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JP6540466B2 - 電解採取用母板の再生方法 - Google Patents
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本発明は、電解採取用母板の再生方法に関する。さらに詳しくは、絶縁物でマスキングされた母板の再生方法であって、絶縁物を塗り直して母板を再生する方法に関する。
ニッケルなどの金属の電解採取では、電解採取する金属とは別種の金属であって繰り返し使用できる材質の母板をカソードとして使用し、所定時間の電解を行った後、電着物を母板より引き剥がして回収する方法が一般的に行われている。このとき、母板を絶縁物でマスキングしておくことにより、任意の特殊形状の電着物を得ることができる。
例えば、メッキ用のアノードとして用いる電気ニッケルは、メッキ装置のアノードボックスへの充填性やハンドリング性などの観点から、角が立たない丸みのある小塊状の形状が好まれる。このような小塊状の電気ニッケルを電解採取により製造するために、表面に多数の円形の電着面(ニッケルが電着する部分)を有するように絶縁物でマスキングされた母板を用いて電解することが行われる(例えば、特許文献1)。
絶縁物でマスキングされた母板を用いて電解採取を行った後は、母板に振動を与えて電着物を剥ぎ取る。電解採取と剥ぎ取り作業とを繰り返し行うと絶縁物が劣化し、徐々に電着物とともに絶縁物の一部も剥がれるようになる。絶縁物が剥がれて電着面の形状が変わると、目的の形状の電着物が得られなくなる。そこで、絶縁物が剥がれることにより電着面の形状異常が発生する前に、絶縁物を塗り直して母板を再生する必要がある。
特開2002−302787号公報
本発明は上記事情に鑑み、効率のよい電解採取用母板の再生方法を提供することを目的とする。
第1発明の電解採取用母板の再生方法は、絶縁物としてエポキシ樹脂を塗布することによりマスキングされた母板の再生方法であって、ブラスト処理により前記母板から絶縁物を除去するブラスト処理工程を備えることを特徴とする。
第2発明の電解採取用母板の再生方法は、第1発明において、前記ブラスト処理に用いられる研削材がフェロニッケルスラグであることを特徴とする。
第3発明の電解採取用母板の再生方法は、第2発明において、前記研削材の粒度が0.3〜1.7mmであることを特徴とする。
第1発明によれば、ブラスト処理により母板から絶縁物を除去することで、効率よく絶縁物の除去ができる。
第2発明によれば、研削材がフェロニッケルスラグであるので、ブラスト処理により発生する粉塵の遊離珪酸含有率を低減でき、作業環境を良好にできる。
第3発明によれば、研削材の粒度が0.3〜1.7mmであるので、再生後の母板の寿命を延ばすことができる。
(A)図は絶縁物によるマスキング前の母板の正面図、(B)図はマスキング後の母板の正面図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態に係る電解採取用母板の再生方法は、ニッケルなどの金属の電解採取においてカソードとして用いられる母板のうち、特殊形状の電着物を得るために絶縁物でマスキングされた母板の再生方法である。以下、特殊形状の電気ニッケルを得るために用いられる母板を例に説明する。
(母板1)
まず、母板1を説明する。
図1(A)に示すように、母板1は、矩形の板部11と、ビーム12と、それら板部11とビーム12とを接続するリボン13とからなる。リボン13と板部11およびビーム12とは溶接で固定されている。ビーム12は、電解採取のための電気接点であり、かつ、母板1を電解槽に懸垂させるための支持部材でもある。ニッケルの電解採取に用いられる母板1は、板部11およびリボン13がステンレス製またはチタン製であり、ビーム12が銅製である。
図1(B)に示すように、母板1に絶縁物14を塗布することにより、多数の円形の電着面15を有するパターンで板部11がマスキングされる。絶縁物14としてはエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂が用いられる。
絶縁物14でマスキングされた母板1をカソードとして用い、塩化ニッケル溶液を電解液として用いて電解採取を行うと、円形の電着面15のみにニッケルが電着する。電解採取を行った後は、母板1に振動を与えて電着物(小塊状の電気ニッケル)を剥ぎ取る。電着物を剥ぎ取った母板1は再び電解採取に供される。このように、母板1を用いて電解採取と剥ぎ取り作業とが繰り返し行われる。
