以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。
<<参考実施形態>>
まず、後述の第1実施形態等との対比に供される参考実施形態を説明する。図1及び図2は、参考実施形態に係るイメージング装置の構成を示す斜視図及び側面図である。
図1及び図2において、符号L0により参照される斜線領域は試料10への入射光を表している。但し、図1及び図2では、試料10を透過した光の領域に対しても斜線を付している(後述の図7でも同様)。入射光L0は、干渉性を有する光、即ちコヒーレント光である。但し、現実には完全にコヒーレントな光は存在しないので、ここにおけるコヒーレント光とは、空間的にも時間的にも非常にコヒーレンスの高い光であると解されるべきである。
入射光L0は、任意の波長の光でありうるが、特にX線であることが想定される。ここでは、入射光L0は、6.5keV(エレクトロンボルト)のエネルギを有するX線(コヒーレントX線)であるものとする。入射光L0は、放射光施設にて発生されるX線領域の放射光を集束することで形成される集束X線であって良い。図1において、一点鎖線AXOPTは入射光L0の光軸を表している。参考実施形態で述べる光は全て入射光L0に基づく光であるとする。
X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交している。光軸AXOPTはZ軸に対して平行であり、入射光L0は、Z軸の負側から正側に向けて進行するものとする。尚、X軸及びY軸に平行な二次元平面、Y軸及びZ軸に平行な二次元平面、Z軸及びX軸に平行な二次元平面を、夫々、XY面、YZ面、ZX面と呼ぶ。
入射光L0は試料10に対して照射される。試料10は、X軸及びY軸方向に対して広がりを持つ試料であり、更に、Z軸方向に対しての厚みも有する。試料10は、どのような試料でも良い。例えば、試料10は、金属から成る試料でも良いし、生物試料でも良い。但し、試料10に照射された入射光L0の内、一部は散乱及び回折するが、残りは試料10を透過するものとする。試料10に照射された入射光L0(6.5keVのX線)の内、大部分が試料10を透過するような、厚みの少ない試料10が想定される。
入射光L0は、試料10よりも上流側に設けられた光学系(不図示)により、試料10の位置において集光せしめられる。図1において、点Oは入射光L0の集光点の中心位置を表している。上流とは、入射光L0の進行の向きにとっての上流を指し、当然、入射光L0は上流側から下流側に向けて進行する。入射光L0は、Z軸に直交する十字に沿って斑点状に広がる。即ち、XY面内において、入射光L0は複数の斑点の光から形成される共に当該複数の斑点は十字方向に並んでいる(即ち例えばX軸及びY軸方向に沿って並んでいる)。以下では、その複数の斑点の中心に位置する、最も光の強度の強い斑点を入射光L0と捉えて注目し、注目した斑点の大きさ(詳細には、注目した斑点の広がりの外縁を示す円の直径)をスポット径と呼ぶ。特に、試料10の位置における入射光L0のスポット径を記号SRで表す。ここでは、試料10の位置において入射光L0が真円状に集光されていると考え、且つ、スポット径SRが1μm(マイクロメートル)であるとする。
XY面上において、試料10の大きさ(広がり面積)は、試料10の位置における入射光L0の大きさ(広がり面積)よりも大きい。試料10は、Z軸方向に厚みを有する板形状を有し、ここでは例として、試料10がXY面において1μmよりも大きな辺を有する長方形又は正方形の形状を持っているものとする。Z軸方向における試料10の厚さは、X軸及びY軸方向において不均一であって良い。例えば、Z軸方向における試料10の厚さは、X軸及びY軸方向において数10nm〜数10μmの範囲内で分布する。
二次元検出器20は、試料10の下流側に設けられる二次元X線検出器である。二次元検出器20は、入射光L0に基づく試料10からの光を受け、受けた光の強度を所定の二次元平面内で検出する。ここにおける二次元平面はXY面に平行である。二次元検出器20はXY面に平行な検出面を有し、検出面内の各位置における光の強度(受光強度)を検出する。
二次元検出器20の検出面内の領域を、便宜上、透過X線の受光領域21と、回折X線の受光領域22とに分類することができる。試料10に照射された入射光L0の内、試料10にて散乱されることなく透過した光を透過X線と呼ぶ。受光領域21は透過X線を受ける領域である。受光領域21の中心は、通常、検出面の中心と一致する。以下では、受光領域21の中心(透過X線を受ける受光領域の中心)と、検出面の中心(即ち二次元検出器20の中心)とが一致しているものとする。透過X線は受光領域22には入射しない。受光領域22は、試料10に照射された入射光L0の内、試料10にて散乱された光を受ける。試料10にて散乱された光は、受光領域22において試料10の構造に応じた回折縞を形成する。この回折縞を形成する試料10からの散乱光を回折X線と呼び、この回折縞を表す受光領域22における受光強度パターンを回折X線強度パターン又は回折強度パターンと呼ぶ。また、受光領域21における受光強度パターンを透過X線強度パターン又は透過強度パターンと呼ぶ。
透過X線だけを利用する場合、図1のシステムを、1μmの分解能を持ったレンズによるX線顕微鏡と見立てることができる。1μmの分解能を持ったレンズを通して観測できるものは、1μm以上のサイズの情報に限られる。しかし、回折X線を見ることで1μmよりも小さい情報を得ることができる。
図3に示す如く、イメージング装置は、試料10をX軸方向又はY軸方向にステップ移動させるための駆動装置30を備えている。ステップ位置P1〜Pnは、XY面に平行な面であって且つ試料10内に位置する共通な平面上に配置された互いに異なる位置である。図3では9つのステップ位置P1〜P9が示されているが、nは2以上の整数であれば任意である。駆動装置30は、集光点Oの位置がステップ位置P1〜Pnの何れかと一致するように試料10をステップ移動させることができる。尚、駆動装置30により、試料10がX軸方向及びY軸方向と異なる方向に移動されることが有り得て良い(この場合、ステップ位置P1〜Pnは、XY面から傾いた平面上に配置された互いに異なる位置となる)。但し、試料10のステップ移動の方向は、入射光L0の光軸AXOPTに直交する方向成分を持っているものとする。
XY面内について考えると、集光点Oの位置がステップ位置Piと一致せしめられているとき、試料10内の領域であって且つステップ位置Piを中心とする直径1μmの円の内側領域に入射光L0が集光及び照射される(iは整数)。
