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JP6667264B2 - 高剛性鉄基焼結合金の製造方法 - Google Patents
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JP6667264B2 - 高剛性鉄基焼結合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、構造部材等の高剛性化(高ヤング率化)と低コスト化を高次元で両立し得る高剛性鉄基焼結合金とその製造方法に関する。
構造部材は、破損しないことは勿論、それ以外に所望の変形特性や振動特性等が要求される。このため構造部材に用いられる金属材料は、通常、高強度であると共に高ヤング率であると好ましい場合が多い。このような観点から、多くの構造部材に鉄鋼材料が用いられている。
鉄鋼材料の強度は、熱処理等による組織制御や成分調整によって容易に変更し得るが、ヤング率は物性値であるため、通常、鉄鋼材料のヤング率はその組成や金属組織に拘わらず190〜210GPa程度でほぼ一定である。
しかし、各種部材の軽薄短小化やそれに伴う機械装置(例えばエンジン等)の性能向上を図るため、ヤング率をさらに高めた鉄鋼材料(適宜、「高剛性鋼」という。)が求められる傾向があり、このような高剛性鋼に関連する記載が、例えば下記の特許文献にある。なお、本明細書では、炭素(C)を含有していない鉄基材料も、適宜、便宜的に「鋼」という。
特許第3314505号公報 特許第3898387号公報 特開2002−47527号公報 特開平5−239504号公報 特許第3478930号公報
特許文献1〜3は、鉄基マトリックス中にニホウ化チタン粒子(TiB粒子)を分散させた高剛性鋼を提案している。また特許文献4は、ステンレスマトリックス中にTiB粒子以外のセラミック粒子を分散させた高剛性鋼を提案している。
もっとも、これらの特許文献では、焼結体に、熱間押出しや熱間据込み等の熱間加工を施したり、HIP処理を行ったりして、緻密化することによって所望の高ヤング率を達成している。熱間加工等を行うと、工数増大によってコスト上昇を招くと共に、最終形状に近い焼結体をそのまま用いて部材の製造コスト低減を図るという、焼結法本来の優位性が阻害される。
特許文献5は、溶製法により、鉄基マトリックス中にTiB粒子等を晶出または析出させた高剛性鋼を提案している。このような溶製法を行うには、2000〜2600℃もの高温まで加熱できる特殊溶解装置が必要となり、設備コストが増大する。また、こうして得られる高剛性鋼は、通常、バルク状であるか、形状自由度の小さい鋳物であるため、焼結法のような(ニア)ネットシェイプによる構造部材の製造コスト低減等を図ることは困難である。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、高剛性粒子(TiB粒子)を比較的多く含む場合でも、熱間加工等による緻密化を施すまでもなく、焼結体のままでも十分な高ヤング率を発揮する鉄基焼結合金と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、TiB粒子と共にZrが少量存在すると、熱間加工等を施すまでもなく、TiB粒子が鉄基マトリックス中に微細に分散した緻密な焼結体が得られることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《高剛性鉄基焼結合金》
(1)本発明の高剛性鉄基焼結合金は、鉄(Fe)または鉄合金からなるマトリックスに、該マトリックスよりもヤング率の大きい高剛性粒子が分散してなる高剛性鉄基焼結合金であって、前記高剛性粒子は、前記高剛性鉄基焼結合金全体を100体積%として10〜50体積%を占めるニホウ化チタン(TiB)粒子を含み、さらに、前記マトリックス全体を100質量%として0.1〜3質量%のジルコニウム(Zr)を含むことを特徴とする。
(2)本発明の高剛性鉄基焼結合金(適宜、単に「焼結合金」という。)は、適量のZrを含有することにより、TiB粒子を多く含む場合(例えば10体積%以上)でも、TiB粒子がマトリックス中に均質的に分散し、空孔等が非常に少ない緻密な金属組織となる。これにより本発明の焼結合金は、熱間加工等によって緻密化されるまでもなく、高密度となり、TiB粒子の存在割合に応じた(ほぼ複合則に沿った)高ヤング率を安定的に発揮し得る。
しかも、TiB粒子は熱(力学)的安定性が非常に高く、焼結時にマトリックスと反応して過度な液相を生じることがない。このため本発明に係る焼結体は、成形体に対して相似的に縮小することがあるとしても、成形体の形状(焼結前形状)をほぼそのまま維持し、形状保持性や寸法変化の予測性にも優れる。従って本発明の焼結合金を用いれば、上述した熱間加工等の省略に加えて、(ニア)ネットシェイプによる機械加工等の大幅な削減も可能となり、複雑形状の構造部材でも、高剛性鋼化と製造コスト低減を高次元で両立し得る。
なお、当然であるが、TiB粒子(比重4.3〜4.7g/cm)はマトリックスの主たる構成元素であるFe(比重7.8〜7.9g/cm)よりも低密度で硬質であるため、TiB粒子量に応じて焼結合金が軽量化および高強度化される。
