1.概説
本明細書に記載する本発明は、非胚性幹細胞(例、成体幹細胞)を非胚性組織(例、成体組織又は臓器)から単離する、及び/又は培養において維持する方法に関する。様々な組織又は臓器からこのように単離される非胚性幹細胞(例、成体幹細胞)は、インビトロで無限に自己複製又は増殖することができて、多能性であって、その幹細胞が単離される組織又は臓器内で通常見出される様々な分化細胞種へ分化することができる。このように単離される非胚性幹細胞(例、成体幹細胞)を含む培養物(インビトロ培養物が含まれる)も、本発明の範囲内にある。
加えて、この単離された幹細胞は、単一の単離された幹細胞のクローン増殖を介して増殖させて、そのクローン内の少なくとも約40%、70%、又は90%以上の細胞を単一細胞起源のクローンとしてさらに継代し得るクローンを(例えば、インビトロ培養物として)産生することができる。従って、本発明の方法を使用して単離される幹細胞は、感染又はトランスフェクションによる外因性遺伝物質の導入など、標準的な分子生物学技術によりインビトロで操作することが独自に可能である。
従って、1つの側面において、本発明は、非胚性組織から非胚性幹細胞を単離するための方法を提供し、該方法は、(1)(a)ノッチ(Notch)アゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト;(d)Wntアゴニスト;(e)マイトジェニック増殖因子;及び(f)インスリン又はIGFを含み、(g)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);及び(h)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体の少なくとも1つをさらに含んでもよい培地において、非胚性組織より解離した上皮細胞を、致死照射フィーダー細胞の第一集団と基底膜マトリックスと接触させて培養して、上皮細胞クローンを生成する工程:(2)この上皮細胞クローンから単一細胞を単離する工程、及び、(3)工程(2)からの単離された単一細胞を、前記培地において致死照射フィーダー細胞の第二集団と第二の基底膜マトリックスと接触させて個別に培養して、単一細胞クローンを生成して(ここでこの単一細胞クローンのそれぞれは、非胚性幹細胞のクローン増殖物である)、それによって非胚性幹細胞を単離する工程を含む。
あるいは、本発明は、非胚性組織から非胚性幹細胞を単離するための方法を提供し、該方法は、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);(d)Wntアゴニスト;(e)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体;(f)マイトジェニック増殖因子;及び(g)インスリン又はIGFを含み、(h)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストを任意にさらに含んでもよい培地において、非胚性組織より解離した上皮細胞を、致死照射フィーダー細胞の第一集団と基底膜マトリックスと接触させて培養して、上皮細胞クローンを生成する工程;(2)この上皮細胞クローンより単一細胞を単離する工程、及び(3)工程(2)からの単離された単一細胞を、前記培地において致死照射フィーダー細胞の第二集団と第二の基底膜マトリックスと接触させて個別に培養して、単一細胞クローンを生成し(ここでこの単一細胞クローンのそれぞれは、非胚性幹細胞のクローン増殖物である)、それによって非胚性幹細胞を単離する工程を含む。
関連した側面において、本発明は、本発明の単離法を使用して入手される非胚性幹細胞を培養するための方法を提供し、該方法は、単離された単一細胞又は単一細胞クローンを、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト;(d)Wntアゴニスト;(e)マイトジェニック増殖因子;及び(f)インスリン又はIGFを含み、(g)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えば、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);及び(h)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体の少なくとも1つを任意にさらに含んでもよい培地などの主題の培地において、致死照射フィーダー細胞の集団および基底膜マトリックスと接触させて培養する工程を含む。
あるいは、本発明は、本発明の単離法を使用して入手される非胚性幹細胞を培養するための方法を提供し、該方法は、単離された単一細胞又は単一細胞クローンを、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えば、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);(d)Wntアゴニスト;(e)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体;(f)マイトジェニック増殖因子;及び(f)インスリン又はIGFを含み、(h)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストを任意にさらに含んでもよい培地において、致死照射フィーダー細胞の集団および基底膜マトリックスと接触させて培養する工程を含む。
なお別の関連した側面において、本発明は、本発明の単離法を使用して入手される非胚性幹細胞のインビトロ培養物を提供する。特定の態様において、インビトロ培養物は、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト;(d)Wntアゴニスト;(e)マイトジェニック増殖因子;及び(f)インスリン又はIGFを含み、(g)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えば、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);及び(h)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体の少なくとも1つを任意にさらに含んでもよい培地などの主題の培地において、致死照射フィーダー細胞の集団および基底膜マトリックスと接触した、単離された単一細胞又は単一細胞クローンを含む。
あるいは、本発明は、本発明の単離法を使用して入手される非胚性幹細胞のインビトロ培養物を提供する。特定の態様において、インビトロ培養物は、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えば、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);(d)Wntアゴニスト;(e)ニコチンアミド又はその類似体、前駆体、又は模倣体;(f)マイトジェニック増殖因子;及び(f)インスリン又はIGFを含み、(h)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストをさらに含んでもよい培地などの主題の培地において、致死照射フィーダー細胞の集団および基底膜マトリックスと接触した、単離された単一細胞又は単一細胞クローンを含む。
特定の態様において、非胚性組織は、立方又は円柱上皮組織である。特定の態様において、非胚性組織は、皮膚のような重層上皮組織ではない。特定の態様において、非胚性組織は、成体肺からのものである。
非胚性幹細胞を単離して培養するための本発明の方法については、第2節(幹細胞を入手する、及び/又は培養するための方法)においてさらに詳しく記載する。
本明細書に使用するように、「非胚性幹細胞」には、成体組織又は臓器から単離される成体幹細胞と、出生前の組織又は臓器から単離される胎児幹細胞が含まれる。
特定の態様において、本明細書に記載する本発明の方法は、成体組織又は臓器から成体幹細胞を単離する。
関連した態様において、本明細書に記載する本発明の方法は、胎児又は出生前の組織又は臓器から胎児幹細胞を単離する。特定の態様において、胎児組織又は臓器が幹細胞の供給源である場合、本発明の方法は、特に、胎児がヒト胎児である場合、胎児を破壊しないし、あるいは、胎児の正常な発達を損なわない。他の態様において、胎児組織の供給源は、堕胎胎児、死亡胎児、浸軟胎児の試料、又はそれらより切除した細胞、組織、又は臓器より入手される。
当該技術分野では、胎児組織を入手するための方法がよく知られている。例えば、ヒトでは、パーキンソン病、糖尿病、重症複合免疫不全症、ディ・ジョージ症候群、再生不良性貧血、白血病、サラセミア、ファブリー病、及びゴーシェ病が含まれるいくつかのヒト障害において、ヒト胎児組織移植が試行されてきた。免疫不全障害では、免疫機能の回復と長期の患者生存が達成されてきた(「倫理及び法的問題評議会と科学問題評議会の合同報告(Joint Report of the Council on Ethical and Judicial Affairs and the Council on Scientific Affairs)」、A-89「胎児組織移植の医学的応用(Medical Applications of Fetal Tissue Transplantation)」を参照のこと)。
本発明の方法は、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長動物、齧歯動物(限定されないが、マウス、ラット、フェレット、ハムスター、モルモット、ウサギが含まれる)、家畜動物(限定されないが、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダが含まれる)、鳥類、爬虫類、魚類、ペット又は他の伴侶動物(例、ネコ、イヌ、トリ)又は他の脊椎動物、等からの組織を含めて、非胚性幹細胞を含有するどの動物組織にも適用可能である。
非胚性組織は、限定されないが、胃、小腸、結腸、腸上皮化生、輸卵管、腎臓、膵臓、膀胱、食道、又は肝臓、又はその一部/切片が含まれる、動物のどの部分からも入手し得るか又はそれらに起源がある。
特定の態様において、非胚性組織は、上皮組織を含む組織より入手される。特定の態様において、非胚性組織は、GI管より入手される。
特定の態様において、非胚性組織は、組織又は臓器の一部より入手される。例えば、非胚性組織は、小腸の十二指腸部分、又は小腸の空腸部分、又は小腸の回腸部分から単離してよい。非胚性組織はまた、大腸の盲腸部分、又は大腸の結腸部分、又は大腸のS状結腸、又は大腸の直腸部分から単離してよい。非胚性組織は、胃の大彎、小彎、胃角、噴門、胃体、胃底、幽門、幽門洞、又は幽門管から単離してよい。さらに、非胚性組織は、肺の上気道又は末梢気道から単離してよい。
特定の態様において、非胚性組織は、健常又は正常な個体から単離される。
特定の態様において、非胚性組織は、疾患組織(例、疾患によって影響を受けている組織)、障害組織(例、障害によって影響を受けている組織)、又は他のやり方で異常状態を有する組織から単離される。
本明細書に使用するように、「疾患」という用語には、生物体の身体に影響を及ぼす異常状態又は医学的状態が含まれて、通常は特異的な症状及び徴候に関連している。疾患は、外的要因によって引き起こされる(感染症のように)場合もあれば、内的機能不全によって引き起こされる(自己免疫疾患のように)場合もある。広い意味で、「疾患」には、疼痛、機能不全、不安、社会問題、又は罹患者に対する死、又は罹患者と接触している人々に対する同様の問題を引き起こすどの状態も含めてよい。この広義において、それには、損傷、能力障害、身体障害、症候群、感染症、隔離症状、逸脱行動、構造及び機能の非典型的な変化を含めてよいが、他の文脈では、そして他の目的では、これらを識別可能なカテゴリーとみなしてよい。
「障害」という用語には、精神障害、身体障害、遺伝的障害、情緒障害と行動障害、及び機能障害のような機能の異常又は障害、又は感染性微生物によって引き起こされない身体障害(例えば代謝障害など)が含まれる。このように、疾患、障害、及び他の異常状態の概念は、必ずしも相互排他的ではない。
特定の態様において、非胚性組織は、疾患、障害、又は他のやり方で異常な状態を有する個体から単離されるが、非胚性組織それ自体は、該疾患、障害、又は異常状態ではなくてよい。例えば、非胚性組織は、肺癌を有する患者から単離してよいが、肺癌にすでになっているわけではない、肺の健常部分から単離してもよい。特定の態様において、非胚性組織は、該疾患、障害、又は異常組織の近傍にあっても、それから離れていてもよい。
特定の態様において、非胚性組織は、個体が疾患、障害、又は他の異常な状態をまだ発症してなくても、又は該疾患、障害、又は他の点で異常な状態の検出可能な症状をまだ表出していなくても、例えば、個体の遺伝的構成、家族歴、生活様式選択(例、喫煙、食生活、運動習慣)に基づけば、該疾患、障害、又は他の点で異常な状態を発症する素因があるか又は該疾患、障害、又は他の点で異常な状態を発症するリスク状態にある該個体から単離される。
本発明の方法を使用して、疾患、障害、又は異常状態の種類、重症度、度合い、又は段階に顧慮することなく、どの疾患、障害、又は異常状態を有する対象の組織又は臓器からも非胚性幹細胞を単離することができる。代表的な疾患、障害、又は異常状態のリストは、制限無しに、感染症、遺伝病、食品媒介病、食品媒介病又は食中毒、病原性細菌、毒素、ウイルス、プリオン、又は寄生虫によって引き起こされる疾患、伝染病、非伝染病、空気伝染病、生活習慣病、精神障害、器質性疾患、腺腫、癌腫、腺癌、癌、固形腫瘍、血液疾患、炎症性腸疾患(例、クローン病、潰瘍性大腸炎)、潰瘍、胃疾患、胃炎、食道炎、膀胱炎、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎、膵炎、肝炎、炎症性障害(例、I型糖尿病、糖尿病性腎障害)、嚢胞性線維症、及び自己免疫障害を含む。
特定の態様において、癌は、卵巣癌、膵臓癌(例えば膵管癌など)、肺癌(例えば肺腺癌など)、又は胃癌(例えば胃腺癌など)である。特定の態様において、癌は、ヒト患者に由来する(例えば、患者から外科的に除去された癌、又は患者からの生検)か又はヒト癌細胞系又は原発癌細胞を使用して免疫抑制動物(例、マウス)において成長させた異種移植片腫瘍に由来する。
本発明の別の側面は、本発明の方法のいずれにも従って単離される非胚性幹細胞、又はそのインビトロ培養物を提供する。
例えば、非胚性幹細胞は、成体又は胎児の幹細胞であってよい。非胚性幹細胞は、ヒトから単離されても、上記に記載される非ヒト動物、哺乳動物、脊椎動物のいずれに由来してもよい。非胚性幹細胞は、限定されないが、胃、小腸、結腸、腸上皮化生、輸卵管、腎臓、膵臓、膀胱、食道、又は肝臓、又はその一部/切片を含めて、上記に記載のものが含まれる、動物のいずれの部分からも単離されてよい。非胚性幹細胞は、健常個体からも、疾患、障害、又は他の異常な状態であるか又は発症の危険性が高くなるようにした個体からも単離してよい。
なお別の側面において、さらに本発明は、単離された非胚性幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供し、ここでその単一細胞クローン内の少なくとも約40%、50%、60%、70%、又は約80%の細胞は、単一細胞として単離される時に、増殖して単一細胞クローンを産生することが可能である。
それぞれの単一細胞クローンは、増殖の段階と他の増殖状態に依拠して、少なくとも約10、100、103、104、105、106個以上の細胞を含み得る。
関連した側面において、本発明は、単離された非胚性幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供し、ここでその非胚性幹細胞は、単一細胞として単離される時に、約50世代より多く、約70世代より多く、約100世代より多く、約150世代より多く、約200世代より多く、約250世代より多く、約300世代より多く、約350世代より多く、若しくは約400世代又はそれ以上の世代で自己複製が可能である。
関連した側面において、本発明は、単離された非胚性幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供し、ここでその非胚性幹細胞は、その非胚性幹細胞が単離された非胚性幹細胞組織又はその非胚性幹細胞が存在する非胚性組織の分化細胞種へ分化することが可能である。
関連した側面において、本発明は、単離された非胚性幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供し、ここでその非胚性幹細胞は、SOX9、KRT19、KRT7、LGR5、CA9、FXYD2、CDH6、CLDN18、TSPAN8、BPIFB1、OLFM4、CDH17、及びPPARGC1Aより選択される1以上の幹細胞マーカーを発現する。
関連した側面において、本発明は、OLFM4、SOX9、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、CDH17、及びTSPAN8より選択される1以上のマーカーを発現する、小腸幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、SOX9、SOX2、CLDN18、TSPAN8、KRT7、KRT19、BPIFB1、及びPPARGC1Aより選択される1以上のマーカーを発現する、胃幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、SOX9、OLFM4、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、及びPPARGC1Aより選択される1以上のマーカーを発現する、結腸幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、SOX9、CDH17、HEPH、及びRAB3Bより選択される1以上のマーカーを発現する、腸上皮化生幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、SOX9、KRT19、KRT7、FXYD2、及びTSPAN8より選択される1以上のマーカーを発現する、肝幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、SOX9、KRT19、KRT7、FXYD2、CA9、CDH6、PDX1、及びALDH1A1より選択される1以上のマーカーを発現する、膵幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、KRT19、KRT7、FXYD2、及びCDH6より選択される1以上のマーカーを発現する、腎幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
関連した側面において、本発明は、ZFPM2、CLDN10、及びPAX8より選択される1以上のマーカーを発現する、輸卵管幹細胞の単一細胞クローン又はそのインビトロ培養物を提供する。
特定の態様において、インビトロ培養物は、本発明の培地(例、下記に記載するような本発明の改変培地)を含む。本発明の培地について記載する下記の節を参照のこと。そこに記載されるそれぞれの培地は、参照により本明細書に組み込まれる。
特定の態様において、非胚性幹細胞は、非胚性組織の分化細胞種へ分化することが可能である。例えば、本発明の単離された小腸幹細胞は、腸細胞(水と栄養素を吸収する、最も豊富な細胞種)、杯細胞(第二の主要細胞種であって、粘液を分泌する)、腸内分泌細胞(腸管ホルモンを分泌する)、及びパネート細胞(抗菌物質を分泌する)などの、小腸に通常見出される1以上の細胞種へ分化し得る。本発明の単離された上気道幹細胞は、繊毛細胞と杯細胞などの、肺の上気道に通常見出される1以上の細胞種へ分化し得る。本発明の単離された肺幹細胞は、I型肺細胞とII型肺細胞などの、肺上皮に通常見出される1以上の細胞種へ分化し得る。
特定の態様において、非胚性幹細胞は、そのような非胚性幹細胞の起源となる組織に見出される構造又は下部構造に類似した組織的構造体へ分化することが可能である。例えば、本発明の単離された小腸幹細胞は、小腸管の微絨毛に覆われた表面に類似した腸組織様構造体へ分化し得る。この腸組織様構造体の1つの特徴的な機能は、これらの分化腸細胞が、ビリンタンパク質と吸収機能に関与する多数の酵素(スクラーゼ−イソマルターゼ、ラクターゼ、マルターゼ−グルコアミラーゼ、アラニルアミノペプチダーゼが含まれる)を発現する刷子縁を形成することが可能であることである。
特定の態様において、非胚性幹細胞は、非胚性組織中の分化細胞種に関連したマーカー(複数)の発現を実質的に欠いている。例えば、特定の態様において、非胚性幹細胞は小腸幹細胞であって、ムチン/MUC又はPAS(杯細胞マーカー)、クロモグラニンA/CHGA(神経内分泌細胞マーカー)、リゾチーム/LYZ(パネート細胞マーカー)、MUC7、MUC13、及びKRT20より選択される、分化小腸細胞に関連した特定タンパク質マーカーの発現を欠いている。
特定の態様において、非胚性幹細胞は、核細胞質比が高い小円形細胞形状を特徴とする未熟な未分化形態を有する。例えば、培養時に似た形態を表出する、様々な単離された成体幹細胞クローンを見ること。
なお別の側面において、本発明は、非胚性幹細胞を単離する、及び/又は培養するための培地を提供し、該培地は、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト;(d)Wntアゴニスト;(e)マイトジェニック増殖因子;及び、(f)インスリン又はIGFを含む。
特定の態様において、該培地は、(g)TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤などのTGFβシグナル伝達経路阻害剤;及び、(h)ニコチンアミド、又はその前駆体、類似体、又は模倣体の少なくとも1つをさらに含む。
関連した側面において、本発明は、非胚性幹細胞を単離する、及び/又は培養するための培地を提供し、該培地は、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤);(d)Wntアゴニスト;(e)ニコチンアミド、又はその前駆体、類似体、又は模倣体;(f)マイトジェニック増殖因子;及び、(g)インスリン又はIGFを含む。
特定の態様において、該培地は、(h)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストをさらに含む。
本発明の様々な培地とその成分については、第3節(培地)と関連した第4節(代表的な培地成分のタンパク質配列)に記載されている。本発明の培地の様々な態様には、具体的には、上記の節と本明細書の他の部分において詳しく記載される態様のいずれも含まれる。
本発明のさらなる側面は、疾患、障害、又は異常状態を有して、治療の必要な対象を治療する方法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法のいずれも使用して、該対象中の疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織に対応する組織より非胚性(例、成体)幹細胞を単離する工程;(2)この成体幹細胞中の少なくとも1つの遺伝子の発現を改変して、改変した成体幹細胞を産生する工程;(3)この改変した成体幹細胞又はそのクローン増殖物を該対象へ再導入する工程を含み、ここで該疾患、障害、又は異常状態の少なくとも1つの有害効果又は症状は、該対象において緩和される。
例えば、この方法の工程(2)は、単離された成体幹細胞中の標的遺伝子の発現を増加させるか又は減少させる外来性DNA又はRNAを成体幹細胞へ導入することによって有効になり得る。当該技術分野で承認されている分子生物学技術のいずれも使用して、細胞中の遺伝子発現を(例えば、インビトロで、又はエクスビボで)改変することができる。このような方法には、制限無しに、ウイルス又は非ウイルスベースのベクターによるトランスフェクション又は感染を含めてよく、このベクターは、その標的細胞において機能不全であるか又は欠損しているタンパク質又はその機能性断片のコーディング配列をコードしてもよく、または、標的遺伝子の機能を妨害するRNA(アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、shRNA、リボザイム、等)をコード化してもよい。
最近の研究において、Marvilio et al. (Nature Medicine 12(12): 1397-1402, 2006) は、患者中の接合型表皮水疱症(非致死性の皮膚障害)が同患者から単離された遺伝子組換え成体表皮幹細胞の移植によって治療されることを報告した。この成体幹細胞は、成体幹細胞が依然として回復し得る、患者の相対的に健常な領域(即ち、手のひら)から(異なる方法を使用して)単離された。この遺伝子修飾には、単離された成体幹細胞を、該患者において欠損している遺伝子を外因的に発現するレトロウイルスベクターに感染させる工程が含まれた。次いで、このように調製した遺伝子的に矯正された培養表皮移植片を、患者の身体の外科的に準備された領域上へ移植した。正常レベルの機能性導入遺伝子の合成と適正なアセンブリがしっかり付着した表皮の発現とともに観測されて、それはフォローアップの期間(1年)の間、水疱、感染症、炎症、又は免疫応答も無く、安定であり続けた。
特定の態様において、成体幹細胞を単離する組織は、健常な対象由来である。好ましくは、健常な対象は、治療の必要な被験者とHLA型が適合している。
特定の態様において、成体幹細胞を単離する組織は対象由来であって、単離された成体幹細胞は、その対象に対して自己由来である。
特定の態様において、成体幹細胞を単離する組織は、疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織である。
特定の態様において、成体幹細胞を単離する組織は、疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織の近傍にある。
特定の態様では、対象中の疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織において少なくとも1つの遺伝子が低発現されていて、その改変した成体幹細胞では、その少なくとも1つの遺伝子の発現が増強される。
特定の態様では、対象中の疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織において少なくとも1つの遺伝子が高発現されていて、その改変した成体幹細胞では、その少なくとも1つの遺伝子の発現が抑制される。
別の側面において、本発明はまた、化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法のいずれも使用して、対象から成体幹細胞(癌幹細胞が含まれる)を単離する工程;(2)この成体幹細胞の細胞系を単一細胞クローン増殖により産生する工程;(3)該細胞系由来の被検細胞を複数の候補化合物と接触させる工程;及び、(4)該被検細胞において所定の表現型変化をもたらす1以上の化合物を同定する工程を含む。
本発明のこのスクリーニング法は、標的の同定及び確証のために使用し得る。例えば、治療の必要な患者から単離される成体幹細胞中の潜在的な標的遺伝子は、異常に機能して(高発現又は低発現のいずれか)、疾患、障害、又は異常状態に関連した表現型を引き起こす場合がある。本発明の方法を使用して単離される成体幹細胞のクローン増殖物を本発明のスクリーニング法へ処して、一連の潜在的な化合物(低分子化合物、等)について検査して、該表現型を矯正する、緩和する、又は逆転させる1以上の化合物を同定することができる。
別の態様では、疾患、障害、又は異常状態によって影響を受けている組織からのように、治療の必要な患者から成体幹細胞を単離してよい。本発明の方法を使用して単離される成体幹細胞のクローン増殖物を本発明のスクリーニング法へ処して、一連の潜在的な化合物(低分子化合物、又はsiRNAのライブラリーなどのあらゆるRNAベースのアンタゴニスト、等)について検査して、該表現型を矯正する、緩和する、又は逆転させることが可能である1以上の化合物を同定することができる。有効な化合物によって影響を受ける標的遺伝子は、例えば、マイクロアレイ、RNA−Seq、又はPCRベースの発現プロフィール解析によってさらに同定してよい。
本発明の方法を使用して単離される成体幹細胞とそのクローン増殖物は、どの毒性分析及び検査も特定の医薬品又は医療介入を受けるように個々の患者にあわせることができるように、毒性スクリーニング又は試験にさらに有用であり得る。
本発明の方法を使用して単離される成体幹細胞とそのクローン増殖物は、再生医療にも有用であり得て、ここでは、自家幹細胞又はHLA型適合健常ドナーから単離される幹細胞のいずれかを組織又は臓器へ分化するようにインビトロ、エクスビボ、又はインビボで誘導して、既存の状態を治療する、又はそのような状態が発症するのを防ぐ/遅らせることができる。そのような幹細胞は、誘導分化に先立って遺伝子操作してよい。
本発明の方法を使用して単離される成体幹細胞とそのクローン増殖物は、インビトロ又はインビボの疾患モデルにおいて使用し得る。例えば、単離された上気道幹細胞を気相液相界面(ALI)において分化するように誘導して、上気道上皮様構造を産生し得て、これは、本明細書に記載するスクリーニング法のいずれでも使用し得る。単離された成体幹細胞(例、ヒト由来のもの)はまた、SCID又はヌードのマウス又はラットへ導入して、本発明のスクリーニング法などの、インビボの方法を行うのに適したヒト化疾患モデルを確立することができる。
主題の幹細胞の代表的な使用例については、図1を参照のこと。
2.幹細胞を入手する、及び/又は培養するための方法
本発明の1つの側面は、上記に概して記載したように、非胚性組織から非胚性幹細胞を単離するための方法に関する。
具体的には、本発明の1つの工程は、非胚性組織より解離した細胞(例えば解離した立方上皮細胞など)を、致死照射フィーダー細胞の第一集団と細胞外マトリックス(例、基底膜マトリックス)と接触させて培養して、上皮細胞クローンを生成する工程を含む。
特定の態様において、この(上皮)細胞は、非胚性組織から、制限無しに、コラゲナーゼ、プロテアーゼ、ディスパーゼ、プロナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、アキュターゼ及び/又はトリプシンのどの1以上も含まれる、酵素での酵素消化により解離される。
これらの酵素又は機能等価物は、当該技術分野においてよく知られていて、ほとんどすべての場合において市販されている。
他の態様において、(上皮)細胞は、非胚性組織から、この(上皮)細胞の周囲にある細胞外マトリックスを溶かすことによって解離させてよい。本発明のこの態様に適した1つの試薬には、BD Biosciences(カリフォルニア州サンホセ)によってBDTM細胞回復溶液(Cell Recovery Solution)(BDカタログ番号:354253)として市販されている非酵素専用溶液が含まれ、これは、後続の生化学分析のために、BD MATRIGELTM基底膜マトリックス(Basement Membrane Matrix)上で培養した細胞の回復が可能である。
特定の態様において、フィーダー細胞は、マウス3T3−J2細胞などの、特定の致死照射された線維芽細胞を含み得る。フィーダー細胞は、基底膜マトリックス上にフィーダー細胞層を形成してもよい。
当該技術分野では、好適な3T3−J2細胞クローンがよく知られていて(例えば、Todaro and Green,「マウス胚細胞の培養時の成長の定量試験とその樹立系への開発(Quantitative studies of the growth of mouse embryo cells in culture and their development into established lines)」J. Cell Biol. 17: 299-313, 1963 を参照のこと)、容易に利用可能である。例えば、Waisman Biomanufacturing(ウィスコンシン州マジソン)は、cGMPガイドラインに従って産生されて検査される、被照射3T3−J2フィーダー細胞を販売する。これらの細胞は、元は、ハワード・グリーン(Howard Green)博士の研究室より、材料移管合意書の下に入手されて、そのベンダーによれば、例えば、皮膚遺伝子療法と創傷治癒の臨床試験を支援するのに十分な品質である。またこのベンダーによれば、3T3細胞の各バイアルは、十分に基準適合したクリーンルームにおいて製造されて、マイコプラズマフリーでエンドトキシンが低いと保証された、少なくとも3x106個の細胞を含有する。加えて、この細胞バンクについては、マウスウイルスが含まれる、外来性作用因子について十分に検査されてきた。これらの細胞は、角化細胞培養支援についてスクリーニングを受けており、マイトマイシンCを含有しない。
本発明の方法は、マウス線維芽細胞の3T3−J2クローンなどのフィーダー細胞の使用を提供する。一般に、どの特別な表現型にも限定されること無く、フィーダー細胞層は、幹細胞の培養を支援する、及び/又はその分化を阻害するためにしばしば使用される。一般的に、フィーダー細胞層とは、目的の細胞と同時培養されて、その増殖に適した表面を提供する単層の細胞である。フィーダー細胞層は、目的の細胞が増殖し得る環境を提供する。フィーダー細胞は、その増殖を防ぐために、有糸分裂的に不活性化される(例えば、(致死)照射又はマイトマイシンCでの処理によって)ことが多い。
特定の態様において、フィーダー細胞は、適正にスクリーニングされたGMP品質のヒトフィーダー細胞(例えば、本発明の臨床グレードの幹細胞を支援するのに十分なもの)である。GMP品質FBS含有培地において増殖させるGMP品質のヒトフィーダー細胞については、Crook et al. (Cell Stem Cell 1(5): 490-494, 2007, 参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
特定の態様において、フィーダー細胞は、幹細胞に欠失しているマーカーによって標識することができて、それにより幹細胞は、フィーダー細胞から容易に識別されて区別することができる。例えば、フィーダー細胞は、GFPなどの蛍光マーカー又は他の類似の蛍光マーカーを発現するように工学処理することができる。蛍光標識化フィーダー細胞は、例えば、FACSソーティングを使用して、幹細胞から単離することができる。
本発明の幹細胞をフィーダー細胞から分離するには、当該技術分野で知られているいくつかの物理的な分離法のいずれも使用してよい。そのような物理的な方法には、FACS以外に、特異的に発現されるマーカーに基づいた、様々な免疫アフィニティー法が含まれ得る。例えば、本発明の幹細胞は、それらが発現する特異的な幹細胞マーカーに基づいて、そのようなマーカーに特異的な抗体を使用して、単離することができる。
