以下に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、炭素ナノ材料からなる触媒の製造装置について説明する。図1は、触媒の製造装置10の構成を示す図である。図1においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。そして、原点を、例えば、後述するプラズマ源に定め、水平面内における所定方向をX軸方法、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
触媒の製造装置10は、炭素ナノ材料からなる触媒を形成するための基板Wを収容するチャンバ12を有する装置本体14を備えている。チャンバ12は、チャンバ12内のガスを排気する排気口(図示せず)を有しており、装置本体14に設けられる真空ポンプ等の排気手段(図示せず)により真空排気可能に構成されている。
基板ホルダ16は、装置本体14のチャンバ12内に設けられており、触媒を形成するための基板Wを保持する機能を有している。基板ホルダ16は、基板表面(触媒が形成される面)とXY平面とが略平行となるように基板Wを保持することが可能である。基板ホルダ16は、ヒータ等で構成されており、基板温度を調整可能な基板温度調節器(図示せず)を有している。
基板Wは、その表面に触媒を形成可能であれば、任意の材料によって形成可能である。基板Wは、例えば、シリコン(Si)等の半導体材料、ガラス(石英)等の絶縁性材料、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)及びこれらの合金等の導電性材料(金属材料)、導電性セラミックス材料、カーボンペーパで形成可能である。基板Wの大きさについては、例えば、幅が1m、長さが1.5mである。
原料ガス供給部18は、装置本体14に設けられており、チャンバ12に触媒を形成するための原料ガスを供給する機能を有している。原料ガス供給部18は、原料ガスを貯蔵した貯蔵タンク等からなる原料ガス供給源18aと、原料ガス供給源18aとチャンバ12とに接続され、原料ガス供給源18aからチャンバ12へ原料ガスを供給する供給管18bと、を有している。供給管18bには、原料ガスを供給または停止するための電磁バルブ等のバルブ機構18cが設けられている。
原料ガス供給部18は、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)、又はそれらの混合物を含む炭化水素系ガス等の炭素源ガスを供給可能である。原料ガス供給部18は、更に、窒素ガス、ホスフェイト等の周期表の第15族元素源ガス、水素ガス等を供給可能としてもよい。炭素源ガスの他に、第15族元素源ガスや水素ガスを供給する場合には、混合ガスとして供給してもよいし、別々に供給してもよい。
プラズマ生成部20は、装置本体14に設けられ、チャンバ12と連通する放電室22と、放電室22に設けられ、放電室22にプラズマを生成するための放電用ガスを供給する放電用ガス供給器24と、放電室22に設けられ、放電室22にプラズマを発生させるプラズマ源26と、を有している。
放電室22は、装置本体14にチャンバ12と連通して設けられている。放電室22とチャンバ12との接続部には、放電室22とチャンバ12とを連通させるための接続口28が設けられている。
放電用ガス供給器24は、放電室22に設けられており、放電室22にプラズマを生成するための放電用ガスを供給する機能を有している。放電用ガス供給器24は、放電用ガスを貯蔵した貯蔵ガスタンク等の放電用ガス供給源24aと、放電用ガス供給源24aと放電室22とに接続され、放電用ガス供給源24aから放電室22へ放電用ガスを供給する供給管24bと、を有している。供給管24bには、放電用ガスを供給または停止するための電磁バルブ等のバルブ機構24cが設けられている。放電用ガスには、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを用いることが可能である。
プラズマ源26は、放電室22に設けられており、放電室22にプラズマを生成する機能を有している。プラズマ源26には、例えば、特開平6−119992号公報、特開2001−240957号公報等に開示されているようなプラズマ銃(Plasma Gun)を用いることが可能である。プラズマ源26は、放電用ガスをアーク放電によりプラズマ化することができる。プラズマ源26は、例えば、タングステンフィラメントからの熱電子放出を利用した直流放電により、放電用ガスをプラズマ化してもよい。
プラズマ導入部30は、放電室22に設けられる一対のリング状電極32と、一対のリング状電極32と対向させてチャンバ12に設けられる対向電極34と、を有し、放電室22に発生させたプラズマをチャンバ12に導入する機能を有している。放電室22に発生させたプラズマの電子流は、一対のリング状電極32により加速され、接続口28を介してチャンバ12に導入(照射)される。
