以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2に示されるアクチュエータ10は、アクチュエータ本体としてのシリンダ11を有する。往復動作部材としてのピストン12が、シリンダ11内に軸方向に往復移動自在に装着される。シリンダ11およびピストン12はアルミニウム合金等の非磁性材料により形成されており、ピストンロッド13がピストン12に設けられている。シリンダ11の圧力室14にポート14aから圧縮空気が供給されると、ピストンロッド13はシリンダ11から突出する方向に駆動される。一方、シリンダ11の圧力室15にポート15aから圧縮空気が供給されると、ピストンロッド13はシリンダ11内に引っ込む方向に駆動される。ピストン12において、ピストンロッド13が突出する端面がロッド側であり、反対側がヘッド側である。
環状の磁石16がピストン12に設けられる。磁石16はピストン12の外周面に設けられた環状溝に装着される。磁石16は、ピストン12の移動方向に磁化されており、ピストン12により磁化方向に移動する。磁石16は、例えば、ロッド側がS極、ヘッド側がN極であり、図1において符号Hで示す磁界が磁石16により生成される。
シリンダ11に対する磁石16の軸方向位置を検出するために、センサヘッド21がシリンダ11に装着される。磁石16の軸方向位置が検出されると、ピストン12の軸方向位置を検出することができる。プリント配線基板22がセンサヘッド21の内部に設けられている。プリント配線基板22はピストン12の径方向外方に向けて設けられる。つまり、プリント配線基板22はシリンダ11に対して垂直に設けられる。また、プリント配線基板22はピストン12の往復動方向に沿って伸びている。プリント配線基板22は表裏両面に部品搭載面23,24を有し、一方の部品搭載面23に磁気抵抗ブリッジ回路25が搭載され、他方の部品搭載面24に磁界方向検出センサとしてホール素子26が搭載される。
図3は磁気抵抗ブリッジ回路25のパターンを示す平面図である。図4(A)は図3に示された磁気抵抗素子のうち、R1,R2,R3,R4を相互に接続してブリッジ回路を構成した第1ブリッジ回路31を示す。図4(B)は図3に示された磁気抵抗素子のうち、R5,R6,R7,R8を相互に接続してブリッジ回路を構成した第2ブリッジ回路32を示す。
磁気抵抗素子パターンは、磁気抵抗材料を基板層27に成膜した後、微細加工技術を用いて所定形状にパターニングされる。それぞれの磁気抵抗素子パターンは、長い短冊状のパターンと、短い短冊状のパターンとを交互に直交させて接続することにより、ミアンダ状に形成される。それぞれの磁気抵抗素子においては、長い短冊状のパターンに直交する方向に印加される磁界の変化に対して抵抗値の変化が最も大きく、最大感度を有する。これに対し、長い短冊状のパターンに沿う方向に印加される磁界の変化に対して抵抗値の変化が最も小さい。
第1ブリッジ回路31は、図4(A)に示されるように、印加される磁界の方向を第1方向M1とすると、第1の磁気抵抗素子R1は第1方向M1の磁界に最大感度を有する。一方、第2の磁気抵抗素子R2は第1方向M1に直交する第2方向M2の磁界に最大感度を有する。同様に、第3の磁気抵抗素子R3は第1方向M1の磁界に最大感度を有し、第4の磁気抵抗素子R4は第2方向M2の磁界に最大感度を有する。
第1の磁気抵抗素子R1と第4の磁気抵抗素子R4は、配線パターン35bにより直列に接続されて第1の回路パターンである第1のハーフブリッジ31aを構成する。第2の磁気抵抗素子R2と第3の磁気抵抗素子R3は、配線パターン35aにより直列に接続されて第2の回路パターンである第2のハーフブリッジ31bを構成する。
配線パターン33aの接続端34aには電源電圧Vccが印加され、配線パターン33bの接続端34bはグランドGndに接続される。それぞれの配線パターン35a,35bの接続端36a,36bから出力電圧A,Bが取り出される。このように、第1ブリッジ回路31は4つの磁気抵抗素子を備えたフルブリッジ回路である。