(3)本発明の焼結合金が、このような優れた特性を発揮する理由は必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。TiB粒子は、上述したように熱的安定性に優れるが、焼結時、TiB粒子の表面から僅かに遊離したBと、その近傍(粒界)にあるマトリックスのFeとが反応し、焼結温度がFe−Bの共晶点(約1140℃)以上になると、それらの粒界に液相が生じ得る。
もっとも、本来、TiB粒子は熱的安定性に優れるため、そのような粒界に生じる液相は僅かであり、またTiB粒子と粒界に生じた液相との濡れ性も悪い。このため、含有または配合されたTiB粒子量が増加すると、TiB粒子の凝集部分へ液相が十分に浸透等せず、TiB粒子の凝集部分に空孔が残留してしまう。その結果、TiB粒子量が増加するほど、焼結体の相対密度は低下し、その相対密度の低下に応じてそのヤング率も低下するようになる。
ところが理由は定かではないが、焼結合金中に少量でもZrが存在すると、ZrはTiB粒子と粒界に生じた液相との濡れ性を大幅に改善し、TiB粒子の凝集部分の空孔に液相が浸透し易くする。これにより、TiB粒子の凝集部分の空孔が減少し、焼結体の相対密度ひいてはヤング率も高まる。こうして本発明の焼結合金は、TiB粒子の含有量を多くした場合でも、熱間鍛造等を施すまでもなく、焼結したままで、TiB粒子の含有量に応じた高ヤング率を発現するようになったと考えられる。
上述したように、本発明のような焼結合金では、高剛性粒子量(体積%)に応じてヤング率が向上するという複合則(配合則)に単純に支配される訳ではなく、焼結合金のヤング率はその相対密度とも強い相関を示す。このため焼結合金の高剛性化を図るには、所望のヤング率に応じた高剛性粒子量を含有(配合)させると共に、高い相対密度の確保が不可欠となる。そこで本発明の焼結合金は、真密度(ρ)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρ×100%)が96%以上、97%以上さらには98%以上であると好適である。
《高剛性鉄基焼結合金の製造方法》
(1)本発明は、次のような高剛性鉄基焼結合金の製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、鉄または鉄合金からなる鉄系粉末とニホウ化チタン粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、該焼結体からなる高剛性鉄基焼結合金を得ることを特徴とする高剛性鉄基焼結合金の製造方法でもよい。さらに本発明は、上述した焼結合金とは独立して、上記の製造方法により得られた高剛性鉄基焼結合金としても把握できる。
(2)この製造方法を踏まえて、上述した高剛性鉄基焼結合金は次のようにも把握できる。すなわち本発明の高剛性鉄基焼結合金は、鉄または鉄合金の粒子である鉄系粒子からなる鉄系粉末とTiB粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を加圧した成形体を焼結して得られた焼結体からなる高剛性鉄基焼結合金であり、前記高剛性粉末は、前記混合粉末全体を100体積%としたときに10〜50体積%のTiB粒子を含み、前記ジルコニウム源粉末は、該混合粉末から該高剛性粉末を除いた粉末全体を100質量%としたときに0.1〜3質量%のZrを含むことを特徴とするものでもよい。
さらに本発明の高剛性鉄基焼結合金は、鉄または鉄合金の粒子である鉄系粒子からなる鉄系粉末とTiB粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を加圧した成形体を焼結して得られた焼結体からなる高剛性鉄基焼結合金であり、前記高剛性粉末は、前記混合粉末全体を100質量%としたときに5〜35質量%、10〜30質量%さらには15〜25質量%含まれ、前記ジルコニウム源粉末は、該混合粉末全体を100質量%としたときに0.2〜4質量%、0.4〜2.5質量%さらには0.7〜1.5質量%含まれることを特徴とするものでもよい。
このとき鉄系粉末は、鉄系粉末全体を100質量%として、0.2〜4質量%さらには0.4〜2.5質量%のMoと、0.5〜6質量%さらには1.5〜4質量%のCrの少なくとも一方を含む鉄合金粉末であると好ましい。
また焼結体は、鉄系粒子とホウ化物粒子の粒界の少なくとも一部で液相を生じる焼結温度以上で加熱されてなると好ましい。
《その他》
(1)本明細書でいう体積割合(体積%)は、特に断らない限り、空孔(Pore)を除いたポアフリー体積(PFV)に基づいて算出される。例えば、「焼結合金全体を100体積%として」とは、焼結合金の見掛体積(嵩体積)から、そこに含まれる空孔(Pore)を除いて求めた体積(PFV)を100体積%として、という意味である。
また本明細書でいう「相対密度」は焼結体(成形体も同様)の真密度(ρ)に対する焼結体(成形体)の嵩密度(ρ)の比(ρ/ρ×100%)である。この際、嵩密度(ρ)は計測用試験片(例えば基準寸法:φ14×10mmの円柱状試験片)の実測した寸法と質量から算出される。真密度(ρ)は、その試験片から空孔を除いて求めた体積(PFV)で、実測した質量を除して求められる(ポアフリー密度:PFD)。