X軸及びY軸方向の夫々において、互いに隣接する2つのステップ位置の間隔はスポット径SR(ここでは1μm)よりも小さい。従って、集光点Oの位置が第1ステップ位置と一致しているときの試料10への入射光L0の照射領域は、集光点Oの位置が第2ステップ位置と一致しているときの試料10への入射光L0の照射領域と一部において重なり合う。ここにおける第1ステップ位置は、ステップ位置P1〜Pnの内の任意の1つを指し、第2ステップ位置は第1ステップ位置と異なる1以上のステップ位置を指す。例えば、集光点Oの位置がステップ位置P5と一致しているときの試料10への入射光L0の照射領域(図3の9つの円における中央の円の内部領域)は、集光点Oの位置がステップ位置P2、P4、P6、P8と一致しているときの試料10への入射光L0の照射領域の夫々と一部において重なり合う。
図4は、参考実施形態のイメージング装置のX線タイコグラフィによる試料像の構築動作フローチャートである。まず、ステップS1において変数iに1が代入される。続くステップS2において、駆動装置30により、集光点Oの位置がステップ位置Piと一致するように試料10が駆動される。続くステップS3において、二次元検出器20の検出面内の全検出結果(受光強度の検出結果の全て)を第iの光強度検出パターンとして取得する。参考実施形態では、透過強度パターンと回折強度パターンを二次元検出器20で同時に取得したもの(即ち、同時に検出された透過強度パターン及び回折強度パターンから成る検出パターン)が第iの光強度検出パターンとなる。
その後、ステップS4において、イメージング装置の制御部(不図示)により、変数iが所定値n(例えば100)と一致しているか否かが確認される。“i=n”の場合にはステップS6に進む。一方、“i<n”の場合にはステップS5にて変数iに1を加算してからステップS2に戻り、ステップS2以降の処理が繰り返される。結果、ステップS6に至る時点では第1〜第nの光強度検出パターンが取得済みとなる。第iの光強度検出パターンは、集光点Oの位置をステップ位置Piと一致させた状態において、試料10からの透過強度パターン及び回折強度パターンを同時に検出したものである。
ステップS6において、イメージング装置の演算部(不図示)は、ステップS3にて取得された第1〜第nの光強度検出パターンに対し反復的位相回復アルゴリズムによる所定の演算を施すことで、試料10の像を生成する。反復的位相回復アルゴリズムとして、X線タイコグラフィに適用可能な公知の反復的位相回復アルゴリズムを用いることができる。例えば、上記非特許文献2に記載の方法に基づく反復的位相回復アルゴリズムを用いて良い。
ここで、公知事項ではあるが反復的位相回復アルゴリズムについて簡単に説明する。振幅のみが既知で位相が得られない状況においてフーリエ変換を繰り返し行うことによって位相を求める方法は、フーリエ反復位相回復法として知られている。ステップS6の反復的位相回復アルゴリズム(換言すれば反復的位相回復法)は、フーリエ反復位相回復法に属する。
図5は、フーリエ反復位相回復法の基本アルゴリズムを示す図である。図5において、物体(厳密には、物体に対する入射波と物体とが相互作用して物体から発せられる物体波)をfで表し、物体fに対してフーリエ変換FTを施したもの(厳密には、検出面での回折波)をFで表す。ここにおける物体は試料10である。
fとFは複素関数として表される。複素関数fの振幅、位相を、それぞれ|f|、φで表し、複素関数Fの振幅、位相を、それぞれ|F|、Φで表す。一般的に、回折実験によって得られる物理量は、回折強度、即ち振幅|F|のみであり、位相Φは得られない。もし何らかの方法で位相Φが求められれば、Fに逆フーリエ変換FT−1を施すことで物体fが得られる。フーリエ反復位相回復法では、図5に示すように、実空間において実空間拘束条件を且つ逆空間(周波数空間)において逆空間拘束条件を課しながら、フーリエ変換と逆フーリエ変換を逐次的に交互に繰り返す反復計算により位相を得る。
X線タイコグラフィにおける反復的位相回復アルゴリズムでは、複数の光強度検出パターンを取得するときの試料10への入射光L0の照射領域が互いに重なっているという事実及びその重なり領域を実空間拘束条件として用い且つ第1〜第nの光強度検出パターンを逆空間拘束条件として用いて上記反復計算を行う。これにより、試料10の通過に伴う入射光L0の波面のゆがみを、XY面上の各位置における入射光L0の位相変化量として導出し、その導出結果から試料10の像を生成(再構築)することができる。
図6(a)及び(b)を参照し、参考実施形態のイメージング装置に対する計算機シミュレーションの結果を説明する。図6(a)は、当該シミュレーションにおいて試料10として想定されたテスト画像300を示している。テスト画像300は、試料10による位相変化量をXY面に投影した二次元像(二次元投影像)である。位相変化量とは、入射光L0が試料10を通過したときの入射光L0の位相変化量を指す。
図6(a)において、黒に近い領域ほど位相変化量が大きく、白に近い領域ほど位相変化量が小さい。つまり例えば、入射光L0がテスト画像300中に表現された女性の髪の毛領域に照射されたとき、位相変化量は0.01ラジアン程度であり、入射光L0が当該女性の頬領域に照射されたとき、位相変化量は0.005ラジアン程度である。テスト画像300における位相変化量の最大値は0.01ラジアンに設定されている。0.01ラジアンの位相変化量は、6.5keVのエネルギのX線に対して厚さ50nm(ナノメートル)のたんぱく質に相当している。つまり、厚さ50nmのたんぱく質に入射光L0を照射したときに観測される位相変化量の最大値は0.01ラジアンである。
図6(b)の光強度検出パターン320は、図6(a)の領域310に入射光L0を照射したときに図1の二次元検出器20にて取得されることになる透過及び回折強度パターンのシミュレーション結果を示している。
原理上、回折強度パターンでは、試料10(ここではテスト画像300)の構造を示す空間周波数成分の内、より低い周波数成分の情報が検出面の中心に近い位置にて検出され、より高い周波数成分の情報が検出面の中心から離れた位置にて検出される。試料10(ここではテスト画像300)の構造を示す空間周波数成分の内、相対的に低い空間周波数成分の情報及び相対的に高い空間周波数成分の情報を、夫々、低分解能情報及び高分解能情報と呼ぶ。光強度検出パターン320は低分解能情報及び高分解能情報を内包している。光強度検出パターン320において、検出面の中心に対し相対的に近い位置に低分解能情報が含まれ、検出面の中心に対し相対的に遠い位置に高分解能情報が含まれる。
