いずれの元素も0.08%以下である。
Cu及びNiのいずれの元素も下限は0%であるが、いずれの元素も0.001%未満であると、添加効果が十分に得られないので、Cu及びNiのいずれの元素も0.001%以上が好ましい。より好ましくは、いずれの元素も0.010%以上である。
B:0〜0.020%
Bは、粒界からの核生成を抑制し、鋼板の焼入れ性を高めて、鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Bは、M−Aを効果的に生成させて、鋼板の伸びの向上に寄与する元素である。
しかし、0.020%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Bは0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下である。下限は0%であるが、0.0001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Bは0.0001%以上が好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。
Ca:0〜0.010%
Caは、MnSなどの介在物を球状化し、鋼の変形能の向上に寄与する元素である。しかし、0.010%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Caは0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
下限は0%であるが、0.0005%未満では、添加効果が十分に得られないので、Caは0.0005%以上が好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。
REM:0〜0.10%
REMは、Caと同様に、MnSなどの介在物を球状化し、鋼の変形能の向上に寄与する元素である。しかし、0.10%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、REMは0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
下限は0%であるが、0.0005%未満では、添加効果が十分に得られないので、REMは0.0005%以上が好まし。より好ましくは0.0010%以上である。
なお、REMは、ランタノイド元素(LaからLnまでの15元素)及びSc(スカンジウム)とY(イットリウム)を含む意味である。なかでも、La、Ce、及び、Yの1種以上の元素を含有することが好ましい。より好ましくは、La及び/又はCeである。
Bi:0〜0.050%
Biは、打抜き加工性と被削性の向上に有効な元素である。しかし、0.0050%を超えると、添加効果が飽和し、製造コストが上昇するので、Biは0.050%以下とする。好ましくは0.020%以下である。
下限は0%であるが、0.005%未満では、添加効果が十分に得られないので、Biは0.005%以上が好ましい。より好ましくは0.010%以上である。
残部:鉄及び不可避的不純物
本発明鋼板の化学組成の残部は鉄及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、鋼原料(鉱石、スクラップ等)から、又は、製造工程の種々の要因で不可避的に混入する元素である。不可避的不純物は、本発明鋼板の特性を阻害しない範囲の量で許容される。
次に、上記比(Hs/Hm)を確保し得る鋼板の組織構造について説明する。本発明鋼板の組織構造は、基本的には、鋼板表層が、焼戻しマルテンサイトが分散したフェライトからなる軟質な脱炭フェライト層であり、鋼板中心部が、焼戻しマルテンサイトと残留4オーステナイトを含む組織である。
(B)鋼板の組織構造
鋼板表層:脱炭フェライト層
本発明鋼板の表層は、脱炭フェライト層である。本発明鋼板では、鋼板表層を脱炭フェライト層とすることで、硬度Hsと鋼板中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)を0.4以上0.8以下とし、衝突変形時のスポット溶接部の破断を回避する。
鋼板表層を脱炭すると、鋼板表層が軟質化することは公知であるが、本発明鋼板の表層を、通常の方法で脱炭すると、脱炭層のフェライト粒径が20μmを超えて大きくなって、フェライト粒界の総面積が減少する。変形はフェライト粒界に集中するので、引張強さが980MPa以上の鋼板では、表層の硬度Hsと中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)を適切な範囲に制御することができないことが解った。
