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JP6682853B2 - 無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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JP6682853B2 - 無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
昨今地球環境問題が注目されており、省エネルギーへの取り組みに対する要求は、一段と高まってきている。
自動車においては、その燃費向上が強く求められており、モータを駆動力として使用する電気自動車や、モータとガソリン(ディーゼル)エンジンを駆動力として併用するハイブリッド自動車の実用化が進められている。これらのモータコアは、固定子であるステータ、及び、回転子であるロータから構成される。このモータに関しては、自動車の走行速度を上げたとき、すなわち高速回転を行ったときにステータ及びロータ共に発熱量が大きくなってしまうが、その発熱量の少ない素材が求められている。また、自動車の発進時には高いモータトルクが必要であるため、特にステータ用素材には、高い磁束密度が必要である。更に、ロータ用素材には、高速回転した際にコアの変型や破壊が生じぬよう、ある一定の材質強度が求められる。
上記の必要特性を得るために、ステータとロータの素材を別々に用意することは可能であるが、コア素材コストを下げるためには、一つの素材でステータ及びロータを賄う必要がある。更に、素材の低コスト化の観点からは、2回以上の冷間圧延を実施せずに、1回の冷間圧延のみで必要な特性を得ることが必須となってきた。
以下の特許文献1では、Si、Alを高合金とした上で、P、Sn、Sbの複合添加により、周波数800Hz、磁束密度1.0Tにおける鉄損W10/800の値がW10/800(W/kg)≦100×板厚(mm)+15となる、良好な無方向性電磁鋼板が開示されている。
また、以下の特許文献2では、PとSの複合添加により、W10/800≦50W/kgの高周波鉄損値が得られ、基準材に対して高い磁束密度を有する無方向性電磁鋼板が開示されている。
特開2013−44010号公報 特開2013−44012号公報
しかしながら、近年では、更に鉄損の良好な無方向性電磁鋼板が希求されており、上記特許文献1に開示されている無方向性電磁鋼板では、希求されている鉄損を実現することは困難となってきた。
また、上記特許文献2に開示されている技術に則してPとSの一定量を複合させると、製造時、特に冷間圧延時に鋼板に割れが生じてしまい、通板できないことが判明してきた。また、最終板厚が薄い場合には一回のパスにおける冷間圧延率が高くなるため、こうした鋼板が割れる傾向は、最終板厚の薄い場合ほど、より大きくなることも明らかとなってきた。
更に、製品の強度に関しては、板厚が薄くなると、良好な鉄損を得るための結晶粒径は大きい側へシフトするため、強度が確保できないという問題が生じてきた。
このように、自動車を中心とした良好なモータコア用無方向性電磁鋼板に求められる昨今のニーズは、低い高周波鉄損、高い磁束密度、及び、高い強度を並立する製品を、鋼板の割れを抑制しつつ、低コストで製造することにある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、及び、より高い強度を有し、かつ、低コストで量産することが可能な、無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、Si:2.7〜3.6%、Al:0.5〜1.4%、Mn:0.1〜1.5%、C:0.0010〜0.0040%、N:0.0001〜0.0030%、S:0.0001〜0.0018%、Ti:0.0001〜0.0030%、及び、以下の式(1)を満足するPを含有し、Si+Al:3.5〜4.1%の関係を満足し、残部がFe及び不純物からなる成分を有し、板厚t(mm)が、0.15以上0.28以下であり、鉄損W10/800(W/kg)、磁束密度B50(T)、降伏応力YS(MPa)及び鋼板結晶粒径D(μm)が、下記の式(2)〜式(5)を満足する、無方向性電磁鋼板。
(2)残部Feの一部にかえて、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、0.005〜0.100質量%含有する、(1)に記載の無方向性電磁鋼板。
(3)残部Feの一部にかえて、Ni又はCuの少なくとも何れか一方を、0.02〜0.20質量%含有する、(1)又は(2)に記載の無方向性電磁鋼板。
(4)前記無方向性電磁鋼板は、モータコア用の無方向性電磁鋼板である、(1)〜(3)の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板。