1つの態様において、本発明の幹細胞は、例えば、上記マーカーの1つに対する抗体を利用するFACSによって単離され得る。蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用して、特別な細胞種又は系統に特徴的なマーカーを検出することができる。当業者に明らかであるように、このことは、蛍光標識抗体を介して達成しても、一次抗体への結合特異性がある蛍光標識二次抗体を介して達成してもよい。好適な蛍光標識の例には、限定されないが、FITC、AlexaFluor(登録商標)488、GFP、CFSE、CFDA−SE、DyLight488、PE、PerCP、PE−AlexaFluor(登録商標)700、PE−Cy5(TRI−COLOR(登録商標))、PE−Cy5.5、PI、PE−AlexaFluor(登録商標)750、及びPE−Cy7が含まれる。この蛍光マーカーのリストは、例示としてのみ提供したのであって、限定的であることを意図しない。
当業者には、例えば、幹細胞に特異的な抗体を使用するFACS分析により、精製された幹細胞集団が提供されることが明らかであろう。しかしながら、いくつかの態様では、フィーダーに対して選択されるものなどの、他の同定可能なマーカーの1又はこれ以上を使用する、さらなる回数のFACS分析を実施することによって、この細胞集団をさらに精製することが好ましい場合もある。
フィーダー細胞の使用は、ある競合法では、フィーダーの存在によりその競合法における細胞の継代が複雑になり得るので、望ましくないとみなされる。例えば、当該細胞は、継代ごとにフィーダー細胞から分離されなければならず、各継代で、新しいフィーダー細胞が必要とされる。加えて、フィーダー細胞の使用は、所望される細胞のフィーダー細胞による汚染をもたらす場合がある。
しかしながら、本発明の単離された幹細胞は、単一細胞として継代されることが可能であって、事実、好ましくも単一細胞クローンとして継代されるので、フィーダー層の使用は、必ずしも本発明の短所とはならない。従って、継代の間のフィーダーによる汚染の潜在的なリスクは、消失しないとしても、最小化される。
特定の態様において、基底膜マトリックスは、ラミニン含有基底膜マトリックス(例、MATRIGELTM基底膜マトリックス(BD Biosciences))、好ましくは、増殖因子低下型である。
特定の態様において、基底膜マトリックスは、3次元成長を支援しないし、3次元成長を支援するのに必要な3次元マトリックスも形成しない。従って、基底膜マトリックスを蒔くときに、ドーム形状又は形態を形成して固化後もそのような形状又は形態を維持する(その形状又は形態は、3次元成長を支援するのに必要とされ得る)ように、基底膜マトリックスを支持体上に特定の形状又は形態で載せることは、通常は必要でない。特定の態様において、基底膜マトリックスは、平面又は支持構造(例えば、平底組織培養皿又はウェルなど)上に均等に分布させるか又は広げられる。
特定の態様において、基底膜マトリックスは、初めに融かして、冷たい(例、約0〜4℃)フィーダー細胞増殖培地で適正な濃度(例、10%)へ希釈して、平面上で蒔いて、適正なCO2含量(例、約5%)を有する組織培養インキュベーターにおいて37℃まで温めることによるようにして、固化させる。次いで、この固化した基底膜マトリックスの上面に致死照射(された)フィーダー細胞を適正な密度で蒔いて、定着したフィーダー細胞が基底膜マトリックスの上面において一晩で亜集密又は集密したフィーダー細胞層を形成するようにする。フィーダー細胞は、好ましくは高グルコース(例、約4.5g/L)を有して、L−グルタミンもピルビン酸ナトリウムも有さない組織培養用基礎培地(例えば、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1以上の抗生物質(例、1%ペニシリン−ストレプトマイシン)、及びL−グルタミン(例、約1.5mM、又は1〜2mM、又は0.5〜5mM、又は0.2〜10mM、又は0.1〜20mM)を含む培地(例、3T3−J2増殖培地)などのフィーダー細胞培地において培養される。
特定の態様において、非胚性組織から解離した細胞は、初めに、非胚性幹細胞の増殖を促進する本発明の培地(「改変増殖培地、」又は、単に「改変培地」)において、致死照射フィーダー細胞と基底膜マトリックスに接触させて蒔く。特定の態様において、本発明の改変培地は、ノッチアゴニスト、ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト、Wntアゴニスト、マイトジェニック増殖因子;及び、インスリン又はIGFを基礎培地に含み、そして該培地は、TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤)と、ニコチンアミド、又はその類似体、前駆体(例えば、ナイアシンなど)、又は模倣体の少なくとも1つ(片方又は両方)をさらに含んでもよい。あるいは、他の態様において、本発明の改変培地は、ノッチアゴニスト;ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;Wntアゴニスト;TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例、TGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤);ニコチンアミド、又はその類似体、前駆体(例えばナイアシンなど)、又は模倣体;マイトジェニック増殖因子;及び、インスリン又はIGFを基礎培地に含んで、そして該培地は、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストをさらに含んでもよい。
例示の(非限定的な)基礎及び改変培地については、その中の成分又は因子、その濃度範囲、特定の因子の組合せ、又はその変動例を含めて、下記の第3節にさらに詳しく記載する。
本発明の方法に従えば、上皮細胞コロニーは、供給源の組織から解離された細胞を主題の改変培地において培養してから数日(例、3〜4日、又は約10日)後に検出可能になる。
特定の態様では、上記の上皮細胞コロニーから、例えば酵素消化によって、単一細胞を単離してよい。この目的に適した酵素には、温かい0.25%トリプシン(Invitrogen, カタログ番号:25200056)などのトリプシンが含まれる。特定の態様において、この酵素消化は実質的に完了して、上皮細胞クローン中の本質的にすべての細胞が他の細胞から解離されて単一細胞になる。
特定の態様において、本方法は、単離された単一細胞を(好ましくは、この単一細胞を洗浄して再懸濁させた後で)改変増殖培地において致死照射フィーダー細胞の第二集団と第二の基底膜マトリックスにその単一細胞を接触させて、改変増殖培地において培養する工程を含む。この単離された単一細胞は、フィーダー細胞と基底膜マトリックスの上に蒔く前に、適正な大きさ(例、40ミクロン)のセルストレーナー(cell strainer)に通過させてもよい。
特定の態様において、改変増殖培地は、単一細胞クローン又は単離された幹細胞のクローン増殖物が生成されるまでは、定期的に(例えば、毎日1回、2、3、又は4日毎に1回、等)交換する。
特定の態様では、例えばクローニングリングを使用して、幹細胞の単一コロニーを単離することができる。単離された幹細胞クローンは、系統細胞系(即ち、単一幹細胞から導かれた細胞系)を発現するように増殖させることができる。
特定の態様では、単一幹細胞のクローン増殖物から単一幹細胞を単離することができて、これを再び単一幹細胞として継代することができる。
培養時に単離された腸幹細胞の70%より多く、又は90%さえもクローン形成能力を維持して、それらが幹細胞であることを示唆することが示された。さらに、400回より多い細胞分裂の後で、これらの腸上皮幹細胞は、その多能性分化の能力を維持して、気相液相界面アッセイにおいて、腸様構造を形成することができる。
非胚性幹細胞を単離するための方法のより詳細な説明については、説明用の実施例1〜5において下記にさらに詳しく記載した。これらの実施例中の詳細も、主題の単離法の一般的な記載に関連する本節の一部を構成する。
3.培地
本発明は、基礎培地と、それへ加えて改変培地を産生するいくつかの因子を含む、主題の幹細胞を単離するため、培養するため、及び/又は分化させるための様々な細胞培養基を提供する。基礎培地又は改変培地へ加え得る因子について初めに以下記載する。次いで、本発明のいくつかの例示の基礎培地及び改変培地についてさらに詳しく記載して、本発明の具体的で非限定的な態様を例解する。
BMP阻害剤
骨形成タンパク質(BMP)は、二量体リガンドとして、2つの異なる受容体セリン/スレオニンキナーゼのI型受容体とII型受容体からなる受容体複合体へ結合する。II型受容体は、I型受容体をリン酸化して、この受容体キナーゼの活性化をもたらす。引き続き、I型受容体は、特定の受容体基質(例えばSMADなど)をリン酸化して、転写活性を導くシグナル伝達経路をもたらす。
本明細書に使用するBMP阻害剤には、その受容体を介したBMPシグナル伝達を阻害する薬剤が含まれる。1つの態様では、BMP阻害剤がBMP分子へ結合して複合体を形成して、それにより、例えば、BMP分子のBMP受容体への結合を妨害又は阻害することによって、BMP活性が中和される。そのようなBMP阻害剤の例には、BMPリガンドに特異的な抗体、又はその抗原結合部分が含まれ得る。そのようなBMP阻害剤の他の例には、BMPリガンドへ結合して、そのリガンドが細胞表面上の天然のBMP受容体へ結合することを妨げる可溶性BMP受容体などの、BMP受容体の優性ネガティブ突然変異体が含まれる。
あるいは、BMP阻害剤には、アンタゴニスト又はリバースアゴニストとして作用する薬剤を含めてよい。この種の阻害剤は、BMP受容体と結合して、BMPのその受容体への結合を妨げる。そのような薬剤の例は、BMP受容体へ特異的に結合して、抗体結合BMP受容体へのBMPの結合を妨げる抗体である。
特定の態様において、BMP阻害剤は、細胞中のBMP依存性の活性を、該阻害剤の非存在下でのBMP活性のレベルと比較して、多くて90%、多くて80%、多くて70%、多くて50%、多くて30%、多くて10%、又は約0%(ほぼ完全な阻害)で阻害する。当業者に公知であるように、BMP活性は、例えば、Zilberberg et al.(「A rapid and sensitive bioassay to measure bone morphogenetic protein activity(骨形成タンパク質活性を測定するための迅速で高感度のバイオアッセイ)」 BMC Cell Biology 8: 41, 2007, 参照により本明細書に組み込まれる)において例示されるように、BMPの転写活性を測定することによって定量することができる。
数群の天然のBMP結合性タンパク質が知られていて、ノギン(Peprotech)、コーディンと、コーディンドメインを含むコーディン様タンパク質(R&D systems)、フォリスタチンと、フォリスタチンドメインを含むフォリスタチン関連タンパク質(R&D systems)、DANと、DANシスチンノットドメインを含むDAN様タンパク質(例、ケルベロスとグレムリン)(R&D systems)、スクレロスチン/SOST(R&D systems)、デコリン(R&D systems)、及びα−2マクログロブリン(R&D systems)、又はUS8,383,349に記載されるようなものが含まれる。
本発明の方法における使用のための例示のBMP阻害剤は、ノギン、DANと、ケルベロスとグレムリンが含まれるDAN様タンパク質(R&D systems)より選択される。これらの拡散可能なタンパク質は、BMPリガンドへ多様な度合いのアフィニティーで結合して、BMPのそのシグナル伝達受容体へのアクセスを阻害することができる。
上記のBMP阻害剤のいずれも、望ましい場合は、主題の培養基へ単独で加えても、組み合わせて加えてもよい。
特定の態様において、BMP阻害剤は、ノギンである。ノギンは、それぞれの培養基へ少なくとも約10ng/mL、又は少なくとも約20ng/mL、又は少なくとも約50ng/mL、又は少なくとも約100ng/mL(例、100ng/mL)の濃度で加えてよい。
特定の態様では、ノギン、コーディン、フォリスタチン、DAN、ケルベロス、グレムリン、スクレロスチン/SOST、デコリン、及びα−2マクログロブリンなどの、本明細書で参照した特定のBMP阻害剤のいずれも、それぞれのBMP阻害活性の少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%を保持する、天然、合成、又は組換え的に産生されたその相同体又は断片、及び/又はグローバルアライメント技術(例、Needleman-Wunsch アルゴリズム)又はローカルアライメント技術(例、Smith-Waterman アルゴリズム)のいずれかに基づいた、当該技術分野で承認されている配列アライメントソフトウェアによって測定される場合に少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%のアミノ酸配列同一性を共有するその相同体又は断片に置き換えてよい。
本明細書において言及される代表的なBMP阻害剤の配列は、配列番号1〜配列番号9に表される。
主題の幹細胞の培養の間、BMP阻害剤は、培養基へ毎日、1日置きに、2日置きに、又は3日置きに加えてよく、一方培養基は、毎日、1日置きに、2日置きに、又は3日置きに、適宜新しくする。
Wntアゴニスト
Wntシグナル伝達経路は、Wntタンパク質リガンドがフリッズルド(Frizzled)受容体ファミリーメンバーの細胞表面受容体へ結合するときに起こる一連の事象によって定義される。このことは、アキシン、GSK−3、及びタンパク質APCが含まれるタンパク質の複合体が細胞内β−カテニンを分解するのを阻害する、ディシェヴェルド(Dishevelled)(Dsh)ファミリータンパク質の活性化をもたらす。核内β−カテニンの濃縮が生じると、転写因子のTCF/LEFファミリーによる転写が増強される。
本明細書に使用する「Wntアゴニスト」には、Wntシグナル伝達カスケード中のタンパク質/遺伝子のいずれもの活性を調節すること(例えば、Wntシグナル伝達経路の正調節因子の活性を高めること、又はWntシグナル伝達経路の負調節因子の活性を阻害すること)によるように、細胞におけるTCF/LEF媒介性の転写を直接的又は間接的に活性化する薬剤が含まれる。
Wntアゴニストは、フリッズルド受容体ファミリーメンバー(Wntファミリータンパク質のありとあらゆるものが含まれる)へ結合して活性化する真のWntアゴニスト、細胞内β−カテニン分解の阻害剤、及びTCF/LEFのアクチベーターより選択される。Wntアゴニストは、細胞中のWnt活性を、Wntアゴニストの非存在時のWnt活性のレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500、又は1000倍以上促進する場合がある。当業者に公知であるように、Wnt活性は、例えば、pTOPFLASH及びpFOPFLASH Tcfルシフェラーゼレポーター構築体によりWntの転写活性を測定することによって定量することができる(参照により本明細書に組み込まれる、Korinek et al., Science 275: 1784-1787, 1997 を参照のこと)。
代表的なWntアゴニストは、分泌型糖タンパク質を含み得て、Wnt−1/Int−1、Wnt−2/Irp(Int−1関連タンパク質)、Wnt−2b/13、Wnt−3/Int−4、Wnt−3a(R&D systems)、Wnt−4、Wnt−5a、Wnt−5b、Wnt−6(Kirikoshi et al., Biochem. Biophys. Res. Com., 283: 798-805, 2001)、Wnt−7a(R&D systems)、Wnt−7b、Wnt−8a/8d、Wnt−8b、Wnt−9a/14、Wnt−9b/14b/15、Wnt−10a、Wnt−10b/12、Wnt−11、及びWnt−16が含まれる。ヒトWntタンパク質の概説は、「分泌型タンパク質のWntファミリー(The Wnt Family of Secreted Proteins)」R&D Systems カタログ(2004)(参照により本明細書に組み込まれる)に提供されている。
さらなるWntアゴニストには、分泌型タンパク質のR−スポンジンファミリーが含まれ、これは、Wntシグナル伝達経路の活性化及び調節への関与が示唆されて、これは少なくとも4種のメンバー、即ち、R−スポンジン1(NU206、Nuvelo, カリフォルニア州サン・カルロス)、R−スポンジン2(R&D systems)、R−スポンジン3、及びR−スポンジン4を含む。Wntアゴニストには、ノルリン(ノリエ病(Norrie Disease)タンパク質又はNDPとしても知られている)(R&D systems)も含まれるが、これは、フリッズルド−4受容体へ高いアフィニティーで結合してWntシグナル伝達経路の活性化を誘導するという点でWntタンパク質のように機能する、分泌型調節タンパク質である(Kestutis Planutis et al., BMC Cell Biol. 8: 12, 2007)。
Wntアゴニストには、Liu et al. (Angew Chem. Int. Ed. Engl. 44(13): 1987-1990, 2005, 参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、Wntシグナル伝達経路の低分子アゴニストである、以下の構造のアミノピリミジン誘導体(N4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルメチル)−6−(3−メトキシフェニル)ピリミジン−2,4−ジアミン)がさらに含まれる。
GSK阻害剤は、低分子干渉性RNA(siRNA,Cell Signaling)、リチウム(シグマ)、ケンパウロン(Biomol International, Leost et al., Eur. J. Biochem. 267:5983-5994, 2000)、6−ブロモインジルビン−30−アセトキシム(Meyer et al., Chem. Biol. 10:1255-1266, 2003)、SB216763、及びSB415286(シグマ−アルドリッチ)、並びにGSK−3のアキシンとの相互作用を妨げるFRATファミリーメンバー及びFRAT由来ペプチドを含む。概説が Meijer et al. (Trends in Pharmacological Sciences 25:471-480, 2004, 参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。当該技術分野では、GSK−3阻害のレベルを定量するための方法及びアッセイが知られていて、例えば、Liao et al. (Endocrinology 145(6): 2941-2949, 2004, 参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような方法及びアッセイを含み得る。
特定の態様において、Wntアゴニストは、Wntファミリーメンバー、R−スポンジン1〜4(例えばR−スポンジン1など)、ノルリン、Wnt3a、Wnt−6、及びGSK−阻害剤の1以上より選択される。
特定の態様において、Wntアゴニストは、R−スポンジン1を含むか又はそれからなる。R−スポンジン1は、主題の培養基へ少なくとも約50ng/mL、少なくとも約75ng/mL、少なくとも約100ng/mL、少なくとも約125ng/mL、少なくとも約150ng/mL、少なくとも約175ng/mL、少なくとも約200ng/mL、少なくとも約300ng/mL、少なくとも約500ng/mLの濃度で加えてよい。特定の態様において、R−スポンジン1は、約125ng/mLである。
特定の態様において、R−スポンジン1〜R−スポンジン4、あらゆるWntファミリーメンバー、等のような、本明細書に参照される特定のタンパク質ベースのWntアゴニストのいずれも、それぞれのWntアゴニスト活性の少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%を保持する、天然、合成、又は組換え的に産生されたその相同体又は断片、及び/又はグローバルアライメント技術(例、Needleman-Wunsch アルゴリズム)又はローカルアライメント技術(例、Smith-Waterman アルゴリズム)のいずれかに基づいた、当該技術分野で承認されている配列アライメントソフトウェアによって測定される場合に少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%のアミノ酸配列同一性を共有するその相同体又は断片に置き換えてよい。
本明細書において言及される代表的なWntアゴニストの配列は、配列番号10〜配列番号17に表される。
主題の幹細胞の培養の間、Wntファミリーメンバーは、培地へ毎日、1日置きに、2日置きに加えてよく、一方培地は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日以上ごとに新しくする。
特定の態様において、Wntアゴニストは、R−スポンジン、Wnt−3a、及びWnt−6、又はこれらの組合せからなる群より選択される。特定の態様では、R−スポンジンとWnt−3aをWntアゴニストとして一緒に使用する。特定の態様では、R−スポンジン濃度が約125ng/mLであって、Wnt3a濃度が約100ng/mLである。
マイトジェニック増殖因子
本発明に適したマイトジェニック増殖因子には、表皮成長因子(EGF)(Peprotech)、トランスフォーミング増殖因子−α(TGFα,Peprotech)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF,Peprotech)、脳由来神経栄養因子(BDNF,R&D Systems)、及び角化細胞増殖因子(KGF、Peprotech)を含む、増殖因子のファミリーが含まれ得る。
EGFは、多様な培養外胚葉細胞及び中胚葉細胞への強力なマイトジェニック因子であって、特定の細胞のインビボ及びインビトロでの分化に、そして一部の線維芽細胞の細胞培養時の分化に対して甚大な効果を及ぼす。EGF前駆体は、膜結合性分子として存在し、これは、タンパク分解的に切断されて、細胞を刺激する53個のアミノ酸のペプチドホルモンを産生する。EGFは、主題の培養基へ1〜500ng/mLの間の濃度で加えてよい。特定の態様において、該培地中の最終EGF濃度は、少なくとも約1、2、5、10、20、25、30、40、45、又は50ng/mLであって、約500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、30、20ng/mLより高くない。特定の態様において、最終EGF濃度は、約1〜50ng/mL、又は約2〜50ng/mL、又は約5〜30ng/mL、又は約5〜20ng/mL、又は約10ng/mLである。
FGF10又はFGF7などのFGFでも、同じ濃度を使用してよい。1種より多いFGF(例えば、FGF7とFGF10)を使用するならば、上記FGFの濃度は、培地において使用されるすべてのFGFの総濃度を意味してよい。
特定の態様において、EGF、TGFα、bFGF、BDNF、KGF、等のような、本明細書において言及される特定のマイトジェニック増殖因子のいずれも、それぞれのマイトジェニック増殖因子活性の少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%を保持する、天然、合成、又は組換え的に産生されたその相同体又は断片、及び/又はグローバルアライメント技術(例、Needleman-Wunsch アルゴリズム)又はローカルアライメント技術(例、Smith-Waterman アルゴリズム)のいずれかに基づいた、当該技術分野で承認されている配列アライメントソフトウェアによって測定される場合に少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%のアミノ酸配列同一性を共有するその相同体又は断片に置き換えてよい。
本明細書において言及される代表的なマイトジェニック増殖因子の配列は、配列番号18〜配列番号27に表される。
主題の幹細胞の培養の間、マイトジェニック増殖因子は、培養基へ毎日、1日置きに加えてよく、一方培養基は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日ごとに新しくする。
bFGFファミリーのどのメンバーも使用してよい。特定の態様では、FGF7及び/又はFGF10を使用する。FGF7は、KGF(角化細胞増殖因子)としても知られている。特定の態様では、主題の培養基へEGFとKGF、又はEGFとBDNFなどのマイトジェニック増殖因子の組合せを加える。特定の態様では、主題の培養基へEGFとKGF、又はEGFとFGF10などの、マイトジェニック増殖因子の組合せを加える。
Rock(Rho−キナーゼ)阻害剤
どの特別な理論にも束縛されずに言えば、Rock阻害剤の追加は、特に単一幹細胞を培養するときに、アノイキス(anoikis)を防ぐ可能性がある。Rock阻害剤は、(R)−(+)−トランス−4−(l−アミノエチル)−N−(4−ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩一水和物(Y−27632,シグマ−アルドリッチ)、5−(1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(ファスジル又はHA1077,Cayman Chemical)、(S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩(H−1152,Tocris Bioscience)、及びN−(6−フルオロ−1H−インダゾール−5−イル)−2−メチル−6−オキソ−4−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピリジン−3−カルボキサミド(GSK429286A,Stemgent)であり得る。
特定の態様において、Y27632の最終濃度は、約1〜5μM、又は2.5μMである。
Rho−キナーゼ阻害剤(例、Y−27632)は、幹細胞を培養する最初の7日の間、培養基へ1、2、3、4、5、6、又は7日ごとに加えてよい。
ノッチアゴニスト
ノッチシグナル伝達は、細胞の生存及び増殖だけでなく、細胞運命の決定にも重要な役割を担うことが示されてきた。ノッチ受容体タンパク質は、限定されないが、ジャギド−1、ジャギド−2、デルタ−1又はデルタ様1、デルタ様3、デルタ様4、等が含まれる、いくつかの表面結合型又は分泌型リガンドと相互作用することができる。リガンド結合時に、ノッチ受容体は、ADAMプロテアーゼファミリーのメンバーが関与する連続的な切断イベントによって、並びに、γ−セクレターゼのプレシニリン(presinilin)により調節される膜内切断によって活性化される。その結果は、ノッチの細胞内ドメインの核への転座であって、そこでそれは、下流の遺伝子を転写的に活性化する。
本明細書に使用する「ノッチアゴニスト」には、細胞中のノッチ活性を、ノッチアゴニストの非存在時のノッチ活性のレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍またはこれ以上促進する分子が含まれる。当業者に知られているように、ノッチ活性は、例えば、Hsieh et al.(Mol. Cell. Biol. 16: 952-959, 1996, 参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される4xwtCBF1−ルシフェラーゼレポーター構築体によりノッチの転写活性を測定することによって定量することができる。
特定の態様において、ノッチアゴニストは、ジャギド−1、デルタ−1、及びデルタ様4、又はその活性断片又は誘導体より選択される。特定の態様において、ノッチアゴニストは、アミノ酸配列:CDDYYYGFGCNKFCRPR(配列番号30)を有する、DSLペプチド(Dontu et al., Breast Cancer Res., 6: R605-R615, 2004)である。DSLペプチド(AnaSpec)は、10μMと100nMの間、又は少なくとも10μMで100nM以下の濃度で使用してよい。特定の態様において、ジャギド−1の最終濃度は、約0.1〜10μM;又は約0.2〜5μM;又は約0.5〜2μM;又は約1μMである。
特定の態様では、ジャギド−1、ジャギド−2、デルタ−1、及びデルタ様4などの、本明細書において言及される特定のノッチアゴニストのいずれも、それぞれのノッチアゴニスト活性の少なくとも約80%、85%、90%、95%、99%を保持する、天然、合成、又は組換え的に産生されたその相同体又は断片、及び/又はグローバルアライメント技術(例、Needleman-Wunsch アルゴリズム)又はローカルアライメント技術(例、Smith-Waterman アルゴリズム)のいずれかに基づいた、当該技術分野で承認されている配列アライメントソフトウェアによって測定される場合に少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%のアミノ酸配列同一性を共有するその相同体又は断片に置き換えてよい。
本明細書において言及される代表的なノッチアゴニストの配列は、配列番号28〜配列番号35に表される。
ノッチアゴニストは、幹細胞を培養する最初の1〜2週の間、培養基へ1、2、3、又は4日ごとに加えてよい。
ニコチンアミド
本発明の培養基は、ニコチンアミド、又はメチル−ニコチンアミド、ベンズアミド、ピラジンアミド、チミン、又はナイアシンなどのその類似体、前駆体、模倣体で追加的に補充してよい。ニコチンアミドは、培養基へ1mMと100mMの間、5mMと50mMの間、又は好ましくは、5mMと20mMの間の最終濃度で加えてよい。例えば、ニコチンアミドは、培養基へほぼ10mMの最終濃度で加えてよい。ニコチンアミド類似体、前駆体、又は模倣体の同様の濃度も、単独で、又は組み合わせて使用することができる。
特定の幹細胞培養物では、TGFβ受容体阻害剤(下記参照)及び/又はニコチンアミドを(単独で、又は組み合わせて)加えると、培養時の幹細胞の自己複製能力が大いに増加する。ニコチンアミド及び/又はTGFβ受容体阻害剤の存在時には、各コロニー中の細胞数が有意に増加して、細胞の大きさが劇的に縮小する場合がある。
THG−β又はTGF−β受容体阻害剤
TGF−βシグナル伝達は、細胞増殖、細胞運命、及びアポトーシスが含まれる、多くの細胞機能に関与している。シグナル伝達は、典型的には、TGF−βスーパーファミリーリガンドのII型受容体への結合から始まって、これがI型受容体を集めてリン酸化する。次いで、このI型受容体がSMADをリン酸化し、これが核内において転写因子として作用して、標的遺伝子の発現を調節する。あるいは、TGF−βシグナル伝達は、例えばp38 MAPキナーゼを介して、MAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化することができる。
TGF−βスーパーファミリーリガンドは、骨形成タンパク質(BMP)、成長分化因子(GDF)、アンチミューラリアン(anti-Mullerian)ホルモン(AMH)、アクチビン、ノーダル(nodal)、及びTGF−β群を含む。
本明細書に使用するTGF−β阻害剤には、TGF−βシグナル伝達経路の活性を低下させる薬剤が含まれる。当該技術分野では、TGF−βシグナル伝達経路を妨害する多くの異なるやり方があって、そのいずれも本発明と共に使用してよい。例えば、TGF−βシグナル伝達は、低分子干渉性RNA戦略によるTGF−β発現の阻害;フーリン(furin)(TGF−β活性化プロテアーゼ)の阻害;生理学的阻害剤による該経路の阻害(例えばノギン、DAN、又はDAN様タンパク質によるBMPの阻害など);TGF−βのモノクローナル抗体での中和;TGF−β受容体キナーゼ1(アクチビン受容体様キナーゼ、ALK5としても知られている)、ALK4、ALK6、ALK7、又は他のTGF−β関連受容体キナーゼの低分子阻害剤での阻害;それらの生理学的阻害剤であるSmad7の高発現による、又はSmadを活性化し得なくするSmadアンカーとしてチオレドキシンを使用することによる、Smad2及びSmad3シグナル伝達の阻害(Fuchs,「Inhibition of TGF-β Signaling for the Treatment of Tumor Metastasis and Fibrotic Disease(腫瘍転移及び線維性疾患の治療のために阻害TGF−βシグナル伝達を阻害すること)」Current Signal Transduction Therapy 6(1): 29-43(15), 2011)によって妨害され得る。
例えば、TGF−β阻害剤は、TGF−β受容体キナーゼ1、ALK4、ALK5、ALK7、又はp38より選択されるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼを標的とし得る。ALK4、ALK5、及びALK7は、いずれも、TGF−βスーパーファミリーの密接に関連した受容体である。ALK4は、GI番号91を有し;ALK5(TGF−β受容体キナーゼ1としても知られている)は、GI番号7046を有し;そしてALK7は、GI番号658を有する。これらキナーゼのいずれの阻害剤も、これらキナーゼのいずれか1つ(又は1より多く)の酵素活性において低下をもたらすものである。B細胞リンパ腫では、ALKとp38キナーゼの阻害が連動していることがすでに示されている(Bakkebo et al.「TGF-β-induced growth inhibition in B-cell lymphoma correlates with Smad 1/5 signaling and constitutively active p38 MAPK(B細胞リンパ腫におけるTGF−β誘発性の増殖阻害は、Smad1/5シグナル伝達と恒常的に活性なp38 MAPKと相関する)」 BMC Immunol. 11:57, 2010)。
特定の態様では、TGF−β阻害剤がR−SMAD又はSMAD1〜5(即ち、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、又はSMAD5)などのSmadタンパク質へ結合してその活性を阻害し得る。
特定の態様では、TGF−β阻害剤がTGF−β受容体キナーゼ1、ALK4、ALK5、ALK7、又はp38より選択されるSer/Thrタンパク質キナーゼへ結合してその活性を阻害し得る。
特定の態様において、本発明の培地は、ALK5の阻害剤を含む。
特定の態様において、TGF−β阻害剤又はTGF−β受容体阻害剤には、BMPアンタゴニストが含まれない(即ち、それは、BMPアンタゴニスト以外の薬剤である)。
ある物質がTGF−β阻害剤であるかどうかを判定するための様々な方法が知られている。例えば、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動する、ヒトPAI−1プロモーター又はSmad結合部位を含むレポーター構築体で細胞が安定的にトランスフェクトされる、細胞アッセイを使用してよい。対照群と比較したルシフェラーゼ活性の阻害を化合物活性の尺度として使用することができる(De Gouville et al., Br. J. Pharmacol. 145(2): 166-177, 2005, 参照により本明細書に組み込まれる)。別の例は、キナーゼ活性の測定用のALPHASCREEN(登録商標)ホスホセンサー(phosphosensor)アッセイである(Drew et al., J. Biomol. Screen. 16(2):164-173, 2011, 参照により本明細書に組み込まれる).
