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JP6547779B2 - エンジン制御装置 - Google Patents
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Description

本発明は、エンジン制御装置に関し、詳しくは、排気管に触媒を備えるディーゼルエンジンの制御装置に関する。
従来、ディーゼルエンジンの排気管に設けられる触媒に吸着した硫黄酸化物(SOまたはSOをいい、以下においてこれらを区別しない場合には「SOx」と総称する。)を、定期的に脱離させる昇温制御を行うことが知られている。昇温制御に関連する文献として、例えば特開2013−029038号公報が挙げられる。この公報には、触媒に蓄積したSOxの蓄積量を推定し、推定した蓄積量が要求放出量に到達したときに、当該触媒の床温を上昇させて500〜550℃に制御する技術が開示されている。この公報によれば、床温が500℃未満であると触媒からSOxが放出されず、床温が500〜550℃であると触媒からSOxが低濃度で放出され、床温が600℃を超えると触媒からSOxが高濃度で放出されるという特性が触媒にあるとしている。従って、このような特性を有する触媒の床温を500〜550℃に制御すれば、触媒からSOxを低濃度で脱離させてその機能を回復させることができる。また、低濃度で脱離させたSOxから白煙が発生するのを抑制することもできる。
特開2013−029038号公報 特開2015−169105号公報
上記公報の技術は、触媒の床温に対する触媒からのSOx放出量の特性に着目している。しかしながら、触媒から脱離するSOx量は、触媒の床温だけでなく床温の変化量の影響も受ける。このため、上記公報の技術では、触媒の温度変化が大きい条件において、触媒から脱離するSOx量を精度よく推定できないおそれがある。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、触媒の昇温制御において、触媒から脱離するSOx量を精度よく推定することにより、SOxの脱離による触媒の機能の回復と、脱離したSOxに起因した白煙の発生の抑制とを高水準で両立させることのできるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、ディーゼルエンジンの排気管に設けられる浄化装置の温度を、前記浄化装置からSOxが脱離する温度域の目標温度まで上昇させる昇温制御を実行するエンジン制御装置を対象としている。エンジン制御装置は、所定の制御周期ごとに前記浄化装置の温度の代表値である代表温度を取得する温度取得手段と、前記浄化装置に流入するSOx量を流入SOx量として前記制御周期ごとに推定する流入SOx量推定手段と、前記流入SOx量と前記代表温度とを用いて、前記浄化装置から新たに脱離するSOx量を新規脱離SOx量として前記制御周期ごとに推定する新規脱離SOx量推定手段と、前記新規脱離SOx量を用いて、前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に最終的に吸着するSOx量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される最終吸着SOx分布を前記制御周期ごとに推定する最終吸着SOx分布推定手段と、前記最終吸着SOx分布と許容脱離SO量とを用いて、前記目標温度を前記制御周期ごとに算出する目標温度算出手段と、を備えている。前記新規脱離SOx量推定手段は、前記代表温度の過去値から今回値への変化度合を表す補正値を算出する算出手段と、前記代表温度に前記補正値を反映させる補正を行うことにより補正後代表温度を算出する補正手段と、を含み、前記流入SOx量と前記補正後代表温度を用いて前記新規脱離SOx量を推定するように構成されている。また、前記補正手段は、前記変化度合の前記補正後代表温度への反映度合が、前記代表温度が大きくなるに従って単調非増加で小さくなるように構成されている。
本発明のエンジン制御装置において、前記補正手段は、前記代表温度が大きくなるに従って単調非増加で小さくなる補正係数を算出し、前記補正値に前記補正係数を乗じた値を前記代表温度に加算することにより前記補正後代表温度を算出するように構成されていてもよい。
また、本発明のエンジン制御装置において、前記算出手段は、前記代表温度の今回値と前回値の差分値を前記補正値として算出するように構成されていてもよい。
また、本発明のエンジン制御装置は、前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に吸着するSOx量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される吸着SOx分布と、前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に吸着するSOx最大量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される飽和SOx分布と、を用いて、前記浄化装置におけるSOx飽和率を前記制御周期ごとに推定するSOx飽和率推定手段と、前記流入SOx量と前記SOx飽和率とを用いて、前記浄化装置に流入して前記浄化装置に新たに吸着するSOx量を新規吸着SOx量として前記制御周期ごとに推定する新規吸着SOx量推定手段と、前記新規吸着SOx量を用いて、前記浄化装置に新たなSOxが吸着した後の前記吸着SOx分布を吸着後SOx分布として前記制御周期ごとに推定する吸着後SOx分布推定手段と、を備えることができる。この場合、前記新規脱離SOx量推定手段は、前記吸着後SOx分布と前記代表温度とを用いて、前記新規脱離SOx量を前記制御周期ごとに推定するように構成されてもよい。また、本発明のエンジン制御装置は、前記新規吸着SOx量を用いて、前記浄化装置に流入して前記浄化装置に吸着することなくすり抜けるSOx量をすり抜けSOx量として前記制御周期ごとに推定するすり抜けSOx量推定手段と、前記浄化装置においてSOに転化するSOの転化率と前記代表温度との関係を表した転化率マップと、今回の推定サイクルにおける前記代表温度と、前記すり抜けSOx量と、を用いて、前記浄化装置にSOxの状態で流入して前記浄化装置に吸着することなくすり抜けてSOの状態で排出されるSO量をすり抜けSO量として前記制御周期ごとに推定するすり抜けSO量推定手段と、サルフェート白煙に関する制約に相当する前記浄化装置の下流におけるSO量と前記すり抜けSO量とを用いて、前記浄化装置から脱離することが許されるSO量を前記許容脱離SO量として前記制御周期ごとに算出する許容脱離SO量算出手段と、をさらに備えるように構成されていてもよい。
さらに、本発明のエンジン制御装置において、前記温度取得手段は、前記排気管における前記浄化装置の下流側に流れたガスの温度を前記代表温度として取得するように構成されていてもよい。
また、本発明のエンジン制御装置において、前記浄化装置は、前記排気管を流れる微粒子を捕集するフィルタを含んでいてもよい。この場合、前記昇温制御を、前記フィルタに捕集された微粒子量の推定値が除去要求量に到達したときに開始することとしてもよい。