焼結合金の製造時であれば、各原料粉末の配合質量(Wi)とその真密度(Di:文献値またはカタログ値)から、各原料粉末の占める体積(Vi=Wi/Di)が求まり、その各体積の総和(ΣVi)が混合粉末全体の体積となり、これを焼結合金のポアフリー体積(PFV:ΣVi)とした。なお、各原料粉末の配合質量(Wi)は実測値である。
このポアフリー体積(PFV:ΣVi)を用いれば、焼結合金中のTiB粒子の体積割合または混合粉末中における高剛性粉末(特にTiB粒子)の体積割合、さらには相対密度も容易に算出できる。例えば、配合質量(Wt)とその真密度(Dt)から求めたTiB粒子(粉末)の体積(Vt=Wt/Dt)を、ポアフリー体積(ΣVi)で除することにより、焼結合金中または混合粉末中におけるTiB粒子(粉末)の体積割合を算出することができる(Vt/ΣVi×100%)。
(2)本明細書でいう「ヤング率」は、円柱状の計測用試験片(φ14×10mm)に対して超音波パルス法により測定される。
(3)本明細書でいう粉末の「平均粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定器による粒度分布測定に基づくメジアン径(D50)より特定される。また粉末の粒度は、篩い分けにより特定する。例えば、公称目開きがaμmの篩いを通過した粒子からなる粉末は、粒度を「−aμm」として表す。なお、篩いを用いた分級に関してはJIS Z 8801に準拠する。
(4)本発明に係る高剛性粒子は、その全部または大部分がTiB粒子からなるが、それとは異なる高ヤング率な粒子、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子、酸化物粒子、TiB以外のホウ化物粒子等を少量含んでいてもよい。
本発明に係るマトリックスは、高剛性粒子の組成にも依るが、Fe、Mo、Cr、Cu、Ni等以外に、少量の改質元素(Mn、Si、V、Co、Ti、Nb、W、P、B等)や不可避不純物を含み得る。改質元素により、高剛性鉄基焼結合金の強度、靱性、延性、寸法安定性等の向上を図ることが可能となる。
(5)本発明の焼結合金は、その形態を問わず、例えば、インゴット状、棒状、管状、板状等の素材であっても良いし、最終製品またはそれに近い部材であっても良い。もっとも本発明に係る焼結体は、焼結したままでも高密度、高ヤング率、高強度等を発揮すると共に、焼結前の形態(成形体の形状)が少なくとも相似的に保持される。従って、本発明の焼結合金は、(ニア)ネットシェイプを利用できる焼結部材(構造部材等)であると、その高剛性化と低コスト化の両立を高次元で図れて好ましい。
(6)本発明の高剛性鉄基焼結合金が発揮するヤング率、強度、伸び(靱性)等の機械的特性は、各原料粉末の種類や組成、成形条件(成形方法、成形圧力等)、焼結条件(温度、時間、雰囲気等)等により異なるため、一概に特定することは困難である。敢ていうなら、本発明の高剛性鉄基焼結合金は、ヤング率が230GPa以上さらには250GPa以上であると好ましい。
(7)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、高剛性粒子(特にTiB粒子)以外をマトリックスと考える。
助剤を添加しないときのTiB粒子量と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 そのときのTiB粒子量と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 種々のホウ化物からなる助剤(1質量%)を添加した焼結体の相対密度を比較した棒グラフである。 それらの焼結体のヤング率を比較した棒グラフである。 種々の炭化物からなる助剤(1質量%)を添加した焼結体の相対密度を比較した棒グラフである。 それらの焼結体のヤング率を比較した棒グラフである。 酸化物または窒化物からなる助剤(1質量%)を添加した焼結体の相対密度を比較した棒グラフである。 それらの焼結体のヤング率を比較した棒グラフである。 助剤(ZrBまたはZrC)の添加量と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 その助剤の添加量と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 その助剤の添加量と焼結体の引張強さの関係を示すグラフである。 その助剤の添加量と焼結体の伸びの関係を示すグラフである。 助剤(ZrB:1質量%)を添加したときのTiB粒子量と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 そのときのTiB粒子量と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 焼結温度と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 焼結温度と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 焼結温度と焼結体の引張強さの関係を示すグラフである。 焼結温度と焼結体の伸びの関係を示すグラフである。 