JP6572650B2 - 赤熱コークスの湿式消火方法 - Google Patents
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Description
湿式消火の最大の問題点は、消火が不均一になり、コークスが赤熱したままの状態で残ることである。コークス炉から窯出しされてコークス搭載ボックス上に受骸される赤熱コークスの荷姿(層高)のバラツキなどにより、十分に消火できない箇所がスポット的に発生する。赤熱したままのコークスをベルトコンベアに載せた場合、ベルトコンベアが焼損する等、大災害に繋がることが懸念される。赤熱コークスを確実に消火する方法として、過剰の水を散水する方法もとられている。
湿式消火されたコークスは、ワーフと呼ばれる場所に払い出され、乾燥空冷処理されるが、乾燥空冷処理時間は、一般的には、特許文献1に記載されるように30〜40分といわれている。乾燥空冷されている間、コークスに含まれる水分は、コークス自身の顕熱により蒸発する。一方、温度の高いコークスは空冷される。仮に赤熱コークスが残留した場合は、ワーフへの散水により消火している。このような理由で、乾燥空冷処理時間に30〜40分は必要とされてきた。また、ワーフでの温度の高いコークスに散水を行い、冷却時間を短縮することも考えられるが、ワーフへの散水を行うためには、特許文献2のようなワーフ散水装置を設置するか、監視人を、常時、待機させる必要がある。
消火を確実に行う観点からは、コークスの最大温度は低めとし、水分を低減する観点からは最小温度を可能な限り高くすべきである。これら相反する2つの目的を達成するためには、最大温度と最小温度の差を縮小する必要があるということは言うまでもない。
水分低減の観点から、湿式消火した後のコークスの最小温度(下限温度)は重要である。当然、最小温度は水の沸点である100℃、あるいはそれに近い温度以上とすることが望まれる。しかし、最小温度の管理値を高くした場合、コークスの温度が全体的に上昇し、部分的に温度が過剰上昇して、後段の高炉搬送用ベルトを焼損することが懸念される。従って、ワーフに払い出されるコークスの最小温度は、可能な限り低い温度で管理すべきである。その観点から、最小温度を、どの程度まで低くすることが可能かを検証すべきである。
特許文献4においては、赤熱コークスを散水冷却した後、コークス搭載ボックスに搭載される消火後コークスの温度分布および/または層高分布を、ワーフに払い出す直前に測定する。ワーフに払い出した後、前記コークス搭載ボックスには、新たに赤熱コークスが搭載され、散水冷却されるが、その際の散水条件を既にワーフへの払い出しが終了している前記温度分布および/または層高分布を基に調整することを提案している。また、必要に応じて消火塔内部において、新たに搭載した赤熱コークスの温度分布および/または層高分布を測定することも記載されている。
炭化室から押し出された赤熱コークスを積載した消火貨車は、消火設備に移動され、散水冷却されるが、消火設備は、コークス炉の端に限定して設置される。この理由は、炭化室から赤熱コークスの押し出しに用いるコークスガイド車が、消火設備と干渉し、コークス炉の中央に消火設備が位置したのでは、コークスガイド車の移動の障害になるためである。消火設備をコークス炉の端に設置した場合、消火設備から遠く離れた押し出し窯からの消火設備への走行時間が長くなり、押し出し作業、押し出し窯から消火設備への移動、赤熱コークスの消火、消火コークスのワーフへの払い出しといった一連の作業にかかる時間が長くなり、効率的でない。高炉での必要なコークスを生産することが困難となることもある。また、走行時間内に赤熱コークスが表面から焼失してしまい、コークス歩留まり低下の原因となる。
赤熱コークスを確実に消火するため、過剰散水することは、消火後コークスの水分を上昇させ、高炉における熱源単位や炉況を悪化させてしまう原因となる。高炉に投入されるコークスの水分は5質量%以下とすることが望まれる。即ち、赤熱コークスを確実に消火することと同時に、消火後コークスの水分を高くしないことも求められている。
ワーフでの乾燥空冷のためには広いワーフ面積が必要となる。工場によっては、ワーフに広い面積を設けることが困難な場合もある。そのため、ワーフでの乾燥空冷処理時間は20分以内とすることが望まれる。また、ワーフ内の温度の高いコークスに局所的に散水を行い、冷却時間を短縮することも考えられるが、特許文献2に記載のワーフ散水装置の設置には、費用が掛かる。また、監視人を、常時、待機させるのは、労力がかかる。