本発明によれば、浄化装置の代表温度を用いて、浄化装置から新たに脱離する脱離SOx量が推定される。この際、代表温度の過去値から今回値への変化度合を表す補正値を代表温度に反映させる補正が行なわれ、補正された補正後代表温度を用いて新規脱離SOx量が推定される。ここで、代表温度の補正は、代表温度が大きくなるに従い補正値の代表温度への反映度合が単調非増加で小さくなるように行なわれる。脱離SOx量は浄化装置の代表温度だけでなく、代表温度の変化度合の影響も受ける。具体的には、浄化装置の低温域では代表温度の変化度合の影響を大きく受けるのに対し、浄化装置の高温域では低温域ほどに影響を受けない。このため、本発明によれば、浄化装置の温度が高温であっても脱離SOx量を精度よく推定することができるので、触媒の昇温制御において、SOxの脱離による触媒の機能の回復と、このSOxに起因した白煙の発生の抑制とを高水準で両立させることができる。
本発明の実施の形態のシステム構成を示す図である。 DOC22aにおけるSOxの吸着と脱離を説明するための図である。 目標床温Ttrgを算出するためのロジックを示す機能ブロック図である。 吸着SOx分布と飽和SOx分布を説明するための図である。 基準飽和SOx分布と補正後の飽和SOx分布の関係を説明するための図である。 総吸着余裕SO量を説明するための図である。 新規吸着SOx量とすり抜けSOx量の関係を説明するための図である。 吸着率mapを説明するための図である。 吸着後SOx分布を説明するための図である。 脱離可能総SOx量を説明するための図である。 補正後現在床温T´を算出するためのロジックを示す機能ブロック図である。 補正前現在床温Tに温度補正係数Kを関連付けたマップの一例を示す図である。 最終吸着SOx分布と吸着後SOx分布の関係を説明するための図である。 SO転化率mapを説明するための図である。 許容脱離SO量を説明するための図である。 目標床温Ttrgを説明するための図である。 現在床温の温度補正の効果を説明するためのタイムチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
[システム構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態のシステム構成を示す図である。図1に示すシステムは、車両に搭載されるディーゼルエンジン10(以下単に「エンジン10」ともいう。)を備えている。エンジン10の各気筒には、燃料としての軽油を噴射するインジェクタ12が設けられている。なお、図1に描かれるエンジン10は直列4気筒エンジンであるが、エンジン10の気筒数および気筒配列は特に限定されない。また、図1には、4つのインジェクタ12のうちの1つが描かれている。
エンジン10の排気マニホールド14には、ターボチャージャ16の排気タービン16aの入口が接続されている。排気タービン16aは吸気管18に設けられたコンプレッサ16bに連結されている。コンプレッサ16bは、排気タービン16aの回転により駆動して吸気を過給する。排気タービン16aの出口には排気管20が接続されている。排気管20には排気浄化装置22が設けられている。排気浄化装置22は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)22aと、DPF(Diesel Particulate Filter)22bと、を備えている。DOC22aは、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して、水(HO)や二酸化炭素(CO)に転化させる機能を有する触媒である。DPF22bは、排気中に含まれる微粒子(PM)を捕集するフィルタである。排気浄化装置22の上流には、インジェクタ12と共通の燃料を排気管20に添加する燃料添加弁24が設けられている。
図1に示すシステムは、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)30を備えている。ECU30は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)等を備えている。ECU30は、車両に搭載された各種センサの信号を取り込み処理する。各種センサには、吸気管18の入口付近に設けられたエアフローメータ32、DOC22aの出口温度を検出する温度センサ34、DPF22bの上下流における圧力差を検出する差圧センサ36が含まれている。ECU30は、取り込んだ各センサの信号を処理して所定の制御プログラムに従って各種アクチュエータを操作する。ECU30によって操作されるアクチュエータには、上述したインジェクタ12、燃料添加弁24が含まれている。
[DPF22bの再生制御]
本実施の形態では、ECU30によるエンジン制御として、DPF22bの昇温制御(以下「PM再生制御」ともいう。)が行われる。PM再生制御は、DPF22bで捕集したPMの推定値が除去要求量に到達したときに、燃料添加弁24から燃料を添加する制御である。例えば差圧センサ36で検出した圧力差が所定値に到達したときに、PMの推定値が除去要求量に到達したと判断することができる。燃料添加弁24から燃料を添加することでDOC22aにおいて添加燃料を酸化し、この酸化反応熱によりDPF22bの床温を600℃以上まで上昇させる。これにより、DPF22bで捕集したPMを燃焼除去できるので、DPF22bの捕集機能を回復させることができる。なお、DPF22bの床温を600℃以上に上昇させるための燃料添加弁24からの添加燃料量(以下「DPF用燃料量)は、DPFの床温と関連付けたマップに基づき決定されるものとする。このようなマップは例えばECU30のROMに記憶させておき、DPF22bの実際の床温に応じて適宜読み出すことができる。
[PM再生制御における問題点]
ところで、ディーゼルエンジンの燃料や潤滑油には一般に硫黄が含まれており、燃料の燃焼に伴ってこうした硫黄からSOxが生成する。本実施の形態においても同様で、エンジン10での燃料の燃焼に伴ってSOxが生成する。生成したSOxはエンジン10から排出されて排気浄化装置22に流入し、主にDOC22aに吸着する。但し、DOC22aの床温が高くなると、ここに吸着していたSOxが脱離し始める。DOC22aの組成等により多少変動するものの、PM再生制御を行う温度域ではDOC22aからSOxが脱離して下流側に放出される。
DOC22aにおけるSOxの吸着と脱離について、図2を参照しながら説明する。図2は、DOC22aにおけるSOxの吸着と脱離を説明するための図である。この図に示すように、DOC22aは、基材(不図示)の表面を覆うコート材22cと、貴金属22d(Pt,Pd等)とを備えている。貴金属22dはコート材22cに分散担持されており、HCやCOを酸化する際の活性点となる。但し、排気中のSOが貴金属22dに吸着し、または、排気中のSOがコート材22cに吸着する。貴金属22dに吸着したSOの一部は貴金属22dから脱離して排気中に戻り、または、貴金属22d上で酸化されてSOとなり、SOの状態でコート材22cに吸着する。即ち、貴金属22dにはSOが吸着し、コート材22cには排気由来のSOとSO由来のSOが吸着する。何れにせよ、SOxが吸着することで、DOC22aにおけるHC等の酸化機能が阻害されることになる。