磁場生成部36は、チャンバ12に設けられ、チャンバ12と放電室22とを接続する接続口28を挟んで対向して配置される一対の永久磁石38を有し、チャンバ12に導入されるプラズマをシート状に整形する機能を有している。一対の永久磁石38は、同極同士(例えばN極同士、またはS極同士)を対向させて配置されている。プラズマは、接続口28を通過するときにはYZ平面内において略円形である。プラズマは、接続口28を通過後に、磁場生成部36により、YZ平面内においてY軸方向に長いシート状に整形される。なお、以下の説明においては、このシート状のプラズマをシートプラズマPと称する場合もある。なお、装置本体14に設けられ、大径で空芯のコイル39により、プラズマをシート状に整形することもできる。チャンバ12のX方向の両側に設けられたコイル39で発生させた磁場により、シートプラズマPとすることが可能である。
このように、プラズマ生成部20と、プラズマ導入部30と、磁場生成部36とは、チャンバ12にプラズマを発生させるプラズマ発生手段としての機能を有している。
スパッタリング部40は、装置本体14に設けられ、遷移金属源を含むターゲットTを保持する保持部材42と、装置本体14に設けられ、ターゲットTに負のパルス電圧を印加するパルス電源44と、を有し、プラズマ中のイオン粒子でターゲットTをスパッタリングする機能を有している。
保持部材42は、装置本体14に設けられ、電極を含んで構成されており、基板ホルダ16に保持された基板Wと、ターゲットTとがシートプラズマPを挟んで対向するようにターゲットTを保持する。ターゲット材料は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)等の遷移金属又はこれらの合金を含む。ターゲット材料は、更に、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等の第15族元素又はこれらの合金を含むようにしてもよい。
パルス電源44は、装置本体14に設けられ、ターゲットTに負のパルス電圧を印加する機能を有している。パルス電源44は、スパッタ電圧として、ターゲットTに、例えば、50kHzから500kHzの負のパルス電圧を印加することが可能である。パルス電源44には、例えば、パルスDC電源等を用いることができる。ターゲットTに負のパルス電圧を印加することにより、ターゲットTが負の電位となるので、シートプラズマP中のアルゴンイオン等のイオン粒子が、ターゲットTをスパッタして、スパッタ粒子を放出することが可能となる。
図2は、パルス電圧を説明するための図である。図2では、横軸に時間を取り、縦軸に電圧を取り、パルス電圧のON時間をAで示し、パルス電圧のOFF時間をBで示している。パルス電源44を用いることにより、パルス電圧の大きさと、パルス電圧のON時間とパルス電圧のOFF時間との比であるデューティ比と、を変えて、ターゲットTからのスパッタ粒子の放出量を制御することで、炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量を精度よく調整することができる。デューティ比Dは、図2において、D=(A/B)×100で算出される。
パルス電圧がより高くなると炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量がより大きくなり、パルス電圧がより低くなると炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量がより小さくなる。デューティ比をより大きくすると炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量がより大きくなり、デューティ比をより小さくすると炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量がより小さくなる。このようにパルス電源44を用いることにより、パルス電圧の大きさと、デューティ比とを変えることができるので、ターゲットTからのスパッタ粒子の放出量を制御し、炭素ナノ材料への遷移金属や第15族元素の導入量をより精度よく調整することが可能となる。
また、パルス電源44を用いることにより、ターゲット表面の異常放電を抑制することができる。より詳細には、ターゲットTが遷移金属を含む材料からなるので、メタン等の炭素源ガスや、窒素等の第15族元素源ガスと反応し、ターゲット表面に炭化物や窒化物等の絶縁物が形成される。この絶縁物にアルゴンイオン等の正電荷が帯電するので、異常放電が生じ易くなる。パルス電源44を用いてパルス電圧のOFF時間を設けることにより、これらの正電荷を中和して異常放電を抑制することが可能となる。
制御部46は、原料ガス供給部18と、プラズマ生成部20と、プラズマ導入部30と、磁場生成部36と、スパッタリング部40と、基板温度調節器(図示せず)と、を制御する機能を有している。制御部46は、一般的なコンピュータシステム等により構成することが可能である。
次に、触媒の製造装置10を用いた触媒の製造方法について説明する。
シリコン基板等の基板Wが、基板ホルダ16に保持される。炭素ナノ材料としてカーボンナノチューブを形成する場合には、生成促進のために基板Wの表面に触媒金属を設けることが好ましい。遷移金属を含むターゲットTが、保持部材42に保持される。
チャンバ12内が所定の真空度(例えば、0.05Paから0.5Pa)に到達するまで、チャンバ12内を真空ポンプ等の排気手段(図示せず)で排気する。チャンバ12内が所定の真空度に到達した後に、基板Wを基板温度調整器(図示せず)で加熱する。基板Wの温度は、例えば、600℃から800℃に調整される。