光強度検出パターン(透過及び回折強度パターン)320からも分かるように、透過X線の強度に対して回折X線の強度は相当に小さく、また回折X線の強度は回折角の増大に伴って減少する。二次元検出器20の検出結果から、より高い分解能の情報を得ようとする場合には、回折角のより大きい、従って強度のより小さい回折X線を検出する必要がある。故に、目的の分解能が上がれば上がるほど、広い光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンを取得する必要がある。
図1のイメージング装置において、15nm以下の分解能を達成するためには、109光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンを取得する必要がある。当該シミュレーションでは、109光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンが図6(b)の光強度検出パターン320として求められている。109光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンとは、1の光子数と109の光子数が識別して検出された透過及び回折強度パターン(即ち、二次元検出器20における受光X線の光子数の最小値と最大値の比が109である透過及び回折強度パターン)を意味する。比較的安価に手に入る103光子/ピクセル/秒の検出性能を有する二次元検出器を図1の二次元検出器20として用いたならば、106秒の検出時間を使ってようやく、109光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンを取得できる。但し、検出時間の増大は無限に許されるものではなく、検出時間は短い方が効率が良い。仮に、106光子/ピクセル/秒の検出性能を有する二次元検出器を図1の二次元検出器20として用いたならば、103秒の検出時間で、109光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジを有する透過及び回折強度パターンを取得できる。検出時間を103秒と定めたとき、103光子/ピクセル/秒の検出性能では、106光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジしか達成できず、所望の分解能を得ることができない。
このことから分かるように、検出ダイナミックレンジの大きい二次元検出器(即ち、単位「光子/ピクセル/秒」で示される検出性能が高い二次元検出器)を用いれば、定められた検出時間で、より高い分解能を実現することができる。但し、検出ダイナミックレンジの大きい二次元検出器の開発には膨大な費用と時間を要する。必要な検出ダイナミックレンジを有する二次元検出器が現存していたとしても、検出ダイナミックレンジの拡大は二次元検出器の入手費用の増大につながる。
<<第1実施形態>>
より低い検出ダイナミックレンジで試料像を構築できる実施形態として、本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態並びに後述の第2及び第3実施形態は参考実施形態を基礎とする実施形態であり、第1〜第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、参考実施形態の記載を第1〜第3実施形態に適用して良い。参考実施形態の記載及び第1〜第3実施形態の記載間で矛盾する事項については、後者の記載が第1〜第3実施形態では優先される。
図7は、第1実施形態に係るイメージング装置1の構成を示す側面図である。イメージング装置1は、上述の二次元検出器20及び駆動装置30に加えて、参照光源用構造体(散乱用構造体)40、遮蔽体50及び演算装置60を備える。入射光L0、試料10、二次元検出器20及び駆動装置30の性質、構成及び機能、並びに、それらの関係は上述した通りである。
入射光L0は、試料10及び参照光源用構造体40よりも上流側に設けられた光学系(不図示)により、試料10の位置において集光せしめられる。
参照光源用構造体40(以下、構造体40と略記することがある)は、試料10の上流側に設けられる構造体であり、入射光L0は、まず構造体40に入射され、その後に試料10に照射される。このため、入射光L0の一部は構造体40にて散乱され、構造体40からの散乱光L1が試料10及び二次元検出器20に向けて放射される。図7において、構造体40の中心から二次元検出器20まで伸びる2本の直線状の破線OEL1は、構造体40から出射される散乱光L1の外縁を模式的に示したものである。
一方、図7において、試料10上の2つの点から二次元検出器20まで伸びる2本の直線状の破線OEL2は、試料10から出射される散乱光L2の外縁を模式的に示したものである。散乱光L2は、構造体40を介して試料10に照射された入射光L0が試料10にて散乱したものである。尚、試料10及び構造体40間の間隔は、散乱光L1の試料10上での照射面積が入射光L0による照射面積(即ち入射光L0の試料10上での照射面積)よりも大きくなるように、調整される。
遮蔽体50は、試料10と二次元検出器20との間に配置され、二次元検出器20の検出面内の所定の遮蔽対象領域に対する試料10からの光を遮蔽する。数100μm以上の厚みを有するタンタル又は鉛等にて遮蔽体50を形成すれば、試料10からの光(X線)を完全に遮蔽することができる。
例えば、二次元検出器20が検出しようとする受光強度の最小値が一定であると仮定した場合、検出面にて受光される光の最大強度が減少すれば、二次元検出器20に必要な検出ダイナミックレンジは小さくなる。従って、試料10から二次元検出器20に向かう光の内、少なくとも最大強度を持つ光が二次元検出器20(より詳細には二次元検出器20の検出面)に到達しないように、遮蔽体50は、試料10及び二次元検出器20間に配置される。試料10から二次元検出器20に向かう光の内、最大強度を持つ光は透過X線に含まれており、従って、上記の遮蔽対象領域は透過X線の受光領域21(遮蔽体50が無かったならば透過X線を受光することになる領域)を含む領域である。