上述した2経路によりコート材22cに吸着したSOは、コート材22cの床温が高くなることで脱離する。また、コート材22cの床温が高くなることで貴金属22d上でのSOからSOへの転化が促進されるので、このようなSOもコート材22cから脱離する。従って、PM再生制御を行うことで、上述したDPF22bの捕集機能だけでなく、DOC22aにおけるHC等の酸化機能を回復させることもできる。ところが、図2に示すように、コート材22cから脱離したSOが排気管20に存在するHOと反応することでHSOが発生する。そして、このHSOの濃度が一定濃度を超えると視認可能な白煙(サルフェート白煙)となるので、エンジン10を搭載した車両の商品価値を損ねてしまうおそれがある。
[本実施の形態の特徴]
DOC22aの下流における排気中のHSOの濃度が高くなり過ぎないように燃料添加弁24から燃料を添加すれば、PM再生制御中のサルフェート白煙の発生を抑制できる。そこで本実施の形態では、DOC22aの下流におけるSOの濃度がサルフェート白煙に関する制約を満たすように、PM再生制御中のDOC22aの床温の目標温度(以下「目標床温Ttrg」ともいう。)を算出し、目標床温Ttrgに基づいて、燃料添加弁24から添加する燃料量(以下「制約充足用燃料量」ともいう。)を算出することとしている。なお、このような制約SO濃度(DOC22aの下流におけるSO濃度の上限値)は、例えばECU30のROMに記憶させておくことができる。制約充足用燃料量よりもDPF用燃料量の方が多い場合に、DPF用燃料量ではなく制約充足用燃料量を採用することで、サルフェート白煙に関する制約を満たしつつ、DOC22aにおけるHC等の酸化機能を回復させることができる。
[目標床温Ttrgの算出ロジック]
図3は、目標床温Ttrgを算出するためのロジックを示す機能ブロック図であり、これはECU30により実現される。この図に示すように、ECU30は、流入SOx量推定部M1と、SOx飽和率推定部M2と、新規吸着SOx量およびすり抜けSOx量推定部M3と、吸着後SOx分布推定部M4と、新規脱離SOx量推定部M5と、最終吸着SOx分布推定部M6と、すり抜けSO量推定部M7と、許容脱離SO量算出部M8と、白煙抑制目標床温算出部M9と、を備えており、これらの要素M1〜M9によって制御周期ごとに(具体的にはエンジン10の燃焼サイクルごとに)目標床温Ttrgを算出するものとする。なお、以下の説明においては、要素M1〜M9を簡略化するものとし、例えば流入SOx量推定部M1を「推定部M1」ともいう。
推定部M1は、DOC22aに流入するSOxの量(以下「流入SOx量」ともいう。)を推定する。なお、本明細書でいう「DOC22aに流入するSOx」には、エンジン10で生成し、ここから排出されてDOC22aに流入するSOxだけでなく、燃料添加弁24から添加された燃料のDOC22aでの酸化反応に伴って生成し、DOC22a上を流れるSOxも含まれるものとする。
推定部M1は、具体的に、インジェクタ12からの噴射燃料量(筒内噴射量)および燃料添加弁24からの添加燃料量(排気添加量)を変数とする次式(1)により、第t番目のサイクルにおける流入SOx量を推定する。なお、式(1)の燃料S濃度は、燃料中の硫黄濃度であり、燃料供給系に別途設けた硫黄濃度センサの検出値を用いてもよく、設定値を用いてもよい。
流入SOx量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))[μg/s]=流入燃料量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))[g/s]×燃料S濃度[ppm] ・・・(1)
式(1)の流入燃料量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))は、「DOC22aに流入するSOx」の由来となった燃料の第t番目のサイクルにおける量であり、燃料の比重(軽油比重)を用いて次式(2)により算出される。
流入燃料量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))[g/s]=(排気添加量(t)[g/s]÷1000×軽油比重[g/cm3]+筒内噴射量(t)[g/s]) ・・・(2)
なお、以下の説明においては、流入SOx量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))を流入SOx量(t)ともいう。また、流入燃料量(排気添加量(t),筒内噴射量(t))を流入燃料量(t)ともいう。
推定部M2は、DOC22aにおけるSOxの飽和率(以下「SOx飽和率」ともいう。)を推定する。SOx飽和率の推定には、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aに吸着するSOxの量(以下「吸着SOx量」ともいう。)を、DOC22aの床温に関連付けたグラフとして表される分布(以下「吸着SOx分布」ともいう。)と、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aに吸着するSOxの最大量(以下「飽和SOx量」ともいう。)を、DOC22aの床温に関連付けたグラフとして表される分布(以下「飽和SOx分布」ともいう。)と、が用いられる。先ず、吸着SOx分布と飽和SOx分布について、SOを例として図4を参照しながら説明する。
図4は、吸着SOx分布と飽和SOx分布を説明するための図である。図4に「吸着SO量」として示したデータは、次の手法により収集したものである。具体的には先ず、図4に「現在温度」として示した床温において、十分な量のSOxをDOC22aに吸着させる。続いて、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aから脱離したSOの量を、上昇速度を一定とした条件のもとで測定する。そして、この脱離SO量をDOC22aの床温に関連付けてグラフを作成する。これにより、脱離SO量を表した分布(以下「脱離SO分布」ともいう。)を得ることができる。これと同様の手法により、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aから脱離したSOの量を、DOC22aの床温に関連付けたグラフ(以下「脱離SO分布」ともいう。)を得ることもできる。なお、DOC22aから脱離するSOについては、これをセンサで直接的に測定してもよいし、SOxまたはSOを検出するセンサを用いて両者を測定し、これらの差から算出してもよい(SO=SOx−SO)。
ここで、DOC22aの床温上昇中にDOC22aから脱離するSOは、実際には図4に「現在温度」として示した床温でDOC22aに吸着させたSOである。しかし、ある床温でDOC22aから脱離するSOは、その床温に至るまでDOC22aに吸着し続けることのできたSOであり、更に言えば、その床温でDOC22aに吸着することができたSOであると考えることもできる。このような仮定に基づいて、上述した脱離SO分布の縦軸を、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aに吸着するSOの量に置き換えると、図4に示した「吸着SO量」のデータのグラフ、即ち、吸着SO分布を得ることができる。そして、これと同様の手法によって、吸着SO分布を得ることもできる。