(5)(1)〜(4)の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、所定の鋼材を熱間圧延後、焼鈍を施し、冷間圧延により最終板厚とし、その後、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、冷間圧延前に実施する焼鈍における焼鈍後の鋼板の冷却速度を20℃/s〜150℃/sとし、その後48時間以内に、圧延率85.0〜93.5%にて冷間圧延を実行し、仕上焼鈍における昇温速度を20〜400℃/sの範囲とし、前記鋼板は、質量%で、Si:2.7〜3.6%、Al:0.5〜1.4%、Mn:0.1〜1.5%、C:0.0010〜0.0040%、N:0.0001〜0.0030%、S:0.0001〜0.0018%、Ti:0.0001〜0.0030%、及び、以下の式(1)を満足するPを含有し、Si+Al:3.5〜4.1%の関係を満足し、残部がFe及び不純物からなる成分を有し、最終板厚t(mm)を、0.15以上0.28以下とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
(6)前記焼鈍後の鋼板の冷却速度は、100℃までの冷却速度であり、前記仕上焼鈍に際しての昇温速度は、850℃までの昇温速度である、(5)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(7)前記鋼板は、更に、残部Feの一部にかえて、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、0.005〜0.100質量%含有する、(5)又は(6)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(8)前記鋼板は、更に、残部Feの一部にかえて、Ni又はCuの少なくとも何れか一方を、0.02〜0.20質量%含有する、(5)〜(7)の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(9)製造される前記無方向性電磁鋼板は、鉄損W10/800(W/kg)、磁束密度B50(T)、降伏応力YS(MPa)及び鋼板結晶粒径D(μm)が、下記の式(2)〜式(5)を満足する、(5)〜(8)の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
(10)製造される前記無方向性電磁鋼板は、モータコアに用いられる、(5)〜(9)の何れか1つに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
Figure 0006682853
以上説明したように本発明によれば、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、及び、より高い強度を有し、かつ、低コストで量産することが可能な、無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することが可能となる。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
以下に示す本発明の実施形態では、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、より高い強度を有し、低コストで量産することが可能な無方向性電磁鋼板及びその製造方法について、詳細に説明する。より詳細には、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法は、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、及び、より高い強度を有する薄手の無方向性電磁鋼板を、低コスト化を目的として一回の冷間圧延で製造しようとする際に生じる、各種の課題を解決したものである。かかる際においては、冷延時に鋼板が割れること、鋼板の強度低下が起こること、更に鋼板の磁束密度B50が低下してしまうという複数の課題が生じていた。
上記のような、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、及び、より高い強度を有し、低コストで量産可能な無方向性電磁鋼板を製造する際の課題に対して、本発明者らは、以下のような策を講じた。