第2ブリッジ回路32は、図4(B)に示されるように、第5の磁気抵抗素子R5は第1方向M1に対して45度傾いた第3方向M3の磁界に最大感度を有する。一方、第6の磁気抵抗素子R6は第3方向M3に直交する第4方向M4の磁界に最大感度を有する。同様に、第7の磁気抵抗素子R7は第3方向M3の磁界に最大感度を有し、第8の磁気抵抗素子R8は第4方向M4の磁界に最大感度を有する。
第5の磁気抵抗素子R5と第8の磁気抵抗素子R8は、配線パターン39bにより直列に接続されて第3の回路パターンである第3のハーフブリッジ32aを構成する。第6の磁気抵抗素子R6と第7の磁気抵抗素子R7は、配線パターン39aにより直列に接続されて第4の回路パターンである第4のハーフブリッジ32bを構成する。
配線パターン37aの接続端38aには電源電圧Vccが印加され、配線パターン37bの接続端38bはグランドGndに接続される。それぞれの配線パターン39a,39bの接続端40a,40bから出力電圧C,Dが取り出される。このように、第2ブリッジ回路32は4つの磁気抵抗素子を備えたフルブリッジ回路である。
図3に示されるように、8つの磁気抵抗素子R1〜R8を構成する磁気抵抗素子パターンは、同一の基板層27に形成される。磁気抵抗素子R1〜R4により形成される第1ブリッジ回路31の中心部をOとすると、磁気抵抗素子R5〜R8により形成される第2ブリッジ回路32は、中心部Oを中心として第1ブリッジ回路31に対して45度傾いている。このように、磁気抵抗ブリッジ回路25は、第1ブリッジ回路31と第2ブリッジ回路32とを形成する8つの磁気抵抗素子R1〜R8が、中心部Oを中心として45度置きに基板層27に形成されている。
磁気抵抗ブリッジ回路25は、図2に示されるように、プリント配線基板22の部品搭載面23に搭載される。磁気抵抗ブリッジ回路25に印加される磁界は、ピストン12の位置によって異なる。ピストン12が移動すると、第1ブリッジ回路31は、磁気抵抗素子R1〜R4に印加される磁界の方向と強さの変化に応じて、第1出力信号つまりSIN信号(正弦信号)を出力する。一方、第2ブリッジ回路32は、磁気抵抗素子R5〜R8に印加される磁界の方向と強さの変化に応じて、SIN信号に対してピストンの移動方向に位相が異なる第2出力信号つまりCOS信号(余弦信号)を出力する。この明細書においては、第1ブリッジ回路31の出力である第1出力信号を便宜上、SIN信号と呼び、第2ブリッジ回路32の出力である第2出力信号を便宜上、COS信号と呼ぶ。第1出力信号も第2出力信号も、繰り返し信号ではないので、SIN,COSの定義には、正しくは当てはまらないが、便宜上そのように呼ぶ。
SIN信号とCOS信号に基づいてATAN2値、つまり逆正接値(arctangent)が演算される。この明細書においては、逆正接値をATAN2値と表記する。
このようなATAN2値は、磁石16の軸方向位置に対して複数の値を有している。したがって、ATAN2値のみから磁石16の軸方向位置を特定することは出来ない。しかし、例えばごく短い軸方向長さであれば、ATAN2値から磁石16の軸方向位置を特定することも可能であるが、磁石16の軸方向位置を特定することができる範囲は2mmから7mm程度のストロークの範囲に限られる。この範囲は、磁石の強さや大きさ、センサヘッドと磁石との距離に依存する。
そこで、磁気センサを用いて、磁石16の軸方向位置を特定する範囲は以下のように拡大することができる。つまり、磁石16が磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに対して一方側の領域、つまり例えばロッドキャップ側に位置しているのか、他方側の領域、つまり例えばヘッドキャップ側に位置しているのかについて、磁気センサの出力信号に基づいて判別することができる。その詳細は、ホール素子26を例として、図7とその説明に後述する。但し、磁気センサとしてはホール素子に限定されることはなく、磁界の方向を検出する機能を有するセンサ、つまり磁界方向検出センサであれば、なんでも良い。
