JP6667264B2 - 高剛性鉄基焼結合金の製造方法 - Google Patents
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(1)本発明の高剛性鉄基焼結合金は、鉄(Fe)または鉄合金からなるマトリックスに、該マトリックスよりもヤング率の大きい高剛性粒子が分散してなる高剛性鉄基焼結合金であって、前記高剛性粒子は、前記高剛性鉄基焼結合金全体を100体積%として10〜50体積%を占めるニホウ化チタン(TiB2)粒子を含み、さらに、前記マトリックス全体を100質量%として0.1〜3質量%のジルコニウム(Zr)を含むことを特徴とする。
(1)本発明は、次のような高剛性鉄基焼結合金の製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、鉄または鉄合金からなる鉄系粉末とニホウ化チタン粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、該焼結体からなる高剛性鉄基焼結合金を得ることを特徴とする高剛性鉄基焼結合金の製造方法でもよい。さらに本発明は、上述した焼結合金とは独立して、上記の製造方法により得られた高剛性鉄基焼結合金としても把握できる。
(1)本明細書でいう体積割合(体積%)は、特に断らない限り、空孔(Pore)を除いたポアフリー体積(PFV)に基づいて算出される。例えば、「焼結合金全体を100体積%として」とは、焼結合金の見掛体積(嵩体積)から、そこに含まれる空孔(Pore)を除いて求めた体積(PFV)を100体積%として、という意味である。
本発明の焼結合金を構成するマトリックスは、純鉄でも良いが、高剛性化と共に高強度化等を図るため、種々の合金元素を含む鉄合金からなると好適である。各合金元素は、Fe中に固溶していても、Feや他の元素と化合物を形成して析出等していてもよい。このような合金元素として、例えば、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等があり、そのいずれか一種以上がマトリックス中に適量含まれると好適である。なお、各合金元素は、単独粉末として供給されても、合金粉末(鉄合金粉末等)として供給されてもよい。
高剛性粒子は、鉄系マトリックスよりもヤング率の大きな粒子であり、ホウ化物(TiB2、FeB、MoB、Cr2B、NbB2、VB2、HfB2、ZrB2等)、炭化物(ZrC、TiC、VC、Mo2C、NbC等)、窒化物(ZrN等)、酸化物(ZrO2、TiO2等)など、種々のセラミックスからなる粒子を用い得る。但し、高温時でも鉄基マトリックス中で安定であり、安定した高ヤング率を発揮する高剛性粒子として、TiB2粒子が最も優れている。
(1)原料粉末
本発明に係る原料粉末は、上述した所望組成のマトリックスが形成されるように配合された鉄系粉末および任意に添加される合金元素源粉末と、ジルコニウム源粉末と、TiB2粒子を含む高剛性粉末とを混合した混合粉末からなる。
成形工程は、上述した各種粉末を所望組成に配合した混合粉末を加圧して成形体を得る工程である。成形圧力は、例えば、350〜1500MPa、600〜1350MPaさらには800〜1200MPaの範囲とすると良い。成形圧力が過小では成形体ひいては焼結体の密度が不十分となり、成形圧力が過大では金型寿命の低下や設備コストの増大を招き好ましくない。なお、本発明の場合、成形圧力をあまり大きくするまでもなく、ジルコニウム源粉末の配合と焼結温度の選択により、十分に高密度な焼結体を得ることができる。
焼結工程は、成形体を加熱して焼結体を得る工程である。焼結温度および焼結時間は、焼結合金の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択されるが、それらが過大ではエネルギーコストが増大し、それらが過小では相対密度やヤング率を十分に確保できない。特に焼結温度は、鉄系粒子と高剛性粒子(TiB2粒子)との間で液相を生じる1140℃以上であると好ましい。そこで焼結温度は、例えば、1140℃〜1350℃、1180〜1300℃さらには1200〜1280℃とすると好ましい。焼結時間(上記の焼結温度を保持する時間)は、例えば、0.1〜3時間さらには0.1〜1時間であると好ましい。なお、焼結工程は、真空雰囲気、アルゴンガス雰囲気(大気圧以上)、アルゴンガスパーシャル雰囲気(大気圧に対して減圧(例えば0.5〜2kPa)されたアルゴンガス雰囲気)等の酸化防止雰囲気でなされると好ましい。
本発明の場合、焼結工程後の冷却工程(特に冷却速度)は必ずしも問わない。もっとも、焼結工程における加熱後の冷却速度が大きいと、焼結体の金属組織の粗大化等を抑制できて好ましい。
本発明の焼結合金を用いれば、各種部材の高剛性化を容易に図れ、部材の機械的特性(強度等)や振動特性等の改善、ひいては部材の軽薄短小化や設計自由度の拡大が可能となる。本発明の焼結合金は具体的な用途を問わないが、例えば、自動車等のエンジン部品(例えばコンロッド)、変速機部品、シャーシ部品、サスペンション部品、各種のシャフト類やプーリー類、音響部品等の素材や最終形状に近い製品として用いられると好ましい。