本発明者らは、上記問題を解決する手法について検討した結果、脱炭フェライト層のフェライトの平均粒径を小さくすること、脱炭フェライト層のフェライトの中にマルテンサイトを分散させること、さらに、分散したマルテンサイトを焼戻すことが、表層の硬度Hsと中心部の硬度Hmの比(Hs/Hm)を適切な範囲に制御するうえで、有効であることを知見した。この知見に基づいて得られた脱炭フェライト層の態様は、以下の通りである。
脱炭フェライト層のフェライトの平均結晶粒径:20μm以下
脱炭フェライト層は、主にフェライトからなり、このフェライトの平均結晶粒径は20μm以下とする。脱炭フェライト層のフェライトの平均粒径が20μmを超えると、フェライト粒界の総面積が減少する。変形は狭い領域に集中するので、脱炭フェライト層のフェライトの平均粒径が20μmを超えると、表層硬度を適切な範囲に制御することが困難となるので、脱炭フェライト層のフェライトの平均粒径は20μm以下とする。
フェライトの平均粒径は小さい方が好ましく、下限は特に限定しないが、現在の技術水準では、フェライトの平均粒径を0.5μm以下にすることは難しい。
脱炭フェライト層の組織
焼戻しマルテンサイト:1体積%以上
残部組織:主にフェライト
脱炭フェライト層は、焼戻しマルテンサイトを合計で1体積%以上含有する。焼戻しマルテンサイトが1体積%未満であると、鋼板に不均一な変形が生じ、硬度を適切な範囲に制御することが困難である。
脱炭フェライト層における焼戻しマルテンサイトの量の上限は、鋼板の母材(即ち、脱炭フェライト層を除く部分)に含まれる焼戻しマルテンサイトの量に等しい。
脱炭フェライト層は、鋼板表層が脱炭されたことにより形成されたものであるので、脱炭フェライト層中の焼戻しマルテンサイトの量が、母材中の焼戻しマルテンサイトの量を上回ることはない。脱炭フェライト層中の焼戻しマルテンサイトの量が、母材中の焼戻しマルテンサイトの量を上回る場合、脱炭フェライト層において脱炭が生じていないことになる。
脱炭フェライト層に含まれるマルテンサイトをフレッシュマルテンサイト(焼戻しされていないフェライト)ではなく、焼戻しマルテンサイトとすることにより、硬度を適切な範囲に制御することができる。脱炭フェライト層の組織の残部は主としてフェライトである。
なお、脱炭フェライト層の組織の残部は、例えば、ベイナイト、残留オーステナイト、及び、パーライト等の組織を、硬度の制御に影響を与えない範囲内で(例えば、5体積%以下)含んでもよい。
脱炭フェライト層の領域:鋼板表面から深さ5μm以上200μm以下
脱炭フェライト層は、鋼板表面から深さ5μm以上200μm以下までの領域の層である。つまり、脱炭フェライト層の厚さが5μm以上200μm以下である。脱炭フェライト層の厚さが5μm未満であると、表層軟質化効果が十分に発現しないので、脱炭フェライト層の厚さは5μm以上とする。
一方、脱炭フェライト層の厚さが200μmを超えると、鋼板全体としての引張強さを確保することが難しくなるので、脱炭フェライト層の厚さは200μm以下とする。
鋼板中心部の組織
焼戻しマルテンサイト:3.0体積%以上
残留オーステナイト:5.0体積%以上
加工性が良好な鋼板を得るためには、鋼板の母材の組織において、M−Aを含む組織を、残留オーステナイトが残る比較的低温で焼戻した組織とすることが有効である。それにより、M−Aによる良好な全伸びを維持しながら、局部伸びを向上させることができる。
そのため、本発明鋼板の中心部の組織は、体積率で、焼戻しマルテンサイトを3.0体積%以上含有する必要がある。好ましくは5.0体積%以上である。より高強度化を図る点で、焼戻しマルテンサイトは20.0体積%以上が好ましい。
また、本発明鋼板の中心部の組織は、残留オーステナイトを5.0体積%以上含有する必要がある。好ましくは8.0体積%以上である。
本発明鋼板の焼戻しマルテンサイト及び残留オーステナイトの一部又は全部は、M−Aを形成している必要がある。
なお、板厚1/4位置で測定した組織の面積率を、組織の体積率とする。
組織の残部は、フェライト及び/又はベイナイトであることが好ましい。フェライト粒及びマルテンサイト粒の内部に、5μm以上のセメンタイトを含まないことが、M−Aの生成促進のために好ましい。M−Aを、残留オーステナイトが残るような比較的低温で焼き戻すことで、伸びが向上する。曲げ性を向上させるためには、マルテンサイトは、全て焼戻しマルテンサイトであることが好ましい。