回折X線の内、回折角が比較的小さな回折X線である低角回折X線の強度は、回折角が比較的大きな回折X線である高角回折X線の強度よりも相当に大きい。故に、検出面の受光領域の内、回折角が所定角度以下の低角回折X線を受ける受光領域をも遮蔽対象領域に含めるようにしても良い。本実施形態では、検出面の受光領域の内、回折角が所定角度以下の低角回折X線を受ける受光領域をも遮蔽対象領域に含めている。即ち、遮蔽体50により、透過X線及び低角回折X線の二次元検出器20(より詳細には二次元検出器20の検出面)への入射が遮蔽されている。遮蔽体50を設けることで、定められた検出時間で所望の分解能を得るために求められる、二次元検出器20の検出ダイナミックレンジを低減させることが可能となる。
遮蔽体50の配置により透過強度パターン(透過X線強度パターン)が検出面に形成されなくなるが、一方において構造体40から散乱光L1が放射されるため、散乱光L1を参照光とするインラインホログラムが検出面に形成される。つまり、二次元検出器20では、回折強度パターン(回折X線強度パターン)とインラインホログラムが同時に取得される。透過X線が持つ試料構造情報(試料10の構造について透過X線が持っている情報)は、試料10の位置における入射光L0のサイズ以上の試料情報である。即ち、透過X線が持つ試料構造情報は、試料10の構造を示す空間周波数成分の内、試料10の位置での入射光L0のサイズ(或る一次元方向のサイズで考えた場合、スポット径SR:ここでは1μm)以上の構造についての空間周波数成分の情報(例えば1μm−1や2μm−1の情報)である。故に、試料10の位置での入射光L0のサイズより小さな構造体を構造体40に利用すれば、透過X線が持つ試料構造情報をインラインホログラムで補完することが可能である。
インラインホログラムは、周知の如く、物体光と参照光をホログラム面に同時照射したときにホログラム面に形成される干渉縞である。ここにおけるホログラム面は二次元検出器20の検出面である。参照光は参照光源用構造体40の散乱光L1である。つまり、参照光源用構造体40は、インラインホログラム形成用の参照光源として機能する。参照光が試料10に照射されたときに試料10にて参照光が散乱されるが、その散乱によって試料10から発せられる光(即ち、参照光に基づく試料10からの散乱光)が物体光である。
図8(a)及び(b)に、参照光源用構造体40の例である円柱構造体40Aの斜視図及び側面図を示す。円柱構造体40Aを、任意の種類の金属にて形成することができる。但し、X線の散乱能を高めるべく重金属にて円柱構造体40Aを形成すると良く、例えば、金又はタンタルで円柱構造体40Aを形成すると良い(後述される参照光源用構造体40の他の例においても同様)。
円柱構造体40Aは、板状体41A上に柱体42Aを設けた構造体である。板状体41Aは、XY面に平行な上面及び下面を有し、Z軸方向に厚みを有する板状の物質(金属又は非金属)である。ここで、板状体41Aの上面及び下面の内、上面の方が試料10に近いものとする。板状体41Aの厚みは数10nm〜100nm程度であり、板状体41AにおいてX線による吸収が小さい。X軸及びY軸方向において、板状体41Aの大きさは円柱構造体40Aの位置における入射光L0の大きさよりも大きい。柱体42Aは、板状体41Aの上面から試料10に向けて垂直に伸びる金属製の柱体である。柱体42Aの軸はZ軸に平行である。板状体41Aの中心及び柱体42Aの軸が入射光L0の光軸AXOPT上に位置するように、円柱構造体40Aが形成及び配置される。ここでは、柱体42Aが真円の底面を有する円柱であるとし、その真円の直径をRにて表す。
円柱構造体40Aに例示される構造体40は、第1及び第2必要条件を満たすように形成される。円柱構造体40Aにおいて、第1必要条件は、直径Rが試料10の位置での入射光L0のスポット径SR(ここでは1μm)よりも小さい、という条件である。例えば、直径Rは、100nm〜200nmの範囲内から選ばれる。柱体42Aの高さは、例えば500nm〜1μmの範囲内から選ばれる。
第2必要条件は、試料10の位置において、散乱光L1のX及びY軸方向における広がりの大きさが入射光L0のX及びY軸方向における広がりの大きさよりも大きい、という条件である。第2必要条件の充足により、試料10の位置において、試料10に対する入射光L0の照射領域の全体を試料10に対する散乱光L1の照射領域に内包させる。散乱光L1のX及びY軸方向における広がりの大きさとは、例えば、散乱光L1のX及びY軸方向に夫々における広がりの大きさであると考えても良いし、散乱光L1のX及びY軸方向における広がり面積であると考えても良い。入射光L0についても同様である。円柱構造体40Aに関し第2必要条件が満たされるように、柱体42Aの直径R及び高さ、円柱構造体40Aの材質、並びに、円柱構造体40A及び試料10間の間隔が決定される。
検出面に形成されるインラインホログラムには、原理上、試料10の構造情報の内、直径Rと同じ大きさを持つ構造及び直径Rより大きな構造についての空間周波数成分の情報が含まれることになる。例えば、直径Rが100nmであるとき、100nm−1、500nm−1、1μm−1及び2μm−1などの空間周波数成分の情報がインラインホログラムに含まれることになる。
これに対し、透過X線が持つ試料構造情報(試料10の構造について透過X線が持っている情報)は、試料10の構造を示す空間周波数成分の内、スポット径SR以上の構造についての空間周波数成分の情報(例えば1μm−1や2μm−1の情報)である。故に、第1必要条件を満たすことで、透過X線が持つ試料構造情報をインラインホログラムにて補完することが可能となる。但し、第1必要条件を満たしていても、試料10の位置において参照光L1のサイズが入射光L0のサイズ(1μm)よりも小さかったならば、1μm−1以上の構造についての空間周波数成分の情報がインラインホログラムに含まれないことになる(例えば、試料10の位置における参照光L1の直径が0.5μmであるとした場合、概念的に考えると、直径0.5μmの光で直径1μmの構造を見ることはできない)。故に、第2必要条件の充足が要求される。
また、回折角が所定角度以下の低角回折X線を受ける受光領域までもが遮蔽対象領域に含められる場合、構造体40が無かったならば、透過X線が示す情報(例えば1μm−1の情報)に加えて低角回折X線が示す構造情報(例えば500nm−1の情報)も検出面の検出結果から欠落することにが、構造体40の設置により、その欠落した情報はインラインホログラムに含まれることになる。換言すれば、そうなるように参照光源用構造体40の構造及び遮蔽版50の大きさ等が決定される。