電解採取と剥ぎ取り作業とを繰り返し行うと、絶縁物14が劣化し、徐々に電着物とともに絶縁物14の一部も剥がれるようになる。このような母板1は寿命が尽きたと判断されて再生処理に回される。再生された母板1は再び電解採取に用いられる。
ここで、母板1の寿命が尽きたか否かは、例えば以下の方法で判断される。劣化した絶縁物14は電気ニッケルに付着して、電気ニッケルとともに母板1から剥がれる。そこで、電気ニッケルの製造ロット毎に、絶縁物14が付着した電気ニッケルの発生率を確認する。そして、絶縁物14が付着した電気ニッケルの発生率が1%を超えたときに、母板1の寿命が尽きたと判断する。
なお、本明細書において母板1の寿命とは、再生処理後の母板1が再び再生処理が必要となるまでに供される電解採取と剥ぎ取り作業の繰り返し回数を意味する。
(再生方法)
つぎに、母板1の再生方法を説明する。
母板1は、(1)ブラスト処理工程、(2)洗浄工程、(3)マスキング工程を、この順に行い、絶縁物14を塗り直すことで再生される。
(1)ブラスト工程
まず、ブラスト処理により母板1から絶縁物14を除去する。ここで、母板1に塗布された絶縁物14の全てを除去するようにする。ブラスト処理の方法は特に限定されないが、例えば母板1を直立させ、ブラスト装置の吐出ノズルを母板1に向けて、研削材を吐出すればよい。また、ブラスト処理の条件も特に限定されないが、例えば以下の条件で行われる。研削材の吐出圧を0.55MPaとする。研削材の吐出口と母板1との距離を約0.3mとし、研削材の吐出方向を斜め下向きとして母板1に対する進入角を20〜30°の範囲とする。研削材の衝突位置の移動速度を1.0m/分とする。
ブラスト処理に用いられる研削材としては、フェロニッケルスラグや珪砂などを用いることができる。このうちフェロニッケルスラグを用いることが好ましい。この理由は後述する。ここで、フェロニッケルスラグとは、珪酸−マグネシア−酸化鉄系であるフォロニッケル製錬時のスラグを水中で粉砕または空気中で粉砕したグリット状のブラスト処理用研削材である。
このように、ブラスト処理により母板1から絶縁物14を除去することで、他の方法に比べて効率よく絶縁物14の除去ができる。
(2)洗浄工程
つぎに、母板1をシャワーなどで洗浄して、ブラスト処理により母板1に付着した粉塵を除去する。そうすると、絶縁物14でマスキングされていない母板1(図1(A)参照)が得られる。
(3)マスキング工程
最後に、母板1に絶縁物14を塗布し、マスキングを行う。そうすると、絶縁物14でマスキングされた母板1(図1(B)参照)が得られる。
(研削材)
ところで、ブラスト処理を行うと研削材が粉砕されて粉塵が発生し、粉塵が作業場所に飛散する。ブラスト処理を密閉空間で行えば、粉塵の作業場所への飛散を抑えることができる。しかしこの場合でも、母板1の取り出しとともに粉塵が漏洩したり、排気ダクトの接続部から粉塵が漏洩したりする。そのため、作業環境の管理が必要となる。
労働安全衛生法には、作業環境測定による管理区分が以下のように定められている。
第一管理区分:単位作業場所のほとんど(95%以上)の場所で気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えないと推定され、作業環境管理が適切であると判断される状態である。
第二管理区分:単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えないと推定されるが、第一管理区分に比べ、作業環境管理に改善の余地があると判断される状態である。
第三管理区分:単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えると推定され、作業環境管理が適切でないと判断される状態である。
上記定義のうち「管理濃度」は、土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉塵の場合、下記数式(1)によって定められている。ここで、Eは管理濃度[mg/m3]、Sは粉塵の遊離珪酸含有率[%]である。
E=3.0/(1.19×S+1) ・・・(1)