本発明に有用なTGF−β阻害剤は、タンパク質、ペプチド、低分子、低分子干渉性RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、抗体、又はその抗原結合部分であってよい。阻害剤は、天然に存在するものであっても、合成品でもよい。本発明の文脈において使用し得る低分子TGF−β阻害剤の例には、限定されないが、下記の表1に記載される低分子阻害剤が含まれる:
表1:受容体キナーゼを標的とする低分子TGF−β阻害剤
本発明では、上記の表1に記載した阻害剤のいずれもの1以上、又はそれらの組合せをTGF−β阻害剤として使用してよい。特定の態様において、この組合せには、SB−525334とSD−208とA83−01;SD−208とA83−01;又はSD−208とA83−01が含まれる。
当業者は、他のキナーゼを標的とするように主に設計されている、いくつかの他の低分子阻害剤が存在するが、高濃度では、それらがTGF−β受容体キナーゼも阻害し得ることを理解されよう。例えば、SB−203580は、p38 MAPキナーゼ阻害剤であって、高濃度(例えば、ほぼ10μM以上)では、ALK5を阻害し得る。本発明では、TGF−βシグナル伝達経路を阻害するどのそのような阻害剤も使用してよい。
特定の態様では、A83−01を培養基へ10nMと10μMの間、又は20nMと5μMの間、又は50nMと1μMの間の濃度で加えてよい。特定の態様では、A83−01を培地へ約500nMで加えてよい。特定の態様では、A83−01を培養基へ350〜650nMの間、450〜550nMの間、又は約500nMの濃度で加えてよい。特定の態様では、A83−01を培養基へ25〜75nMの間、40〜60nMの間、又は約50nMの濃度で加えてよい。
SB−431542を培養基へ80nMと80μMの間、又は100nMと40μMの間、又は500nMと10μMの間、又は1〜5μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SB−431542を培養基へ約2μMで加えてよい。
SB−505124を培養基へ40nMと40μMの間、又は80nMと20μMの間、又は200nMと1μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SB−505124を培養基へ約500nMで加えてよい。
SB−525334を培養基へ10nMと10μMの間、又は20nMと5μMの間、又は50nMと1μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SB−525334を培養基へ約100nMで加えてよい。
LY364947を培養基へ40nMと40μMの間、又は80nMと20μMの間、又は200nMと1μMの間の濃度で加えてよい。例えば、LY364947を培養基へ約500nMで加えてよい。
SD−208を培養基へ40nMと40μMの間、又は80nMと20μMの間、又は200nMと1μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SD−208を培養基へ約500nMで加えてよい。
SJN2511を培養基へ20nMと20μMの間、又は40nMと10μMの間、又は100nMと1μMの間の濃度で加えてよい。例えば、A83−01を培養基へほぼ200nMで加えてよい。
p38阻害剤
「p38阻害剤」には、少なくとも1つのp38アイソフォームへ結合してその活性を低下させる薬剤のような、p38シグナル伝達を直接的又は間接的に負に調節する阻害剤が含まれ得る。p38タンパク質キナーゼ(GI番号:1432を参照のこと)は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のファミリーの一部である。MAPKは、環境ストレスと炎症性サイトカインなどの細胞外の刺激へ応答して、遺伝子発現、分化、有糸分裂、増殖、及び細胞生存/アポトーシスなどの様々な細胞活動を調節するセリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼである。p38 MAPKは、α、β、β2、γ、及びδアイソフォームとして存在する。
Thr180/Tyr182でのリン酸化のリン酸化部位特異的抗体検出[これは、細胞のp38活性化又は阻害の十分に立証される尺度を提供する];生化学的な組換えキナーゼアッセイ;腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌アッセイ;及び、p38阻害剤についての DiscoverRx ハイスループットスクリーニングプラットフォームなどの、ある物質がp38阻害剤であるかどうかを判定するための様々な方法が知られている。いくつかのp38活性アッセイキットも存在する(例、ミリポア、シグマ−アルドリッチ)。
特定の態様において、高濃度(例えば、100nMより高い、又は1μMより高い、10μMより高い、又は100μMより高い)のp38阻害剤には、TGF−βを阻害する効果があり得る。他の態様において、p38阻害剤は、TGF−βシグナル伝達を阻害しない。
当該技術分野では、様々なp38阻害剤が知られている(例えば、表1を参照のこと)。いくつかの態様において、p38シグナル伝達を直接的又は間接的に負に調節する阻害剤は、SB−202190、SB−203580、VX−702、VX−745、PD−169316、RO−4402257、及びBIRB−796からなる群より選択される。
特定の態様において、該培地は、a)ALK4、ALK5、及びALK7からなる群由来のキナーゼのどの1以上とも結合してその活性を低下させる阻害剤と、b)p38へ結合してその活性を低下させる阻害剤をともに含む。
特定の態様において、該培地は、ALK5へ結合してその活性を低下させる阻害剤と、p38へ結合してその活性を低下させる阻害剤を含む。
1つの態様において、該阻害剤は、その標的(例えば、TGF−β及び/又はp38)へ結合して、その活性を、細胞アッセイによって評価されるように、対照と比較して10%より多く、30%より多く、60%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、又は99%より多く低下させる。当該技術分野では、上記に記載のように、標的阻害を測定するための細胞アッセイの例がよく知られている。
TGF−β及び/又はp38の阻害剤は、2000nM以下;1000nΜ未満;100nM未満;50nM未満;30nM未満;20nM未満、又は10nΜ未満のIC50値を有し得る。IC50値は、阻害剤がその標的の生物学的又は生化学的機能を阻害する場合のその有効性へ言及する。IC50は、キナーゼを50%阻害するのに、ある特別な阻害剤がどのくらい多く必要とされるかを示す。IC50値は、上記に示したアッセイ方法に従って計算することができる。
TGF−β及び/又はp38の阻害剤は、天然基質又は修飾基質、酵素、受容体、有機低分子(例えば、2000Daまで、好ましくは800Da以下の天然又は合成有機低分子)、ペプチド模倣体、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドアプタマー、並びに、これらの構造又は機能模倣体(低分子が含まれる)を含めて、様々な形態で存在し得る。
特定の態様において、TGF−β及び/又はp38の阻害剤は、アプタマーであってもよい。本明細書に使用するように、「アプタマー」という用語は、ごく特異的な三次元コンホメーションをとり得るオリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)の鎖へ言及する。アプタマーは、細胞外及び細胞内のタンパク質が含まれる、特定の標的分子に対して高い結合アフィニティー及び特異性を有するように設計される。アプタマーは、例えば、指数的濃縮によるリガンドの系統進化(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment(SELEX))法を使用して産生され得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Tuerk and Gold,「Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA Polymerase(指数的濃縮によるリガンドの系統進化:バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼに対するRNAリガンド)」Science 249: 505-510, 1990 を参照のこと)。
特定の態様において、TGF−β及び/又はp38阻害剤は、分子量が50Daと800Daの間、80Daと700Daの間、100Daと600Daの間、又は150Daと500Daの間である、合成低分子であってよい。
特定の態様において、TGF−β及び/又はp38阻害剤は、ピリジニルイミダゾール、又は2,4−二置換プテリジン又はキナゾりんを含み、例えば:
を含む。
本発明に従って使用し得る、TGF−β及び/又はp38阻害剤の特別な例には、限定されないが、SB−202190、SB−203580、SB−206718、SB−227931、VX−702、VX−745、PD−169316、RO−4402257、BIRB−796、A83−01、SB−431542、SB−505124、SB−525334、LY364947、SD−208、SJ 2511が含まれる(表2を参照のこと)。
本発明の培養基は、表2に記載される阻害剤のいずれの1以上も含んでよい。本発明の培養基は、記載された1つの阻害剤と別の阻害剤のどの組合せも含んでよい。例えば、本発明の培養基は、SB−202190又はSB−203580又はA83−01;又はSB−202190とA83−01;又はSB−203580とA83−01を含み得る。当業者は、その標的(例、TGF−β及び/又はp38)へ結合してその活性を低下させる他の阻害剤と阻害剤の組合せを本発明による培養基又は培養基補充物に含めてよいことを理解されよう。
本発明による阻害剤を、その阻害剤のIC50値を考慮して、培養基へ適正である最終濃度まで加えてよい。
例えば、SB−202190を培養基へ50nMと100μMの間、又は100nMと50μMの間、又は1μMと50μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SB−202190を培養基へほぼ10μMで加えてよい。
SB−203580を培養基へ50nMと100μMの間、又は100nMと50μMの間、又は1μMと50μMの間の濃度で加えてよい。例えば、SB−203580を培養基へほぼ10μMで加えてよい。
VX−702を培養基へ50nMと100μMの間、又は100nMと50μMの間、又は1μMと25μMの間の濃度で加えてよい。例えば、VX−702を培養基へほぼ5μMで加えてよい。
VX−745を培養基へ10nMと50μMの間、又は50nMと50μMの間、又は250nMと10μMの間の濃度で加えてよい。例えば、VX−745を培養基へほぼ1μMで加えてよい。
PD−169316を培養基へ100nMと200μMの間、又は200nMと100μMの間、又は1μMと50μMの間の濃度で加えてよい。例えば、PD−169316を培養基へほぼ20μMで加えてよい。
RO−4402257を培養基へ10nMと50μMの間、又は50nMと50μMの間、又は500nMと10μMの間の濃度で加えてよい。例えば、RO−4402257を培養基へほぼ1μMで加えてよい。
BIRB−796を培養基へ10nMと50μMの間、又は50nMと50μMの間、又は500nMと10μMの間の濃度で加えてよい。例えば、BIRB−796を培養基へほぼ1μMで加えてよい。
表2中の他の因子に適用可能な濃度については、表1と上記の関連テキストを参照のこと。
表2 例示のTGF−β及び/又はp38阻害剤
従って、いくつかの態様において、TGF−β及び/又はp38シグナル伝達を直接的又は間接的に負に調節する阻害剤は、培養基へ1nMと100μΜの間、10nMと100μΜの間、100nMと10μΜ、又は約1μΜの濃度で加えられる。例えば、ここで1以上の阻害剤の総濃度は、10nMと100μΜの間、100nMと10μΜの間、又は約1μΜである。
細胞外マトリックス(ECM)
本明細書において「基底膜マトリックス」と交換可能的に使用される細胞外マトリックス(ECM)は、結合組織細胞によって分泌されて、多様な多糖類、水、エラスチン、並びにタンパク質(プロテオグリカン類、コラーゲン、エンタクチン(ニドゲン)、フィブロネクチン、フィブリノゲン、フィブリン、ラミニンを含み得る)、及びヒアルロン酸を含む。ECMは、主題の幹細胞を選択して培養することを導くのに適した基質及び微小環境を提供し得る。
特定の態様において、主題の幹細胞は、ECMへ付着しているか又はそれと接触している。当該技術分野では、様々な種類のECMが知られていて、様々な種類のプロテオグリカン類、及び/又は様々なプロテオグリカン類の組合せが含まれる、様々な組成物を含んでよい。ECMは、特定の線維芽細胞などのECM産生細胞を培養することによって提供され得る。細胞外マトリックス産生細胞の例には、コラーゲンとプロテオグリカン類を主に産生する軟骨細胞;IV型コラーゲン、ラミニン、間質性プロコラーゲン、及びフィブロネクチンを主に産生する線維芽細胞;並びに、コラーゲン類(I型、III型、及びV型)、硫酸コンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、及びテナシン−Cを主に産生する結腸筋線維芽細胞が含まれる。
特定の態様では、フィーダー細胞層としてのMATRIGELTM基底膜マトリックス(BD Biosciences)の上面で増殖され得る、マウス3T3−J2クローンによって少なくともいくらかのECMが産生される。
あるいは、ECMは、市販品で提供されてよい。市販されている細胞外マトリックスの例は、細胞外マトリックスタンパク質(Invitrogen)とMATRIGELTM基底膜マトリックス(BD Biosciences)である。幹細胞を培養するためのECMの使用は、幹細胞の長期生存、及び/又は未分化幹細胞の継続的な存在を高める場合がある。代替品は、フィブリン基質又はフィブリンゲル、又は元の細胞から消失する、グリセロール漬け(glycerolized)自家移植片などのスカッフォルド(scaffold)であってよい。
特定の態様において、本発明の方法に使用のECMは、2つの異なる種類のコラーゲン、又はコラーゲンとラミニンなどの、少なくとも2種の別個の糖タンパク質を含む。ECMは、合成品のヒドロゲル細胞外マトリックスであっても、天然に存在するECMであってもよい。特定の態様において、ECMは、ラミニン、エンタクチン、及びコラーゲンIVを含む、MATRIGELTM基底膜マトリックス(BD Biosciences)によって提供される。
培地
本発明の方法において使用される細胞培養基は、炭酸塩ベースの緩衝液で約7.4のpH(例えば、約7.2〜7.6のpH)に緩衝化される培養基などの、どの細胞培養基も含んでよい。限定されないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、例えば、L−グルタミン無しで高グルコースのDMEM)、最少必須培地(MEM)、ノックアウト−DMEM(KO−DMEM)、グラスゴー最少必須培地(G−MEM)、イーグル基礎培地(BME)、DMEM/ハムF12、改良型DMEM/ハムF12、イスコーブ改変ダルベッコ培地及び最少必須培地(MEM)、ハムF−10、ハムF−12、培地199、及びRPMI1640培地が含まれる、多くの市販されている組織培養基が本発明の方法に潜在的に適している。
該細胞は、5%と10%の間のCO2(例えば、少なくとも約5%であるが10%以下のCO2、又は約5% CO2)を含む雰囲気において培養してよい。
特定の態様において、細胞培養基は、L−グルタミン、インスリン、ペニシリン/ストレプトマイシン、及び/又はトランスフェリンを補充した、DMEM/F12(例、3:1混合物)又はRPMI1640である。特定の態様では、無血清培養のために最適化されてすでにインスリンが含まれる、改良型DMEM/F12又は改良型RPMIを使用する。改良型DMEM/F12又は改良型RPMI培地には、L−グルタミンとペニシリン/ストレプトマイシンをさらに補充してよい。特定の態様において、細胞培養基には、本明細書に記載する、1以上の精製、天然、半合成、及び/又は合成の因子が補充される。特定の態様において、細胞培養基には、使用の前に熱不活性化されていない、約10%ウシ胎仔血清(FBS)が補充される。例えば、B−27(登録商標)無血清補充物(Invitrogen)、N−アセチルシステイン(シグマ)及び/又はN2無血清補充物(Invitrogen)、又はNeurobasal(GIBCO)、TeSR(StemGent)などの追加補充物も該培地へ加えてよい。
特定の態様において、該培地は、汚染を防ぐために1以上の抗生物質(例えば、ペニシリン/ストレプトマイシンなど)を含有してよい。特定の態様において、培地は、0.1エンドトキシン単位/mL未満のエンドトキシン含量を有しても、0.05エンドトキシン単位/mL未満のエンドトキシン含量を有してもよい。当該技術分野では、培養基のエンドトキシン含量を定量するための方法が知られている。
本発明による細胞培養基は、上皮幹細胞の細胞外マトリックス上での生存及び/又は増殖及び/又は分化を可能にする。本明細書に使用する「細胞培養基」という用語は、「培地」、「培養培地」、又は「細胞培地」と同義である。
本発明の改変(増殖)培地は、基礎培地において、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト;(d)Wntアゴニスト;(e)マイトジェニック増殖因子;及び、(f)インスリン又はIGFを含み;該培地は、(g)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えばTGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);及び、(h)ニコチンアミド、又はその類似体、前駆体、又は模倣体の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
あるいは、本発明の改変(増殖)培地は、基礎培地において、(a)ノッチアゴニスト;(b)ROCK(Rhoキナーゼ)阻害剤;(c)TGFβシグナル伝達経路阻害剤(例えばTGFβ阻害剤又はTGFβ受容体阻害剤など);(d)Wntアゴニスト;(e)ニコチンアミド、又はその類似体、前駆体、又は模倣体、(f)マイトジェニック増殖因子;及び、(g)インスリン又はIGFを含み;該培地は、(h)骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストをさらに含んでもよい。
本発明の培地は、上記に記載の1以上の因子を基礎培地へ加えることによって調製し得る。
従って、1つの側面において、本発明は、L−グルタミンを補充したDMEM:F12(3:1)培地にインスリン又はインスリン様増殖因子;T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン);ヒドロコーチゾン;アデニン;EGF;及び10%ウシ胎仔血清(熱不活性化無し)を含む、基礎培地(Base Medium)を提供する。
特定の態様において、基礎培地は、1.35mM L−グルタミンを補充したDMEM:F12(3:1)培地に、約5μg/mL インスリン;2x10−9M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン);400ng/mL ヒドロコーチゾン;24.3μg/mL アデニン;10ng/mL EGF;及び10%ウシ胎仔血清(熱不活性化無し)を含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。例えば、例示の培地では、インスリン濃度が6μg/mL(引用値の5μg/mLより20%高い)であってよく、EGF濃度が5ng/mL(引用値の10ng/mLより50%低い)であってよく、一方残りの成分は、上記に引用したのと同じ濃度をそれぞれ有する。
関連した側面において、本発明は、1x10−10Mのコレラ腸管毒素を追加して含有する基礎培地を提供する。他の態様において、基礎培地は、コレラ腸管毒素を含有しない。
この基礎培地は、ペニシリン/ストレプトマイシン及び/又はゲンタマイシンなどの1以上の抗生物質をさらに含んでよい。
この基礎培地を使用して、上記因子の1以上を加えることによって、改変増殖培地(又は単に改変培地)を産生することができる。
いくつかの具体的な改変増殖培地について、改変増殖培地1〜5、又は単に改変培地1〜5として下記に詳しく記載する。
従って、1つの側面において、本発明は、基礎培地にノッチアゴニストとしてのジャギド−1、ROCK阻害剤としてのY−27632、BMPアンタゴニストとしてのノギン、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、マイトジェニック増殖因子としてのEGF、及びインスリンを含む、第一の改変培地(改変培地1)を提供する。
特定の態様において、改変培地1は、基礎培地に、1μM ジャギド−1(188−204);100ng/mL ノギン;125ng/mL R−スポンジン1;及び2.5μM Rock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632)を含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。
関連した側面において、本発明は、基礎培地にノッチアゴニストとしてのジャギド−1、ROCK阻害剤としてのY−27632、BMPアンタゴニストとしてのノギン、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、TGF−β受容体阻害剤としてのSB431542、マイトジェニック増殖因子としてのEGF、ニコチンアミド、及びインスリンを含む、第二の改変培地(改変培地2)を提供する。
特定の態様において、改変培地2は、基礎培地に、1μM ジャギド−1(188−204);100ng/mL ノギン;125ng/mL R−スポンジン1;2.5μM Rock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632);2μM SB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド;及び10mMニコチンアミドを含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。
別の関連した側面において、本発明は、基礎培地に、ノッチアゴニストとしてのジャギド−1、ROCK阻害剤としてのY−27632、BMPアンタゴニストとしてのノギン、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、TGF−β受容体阻害剤としてのSB431542、マイトジェニック増殖因子としてのEGF、及びインスリンを含む、第三の改変培地(改変培地3)を提供する。
特定の態様において、改変培地3は、基礎培地に、1μM ジャギド−1(188−204);100ng/mL ノギン;125ng/mL R−スポンジン1;2.5μM Rock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632);及び、2μM SB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミドを含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。
なお別の関連した側面において、本発明は、基礎培地に、ノッチアゴニストとしてのジャギド−1、ROCK阻害剤としてのY−27632、BMPアンタゴニストとしてのノギン、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、マイトジェニック増殖因子としてのEGF、ニコチンアミド、及びインスリンを含む、第四の改変培地(改変培地4)を提供する。
特定の態様において、改変培地4は、基礎培地に、1μM ジャギド−1(188−204);100ng/mL ノギン;125ng/mL R−スポンジン1;2.5μM Rock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632);及び、10mMニコチンアミドを含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。
関連した側面において、本発明は、基礎培地に、ノッチアゴニストとしてのジャギド−1、ROCK阻害剤としてのY−27632、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、TGF−β受容体阻害剤としてのSB431542、マイトジェニック増殖因子としてのEGF、ニコチンアミド、及びインスリンを含む、第五の改変培地(改変培地5)を提供する。
特定の態様において、改変培地2は、基礎培地に、1μM ジャギド−1(188−204);125ng/mL R−スポンジン1;2.5μM Rock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632);2μM SB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド;及び、10mMニコチンアミドを含む。
特定の態様において、直前のパラグラフにおいて参照した培地成分のそれぞれの濃度は、独立して、各引用値より2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%高いか又は低い、又は各引用値より2倍、3倍、5倍、10倍、20倍高い。
本発明の培地(例、改変培地1〜5)は、本発明の方法に従って使用される場合、単離された幹細胞の集団を単一細胞クローンとして少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450回以上の継代の間、適正な条件の下で増殖させることが可能である。
特定の態様では、以下の培地及び培養条件のいずれも使用して、胎児又は成体の小腸組織から幹細胞を単離して培養し得る。具体的には、上記に記載の改変培地(改変培地1)には、以下の因子の1以上を追加して含めてよい:FGF受容体阻害剤、N−アセチル−L−システイン、p38阻害剤、ガストリン、PGE2、又はTGFβ。上記に記載の改変培地(改変培地4)には、以下の因子の1以上を追加して含めてよい:FGF受容体阻害剤、ヘッジホッグ(hedgehog)タンパク質(例、Shh)、TGFβ、Wnt3a、又はGSK3阻害剤。好ましくは、このような培養条件を改変培地2と一緒に使用して、胎児小腸組織から小腸幹細胞を単離する。
特定の態様において、上記に記載のような改変培地(改変培地3)には、以下の因子の1以上を追加して含めてよい:ガストリン、PGE2、又はWnt3a。上記に記載のような改変培地(改変培地1)には、ニコチンアミドとGSK3阻害剤を含めてよい。好ましくは、このような培養条件を改変培地3と一緒に使用して、成体小腸組織から小腸幹細胞を単離する。
特定の態様において、上記に記載のような改変培地(改変培地3)には、以下の因子の1以上を追加して含めてよい:ガストリン、PGE2、又はWnt3a。上記に記載のような改変培地(MM1)には、ニコチンアミドとGSK3阻害剤を含めてよい。好ましくは、このような培養条件をMM3と一緒に使用して、成体小腸組織から小腸幹細胞を単離する。
本明細書に使用するように、「良好な」条件とは、その下で該細胞の少なくとも約40%が培養時に未熟な幹細胞の形態を有して、自己複製及び分化の能力を保持しながら継代され得るものを意味し;「より良好な」条件とは、その下で該細胞の少なくとも約70%が培養時に未熟な幹細胞の形態を有して、自己複製及び分化の能力を保持しながら継代され得るものを意味し;「最良の」条件とは、その下で培養細胞の約90%が培養時に未熟な幹細胞の形態を有して、自己複製及び分化の能力を保持しながらインビトロで無限に継代され得るものを意味する。
特定の態様では、胎児小腸幹細胞にとってより良好な条件が改変培地4を使用するときに達成され得て、良好な条件が、改変培地1、FGF受容体阻害剤、又はp38阻害剤、又はPGE2、又はN−アセチル−L−システイン、又はガストリン、又はTGFβを補充した改変培地1、TGFβ、又はソニック・ヘッジホッグ(shh)、又はWnt3a、又はGSK3阻害剤を補充した改変培地4を使用するとき、又は改変培地2を使用するときに達成され得る。
特定の態様では、成体小腸幹細胞にとってより良好な条件が改変培地2を使用するときに達成され得て、良好な条件が、改変培地3、PGE2、又はガストリン、又はWnt3aを補充した改変培地3を使用するとき、又は改変培地4を使用するときに達成され得る。
特定の態様において、本発明の培地には、その条件又は因子の組合せが幹細胞の単離と培養を支援しない(例えば、少なくとも「良好な」評価を達成し得ない)ことが実験的に検証されて示されたことがある、以下の条件又は因子の組合せを含めない。
胎児小腸幹細胞では:FGF1を補充した改変培地1;FGF1とWnt3aを補充した改変培地1;Wnt5aを補充した改変培地1;Wnt3aを補充した改変培地3;ノッチ阻害剤を補充した改変培地1;Wnt阻害剤(DKK1)を補充した改変培地1;R−スポンジン1が不十分な改変培地1;R−スポンジン1無しでWnt3aを補充した改変培地1;R−スポンジン1が不足しているがWnt5aを補充した改変培地1;GDC−0449(ビスモデギブ(Vismodegib);2−クロロ−N−(4−クロロ−3−ピリジン−2−イルフェニル)−4−メチルスルホニルベンズアミド;ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤)を補充した改変培地4;XAV939(2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8−ジヒドロ−5H−チオピラノ[4,3−d]ピリミジン−4−オール;Wnt阻害剤)を補充した改変培地4。
成体小腸幹細胞では:改変培地1;FGF1を含有する改変培地1;FGF受容体阻害剤を含有する改変培地1;FGF1とWnt3aを含有する改変培地1;Wnt3aを含有する改変培地1;Wnt5aを含有する改変培地1;p38阻害剤(例、SB202190)を含有する改変培地1;PGE2を含有する改変培地1;N−アセチル−L−Cysを含有する改変培地1;ガストリンを含有する改変培地1;R−スポンジン1無しの改変培地1;R−スポンジン1無しの改変培地3;R−スポンジン1無しでWnt3aを加えた改変培地1;R−スポンジン1無しでWnt5aを含有する改変培地1。
4.代表的な培地因子のタンパク質配列
本発明の培地と方法において使用するいくつかの代表的な(非限定的な)タンパク質因子を下記に提供する。当該技術分野では、記載したそれぞれの因子について、数多くの相同体又は機能等価物が知られていて、わずかな例を挙げるだけでも、GenBank、EMBL、及び/又はNCBI RefSeqなどの公的データベースから容易に検索することができる。追加のタンパク質又はそのペプチド断片、又はそれをコードするポリヌクレオチドについても、ヒト又は非ヒト哺乳動物由来の機能相同体を含めて、公的情報源より、例えば、NCBI BLASTp又はBLASTn又はその両方などの配列ベースの検索を通して、容易に検索することができる。
BMP阻害剤
ノギン:(GenBank:AAA83259.1)ホモサピエンス:
コーディン(GenBank:AAG35767.1)ホモサピエンス:
フォリスタチン(GenBank:AAH04107.1)ホモサピエンス:
DAN(GenBank:BAA92265.1)ホモサピエンス:
ケルベロス(NCBI参照配列:NP_005445.1)ホモサピエンス:
グレムリン(GenBank:AAF06677.1)ホモサピエンス:
スクレロスチン/SOST(GenBank:AAK13451.1)ホモサピエンス:
デコリン(GenBank:AAB60901.1)ホモサピエンス:
α−2マクログロブリン(GenBank:EAW88590.1)ホモサピエンス:
Wntアゴニスト
R−スポンジン1(GenBank:ABC54570.1)ホモサピエンス:
R−スポンジン2(NCBI参照配列:NP_848660.3)ホモサピエンス:
R−スポンジン3(NCBI参照配列:NP_116173.2)ホモサピエンス:
R−スポンジン4(NCBI参照配列:NP_001025042.2)ホモサピエンス:アイソフォーム1
R−スポンジン4(NCBI参照配列:NP_001035096.1)ホモサピエンス:アイソフォーム2
ノルリン
ノルリン前駆体[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_000257.1
WNT3A[ホモサピエンス]
GenBank:BAB61052.1
WNT6[ホモサピエンス]
GenBank:AAG45154.1
マイトジェニック因子
FGF−2=bFGF(niProtKB/スイスプロット(Swiss-Prot):P09038.3)ホモサピエンス:
FGF7(GenBank:CAG46799.1)ホモサピエンス:
FGF10(GenBank:CAG46489.1)ホモサピエンス:
EGF(GenBank:EAX06257.1)ホモサピエンス:
TGFα ホモサピエンス:
プロトランスフォーミング増殖因子αアイソフォーム1プレプロタンパク質[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_003227.1
プロトランスフォーミング増殖因子αアイソフォーム2プレプロタンパク質[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_001093161.1
トランスフォーミング増殖因子α[合成構築体]
GenBank:AAX43291.1
以下を含有するTGFα:
BDNF(UniProtKB/スイスプロット:P23560.1)ホモサピエンス:
KGF(GenBank:AAB21431.1)ホモサピエンス:
ノッチアゴニスト
ジャギド−1(GenBank:ACJ68517.1)ホモサピエンス:
ジャギド−1ペプチド
ジャギド−1ペプチド
ジャギド−2[ホモサピエンス]
GenBank:AAD15562.1
デルタ1=デルタ様タンパク質1(NCBI参照配列:NP_005609.3;GenBank:AF196571.1)ホモサピエンス:
デルタ4=デルタ様タンパク質4前駆体[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_061947.1
デルタ様タンパク質3アイソフォーム1前駆体[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_058637.1
デルタ様タンパク質3アイソフォーム2前駆体[ホモサピエンス]
NCBI参照配列:NP_982353.1
5.幹細胞を分化させるための方法
単離された幹細胞(例、成体幹細胞)は、その幹細胞が起源とする組織又は臓器、又はその幹細胞が単離された組織又は臓器に、通常存する分化細胞へ分化するように誘導することができる。この分化細胞は、その分化細胞の特徴となるマーカーを発現し得るので、そのような分化細胞マーカーを発現しない幹細胞から容易に識別することができる。
成体幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、KRT19、KRT7、LGR5、CA9、FXYD2、CDH6、CLDN18、TSPAN8、BPIFB1、OLFM4、CDH17、及びPPARGC1Aが含まれる。
特定の態様において、成体幹細胞は、本明細書に記載される分化マーカーのいずれも発現しないか又は無視し得るほどに発現する。
成体小腸幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、OLFM4、SOX9、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、CDH17、及びTSPAN8が含まれる。
分化小腸細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、MUC又はPAS(杯細胞マーカー)、CHGA(神経内分泌細胞マーカー)、LYZ(パネート細胞マーカー)、MUC7、MUC13、及びKRT20が含まれる。
成体肝幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、KRT19、KRT7、FXYD2、及びTSPAN8が含まれる。
分化肝細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、アルブミン、HNF1α、HNF4α、及びAFPが含まれる。
成体膵幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、KRT19、KRT7、FXYD2、CA9、及びCDH6が含まれる。
成体胃幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、SOX2、CLDN18、TSPAN8、KRT7、KRT19、BPIFB1、及びPPARGC1Aが含まれる。
成体結腸幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、OLFM4、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、及びPPARGC1Aが含まれる。
成体腸上皮化生幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、SOX9、CDH17、HEPH、及びRAB3Bが含まれる。
腸上皮化生幹細胞は、成熟した腸上皮化生を模倣する円柱上皮へ分化し得て、Cdx2とビリンなどのマーカーを発現するが、GKN1などの胃上皮マーカーを発現しない。
成体腎幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、KRT19、KRT7、FXYD2、及びCDH6が含まれる。
成体上気道幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、KRT14、KRT5、P63、KRT15、及びSOX2が含まれる。
輸卵管幹細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、ZFPM2、CLDN10、及びPAX8が含まれる。
分化輸卵管細胞において発現される代表的なマーカーのリストには、FOXJ1とPAX2が含まれる。
当該技術分野では、上記に記載のマーカーのいずれもよく知られていて、その発現は、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、免疫組織化学、免疫蛍光染色、in situ RNAハイブリダイゼーション、等のような、当該技術分野で承認されている多くの方法のいずれによっても立証することができる。
特定の態様において、どの特異的マーカー遺伝子の発現レベルも、リアルタイムPCRなどの定量法を使用して評価し得て、幹細胞と分化細胞の間で比較することができる。図4と実施例7を参照のこと。
特定の態様では、インスリンを分泌しない膵幹細胞から分化した膵細胞によるインスリンの分泌などの、分化細胞の機能を検出することによって分化について評価し得る。
当該技術分野では、単離された幹細胞の誘導分化の条件がよく知られている。
例えば、膵幹細胞の分化を促進又は誘導するように設計された分化培地は、該培地において膵幹細胞を約2、3、4、5、6、7、8、9、10日以上培養した後で、少なくとも1つの膵臓分化マーカーの発現を誘導することが可能である。
膵臓分化マーカーのニューロゲニン−3を使用して、分化の開始及び/又は程度について評価することができる。このマーカー発現レベルは、RT−PCRによるか又は免疫組織化学によって検出することができる。
代表的な膵臓分化培地(例、最小分化培地)は、表皮成長因子、WntアゴニストとしてのR−スポンジンを含み、B27、N2、及びN−アセチルシステインが補充されて、FGFもKGFもFGF10も含有しない。
別の代表的な膵臓分化培地(例、改善型分化培地)は、BMP阻害剤としてのノギン、マイトジェニック増殖因子として表皮成長因子と角化細胞増殖因子の両方、そしてWntアゴニストとしてのR−スポンジンを含み、B27、N2、及びN−アセチルシステインが補充され(KGFは、FGFに、又はFGF10に交換してよい)、そして[Leul5]−ガストリンI及び/又はエキセンディン(Exendin)が補充される。
追加の分化培地が、細胞を胃の系統へ向けて分化させるように設計されて、マイトジェニック増殖因子としての表皮成長因子、WntアゴニストとしてのR−スポンジン1、WntアゴニストとしてのWnt−3a、BMP阻害剤としてのノギン、及びFGF10を含み、B27、N2、N−アセチルシステイン、及びガストリンが補充される。ガストリンは、好ましくは、1nMの濃度で使用される。
