以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
以下では、高いセル密度の実現が要求される、セグメント構造のハニカム構造体の一例として、セグメント構造の熱・音波変換部品を例にとって説明を行う。
図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態により製造された熱・音波変換部品1を表す模式的な断面図である。
図1に示す熱・音波変換部品1は、熱を音波エネルギーへ変換する熱・音波変換ユニット100の一構成部品である。この熱・音波変換ユニット100は、熱・音波変換部品1に加えて、熱・音波変換部品1の両端部にそれぞれ近接して配置された高温側熱交換器2および低温側熱交換器3を備えている。
高温側熱交換器2は、不図示の外部の熱源から熱の供給を受けて(高温側熱交換器2側の点線矢印参照)、高温側熱交換器2が近接している熱・音波変換部品1の端部にその熱を供給する役割を果たす。一方、低温側熱交換器3は、低温側熱交換器3が近接している熱・音波変換部品1の端部(高温側熱交換器2が近接している端部とは反対側の端部)から熱を吸収して外部にその熱を放出する(低温側熱交換器3側の点線矢印参照)役割を果たす。これら高温側熱交換器2および低温側熱交換器3により、熱・音波変換部品1の両端部のうち、高温側熱交換器2側の端部が、低温側熱交換器3側の端部よりも相対的に温度が高い状態が実現する。
ここで、高温側熱交換器2および低温側熱交換器3の構成としては、たとえば、熱音響効果を利用する技術分野で従来から知られている熱交換器の構成を採用することができ、これらの構成の詳細は、後述する熱・音波変換部品1の特徴を限定するものではない。ただし、念のため、構成の一例を挙げるとすると、高温側熱交換器2としては、たとえば、自動車等のエンジン機関の排気ガス管に接続されて、熱供給対象の熱・音波変換部品1の端部の周辺を取り巻く排気ガス流路を形成する熱交換器を採用することができる。このタイプの高温側熱交換器2では、エンジン機関から排出された高温の排気ガスが熱供給対象の熱・音波変換部品1の端部の周辺を周回して通過する際に、排気ガスの熱が熱・音波変換部品1の端部に伝達されることとなる。一方、低温側熱交換器3としては、たとえば、熱伝導性の高い材料で構成され、熱吸収対象の熱・音波変換部品1の端部に接触してこの端部の熱を大気中に放出する熱交換器を採用することができる。このタイプの低温側熱交換器3の一典型例は、複数枚の金属製(たとえば銅製)メッシュ板を重ね合わせたメッシュ積層構造を有する熱交換器である。
以下、熱・音波変換部品1について説明する。
図1に示すように、熱・音波変換部品1は、それぞれが細い管状の貫通孔である複数のセル14が、隔壁11によって区画形成されてなるハニカムセグメント15が、接合層12を間に置いて複数個互いに接合されたハニカム構造を有している。ここで、本明細書では、「セル」という語を、隔壁を含まない貫通孔のみを指すものとして用いる。図1に示すように、この熱・音波変換部品1は、伝播管4内に配置されている。各セル14は、図1の水平方向(高温側熱交換器2と低温側熱交換器3とをつなぐ方向)を貫通方向(各セル14が延在する延在方向)として、高温側熱交換器2側の端面および低温側熱交換器3側の端面の両端面において開口し、高温側熱交換器2および低温側熱交換器3を介して伝播管4と連通している。
伝播管4および各セル14には、振動することで音波を伝搬する作動流体が満たされている。作動流体は大気であってもよいが、伝播管4が閉管を形成しており特定種類の作動流体を使用することができる場合には、作動流体として、低粘性で反応性の低い希ガス等の気体を用いるのが好ましい。粘性が高い作動流体は、伝播管4および各セル14の内壁との間で摩擦熱が生じやすく、熱・音波変換性能(後述)の観点から不利となる。一方、反応性の高い作動流体は、化学変化を起こして減少してしまうため、安定した熱・音波変換性能を得にくいという欠点がある。
高温側熱交換器2および低温側熱交換器3により、熱・音波変換部品1の両端部に温度差が存在している状態では、各セル14内の作動流体は、各セル14の貫通方向に振動を開始し、その振動は音波として熱・音波変換部品1から、低温側熱交換器3を介して熱・音波変換部品1の外部に伝播していく(図中の太線矢印参照)。このように温度差を与えると作動流体が振動する現象は、自励振動と呼ばれており、細い管に温度勾配を与えたときに起きる従来からよく知られた現象である。熱音響効果とは、熱に起因するこうした作動流体の自励振動により音波が発生することを指している。ここで、この自励振動について簡単に説明する(なお、詳細については、数多くの文献で説明されているが、たとえば、特許文献3でも詳しく説明されている)。
細い管に温度勾配が与えられると、高温側では、細い管の内部の作動流体は、管の壁面から熱を吸収して高温側から低温側へ向けて膨張する。そして、その低温側で壁面に対し熱を放出して収縮して元の高温側の方に戻る。このような壁面との熱の授受と膨張圧縮が繰り返されることで、結果的に、作動流体が管の延在方向に振動することとなる。簡単にいえば、この作動流体の動きは、壁の壁面の温度勾配を緩和する(弱める)ように、熱を運ぶ作動流体の動きだということができる。この説明からも明らかであるが、この現象は、管が細いために内部の作動流体に対する壁面の熱的影響が大きい場合にのみ生じるものである。このため、管を太くしていくと壁面の熱的影響が小さくなっていき(すなわち断熱状態に近づき)、こうした自励振動は生じにくくなる。そこで、自励振動により音波を発生させる上では、管の太さが重要な要素となり、この管の太さは、より定量的には、管の断面の面積をS、この断面の周長をCとしたときにHD=4×S/Cで定義される水力直径HDによって評価できる。
上述の熱・音波変換部品1における各セル14は、自励振動が生じるような十分に小さい水力直径HDを有しており、熱・音波変換部品1の両端面における上述の温度差により自励振動が生じる。この自励振動により、各セル14内において、低温側熱交換器3側の端面に向かって進行する音波が発生する。発生した音波は、図中の太線矢印で示すように伝播管4内を進行し、この音波のエネルギーは、不図示のマイクロフォン等のエネルギー変換機構により電力に変換することができる。この結果、高温側熱交換器2に与えられた熱(たとえば、排気ガスの熱)を、電力の形態で有効活用することが可能となる。
なお、以上では、熱・音波変換ユニット100に対し、熱を与えて音波のエネルギーを発生する場合を例として説明したが、同様の構成の熱・音波変換ユニット100を用いて音波のエネルギーを冷熱に変換することもできる。この冷熱へのエネルギー変換は、上述の熱音響効果のメカニズム(貫通孔の温度勾配に起因して音波が発生)とは逆のメカニズム(音波に起因して貫通孔に温度勾配が発生)によるものである。たとえば、高温側熱交換器2に対する熱の供給がなく、かつ、低温側熱交換器3を大気温度以下となっている状態において、音波が高温側熱交換器2側から熱・音波変換部品1内に進行してくると、伝播されてきた音波に対し、熱・音波変換部品1において温度勾配が発生するように熱が渡される。この結果、高温側熱交換器2側において、低温側熱交換器3側よりも温度が低くなった低温状態が作り出される。この低温状態による冷熱を、水等の媒体を通じて取り出す(たとえば冷却水の冷熱として取り出す)ことができる。