すなわち、より低い高周波鉄損を実現するためには、鋼板を高合金化し、かつ、板厚を薄くする必要ある。このとき、より高い磁束密度を維持するために、合金添加量を制御するとともに、Pを添加した。更に、1回冷延における板厚薄手化においては、冷間圧延率が高くなるため、添加するPの量を増加させる必要があることが判明した。また、板厚を薄くすると、鉄損が最適となる結晶粒径が大きい側にシフトし、その結果、所望の機械強度に到達しなくなってしまう。しかしながら、Pを添加すると機械強度値が増加し、薄手材ほど多くPを添加すれば、所望の機械強度値に到達することを知見した。以上のような知見に基づき、上記のような課題を解決することが可能となった。
以下に、本実施形態における各構成要件について、詳細に説明する。
(無方向性電磁鋼板について)
<無方向性電磁鋼板の化学成分について>
以下では、まず、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が有する化学成分について、詳細に説明する。なお、以下では、特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
[Si:2.7〜3.6%]
鋼板は、Siを含有することで、固有抵抗が増加し、かつ、鉄損が減少する。Siの含有量が2.7%未満であると、固有抵抗増加及び鉄損減少効果は不十分となる。一方、Siの含有量が3.6%を超えると、靱性が劣化して冷間圧延が困難となる。従って、Siの含有量は、2.7%以上3.6%以下とする。Siの含有量は、好ましくは、2.8%以上3.3%以下である。
[Al:0.5〜1.4%]
鋼板は、Alを含有することで、Siと同様に固有抵抗が増加し、かつ、鉄損(特に高周波鉄損)が減少する。Alの含有量が0.5%未満であると、固有抵抗増加及び鉄損減少効果が不十分となる。一方、Alの含有量が1.4%を超えると、理由は不明であるが、ヒステレシス損が増加して商用周波数鉄損が増加してしまう。従って、Al含有量は、0.5%以上1.4%以下とする。Alの含有量は、好ましくは、0.6%以上1.2%以下である。
[Si+Al:3.5〜4.1%]
SiとAlの合計含有量が3.5%未満であると、鉄損減少効果が得られないため、SiとAlの合計含有量の下限値を3.5%とした。一方、合計含有量が多過ぎると、靱性が劣化して冷間圧延時に割れが生じ、無方向性電磁鋼板を製造できなくなってしまう。特に、板厚の薄い鋼板を1回冷延にて製造する場合には、1パス当たりの圧延率が大きくなり、SiとAlの合計含有量をより抑制することが重要となる。このため、SiとAlの合計含有量の上限値を4.1%とした。SiとAlの合計含有量は、好ましくは、3.7%以上4.0%以下である。
[Mn:0.1〜1.5%]
鋼板は、Mnを含有することで、鉄損が減少する。Mnの含有量が0.1%未満であると、微細な析出物が形成されて鉄損が増加してしまう。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると、炭化物が多く形成されて鉄損が増加してしまう。従って、Mn含有量は、0.1%以上1.5%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは、0.2%以上1.2%以下である。
[C:0.0010〜0.0040%]
鋼板中のCの含有量が0.0010%未満であると、磁束密度が低下し、鋼板中のCの含有量が0.0040%を超えると、鉄損が劣化してしまう。従って、Cの含有量は、0.0010%以上0.0040%以下とする。Cの含有量は、好ましくは、0.0010%以上0.0030%以下である。
[N:0.0001〜0.0030%]
Nは、磁気時効を引き起こし、鉄損を増加させてしまう元素である。このため、Nの含有量は、0.0030%以下とする必要がある。一方、Nの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Nの含有量は、0.0001%以上0.0030%以下とする。Nの含有量は、好ましくは、0.0001%以上0.0020%以下である。
[S:0.0001〜0.0018%]
Sは、微細析出物を形成し、鉄損を増加させてしまう元素である。このため、Sの含有量は、0.0018%以下とする必要がある。一方、Sの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Sの含有量は、0.0001%以上0.0018%以下とする。Sの含有量は、好ましくは、0.0001%以上0.0015%以下である。
[Ti:0.0001〜0.0030%]
Tiは、微細析出物を形成し、鉄損を増加させてしまう元素である。このため、Tiの含有量は、0.0030%以下とする必要がある。一方、Tiの含有量を0.0001%よりも低減させようとすると、いたずらにコストアップを招くのみである。従って、Tiの含有量は、0.0001%以上0.0030%以下とする。Tiの含有量は、好ましくは、0.0001%以上0.0020%以下である。
[P:(−0.2×t+0.08)〜(0.2×t+0.08)%]