該培地は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10日間の培養、又はより長い間の培養の間に、細胞の胃の系統への特異的な分化を誘導又は促進する。MUC5AC(ピット細胞マーカー)、ガストリン及び/又はソマトスタチン(いずれも、内分泌細胞マーカー)などの、胃系統に関連した特異的マーカーの存在を検出することによって、分化について測定し得る。前記マーカーの少なくとも1つの存在(の検出)は、RT−PCR、及び/又は免疫組織化学又は免疫蛍光法を使用して行うことができる。これらマーカーの少なくとも1つの存在は、この分化条件において少なくとも6日後、又は少なくとも10日後に検出可能になり得る。
なお別の分化培地は、Glutamax、ペニシリン/ストレプトマイシン、10mM Hepes、B27、N2、200ng/ml N−アセチルシステイン、10nM[Leu15]−ガストリンI、100nM エキセンディン4、50ng/ml EGF、1μg/ml R−スポンジン1、100ng/ml ノギンを補充した改良型DMEM/F12を含む。
WO2010/090513、WO2012/014076、WO2012/168930、及びWO2012/044992(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)には、さらなる分化培地について記載されている。
下記の実施例(実施例7〜10、13、及び14を参照のこと)には、追加の分化培地について詳しく記載されて、その条件及び変種も本節の一部を構成する。
6.マーカー
本節は、異なる組織又は臓器から単離された幹細胞、又はそれから分化した細胞を同定するために使用し得る代表的なマーカー遺伝子について記載する。一般に、下記に記載されるマーカーのいずれでも、遺伝子発現をRNAレベルで測定し得る。加えて、特定のマーカーの発現は、例えば、そのマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質に特異的な抗体を使用して、タンパク質の発現によっても検出することができる。
成体小腸幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト小腸幹細胞は、以下のバイオマーカー:OLFM4、SOX9、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、CDH17、TSPAN8の1以上を発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はSOX9、CLDN18、CA9、KRT19、CDH17、及びTSPAN8では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体結腸幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト結腸幹細胞は、以下のバイオマーカー:OLFM4、SOX9、LGR5、CLDN18、CA9、BPIFB1、KRT19、及びPPARGC1Aの少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はSOX9、CLDN18、CA9、及びKRT19では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体胃幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト胃幹細胞は、以下のバイオマーカー:SOX9、SOX2、CLDN18、TSPAN8、KRT7、KRT19、BPIFB1、PPARGC1Aの少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はSOX9、SOX2、CLDN18、TSPAN8、KRT7、及びKRT19では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体肝幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト肝幹細胞は、以下のバイオマーカー:SOX9、KRT7、KRT19、FXYD2、及びTSPAN8の少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はSOX9、KRT7、KRT19、及びTSPAN8では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体膵幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト膵幹細胞は、以下のバイオマーカー:SOX9、KRT7、KRT19、FXYD2、CA9、及びCDH6の少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はSOX9、KRT7、KRT19、及びCA9では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体腎幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト腎幹細胞は、以下のバイオマーカー:KRT7、KRT19、FXYD2、及びCDH6の少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれもRNAレベルで、又はKRT7とKRT19では、タンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
輸卵管幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト輸卵管幹細胞は、以下のバイオマーカー:ZFPM2、CLDN10、及びPAX8の少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれも、RNAレベルで遺伝子発現を測定し得る。
成体腸上皮化生幹細胞
その未分化状態において、成体ヒト腸上皮化生幹細胞は、以下のバイオマーカー:SOX9、CDH17、HEPH、及びRAB3Bの少なくとも1つを発現する。上記マーカーのいずれも、RNA又はタンパク質レベルで遺伝子発現を測定し得る。
特異的マーカー遺伝子とそれらの配列を共に提供する。
BPIFB1
BPIフォールド含有ファミリーB、メンバー1(BPIFB1)は、BPI/LBP/PLUNCタンパク質スーパーファミリーのメンバーである。BPIFB1は、LPLUNC1又はC20orf114としても知られている。小腸幹細胞、結腸幹細胞、及び胃幹細胞において、BPIFB1の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_033197.2)を下記に記載する:
CA9
MN又はCAIXとしても知られている炭酸脱水酵素IX(CA9)は、膜貫通タンパク質であって、亜鉛メタロ酵素の大きなファミリーに属する。
小腸幹細胞、結腸幹細胞、及び膵幹細胞では、CA9の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。タンパク質発現は、例えば、CA9の免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって測定可能であって、それを使用してこの幹細胞を特徴付けることができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope(カタログ番号:559341)より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ);OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)又は Abnova(内湖区、台北市、台湾)より入手することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_001216)を下記に記載する:
CDH17
LIカドヘリン(肝臓−腸)、ヒトペプチドトランスポーター1(HPT1又はHPT−1)、又はCDH16としても知られているカドヘリン17(CDH17)は、カドヘリンスーパーファミリーのメンバーである。小腸幹細胞と腸上皮化生幹細胞において、CDH17の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによってRNA発現を測定することができる。例えば、CDH17の免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって測定可能なタンパク質発現を使用して、その幹細胞を特徴付けることができる。
In situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)又は Abnova(内湖区、台北市、台湾)より入手することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_004063.3;転写変異体1と、NM_001144663.1;転写変異体2)を下記に記載する:
NCBI参照配列:NM_004063.3;転写変異体1
NCBI参照配列:NM_001144663.1;転写変異体2
CDH6
CAD6又はKCADとしても知られているカドヘリン6(2型)、K−カドヘリン(胎児腎臓)(CDH6)は、血液親和的に(hemophilic)細胞−細胞結合に媒介する、カドヘリンスーパーファミリーカルシウム依存型細胞−細胞接着分子のメンバーである。全長のCDH6 cDNAは、Shimoyama et al. 1995 (Cancer Res. 55: 2206-2211) によってクローン化された。膵幹細胞と腎幹細胞において、CDH6の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。
In situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_004932.3)を下記に記載する:
CLDN18
サーファクタント関連5(SFTA5)、サーファクタント関連タンパク質J、又はSFTPJとしても知られているクローディン18(CLDN18)は、クローディンファミリーのメンバーである。クローディンは、膜内在性タンパク質であって、タイトジャンクション(tight junction)鎖の成分である。小腸幹細胞、結腸幹細胞、及び胃幹細胞において、CLDN18の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。例えば、CLDN18の免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって測定可能なタンパク質発現を使用して、その幹細胞を特徴付けることができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、又は Abnova(内湖区、台北市、台湾)より入手することができる。例えば、Niimi et al.(Mol. Cell Biol. 2001, 21(21): 7380-90)は、RT−PCRプライマーとCLDN18特異抗体の産生、そして2種のアイソフォーム間の差異(アイソフォーム2は、胃に頻発する)について記載する。
そのヒトcDNA配列(NM_016369.3 クローディン−18アイソフォーム1前駆体とNM_001002026.クローディン−18アイソフォーム2)を下記に記載する:
NCBI参照配列:NM_016369.3 クローディン−18アイソフォーム1前駆体
NCBI参照配列:NM_001002026.2 クローディン−18アイソフォーム2
FXYD2
HOMG2又はATP1G1としても知られている、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター2(FXYD2)は、膜貫通タンパク質のFXYDファミリーのメンバーである。この特別なタンパク質は、ナトリウム/カリウム輸送性ATPアーゼサブユニットγをコードする。
肝幹細胞、膵幹細胞、及び腎幹細胞において、FXYD2の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA配列(NM_001680.4 ナトリウム/カリウム輸送性ATPアーゼサブユニットγアイソフォーム1と、NM_021603.3 ナトリウム/カリウム輸送性ATPアーゼサブユニットγアイソフォーム2)を下記に記載する:
NCBI参照配列:NM_001680.4 ナトリウム/カリウム輸送性ATPアーゼサブユニットγアイソフォーム1
NCBI参照配列:NM_021603.3 ナトリウム/カリウム輸送性ATPアーゼサブユニットγアイソフォーム2
HEPH
CPLとしても知られているへファエスチン(HEPH)は、鉄輸送タンパク質に似ている。異なるアイソフォームをコードする3種の転写変異体について記載されている。
腸上皮化生幹細胞において、HEPH発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA配列(NM_138737.3 へファエスチンアイソフォームa;NM_014799.2 へファエスチンアイソフォームb、及びNM_001130860.2 へファエスチンアイソフォームc前駆体)を下記に記載する:
NCBI参照配列:NM_138737.3 へファエスチンアイソフォームa
NCBI参照配列:NM_014799.2 へファエスチンアイソフォームb:
NCBI参照配列:NM_001130860.2 へファエスチンアイソフォームc前駆体
KRT19
K19;CK19;K1CSとしても知られているケラチン19(KRT19)は、ケラチンファミリーのメンバーである。KRT19は、知られている中で最小(40kD)の酸性ケラチンであって、培養時の上皮細胞において発現されることが示された(Savtchenko et al. 1988, Am. J. Hum. Genet. 43:630-637; Bader et al. 1988, Europ. J. Cell Biol. 47:300-319)。小腸幹細胞、結腸幹細胞、胃幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、及び腎幹細胞において、KRT19の発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。In situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ);Abnova(内湖区、台北市、台湾);又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_002276.4)を下記に記載する:
KRT7
K7;CK7;SCL;又はK2C7としても知られているケラチン7(KRT7)は、ケラチンファミリーのメンバーである。KRT7は、単層非角化上皮のII型ケラチンである(Glass et al., 1985, J. Cell Biol. 101:2366-237)。胃幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、及び腎幹細胞において、KRT7の発現が検出されている。RNAレベル又はタンパク質レベルのいずれでも発現を検出し得る。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_005556.3 ケラチン、II型細胞骨格7)を下記に記載する:
LGR5
GRP49、FEX、HG38、又はGPR67としても知られているLGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役型受容体5)は、小腸及び結腸中の幹細胞のマーカーである(Barker, N. et al. 2007; Nature 449: 1003-1007)。小腸幹細胞と結腸幹細胞において、LGR5 RNAの発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。例えば、マウスLgr5の1kbのN末端断片を含む in situ プローブを Image Clone 30873333 より産生することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope(カタログ番号:311021)より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA配列(NCBI参照配列:NM_003667.2)を下記に記載する。
OLFM4
抗アポトーシスタンパク質、GW112;G−CSF被刺激クローン1タンパク質;GC1;OLM4;OlfD;hGC−1;hOLfD;UNQ362;bA209J19.1としても知られているOLFM4(オルファクトメジン4)は、元は、ヒト筋芽細胞からクローン化されて、炎症性の結腸上皮において選択的に発現されることが見出された(Shinozaki et al. (2001, Gut 48: 623-239)。OLFM4は、van der Flier et al., 2009 (Gastroenterology 137(1):15-7) によって、確固たる幹細胞マーカーとして記載された。小腸幹細胞と結腸幹細胞において、BPIFB1のRNA発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_006418.4)を下記に記載する:
PPARGC1A
LEM6;PGC1;PGC1A;PGC−1v;PPARGC1;又はPGC−1(α)としても知られているペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ、コアクチベーター1α(PPARGC1A)は、エネルギー代謝に関与する遺伝子を調節する転写コアクチベーターである。このタンパク質は、PPARγと相互作用して、それにより多数の転写因子とこのタンパク質の相互作用が可能になる。結腸幹細胞と胃幹細胞において、PPARGC1AのRNA発現が検出されている。例えば、RT−PCR、RT−qPCR、RNA−Seq、マイクロアレイアプローチ、又はRNA in situ ハイブリダイゼーションによって、RNA発現を測定することができる。in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_013261.3)を下記に記載する:
RAB3B
RAB3Bは、RAS癌遺伝子ファミリー(RAB3B)のメンバーであって、上皮細胞において発現される、多量体免疫グロブリン受容体である(Van IJzendoorn et al. 2002, Dev. Cell 2:219-228)。免疫染色法によって、RAB3Bタンパク質の腸上皮化生幹細胞における発現が検出されている。RNAレベル又はタンパク質レベルのいずれでも発現を検出し得る。例えば、RT−PCR、RNA in situ ハイブリダイゼーション、又はRNA−Seq、又はマイクロアレイによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)と QIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)、Abcam(例えば、抗RAB3B抗体;cデータ番号:ab55655)(マサチューセッツ州ケンブリッジ、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_002867.3)を下記に記載する:
SOX2
ANOP3;MCOPS3としても知られているSRY(性決定領域Y)ボックス2(SOX2)は、転写因子のSRY関連HMGボックス(SOX)ファミリーのメンバーである。SOX2は、胚性幹細胞の多能性に不可欠であって、リプログラミングにおいてある役割を担うことが示された(Takahashi and Yamanaka, 2006, Cell 126: 663-676)。SOX2発現の検出が胃幹細胞において観測されている。RNAレベル又はタンパク質レベルのいずれでも発現を検出し得る。例えば、RT−PCR、RNA in situ ハイブリダイゼーション、又はRNA−Seq、又はマイクロアレイによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_003106.3)を下記に記載する:
SOX9
CMD1;SRA1;CMPD1としても知られているSRY(性決定領域Y)ボックス9(SOX9)は、転写因子のSRY関連HMGボックス(SOX)ファミリーのメンバーである。SOX9は、当初、軟骨形成と性決定におけるその役割について記載されたが、より最近では、上皮細胞におけるその役割が検討されている(Furuyama et al. 2011, Nature Genet. 43:34-41)。SOX9発現の検出が、腸幹細胞、胃幹細胞、結腸幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、及び腸上皮化生幹細胞において観測されている。RNAレベル又はタンパク質レベルのいずれでも発現を検出し得る。例えば、RT−PCR、RNA in situ ハイブリダイゼーション、又はRNA−Seq、又はマイクロアレイによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_000346.3)を下記に記載する:
TSPAN8
CO−029;TM4SF3としても知られているテトラスパニン8(TSPAN8)は、テトラスパニンファミリーとしても知られている膜貫通4スーパーファミリーのメンバーである。小腸幹細胞、胃幹細胞、及び肝幹細胞において、TSPAN8の発現が検出されている。RNAレベル又はタンパク質レベルのいずれでも発現を検出し得る。例えば、RT−PCR、RNA in situ ハイブリダイゼーション、又はRNA−Seq、又はマイクロアレイによって、RNA発現を測定することができる。例えば、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、又はELISAによって、タンパク質発現を検出することができる。
in situ プローブは、例えば、Advanced Cell Diagnostics RNAscope より入手することができる。qPCRプライマーは、OriGene Technologies(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)とQIAGEN(メリーランド州ジャーマンタウン)、及び他の供給業者より入手することができる。当該技術分野で知られた方法を使用して、RT−PCRプライマーと in situ プローブを設計することができる。抗体は、例えば、R&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)、EMD ミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ、アメリカ)、Novus Biologicals(コロラド州リットルトン、アメリカ)、OriGene Technologies 社(メリーランド州ロックヴィル、アメリカ)、Abnova(内湖区、台北市、台湾)、又は Santa Cruz Biotechnology 社(テキサス州ダラス、アメリカ)より入手することができる。
そのヒトcDNA(NCBI参照配列:NM_004616.2)を下記に記載する:
7.使用の方法
さらなる側面において、本発明は、様々な非胚性培養物から単離される主題の幹細胞の、医薬探索スクリーニング、毒性アッセイ、動物ベースの疾患モデル、又は再生医療などの医療における使用を提供する。
クローン化幹細胞の遺伝子操作
例えば、本発明の方法によって単離される幹細胞は、目的の1以上の標的遺伝子の発現を調節し得る外因性遺伝物質の導入を含めて、数多くの種類の遺伝子操作に適している。例えば、損傷組織又は病変組織を修復することへ指向される方法において、この種の遺伝子治療を使用することができる。簡潔に言えば、アデノウイルス、レンチウイルス、又はレトロウイルスの遺伝子送達担体(下記参照)が含まれる、どの好適なベクターも、DNA及び/又はRNAなどの遺伝情報を主題の幹細胞のいずれにも送達するために使用し得る。当業者は、遺伝子治療において標的の特定の遺伝子を置換又は修復することができる。例えば、非機能的な遺伝子に置き換えるために、正常な遺伝子を病変細胞のゲノム内の非特異的な位置へ挿入し得る。別の例では、相同的組換えにより、異常な遺伝子配列を正常な遺伝子配列に置き換えることができる。あるいは、選択的な復帰突然変異により、ある遺伝子をその正常な機能へ戻すことができる。さらなる例は、特別な遺伝子の調節(遺伝子がオン又はオフになる度合い)を改変することである。好ましくは、幹細胞は、遺伝子治療アプローチによってエクスビボで処理されて、引き続き、哺乳動物、好ましくは、治療の必要なヒトへ移される。
様々な種類の核酸構築体によるトランスフェクションと感染(例えば、ウイルスベクターによる)を含めて、遺伝子操作について当該技術分野で承認されているどの方法も、このように単離される幹細胞へ適用し得る。
例えば、化学物質又は生物学的ベクター(ウイルス)を使用する物理的処理(例、エレクトロポレーション、ソノポレーション、光学トランスフェクション、原形質融合、イムパレフェクション(impalefection)、流体力学的送達、ナノ粒子、マグネトフェクション)によって、異種核酸(例、DNA)を主題の幹細胞中へ導入することができる。化学品ベースのトランスフェクションは、リン酸カルシウム、シクロデキストリン、ポリマー(例、DEAE−デキストラン又はポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマー)、デンドリマーなどの高分岐鎖有機化合物、リポソーム(カチオン性リポソームなどの、リポフェクタミン(Lipofectamine)を使用するリポフェクションなどのリポフェクション、等)、又はナノ粒子(化学品又はウイルス機能化を伴うか又は伴わない)に基づくことができる。
核酸構築体は、目的の核酸分子を含んで、一般的には、目的の核酸分子が導入された細胞におけるその発現を指令することが可能である。
特定の態様において、核酸構築体は、発現ベクターであり、ここでは、ポリペプチドなどの遺伝子産物をコードする核酸分子、又はポリペプチドの発現に拮抗する核酸(例、siRNA、miRNA、shRNA、アンチセンス配列、アプタマー、リボザイム、等)が、その標的細胞(例、単離される幹細胞)における核酸分子の発現を指令することが可能なプロモーターへ操作可能にリンクしている。
「発現ベクター」という用語は、一般に、それが含有する遺伝子/核酸分子の、そのような配列と適合可能な細胞における発現を有効にすることが可能である核酸分子を意味する。これらの発現ベクターには、典型的には、好適なプロモーター配列が少なくとも含まれて、任意に転写終結シグナルが含まれてもよい。本発明の方法において確定されるようなインビトロの細胞培養物への導入とその中での発現が可能なDNA/核酸構築体の中へ、ポリペプチドをコードする核酸又はDNA又はヌクレオチド配列を組み込む。
特定の細胞中への導入用に調製されるDNA構築体には、典型的には、該細胞によって認識される複製システム、所望のポリペプチドをコードするように意図されたDNAセグメント、並びにそのポリペプチドをコードするセグメントへ操作可能的にリンクした転写及び翻訳の開始及び終結の調節配列が含まれる。DNAセグメントは、それが別のDNAセグメントと機能的に関連するように配置されるとき、「操作可能にリンクしている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、それがコーディング配列の転写を刺激するならば、その配列に操作可能にリンクしている。シグナル配列のDNAは、それがポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されるならば、ポリペプチドをコードするDNAに操作可能にリンクしている。一般に、操作可能にリンクしているDNA配列は、隣接していて、シグナル配列の場合は、隣接しているだけでなくて同じリーディングフェーズにある。しかしながら、エンハンサーは、その転写をそれらが制御するコーディング配列と隣接している必要はない。リンクは、簡便な制限部位で、又はそれらに代わって挿入されるアダプター又はリンカーでのライゲーションによって達成される。
適正なプロモーター配列の選択は、DNAセグメントの発現のために選択される宿主細胞に概して依存する。好適なプロモーター配列の例には、当該技術分野でよく知られている真核細胞プロモーターが含まれる(例えば、Sambrook and Russell「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第三版、2001 を参照のこと)。転写調節配列には、典型的には、該細胞によって認識される異種のエンハンサー又はプロモーターが含まれる。好適なプロモーターには、CMVプロモーターが含まれる。発現ベクターには複製システムが含まれて、転写及び翻訳の調節配列を、そのポリペプチドコード化セグメントのための挿入部位と一緒に利用することができる。細胞系と発現ベクターの実行可能な組合せの例は、Sambrook and Russell (2001, 上記) と Metzger et al. (1988) Nature 334: 31-36 に記載されている。
本発明のいくつかの側面は、上記に定義されるようなヌクレオチド配列を含む核酸構築体又は発現ベクターの使用に関し、ここでベクターは、遺伝子治療に適しているベクターである。当該技術分野では、Anderson (Nature 392: 25-30, 1998); Walther and Stein (Drugs 60: 249-71, 2000); Kay et al. (Nat. Med. 7: 33-40, 2001); Russell (J. Gen. Virol. 81:2573-604, 2000); Amado and Chen (Science 285:674-6, 1999); Federico (Curr. Opin. Biotechnol. 10:448-53, 1999); Vigna and Naldini (J. Gene Med. 2:308-16, 2000); Marin et al. (Mol. Med. Today 3:396-403, 1997); Peng and Russell (Curr. Opin. Biotechnol. 10:454-7, 1999); Sommerfelt (J. Gen. Virol. 80:3049-64, 1999); Reiser (Gene Ther. 7: 910-3, 2000); 並びに、これらの中で引用された参考文献(すべて参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、遺伝子治療に適しているベクターが知られている。例には、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ関連ウイルス(AAV)、レンチウイルス、ポックスウイルス、αウイルス、及びヘルペスウイルスに基づくものなどの、組込み型及び非組込み型のベクターが含まれる。
特に好適な遺伝子治療ベクターには、アデノウイルス(Ad)とアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターが含まれる。これらのベクターは、広範の分裂及び非分裂細胞種に感染する。加えて、アデノウイルスベクターは、高レベルの導入遺伝子発現が可能である。しかしながら、上記に示されるように、アデノウイルス及びAAVベクターの細胞侵入後のエピソーム性の故に、これらのウイルスベクターが最も適しているのは、導入遺伝子の一過性の発現だけが必要とされる治療応用である(Russell, J. Gen. Virol. 81:2573-2604, 2000; Goncalves, Virol J. 2(1):43, 2005)。Russell(2000, 上記)によって概説されるように、好ましいアデノウイルスベクターは修飾して、宿主応答を低下させている。AAV遺伝子導入の安全性と効能については、ヒトにおいて広汎に研究されてきて、肝臓、筋肉、CNS、及び網膜において有望な結果が得られている(Manno et al., Nat. Medicine 2006; Stroes et al., ATVB 2008; Kaplitt, Feigin, Lancet 2009; Maguire, Simonelli et al. NEJM 2008; Bainbridge et al., NEJM 2008)。
AAV2は、ヒトと実験モデルの両方での遺伝子導入研究で最も特徴付けられている血清型である。AAV2は、骨格筋、ニューロン、血管平滑筋細胞、及び肝細胞に対して天然の親和性を提示する。アデノ関連ウイルスベースの非組込み型ベクターの他の例には、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及び偽型AAVが含まれる。対象におけるこれらの免疫学的応答を克服するには、AAV8やAAV9などの非ヒト血清型の使用が有用である可能性があって、臨床試験が開始されたばかりである(ClinicalTrials dot gov Identifier: NCT00979238)。肝細胞への遺伝子導入には、アデノウイルス血清型5又はAAV血清型2、7、又は8が有効なベクターであって、故に好ましいAd又はAAV血清型であることが示されている(Gao, Molecular Therapy 13:77-87, 2006)。
本発明における応用の例示となるレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベースの発現構築体である。レンチウイルスベクターには、非分裂細胞に感染する独自の能力がある(Amado and Chen, Science 285:674-676, 1999)。レンチウイルスベースの発現構築体の構築及び使用の方法については、米国特許第6,165,782号、6,207,455号、6,218,181号、6,277,633号、6,323,031号と、Federico (Curr. Opin. Biotechnol. 10:448-53, 1999) 及び Vigna et al. (J. Gene Med. 2:308-16, 2000) に記載されている。
一般に、遺伝子治療ベクターは、(上記に示したような適正な調節配列へあるヌクレオチド配列が操作可能にリンクしていることによって)発現される本発明の遺伝子産物(例、ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列をそれらが含むという点で、上記に記載の発現ベクターであろう。そのような調節配列は、少なくともプロモーター配列を含むものである。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現に適した、遺伝子治療ベクター由来のプロモーターには、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、マウスモロニー白血病ウイルス(MMLV)、ラウス肉腫ウイルス、又はHTLV−1由来などの、ウイルスの長鎖末端反復プロモーター(LTR)、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、及び単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。追加の好適なプロモーターについては、下記に記載する。
低分子の有機又は無機化合物の投与によって誘導され得る、いくつかの誘導可能なプロモーターシステムについて記載されてきた。そのような誘導可能プロモーターには、メタロチオネインプロモーターのように、重金属によって制御されるもの(Brinster et al., Nature 296:39-42, 1982; Mayo et al., Cell 29:99-108, 1982)、RU−486(プロゲステロンアンタゴニスト)(Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:8180-8184, 1994)、ステロイド類(Mader and White, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5603-5607, 1993)、テトラサイクリン(Gossen and Bujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551, 1992; 米国特許第5,464,758号; Furth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9302-9306, 1994; Howe et al., J. Biol. Chem. 270:14168-14174, 1995; Resnitzky et al., Mol. Cell. Biol. 14:1669-1679, 1994; Shockett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6522-6526, 1995)によって制御されるもの、そしてVP16の活性化ドメインとしてのtetRポリペプチドとエストロゲン受容体のリガンド結合ドメインから構成されるマルチキメラトランスアクチベーター(multi-chimeric transactivator)に基づいたtTAERシステム(Yee et al., 2002, US 6,432,705)が含まれる。
特定遺伝子のRNA干渉によるノックダウン(下記参照)のための低分子RNAをコードするヌクレオチド配列に適したプロモーターには、上記に述べたポリメラーゼIIプロモーターに加えて、ポリメラーゼIIIプロモーターが含まれる。RNAポリメラーゼIII(polIII)は、5S、U6、アデノウイルスVA1、ヴォールト(Vault)、テロメラーゼRNA、及びtRNAが含まれる、核内及び細胞質にある多種多様な低分子の非コーディングRNAの合成を担当する。これらのRNAをコードする多数の遺伝子のプロモーター構造が決定されて、RNA polIIIプロモーターが3種類の構造へ分類されることが見出されている(概説については、Geiduschek and Tocchini-Valentini, Annu. Rev. Biochem. 57: 873-914, 1988; Willis, Eur. J. Biochem. 212:1-11, 1993; Hernandez, J. Biol. Chem. 276:26733-36, 2001 を参照のこと)。siRNAの発現に特に適しているのは、5’−フランキング領域(即ち、転写開始部位の上流)にのみ見出されるシス作用性因子(elements)によって転写が推進される、RNA polIIIプロモーターの3型である。上流の配列因子には、伝統的なTATAボックス(Mattaj et al., Cell 55:435-442, 1988)、近位配列因子、及び遠位配列因子(DSE;Gupta and Reddy, Nucleic Acids Res. 19:2073-2075, 1991)が含まれる。この3型pol IIIプロモーターの制御下にある遺伝子の例は、U6低分子核内RNA(U6 snRNA)、7SK、Y、MRP、HI、及びテロメラーゼRNA遺伝子である(例えば、Myslinski et al., Nucl. Acids Res. 21:2502-09, 2001 を参照のこと)。
遺伝子治療ベクターは、第二の又はさらなるポリペプチドをコードする、第二の又は1以上のさらなるヌクレオチド配列を含んでもよい。第二の又はさらなるポリペプチドは、発現構築体を含有する細胞の同定、選択、及び/又はスクリーニングを可能にする(選択可能な)マーカーポリペプチドであってよい。この目的に適したマーカータンパク質は、例えば、蛍光タンパク質GFPと、選択可能なマーカー遺伝子のHSVチミジンキナーゼ(HAT培地での選択用)、細菌性ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(ヒグロマイシンBでの選択用)、Tn5アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(G418での選択用)、及びジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(メトトレキセートでの選択用)、CD20、低親和性の神経成長因子遺伝子である。これらのマーカー遺伝子を入手するための供給源とそれらの使用の方法については、Sambrook and Russell「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」(第3版)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版局、ニューヨーク(2001)に提供されている。