以下、熱・音波変換部品1の構成についてさらに詳しく説明する。
図2は、図1のAA線における熱・音波変換部品1の断面図である。
図2に示すように、熱・音波変換部品1では、複数のセル14が隔壁11によって区画形成されてなるハニカムセグメント15が、接合層12を間に置いて、複数個互いに接合されている。この接合層12は、後述の製造方法において用いられる接合材12A(たとえば図5参照)が焼成されたものである。なお、本発明では、複数のハニカムセグメント15の集合体の周囲を取り囲む外周壁が備えられていてもよく、図2では(図1も合わせて参照)、このような例としてハニカムセグメント15の集合体の周囲を取り囲む外周壁13が示されている。ここで、外周壁13の構成材料としては、たとえば、隔壁11の構成材料と同じものを採用できる。
ここで、より大きな熱音響効果を発揮するには、自励振動が生じる細い貫通孔であるセル14を、できるだけ数多く形成するのが有利である。言い換えれば、熱・音波変換部品1の端面におけるセル密度が大きい方が有利である。熱・音波変換部品1は、各端面において620[セル数/cm2]以上の高いセル密度を有しており、これにより十分な熱音響効果を発揮することができる。逆に620[セル数/cm2]未満のセル密度では、熱音響効果に寄与するセルが少なすぎて十分な熱音響効果は得られない。なお、620[セル数/cm2]以上のセル密度の中でも、770[セル数/cm2]以上のセル密度がさらに好ましい。
上述したように、一般に、自励振動により音波を発生させる上で貫通孔の水力直径HDが1つの重要な要素であり、熱・音波変換部品1の各セル14の水力直径HDが、0.4mm以下となっていることが好ましい。0.4mm以下というきわめて小さい水力直径HDを有するセルが高密度で形成されていることで、熱・音波変換部品1では、大きな熱音響効果を得ることができる。逆に、水力直径HDが0.4mmより大きいセルでは、自励振動が弱く小さな熱音響効果しか得られない。
また、熱・音波変換部品1では、図2に示すような、複数のセル14の貫通方向に垂直な平面内において、複数のハニカムセグメント15それぞれの断面の開口率に対する熱・音波変換部品1全体の断面の開口率の比率が、いずれも0.97以上となっていることが好ましい。ここで、各ハニカムセグメント15において上記の開口率の比率が0.97以上ということは、上述した各ハニカムセグメント15の高いセル密度(言い換えれば高い開口率)を活かして、熱・音波変換部品1においても高いセル密度(言い換えれば高い開口率)が実現されていることを意味する。仮に上記の開口率の比率が0.97未満であると、接合層12(外周壁13が設けられている場合には、接合層12および外周壁13)のいずれかの箇所が分厚いことにより、熱音響効果に寄与するセルの数が不足して大きな熱音響効果が得られない。なお、0.97以上の開口率の比率の中でも、0.99以上の開口率の比率がさらに好ましい。
なお、上記開口率は、貫通方向に垂直な断面を顕微鏡で撮影し、このときの断面の撮影画像から、材料部分面積S1と空隙部分面積S2を求め、S1とS2を用いてS2/(S1+S2)として求められる。なお、隔壁内に気孔が存在する場合には、上記の撮影画像においてその気孔が占める面積については材料部分面積S1に含めるものとする。
また、熱・音波変換部品1では、セル14の貫通方向に垂直な前記セルの断面形状は、角部が弯曲した多角形の形状であり、その形状の角部における曲率半径が0.02mm以上0.1mm以下であることが好ましい。図2では、セル14の形状の例として、角部が弯曲した四角形の形状が図の右上の拡大図に示されており、この角部の曲率半径は0.02mm以上0.1mm以下となっている。曲率半径が0.02mm以上であることでその緩やかに弯曲した形状により、セル14を押しつぶすように働く衝撃に対し十分に対抗できる。これは、トンネル等の穴の形状としては、丸みを帯びた形状の方が角ばった形状よりも、周囲からの外力に対抗しやすいのと同様の理由に基づくものである。ただし、弯曲部分が大きすぎると、今度は、各セル14の角部付近で隔壁11が分厚くなって開口率が減少し、得られる熱音響効果が小さくなる。そこで、曲率半径が0.1mm以下となっていることで、同時に高い熱音響効果も維持されている。
なお、セル14の角部における曲率半径については、セル14の貫通方向に垂直な断面の拡大写真をとり、そのセル14の断面形状に基づき測定することができる。
セル14の貫通方向に垂直な面内でのセル14の形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形等の様々な多角形、および、楕円形(真円の形状含む)を採用できるが、三角形、四角形、六角形、およびこれらの組み合わせが好ましく、三角形および四角形が特に好ましい。三角形および四角形が特に好ましいのは、様々な多角形および楕円形のセル形状のうち、隔壁の厚さをできるだけ薄くして数多くのセルを配列させるのに最も適しているからである。
なお、図2では、各セル14の形状の例として四角形が採用されたことに対応して、各ハニカムセグメント15の形状としても四角形が採用されている。ただし、本発明では、隔壁を厚くすることなく各セル14が配置できる形状であれば、各セル14の形状に対応した様々なハニカムセグメント15の形状を採用することができる。たとえば、各セル14の形状が正方形の場合、ハニカムセグメント15の形状としては、正方形以外に長方形も採用できる。このように、本発明では、様々なハニカムセグメント15の形状を採用することができるが、後述の加圧処理が容易となることから多角形の形状が好ましい。多角形の形状の中でも、規則的に配列することが容易な三角形や四角形の形状が特に好ましい。
また、熱・音波変換部品1では、複数のセル14の貫通方向に垂直な平面内における複数のハニカムセグメント15それぞれの断面の面積が4cm2以上50cm2以下であり、この平面内における熱・音波変換部品1全体の断面の面積が25cm2以上1600cm2以下となっていることが好ましい。一般に、ハニカム構造体の製造においては、その全体の断面の面積が25cm2以上となる程度の寸法を有する場合には、寸法精度を維持しつつ一体的に押出成形を行うのは難しくなり、さらには、押出成形に用いる口金の製造にも困難が増してくる。このような場合、断面の面積が4cm2以上50cm2以下のハニカムセグメントに分けて製造する方が望ましい。なお、1600cm2を超えるハニカム構造体は、排気浄化触媒担持用のものにしても、熱音響効果を発揮させる目的のものにしても、寸法が大きすぎ、ハニカム構造体を適用する装置の大型化を招くため、好ましくない。そこで、熱・音波変換部品1の製造においては、各ハニカムセグメント15および熱・音波変換部品1全体の断面の面積が、上記の好ましい数値範囲に属する場合に、セグメント方式による製造方法が最も有用となる。