また、図4に「飽和SO量」として示したデータは、「吸着SO量」のデータと同様の手法により収集したものである。この「飽和SO量」のデータは、具体的に、上昇速度を極低速とした条件のもと、DOC22aの床温上昇中の各床温(例えば5℃間隔)においてDOC22aから脱離したSOの量に相当している。DOC22aの床温の上昇速度が極低速であることから、この「飽和SO量」のデータは、DOC22aから脱離したSOの量の最大値であると考えることができる。また、この最大値に対しては、上述した仮定を適用することができる。即ち、ある床温でDOC22aから脱離するSOの最大量は、その床温でDOC22aに吸着することができたSOの最大量に等しいと考えることができる。このような仮定に基づいて上述した脱離SO分布の縦軸を上記SOの最大量に置き換えると、図4に示した「飽和SO量」のデータのグラフ、即ち、飽和SO分布を得ることができる。そして、これと同様の手法によって、飽和SO分布を得ることもできる。
推定部M2は、第t番目のサイクルにおけるDOC22aの現在床温Tを変数とする次式(3)により、第t番目のサイクルにおけるSOx飽和率(T(t),t)を推定する。なお、現在床温Tは、DOC22aの現在の床温の代表温度として、例えば温度センサ34の検出値を使用することができる。
SOx飽和率(T(t),t)=1−(総吸着余裕量(T(t),t)/総飽和量(T(t),t)) ・・・(3)
式(3)のSOx飽和率(T(t),t)の算出過程は次のとおりである。先ず、DOC22aの床温上昇中における床温Tと、現在床温Tとを変数とする次式(4)および(5)により、第t番目のサイクルにおける飽和SO分布(T,T(t),t)および飽和SO分布(T,T(t),t)をそれぞれ算出する。
飽和SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]=基準飽和SO分布×床温補正SOmap(T(t))[μg/℃] ・・・(4)
飽和SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]=基準飽和SO分布×床温補正SOmap(T(t))[μg/℃] ・・・(5)
式(4)の基準飽和SO分布は、十分な量のSOxをDOC22aに吸着させるときの床温(図4の「現在温度」)を基準床温(例えば上述した吸着限界量が最大となる300℃付近の床温)として作成した飽和SO分布である。式(5)の基準飽和SO分布もこれと同様である。式(4)の床温補正SOmap(T(t))は、基準飽和SO分布を現在床温Tの飽和SO分布に変換するための補正値を定めたマップである。式(5)の床温補正SOmap(T(t))もこれと同様である。このような基準飽和SOx分布と補正マップは、例えばECU30のROMに記憶させておくことができ、現在床温Tに応じて適宜読み出すことができる。
基準飽和SOx分布と補正後の飽和SOx分布の関係を、SOを例として図5を参照しながら説明する。図5は、基準飽和SOx分布と補正後の飽和SOx分布の関係を説明するための図である。なお、この図の横軸のTLおよびTHは、DOC22aの床温上昇中にDOC22aからSOが脱離し始める温度(下限温度)と、DOC22aからSOが脱離し終わる温度(上限温度)に、それぞれ相当している。この図に示す3種類の分布の違いは、現在床温Tにある。即ち、現在床温Tが基準温度と等しい場合は、補正後の飽和SO分布の形状が基準飽和SO分布の形状と一致する(中央)。一方、現在床温Tが基準温度よりも低い場合(左方)や、現在床温Tが基準温度よりも高い場合(右方)は、補正後の飽和SO分布の形状が基準飽和SO分布の形状と一致しなくなる。なお、現在床温Tが基準温度よりも高い場合(右方)には、補正後の飽和SO分布の形状が、現在床温Tよりも低温側のデータが欠落しているような形状となる。この理由は、現在床温Tよりも低温側では、本来であればこの床温域においてDOC22aに吸着し続けることのできたはずのSOxが、DOC22aから既に脱離していると考えられるためである。
続いて、式(4)により算出した飽和SO分布(T,T(t),t)を次式(6)に代入して、第t番目のサイクルにおける総飽和SO量(T(t),t)を算出する。また、式(5)により算出した飽和SO分布(T,T(t),t)を次式(7)に代入して、第t番目のサイクルにおける総飽和SO量を算出する。
Figure 0006547779
総飽和SO量(T(t),t)および総飽和SO量(T(t),t)を算出したら、次式(8)にこれらを代入して、第t番目のサイクルにおける総飽和量(T(t),t)を算出する。
総飽和量(T(t),t)=総飽和SO量(T(t),t)+総飽和SO量(T(t),t) ・・・(8)
なお、以下の説明においては、総飽和SO量(T(t),t)を単に総飽和SO量(t)ともいう。また、総飽和SO量(T(t),t)を単に総飽和SO量(t)ともいう。また、総飽和量(T(t),t)を単に総飽和量(t)ともいう。
式(8)により総飽和量(t)を算出したら、飽和SO分布(T,T(t),t)と、推定部M6で推定した第t番目のサイクルにおける最終吸着SO分布(T,t)とを次式(9)に代入して、第t番目のサイクルにおける吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を算出する。また、飽和SO分布(T,T(t),t)と、推定部M6で推定した第t番目のサイクルにおける最終吸着SO分布(T,t)とを次式(10)に代入して、第t番目のサイクルにおける吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を算出する。
吸着余裕SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]=max{飽和SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]−最終吸着SO分布(T,t)[μg/℃],0} ・・・(9)
吸着余裕SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]=max{飽和SO分布(T,T(t),t)[μg/℃]−最終吸着SO分布(T,t)[μg/℃],0} ・・・(10)
続いて、式(9)により算出した吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を次式(11)に代入して、第t番目のサイクルにおける総吸着余裕SO量(T(t),t)を算出する。また、式(10)により算出した吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を次式(12)に代入して、第t番目のサイクルにおける総吸着余裕SO量(T(t),t)を算出する。
Figure 0006547779
なお、以下の説明においては、吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を単に吸着余裕SO分布(t)ともいう。また、吸着余裕SO分布(T,T(t),t)を単に吸着余裕SO分布(t)ともいう。また、総吸着余裕SO量(T(t),t)を単に総吸着余裕SO量(t)ともいう。また、総吸着余裕SO量(T(t),t)を単に総吸着余裕SO量(t)ともいう。