高炉に供給されるコークスの水分を低く抑え、かつ、ワーフでの乾燥空冷処理時間を短くすることが望まれる。本発明では、高炉に供給されるコークスの水分を、ワーフでの乾燥空冷処理時間を20分以内で、5質量%以下を目標とする。
消火を確実に行う観点からは、コークスの最大温度は低めとし、水分を低減する観点からは最小温度を可能な限り高くすべきである。
しかし、コークス搭載ボックスに受骸される赤熱コークスの量は、20トン前後と極めて多く、消火後コークスの温度を均一化することは極めて困難である。温度が不均一となることを前提として、現実的に制御できる管理温度範囲を決めるべきである。
前記特許文献3では、消火後コークスの水分を目標値とするための、散水時間および散水流量を求めるためのモデルを構築している。しかし、高炉に供給されるコークスの水分を、ワーフでの乾燥空冷処理時間20分以内で、5質量%以下とするための具体的な温度については述べられていない。
前記特許文献4においては、赤熱コークスを散水冷却した後、コークス搭載ボックスに搭載される消火後コークスの温度分布および/または層高分布を、ワーフに払い出す直前に測定する。しかし、コークス搭載ボックス全面の層高分布を計測して、さらに散水条件に反映させるための処理を行うための時間が必要となり、コークス受骸、散水消火およびワーフへの払い出しという1つのサイクルが完了するまでの時間が長くなってしまう。結果的にコークス生産性を低下させてしまう。また、計測機器の設置場所を考慮しないとならない。この場合、コークス搭載ボックスの受骸面全体を計測する必要があり、受骸面と計測機器の距離を、ある程度以上、設ける必要がある。既設のコークス炉に設置する場合、コークス搭載ボックスの上方に計測機器設置のためのスペースがあることが前提となる。また、コークス搭載ボックス周辺は粉塵が多く、温度も高いため、計測機器の保護も考慮しないとならない。このような理由で、コークス搭載ボックス内にあるコークスの層高分布および温度分布を測定することは困難で、これらの計測を行わなくとも、赤熱コークスを確実に消火するとともに、ワーフでの乾燥空冷処理時間が20分以内という条件の下で水分5質量%以下のコークスを製造することが求められる。
従来のコークス炉において、消火設備の設置場所は、コークスガイド車との干渉を避けるためコークス炉の端に限られる。消火設備がコークスガイド車と干渉するのは、コークスガイド車の集塵フードと消火室の側壁(3面)および散水配管が干渉するからである。これらの設備干渉を回避することができれば、消火設備を炉団中央に設置し、コークス窯から押し出された赤熱コークスが、消火貨車により消火設備まで移動させる時間を短縮できる。移動時間の短縮により、押し出し作業、押し出し窯から消火設備への移動、赤熱コークスの消火、消火コークスのワーフへの払い出しといった一連の作業にかかる時間を大幅に短縮でき、高炉での必要なコークスを生産できる。
更に、コークス炉は老朽化した設備が多く、消火貨車およびコークス搭載バケットが走行する軌条で異常が発生することもある。このような場合でも、異常が発生した軌条と逆の炭化室側に消火貨車がある場合には、炭化室からの押し出しや消火貨車の走行は継続できる。
本発明の目的は、コークス水分を低下させ、かつ、設備耐熱温度を超えない程度にコークス温度を制御する赤熱コークスの湿式消火方法を提供することである。
(1)炭化室から押し出された赤熱コークスを、消火貨車に牽引されるコークス搭載ボックスに受骸した後、消火設備内の散水配管から、該コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲に散水処理することにより赤熱コークスを消火する方法において、消火完了後、ワーフに払い出されるコークスの最小温度が、60℃以上であり、最大温度が、400℃、またはワーフ後段の搬送設備耐熱温度+165℃の温度のいずれか低い方の温度以下であることを特徴とする赤熱コークスの湿式消火方法。