また、熱・音波変換部品1では、その両端面の間の長さをLとしたときに、この長さLに対する上述の水力直径HDの比HD/Lが0.005以上0.02未満となっている。仮に、HD/Lが0.005未満であると、水力直径HDに比して熱・音波変換部品1が長すぎて、熱・音波変換部品1の各セル14内の作動流体が熱・音波変換部品両端の温度差の影響を受けにくくなる。この場合、各セル14内の作動流体と隔壁11との間における熱の授受が不十分で大きな熱音響効果が得られない。一方、仮に、HD/Lが0.02以上であると、今度は、水力直径HDに比して熱・音波変換部品1が短すぎて、各セル14内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が不十分なまま熱・音波変換部品1において高温側熱交換器2側から低温側熱交換器3側に隔壁11を熱が伝導していくことになる。この結果、やはり大きな熱音響効果が得られない。そこで、熱・音波変換部品1では、比HD/Lが0.005以上0.02未満となるよう工夫されており、このため、各セル14内の作動流体と隔壁11との間における熱の授受が十分に行われる。この結果、熱・音波変換部品1では、十分な熱音響効果を得ることができる。
また、熱・音波変換部品1の各ハニカムセグメント15では、各ハニカムセグメント15の構成材料、特に、隔壁11の構成材料の20〜800℃における熱膨張率が6ppm/K以下であることが好ましい。このように熱膨張率が低い状態を実現するための1つの方法としては、各ハニカムセグメント15として、セラミック材料の中でも熱膨張率が低いコージェライトを構成材料とする「コージェライト製のハニカムセグメント」を採用することが考えられる。ここで、「コージェライト製のハニカム構造体」とは、ハニカム構造体を作製するためのセラミック原料として、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合され、焼成されるとコージェライトになるコージェライト化原料を用いて作製されたハニカム構造体を指している。
熱膨張率の測定方法としては、たとえば、各セル14の貫通方向に沿った10mm以上の長さを有する試験片であって、この貫通方向、および、この貫通方向に直交する方向を含む断面の面積が4mm2以上100mm2以下である試験片を熱・音波変換部品1から切り出し、この試験片の貫通方向の熱膨張率を、石英を標準比較サンプルとする示差式の熱膨張計により測定する方法を採用することができる。
隔壁11の構成材料の、20〜800℃における熱膨張率が6ppm/K以下となることで、両端部に温度差が生じたときの熱・音波変換部品1の損傷が抑えられる。なお、6ppm/K以下の熱膨張率の中でも、4ppm/K以下の熱膨張率であることがさらに好ましい。
以上が、図1および図2の熱・音波変換部品1の構成の詳細な説明である。
以下、本発明の一実施形態である、図1および図2の熱・音波変換部品1の製造方法について説明する。
図3は、図1および図2の熱・音波変換部品1の製造方法を表したフローチャートである。
この製造方法では、まず、坏土をハニカム形状に押出成形することにより、複数のハニカムセグメント成形体がそれぞれ一体的に作製される(ステップS1)。このステップS1の工程が、本発明の成形体作製工程の一例に相当する。
図4は、1つのハニカムセグメント成形体15Aを表した図である。
ハニカムセグメント成形体15Aは、熱・音波変換部品1の完成後に図1および図2のハニカムセグメント15となるものであり、ハニカムセグメント15と同様の形状を有している。すなわち、ハニカムセグメント成形体15Aも、一方の端面である第1端面から他方の端面である第2端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁をそれぞれ有している。ここで、各ハニカムセグメント成形体15Aの水分量は30質量%以上である。このように押出成形直後のハニカムセグメント成形体15Aは、水分を多く含み柔軟であるため、自重等により、図4に示すように多少歪みが発生していることがある。
以下、各ハニカムセグメント成形体15Aの作製について、材料の詳細を含めもっと詳しく説明する。ここでは、各ハニカムセグメント15がコージェライト製である場合を例にとって説明する。
まず、セラミック原料にバインダ、分散剤、造孔材、水等を添加して成形用原料とする。セラミック原料としては、コージェライト化原料、炭化珪素−コージェライト系複合材料、アルミニウムチタネート、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、アルミナ、ムライト、スピネル、リチウムアルミニウムシリケート、および、鉄−クロム−アルミニウム系合金のうちの1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせであることが好ましい。これらの中でも、コージェライト化原料が好ましい。上述したように、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。なお、セラミック原料の含有量は、成形用原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形用原料全体に対して2〜20質量%であることが好ましい。
水の含有量(水分量)は、上述したように、成形用原料全体に対して30質量%以上である。ただし、水分量が45質量%を超えると、各ハニカムセグメント成形体15Aの保形性が著しく悪くなることから、水分量としては、30〜45質量%であることが好ましい。
分散剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。分散剤の含有量は、成形用原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
造孔材としては、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂およびシリカゲル等を採用することができる。
次に、成形用原料を混練して坏土を形成する。成形用原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、坏土を押出成形することで、複数のセルを区画形成する隔壁を備えたハニカムセグメント成形体15Aを形成する。押出成形に際しては、上述した、各セル14の水力直径や形状、および、ハニカムセグメント15におけるセル密度やハニカムセグメント15の形状等の構成上の特徴に対応した形状の口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。なお、ハニカムセグメント成形体15Aにおける各セル14の水力直径等の値については、後述の乾燥処理および焼成の処理で生じる収縮をも考慮して決定することが好ましい。