鋼板表面の処理
本発明鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を形成してもよい。溶融亜鉛めっき層は、通常の溶融亜鉛めっき法で形成すればよい。溶融亜鉛めっき層を形成することにより、鋼板表面の耐食性が向上する。溶融亜鉛めっきの付着量は、片面当り20〜120g/m2が好ましい。
次に、本発明製造方法について説明する。
金属組織中にM−Aを生成させるためには、オーステナイトにおいてCの濃度勾配を存在させることが必要である。C濃度が高いオーステナイトは残留オーステナイトとして残留し、C濃度が低いオーステナイトはマルテンサイトへ変態する。
その結果、M−A組織が得られる。M−A組織は、残留オーステナイトを含み、マルテンサイトが硬質であるので、歪みは相対的に軟質な母相に集中する。その結果、M−A組織においては、高強度と良好な伸びが得られる。
しかし、過度に硬質なマルテンサイトは伸びを阻害するので、残留オーステナイトが残るように、適度に焼き戻す。この焼戻しにより、伸びが優れ、かつ、鋼板表層の脱炭層に焼戻しマルテンサイトが生成して適切な表層硬度を有する鋼板を製造することが可能となる。
脱炭フェライト層を形成するためには、鋼板を適切な平均加熱速度の下で加熱し、適切な雰囲気下で焼鈍する必要がある。
本発明製造方法(方法A)は
本発明鋼板の化学組成の鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、400℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
上記冷却工程の後、冷却した鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする。
また、本発明製造方法(方法B)は、
本発明鋼板の化学組成の鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、450〜600℃の温度域まで冷却する第1冷却工程、
上記第1冷却工程の後、冷却した鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき工程、
上記めっき工程の後、めっきした鋼板を、平均冷却速度5℃/秒以上で、200℃以下まで冷却する第2冷却工程、
上記第2冷却工程の後、冷却しためっき鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
ことを特徴とする。
以下に、本発明製造方法の工程条件について説明する。
加熱工程(方法Aと方法B)
加熱温度域:100〜720℃
上記温度域における平均加熱速度:1〜50℃/秒
本発明鋼板の化学組成の鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する。
上記鋼板は、熱延鋼板及び冷延鋼板のいずれでもよい。なお、熱延鋼板は、仕上げ温度800℃以上1100℃以下で仕上げ熱延を終了し、巻取温度350℃以上750℃以下で巻き取った熱延鋼板が好ましい。冷延鋼板と、特定の条件で製造した冷延鋼板に限定されない。
加熱温度域の下限が100℃未満であると、加熱温度域が広がり、平均加熱速度の調整が難しくなるので、加熱温度域の下限は100℃とする。加熱温度域の上限は、次の焼鈍工程における焼鈍温度の下限が720℃であることから、720℃とする。
100〜720℃の温度域における平均加熱速度が1℃/秒未満であると、加熱中に、セメンタイトが溶解せず、最終的に得られる鋼板の引張強さが低下するとともに、脱炭層のフェライトにマルテンサイトを分散させること困難になるので、平均加熱速度は1℃/秒以上とする。好ましくは10℃/秒以上である。
一方、平均加熱速度が50℃/秒を超えると、加熱中に、粗大なフェライトが生成し、引張強さが低下するとともに、脱炭層のフェライトにマルテンサイトを分散させること困難になるので、平均加熱速度は、50℃/秒以下とする。好ましくは40℃/秒以下である。
焼鈍工程(方法Aと方法B)
雰囲気成分:2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物
雰囲気露点:−30℃超20℃以下
焼鈍温度:720〜950℃
保持時間:10〜600秒
加熱工程の後、素材鋼板を上記条件下で焼鈍する。
雰囲気の水素濃度が2%未満であると、鋼板表面の酸化膜を還元することができず、鋼板の化成性やめっき濡れ性が悪化するので、雰囲気の水素濃度は2体積%以上とする。好ましくは5体積%以上である。一方、雰囲気の水素濃度が20体積%を超えると、露点を20℃以下に保つこができないので、雰囲気の水素濃度は20体積%以下とする。好ましくは15体積%以下である。