尚、図8(a)及び(b)に示す円柱構造体40Aにおいて、例えば、柱体42Aの直径Rを小さくし過ぎるとインラインホログラム用の参照光が弱くなりすぎて、インラインホログラムが回折X線に埋もれてしまう。また例えば、柱体42Aの高さを大きくし過ぎると参照光が強くなりすぎてインラインホログラム以外の回折X線を観測し難くなる。検出面におけるインラインホログラムと回折X線の強度バランスを考慮して、円柱構造体40Aの具体的構造を決定すると良い。
また、試料10の構造を示す空間周波数成分の内、より低い空間周波数成分の情報が検出面の中心に近い位置にて検出され且つより高い空間周波数成分の情報が検出面の中心から離れた位置にて検出されると上述したが、それは回折強度パターンに当てはまる事象であって、それと同じことは、原理上、インラインホログラムに当てはまらない。故に、検出面の中央付近が遮蔽体50にて遮蔽されているからといって、透過X線が持つ情報及び低角回折X線の持つ情報がインラインホログラムに内包されないといったことは無い。
図9は、イメージング装置1のX線タイコグラフィによる試料像の構築動作フローチャートである。まず、ステップS11において変数iに1が代入される。続くステップS12において、駆動装置30により、集光点Oの位置がステップ位置Piと一致するように試料10が駆動される。続くステップS13において、二次元検出器20の検出面内の全検出結果(受光強度の検出結果の全て)を第iの光強度検出パターンとして取得する。第1実施形態では、インラインホログラムと回折強度パターンを二次元検出器20で同時に取得したもの(即ち、同時に検出されたインラインホログラム及び回折強度パターンから成る検出パターン)が第iの光強度検出パターンとなる。
その後、ステップS14において、イメージング装置1の制御部(不図示)により、変数iが所定値n(例えば100)と一致しているか否かが確認される。“i=n”の場合にはステップS16に進む。一方、“i<n”の場合にはステップS15にて変数iに1を加算してからステップS12に戻り、ステップS12以降の処理が繰り返される。結果、ステップS16に至る時点では第1〜第nの光強度検出パターンが取得済みとなる。第iの光強度検出パターンは、集光点Oの位置をステップ位置Piと一致させた状態において、試料10からのインラインホログラム及び回折強度パターンを同時に検出したものである。
ステップS16において、演算装置60は、ステップS13にて取得された第1〜第nの光強度検出パターンに対し反復的位相回復アルゴリズムによる所定の演算を施すことで、試料10の像を生成する。演算装置60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から形成されるコンピュータであって良い。ステップS16における反復的位相回復アルゴリズムは、参考実施形態における反復的位相回復アルゴリズムと同じである。
[シミュレーション]
二次元検出器20に必要となる検出ダイナミックレンジの圧縮効果を検証するために、計算機による以下の第1〜第3シミュレーションを行った。第1〜第3シミュレーションでは、テスト画像300(図6(a)参照)が試料10として用いられる。
第1シミュレーションでは、イメージング装置1から構造体40及び遮蔽体50を削除した第1仮想イメージング装置(即ち、参考実施形態のイメージング装置)を用いることを想定した。第1仮想イメージング装置にて取得される光強度検出パターンは、透過及び回折強度パターンである。
図10(a)に、第1仮想イメージング装置において、試料10の或る一点に入射光L0を照射したときの光強度検出パターン(透過及び回折強度パターン)のシミュレーション結果を示す。例えば、106光子/ピクセル/秒の検出性能を有する二次元検出器20を用い且つ検出時間が1秒に設定された検出条件で取得される光強度検出パターンが、図10(a)の光強度検出パターンに相当すると考えて良い。或いは例えば、103光子/ピクセル/秒の検出性能を有する二次元検出器20を用い且つ検出時間が103秒に設定された検出条件で取得される光強度検出パターンが、図10(a)の光強度検出パターンに相当すると考えて良い。後述の第2及び第3仮想イメージング装置に対するシミュレーションについても同様である。図10(b)は、第1仮想イメージング装置において、第1〜第nの光強度検出パターンから反復的位相回復アルゴリズムにより生成されるテスト画像300の再構成像の一部のシミュレーション結果である。構造体40及び遮蔽体50を用いない場合、上記のような検出条件では、106光子/ピクセルの光子ダイナミックレンジまでしか光強度検出パターン(透過及び回折強度パターン)を検出できないため、透過X線だけが際立ち、回折強度パターンが雑音に埋もれてしまうことが分かる。再構成像の分解能は悪く、回折強度パターンに対する雑音の影響が顕著に再構成像に現れている。
第2シミュレーションでは、イメージング装置1から構造体40のみ削除した第2仮想イメージング装置を用いることを想定した。第2仮想イメージング装置にて取得される光強度検出パターンには回折強度パターンしか含まれない。
図11(a)に、第2仮想イメージング装置において、試料10の或る一点に入射光L0を照射したときの光強度検出パターン(回折強度パターン)のシミュレーション結果を示す。図11(a)において、中央付近の黒い正方形領域は遮蔽体50によってX線の入射が遮蔽されている領域に相当する。図11(b)は、第2仮想イメージング装置において、第1〜第nの光強度検出パターンから反復的位相回復アルゴリズムにより生成されるテスト画像300の再構成像の一部のシミュレーション結果である。遮蔽体50により強度の大きな透過X線及び低角回折X線を遮蔽することで、取得される光強度検出パターンの光子ダイナミックレンジが106光子/ピクセルであっても、その光強度検出パターンの中に高分解能回折強度パターン(即ち、試料構造を示す空間周波数成分の内、比較的高い空間周波数成分の情報)が内包される。しかしながら、低分解能情報が欠落しているため、図11(b)に示すような低分解能情報が欠如した像が再構成される。
第3シミュレーションでは、イメージング装置1そのものを第3仮想イメージング装置として用いることを想定した。第3仮想イメージング装置にて取得される光強度検出パターンには、インラインホログラムと回折強度パターンが含まれる。