ここで、大きな熱音響効果を発揮するための、上述したような、セル密度が高く各セル14の水力直径が小さいハニカムセグメント15に対応したハニカムセグメント成形体15Aの押出成形において、こうした制約がない従来の排気浄化触媒担持用のハニカムセグメント15で用いられている押出成形法をそのまま単純に流用するにあたっては、以下の2つの問題が存在する。
第1の問題は、押出成形の際に、高温で押し出された坏土が成形用口金の孔内に密着して目詰まりが起こりやすいことである。なお、この問題については、たとえば、上述した特許文献・特開2012−237295号公報の段落[0021]でも言及されている。
第2の問題は、上述のハニカムセグメント15のようなセル密度が高く各セルの水力直径が小さいハニカムセグメントに対応する口金には、必然的にきわめて細い微細部分(典型的には0.3mm程度の太さの部分)が存在することとなり、この微細部分が、坏土押出しの際の粘性摩擦により損傷(たとえば引きちぎれる等)を受けやすいことである。
一方、熱・音波変換部品1の製造方法においては、これら2つの問題を解消するために、以下の工夫が凝らされている。
第1の問題に関しては、セル密度が高く各セル14の水力直径が小さいハニカムセグメント15に対応した口金(以下、正規口金と呼ぶ)による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.04mm以上0.09mm以下というリブの厚さがきわめて小さい口金(以下、ダミー口金と呼ぶ)での坏土の押出処理が行われる。なお、ここでいう「リブの厚さ」とは、ハニカムセグメント成形体15Aの隔壁厚さのことであって、口金のスリットの幅を指している。ここで、口金における各スリットは坏土の排出孔であって、作製対象のハニカムセグメント15の各隔壁部分の形状を決定するものである。以下、「リブの厚さ」を、スリット幅を意味するものとして用いる。このダミー口金を用いた押出処理により、目詰まりの原因となりやすい坏土成分をあらかじめ取り除くことができる。すなわち、この押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形を実行することにより、上記の目詰まりの発生を抑えることが可能となる。ここで、上記のダミー口金が、本発明にいう「第1の口金」の一例に相当し、上記の正規口金が、本発明にいう「第2の口金」の一例に相当する。
第2の問題に関しては、押出成形に用いる坏土の粘性を、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造で用いられる坏土の粘性に比べ大幅に低減して粘性摩擦を小さくすることで対処している。より具体的に説明すると、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体のハニカムセグメントの製造で用いられる坏土中の水分量は27質量%を超えないのが通常であるのに対し、上述のダミー口金を用いた押出処理後の坏土では、上述したように、水分量が30質量%以上となっている。このように、熱・音波変換部品1の製造方法では、従来に比べ、押出成形に用いる坏土中の水分量が多くて坏土の粘性が小さいことで、第2の問題の発生を回避している。なお、一般に、水分量が30質量%以上であると、ハニカムセグメント成形体の保形性維持が問題となり得るが、熱・音波変換部品1の製造方法では、後述するように、ハニカムセグメント成形体の整形が別途行われるため、この点は、あまり大きな問題とはならない。
図3に戻って、押出成形によって得られたハニカムセグメント成形体15Aのその後の処理について説明を続ける。
次に、ハニカムセグメント成形体15Aの側面に対して流動性の接合材が塗布される(図3のステップS2)。ここで、「流動性の接合材」としては、たとえば、溶液状の接合材、あるいは、溶液の中に固形物が懸濁している状態の接合材を採用することができる。このような接合材の中でもスラリー状の接合材が、均一な厚さで塗布しやすいため、好ましい。以下、スラリー状の接合材を略して「接合材スラリー」と呼ぶことがある。ここで、接合材スラリーとしては、ハニカムセグメント成形体15Aの成形材料である上述の坏土と同じ材料を含む材料をスラリー状にしたものが好ましく、同じ材料をスラリー状にしたものがさらに好ましい。
図5は、流動性の接合材が側面に塗布された図4のハニカムセグメント成形体15Aを表した図である。
図5に示すように、図4のハニカムセグメント成形体15Aの側面に対し、流動性の接合材12Aが側面に塗布される。このとき、接合材12Aの流動性のため、接合材12Aは、接合面であるハニカムセグメント成形体15Aの側面上で薄く広がりやすい。従って、側面に塗布されても接合材の層が分厚くなることは避けられている。
図3に戻って、説明を続ける。
次に、ハニカムセグメント成形体15Aの側面同士が互いに接触する態様で複数のハニカムセグメント成形体15Aの配列が行われ、この配列により、ハニカムセグメント集合体が形成される(図3のステップS3)。上述のステップS2の工程とこのステップS3の工程とを合わせたものが、本発明にいう集合体形成工程の一例に相当する。ここで、ステップS2の工程とこのステップS3の工程とは、各ハニカムセグメント成形体15Aの水分量が30質量%以上となっている状態で行われる。
図6は、接合材12Aが側面に塗布されたハニカムセグメント成形体15Aが、側面同士が互いに接触する態様で配列されることで形成されたハニカムセグメント集合体1Aを示す図である。
図3のステップS1の説明で上述したハニカムセグメント成形体15Aの歪みを反映して、複数のハニカムセグメント成形体15Aの配列で形成されたハニカムセグメント集合体1Aにおいても、図6に示すように、ハニカムセグメント成形体15A間に隙間が生じ、ハニカムセグメント集合体1Aの側面はあまり平坦ではない。
図3に戻って、説明を続ける。
次に、図6に示すハニカムセグメント集合体の側面に対して加圧処理が施されて、ハニカムセグメント集合体1Aの整形が行われる(図3のステップS4)。このステップS4の工程が、本発明にいう集合体整形工程の一例に相当する。
図7は、図6に示すハニカムセグメント集合体1Aの側面に対する加圧処理の一例を模式的に表した図である。
図7に示す例では、図6に示すハニカムセグメント集合体1Aの一つの角部が、直角をなす2つの床面を有する載置台6のその直角の角部に嵌った状態で、ハニカムセグメント集合体1Aに対し加圧処理が施される。たとえば、載置台6に配置されたハニカムセグメント集合体1Aの、載置台6の2つの床面には接触していないハニカムセグメント集合体1Aの2つの側面に対し、押圧部が平板状の2つの押圧部材5(ただし、図7ではそのT字型の断面のみが図示されている)により、それぞれ圧力がかけられる。