(1)原料粉末
原料粉末として、鉄系粉末と、高剛性粉末であるTiB2粉末と、助剤粉末(Zr源粉末等)と、合金元素源粉末とを用意した。なお、各粉末の成分組成は、各粉末全体を100質量%として、単に「%」で表した。また、各粉末の粒径(粒度)は、既述した方法により特定される。
上述した各原料粉末を表1〜表9に示す割合(配合量)にそれぞれ秤量した配合粉末を、乳鉢で3分間混合した後、さらにボールミルで30分間回転混合して、種々の混合粉末を得た(混合工程)。なお、配合組成は、混合粉末全体を100質量%または100体積%として示した。各原料粉末の配合体積(Vi)は、既述したように、それぞれの配合質量と比重(公表値または表示値)とに基づいて算出され、各原料粉末の配合体積(Vi)の総和(ΣVi)を混合粉末全体の体積とした。
キャビティ形状が異なる2種の金型を用意して、前述した金型潤滑温間加圧成形法により各混合粉末を加圧成形した。この際、金型はバンドヒータにより150℃(成形温度)に加熱した。この加熱した金型の内周面には、水に分散させた1%の溶液ステアリン酸リチウム(LiSt)溶液(高級脂肪酸系潤滑剤)を塗布した。成形圧力は各表に示すように392〜1176MPaの範囲で調整したが、特に断らない限り成形圧力は784MPaとした。その他、金型潤滑温間加圧成形法に関しては、特許3309970号公報等の記載を参照にした。
バッチ式焼結炉(島津メクテム株式会社製PVSGgr20/20)を用いて、真空雰囲気中(1〜5×10-2Pa・A程度)にて、各成形体を加熱し焼結させた。焼結温度は、各表に示すように900〜1300℃の範囲で調整したが、特に断らない限り焼結温度は1250℃とした。また、その焼結温度を保持する均熱保持時間(焼結時間)は30分間とした。
(1)密度、密度変化、寸法変化、
各試料に係る計測用試験片を用いて、焼結前後の寸法および重量を測定し、成形体の嵩密度(G.D.)と相対密度(%)、焼結体の嵩密度(S.D.)と相対密度(%)、焼結前後の寸法変化率(ΔT:厚さの変化率、ΔD:直径の変化率)を算出した。なお、寸法変化率は、焼結後の寸法から焼結前の寸法を引いた差分を、焼結前の寸法で除して求めた。こうして得られた結果を各表にまとめて示した。
各試料に係る焼結後の円柱状の計測用試験片に、縦波用および横波用の振動子を用いて超音波パルスを伝播させ、試験片内を伝播する縦波及び横波の伝播速度からヤング率を算出した(超音波パルス法)。こうして得られた結果を各表にまとめて示した。
一部の試料の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。この観察は、試験片から採取した切断片を樹脂に埋め込み、その表面を鏡面研磨後、行った。金属組織の詳細については後述する。
種々の評価項目に沿って、各表に示した試料群から代表的な試料を抽出し、それらの特性をグラフ(各図)に示して比較した。それらに基づいて、本発明の焼結合金の特徴を具体的に説明する。
助剤粉末を配合せずに、鉄系粉末とTiB2粉末のみを用いて製造した各試料の特性を表1と、図1Aおよび図1B(両者を併せて単に「図1」という。)に示した。
鉄系粉末とTiB2粉末に加えて、さらに種々の助剤粉末を添加した混合粉末を用いて製造した各試料の特性を表2〜4と、図2A〜図4Bに示した。なお、いずれの試料も、TiB2粉末は焼結合金中のTiB2粒子の体積割合が30体積%となるように配合し、各助剤粉末の添加量は1質量%とした。また各図に示した試料はいずれも、成形圧力:784MPa、焼結温度:1250℃で製造したものである。これらの点は特に断らない限り、以降でも同様である。
TiB2粒子を多く含有させた焼結合金の相対密度とヤング率の向上に特に有効な助剤であるZrB2とZrCの添加量を種々変更して製造した各試料の特性を表5Aおよび表5B(両者を併せて単に「表5」という。)と、図5A〜図5D(各図を併せて単に「図5」という。)に示した。これらから明らかなように、助剤(ZrB2またはZrC)が極少量添加されるだけでも、焼結体の相対密度、ヤング率、引張強さおよび伸びのいずれも、急激に向上することがわかる。但し、このような傾向は助剤の添加量が1質量%以下(伸びは0.5質量%以下)の範囲で顕著であり、助剤をそれ以上(1質量%超)添加しても、各特性は飽和状態となり得ることも明らかとなった。そして助剤を過剰(2質量%超)に添加すると逆に、焼結合金の引張強さが低下することも明らかとなった。
ZrB2粉末の添加量を0.5質量%、1質量%または2質量%として、TiB2粒子の配合量と成形圧力を種々変更して製造した各試料の特性を表6A〜表6C(各表を併せて単に「表6」という。)と、図6Aおよび図6B(各図を併せて単に「図6」という。)に示した。なお、図6にはZrB2粉末の添加量を1質量%添加した場合を示した。
ZrB2粉末を添加(1質量%)した場合と添加しなかった場合とについて、焼結温度を種々変更して製造した各試料の特性を表7と、図7A〜図7D(各図を併せて単に「図7」という。)に示した。