図6を参照して、総吸着余裕SO量(t)を説明する。図6は、総吸着余裕SO量を説明するための図である。なお、総吸着余裕SO量(t)についてはこれと同様である。この図に示すように、総吸着余裕SO量(t)は、飽和SO分布から、飽和SO分布と吸着SO分布の重複部分を除いた面積として表すことができる。なお、この図の右方の分布に領域Aとして示すように、DOC22aの床温上昇中の各床温においてDOC22aに吸着するSOの量、即ち、吸着SO量がその最大量、即ち、飽和SO量を上回る場合は、DOC22aが飽和していると考えられることから、総吸着余裕SO量(t)の算出から除外される。また、この右方の分布において、現在床温Tよりも低温側のデータが欠落している理由については、図5で説明した通りである。
そして、総吸着余裕SO量(t)および総吸着余裕SO量(t)を算出したら、これらを次式(13)に代入して、第t番目のサイクルにおける総吸着余裕量(T(t),t)を算出する。
総吸着余裕量(T(t),t)=総吸着余裕SO量(t)+総吸着余裕SO量(t) ・・・(13)
更に、式(8)により算出した総飽和量(t)と、式(13)により算出した総吸着余裕量(t)とを式(3)に代入すれば、飽和率(T(t),t)を算出できる。なお、以下の説明においては、飽和率(T(t),t)を単に飽和率(t)ともいう。
図3に戻り目標床温Ttrgの算出ロジックの説明を続ける。推定部M3は、「DOC22aに流入するSOx」であってDOC22aに新たに吸着するSOxの量(以下「新規吸着SOx量」ともいう。)、および、「DOC22aに流入するSOx」であってDOC22aに吸着することなくすり抜けるSOxの量(以下「すり抜けSOx量」ともいう。)を推定する。先ず、新規吸着SOx量とすり抜けSOx量の関係について、図7を参照して説明する。図7は、新規吸着SOx量とすり抜けSOx量の関係を説明するための図である。この図に矢印で示すように、新規吸着SOx量とすり抜けSOx量の和が、流入SOx量に等しくなる。この理由は、「DOC22aに流入するSOx」のうちの一部がDOC22aに吸着し、残りがDOC22aに吸着することなくすり抜けるためである。
推定部M3は、具体的に、推定部M1で推定した流入SOx量(t)と、推定部M2で推定した飽和率(t)とを変数とする次式(14)により新規吸着SOx量を推定し、次式(15)によりすり抜けSOx量を推定する。
新規吸着SOx量(流入SOx量(t),飽和率(t))[μg/s]=流入SOx量(t)×吸着率map(飽和率(t)) ・・・(14)
すり抜けSOx量(流入SOx量(t),飽和率(t))[μg/s]=流入SOx量(t)×{1−吸着率map(飽和率(t))} ・・・(15)
なお、以下の説明においては、新規吸着SOx量(流入SOx量(t),飽和率(t))を単に新規吸着SOx量(t)ともいう。また、すり抜けSOx量(流入SOx量(t),飽和率(t))を単にすり抜けSOx量(t)ともいう。
式(14)および(15)の吸着率mapは、第t番目のサイクルにおいて「DOC22aに流入するSOx」のうち、DOC22aに吸着するSOxの割合(即ち、吸着率)が、飽和率(t)によって変わるという特性に基づいて作成されたマップである。図8は、吸着率mapを説明するための図である。この図に示すように、吸着率mapの特性は、飽和率(t)が低い領域では吸着率が高く、飽和率(t)が高くなるにつれて吸着率が徐々に低下するというものである。なお、このようなマップは、例えばECU30のROMに記憶させておくことができ、現在床温Tに応じて適宜読み出すことができる。
図3に戻り、推定部M4は、推定部M3で推定した新規吸着SOx量を吸着SOx分布に反映させて吸着後SOx分布を推定する。吸着後SOx分布について、SOを例とした図9を参照しながら説明する。図9は、吸着後SOx分布を説明するための図である。この図に示すように、吸着後SO分布は、前回サイクル(例えば、第t−1番目のサイクル)における最終吸着SO分布に、今回サイクル(例えば、第t番目のサイクル)においてDOC22aに新たに吸着するSOの量を表した分布(以下「新規吸着SO分布」ともいう。)を加算することで推定される。
推定部M4は、具体的には先ず、新規吸着SOx量(t)、総吸着余裕量(t)および吸着余裕SO分布(t)を変数とする次式(16)により、第t番目のサイクルにおける新規吸着SO分布を算出する。新規吸着SO分布と同様に、推定部M4は、DOC22aに新たに吸着するSOの量を表した分布(以下「新規吸着SO分布」ともいう。)を、次式(17)により算出する。なお、吸着余裕SO分布(t)と総吸着余裕量(t)には、推定部M2において算出されたものが使用される。
新規吸着SO分布(新規吸着SOx量(t),吸着余裕SO分布(t),総吸着余裕量(t))[μg/℃]=吸着余裕SO分布(t)[μg/℃]×{新規吸着SOx量(t)/総吸着余裕量(t)} ・・・(16)
新規吸着SO分布(新規吸着SOx量(t),吸着余裕SO分布(t),総吸着余裕量(t))[μg/℃]=吸着余裕SO分布(t)[μg/℃]×{新規吸着SOx量(t)/総吸着余裕量(t)} ・・・(17)
なお、以下の説明においては、新規吸着SO分布(新規吸着SOx量(t),吸着余裕SO分布(t),総吸着余裕量(t))を、単に新規吸着SO分布(t)ともいう。また、新規吸着SO分布(新規吸着SOx量(t),吸着余裕SO分布(t),総吸着余裕量(t))を、単に新規吸着SO分布(t)ともいう。
推定部M4は、続いて、算出した新規吸着SO分布と、第t−1番目のサイクルにおける最終吸着SO分布(t−1)とを次式(18)に代入して、吸着後SO分布を算出する。また、算出した新規吸着SO分布と、第t−1番目のサイクルにおいて推定部M6で推定した吸着SO分布(t−1)とを次式(19)に代入して、吸着後SO分布を算出する。
吸着後SO分布(t)[μg/℃]=最終吸着SO分布(t−1)[μg/℃]+新規吸着SO分布(t)[μg/℃] ・・・(18)
吸着後SO分布(t)[μg/℃]=最終吸着SO分布(t−1)[μg/℃]+新規吸着SO分布(t)[μg/℃] ・・・(19)
図3に戻り、推定部M5は、推定部M4で推定した吸着後SOx分布に基づいて、DOC22aから新たに脱離するSOxの量(以下「新規脱離SOx量」ともいう。)を推定する。
推定部M5は、具体的には先ず、DOC22aから脱離することのできるSOxの総量(以下「脱離可能総SOx量」ともいう。)を推定する。脱離可能総SOx量について、SOを例とした図10を参照しながら説明する。図10は、脱離可能総SOx量を説明するための図である。なお、この図の横軸のTLおよびTHは、上述した下限温度および上限温度に、それぞれ相当している。この図に示すように、脱離可能総SOx量は、現在床温Tよりも低温側で、尚且つ、下限温度TLよりも高温側の吸着後SOx分布の面積に相当する。
DOC22aから脱離することのできるSOの総量、即ち、脱離可能総SO量は、現在床温Tを変数とする次式(20)により算出される。DOC22aから脱離することのできるSOの総量、即ち、脱離可能総SO量は、現在床温Tを変数とする次式(21)により算出される。
Figure 0006547779