なお、ここでは、加圧処理の一例として、直角をなす2つの床面を有する載置台6を用いた例について説明したが、本発明では、この例に限らず、ハニカムセグメント集合体の側面に対して圧力を加えることができる方式であれば、様々な形態の加圧方式を採用することができる。たとえば、もっと単純な加圧方式として、図6のハニカムセグメント集合体1Aの1つの側面が水平な床面に接した状態で、この水平な床面の上にハニカムセグメント集合体1Aを配置し、残りの3つの側面に対し圧力を加える方式が採用されてもよい。
図8は、図3のステップS4の加圧処理後のハニカムセグメント集合体1Aの状態を示す図である。
図3のステップS4の加圧処理が施された結果、図8に示すように、ハニカムセグメント成形体15A間の隙間のほとんどが解消され、ハニカムセグメント集合体1Aの側面が平坦化されている。
ここで、ステップS4の加圧処理の工程も、ステップS2およびステップS3の処理と同様に、各ハニカムセグメント成形体15Aの水分量が30質量%以上となっている状態で行われる。
なお、以上の各工程において水分量が30質量%以上の状態を維持するための一つの方法としては、上述したステップS1における坏土の形成からステップS4の加圧処理に至る処理時間を短くする(たとえば、数時間以内とする)ことが挙げられる。また、これらの処理を非高温環境(たとえば、大気温度以下の温度環境)で行うことも挙げられる。ここで、実際に、水分量が30質量%以上の状態を維持されていることを確認する手法としては、たとえば、各ハニカムセグメント成形体15Aの成形直後の質量と、使用した接合材12Aの全質量(作製した接合材12Aの全質量から、使用されずに残った全接合材12Aの質量を引いたもの)とを把握しておき、それらの総和を、加圧処理後のハニカムセグメント集合体1Aの質量と比較する手法が挙げられる。この場合、質量の減少分が水分の減少分(蒸発分)と考えられる。この減少分を元の水分量から差し引いても水分量が30質量%以上となっていれば、ステップS1〜ステップS4までの工程の間、各ハニカムセグメント成形体15Aの水分量が30質量%以上となっている状態が維持されていると推測される。また、別の手法としては、水分減少確認用に同一のハニカムセグメント成形体15Aを1つ作製して、ステップS1〜ステップS4の工程の間、ステップS1〜ステップS4の処理環境と同一環境に放置しておき、その水分減少をチェックする手法が考えられる。この場合、上述の加圧処理の終了時における、この水分減少確認用のハニカムセグメント成形体15Aの質量を、この水分減少確認用のハニカムセグメント成形体15Aの作製時点における質量と比較したときの質量の減少分が水分の減少分(蒸発分)と考えられる。この減少分を元の水分量から差し引いても水分量が30質量%以上となっていれば、ハニカムセグメント集合体1Aを構成する各ハニカムセグメント成形体15Aにおいても、ステップS1〜ステップS4までの工程の間、水分量が30質量%以上となっている状態が維持されていると推測される。
ここで、水分量が30質量%以上となっている状態は、乾燥が進んでおらず各ハニカムセグメント成形体15Aの柔軟性が十分に存在している状態である。このため、ハニカムセグメント集合体1Aを構成するハニカムセグメント成形体15Aに歪みが発生していたとしても、図7に示すように、加圧処理により矯正しやすい。
さらに、この加圧処理に際しては、0.005kg/cm2以上という大きな面圧でハニカムセグメント集合体の整形が行われる。
ここで、セグメント構造を持つ従来のハニカム構造体の作製(たとえば特許文献4および特許文献5参照)においては、仮に加圧処理により未焼成のハニカムセグメント集合体の整形が行われるとしても、0.002kg/cm2未満という小さい面圧しか用いることができない。その理由は、0.002kg/cm2以上の面圧が与えられると、ハニカムセグメント集合体を構成する未焼成のハニカムセグメント成形体の、加圧方向に延在する隔壁部分が座屈変形を起こし、ハニカムセグメント成形体がつぶれるおそれがあるためである。
一方、図6に示すハニカムセグメント成形体15Aでは、図1の各ハニカムセグメント15が、高い熱音響効果が発揮される620[セル数/cm2]以上の高いセル密度を各ハニカムセグメント15が有していることに対応して、高いセル密度が実現している。このため、座屈変形に対するハニカムセグメント成形体15Aの耐久性(座屈強度)が従来のハニカムセグメント成形体(たとえば特許文献4および特許文献5参照)よりも高い。図3の製造方法では、この高い座屈強度を利用して、0.005kg/cm2以上という、より大きな面圧を用いて加圧処理を行っており、このため、加圧処理によるハニカムセグメント成形体15Aの歪みの矯正効果が高い。なお、面圧が0.05kg/cm2を超えると、面圧が大きすぎるため、620[セル数/cm2]以上のセル密度を有するハニカムセグメント15に対応したハニカムセグメント成形体15Aであっても、セル密度によってはつぶれる可能性が生じてくる。このため、加圧処理における面圧としては、0.005kg/cm2以上であって0.05kg/cm2以下であることが好ましい。ただし、セル密度が高くなるほど、面圧に対する耐久性は増すため、たとえば、620[セル数/cm2]をはるかに超えるきわめて高いセル密度を有するハニカムセグメント15に対応するハニカムセグメント成形体15Aであれば、0.05kg/cm2を超える面圧を用いることも可能となる。
一般に、ハニカムセグメント集合体を構成するハニカムセグメント成形体の歪みの矯正が不十分であると、隣接ハニカムセグメント成形体に対する接合面となるハニカムセグメント成形体側面が弯曲することとなる。この場合、隣接ハニカムセグメント成形体との間の接合材の層を分厚くすることで、最終製造物であるハニカム構造体において上記の接合面の弯曲に伴いハニカムセグメント間の接合強度の低下やハニカムセグメントの配列精度の低下が発生するのを抑える必要がある。
一方、図3の製造方法では、以上説明したように、十分な水分量と大きな面圧とによりハニカムセグメント成形体15Aの歪みが十分に矯正されるため、ハニカムセグメント成形体15A間の接合材を厚くする必要性が低い。そこで、十分な接合強度が確保できる最小限にまで、ハニカムセグメント成形体15A間の接合材の層を薄くすることができる。この結果、図3の製造方法では、接合材の存在に阻害されることなく、各ハニカムセグメントの高いセル密度をそのまま活かす形で、最終製造物である熱・音波変換部品1のハニカム構造全体において高いセル密度を実現することができる。このようにして、図3の製造方法では、接合後の未焼成ハニカムセグメント集合体1Aの一括焼成により高い接合強度を実現しつつ、高いセル密度を有するハニカム構造により、高い熱音響効果も実現することができる。
