本発明の例示的実施形態は、慎重に制御されたカイラリティ分布(またはバンドギャップ)、ならびに最高性能の導電性ポリマーに匹敵する、およびカーボンナノチューブ膜において以前に観察されたものより高い、340μWm−1K−2超の高いTE出力因子を達成することができる担体密度を有する、s−SWCNTネットワークを提供する。本発明の例示的実施形態に従って担体ドープを制御することにより、ドープされていないs−SWCNTネットワークに比べて、熱伝導率κが大幅に低減される。カーボンナノチューブの周りにラッピングされたポリマーを除去することにより、s−SWCNTネットワークのTE特性が改善される。
材料のTE性能は、無次元性能指数(dimensionless figure-of-merit)zT=(α2σ)Τ/κにより表現され、式中、αは、熱電能(ゼーベック係数)であり、σは、電気伝導率であり、α2σは、TE出力因子であり、κは、熱伝導率であり、Tは、絶対温度である。熱電能αは、温度差ΔΤに供された際に材料にわたり生成された起電力ΔVであり、α=ΔV/ΔTで与えられる。TE出力因子α2σは、材料系の性能指数zTを最適化する際に制御し得る。高い性能指数zTを達成するために、低い熱伝導率κを維持しながらTE出力因子α2σを最大化し得る。
図1(a)および図1(b)は、それぞれ、s−SWCNT含有物がポリマーマトリックス中に分散したナノ複合材ネットワーク、およびポリマー不含s−SWCNTのネットワークのAFM画像および対応する概略図を示す。両方の場合において、ネットワークは、個々のs−SWCNTおよびs−SWCNTのバンドルまたはロープを含み得る。試料の次元性を低減することにより、熱および電気輸送特性を制御することができる。より小さい長さスケールでは、境界界面および含有物がビブロン(vibron)もしくはフォノン(phonon)の有効な散乱中心となり得る界面を導入する、または高エネルギー電子のみの透過を許容する。
以下でさらに詳細に説明されるように、本発明の例示的実施形態によれば、s−SWCNTは、任意の好適な材料、例えば様々な化学部分に基づく共役ポリマーもしくはコポリマー(例えば、フルオレン、チオフェン、カルバゾール等)、DNA、または界面活性剤で富化して、未加工ナノチューブ材料であってもよい未加工SWCNT煤から抽出する。s−SWCNTは、炭素原子で構成されるが、いくつかの炭素原子の代わりに窒素またはホウ素原子等の置換ドープ元素を含み得る。次いで、超音波噴霧等の任意の好適な方法により、s−SWCNTの均一な薄膜を形成する。次に熱的に安定なp型またはn型ドーパントを使用して、s−SWCNT膜がドープされる。ルイス酸もしくは塩基(例えば、2,3,5,6−テトラフルオロ−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、トリエチルオキソニウムヘキサクロロアンチモネート(OA)、ヒドラジン、および/もしくはエチレンジアミン)、ならびに/またはブレンステッド−ローリーの酸もしくは塩基(例えば、硝酸、硫酸、および/もしくはトリフルオロ酢酸)等の任意の好適な電荷移動ドーパントを使用し得る。ルイスまたはブレンステッド酸は、p型s−SWCNTネットワーク(正孔が主な担体である)を生成し、ルイスまたはブレンステッド塩基は、n型s−SWCNTネットワーク(電子が主な担体である)を生成する。ドープレベルは、吸着したドーパントの量で調整する。ドープレベルを調整することにより、TE出力因子α2σを最適化し得る。
本発明の例示的実施形態は、排熱を電気に効率的に変換し得る潜在的に安価な有機材料の薄膜を提供する。上述のように、例示的方法は、富化s−SWCNTを使用し、制御可能な量のドーパント分子を使用して膜を構成するs−SWCNTのフェルミエネルギーを調整することにより、そのTE特性を調整する。s−SWCNTはまた、直径により調整可能なバンドギャップを有するナノ材料であるため、調整可能な色を有し得るが、これはTE布に使用し得る。ポリマー、直径分布、特定のs−SWCNTの電子構造、および/またはネットワークの全体的組成は、膜のTE特性を決定付けるように調節し得る。例えば、特定のポリマーが高いTE出力因子α2σを提供する場合、これらのポリマーは、高い電気伝導率σでの熱電能αの増加を提供することによって、より高いTE出力因子α2σを達成するように複合材中に組み込まれてもよい。同様に、特定のs−SWCNT状態密度が高いTE出力因子α2σを提供する場合、これらのs−SWCNT密度は、高い電気伝導率σでの熱電能αの増加を提供することによって、より高いTE出力因子α2σを達成するように複合材中に組み込まれてもよい。
さらに、高純度単一カイラリティs−SWCNTが、別様には多分散性のs−SWCNT複合材に組み込まれてもよい。これは、極めて高い電気伝導率で有利に高い熱電能αを提供し得る。さらに、膜は、フォノン散乱中心を合理的に組み込むために、適合された同位体(または原子)組成を有するように製造し得る。これは、高い熱電能αおよび高い電気伝導率を維持しながら有利に低い熱伝導率を提供し得る。
本発明の例示的実施形態は、高い電気伝導率σを実現すると同時に、SWCNTにおける極めて高い熱電能αを維持し得る。これらの2つの特性は、TE性能指数zT内のTE出力因子α2σを決定付け、同時に最適化するのが極めて困難であるが、その理由は、それらが典型的には互いに反比例して変動するためである。低い担体密度では、熱電能αは典型的には高く、一方電気伝導率σは低い。担体密度が上昇すると、熱電能αは降下し、電気伝導率σは上昇する。本発明の例示的実施形態は、フェルミエネルギーを調整することにより最適化され得る材料として、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーホストにより包囲されたs−SWCNTを利用し得る。この種の調整可能性は、s−SWCNTおよびm−SWCNTの両方を含有する膜においては不可能となり得るが、その理由は、m−SWCNTが全てのエネルギーにおいて有限の状態密度(DOS)を有し、低い固有熱電能αをもたらし、また分子ドープにより調整することが極めて困難であるためである。さらに、本発明の例示的実施形態は、高収率のs−SWCNTを抽出するために、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーの極めて高い感度を利用する。これらのポリマーは、特定分布のSWCNTの極めて選択的な分散を可能にし、これらの分布は、以下のさらなる詳細において説明されるように、適切なポリマーおよびSWCNT合成条件を選択することにより、敏感に調整し得る。
本発明の例示的実施形態は、富化s−SWCNTに基づくTE材料を製造およびドープするための方法を提供する。実験データは、s−SWCNTの熱電能αが、低いドープ密度において、関連技術の研究において実験的に得られたもの(500μVK−1)を大幅に超えることができることを示唆する理論的予測を立証した。ドープ条件を制御することにより、熱電能αの値は、極めて高い担体密度および電気伝導率σの値であっても、100μVK−1を十分に超える値を維持することができ、約1.0eVから1.2eVの電子バンドギャップを有するs−SWCNTに対して、約340μWm−1K−2の最適なTE出力因子α2σを提供する。本発明の例示的実施形態によるドープ方法は、ドープされていないカーボンナノチューブネットワークにおける熱伝導率κに影響するビブロン/フォノン寄与を著しく阻害する。
代表的m−およびs−SWCNTのDOSおよび熱電能の第一原理密度汎関数理論(DFT)計算が行われている。拡散輸送形式では、熱電能は、以下のMottの式で表現され得る。
エネルギー依存的電気伝導率は、両方ともエネルギーに依存するDOSおよび拡散定数の積であるσ(Ε)=e2Ne(E)D(E)で与えられる。低温近似において、熱電能値は、以下の対数項として表現され得る。
熱電能は、弾道項(ballistic term)および拡散項の和、α=αball+αdiffに近似的に等しい。したがって、全熱電能は、
と記述することができ、式中、第1の項は、DOSの形状に起因する弾道寄与(ballistic contribution)を説明し、第2の項は、拡散寄与を説明している。この例においては、熱電能に対する弾道寄与のみが計算された。初期の研究では、拡散項が弾道項と同じ符号を有する単純な定数であることが示唆されており、これは、達成可能な全熱電能が、ここで推定されるものより若干大きくなり得ることを意味する。
低温近似において、熱電能値は、以下の対数項として表現され得る。
式中、Eは、エネルギーであり、Efは、フェルミ準位のエネルギーであり、角括弧内の第1の項は、DOS N(E)の形状に起因する熱電能への弾道(または固有)寄与であり、第2の項は、拡散係数D(E)のエネルギー依存性に起因する拡散(または外因性)寄与であり、kBは、ボルツマン定数であり、Tは、絶対温度であり、eは、電気素量である。この例においては、熱電能に対する弾道寄与のみが式(4)に基づいて計算されたが、拡散成分からの寄与もまた上述のように決定され得る。
この例において、Projected−Augmented Wave(PAW)およびPerdew−Burke−Ernzerhof(PBE)交換相関汎関数を、Vienna Ab Initio Simulation Package(VASP)において実装されるように使用した。400eVの運動エネルギーカットオフでの平面波基底系を使用し、全ての原子位置は、力が0.025eV/Å未満となるまで緩和した。電子DOSの計算のために、(500×1×1)、(40×1×1)および(20×1×1)Γ−中心k点サンプリングを、それぞれ(9,9)、(7,5)および(10,8)SWCNTに対して使用し、0.02eVのガウシアンブロードニングを適用した。
図2(a)〜図2(e)は、m−SWCNTおよびs−SWCNTの熱電能αのDFT計算を示す。図2(a)は、計算された5つのSWCNTのうちの3つの単位格子を示し、(7,5)および(10,8)s−SWCNTは、それぞれ、小さい直径の一酸化炭素不均化(CoMoCAT(登録商標))および大きい直径のレーザ蒸発(LV)試料の代表であり、一方(9,9)は、大きい直径のm−SWCNTの代表である。図2(b)〜図1(d)は、同じ3つのSWCNTに対する電子DOS(下のパネル)内のフェルミエネルギー位置の関数として熱電能α(上のパネル)を示し、ゼロエネルギーは、ドープされていないSWCNTのフェルミエネルギー位置に固定された。図2(e)は、5つ全てのSWCNT種に対するDFT計算ピーク熱電能αの比較を示す。
上述のように、DFTにより検討された主な代表的半導体性種は、(7,5)および(10,8)s−SWCNTであり、一方主な金属性種は、(9,9)m−SWCNTであった。電子DOSの計算のために、(500×1×1)、(40×1×1)および(20×1×1)Γ−中心k点サンプリングを、それぞれ(9,9)、(7,5)および(10,8)SWCNTに対して使用し、0.02eVのガウシアンブロードニングを適用した。(9,9)m−SWCNTの単位格子の低減されたサイズに起因する可能な影響を排除するために、それぞれ(7,5)および(10,9)s−SWCNTと同様の直径を有するが、(9,9)m−SWCNTと同様のサイズの、はるかにより小さい単位格子を有するジグザグ型(10,0)および(16,0)s−SWCNTに対しても計算を行った。図3は、DFT計算において考慮された5つの主要なSWCNTカイラリティの単位格子を示す。