助剤(ZrB:1質量%)を添加したときの焼結温度の異なる各焼結体の金属組織写真である。 助剤を添加していないときの焼結温度の異なる各焼結体の金属組織写真である。 Cu粉末を添加したときのTiB粒子量と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 そのときのTiB粒子量と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 そのときのTiB粒子量と焼結体の引張強さの関係を示すグラフである。 そのときのTiB粒子量と焼結体の伸びの関係を示すグラフである。 Cr系鉄系粉末を用いて試料を製作したときの成形圧力と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 そのときの成形圧力と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。 Ni粉末を添加したときの成形圧力と成形体の相対密度の関係を示すグラフである。 その成形圧力と焼結体の相対密度の関係を示すグラフである。 その成形圧力と焼結体のヤング率の関係を示すグラフである。
本明細書で説明する内容は、本発明の高剛性鉄基焼結合金のみならず、その製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《マトリックス》
本発明の焼結合金を構成するマトリックスは、純鉄でも良いが、高剛性化と共に高強度化等を図るため、種々の合金元素を含む鉄合金からなると好適である。各合金元素は、Fe中に固溶していても、Feや他の元素と化合物を形成して析出等していてもよい。このような合金元素として、例えば、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等があり、そのいずれか一種以上がマトリックス中に適量含まれると好適である。なお、各合金元素は、単独粉末として供給されても、合金粉末(鉄合金粉末等)として供給されてもよい。
MoとCrは、焼結合金(マトリックス)の強度や靱性を向上させる元素である。これらの元素が過少では効果がなく、過多になると焼結合金の靱性が低下する。Moは、0.1〜3質量%(単に「%」で表す。)、0.3〜2.5%さらには0.5〜2%含まれると好適である。Crは、0.3〜5%、1〜4%さらには2〜3.5%含まれると好適である。特にCrとMoが共に含まれるときは、それらの合計が2〜5%さらには2.5〜4%であると好ましい。またCuも、焼結合金の強度を向上させる元素であり、0.3〜5%、1〜4%さらには1.5〜3%含まれると好ましい。さらにNiは、焼結合金を緻密化させて、その相対密度またはヤング率を向上させる元素であり、0.3〜3%さらには0.5〜2%含まれると好ましい。Niは単独でも、TiB粒子を含む焼結合金の緻密化を促進するが、特にZrと共存するときに、その効果が大きい。なお、本明細書で説明する合金元素の組成は、特に断らない限り、マトリックス全体を100質量%としたときの質量割合である。
《高剛性粒子》
高剛性粒子は、鉄系マトリックスよりもヤング率の大きな粒子であり、ホウ化物(TiB、FeB、MoB、CrB、NbB、VB、HfB、ZrB等)、炭化物(ZrC、TiC、VC、MoC、NbC等)、窒化物(ZrN等)、酸化物(ZrO、TiO等)など、種々のセラミックスからなる粒子を用い得る。但し、高温時でも鉄基マトリックス中で安定であり、安定した高ヤング率を発揮する高剛性粒子として、TiB粒子が最も優れている。
そこで本発明の焼結合金では、その全体を100体積%として、TiB粒子を10〜50体積%、20〜40体積%さらには25〜35体積%含むと好ましい。TiB粒子が過少では焼結合金の高ヤング率化が不十分となり、TiB粒子が過多では、焼結合金の伸び(靱性)が大きく低下したり、成形自体が困難となって好ましくない。なお、本発明に係る高剛性粒子は、TiB粒子のみでもよいし、それ以外に上述した他種のセラミックス粒子が少量含まれてもよい。
《製造方法》
(1)原料粉末
本発明に係る原料粉末は、上述した所望組成のマトリックスが形成されるように配合された鉄系粉末および任意に添加される合金元素源粉末と、ジルコニウム源粉末と、TiB粒子を含む高剛性粉末とを混合した混合粉末からなる。
鉄系粉末は、例えば、純鉄粉、Fe−(1〜2%)Mo、Fe−(1〜5%)Cr−(0.1〜0.8%)Moなどの鉄合金粉末を用いると好ましい。
また、合金元素源粉末には、上記の鉄系粉末と組成の異なる鉄合金粉末(CrやMoを含んでもよい)の他、純銅、銅合金、銅化合物等からなる銅源粉末等を用いることができる。
これら鉄系粉末や合金元素源粉末は、平均粒径(メジアン径:D50)が1〜20μmさらには5〜15μmであるか、篩い分けで−45μmに分級されたものであると、高鋼性粒子の分散性、焼結による密度向上に優れて好ましい。
高剛性粉末は、上述したようにTiB粉末のみでもよいし、他種の高剛性粉末を含んでもよい。高剛性粉末は、平均粒径(D50)が0.5〜5μmさらには1〜4μmであると、成形性や取扱性に優れて好ましい。