ここで、熱・音波変換部品1のハニカム構造全体において、各ハニカムセグメントの高いセル密度がどの程度活かされているかは、たとえば、各セル14の貫通方向に垂直な平面内における、各ハニカムセグメント15の断面の開口率に対する熱・音波変換部品1全体の断面の開口率の比率によって評価できる。具体的には、図1および図2の熱・音波変換部品1では、上述したように、上記の比率がいずれも0.97以上となっており、値「1」にきわめて近い状態が実現している。
図3に戻って、説明を続ける。
次に、整形後のハニカムセグメント集合体1Aに対し、乾燥処理が行われる(図3のステップS5)。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥および高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥および過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。また、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることも可能である。この場合、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては熱風乾燥が好ましい。
次に、その乾燥後のハニカムセグメント集合体1Aを構成する複数のハニカムセグメント成形体15Aの間における隙間の有無が判定される(図3のステップS6)。この判定は、たとえば、目視でハニカムセグメント集合体1Aを観察することにより行ってもよいし、拡大したハニカムセグメント集合体1Aの撮影画像を観察することにより行ってもよい。あるいは、レーザ光等の光を、ハニカムセグメント集合体1A上の照射場所を変えながらハニカムセグメント集合体1Aに照射していったときの反射光の変化を測定装置で分析することで隙間の有無を判定するものであってもよい。隙間が存在していると判定された場合には(図3のステップS6でYes)、その隙間に上述の接合材が挿入されることで、その隙間を埋める補修が行われる(図3のステップS7)。そして、その補修後のハニカムセグメント集合体1Aの焼成処理が行われる(図3のステップS8)。一方、隙間が存在していないと判定された場合には(図3のステップS6でNo)、そのままハニカムセグメント集合体1Aの焼成処理が行われる(図3のステップS8)。
ここで、焼成処理の前には、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。また、仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成および焼成(本焼成)の方法は特に限定されず、電気炉およびガス炉等を用いて焼成することができる。また、焼成(本焼成)の条件としては、たとえば、珪素−炭化珪素系複合材料を用いた場合には、窒素およびアルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。一方、酸化物系材料を用いた場合には、酸素雰囲気において、1300〜1500℃で1〜20時間加熱することが好ましい。
最後に、所望の熱・音波変換部品1の形状を実現するのに必要であれば、焼成後のハニカムセグメント集合体1Aの外周部分や長さを、適宜、切削加工して形状を整える。切削加工後には、必要に応じて、外周壁13(図2参照)を形成する処理が行われてもよい。ここで、外周壁の材料としては、上述の接合材と同じものを用いることができるし、あるいは、従来から外周コート材として用いられている材料を用いてもよい。なお、焼成後のハニカムセグメント集合体の外周部分の切削加工を行う必要がないのであれば、上述の乾燥処理後であって焼成処理前の段階で、外周壁形成のために外周部分に接合材を塗布してもよい。この場合、上述の焼成処理により、外周部分の接合材も合わせて一括して焼成されることとなり、強度が向上する。
以上の工程を経て最終的に、熱・音波変換部品1が完成する。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の熱・音波変換部品を以下のようにして製造した。
セラミック原料としてコージェライト化原料を用い、コージェライト化原料100質量部に対して、造孔材を1質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ分散媒とともに添加し、混合、混練して坏土を調製した。
コージェライト化原料としては、平均粒子径が3μmのタルクを38.9質量部、平均粒子径が1μmのカオリンを40.7質量部、平均粒子径が0.3μmのアルミナを5.9質量部、および平均粒子径が0.5μmのベーマイトを11.5質量部用いた。ここで、平均粒子径とは、各原料の粒子の分布におけるメジアン径(d50)のことである。
分散媒としては水を用いた。ここで、坏土中の水分量が35質量%となるように、水の量を調整した。
有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。また、分散剤としては、エチレングリコールを用いた。
次に、得られた坏土を、口金を用いて押出成形し、セル形状がほぼ正方形の四角形状で、全体形状が、一辺が23mmのほぼ正方形の上面および底面を有する四角柱状のハニカムセグメント成形体を複数個作製した。
なお、このときの押出成形においては、上述したように、実施例1の熱・音波変換部品に対応した正規口金による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.07mm程度のダミー口金での坏土の押出処理が行われた。そして、このダミー口金を用いた押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形が実行された。
次に、各ハニカムセグメント成形体の側面に対し、上述の坏土をスラリー状にした接合材スラリー(より具体的には、上述の坏土の坏土固形成分を20質量%を含むスラリー)を塗布し、図2に示すような縦横3×3=9個のハニカムセグメント成形体の組からなるハニカムセグメント集合体を形成した。
次に、図7と同様の方式により、ハニカムセグメント集合体の2つの側面を載置台の床面に接触させた状態で、残りの2つの側面に対し、押圧部が平板状の押圧部材による面圧0.007kg/cm2の加圧処理を施し、ハニカムセグメント集合体を整形した。成形後のハニカムセグメント集合体は、一辺が70mmのほぼ正方形の上面および底面を有する四角柱状であった。
ここで、坏土を形成してからハニカムセグメント集合体の整形までに要した時間は1時間以内ときわめて短く、また、これらの処理は常温の室内で行われている。このため、整形後のハニカムセグメント集合体における各ハニカムセグメント成形体では、乾燥はほとんど進んでおらず、その水分量は、作製時の35質量%とほぼ同じと考えられる。実際、各ハニカムセグメント成形体の成形直後の質量と、使用した接合材スラリーの全質量とを各工程で把握しておき、それらの総和を、加圧処理後のハニカムセグメント集合体1Aの質量と比較したところ、その質量の相違はほとんどゼロであった。なお、使用した接合材スラリーの全質量は、作製した接合材スラリーの全質量から、使用されずに残った全接合材スラリーの質量を引いたものとして求めた。