雰囲気の露点が−30℃以下であると、脱炭フェライト層の厚さを5μm以上に成長させることができないので、雰囲気の露点は−30℃超とする。好ましくは−20℃以上である。一方、雰囲気の露点が20℃を超えると、設備に結露が生じ、設備の運用が妨げられるので、雰囲気の露点は20℃以下とする。好ましくは10℃以下である。
焼鈍温度(保持温度)が720℃未満では、所要量のオーステナイトを確保できず、冷却後、所要量のマルテンサイトが生成しないので、焼鈍温度(保持温度)は720℃以上とする。曲げ性の向上に寄与する均一組織を得るには、焼鈍温度を、オーステナイト単相域(Ac3点以上)の温度域に保持することが好ましい。
焼鈍温度を、オーステナイト単相域の温度域に保持する場合、720℃からAc3点まで30秒以上かけて加熱することが、鋼板表面に所望の脱炭フェライト層を形成するうえで好ましい。一方、焼鈍温度が950℃を超えると、脱炭層のフェライトにマルテンサイトを分散させること困難になるので、焼鈍温度は950℃以下とする。好ましくは920℃以下である。
保持時間が10秒未満であると、脱炭フェライト層の厚さを5μm以上に成長させることが困難であるので、保持時間は10秒以上とする。好ましくは20秒以上である。一方、保持時間が600秒を超えると、焼鈍効果が飽和して、生産性が低下するだけでなく、脱炭層が過度に成長し、引張強さが低下するので、保持時間は600秒以下とする。好ましくは540秒以下である。
冷却工程(方法A)
冷却温度域:400℃以下
平均冷却速度:2〜200℃/秒
焼鈍工程の後、鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、400℃以下の温度域に冷却する。
冷却温度域の上限が400℃を超えると、冷却効果が十分に得られないので、冷却温度域の上限は400℃とする。平均冷却速度が2℃/秒未満であると、セメンタイトが析出し、マルテンサイトが脱炭層に生成しなくなるので、平均冷却速度は2℃/秒以上とする。好ましくは5℃/秒以上である。
一方、平均冷却速度が200℃/秒を超えると、オーステナイト内でのCの濃度勾配が不十分となり、M−A組織が生じないので、平均冷却速度は200℃/秒以下とする。好ましくは100℃/秒以下である。
焼戻鈍工程(方法A)
温度域:100〜600℃
保持時間:1秒以上48時間以下
冷却工程(方法A)の後、冷却した鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す。
焼戻しは、M−A組織のマルテンサイトを適正に焼き戻すために行う。この焼戻しにより、マルテンサイトが軟化するので、鋼板の伸びが向上する。また、焼戻しにより、未変態の残留オーステナイト中にCが濃化し、残留オーステナイトが硬質化するので、鋼板の均一伸びUElが向上する。
温度域の下限が100℃未満、又は、保持時間が1秒未満であると、鋼板及び脱炭フェライト層のマルテンサイトが硬質となり、鋼板表層の硬度を適正な範囲に制御することができないので、温度域の下限は100℃とし、保持時間は1秒以上とする。保持時間は20秒以上が好ましい。
一方、温度域の上限が600℃を超えるか、又は、保持時間が48時間を超えると、鋼板及び脱炭フェライト層の残留オーステナイトが分解したり、マルテンサイトが軟質になりすぎたりして、伸びが劣化するので、温度域の上限は600℃とし、保持時間は48時間以下とする。保持時間は40時間以下が好ましい。
ただし、鋼板の特性のばらつきを抑制する点で、最高到達温度での等温保持が好ましい。最高到達温度は250〜500℃が好ましい。なお、M−A組織のマルテンサイトは、全て焼戻されていることが好ましい。
焼戻工程の後、レベラーで鋼板の平坦度を矯正してもよい。また、鋼板に、塗油や潤滑作用のある皮膜を施してもよい。
第1冷却工程(方法B)
冷却温度域:450〜600℃
平均冷却速度:2〜200℃/秒
後のめっき工程で、鋼板に、溶融亜鉛めっきを施す場合、焼鈍工程の後、鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、450〜600℃の温度域に冷却する。
冷却温度域の上限が600℃を超えると、冷却効果が十分に得られないので、冷却温度域の上限は600℃とする。一方、冷却温度域の下限が450℃未満であると、冷却温度域が広くなり、平均冷却速度の制御が難しくなるので、冷却温度域の下限は450℃とする。平均冷却速度2〜200℃/秒については、前述のとおりである。