数式(1)より、粉塵の遊離珪酸含有率Sが低いほど管理濃度Eが高くなることが分かる。管理濃度Eが高くなると、作業場所の管理区分を改善できる。例えば、第三管理区分の作業場所を第一管理区分にできる。
表1にフェロニッケルスラグと珪砂の化学組成を示す。表1より、フェロニッケルスラグの方が珪砂に比べてSiO2の比率が低いことが分かる。そのため、研削材としてフェロニッケルスラグを用いれば、珪砂を用いる場合に比べて粉塵の遊離珪酸含有率を低減できると推測できる。
実際に、ブラスト処理で発生する粉塵の遊離珪酸含有率を測定したところ、研削材としてフェロニッケルスラグを用いた場合は遊離珪酸含有率が13%であり、研削材として珪砂を用いた場合は遊離珪酸含有率が50〜60%であることが分かった。すなわち、研削材としてフェロニッケルスラグを用いれば、珪砂を用いる場合に比べて粉塵の遊離珪酸含有率を低減できる。その結果、管理濃度を高くし、作業場所の管理区分を改善できる。
以上の理由により、ブラスト処理に用いる研削材はフェロニッケルスラグであることが好ましい。研削材をフェロニッケルスラグとすれば、ブラスト処理により発生する粉塵の遊離珪酸含有率を低減でき、作業環境を良好にできる。
つぎに、実施例を説明する。
(共通の条件)
母板1に対して再生処理を行った。母板1の板部11は縦1.1m、横0.8m、厚さ10mmのステンレス板である。板部11の両面はエポキシ樹脂によりマスキングされている。樹脂の厚みは1mmである。マスキングにより形成された電着面15は直径15mmの円形である。電着面15の数は板部11の両面合せて2021個である。母板1は新品ではなく、電解採取と剥ぎ取り作業に繰り返し供され、寿命が尽きたと判断されたものである。
ブラスト工程におけるブラスト処理の条件は以下の通りである。
ブラスト装置:ニッチュー社製、型番DMH-100
吐出圧:0.55MPa
吐出口と母板との距離:約0.3m
吐出角度:直立させた母板に対し、斜め下向きに20〜30°の範囲
(実施例1)
ブラスト工程において、研削材としてフェロニッケルスラグ(粒度:0.1〜0.4mm)を用いた。また、研削材の衝突位置の移動速度を1.0m/分とした。24枚の母板を処理したところ、一度目のブラスト処理で樹脂を除去できた母板は24枚中0枚であった。二度目のブラスト処理で24枚中16枚の母板の樹脂を除去できた。残りの8枚の母板は三度目のブラスト処理で樹脂を除去できた。
作業環境測定による管理区分は第一管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は3回であった。すなわち、再生処理後の母板を用いて電解採取と剥ぎ取り作業を3回繰り返すと、樹脂が剥がれだした。
実施例1では、研削材として細かい粒度(0.1〜0.4mm)のフェロニッケルスラグを用いているため、全ての母板の樹脂を除去するには、ブラスト処理を三度行う必要があった。このように、粒度0.1〜0.4mmのフェロニッケルスラグでは研削力が弱いことが分かった。
(実施例2)
ブラスト工程において、研削材としてフェロニッケルスラグ(粒度:0.3〜0.8mm)を用いた。その余の条件は実施例1と同一である。52枚の母板を処理したところ、一度目のブラスト処理で樹脂を除去できた母板は52枚中35枚であった。残りの17枚の母板は二度目のブラスト処理で樹脂を除去できた。
作業環境測定による管理区分は第一管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は3回であった。
実施例2では、実施例1に比べて粗い粒度(0.3〜0.8mm)のフェロニッケルスラグを用いた。そうすると、二度のブラスト処理で全ての母板の樹脂を除去することができた。このように、粒度0.3〜0.8mmのフェロニッケルスラグを用いれば研削力が十分であることが分かった。しかし、実施例1、2では、再生処理後の母板の寿命は3回であり、寿命が短いという課題がある。
(実施例3)
ブラスト工程において、研削材としてフェロニッケルスラグ(粒度:0.3〜1.7mm)を用いた。その余の条件は実施例1と同一である。52枚の母板を処理したところ、一度目のブラスト処理で樹脂を除去できた母板は52枚中45枚であった。残りの7枚の母板は二度目のブラスト処理で樹脂を除去できた。
作業環境測定による管理区分は第一管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は5回であった。