(2)前記最小温度が60℃以上80℃以下であることを特徴とする(1)に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(3)前記搬送設備耐熱温度が150℃以上250℃以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(4)前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、端部Aおよび端部Bへの散水量を、中央部への散水量の0.4以上0.8以下とすることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(5)前記コークス搭載ボックスの幅方向全長を1としたとき、前記端部Aおよび端部Bにおける該コークス搭載ボックス幅方向への散水を、該コークス搭載ボックスの傾斜した底板の上端を起点として、0.0以上0.8以下の範囲のみに行うことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(6)赤熱コークスを炭化室からコークス搭載ボックスに押し出す際、押し出し装置に装備されたプッシャーラムの先端に温度センサーを常設して、押し出し時の炭化室内温度を計測し、該炭化室内温度を基に、赤熱コークスの散水流量を調整することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(7)コークス搭載ボックスに受骸された赤熱コークスに向けて、前記コークス搭載ボックスの傾斜した底板の下端の直上、またはその近傍に、2段以上4段以下の異なる高さに、配置された散水配管より、斜め下方向に消火水を散水することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(8)散水処理時における1m2当たりの散水流量が、平均で0.5t/分以上1.5t/分以下であることを特徴とする(7)に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(9)前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、前記端部A、前記中央部、前記端部Bの散水配管が、ルーズフランジを介して接続され、該散水配管の散水角度が、場所ごとに設定されることを特徴とする(7)又は(8)に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(10)前記中央部の前記散水配管の散水角度が、前記端部Aおよび前記端部Bの散水角度に対して下向きであることを特徴とする(7)乃至(9)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
(11)散水処理時における前記散水配管の内部の圧力が、10kPa以上40kPa以下であることを特徴とする(7)乃至(10)のいずれか一つに記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
ここで、「消火設備は、コークス炉団の中央位置に配置されており」とは、燃焼室と炭化室が、交互にそれぞれ複数配列され、同一の移動機を共有するコークス炉団の中央位置に消火設備を設置することを意味する。
<第1の実施の態様>
本発明の第1の実施の態様は、赤熱コークスの湿式消火において、散水後のコークスの最小温度と最大温度を管理すること、および、散水方法の改善により、コークス水分を低下させ、かつ、コークス搬送設備の保全を図る実施の態様である。
本発明の赤熱コークスの湿式消火では、消火完了後のワーフに払い出されるコークスの最小温度が、60℃以上であり、最大温度が、400℃、またはワーフ後段の搬送設備耐熱温度より165℃を超える温度のいずれか低い方の温度以下に管理する。最小温度を60℃以上とすることにより、ワーフでの乾燥空冷処理時間を20分以内としても水分5質量%以下のコークスを製造できる。
ここでいう湿式消火後のコークスの温度は、湿式消火した後、ワーフに払い出されるコークスの温度とする。ワーフに払い出されるコークスの温度計測は、コークス搭載ボックス内の温度計測と比べ、計測環境が良好で容易に行うことができる。また、温度の計測を連続測定が可能な赤外線サーモビューワで行えば、ワーフ全面に払い出されるコークスの温度を、連続的に計測でき、コークス搭載ボックス内の温度計測と比べ、湿式消火したコークスの温度を正確に知ることができる。