図12(a)に、第3仮想イメージング装置において、試料10の或る一点に入射光L0を照射したときの光強度検出パターン(インラインホログラム及び回折強度パターン)のシミュレーション結果を示す。図12(a)において、中央付近の黒い正方形領域は遮蔽体50によってX線の入射が遮蔽されている領域に相当する。図12(b)は、第3仮想イメージング装置において、第1〜第nの光強度検出パターンから反復的位相回復アルゴリズムにより生成されるテスト画像300の再構成像の一部のシミュレーション結果である。構造体40及び遮蔽体50を用いた場合、取得される光強度検出パターンの光子ダイナミックレンジが106光子/ピクセルであっても、その光強度検出パターンの中に、構造体40からの散乱光を参照光とするインラインホログラムと高分解能回折強度パターン(即ち、試料構造を示す空間周波数成分の内、比較的高い空間周波数成分の情報)が内包される。インラインホログラムは試料10(ここではテスト画像300)の低分解能情報を含んでいるため、遮蔽体50によって透過X線及び低角回折X線を遮蔽しても、オリジナル画像(300)と同等の再構成像を生成することができる。
図7では、検出器20の中心を中心に持つ領域であって且つ検出器20の一部領域にのみインラインホログラムが形成されるとの考えを便宜上採用しており、その考えに符合するように、図12(a)には、インラインホログラム形成領域の外形を示すものとして破線円を示している。しかし実際には、二次元検出器20の検出面の全体に亘ってインラインホログラムの情報を示すX線が入射する。つまり、図12(a)に示す光強度検出パターンの全体に亘ってインラインホログラムの情報が含まれている、と考えることもできる。
反復的位相回復アルゴリズムを用いたステップS16の演算では、反復計算の繰り返しの中で、試料10の像の再構成と共に試料10にあたるX線の振幅及び位相も導出される。故に、構造体40に基づく参照光が試料10に照射されていても何ら問題は無く、インラインホログラムの情報と回折X線の情報が1つの光強度検出パターンに混在していても何ら問題は無い。構造体40に基づく参照光の試料10への照射の有無に関係なく、反復計算の繰り返しの中で試料10にあたるX線の振幅及び位相が明らかとなり(どのようなX線が試料10にあたっているのかが解析され)、これに連動して試料10の像が再構成される。
尚、参考実施形態において検出面に形成される透過強度パターン(透過X線強度パターン)もインラインホログラムの一種であると考えて良い。透過強度パターンとしてのインラインホログラムにおいては、試料10の中にある直径1μmの球形の発光点からの光を参照光と考えれば良い。その発光点からの光の一部は試料10にて散乱され、残りは二次元検出器20に向けて試料10を素通りするが、その発光点からの光が試料10によって散乱された光を物体光と考えれば良い。
第1実施形態は、透過強度パターンに基づくインラインホログラムの代わりに、構造体40を用いたインラインホログラムを光強度検出パターンに含めるようにしたものであり、用いる反復的位相回復アルゴリズムは参考実施形態及び第1実施形態間で同じであって良い。
[参照光源用構造体の変形例]
参照光源用構造体40の変形例について説明する。上述の円柱構造体40Aは、円柱部分に金属が配置された凸型の円柱構造体である。構造体40として、円柱状に金属を取り除いた凹型の円柱構造体が採用されても良い。
図13に、参照光源用構造体40の例である凹型の円柱構造体40Bの斜視図を示す。円柱構造体40Bを、任意の種類の金属(例えばタンタル又は金)にて形成することができる。円柱構造体40Bは、板状体41Bに柱状開口部42Bを設けた部材である。板状体41Bは、XY面に平行な上面及び下面を有し、Z軸方向に厚みを有する板状の金属である。板状体41Bの厚みは数10nm〜100nm程度である。X軸及びY軸方向において、板状体41Bの大きさは円柱構造体40Bの位置における入射光L0の大きさよりも大きい。柱状開口部42Bは、板状体41Bに設けられた柱状の穴である。柱状開口部42Bの軸はZ軸に平行である。板状体41Bの中心及び柱状開口部42Bの軸が入射光L0の光軸AXOPT上に位置するように、円柱構造体40Bが形成及び配置される。ここでは、柱状開口部42Bが真円の底面を有する円柱状の穴であるとし、その真円の直径をRにて表す。
凸型の円柱構造体40Aでは、突出している柱体42Aの部分において、そうでない部分と比べ入射光L0の波面が乱れて(位相が遅れて)散乱が生じる。これに対し、凹型の円柱構造体40Bでは、穴が形成されていない部分において、柱状開口部42Bと比べ入射光L0の波面が乱れて(位相が遅れて)散乱が生じる。
円柱構造体40Bも上述の第1及び第2必要条件を満たすように形成される。つまり、直径Rが試料10の位置での入射光L0のスポット径SR(ここでは1μm)よりも小さいという第1必要条件が満たされる。また、試料10の位置において、散乱光L1のX及びY軸方向における広がりの大きさが入射光L0のX及びY軸方向における広がりの大きさよりも大きいという第2必要条件が満たされる。第2必要条件の充足により、試料10の位置において、試料10に対する入射光L0の照射領域の全体を試料10に対する散乱光L1の照射領域に内包させる。
凸型の構造体40A(図8(a)参照)において、金属による柱体42A(凸型の柱状構造部)の底面は楕円であっても良い。同様に、凹型の構造体40B(図13参照)において、柱状開口部42B(凹型の柱状構造部)による穴としての柱体の底面は楕円であっても良い。但し、それらの形状が真円に近い方がX線散乱の等方性が高くなるため、検出ダイナミックレンジの圧縮効果(定められた検出時間で所望の分解能を得るために必要な検出ダイナミックレンジの低減効果)がより高まる。
また、凸型の構造体40A(図8(a)参照)において、金属による柱体42Aの底面は円以外(例えば多角形)であっても良い。同様に、凹型の構造体40B(図13参照)において、柱状開口部42Bによる穴としての柱体の底面は円以外(例えば多角形)であっても良い。但し、それらの形状が真円に近い方がX線散乱の等方性が高くなるため、検出ダイナミックレンジの圧縮効果がより高まる。例えば、凸型の構造体40Aにおける柱体42Aの底面を四角形にした場合、インラインホログラムの中に強度の高いスポットが離散的に出現し、結果、それを真円とする場合よりも、検出ダイナミックレンジの圧縮効果が低くなる。