原料ガス供給部18により、チャンバ12に原料ガスが供給される。メタンガス等の炭素源ガスの流量は、例えば、20sccmから40sccmである。原料ガスとして窒素ガス等の第15族元素源ガスを混合する場合には、第15族元素源ガスの流量は、例えば、10sccmから30sccmである。原料ガスとして水素ガスを混合する場合には、水素ガスの流量は、例えば、10sccm以下である。炭素ナノ材料がカーボンナノウォールの場合において、炭素源ガスとしてメタンガスを用いる場合には、メタンガスと水素ガスとの流量比を調整することにより、カーボンナノウォールの生成速度等を調整することができる。これらの原料ガスは、例えば、混合ガスとしてチャンバ12に供給される。
プラズマ生成部20では、放電室22にプラズマが生成される。放電用ガス供給器24より放電室22にアルゴンガス等の放電用ガスが供給され、プラズマ源26は、放電室22にプラズマを発生させる。放電用ガスの流量は、例えば、60sccmから100sccmである。放電電流は、例えば、60Aから80Aである。
放電室22に発生したプラズマは、プラズマ導入部30により、接続口28を介してチャンバ12に導入される。プラズマは、チャンバ12を+X方向に向かって進行する。プラズマは、磁場生成部36により、基板ホルダ16に保持された基板Wの表面(触媒が形成される面)とほぼ平行なXY平面に沿って拡がり、シートプラズマPに変換される。シートプラズマP中のラジカルは、チャンバ12に供給された原料ガスを励起、イオン化する。
スパッタリング部40では、ターゲットTは、パルス電源44により負のパルス電圧が印加される。シートプラズマP中のアルゴンイオン等のイオン粒子は、ターゲットTに引き寄せられて、ターゲットTをスパッタする。ターゲットTより、遷移金属粒子からなるスパッタ粒子が放出される。なお、ターゲットTに第15族元素も含まれている場合には、第15族元素粒子からなるスパッタ粒子も放出される。パルス電圧は、例えば、400Vから600Vである。デューティ比は、例えば、2.5から10である。
これにより、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、がシートプラズマP中で同時に反応することにより、遷移金属と、第15族元素と、炭素とを含み、炭素ナノ材料からなる触媒が、基板Wの表面に形成される。
なお、触媒の製造装置は、スパッタリング部40にかえて、放電室22における接続口28の近傍に、遷移金属や第15族元素を含む金属材料で形成され、プラズマ生成部20で発生させたプラズマが通過可能な筒体を設けるようにしてもよい。筒体の中空部をプラズマが通過する時に、アルゴンイオン等のイオン粒子が筒体に衝突することにより、チャンバ12に遷移金属や第15族元素を導入することが可能となる。この触媒の製造装置によれば、微量の遷移金属や第15族元素を触媒に導入可能となる。
図3は、基板Wの表面に形成された触媒Sを示す図である。触媒Sは、0.010原子%以上15.1原子%以下の遷移金属と、第15族元素と、炭素と、を含む炭素ナノ材料から構成される。また、触媒Sは、0.010原子%以上15.1原子%以下の遷移金属と、第15族元素と、炭素と、含み、残部が酸素等の不可避的不純物からなる炭素ナノ材料により構成されていてもよい。
触媒Sは、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて得られた炭素ナノ材料で構成されている。炭素ナノ材料は、カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノフレーク、カーボンナノシート等を含む。カーボンナノウォール等の炭素ナノ材料は、グラファイト構造を備えており、触媒Sの活性サイトと考えられるエッジ構造(欠陥構造)を含むことから、触媒活性を有している。
触媒Sの構造をラマン分光法で分析した場合には、ラマンスペクトルにおけるDバンドのピーク強度(ID)と、Gバンドのピーク強度(IG)との強度比(ID/IG)については、例えば、1.60以上2.09以下になる。なお、Dバンドは、ラマンシフトで約1350cm−1付近に現れる欠陥に起因するピークである。Gバンドは、ラマンシフトで約1580cm−1付近に現れるグラファイト構造に起因するピークである。このため、強度比(ID/IG)については、欠陥が多いほど大きくなる傾向がある。また、Dバンドのピークの半値幅(WD)については、例えば、72.7以上135.8以下になり、Gバンドのピークの半値幅(WG)については、例えば、45.5以上60.2以下になる。各ピークの半値幅は、炭素ナノ材料の結晶性と関係しており、各ピークの半値幅が小さいほど結晶性が高くなる傾向がある。
遷移金属は、触媒活性を高くする機能を有している。遷移金属については、特に限定されないが、触媒活性をより高くするために、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)またはマンガン(Mn)であることが好ましい。遷移金属については、これらの元素単体で含有されていてもよいし、2種類以上の元素が含まれていてもよい。