図2に示されるように、磁気抵抗ブリッジ回路25がプリント配線基板22の部品搭載面23に搭載されるのに対し、磁気方向検出センサの一例としてのホール素子26は反対側の部品搭載面24に搭載される。ホール素子26は、磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに垂直な垂直方向線Uの位置に配置される。したがって、ホール素子26は、プリント配線基板22の厚み寸法だけ磁気抵抗ブリッジ回路25に対して円周方向線Uの方向に異なる位置に配置され、磁石16の移動方向における磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに配置される。つまり、ホール素子26と磁気抵抗ブリッジ回路25は、シリンダ11の円周方向には異なる位置に配置されるが、ピストンロッド13の移動方向に対しては、ホール素子26と磁気抵抗ブリッジ回路25は同じ位置に配置される。
図5は、磁石とホール素子との位置に応じて、ホール電圧つまりホール素子の出力電圧の極性を示す概略図である。
軸方向に移動する磁石16がホール素子26に接近すると、磁界Hがホール素子26に印加される。磁界Hは磁石16の移動方向である水平方向成分の磁界強度(Hz)と、移動方向に対して直角方向である垂直方向成分の磁界強度(Hr)との2つの成分に分けられる。ホール素子26は磁石16の移動方向つまり第1方向M1の方向に最小感度を有し、軸方向に垂直な方向つまり第2方向M2の磁界に最大感度を有する。ホール素子26の出力は、コンパレータ28に入力される。コンパレータ28の出力はHighまたはLowの2値であり、その値に基づいて、磁石16の位置が中心部Oに対して軸方向一方側に位置しているのか、他方側に位置しているのかを判別する。
このように、ホール素子26の出力電圧の極性に対応した2つの値を領域判別信号と定義する。ホール素子26の出力電圧がコンパレータ28に入力される場合には、領域判別信号はコンパレータ28の出力であるHighまたはLowの2値の信号である。コンパレータ28は、ホール素子26の出力電圧から領域判別信号を生成する領域判別手段の一例である。
図5(A)のように、磁石16がホール素子26に対して左側(ヘッドキャップ側)に位置するときには、磁界Hは図中のホール素子26の上面から下面に向く成分を有する。つまり、磁界Hの成分Hrは負の方向であるので、ホール素子26の出力端子電圧は例えばマイナス極性となり、コンパレータ28の出力は例えばHighとなる。図5(C)のように、磁石16がホール素子26に対して右側(ロッドキャップ側)に位置するときには、磁界Hは図中のホール素子26の下面から上面に向く成分を有する。つまり、磁界の成分Hrは正の方向であるので、ホール素子26の出力端子電圧は図5(A)と逆に例えばプラス極性となり、コンパレータ28の出力は図5(A)と逆に例えばLowとなる。磁石16が移動して、ホール素子26と軸方向に同じ位置に位置するときに、ホール素子26の出力端子電圧の極が切り換わる。つまり、その位置を境界として、ホール素子26の出力端子電圧の極性は逆となり、コンパレータ28の出力も逆となる。図5(B)は、磁石16がそのような境界位置に位置している状況を示している。
このように、磁石16の位置が磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに対して軸方向一方側の領域であるか、他方側の領域であるかを、ホール素子26の出力端子電圧の極性により判別することができる。
図6は、位置検出装置のブロック図である。第1ブリッジ回路31の出力電圧A,Bは増幅器41に入力され、第2ブリッジ回路32の出力電圧C,Dは増幅器42に入力される。増幅器41の出力である第1出力信号つまりSIN信号と、増幅器42の出力である第2出力信号つまりCOS信号は、ATAN2値算出部43に送られる。ATAN2値演算部としてのATAN2値算出部43は、SIN信号とCOS信号とに基づいてATAN2値を演算し、ATAN2値に対応する値を位置演算部44に出力する。SIN信号とCOS信号からATAN2値を得るには、このように、位置演算部44とは別にATAN2値算出部43を設けることができるが、プログラムでATAN2値を得ることも出来る。
ATAN2値および領域判別信号であるコンパレータ28の出力は、それぞれ位置演算部44に送られる。