めっき工程(方法B)
第1冷却工程の後、鋼板に、必要に応じ、等温保持や冷却を行った後、鋼板に溶融亜鉛めっきを施す。なお、必要に応じて、溶融亜鉛めっきに合金化処理を施し、めっきを合金化してもよい。溶融亜鉛めっきの浴温度や浴組成は、通常の浴温度、通常の浴組成でよく、特に制限はない。めっき付着量も特に制限されず、通常の範囲内でよい。例えば、鋼板の片面当りの付着量は20〜120g/m2の範囲内である。
合金化処理は、めっき層中のFe濃度が7質量%以上となるような条件で行うことが好ましい。合金化処理は、例えば、490〜560℃で5〜60秒の加熱で行う。合金化処理をしない場合、溶融亜鉛めっきのFe濃度は7質量%未満でもよい。溶融亜鉛めっき鋼板の溶接性は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の溶接性より低いが、溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性は良好である。
第2冷却工程(方法B)
冷却温度域:200℃以下
平均冷却速度:5℃/秒以上
めっき工程の後、平均冷却速度5℃/秒以上で、溶融亜鉛めっき鋼板を、めっき温度(浴温度)から200℃以下に冷却する。この冷却によって、安定なオーステナイトが生成し、安定なオーステナイトのほとんどは、焼戻し後も、オーステナイトのまま残存する。
なお、第2冷却工程では、安定なオーステナイトと同時に硬質なマルテンサイトが生成するが、硬質なマルテンサイトは、後の焼戻しによって、延性のあるマルテンサイトになる。
冷却温度域の上限が200℃を超えると、安定なオーステナイトが生成し難いので、冷却温度域の上限は200℃とする。冷却温度域の上限は100℃が好ましい。
平均冷却速度(冷却開始温度と冷却終了温度の差を冷却時間で除した値)が5℃/秒未満であると、安定なオーステナイトが生成し難いので、平均冷却速度は5℃/秒以上とする。好ましくは10℃/秒以上である。冷却速度の上限は特に規定しないが、経済性の観点から、500℃/秒以下が好ましい。
焼戻鈍工程(方法B)
温度域:100〜600℃
保持時間:1秒以上48時間以下
第2冷却工程(方法B)の後、冷却しためっき鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す。焼戻工程(方法B)における工程条件は、焼戻工程(方法A)の工程条件と同じである。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表1に示す種々の条件で表層軟質化処理を施した板厚1.4mmの引張強さ1470MPa級鋼板をハット型(フランジ幅20mm、30mm高さ、部材幅50mm、部材長さ500mm)に成形し、板厚1.4mmの矩形(幅90mm、長さ500mm)の軟鋼板(0.2%耐力220MPa、引張強さ310MPa、全伸び41%)と溶接部間距離40mm、ナゲット径3.5√t狙いでスポット溶接してハット型成形部材を作製した。
図1に示すように、ハット型成形部材1の両端100mmを、1470MPa級材を上方に位置させた状態で上下から固定冶具2で拘束し、中央部に、先端部半径50mmの球状の質量100kgの落錘3を3m/秒で衝突させた。衝突後、ハット型成形部材1を回収し、スポット溶接部の破断の態様(有無)を調べた。
Figure 0006524810
1470MPa級鋼の表層の硬度Hsと中心部の硬度Hmは、押付け荷重500gfのビッカース硬度試験を鋼板断面に対して行うことにより測定した。表層部の硬度Hsは押付け荷重500gfのビッカース硬度測定を、表層軟化層で10点行い、その平均値を算出して評価した。また、中心部の硬度Hmは、中心部から+100μmと−100μmの領域で押付け荷重500gfのビッカース硬度測定を10点行い、その平均値を算出して評価した。
鋼aは軟質化処理を施していないものであるが、落錘が衝突した部位近傍のスポット溶接部において、1470MPa級鋼の母材部で溶接部の破断が生じていた。鋼b及びcは、軟質化処理を施したものであるが、軟質化を施していない鋼aとほぼ同等の箇所で溶接部の破断が生じていた。
しかし、硬度比(Hs/Hm)が0.4から0.8の範囲内にある鋼d、e、f、g、及び、hについては、スポット溶接部の破断が生じなかった。これは、前述のように、曲げ性又は高い応力三軸度下での耐破断特性のいずれか又は両方が、表層軟質化により改善されたためであると考えられる。
