JP6531365B2 - 納豆菌発酵物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、脂質含量の少ない低カロリーな雑豆を用いて、好ましくは外皮を残したまま、納豆類似物を得ることを目的とした。
(1)ルーピン(Lupinus)の種子を用いた納豆菌発酵物、
(2)ルーピン種子がアオバナルーピン(Lupinus angstifolius)である、請求項1記載の納豆菌発酵物、
(3)キレート剤水溶液の存在下でルーピン種子を蒸煮する、(1)または(2)記載の納豆菌発酵物の製造方法、
(4)キレート剤水溶液の濃度が0.05〜10重量%である、(3)記載の製造方法、
(5)キレート剤がリン酸,クエン酸,ヘキサメタリン酸,フィチン酸,シュウ酸,エチレンジアミン4酢酸およびそれらの塩類から選ばれる1種以上である、請求項3記載の製造方法、
(6)キレート剤がクエン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上である、(5)記載の製造方法、
である。
本発明で用いるルーピン(Lupinus)とは、前述したハウチワマメであり、キバナルーピン(Lupinus luteus),シロバナルーピン(Lupinus albus)など多くの品種が存在するが、これらは本発明に使用することができる。アオバナルーピン(Lupinus angstifolius)を原料として調製した納豆菌発酵物は、その風味,食感等が、大豆納豆に非常に近く、本発明に好ましく使用することができる。ルーピン種子は、丸豆でも良いし、脱皮処理した豆でも良い。また、破砕した「ひき割り」豆でも良い。皮を残したまま調製すると、食物繊維含量を高くできるために、特に好ましい。
本発明で用いる納豆菌とは、日本で納豆の生産に一般的に使用される菌である。典型的にはBacillus subtilis var. nattoであるが、大豆を発酵した際に納豆の風味を醸す菌であれば、本発明に使用することができる。納豆菌発酵物とは、上記納豆菌が主たる菌として発酵した物を指す。
納豆菌発酵物の作製方法は、通常の納豆の作製と同様に行うことができる。豆または、必要により水洗いして夾雑物を除去した豆について、これを水に浸漬し、一定時間、好ましくは一晩程度吸水させる。浸漬用の水は、使用する豆の乾燥重量の3倍以上が好ましく、5倍以上が更に好ましい。最適浸漬時間は温度によっても変化するが、水温25℃では8時間以上、水温15℃では18時間以上が好ましい。水温が低い程浸漬に必要な時間は長くなる。浸漬後の豆は、吸水により乾燥時の数倍に膨潤する場合が多い。また、後述する蒸煮工程で、蒸煮温度が高温の場合は、浸漬と蒸煮を同時に行うこともできる。
膨潤した豆は、その後に蒸煮を行う。本発明の蒸煮とは、加熱水で煮ても、蒸気で蒸しても、湿熱下の加圧環境で100℃を超える加熱を行っても良い。他にも、湿熱下で加熱する方法であれば、本発明は実施可能である。
蒸煮の際、必要に応じて加水することができるし、前述した豆の膨潤工程で用いた浸漬水を、そのまま使用した蒸煮を行うこともできる。また、加圧加熱の場合、豆の膨潤工程を経ることなく、浸漬開始と同時に蒸煮を行っても、本発明を実施することが出来る。蒸煮の装置としては、大気圧に解放された鍋や、密閉された圧力釜等が挙げられるが、調理時間が短くなることから、圧力釜が特に優れている。また蒸煮時間は温度や圧力等により異なるが、沸騰水で1〜12時間程度、121℃で5〜30分間程度が例示できる。浸漬を兼ねる場合は、更に加熱時間が長くなり、121℃でも15分〜2時間程度が目安となる。概ね豆が指で潰せるくらいまで行うことが適切である。
蒸煮後の豆に納豆菌を植菌する。植菌は納豆菌の培養物を、小分けした豆に振り掛けるのが一般的であるが、小分けせず植菌しても発酵に影響はなく、実施可能である。 納豆菌植菌後は一定の温度と湿度を維持することが好ましい。温度は20〜60℃が好ましく、30〜50℃が更に好ましく、35〜45℃が最も好ましい。温度が低いと発酵が遅く、温度が高いと却って発酵が不良となる場合がある。湿度については、豆表面の乾燥を抑える程度の保湿環境が必要である。上部に小穴を開けた容器を用いたり、穴があけられたアルミホイルやラップを被せて発酵を進めることが好ましい。
発酵時間は植菌の状態や温度,湿度によっても異なるが、8〜36時間が好ましく、16〜24時間が更に好ましい。上記温度,時間で発酵した後に、数時間〜数日間冷蔵保存して熟成を進めることにより、風味を更に向上させることもできる。
本発明品のうち、外皮を残して発酵した納豆菌発酵物は、外皮に由来する食感がやや硬い傾向にある。その際キレート剤を併用することで、外皮の性状を著しく改良することができる。ここで用いるキレート剤とは、キレート能を有し、食品に使用できる分子である。具体的には、リン酸、クエン酸,ヘキサメタリン酸,フィチン酸,シュウ酸,エチレンジアミン4酢酸およびその塩類等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上のキレート剤を用いることができる。これらの中でもクエン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
これらキレート剤は、豆の浸漬水に加えても良いし、豆を蒸煮する際の外液に加えても良い。何れにせよ、豆の蒸煮加熱時にキレート剤が豆中に存在していることが重要である。キレート剤の使用量は、豆の蒸煮時の環境として、浸漬液等の外液のキレート剤濃度が0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜2重量%であると更に好ましい。濃度が低いと外皮への軟化効果が弱くなり、濃度が高いと、味への影響が大きくなる。