ジルコニウム源粉末は、前述したZrのホウ化物粉末、炭化物粉末、酸化物粉末または窒化物粉末のいずれか一種以上からなると好ましい。ジルコニウム源粉末も、平均粒径(D50)が0.5〜5μmさらには1〜4μmであると、成形性や取扱性に優れて好ましい。
(2)成形工程
成形工程は、上述した各種粉末を所望組成に配合した混合粉末を加圧して成形体を得る工程である。成形圧力は、例えば、350〜1500MPa、600〜1350MPaさらには800〜1200MPaの範囲とすると良い。成形圧力が過小では成形体ひいては焼結体の密度が不十分となり、成形圧力が過大では金型寿命の低下や設備コストの増大を招き好ましくない。なお、本発明の場合、成形圧力をあまり大きくするまでもなく、ジルコニウム源粉末の配合と焼結温度の選択により、十分に高密度な焼結体を得ることができる。
なお成形工程は、冷間成形(室温成形)でも温間成形でも良い。また、混合粉末と金型との潤滑は、内部潤滑剤を混合粉末に配合して行ってもよいし、金型潤滑により行ってもよい。金型潤滑を行う場合、金型潤滑温間加圧成形法(詳細は特許3309970号公報等を参照)を用いると好ましい。
(3)焼結工程
焼結工程は、成形体を加熱して焼結体を得る工程である。焼結温度および焼結時間は、焼結合金の所望特性、生産性等を考慮して適宜選択されるが、それらが過大ではエネルギーコストが増大し、それらが過小では相対密度やヤング率を十分に確保できない。特に焼結温度は、鉄系粒子と高剛性粒子(TiB粒子)との間で液相を生じる1140℃以上であると好ましい。そこで焼結温度は、例えば、1140℃〜1350℃、1180〜1300℃さらには1200〜1280℃とすると好ましい。焼結時間(上記の焼結温度を保持する時間)は、例えば、0.1〜3時間さらには0.1〜1時間であると好ましい。なお、焼結工程は、真空雰囲気、アルゴンガス雰囲気(大気圧以上)、アルゴンガスパーシャル雰囲気(大気圧に対して減圧(例えば0.5〜2kPa)されたアルゴンガス雰囲気)等の酸化防止雰囲気でなされると好ましい。
(4)その他
本発明の場合、焼結工程後の冷却工程(特に冷却速度)は必ずしも問わない。もっとも、焼結工程における加熱後の冷却速度が大きいと、焼結体の金属組織の粗大化等を抑制できて好ましい。
《鉄基焼結合金部材》
本発明の焼結合金を用いれば、各種部材の高剛性化を容易に図れ、部材の機械的特性(強度等)や振動特性等の改善、ひいては部材の軽薄短小化や設計自由度の拡大が可能となる。本発明の焼結合金は具体的な用途を問わないが、例えば、自動車等のエンジン部品(例えばコンロッド)、変速機部品、シャーシ部品、サスペンション部品、各種のシャフト類やプーリー類、音響部品等の素材や最終形状に近い製品として用いられると好ましい。
原料粉末の種類(組成、粒度等)、配合組成、成形条件、焼結条件等を種々変更した多数の試料(鉄基焼結合金)を製作し、それら試料の測定、組織観察および評価を行った。これらを通じて、本発明の内容をさらに具体的に説明する。
《試料の製造》
(1)原料粉末
原料粉末として、鉄系粉末と、高剛性粉末であるTiB粉末と、助剤粉末(Zr源粉末等)と、合金元素源粉末とを用意した。なお、各粉末の成分組成は、各粉末全体を100質量%として、単に「%」で表した。また、各粉末の粒径(粒度)は、既述した方法により特定される。
鉄系粉末には、エプソンアトミックス株式会社製の低合金綱微細粉末であるFe−1.5%Mo粉末(平均粒径:12μm)またはFe−3%Cr−0.5%Mo粉末(平均粒径:11μm)を用いた。これら鉄系粉末がマトリックスを構成する主たる原料粉末(助剤粉末および合金元素源粉末以外の残部)となる。
TiB粉末には、新日本金属株式会社製のTiB−N(平均粒径:2.9μm)を用いた。また助剤粉末には次のいずれかを用いた。なお、ZrO粉末、TiO粉末およびZrN粉末は株式会社高純度化学製であり、それ以外のホウ化物粉末等は日本新金属株式会社製であった。FeB粉末(Fe−17.2%B/粒度:−63μm/品番:Fe-B H1)、MoB粉末(Mo−10.2%B/平均粒径:4.1μm/品番:MoB-O)、CrB粉末(Cr−28.4%B/平均粒径:5.7μm/品番:CrB2-O)、NbB粉末(Nb−18.5B%/平均粒径:2.1μm/品番:NbB2-O)、VB粉末(V−28.4B%/平均粒径:3.9μm/品番:VB2-O)、HfB粉末(Hf−10.4B%/平均粒径:3.9μm/品番:HfB2-O)、ZrB粉末(Zr−18.8B%/平均粒径:3.3μm/品番:ZrB2-O)、ZrC粉末(Zr−11.2C%/平均粒径:2.7μm/品番:ZrC-O)、TiC粉末(Ti−19.7C%/平均粒径:1.8μm/品番:TiC)、VC粉末(V−16.7C%/平均粒径:1.4μm/品番:VC)、MoC粉末(Mo−5.9C%/平均粒径:1.7μm/品番:Mo2C)、NbC粉末(Nb−11.4C%/平均粒径:1.1μm/品番:NbC)、ZrO粉末(純度98%/平均粒径:約1μm)、TiO粉末(純度99.9%/平均粒径:約2μm)、ZrN粉末(純度98%/平均粒径:3μm)。
合金元素源粉末には、銅源粉末である純Cu粉末(福田金属箔粉工業株式会社製CE−25/平均粒径:63μm以下)を用いた。
(2)混合粉末