ZrB2粉末を添加した場合と添加しなかった場合とについて、焼結温度が異なる各試料(焼結体)の金属組織写真を図8Aおよび図8B(両図を併せて単に「図8」という。)に示した。各写真中、濃灰部がTiB2粒子であり、淡灰部がマトリックスであり、黒色部分が残留空孔である。
合金元素源粉末としてCu粉末(2質量%)を鉄系粉末に添加した場合と添加しなかった場合とについて、TiB2粒子の配合量を種々変更して製造した各試料の特性を表8と、図9A〜図9D(各図を併せて単に「図9」という。)に示した。なお、図9には、Cu粉末を添加しなかった試料と、さらにZrB2粉末も添加しなかった試料の特性も併せて示した。
Crを含む鉄系粉末を用いて成形圧力を種々変更して製造した各試料の特性を表9と、図10Aおよび図10B(各図を併せて単に「図10」という。)に示した。なお、図10には、同じ鉄系粉末を用いつつ、ZrB2粉末も添加しなかった試料の特性をも併せて示した。図10から明らかなように、鉄系粉末がCr系低合金鋼粉末であっても、Mo系低合金鋼粉末の場合と同様な傾向となることが確認された。
合金元素源粉末(または助剤粉末の一種)としてNi粉末(1質量%)を鉄系粉末に添加した試料と添加しなかった試料を製造して、それらの特性を表10と、図11A〜図11C(各図を併せて単に「図10」という。)に示した。これら試料の製造に際して、鉄系粉末にはFe−1.5%Mo粉末、高剛性粉末には既述したTiB2粉末、Ni粉末にはカルボニルNi粉(Inco製/平均粒径:3.9μm)を用いた。成形工程、焼結工程および試料の測定は既述した通りに行った。但し、焼結後の冷却は、1000℃まで炉冷(徐冷)した後、1000℃からN2ガスを吹きつけて急冷した(冷却工程)。なお、表10および図11には、ZrB2粉末もNi粉末も添加しなかった試料の特性も併せて示した。
表1〜表10に示した各試料に係る厚さ方向の寸法変化率(ΔT)と径方向の寸法変化率(ΔD)から明らかなように、Zrを含む助剤粉末を添加した場合、各試料の焼結体は成形体に対して少し縮小するものの、ΔTとΔDの差は小さいことがわかった。このことから各焼結体は、相対密度およびヤング率が増加しても、成形体の形状が相似的に維持されることが確認された。
Claims (9)
- 鉄または鉄合金からなる鉄系粉末とTiB2粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を350〜1500MPaで加圧して成形体を得る成形工程と、
該成形体を1140〜1350℃で加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、
該TiB2粒子は、該混合粉末全体を100体積%としたときに10〜50体積%含まれ、
該ジルコニウム源粉末は、該混合粉末から該高剛性粉末を除いた粉末全体を100質量%としたときに0.1〜3質量%のZrを含み、
該焼結体からなりヤング率が230GPa以上である高剛性鉄基焼結合金が得られる高剛性鉄基焼結合金の製造方法。 - 前記焼結体は、前記鉄系粉末の粒子と前記TiB2粒子を少なくとも含むホウ化物粒子との粒界の少なくとも一部で液相を生じる焼結温度以上で加熱されてなる請求項1に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記焼結工程は、焼結温度を1180〜1300℃とする工程である請求項1または2に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記ジルコニウム源粉末は、ジルコニウムのホウ化物、炭化物、酸化物および窒化物のいずれか一種以上からなる請求項1〜3のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記鉄系粉末は、モリブデン(Mo)および/またはクロム(Cr)を含む鉄合金からなる請求項1〜4のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記混合粉末は、さらに、銅源粉末を含む請求項1〜5のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記高剛性粉末は、前記混合粉末全体を100質量%としたときに5〜35質量%含まれ、
前記ジルコニウム源粉末は、該混合粉末全体を100質量%としたときに0.2〜4質量%含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。 - 前記鉄系粉末は、該鉄系粉末全体を100質量%としたときに、0.2〜4質量%のMoと0.5〜6質量%のCrの少なくとも一方を含む鉄合金粉末である請求項5に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
- 前記焼結体は、真密度(ρ0)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρ0×100%)が96%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
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