このハニカムセグメント集合体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた。そして、乾燥後のハニカムセグメント集合体を構成する複数のハニカムセグメント成形体の間に隙間が生じているか否かを、目視により確認した。加圧処理を行ったことにより、目立った隙間はなくなったが、乾燥後に生じた一部の微細な隙間が発見され、その微細な隙間については、上述の接合材スラリー状が挿入することで補修を行った。補修後のハニカムセグメント集合体について、長さ調整のために両端面の切断を行い、さらに、切断後のハニカムセグメント集合体を、主に切断面を中心に熱風乾燥機で乾燥した。
最後に、1445℃の温度環境下で5時間かけて焼成処理を行った。焼成処理後のハニカムセグメント集合体は、一辺が68mmのほぼ正方形の上面および底面を有する四角柱状であった。焼成後のハニカム成形体の外周部分を適宜切削加工して、直径59mmの円柱状に整えた。さらに、切削加工後のハニカム成形体の外周面に外周コート材を塗布して乾燥させ外周壁を形成し、外径60mmとした。ここで、外周コート材としては、コージェライトの粒子とシリカゾルを含む原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤を加えたものに水を加えて混練したスラリーを用いた。また、外周コート材を塗布する方法としては、切削加工後のハニカム成形体をろくろ上で回転させながらゴムベラ等でコーティングする方法を用いた。
以上の工程を経て、熱・音波変換部品が完成した。
完成した熱・音波変換部品では、各セルは、ほぼ同じ大きさの正方形であって、各ハニカムセグメントの端面では同じような周期で規則的に並んでいた。各セルの貫通方向に垂直な面(垂直面)内における各ハニカムセグメントのセル密度を求めたところ、775[セル数/cm2]であった。
ここで、各ハニカムセグメントのセル密度については、上記垂直面内における熱・音波変換部品の断面の拡大写真を撮り、ハニカムセグメントごとにセル密度を計算して全ハニカムセグメントで算術平均をとることで求めた。具体的には、まず、この断面の拡大写真中の、セルが密集している各ハニカムセグメントの断面領域内において、ハニカムセグメントごとに1cm2の領域をそれぞれ選択した。そして、各領域内のセル数をカウントして、全ハニカムセグメントについてのセル数の算術平均の値を計算した。
ここで、各セルが正方形の場合には、各セルの水力直径HDは、その定義式(セルの断面の面積をS、該断面の周長をCとしたときにHD=4×S/C)より、正方形の一辺の長さに等しい。この場合には、セル密度(セル数/cm2)×(HD)2≦1という関係式が一般に成立することから、セル密度が620[セル数/cm2]以上であると、HD≦(1/620[セル数/cm2])1/2≒0.0401cmが成立する。すなわち、セル密度が620[セル数/cm2]以上であると、各セルの水力直径HDは、ほぼ0.4mm以下となる。なお、このようなセル密度と水力直径の関係は、各セルの形状が同じ大きさの正方形という特別な場合にのみ成立するものであって、一般には、セル密度と各セルの水力直径HDは、互いに独立のパラメータである。
実施例1のセル密度は、上述のように775[セル数/cm2]であって620[セル数/cm2]以上であるため、各セルの水力直径HDも0.4mm以下となっている。
さらに、上記の断面の拡大写真に基づき、各ハニカムセグメントの断面の開口率と、熱・音波変換部品全体の断面の開口率とを求め、各ハニカムセグメントの断面の開口率に対する熱・音波変換部品全体の断面の開口率の比率を算出した。そして、これらの比率の最小値を求めたところ0.98であった。
ここで、開口率は、上記の断面の拡大写真から、各ハニカムセグメントの断面および熱・音波変換部品全体の断面それぞれについて材料部分面積S1と空隙部分面積S2を求め、S1とS2を用いてS2/(S1+S2)として求めた。なお、接合材として、隔壁の材料と同じ材料をスラリー状にしたものが使用されたことでハニカムセグメントの断面の境界が明確でない場合には、ハニカムセグメントの外周に並ぶセルを含む最小の領域をハニカムセグメントの断面の領域と近似して上記の開口率を求めた。ここで、熱・音波変換部品の端面は、ほぼ各セルの貫通方向に垂直であるため、上記の断面における開口率は、熱・音波変換部品の端面における開口率と考えることもできる。
また、実施例1の熱・音波変換部品について、上記の断面の拡大写真におけるセル形状の歪みを観察することで、上述の加圧処理による整形によって生じた隔壁の座屈変形の程度を調べた。その座屈変形の程度は、「実用上問題なし」および「実用上問題あり」の2段階で評価した。
さらに、以下の実験を行って、実施例1の熱・音波変換部品の熱・音波変換効率を求めた。
実施例1の熱・音波変換部品を、図1の構成と同様に、伝播管内に設置するとともに両端部に高温側熱交換器と低温側熱交換器とを取り付けた。ここで、伝播管としては、直線状の閉管を用い、音波の進行方向(図1の太線矢印参照)の伝播管の先端部にはマイクロフォンを接続した(これらの点については図1では不図示)。高温側熱交換器としては、500℃程度の自動車の排気ガスの流入を受けてその熱で高温側熱交換器側の熱・音波変換部品の端面の温度をほぼ500℃に保つ熱交換器を用いた。このような熱交換器として、たとえば、特許文献1記載のものを採用することができる。一方、低温側熱交換器としては、銅製メッシュ板を重ね合わせたメッシュ積層構造を有し大気との間で熱交換を行って低温側熱交換器側の熱・音波変換部品の端面の温度をほぼ60℃に保つ熱交換器を用いた。このような熱交換器の構成は、従来からよく知られたものである。なお、作動流体としては10atmのヘリウムガスを用いた。
このような実験システムの下で、500℃程度の自動車の排気ガスを高温側熱交換器に10分間流入させ、温度がいくらか下がって高温側熱交換器から流出する排気ガスの温度を測定した。このときの温度変化からこの実験システムに流入した熱量を算出した。また、熱・音波変換部品の両端部間の温度差に伴う熱音響効果で発生した音波のエネルギーから上記のマイクロフォンにより得られる電力量を計測した。そして、あらかじめ把握されているマイクロフォンのエネルギー変換効率(音波エネルギーを電力に変換する効率)により、上記の電力量の計測値を除算することで音波のエネルギーの推定値を求めた。そして、この音波のエネルギーの推定値と、上述した、電力発生システムに流入した熱量とから、熱から音波エネルギーへのエネルギー変換効率を求めた。