あるいは、第二の又はさらなるヌクレオチド配列は、トランスジェニック細胞由来の被検体が必要とみなされる場合に治癒されることを可能にする、フェイルセーフ(fail-safe)機序を提供する。このようなヌクレオチド配列は、しばしば自殺遺伝子と呼ばれて、あるポリペプチドが発現されるトランスジェニック細胞を殺すことが可能である有毒物質へプロドラッグを変換することが可能である、そのポリペプチドをコードする。このような自殺遺伝子の好適な例には、例えば、大腸菌シトシンデアミナーゼ遺伝子、又は単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、及び帯状疱疹ウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子の1つが含まれ、この例では、対象中のIL−10トランスジェニック細胞を殺すためのプロドラッグとして、ガンシクロビルを使用し得る(例えば、Clair et al., Antimicrob. Agents Chemother. 31:844-849, 1987 を参照のこと)。
特定ポリペプチドの発現のノックダウンには、RNAi作用剤(即ち、RNA干渉が可能であるRNA分子、又はRNA干渉が可能であるRNA分子の一部であるRNA分子)を好ましくはコードする、所望されるヌクレオチド配列の発現のために、遺伝子治療ベクター又は他の発現構築体を使用する。このようなRNA分子は、siRNA(短鎖干渉性RNA、例えば、ショートヘアピンRNAが含まれる)と呼ばれる。
所望されるヌクレオチド配列は、標的遺伝子mRNAの領域に対するアンチセンスRNAをコードするアンチセンスコードDNA、及び/又は標的遺伝子mRNAの同じ領域に対するセンスRNAをコードするセンスコードDNAを含む。本発明のDNA構築体では、アンチセンスコードDNAとセンスコードDNAが、本明細書の上記に定義したような1以上のプロモーターへ操作可能にリンクしており、アンチセンスRNAとセンスRNAをそれぞれ発現することが可能である。「siRNA」には、哺乳動物細胞において有害でない短鎖二本鎖RNAである、低分子干渉性RNAが含まれる(Elbashir et al., Nature 411:494-98, 2001; Caplen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA98:9742-47, 2001)。その長さは、必ずしも21〜23個のヌクレオチドに限定されない。siRNAの長さには、それが毒性を示さない限り、特に制限がない。「siRNA」は、例えば、少なくとも約15、18、又は21個のヌクレオチドであって、25、30、35、又は49個までの長さのヌクレオチドであり得る。あるいは、発現されるsiRNA最終転写産物の二本鎖RNA部分は、例えば、少なくとも約15、18、又は21個のヌクレオチドであって、25、30、35、又は49個までの長さのヌクレオチドであり得る。
「アンチセンスRNA」は、好ましくは、標的遺伝子mRNAに相補的な配列を有して、標的遺伝子mRNAへ結合することによってRNAiを誘導すると考えられるRNA鎖である。
「センスRNA」は、アンチセンスRNAに相補的な配列を有して、その相補的なアンチセンスRNAへアニールしてsiRNAを形成する。
本文脈での「標的遺伝子」という用語には、本システムによって発現されるsiRNAによりその発現が沈静化され得る遺伝子が含まれて、任意に選択することができる。この標的遺伝子としては、例えば、その配列が知られているがその機能についてはまだ解明されていない遺伝子、そしてその発現が病気の原因であると考えられている遺伝子が好ましくは選択される。標的遺伝子は、siRNAの鎖の1つ(アンチセンスRNA鎖)へ結合することが可能な長さである、少なくとも15個以上のヌクレオチドを有する該遺伝子のmRNAの部分配列が決定されていさえすれば、そのゲノム配列が完全に解明されていなくてもよい。故に、その一部の配列(好ましくは、少なくとも15個のヌクレオチド)が解明されている、遺伝子、発現配列タグ(EST)、及びmRNAの部分は、たとえその全長配列が決定されていなくても、「標的遺伝子」として選択してよい。
2つのRNA鎖が対合する、siRNAの二本鎖RNA部分は、完全に対合した部分に限定されず、ミスマッチ(対応するヌクレオチドは、相補的でない)、バルジ(一方の鎖で、対応する相補的なヌクレオチドが不足している)、等による非対合部分を含有してよい。非対合部分は、それらがsiRNA形成に干渉しない程度まで抑えることができる。
本発明において使用される「バルジ」は、1〜2個の非対合ヌクレオチドを含んでよくて、2つのRNA鎖が対になるsiRNAの二本鎖RNA領域は、好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個のバルジを含有する。
本明細書に使用する「ミスマッチ」という用語は、2つのRNA鎖が対合するsiRNAの二本鎖RNA領域において、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜5の数で含有され得る。あるミスマッチでは、ヌクレオチドの一方がグアニンであって、他方がウラシルである。このようなミスマッチは、センスRNAをコードするDNAにおける、C→T、G→A、又はこれらの混合の突然変異によるが、特にこれらに限定されない。さらに、本発明では、2つのRNA鎖が対合するsiRNAの二本鎖RNA領域がバルジとミスマッチの両方を含有してよく、これは、合計して好ましくは1〜7、より好ましくは1〜5の数になる。そのような非対合部分(ミスマッチ又はバルジ、等)は、下記に記載されるアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAの間の組換えを抑制して、下記に記載されるようなsiRNA発現システムを安定にすることができる。さらに、2つのRNA鎖が対合するsiRNAの二本鎖RNA領域に非対合部分を含有しないステムループDNAの配列決定をすることは難しいが、その配列決定は、上記に記載のようなミスマッチ又はバルジを導入することによって可能になる。なおさらに、対合している二本鎖RNA領域にミスマッチ又はバルジを含有するsiRNAには、大腸菌(E. coli)又は動物細胞において安定しているという利点がある。
siRNAの末端構造は、siRNAがそのRNAi効果により標的遺伝子発現を沈静化することが可能である限りにおいて、平滑(blunt)末端であっても、付着(突出:overhanging)末端でもよい。この付着(突出)末端構造は、3’オーバーハングだけに限定されず、それがRNAi効果を誘導することが可能である限りにおいて、5’突出構造も含めてよい。加えて、突出ヌクレオチドの数は、既報の2又は3に限定されず、そのオーバーハングがRNAi効果を誘導することが可能である限りにおいて、任意の数であり得る。例えば、オーバーハングは、1〜8個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドからなる。ここで、相補末端構造を有するsiRNAの全長は、対合した二本鎖部分の長さと、突出一本鎖を両端に含む対の長さの合計として表される。例えば、4個のヌクレオチドオーバーハングが両端にある19塩基対の二本鎖RNA部分の場合、全長は、23塩基対として表される。さらに、この突出配列は、標的遺伝子に対して低い特異性を有するので、それは、標的遺伝子配列に対して必ずしも相補的(アンチセンス)でも、同一(センス)でもない。さらに、siRNAが標的遺伝子に対するその遺伝子サイレンシング効果を維持することが可能である限りにおいて、siRNAは、例えば、その一端の突出部分に、低分子量のRNA(tRNA、rRNA、又はウイルスRNAなどの天然のRNA分子であっても、人工のRNA分子であってもよい)を含有してよい。
加えて、「siRNA」の末端構造は、必要により、上記に記載のような両端でのカットオフ構造であって、二本鎖RNAの片側の両端がリンカーRNAによって連結しているステムループ構造を有してもよい(「shRNA」)。この二本鎖RNA領域(ステムループ部分)の長さは、例えば、少なくとも15、18、又は21個のヌクレオチドであって、25、30、35、又は49個までのヌクレオチドの長さであり得る。あるいは、発現されるsiRNAの最終転写産物である二本鎖RNA領域の長さは、例えば、少なくとも15、18、又は21個のヌクレオチドであって、25、30、35、又は49個までのヌクレオチドの長さである。さらに、リンカーの長さには、それがステム部分の対合を妨げないような長さを有する限りにおいて、特に制限がない。例えば、ステム部分の安定した対合と、その部分をコードするDNA間の組換えの抑制のために、リンカー部分は、クローバーリーフtRNA構造を有してよい。たとえリンカーがステム部分の対合を妨げる長さを有しても、例えば、前駆体RNAの成熟RNAへのプロセシングの間にイントロンが切り出されて、それによってステム部分の対合を可能にするようにイントロンを含むようにリンカー部分を構築することが可能である。ステムループsiRNAの場合、ループ構造のないRNAの片端(ヘッド又はテール)は、低分子量RNAを有してもよい。上記に記載のように、この低分子量RNAは、tRNA、rRNA、snRNA、又はウイルスRNAなどの天然のRNA分子であっても、人工のRNA分子であってもよい。
アンチセンスRNAとセンスRNAをアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAからそれぞれ発現させるために、本発明のDNA構築体は、上記に定義されるようなプロモーターを含む。構築体におけるプロモーターの数と位置は、原則として、それがアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAを発現することが可能である限りにおいて、任意に選択され得る。本発明のDNA構築体の単純な例として、アンチセンスコードDNAとセンスコードDNAの両方の上流にプロモーターが位置する、タンデム発現システムを形成することができる。このタンデム発現システムは、上述のカットオフ構造を両端に有するsiRNAを産生することが可能である。ステムループのsiRNA発現システム(ステム発現システム)では、アンチセンスコードDNAとセンスコードDNAを反対方向に配置して、これらのDNAをリンカーDNAを介して連結して、1つのユニットを構築する。このユニットの片側へプロモーターが連結して、ステムループsiRNA発現システムを構築する。ここで、リンカーDNAの長さと配列には特に制限がなく、それは、その配列が終結配列ではなくて、その長さと配列が上記に記載したような成熟RNA産生中のステム部分の対合を妨げない限りにおいて、任意の長さと配列を有してよい。例として、上記のtRNAをコードするDNA等をリンカーDNAとして使用することができる。
タンデム発現システムとステムループ発現システムの両方において、5’端は、プロモーターからの転写を促進することが可能な配列を有し得る。より具体的には、タンデムsiRNAの場合、siRNA産生の効率は、アンチセンスコードDNAとセンスコードDNAの5’端でのプロモーターからの転写を促進することが可能な配列を付加することによって改善され得る。ステムループsiRNAの場合は、上記ユニットの5’端にそのような配列を付加することができる。siRNAによる標的遺伝子サイレンシングが妨げられない限りにおいて、そのような配列由来の転写産物をsiRNAへ付着している状態で使用してよい。この状態が遺伝子サイレンシングを妨げるならば、トリミング手段(例えば、当該技術分野で知られているようなリボザイム)を使用して、その転写産物のトリミングすることが好ましい。当業者には、アンチセンスRNAとセンスRNAが同じベクターにおいて発現されても、異なるベクターにおいて発現されてもよいことが明らかであろう。センスRNAとアンチセンスRNAの下流での高配列の付加を避けるには、それぞれの鎖(アンチセンスRNAとセンスRNAをコードする鎖)の3’端に転写ターミネーターを配置することが好ましい。このターミネーターは、4個以上の連続したアデニン(A)ヌクレオチドの配列であってよい。
ゲノム編集
クローン化癌(又は他の疾患)幹細胞が含まれる、主題のクローン化幹細胞のゲノム配列を、異種導入遺伝子を導入することによって、又は標的内在性遺伝子の発現を阻害することによって変化させるために、ゲノム編集を使用し得る。このような遺伝子工学的に処理された幹細胞を再生医療(下記参照)又は創傷治癒に使用することができる。従って、特定の態様において、再生医療(下記参照)の主題の方法は、そのゲノム配列がゲノム編集によって修飾された主題の幹細胞を使用する工程を含む。
ZFN/TALEN又はCRISPR技術などの、当該技術分野で承認されている任意の技術を使用して、ゲノム編集を実施することができる(Gaj et al., Trends in Biotech. 31(7): 397-405, 2013 による概説を参照のこと。この中の本文全体とすべての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。このような技術は、多様な範囲の細胞種及び生物中のほとんどすべての遺伝子を操作することを可能にして、特異的なゲノム位置での誤りがちな非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(homology-directed repair)(HDR)を刺激するDNA二本鎖(DSB)切断を誘導することによって、広範囲の遺伝子修飾を可能にする。
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)と転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、非特異的なDNA切断ドメインへ連結したプログラム可能な配列特異的DNA結合モジュールから構成されるキメラヌクレアーゼである。それらは、ジンクフィンガー又はTALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインへ融合することによって産生される人工的な制限酵素(RE)である。ジンクフィンガー(ZF)又は転写活性化因子様エフェクター(TALE)を工学的に処理して、所望される標的DNA配列へ結合させて、REのDNA切断ドメインへ融合し、それによって所望される標的DNA配列に特異的である工学的(engineer)制限酵素(ZFN又はTALEN)を創出することができる。ZFN/TALENを細胞へ導入するとき、それは、in situ でのゲノム編集に使用することができる。実際、このZFN及びTALENの普遍性は、転写アクチベーター及びレプレッサー、レコンビナーゼ、トランスポラーゼ、DNA及びヒストンメチルトランスフェラーゼ、及びヒストンアセチルトランスフェラーゼのような、ヌクレアーゼ以外のエフェクタードメインへ拡張されて、ゲノムの構造及び機能に影響を及ぼすことができる。
Cys2−His2ジンクフィンガードメインは、真核細胞において見出される最も一般的な種類のDNA結合モチーフの1つであって、ヒトゲノムにおいて二番目に頻繁にコードされるタンパク質ドメインを表す。個々のジンクフィンガーは、保存されたββα配置において約30個のアミノ酸を有する。ジンクフィンガータンパク質の特異的なDNA認識への応用の鍵になったのは、3個より多いジンクフィンガードメインを含有する非天然アレイの開発である。この進歩を促進したのは、9〜18個の塩基対の長さのDNA配列を認識する合成のジンクフィンガータンパク質の構築を可能にする、高度に保存されたリンカー配列の構造ベースの探索である。この設計は、複雑なゲノムにおいて特異的である隣接DNA配列を認識するジンクフィンガータンパク質を構築するための最適な戦略であることが証明された。モジュラー組立て方式(例えば、大きなコンビナトリアルライブラリーの選択によるか又は合理的設計によって産生される、予め選択されたジンクフィンガーモジュールのライブラリーを使用すること)によって、好適なジンクフィンガーを入手することができる。64種の可能なヌクレオチドトリプレットのほとんどすべてを認識するジンクフィンガードメインが開発されたので、予め選択されたジンクフィンガーモジュールを一緒にタンデムに連結させて、一連のこれらDNAトリプレットを含有するDNA配列を標的とすることができる。あるいは、オリゴマー化プール工学法(oligomerized pool engineering)(OPEN)のような選択ベースのアプローチを使用して、近隣フィンガー間の文脈依存的(context-dependent)相互作用を考慮に容れる、ランダム化ライブラリーより新しいジンクフィンガーアレイを選択することができる。この2つのアプローチの組合せも使用される。
工学処理されたジンクフィンガーが市販されている。Sangamo Biosciences(カリフォルニア州リッチモンド、アメリカ)は、シグマ−アルドリッチ(ミズーリ州セントルイス、アメリカ)と提携して、ジンクフィンガー構築のための専用プラットフォーム(CompoZr)を開発したが、このプラットフォームにより研究者がジンクフィンガーの構築と検証を完全に回避することが可能になって、数千ものタンパク質がすでに利用可能である。概して言えば、ジンクフィンガータンパク質技術によって、ほとんどすべての配列を標的とすることが可能である。
TALエフェクターは、植物病原性のザントモナス(Xanthomonas)菌によって分泌されるタンパク質であって、12番目と13番目のアミノ酸を例外として、反復性の高度に保存された33〜34個のアミノ酸配列を含有するDNA結合ドメインがある。これらの2つの位置は、高度に可変性(反復可変性二残基、又はRVD)であって、特異的なヌクレオチド認識との強い相関性を示す。アミノ酸配列とDNA認識との間のこの単純な関係性により、適正なRVDを含有する反復セグメントの組合せを選択することによって、特異的なDNA結合ドメインを工学処理することが可能になった。ジンクフィンガーと同様に、モジュラーTALEリピートは、一緒に連結して、隣接するDNA配列を認識する。標的とする遺伝子修飾のためにTALEリピートへ融合するのに、ヌクレアーゼ、転写活性化因子、及び部位特異的レコンビナーゼを含めて、数多くのエフェクタードメインが利用されてきた。「ゴールデンゲート(Golden Gate)」分子クローニング、ハイスループット固相アセンブリー、及びライゲーション非依存的なクローニング技術が含まれる戦略を使用することによって、カスタムTALEアレイの迅速な組立てを達成し得るので、本発明では、クローン化幹細胞のゲノム編集のために、このいずれも使用することができる。
18,740種のヒトタンパク質コーディング遺伝子を標的とするTALENのライブラリーなどの、当該技術分野で利用可能な数多くのツールを使用して、TALEリピートを容易に組み立てることができる(Kim et al., Nat. Biotechnol. 31, 251-258, 2013)。例えば、Cellectis Bioresearch(パリ、フランス)、Transposagen Biopharmaceuticals (ケンタッキー州レキシントン、アメリカ)、及び Life Technologies(ニューヨーク州グランドアイランド、アメリカ)を通して、カスタム設計されるTALEアレイも市販されている。
FokIエンドヌクレアーゼなどのRE末端由来の非特異的なDNA切断ドメイン(又は切断特異性及び/又は切断活性を高めるように設計された突然変異がある、SharkeyなどのFokI切断ドメイン変異体)を使用して、酵母アッセイにおいて有効である(又は植物細胞と動物細胞において有効である)ハイブリッドヌクレアーゼを構築することができる。ZFN活性を高めるために、一過性の低温培養条件を使用してヌクレアーゼ発現レベルを高めることができるが、DNA端プロセシング酵素と部位特異的ヌクレアーゼの同時送達と、ZFN及びTALEN修飾細胞の濃縮を可能にする蛍光サロゲートレポーターベクターの使用も使用してよい。ZFN媒介性ゲノム編集の特異性は、ジンクフィンガーニッカーゼ(ZFNickases)を使用することによっても洗練させることができるが、これは、ニック(nicked)DNAの誘導により、誤りがちなNHEJ修復経路を活性化することなくHDRが刺激されるという知見を利用するものである。
TALE結合ドメインのアミノ酸配列とDNA認識の間の単純な関係性は、設計可能なタンパク質を可能にする。公的に利用可能なソフトウェアプログラム(DNAWorks)を使用して、2工程PCRにおける組立てに適したオリゴヌクレオチドを計算することができる。当該技術分野では、工学処理されたTALE構築体を産生するためのいくつかのモジュラー組立てスキームも報告されて知られてきた。いずれの方法も、ジンクフィンガーDNA認識ドメインを産生するためのモジュラー組立て法に概念的に類似している、DNA結合ドメインの工学処理への体系的なアプローチを提供する。
当該技術分野で承認されている方法(プラスミドベクター、アデノウイルス、AAV、及びインテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクター(IDLV)などの様々なウイルスベクターを使用するか又はカチオン性脂質ベースの試薬を使用する、エレクトロポレーション又はトランスフェクションなど)を使用して、TALEN遺伝子を構築したらすぐに、ベクターで標的細胞の中へ導入する。あるいは、TALENをmRNAとして細胞へ送達することができて、これによりTALEN発現タンパク質のゲノム組込みの可能性がなくなる。それはまた、相同組換え修復(HDR)のレベルと遺伝子編集の間の遺伝子侵入の成功を劇的に高める可能性がある。最後に、精製されたZFN/TALENタンパク質の細胞中への直接送達も使用してよい。このアプローチは、挿入変異のリスクを伴わなず、核酸からの発現に依拠する送達システムよりオフターゲットの効果をもたらすことが少ないので、本発明の幹細胞などの細胞において正確なゲノム工学処理が求められる研究では、最適に使用される場合がある。
TALENを使用して、(細胞が修復機序で応答する)二本鎖切断(DSB)を導入することによって、ゲノムを編集することができる。非相同体末端結合(NHEJ)により、アニーリング用の配列の重なりがほとんど又は全く存在しない、二本鎖切断の片側由来のDNAを再結合させる。PCRによって増幅される2つの対立遺伝子間のどんな差異も検出する、簡単なヘテロ二重鎖切断アッセイ切断を実行することができる。単純アガロースゲル又はスラブゲルのシステムで切断産物を可視化することができる。あるいは、外因性二本鎖DNA断片の存在下でのNHEJにより、ゲノムの中へDNAを導入することができる。相同組換え修復はまた、トランスフェクトされた二本鎖配列を修復酵素の鋳型として使用する場合に、外因性DNAをDSBで導入することができる。安定的に修飾されるヒト胚性幹細胞を産生するのにTALENが使用されて、ノックアウト線虫(C. elegans)、ラット、及びゼブラフィッシュを産生するのに人工多能性幹細胞(iPSC)クローンが使用されてきた。
幹細胞ベースの療法のために、ZFNとTALENは、疾患の根底にある原因を矯正して、それ故に正確なゲノム修飾を用いて、その症状を永久的に消失させることが可能である。例えば、ZFN誘導HDRは、欠陥標的遺伝子を修復することによって、又は標的遺伝子をノックアウトすることによって、X連鎖重症複合免疫不全症(SCID)、血友病B、鎌状赤血球症、α1アンチトリプシン欠損症、及び数多くの他の遺伝病に関連した疾患の原因となる突然変異を直接矯正するために使用されてきた。加えて、これらの部位特異的ヌクレアーゼはまた、ヒトゲノム中の特定の「セーフハーバー(safe harbor)」位置で、治療用の導入遺伝子を主題の幹細胞の中へ安全に挿入するために使用し得る。このような技術は、本発明の幹細胞と組み合わせて、自家幹細胞移植に基づいた治療を含めて、遺伝子治療に使用することができて、ここではクローン化(疾患又は正常)幹細胞の1以上の遺伝子を操作して、標的遺伝子の発現を増やすか又は減らす/消失させる。
あるいは、主題の幹細胞を標的とする遺伝子変異(genetic alterations)を効率的に誘導するために、CRISPR/Casシステムも使用し得る。CRISPR/Cas(CRISPR関連)システム又は「クラスター化された等間隔の短い回文リピート(Clustered Regulatory Interspaced Short Palindromic Repeats)」は、多数の短い直列反復配列を含有して、細菌及び古細菌に対する獲得免疫を提供する遺伝子座である。CRISPRシステムは、侵入する外来DNAの配列特異的なサイレンシングのためにcrRNAとtracrRNAに依拠する。「tracrRNA」という用語は、crRNAプロセシングを促進する非コーディングRNAであって、Cas9によるRNA誘導性の(guided)切断を活性化するのに必要とされる、トランス活性化キメラRNAを表す。CRISPR RNA又はcrRNAは、tracrRNAと塩基対合して、Cas9エンドヌクレアーゼを切断用の相補的なDNA部位へ導く、2RNA構造を形成する。
3種類のCRISPR/Casシステムが存在し、II型システムでは、crRNA−tracrRNA標的認識時にDNAを切断するRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼとしてCas9が役立つ。細菌において、CRISPRシステムは、RNA誘導性DNA切断を介して、侵入する外来DNAに対する獲得免疫を提供する。CRISPR/Casシステムは、crRNAを再設計することによって、ほとんどすべてのDNA配列を切断するように再度標的とすることができる。実際、CRISPR/Casシステムは、Cas9エンドヌクレアーゼと必要なcrRNA成分を発現するプラスミドの同時送達によって、ヒト細胞へ直接移入可能であることが示された。これらのプログラム可能なRNA誘導性DNAエンドヌクレアーゼでは、iPS細胞における多重化された遺伝子破壊能力と標的指向性の組込みが実証されたので、主題の幹細胞においても同様に使用することができる。
癌幹細胞
本発明の方法及び試薬は、癌由来の癌幹細胞(CSC)を培養して単離することも可能にし、それはさらに、一部はそのようなCSCを大量に、そして単一細胞クローンとして入手することの不可能性の故に、これまでは行うことが不可能又は非実践的とされた数多くの応用に使用される可能性がある。
例えば、本発明の方法を使用して単一の患者から確立されるCSCのライブラリーは、指向性の医薬探索努力のための、患者が一致した感受性クローンと抵抗性クローンの間の比較を可能にする。ある遺伝子は、感受性クローンと比較して抵抗性クローンにおいて、上方調節されているか又は下方調節されている場合がある。例えば、抵抗性クローンにおける標的遺伝子の下方調節の能力について検査して、薬剤抵抗性に対するその影響を判定することによって、その上方調節遺伝子への阻害剤を薬物標的遺伝子としてさらに検証することができる。逆に、抵抗性クローンにおいて下方調節された遺伝子を回復させるか又は高発現させることも、薬剤抵抗性に打ち勝つ場合がある。
このように、1つの側面において、本発明は、薬剤抵抗性CSCクローンにおいて上方又は下方調節された遺伝子を同定するために、主題の方法及び培地を使用して単離されるCSCを使用する医薬探索法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法を使用して、癌性組織(例えば、癌患者由来のものなど)から複数の細胞クローンを入手する工程;(2)数パーセント(例えば、1%以下、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%以下)の薬剤抵抗性クローンが生存する条件の下で、その複数の細胞クローンを1以上の化学化合物(例えば、制癌薬)と接触させる工程;(3)薬剤抵抗性クローンの遺伝子発現プロフィールを感受性クローン(例えば、薬物処理に対しておそらく感受性である、工程(2)の前の、1以上の無作為抽出された複数の細胞クローン)のそれと比較して、それにより、生存している薬剤抵抗性クローンにおいて上方又は下方調節される遺伝子を同定する工程を含む。
特定の態様において、本方法は、生存している薬剤抵抗性クローンにおいて上方調節された遺伝子の発現を阻害する工程をさらに含む。例えば、この上方調節された遺伝子は、同種の腫瘍又は異種の腫瘍由来でも、同じ患者由来でも、また異なる患者由来でも、2個以上の生存している薬剤抵抗性クローンにおいて共通して上方調節される可能性がある。特定の態様において、この上方調節された遺伝子は、そのCSCが単離される患者に特異的であり得る。このことは、その患者への個別化医療又は治療レジメンを設計するのに役立つ可能性がある。
特定の態様において、本方法は、生存している薬剤抵抗性クローンにおいて下方調節された遺伝子の発現を回復させるか又は増加させる工程をさらに含む。例えば、この下方調節された遺伝子は、同種の腫瘍又は異種の腫瘍由来でも、同じ患者由来でも、また異なる患者由来でも、2個以上の生存している薬剤抵抗性クローンにおいて共通して下方調節される可能性がある。特定の態様において、この下方調節された遺伝子は、そのCSCが単離される患者に特異的であり得る。このことはまた、その患者への個別化医療又は治療レジメンを設計するのに役立つ可能性がある。
関連した側面において、本発明は、薬剤抵抗性CSCの増殖を阻害するか又はその殺傷を促進する候補化合物を同定するために、主題の方法及び培地を使用して単離されるCSCを使用する医薬探索法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法を使用して、癌性組織(例えば、癌患者由来のものなど)から複数の細胞クローンを入手する工程;(2)数パーセント(例えば、1%以下、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%以下)の薬剤抵抗性クローンが生存する条件の下で、その複数の細胞クローンを1以上の化学化合物(例えば、制癌薬)と接触させる工程;(3)生存している薬剤抵抗性クローンを複数の候補化合物と接触させる工程、及び(4)生存している薬剤抵抗性クローンの増殖を阻害するか又はその殺傷を促進する1以上の候補化合物を同定する工程を含む。特定の態様において、この方法は、抵抗性の細胞を標的とする候補薬物についてのハイスループットスクリーニング形式を使用して実施される。
特定の態様において、本方法は、感受性クローン(例えば、薬物処理に対しておそらく感受性である、工程(2)の前の、1以上の無作為抽出された複数の細胞クローン)及び/又は、CSCが単離される同じ患者由来の一致する健常細胞に対する、同定された候補化合物の一般毒性について検査する工程をさらに含む。好ましくは、どの同定された候補化合物も、一致する感受性クローン及び/又は一致する健常細胞に比較して、特異的又は優先的に、薬剤抵抗性CSCの増殖を阻害してその殺傷を促進する。
特定の態様において、健常細胞は、本発明の方法及び試薬を使用して同様に単離される、患者が一致した正常幹細胞である。
上記の態様は、多くの事例において、薬剤抵抗性CSCが薬剤感受性クローンに比較してよりゆっくり増殖するという発見に一部基づく。どの特別な理論にも束縛されずに言えば、出願人は、この遅い増殖は、化学療法を回避するための、薬剤抵抗性CSCにおける遺伝子発現の改変の結果であろうと考えている。従って、ある種の薬剤は、癌を治療するために第一に使用される標準的な化学療法薬(例えば、シスプラチン又はパクリタキセルなど)より無害である一方で、薬剤抵抗性細胞の増殖を阻害するか又はそれを殺傷する可能性があると期待される。
別の側面において、本発明は、疾患を治療することの必要な患者に適しているか又は有効な治療法を同定するための方法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法を使用して、患者由来の疾患組織(例えば、癌性組織など)から複数の幹細胞クローンを入手する工程;(2)この複数の細胞クローンを1以上の候補治療法へ処する工程;(3)前記1以上の候補治療法のそれぞれの有効性を判定し、それによって該疾患を治療することの必要な患者に適しているか又は有効な治療法を同定する工程を含む。このことは、例えば、患者にいくつかの可能な治療選択肢があって、それぞれが患者に適しているか又は有効であるか又はそうでない可能性がある場合に、有用であり得る。
関連した側面において、本発明は、疾患を治療することの必要な患者を治療するための複数の候補治療法の中で最も適しているか又は有効な治療法をスクリーニングするための方法を提供し、該方法は、(1)本発明の方法を使用して、患者由来の疾患組織(例えば、癌性組織など)から複数の幹細胞クローンを入手する工程;(2)この複数の細胞クローンを前記候補治療法へ処する工程;(3)前記1以上の候補治療法の相対的な有効性を比較し、それによって患者に最も適しているか又は有効な治療法を同定する工程を含む。このことは、例えば、特定の患者集団に対してそれぞれ有効であり得るが、必ずしも他の集団には有効でないかもしれない、いくつかの代替的な治療選択肢を患者が有する場合に、有用であり得る。
特定の態様において、疾患は、癌幹細胞を単離することができる癌のいずれでもあるような癌である。
特定の態様において、治療法は、1以上の化学療法剤を利用するもののような、化学療法レジメンである。特定の態様において、治療法は、放射線療法である。特定の態様において、治療法は、癌細胞の表面リガンド(例、表面抗原)へ特異的に結合する細胞結合剤(例、抗体)を使用するもののような、免疫療法である。特定の態様において、治療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、及び/又は免疫療法の組合せ療法である。
特定の態様において、疾患は、炎症性疾患、疾患関連の幹細胞を単離することができる疾患、又は本明細書において言及されるあらゆる疾患である。
特定の態様において、本方法は、疾患に適しているか又は有効であると同定された1以上の治療法を使用して患者を治療する工程をさらに含む。
特定の態様において、本方法は、個別に、又は組み合わせて(連続的又は同時的が含まれる)検査した候補化学療法剤のそれぞれの有効性のような、前記候補治療法のそれぞれの有効性を提供する報告書を作成する工程をさらに含む。
特定の態様において、本方法は、最も有効な治療法への推奨を提供する工程をさらに含む。
関連した側面において、本発明は、本発明の方法を行うためのキット及び試薬を提供する。
特定の態様において、本発明の一般的なスクリーニング方法(必ずしも癌幹細胞に限定されない)は、ハイスループット/自動形式で行われる。ハイスループットの目的では、増殖した幹細胞集団を、例えば96ウェルプレート又は384ウェルプレートなどのマルチウェルプレートにおいて培養することができる。分子のライブラリーを使用して、プレート培養される幹細胞に影響を及ぼす分子を同定する。好ましいライブラリーには、(制限無しに)抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例、LOPAPTM、シグマアルドリッチ)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例、LOP ACTM、シグマアルドリッチ)、又は天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec)が含まれる。さらに、幹細胞の子孫において1以上の遺伝子の発現を誘導するか又は抑制する遺伝子ライブラリーを使用することができる。これらの遺伝子ライブラリーは、cDNAライブラリー、アンチセンスライブラリー、及びsiRNAライブラリー、又は他の非コーディングRNAライブラリーを含む。
幹細胞は、好ましくは、多数の濃度の試験/候補薬剤へある特定の時間帯の間、曝露される。この曝露期間の最後に、培養物について、限定されないが、増殖の低下又は喪失、形態学的変化、及び細胞死が含まれる、細胞中のあらゆる変化などの所定の効果を評価する。
この増殖した幹細胞集団は、上皮癌細胞又はそれから単離される幹細胞を特異的に標的とするが、増殖した幹細胞集団それ自体は標的としない薬物を同定するためにも使用することができる。
癌幹細胞の容易なクローニングはまた、腫瘍破壊への免疫学的アプローチを可能にする。本明細書に記載する技術は、CSCの高効率クローニングを可能にするので、これらの細胞を免疫活性化により一掃するアプローチに役立つ情報を潜在的に提供する。
例えば、CSC(薬剤感受性又は薬剤抵抗性のいずれか)を単離するときに、このようなCSCの1以上のエピトープ、好ましくは、健常対照と比較したCSC特異的エピトープ(例えば、CSCの細胞表面又はセクレトーム上のエピトープ)は、これらのCSCを標的とするようにリンパ球に指令する抗原提示細胞(APC)にワクチン投与する(vaccinate)ために使用し得る。この免疫学的アプローチには、メラノーマに対してなされたように、免疫監視を抑制するCSCの細胞表面又はセクレトーム上の分子の同定と標的化が含まれうる。
再生医療
非胚性ヒト組織が含まれる、様々な組織供給源から単離される主題の幹細胞は、再生医療において、例えば、傷害を受けた様々な組織又は臓器の外傷後、放射線治療後、及び/又は外科手術後の修復に有用である。例えば、患者の健常組織から、又は健常ドナーから単離されたものなどの、単離された腸幹細胞を使用して、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)に罹患している患者における腸上皮の修復において、そして短腸症候群に罹患している患者における腸上皮の修復において、腸上皮を産生することができる。
小腸/結腸の遺伝病のある患者における腸上皮の修復にもさらなる使用を見出すことができる。再生医療において、例えば、膵臓又はその一部の切除後のインプラントとして、そしてI型糖尿病及びII型糖尿病などの糖尿病の治療のために、膵幹細胞を含む培養物を使用し得る。
代わりの態様では、増殖した上皮幹細胞(例、膵幹細胞)を膵臓β細胞へ分化させる。例えば、本発明のヒト膵幹細胞をマウスの腎周囲膜の下に移植して、インスリンを分泌する成熟β細胞を生成するようにこれらの細胞を分化させることができる。従って、本発明の幹細胞の集団が検出可能なレベルでインスリンを分泌しなくても、この幹細胞は、膵臓β細胞への分化のためにインビトロで培養してよくて、これらの細胞は、糖尿病などのインスリン欠損傷害の治療のための患者への移植に有用であり得る。
なお別の態様では、小さな生検又は組織試料を成体ドナーより取り出すことができて、その中の幹細胞を単離して増殖させて、分化させてもよく、再生目的のために移植可能な上皮を産生することができる。主題の幹細胞を、その幹細胞の特徴を失うことなく、そして有意な細胞死を伴うことなく凍結及び融解させて培養へ戻すことができるという事実は、主題の幹細胞の移植目的への応用可能性をさらに高める。
従って、本発明は、幹細胞又はその増殖クローン又はそれらの分化産物(又は、再生医療での使用の文脈では、まとめて「幹細胞」)を哺乳動物、好ましくはヒトへの移植における使用に提供する。また提供されるのは、本発明の幹細胞の集団を患者へ移植する工程を含む、移植の必要な患者を治療する方法であり、ここで患者は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
別の態様では、増殖された上皮幹細胞を、例えば、膵臓β細胞が含まれる膵細胞と肝細胞などの、関連した組織運命へ分化させる。
従って、本発明の別の側面は、ヒト又は非ヒト動物患者を細胞療法により治療するための方法を提供する。このような細胞療法には、本発明の幹細胞(本発明の組織適合幹細胞など)の患者への適正な手段による適用又は投与が含まれる。具体的には、そのような治療の方法には、傷害組織の再生又は創傷治癒が伴う。
本発明によれば、同種異系又は自家の幹細胞又はそのクローン増殖物で患者を治療することができる。「自家」細胞は、例えば組織再生を可能にするための細胞療法のためにそれらが再導入される、同じ生物を起源とする細胞である。しかしながら、その細胞は、必ずしも、それらが導入される組織と同じ組織から単離されたわけではない。自家細胞は、拒絶の問題を克服するうえで、患者への適合性を必要としない。「同種異系」細胞は、同種の個体であっても、例えば組織再生を可能にするための細胞療法のためにその細胞が導入される個体とは異なる個体を起源とする細胞である。拒絶の問題を防ぐために、ある程度の患者適合性が依然として求められうる。
一般に、本発明の幹細胞は、患者の身体へ注射又は移植によって導入される。一般に、この細胞は、それらがその中で作用することが意図される組織へ直接注射される。あるいは、その細胞は、門脈を通して注射される。本発明の範囲内には、本発明の細胞と医薬的に許容される担体を含有するシリンジが含まれる。本発明の範囲内には、本発明の細胞と医薬的に許容される担体を含有するシリンジが付いたカテーテルも含まれる。
本発明の幹細胞は、組織の再生にも使用することができる。この機能を達成するために、細胞を傷害組織の中へ直に注射又は移植してよく、ここでそれらは、身体中のそれらの居場所に従って、及び/又はそれらの起源の組織へ戻った後で増殖して、必要とされる細胞種へ最終的には分化し得る。あるいは、主題の幹細胞は、傷害組織の中へ直に注射又は移植することができる。治療に影響を受けやすい組織には、すべての傷害組織が含まれ、特に、疾患、損傷、外傷、自己免疫反応、又はウイルス又は細菌感染によって傷害を受けた可能性があるものが含まれる。本発明のいくつかの態様では、本発明の幹細胞を使用して、肺、食道、胃、小腸、結腸、腸上皮化生、輸卵管、腎臓、膵臓、膀胱、肝臓、又は消化器系、又はその一部/切片を再生する。
特定の態様において、患者はヒトであるが、あるいは、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、又はマウスなどの非ヒト哺乳動物であってよい。