断面が真円の柱体42A又は柱状開口部42Bを有する円柱構造体40A又は40Bの場合に対しては直径Rに関連付けて第1必要条件を定義できるが、断面が真円以外の柱体42A又は柱状開口部42Bを有する構造体40をも考慮した場合、第1必要条件の表現が変更される。即ち、凸型の構造体40A(図8(a)参照)において、金属による柱体42Aの断面積(即ち底面の面積)は、試料10の位置における入射光10の広がり面積(X軸及びY軸方向の広がり面積)より小さくされるべきである。これが、構造体40Aが満たすべき第1必要条件であると考えて良い。同様に、凹型の構造体40B(図13参照)において、柱状開口部42Bによる穴の断面積(柱状開口部42Bによる穴としての柱体の底面の面積)は、試料10の位置における入射光10の広がり面積(X軸及びY軸方向の広がり面積)より小さくされるべきである。これが、構造体40Bが満たすべき第1必要条件であると考えて良い。
[実験結果]
次に、イメージング装置1を用いた実験内容及び結果を説明する。当該実験は、放射光施設Spring−8のビームラインBL29XULにて行われた。放射光施設の蓄積リングを周回する電子は、ビームラインの基部付近に配置されたアンジュレータ装置の形成する周期磁場により蛇行せしめられて放射光を放出する。この放射光がビームラインに入る。ビームラインに入ったX線領域の放射光は集光用の光学系を介し、入射光L0としてイメージング装置1に入射する。
実験においても、試料10の位置における入射光L0のスポット径は1μmであり、入射光L0としてのX線のエネルギは6.5keVである。参照光源用構造体40としては、図13に示す凹型の構造体40Bを用いた。実験において、構造体40Bの材質は金であり、板状体41Bの厚みは250nmであって且つ柱状開口部42Bの直径Rは200nmである。このような構造体40Bを、金箔に穴を空ける加工を施すことで作製できる。図14に、Z軸方向から走査型電子顕微鏡によって観測した、実験における構造体40Bの像(SEM像)を示す。尚、上述の厚み:250nm及び直径R:200nmは、それらの設計値(目標値)であって、実際に作成された構造体40Bでのそれらは誤差を含んでいる。
実験において、試料10と参照光源用構造体40(ここでは構造体40B)との間の間隔は約1mmである。この間隔は、板状体41Bの厚み及び柱状開口部42Bの直径Rなどを考慮しつつ、上述の第2必要条件を満たすように決定された。実験で用いた二次元検出器20は、Princeton Instruments社製の直接撮像型CCD検出器:PI−LCX1300である。試料10としては、タンタル製、厚さ200nmのジーメンススターテストチャートを用いた。図15に、Z軸方向から走査型電子顕微鏡によって観測した、ジーメンススターテストチャートの一部の像(SEM像)を示す。
実験においては、試料10(ジーメンススターテストチャート)をX軸及びY軸方向の夫々において500nmずつステップ移動させながら、逐次、インラインホログラム及び回折強度パターンから成る光強度検出パターンを取得した。取得した光強度検出パターンの個数は(7×7)である。つまり“n=7×7”である。
参照光源用構造体40の配置による影響を比較検証するために、構造体40を有するイメージング装置1そのもの(以下、構造体有りイメージング装置とも言う)に加えて、イメージング装置1から構造体40を削除した装置(以下、構造体無しイメージング装置とも言う)に対しても実験を行った。
図16において、実験結果パターン410及び420は、試料10の或る一点に入射光L0を照射したときの、実験によって取得された光強度検出パターン(インラインホログラム及び回折強度パターン)を示す。但し、パターン410は構造体有りイメージング装置において取得されたものであり、パターン420は構造体無しイメージング装置において取得されたものである。パターン410及び420の夫々において、中央付近の黒い正方形領域は遮蔽体50によってX線の入射が遮蔽されている領域に相当する。パターン410において、構造体40の配置に起因するインラインホログラム(同心円状の干渉縞)が発生していることが分かる。このインラインホログラムの中に、透過X線及び低角回折X線が含有する情報が内包される。
図17の像430は、構造体有りイメージング装置において、実験にて取得された第1〜第nの光強度検出パターンから反復的位相回復アルゴリズムにより生成される試料10(ジーメンススターテストチャート)の再構成像の一部である。図17の像440は、構造体無しイメージング装置において、実験にて取得された第1〜第nの光強度検出パターンから反復的位相回復アルゴリズムにより生成される試料10(ジーメンススターテストチャート)の再構成像の一部である。
再構成像430及び440の夫々は、試料10による位相変化量をXY面に投影した二次元像(二次元投影像)である。ここにおける位相変化量は、入射光L0が試料10を通過したときの入射光L0の位相変化量であって、実験によって取得された第1〜第nの光強度検出パターンに基づき反復的位相回復アルゴリズムにより回復(演算)された量である。
再構成像430及び440において、黒に近い領域ほど位相変化量が大きいことを示している。構造体有りイメージング装置による再構成像430では、タンタルの厚みを示す位相が良好に回復されていることが分かる。これに対し、構造体無しイメージング装置による再構成像440では、取得された光強度検出パターンにおいて透過X線及び低角回折X線の情報が欠損しているため位相を正確に回復できず、タンタルの存在領域及び非存在領域間の境界の識別程度しか達成できていない。
本実施形態に係るイメージング装置1によれば、定められた検出時間において目的の分解能及び感度を達成するために二次元検出器20に求められる検出ダイナミックレンジを低減することができる(例えば、考実施形態との比較において1000分の1程度に圧縮することができる)。検出時間が一定であるという条件下において、本実施形態に係るイメージング装置1によれば、直接撮像型CCD検出器(例えば数百万円程度で入手可能)を用いても、参考実施形態でピクセルアレイ検出器(例えば数千万円程度の費用が掛かる)を用いた場合と同等の分解能及び感度を実現できる。このため、既存の放射光ビームラインを活用した高分可能・高感度X線タイコグラフィの普及及び促進が期待される。