上述した各原料粉末を表1〜表9に示す割合(配合量)にそれぞれ秤量した配合粉末を、乳鉢で3分間混合した後、さらにボールミルで30分間回転混合して、種々の混合粉末を得た(混合工程)。なお、配合組成は、混合粉末全体を100質量%または100体積%として示した。各原料粉末の配合体積(Vi)は、既述したように、それぞれの配合質量と比重(公表値または表示値)とに基づいて算出され、各原料粉末の配合体積(Vi)の総和(ΣVi)を混合粉末全体の体積とした。
(3)成形工程
キャビティ形状が異なる2種の金型を用意して、前述した金型潤滑温間加圧成形法により各混合粉末を加圧成形した。この際、金型はバンドヒータにより150℃(成形温度)に加熱した。この加熱した金型の内周面には、水に分散させた1%の溶液ステアリン酸リチウム(LiSt)溶液(高級脂肪酸系潤滑剤)を塗布した。成形圧力は各表に示すように392〜1176MPaの範囲で調整したが、特に断らない限り成形圧力は784MPaとした。その他、金型潤滑温間加圧成形法に関しては、特許3309970号公報等の記載を参照にした。
こうして、円柱状の計測用試験片(φ14×10mm)および平板状の引張試験片(概形55×20×3mm)となる2種の成形体を得た。
(4)焼結工程
バッチ式焼結炉(島津メクテム株式会社製PVSGgr20/20)を用いて、真空雰囲気中(1〜5×10-2Pa・A程度)にて、各成形体を加熱し焼結させた。焼結温度は、各表に示すように900〜1300℃の範囲で調整したが、特に断らない限り焼結温度は1250℃とした。また、その焼結温度を保持する均熱保持時間(焼結時間)は30分間とした。
なお、焼結後の加熱状態にある焼結体は、900℃まで炉冷(徐冷)した後、900℃からNガスを吹きつけて60℃まで急冷した(冷却工程)。この急冷時の冷却速度は、約70℃/分(1.2℃/秒)であった。
《測定・観察》
(1)密度、密度変化、寸法変化、
各試料に係る計測用試験片を用いて、焼結前後の寸法および重量を測定し、成形体の嵩密度(G.D.)と相対密度(%)、焼結体の嵩密度(S.D.)と相対密度(%)、焼結前後の寸法変化率(ΔT:厚さの変化率、ΔD:直径の変化率)を算出した。なお、寸法変化率は、焼結後の寸法から焼結前の寸法を引いた差分を、焼結前の寸法で除して求めた。こうして得られた結果を各表にまとめて示した。
(2)ヤング率、引張強さおよび(破断)伸び
各試料に係る焼結後の円柱状の計測用試験片に、縦波用および横波用の振動子を用いて超音波パルスを伝播させ、試験片内を伝播する縦波及び横波の伝播速度からヤング率を算出した(超音波パルス法)。こうして得られた結果を各表にまとめて示した。
また、オートグラフ(株式会社島津製作所)で引張試験を行い、各試験片が破断するまでの強度(引張強さ)と伸びを測定した。このときの試験速度は2.0mm/minとした。こうして得られた結果を各表にまとめて示した。
(3)組織観察
一部の試料の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。この観察は、試験片から採取した切断片を樹脂に埋め込み、その表面を鏡面研磨後、行った。金属組織の詳細については後述する。
《評価》
種々の評価項目に沿って、各表に示した試料群から代表的な試料を抽出し、それらの特性をグラフ(各図)に示して比較した。それらに基づいて、本発明の焼結合金の特徴を具体的に説明する。
(1)相対密度とヤング率
助剤粉末を配合せずに、鉄系粉末とTiB粉末のみを用いて製造した各試料の特性を表1と、図1Aおよび図1B(両者を併せて単に「図1」という。)に示した。
これらから明らかなように、焼結体の相対密度とそのヤング率は明確に相関しており、相対密度が大きくなるほど、焼結体のヤング率も大きくなることがわかった。このためTiB粒子量を単に増加させても、焼結体の相対密度が増加しない限り、いわゆる配合則(複合則)に沿った焼結合金の高剛化を図ることは困難であることが明らかとなった。そして、助剤粉末が添加されない場合、TiB粒子量が20〜25%を超えると、高圧成形をしても、鉄基焼結合金のヤング率を増加させることができず、逆にそのヤング率が低下する傾向となることもわかった。
(2)助剤の種類
鉄系粉末とTiB粉末に加えて、さらに種々の助剤粉末を添加した混合粉末を用いて製造した各試料の特性を表2〜4と、図2A〜図4Bに示した。なお、いずれの試料も、TiB粉末は焼結合金中のTiB粒子の体積割合が30体積%となるように配合し、各助剤粉末の添加量は1質量%とした。また各図に示した試料はいずれも、成形圧力:784MPa、焼結温度:1250℃で製造したものである。これらの点は特に断らない限り、以降でも同様である。
助剤粉末を添加せずに、TiB粒子:30体積%とした焼結合金(試料143)は、相対密度が約91%、ヤング率が約200GPaであったが、図2Aおよび図2B(両者を併せて単に「図2」という。)から明らかなように、ホウ化物からなる助剤粉末を添加した焼結合金は、NbB粉末を添加した場合を除いて、いずれもその相対密度およびヤング率が増加することがわかった。特に、ジルコニウムホウ化物(ZrB)粉末を添加した場合、相対密度:98%以上、ヤング率:275GPa以上にまで著しく増加することがわかった。