特定の態様において、本発明の幹細胞は、ハミルトン(Hamilton)シリンジなどのシリンジを使用して、患者へ注射される。
当業者は、ある特別な状態を治療するのに、本発明の幹細胞の適正量がどのくらいであるかがわかっているものである。
特定の態様において、本発明の幹細胞は、様々な組成の溶液において、ミクロスフェアにおいて、又はinミクロ粒子において、再生の必要な傷害臓器の一部又は組織を灌流する動脈の中へ投与される。一般に、そのような投与は、カテーテルを使用して実施される。カテーテルは、血管形成術及び/又は細胞送達のために使用されるきわめて多様なカテーテルの1つであっても、身体の特別な部位へ細胞を送達する特別な目的のために設計されるカテーテルであってもよい。
特定の使用のために、幹細胞は、いくつかの異なる生分解性化合物から作られて、直径が約15μmであるミクロスフェア中へ被包化してよい。この方法は、血管内投与された幹細胞が傷害の部位に留まって、初通過において毛細管網目構造を通過して体循環に入らないようにする。毛細管網目構造の動脈側での滞留は、血管外空間へのそれらの移行を促進する場合もある。
特定の態様において、幹細胞は、それらを身体全体へ送達する血管を通して、又は該幹細胞がターゲットにする組織又は身体部分の中へ流れる特定の血管の中へ局所的に、血管樹の中へ逆行的に注射してよい。
別の態様において、本発明の幹細胞は、生体適合性インプラントへ付着した傷害組織の中へ移植してよい。この態様では、患者への移植に先立って、該細胞を生体適合性インプラントへインビトロで付着させてよい。当業者に明らかであるように、移植に先立って該細胞をインプラントへ付着するには、任意数の接着剤(adherents)を使用してよい。例だけを挙げると、そのような接着剤には、フィブリン、インテグリンファミリーの1以上のメンバー、カドヘリンファミリーの1以上のメンバー、セレクチンファミリーの1以上のメンバー、1以上の細胞接着分子(CAM)、免疫グロブリンファミリーの1以上、及び1以上の人工接着剤が含まれ得る。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。当業者には、1以上の接着剤のどの組合せも使用し得ることが明らかであろう。
別の態様では、本発明の幹細胞を、マトリックスの患者への移植に先立って、該マトリックスに埋め込んでよい。一般に、マトリックスは、患者の傷害組織の中へ埋め込まれるものである。マトリックスの例には、コラーゲンベースのマトリックス、フィブリンベースのマトリックス、ラミニンベースのマトリックス、フィブロネクチンベースのマトリックス、及び人工マトリックスが含まれる。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。
さらなる態様において、本発明の幹細胞は、患者へマトリックス形成成分と一緒に移植又は注射され得る。このことは、細胞が注射又は移植に続いてマトリックスを形成することを可能にして、幹細胞が患者内の適正な部位に留まることを確実にする。マトリックス形成成分の例には、フィブリン糊−液体(liquid)アルキル、シアノアクリレートモノマー、可塑剤、デキストランなどの多糖類、酸化エチレン含有オリゴマー、ポロキサマー及びプルロニック類(Pluronics)などのブロック共重合体、Tween及びTriton 8などの非イオン性界面活性剤、及び人工的なマトリックス形成成分が含まれる。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。当業者には、1以上のマトリックス形成成分のどの組合せも使用し得ることが明らかであろう。
さらなる態様において、本発明の幹細胞は、ミクロスフェア内に包含されてよい。この態様で、該細胞は、ミクロスフェアの中央内で被包化されてよい。この態様ではまた、該細胞は、ミクロスフェアのマトリックス材料の中へ埋め込まれ得る。マトリックス材料には、限定されないが、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PLGA)、及びポリウレタン類を含めて、どの好適な生分解性ポリマーも含まれ得る。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。
さらなる態様において、本発明の幹細胞は、移植用に意図される医療用具へ付着させてよい。そのような医療用具の例には、ステント、ピン、ステッチ、スプリット(splits)、ペースメーカー、人工関節、人工皮膚、及びロッドが含まれる。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。当業者には、多様な方法によって、該細胞を医療用具へ付着させ得ることが明らかであろう。例えば、幹細胞は、フィブリン、インテグリンファミリーの1以上のメンバー、カドヘリンファミリーの1以上のメンバー、セレクチンファミリーの1以上のメンバー、1以上の細胞接着分子(CAM)、免疫グロブリンファミリーの1以上、及び1以上の人工接着剤を使用して、医療用具へへ付着させ得る。このリストは、例示のためにのみ提供するのであって、限定的であることを意図しない。当業者には、1以上の接着剤のどの組合せも使用し得ることが明らかであろう。
主題の幹細胞を再生医薬として使用して、数多くの疾患又は組織傷害を治療することができる。非限定的な例には、創傷治癒、糖尿病性潰瘍、皮膚移植片又は再生、I型糖尿病、心臓血管修復(例えば、心筋梗塞及び心不全後のそれなど)、CNS損傷修復(例えば、卒中、脳外傷、脳性麻痺、及び他の脳損傷状態後のそれなど)、脊髄損傷、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、セリアック病、移植片対宿主病、クローン病及び潰瘍性大腸炎、失明及び視覚障害(例えば、黄斑変性による)、ALS、不妊、等が含まれる。心筋梗塞、卒中、腱及び靭帯の傷害、骨関節炎、骨軟骨症、及び筋ジストロフィー(いずれも大型動物における)が制限無しに含まれる、主題の幹細胞の様々な獣医学上の使用も本発明の範囲内にある。
例えば、主題の肝幹細胞は、再生医療において、肝上皮の放射線照射後及び/又は外科手術後の修復において、又は慢性又は急性の肝不全又は肝疾患に罹患している患者における上皮の修復において有用であり得る。治療可能な肝疾患には、限定されないが、肝細胞癌、アラジール症候群、α1アンチトリプシン欠損症、自己免疫肝炎、胆道閉鎖症、慢性肝炎、肝癌、肝硬変、肝嚢胞、脂肪肝、ガラクトース血症、ギルバート症候群、原発性胆汁性肝硬変、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性硬化性胆管炎、ライ症候群、サルコイドーシス、チロシン血症、I型糖原病、ウィルソン病、新生児肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、ポルフィリン症、及びヘモクロマトーシスが含まれる。
肝不全をもたらす遺伝性疾患(genetic conditions)も、本発明の培地及び/又は方法に従って培養される幹細胞を使用する、一部又は全体の細胞置換の形態での細胞ベースの療法から利益を得る可能性がある。肝不全をもたらす遺伝性疾患の非限定的なリストには、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、III型糖原病、チロシン血症、デオキシグアノシンキナーゼ欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、先天性異常造血性貧血、多発性肝嚢胞、多発性嚢胞腎、α1アンチトリプシン欠損症、尿素サイクル異常症、有機酸血症、リソソーム蓄積症、及び脂肪酸酸化障害が含まれる。細胞ベースの療法からも利益を得る可能性がある他の病気には、ウィルソン病と遺伝性アミロイドーシス(FAP)が含まれる。
完全な治療効果に達するのに全肝臓移植が求められる、肝細胞に関連しない他の肝不全症例も、本発明の培地及び/又は方法に従って培養される細胞を使用する細胞ベースの療法を使用することによる機能のいくらかの一時的な回復から利益を得る可能性がある。そのような病気の例の非限定的なリストには、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、アラジール症候群、ホモ接合型家族性高コレステロール血症、肝硬変を伴うB型肝炎、肝硬変を伴うC型肝炎、バッド・キアリ症候群、原発性高シュウ酸尿症、自己免疫肝炎、及びアルコール性肝疾患が含まれる。
本発明の肝幹細胞は、機能不全の肝細胞が関与する遺伝病を治療する方法に使用し得る。そのような疾患は、早発性又は遅発性であり得る。早発性疾患には、代謝物に関連した臓器不全(例、α1アンチトリプシン欠損症)、糖原病(例、GSD II、ポンペ病)、チロシン血症、軽度DGUOK、I型CDA、尿素サイクル異常症(例、OTC欠損症)、有機酸血症、及び脂肪酸酸化障害が含まれる。遅発性疾患には、原発性高シュウ酸尿症、家族性高コレステロール血症、ウィルソン病、遺伝性アミロイドーシス、及び多発性肝嚢胞が含まれる。本発明の肝幹細胞より生じる健常肝細胞での一部又は全体置換を使用して、肝機能を回復させるか又は肝不全を先延ばしにすることができる。
本発明の肝幹細胞はまた、遺伝性代謝疾患によるか又は肝細胞感染の結果として生じる慢性肝不全を治療する方法においても使用し得る。遺伝性代謝疾患の治療には、本発明の遺伝子組換え自家肝幹細胞の投与を伴い得る。肝細胞感染症の治療には、本発明の同種異系肝幹細胞の投与を伴い得る。いくつかの態様において、肝幹細胞は、2〜3ヶ月の期間にわたって投与される。
本発明の肝幹細胞は、例えば、パラセタモールの使用、薬物治療、又はアルコールより生じ得る肝臓中毒の結果としての急性肝不全を治療するために使用し得る。いくつかの態様において、肝機能を回復させる療法は、本発明の幹細胞より入手される、凍結されてすぐに使える同種異系の肝細胞由来の肝細胞懸濁液を注射することを含む。本発明の好適な幹細胞を凍結させることが可能であるということは、その幹細胞が即座の送達に利用可能であり得るので、輸血を待つ必要がないことを意味する。
不十分な肝機能の置換又は矯正の症例では、本発明に従って産生される1以上の肝幹細胞由来の細胞マトリックス構造を構築することが可能であるかもしれない。十分な機能には、肝臓の細胞塊の約10%だけが必要であると考えられている。このことは、ドナーの入手可能性が相対的に制限されていることと、若年者の臓器がより小さいことにより、幹細胞組成物の小児への移植を、臓器全体の移植に比べて特に好ましくする。例えば、8ヶ月齢の小児は、ほぼ250gの重さである正常肝臓を有する。故に、その小児ならば、約25gの組織を必要とするだろう。成体肝臓はほぼ1500gの重さであるので、(小児に)必要とされるインプラントは、成体肝臓の約1.5%にすぎないであろう。本発明による肝幹細胞がポリマー骨格へ付着してもよい状態で移植されると、新しい宿主中での増殖が生じて、生じる肝細胞塊が不十分な宿主機能に置き換わる。従って、本発明は、肝臓の再生、不十分な肝機能の置換又は矯正のために新たな肝細胞の供給源を提供する。
本発明者はまた、本発明の方法によって増殖される、本発明の遺伝子操作された幹細胞の免疫不全マウスへの成功した移植(実施例15を参照のこと)を実証した(移植された幹細胞由来細胞が肝臓へ戻って、肝細胞をインビボで産生した)。故に、1つの態様において、本発明は、本発明の幹細胞をヒト又は動物へ移植するために提供する。
従って、本発明の範囲内に含まれるのは、ヒト又は動物患者の細胞療法による治療の方法である。本明細書での「動物」という用語は、すべての哺乳類動物、好ましくは、ヒト患者を意味する。それにはまた、胚性期と胎児期が含まれる、すべての発育段階にある個別の動物も含まれる。例えば、患者は、成体であってよく、また療法は、小児使用(例、新生児、子供、又は若年者)のためであってよい。そのような細胞療法には、本発明に従って産生される幹細胞の、どの適正な手段にもよる、患者への投与が含まれる。具体的には、そのような治療の方法は、傷害組織の再生又は創傷治癒に関連する。本明細書に使用する「投与」という用語は、静脈内投与又は注射などの、十分認識された投与の形態に、並びに移植(例えば、外科手術による移植、移植術(grafting)、又は本発明による幹細胞に由来する組織工学的に処理された肝臓の移植)による投与に言及する。細胞の場合は、例えば、胸管を介した上腸間膜動脈、腹腔動脈、鎖骨下静脈への注入、上大静脈を介した心臓への注入、又は腹腔への注入(横隔膜下リンパ管を介した細胞の移動が後続する)によって、又は肝動脈血液供給又は門脈への注入を介した肝臓部位への直接的な注入によって、個体への全身投与が可能であり得る。
100kgの人には、注入ごとに104個と1013個の間の細胞を投与し得る。好ましくは、100kgの人には、約1〜5x104個と1〜5x107個の間の細胞を静脈内注入し得る。より好ましくは、100kgの人には、約1x104個と10x106個の間の細胞を静脈内注入し得る。いくつかの態様では、主題の幹細胞の単回投与を提供する。他の態様では、反復(multiple)投与を使用する。反復投与は、例えば、連続した3〜7日に次いで他の時間で反復する、初期の治療レジメンで提供することができる。
いくつかの態様では、本発明の肝幹細胞より生じる健常肝細胞で、患者の肝臓の10〜20%を再配置させる/交換することが望ましい。
特定の態様において、再生医療使用において使用される肝幹細胞は、単一幹肝細胞のクローン増殖物である。この単一細胞は、例えば、遺伝子の欠損又は突然変異を矯正するために、本明細書に定義されるような核酸構築体の導入によって修飾された可能性がある。所望されるように、例えば、siRNAを使用して、発現を特異的に断つことも可能であろう。発現されるべき潜在的なポリペプチドは、代謝性肝疾患において欠失しているもののいずれでもあり得て、例えば、AAT(αアンチトリプシン)が含まれる。肝臓の生理を解明するには、Wnt、EGF、FGF、BMP、又はノッチ経路における関連が示唆されている遺伝子を発現させるか又は不活性化することが望ましい場合もある。また、薬物毒性のスクリーニングでは、肝臓薬物代謝を担当する遺伝子(例えば、CYPファミリー中の遺伝子)の発現又は不活性化もきわめて興味深いであろう。
当業者には、傷害組織又は病変組織を修復することに指向される方法において、遺伝子治療を追加的に使用し得ることが明らかであろう。例えば、DNA及び/又はRNAなどの遺伝情報を幹細胞へ送達するのに、アデノウイルス又はレトロウイルスの遺伝子送達担体を利用することができる。当業者は、遺伝子治療において標的とする特定の遺伝子を置換又は修復することができる。例えば、ゲノム内の非特異的な位置へ正常な遺伝子を挿入して、非機能的な遺伝子に置き換えることができる。別の例では、相同的組換えにより、異常な遺伝子配列を正常な遺伝子配列に置き換えることができる。あるいは、選択的な復帰突然変異により、ある遺伝子をその正常な機能へ戻すことができる。さらなる例は、特別な遺伝子の調節(遺伝子がオン又はオフされる度合い)を改変することである。好ましくは、幹細胞は、遺伝子治療アプローチによってエクスビボで処理されて、引き続き、哺乳動物、好ましくは、治療の必要なヒトへ移される。例えば、患者への移植の前に、幹細胞由来の細胞を培養において遺伝子修飾してよい。
毒性アッセイ
さらに、増殖した幹細胞集団は、潜在的な新規薬物又は既知又は新規の栄養補助食品の毒性アッセイにおける、Caco−2細胞などの細胞系の使用に置き換わる可能性がある。患者適合性、又は組織/臓器適合性の幹細胞を使用してそのような毒性アッセイを実施し得て、これは個別化医療に有用であり得る。
そのような毒性アッセイは、例えば、肝幹細胞に由来する細胞、又はその分化構造体(ALI上で肝幹細胞から分化した構造など。毒性アッセイの文脈では、まとめて「(肝)幹細胞」とよぶ。)を使用するインビトロアッセイであり得る。そのような肝幹細胞とその分化した子孫は、培養するのが容易であって、例えば、毒性アッセイに現在使用されているCaco−2(ATCC HTB−37)、I−407(ATCC CCL6)、及びXBF(ATCC CRL8808)などの上皮細胞系よりも、初代上皮細胞に近縁的に類似している。そのような肝幹細胞、特に患者一致性の肝幹細胞で得られる毒性結果は、患者で得られる結果とより密接に類似している。
臓器特異的な細胞毒性を判定するために、細胞ベースの毒性試験を使用する。試験され得る化合物は、癌化学予防剤、環境化学物質、栄養補助食品、及び潜在的な毒性物質を含む。細胞は、多数の濃度の試験薬剤へ一定の時間帯の間曝露される。このアッセイにおける試験薬剤の濃度範囲は、5日間の曝露と最高溶解濃度からの対数希釈を使用する初期アッセイにおいて決定される。この曝露期間の最後に、培養物について、増殖の阻害を評価する。データを解析して、エンドポイントを50パーセント阻害した濃度(TC50)を決定する。
例えば、肝臓の肝細胞におけるシトクロムP450酵素の誘導は、薬物の効力及び毒性を判定する重要な因子である。特に、P450の誘導は、厄介な薬物−薬物相互作用の重要な機序であって、それは、薬物の効力を制限して薬物の毒性を支配する重要な因子でもある。シトクロムP450誘導アッセイは、インタクトな正常ヒト肝細胞が必要とされるので、開発するのが困難であった。ハイスループットアッセイの大量生産を維持するのに十分な数でこれらの細胞を産生することが難しいとされたのである。
例えば、本発明のこの側面によれば、本明細書に記載するような幹細胞と候補化合物を接触させて、この細胞にとってのあらゆる変化、又はこの細胞の活性における変化についてモニターし得る。本発明の幹細胞の他の非療法使用の例には、肝臓の発生学、肝細胞の系統、及び分化経路の探究;組換え遺伝子発現が含まれる遺伝子発現の研究;肝臓の損傷及び修復に関与する機序;肝臓の炎症性及び感染性疾患の探究;病原的な機序の研究;及び、肝細胞形質転換の機序と肝癌の病因の研究が含まれる。
ハイスループットの目的では、肝幹細胞を、例えば、96ウェルプレート又は384ウェルプレートなどのマルチウェルプレートにおいて培養する。分子のライブラリーを使用して、その幹細胞に影響を及ぼす分子を同定する。好ましいライブラリーは、抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例、LOPAPTM、シグマアルドリッチ)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例、LOP ACTM、シグマアルドリッチ)、又は天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec)を含む。さらに、腺腫細胞の子孫において1以上の遺伝子の発現を誘導するか又は抑制する遺伝子ライブラリーを使用することができる。これらの遺伝子ライブラリーは、cDNAライブラリー、アンチセンスライブラリー、及びsiRNAライブラリー、又は他の非コーディングRNAのライブラリーを含む。この細胞は、好ましくは、多数の濃度の試験薬剤へ一定の時間帯の間曝露される。この曝露期間の最後に、培養物について評価する。「影響を及ぼす」という用語は、限定されないが、増殖の低下又は喪失、形態学的変化、及び細胞死が含まれる、細胞中のあらゆる変化を網羅するように使用される。この肝幹細胞は、上皮癌細胞を特異的に標的とするが、幹細胞集団は標的としない薬物を同定するためにも使用することができる。
動物モデル
さらに、増殖された幹細胞集団は、現在は好適な組織培養物も動物モデルも欠いている、ノロウイルスなどの病原体の培養にも使用することができる。
従って、本発明の1つの側面は、主題の癌幹細胞などの主題の幹細胞を含む動物モデルを提供する。
特定の態様において、動物は、拒絶反応を引き起こす可能性が低い、免疫不全の非ヒト動物(齧歯動物、例えば、マウス又はラットなど)である。免疫不全動物としては、ヌードマウス及びラットなど、機能性T細胞が不足している非ヒト動物と、SCIDマウスとNOD−SCIDマウスなど、機能性T細胞と機能性B細胞が不足している非ヒト動物を使用することが好ましい。特に、T細胞、B細胞、及びNK細胞が不足しているマウス(例えば、SCID、RAG2KO、又はRAG1KOマウスをIL−2Rgnullマウスと交配させることによって入手される重症免疫不全マウスであって、これには、NOD/SCID/gammacnullマウス、NOD−scid,IL−2Rgnullマウス、及びBALB/c−Rag2null,IL−2Rgnullマウスが含まれる)は、優れた移植可能性を示すものであって、好ましく使用される。
非ヒト動物の齢に関しては、非胸腺ヌードマウス、SCIDマウス、NOD/SCIDマウス、又はNOGマウスを使用する場合、4〜100週齢のものが好ましく使用される。
NOGマウスは、例えば、WO2002/043477(参照により組み込まれる)に記載される方法によって産生することができるか又は、実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)又はジャクソン・ラボラトリー(NSGマウス)より入手することができる。
移植される細胞は、どんな種類の細胞であってもよく、幹細胞塊/クローン、主題の幹細胞から分化した組織切片、単一分散した幹細胞、単離又は凍結/融解の後で培養された幹細胞、及び別の動物へ移植されてその動物から再び単離された幹細胞が含まれる。移植される細胞の数は、106個以下であってよいが、より大きな数の細胞も移植してよい。
特定の態様では、皮下移植がその簡単な移植技術の故に好ましい。しかしながら、移植の部位は、特に限定されず、好ましくは、使用する動物に依って適正に選択される。NOG樹立癌細胞系を移植するための手順は、特に限定されず、どの慣用の移植手順も使用することができる。
そのような動物モデルを使用して、例えば、薬物標的分子を探索して薬物について評価することができる。薬物の評価方法には、薬物をスクリーニングすることと抗癌剤をスクリーニングすることが含まれる。標的分子を探索する方法には、限定されないが、癌幹細胞において高度に発現されるDNA及びRNAなどの遺伝子(例、癌幹細胞マーカー)を同定するために遺伝子チップ解析を使用する方法と、癌幹細胞において高度に発現されるタンパク質、ペプチド、又は代謝産物を同定するためにプロテオミクスを使用する方法が含まれる。
標的分子を探索するためのスクリーニング方法には、癌幹細胞の増殖を阻害する物質について、細胞増殖阻害アッセイを使用して、低分子ライブラリー、抗体ライブラリー、マイクロRNAライブラリー、又はRNAiライブラリー、等からスクリーニングする方法が含まれる。ある阻害剤を入手した後で、その標的を明らかにすることができる。
このように、本発明はまた、薬物の標的分子を同定する方法を提供し、該方法は、(1)本発明の癌幹細胞を非ヒト動物(例、免疫無防備状態マウス又はラット)へ移植することによって非ヒト動物モデルを産生する工程;(2)薬物を投与する前と後で、前記癌幹細胞集団の癌発生プロセスに特徴的な組織構造を示すか又はその生物学的特性を示す組織切片を採取する工程;(3)(2)において採取した(投与前と投与後の)組織切片について、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、又は代謝産物の発現を検証する/比較する工程;及び(4)その組織切片において、癌幹細胞より形成される構造、癌幹細胞を起源とする癌発生プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性に依存して変動するDNA、RNA、タンパク質、ペプチド、又は代謝産物を同定する工程を含む。
本発明はまた、薬物について評価する方法を提供し、該方法は、(1)本発明の癌幹細胞を非ヒト動物(例、免疫無防備状態マウス又はラット)へ移植することによって非ヒト動物モデルを産生する工程;(2)(1)の非ヒト動物モデルへ試験物質を投与する工程;(3)癌幹細胞を起源とする癌発生プロセスに特徴的な組織構造を示すか又はその生物学的特性を示す組織切片を採取する工程;(4)その組織切片において、癌幹細胞における経時的な変化、癌発生プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程;及び(5)その試験物質によって阻害される、癌幹細胞より形成される構造の形成、癌幹細胞を起源とする癌発生プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を同定する工程を含む。
本発明はまた、薬物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は、(1)本発明の癌幹細胞を非ヒト動物(例、免疫無防備状態マウス又はラット)へ移植することによって非ヒト動物モデルを産生する工程;(2)(1)の非ヒト動物モデルへ試験物質を投与する工程;(3)癌幹細胞を起源とする癌発生プロセスに特徴的な組織構造を示すか又はその生物学的特性を示す組織切片を採取する工程;(4)その組織切片において、癌幹細胞における経時的な変化、癌発生プロセス、又はその生物学的特性を観察する工程;及び(5)特定の癌幹細胞より形成される構造の形成、癌幹細胞を起源とする癌発生プロセス、又は癌幹細胞の生物学的特性を阻害する試験化合物を同定する工程を含む。
本明細書において引用されるすべての特許及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、例示の目的のためにのみ提供されるのであって、本発明の範囲を制限することを決して意図しない。
実施例1:ヒト腸上皮幹細胞の単離、クローニング、及び培養
簡潔に言えば、ヒトの成体又は胎児の腸生検を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー(元は、ハーバード医学校(マサチューセッツ州ボストン、アメリカ)のハワード・グリーン教授(Prof. Howard Green)の研究室より入手した)上に播種した。この幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで無限に継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル(Matrigel)被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;ストック溶液用に243mgのアデニンを100mlの0.05M HClへ加えて、室温で約1時間撹拌してその溶液を溶かした後で、フィルター滅菌した。この溶液は、使用まで−20℃で保存可能である)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの10μg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有するペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)の10mlを含有する。
ヒト腸生検(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して3回、続けて冷PBSを使用して1回激しく洗浄した。この生検をミンチして、消化培地(BD Cell Recovery Solution カタログ番号:354253)に浸漬して、穏やかに振り混ぜながら4℃で8〜12時間インキュベートした。あるいは、この組織は、2mg/mL IV型コラゲナーゼ(GIBCO、カタログ番号:17104−109)を使用して消化して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートすることができる。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。ヒト成体腸上皮幹細胞用の改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μMの作業(working)濃度でのRock阻害剤:(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/mlの作業濃度での組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/mlの作業濃度での組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μMの作業濃度でのジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec社、カタログ番号:61298);2μMの作業濃度でのSB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド(Cayman chemical company,カタログ番号:13031);10mMの作業濃度でのニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。ヒト胎児腸上皮幹細胞用の改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μMの作業濃度でのRock阻害剤(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632、Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/mlの作業濃度での組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/mlの作業濃度での組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μMの作業濃度でのジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec 社、カタログ番号:61298);10mMの作業濃度でのニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。3〜4日後、最初の上皮細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。3日後、成体ヒト上皮幹細胞の個別クローンが観察された。胎児腸上皮幹細胞では、この実施例において、実施例16のSCM培地も使用し得る。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させた。
あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
培養時の腸上皮細胞の70%より多くがクローン形成能力を維持して、それらが幹細胞であることを示した。この証拠は、本発明において提示する培養系がヒト腸上皮幹細胞の自己複製能力を維持することが可能であることを裏付ける。さらに、400回より多くの細胞分裂の後で、これらの腸上皮幹細胞は、その多能性分化の能力を維持して、気相液相界面アッセイでは、腸様構造を形成する。
実施例2:ヒト腸上皮化生幹細胞の単離、クローニング、及び培養
簡潔に言えば、ヒト腸上皮化生生検を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー(元は、ハーバード医学校(マサチューセッツ州ボストン、アメリカ)のハワード・グリーン教授(Prof. Howard Green)の研究室より入手した)上に播種した。この幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで無限に継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル(Matrigel)被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;2.43mg/ml)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの1mg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)/0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ、カタログ番号:A−2058)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有するペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)の10mlを含有する。
ヒト腸上皮化生生検(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して3回、続けて冷PBSを使用して1回激しく洗浄した。この生検をミンチして、消化培地(DMEM:F12 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;100μg/ml ゲンタマイシン;2mg/ml コラゲナーゼ(ロシュ、カタログ番号:11088793001))に浸漬して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートした。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。この改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μM Rock阻害剤(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/ml 組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/ml 組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μM ジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec 社、カタログ番号:61298);及び2μM SB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド(Cayman chemical company,カタログ番号:13031);10mMの作業濃度でのニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。
3〜4日後、最初の上皮細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。4〜5日後、成体ヒト上皮幹細胞の個別クローンが観察された。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させた。あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
実施例3:ヒト胃上皮幹細胞の単離、クローニング、及び培養
簡潔に言えば、ヒト胃上皮生検を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー上に播種した。この幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで無限に継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル(Matrigel)被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;2.43mg/ml)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの1mg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)/0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ、カタログ番号:A−2058)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有するペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)の10mlを含有する。
ヒト胃上皮組織生検(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して3回、続けて冷PBSを使用して1回激しく洗浄した。この生検をミンチして、消化培地(DMEM:F12 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;100μg/ml ゲンタマイシン;2mg/ml コラゲナーゼ(ロシュ、カタログ番号:11088793001))に浸漬して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートした。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。この改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μM Rock阻害剤(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/ml 組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/ml 組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μM ジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec 社、カタログ番号:61298);及び2μM SB431542(Cayman chemical company,カタログ番号:13031);10mM ニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。
3〜4日後、最初の胃上皮細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。3〜4日後、個別の胃上皮幹細胞が検出可能であった。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させることができる。あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
培養時の胃上皮細胞の70%より多くがクローン形成能力を維持して、それらが幹細胞であることを示す。この証拠は、本発明において提示する培養系がヒト胃上皮幹細胞の自己複製能力を維持することが可能であることを裏付ける。さらに、400回の細胞分裂の後で、これらの胃上皮幹細胞は、その多能性分化の能力を維持して、マトリゲルアッセイでは、胃様構造を形成する。
実質的に同じ方法を使用して、それぞれが胃中の異なる幹細胞である、噴門、胃底、胃体、幽門洞、等が含まれる、胃中の位置特異的な幹細胞(実施例21を参照のこと)も胃のその領域よりクローン化した。
実施例4:ヒト肝上皮幹細胞の単離、クローニング、及び培養
慢性の肝傷害と生じる線維症により、毎年25,000人の米国人が亡くなって、30億ドルより多くの医療コストをもたらしている。A型、B型、及びC型肝炎のウイルス感染症、アルコール依存症、又は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)による末期の肝傷害は線維症であって、免疫抑制、ウイルス重感染、及び再発(recidivism)の合併症によりそのような療法の有効性が制限されるものの、同種異系移植が必要とされる。
肝臓のヒト成体幹細胞の分野は、論争と可変の(variable)進歩に陥ってきた(Koike and Taniguchi, J Hepatobiliary Pancreat Sci. 19, 587-93, 2012)。最近の報告では、急性肝傷害の後でマウス肝臓を再増殖させるために、(少ないが)特定数の幹細胞を含有するある種のマウス肝臓「オルガノイド(organoids」を肝細胞のクラスターのエクスビボ分化のために使用し得ることが示されている(Huch et al., Nature 494, 247-50, 2013)。しかしながら、これらのオルガノイドをインビトロで増殖させるのに限界があること、そしてそれらが含有する幹細胞の数が少ないことのために、それらは、新規技術のいずれにもよる遺伝子修飾へ供されていない。
人工多能性幹(iPS)細胞は、潜在的には、患者特異的肝細胞の産生を可能にして、ある種の遺伝子工学技術によって修飾することが可能であるかもしれない(Yagi et al., Crit Rev Biomed Eng. 37, 377-98, 2009)。しかしながら、一般に、iPS細胞は、他の組織の成体幹細胞を産生することが示されていないので、iPS細胞を誘導して肝臓の成体幹細胞を生成することができるかどうかはさらに明確でない。
出願人は、それらの未熟な状態を維持するやり方で、高い増殖速度と無制限の増殖可能性がある、成体及び胎児組織由来のヒト肝幹細胞をクローン化する技術を今回開発した。本実施例は、成体と胎児の両方のヒト組織から、ヒト肝細胞の幹細胞をクローン化するための例示の方法を提供する。このクローン化肝幹細胞は、アルブミンをインビトロで高度に発現する肝細胞様細胞へ分化するように誘導することができて、遺伝子組み換えすることができる(例えば、トランスフェクション、又はレトロウイルス又はレンチウイルスベクターなどのウイルスベクターによる感染、等といった、当該技術分野で承認されている方法のいずれも使用して、異種の遺伝物質を導入することを介して)。このように単離され、クローン増殖され、及び/又は遺伝子組み換えされた肝幹細胞は、(制限無しに)組織再生、創傷治癒、又は上記に参照した肝疾患などの遺伝子異常を矯正する遺伝子治療が含まれる、多様な使用に使用することができる。