尚、非特許文献1などでは、二次元検出器の前面の中央付近にビームストップを配置した構成が示されている。当該構成では、高角回折X線のパターンを二次元検出器(CCD)にて観測させるために、ビームストップを配置している。ビームストップを配置していないと、透過X線の強度が非常に大きいことに起因して、高角回折X線のパターンがノイズに埋もれてしまい、高角回折X線のパターンを全く又は精度良く二次元検出器(CCD)にて観測することができない。従来方法において、実際に、二次元検出器の検出結果から低分解能及び高分解能情報の双方を含んだ試料像を構築するためには、ビームストップを取り払う必要がある。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態で述べた技術をシングルショットイメージングに適用しても良い。この場合も、第1実施形態のイメージング装置1を利用できる。但し、X軸及びY軸方向において、試料10の大きさは試料10の位置における入射光L0の大きさ以下に限定される。
シングルショットイメージングが適用されるイメージング装置1では、試料10のステップ移動は行われずに(従ってn=1とされ)二次元検出器20から1つの光強度検出パターンが取得され、取得された1つの光強度検出パターンから公知の位相回復方法に基づく演算により試料10の像を生成する。例えば、取得された1つの光強度検出パターンに対して反復的位相回復アルゴリズムによる所定の演算を施すことで試料10の像を生成する。この場合の反復的位相回復アルゴリズムも上述してきたものと同様であって良い。この際、例えば、試料10が存在するであろうと推定される領域の外では電子密度がゼロであること及び電子密度が負になることは無いことなどを実空間拘束条件として用いて、上記反復演算を行えば良い。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態で述べた技術を、EUV光を使ったタイコグラフィに適用することもできる。EUV光とは極端紫外線の波長を有した光である。図18に、EUV光を使ったタイコグラフィにより試料の像を生成するイメージング装置200の概略構成図を示す。
EUV光201、EUVマスク203、二次元検出器204、演算装置205、参照光源用構造体210、遮蔽体220は、夫々、第1実施形態における入射光L0、試料10、二次元検出器20、演算装置60、参照光源用構造体40、遮蔽体50に相当するものである。入射光L0、試料10、二次元検出器20、演算装置60、参照光源用構造体40及び遮蔽体50について第1実施形態で述べた事項を、矛盾無き限り、EUV光201、EUVマスク203、二次元検出器204、演算装置205、参照光源用構造体210、遮蔽体220に適用して良い。
EUV光201は、ミラー202を含む光学系を介して、EUVマスク203に対し所定の入射角度をもって照射される。EUVマスク203は、パターンが刻み込まれたマスクであって、極端紫外線リソグラフィに用いられる。EUVマスク203にて反射及び回折された、EUV光201に基づく光(以下、EUV反射・回折光と呼ぶ)は、EUVマスク203に対向配置された二次元検出器204にて受光され、EUV反射・回折光による像が二次元検出器204にて検出される。つまり、二次元検出器204は、試料としてのEUVマスク203の下流側に設けられる二次元EUV光検出器であり、入射光(201)に基づく試料からの光を受け、受けた光の強度を所定の二次元平面内で検出する。第3実施形態において、上流とは、入射光としてのEUV光201の進行の向きにとっての上流を指し、当然、入射光(201)は上流側から下流側に向けて進行する。
参照光源用構造体210(以下、構造体210と略記することがある)は、EUVマスク203の上流側に設けられる構造体である。入射光としてのEUV光201は、構造体210に入射され、その後にEUVマスク203に照射される。このため、入射光(201)の一部は構造体210にて散乱され、構造体210からの散乱光がEUVマスク203に向けて放射される。
遮蔽体220は、EUVマスク203と二次元検出器204との間に配置され、二次元検出器204の検出面内の所定の遮蔽対象領域に対するEUVマスク203からの光を遮蔽する。この際、第1実施形態で述べたのと同様、EUVマスク203から二次元検出器204に向かう光の内、少なくとも最大強度を持つ光が二次元検出器204(より詳細には二次元検出器204の検出面)に到達しないように、遮蔽体220が、EUVマスク203及び二次元検出器204間に配置される。これにより、二次元検出器204に必要な検出ダイナミックレンジを低減させることが可能となる。
EUVマスク203から二次元検出器204に向かう光の内、最大強度を持つ光は、EUVマスク203にて鏡面反射されたEUV光に含まれており、従って、二次元検出器204における遮蔽対象領域は、鏡面反射されたEUV光の受光領域(遮蔽体220が無かったならば鏡面反射されたEUV光を受光することになる領域)を含む領域である。つまり、EUVマスク203にて鏡面反射されたEUV光の、二次元検出器204(より詳細には二次元検出器204の検出面)への到達が、遮蔽体220によって遮蔽される。
入射したEUV光201に基づく構造体210からの散乱光がEUVマスク203に入射される結果、構造体210からの散乱光を参照光とするインラインホログラムが二次元検出器204の検出面にて形成及び検出される。このインラインホログラムにおける物体光は、参照光に基づくEUVマスク203からの散乱光である。一方、このインラインホログラム以外に、EUVマスク203の表面構造に応じた回折EUV光パターン(回折されたEUV光が形成する干渉縞によるパターン)も二次元検出器204の検出面にて形成及び検出される。
EUVマスク203のマスク面に平行な方向(即ち、EUVマスク203に入射するEUV光201の光軸に直交する方向成分を持つ方向)にEUVマスク203をステップ移動させながら、順次、インラインホログラム及び回折EUV光パターンから成る光強度検出パターンを二次元検出器204から取得し、これによって得られた第1〜第nの光強度検出パターンを演算装置205に供給する。第1実施形態と同様、第iの光強度検出パターンを取得するときの試料(ここではEUVマスク203)への入射光(ここではEUV光201)の照射領域は、第jの光強度検出パターンを取得するときの試料への入射光の照射領域と一部において重なり合う(ここで、iはn以下の任意の整数であって、且つ、jはi以外且つn以下の何れかの整数;1つのiの値に対してjの値は複数存在し得る)。演算装置205は、与えられた第1〜第nの光強度検出パターンに対して、タイコグラフィによる公知の反復的位相回復アルゴリズムによる所定の演算を施すことで、EUVマスク203の像を生成する。
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。