遷移金属の含有率は、0.010原子%以上15.1原子%以下である。遷移金属の含有率が0.010原子%以上であるのは、遷移金属の含有率が0.010原子%より小さい場合には、触媒活性が低くなり、触媒Sの酸素還元反応特性が低下するからである。遷移金属の含有率が15.1原子%以下であるのは、遷移金属の含有率が15.1原子%以下であれば高い触媒活性が得られるからである。遷移金属の含有率は、0.07原子%以上15.1原子%以下であることが好ましい。遷移金属の含有率を0.07原子%以上15.1原子%以下とすることにより、触媒活性をより高くして、触媒Sの酸素還元反応特性を向上させることが可能となる。
第15族元素は、電子を放出し易く、触媒活性を高くする機能を有している。第15族元素については、周期表の第15族元素である窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)である。第15族元素は、触媒活性をより高くするために、窒素(N)であることが好ましい。第15族元素の含有率は、1.50原子%以上4.28原子%以下であることが好ましい。第15族元素の含有率を1.50原子%以上4.28原子%以下とすることにより、触媒活性をより高くして、触媒Sの酸素還元反応特性を向上させることが可能となる。
炭素は、炭素ナノ材料の骨格を形成する機能を有している。炭素の含有率は、52.2原子%以上97.3原子%以下であることが好ましい。
触媒Sには、不可避的不純物が含まれていてもよい。触媒Sに含まれる不可避的不純物としては、例えば、酸素(O)等である。
触媒Sに含まれるこれらの元素の組成については、X線光電子分光(XPS;X−ray Photoelectron Spectroscopy)、二次イオン質量分析(SIMS;Secondary Ion Mass Spectrometry)等で定量可能である。
触媒Sの酸素還元反応特性については、例えば、電流密度が10(μA・cm−2)のときの酸素還元電位を酸素還元反応の開始電位とすると、開始電位を0.80(V vs RHE)から0.88(V vs RHE)とすることができる。また、酸素還元電位が0.20(V vs RHE)のときの電流密度については、5.0(mA・cm−2)から31.1(mA・cm−2)とすることが可能である。触媒Sの酸素還元反応特性については、三極式ガラスセル等にて測定可能である。
以上、上記構成の触媒の製造装置によれば、パルス電源を用いてスパッタリングすることが可能であることから、スパッタ電圧であるパルス電圧の大きさと、デューティ比とを変えることにより、遷移金属や第15族元素を含むターゲットからのスパッタ粒子の放出量を制御し、遷移金属や第15族元素の触媒への導入量を精度良く調整することが可能となる。
上記構成の触媒の製造方法によれば、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて触媒が得られることから、カーボンアロイ触媒のように、焼成後に触媒活性に寄与しない析出物を酸で除去するプロセスや、触媒活性を最適化するための多段焼成処理が不要となるので、触媒をより簡易なプロセスで製造可能となる。より詳細には、カーボンアロイ触媒は、通常、鉄またはコバルトフタロシアニンと、フェノール樹脂との混合物を、600℃から1000℃、窒素ガス中で焼成することで形成される。カーボンアロイ触媒は、ナノシェル構造と呼ばれる微細なグラファイト構造を形成することにより、触媒活性を高めている。カーボンアロイ触媒の製造では、焼成後、表面に鉄などの遷移金属の析出物が形成される。この析出物は、触媒活性に寄与しないので、この析出物を酸で除去するプロセスが必要になる。また、カーボンアロイ触媒の製造工程では、触媒活性を最適化するために、複数の焼成温度で焼成する多段焼成処理が必要になる。このように、カーボンアロイ触媒は、製造プロセスが煩雑であるので、製造コストが高くなる可能性がある。これに対して、上記構成の触媒の製造方法によれば、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて触媒が得られることから、触媒をより簡易なプロセスで製造可能となる。
上記構成の触媒の製造方法によれば、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて触媒が得られることから、触媒を把持する基材に、触媒を直接成膜して形成することが可能となる。
上記構成の触媒によれば、0.010原子%以上15.1原子%以下の遷移金属と、第15族元素と、炭素と、を含む炭素ナノ材料からなることから、触媒活性をより高めることが可能となり、酸素還元反応特性を向上させることができる。
次に、他の触媒の製造装置について説明する。図4は、触媒の製造装置50の構成を示す模式的断面図である。図5は、触媒の製造装置50の構成を示す模式的側面図である。
触媒の製造装置50は、炭素ナノ材料からなる触媒を形成するための基板Wを収容するチャンバ52を有する装置本体54と、装置本体54のチャンバ52内に搬送可能に設けられており、基板Wを保持する基板ホルダ56を有しているキャリア58と、を備えている。
チャンバ52は、チャンバ52内のガスを排気する排気口60を有しており、装置本体54に設けられる真空ポンプ等の排気手段(図示せず)により真空排気可能に構成されている。チャンバ52には、基板W等を加熱するためのヒータ(図示せず)が設けられている。