一方、硬度比(Hs/Hm)が0.4未満の鋼i及びjについては、スポット溶接部の破断が生じていた。これは、詳細は不明であるが、中心部の硬度が高いまま表層部を軟質化すると、表層部と中心部で応力分布が不均一となり、結果として、破断が生じたと考えられる。
(実施例2)
表2に示す化学組成を有する鋼を溶製し、厚みが40mmのスラブを作製した。このスラブを、表3に示す圧延完了温度で、表3に示す厚さになるように熱間圧延した。熱間圧延後、約30℃/秒の水スプレー冷却を施し、表3に示す巻取温度で、熱延鋼板を製造した。
Figure 0006524810
Figure 0006524810
巻取は、巻取温度まで水スプレー冷却し、その後、炉に装入し、巻取温度で60分保持し、次いで、20℃/時の冷却速度で100℃以下まで炉冷することによってシミュレートした。得られた熱延鋼板を酸洗によりスケール除去し、表4に示す厚さになるように冷間圧延を施した。
得られた鋼板に、表3に示す条件で熱処理を施した。即ち、まず、試験材を表示の平均加熱速度で焼鈍温度に加熱し、表示の時間その温度で保持して焼鈍を行い、次に、表示の平均冷却速度で400℃以下まで冷却した。その後、冷却停止温度に達したのを確認した後、速度20℃/秒で、表3に示す熱処理温度(最高到達温度)まで加熱し、熱処理時間として示す時間保持した。
この最後の熱処理によって、これ以前に生成したマルテンサイトは全て焼き戻しを受ける。マルテンサイトが焼き戻されたことは、ナイタール腐食後のSEM観察において、マルテンサイト中の炭化物の存在を確認することにより確認した。
得られた試験材に対して下記の測定を実施した。これらの測定結果を、表4にまとめて示す。
Figure 0006524810
脱炭層厚は、圧延方向に直交する断面及び板幅方向(圧延方向に直交する方向)に直交する断面の2断面の電子顕微鏡観察画像の画像解析を行って算出した値の平均値である。表層から1μm毎にマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトの面積率を測定し、その値が一定になる位置を脱炭層端とし、表面から脱炭層端までの距離を脱炭層厚とした。
脱炭層の組織、脱炭層フェライト粒径、及び、脱炭層の焼戻しマルテンサイト面積率は、脱炭層の電子顕微鏡観察画像の画像解析を行って算出した。
表層部におけるフェライトの面積率、中心部における残留オーステナイト面積率、及び、焼戻しマルテンサイト面積率を求めた。これらの面積率は、圧延方向に直交する断面及び板幅方向(圧延方向に直交する方向)に直交する断面の2断面の電子顕微鏡観察画像の画像解析を行って算出した値の平均値である。
引張試験:各種熱処理材から、圧延方向に対して直角方向が引張方向となるようにJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行い、降伏強さ(YS)、引張強度(TS)、及び、全伸び(El)を測定した。測定結果を表4に併せて示す。
硬度測定:Hmは、押付け荷重500gfのビッカース硬度試験を鋼板断面に対して行うことにより測定した。表層部の硬度Hsは、押付け荷重500gfのビッカース硬度測定を表層脱炭層で10点測定し、その平均値を算出して評価した。また、中心部の硬度Hmは、中心部から+100μmと−100μmの領域で押付け荷重500gfのビッカース硬度測定を10点測定し、その平均値を算出して評価した。評価結果を表4に併せて示す。
スポット溶接部破断評価:実施例1と同様に評価した。各種熱処理材をハット型(フランジ幅20mm、30mm高さ、部材幅50mm、部材長さ500mm)に成形し、板厚1.4mmの矩形(幅90mm、長さ500mm)の軟鋼板(0.2%耐力220MPa、引張強さ310MPa、全伸び41%)と溶接部間距離40mm、ナゲット径3.5√t狙いでスポット溶接してハット型成形部材を作製した。
このハット型成形部材について、熱処理材を上方に位置させた状態で両端100mmを上下から拘束し、中央部に先端部半径50mmの球状である質量100kgの落錘を3m/秒で衝突させた(図1参照)。衝突後ハット型成形部材を回収し、スポット溶接部の破断の態様(有無)を調べた。スポット溶接部に破断がないものを良好、あるものを不良として評価した。評価結果を表4に併せて示す。
本発明に従う例として表4に示す鋼板は、硬度の比Hs/Hmが0.4から0.8の間にあり、スポット溶接部の破断がなく良好な特性を示した。No.5及び31は、硬度の比Hs/Hmが所定の範囲にあり、優れた耐スポット溶接部破断特性を示すが、その化学成分と製造条件の特徴から強度が低いことが解った。
(実施例3)