実施例3では、実施例2に比べてさらに粗い粒度(0.3〜1.7mm)のフェロニッケルスラグを用いた。そうすると、再生処理後の母板の寿命は5回であり、寿命を延ばすことができた。
実施例1〜3より、研削材としてフェロニッケルスラグを用いる場合、研削材の粒度は0.3〜1.7mmが好ましいことが確認された。この粒度のフェロニッケルスラグであれば、ブラスト処理の回数を低減できて作業効率が良いばかりでなく、再生後の母板の寿命を延ばすことができる。
なお、フェロニッケルスラグの粒度により再生後の母板の寿命が変化する理由は以下の通りと考えられる。研削材としてフェロニッケルスラグを用いた場合、洗浄工程を経てもフェロニッケルスラグの粉塵が母板の表面に残存すると考えられる。この状態でマスキングを行うと絶縁物が剥がれやすくなる。研削材として粗い粒度(0.3〜1.7mm)のフェロニッケルスラグを用いれば、母板の表面粗さが増し、絶縁物の母板への食いつきがよくなる。その結果、母板の寿命が延びたと考えられる。
(実施例4)
ブラスト工程において、研削材として珪砂(粒度:0.07〜0.6mm)を用いた。その余の条件は実施例1と同一である。
作業環境測定による管理区分は第三管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は5回であった。
実施例4では、研削材として珪砂を用いたため、管理区分が第三管理区分となった。研削材としてフェロニッケルスラグを用いた実施例1〜3では、いずれも管理区分が第一管理区分である。このことから、研削材をフェロニッケルスラグとすれば、作業環境を良好にできることが確認された。
(実施例5)
ブラスト工程において、研削材の衝突位置の移動速度を1.5m/分とした。その余の条件は実施例2と同一である。24枚の母板を処理したところ、一度目のブラスト処理で樹脂を除去できた母板は24枚中0枚であった。二度目のブラスト処理で24枚中17枚の母板の樹脂を除去できた。残りの7枚の母板は三度目のブラスト処理で樹脂を除去できた。
作業環境測定による管理区分は第一管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は3回であった。
実施例5では、実施例2に比べて研削材の衝突位置の移動速度を速くした。そうすると、ブラスト処理の回数が2回から3回に増え、作業効率が低下することが分かった。
(実施例6)
ブラスト工程において、研削材の衝突位置の移動速度を0.6m/分とした。その余の条件は実施例2と同一である。17枚の母板を処理したところ、一度目のブラスト処理で樹脂を除去できた母板は17枚中5枚であった。残りの12枚の母板は二度目のブラスト処理で樹脂を除去できた。
作業環境測定による管理区分は第一管理区分であった。
洗浄工程とマスキング工程とを行って母板を再生した後、その母板を電解採取に用いた。再生処理後の母板の寿命は3回であった。
実施例6では、実施例2に比べて研削材の衝突位置の移動速度を遅くした。しかし、ブラスト処理の回数は2回であり、実施例2と実施例6とで変化がなかった。研削材の衝突位置の移動速度を遅くした分、作業時間が長くなり、作業効率が低下することが分かった。実施例2、5、6より、研削材の衝突位置の移動速度は1.0m/分が最適であることが確認された。
表2に、実施例1から6の条件および結果を示す。
A:フェロニッケルスラグ(粒度:0.1〜0.4mm)
B:フェロニッケルスラグ(粒度:0.3〜0.8mm)
C:フェロニッケルスラグ(粒度:0.3〜1.7mm)
D:珪砂(粒度:0.07〜0.6mm)
1 母板
11 板部
12 ビーム
13 リボン
14 絶縁物
15 電着面

Claims (3)

  1. 絶縁物としてエポキシ樹脂を塗布することによりマスキングされた母板の再生方法であって、
    ブラスト処理により前記母板から絶縁物を除去するブラスト処理工程を備える
    ことを特徴とする電解採取用母板の再生方法。
  2. 前記ブラスト処理に用いられる研削材がフェロニッケルスラグである
    ことを特徴とする請求項1記載の電解採取用母板の再生方法。
  3. 前記研削材の粒度が0.3〜1.7mmである
    ことを特徴とする請求項2記載の電解採取用母板の再生方法。
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