キャリア58は、チャンバ52内に搬送可能に設けられており、基板Wを保持する基板ホルダ56を有している。キャリア58がチャンバ52内に挿入されたとき、基板ホルダ56に保持された基板Wは、後述するアレイアンテナ66と対向して配置される。なお、基板Wについては、触媒の製造装置10で用いられる基板Wと同様であるので詳細な説明を省略する。
原料ガス供給部62は、装置本体54に設けられており、チャンバ52に触媒を形成するための原料ガスを供給する機能を有している。原料ガス供給部62は、原料ガスを貯蔵した貯蔵タンク等の原料ガス供給源62aと、原料ガス供給源62aとチャンバ52とに接続され、原料ガス供給源62aからチャンバ52へ原料ガスを供給する供給管62bと、を有している。供給管62bには、原料ガスを供給または停止するための電磁バルブ等のバルブ機構(図示せず)が設けられている。原料ガスには、炭素源ガス、第15族元素源ガス、水素ガスを混合等させて用いられる。これらの原料ガスについては、触媒の製造装置10で用いられる原料ガスと同様であるので詳細な説明を省略する。なお、原料ガスに、アルゴンガス等の不活性ガスを混合させてもよい。
プラズマ生成部64は、チャンバ52内に配置され、U字形状に曲げられた複数の誘導結合型アンテナを一平面内に配置したアレイアンテナ66と、装置本体54に設けられ、アレイアンテナ66に高周波電力を供給する高周波電源68と、を有している。アレイアンテナ66は、基板Wの表面を覆うように複数の誘導結合型アンテナが所定の間隔を開けて配置して構成されている。
アレイアンテナ66を構成する複数の誘導結合型アンテナは、その一端の給電部70が同軸ケーブル72を介して高周波電源68に接続されており、その他端が、チャンバ52の壁に連結して接地されている。高周波電源68からアレイアンテナ66の各誘導結合型アンテナに所定電力の高周波電力が供給されることにより、チャンバ52にプラズマを発生させることが可能となる。これにより、アレイアンテナ66の周りに放電ゾーンが形成される。
このように、プラズマ生成部64は、チャンバ52にプラズマを発生させるプラズマ発生手段としての機能を有している。なお、複数のガス噴出口を形成した中空構造の誘導結合型アンテナを用い、誘導結合型アンテナの接地部から原料ガスを誘導結合型アンテナ内部に導入し、ガス噴出口からチャンバ52に原料ガスを供給するようにしてもよい。
スパッタリング部80は、装置本体54に設けられ、遷移金属源を含むターゲットTを保持する保持部材82と、装置本体54に設けられ、ターゲットTに負のパルス電圧を印加するパルス電源84と、を有し、プラズマ中のイオン粒子でターゲットTをスパッタリングする機能を有している。
保持部材82は、装置本体54に設けられ、電極を含んで構成されており、基板ホルダ56に保持された基板Wと、ターゲットTとがアレイアンテナ66を挟んで対向するように、ターゲットTを保持する。なお、ターゲットTについては、触媒の製造装置10で用いられるターゲットTと同様であるので詳細な説明を省略する。
パルス電源84は、装置本体54に設けられ、ターゲットTに負のパルス電圧を印加する機能を有している。ターゲットTに負のパルス電圧を印加することにより、ターゲットTが負の電位となるので、アレイアンテナ66の周りに発生したプラズマ中の炭化水素イオンや、アルゴンイオン等のイオン粒子が、ターゲットTをスパッタすることが可能となる。パルス電源84を用いることにより、パルス電圧の大きさと、デューティ比と、を変えて、ターゲットTからのスパッタ粒子の放出量を制御し、遷移金属や第15族元素の触媒への導入量を精度よく調整することができる。また、パルス電源84を用いることにより、ターゲット表面の異常放電を抑制することができる。パルス電源84についても、触媒の製造装置10で用いられるパルス電源44と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。
制御部86は、原料ガス供給部62と、プラズマ生成部64と、スパッタリング部80と、を制御する機能を有している。制御部86は、一般的なコンピュータシステムで構成することが可能である。
次に、触媒の製造装置50を用いた触媒の製造方法について説明する。
ターゲットTが、保持部材82に保持される。基板Wが、基板ホルダ56に保持される。キャリア58が、装置本体54のチャンバ52内に搬送される。チャンバ52内を所定の真空度(例えば、0.05Paから0.5Pa)に到達するまで真空ポンプ等の排気手段(図示せず)で排気する。チャンバ52内が所定の真空度に到達した後、ヒータ(図示せず)により基板Wを加熱する。基板Wの温度は、例えば、600℃から800℃に調整される。
原料ガス供給部62により、チャンバ52に原料ガスが供給される。メタンガス等の炭素源ガス、窒素ガス等の第15族元素ガス、水素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの流量については、触媒の製造装置10を用いた触媒の製造方法と同様であるので詳細な説明を省略する。
プラズマ生成部64では、高周波電源68からアレイアンテナ66に所定の高周波電力を供給し、アレイアンテナ66の周りにプラズマを発生させる。プラズマは、チャンバ52に導入された原料ガスを励起、イオン化する。