Pは、集合組織を改善する効果がある元素であるため、鋼板中に含有させることにより磁束密度B50(5000A/mにおける磁束密度)を向上させることができる。特に、無方向性電磁鋼板の板厚を薄くすると冷間圧延率が高くなり、B50が低下してしまうが、その場合には、Pを多く含有させる必要がある。また、板厚が薄い場合には、低鉄損を得るための最適結晶粒径は大きくなるため、所望の機械強度が得られなくなってしまうが、薄手材ほどPを多く含有させることで、所望の強度が得られることを知見した。以上の理由から、本実施形態では、鋼板中のPの含有量を、無方向性電磁鋼板の板厚(最終板厚)に応じて規定される範囲内の値とする。
以下に示す実施例1で具体的に説明するが、板厚を変えながら磁束密度B50の向上効果を具体的に検証したところ、無方向性電磁鋼板の板厚をt(mm)とした場合に、Pの含有量を(−0.2×t+0.08)%以上とすることで、磁束密度B50の向上効果を確実に実現できることが明らかとなった。一方、Pの含有量を増加させると靱性が低下し、冷間圧延中に割れが生じてしまう。また、板厚を薄くするほど冷間圧延の負荷は増加することから、薄手にするほどPの含有量の上限値は減らさなければならない。そのため、Pを多く含有させることによる機械強度の向上と、Pを多く含有させることによる靭性の低下という、トレードオフの関係にある2つの現象の間のバランスを満足する上限値について、板厚を変えながら実際に検証したところ、0.2×t+0.08であることが明らかとなった。従って、Pの含有量は、以下の式(1)で表わされるように、(−0.2×t+0.08)%以上(0.2×t+0.08)%以下とする。Pの含有量は、好ましくは、(−0.2×t+0.09)%以上(0.2×t+0.07)%以下である。
Figure 0006682853
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学成分において、上記のような元素の残部は、Feと不純物である。なお、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学成分では、残部のFeの一部に替えて、以下のような任意添加元素が含有されていてもよい。
[Sn,Sb:0.005〜0.100%]
Sn及びSbは、表面に偏析し焼鈍中の酸化を抑制することで、低い鉄損を確保する働きがある元素である。かかる効果を得るためには、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、0.005%以上含有させることが好ましい。また、Sn及びSbの合計含有量が0.10%を超えると、かかる効果が飽和する。従って、Sn又はSbの少なくとも何れか一方の含有量(合計含有量)は、0.005%以上0.10%以下とすることが好ましい。Sn又はSbの少なくとも何れか一方の含有量は、更に好ましくは、0.010%以上0.080%以下である。
[Ni,Cu:0.02〜0.20%]
Ni及びCuは、集合組織を変化させ、磁束密度を向上させる効果がある元素である。かかる効果を得るためには、Ni又はCuの少なくとも何れか一方を、0.02%以上含有させることが好ましい。また、Ni及びCuの合計含有量が0.20%を超えると、かかる効果が飽和する。従って、Ni又はCuの少なくとも何れか一方の含有量(合計含有量)は、0.02%以上0.20%以下とすることが好ましい。Ni又はCuの少なくとも何れか一方の含有量は、更に好ましくは、0.03%以上0.12%以下である。
上記の元素の他に、Cr、Moが0.0001〜0.0500%の範囲で含まれ、Pb、Bi、V、As、Bなどの元素が0.0001〜0.0050%の範囲で含まれていても、本発明を損なうものではない。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学成分について、詳細に説明した。
なお、無方向性電磁鋼板の化学成分を、事後的に測定する場合には、公知の各種測定法を利用することが可能であり、例えば、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)法等を適宜利用すればよい。
<無方向性電磁鋼板の板厚について>
製品板厚t(mm)については、高周波鉄損を低減するために0.28mm以下とする必要がある。一方、製品板厚が0.15mm未満では、板厚が薄いために焼鈍ラインの通板が困難となってしまう。従って、無方向性電磁鋼板の板厚は、0.15mm以上0.28mm以下とする。無方向性電磁鋼板の板厚は、好ましくは、0.20mm以上0.25mm以下である。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、詳細に説明した。
(無方向性電磁鋼板の製造方法について)