DFT計算は、2つのモデルのs−SWCNTの固有熱電能αのピークが、(9,9)m−SWCNTのものよりほぼ1桁高いことを実証しており、関連技術からの最近の実験結果と定性的に一致している。しかしながら、s−SWCNTの予測熱電能αの大きさは、関連技術からの最近の実験において得られた値よりも劇的に高い。いずれかの方向におけるわずか約60meVの小さいフェルミエネルギーシフトΔEFは、図2(b)に示される(7,5)および(10,8)s−SWCNTに対して、それぞれ約1,300μVK−1および800μVK−1の最大熱電能αを生成し、これは以前に実験的に観察された最高値(約160μVK−1)よりほぼ1桁高い。熱電能αは、ΔEFの増加と共に単調に低下するが、計算は、制御可能にドープされたs−SWCNT内の熱電能αが、フェルミエネルギーのかなりのシフトに対して100μVK−1を十分超える値を維持し得ることを示唆しており、例えば、(7,5)s−SWCNTのαは、ΔEF≒0.4eVに対して200μVK−1である。図2(c)は、5つの異なるSWCNTのピークDFT計算熱電能αを要約しており、4つのs−SWCNT全てのDFT計算最大熱電能αが、(9,9)m−SWCNTよりも劇的に高かったことを実証している。この大きさの熱電能αは、すでに十分裏付けられているドープされたs−SWCNTの高い電気伝導率と併せて、TEデバイスにおけるこれらの材料の顕著な技術的可能性を約束するものである。
本発明の例示的実施形態は、細かく制御されたSWCNTカイラリティ分布および担体密度を有する高度に適合されたs−SWCNT薄膜を提供する。図4(a)〜図4(d)は、富化s−SWCNTの分散体および十分にカップリングされたs−SWCNT薄膜の堆積を示す。図4(a)は、富化s−SWCNTを分散させるために使用され得るフルオレン系ポリマーまたはコポリマーの3つの例の化学構造を示す。図4(b)は、それぞれ0.8nm(1.5eV)、1.1nm(1.1eV)、1.3nm(0.95eV)、および1.8nm(0.7eV)の平均SWCNT直径(電子バンドギャップ)を有する、PFO/SG65(7,5)、PFH−A:HiPCO、PFO−BPy:LV、およびPFO−BPy:Tuball s−SWCNT分散体の代表的吸光度スペクトルを示す。図4(c)は、PFO/SG65 (7,5)s−SWCNTの液相および薄膜試料の吸光度スペクトルを示す。点線は、OAによる高濃度p型ドープ後の薄膜の吸光度スペクトルを示す。図4(d)は、PFO−BPy/LV薄膜の代表的なトポグラフィック原子間力顕微鏡写真を示す。これらの吸光度測定は、ステップサイズ2nm、走査速度600nm/分(点当たり0.2秒の積分時間に等しい)のCary 500分光光度計で行った。液相測定の場合、ブランク溶媒を入れたキュベットをベースラインとして使用した。膜測定の場合、ブランクガラススライドをベースラインとして使用した。
富化半導体性試料を生成するために、s−SWCNTは、図4(a)に示されるもの等のフルオレン系ポリマーまたはコポリマーを使用して、多分散SWCNT煤から選択的に抽出され得る。フルオレン系ポリマーおよびコポリマーは、広範な直径にわたって等しく優れた収率およびスループットで、s−SWCNTに対する極めて高い選択性を示しており、最近の電界効果トランジスタ(FET)研究では、0.02%以下のレベルのm−SWCNT不純物が示唆されている。図4(b)に示される全ての試料は、吸光度およびラマン分光法により本質的に検出不可能なm−SWCNT不純物を示すが、これらの技術は、約99%を超えるs−SWCNT純度レベルの定量的推定は可能ではない。
例えば、ポリマー:s−SWCNT分散体を調製するために、(1)約1125℃の炉内温度でLVにより合成されたSWCNT;(2)商業的に得られる、CoMoCAT(登録商標)のコバルトモリブデン触媒から合成された「SG65i」材料;(3)商業的に得られる、COの高圧不均化により合成された未加工HiPCO(登録商標)材料;および(4)商業的に得られる未加工Tuball(商標)SWCNTの4つの異なるSWCNT源材料を使用し得る。未加工LV SWCNT、HiPCO(登録商標)SWCNT、およびTuball(商標)SWCNTは、すべて約1:3の比で金属性および半導体性チューブを含有すると推定されるが、CoMoCAT(登録商標)材料は、s−SWCNT、特に(6,5)s−SWCNTに富む。SWCNTを、ポリマーを0.4〜2mg/mLの間の濃度でトルエンに溶解することにより生成されるフルオレン系ポリマーまたはコポリマー溶液中に分散させ得る。使用されるポリマーは、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(6,6’−{2,2’−ジピリジン})](PFO−BPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(9,10−アントラセン)](PFH−A)、および/またはポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)(PFO)を含み得る。これらのフルオレン系ポリマーは、s−SWCNTを選択的にラッピングし、1%未満のm−SWCNT不純物レベルでのSWCNT分散を可能にする。これらの3つのフルオレン系ポリマーは、半導体性チューブのみを選択するが、各ポリマーは、s−SWCNTの異なる集団を選択する。PFO−BPyは、特定のカイラリティに対する優先性を有することなく大きな直径のチューブを選択し、PFH−Aは、ほぼアームチェア型のs−SWCNTを選択してはるかにより狭いカイラリティ分布を分散させ、PFOは、前駆体材料が主に(6,5)s−SWCNTで構成される場合でも、SG65i材料から(7,5)チューブのみを選択する。大きい直径範囲の半導体性ナノチューブを選択的にラッピングするフルオレン系半導体性ポリマーを使用してs−SWCNTの高収率分散体を生成するための技術に関するさらなる詳細については、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれる、Guillot, S. L. et al. Precision printing and optical modeling of ultrathin SWCNT/C60 heterojunction solar cells. Nanoscale 7, 6556-6566 (2015)およびMistry, K. S., Larsen, B. A. & Blackburn, J. L. High-Yield Dispersions of Large-Diameter Semiconducting Single-Walled Carbon Nanotubes with Tunable Narrow Chirality Distributions. ACS Nano 7, 2231-2239 (2013)を参照されたい。
直径(またはバンドギャップ)は、s−SWCNTネットワークを形成するために使用される合成条件により決定する。例えば、PFO、PFH−A、PFO−BPy、SMP、PF−PD、または同様のフルオレン系ポリマーもしくはコポリマー等のポリマーを、未加工の出発材料からどの特定のs−SWCNTが選択されるかを制御するために使用し得る。バンドギャップは、任意の好適な値を有するように制御し得る。例えば、以下でさらに詳細に説明される理由から、バンドギャップを、約1.0eVから約1.2eVの間の値を有するように制御し得る。例えば、ポリマーPFH−AおよびHiPCO(登録商標)材料は、このバンドギャップを達成するために使用し得る。HiPCO(登録商標)材料は、バンドギャップがこの範囲に近いs−SWCNTの分布を含み、PFH−Aとs−SWCNTの特定のサブセットとの間の化学的相互作用により、約1.1eVのバンドギャップを有するs−SWCNTに富む試料が得られる。s−SWCNTのサブセットは、出発SWCNT材料および共役ポリマーの選択により決定する。この組合せは、任意の好適な方法、例えば、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれる、Mistry, K. S., Larsen, B. A. & Blackburn, J. L. High-Yield Dispersions of Large-Diameter Semiconducting Single-Walled Carbon Nanotubes with Tunable Narrow Chirality Distributions. ACS Nano 7, 2231-2239 (2013)において開示されている方法により決定し得る。
s−SWCNTがポリマー中に分散したら、過剰のポリマーの大部分は、連続20時間の遠心分離操作中に、溶液が1:1から2:1の間のポリマー:s−SWCNTの質量比に達するまで除去し得るが、これは、各遠心分離操作後に、ランベルト−ベールの法則A=εcl(式中、Aは、吸光度であり、εは、モル吸光係数であり、cは、濃度であり、lは、経路長である)を使用して、溶液の吸収スペクトルから決定する。
図4(c)および図4(d)に示される高品質s−SWCNTネットワークは、好適な超音波噴霧堆積技術、例えば、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれる、Guillot, S. L. et al. Precision printing and optical modeling of ultrathin SWCNT/C60 heterojunction solar cells. Nanoscale 7, 6556-6566 (2015)およびDowgiallo, A.-M., Mistry, K. S., Johnson, J. C. & Blackburn, J. L. Ultrafast Spectroscopic Signature of Charge Transfer between Single-Walled Carbon Nanotubes and C60. ACS Nano 8, 8573-8581 (2014)に記載のもの等により調製し得る。一例において、超音波噴霧器は、Sonotek 120 kHz Impactノズルを利用した。室温のSWCNTインクを、7std L/分での窒素流下で、0.8ワットの超音波噴霧ヘッド出力で300μl/分で噴霧した。噴霧中、基板を130±10℃に加熱した。過剰のフルオレン系ポリマーまたはコポリマーを除去するために、噴霧されたs−SWCNT膜を78℃で10〜20分間トルエン中に含浸した。膜厚は、s−SWCNTインクの濃度および噴霧器の通過数により制御し、トルエン含浸膜の原子間力顕微鏡法(AFM)により直接測定した。
図5(a)〜図5(d)は、代表的s−SWCNT膜の形状測定およびAFM測定を示し、膜が低い表面粗度で広範囲にわたり均一であることを実証している。図5(a)および図5(b)は、それぞれトルエン含浸処理前および後の光学顕微鏡写真を示す。図5(a)における堆積直後の膜は、過剰のポリマーの蓄積に起因して極端な表面粗度を示しており、これは、高温トルエン含浸により除去することができ、図5(b)に示される極めて滑らかな膜を残す。図5(c)は、トルエン含浸処理後のs−SWCNTネットワークの表面のAFM顕微鏡写真を示す。図5(d)は、図5(c)に示される破線に対して決定された高さプロファイルを示し、トルエン処理が滑らかなs−SWCNTネットワーク(二乗平均平方根表面粗度Rq<8nm)をもたらすことを示している。
