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JP6620466B2 - ミトコンドリアに局在する性質を有する蛍光性化合物 - Google Patents
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JP6620466B2 - ミトコンドリアに局在する性質を有する蛍光性化合物 - Google Patents

ミトコンドリアに局在する性質を有する蛍光性化合物 Download PDF

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Description

本発明は、新規な蛍光性化合物に関し、さらに詳しくは、ミトコンドリアに局在する性質を有する蛍光性化合物に関する。また、該化合物を含有する、ミトコンドリアの可視化に用いるための蛍光色素組成物に関する。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを生産する一方でアポトーシスの制御にも関わり、細胞の生死に関わる細胞小器官である。また、ミトコンドリアの機能障害に起因して、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞等の代謝疾患、アルツハイマーやパーキンソン病等の神経変性疾患、癌が発病することが指摘されている。そのため、これら疾患のメカニズム解明や、治療方法の開発のためにも、蛍光性化合物での染色等によってミトコンドリアを可視化し、観察することは重要である。
ミトコンドリアを可視化するためには、ミトコンドリアの膜電位に応じて挙動を変化させる蛍光性化合物、すなわち、ミトコンドリアに局在する性質を有する蛍光性化合物によりミトコンドリアを染色し、かかる化合物より発せられる蛍光を観測する方法がある。本出願人は、2つのN−アルキルピリジニルエテニル基を置換基として有する環数2〜4の縮合多環基化合物、具体的には、以下のBP、FLW、NP、AC、PY等が、ミトコンドリア膜電位に応じてミトコンドリに局在することを見いだし、可視化に利用できることを既に報告している(非特許文献1、2、3)。また、上記化合物は多光子蛍光特性を有しているので、かかる化合物で染色した生体組織等を多光子励起顕微鏡で観察することによって3次元的なイメージを得ることもできる。
しかし、上記の化合物を用いて染色した細胞の顕微鏡画像の明るさは十分ではなく、より明るい画像を得ることが求められていた。
H. Moritomo, K. Yamada, Y. Kojima, Y. Suzuki, H. Kinoshita, A. Sasaki, S. Mikuni, M. Kinjo, J. Kawamata, Cell Struct. Funct. 39 (2014) 125. M. Tominaga, S. Mochida, H. Sugihara, K. Satomi, H. Moritomo, A. Fuji, A. Tomoyuki, Y. Suzuki, J. Kawamata, Chem. Lett. Vol. 43, No. 9 (2014) 1490. Y. Niko, H. Moritomo, H. Sugihara, Y. Suzuki, J. Kawamata , G. Konishi, J. Mater. Chem. B, 3 (2015) 184.
本発明の課題は、ミトコンドリアへ局在する性質を有し、細胞を染色したときに明るい顕微鏡画像が得られる化合物を提供することにある。
2つのN−アルキルピリジニルエテニル基を置換基として有する、環数2〜4の縮合多環基化合物における、上記N−アルキルをC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基とすることで、ミトコンドリアへの化合物の局在能が向上し、化合物のミトコンドリア外膜への集積度が高まるため、明るい顕微鏡画像を得ることができる。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]式(1)で表される化合物。
[式中、RはC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、
波線は、幾何異性体E、Zを表し、
Xは、以下の縮合多環基(i)〜(v)
(式中、Rは電子供与性基を表し、aは0〜4の整数であり、bは0〜6の整数であり、c及びeは0〜8の整数であり、dは0〜3の整数である。a、b、c、d、eが2以上の整数のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)のいずれかを表し、Zはピリジニウムカチオンに対するカウンターアニオンを表す。]
[2]縮合多環基が、以下の縮合多環基(i’)〜(v’)のいずれかであることを特徴とする上記[1]の化合物。
(Rは電子供与性基を表し、aは0〜4の整数であり、bは0〜6の整数であり、c及びeは0〜8の整数であり、dは0〜3の整数である。a、b、c、d、eが2以上の整数のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)
[3]カウンターアニオンが、ハロゲン化物イオン、スルホネート、過塩素酸イオンであることを特徴とする上記[1]又は[2]の化合物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることを特徴とする蛍光色素組成物。