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、まず、上記の組成のスラブを加熱(スラブ加熱)し、加熱されたスラブについて熱間圧延を行って、鋼帯(熱延板鋼帯)を得る。ここで、スラブ中のPの含有量は、製造する無方向性電磁鋼板の最終板厚t(mm)を考慮して、予め上記式(1)の範囲内となるように調整しておく。
熱間圧延に供する際のスラブ加熱温度は、特に規定するものではないが、例えば、1000℃以上1250℃以下とすることが好ましい。熱間圧延後の板厚についても、特に規定するものではないが、例えば、1.6〜2.4mm程度が好ましい。
上記の熱間圧延工程の後、更に鋼帯の焼鈍を行い、その後、一回の冷間圧延により、鋼帯を所定の最終板厚にする。続いて、得られた鋼帯の仕上焼鈍を行う。
上記工程のうち、熱延板焼鈍における板温及び焼鈍時間は、特に規定するものではないが、例えば、板温は850〜1100℃程度とすることが好ましく、焼鈍時間は10〜180秒程度とすることが好ましい。この理由は、焼鈍により熱延板の組織を再結晶及び粒成長させることで、良好な磁束密度B50を得るためである。板温が高過ぎる場合、又は、焼鈍時間が長過ぎる場合には、磁束密度B50の改善効果が飽和するため、好ましくない。
上記の熱延板焼鈍における900℃から100℃までの冷却速度は、20〜150℃/sとする必要がある。この理由は、冷却速度を20℃/s以上とすることで、冷却後に固溶Cが鋼中に存在し、磁束密度B50を向上させるためである。一方、冷却速度が150℃/sを超えると、急冷により鋼板の変型が大きくなり、冷間圧延し難くなってしまう。従って、熱延板焼鈍における900℃から100℃までの冷却速度は、20℃/s以上150℃/s以下とする。熱延板焼鈍における900℃から100℃までの冷却速度は、好ましくは、30℃/s以上100℃/s以下である。
熱延板焼鈍終了後から冷間圧延開始までの時間については、48時間以内とする必要がある。この理由は、熱延板焼鈍にて固溶Cを鋼中にある一定量存在させたまま冷間圧延を実施すると、磁束密度B50が向上するためである。なお、熱延板焼鈍終了後から冷間圧延開始までの時間の下限値は、特に規定するものではなく、熱延板焼鈍終了後、直ちに冷間圧延を実施してもよい。熱延板焼鈍終了後から冷間圧延開始までの時間は、好ましくは、36時間以内である。
冷間圧延における圧延率は、85.0%以上93.5%以下の範囲とする必要がある。この理由は、圧延率が85.0%未満であると、P添加の効果が得られ難くなり、圧延率が93.5%を超えると、磁束密度B50が著しく劣化するためである。冷間圧延における圧延率は、好ましくは、86.0%以上92.5%以下である。
上記の冷間圧延後に、仕上焼鈍を実施する。かかる仕上焼鈍後の鋼板の結晶粒径D(μm)は、板厚をt(mm)とすると、(−100×t+65)から(−100×t+105)の範囲とする必要がある。この理由は、板厚に応じて、鉄損W10/800を最小とする結晶粒径Dの範囲が変化するからである。なお、上記のような結晶粒径Dの範囲は、板厚を変えながら鉄損W/800の変化を具体的に検証することで得られたものである。上記の結晶粒径Dの範囲は、好ましくは、(−100×t+80)μm以上(−100×t+100)μm以下である。
仕上焼鈍における鋼板の温度及び焼鈍時間の範囲は、結晶粒径Dが上記範囲内であれば特に規定するものではないが、板温を850〜1100℃とし、焼鈍時間を10〜240秒とすることが一般的である。板温が高過ぎると、焼鈍炉の温度を更に高くする必要があるため、設備にとって好ましくなく、板温が低過ぎると、焼鈍時間が長くなって生産性を阻害するからであり、かかる板温に応じて焼鈍時間は決定される。
ここで、仕上焼鈍加熱域における450℃から850℃までの鋼板昇温速度は、20℃/s以上400℃/s以下とする必要がある。この理由は、鋼板加熱速度を20℃/s以上とすることで、磁束密度B50が良好となり、鋼板加熱速度を400℃/sを超えて上げても、磁束密度の向上効果が飽和するためである。仕上焼鈍加熱域における450℃から850℃までの鋼板昇温速度は、好ましくは、30℃/s以上400℃/s以下である。
上記焼鈍板に対して絶縁コーティングを施すことで、無方向性電磁鋼板製品となる。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明した。
(無方向性電磁鋼板の諸特性について)
以上説明したような製造方法により、最終板厚を変えながら無方向性電磁鋼板を製造すると、製造された無方向性電磁鋼板は、以下のような諸特性を示すことが明らかとなった。
例えば、製造された無方向性電磁鋼板の板厚をt(mm)とすると、鉄損W10/800は、以下の式(2)を満足し、かつ、磁束密度B50は、以下の式(3)を満足することが明らかとなった。これらの鉄損W10/800及び磁束密度B50の値は、非常に良好なものである。