上述の例において、最初の膜堆積の後、トルエン含浸は過剰のフルオレン系ポリマーまたはコポリマーを除去し、ポリマーラッピングされたs−SWCNTを約1:1のポリマー:s−SWCNTの質量比で残し、例えば図4(c)に示されるような広がった励起子遷移により示されるように、s−SWCNT間の密な物理的接触および効率的な電子結合を可能にした。その後、膜を、強い一電子酸化剤であるOAの溶液中に浸漬することにより、完全にドープした。この例において、完全ドープを達成するために、DCE中の1mg/mL超のOA溶液の浴内で、膜をDCE中のOA濃縮溶液に78℃で最低約1分間浸した。しかしながら、任意の他の好適な条件、溶液、および/または溶媒を使用してもよい。ここで、「完全ドープ」とは、濃度および/または浸漬時間のさらなる増加が吸収スペクトルまたは膜伝導率にそれ以上変化をもたらさないドープレベルとして定義される。
吸着したOA分子により注入された高密度(完全にドープされた膜の場合約1×1020cm−3)の正孔は、図4(c)において「高濃度ドープ膜」と標示された破線により示されるように、s−SWCNTの励起子遷移を強くブリーチ(bleach)し、膜の電気伝導率σを劇的に増加させる。S11吸収バンドのブリーチ、または強度の低減は、カーボンナノチューブの担体ドープの定性的な指標を提供し、ブリーチの大きさは、担体ドープ密度に依存する(すなわち、担体密度がより大きいほど、より顕著なブリーチが生じる)。S11吸収バンドの相対的ブリーチΔA/A0(S11)は、
で与えられ、式中、
は、それぞれ、ドープされていない、およびドープされた試料のS11吸収ピーク下の面積である。本発明の例示的実施形態は、X線光電子分光法により測定されるようなC1sピークのエネルギーのシフトを、ドープの関数として試料のフェルミ準位のシフトΔEfと関連付けることができる。これにより、ΔA/A0(S11)とΔEfとの関連付け(以下で説明される図9(g)を参照されたい)、および実験的に測定されたゼーベック値とフェルミ準位のシフトの関数として上で説明されたDFT計算により予測された値とのその後の比較(以下で説明される図12(e)を参照されたい)が可能となる。
この例において、熱電能(ゼーベック)測定を、温度制御および膜への電気接触に銅(Cu)ブロックを使用するシステムで行った。インジウムパッドをまずs−SWCNT膜上に押し付け、Cuブロックへの良好な抵抗および熱接触を確実とした。Cuブロック間の間隔は4mmであり、したがって、インジウムパッド間の最低限の間隔は約6mmであった。しかしながら、この例において使用されたインジウムパッド間の典型的な間隔(90%超の測定に対して)は、約16〜20mmである。ブロックのそれぞれに接続された抵抗加熱器は温度勾配を生成したが、これは示差熱電対により測定した。各試料に対して少なくとも4つの異なる温度勾配(−3Kから+3Kの間)を測定し、これらの点の最適なフィッティング(fit)の線の傾きを報告された熱電能αに使用し、電気回路の他の全ての部品の寄与(すなわち銅/インジウム接触に起因するゼーベック電圧)に関して補正した。システムの物理的寸法に基づいて、システムにより報告された熱電能αの推定誤差は10%未満であった。
広範囲の注入担体密度に対してΔA/A0(S11)をs−SWCNT膜内の実際の担体密度と直接関連付けることは困難であるが、担体密度は、励起子の近似的サイズに基づいて、完全にドープされた膜内で推定し得る。S11励起子を完全にブリーチするために、担体密度(SWCNTの単位長さ当たり)は、単位長さLcor当たり約1つの正孔が存在するような密度であり、Lcorは、相関長または励起子サイズである。Lcorは、約2nmの範囲内であると決定されており、したがって、完全なS11ブリーチは、約0.5nm−1の範囲内の正孔密度で生じる。(7,5)SWCNTの吸収断面積は、約1.6×1017cm2/C原子の範囲内であることが実験的に推定されており、SWCNTのナノメートル当たりの原子数は、幾何学的に[119.7×d(n,m)]であると決定することができ、d(n,m)は、(n,m)カイラル指数を有するカーボンナノチューブの直径である。膜の吸光係数および約1.12g/cm3の完全充填SWCNT密度((7,5)SWCNTの場合)を使用して、膜は、約0.42g/cm3の密度(約40%の充填率)を有すると推定し得る。(7,5)SWCNTは、約99個のC原子/nmを有するため、この密度は、完全にドープされたs−SWCNT薄膜における約1×1020個の正孔/cm3の担体密度となる。
複数の対照実験が、s−SWCNTネットワークにおける残留フルオレン系ポリマーまたはコポリマーは測定された電気伝導率σに寄与しないことを実証している。ポリマーラッピングされたLV s−SWCNT膜の基本的な電荷輸送特性と、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーを用いずに調製されたLV SWCNT膜の輸送特性との比較を行った。本発明の例示的実施形態によるSWCNT膜を調製するために、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いて水性懸濁液中に分散されたSWCNTを、まず噴霧コーティングにより混合し得る(1/3金属性、2/3半導体性)。次いで、CMCを硝酸により膜から分解除去し得、残留ポリマーを含まない高濃度p型SWCNTの十分に接続されたネットワークを残す。これらの透明SWCNT膜に対して典型的に報告された性能指数、550nmにおける光透過率(T550)およびシート抵抗(Ω/sq.でのRSh)が、図6にプロットされている。この例において、ポリマー:s−SWCNTネットワークのシート抵抗は、4点プローブ(1mmプローブ間隔)を使用して測定した。測定精度は、約14Ω/sq.のシート抵抗を有する較正されたインジウムドープスズ酸化物試料を使用して決定した。シート抵抗は、AFMにより測定されるような膜厚を利用することにより、電気伝導率σ(Sm−1)に変換した。
図6は、ドープされたポリマー:LV s−SWCNTネットワークの光電子特性の、ドープされた無傷SWCNTネットワークとの比較を示す。様々なドープされたSWCNT膜のシート抵抗対透過率(λ=550nmで測定)が示されている。丸および四角は、分散剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を利用した水性分散体から噴霧された膜を表す。堆積後、CMCは、硝酸により完全に分解除去し得る。黒丸は、この硝酸含浸直後に測定されたp型ドープ膜についての測定値であり、灰色の四角は、その後ヒドラジンでn型ドープされた膜の測定値である。正立三角形および逆三角形は、それぞれ、PFH−AまたはPFO−BPy分散体から調製された膜のためのものである。超音波噴霧堆積後、膜をトルエンに含浸して過剰のポリマーを除去し、次いで、膜を78℃のジクロロエタン(DCE)中2mg/ml超のOAに浸漬することにより、強力にp型ドープしてもよい。
PFH−AおよびPFO−BPyポリマーの両方を使用した高濃度でドープされたLV s−SWCNTネットワークのT550/Rsh値は、CMCプロセスにより調製されたp型膜と同じ傾向に従う。この相関は、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーが、p型s−SWCNT膜内での正孔輸送を向上させないことを示唆している。高濃度でドープされた、ポリマーラッピングされたLV s−SWCNT膜の温度依存的抵抗もまた、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーを用いずに調製されたSWCNT膜(図示せず)の抵抗と比較された。全ての場合において、抵抗は、温度の増加と共に減少し、これは、以前にチューブ間の接点に関連した障壁によるものとされていた熱活性化伝導機構を示している。総合すると、これらの実験は、図12(a)〜図12(f)において測定された電気特性(以下で説明される)が、フルオレン系ポリマーまたはコポリマーによって認識され得るほどには向上されず、その代わりに、膜内のs−SWCNTの固有特性、すなわちSWCNT電子構造、ドーパントで制御されたフェルミ準位、およびチューブ間ポテンシャル障壁から生じることを確認する上で役立つ。
ポリマー:s−SWCNTネットワークの極めて高いドープ密度では、ポリマーに起因する最低エネルギー吸収バンドの強度の減少、および吸収スペクトルにおけるレッドシフトした肩の出現が見られる。OAドーパントをポリマーのDCE溶液に同時溶解することにより(PFH−AおよびPFO−BPyの両方において)同じスペクトルの特徴が生じることから、図7(a)〜図7(d)は、これらの観察がポリマーのp型ドープに起因し得ることを示している。図7(a)〜図7(d)は、ドープされていない、および高濃度でドープされたポリマー:LVネットワークおよびDCE溶液中のポリマーの吸光度スペクトルの比較を示す。図7(a)は、DCE中のPFH−AおよびPFH−A:LV膜を示し、一方図7(b)は、DCE中のPFO−BPyおよびPFO−BPy:LV膜を示す。ポリマー:LV膜および液相ポリマーの両方が、OAにより高濃度でドープされている。矢印は、ドープされたs−SWCNT膜におけるS33 SWCNT遷移の領域において観察され得る主なPFH−Aポーラロンピークを指す。図7(c)は、ドープされていない、およびドープされたPFO−BPy膜の比較を示す。図7(d)は、様々な厚さのドープされたPFO−BPy膜の吸光度を示す。凡例は、全ての試料の輸送特性が測定不能であることを示している。
これらの対照実験は、固体状態における鎖間相互作用に起因するスペクトルの特徴から生じる複雑性を回避するために、液相中で行った。図7(c)は、ポリマーが主に非晶質固体状態構造を形成する場合、高濃度でドープされた未処理PFO−BPy膜において同様の結果が観察されることを示している。図7(d)は、高濃度でドープされた膜において観察されるスペクトルの特徴が、ポリマー:s−SWCNTネットワークと同様の厚さにわたり、PFO−BPy膜厚とは無関係であることを示している。しかしながら、ポリマー鎖が密に充填されているため、未処理PFO−BPy膜は、ポリマー:s−SWCNTネットワークよりも大幅に多いポリマーを有する(例えば、130nm厚のPFO−BPy膜の場合10〜20倍)。これらのドープされたPFO−BPy膜の電気伝導率σを測定する全ての試みは、最も低いシート抵抗を有すると推定される最も厚い膜に対してさえも失敗に終わった。