[5]ミトコンドリアの可視化に用いるための上記[4]の蛍光色素組成物。
本発明の化合物はミトコンドリア局在能を有しており、かかる化合物を生体組織や細胞の染色に使用すると明るい顕微鏡画像を得られる。そのため、観察する対象である生体組織や細胞へ照射する光の強度を弱くしても観察に十分な顕微鏡画像を得ることができ、光照射による組織や細胞へのダメージ、及び、化合物の光退色を抑制できる。また、本発明の化合物は二光子や三光子等の多光子蛍光特性も有しており、例えば、二光子励起蛍光顕微鏡での観察において、弱い強度の励起光、すなわち、生体深部まで到達する長波長の光を利用することができるため、奥行き方向の観察範囲をこれまでよりも大きく広げることが可能になり、二光子励起蛍光顕微鏡により観察できる対象を広げることができる。
実施例4の化合物及びテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)により染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像、並びに、実施例4の化合物の蛍光顕微鏡画像とTMRMの蛍光顕微鏡画像とを重ね合わせた画像を示す図である。 実施例5の化合物及びTMRMにより染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像、並びに、実施例5の化合物の蛍光顕微鏡画像とTMRMの蛍光顕微鏡画像とを重ね合わせた画像を示す図である。 実施例6の化合物及びTMRMにより染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像、並びに、実施例6の化合物の蛍光顕微鏡画像とTMRMの蛍光顕微鏡画像とを重ね合わせた画像を示す図である。 比較例2の化合物及びTMRMにより染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像、並びに、比較例2の化合物の蛍光顕微鏡画像とTMRMの蛍光顕微鏡画像とを重ね合わせた画像を示す図である。 実施例2の化合物により染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像を示す図である。 比較例1の化合物により染色されたHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像を示す図である。 実施例1の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。 実施例2の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。 実施例3の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。 実施例4の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。 実施例5の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。 実施例6の化合物にレーザー光を集光して照射したときの、レーザー光の焦点のみでの発光を示す図である。
(化合物)
本発明の化合物は、式(1)で表される化合物である。
式中、RはC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、
波線は、幾何異性体E、Zを表し、
Xは、以下の縮合多環基(i)〜(v)
(式中、Rは電子供与性基を表し、aは0〜4の整数であり、bは0〜6の整数であり、c及びeは0〜8の整数であり、dは0〜3の整数である。a、b、c、d、eが2以上の整数のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)のいずれかを表し、Zはピリジニウムカチオンに対するカウンターアニオンを表す。
上記Xの縮合多環基(i)〜(v)の中でも、好ましくは、
(式中、波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)
で表される縮合多環基(i’)〜(v’)であり、さらに好ましくは、
で表される縮合多環基(i’)である。
式(1)中、RにおけるC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、炭素数4〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であれば特に制限されず、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等を挙げることができる。RにおけるC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の中でも、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基等のC4〜C6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