推定部M5は、算出した脱離可能総SO量を次式(22)に代入して、第t番目のサイクルにおいてDOC22aから新たに脱離するSOの量、即ち、新規脱離SO量を算出する。また、算出した脱離可能総SO量を次式(23)に代入して、第t番目のサイクルにおいてDOC22aから新たに脱離するSOの量、即ち、新規脱離SO量を算出する。なお、式(22)および(23)の脱離率には設定値が使用され、例えばECU30のROMに記憶させておくことができる。
新規脱離SO量(T(t),t)[μg]=脱離可能総SO量[μg]×脱離率 ・・・(22)
新規脱離SO量(T(t),t)[μg]=脱離可能総SO量[μg]×脱離率 ・・・(23)
次に、現在床温Tを用いた新規脱離SOx量の推定手法の問題点について説明する。上述した手法では、脱離可能総SOx量は、吸着後SOx分布における下限温度TLと現在床温Tの間の面積として表される。しかしながら、図10に示す吸着後SOx分布は、床温の上昇速度を一定とした条件を前提にしている。このため、床温の上昇速度が変化する条件においては、脱離可能総SOx量を精度よく推定できないおそれがある。
そこで、実施の形態1のシステムでは、現在床温Tの値だけでなく現在床温Tへの変化度合も考慮した新規脱離SOx量の推定手法を採用している。以下、新規脱離SOx量の推定手法の具体的な内容について詳細に説明する。
DOC22aに吸着しているSOxには、DOC22aのコート材22cの表層付近に吸着しているものとコート材22cの奥層付近に吸着しているものとがある。コート材22cの表層付近に吸着しているSOxは比較的低いエネルギで脱離するのに対して、コート材22cの奥層付近に吸着しているSOxは、脱離するために比較的高いエネルギが必要となる。このような知見を前提に吸着後SOx分布を考察すると、脱離時床温の低温側では主としてコート材22cの表層付近に吸着しているSOxが脱離可能となり、脱離時床温の高温側では主としてコート材22cの奥層付近に吸着しているSOxが脱離可能となると考えられる。
ここで、DOC22aの内部の温度分布は、流入するガスからの受熱によって複雑に変化する。より詳しくは、DOC22aのコート材22cの表層は、流入するガスに直接晒される位置であるため、流入するガスの温度変化に対する感度が高い。これに対して、DOC22aのコート材22cの奥層は、流入するガスに直接晒されない位置であるため、流入するガスの温度変化に対する感度が低い。このため、吸着後SOx分布を用いて推定された脱離可能SOx量は、現在床温Tが低温側の値であるほど、実際の脱離可能SOx量から乖離すると考えられる。そこで、温度変化の影響を現在床温Tに反映させる補正を施すことが考えられるが、現在床温Tの低温側を基準に一律に補正を施すと、現在床温Tの高温側において補正が過剰になるおそれがある。
そこで、実施の形態1のシステムでは、以下に示す制御ロジックを用いて、脱離可能総SOx量の推定に用いる現在床温Tを補正することとしている。図11は、補正後現在床温T´を算出するための制御ロジックを示す機能ブロック図である。この図に示す補正部M30は、推定部M3の一部として構成される機能ブロックであり、ECU30により実現される。なお、以下の説明では、補正前の現在床温Tを補正前現在床温Tと称し、補正後の現在床温Tを補正後現在床温T´と称することとする。
この図に示すように、補正部M30は、温度変化量算出部M31と、温度補正係数算出部M32と、下限ガード部M33と、補正値算出部M34と、補正後現在床温算出部M35と、を備えている。算出部M31には、サイクル毎に補正前現在床温Tが入力される。入力される補正前現在床温Tは、DOC22aの代表温度として、温度センサ34によって検出されるDOC22aの出口温度が用いられる。なお、補正前現在床温Tは、DOC22aの内部の温度を直接検出した値を用いてもよいし、また、公知の手法を用いて推定されたDOC22aの床温を用いてもよい。算出部M31では、第t番目のサイクルの現在床温T(t)と第(t−1)番目のサイクルの現在床温T(t−1)の差分値、つまり現在床温Tの今回値と前回値の差分値が温度変化量ΔTとして算出される。なお、温度変化量ΔTは、補正前現在床温Tの過去値から今回値への変化度合を表す値であれば上記の差分値に限定されない。例えば、補正前現在床温Tに重畳するノイズの影響を排除するために、現在床温T(t−1)と現在床温T(t−2)との平均値を算出し、現在床温T(t)と当該平均値との差分値を温度変化量ΔTとしてもよい。また、他の公知のなまし処理を温度変化量ΔTの算出に適用してもよい。
算出された温度変化量ΔTは、ガード部M33に入力される。ガード部M33では、固定値ゼロと温度変化量ΔTとの最大値選択によって、温度変化量ΔTが下限値ゼロでガードされる。
算出部M32では、補正前現在床温Tの入力を受けて温度補正係数Kを算出する。図12は、補正前現在床温Tに温度補正係数Kを関連付けたマップの一例を示している。温度補正係数Kは、例えば図12に示すマップから算出することができる。このマップでは、補正前現在床温Tが400℃より小さい領域では、温度補正係数Kが一定値(正値)に設定され、500℃より大きい領域では、温度補正係数Kがゼロに設定されている。また、このマップでは、補正前現在床温Tが400℃から500℃の間において、補正前現在床温Tが大きいほど温度補正係数Kが小さくなるように設定されている。これにより、温度補正係数Kは、補正前現在床温Tが大きくなるに従い単調非増加で小さくなるように変化する。なお、温度補正係数Kの算出は、図12に示すマップを用いる方法に限られない。すなわち、補正前現在床温Tが大きくなるに従い単調非増加で小さくなる傾向が規定された他のマップを用いる構成でもよい。
算出部M34には、温度補正係数Kと温度変化量ΔTが入力される。算出部M34では、温度変化量ΔTに温度補正係数Kを乗算することにより、補正値(K×ΔT)が算出される。補正値(K×ΔT)は、補正前現在床温Tが大きいほど、つまり温度補正係数Kが小さいほど小さな値となり、温度補正係数Kがゼロになると補正値(K×ΔT)もゼロとなる。
算出部M35には、補正前現在床温Tと補正値(K×ΔT)が入力される。算出部M35では、補正前現在床温Tに補正値(K×ΔT)を加算することによって補正後現在床温T´が算出される。これにより、補正前現在床温Tが小さい場合には温度変化量ΔTの反映度合の大きい補正後現在床温T´が算出され、補正前現在床温Tが大きい場合には温度変化量ΔTの反映度合が小さい補正後現在床温T´が算出される。このように、補正部M30の処理によれば、補正前現在床温Tの大きさに応じて温度変化量ΔTの反映度合を変化させることができる。
なお、補正後現在床温T´を算出する制御ロジックは、上記の機能ブロックの構成に限られない。すなわち、補正前現在床温Tに温度変化量ΔTを反映させる補正を行うことにより補正後現在床温T´を算出する制御ロジックにおいて、温度変化量ΔTの補正前現在床温Tへの反映度合が補正前現在床温Tが大きくなるに従って単調非増加で小さくなるように構成されていればよい。
実施の形態1のシステムでは、上式(20)及び(21)において補正後の現在床温Tが用いられる。これにより、現在床温の低い温度域では温度変化量ΔTの現在床温への反映度合が高められるので、推定された脱離可能SOx量を実際の脱離可能SOx量に近づけることができる。また、現在床温の低い温度域では温度変化量ΔTの現在床温への反映度合が弱められるので、現在床温が過剰に補正されることによって推定された脱離可能SOx量が実際の脱離可能SOx量から乖離することを防ぐことができる。