フルオレン系ポリマーまたはコポリマーのドープ挙動を合理化するためには、PFOおよび(7,5)s−SWCNTのモデル系の間の価電子準位オフセットが考慮される。Schuettfort, T., Nish, A. & Nicholas, R. J. Observation of a Type II Heterojunction in a Highly Ordered Polymer-Carbon Nanotube Nanohybrid Structure. Nano Lett. 9, 3871-3876 (2009)では、価電子準位オフセットが(7,5)SWCNTの場合約500meVであると推定された。Bindl, D. J. et al. Free Carrier Generation and Recombination in Polymer- Wrapped Semiconducting Carbon Nanotube Films and Heterojunctions. J. Phys. Chem. Lett. 4, 3550-3559 (2013)から、(9,7)イオン化ポテンシャルは、5.18eVの範囲内であると推定されている。(9,7)および(7,5)SWCNTの電子バンドギャップの差を考慮すると、これによって(7,5)SWCNTのイオン化ポテンシャルは約5.36eVの範囲内となる。Janietz, S. et al. Electrochemical determination of the ionization potential and electron affinity of poly(9,9-dioctylfluorene). Appl. Phys. Lett. 73, 2453-2455 (1998)では、PFOの約5.8eVのイオン化ポテンシャルが見出されている。これは、(7,5)SWCNTとPFOとの間の約440meVの推定オフセットを意味する。このオフセットは、この例におけるLV SWCNTの場合、約600meVまで増大する。
これは、ポリマーが、フェルミ準位においてかなり大きなシフト(ΔEF>約500meV)が生じるまで、顕著にはドープされない(すなわち、ポーラロン形成に起因して無視できる吸収の特徴を示す)ことを暗に意味する。ポリマーのこのドープは、2つの様式で観察し得る。まず、吸光度スペクトルは、フルオレン系ポリマーが、OAの高い表面濃度で、すなわち、以下で説明される図9(a)および図9(b)、ならびに以下で説明される図8(a)および図8(b)に示されるような最も高いドープレベルで、OAによりドープされることを示している。これは、400nmの範囲内のポリマー吸収の振動子強度の低減、および正孔ドープポリマーの正のポーラロン吸収に対応するより長い波長での新たな特徴の発達により証明される。
ポリマーのドープはまた、XPS C1sピークにおけるFWHMの突然の変化により観察し得る。一例において、内殻準位および仕事関数XPS測定を行った。XPS内殻準位ピークは、Auのフェルミ準位および内殻準位の測定を含む清浄化された金(Au)の標準を使用して較正した。内殻準位スペクトルを、11.85eVの通過エネルギーおよび0.10eVのステップサイズで収集した。これは、±0.05eVのピーク位置の不確かさをもたらす。仕事関数は、スペクトルの二次電子カットオフ領域を分析することにより決定した。これはフォトンエネルギーとは独立した測定であるため、二次電子スペクトルは、1回の較正走査においてフェルミ端および二次電子カットオフ領域の両方を捕捉する、Auの紫外線光電子分光法を使用して較正した。これらの測定は、2.95eVの通過エネルギーおよび0.025eVのステップサイズで行った。これは、±0.025eVの仕事関数の不確かさをもたらす。XPS測定は、超高真空(UHV)条件(10−10トル)下で行った。試料は、XPS測定中にX線損傷または試料帯電の兆候を示さなかった(各試料は、30分未満の間真空下にあった)。
図8(a)および図8(b)は、ドープされていない、および高濃度でドープされたPFO:(7,5)s−SWCNTネットワークおよびPFO膜のXPSを示す。図8(a)は、固有および高濃度でOAドープされたPFOまたはPFO/(7,5)のXPSを示す。PFOスペクトルは、PFO/(7,5)試料のC1sスペクトルが、PFO C1sピークへの寄与が小さく、高いドープ濃度では、PFOピークがSWCNTピークと同じ量(約0.6eV)だけシフトするが、PFO/SWCNT膜内の信号は、s−SWCNTが支配的であることを実証している。XPS測定における内殻電子エネルギーは、フェルミ準位のエネルギー(EF)を基準とするため、C1sエネルギー(EC1s)におけるこの大きなレッドシフトは、価電子バンド(p型ドープ)に向かうEFのシフト(ΔEF)から直接得られる。興味深いことに、Cl XPSピークの場合もCl:C比の増加と共に同様のエネルギーシフトが見られるが、C1sスペクトルにおいて観察されるシフトとは反対の符号である。一方、Sb XPSピークではシフトが生じない。これらの観察は、OAドーププロセスにおいて形成された主要な電荷移動錯体が、SWCNT側壁とCl原子との間の錯体に関与することを示唆している。
図8(a)における完全にドープされたSWCNT/PFO膜のFWHMは、ドープされていない膜のFWHMよりも広いことに留意されたい。図8(b)は、フェルミ準位におけるシフトの関数としてC1s FWHMの依存性を示す。FWHMは、フェルミ準位が約500meV超だけシフトした際に急上昇するまで、約0.85eVでほぼ一定であることに留意されたい。このフェルミ準位シフトは、(7,5)/PFO HOMO準位に対して上で推定された約440〜500meVの価電子準位オフセットと一致する。
上述のように、本発明の例示的実施形態は、s−SWCNT膜の担体密度およびフェルミエネルギーを制御する。本発明の例示的実施形態は、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれる、Chandra, B., Afzali, A., Khare, N., El-Ashry, M. M. & Tulevski, G. S. Stable Charge-Transfer Doping of Transparent Single-Walled Carbon Nanotube Films. Chem. Mater. 22, 5179-5183 (2010)に記載の手順を修正して、ネットワークをDCE中のOAの溶液に浸漬することにより、ポリマー:s−SWCNTネットワークのp型ドープを行うことができる。Chandraに記載の手順は、最大(または飽和)ドープレベルを達成することを試みている。一方、本発明の例示的実施形態は、s−SWCNTネットワーク内のドープレベルに対する制御を提供する。例えば、以下で説明されるように、所望のドープレベルは、s−SWCNTネットワークのTE出力因子α2σを最適化するように選択し得る。
本発明の1つの例示的実施形態において、s−SWCNTネットワークのドープレベルは、まず、s−SWCNTネットワークが完全にドープされるようにs−SWCNTネットワークのドープレベルを飽和させ、次いでs−SWCNTネットワークから電荷担体を除去して所望のドープレベルを達成することにより制御し得る。例えば、飽和させることは、s−SWCNTネットワークを濃縮OA溶液中に約78℃で少なくとも約1分間浸漬する単一ステップを含んでもよい。OA溶液は、約1mg/mLを超える濃度を有してもよく、溶媒は、DCEまたは任意の他の適切な溶媒であってもよい。代替として、飽和は、様々な浸漬時間、濃度、および/または温度を有する、s−SWCNTネットワークをOA溶液に浸漬する複数のステップを含んでもよい。一般に、約1mg/mLを超えるOAの濃度は、極めて高濃度のドープをもたらし、S11 SWCNT光学遷移を本質的に完全にクエンチし、図7(a)〜図7(d)に示されるように、S22およびポリマー光学遷移を部分的から完全にクエンチする。完全ドープに達した後、s−SWCNTネットワークからOAの一部を除去することにより、ドープレベルは次いで減少する(すなわち、s−SWCNTネットワークが脱ドープされる)。これは、s−SWCNTネットワークを好適な溶媒、例えばアセトンまたはDCEに浸漬することにより達成され得、また、様々な浸漬時間、濃度、および/または温度を有する単一ステップまたは複数のステップを含み得る。例えば、完全にドープされた膜は、25℃または56℃で1秒から20分アセトン中に浸すことにより徐々に脱ドープし得る。極めて低いドープレベルを達成するために、高温アセトン浴の間、アセトンを5分毎に交換してもよい。
例えば、以下で説明される固体SPR試料において、DCE中3mg/mLのOA溶液中での78℃で10分間の浸漬により、完全ドープが達成され、約150μWm−1K−2のTE出力因子が得られる。次いで、室温で1分から3分の間、完全にドープされた試料をアセトン中に浸漬することにより、約340〜350μWm−1K−2のピークTE出力因子が達成される。
本発明の別の例示的実施形態において、ドープレベルは、所望のドープレベルに達するまでドーパントを添加することにより制御し得る。これは、1つまたは複数のステップで行ってもよい。例えば、ドーパントの添加は、所望のドープレベルに達するまでs−SWCNTネットワークをOA溶液中に浸漬する単一ステップ、または、所望のドープレベルに達するまでs−SWCNTネットワークを増加濃度のOA溶液中に浸漬する複数のステップを含んでもよい。極めて低いドープレベルを達成するために、約1〜5ng/mLまで低いOA濃度を使用してもよい。例えば、ドープされていない膜を、78℃で10分間、DCE中1から8.4μg/mLの間の濃度のOAの溶液中に浸漬することにより、約100μWm−1K−2のピークTE出力因子を、PFH−A:LV s−SWCNTネットワークに対して得ることができる。
所望のドープレベルが達成された後、過剰のOAおよび副生成物を除去するために、膜を約3秒以内の期間アセトン中に浸漬してもよい。
図9(a)は、OAによるp型ドープの関数として、PFO:SG65 (7,5)s−SWCNT薄膜ネットワークの吸光度スペクトルを示し、図9(b)は、OAによるp型ドープの関数として、PFH−A:LV s−SWCNT薄膜ネットワークの吸光度スペクトルを示す。図9(a)および図9(b)内の凡例は、観察されるブリーチレベルを達成するために使用されたOA溶液の濃度を指している。s−SWCNT上の正孔密度の増加は、まず第1励起子(S11)吸収遷移のブリーチをもたらし、続いて、より高い担体濃度における第2励起子(S22)吸収遷移をブリーチする。PFポリマーは、図9(a)および図9(b)における一重項吸収ピークのブリーチにより示されるように極めて高い表面濃度のOA、ならびに図3(a)〜図3(d)に示されるような極めて高いOA濃度における新たなポーラロン吸光の特徴まで、認識され得るほどドープされない。
図9(c)〜図9(g)に示されるように、系統的にドープされたs−SWCNTネットワークのX線光電子分光法測定を使用して、p型OAドープに関連した化学変化を追跡した。図9(c)は、ドープされていない(固有、実線)、および高濃度でp型ドープされた(破線)PFO:SG65 (7,5)s−SWCNTネットワークのアンチモン(Sb)および塩素(Cl)領域でのXPSを示す。図9(c)の挿入図は、OAドーパントの化学構造を示す。図9(d)は、図9(c)に示される同じPFO:SG65 (7,5)s−SWCNTネットワークの炭素1s(C1s)領域におけるXPSを示す。図9(e)は、図9(c)に示される同じPFO:SG65 (7,5)s−SWCNTネットワークのEC1sピーク位置を示す。図9(f)は、ポリマー:(7,5)s−SWCNT S11吸収遷移の正規化されたブリーチの関数として、X線光電子分光法により測定されたSb:CおよびCl:C比を示す。図9(g)は、OAによるp型ドープの関数として、PFO:SG65 (7,5)s−SWCNT(丸)および未処理LV SWCNT(四角)ネットワークに対するフェルミ準位シフト(ΔEf)とS11吸収遷移の正規化されたブリーチとの間の関係を示す。図9(g)中の実線は、S11吸収の正規化されたブリーチからフェルミ準位シフトを決定するために使用された、経験的べき乗則関数である。