位置演算部44により演算された磁石16の軸方向の位置は、数値表示部45に数値として表示される。LEDからなるインジケータ46がセンサヘッド21のプリント配線基板22に設けられている。インジケータ46は、位置演算部44からの信号に基づいてON/OFF判定部47により点灯制御され、ピストン12が所定の範囲内に位置したときに点灯する。
位置演算部44は、D/A変換部48、バッファー49を介して磁石16の軸方向位置に対応するアナログ信号を、アナログ出力端50に出力する。位置演算部44は、第1出力端51〜第4出力端54に対して出力判定・ドライバー回路55を介して位置信号を出力する。設定値が、数値設定部56から出力判定部・ドライバー回路55に入力される。数値設定部56を操作することにより、第1出力端51〜第4出力端54をオン・オフする検出位置つまり設定値が入力される。数値設定部56によって磁石16の検出位置を設定すると、磁石16が設定された位置に到達したときに、それぞれの出力端51〜54がオン信号を外部機器に対して出力する。磁石16の検出位置は数値設定部56によって4箇所まで設定できる。アナログ出力端50からの信号に基づけば、外部回路によって多数の位置を検出することができる。
図7は、位置検出装置における磁石16の位置を算出するための信号の一例を示すグラフであり、図8は図7の要部を示す拡大図である。
図7においては、磁気抵抗ブリッジ回路25のSIN信号とCOS信号、ホール素子26のホール電圧の極性に対応する領域判別信号と、それらの信号から算出される値が、磁石16を備えたピストン12の位置に応じて変化することが示されている。上述のように、第1ブリッジ回路31からはSIN信号が出力され、第2ブリッジ回路32からは、SIN信号に対して位相が異なるCOS信号が出力される。出力されたそれぞれの信号の電圧は、無磁界時には0Vとなるようにオフセットされ、出力電圧の最大振幅が1V〜−1Vの範囲となるように、増幅器41,42により増幅される。
図7(A)は、増幅後におけるSIN信号とCOS信号を示す。磁石16がセンサヘッド21から軸方向に大きく離れていると、第1ブリッジ回路31と第2ブリッジ回路32に印加される磁界が低いため、図7(A)の横軸0から30付近に示されるように、磁石16の位置の変化に対するSIN信号とCOS信号の変化率は低い。図7(A)の横軸40から80付近に示されるように、磁石16がセンサヘッド21に近づくと、磁界が大きくなるとともに、磁石16の位置の変化に対する磁界の方向の変化も大きい。従って、磁気抵抗素子の抵抗値も大きく変化し、SIN信号とCOS信号の変化率も大きい。
図7(B)は、SIN信号の絶対値とCOS信号の絶対値との加算値(|SIN|+|COS|)を示し、加算値は位置演算部44により演算される。図7(C)はホール素子26により得られる領域判別信号を示す。
磁石16がセンサヘッド21に近づくと、図7(B)に示す加算値が大きくなり、ホール素子26にも領域判定可能な強度の磁界が印加される。逆に、磁石16がセンサヘッド21から離れて、図7(B)に示す加算値が小さい場合には、ホール素子26に印加される磁界も小さく、コンパレータ28の出力がホール素子26の出力に対応しないことがあるから、領域判別信号Eを使って判別することはできない。
このことは、以下の場合に生じる。磁石16がセンサヘッド21から離れている場合には、電源投入直後のコンパレータ28の出力信号つまり領域判別信号は、磁石16の位置が中心部Oに対して軸方向一方側に位置しているのか、他方側に位置しているのかに対応しない場合がある。つまり、電源投入直後の領域判別信号は不確定である。しかし、ピストン12が一度、端から端まで移動してしまえば、コンパレータ28の出力はラッチされるので、領域判別信号は、磁石16の位置が中心部Oに対して軸方向一方側に位置しているのか、他方側に位置しているのかに対応する。このように、電源投入直後の領域判別信号は不確定であることに対応して、領域判別可能範囲Eの範囲に限定して領域判別信号を採用する。