この傾向は、図3Aおよび図3B(両者を併せて単に「図3」という。)および図4Aおよび図4B(両者を併せて単に「図4」という。)から明らかなように、ジルコニウム炭化化物(ZrC)粉末、ジルコニウム酸化物(ZrO)粉末またはジルコニウム窒化物(ZrN粉末)を添加した場合でも同様であった。このように、焼結合金(マトリックス)中にZrが存在することにより、TiB粒子量が大きい場合でも、焼結合金の相対密度およびヤング率をそのTiB粒子量に応じて確実に向上させ得ることが明らかとなった。また、Zrの添加形態は種々あり得るが、Zr化合物を用いる場合であれば、ZrB>ZrC>ZrN>ZrOの順で焼結合金の相対密度やヤング率を向上させ易いことも明らかとなった。
(3)助剤(ZrBおよびZrC)の添加量
TiB粒子を多く含有させた焼結合金の相対密度とヤング率の向上に特に有効な助剤であるZrBとZrCの添加量を種々変更して製造した各試料の特性を表5Aおよび表5B(両者を併せて単に「表5」という。)と、図5A〜図5D(各図を併せて単に「図5」という。)に示した。これらから明らかなように、助剤(ZrBまたはZrC)が極少量添加されるだけでも、焼結体の相対密度、ヤング率、引張強さおよび伸びのいずれも、急激に向上することがわかる。但し、このような傾向は助剤の添加量が1質量%以下(伸びは0.5質量%以下)の範囲で顕著であり、助剤をそれ以上(1質量%超)添加しても、各特性は飽和状態となり得ることも明らかとなった。そして助剤を過剰(2質量%超)に添加すると逆に、焼結合金の引張強さが低下することも明らかとなった。
(4)TiB粒子の配合量
ZrB粉末の添加量を0.5質量%、1質量%または2質量%として、TiB粒子の配合量と成形圧力を種々変更して製造した各試料の特性を表6A〜表6C(各表を併せて単に「表6」という。)と、図6Aおよび図6B(各図を併せて単に「図6」という。)に示した。なお、図6にはZrB粉末の添加量を1質量%添加した場合を示した。
これらから明らかなように、助剤(ZrB)が添加される場合、TiB粒子の配合量が30体積%程度までなら、高圧成形するまでもなく、焼結体の相対密度を97%以上さらには98%とすることができ、そのヤング率もほぼ複合則に沿ったものとなることが明らかとなった。また、高圧成形(1000MPa以上)をすれば、TiB粒子の配合量が40体積%以上となっても高い相対密度を確保でき、ヤング率が320GPa以上という非常に高剛性な焼結合金を得ることもできた。但し、TiB粒子量が60体積%以上になると、金型成形による試験片の作製自体が困難であった。
(5)焼結温度の影響
ZrB粉末を添加(1質量%)した場合と添加しなかった場合とについて、焼結温度を種々変更して製造した各試料の特性を表7と、図7A〜図7D(各図を併せて単に「図7」という。)に示した。
これらから明らかなように、焼結温度を1140℃以上とすることによって、焼結体の相対密度、ヤング率および引張強さが急激に増加することが明らかとなった。そして、ZrB粉末が添加されると、いずれの特性も大幅に向上することが明らかとなった。特に引張強さは、ZrB粉末の添加により著しく高くなることが明らかとなった。
(6)金属組織
ZrB粉末を添加した場合と添加しなかった場合とについて、焼結温度が異なる各試料(焼結体)の金属組織写真を図8Aおよび図8B(両図を併せて単に「図8」という。)に示した。各写真中、濃灰部がTiB粒子であり、淡灰部がマトリックスであり、黒色部分が残留空孔である。
図8から明らかなように、焼結温度が1100℃である試料の金属組織は、ZrB粉末の添加の有無に拘わらず、TiB粒子の凝集部分には空孔(黒色部)が残留した状態となった。ところが、焼結温度が1150℃以上である試料の金属組織は、ZrB粉末の添加の有無によって残留気子の分布状態が大きく異なった。
すなわち、ZrB粉末が添加されている場合、焼結温度の上昇に伴ってTiB粒子の凝集部分の残留空孔が大幅に減少し、緻密化が促進されることがわかった。一方、ZrB粉末が添加されていない場合、焼結温度を1300℃以上としなければ、焼結温度が上昇しても多量の空孔が残留していた。
表7と図8を対比するとわかるように、焼結体の相対密度とヤング率は、大きく相関しているといえる。これらのことから、ZrB粉末を添加することにより、焼結温度が1150℃以上で緻密化が促進されて、高いヤング率が得られたと考えられる。
(7)Cu粉末の添加
合金元素源粉末としてCu粉末(2質量%)を鉄系粉末に添加した場合と添加しなかった場合とについて、TiB粒子の配合量を種々変更して製造した各試料の特性を表8と、図9A〜図9D(各図を併せて単に「図9」という。)に示した。なお、図9には、Cu粉末を添加しなかった試料と、さらにZrB粉末も添加しなかった試料の特性も併せて示した。
図9から明らかなように、Cu粉末を添加すると、焼結体の相対密度およびヤング率は殆ど変化しないが、焼結体の引張強さは大幅に向上し、その伸びは低下する傾向を示すことが確認された。さらに、TiB粒子の配合量が30体積%以上になると、Cu粉末の添加は焼結体の伸びに影響を及ぼさないことも明らかとなった。従ってTiB粒子の配合量を25体積%以上さらには30体積%以上とする場合、Cu粉末を添加することにより、高剛性化のみならず、高強度化も図れることが確認できた。
(8)鉄系粉末の組成