表面結合OAは、図9(c)に示されるように、強いSbおよびCl信号を生成し、表面結合SbおよびClの量は、図9(e)に示されるように増加量のOAで段階的にドープされたSWCNTの膜において増加する。図9(f)において、Sb:CおよびCl:C比が、例えば図9(a)および図9(b)に示されるデータからドープによるS11遷移の面積の変化率(ΔA/A0)に基づいて計算された、S11励起子吸収遷移のブリーチと比較されている。SbおよびCl信号とΔA/A0との直接的な相関により、以下でさらに詳細に説明されるように、ドープレベル、ひいては最終的にはフェルミ準位が、吸着したOAドーパントの量により敏感に制御され得ることが確認される。
XPS測定はまた、OAドーパントにより注入された電荷担体の化学ポテンシャルを追跡するために使用し得る。図9(e)は、高濃度でOAドープされた(7,5)膜における、C1sスペクトルのより低いエネルギーへの約0.6eVのシフトを示す。図8(a)および図8(b)に示されるように、ドープされていない、および高濃度でドープされたPFOのC1sスペクトルを測定する対照実験は、ポリマー内殻準位もまた約0.6eVだけシフトするが、PFO/SWCNT膜内の信号はs−SWCNTが支配的であることを示している。XPS測定における内殻電子エネルギーは、フェルミ準位を基準とするため、C1sエネルギー(EC1s)におけるこの大きなレッドシフトは、価電子バンド(p型ドープ)に向かうEFのシフト(ΔEF)から直接得られる。図9(e)および図9(f)は、EC1sがSb:CおよびC1:C比と逆比例することを実証しており、EFが吸着したOAにより完全に制御されることを示している。
一連の制御可能にドープされた膜のXPSと吸光度データとの相関により、S11吸収遷移の相対的ブリーチの関数としてフェルミ準位シフト(ΔEF)を較正することができる。ここで、ΔEFは、ドープされていない、およびドープされたs−SWCNTネットワークの間のEC1sのシフトに従って計算され、すなわち、ΔEF=EC1s,ドープされていない−EC1s,ドープされたであり、ΔA/A0(S11)は、上述のように計算される。図9(g)におけるデータは、べき乗則による最適なフィッティングであり、これは、DOSをエネルギーに関して積分することにより得られる依存性に定性的に一致する。図10は、半導体性カーボンナノチューブの積分DOSを示す。(10,8)s−SWCNTのDOS(白抜きの四角を有する短い破線)の積分(白抜きの丸を有する長い破線)は、第1および第2のファンホーブ特異点の間にある。実線は、べき乗則フィッティングを示す。図9(g)および図10に示される乗則フィッティングによって、OA吸着により微調整された担体密度でドープされた一連の膜のS11遷移の容易に測定されるブリーチを通して、フェルミエネルギーの変化による熱電能α、電気伝導率σ、およびTE出力因子α2σの変化を較正することができる。
図11は、ドープされたPFO:SG65 (7,5)s−SWCNTネットワークにおける塩素対アンチモン(Cl:Sb)の比を示す。Cl:Sb比を、ポリマー:(7,5)s−SWCNT S11吸収遷移の正規化されたブリーチの関数として、X線光電子分光法により測定した。図9(e)に示されるように、アンチモン:炭素(Sb:C)および塩素:炭素(Cl:C)比は、共に、S11吸収バンドの相対的ブリーチΔA/A0(S11)、すなわちドープの程度に対する同じ依存性を示す。しかしながら、図11は、Cl:Sb比が、[SbCl6]−アニオンに対して推定されるものよりも常に大幅に低く、典型的には約0.6〜0.95の範囲内であることを示している。これは、酸化されたSWCNTと無傷ヘキサクロロアンチモネート[SbCl6]−アニオンとの間の電荷移動錯体の形成を示唆した、SWCNTのOAドープに関する初期の研究の推測とは対照的である。これは、[SbCl6]−アニオンが、ドーププロセスにおけるSWCNT側壁との相互作用の結果、大量に分解することを示唆している。
図12(a)〜図12(f)は、本発明の例示的実施形態に従って調製された様々なポリフルオレン/s−SWCNT薄膜のTE特性を示す。図12(a)は、理論的に予測されたピーク熱電能α(破線)および最大の実験的に測定された電気伝導率σ(実線)の、s−SWCNT電子バンドギャップに対する依存性を示す。垂直のエラーバーは、測定されたシート抵抗および膜厚の標準偏差から得られる。水平のエラーバーは、s−SWCNT直径分布から得られた電子バンドギャップの標準偏差を示す。図12(b)は、s−SWCNT電子バンドギャップの関数として、予測された(線)、および実験的に測定された(符号)最大TE出力因子α2σの比較を示す。垂直のエラーバーは、測定されたシート抵抗、熱電能、および膜厚の標準偏差から得られる。水平のエラーバーは、s−SWCNT直径分布から得られた電子バンドギャップの標準偏差を示す。
図12(c)は、PFO:SG65 (7,5)(六角形)、PFH−A:HiPCO(四角形および菱形)、PFH−A:LV(正立三角形)、PFO−BPy:LV(逆三角形)、ならびにPFO−BPy:Tuball(丸)の電気伝導率σの関数として、熱電能αを示す。図12(d)は、PFO:SG65 (7,5)(六角形)、PFH−A:HiPCO(四角形および菱形)、PFH−A:LV(正立三角形)、PFO−BPy:LV(逆三角形)、ならびにPFO−BPy:Tuball(丸)の電気伝導率σの関数として、TE出力因子α2σを示す。図12(c)中の凡例はまた、図12(d)中のポリマー:s−SWCNTネットワークを指している。
図12(e)は、LV s−SWCNTのフェルミエネルギーの位置に対する熱電能αの理論的(線)および実験的(符号)依存性の比較を示す。理論的に予測された電子DOSは、参照のために示されている。
図12(f)は、300K付近での電気伝導率σの関数として、PFO−BPy:LV薄膜の熱伝導率κを示す。この例において、再現性を実証するために、ドープされた試料を2回の別個の時点で測定し、その後真空下での脱ドープ後に再測定した。ドープされた膜の場合典型的には符号より小さいエラーバーは、ほぼ完全に、AFMにより決定された厚さのエラーに起因する。ローレンツ数L0に対してゾンマーフェルト値を用いて経験的ウィーデマン−フランツ則を使用した、熱伝導率κに対する最大電子的寄与の推定は、実線により示されている。
TE出力因子研究の最初の導入として、図12(a)は、実験的に測定された最大電気伝導率σ(すなわち高濃度ドープ)および最大計算熱電能α(すなわち低濃度ドープ)の両方のバンドギャップ依存性をプロットしている。図12(a)において利用された電子バンドギャップ(Eg,elec)は、光学バンドギャップ(Eg,opt)および励起子結合エネルギー(Eb,ε)の総和であり、Eb,εは、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれる、Capaz, R. B., Spataru, C. D., Ismail-Beigi, S. & Louie, S. G. Excitons in carbon nanotubes: Diameter and chirality trends. Physica Status Solidi (b) 244, 4016-4020 (2007)に従い、周りの誘電率ε=4を仮定して計算する。
この例において、電子バンドギャップ(Eg,elec)は、誘電率ε=4を仮定して、光学的バンドギャップ(Eg,opt)および励起子結合エネルギー(Eb)の和により決定し、すなわち、Eg,elec=Eg,opt+Eb、ε=4であった。S11励起子の結合エネルギーは、以下の分析関数により説明される。
dは、nmでのSWCNT直径であり、ξ=(−1)ν.cos(3θ/d)であり、ν=(n−m)mod3である。したがって、真空中のSWCNT(ε=1.846)の場合、A=0.6724eVnmであり、B=−4.910×10−2eVnm2であり、C=4.577×10−2eVnm2であり、D=−8.325×10−3eVnm3である。所与の誘電率を有する媒体中のSWCNTの結合エネルギーを再計算するには、スケーリング則(Eb∝ε−1.4)を適用する。上記計算のために、各SWCNTの直径を、参照することによりその全開示が本明細書に組み込まれるWeisman, R. & Bachilo, S. Dependence of optical transition energies on structure for single-walled carbon nanotubes in aqueous suspension: An empirical Kataura plot. Nano Lett. 3, 1235-1238 (2003)から採用し、光学的ギャップは、同文書から、またはSWCNT分散体に対する光ルミネッセンス励起マップから採用し得る。
以下の表1は、実験的または理論的な、考慮された様々なSWCNTに対する計算結合エネルギー(Eb)および光学的/電子バンドギャップ(Eg)を示す。
図12(a)は、膜電気伝導率σがEg,elecの関数(シグモイド関数による経験的フィッティング)として減少することを実証している。一方、DFT計算熱電能αは、Eg,elecの増加と共に直線的に増加する。図12(b)において、図12(a)からの最大α(計算)およびσ(経験的)を使用して、TE出力因子α2σの推定バンドギャップ依存性が計算されている。この経験的予測評価は、最大TE出力因子α2σ(すなわち中程度のドープ)における熱電能αが、全てのs−SWCNTに対して、電気伝導率σの関数として同様に増減すると仮定しており、この仮定は、以下でさらに詳細に説明されるように、ドープレベルの慎重な制御により試験される。図12(b)は、s−SWCNT膜のTE出力因子α2σの異なるバンドギャップ直径(d)依存性を示唆しており、最大TE出力因子α2σは、約1.1〜1.2eVの<Eg,elec>(約1〜1.1nmの<d>)において生じる。
図12(c)は、5つの代表的PFラッピングされたs−SWCNT試料に対する、電気伝導率σの関数として測定熱電能αを示す。図12(c)に示されるように、熱電能αは、電気伝導率σの増加と共に減少する。しかしながら、低ドープでの熱電能αは著しく高い。PFO−BPy:Tuballネットワークを除く全ての試料は、低ドープで少なくとも200μVK−1の熱電能αを達成し、一方、いくつかの試料は、1,000μVK−1に近い、またはそれを超える値を有する。さらに、熱電能αは、電気伝導率σの増加と共に幾分緩やかに低下し、ポリチオフェン等の半導体性ポリマーにおいて観察される傾向と同様に、10の3乗から4乗の電気伝導率σにわたって1桁未満減少する。その結果、TE出力因子α2σは、電気伝導率σの増加と共に徐々に上昇し、図4(d)に示されるように、約10,000Sm−1を超える電気伝導率σ値で、100μWm−1K−2を超える値に達する。HiPCOネットワークのTE出力因子α2σは、約340μWm−1K−2の値に達し、これは、SWCNTネットワークに関してこれまで報告された最も高いTE出力因子α2σ(約3.4倍)である。HiPCO試料に対して観察されたTE出力因子α2σは、高性能ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)系ポリマーTE材料に対して得られる最善の値に匹敵する。それぞれの代表的直径(バンドギャップ)分布に対して得られた最大TE出力因子α2σの実験的傾向は、図12(b)中の符号により示されるように、図12(b)中の線により示される予測された傾向に幾分良好に一致する。