簡潔に言えば、ヒト肝生検を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー上に播種した。この肝上皮幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで何回も継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル(Matrigel)被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;2.43mg/ml)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの1mg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)/0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ、カタログ番号:A−2058)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有する10ml ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)を含有する。
ヒト肝生検(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して3回、続けて冷PBSを使用して1回激しく洗浄した。この生検をミンチして、消化培地(DMEM:F12 1:1;1u/ml ペニシリン−ストレプトマイシン;1μg/ml ゲンタマイシン、及び2mg/ml コラゲナーゼA)に浸漬して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートした。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。この改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μM Rock阻害剤(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/ml 組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/ml 組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μM ジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec 社、カタログ番号:61298);及び2μM SB431542(Cayman chemical company,カタログ番号:13031)、及び10mM ニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。
3〜4日後、最初の肝上皮細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。3〜4日後、個別の肝上皮幹細胞が検出可能であった。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させることができる。あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
本明細書に記載するものと実質的に同じ手順を使用して、肝幹細胞と、単一クローン化肝幹細胞からのクローン増殖物を入手した。これらの細胞は、高増殖性であって、インビトロで無限に継代することができる(データ示さず)。
初期継代のクローン化肝幹細胞系統由来の未熟なコロニーは、約400回の細胞分裂の後でも、培養において実質的に同じ形態及び外観を明示し(結果示さず)、そのクローン化肝幹細胞が、長期のインビトロ培養の後でも、高い増殖速度と無制限の増殖可能性を伴うその未熟な状態を維持することを実証した。
実施例5:ヒト膵上皮幹細胞の単離、クローニング、及び培養
簡潔に言えば、ヒト膵組織を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー上に播種した。この膵上皮幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで何回も継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル(Matrigel)被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;2.43mg/ml)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの1mg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)/0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ、カタログ番号:A−2058)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有する10ml ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)を含有する。
ヒト膵組織(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して3回、続けて冷PBSを使用して1回激しく洗浄した。この生検をミンチして、消化培地(DMEM:F12 1:1;1u/ml ペニシリン−ストレプトマイシン;1μg/ml ゲンタマイシン、及び2mg/ml コラゲナーゼA)に浸漬して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートした。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。この改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μM Rock阻害剤(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/ml 組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/ml 組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μM ジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec 社、カタログ番号:61298);及び2μM SB431542(Cayman chemical company,カタログ番号:13031)、及び10mM ニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。
3〜4日後、最初の膵上皮細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。3〜4日後、個別の膵上皮幹細胞が検出可能であった。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させることができる。あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
実施例6:クローン化幹細胞は、培養時に自己複製能力を維持する
実施例4に記載したのと実質的に同じ手順に従って、単一クローン化ヒト肝幹細胞のクローン増殖によって、系統細胞系を樹立した。この手順を繰り返し使用して、増殖させた系統細胞系より単一細胞を単離して、この繰り返して単離される細胞がインビトロで増殖される間に、多世代の細胞分裂にわたって幹細胞の特徴(例、自己複製能力)を維持するかどうかを判定した。
図3Aは、本発明の方法を使用して単離された成体肝幹細胞が100回より多い(例えば、135回)分裂の間にインビトロで増殖し得て、それでもその未熟な細胞形態を維持することを示す(図2参照)。クローン内部の細胞が同じ小円形の形態をして、核が相対的に大きくて核/細胞質比が高いことに注目されたい。図3Bは、その未熟な細胞形態がインビトロ培養での400回の細胞分裂の後でも維持されたことを示す。
類似の実験では、実施例2に記載したのと実質的に同じ手順に従って、単一クローン化ヒト小腸幹細胞のクローン増殖によって、系統細胞系を樹立した。図5は、クローン化ヒト小腸幹細胞より繰り返し増殖させた系統細胞系が400世代より多い間インビトロで増殖し得て、それでもその未熟な細胞形態を維持することを示す(図2参照)。
別の実験では、クローン化腸幹細胞の第4継代と第40継代由来の同数の細胞をすでに記載したようなフィーダー層の上に播種した。観測されるコロニー数が同等であることは、この腸幹細胞のクローン形成能力も分化能力のレベルも継代培養によって影響を受けないことを示唆する。
実施例7:肝幹細胞のMatrigelTMにおける分化
未熟なクローン化肝幹細胞(胎児組織よりクローン化されるものが含まれる)は、Ki67(このようなマーカータンパク質に対する抗体によって検出される、結果示さず)などの増殖のマーカー、並びにSox9とKrt7などの肝幹細胞マーカーを発現する(結果示さず)。Sox9は、肝臓中の推定幹細胞の印になると考えられている転写因子である。Huch & Clevers (Nature Genetics 43, 9-10, 2011) を参照のこと。
一方、未熟なクローン化肝幹細胞では、アルブミン、α−フェトタンパク質(AFP)、HNF4a、FOXA2、及び他の肝細胞マーカーの発現が不足している(図を参照のこと。データ示さず)。しかしながら、2D及び3D分化システムにおいて活性化すると、これらマーカーの発現を容易に誘導することができる。本実施例は、未熟なクローン化肝幹細胞がMatrigelTM基底膜マトリックス(BD)の存在下で容易に分化し得て、分化するとすぐに様々な肝細胞マーカーを発現することを実証する。
肝幹細胞を0.05%トリプシンによって30〜60秒間消化した。この上皮幹細胞を放射線照射3T3−J2線維芽細胞フィーダーから分離して、血清含有培地によってトリプシンを中和した。
次いで、この肝上皮幹細胞をMatrigelTM基底膜マトリックス(BD)被覆組織培養プレート上に蒔いて、増殖培地(CFAD+1μMジャギド−1+100ng/mL ノギン+125ng/mL R−スポンジン−1+2.5μM Rock阻害剤+2μM SB431542+10mMニコチンアミド)の存在下に増殖させた。
3〜5日後、増殖培地を分化培地(HBM基礎培地(Lonza,カタログ番号:CC−3199)及び肝細胞培養基 HCMTMSingleQuotsTMキット(Lonza,カタログ番号:CC−4182)に交換した。分化培地は2日ごとに交換した。約10日後、この分化構造体を切片化、IHC(免疫組織化学)、IF(免疫蛍光)染色,及び/又はRNA回収のために採取した。
単離された肝幹細胞は、記載の条件下で、MatrigelTM基底膜マトリックス(BD)において組織的構造体へ分化した(図13)。単離された肝幹細胞はまた、下記の実施例14と実質的に同じ条件を使用すると、気相液相界面(ALI)において組織的構造体へ分化した。
分化構造体のIF(免疫蛍光)染色は、アルブミン、HNF−1α(肝細胞核内因子1α)、FOXA2、及びα−フェトタンパク質(AFP)などの目印となる肝臓マーカー遺伝子をその分化細胞が発現したことを示し、その肝幹細胞が成熟した肝細胞へ分化し終えたことを実証する(図4と図13を参照のこと。結果示さず)。別の実験では、肝幹細胞とインビトロ分化幹細胞から抽出されるRNAを使用して、SOX9、AFP、及びアルブミンの特異プライマーを用いた定量的RT−PCRを実施して、それぞれのマーカー遺伝子の発現レベルを測定して比較した。このデータは、IF実験での観察事実に一致していた。
一方、肝幹細胞マーカーのSox9(qRT−PCRによって測定される)の発現は、肝幹細胞と気相液相界面(ALI)で分化した肝細胞における発現レベルを比較すると、約5倍下方調節された(結果示さず)。
肝幹細胞、インビトロ分化幹細胞、及び成熟した肝細胞培養物の遺伝子発現のヒートマップ(データ示さず)を作成して、これらの細胞における遺伝子発現の差異についてさらに検討した。これらのインビトロ分化幹細胞は、成熟した肝細胞のそれとある程度重なるゲノム全体の発現パターンを生じる。さらに、遺伝子発現マイクロアレイ解析は、シトクロムP450による薬物代謝と生体異物代謝などの、肝機能を調節するための特異的な経路が含まれる、特異的な肝機能を調節する経路の、インビトロ分化幹細胞における増強(enrichment)を明らかにした(データ示さず)。
実施例8:クローン化小腸幹細胞は、インビトロで分化することができる
実施例2の記載と実質的に同じ手順に従って、単一の単離ヒト小腸幹細胞に基づいて、系統細胞系を樹立した。次いで、この小腸幹細胞系統細胞系からの細胞を、実質的には実施例14に記載されるようにして、気相液相界面(ALI)細胞培養系において腸組織様構造体へ分化させた。
この分化細胞に対して、様々な分化細胞マーカーに特異的な抗体を使用して、免疫蛍光染色を実施した。図6は、1つの単一単離腸幹細胞からクローン増殖させた細胞が、杯細胞[PAS染色と5F4G1抗体染色(分化した杯細胞に特異的である)に基づく];パネート細胞[LYZ(リゾチーム)染色に基づく];及び神経内分泌細胞[CHGA染色に基づく]へ分化することが可能であることを示す。加えて、この腸組織様構造体はまた、吸収が起こる、小腸管の微絨毛に覆われた表面を染色するビリン(Villin)を発現する。
しかしながら、これらの分化細胞を産生するために使用した腸幹細胞は、同様の免疫蛍光染色に基づけば、これらの分化細胞マーカーのいずれも検出可能なほどには発現しない(データ示さず)。具体的には、このクローン化腸上皮幹細胞は、E−CAD(上皮細胞起源のマーカー)とSOX9(腸幹細胞マーカー)で陽性染色されるが、MUC(杯細胞マーカー)、CHGA(神経内分泌細胞マーカー)、及びLYZ(パネート細胞マーカー)などの分化細胞マーカーを発現しない。
さらに、単離された小腸幹細胞と分化構造体の遺伝子発現アレイは、この幹細胞集団がBmi1、LGR4、OLFM4、及びLGR5などの幹細胞マーカーを高度に発現することを示す(データ示さず)。一方、分化構造体は、未熟な腸幹細胞においては発現されない、分化した小腸細胞に典型的なマーカーである、MUC13、神経内分泌細胞マーカー(CHGA、CHGB)、分泌細胞マーカー(MUC7)、又はKrt20などの他の分化マーカー、等といったマーカーを発現する。加えて、PCAマップは、遺伝子発現パターンに基づけば、幹細胞と分化構造体との別個の分離を示す。
実施例9:クローン化胃幹細胞は、インビトロで分化することができる
実施例3に記載されるのと実質的に同じ手順に従って、ヒト胃幹細胞を単離した。免疫蛍光染色は、クローン化ヒト胃上皮幹細胞が典型的な未熟形態(相対的に大きな核があって、核/細胞質比が高い小円形細胞)を表出することを示す(図9A)。加えて、この細胞は、E−カドヘリン(上皮細胞起源)、SOX2、及びSOX9(胃上皮幹細胞の幹細胞マーカー)で陽性染色される(図9A)。ごく稀に、数個の培養細胞が典型的な胃上皮分化マーカーであるGKN1を発現し、この細胞が胃に由来することを示唆する(図9A)。
単一クローン化ヒト胃幹細胞から系統細胞系を樹立して、インビトロで分化させると、GKN1、胃ムチン、H+K+ATPアーゼ、及びMuc5Acなどの成熟した胃上皮マーカーを発現する円柱上皮を形成した。この結果は、様々な分化胃上皮細胞種へインビトロで分化する能力を維持しながら、クローン化胃幹細胞をクローン増殖させることが可能であることを実証する。
実施例10:異なる成体幹細胞は、別個の組織/構造へ分化する
本発明の方法(実施例1と実施例2を参照のこと)に従って、重層上皮幹細胞(ヒト上気道由来)と円柱上皮幹細胞(小腸由来)を単離した。これらの幹細胞は、培養時には形態学的に類似して見えた(図7、2つの左パネル参照)が、それらは、気相液相界面(ALI)培養系において、別個の分化能力を表出した(実施例14参照)。
具体的には、小腸幹細胞は、成熟した腸様構造へ分化し(図7、右側、上パネル)、一方上気道幹細胞は、同じ分化システムにおいて、成熟した上気道上皮へ分化した(図7、右側、下パネル)。ここでムチン5ACは、分化した上気道杯細胞を孤立パターンで染色し、一方チューブリンは、分化した上気道繊毛細胞を、ムチン5AC染色された杯細胞の周囲にある相対的に連続したパターンで染色する。
腸上皮幹細胞と上気道上皮幹細胞の間の遺伝子発現の比較(図8)は、腸幹細胞がOLFM4、CD133、ALDH1A1、LGR5、及びLGR4などのマーカーを高度に発現する一方で、上気道幹細胞がKrt14、Krt5、p63、Krt15、及びSOX2などのマーカーを高度に発現することを示した。
腸幹細胞と上気道幹細胞の間の遺伝子発現の追加比較(データ示さず)は、腸幹細胞がWnt(FZD4、FZD3、LRP6、LGR4、LGR5、FZD7、及びFZD5)とTGFβ−BMP(TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、ACVR1B、ACVR2A、BMPR1A)などの重要なシグナル伝達経路を調節するいくつかの受容体を高度に発現することを示した。しかしながら、上気道幹細胞と比較すると、腸幹細胞は、Hedgehog、ノッチ、Wnt、及びTGFβ−BMP経路のリガンドをほとんど発現しない。このことは、パネート細胞が腸の幹細胞の支援体として機能する理由を示唆するかもしれない。しかしながら、上気道幹細胞は、自己分泌性のシグナル伝達機序を有する可能性があるので、それらの自己複製は、パネート細胞様細胞種の存在を必要としない。
まとめると、遺伝子発現パターンにおけるそのような差異は、単離された幹細胞において未熟性を維持する複数の代替機序があることを示唆する。
同様に、クローン化ヒト結腸幹細胞は、クローン化ヒト小腸幹細胞との比較において、別個の遺伝子発現パターンを表出した(データ示さず)。コロニー全体にわたる陽性Ki67染色に基づけば、クローン化結腸幹細胞と小腸幹細胞はともに高度に増殖性である(データ示さず)。興味深いことに、小腸幹細胞は、リゾチーム(LYZ)陽性であるパネート細胞へ分化したが、結腸幹細胞は、同じ条件下で、パネート細胞へ分化しなかった。この観測事実は、ヒト結腸組織がパネート細胞を含有しないという事実に一致する。
このクローン化結腸幹細胞を使用して、炎症による極度の糜爛に罹患する患者において、結腸上皮を再生することができる。
実施例11:輸卵管由来のクローン化成体幹細胞
本発明の方法(例えば、実施例1を参照のこと)に従って、ヒト輸卵管組織を酵素的に消化してフィーダー層の上に播種して、数百の上皮幹細胞からなるコロニーを形成させて(図11A)、成体幹細胞を輸卵管から単離した。
単離された幹細胞は、分化も老衰も無くインビトロで70回より多く分裂することができる(図11B)。このクローン化細胞は、PAX8マーカー(輸卵管上皮に典型的なマーカー)によって染色されて、E−カドヘリン(上皮細胞マーカー)陽性で、Ki67(増殖マーカー)陽性であった。
実施例12:膵臓由来のクローン化成体幹細胞
本発明の方法(実施例1と実施例5を参照のこと)に従って、ヒト膵幹細胞を単離した。このクローン化ヒト膵幹細胞は、SOX9、Pdx1、及びALDH1A1などの推定幹細胞マーカーを発現する(図12A)。この細胞はまた、インビトロで管構造へ分化することができる(図12B)。遺伝子特異的プライマーを使用することによって得られるリアルタイムPCRの結果は、Pdx1とSOX9のマーカー遺伝子発現が、これらの細胞が分化するときに劇的に下方調節されることを示した。
実施例13:バレット食道幹細胞と胃噴門幹細胞の分化
バレット食道と胃噴門の細胞を0.05%トリプシンによって30〜60秒間消化した。上皮幹細胞を放射線照射(3T3−J2)線維芽細胞フィーダーより手動の振り混ぜによって分離して、数回の上下ピペッティングによって、その幹細胞クローンを取り出した。トリプシンを血清含有培地によって中和して、幹細胞クローンのクラスターをマトリゲル培養基(改良型F12/DMEM血清低減培地(1:1)、Hepes 10mM、ペニシリン 100ユニット/mL/ストレプトマイシン 100μg/ml、L−グルタミン 2mM、N−2サプリメント(1x)、B−27サプリメント(1x)、EGF 50ng/mL、FGF10 100ng/mL、Wnt3a 100ng/mL、R−スポンジン1 100ng/mL、ノギン 100ng/mL、SB431542 2μM、SB203580 10μM、ニコチンアミド 10mM、Y27632 2.5μM)に懸濁させて、MatrigelTM基底膜マトリックス(BD)被覆組織培養プレート上に蒔いた。
3〜5日後、マトリゲル培養基を分化培地(改良型F12/DMEM血清低減培地(1:1)、Hepes 10mM、ペニシリン 100ユニット/mL/ストレプトマイシン 100μg/mL、L−グルタミン 2mM、N−2サプリメント(1x)、B−27サプリメント(1x)、EGF 50ng/mL、FGF10 100ng/mL、Wnt3a 100ng/mL、R−スポンジン1 100ng/mL、ノギン 100ng/mL、Y27632 2.5μM、DBZ 10μM)へ交換した。分化培地は、2日ごとに交換した。2週後、この分化構造体を切片化、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光(IF)染色、及びRNA回収のために採取した。
この実験において使用する培地の成分を下記に記載する:
バレット食道マトリゲル培養基
バレット食道分化培地
実施例14:小腸幹細胞の気相液相界面での分化
本実施例に記載する方法に従って、コラーゲンと3T3−J2インサートを用いて、単離された小腸幹細胞を気相液相界面(ALI)で分化させることができる。
初めに、約1x105個の3T3−J2細胞を Transwell-COL プレート(コラーゲン被覆トランスウェル、24ウェルプレート、カタログ番号:3495、コーニング社)の各ウェルに蒔いた。各ウェルの外側チャンバへ約700μLの3T3増殖培地を加えて、各ウェルの内側チャンバへ約200μLの3T3増殖培地(DMEM Invitrogen,カタログ番号:11960、高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し;10%ウシ胎仔血清、熱不活性化せず;1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミン)を加えた。
翌日、3T3細胞をCFAD培地(又は基礎培地)で1回洗浄してから、腸幹細胞クローンをトランスウェル上へ移した。トランスウェルプレートのそれぞれの外側チャンバを約700μLの幹細胞増殖培地(CFAD+1μM ジャギド−1+100ng/mL ノギン+125ng/mL R−スポンジン−1+2.5μM Rock阻害剤)によって満たして、トランスウェルのそれぞれの内側チャンバを200μLの幹細胞増殖培地によって満たした。
幹細胞増殖培地は、各トランスウェルインサートの内側と外側のいずれでも、ほぼ1〜2日ごとに交換した。集密に達した(腸幹細胞ではほぼ8〜10日)後で、この培地を分化培地(幹細胞増殖培地+2μM GSK3阻害剤)へ交換し、約700μLの分化培地を各トランスウェルの外側チャンバに入れたが、内側チャンバには培地を入れなかった。約1ヶ月の内に、分化構造体が形成された。
広範囲の上皮細胞において分化を始動させることが可能であるこの方法を使用して、クローン化腸幹細胞を気相液相界面(ALI)において腸陰窩構造体へ分化させた。繊毛細胞と杯細胞が完備した上気道上皮を生成する上気道幹細胞系統と異なり、小腸系統は、10日の期間に及んで、小腸の絨毛に多くの点で似ている蛇行性の円柱上皮を生成した。小腸に特異的な特別な細胞種のマーカーを使用して、出願人は、この小腸幹細胞が杯細胞、パネート細胞、神経内分泌細胞、及び腸細胞のビリン含有刷毛縁を生じることを示した。注目すべきことに、上記の気相液相界面培養物は、高い電気抵抗を特徴として、それらが連続した密着結合のアレイを形成するので、障壁機能、輸送のために機能化されて、想定するに、ミクロビオーム封入(containment)アッセイにも機能化される潜在可能性があることを示唆した。蛍光ジペプチド誘導体のβ−Ala−Lys(AMCA)を使用するアッセイからも、インビトロで分化した腸構造体がそのヒト腸のそれなどのオリゴペプチド輸送機能を有することが示唆される。
全ゲノムトランスクリプトーム解析は、ALI構造体において上方調節されている、刷毛縁酵素などの特定の分化マーカーの発現を示した。このような解析はまた、腸幹細胞と上気道上皮幹細胞が約300〜400個の遺伝子の発現においてのみ異なることを示した。しかしながら、それらは、インビトロでの分化へ誘導された後では、数千もの遺伝子発現の差異を表出した。このデータは、組織特異的な幹細胞が分化へ方向付けられることを示唆する。この方向付け(commitment)は、少数の遺伝子によって維持されて、すべての細胞が同じ条件と同じ培地において培養されるので、微小環境(niche)とは無関係である。
上記のデータは、主題の方法を使用して未熟な腸幹細胞をインビトロでクローン化して培養することが可能であって、誘導されると、これらの幹細胞が、インビボに存在するすべての細胞種を含めて、分化上皮へ分化することが可能であるという考察の裏付けとなる。この分化アッセイは、系統細胞系を使用して実施されるので、上記のデータは、幹細胞の多能性の能力を裏付ける。このデータはまた、ヒト小腸中のパネート細胞、杯細胞、及び神経内分泌細胞がいずれも1つの単一幹細胞に由来することを例証する。
同様に、ヒト成体系統の結腸幹細胞も、気相液相界面細胞培養系において分化した。単一幹細胞は、杯細胞(ムチン2陽性)と神経内分泌細胞(CHGA陽性)へ分化することができる。形成された構造は、分極化している(例えば、頂点領域でのビリン染色陽性)。この構造体はまた、Krt20などの他の分化マーカーを発現した。この構造体中の一部の細胞は依然として増殖していて、Ki67で標識された。分化した結腸幹細胞は、分化した小腸幹細胞と比較して、ずっと高率の杯細胞を表出した。この目立った特徴は、人体中の小腸と結腸の外観に一致している。
ヒト胎児系統の結腸幹細胞もALIにおいて分化して、分化した細胞は、顕著な数の杯細胞(ムチン2陽性)といくらかの神経内分泌細胞(CHGA陽性)がある、ヒト成体結腸幹細胞と同じ表現型を示した。頂点領域ではビリンが陽性に染色されて、増殖中の細胞がKi67によって染色された。
クローン病の患者に由来する結腸幹細胞(実施例21参照)も、気相液相界面細胞培養系において結腸様上皮へ分化することができる。1つの単一幹細胞が系統細胞系を産生して、杯細胞(ムチン2陽性)又は神経内分泌細胞(CHGA陽性)のいずれへも分化することができる。
実施例15:マウスモデルにおける、分化成体幹細胞での肝臓再構築
当該技術分野で知られていて、例えば、Cai et al. (Hepatology 2007, 45: 1229-1239); Hay et al., 26: 894-902, 2008; Kheolamai and Dickson, BMC Molecular Biology. 2009; Kajiwara et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2012; 109(31): 12538-12543 に記載される方法を使用して、肝上皮幹細胞を肝細胞へ、例えば肝前駆細胞へ分化させる。
この細胞の生着可能性については、それを好適な動物モデルへ移植することによって評価することができる。そのようなモデルには、ヌード、重症複合免疫不全(SCID)、RAG欠損、NOD−SCIDマウス、NOD−SCID/FAHマウス、NOD scid γ(NSG;NOD.Cg−Prkdc<scid>Il2rg<tm1Wjl>/SzJ)、NOD Rag γ(NRG;NOD.Cg−Prkdc<tm1Mom>Il2rg<tm1Wjl>/SzJ);免疫不全フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ(Fah)欠損マウス、NSG/FAH(NSG,Fah−/−)、NRG/FAH(NRG,Fah−/−)、SCID−Alb−uPA(アルブミン(Alb)プロモーター/エンハンサーによって推進されるウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)を発現するSCIDマウス);Alb−rtTA2S−M2/SCID/bgマウス;Alb−HB−EGF前駆体マウス(Saito et al. 2001, Nature Biotechnol., 19: 746-750)などの免疫不全マウスモデル、又は Rhim et al., 1994 Science, 263: 1149-1152; Grompe et al., 1995, Nat Genet., 10: 453-460; Braun et al., 2000, Nat Med., 6: 320-326; Mignon et al., 1998, Nat Med., 4: 1185-1188; Song et al., 2009, Am. J. Pathol., 175: 1975-1983 に記載されるようなモデルが含まれる。
例えば、この細胞は、NRG/FAHマウスへ移植することができる。Fah−/−マウスは、7.5g/mLの2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン(NTBC)を含有する飲料水で維持するが、これは、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ欠損症が肝臓と腎臓に影響を及ぼして、治療無しでは肝不全で亡くなる(Overturf et al., 1996)ので、Fah−/−マウスがNTBCでの連続した薬物療法を受けて、それに依存するからである。この動物モデルについては、例えば、Grompe et al. 1995, Nature Genetics 10: 453-460; Overturf et al. 1996, Nat. Genet. 12(3): 266-73 に記載されている。細胞移植の後で、このNTBC療法を中止する。細胞移植後6週と10週で肝試料を採取して、組織学的に検査する。マウスは、生検だけを入手する場合には、犠牲にするか又は麻酔する。あるいは、そのマウスの血清について、アルブミン、α1アンチトリプシン、及びα−フェトタンパク質などのヒト肝臓特異的タンパク質の存在をELISAによってアッセイすることができる。
細胞移植では、細胞を注射緩衝液(例、50%マトリゲル BD Biosciences #356234、50% DMEM)に再懸濁させて、注射まで氷上に置く。4〜8週齢の新生児マウスへ細胞を注射して、6〜10週後に肝臓を機能的に評価し得る。
具体例として、単離されたヒト肝幹細胞を、異種遺伝子を発現するように遺伝子修飾した(例えば、レンチウイルス又はレトロウイルスのベクターを使用するウイルス感染によって)後で、この修飾肝幹細胞をNOD scidγ(NSG)マウス宿主へ導入した。この実施例は、クローン化ヒト肝幹細胞が、肝組織へ分化した後で異種遺伝子のGFPを発現することが可能であることを示す。
具体的には、単離された肝幹細胞をGFPで修飾して、このGFP陽性細胞をFACSソーティングによってGFP陰性細胞から分離した(図23Aと図23Bを参照のこと)。GFP陽性肝幹細胞の主題の培養系における継続培養は、これらの細胞の増殖又は分化の能力における異常を何も観測することなく達成された(図23C)。このGFP標識された(異種遺伝子を発現する)肝幹細胞は、未熟なままであって、この未熟な表現型を維持しながら大きな集団へ容易に増殖することができる。さらに、これらのGFP発現細胞は、アルブミンを発現する肝細胞様細胞へインビトロで分化することができる(データ示さず)。
異種遺伝子を発現する肝幹細胞がインビボで肝組織へ分化して、それにより肝臓へ再構築されることが可能であることを実証するために、このGFP標識ヒト肝幹細胞を本実施例のNSGマウスなどの免疫無防備状態マウスへGFP標識幹細胞のNSGマウス脾臓への注射により導入した、注射後7日目には、これらの細胞の肝管への放散が容易に観察された(図24Aと図24B)。
本実施例は、クローン化/単離された肝幹細胞を、その幹細胞特性を培養時に失うことなく異種遺伝子を発現するように工学処理し得ること;この工学処理された幹細胞を本発明の方法による通常の培養条件下にインビトロで大量になるまで増殖させ得ること;この工学処理された肝幹細胞が、その幹細胞が初めに単離された(異なる種からであっても)正しい組織(即ち、肝臓)へ復帰し得ること;及び、この工学処理された肝幹細胞がその正しい組織へ適切に分化し得ることを実証する。このように、単離された/クローン化成体幹細胞は、例えば、傷害した又は病変した組織/臓器を修復又は再生するための再生医療に使用することができる。
加えて、本実施例はまた、肝傷害を研究するための異種移植片マウスモデルなどの、疾患を研究するための異種移植片動物モデルを確立することが可能であることを実証する。実際、免疫無防備状態マウスモデルは、初期肝不全の誘導時に、ヒト肝細胞と(より低い程度で)インビトロ由来細胞による効率的な再増殖を可能にする生態的地位を提供することが示されている(Liu et al. 2011)。本実験での異種移植片マウスモデルは、組織修復、創傷治癒、及び/又ヒト疾患に関連した遺伝的障害の矯正を研究するための同等以上の選択肢を提供する。
例えば、このクローン化肝幹細胞は、肝炎ウイルスに対して防護する、肝疾患への関与が示唆される遺伝子障害を矯正する、又は移植、分化、及び抗ウイルス及び遺伝子矯正技術の概念実証について試験するための「ヒト化」肝臓があるマウスを開発することを可能にするように工学処理することができる。
実施例16:ヒト腫瘍とそれ由来の化学療法抵抗性細胞からの癌幹細胞(CSC)のクローニング
本実施例は、主題の成体幹細胞クローニング方法を使用して、癌性組織/細胞から癌幹細胞(CSC)並びにその前駆体病変のそれをクローン化することも可能であることを実証する。本実施例は、本発明の方法を使用して、いくつかの高グレード卵巣癌のそれぞれより多数のCSCをクローン化することが可能であることを示す。加えて、そのようなCSC「ライブラリー」を使用して、高グレード卵巣癌患者を治療するために典型的に使用される化学療法薬に抵抗する既存のCSCを同定した。
高グレード卵巣癌(HGOC)は、すべての婦人科系癌の中で最も致命的である。女性に影響を及ぼす他の癌と異なり、高グレード卵巣癌の5年生存率は、この30年間で変化していない。全世界では、毎年225,000人が卵巣癌の新患症例と診断されて、推定140,000人の疾患関連死がある。この疾患の致死性は、一部は、腹膜中で検出されずに多数増殖する転移性腫瘍細胞の能力と、この疾患が相対的に進行したステージIII及びIVで遅れて診断されることが多いことに起因する。
腫瘍減量手術とシスプラチン/パクリタキセル化学療法の初期結果は、典型的には、まったく目覚しいものであって、多くの症例が治療6ヶ月以内で無視し得るか又は検出し得ない腫瘍を示す。しかしながら、療法に対するこの初期の良好な応答にもかかわらず、上記患者の約70〜80%が最終的には1年後に腫瘍の再発を示して、残念ながら、これら再発腫瘍のほとんどがシスプラチンとパクリタキセルでのさらなる治療に抵抗するものである。
このように、これら致死性の再発は、化学療法の初回ラウンドで生き残って、最終的には、初期療法後6ヶ月〜2年ほどにわたってその数を増やしてゆく、ごく少数の腫瘍細胞(「癌幹細胞」)の所産であると一般に考えられている。従って、既存の卵巣癌治療での問題は、腫瘍細胞の大部分(これは、初期の化学療法によって容易に殺傷される)をいかに消失させるかではなくて、ごく初期の(naive)腫瘍細胞集団に潜んでいる少数の抵抗性癌幹細胞をいかに根絶するかにあろう。
残念ながら、既存の化学療法抵抗性細胞という着想について検証する、又はより重要には、標準治療レジメンを免れるこの細胞の小集団を標的とするはずの療法について評価するために、癌性腫瘍組織から腫瘍細胞を高効率でクローニングする方法は、本発明に先行して、知られていない。
本明細書に提示するデータは、本発明の方法が、単一の高グレード卵巣癌患者からの多数の腫瘍細胞の迅速クローニングのために使用し得ることを実証する(図14)。即ち、本発明の方法は、切除した腫瘍組織の1立方センチメートル(cm3)から約5,000〜10,000個の分離した腫瘍細胞コロニーの迅速なクローニングを可能にする(図14)。高グレード卵巣癌の最適クローニングを支援する培地条件は、数々の再生組織由来のヒト体性幹細胞を支援することが示された「6因子」培地と同一であって、一方他の並べ換えは、かなり非効率である(図15;表3)。
表3.癌幹細胞培養の検証培地
簡潔に言えば、一片のヒト腫瘍組織を酵素的に消化して、改変増殖培地の存在下に、放射線照射3T3−J2フィーダー(元は、ハーバード医学校(マサチューセッツ州ボストン、アメリカ)のハワード・グリーン教授(Prof. Howard Green)の研究室より入手した)上に播種した。この幹細胞は、上記の条件下で選択的に増殖して、インビトロで無限に継代することが可能である。
そのヒト組織を受け取る前日に、放射線照射3T3−J2細胞をマトリゲル被覆プレート(BD MatrigelTM、基底膜マトリックス、増殖因子低下型(GFR)、カタログ番号:354230)上に播種した。このために、マトリゲルを氷上で融かして、冷たい3T3−J2培地において10%の濃度で希釈した。3T3−J2増殖培地は、DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、10%ウシ胎仔血清(熱不活性化せず)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、及び1% L−グルタミンを含有する。組織培養プレートは、予め−20℃で15分間冷やしてから、希釈したマトリゲルをその冷たいプレート上に加えて、このプレートを揺らしてその希釈マトリゲルを均一に分配してから、余分のマトリゲルを除いた。引き続き、このプレートを37℃のインキュベーターにおいて15分間インキュベートして、マトリゲル層を固化させた。
凍結した放射線照射3T3−J2細胞を融かして、3T3−J2増殖培地の存在下に、マトリゲルの上面で蒔いた。翌朝、3T3−J2培地を基本増殖培地に交換した後で、それをヒト細胞用のフィーダー層として使用した。1Lの基本増殖培地は、675ml DMEM(Invitrogen カタログ番号:11960;高グルコース(4.5g/L)、L−グルタミン無し、ピルビン酸ナトリウム無し)、225ml F12(F−12混合栄養素(HAM)、Invitrogen カタログ番号:11765;L−グルタミン含有)、100ml FBS(Hyclone カタログ番号:SV30014.03;熱不活性化せず)、6.75mlの200mM L−グルタミン(GIBCO カタログ番号:25030)、10ml アデニン(Calbiochem カタログ番号:1152;ストック溶液用に243mgのアデニンを100mlの0.05M HClへ加えて、室温で約1時間撹拌してその溶液を溶かした後で、フィルター滅菌した。この溶液は、使用まで−20℃で保存可能である)、インスリンの5mg/ml ストック溶液(シグマ、カタログ番号:I−5500)の1ml、1mlの2x10−6M T3(3,3’,5−トリヨード−L−チロニン)溶液(シグマ、カタログ番号:T−2752;ストック溶液用に13.6mgのT3を15mlの0.02N NaOHに溶かして、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で100mlへ調整して、2x10−4Mの濃縮ストック液を得た。これは、−20℃で保存可能である。この濃縮ストック液の0.1mlをPBSで10mlへ希釈して、2x10−6Mの作業ストック液を創出した)、2mlの200μg/ml ヒドロコーチゾン(シグマ、カタログ番号:H−0888)、1mlの10μg/ml EGF(Upstate Biotechnology カタログ番号:01−107)、及び1mlに付き10,000ユニットのペニシリンと10,000μgのストレプトマイシンを含有する10ml ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO カタログ番号:15140)を含有する。