上式(20)及び(21)において算出された脱離可能SOx量は、上式(22)及び(23)による新規脱離SO量の算出に使用される。これにより、現在床温の変化度合によらず新規脱離SO量を精度よく推定することが可能となる。
図3に戻り、推定部M6は、推定部M5で推定した新規脱離SOx量を吸着後SOx分布に反映させて、最終吸着SOx分布を推定する。
推定部M6は具体的に、推定部M5で推定した新規脱離SOx量の分だけSOxが脱離し、吸着後SOx分布の形状が変形すると仮定して、最終吸着SOx分布(脱離後SOx分布)を推定する。最終吸着SOx分布と吸着後SOx分布の関係について、SOを例とした図13を参照しながら説明する。図13は、最終吸着SOx分布と吸着後SOx分布の関係を説明するための図である。なお、この図の横軸のTLおよびTHは、上述した下限温度および上限温度に、それぞれ相当している。この図に示すように、吸着後SO分布の下限温度TLからの積分値が新規脱離SO量に一致するときの吸着後SO分布の面積、即ち、下限温度TLから温度TdSO2までの面積を、吸着後SOx分布から削った後に残る分布が、最終吸着SO分布となる。
図13の温度TdSO2が床温Tを上回る場合には、DOC22aからSOが全て脱離していることを意味する。これを考慮すると、第t番目のサイクルにおける最終吸着SO分布は床温Tを変数とする次式(24)で表され、第t番目のサイクルにおける最終吸着SO分布は次式(25)で表されることになる。なお、式(25)の温度TdSO3は、吸着後SO分布の下限温度TLからの積分値が新規脱離SO量に一致するときの床温Tに相当している。
Figure 0006547779
なお、新規脱離SO量と温度TdSO2の関係は次式(26)で表すことができ、新規脱離SO量と温度TdSO3の関係は次式(27)で表すことができる。
Figure 0006547779
図3に戻り、推定部M7は、上述したすり抜けSOxのうちDOC22aからSOの状態で排出されるSOxの量(以下「すり抜けSO量」ともいう。)を推定する。
図2で説明したように、DOC22aでは貴金属22dに吸着したSOの一部がSOに転化する。この転化がすり抜けSOx中のSOにも起こると仮定して、推定部M7では、すり抜け量と現在床温Tを変数とする次式(28)により、第t番目のサイクルにおけるすり抜けSO量を推定する。なお、すり抜けSOxのうちDOC22aからSOの状態で排出されるSOxの量(以下「すり抜けSO量」ともいう。)は、次式(29)で表すことができる。
すり抜けSO量(すり抜け量(t),T(t))[μg/s]=すり抜けSOx量(t)×SO転化率map(T(t)) ・・・(28)
すり抜けSO量(すり抜け量(t),T(t))[μg/s]=すり抜けSOx量(t)×{1−SO転化率map(T(t))} ・・・(29)
式(28)および(29)のSO転化率map(T(t))は、第t番目のサイクルにおいて「DOC22aに流入するSOx」のうち、DOC22aからSOの状態で排出されるSOxの割合(即ち、SO転化率)が、DOC22aの現在床温Tによって変わるという特性に基づいて作成されたマップである。図14は、SO転化率mapを説明するための図である。SO転化率mapの特性は、例えば図14に示すように、現在床温Tがある温度域Bにある場合はSO転化率が高くなり、この温度域Bよりも低温側や高温側では、SOからSOへの転化が起こり難くなるというものである。このようなマップは、例えばECU30のROMに記憶させておくことができ、現在床温Tに応じて適宜読み出すことができる。
図3に戻り、算出部M8は、DOC22aの床温上昇中にDOC22aから脱離してもよいSOの量(以下「許容脱離SO量」ともいう。)を算出する。許容脱離SO量について、図15を参照して説明する。図15は、許容脱離SO量を説明するための図である。この図に示す制約SO量は、サルフェート白煙に関する制約に相当しており、この図においてはすり抜けSO量と許容脱離SO量の和が制約SO量と等しくなっている。すり抜けSO量と許容脱離SO量の和は、DOC22aの下流におけるSOの量であることから、この和の値が制約SO量よりも小さい値であれば制約が満たされることになる。
制約SO量は、第t番目のサイクルにおけるエンジン10の排気流量(ガス流量)を変数とする次式(30)により算出することができる。なお、エンジン10の排気流量は、例えばエアフローメータ32の検出値を用いることができる。
制約SO量(ガス流量(t))[μg/s]=制約SO濃度[ppm]×ガス流量(t)[g/s]÷空気の平均モル質量×SO分子量 ・・・(30)
従って、この制約SO量とすり抜けSO量を変数とする次式(31)を許容脱離SO量が満たせば、制約が満たされることになる。
許容脱離SO量(制約SO量(ガス流量(t)),すり抜けSO量(t))[μg/s]≦制約SO量(ガス流量(t))[μg/s]−すり抜けSO量(t)[μg/s] ・・・(31)
なお、以下の説明においては、許容脱離SO量(制約SO量(ガス流量(t)),すり抜けSO量(t))を単に許容脱離SO量(t)ともいう。
図3に戻り、算出部M9は、PM再生制御中のサルフェート白煙の発生を抑制するための第t番目のサイクルにおける目標床温Ttrgを算出する。目標床温Ttrgについて、図16を参照しながら説明する。図16は、目標床温Ttrgを説明するための図である。なお、この図の横軸のTLおよびTHは、上述した下限温度および上限温度に、それぞれ相当している。この図に示すように、最終吸着SO分布の低温側からの積分値に脱離率を乗じた値が、算出部M8で算出した許容脱離SO量に一致するときの床温Tが目標床温Ttrgに相当する。
なお、第t番目のサイクルにおける許容脱離SO量と目標床温Ttrgの関係は次式(32)で表すことができる。式(32)の脱離率には設定値が使用され、例えばECU30のROMに記憶させておくことができる。
Figure 0006547779
図17を参照して、本実施の形態による効果を説明する。図17は、現在床温の温度補正の効果を説明するためのタイムチャートである。この図の1段目のチャートは、補正前の現在床温Tと補正後の現在床温T´の時間変化をそれぞれ示している。また、2段目のチャートは、補正前の現在床温Tを用いた場合の新規脱離SO量の推定値と実測値をそれぞれ示している。これらのチャートに示すように、現在床温Tの高温側の領域では現在床温Tに対する補正度合が小さくなっている。これにより、現在床温Tの高温側の領域において過剰な補正を抑えて新規脱離SO量の推定値を実測値に近づけることができる。
なお、上述した実施の形態においては、推定部M1が本発明の「流入SOx量推定手段」に相当し、推定部M2が本発明の「SOx飽和率推定手段」に相当し、推定部M3が本発明の「新規吸着SOx量推定手段」および「すり抜けSOx量推定手段」に相当し、推定部M4が本発明の「吸着後SOx分布推定手段」に相当し、推定部M5が本発明の「新規脱離SOx量推定手段」に相当し、推定部M6が本発明の「最終吸着SOx分布推定手段」に相当し、推定部M7が本発明の「すり抜けSO量推定手段」に相当し、算出部M8が本発明の「許容脱離SO量算出手段」に相当し、算出部M9が本発明の「目標温度算出手段」に相当している。