本発明の式(1)で表される化合物は、二光子を含む多光子吸収特性を有する化合物である。多光子吸収とは、光を光子として考えたとき、同時に2個以上の光子が吸収されることによって、分子の状態が励起され高いエネルギー準位に遷移することを意味する。例えば、二光子吸収では、その発生する確率が光の強度に対して二乗に比例する、非線形現象がみられる。したがって、光強度の高いときにのみ光の吸収が観測されるので、光をレンズで集光した場合、光強度の高い焦点付近でのみ吸収を起こすことができ、測定試料に対して焦点の位置を走査することによって、三次元的なイメージを得ることができる。
ここでRが、C1〜C3のアルキル基の場合、多光子吸収特性を示し、且つ、ミトコンドリアの局在が認められるものの、その局在は十分ではなく、結果として蛍光強度が実用的なレベルではなかった。本発明はこのRを、C4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基とすることによって、ミトコンドリアへの局在能を高めることができる。これはミトコンドリアに吸着するカチオン部位の疏水性をコントロールすることによって、ミトコンドリアへの局在能が極めて向上したためと思われる。その結果として、化合物のミトコンドリア外膜への集積度が高まるため、蛍光強度が増幅し、極めて明るい顕微鏡画像を得ることができる。ここで、RがC9以上になると、ミトコンドリアへの局在能が低下し、細胞の別の箇所が染色されるため適していない。よって、RをC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基とすること、特にC4〜C6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基とすることで、強い多光子吸収とミトコンドリア局在能に優れ、より明るい顕微鏡画像を得ることができる。
式(1)中、Xで表される縮合多環基は(i)〜(v)で表される基であり、それぞれ非置換又は置換されていてもよい縮合多環基である。非置換の場合は、(i)〜(v)で表される基において、a〜eが0の場合であり、合成的に有利である。また、置換されている場合は、電子供与性基であるRが1以上の場合であり、電子供与性基を置換することにより縮合多環基の電子密度が増加し分子内電荷移動が大きくなり、多光子吸収の波長を長波長へシフトさせることができ、蛍光特性を変化させることができる。電子供与性基Rとしては、縮合多環基の電子密度を増加させる効果がある有機基であれば特に制限されず、例えば、水酸基、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、アミノ基、エーテル結合を有するアルキル基及びエーテル結合を有するアルコキシ基等を挙げることができる。
上記C1〜C10アルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキル基であれば特に制限されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基等を挙げることができる。
上記C1〜C10アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
上記アミノ基としては、−NH、−NHR、−NR3'で表される官能基を挙げることができる。ここでR及びR3'は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基等のC1〜C10アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3〜C6シクロアルキル基;フェニル基等を表す。
エーテル結合を有するアルキル基及びエーテル結合を有するアルコキシ基としては、1又は2以上のエーテル結合を含むアルキル基及びアルコキシ基であればよく、例えば、−CHOCH、−OCHOCH、−CHOCHCH、−OCHOCHCH、−(CHOCHCH、−O(CHOCHCH、−(CHO(CHCH、−O(CHO(CHCH、−(CHO(CHCH、−O(CHO(CHCH、−(CHO(CHO(CHCH、−O(CHO(CHO(CHCH等を挙げることができる。
上記ピリジニウムカチオンに対するカウンターアニオンとしては、上記ピリジニウムカチオンと塩を形成できるものであれば特に制限されず、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオン;メタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロエタンスルホネート等のスルホネート;ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボラート、過塩素酸イオン等を挙げることができ、好ましくは、ハロゲン化物イオン、スルホネート、過塩素酸イオンである。
式(1)で表される化合物は、具体的には、以下に示す化合物を例示することができる。
(化合物の合成)
本発明の式(1)で表される化合物の合成法は、縮合多環部分とピリジン部分とを二重結合を介して連結する方法が挙げられる。具体的には、式(I)で表されるアルデヒドと式(II)で表されるN−アルキル−4−メチルピリジン−1−イウム化合物とを、触媒量の塩基の存在下、必要に応じて適当な反応溶媒中で反応することにより式(1)の化合物を合成することができる。
(式中、R、X、Zは前記と同じ意味を表す。波線は、幾何異性体E、Zを表す。)