図12(c)に示される測定された熱電能αは、ほぼs−SWCNTの第一原理計算により予測された範囲内であり、これは、少なくともある程度はs−SWCNTの電子構造により高いα値が決定されることを示唆している。最近の研究では、熱電能αの幾分高い(ただしここで観察されるものよりは大幅に低い)値は、主にチューブ間の接点の寄与によるものであるとされている。これらの研究は、膜内のチューブ間の接点の熱抵抗により高められる単離されたs−SWCNTの固有熱電能αに、低い値から中程度の値を仮定している。本発明の例示的実施形態によるαのはるかにより高い(予測および観察された)値は、s−SWCNTの固有電子構造の結果s−SWCNTに付与される本質的に高い熱電能αを考慮することが重要となり得ることを示唆している。
実験的に得られた熱電能αを第一原理計算と明示的に比較するために、図9(g)において作成された較正曲線を利用して、段階的にドープされたs−SWCNT膜のΔA/A0をΔEFに変換した。図12(e)は、2つのLV s−SWCNTネットワークの経験的熱電能αを、フェルミ準位位置の関数として、(10,8)s−SWCNT(LV分布内での代表的な主要種)に対して予測されたものと比較している。まず、低ドーピングにおけるPFO−BPy試料のαの大きさが、第一原理により予測されたものと同等であるのが興味深い。
さらに、実験的に観察される熱電能αは、フェルミ準位シフトの増加と共に低下するが、低下は、理論的な予測よりもはるかに緩やかである。特に、実験的な傾向は、−0.75V≦ΔEF≦−0.45Vの範囲内ではゼロまで低下しないが、その代わりに、この範囲において約70〜150μVK−1の範囲内である。緩やかな低下は、少なくともある程度は、熱電能αに対するチューブ間の接点の寄与から生じ得る。
TE出力因子α2σを超えるTE性能を評価するために、微細加工された窒化ケイ素(Si−N)プラットフォーム上に堆積されたLV s−SWCNT:ポリマーネットワークの面内熱伝導度を測定した。パターン化された厚さ500nmの低応力Si−Nから形成されたこれらの構造は、試料成長ステージを形成する幅約90ミクロン、長さ約2mmのSi−N梁により接続された2つのアイランドからなる。横方向の寸法(これにわたって温度勾配が確立される)は、試料膜厚と比較して膨大であり、実験が面内熱流量にのみ感受性であることが確実となることに留意されたい。各アイランドは、パターン化されたCr/Pt(厚さ10nm/40nm)から形成されたヒータ、サーミスタ、および導線を含有する。これは、薄膜上の熱勾配の正確な制御および測定を可能とする。
一例において、図13(a)〜図13(d)に示される微細加工された懸垂式Si−N熱分離プラットフォーム測定技術を使用して、図14(a)に示される未加工の熱伝導度データを測定し、その後これを使用して、図14(b)および図12(f)に示される熱伝導率κデータを計算した。図13(a)は、Si−Nプラットフォームの光学画像を示す。図13(b)は、プラットフォーム上のアイランド間のSi−N梁上にs−SWCNTネットワークを噴霧堆積させるために使用されたシャドーマスクの光学画像を示す。図13(c)は、図13(b)に示されたシャドーマスクを通して観察した、Si−N梁の光学画像を示す。図13(d)は、シャドーマスクを通した超音波噴霧堆積後のs−SWCNTネットワークの光学画像を示し、ネットワークが、Si−N梁の全長にわたって、および2つのアイランド上の三角形の導線上に延在していることを示している。このデータは、Si−N梁およびs−SWCNTネットワークを組み合わせた熱伝導度を測定したものであるが、これは次いで、裸のSi−N梁の寄与に関して補正され、堆積されたs−SWCNTネットワークの寸法を使用して、熱伝導率κに変換された。図14(a)〜図14(d)に示されるデータは、ドープされていないPFO−BPy:LV s−SWCNTネットワーク(丸)の熱伝導度が、ドープする際(菱形、四角形、および逆三角形)には実際に減少することを示している。
試料堆積の前に、試料の導線を露出させたままとするシャドーマスクを通して、非晶質Al2O3の10nmの保護層をプラットフォーム上に堆積させた。次いで、ドープステップにおいて用いられる条件と同じ条件下で、プラットフォームをOAに曝露した。このステップは、ドーパント分子をSi−Nに結合させたままにすることができ、また、フォノン散乱に起因するバックグラウンドSi−N熱伝導度のわずかな(約10nWK−1)低減をもたらし得る。次いで、印加電力の関数としてアイランド温度を記録すること、および単純な二体熱モデルを使用することにより、プラットフォームのバックグラウンド熱伝導度を測定した。この測定後、別のシャドーマスク(図13(b)を参照されたい)を通して膜を超音波噴霧し、プラットフォーム伝導度測定を繰り返した。Si−N梁は、図13(c)においてマスクを通して、ならびに図13(d)においてSWCNT膜がその上および三角形導線上に堆積された状態で観察し得る。この第2の測定値からバックグラウンド伝導度を差し引き、膜の熱伝導度の寄与を得た。これを、AFMにより決定された厚さを含む試料幾何学により、熱伝導率κに変換した。次いで、プラットフォームをOA中に浸漬し、再び伝導度測定を行ってドープ状態の試料を試験し、続いて意図的な脱ドープを行って、中間的な電気伝導率σを有するs−SWCNTネットワークを達成した(図14(a)〜図14(d)を参照されたい)。
図14(a)〜図14(d)は、ドープされていない、およびドープされたPFO−BPy:LV s−SWCNTネットワークの温度依存性TE特性を示す。図14(a)〜図14(d)は、それぞれ、温度Tの関数として、熱伝導度、熱伝導率κ、電気伝導率σ、および熱電能αを示す。膜堆積前の懸垂式Si−N試料プラットフォームに対して、250から325Kの間でバックグラウンド測定を行った(破線)。PFO−BPy:LV s−SWCNTネットワークの堆積後(丸)、およびドープ後に、285から315Kの間で初期測定を行った(後続の2回の測定、四角および逆三角形、膜を若干脱ドープした真空下での待機期間で隔てられている)。長期の脱ドープ期間後、250から350Kの拡張した温度範囲にわたり、試料を再測定した(菱形)。
ドープされていないネットワークは、裸のSi−N梁の伝導度と比べて、全熱伝導度への大きな寄与を追加する。図12(f)は、ドープされていない、またはドープされたPFO−BPy:LVネットワークに対する、室温付近での抽出された熱伝導率κデータを示す。OAドーパントは、明らかに正孔を追加して約110,000Sm−1の高い電気伝導率σを生成するが、ドープされていないネットワークに比べて、全熱伝導度の大きな降下をもたらす。ドープ前は、κは図12(f)に示されるように約16.5Wm−1K−1とかなり高いが、実際にはまだ単離されたSWCNTにおいて見られる極めて高いκよりはるかに小さい。このs−SWCNT膜は固有であるため(無限の電気伝導率σを有する)、熱伝導率κは、完全にフォノンに起因する。ドープ後、はるかにより低いκ(約4.5Wm−1K−1)は、ウィーデマン−フランツ則からの電子的寄与の推定値(黒の実線として示される)よりもまだ大幅に高い。さらに、同じ膜が約17,000Sm−1の電気伝導率σまで故意に脱ドープされた場合、κはさらに約2Wm−1K−1まで減少するため、κのドープ依存性は複雑であると思われる。
κの大幅な降下は、ドーパントの添加が、正孔をSWCNT−ポリマーハイブリッドに寄与させるだけでなく、フォノンの散乱中心も追加することを示唆している。この興味深い結果は、s−SWCNTネットワークにおける熱伝導率κが、フォノンにより影響され、電子的寄与はごく僅かであり、極めて高い電気伝導率σ(例えば100,000Sm−1超)であっても、適切なドープ戦略により大幅に低減され得ることの強力な証拠を提供する。上述のように、熱伝導率κの低減は、性能指数zTを増加し得る。ドープ戦略の他に、ネットワーク形態および同位体組成が、界面フォノン散乱により、熱伝導率κのさらなる低減(およびzTの増加)への合理的な経路として制御され得る。
本発明の例示的実施形態による未処理s−SWCNTネットワークのzT値はまだ低いが(zT≒0.01〜0.05)、ここで観察される電気伝導率σに対する熱電能αおよび熱伝導率κの両方の弱い相関は、TE用途におけるs−SWCNTの役割を理解するための新たなフレームワークを提供する。さらに、zTは、図15(a)〜図15(c)に示されるTE特性の温度依存性により示されるように、操作温度Tの範囲を最適化することによりさらに改善され得る(図14(a)〜図14(d)もまた参照されたい)。図15(a)〜図15(c)は、それぞれ、厚さ約90nmのPFO−BPy:LV s−SWCNTネットワークにおける、熱電能α、電気伝導率σ、および熱伝導率κの温度依存性を示す。これらのデータは、熱電能αおよび電気伝導率σの両方が温度Tと共に増加するが、熱伝導率κは極めて一定に維持され、高い温度Tにおいて向上したzTがもたらされることを示している。熱電能αに対するエラーバーは、ゼーベック電圧および適用温度差における不確かさから決定され、絶対熱電能αの約2%である。電気伝導率σおよび熱伝導率κに対するエラーバーは、測定された抵抗率および熱伝導度における不確かさを考慮しているが、測定された膜厚における約10%の不確かさにより影響される。
図15(a)〜図15(c)は、zTが温度Tの関数として増加すること、および350KにおけるzTが300Kにおいて決定されたものより約2.5倍高いことを示す。350Kにおいて、zTはまだ増加しており、最適温度Tは、約350K超であってもよい。SWCNTは、典型的な導電性ポリマーよりも、高い温温度に対して著しく安定である。熱重量分析は、SWCNT(金属触媒ナノ粒子の非存在下)が、空気中で500℃までの温度に耐え得ることを示しており、これはほとんどのポリマー系が耐え得る温度を十分に超える温度である。この向上した安定性、および図14(a)〜図14(d)における結果は、s−SWCNTが、それ自体、または複合材中で、高い温度において存続可能である新規な有機TE成分となり得ることを示唆している。
電気伝導率σの関数として、熱電能αおよびTE出力因子α2σは、試料が逐次ドープされた場合、またはその完全にドープされた状態から脱ドープされた場合、常に同じ傾向に従うとは限らない。図16(a)および図16(b)は、2つのPFH−A:HiPCOネットワークのこの「ヒステリシス」を示す。図16(a)および図16(b)は、それぞれ、担体密度を調整するために従ったドーププロトコルの、熱電能αおよびTE出力因子α2σに対する影響を示す。興味深いことに、達成され得るピークTE出力因子α2σは、ドーププロトコルとは無関係であると思われる。具体的には、図16(b)は、ピークTE出力因子α2σが、担体密度が調整される方向とは無関係であることを示している。これは、標的ドープ密度に到達するために従った経路が、最適性能を決定する上で重要ではないことを示唆することから、ドープされたカーボンナノチューブネットワークで構成されたTE発電器の製造の可能性を暗に意味する。したがって、上述のように、標的ドープ密度に達するまでs−SWCNTネットワークに電荷担体ドーパントを追加することにより、または、s−SWCNTネットワーク中に電荷担体ドーパントを飽和させ、次いで標的ドープ密度に達するまでs−SWCNTネットワークを脱ドープすることにより、標的ドープ密度を達成し得る。