このように、コンパレータ28の出力が中心部Oの軸方向一方側または軸方向他方側に対応する領域、つまり、図7(B)の領域判別可能範囲Eに限ってコンパレータ28の出力を採用する。これによって、磁石16の位置が中心部Oに対して軸方向一方側に位置しているのか、他方側に位置しているのかを、コンパレータ28の出力で判別できる。SIN信号の絶対値とCOS信号の絶対値との加算値から領域判別可能範囲Eを判別するための領域判別可能閾値Xは、安定した領域判別信号を選択できるように、実用上適切な値に決定される。
領域判別可能閾値Xを低すぎる値に設定すると、図7(B)と図7(C)から理解されるように、領域判別可能範囲Eは、領域判別信号が有効である範囲よりも広くなってしまう。すると、図7(C)のF点の左側の領域、つまり使えない領域を含んで、領域判別信号を用いることになるので、不都合である。このような不都合が生じないように、領域判別可能閾値Xは実用上適切な値に設定される。
図7(C)のF位置よりも右側の領域ではホール素子26の出力電圧の極性は安定しているが、F位置における加算値(|SIN|+|COS|)よりも高い値を領域判別可能閾値Xとして設定することにより、ホール素子26の出力電圧の極性がより安定する領域を用いることができる。このように、ホール素子26の出力電圧の極性に対応するHighまたはLowの値、つまり領域判別信号を、領域判別可能範囲Eの範囲に限定して採用し、それ以外の範囲では採用しない。採用しないとは、位置演算部44は磁石16の位置を演算せず、磁石16の位置に対応する信号を出力しない、という意味である。
磁石16の位置が磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに対して一方側の領域に位置しているか、他方側の領域に位置しているかを示す領域判別信号が切り換わる位置は、図7(C)に示す領域切換点Mの位置である。
図7(D)は、SIN信号とCOS信号とに基づいて得られるATAN2値を示す。
領域判別可能範囲Eの範囲外では、領域判別信号は採用されない。領域判別信号はこのような範囲に限定して用いられるので、電源投入直後のコンパレータ28の出力信号が不確定であるという障害は回避される。
ATAN2値は、主領域値とシフト領域値とを有している。主領域値は、磁石16が磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oの近くに位置する主領域Pにおける値であり、一次関数に近い形で連続的に変化する。シフト領域値は、主領域Pを外れたシフト領域K1,K2における値である。主領域PにおけるATAN2値は、−πから+πの連続した値をとり、その範囲において磁石16の軸方向位置に対応してほぼ直線的に変化する。磁石16がシフト領域K1から主領域Pに移動すると、ATAN2値は折返し点aにおいて+πから−πの値に、不連続に変化する。一方、磁石16が折返し点bを通過して主領域Pからシフト領域K2に移動すると、ATAN2値は、+πから−πの値に、不連続に変化する。
図7(B)において領域判別可能閾値Xを基準に定めた領域判別可能範囲Eと、その領域判別可能範囲Eの範囲内において図7(C)に示した領域判別信号High,Lowを元に、ATAN2値を図7(D)のように操作して、図7(E)の最終結果を得る。その手順は以下の通りである。
ATAN2値において、ゼロからπの間の1つの値をプラス側シフト閾値hとする。同様に、ATAN2値において、−πからゼロの間の1つの値をマイナス側シフト閾値eとする。大小関係で示せば、−π < e <0 < h < +π となる。プラス側シフト閾値hとマイナス側シフト閾値eの絶対値が同じあってもよいが、同じでなくても差し支えない。
図7(C)に示す領域判別信号がLowであって、かつ、ATAN2値がマイナス側シフト閾値eからゼロの間であるときには、検出不可能領域であると判断して、そのATAN2値は採用しない。領域判別信号がHighであって、かつ、ATAN2値がマイナス側シフト閾値eからゼロの間であるときには、検出可能領域であると判断して、そのATAN2値を採用する。採用されたATAN2値はそのまま位置演算部44から出力される。そのときには、磁石16の位置とATAN2値は1対1に対応するからである。それは、図7(E)の区間Tに対応する。更に、領域判別信号がHighであって、かつ、ATAN2値がマイナス側シフト閾値eから−πの場合も検出可能領域であると判断して、そのATAN2値を採用する。採用されたATAN2値はそのまま位置演算部44から出力される。それは、図7(E)の区間Sに対応する。