式(I)で表されるアルデヒドは、市販の4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド等を使用することもできるが、公知の方法によってアリール化合物から誘導することもできる。例えば、市販のハロゲン化アリールをリチオ化した後、ホルミル化する反応により誘導する方法、市販のナフタレン、アントラセン、ピレン等のアリール化合物をフリーデル・クラフツ反応により誘導する方法、ビス(ヒドロキシメチル)アリール化合物を適当な酸化反応により誘導する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
式(II)で表されるN−アルキル−4−メチルピリジン−1−イウム化合物は、4−メチルヨードピリジンからZhang, Y.; Wang, J.; Ji, P.; Yu, X.; Liu, H.; Liu, X.; Zhao, N.; Huang, B. Org. Biomol. Chem. 2010, 8, 4582-4588に記載の方法にしたがって合成でき、具体的には、4−メチルピリジンとハロアルカンとを反応させることによって合成できるが、これに限定されるものではない。上記ハロアルカンとしては、1−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨード−1−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨードペンタン、1−ヨード−3−メチルブタン、1−ヨード−2,2−ジメチルプロパン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードヘプタン、1−ヨードオクタン等の市販のハロアルカンを使用することもできる
また、上記アルデヒドと上記N−アルキル−4−メチルピリジン−1−イウム化合物の使用量比は、特に制限されないが、N−アルキル−4−メチルピリジン−1−イウムのアルデヒドに対する当量比として、2.0〜4.0、好ましくは2.1〜3.0の範囲から適宜選択される。
上記塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン等を挙げることができる。塩基の使用量は、特に限定されないが、前記アルデヒドに対する当量比として、0.01〜1.0の範囲から適宜選択される。
また、縮合多環部分とピリジン部分とを二重結合を介して連結する方法として、ヘック反応を利用する方法も挙げることができる。具体的には、式(III)のハロゲン化アリールと4−ビニルピリジンを、必要に応じて適当な反応溶媒中で、パラジウム触媒及び塩基の存在下反応し、式(V)の化合物を得る。その後、式(V)の化合物を必要に応じて適当な反応溶媒中で、N−アルキル化剤(RZ)を作用させ、ピリジンの窒素をアルキル化することにより式(1)の化合物を合成することができる。
(式中、R、X、Zは前記と同じ意味を表し、Halはハロゲン原子を表す。波線は、幾何異性体E、Zを表す。)
上記ハロゲン化アリール及び4−ビニルピリジンは市販品を使用できる。また、上記ハロゲン化アリールと上記4−ビニルピリジン化合物の使用量比は、4−ビニルピリジンのハロゲン化アリールに対する当量比として、2.0〜4.0、好ましくは2.1〜3.0の範囲から適宜選択される。
上記パラジウム触媒は、通常ヘック反応に用いられるパラジウム触媒であればよく、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム、ビス(トリ−オルト−トリルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、パラジウムアセチルアセトナト、パラジウム炭素、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムクロリド、(1,3−ジイソプロピルイミダゾール−2−イリデン)(3−クロロピリジル)パラジウムジクロリド、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム等が挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、ハロゲン化アリールに対する当量比として、0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.3の範囲から適宜選択される。
上記塩基は、通常ヘック反応に用いられる塩基であれば特に限定されず、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ピリジン等のアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の無機塩基類が挙げられる。塩基の使用量は、特に限定されないが、ハロゲン化アリールに対する当量比として、2〜20、好ましくは3〜10の範囲から適宜選択される。
前記アルキル化剤は、通常窒素のアルキル化に用いられるN−アルキル化剤であれば特に限定されず、例えば、1−ヨードブタン、1−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨード−1−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−ヨードペンタン、1−ヨード−3−メチルブタン、1−ヨード−2,2−ジメチルプロパン、1−ヨードヘキサン、1−ヨードヘプタン、1−ヨードオクタン等の市販のハロアルカン等が挙げられる。アルキル化剤の使用量は、特に限定されないが、式(V)で表される化合物に対する当量比として、1〜10、好ましくは1〜5の範囲から適宜選択される。