また、上述した実施の形態においては、現在床温T及び補正前現在床温Tが本発明の「代表温度」に相当し、補正後現在床温Tが本発明の「補正後代表温度」に相当し、温度補正係数Kが本発明の「補正係数」に相当し、温度変化量ΔTが本発明の「補正値」に相当し、算出部M31が本発明の「算出手段」に相当し、算出部M35が本発明の「補正手段」に相当している。
ところで、上述した実施の形態では、燃料添加弁24からの燃料の添加によりPM再生制御を行った。しかしこのPM再生制御を、インジェクタ12からの燃料の噴射(具体的には、メイン噴射よりも後のサブ噴射(例えばポスト噴射))により行ってもよい。この場合は、式(1)の排気添加量を、インジェクタ12からのサブ噴射量に置き換えればよい。
また、上述した実施の形態では、PM再生制御中を例としてDOC22aの床温の目標温度を算出した。しかし、DOC22aからSOxを脱離させる制御をPM再生制御と併せて行うような場合に、この脱離制御中に上述した手法によりDOC22aの床温の目標温度を算出してもよい。このように、上述した目標温度の算出手法は、DOC22aからSOxが脱離する温度域までDOC22aの床温を上昇させる制御一般に適用することができる。
また、上述した実施の形態では、DOC22aとDPF22bを備える排気浄化装置22を例として説明した。しかし、DOC22aにおけるHC等の酸化機能をDPF22bに付与して、排気浄化装置22からDOC22aを省略してもよい。この場合は、上述した目標温度の算出手法を、酸化機能が付与されたDPF22bに適用することで上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、上述した実施の形態ではエンジン10がターボチャージャ16を備えるとしたが、エンジン10がターボチャージャ16を備えていなくてもよい。即ち、上述した目標温度の算出手法は、非過給ディーゼルエンジンのシステムにも適用できる。
10 ディーゼルエンジン
12 インジェクタ
20 排気管
22 排気浄化装置
22a DOC
22b DPF
22c コート材
22d 貴金属
24 燃料添加弁
30 ECU

Claims (7)

  1. ディーゼルエンジンの排気管に設けられる浄化装置の温度を、前記浄化装置からSOxが脱離する温度域の目標温度まで上昇させる昇温制御を実行するエンジン制御装置であって、
    所定の制御周期ごとに前記浄化装置の温度の代表値である代表温度を取得する温度取得手段と、
    前記浄化装置に流入するSOx量を流入SOx量として前記制御周期ごとに推定する流入SOx量推定手段と、
    前記流入SOx量と前記代表温度とを用いて、前記浄化装置から新たに脱離するSOx量を新規脱離SOx量として前記制御周期ごとに推定する新規脱離SOx量推定手段と、
    前記新規脱離SOx量を用いて、前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に最終的に吸着するSOx量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される最終吸着SOx分布を前記制御周期ごとに推定する最終吸着SOx分布推定手段と、
    前記最終吸着SOx分布と許容脱離SO量とを用いて、前記目標温度を前記制御周期ごとに算出する目標温度算出手段と、を備え、
    前記新規脱離SOx量推定手段は、
    前記代表温度の過去値から今回値への変化度合を表す補正値を算出する算出手段と、
    前記代表温度に前記補正値を反映させる補正を行うことにより補正後代表温度を算出する補正手段と、を含み、前記流入SOx量と前記補正後代表温度を用いて前記新規脱離SOx量を推定するように構成され、
    前記補正手段は、前記変化度合の前記補正後代表温度への反映度合が、前記代表温度が大きくなるに従って単調非増加で小さくなるように構成されていることを特徴とするエンジン制御装置。
  2. 前記補正手段は、
    前記代表温度が大きくなるに従って単調非増加で小さくなる補正係数を算出し、
    前記補正値に前記補正係数を乗じた値を前記代表温度に加算することにより前記補正後代表温度を算出する
    ように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記算出手段は、前記代表温度の今回値と前回値の差分値を前記補正値として算出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に吸着するSOx量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される吸着SOx分布と、前記浄化装置の温度上昇中の各温度において前記浄化装置に吸着するSOx最大量を前記代表温度に関連付けたグラフとして表される飽和SOx分布と、を用いて、前記浄化装置におけるSOx飽和率を前記制御周期ごとに推定するSOx飽和率推定手段と、
    前記流入SOx量と前記SOx飽和率とを用いて、前記浄化装置に流入して前記浄化装置に新たに吸着するSOx量を新規吸着SOx量として前記制御周期ごとに推定する新規吸着SOx量推定手段と、
    前記新規吸着SOx量を用いて、前記浄化装置に新たなSOxが吸着した後の前記吸着SOx分布を吸着後SOx分布として前記制御周期ごとに推定する吸着後SOx分布推定手段と、を備え、
    前記新規脱離SOx量推定手段は、前記吸着後SOx分布と前記代表温度とを用いて、前記新規脱離SOx量を前記制御周期ごとに推定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
  5. 前記新規吸着SOx量を用いて、前記浄化装置に流入して前記浄化装置に吸着することなくすり抜けるSOx量をすり抜けSOx量として前記制御周期ごとに推定するすり抜けSOx量推定手段と、
    前記浄化装置においてSOに転化するSOの転化率と前記代表温度との関係を表した転化率マップと、今回の推定サイクルにおける前記代表温度と、前記すり抜けSOx量と、を用いて、前記浄化装置にSOxの状態で流入して前記浄化装置に吸着することなくすり抜けてSOの状態で排出されるSO量をすり抜けSO量として前記制御周期ごとに推定するすり抜けSO量推定手段と、
    サルフェート白煙に関する制約に相当する前記浄化装置の下流におけるSO量と前記すり抜けSO量とを用いて、前記浄化装置から脱離することが許されるSO量を前記許容脱離SO量として前記制御周期ごとに算出する許容脱離SO量算出手段と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のエンジン制御装置。
  6. 前記温度取得手段は、前記排気管における前記浄化装置の下流側に流れたガスの温度を前記代表温度として取得するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
  7. 前記浄化装置は、前記排気管を流れる微粒子を捕集するフィルタを含み、
    前記目標温度まで上昇させる制御を、前記フィルタに捕集された微粒子量の推定値が除去要求量に到達したときに開始することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエンジン制御装置。
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