図7(C)に示す領域判別信号がHighであって、かつ、ATAN2値がゼロからプラス側シフト閾値hの間であるときには、検出不可能領域であると判断して、そのATAN2値は採用しない。領域判別信号がLowであって、かつ、ATAN2値がゼロからプラス側シフト閾値hの間であるときには、検出可能領域であると判断して、そのATAN2値を採用する。採用されたATAN2値はそのまま位置演算部44から出力される。それは、図7(E)の区間Vに対応する。更に、領域判別信号がLowであって、かつ、ATAN2値がプラス側シフト閾値h以上の場合も検出可能領域であると判断して、そのATAN2値を採用する。採用されたATAN2値はそのまま位置演算部44から出力される。それは、図7(E)の区間Wに対応する。
以上のように、区間S,T,V,Wにおいて、磁石16の位置とATAN2値は1対1に対応する。従って、磁石16の位置を表す値(または信号)として、区間S,T,V,WのATAN2値を用いることが出来る。
図7(C)に示す領域判別信号がLowであって、かつ、ATAN2値がマイナス側シフト閾値e以下の場合は、ATAN2値に2πを加算して、位置演算部44から出力される。これは、図7(D)のシフト領域K2の範囲に相当し、図7(E)の区間Xに相当する。この加算(ATAN2値+2π)によって、主領域Pにシフト領域K2が加えられる。このような加算処理は、シフト処理と言ってもよい。領域判別信号がLowであって、かつ、ATAN2値がマイナス側シフト閾値e以下の場合は、ATAN2値と磁石16の位置は1対1に対応する。このように、ホール素子26の出力に基づく領域判別信号を利用することによって、主領域Pの主領域値にシフト領域K2のシフト領域値を加え、検出範囲を拡張することが可能となる。
図7(C)に示す領域判別信号がHighであって、かつ、ATAN2値がプラス側シフト閾値h以上の場合は、ATAN2値から2πを減算して、位置演算部44から出力される。これは、図7(D)のシフト領域K1の範囲に相当し、図7(E)の区間Rに相当する。この減算(ATAN2値−2π)によって、主領域Pにシフト領域K1が加えられる。このような減算処理は、シフト処理と言ってもよい。領域判別信号がHighであって、かつ、ATAN2値がプラス側シフト閾値h以上の場合は、ATAN2値と磁石16の位置は1対1に対応する。このように、ホール素子26の出力に基づく領域判別信号を利用することによって、主領域Pの主領域値にシフト領域K1のシフト領域値を加え、検出範囲を拡張することが可能となる。
以上のように、図7(B)の領域判別可能範囲Eの範囲内において、図7(C)の領域判別信号に基づいて、図7(D)のATAN2値がゼロと閾値e、hにより複数の区分に分けられる。特に、図7(D)のシフト領域K1とK2に対応するATAN2値を、主領域PのATAN2値の拡張として利用することにより、ATAN2値は連続した値として得られるので、図7(E)に示すように検出範囲は拡張されて検出範囲Qの拡大出力値を得ることができる。
従来の検出範囲は、前述のように2mmから7mm程度であったが、本発明においては検出範囲が拡張されて10mmから25mm程度とすることが出来た。この範囲は、磁石の強さや大きさ、センサヘッドと磁石との距離に依存する。
プラス側シフト閾値hを図示する場合よりも低い値に設定すると、検出範囲Qを図7(E)に示される範囲よりも拡大することができる。同様に、マイナス側シフト閾値eを図示する場合よりも高い値に設定すると、検出範囲Qを拡大することができる。しかし、そのようにすると、拡大されたシフト領域K1,K2において、磁石16の位置の変化に対するATAN2値の変化率が小さくなり、その部分の分解能が低下する。そこで、要求される仕様に基づき、検出範囲Qにおける位置検出誤差を小さくすることができる値として、つまり許容される分解能に応じてプラス側シフト閾値hとマイナス側シフト閾値eが設定される。