そしてまた、式(V)で表される化合物は、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を用いても誘導できる。具体的には、式(VI)で表されるリン酸エステル化合物及び4−ピリジンカルボキシアルデヒドを、必要に応じて適当な反応溶媒中で、塩基の存在下反応し、式(V)の化合物を合成できる。
(式中、Xは前記と同じ意味を表し、Rはエチル基又は2,2,2−トリフルオロエチル基を表す。波線は、幾何異性体E、Zを表す。)
式(VI)で表されるリン酸エステル化合物は、Iwase, Y.; Kamada, K.; Ohta, K.; Kondo, K. J. Mater. Chem. 2003, 13, 1575-1581に記載の方法にしたがって、ビス(ハロメチル)アリール化合物を亜リン酸トリエチル又は亜リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)と反応させることにより誘導する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記4−ピリジンカルボキシアルデヒドは、市販品を使用できる。また、前記リン酸エステル化合物と前記4−ピリジンカルボキシアルデヒドの使用量比は、特に限定されないが、4−ピリジンカルボキシアルデヒドのリン酸エステル化合物に対する当量比として、2.0〜4.0の範囲から適宜選択される。
上記塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、水素化ナトリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、tert−ブトキシカリウム等が挙げられる。塩基の使用量は、ハロゲン化アリールに対する当量比として、2.0〜4.0の範囲から適宜選択される。
前記のすべての反応において使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これら反応溶媒は、それぞれ単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、前記アルデヒドが、0.001〜1.0(mol/L)の濃度になる範囲から適宜選択される。
前記のすべての反応において反応時の温度は、通常0〜200℃、好ましくは20〜130℃であるが、使用する溶媒や塩基の沸点によって適宜選択される。反応は空気雰囲気下で行ってもよいが、通常は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウム、窒素ガス等が挙げられる。反応生成物は、反応終了後の反応溶液を必要に応じて濃縮した後、析出した結晶をそのまま、あるいは、適宜な後処理を行った後に、反応生成物として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、抽出、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の精製が挙げられる。
(蛍光色素組成物)
本発明の蛍光色素組成物は、式(1)で表される化合物の少なくとも一つを含むものであれば特に制限されず、上記化合物に加えて、試薬の調製に通常用いられる添加剤である、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤等を含んでいてもよい。また、細胞や生体組織の染色をしやすくするためにも、上記組成物はさらに溶媒を含むことが好ましく、かかる溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)を好適に用いることができる。また、蛍光色素組成物の形態としては、粉末形態の形態、凍結乾燥物の形態、顆粒剤の形態、錠剤の形態、液剤の形態等を挙げることができる。
本発明の蛍光色素組成物は、ミトコンドリアの可視化に用いることができる。上記のミトコンドリアの可視化とは、ミトコンドリアの細胞中での存在を、蛍光顕微鏡画像等のような視覚情報として得ること指す。具体的には、エネルギー生産されている細胞、すなわち、好気呼吸によってエネルギー生産している状態の膜電位を有するミトコンドリア(‘活性のあるミトコンドリア’とも称す)が存在する細胞に本発明の蛍光色素組成物を添加すると、ミトコンドリア膜電位に応答して、ミトコンドリアと蛍光色素組成物に含まれる式(1)の化合物とが相互作用して、ミトコンドリアに式(1)の化合物が局在する。上記細胞に所定の波長の励起光が照射されると、ミトコンドリアに局在する式(1)で表される化合物より所定の波長の蛍光が発せられ、かかる蛍光が蛍光顕微鏡等で検出されることによって、観察対象の蛍光顕微鏡画像を得ることができる。
また、本発明の蛍光色素組成物は、正常な細胞か、アポトーシスや代謝ストレス等により脱分極したミトコンドリアを有する細胞かの判別、すなわち、細胞の生死の判別ができる。上述したように、細胞が活性のあるミトコンドリアを含む場合、上記蛍光色素組成物に含まれる式(1)の化合物がかかるミトコンドリアに局在して蛍光が検出され、正常な細胞と判断される。