消火を確実に行う観点からは、コークスの最大温度は低めとすべきではあるが、水分を低減する観点からは最小温度を可能な限り高くする必要がある。しかし、コークス搭載ボックスに受骸される赤熱コークスの量は、約20トンと極めて多く、消火後コークスの温度を均一化することは極めて困難である。温度が不均一となることを前提として考えるべきである。このため、搬送設備に払い出されるコークスの中には100℃を超えるコークスも多く含まれる。従って、高炉への搬送設備の耐熱温度は、150℃以上は必要である。これにより、100℃を超えるコークスがベルトに排出されたとしても焼損は抑制できる。但し、250℃よりも高くする必要はない。耐熱温度が250℃であれば、コークス搭載ボックスからワーフに払い出されるコークスの温度は、最大、415℃まで対応できる。しかし、前述したように、400℃を超えた場合、コークスは赤熱したままの状態であり、ベルトまたは、その後段の設備で、空気と接触してコークス自身が燃焼することが懸念される。したがって、コークス搭載ボックスから払い出された時点で、400℃を超えているコークスを、そのまま搬送設備に払い出すことは、極めて危険で、実施すべきでない。したがって、搬送設備の耐熱温度は250℃よりも高くする必要はない。
また、ワーフでの乾燥空冷初期の10分は、特に温度低下が大きいことから、ワーフでの乾燥空冷処理は、10分は必要である。
図4は、コークス炉炭化室と関連する移動装置の配備状態を示した断面図である。赤熱コークス3をコークス搭載ボックス5に押し出す際、炭化室1の両側にある炉蓋を取り外し、一方に炭化室1の断面形状に合わせた押し板を有するプッシャーラム21を装備した押し出し機を、他方には赤熱コークス3を受骸する消火貨車4に牽引されるコークス搭載ボックス5および赤熱コークスをコークス搭載ボックス5に誘導するためのガイド車2を配備している(コークス搭載ボックスの進行方向からみた図である)。押し出しの開始とともに、コークス搭載ボックス5の広い範囲で赤熱コークス3を受骸するよう、コークス搭載ボックスの走行が開始される。
図6は、消火設備7に消火貨車4が引き込まれた状態を、消火貨車の進行方向に対して垂直位置(横方向)から見た図である。初期の押し出しにおいては、押し出される赤熱コークス3の量が少ないこと、末期においては炭化室1に残留する赤熱コークスが少ないといった理由で、コークス搭載ボックス5に受骸されるコークスは、中央部で高く、端部Aおよび端部Bでは低くなる。また後述する図8も同様である。また、端部Aおよび端部Bで受骸される赤熱コークスは、炭化室の両端に存在して乾留処理されたため、中央部の赤熱コークスと比べ、温度は低くなる。従って、端部Aおよび端部Bでの必要な散水量は、中央部と比べ少なくなる。
端部と中央部との長さの比率は、端部A/中央部比は0.6〜1.0、端部B/中央部比は0.6〜1.0程度とする。
図5は、消火貨車4が消火設備7に引き込まれた状態を、消火貨車の進行方向(前後方向)から見たものである。消火貨車4に備えられたコークス搭載ボックス5の底板19は、消火貨車4の幅方向に所定の角度αで傾斜し、その上に赤熱コークス3が積載されている。赤熱コークス3を消火するための散水配管はコークス搭載ボックス5の上方に設置されている。消火設備7は、消火水12が貯留されたヘッドタンク11と、ヘッドタンク11から延設された散水配管13と、散水配管13に設置されたバルブ14と、散水配管13から分岐した散水配管に取り付けたバルブ14−1〜14−3と、さらに分岐した散水配管先端に取り付けられた散水ノズル15とを備えている。散水配管はコークス搭載ボックス5の幅方向に分岐され、各々の場所への散水量をバルブ14−1、14−2および14−3の開閉により制御する。
中央部でも同様に、下端付近にある赤熱コークス3は上方から下面に流れ落ちる消火水12により冷却される。しかし、中央部では端部Aおよび端部Bと比べ赤熱コークスの量が多く、コークス温度が高いため、上方から流れ落ちてくる消火水だけでは、冷却は不十分である。そのため、中央部においては下端付近への散水は必要となる。
通常操業においては、散水流量は一定とすることが好ましい。散水流量変更の操作が複雑となるためである。しかし、コークス炉でのトラブル等により乾留時間が、通常よりも長くなることがある。その際、コークス搭載ボックスに受骸される赤熱コークスの温度は変化する。それに応じて散水量を変えるべきである。
赤熱コークスの温度は、特許文献4に記載するように実計測することが望ましいが、前述したようにコークス温度分布の測定は容易でない。本発明では、図4に示すプッシャーラム21の先端に常設され、炭化室内の温度を計測する温度センサー22による計測値が、散水量を適正化するためのデータとして使用することができる。