スパッタリング部80では、ターゲットTは、パルス電源84により負のパルス電圧が印加される。プラズマ中のイオン粒子は、ターゲットTに引き寄せられ、ターゲットTをスパッタする。ターゲットTより、遷移金属粒子や第15族元素粒子からなるスパッタ粒子が放出される。パルス電圧の大きさと、デューティ比とについては、触媒の製造装置10を用いた触媒の製造方法と同様であるので詳細な説明を省略する。
これにより、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、がプラズマ中で同時に反応することにより、遷移金属と、第15族元素と、炭素と、を含む炭素ナノ材料からなる触媒が基板Wの表面に形成される。また、触媒の製造装置50で製造される触媒の組成、構造、酸素還元反応特性等については、触媒の製造装置10で製造された触媒Sと同様であるので詳細な説明を省略する。
以上、上記構成の触媒の製造装置50、触媒の製造装置50を用いた触媒の製造方法においても、触媒の製造装置10、触媒の製造装置10を用いた触媒の製造方法と同様の効果を奏する。
次に、触媒Sを用いた固体高分子形燃料電池について説明する。
図6は、固体高分子形燃料電池の単セル90の構成を示す断面図である。単セル90は、高分子電解質膜92と、高分子電解質膜92の一方に設けられたカソード電極94と、高分子電解質膜92の他方に設けられたアノード電極96と、カソード電極94とアノード電極96との外側に各々設けられたカソード側セパレータ98と、アノード側セパレータ100と、を備えている。
高分子電解質膜92は、フッ素系樹脂のイオン交換膜等で形成されている。
カソード電極94は、ガス拡散層94aと、ガス拡散層94aに設けられる触媒層94bと、を有している。ガス拡散層94aは、カーボンペーパ等で形成されている。触媒層94bは、触媒の製造装置10、50を用いて製造される炭素ナノ材料からなる触媒Sで形成されている。
アノード電極96は、ガス拡散層96aと、ガス拡散層96aに設けられる触媒層96bと、を有している。ガス拡散層96aは、カーボンペーパ等で形成されている。触媒層96bは、白金とカーボンとを含有した触媒等で形成されている。なお、膜電極接合体97は、高分子電解質膜92と、カソード電極94と、アノード電極96と、から構成される。
カソード側セパレータ98と、アノード側セパレータ100とは、カーボン材料や、ステンレス、チタン等の金属材料で形成されている。カソード側セパレータ98と、アノード側セパレータ100とには、ガスや冷却水の流路となる溝(図示せず)が設けられている。
固体高分子形燃料電池は、複数の単セル90を積層してスタックとした後、スタックの両側に集電板を配置して構成される。
次に、固体高分子形燃料電池の作用について説明する。アノード側(燃料極側)に供給された水素は、アノード電極96との電極反応(酸化反応)によって水素イオンになり、高分子電解質膜92を通ってカソード側(空気極側)へ移動する。同時に電子も外部回路を通ってカソード側(空気極側)に到達する。カソード電極94では、供給された酸素と、アノード側(燃料極側)から移動してきた水素イオンと、電子とが反応(酸素還元反応)して水が生成される。
次に、固体高分子形燃料電池の製造方法について説明する。図7は、固体高分子形燃料電池の製造方法の構成を示すフローチャートである。固体高分子形燃料電池の製造方法は、カソード電極形成工程(S10)と、膜電極接合体形成工程(S12)と、セル形成工程(S14)と、を備えている。
カソード電極形成工程(S10)は、ガス拡散層94aの表面に触媒層94bを設けてカソード電極94を形成する工程である。カソード電極94については、上述した触媒の製造装置10、50を用いた触媒の製造方法において、基板Wにかえてガス拡散層94aを配置し、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて得られ、炭素ナノ材料からなる触媒Sを、ガス拡散層94aの表面に成膜することにより形成される。ガス拡散層94aの表面に触媒Sからなる触媒層94bを成膜した後、高分子電解質が塗布される。
膜電極接合体形成工程(S12)は、高分子電解質膜92の一方にカソード電極94を設け、高分子電解質膜92の他方にアノード電極96を設けて接合し、膜電極接合体97を形成する工程である。アノード電極96は、ガス拡散層96aの表面に、白金触媒と、カーボンと、高分子電解質と、有機溶剤とを混練した触媒ペーストを塗布して触媒層96bを形成することが可能である。高分子電解質膜92の一方にカソード電極94を配置し、高分子電解質膜92の他方にアノード電極96を配置して熱圧着して接合し、膜電極接合体97を形成する。なお、アノード電極96については、高分子電解質膜92の他方に上記の触媒ペーストを塗布して触媒層96bを形成し、膜電極接合体97を形成するときの熱圧着時に、ガス拡散層96aと接合するようにしてもよい。
セル形成工程(S14)は、膜電極接合体97のカソード側にカソード側セパレータ98を設け、膜電極接合体97のアノード側にアノード側セパレータ100を設けて、セル90を形成する工程である。膜電極接合体97のカソード側とアノード側に、カソード側セパレータ98と、アノード側セパレータ100とを各々配置して、セル90を形成する。複数の単セル90を積層してスタックとした後、スタックの両側に集電板を配置して、固体高分子形燃料電池が製造される。