他方、エネルギー生産が停止した細胞、すなわち、好気呼吸によるエネルギー生産を停止している状態の膜電位が脱分極したミトコンドリア(‘活性のないミトコンドリア’とも称す)が存在する細胞に本発明の蛍光色素組成物を添加すると、ミトコンドリア膜電位は脱分極しているためミトコンドリアに式(1)の化合物は局在せず、局在場所を核等の他の細胞小器官に変化させるか、細胞質に分散する。上記細胞に所定の波長の励起光が照射されると核等の他の細胞小器官に存在する式(1)で表される化合物より所定の波長の蛍光が発せられるか、細胞質に式(1)で表される化合物が分散しているために検出される蛍光強度も小さくなるかして、正常な細胞とは発光挙動が変化するため、アポトーシスや代謝ストレス等により脱分極したミトコンドリアを有する細胞と判断される。
細胞や生体組織への励起光の照射や式(1)で表される化合物より発せられる蛍光の検出は、蛍光顕微鏡によって行うことができる。上記励起光としては、式(1)で表される化合物が吸収できる波長であれば特に制限されず、紫外領域、可視領域、赤外領域の光である。そしてまた、生体組織の三次元的なイメージを得るために、励起光は式(1)で表される化合物に二光子吸収を起こさせるものが好ましく、具体的には、600〜1200nmの波長領域の励起光をレンズ等で集光し焦点の位置を走査して光を照射することで三次元的なイメージを得ることができる。
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]N,N’−ジブチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨードブタン(5mmol)と4−メチルピリジン(5mmol)とを酢酸エチル(5mL)に溶解させた。その溶液を80℃で撹拌すると、油状物質が生じた。溶媒を除去した後、得られた油状物質を酢酸エチルで数回洗浄し、4−メチル−1−ブチルピリジニウムヨージドを得た。
得られた4−メチル−1−ブチルピリジニウムヨージド(1mmol)と4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド(0.5mmol)をエタノール(5mL)に溶解させた。そこにピペリジンを2滴滴下し、60℃で撹拌した。12時間加熱した後、析出した黄色粉末を濾過して冷エタノールで数回洗浄し、N,N’−ジブチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージド(0.15g)を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=8.97(d、J=6Hz、4H)、8.27(d、J=6.4Hz、4H)、8.11(d、J=16Hz、4H)、7.94(d、J=8Hz、4H)、7.898(d、J=8Hz、4H)、7.63(d、J=16Hz、4H)、4.54(t、J=7.2Hz、4H)、1.94(m、4H)、1.37(m、4H)、0.97(t、J=7.6Hz、6H)
[実施例2]N,N’−ジ(2−メチルプロピル)−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨードブタンの替わりに1−ヨード−2−メチルプロパンを用いること以外は、実施例1に記載の方法に準じて標記化合物を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=a=8.95(d、J=6Hz、4H)、8.32(d、J=6.4Hz、4H)、8.12(d、J=16Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.65(d、J=16Hz、4H)、4.37(d、J=7.2Hz、4H)、1.07(m、2H)、0.92(t、J=7.6Hz、12H)
[実施例3]N,N’−ジペンチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨードペンタン(5mmol)と4−メチルピリジン(5mmol)とを酢酸エチル(5mL)に溶解させた。その溶液を80℃で3時間撹拌すると、油状物質が生じた。24時間加熱し、溶媒を除去した後、得られた油状物質を酢酸エチルで数回洗浄して4−メチル−1−ペンチルピリジニウムヨージドを得た。
得られた4−メチル−1−ペンチルピリジニウムヨージド(1mmol)と4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド(0.5mmol)をエタノール(5mL)に溶解させた。そこにピペリジンを2滴滴下し、60℃で撹拌した。12時間加熱した後、析出した黄色粉末を濾過して冷エタノールで数回洗浄し、N,N’−ジペンチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージド(0.10g)を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=8.98(d、J=6Hz、4H)、8.28(d、J=6.4Hz、4H)、8.12(d、J=16Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.89(d、J=8Hz、4H)、7.64(d、J=16Hz、4H)、4.53(t、J=7.2Hz、4H)、1.95(m、4H)、1.37(m、8H)、0.91(t、J=7.6Hz、6H)