Crを含む鉄系粉末を用いて成形圧力を種々変更して製造した各試料の特性を表9と、図10Aおよび図10B(各図を併せて単に「図10」という。)に示した。なお、図10には、同じ鉄系粉末を用いつつ、ZrB粉末も添加しなかった試料の特性をも併せて示した。図10から明らかなように、鉄系粉末がCr系低合金鋼粉末であっても、Mo系低合金鋼粉末の場合と同様な傾向となることが確認された。
(9)Ni粉末の添加
合金元素源粉末(または助剤粉末の一種)としてNi粉末(1質量%)を鉄系粉末に添加した試料と添加しなかった試料を製造して、それらの特性を表10と、図11A〜図11C(各図を併せて単に「図10」という。)に示した。これら試料の製造に際して、鉄系粉末にはFe−1.5%Mo粉末、高剛性粉末には既述したTiB粉末、Ni粉末にはカルボニルNi粉(Inco製/平均粒径:3.9μm)を用いた。成形工程、焼結工程および試料の測定は既述した通りに行った。但し、焼結後の冷却は、1000℃まで炉冷(徐冷)した後、1000℃からNガスを吹きつけて急冷した(冷却工程)。なお、表10および図11には、ZrB粉末もNi粉末も添加しなかった試料の特性も併せて示した。
先ず、図11Aから明らかなように、成形体の相対密度は、混合粉末の組成に拘わらず、成形圧力にほぼ比例して大きくなっている。ところが、図11Bおよび図11Cから明らかなように、Ni粉末を単独添加すると、Ni粉末を添加しないときに比べて、成形圧力が低くても、焼結体の相対密度およびヤング率はかなり大きくなった。そして、Ni粉末をZrB粉末と共に添加すると、成形圧力が低いときでも、成形圧力が高いときと同程度以上に、焼結体の相対密度およびヤング率が著しく向上することがわかった。従って、ZrB粉末に加えてNi粉末を添加することにより、成形圧力が低い領域でも、十分に高い相対密度またはヤング率を有する焼結合金が得られることが明らかとなった。
(10)寸法変化
表1〜表10に示した各試料に係る厚さ方向の寸法変化率(ΔT)と径方向の寸法変化率(ΔD)から明らかなように、Zrを含む助剤粉末を添加した場合、各試料の焼結体は成形体に対して少し縮小するものの、ΔTとΔDの差は小さいことがわかった。このことから各焼結体は、相対密度およびヤング率が増加しても、成形体の形状が相似的に維持されることが確認された。

Claims (9)

  1. 鉄または鉄合金からなる鉄系粉末とTiB粒子を含む高剛性粉末とジルコニウム源粉末とを混合した混合粉末を350〜1500MPaで加圧して成形体を得る成形工程と、
    該成形体を1140〜1350℃で加熱して焼結体を得る焼結工程とを備え、
    該TiB粒子は、該混合粉末全体を100体積%としたときに10〜50体積%含まれ、
    該ジルコニウム源粉末は、該混合粉末から該高剛性粉末を除いた粉末全体を100質量%としたときに0.1〜3質量%のZrを含み、
    該焼結体からなりヤング率が230GPa以上である高剛性鉄基焼結合金が得られる高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  2. 前記焼結体は、前記鉄系粉末の粒子と前記TiB粒子を少なくとも含むホウ化物粒子との粒界の少なくとも一部で液相を生じる焼結温度以上で加熱されてなる請求項1に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  3. 前記焼結工程は、焼結温度を1180〜1300℃とする工程である請求項1または2に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  4. 前記ジルコニウム源粉末は、ジルコニウムのホウ化物、炭化物、酸化物および窒化物のいずれか一種以上からなる請求項1〜3のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  5. 前記鉄系粉末は、モリブデン(Mo)および/またはクロム(Cr)を含む鉄合金からなる請求項1〜4のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  6. 前記混合粉末は、さらに、銅源粉末を含む請求項1〜5のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  7. 前記高剛性粉末は、前記混合粉末全体を100質量%としたときに5〜35質量%含まれ、
    前記ジルコニウム源粉末は、該混合粉末全体を100質量%としたときに0.2〜4質量%含まれる請求項1〜6のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  8. 前記鉄系粉末は、該鉄系粉末全体を100質量%としたときに、0.2〜4質量%のMoと0.5〜6質量%のCrの少なくとも一方を含む鉄合金粉末である請求項5に記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
  9. 前記焼結体は、真密度(ρ)に対する嵩密度(ρ)の比である相対密度(ρ/ρ×100%)が96%以上である請求項1〜8のいずれかに記載の高剛性鉄基焼結合金の製造方法。
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