上記構成の固体高分子形燃料電池及びその製造方法によれば、カソード電極の触媒層を、炭素源ガスと、第15族元素源と、遷移金属源と、をプラズマ中で同時に反応させて得られ、遷移金属と、第15族元素と、炭素とを含み、炭素ナノ材料からなる触媒Sで形成することから、カーボンペーパ等のガス拡散層に、触媒Sを直接成膜して触媒層を形成可能となる。これにより、従来のように、白金触媒と、カーボンと、を混練して触媒層を形成する方法や、カーボンアロイ触媒を用いて触媒層を形成する方法に比べて、固体高分子形燃料電池の製造工程を簡略化して、製造コストを低減することができる。
触媒を製造して酸素還元反応特性を評価した。まず、触媒の製造方法について説明する。触媒の製造には、図1に示す触媒の製造装置10を使用した。表1に、実施例1から実施例18の触媒の製造条件を示す。
炭素源ガスとして、メタンガスを使用した。第15族元素源ガスとして、窒素ガスを使用した。原料ガスとして、メタンガスと窒素ガスとを混合した混合ガスと、メタンガスと窒素ガスと水素ガスとを混合した混合ガスとを用いた。メタンガスの流量については、20sccm、30sccm、40sccmとした。窒素ガスの流量については、10sccm、20sccm、30sccmとした。水素ガスの流量については、10sccmとした。
放電用ガスとしてアルゴンガスを使用した。アルゴンガスの流量については、60sccm、80sccm、100sccmとした。放電電流については、60A、70A、80Aとした。
触媒を形成するための基板Wには、カーボンペーパを用いた。基板温度については、600℃、700℃、800℃とした。
ターゲットには、純度が99.9%の鉄(Fe)からなる鉄(Fe)ターゲットを用いた。パルス電源については、パルスDC電源を使用した。スパッタ電圧として、ターゲットに負のパルス電圧を印加した。スパッタ電圧については、400V、500V、600Vとした。デューティ比については、2.5、5、10とした。
メタンガスと、窒素ガスと、プラズマ中のアルゴンイオン等によるスパッタにより放出された鉄(Fe)からなるスパッタ粒子と、をプラズマ中で同時に反応させて、炭素ナノ材料からなる触媒を形成した。なお、チャンバ内の圧力については、0.1Paとした。
実施例1から実施例18では、いずれもカーボンペーパの表面に、触媒が形成された。触媒の形態について走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。代表として実施例17の触媒について説明する。図8は、触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果を示す写真であり、図8(a)は、触媒の表面を示す写真であり、図8(b)は、図8(a)を拡大した写真であり、図8(c)は、触媒の断面を示す写真である。触媒は、カーボンナノウォールで構成されていた。カーボンナノウォールは、表面に微細な突起がある炭素ナノ材料である。触媒の厚みについては、30μmから50μm程度であった。なお、他の実施例の触媒についてもカーボンナノウォールで構成されており、触媒の厚みについても、実施例17の触媒と略同じ厚みであった。
触媒の組成について、X線光電子分光(XPS;X−ray Photoelectron Spectroscopy)により組成分析を行った。実施例1から18の触媒は、鉄(Fe)と、窒素(N)と、炭素(C)と、不可避的不純物である酸素(O)とにより構成されていた。
触媒の組成の定量方法について、代表として実施例17の触媒について説明する。図9は、触媒に含まれる鉄(Fe)のXPSスペクトルを示すグラフである。図10は、触媒に含まれる窒素(N)のXPSスペクトルを示すグラフである。図9及び図10のグラフにおいて、横軸に結合エネルギを取り、縦軸に強度を取り、各元素のXPSスペクトルを実線で表わしている。鉄(Fe)の組成については、2P1/2のピーク面積と、2P3/2のピーク面積とを加えて補正して求めた。窒素(N)の組成については、1sのピーク面積から補正して求めた。また、炭素(C)及び酸素(O)の組成についても、XPSスペクトルから同様にして求めた。なお、他の実施例についても実施例17と同様に定量を行った。
表2に、実施例1から実施例18における触媒の組成分析の結果を示す。
実施例1から18の触媒は、0.07原子%以上15.1原子%以下の鉄(Fe)と、1.50原子%以上4.28原子%以下の窒素(N)と、52.2原子%以上97.3原子%以下の炭素(C)と、を含み、残部が不可避的不純物である酸素(0)から構成されていた。
触媒についてラマン分光分析を行った。ラマン分光分析では、Dバンドのピーク強度(ID)と、Gバンドのピーク強度(IG)と、Dバンドのピーク強度(ID)と、Gバンドのピーク強度(IG)との比(ID/IG)と、Dバンドのピークの半値幅(WD)と、Gバンドのピークの半値幅(WG)とを求めた。代表として実施例17の触媒について、これらの算出方法を説明する。図11は、触媒のラマンスペクトルを示すグラフである。図11のグラフにおいて、横軸にラマンシフトを取り、縦軸に強度を取り、ラマン分光分析のスペクトルを実線で示している。Dバンドのピーク強度(ID)と、Gバンドのピーク強度(IG)とについては、Dバンドのピーク強度、Gバンドのピーク強度の面積から補正して算出した。Dバンドのピークは、約1350cm−1に検出され、Gバンドのピークは、約1580cm−1に検出された。