表2に示す化学組成を有する鋼を溶製し、厚みが40mmのスラブを作製した。このスラブを、表5に示す圧延完了温度で表示の厚さになるように熱間圧延した。熱間圧延後、約30℃/秒の水スプレー冷却を施し、表示の巻取温度で、熱延鋼板を製造した。巻取は、巻取温度まで水スプレー冷却し、その後、炉に装入し、巻取温度で60分保持し、次いで、20℃/時間の冷却速度で100℃以下まで炉冷することによってシミュレートした。
Figure 0006524810
Figure 0006524810
得られた熱延鋼板を酸洗によりスケール除去し、表6に示す鋼板の厚さになるように冷間圧延を施した。得られた鋼板に、表5に示す合金化溶融亜鉛めっき処理における熱処理条件により、溶融亜鉛めっきと合金化処理とを行った。即ち、まず、試験材を表示の平均加熱速度で焼鈍温度に加熱し、表示の時間、その温度で保持して焼鈍を行い、次に、表示の冷却速度で500℃まで冷却した。
その後、表示の条件で、500〜460℃の温度域に保持してから、460℃で、溶融亜鉛めっきを模擬する熱処理を施し、その後、一部の試験材については、510℃で合金化熱処理を模擬する熱処理を施し、表示の冷却速度で、冷却を開始した。
こうして冷却された試験材に対して、一部除き、冷却後、直ちに、表5に示す焼戻し条件(温度は最高到達温度)で温度保持する焼戻しを行った。この焼戻し温度への昇温速度は20℃/秒とした。この焼戻しによって、焼戻し前までに生成したマルテンサイトは全て焼き戻しを受ける。マルテンサイトが焼戻されたことは、ナイタール腐食後のSEM観察において、マルテンサイト中の炭化物の存在を確認することにより確認した。
得られた試験材に対する測定は実施例2と同様である。これらの測定結果を表6にまとめて示す。
本発明に従う例として、表6に示した鋼板は硬度の比Hs/Hmが0.4から0.8の間にあり、スポット溶接部の破断がなく良好な特性を示した。
前述したように、本発明によれば、衝突変形時のスポット溶接部の耐破断性に優れた鋼板を製造し提供することができる。本発明の鋼板は、衝突変形時にエネルギーを吸収する自動車の構造部品用鋼板として最適な鋼板であるので、本発明は鋼板製造産業及び自動車産業において利用可能性が高いものである。
1 ハット型成形部材
2 固定冶具
3 落錘

Claims (16)

  1. 鋼板表層の押付け荷重500gfのビッカース硬度Hsと鋼板中心部の押付け荷重500gfのビッカース硬度Hmとの比(Hs/Hm)が0.4以上0.8以下であり、
    化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなり、
    鋼板表面から深さ5μm以上200μm以下までの鋼板表層が、焼戻しマルテンサイトを1体積%以上含有し、残部組織が平均結晶粒径20μm以下のフェライト及び5体積%以下のその他の組織からなる脱炭フェライト層からなり、
    鋼板中心部が、3.0体積%以上の焼戻しマルテンサイトと5.0体積%以上の残留オーステナイトとを含有する組織からなり、
    圧延直角方向の引張試験における引張強度が980MPa以上の機械特性を有することを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  2. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  3. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項又はに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  4. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  5. 前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層が形成されていることを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板を製造する製造方法であって、
    化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
    上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
    上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、400℃以下の温度域まで冷却する冷却工程、