図9は変形例である位置検出装置のブロック図である。上述した図6においては、ATAN2値算出部43と位置演算部44とON/OFF判定部47と出力判定部・ドライバー回路55を別個のものとして構成している。これに対し、図9においては、CPUからなる演算処理部60の内部プログラムにより、ATAN2値算出部43と位置演算部44aとON/OFF判定部47と出力判定部61が構成される。出力判定部61は、図6における出力判定部・ドライバー回路55のうち、ドライバー回路の機能を除く部分に機能を備えている。図9においては、演算処理部60による機能構成が示されている。また、ATAN2値算出部43を独立したICとして構成すれば、ATAN2値の演算時間が短縮され、全体の処理時間が短縮される。
上述のように、SIN信号の絶対値とCOS信号の絶対値との加算値(|SIN|+|COS|)が、領域判別可能閾値Xを超えているときに、図7(C)に示す領域判定信号を採用する実施例を示したが、加算値(|SIN|+|COS|)を、SIN信号の二乗の値とCOS信号の二乗の値との加算値に置き換えても良い。さらには、磁石16を有するピストン12がセンサヘッド21に接近したときに増加し、離れたときに減少するような演算値を、SIN信号とCOS信号から演算すればよく、SIN信号の絶対値とCOS信号の絶対値との加算値(|SIN|+|COS|)とか、SIN信号の二乗の値とCOS信号の二乗の値との加算値はその一例に過ぎない。
さらに、磁石の接近を検出する近接センサを、磁気抵抗ブリッジ回路25とホール素子26に加えてセンサヘッド21を付加し、加算値(|SIN|+|COS|)に基づいて領域判別可能範囲Eを求めることなく、近接センサの信号に基づいて領域判別可能範囲Eを得るようにしても良い。
図10は、領域判別可能範囲Eを検出するための近接センサの出力波形を示す特性線図である。近接センサとしては、図4に示した第1ブリッジ回路31または第2ブリッジ回路32と同様に磁気抵抗素子を備えた回路構成のものが使用される。そのような回路構成を有する近接センサにおいては、図10に示されるように、近接センサの出力が領域判別可能閾値Xを越えたか否かにより、領域判別可能範囲Eを得ることができる。
このように、磁気抵抗ブリッジ回路25のSIN信号とCOS信号からなんらかの演算値を得るとか、磁気抵抗ブリッジ回路25とホール素子26に加えて、別途設けられる近接センサなどの信号を利用するなどして、ピストン12に装着されている磁石16が、センサヘッド21に近づいたことを検出・判断できればよいのである。
磁界方向検出センサとしては、磁界の方向に応じた出力信号を出力し、最大感度方向が第2方向に沿うように配置されるセンサであれば、ホール素子26に代えて、磁気センサ26aを使用することができる。
図11(A)〜(E)は、そのような磁気センサ26aの磁石の磁界に対する感度方向を示す概略図である。図12は、図11に示した磁気センサ26aを有する位置検出装置のブロック図である。磁気センサ26aは、アルプス電気(株)製のHGPJPM001Aである。
図11(A)のように、磁石16が磁気センサ26aに対して左側に位置するときには、磁界Hは磁気センサ26aの上面から下面に向く成分を有する。つまり、磁界Hの成分Hrは負の方向であるので、磁気センサ26aの出力電圧Vは、図11(D)に示されるようにHighとなる。一方、図11(C)のように、磁石16が磁気センサ26aに対して右側に位置するときには、磁界Hは磁気センサ26aの下面から上面に向く成分を有する。つまり、磁界の成分Hrは正の方向であるので、ホール素子26の出力電圧VはLowとなる。磁石16が磁気センサ26aに接近すると、磁石16が磁気センサ26aの左側から右側に移動するときと、逆に移動するときとで、ヒステリシスを持って、磁気センサ26aの出力電圧Vが変化する。なお、磁気センサ26aの取り付け方向が180度異なれば、出力電圧VのHighとLowは入れ替わる。磁石16の取り付け方向が逆になった場合も、出力電圧VのHighとLowは入れ替わる。そのような入れ替わりに対しては、内部のプログラムで対応することが出来る。