表3に、触媒のラマン分光分析の結果を示す。
実施例1から18の触媒では、Dバンドのピーク強度(ID)と、Gバンドのピーク強度(IG)との比(ID/IG)については、1.60以上2.09以下であった。Dバンドのピークの半値幅(WD)については、72.7以上135.8以下であった。Gバンドのピークの半値幅(WG)については、45.5以上60.2以下であった。
触媒の酸素還元反応特性について、三極式ガラスセルにて評価した。酸素還元反応特性については、電流密度が10(μA・cm−2)のときの酸素還元電位を酸素還元反応の開始電位とし、この開始電位と、酸素還元電位Eが0.20(V vs RHE)のときの電流密度と、により評価した。表4に、触媒の酸素還元反応特性の結果を示す。
実施例1から18の触媒では、酸素還元反応の開始電位が0.80(V vs RHE)から0.88(V vs RHE)であり、酸素還元電位が0.20(V vs RHE)のときの電流密度が、5.0(mA・cm−2)から31.1(mA・cm−2)であった。
次に、触媒の製造装置として、図1に示す触媒の製造装置10のスパッタリング部にかえて、放電室における接続口の近傍に、プラズマ生成部で発生させたプラズマが通過可能な筒体を設けた製造装置を使用した。実施例19では、ステンレス鋼で形成した筒体を使用した。比較例1では、アルミナで形成した筒体を使用した。比較例2では、チタンで形成した筒体を使用した。
原料ガスについては、メタンガスと窒素ガスと水素ガスとを混合した混合ガスを用いた。放電用ガスには、アルゴンガスを用いた。基板には、シリコン基板とカーボンペーパ基板とを用いた。メタンガスの流量については30(sccm)、窒素ガスの流量については50(sccm)、水素ガスの流量については10(sccm)、アルゴンガスの流量については60(sccm)とした。基板温度については800℃とし、放電電流については70(A)とした。
実施例19、比較例1、2については、いずれもシリコン基板とカーボンペーパ基板との表面に、触媒が形成された。これらの触媒は、カーボンナノウォールで構成されていた。シリコン基板の表面に形成されたこれらの触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率について、二次イオン質量分析(SIMS;Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定した。なお、鉄(Fe)の含有率については、ppmaに換算して求めた。また、カーボンペーパ基板の表面に形成されたこれらの触媒の酸素還元反応特性について、三極式ガラスセルにて評価した。酸素還元反応特性については、電流密度が10(μA・cm−2)のときの酸素還元電位を、酸素還元反応の開始電位として測定した。
図12は、触媒における鉄(Fe)の含有率と、酸素還元反応特性とを示すグラフである。図12のグラフでは、左縦軸に酸素還元反応の開始電位を取り、右縦軸に触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率を取り、酸素還元反応の開始電位を白菱形と実線で表し、鉄(Fe)の含有率を白四角形と破線で表している。
実施例19の触媒の開始電位は、0.80(V vs RHE)であった。比較例1の触媒の開始電位は、0.75(V vs RHE)であった。比較例2の触媒の開始電位は、0.69(V vs RHE)であった。また、実施例19の触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率については、300ppma(0.030原子%)であった。比較例1の触媒における鉄(Fe)の含有率については、30ppma(0.003原子%)であった。比較例2の触媒における鉄(Fe)の含有率については、約10ppma(0.001原子%)であった。
図12のグラフから明らかなように、触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率が大きくなるほど、触媒の開始電位も大きくなった。触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率が100ppma(0.010原子%)以上の場合には、触媒の開始電位が約0.80(V vs RHE)以上となり、触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率が300ppma(0.030原子%)である実施例19の触媒では、実施例1から18の触媒と略同等の酸素還元反応特性が得られることがわかった。また、触媒に含まれる鉄(Fe)の含有率が、100ppma(0.010原子%)より小さくなると、触媒の開始電位の低下が大きくなり、酸素還元反応特性が低下することがわかった。
以上の触媒の酸素還元反応特性の評価試験から、100ppma(0.010原子%)以上15.1原子%以下の鉄(Fe)と、窒素(N)と、炭素(C)と、を含むカーボンナノウォールからなる触媒は、触媒活性が高くなり、酸素還元反応特性が向上することがわかった。また、鉄(Fe)の含有率が、0.07原子%以上15.1原子%以下であり、窒素(N)の含有率が、1.50原子%以上4.28原子%以下である触媒では、触媒活性がより高くなり、酸素還元反応特性が更に向上することがわかった。