上述のs−SWCNTネットワークを調製する方法は、s−SWCNTネットワークのカーボンナノチューブの周りにラッピングされているポリマーをもたらす。しかしながら、s−SWCNTネットワークのTE特性は、ラッピングされたポリマーの少なくとも一部を除去することによりさらに改善し得る。例えば、s−SWCNTを選択的に分散させるために、H結合超分子ポリマー(SP)を使用してもよい。s−SWCNTがSPにより分散した後、SPは、H結合を破壊することにより分解および除去することができ、s−SWCNTに富み、残留ポリマーを含有しない試料を生成し得る。SPは、薄膜堆積後に分解してもよい。以下でさらに詳細に説明されるように、薄膜堆積後のH結合超分子ポリマーの除去は、(1)向上した担体ドープおよび電気伝導率σ、(2)向上した電荷担体移動度、ならびに(3)TE出力因子α2σの約2倍の増加をもたらす。
3つのs−SWCNTネットワーク試料を、LVにより調製した。第1の試料は、「PFOBPy:LV」、すなわちポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(6,6’−{2,2’−ビピリジン})](PFO−BPy)により分散されたLV s−SWCNTの対照試料であったが、ポリマーはs−SWCNTネットワークのカーボンナノチューブの周りにラッピングされている。第2の試料は、「固体SPR」、すなわちH結合SPを使用して分散されたLV s−SWCNTの試料であったが、SPは、ネットワーク堆積後に、トリフルオロ酢酸(TFA)による処置で除去された。第3の試料は、「溶液SPR」、すなわちH結合SPを使用して分散されたLV s−SWCNTの試料であったが、SPは、ネットワーク堆積前に、TFAによる処置で除去された。
図17(a)は、s−SWCNTネットワークを調製するために使用された3種のs−SWCNTインクに対する、第2励起子(S22)光学遷移エンベロープ下の面積に正規化された吸収スペクトルを示す。第1励起子(S11)およびS22光学遷移の両方に対応するピークエンベロープ間の類似性は、PFO−BPyおよびSPが、出発LV材料から抽出された同様のs−SWCNT分布をもたらすことを示しており、個々のs−SWCNT種の厳密な収率にはいくつかの微妙な差がある。両方の場合において、M11光学遷移の特徴である600〜850nm領域におけるピークの欠落は、m−SWCNT汚染が光学検出限界未満である(すなわち<1%である)ことを示唆している。図17(b)および図17(c)に示されるように、光ルミネッセンス励起マップにより、同様の種の分布が確認されるが、このマップは、具体的な発光ピークを指す丸の隣の(n,m)指数により示される同様のカイラル指数を有するs−SWCNTに対応する、概ね同様の相対強度の発光ピークを示す。H結合SPが溶液中で除去され、s−SWCNTがその後N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に再分散された試料においては、S11光学遷移の顕著な広がりおよび識別可能な深色シフト(約30nm)が見られる。これは、個々のs−SWCNT間の強いファンデルワールス相互作用を示し、ナノチューブバンドルが溶液中でも存在することを示唆する。約1,930nmにおけるピークは、NMP溶媒に起因する吸収の不完全なバックグラウンド除去に対応する。NMP中のs−SWCNT分散体は、0.1%未満の低いm−SWCNT含量にもかかわらず、おそらくはバンドル内のチューブ間相互作用、および/または高誘電率溶媒により誘引される励起子スクリーニング効果に起因して、測定可能なルミネッセンスを生じない。
図17(d)は、超音波噴霧堆積(および過剰のPFO−BPyを除去するため、またはSPを完全に除去するためのその後の堆積後溶媒処理)により調製されたs−SWCNTネットワークのS22光学遷移エンベロープ下の面積に正規化された吸光度スペクトルを示す。インクと比較して、PFO−BPy:LVおよび固体SPR試料のS11およびS22光学遷移エンベロープは広がっており、個々のs−SWCNT間のより強い相互作用を示しているが、観察される深色シフトはわずか(約20nm)である。NMP分散体(溶液SPR)から調製されたs−SWCNTネットワークはまた、対応するインクと比較して広がった光学遷移エンベロープを示しているが、この場合、遷移はまた、約20meVという相当の深色シフトを示し、膜堆積または形成ステップ中にさらなるバンドル化が生じることを示唆している。図17(d)は、ポリマー吸光領域(400〜500nm)における光学密度の減少により証明されるように、固体SPR試料においてポリマー除去が成功したことを実証している。
図17(e)は、3つのs−SWCNTネットワークの原子間力顕微鏡(AFM)表面トポグラフィー画像を示す。図17(e)は、溶液SPR試料において最大のバンドル(直径約43nm)が存在することを示しており、これは膜堆積後に観察された大きな深色シフトと一致している。PFO−BPy:LVおよび固体SPR試料のAFM画像は、個々のs−SWCNT(ポリマーラッピングされたまたは裸)の存在を示していないが、それぞれ直径14nmおよび24nm程度のナノチューブバンドルを明示している。これは、膜堆積中の溶媒蒸発がs−SWCNTバンドル形成を推進することを示唆している。しかしながら、膜形成中にSPを保持することは、バンドル化の程度を制限し、SPがネットワーク堆積前に除去された場合に見られるものよりも実質的に小さいバンドルをもたらすのに役立つ。図17(f)に示されるように、TFA処理前のSP:LV分散体から調製された試料のフーリエ変換赤外(FTIR)吸収スペクトルは、図18に示されるようなSPに特徴的である振動モードに起因する吸収バンドを示す。TFAによるこの膜の処理は、吸収ピークがFTIRスペクトルから消失するため、LV SWCNTネットワークからのSPの完全除去をもたらすと思われる。
図17(a)〜図17(f)に示される3つの試料は、各s−SWCNTネットワーク内の残留ポリマーの程度および得られるネットワーク形態の両方に大きな変動を示す。担体輸送およびTE性能に対するこれらの変化の効果を調べるために、s−SWCNTネットワークをOAでドープしたが、ドープレベルは上述の方法により制御した。図19(a)および図19(b)は、それぞれ、熱電能αおよびTE出力因子α2σ対電気伝導率σを示す。図19(b)に示されるTE出力因子α2σの電気伝導率σに対する依存性は、輸送におけるポリマーのいくつかの効果およびバンドル化の効果を示している。まず、PFO−BPy:LV試料を溶液SPR試料と比較すると、TE出力因子α2σ対電気伝導率σの同様の傾向が生じ、また同様のピークTE出力因子α2σ(約140〜150μW/m・K2)が見られる。この傾向は、高ドープレベルまで保持されるが、ここで2つのデータセットは逸脱する。溶液PR TE出力因子α2σは、主にs−SWCNTネットワーク内の制限されたピーク電気伝導率σに起因して、ピーク後に急激に減少する。この急な降下は、この膜が高レベルまで効率的にドープされ得ないことに起因し得る。第2に、および最も顕著には、固体SPR膜の約350μW/m・K2のピークTE出力因子α2σは、他の2つの膜の2倍超であり、これによって、直径約1.3nmのLV s−SWCNTネットワークの性能は、PEDOT:PSS等の高性能半導体性ポリマーと同じ範囲内となる。
図20(a)〜図3(c)に示されるドープされたs−SWCNTネットワークの吸収スペクトルは、OAドープレベルの関数として分析し得る。上述のように、励起子遷移がクエンチされる程度は、励起子半導体(excitonic semiconductor)の位相空間充填効果(phase space filling effect)から推測されるように、s−SWCNTの占有電子状態に注入される正孔密度に比例する。この相関によって、吸収ブリーチの程度は、所与の電気伝導率σにおける各s−SWCNTネットワーク内の相対的担体密度の比較基準として役立つことができる。特に複数のs−SWCNT種を有する多分散試料に対しては、ブリーチの程度をs−SWCNT担体密度と定量的に関連付けるためにいくつかの仮定が行われ得るため、この関係は有用である。
図20(a)〜図20(c)は、3つの試料の吸光度スペクトルに対する増加する担体密度の定性的影響を示す。図21(a)〜図21(c)は、図20(a)〜図20(c)に示される3つの試料に対する、吸収ブリーチレベルの全範囲にわたる、および電気伝導率における数桁に対応するドープレベルでの、より完全な一連の吸光度スペクトルを示す。図21(a)〜図21(c)に示されるように、全ての場合において、低ドープレベルはS11エンベロープのブリーチをもたらし、続いて、増加する担体密度においてS22エンベロープのブリーチをもたらす。ネットワークが完全にドープされると、S11吸収エンベロープは完全にブリーチされ、S22吸収エンベロープは部分的にブリーチされる。図20(a)に示されるように、PFO−BPy:LV試料において、高ドープレベルは、約400nmにおける新たなスペクトルの特徴の出現により証明されるように、PFO−BPy鎖上の正ポーラロンの形成をもたらす。
図20(d)〜図20(f)は、S11およびS22吸収エンベロープのブリーチ率(ΔA/A0)の関数としてs−SWCNTネットワークの電気伝導率σを示す。A0は、S11およびS22吸収エンベロープの両方にわたる吸収スペクトル下の積分面積に対応する。この例において、スペクトル範囲は、約650nmから約2400nmとなるように選択した。ΔAは、同じスペクトル範囲にわたる積分面積の、ドープにより誘引される変化に対応する。図20(d)に示されるように、PFO−BPy:LVネットワークの場合、最大伝導率σ(約170,000S/m)は、S11およびS22吸収エンベロープが約71%ブリーチされると生じる。図20(e)に示されるように、s−SWCNTネットワークの堆積後にSPが除去されると、ドーパントは、吸収バンドのより大きなブリーチを誘引することができ(約78%)、最大伝導率σは、約340,000S/mに倍加する。一方、図20(f)に示されるように、ネットワーク堆積前にSPが溶液中で除去された場合、最大伝導率σは、約65,000S/mに達するのみであり、S11およびS22吸収エンベロープは、約71%ブリーチされる。
図20(a)〜図20(f)において観察される差は、ΔA/A0と正孔密度との間の相関、ならびに、この正孔密度を効果的に注入するためにOA分子がs−SWCNTπ電子系と直接相互作用する必要性を考慮することにより説明され得る。試料の全てがS11およびS22吸収エンベロープの70〜80%ブリーチの間で最大電気伝導率σに達するため、これは、試料が完全にドープされると正孔密度がかなり類似することを示唆している。しかしながら、固体SPRにおける若干大きい程度のブリーチは、ドーパント分子とSWCNT表面との相互作用により電荷担体ドープが生じることを考慮すれば、合理化し得る。PFO−BPy:LV試料の場合、PFO−BPyポリマーは、SWCNT表面へのドーパント分子のアクセスを部分的に制限し、一方、NMP中のLV分散体から調製されたネットワークにおいて観察される過剰のバンドル化はまた、ラッピングポリマーの非存在下でも利用可能なSWCNT表面積の大幅な低減をもたらす。これらの2つの効果は、PFO−BPy:LVおよび溶液SPR試料がその最大ドープレベルに達すると、ブリーチ率レベルの若干の低減をもたらす。