本発明の第2の実施の態様は、コークス搭載ボックスに受骸された赤熱コークスに向けて、コークス搭載ボックスの傾斜した底板の下端の直上、またはその近傍に、2段以上4段以下の異なる高さに配置された散水配管より、斜め下方向に消火水を散水する態様である。
図7は、消火設備7に消火貨車4が引き込まれた状態を、消火貨車の進行方向(前後方向)から見たものである。
図8は、消火貨車の進行方向(前後方向)に対して垂直位置から見たものである。
<ワーフ払い出し直後の消火コークス温度とコークス水分>
赤熱コークスを散水消火した後、ワーフに払い出されるコークスの温度を、赤外線サーモビューワにより測定した。計測間隔1/10秒で連続計測した。払い出し完了後も計測を継続した。払い出し完了直後に、ワーフ内の複数箇所よりコークスを採取して、その水分を測定した。更に、10分、20分および30分後にも同じ場所からコークスを採取して水分を測定した。表1は試験条件および計測結果を示す。
試験例1−1は、ワーフ払い出し直後のコークス温度が54℃の場所からコークスを採取し、その水分変化を計測した。払い出し直後の水分は14.9質量%であった。その後、30分間、乾燥空冷処理を継続し、5分、10分、20分および30分後にも同じ場所からコークスを採取して水分を計測した。しかし、表1および図1に示したように乾燥空冷処理中、水分低下を確認できなかった。
試験例1−2は、ワーフ払い出し直後のコークス温度が62℃の場所からコークスを採取し、その水分変化を計測した。払い出し直後の水分は13.8質量%であったが、その後も乾燥空冷処理を継続したところ、表1および図1に示したように水分は徐々に低下して、20分後には4.7質量%まで低下した。即ち、ワーフ払い出し直後の温度を62℃以上とすれば、ワーフ乾燥空冷による水分低減を実現できる。
試験例1-3は、ワーフ払い出し直後のコークス温度が75℃の場所からコークスを採取し、その水分変化を計測した。払い出し直後の水分は9.7質量%であったが、表1および図1に示したように10分の乾燥空冷後は4.1質量%、20分後で3.3質量%まで低下した。
試験例1−4は、ワーフ払い出し直後のコークス温度が120℃の場所からコークスを採取し、その水分変化を計測した。当然ではあるが、払い出し直後から水分は2.7質量%と低かった。表1に示すように乾燥空冷処理によって水分はさらに減少した。しかし、ワーフに払い出される全てのコークスを120℃以上とすることは極めて困難である。この温度を高く維持する場合、コークス全体の温度が上昇し、最大温度も高くなる。この場合、ワーフ乾燥空冷中にコークス温度が十分に下がらず、高炉搬送用ベルトを焼損させてしまうことが懸念される。
試験例1-2および試験例1-3の結果から、ワーフに払い出されるコークスの温度が100℃未満でも、ワーフでの乾燥空冷により水分が減少することが分かった。そして、ワーフに払い出されるコークスの温度が60℃以上であれば、ワーフへの払い出し20分後には5質量%以下に低下することが分かった。乾燥空冷処理は一般的には30〜40分と言われているが、20分以内に短縮できれば、乾燥空冷処理に必要なワーフ面積を大幅に削減できる。
ワーフに払い出されたコークスの乾燥空冷処理によるコークスの温度変化を測定した。表2に測定結果を示す。図2に、表2で測定したコークスの乾燥空冷処理によるコークスの温度変化を示す。
払い出し時の温度が338℃のコークスは、乾燥空冷処理により冷却され、10分後には227℃、20分後には172℃まで低下した。即ち、10分間で111℃、20分間では166℃の温度低下が確認された。後段の高炉への搬送設備の焼損を抑制する観点から、ワーフでの乾燥空冷期間中、コークスを、高炉への搬送設備の耐熱温度よりも低い温度に冷却することは必須である。本試験結果から、ワーフでの乾燥空冷処理時間を20分以内とするのであれば、ワーフに払い出されるコークスの最大温度は、搬送設備耐熱温度より超える範囲を165℃以下とすればよい。例えば、耐熱温度180℃の搬送設備を使用した場合、ワーフに払い出されるコークスの最大温度は345℃以下とすればよい。また、コークスの最大温度を291℃未満に抑えることができれば、乾燥空冷処理時間10分でも搬送設備の耐熱温度未満に消火コークスを冷却できる。
図7は、第2の実施の態様において、消火設備7に消火貨車4が引き込まれた状態を、消火貨車の進行方向(前後方向)から見た図である。