    上記冷却工程の後、冷却した鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
    ことを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  8. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  9. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項又はに記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  10. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  11. 前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  12. 請求項6に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板を製造する製造方法であって、
    化学組成が、質量%で、C:0.03〜0.70%、Si:0.25〜3.00%、Mn:1.00〜5.00%、P:0.10%以下、S:0.010%下、sol.Al:0.001〜1.50%、N:0.020%以下、Ti:0〜0.30%、Nb:0〜0.30%、V:0〜0.30%、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜2.00%、Cu:0〜2.00%、Ni:0〜2.00%、B:0〜0.020%、Ca:0〜0.010%、REM:0〜0.10%、及び、Bi:0〜0.050%を含み、残部鉄及び不純物からなる鋼板を、100〜720℃の温度域における平均加熱速度を1〜50℃/秒として加熱する加熱工程、
    上記加熱工程の後、加熱した鋼板に、2〜20体積%の水素と残部窒素及び不純物からなり、かつ、露点が−30℃超20℃以下の雰囲気中にて、720〜950℃の温度域で10〜600秒保持する焼鈍を施す焼鈍工程、
    上記焼鈍工程の後、焼鈍した鋼板を、平均冷却速度2〜200℃/秒で、450〜600℃の温度域まで冷却する第1冷却工程、
    上記第1冷却工程の後、冷却した鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき工程、
    上記めっき工程の後、めっきした鋼板を、平均冷却速度5℃/秒以上で、200℃以下まで冷却する第2冷却工程、
    上記第2冷却工程の後、冷却しためっき鋼板に、100〜600℃の温度域で1秒以上48時間以下保持する焼戻しを施す焼戻工程を備える
    ことを特徴とする耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  13. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Ti:0.001%以上0.30%以下、Nb:0.001%以上0.30%以下、及び、V:0.001%以上0.30%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項12に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  14. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cr:0.001%以上2.00%以下、及び、Mo:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項12又は13に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  15. 前記化学組成が、さらに、質量%で、Cu:0.001%以上2.00%以下、及び、Ni:0.001%以上2.00%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1214のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
  16. 前記化学組成が、さらに、質量%で、B:0.0001%以上0.020%以下を含有することを特徴とする請求項1215のいずれか1項に記載の耐スポット溶接部破断特性に優れた鋼板の製造方法。
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