ヒト腫瘍組織(氷上で冷たい洗浄緩衝液に入れた状態で病院より運んだもの)を、30mlの冷たい洗浄緩衝液(F12:DMEM 1:1;1.0%ペニシリン−ストレプトマイシン;0.1%ファンギゾン、及び2.5mlの100μg/ml ゲンタマイシン)を使用して2回激しく洗浄し、ミンチして、2mg/mL IV型コラゲナーゼ(GIBCO、カタログ番号:17104−109)を使用して消化して、穏やかに振り混ぜながら37℃で1〜2時間インキュベートした。消化した組織をペレットにして、各回30mLの冷たい洗浄緩衝液で5回洗浄した。最終洗浄の後で、試料を遠沈させて、改変増殖培地に再懸濁させて、フィーダー上に播種した。ヒト癌幹細胞(SCM)用の改変増殖培地は、基本増殖培地と以下の因子から成った:2.5μMの作業濃度でのRock阻害剤(R)−(+)−トランス−N−(4−ピリジル)−4−(1−アミノエチル)−シクロヘキサンカルボキサミド(Y−27632,Rhoキナーゼ阻害剤VI、Calbiochem,カタログ番号:688000);125ng/mlの作業濃度での組換えR−スポンジン1タンパク質(R&D,カタログ番号:4645−RS);100ng/mlの作業濃度での組換えノギンタンパク質(Peprotech,カタログ番号:120−10c);1μMの作業濃度でのジャギド−1ペプチド(188−204)(AnaSpec社、カタログ番号:61298);2μMの作業濃度でのSB431542:4−(4−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−5−(ピリジン−2−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド(Cayman chemical company,カタログ番号:13031);10mMの作業濃度でのニコチンアミド(シグマ、カタログ番号:N0636−100G)。3〜4日後、最初の癌幹細胞コロニーが検出可能であった。次いで、細胞を温かい0.25%トリプシン(Invitrogen,カタログ番号:25200056)で10分間トリプシン処理し、中和し、改変増殖培地に再懸濁させ、40ミクロンのセルストレイナーに通過させて、3T3−J2フィーダー層を含有する新しいプレート上へ単一細胞として播種した。この培地は、2日ごとに交換した。3日後、ヒト癌幹細胞の個別クローンが観察された。
クローニングリングを使用して単一コロニーを摘出して、増殖させて系統細胞系、即ち、単一細胞から導かれた細胞系を発生させた。
あるいは、ガラスピペットを顕微鏡下に使用して、これらのコロニーに由来する解離した単一細胞の懸濁液より単一細胞を選択して、すでに10%マトリゲルで被覆してフィーダー細胞が播種された96ウェルプレートへ個別に移すこともできる。96ウェルプレートにおいて単一細胞がコロニーを形成したならば、このコロニーを増殖させて系統細胞系を発生させることができる。
さらに、本明細書に提示するデータは、これらの独立した腫瘍細胞コロニーのそれぞれが、大きな数まで別々に増殖させることができて(図16)、高度に免疫抑制されたマウスにおいて腫瘍発達を支援することができることを示す。マウスにおいて成長したこれら腫瘍の組織は、同じ患者からの外科切除のそれと識別不能である(図17)。
簡潔に言えば、単一の腫瘍幹細胞を起源とする10,000〜1,000,000個の間の腫瘍幹細胞を免疫欠損マウスへ皮下注射した。ほぼ3週〜8週のうちに、触知できる腫瘍が検出され、組織学的分析用に切除し、固定して、切片作成した。
これらのコロニーが単一の腫瘍細胞に由来して、独立的かつ無限に増殖し得ること、そしてそれぞれの系統が高グレード卵巣癌様腫瘍の成長をマウスにおいて支援することが可能であるという事実を考えると、上記の腫瘍細胞クローンは、当該技術分野において癌幹細胞について受容されている定義に従う、癌幹細胞として振舞った。
同じ方法と実質的に同じ条件を使用して、膵臓、肺、乳房、食道、及び胃の癌が含まれる他の原発性癌の切除物より癌幹細胞クローンを入手し(図18、図19、及びデータ示さず)、並びにPDX(患者由来異種移植片)モデルにおいて初めに高度免疫抑制マウスで成長させたヒト腫瘍(例、肺癌、卵巣癌、及び乳癌)より癌幹細胞クローンを入手した(図20、及びデータ示さず)。
実施例17:腫瘍細胞が化学療法剤に抵抗する機序の同定
本発明の方法を使用して単一の患者より樹立したCSCのライブラリーは、腫瘍細胞の異質性のような、これまで接近し難かった疑問の取り調べ(interrogation)と、より重要には、致命的な再発の臨床発現の根底にある化学療法抵抗性変異体を同定するためのスクリーニング及び選択を可能にする。
本明細書に記載するのは、化学療法剤での初期チャレンジに抵抗するだけでなく、これら薬物による後続のチャレンジに対してもこの抵抗性を安定的に維持するCSCを単離して増殖させるための、標準治療の化学療法剤での選択における、患者特異的CSCライブラリーの使用である(図21)。最終的に、図22は、シスプラチンとパクリタキセルに対して感受性があるCSCと、シスプラチン、パクリタキセル、又はその両方に抵抗するそれとの間の遺伝子発現の差異についての我々の初期解析結果を示す。
この患者腫瘍試料からの抵抗性細胞についての予備解析に基づくと、2つの一般的な傾向が現れる。1つの傾向は、多くの初期研究より予測されるような、癌抵抗性の根底にある仮定の重要機序と矛盾するように見える。具体的には、初期研究では、多剤耐性(MDR)遺伝子の高発現が癌抵抗性の根底にある重要機序であると示唆されてきた。しかしながら、より最近の研究で蓄積している証拠は、この理論と矛盾するように思われる。本明細書に提示するデータは、クローン化癌幹細胞においてMDR遺伝子の高発現が少しも観察されないという点で、後者の知見を支持する。
もう1つの知見は、上記薬物が作用すると考えられているそれらの機序に明白な違いがある別個の薬物に対する、癌細胞による抵抗性の機序に光を当てるように見える。具体的には、シスプラチン抵抗性CSCクローンとパクリタキセル抵抗性CSCクローンにおいて大きな比率を占める遺伝子セットの間には、これら薬物が作用すると考えられている癌殺傷機序が異なるにもかかわらず、かなりの重なりがあるように見えるのである。図22を参照のこと。
実施例18:海馬幹細胞のクローニング
成体の神経発生、又は成体生物における新たなニューロンの創出は、神経幹細胞の機能に依存する。成体海馬の顆粒細胞下帯は、既存の神経回路へ機能的に統合される新たなニューロンを海馬の神経幹細胞が産生する1つの領域である。海馬は、学習と記憶固定においてある役割を担って、アルツハイマー病のような神経学的疾患及び異常の影響を受けやすい。
本実施例は、主題の方法を使用して、海馬由来の神経幹細胞をクローン化し得ることを示す(図2)。これらの細胞は、数多くの世代の間インビトロで培養し得て、誘導時にニューロンへ分化することができる。この細胞はきわめて増殖性であって、SOX2やPAX6などの幹細胞マーカーを発現する(データ示さず)。誘導分化時に、それらは、ネスチン(Nestin)のようなより多くの分化マーカーを発現する(データ示さず)。海馬神経幹細胞の自己複製と分化を制御するこの方法は、新規の疾患治療法を開発する場合に決定的な第一ステップである。
具体的には、以下の手順の前夜に、放射線照射3T3細胞を10〜20% Matrigel(登録商標)被覆プレート上に播種した。翌朝、この培養基を新鮮な3T3培養基に交換した。海馬の細胞を播種する1時間前に、この培地をSBM培地(上記参照)に再び交換した。次いで、以下の工程を行った:
1.マウス(Bl/6)又はラットより、解剖顕微鏡下に、海馬を含有する大脳皮質の両側を単離する。この組織を冷たい洗浄緩衝液に入れて、解剖後すぐに氷上に保つ。
2.組織培養フードにおいて、ペトリ皿の上で、無菌の使い捨てナイフを用いて、上記組織を細片へミンチする。
3.この組織を、37℃で約30〜60分の間穏やかに揺すりながら、パパイン又はコラゲナーゼなどの酵素によって消化する。
4.約20回の穏やかな上下ピペッティングによって、組織を単一細胞へ砕く。
5.1000rpmで約5分間遠沈させる;
6.ペレットを乱すことなく上清を注意深く取り除き、細胞を約40mlの洗浄緩衝液(他の細胞種と同じ)で濯ぐ。次いで、遠沈させて、緩衝液を取り除く。必要に応じて、この工程を全部で4回繰り返す。最後の工程で、すべての洗浄培地を注意深く取り除くようにする。
7.穏やかにピペッティングすることによって、細胞ペレットを約10mlのSCM(予め加温)に再懸濁させる。
8.この消化された組織を100ミクロンのセルストレイナーに通して濾過する。
9.MATRIGEL(登録商標)と3T3線維芽細胞細胞で被覆したプレート上に上記細胞を播種する。
10.2〜3日ごとに培地を交換した。
細胞を継代して再播種(replating)するには:
a.予め加温したPBS又はDMEMで細胞を穏やかに2回洗浄する;
b.予め加温した0.05%〜0.25%トリプシンを加え、37℃で10分以下の間インキュベートすると、細胞が表面から剥がれる;
c.5mlのSBMを加えることによってトリプシン処理を止めて、細胞を上下にピペッティングし、1000rpmで約5分間遠沈させる;
d.上清を注意深く取り除いて、細胞をSCM培地に再懸濁させ、新しい3T3及びMATRIGEL(登録商標)被覆ディッシュへ移す。
細胞分化には:
この細胞をSBM培地の存在下で50% MATRIGEL(登録商標)被覆組織培養皿の上に播種する。
実施例19:膀胱幹細胞のクローニング
膀胱の内層は、きわめて独特である。この多層性の内壁は、尿管上皮として知られ、圧迫下の漏出を防ぎ、独自のタンパク質障壁で病原体に抵抗して、下にあるニューロン、筋肉、及び血管を尿中の毒素から防護する。
この障壁中の細胞はめったに分裂しないが、尿路感染症由来の急性傷害又は毒素への曝露により迅速な再生が誘導される。尿路上皮の上層が剥げ落ちて、膀胱中の幹細胞が新たな上層を形成するのである。
損傷が何度も繰り返されると外層の再生が損なわれて、永続的な瘢痕形成、膀胱機能不全、及び慢性疼痛をもたらす可能性がある。主に女性が罹患する疾患である、膀胱痛症候群(間質性膀胱炎としても知られる)などの慢性病態では、神経末端が含まれる下部組織が曝露されて、それが慢性疼痛の原因であると考えられている。最も重篤な症例において、膀胱痛症候群と他の慢性疾患の治療法は、膀胱の除去である。
膀胱を除去するもう1つの理由は、膀胱中の癌の外科的除去である。
上記に記載の主題の方法を使用して、出願人は、マウスとヒトの両方からの膀胱幹細胞をクローン化した。膀胱幹細胞には、この臓器の内層を作製して再生する任務がある。クローン化患者由来膀胱幹細胞は、膀胱傷害のある患者のために新たな組織を産生すること等によって慢性膀胱痛を治療するための新たな方法を創出する。
ヒト膀胱とマウス膀胱よりクローン化した幹細胞は、無制限の増殖能力を有して、p63、Krt5、及びAgr2などのマーカーを発現する(データ示さず)。
これらのクローン化幹細胞は、例えば、患者中の傷害膀胱を修復するか又は再生するための組織工学に;又は、感染症を治療するための新たな治療選択肢を同定するための探索ツールとしての、成熟した尿路上皮へのインビトロでの分化のために使用することができる。
実施例20:腸のクローン形成性幹細胞は、遺伝的に安定している。
ヒト小腸コロニーの多数の確定系統を樹立して、出願人は、この幹細胞クローンの「幹細胞らしさ(stemness)」について試験する。本実施例において、出願人は、5ヶ月の期間にわたる連続した継代(transfer)と増殖のために、独立した系統細胞系(又は、簡潔には「系統」)を使用した。これらの系統を増殖させて、広範囲の供給源由来の上皮細胞の分化を始動させることが知られている「気相液相」界面において分化させた(実施例14を参照のこと)。上記3種の系統の連続した継代と増殖を5ヵ月後に止めると、この時この派生コロニーは、推定400回の分裂を完了したにもかかわらず、完全な未熟性を維持した。
マウスの細胞では、培養時に増殖期間を延長すると「不死化」と形質転換さえも受けることが定説であるのに対し、ヒト細胞は、これらのプロセスに抵抗するように見える。出願人は、小腸の主題の幹細胞系統において、連続培養における数ヶ月の増殖にもかかわらず、不死化又は形質転換のプロセスに典型的に付随する形態学的変化を観察しなかった。
これら腸幹細胞系統の遺伝的安定性についてさらに試験するために、出願人は、連続培養中の数ヶ月にわたる長期増殖期間の多数の時点で、これら系統のコピー数変動解析とエキソーム配列決定解析を実施した。有意にも、これらの幹細胞系統は、CNV解析による明白な染色体倍数化又は増幅の非存在と、細胞増殖に対する明白な影響がない遺伝子中の平均5ヶ所未満の非同義突然変異の獲得によって裏付けられるように、著しく安定していることが証明された(データ示さず)。例えば、エキソーム配列決定は、20回の継代又は70回の細胞分裂の後で、ただ1ヶ所の非同義的突然変異が獲得されることを示し、この培養腸幹細胞がゲノム的に全く安定しているという考えを支持した。さらに、同じ実験は、後期の継代においてもより構造的な変異を獲得することがないことを示し、これらの細胞のゲノム安定性をさらに裏付けた。
従って、ごく広い意味において、これらの腸幹細胞クローンは、一見して正常な遺伝子型と表現型を維持しながら、延長した培養時間の間、増殖させることが可能である。
実施例21:小腸及び結腸の幹細胞をクローニングして、領域特異性を明確化すること
炎症性腸疾患(IBD)などの、特定の疾患の多くの特徴が胃腸管の特異的領域に限られるように見えることに考慮して、出願人は、この「領域特異性」を胃腸管幹細胞のレベルで明確化することを模索した。
この目的のために、出願人は、IRB承認の下で、22週齢の胎児(流産から生じる)より胃腸管全体を入手した。各領域の組織について評価すること、並びに対応する幹細胞クローニングのために、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、及び下行結腸、並びに直腸という多数の領域を切除した。22週目で、胃腸管の組織はそれぞれの領域へ十分に分化していて、各領域由来の組織を使用して、幹細胞コロニーと後続の系統を成功裡に樹立することが可能であった。具体的には、十二指腸、空腸、回腸、下行結腸、上行結腸、及び横行結腸由来の幹細胞をクローン化して、SCM培地とフィーダー層の存在下に培養した。これら幹細胞クローンの形態は、著しく類似していた−その細胞はいずれもきわめて未熟に見えて、サイズが小さく、核/細胞質比が高かった(データ示さず)。
発現マイクロアレイは、小腸の異なる領域由来の幹細胞が、それらが由来する22週齢の小腸の対応する組織から予測されるように、ほぼ100個の遺伝子において全く異なっていることを示した。全ゲノムトランスクリプトーム解析はまた、小腸の異なる部分に由来する幹細胞が互いから識別されて、結腸に由来する幹細胞からも異なることを示した。例えば、小腸幹細胞は、より高いレベルのCLDN18とMSMDを発現して、結腸幹細胞は、より高いレベルのHOXB9を発現する。
結腸の異なる領域の幹細胞は、互いによく類似していることが証明された(結腸の別個の部分に由来する幹細胞は、60個未満の遺伝子からなるその独自の遺伝子発現シグネチャーを表出した)が、結腸の異なる領域のヒートマップ比較は、これらも互いに識別され得ることを示した。
上記の知見に一致して、胃腸管の異なる領域は、気相液相界面培養において、幹細胞の起源に典型的な別個の特性を備えた構造へ分化する。例えば、結腸幹細胞を3D培養において分化させると、それらは、小腸幹細胞由来の幹細胞に関連したパターン化された絨毛とは著しく異なって、結腸性上皮を連想させる杯細胞の幅広がりを特徴とする、成熟した上皮を産生する。
本発明の方法を使用して、クローン病の患者からも領域特異的な結腸幹細胞を入手した。具体的には、IRB承認の下で、インフォームドコンセントを介して、出願人は、小児クローン病の多数の症例、機能対照症例、及び治療後寛解の様々なステージにある症例の大腸内視鏡検査からの一連の1mm生検を入手した。それぞれの症例につき、回腸、並びに上行、横行、及び下行結腸より1以上の1mm生検を入手した(データ示さず)。それぞれより多数の単一幹細胞系統を導いて、これらの系統を分化アッセイ、コピー数変動解析、及びエキソーム配列決定のために増殖させた。
小児クローン病の初期症例において、粘膜症状の無い1つの「機能性」潰瘍性大腸炎症例(対照症例)において、そして患者が標準治療を受けている1つのクローン病症例において、回腸と結腸の3領域の幹細胞についての全ゲノム発現解析を完了した。解析した幹細胞は、いずれもすでに少なくとも6週間の連続培養中であって、クローン病患者の幹細胞と機能性対照患者のそれの遺伝子発現プロフィールをすでに入手した。
上記クローン病患者の幹細胞は、インビトロで未熟に見えて、健常個体又は胎児の組織に由来する結腸幹細胞と同じ形態を表出した(データ示さず)。
実施例22:ヒト胆管系幹細胞の単離、クローニング、及び培養
胆管系は、胆管細胞と呼ばれる成熟した上皮細胞によって裏打ちされる、肝内及び肝外の胆管から構成されて、その管壁内の深部に胆管付属腺を含有する。胆管付属腺は、胆嚢管、肝門部領域、及び膨大部周囲領域などの分岐点に、自己複製し得て、微小環境に依拠して肝細胞、胆管細胞、又は膵島へ分化し得る、多能性幹細胞を含有する。
本明細書に記載する主題の方法を使用して、胆管を含有する胎児組織より幹細胞をクローン化した。このクローン化胆管幹細胞は、SOX2などの多能性マーカー、Ki67などの増殖マーカー、及びSOX9、SOX17、PDX1などの初期の肝/膵臓マーカーを発現する。胆管系由来細胞は、本培養系において幹細胞のように挙動して、それらは、無限に分裂し得て、形態学的に未熟なままであり得る(データ示さず)。この共有された通常の幹細胞の特徴は、肝臓、胆管系、及び膵臓に共通の胚性学的起源を示唆し、中腸臓器の病態生理学と発癌性だけでなく、再生医療にも影響を及ぼす可能性がある。
実施例23:p63+/Krt5+末梢気道幹細胞(DASC)を使用する肺再生
肺再生の潜在可能性は、慢性肺疾患の不可逆的な特徴により、長く軽視されてきた。しかしながら、急性感染症の間に大量の肺組織損失を持ちこたえた患者では、しばしば肺機能が完全に回復する。本実施例は、H1N1インフルエンザ感染症後のマウスにおける肺再生を実証して、このプロセスにおけるp63+Krt5+末梢気道幹細胞(DASCp63/K5)の関与を示唆する。具体的には、稀な既存のDASCp63/K5細胞がH1N1インフルエンザ感染に応答して増殖性の拡大を遂げて、間質性壊死の部位で構築される新生肺胞へ系統追跡され得ることが示された。DASCp63/K5をインビボで切除すると、H1N1インフルエンザ感染後の肺組織の再生が妨げられる。加えて、DASCp63/K5の単一細胞由来の系統は、培養時に無限に増殖し得て、H1N1インフルエンザ被感染マウスの胚へ移植された後で(例えば、傷害した肺へ導入されて、引き続きそこへ戻った後で)、傷害された肺を再生することができる。このように、これらの外因性幹細胞は、肺再生へ即座に貢献して、急性及び慢性の肺疾患を軽減するのに有意なポテンシャルを有する可能性がある。
この方法を使用すると、ヒト末梢気道上皮幹細胞は、確実な方法でクローン化し得て、インビトロアッセイにおいて肺胞構造を形成することができる。加えて、本明細書に記載する培養系は、気管支鏡より入手される約1mmの生検からの肺上皮幹細胞のクローニングと、移植目的のために無限の細胞数までそれらを増殖させることを可能にする。
背景
肺再生は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者や肺線維症患者における、不可避で進行性の肺機能低下によって一部裏付けられるように、長いこと困難とされてきた。しかしながら、急性肺傷害の臨床報告、特に壊死性肺炎の小児症例では、肺組織の広汎な液状化事象が数ヶ月にわたって機能的に放射線医学的にも完全に解決されることが詳述されている。同様に、やはり肺組織の広汎な破壊を伴う可能性がある、急性呼吸器窮迫症候群(ARDS)の生存者でも、退院の6ヶ月以内には正常な肺機能が回復することが多い。
亜致死量のマウス適応型H1N1インフルエンザAウイルスに感染させたマウスでも、同様の現象が存在する。H1N1又はH5N1インフルエンザ感染症又は他のARDSの誘因(triggers)の間のヒト肺のように、上記マウスの肺は、肺胞中のI型及びII型肺細胞と細気管支中のクララ(Clara)細胞が含まれる末梢気道上皮細胞の大量損失を特徴とする、広域の間質性白血球浸潤を発現した。しかしながら、以降の6〜8週にわたって、これらの肺は、そのような間質性病変の証拠の無い、その感染前の状況へ復帰する。この劇的な再生プロセスに並行していたのは、感染後7日目(7dpi)に多数のp63+Krt5+細胞が細気管支に出現して、11dpiに、濃密な白血球浸潤物が留まっている間質性領域へそれらが突然移動したことである。そこですぐに、これらのp63+Krt5+細胞は、莢様の(pod-like)構造へ構築されて、最終的には、肺胞の大きさ、外観、及び遺伝子発現プロフィールをとった。肺におけるp63+Krt5+細胞からの肺胞の構築は、インビトロでクローン化p63+Krt5+細胞が肺胞構造へ分化することと同等である。
クローン化p63+Krt5+細胞は、きわめて未分化であって、長期の自己複製とクララ細胞種と肺胞細胞種の両方へ分化することが可能であるので、本明細書では、p63+Krt5+末梢気道幹細胞(DASCp63/K5)として言及する。
本明細書で提供するのは、H1N1インフルエンザ感染症に先立つDASCp63/K5の存在と、これらの既存細胞が肺傷害へ応答して増殖性の拡張を受けた後に傷害部位へ移動して、そこで肺胞へ分化することを実証する遺伝系統追跡データである。本明細書にまた記載するのは、活性化DASCp63/K5の条件付き除去を可能にして、大量の急性肺損傷に続く肺再生にDASCp63/K5が必須であることを実証する、新規マウスモデルである。最後に、クローン化された同一遺伝子型のDASCp63/K5が傷害された肺において移植後に新生肺胞へ容易に構築され得ることを実証した。
感染前DASCp63/Krt5から再生中の肺への系統追跡
すでに出願人は、亜致死量のPR8 H1N1インフルエンザAウイルスにより白血球肺浸潤のサイクル(感染後9〜15日目(dpi)の間にピークとなって、次の数週間にわたる肺再生プロセスにおいて、新しい肺胞による漸進的な浄化及び置換が続く)が引き起こされることを示した。白血球に浸潤された肺組織の運命を明確化するために、15dpiでの被感染肺とシャム被感染対照肺について、全組織標本(whole mount)と連続切片標本を検証した。全体レベルでは、H1N1インフルエンザウイルスは、白血球浸潤と肺傷害を気道から放散するパターンで始動させる。明瞭な全組織標本の肺組織において、対照肺は、肺胞が付随した末端細気管支のきわめて秩序だったパターンを示すが、被感染肺は、気管支肺胞ネットワークの最末端にまで広がる明白な破壊の領域を示す(データ示さず)。これらの同じ変則領域を通る組織切片は、CD45(好中球とマクロファージが含まれる一般的な白血球マーカーで、ARDS関連の肺傷害との関連が示唆される)で陽性に染色される濃密に詰まった細胞を示す(データ示さず)。上記の白血球浸潤領域に著しく欠如しているのは、同じ肺の非影響領域に見られる肺胞の構造上の特徴と、さらにまたI型(PDPN+)及びII型(SPC+)肺細胞のマーカーである(データ示さず)。これらのデータは、肺組織が内皮肺胞壁において分解を受けて浮腫を生じ、白血球による組織溶解が関与する全体壊死相が続く、ARDS患者の肺における病理所見に一致する。
これらの白血球浸潤ゾーンにおける肺胞の局所破壊にもかかわらず、15dpiまでにこれらの同じゾーンは、p63とKrt5を同時に発現して新生の肺胞形成の初期段階を表す可能性がある、上皮細胞の多数の個別クラスターを示す(データ示さず)。15日目の肺の連続切片において染色されるKrt5の三次元的な再構築は、再生プロセスの間のいわゆるp63/Krt5「ポッド(pods)」の広い細気管支周囲のパターンを明らかにして、細気管支の軸に沿ってそれが延伸することを示唆する(データ示さず)。
H1N1インフルエンザで亡くなった患者の肺では、同様のプロセスが起きていた。これら患者の大多数は、感染の1週間以内に死亡して、10dpi以前に検査したマウスと同様に、間質性p63/Krt5ポッドを示さなかったが、2週間より多く生存した2名の患者では、マウスモデルときわめて合致する、これら細気管支周囲のp63/Krt5ポッドのパターンを示した。特に、レーザー捕捉顕微解剖法と発現マイクロアレイ解析は、これらの細気管支周囲ポッドが扁平上皮化生や傷害肺から識別されて、肺胞のそれときわめて密接に合致する発現プロフィールを有することを明らかにした(データ示さず)。
感染前に始まって、インフルエンザ誘発性の肺傷害と再生のサイクルを通したこれら細胞の運命が続く、Krt5+細胞の遺伝系統追跡を実施した。タモキシフェン依存性CreレコンビナーゼをKrt5プロモーターの制御下に発現してCre依存性のlacZ発現を有するマウス[Tg(KRT5−Cre/ERT2)ROSA26−stop−lacZ]を、25pfuのH1N1インフルエンザの気管内送達の9、6、及び3日前にタモキシフェンで処理し、感染後の様々な時点でlacZ(大腸菌β−ガラクトシダーゼ)の活性を調査した(データ示さず)。9dpi〜60dpiに至って、全組織標本のlacZ活性は、微弱で誘導気道に限られるもの(データ示さず)から、誘導気道と周囲の間質性領域に沿ってより広汎に分布するようになり、15dpi〜60dpiの間に何らかのプロセスが進行することを示唆した(データ示さず)。重要にも、H1N1インフルエンザ感染の非存在下では、タモキシフェン処理マウスの肺においてlacZ活性が検出されず、被感染肺において観測される確かなシグナルは、この感染に付随する肺傷害に応じたものであることを示唆した(データ示さず)。被感染マウス由来の肺のlacZ陽性領域の組織学的分析は、I型肺細胞とII型肺細胞のいずれも含有する肺胞に対応して染色される、広汎な間質性の領域を示した(データ示さず)。まとめると、上記データは、稀な既存のKrt5+幹細胞が、インフルエンザ誘発性の肺傷害に反応して産生される新生肺胞の上皮成分に貢献することを示唆する。
この観点から、免疫蛍光法を使用して、正常な非感染肺中のKrt5+p63+細胞について試験した。これらの細胞は、正常肺においてごく稀であって(全細胞のほぼ0.003%)、細気管支領域において単一又は小さな細胞クラスターとして存在して特徴的であって、CC10を発現するより一般的なクララ細胞よりも基部に位置している(データ示さず)。
本発明の方法を使用して、長期の自己複製能力を有する単一クローン種を入手して、これらクローンのすべてをp63への抗体とKrt5への抗体とで同時標識した(データ示さず)。最終的に、I型肺細胞とII型肺細胞に加えて、LacZ+Krt5+細胞も、Krt5+細胞の感染前系統追跡に従えば、マウス肺においてCC10+細気管支細胞を生じて(データ示さず)、DASCp63/Krt5細胞がクララ細胞を生じることを示唆した。このデータは、p63+Krt5+細胞が、急性肺傷害の間に増殖性の応答をして新生肺胞へ貢献する、肺において予め存在するDASCであことを示唆する。
活性化DASCp63/Krt5の条件付き除去
本実験は、DASCp63/Krt5細胞の選択的除去により、肺における再生応答が抑制又は消失されることを実証する。
我々のこれまでの研究は、急性肺損傷に対して応答するDASCp63/Krt5が、肺傷害の間質性領域へのそれらの移動の直前に、そしてその最初の数日を通して、損傷に対して応答する表皮幹細胞のマーカーであるケラチン6(Krt6)を発現し始めることを明らかにした。従って、出願人は、胚性幹細胞中のKrt6a遺伝子座を工学処理して、Krt6a対立遺伝子の1つよりDTRを構成的に発現するマウス系統を産生した(データ示さず)。インフルエンザ感染へ応答するDASCp63/Krt5細胞は、実際に、これらの細胞がKrt6遺伝子の発現をすると同時に、DTR導入遺伝子を発現した(データ示さず)。次いで、15dpi(このとき、Krt6が発現されている)の時点でのKrt6−DTRマウスからのクローン化DASCp63/Krt5細胞は、ジフテリア毒素の4日以内に死亡することがわかったが、一方で対照クローンは、増殖して、大きさも増大し続けた(データ示さず)。このマウスモデルのインビボ分析のために、Krt6−DTRマウスを亜致死量(25pfu)のH1N1インフルエンザウイルスに感染させて、8dpiでジフテリア毒素に感染させた。ジフテリア毒素は、15dpiまでにKrt5+Krt6+細胞の間質性クラスターの急速な損失をもたらし(データ示さず)、きわめて効率的な除去モデルであることを示唆した。予測されるように、細気管支上皮内のKrt5+Krt6−細胞は、ジフテリア毒素処理を生き延びた(データ示さず)。野生型対照と比較すると、Krt6−DTRマウスは、ジフテリア毒素処理に続いて、90パーセントのKrt5+細胞と99%より多くのKrt6+細胞を失う(データ示さず)。
出願人はまた、H1N1インフルエンザ感染に続いてジフテリア毒素で処理したマウスの運命を追跡した。野生型マウスが肺傷害の有意な回復を示す(間質の密集域(densities)の低下によって裏付けられる)30dpiで、Krt6−DTRマウスの肺は、15dpiで存在する傷害に類似した、より多くてより広い未分解の傷害領域を示す(データ示さず)。持続的な肺傷害におけるこの差異は、野生型動物では肺胞遺伝子発現へ向かう強い偏りがあることを明らかにする、野生型の肺とKRT−DTRの肺との全ゲノム発現解析の比較からなおいっそう明白である(データ示さず)。この偏りの根拠は、30dpiの野生型肺が15dpiで明白な傷害の約30%を有していても、残る密集域のほとんどすべては、SPC+型II肺細胞が不足しているI型肺細胞のネットワークからなることを示す、持続的な密集域の組織学的な比較によって明らかにされた(データ示さず)。
2ヶ月での再生領域では、Krt5細胞の系統追跡によりI型細胞とII型細胞がともに標識されるので、我々は、1ヶ月と2ヶ月との間の事象が、II型肺細胞が含まれる肺胞の成熟したネットワークをもたらすと予測している。DASCp63Krt5/Krt6の除去後の30dpi肺における再生事象の非存在に考慮して、我々は、これらの肺が慢性変性の証拠を示すかどうかを尋ねた。同じ30dpiの時点で、Krt6−DTR肺の密集域には、これらのI型肺細胞ネットワークが完全に欠けている(データ示さず)。実のところ、30dpi野生型マウス中の持続的な密集域は、すでに分解した濃縮白血球ではなくて、新たな肺組織の構築によるものであった。これに対し、30dpiのKrt6−DTRマウスの密集域は、CD45+白血球の継続した存在を反映した(データ示さず)。
DASCp63Krt5/Krt6の除去の30dpi肺における再生事象の非存在に考慮して、我々は、これらの肺が慢性変性の証拠を示すかどうかを尋ねた。有意義にも、30dpiにおける持続的な密集域は、肺の線維症前状態における関与がかつて示唆された筋線維芽細胞のマーカーである、平滑筋アクチン(αSMA)の染色を示した。同じ間質性領域は、線維症のマーカーである、マッソン・トリクロームブルーでの弱いが検出し得る染色を示した(データ示さず)。これに一致して、30dpiでの野生型肺とDASC切除肺の遺伝子発現プロフィールの比較は、ビメンチン、FSP129、及びコラーゲンの遺伝子が含まれる、肺線維症遺伝子のシグネチャーを明らかにした(データ示さず)。Krt6−DTR肺においては、コラーゲンとビメンチンが含まれる線維症関連遺伝子の発現も観測される(データ示さず)。追加の組織学的検査は、線維症の初期マーカーであるα−平滑筋アクチンを発現する、多数の筋線維芽細胞を示した。そのような細胞は、30dpiの野生型肺の密集領域に存在しなかった。まとめると、上記のデータは、急性肺損傷への応答の間に起こるDASCp63/Krt5/Krt6の除去が肺傷害の部位での再生プロセスの破綻と前線維症事象の発現をもたらすことを実証する。
再生中の肺への外因性幹細胞系統の取込み
本実験は、既存のDASCp63/Krt5がインビトロクローニング、増殖、及び移植に続く再生プロセスに実際に参画し得ることを実証する。
遍在するROSA26遺伝子座より発現されるlacZ(ROSA26−lacZ19)を特徴とする同一遺伝子系統のマウスを使用して、上気道由来の気道幹細胞(気管細気管支幹細胞;TBSClacZ)と肺由来の気道幹細胞(DASClacZ)をともにクローン化した(データ示さず)。次いで、本発明の方法を使用して、増殖分析と並行分析のためにTBSClacZとDASClacZの両方の系統を単一細胞より産生した。
その未熟な幹細胞状態において、TBSClacZ系統とDASClacZ系統は、ともにKrt5とp63に陽性である一方、既知の分化マーカーには陰性である。それらは、トランスクリプトームレベルではきわめて類似しているが、長期の連続継代の後でも、遺伝子のシグネチャーセットによって識別可能である(>6ヶ月;データ示さず)。3D培養における分化時に、TBSClacZとDASClacZは、上気道上皮構造と肺胞構造をそれぞれ生じて(データ示さず)、それに応じて異なる遺伝子セットを発現する(データ示さず)。
これらの細胞の移植時の運命について検査するために、TBSClacZ系統又はDASClacZ系統に由来する100万個の未熟な細胞を、25pfuのH1N1インフルエンザウイルスで5日前に感染させたマウスへ気管内送達して、経時的に追跡した(データ示さず)。非感染対照では、90日以内のどの時点でも、TBSClacZもDASClacZも肺中への取込みを示さなかった(データ示さず)。しかしながら、40dpi(送達後35日目)では、TBSClacZが90dpiでも変化しない、その気管細気管支起源に一致したパターンで主気道に局在化した(データ示さず)。対照的に、DASClacZは、40dpiの肺のより小さな気道と間質性領域に関与する広い分布のlacZ活性を示した(データ示さず)。90dpiで、DASClacZは、40dpiでアッセイされたものと比較して、間質性の空間においてより均質なパターンを示した(データ示さず)。
DASClacZを播種した肺の組織切片は、間質性肺において肺胞に典型的なパターンでのlacZ染色を明らかにして、これらの同じ領域は、I型肺胞とII型肺胞のマーカーで同時染色された(データ示さず)。レーザー捕捉顕微解剖法を使用する、これらの肺のlacZ陽性領域の遺伝子発現解析は、傷害肺のそれとは全く異なる典型的な肺胞遺伝子シグネチャーを示した(データ示さず)。最後に、移植されたDASClacZでは、CC10+細気管支におけるlacZ染色によって示されるように、クララ細胞も産生され得た(データ示さず)。
まとめると、上記の知見は、単一細胞に由来する末梢気道幹細胞の系統系がインビトロでの増殖によって無限に増大し得ること、そして傷害肺へ容易に取り込まれて、肺組織の再生に貢献し得ることを実証する。
材料と方法
系統追跡用にKrt5−CRE/Rosa26−LacZマウスを使用した。タモキシフェン(Tam)をトウモロコシ油に溶かして、IP注射により200mg/Kgでマウスへ適用した。感染後の追跡には、Tamを5、6、7dpiで適用した。感染前の追跡には、Tamを−9、−6、−3dpiで適用した。H1N1ウイルスの用量は、50pfuである。
指定のdpiでマウス肺を採取して、x−gal全組織標本染色へ一晩処した。代表的な肺葉をBABBによって透明にすると、明瞭な青いシグナルを示した。FFPE切片をNuclear RedとIFによって染色した。青いシグナルは、LacZ標識細胞を示す。x−gal染色の特異性は、細菌特異的なβ−gal抗体染色によって証明した。
感染後の追跡用に、Tamの1日後(8dpi)、一部の基底細胞を細気管支において成功裡に標識した。2〜3ヵ月後、LacZ標識細胞による有意な気道構造の再生が観察された。この青い細胞には、細気管支中のCC10+分泌細胞、1H8/11D6+肺細胞(SPC+II型肺胞細胞が含まれる)が含まれる。
感染前の追跡では、感染後の追跡に類似するパターンが観測される。その青い細胞には、主気管支中のCC10+分泌細胞とアセチル−チューブリン+繊毛細胞、細気管支中のCC10+分泌細胞、1H8+肺細胞(SPC+II型肺胞細胞が含まれる)が含まれる。
非感染対照マウスは、タモキシフェン投与後3ヶ月でごく微量の青いシグナルを示したが、これは、肺細胞の正常な代謝回転によるものであろう。
気道幹細胞を単離するために、1匹の成体C57/B6マウスより気管と肺を採取して、ディスパーゼとトリプシンによって消化してから、3T3フィーダー細胞のあるマトリゲル被覆ディッシュ上へ播種した。4回の連続継代の後で、クローニングリングによって単一コロニーを摘出して、培養した。TASCとDASCのコロニー形態は類似して見えて、いずれもKrt5及びp63陽性である。系統マーカー(Pdpn、CC10、及びSPC)のいずれも陰性である(データ示さず)。現在まで、これらのコロニーを1年まで継代してきて、観測し得る特性変化はない。
既報(Kumar et. al 2011)に記載のように、マトリゲル分化アッセイを実施した。末梢気道分化に有利になるように、FGF10(50ng/mL)を培地に含めた。この条件下で、DASCは密集して、球状構造へ成長した。この球は、内側が中空であって、1又は2層の細胞が表面にある。TASCもまた密集したが、ほとんど成長を示さずに、規則的な構造を形成しなかった。IF染色は、TASCでなくてDASCのマトリゲル構造がAqp5とSPCのようないくつかの肺胞マーカーを発現することを示した。代表的な画像を9日目に撮る。
さらに、DASC、TASC、及びそれらのマトリゲル構造に関するマイクロアレイ解析を実施した。PCA解析によって、トランスクリプトームに関して、TASCでなくてDASCのマトリゲル構造がマウスの胚性肺に類似していることを見出した。そして、「幹細胞からマトリゲル構造への」分化プロセスは、マウスの胚発生プロセスを反復するものである。
そのマトリゲル構造を本物のマウス気管及び肺と比較するために、LCMを使用して、マウスの気管、細気管支、及び肺胞を解剖して、マイクロアレイ解析を実施した。これをすることによって、マウスの気管、細気管支、及び肺胞の遺伝子発現シグネチャーをそれぞれ明らかにした。さらなる解析は、TASCマトリゲル構造が高次の気管シグネチャーを有するのに対して、DASCマトリゲル構造が高次の細気管支及び肺胞シグネチャーを有することを示した。
ALI分化では、近位気道への分化を有利にするために、FGF10を排除してレチノール酸を培地に含めた。ALI条件の下で、TASCは重層構造を形成し、一方DASCは、単層構造を形成する。IF染色は、TASC ALI構造がKrt5+基底細胞層と管腔繊毛性で分泌性の細胞層を有することを示した。
幹細胞の同所移植を実施するために、出願人は、気管内送達システムを開発して、初めにレトロGFP標識DASCを使用して、それを試験した。C57/B6マウスを75pfuのH1N1ウイルスに感染させて、5dpiで移植(1x107個の細胞)を実施した。移植から24時間後、細気管支、BADJ、及び傷害された間質性領域が含まれる多数の肺領域へGFP+細胞が取り込まれていることがわかった。一部の細胞は、内因性Krt5+幹細胞に類似した強いKrt5発現を維持する。GFP+細胞が気管に見出されなかったのは、その管状の形状では外因性細胞をほとんど保持し得ないからである。
移植から1週後(12dpi)、GFP+細胞は、内因性のKrt5ポッドを模倣するクラスターを形成するが、系統マーカーは発現されていない(データ示さず)。移植から2週後(20dpi)、GFP+細胞は、より大きなKrt5ポッドを模倣してPdpnを発現するクラスターを形成する。
長期の移植実験用にLacZ標識細胞を使用した。成体K5−CRE/Rosa26−LacZマウスからの幹細胞をクローン化した。細胞をインビトロで4OH−Tmxによって4日間処理して、CRE活性を誘導した。LacZの発現は、90%より多くの幹細胞がLacZ陽性であることを示す、細菌特異的β−gal抗体でのIF染色によって証明した。移植から1ヵ月後(40dpi)、全組織標本のlacZ染色は、移植された(TASCでなくて)DASCによる、気道構造の再生を示した。組織切片作成後に、40dpiでは、移植された42%のDASCが細気管支を形成する一方、19%が肺胞構造を形成することがわかった。移植から3ヵ月後、全組織標本のLacZ染色は、移植された(TASCでなくて)DASCによる、気道構造の有意な再生を示した。5%のDASCが細気管支を形成して、83%のDASCが肺胞を形成したのである(肺胞細胞は、健常な肺にしては多い数である)。IF染色は、移植されたDASCが1H8+肺細胞(SPC+II型とHop+I型の肺胞細胞が含まれる)を形成することを示した。対照的に、TASCは、肺腫瘍にいくらか類似した不規則な構造をわずかに形成するだけであった。
Krt6−DTRマウスモデルを立証するために、十分なDTRとKrt6の同時発現を示す、12dpiの肺におけるDTR発現を証明した。次いで、DTがKrt6−DTR細胞をインビトロで殺傷することが可能であることを示した。感染後(23dpi)のWTマウスととKrt6−DTRマウスの肺より幹細胞を単離して、DT処理(0.02μg/mL)を続けた。Krt6−DTRコロニーが4日後に死滅するのに対し、WTコロニーは、DT用量を10倍へ増加したときでも、正常に見える。Krt6−DTRマウスから単離したKrt6陰性内皮細胞も、DTに対して非感受性である。
DT効果について、インビボでも検査した。8dpiの時点で、DTをIP(50μg)と気管内(100μg)の方法により投与した。12dpiでマウスの肺を採取した。Krt6とKrt5の細胞数を計数した。IF染色の結果は、DTで処理したKrt6−DTマウスでは、WTと比較して、Krt6+細胞数がほぼ90%低下して、Krt5+細胞数も70%低下することを示した。
12dpiの肺についてクローン形成性アッセイを実施すると、DT処理したWTマウスとの比較において、Krt6−DTマウスでは、クローン形成性細胞数の70〜80%の低下が見出された。この数は、IF染色によるKrt5/Krt6細胞の損失に一致している。
H&E染色用に12dpiと30dpiの肺を採取した。肺の傷害領域(気道構造の損失、濃密な免疫細胞浸潤)について測定した。この結果は、12dpiではWT肺とKrt6−DT肺が同様に傷害されていて(ほぼ30%);30dpiではWT肺が半分修復されるのに対し、Krt6−DT肺は、修復されないことを示した。マウスの体重曲線は、組織学の結果に概ね一致していた。