コークス搭載ボックス5の幅wは5mで、1回当たりの赤熱コークス受骸量は25トンとした。コークス搭載ボックス5に搭載された赤熱コークス層高は、落下地点を頂点として、底板19の下端側に赤熱コークスが流れ込むような形状であった。コークス搭載ボックス5の底板19の傾斜角αは15°であった。散水配管17は、散水配管の開孔位置が、コークス搭載ボックス5の底板19下端側の端部直上となるようにして、高さ方向に3段配置した。コークス搭載ボックス5の上端部より、下段散水配管までの高さ距離h1は5m、中段散水配管までの高さ距離h2は5.7m、上段散水配管までの高さ距離h3は6.4mであった。散水配管17−1〜17−3には、散水孔18があり、各々の散水配管から2方向に散水されるように、散水角度α1およびα2を調整した。
試験例3-1ではコークス搭載ボックス5の幅方向のほぼ全体に散水を行うように散水角度α1およびα2を調整した。図7に示すようにコークス搭載ボックス5の傾斜した底板19の上端を起点(ゼロ)として、コークス搭載ボックスの幅方向長さの全長(w)を1とした場合、赤熱コークス3の層高が最も高い位置は0.35付近に存在し、その位置からコークス搭載ボックス5の底板19下端に向かって、なだらかに層高は低くなっていた。このような層高分布を考慮して、上段に位置する散水配管17-1からの散水は0.0〜0.2の範囲を、中段に位置する散水配管17-2からの散水は0.2〜0.6の範囲を、下段に位置する散水配管17-3からの散水は0.6〜0.9の範囲をねらい、散水配管の角度を調整した。散水中の配管内の圧力は、上段が5.3kPa、中段が11.0kPa、下段が17.5kPaであった。圧力より、上段、中段および下段からの散水量の比率は、0.234:0.337:0.429と推定され、下段の散水配管からの散水量が最も多いことが考えられる。
払い出し初期においては、コークスは十分に消火され、50℃未満まで過剰冷却されたコークスも多かった。初期に払い出されるコークスは、コークス搭載ボックス5の底板19下端付近に存在している。この部分におけるコークスの存在量は少ないにも関わらず、測定された散水圧力より消火水12が最も多く散水されたことが考えられる。そのため、コークスが過剰に冷却された。
試験例3−1においては、コークス搭載ボックス5の底板19の上端側への散水は不足、コークス搭載ボックス5の底板の下端側への散水は過剰であった。そこで、試験例3−2では、下段の散水配管17−3および中段の散水配管17−2の散水角度を試験例3−1よりも上向きとし、初期に払い出されるコークス(底板の下端付近のコークス)が過剰に冷却されないようにするとともに、赤熱コークス3の層高が最も高い箇所近傍への散水を強化した。上段に位置する散水配管17-1からは0〜0.2の範囲に、中段に位置する散水配管17−2からは0.2〜0.4の範囲に、下段に位置する散水配管17−3からは0.4〜0.7の範囲となるように散水配管の角度を調整した。散水中の配管内圧力は、上段が5.3kPa、中段が11.0kPa、下段が17.5kPaであった。散水圧より、上段、中段および下段からの散水量の比率は、0.234、0.337、0.429と推定される。コークス搭載ボックス1m2当りの散水流量(散水流量密度)は0.6t/分で、散水時間は78秒とした。トータル散水量は78tとした。1m2当り0.78tの消火水を散水した。端部A、中央部および端部Bへの散水量の比率は1:1:1とした。
初期の段階で、中央部より払い出されるコークスの温度が高かった。最大温度は379℃と、防災上、問題である。また、コークス搭載ボックス5の両端(端部Aおよび端部B)から払い出されるコークスの温度は、払い出し初期、中期および後期に関係なく60℃未満のものが多く存在していた。コークス水分を高くする原因と考えられる。
発明例3−1では、端部Aおよび端部Bの散水孔の数を減らしている。それにともない、散水圧は全体的に高くなった。そのため、散水配管の向きは全体的に下向きとした。その上で、以下のような試験を行った。
図11に、コークス搭載ボックス5よりワーフに払い出す際の、払い出し開始直後、払い出し中期および払い出し後期のそれぞれのコークスの温度を示す(発明例3−1)。