本発明の納豆菌発酵物は、そのまま食しても、寿司等に巻いても、他の食材と混ぜて使用しても、更にそれらを加熱や冷却しても良い。納豆を通常使用している用途に、広く使用することが可能である一方、油分やカロリーが低く、繊維含量が著しく高いため、健康に関心の高い層には特に適切である。
<原料>
実施例の原料としてオーストラリア産のルーピン豆(アオバナルーピン)を、コントロールの原料として大豆(北海道産)を、それぞれ用いた。これらを脱皮し半割れ豆とした後、使用する前日に水洗いして夾雑物を除去したあと、新しい水に浸漬し一晩静置し、充分吸水させた。
<納豆菌液の作製>
1パック分の市販納豆に2倍量の熱湯を加えてよく撹拌した後、豆を除去したものを納豆菌液とした。
<蒸煮>
ルーピン豆および大豆は、吸水後の豆重量の5倍等量の蒸留水に豆を浸漬した状態でオートクレーブ(名称:HICLAVE HG-50、株式会社平山製作所社製)で121℃,15分間加圧加熱することで蒸煮した。
<発酵>
蒸煮後ざるにあけて軽く水分を切った豆を、熱いうちにトレーに移し、厚さ1〜2cmになるよう均した。そこに予め作製した納豆菌液を吸水後の豆重量に対して10重量%を滴下し、スパテラで全体を良くかき混ぜた。トレー上部を3cm間隔で竹串で穴をあけたアルミホイルで覆い、42℃に設定された恒温水槽に20時間浮かべ、豆を発酵させた。
ルーピン豆を実施例1、大豆をコントロールとして以下に対比した。舌触りは口中での滑らかさを、歯切れは硬さがムラなく均一なものかを、風味は発酵臭を含む納豆独自の味および香りを、それぞれ大豆と比較して、ほぼ同等である:3点/かなり近い:2点/やや違和感がある:1点/全く異なる:0点とし、パネラー5人が協議して各項目が0〜3点の何れかになるように評価した。尚、以降の実施例、比較例で発酵した豆類の何れも、糸引き状態については大豆と大差ないものだった。
実施例1で使用したルーピン豆および大豆に加え、豌豆,インゲン豆,小豆(以上、北海道産),レンズ豆,ヒヨコ豆(以上、米国産)について、外皮を脱皮することなく、実施例1と同様の方法にて納豆菌発酵物を調製した。(実施例2、比較例2〜比較例7)
結果を表2に示した。評価は実施例1と同様に行った。
*脂質含量:大豆、豌豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、小豆については、非特許文献1(五訂食品成分表2010 本表編,34〜38頁,女子栄養大学出版部,2009年)に記載の値を示した。
ルーピン豆については、非特許文献4(CAB Reviews:Perspectives in Agriculture, Veterinary Science, Nutrition and Natural Resources 2007 2, No. 003)のTable1に記載のLupinus angustifolius(アオバナルーピン)の値を示した。
未脱皮ルーピン豆を使用した発酵物の食感改良について、キレート剤の効果を検討した。
蒸留水にヘキサメタリン酸ナトリウム(米山化学工業株式会社製)を必要量溶解させ、0.1,0.5,1.0,2.0,5.0,10.0重量%の、各濃度のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を調製した。同様に、1.0,2.0重量%の各濃度のクエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム(2水和物)、キシダ化学株式会社製)水溶液を調製した。更に、1重量%のクエン酸水溶液(クエン酸(1水和物)、キシダ化学株式会社製),フィチン酸水溶液(50%フィチン酸溶液、東京化成工業株式会社製)を調製した。 実施例2で用いた未脱皮のルーピン豆を用いて、実施例1に従って納豆菌発酵物を調製した。但し、浸漬時および蒸煮時の外液に、上記キレート剤水溶液を使用した(実施例3〜12)。評価は実施例1と同様に行い、結果を表3に示した。
実施例2で使用した脱皮していないルーピンの乾燥豆について、2重量%クエン酸三ナトリウム溶液の5倍量を添加し、オートクレーブで121℃,60分間蒸煮した。得られた蒸煮ルーピン豆について、実施例1と同様に納豆菌発酵物を調製した。発酵物は、一晩の浸漬を行った実施例10と同様の風味食感を示すものだった。
Claims (4)
- リン酸,クエン酸,ヘキサメタリン酸,フィチン酸,シュウ酸,エチレンジアミン4酢酸およびそれらの塩類から選ばれる1種以上のキレート剤水溶液の存在下で外皮を残したルーピン種子を蒸煮する、ルーピン(Lupinus)の種子を用いた納豆菌発酵物の製造方法であって、該キレート剤水溶液の濃度が0.05〜10重量%である、ルーピン(Lupinus)の種子を用いた納豆菌発酵物の製造方法。
- キレート剤がクエン酸ナトリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上である、請求項1記載の納豆菌発酵物の製造方法。
- ルーピン種子がアオバナルーピン(Lupinus angstifolius)である、請求項1または2記載の納豆菌発酵物の製造方法。
- リン酸,クエン酸,ヘキサメタリン酸,フィチン酸,シュウ酸,エチレンジアミン4酢酸およびそれらの塩類から選ばれる1種以上のキレート剤水溶液の存在下で外皮を残したルーピン種子を蒸煮する、ルーピン(Lupinus)の種子を用いた納豆菌発酵物の製造方法であって、該キレート剤水溶液の濃度が0.05〜10重量%である、ルーピン(Lupinus)の種子を用いた納豆菌発酵物の製造方法。但し、発酵したルーピン豆をペースト状または粉末状にする態様を除く。
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