全ての場合において、図20(d)〜図20(f)における電気伝導率データは、以下の2つの形式を有する:低ドープレベルでは、電気伝導率σはΔA/A0に対する依存性が低く、続いて、完全ドーピングでは、電気伝導率σがΔA/A0と共に最大電気伝導率σまで急激に増加する領域までの遷移が生じる。電気伝導率σは、σ=neμに従い、担体密度nおよび移動度μの積であり、式中、eは電子の電荷である。ΔA/A0は、担体密度nに比例するため、これらの2つの形式の傾きは、s−SWCNTネットワーク内の電荷担体移動度の指標を提供する。これは、FET伝達曲線から電界効果移動度を抽出する一般的な方法に類似している。その場合、ゲート電圧は、電荷担体密度に比例し、移動度は、ソース−ドレイン電流対ゲート電圧の傾きを使用して推定される。固体SPR試料は最大の傾きを示し(両方の形式において)、これは、ネットワーク堆積後のラッピングポリマーの除去が、担体輸送に対する障壁を低減し、高い担体移動度をもたらすことを示唆している。溶液SPR試料は最小の傾きを示し、これは、ネットワーク堆積前のラッピングポリマーの除去が、大きな担体移動度を維持するのに十分ではないことを示している。この場合、SWCNTバンドル間の接点抵抗は、バンドルサイズと共に増加することが示されており、これは、溶液SPR試料においてポリマー除去により達成された任意の潜在的な移動度の改善が、この試料中の顕著により大きいバンドルサイズにより無効化されることを示唆している。これらの観察は、ラッピングポリマーを含まないSWCNTの小バンドルからなるネットワークが、高導電性SWCNT膜にとって最適な形態であることを示唆している。
図20(a)〜図20(f)に示される傾向は、図19(a)および図19(b)に示されるTE特性の差に関する情報を提供する。固体SPR試料の向上した性能は、主に2つの効果から生じる。まず、図20(d)〜図20(f)に示される電気伝導率測定は、これらの膜内の残留ポリマーの存在は、チューブ/バンドル表面のある特定のエリアを、ドーパント吸着に直接到達させないように遮断するが、これらの膜内の残留ポリマーは本質的に不活性充填剤であることを実証している。したがって、このポリマーを除去することにより、活性s−SWCNT輸送相のみから構成されるネットワークが生成され、OA分子のより良好な表面到達性、ひいてはドープ効率が可能になる。第2に、固体状態で(ネットワーク堆積後に)ポリマーを除去することにより、残留PFO−BPyをSWCNTとの約1:1の質量比で含有する対照試料に比べて、s−SWCNTネットワーク内の電荷担体移動度が増加すると思われる。第3に、液相除去(ネットワーク堆積前)とは対照的に、固体状態でSPを除去することにより、PFOBPy:LVネットワーク内のバンドルサイズと同様の(但しそれより若干大きい)小さいバンドルサイズを最終ネットワーク内で保持することができる。溶液SPRのより大きいバンドルサイズは移動度を低減し、これは一方でこれらのネットワークの最終的伝導率σを制限する。完全にドープされた溶液SPRネットワークの担体濃度は、完全にドープされた固体SPRネットワークの担体濃度よりもごく僅かに小さいため、溶液SPR試料の顕著により低い最大伝導率σ(溶液SPR試料において、340,000S/mに対し64,000S/m)は、この低減された移動度の直接的な結果である。最終的に、固体SPRネットワークの小さいバンドルに関連した増加した表面積(溶液SPRネットワークに比べて)、およびSWCNT/バンドル表面に対するドーパントのより良好な到達可能性、およびより高い担体移動度(PFOBPy:LVネットワークに比べて)が、約340,000S/mに達する極めて高い電気伝導率σを達成する固体SPRネットワークの能力の主要因である。
したがって、電荷担体移動度の改善は、達成可能なTE出力因子α2σの大きな改善をもたらす。この結論は、伝導率σおよび熱電能αの担体密度nに対する依存性を考慮することにより理解され得る。伝導率σは、担体密度nに正比例するが、熱電能αは、担体密度nに反比例する。
式中、kBは、ボルツマン定数であり、eは、電気素量であり、hは、プランク定数であり、m*は、電荷担体有効質量であり、Tは、絶対温度であり、nは、電荷担体密度である。
より高い正孔移動度は、所与の伝導率σがより低い担体密度nで達成され得ることを暗に意味する。一方、式(7)は、所与の伝導率σにおいて、最大の正孔移動度を有するs−SWCNT薄膜が、最大の熱電能αも有することを暗に意味する。図20(a)〜図20(f)は、任意の一連のs−SWCNT薄膜に対してこの効果を可視化する手法を提供し、表2は、推定されるs−SWCNT TE性能に対する所与の変化の効果をスクリーニングするために使用され得る、この吸収分析からの主要なメトリクスを要約している。図20(d)〜図20(f)における垂直の実線の間の領域は、各試料に対して最大TE出力因子α2σが観察されるドープレベルを示す。この一連の試料に対する最大TE出力因子α2σの大きさは、このTE出力因子α2σが生じるΔA/A0に逆比例し、より良好な性能の試料におけるより低い担体密度を暗に意味する。また、上述のように、達成可能な最大伝導率、およびΔA/A0に対する伝導率σの傾きは、共に、最大TE出力因子α2σに直線的に相関する。最終的に、ここで固体SPR試料に対して実証されたように、より高い担体移動度は、図19(a)に示される熱電能α対伝導率σの曲線を、上および右に本質的にシフトさせ、これは、達成可能なTE出力因子α2σの顕著な増加に直接つながる。
したがって、ポリマー富化分散体から高導電性s−SWCNTネットワークを達成するために、本発明の例示的実施形態は、s−SWCNTネットワークにおけるナノチューブのバンドル化のレベルを制限し、可能な限り絶縁(ラッピングされた)ポリマーを排除し得る。s−SWCNT富化のための除去可能なSPの使用、およびその後の薄膜堆積後の溶解は、s−SWCNTネットワークのTE性能の顕著な改善をもたらす。これらの進展により、直径約1.3nmのLVネットワークの性能は、HiPCO s−SWCNT(<d>≒1.1nm、残留ポリフルオレンあり)および高性能PEDOT系有機熱電素子(high-performance PEDOT-based organic thermoelectrics)の両方について最近実証されたものと同じ範囲内となる。これらの方法はまた、1〜1.1nmの範囲内の直径を有するs−SWCNTに適用されてもよく、これは、約1:1のポリマー:SWCNT質量比であっても、約350μW/m・K2のTE出力因子α2σを生成し得る。
上記に基づいて、本発明の例示的実施形態は、s−SWCNTネットワークの所望のドープ条件を決定するための方法を提供する。方法は、上述のようにs−SWCNT膜を噴霧堆積させることから開始してもよい。膜を、膜表面から過剰のポリマーを除去するために、および/または膜から分解性ラッピングポリマーを除去するために処理してもよい。次いで、膜の厚さdは、任意の好適な方法、例えば膜の引っかきまたはマスクされた端部のAFMまたはスタイラス形状測定によって測定し得る。さらに、ドープされていない膜の吸収スペクトルを測定してもよい。
次いで、膜の試料を、電荷移動ドーパントの濃縮溶液(1mg/mL超)中に膜を約78℃で少なくとも約1分間浸漬することにより完全にドープし、その後続けて好適な溶媒中に膜を好適な温度および浸漬時間で浸漬することにより脱ドープしてもよい。代替として、膜の試料を、好適な溶媒中に増加濃度(例えば1ng/mLから1mg/mLの間)の電荷移動ドーパントを有する溶液中への逐次的浸漬により、徐々にドープしてもよい。試料がドープされたら、吸収スペクトル、シート抵抗RSh、および熱電能αを測定し得る。シート抵抗RShは、任意の好適な方法、例えば直線4点プローブ抵抗率、ファンデルポー構成における4点プローブ低効率、または2点プローブ低効率により測定し得る。吸収スペクトルおよび熱電能αは、上述の方法により測定し得る。
試料のドープを、異なるドープ条件下で、例えばドーパント濃度、浸漬時間、および/または温度で行ってもよい。以下でさらに詳細に説明されるように、これは、s−SWCNTネットワークの所望のドープレベルをもたらすドープ条件を決定する上で役立つプロットを生成するために使用され得る、複数のドープレベルでのデータを提供する。
一例において、吸収スペクトルを、吸収スペクトル下の面積Aiを決定するために好適な範囲にわたり積分する。範囲は、第1の(S11)励起子吸収ピークエンベロープ、または第1の(S11)および第2の(S22)励起子吸収ピークエンベロープを含んでもよい。他のスペクトルの特徴を含有すると、吸収スペクトルの不正確なブリーチ率が生じ得るため、好ましくは、範囲は、s−SWCNTに関連しない他のスペクトルの特徴を含まない。次いで、電荷担体ドープに起因するブリーチ率を、以下に従って決定する。
式中、A0は、ドープされていない膜の吸収スペクトル下の面積であり、Aiは、特定のドープレベルでの膜の吸収スペクトル下の面積であり、ΔAは、ドープされていない膜とドープされた膜との間の面積の変化である。
シート抵抗RShは、以下に従って電気伝導率σに変換し得る。
次いで、TE出力因子をα2σとして計算し得る。
図20(g)〜図20(i)に示されるように、TE出力因子α2σは、吸収スペクトルのブリーチ率ΔA/A0の関数としてグラフ化し得る。図20(g)は、残留PFO−BPyをLV s−SWCNTネットワーク内に含む(約1:1の質量比で)PFO−BPy:LV試料の、吸着スペクトルのブリーチ率ΔA/A0の関数としてTE出力因子α2σのプロットを示し、一方図20(h)および図20(i)は、それぞれ、ネットワーク形成の後(固体SPR試料)または前(溶液SPR試料)にポリマーが完全に除去されたs−SWCNTネットワークの同様のプロットを示す。
吸収スペクトルのブリーチ率ΔA/A0は、s−SWCNTネットワークのドープレベルの代用として役立ち得る。したがって、図20(g)〜図20(i)に示されるように、最適ドープの範囲は、ピークTE出力因子α2σであってもよいs−SWCNTネットワークの所望のTE出力因子α2σをもたらす、吸収スペクトルのブリーチ率ΔA/A0により定義され得る。所望のTE出力因子α2σは、単一のTE出力因子α2σであってもよく、または、2つの垂直の実線により示されるように、対応する範囲のブリーチ率値ΔA/A0にわたるTE出力因子α2σの範囲であってもよい。図20(d)〜図20(f)に示されるように、これは、吸収スペクトルのブリーチ率ΔA/A0の関数として電気伝導率σのプロットにおける、2つの伝導率形式の間の遷移の近くで生じ得る。最適ドープの範囲は、所望のTE出力因子α2σが得られたドープ条件に対応する。最適ドープの範囲を決定したら、対応するドープ条件を使用することにより所望のTE出力因子α2σを得るために、s−SWCNTネットワークの試料を調製し得る。
上記の開示は、本発明を例示することのみを目的として記載されたものであり、限定を意図しない。当業者は、本発明の精神および本質を組み込む開示された実施形態の修正を思い付くことができるため、本発明は、添付の特許請求の範囲内の全ておよびその均等物を含むように解釈されるべきである。