発明例3−1では、初期の段階において、中央部より払い出されるコークスの冷却を強化するため、下段の散水配管17−3においては、中央部に位置する散水孔のみを試験例3-2と比べ下向きとした。即ち、中央部のみコークス搭載ボックス5の底板19下端付近に散水されるようにした。一方、端部Aおよび端部Bに相当する部分の散水角度は、試験例3-2と同じとした。
端部Aおよび端部Bの散水孔数を減らすことにより、散水圧力は試験例3−1および3−2と比べ増加した。散水時の圧力は、上段が11.1kPa、中段が17.9kPa、下段が25kPaであった。散水圧より、上段、中段および下段からの散水量の比率は、上段/中段/下段=26/33/41と推定される。コークス搭載ボックス1m2当りの散水流量(散水流量密度)は0.6t/分で、散水時間は78秒とした。トータル散水量は78tとなる。従って、1m2当り0.78tの消火水を散水した。
図12〜図14は試験例3-1、3-2および発明例3-1において、ワーフに払い出されるコークスの温度とその累積比率を示す。60℃以下のコークスが占める割合は、試験例3−1では36%、試験例3−2では9%、発明例3−1では0%であった。また、発明例3−1では、最大温度は162℃であるのに対し、試験例3−1や試験例3−2では、300℃以上のコークスも多かった。このため、表3に示すように試験例3−2ではワーフに払い出されるコークスの平均温度は107℃と、発明例3-1と比べ高かった。それにも関わらず、発明例3−1で最もコークス水分が低くなった理由として、最小温度が他と比べ高かったことが挙げられる。最小温度は63℃であったため、図1に示す結果より、ワーフに払い出された全てのコークスが、乾燥空冷処理中に水分を蒸発したと考えられる。また、ワーフに払い出されるコークスの温度が100℃を超えると、払い出された時点で、極めて低い水分となっていることが考えられる。従って、100℃を超えた範囲では、更に温度を高くしても、水分に大きな違いはないと思われる。例えば、120℃と比べ150℃のコークスは、水分は低くなると考えられるが、120℃でも十分に低くなっていると考えられることから、150℃と大きな違いはないと考えられる。それよりも100℃よりも低い温度を少なくすべきである。特に、乾燥空冷処理による水分低減が期待できない60℃未満のコークスの比率を減らすことが重要である。従って、発明例3−1のように、最小温度を60℃以上とすることが有効である。
ケース1は、図15に示すように炉団の端に消火設備を設置することを想定した。最も近いNo.1炭化室から消火設備までの移動距離は片道20mとした。隣接するNo.2炭化室との距離は1.5m、即ち、No.2炭化室から消火設備までの移動距離は21.5m、最も離れたNo.160炭化室と消火設備の距離は258.5mとなる。160基の炭化室から押し出しを完了するまでに消火貨車が走行する距離はトータルで44.6km(往復)となる。消火貨車およびコークス搭載ボックスの走行速度を100m/分(6km/h)とすると、走行時間はトータル7.4時間となる。
ケース2は、図16に示すように炉団の中央、即ち、No.80炭化室とNo.81炭化室の間に消火設備を設置することを想定した。最も消火設備に近いNo.80炭化室およびNo.81炭化室から消火設備までの移動距離は20mとした。隣接する炭化室との距離は1.5mで、消火設備から最も遠い位置にあるNo.1炭化室または160炭化室までの距離は、各々、138.5mとなる。消火貨車およびコークス搭載ボックスの移動距離はトータル25.4km(往復)となり、ケース1よりも19.2km短くできる。消火貨車およびコークス搭載ボックスの走行速度を100m/分(6km/h)とすると、1日のトータル走行時間は4.2時間で、ケース1と比べ3.2時間の短縮が可能となる。
消火貨車4が、赤熱コークスを搭載して走行するのは、炭化室1から消火設備7に移動する走行時間の1/2であるから、1.6時間の短縮となる。空気に触れ燃焼する赤熱コークスの量を、43%減少させることが可能となる。
表4にケース1(図15)とケース2(図16)の比較をまとめた。
また、コークス炉は老朽化した設備が多く、消火貨車およびコークス搭載バケットが走行する軌条6で異常が発生することもある。例えば、図15のAで異常があった場合、ケース1では、消火貨車およびコークス搭載ボックスの走行が全く不可能となる。一方、ケース2の場合、図16のBの場所で異常があったとしても、ワーフ8−1〜8−3を消火設備の両側に配置しておけば、No.1〜80窯から押し出しを行い、赤熱コークスを消火して、ワーフに払い出すことは可能である。その間に、Bの場所で発生した異常に対処することも可能である。このような場合、ケース1では、両端に消火設備を設置することで対処することも可能だが、消火設備を2基設置しないとならないので経済的でない。また、設置のための面積も考慮しないとならない。