[実施例4]N,N’−ジ(2−メチルブチル)−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨード−3−メチルブタン(5mmol)と4−メチルピリジン(5mmol)とを酢酸エチル(5mL)に溶解させた。その溶液を80℃で1時間撹拌すると、固体が析出した。24時間加熱した後、析出した固体を濾過し、酢酸エチルで数回洗浄して4−メチル−1−(2−メチルブチル)ピリジニウムヨージド(0.5g)を得た。
得られた4−メチル−1−(2−メチルブチル)ピリジニウムヨージド(1mmol)と4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド(0.5mmol)をエタノール(5mL)に溶解させた。そこにピペリジンを2滴滴下し、60℃で撹拌した。析出した黄色粉末を濾過して冷エタノールで数回洗浄し、N,N’−ジ(2−メチルブチル)−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージド(0.13g)を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=9.01(d、J=6.4Hz、4H)、8.28(d、J=6.4Hz、4H)、8.12(d、J=16Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.89(d、J=8Hz、4H)、7.64(d、J=16Hz、4H)、4.55(t、J=7.2Hz、4H)、1.86(m、4H)、1.62(m、2H)、0.97(t、J=6.4Hz、6H)
[実施例5]N,N’−ジヘキシル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨードヘキサン(5mmol)と4−メチルピリジン(5mmol)とを酢酸エチル(5mL)に溶解させた。その溶液を80℃で3時間撹拌すると、油状物質が生じた。24時間加熱し、溶媒を除去した後、得られた油状物質を酢酸エチルで数回洗浄して4−メチル−1−ヘキシルピリジニウムヨージド(0.8g)を得た。
得られた4−メチル−1−ヘキシルピリジニウムヨージド(1mmol)と4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド(0.5mmol)をエタノール(5mL)に溶解させた。そこにピペリジンを2滴滴下し、60℃で撹拌した。析出した黄色粉末を濾過して冷エタノールで数回洗浄し、N,N’−ジヘキシル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージド(0.15g)を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=8.99(d、J=6.4Hz、4H)、8.28(d、J=6.4Hz、4H)、8.12(d、J=16Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.90(d、J=8Hz、4H)、7.64(d、J=16Hz、4H)、4.53(t、J=7.2Hz、4H)、1.95(m、4H)、1.31(m、12H)、0.89(t、J=6.4Hz、6H)
[実施例6]N,N’−ジオクチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージドの合成
1−ヨードオクタン(5mmol)と4−メチルピリジン(5mmol)とを酢酸エチル(5mL)に溶解させた。その溶液を80℃で3時間撹拌すると、油状物質が生じた。24時間加熱し、溶媒を除去した後、得られた油状物質を酢酸エチルで数回洗浄して4−メチル−1−オクチルピリジニウムヨージド(0.6g)を得た。
得られた4−メチル−1−オクチルピリジニウムヨージド(1mmol)と4,4’−ビフェニルジカルボキシアルデヒド(0.5mmol)をエタノール(5mL)に溶解させた。そこにピペリジンを2滴滴下し、60℃で撹拌した。析出した黄色粉末を濾過して冷エタノールで数回洗浄し、N,N’−ジオクチル−4,4’−(ビフェニル−2,1−エテンジイル)ジピリジニウムジヨージド(0.17g)を得た。
HNMR(400MHz、DMSO−d):δ=8.99(d、J=6.4Hz、4H)、8.28(d、J=6.4Hz、4H)、8.12(d、J=16Hz、4H)、7.95(d、J=8Hz、4H)、7.90(d、J=8Hz、4H)、7.65(d、J=16Hz、4H)、4.53(t、J=7.2Hz、4H)、1.94(m、4H)、1.30(m、20H)、0.80(t、J=6.4Hz、6H)
[実施例7]細胞の蛍光化と観察
[細胞の培養]
染色のモデル細胞としてヒト胎児腎細胞であるHek293細胞を使用した。Hek293細胞は、10%(v/v)のウシ胎児血清、1%(v/v)のトリプシン及びストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO条件下で培養した。
[細胞の蛍光化]