そして、開口率の比率の最小値、座屈変形の程度、および、エネルギー変換効率の結果を総合的に評価した。この総合的評価では、「実用性十分」および「実用性不十分」の2段階で評価した。
(実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2)
上述の実施例1の製造方法とは、押出成形の際に用いる口金が、異なるセル密度に対応した口金である点のみが異なる、実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2の製造方法を用いて熱・音波変換部品を作製した。すなわち、これら実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2では、各ハニカムセグメント成形体の水分量は実施例1と同じ35質量%であり、加圧時における面圧も実施例1と同じ0.007kg/cm2である。なお、隔壁の厚さは、実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2の間で共通である。
そして、これらの実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2の製造方法で作製された熱・音波変換部品について、実施例1と同様に、開口率の比率の最小値、座屈変形の程度、および、エネルギー変換効率をそれぞれ求めた。そして、実施例1と同様の総合評価を行った。
以上説明した実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、および、比較例2の結果を、各パラメータの値とともに下記の表1に示す。
表1において、セル密度が620[セル数/cm2]以上の実施例1、実施例2、および実施例3と、セル密度が620[セル数/cm2]未満の比較例1および比較例2とを比較すればわかるように、実施例1、実施例2、および実施例3は、比較例1および比較例2に比べると十分に高いエネルギー変換効率を発揮している。特に、比較例1では、セル密度が小さいことで加圧処理による隔壁の座屈変形が無視できない(評価は「実用上問題あり」)のに対し、実施例1、実施例2、実施例3では、隔壁の座屈変形は問題とはなっていない(評価は「実用上問題なし」)。
これらの結果を反映して、比較例1および比較例2では総合評価が「実用性不十分」であるのに対し、実施例1、実施例2、および実施例3では総合評価が「実用性十分」という結果が得られている。このことより、セル密度が620[セル数/cm2]以上であることが、大きな熱音響効果を発揮するとともに、加圧処理時の大きな面圧に対する耐久性を実現する上で必要であることがわかる。
(実施例4〜実施例6、および比較例3)
上述の実施例1の製造方法とは、坏土中の水分量のみが異なる、実施例4〜実施例6、および比較例3の製造方法を用いて熱・音波変換部品を作製した。すなわち、これら実施例4〜実施例6、および比較例3では、各ハニカムセグメントのセル密度は実施例1と同じ775[セル数/cm2]であり、加圧時における面圧も実施例1と同じ0.007kg/cm2である。
そして、これらの実施例4〜実施例6、および比較例3の製造方法で作製された熱・音波変換部品について、実施例1と同様に、開口率の比率の最小値、座屈変形の程度、および、エネルギー変換効率をそれぞれ求めた。そして、実施例1と同様の総合評価を行った。
以上説明した実施例4〜実施例6、および比較例3の結果を、各パラメータの値とともに下記の表2に示す。
表2において、坏土中の水分量が30質量%以上の実施例4〜実施例6と、坏土中の水分量が30質量%未満の比較例3とを比較すればわかるように、実施例4〜実施例6は、比較例3に比べると十分に高いエネルギー変換効率を発揮している。実際、比較例3では、坏土中の水分量が少ないため加圧処理の際にハニカムセグメント成形体の歪みが矯正されにくく接合層を厚くする必要が高いことを反映して、開口率の比率が、実施例4〜実施例6と比べるとかなり小さくなっている。このことが、比較例3ではエネルギー変換効率が低い原因と考えられる。
これらの結果を反映して、比較例3では総合評価が「実用性不十分」であるのに対し、実施例4〜実施例6では総合評価が「実用性十分」という結果が得られている。このことより、坏土中の水分量が30質量%以上であることが、大きな熱音響効果を発揮する上で必要であることがわかる。
(実施例7〜実施例10、および比較例4)
上述の実施例1の製造方法とは、加圧処理時に用いる面圧のみが異なる、実施例7〜実施例10、および比較例4の製造方法を用いて熱・音波変換部品を作製した。すなわち、これら実施例7〜実施例10、および比較例4では、各ハニカムセグメントのセル密度は実施例1と同じ775[セル数/cm2]であり、各ハニカムセグメント成形体の水分量は実施例1と同じ35質量%である。
そして、これら実施例7〜実施例10、および比較例4の製造方法で作製された熱・音波変換部品について、実施例1と同様に、開口率の比率の最小値、座屈変形の程度、および、エネルギー変換効率をそれぞれ求めた。そして、実施例1と同様の総合評価を行った。
以上説明した実施例7〜実施例10、および比較例4の結果を、各パラメータの値とともに下記の表3に示す。
表3において、加圧処理時に用いる面圧が0.005kg/cm2以上の実施例7〜実施例9と、加圧処理時に用いる面圧が0.005kg/cm2未満の比較例4とを比較すればわかるように、実施例7〜実施例9は、比較例4に比べると十分に高いエネルギー変換効率を発揮している。実際、比較例4では、加圧処理時に用いる面圧が小さいため加圧処理でハニカムセグメント成形体の歪みが矯正されにくく接合層を厚くする必要が高いことを反映して、開口率の比率が、実施例4〜実施例6と比べるとかなり小さくなっている。このことが、比較例4ではエネルギー変換効率が低い原因と考えられる。
一方、表3において、加圧処理時に用いる面圧が0.05kg/cm2以下の実施例7〜実施例9と、加圧処理時に用いる面圧が0.05kg/cm2を超えている実施例10とを比較すればわかるように、実施例10では、加圧処理時に用いる面圧が大きすぎて加圧処理による隔壁の座屈変形が無視できない(評価は「実用上問題あり」)のに対し、実施例7〜実施例9では、隔壁の座屈変形は問題とはなっていない(評価は「実用上問題なし」)。すなわち、775[セル数/cm2]の高いセル密度を実現するハニカムセグメント成形体であっても、面圧が0.05kg/cm2を超えた面圧に対しては耐久性が不足していることになる。
これらの結果を反映して、比較例4および実施例10では総合評価が「実用性不十分」であるのに対し、実施例7〜実施例9では総合評価が「実用性十分」という結果が得られている。このことより、加圧処理時に用いる面圧が0.005kg/cm2以上であることが、大きな熱音響効果を発揮する上で必要であるが、少なくとも775[セル数/cm2]以下のセル密度に対しては、面圧が0.05kg/cm2以下であることが好ましいことがわかる。