このように、磁石16の位置が磁気抵抗ブリッジ回路25の中心部Oに対して軸方向一方側の領域であるか、他方側の領域であるかを、磁気センサ26aの出力電圧により判別することができる。
図1は、位置検出装置が設けられたシリンダ11を示すが、この位置検出装置は、シリンダ11に限られることなく、被加工物等を把持するハンドを開閉駆動するためのアクチュエータ等にも適用することができる。
図13は、位置検出装置が設けられるアクチュエータの変形例を示す断面図である。このアクチュエータは被加工物を把持するためのエアハンド10aである。エアハンド10aは、非磁性材料からなるアクチュエータ本体71を有している。往復動部材としてのピストン12がアクチュエータ本体71の内部に軸方向に往復動自在に装着され、ピストン12はピストンロッド13に設けられている。ピストンロッド13の一端部は、アクチュエータ本体71の一端部に設けられたスリット72内に突出し、2つのL字形状の駆動レバー73a,73bが支点ピン74a、74bによりスリット72内に旋回運動自在に支持されている。
ロッドピン75がピストンロッド13の先端に取り付けられ、ロッドピン75はそれぞれの駆動レバーの基端部に設けられた係合溝76a、76bに摺動自在に係合している。被加工物等を把持するフィンガーとしての2つの摺動レバー77a、77bがアクチュエータ本体71の先端部に設けられている。それぞれの摺動レバー77a、77bはアクチュエータ本体71に取り付けられたガイドリング78a、78bにより、ピストンロッド13の往復動方向に対して直角方向に摺動自在である。スライドピン79が摺動レバー77aに設けられ、スライドピン79は駆動レバー73aの先端部に設けられた係合溝81に摺動自在に係合し、駆動レバー73aの揺動により駆動される。同様に、他の摺動レバー77bは、図示しないスライドピンが駆動レバー73bの先端部に設けられた図示しない係合溝に摺動自在に係合し、駆動レバー73bの揺動により駆動される。
アクチュエータ本体71に設けられたカバー82とピストン12とにより区画される突出用の圧力室83aに流体を供給すると、ピストンロッド13が突出駆動される。これにより、2つの摺動レバー77a、77bは駆動レバー73a、73bを介して最も離れた位置に駆動される。一方、後退用の圧力室83bに流体を供給すると、ピストンロッド13が図10に示す位置に後退移動される。これにより、2つの摺動レバー77a、77bは駆動レバー73a、73bを介して最接近した位置に駆動される。
このように、2つの摺動レバー77a、77bが接近移動する把持動作により被加工物等がエアハンド10aにより把持され、2つの摺動レバー77a、77bが離反移動する開放動作により被加工物等の把持が解除される。ピストン12に設けられた磁石16の位置により、摺動レバー77a、77bの把持位置が検出される。磁石16の位置を検出するために、図1に示したセンサヘッド21がアクチュエータ本体71に装着される。
このように、往復動部材により被加工物等を把持するハンドを開閉駆動するためのエアハンド10aにも上述した位置検出装置を適用することができる。
それぞれのアクチュエータにおいては、磁石16の位置は、ピストン12等の往復作動部材の位置に対応する。アクチュエータの種類に応じて、主領域値のみにより往復作動部材の位置を検出するか、または主領域値にシフト領域値を付加した検出範囲Qの拡大出力により往復作動部材の位置を検出するかを、選択することもできる。
図3および図4に示される磁気抵抗ブリッジ回路25においては、第1ブリッジ回路31と第2ブリッジ回路32はそれぞれフルブリッジ回路であるが、それぞれをハーフブリッジ回路としても良い。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1および図2は、空気圧によってピストンロッドを直線往復動するアクチュエータ10を示すが、液圧等のように空気圧以外の流体圧によってピストンロッドを直線往復動するアクチュエータにも本発明を適用することができる。