顕微鏡観察を行う準備のために、Hek293細胞を35mmガラスベースディッシュに細胞密度1×10cells/dishとなるように継代した。継代して24時間後、細胞がディッシュへ付着していることを顕微鏡観察により確認した。ディッシュより培地を除き、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて2回細胞を洗浄した。実施例2、4、5、6の化合物、比較例1、2の化合物の1×10−3mol dm−3のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液2μLを添加したフェノールレッド不含DMEM培地2mL(PY最終濃度1μmol dm−3、最終DMSO濃度0.1%(v/v))をディッシュに入れ、12時間インキュベートすることにより染色を行った。顕微鏡観察の直前に、色素を含む培地をディッシュから取り除き、PBSを用いて2回細胞を洗浄し、フェノールレッド不含DMEM培地2mLをディッシュに加えた。
なお、比較例1、2の化合物は以下の構造であり、比較例1の化合物(BP)は、公知の合成方法により入手した。また、比較例2の化合物は、実施例1と同様の合成手順で合成することにより入手した。

(比較例1)
(比較例2)
[蛍光顕微鏡観察]
蛍光顕微鏡は、NikonのECRIPSE50iを用いた。蛍光画像の取得にはNikonのDS-Ri1を用いた。対物レンズは倍率100倍、NA=1.2の無限遠補正対物レンズを用いた。蛍光フィルターとしては、NikonのB-2Aフィルターキューブを用いた。
実施例4、5、6、比較例2の化合物について、ミトコンドリアに局在することを確かめるために、ミトコンドリア選択的プローブであるテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)を用いて染色した細胞との比較をそれぞれ行った。観察により得られた画像を、図1(実施例4)、図2(実施例5)、図3(実施例6)、図4(比較例2)に示す。
上記の図面より、実施例4、5及び6の化合物は、TMRMを用いて細胞を染色したときと同様に、ミトコンドリアに局在することがわかった。一方、比較例2の化合物は、ミトコンドリアには局在しないことがわかった。
実施例2の化合物及び比較例1の化合物との蛍光の強度の比較をNIS-Elementsを使用して行った。なお、NIS-Elementsでの画像解析による、実施例2の化合物の蛍光の強度を表す値は、78であり、比較例1の化合物の強度を表す値は、15であった。以上のことから、実施例2の化合物は、比較例1の化合物に対して蛍光強度が5倍程度強いことがわかった。
また、実施例2の化合物及び比較例1の化合物により染色した細胞の画像をそれぞれ図5、図6に示す。上記図5及び図6の対比からもわかるように、実施例2の化合物の方が強い蛍光を発する。
[二光子吸収の確認]
実施例1〜6の化合物をジメチルスルホキシドに溶解し、実施例1〜6の化合物の溶液が入ったセルに、レーザー光を集光して照射したところ、レーザー光の焦点のみで発光が観察された(図7〜12参照)。したがって、本発明の化合物は二光子吸収によって励起され蛍光を発する化合物といえる。
本発明の化合物は、蛍光性及びミトコンドリアに局在する性質を有しているため、ミトコンドリアを可視化した顕微鏡画像を得られる。また、本発明の化合物を細胞の染色に使用した場合、観察する対象である組織や細胞へ照射する励起光の強度は弱くてもよく、光照射による生体組織や細胞へのダメージ、及び、化合物の光退色を抑制できる。また、本発明の化合物は多光子蛍光特性も有しており、例えば、二光子励起蛍光顕微鏡での観察において、弱い強度の励起光、すなわち、生体深部まで到達する長波長の光を利用することができるため、奥行き方向の観察範囲をこれまでよりも大きく広げることが可能になり、二光子励起蛍光顕微鏡により観察できる対象を広げることができる。

Claims (5)

  1. 式(1)で表される化合物。
    [式中、RはC4〜C8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、
    波線は、幾何異性体E、Zを表し、
    Xは、以下の縮合多環基(i)又は(iv)
    (式中、Rは水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基を表し、aは0〜4の整数であり、dは0〜3の整数である。a、dが2以上の整数のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)のいずれかを表し、Zはピリジニウムカチオンに対するカウンターアニオンを表す。]
  2. 縮合多環基が、以下の縮合多環基(i’)又は(iv’)であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
    (Rは水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基を表し、aは0〜4の整数であり、dは0〜3の整数である。a、dが2以上の整数のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。波線は隣接する炭素原子に対する結合位置を示す。)
  3. カウンターアニオンが、ハロゲン化物イオン、スルホネート、過塩素酸イオンであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることを特徴とする蛍光色素組成物。
  5. ミトコンドリアの可視化に用いるための請求項4に記載の蛍光色素組成物。
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