2:ガイド車
3:赤熱コークス
4:消火貨車
5:コークス搭載ボックス
6:軌条
7:消火設備
8;ワーフ
9:コークス
10:搬送設備
11:ヘッドタンク
12:消火水
13:散水配管
14:バルブ
14-1:バルブ
14-2:バルブ
14-3:バルブ
15:散水ノズル
16:払い出しゲート
17-1:散水配管(上段)
17-2:散水配管(中段)
17-3:散水配管(下段)
18:散水孔
19:底板
20:ルーズフランジ
21:プッシャーラム
Claims (11)
- 炭化室から押し出された赤熱コークスを、消火貨車に牽引されるコークス搭載ボックスに受骸した後、消火設備内の散水配管から、該コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲に散水処理することにより赤熱コークスを消火する方法において、
消火完了後、ワーフに払い出されるコークスの最小温度が、60℃以上であり、最大温度が、400℃、またはワーフ後段の搬送設備耐熱温度+165℃の温度のいずれか低い方の温度以下であることを特徴とする赤熱コークスの湿式消火方法。 - 前記最小温度が60℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 前記搬送設備耐熱温度が150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、端部Aおよび端部Bへの散水量を、中央部への散水量の0.4以上0.8以下とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 前記コークス搭載ボックスの幅方向全長を1とし、前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、前記端部Aおよび前記端部Bにおける該コークス搭載ボックスの幅方向への散水を、該コークス搭載ボックスの傾斜した底板の上端を起点として、0.0以上0.8以下の範囲のみに行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 赤熱コークスを炭化室からコークス搭載ボックスに押し出す際、押し出し装置に装備されたプッシャーラムの先端に温度センサーを常設して、押し出し時の炭化室内温度を計測し、該炭化室内温度を基に、赤熱コークスの散水流量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- コークス搭載ボックスに受骸された赤熱コークスに向けて、前記コークス搭載ボックスの傾斜した底板の下端の直上、またはその近傍に、2段以上4段以下の異なる高さに、配置された散水配管より、斜め下方向に消火水を散水することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 散水処理時における1m2当たりの散水流量が、平均で0.5t/分以上1.5t/分以下であることを特徴とする請求項7に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、前記端部A、前記中央部、前記端部Bの散水配管が、ルーズフランジを介して接続され、該散水配管の散水角度が、場所ごとに設定されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 前記コークス搭載ボックス内の赤熱コークス存在範囲を消火貨車進行方向に、端部A、中央部、端部Bに3区分したとき、前記中央部の前記散水配管の散水角度が、前記端部Aおよび前記端部Bの散水角度に対して下向きであることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
- 散水処理時における前記散水配管の内部の圧力が、10kPa以上40kPa以下であることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載の赤熱コークスの湿式消火方法。
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