また、機械強度を示す降伏応力YSについては、以下の式(4)を満たすものとなり、無方向性電磁鋼板の機械強度は、良好となる。通常は、製品板厚が薄くなると鉄損が最適となる結晶粒径Dは大きくなるため、降伏応力YSは低くなってしまう。しかしながら、本実施形態では、板厚が薄い場合には、磁束密度B50を確保するためにPを多く含有させるため、所望の機械強度値を達成できることが特徴である。なお、引張試験時に降伏点が明確に確認できない場合は、0.2%耐力で代用しても差し支えない。
更に、製造された無方向性電磁鋼板の結晶粒径Dは、先だって説明したように、以下の式(5)を満足するようになる。
Figure 0006682853
なお、製造された無方向性電磁鋼板の鉄損W10/800及び磁束密度B50は、JIS C2550に規定されたエプスタイン法や、JIS C2556に規定された単板磁気特性測定法(Single Sheet Tester:SST)に則して、測定することが可能である。また、製造された無方向性電磁鋼板の降伏応力YSは、JIS Z2201に規定されたJIS試験片を準備し、公知の引張試験機を用いることで測定可能である。更に、製造された無方向性電磁鋼板の結晶粒径Dについても、公知の各種測定法により測定することが可能であるが、例えば、得られた無方向性電磁鋼板を100倍程度の倍率により3視野程度を顕微鏡観察し、得られた結晶粒径の測定結果を視野数で平均することで特定することが可能である。
以上説明したように、本実施形態は、より低い高周波鉄損、より高い磁束密度、及び、より高い強度を共に実現しうる、低コストで量産可能な無方向性電磁鋼板、及び、無方向性電磁鋼板の製造方法を提供するものである。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板の製造方法は、電気自動車又はハイブリッド自動車の高効率化、低コスト化はもとより、エアコンプレッサ、冷蔵庫等のモータの発展に大きく寄与するものであり、社会的な効果は甚大である。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。以下に示すこれらの実験における条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
真空溶解炉を用い、質量%で、C:0.0023%、Mn:0.23%、S:0.0014%、Ti:0.0011%、N:0.0018%に加えて、Si、Al、Sn、Sb、Ni、Cu、Pを種々変更して、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼塊を準備した。
続いて、かかる鋼塊を1150℃で1時間加熱し、炉から出したのちに、合計6パスの熱間圧延を施し、板厚2.0mmtの熱延板とした。上記熱延板について、1000℃×60秒にて熱延板焼鈍を行った。このとき、900〜100℃までの冷却速度は、35℃/sであった。熱延板焼鈍後10時間以内に、かかる鋼板に対して1回の冷間圧延を施し、900℃〜1050℃×20秒の仕上焼鈍を行なった。この仕上焼鈍における450〜850℃までの鋼板の昇温速度は、35℃/sであった。更に、コーティング塗布・焼き付けを実施し、絶縁被膜を形成した。
得られた無方向性電磁鋼板の成分組成、板厚、圧延率、結晶粒径は、以下の表1に記載の通りである。なお、得られた無方向性電磁鋼板の結晶粒径は、上記の方法により光学顕微鏡で観察することで測定した。
Figure 0006682853
鋼板の評価としては、途中工程の冷間圧延における割れの有無を評価するとともに、絶縁被膜形成後に磁気測定及び機械試験を行うことで評価した。
冷間圧延における割れについては、鋼板端面に5mm以上の割れが入ったか否かで評価した。磁気測定については、得られた鋼板を55mm角に剪断し、圧延及び圧延直角方向の鉄損及び磁束密度をSST法(Single Sheet Tester法)にて測定し、その平均値を算出した。このようにして各組成においてそれぞれ6枚の平均を取り、その組成における鉄損及び磁束密度の値とした。
鉄損は、W10/800(1.0Tの磁束密度、800Hzにおける鉄損)、磁束密度は、B50(5000A/mの磁場における磁束密度)を測定した。機械試験は、JIS5号引張試験片を作成して引張試験を行い評価し、降伏応力YSは、降伏点が出ない場合には0.2%耐力で評価した。得られた結果を、以下の表2に示す。
なお、以下の表2において、板厚t=0.15mmでは、鉄損W10/800は、W10/800≦25W/kgで良好と判断でき、磁束密度B50は、B50≧1.648Tで良好と判断でき、降伏応力YSは、YS≧400MPaで良好と判断できる。
また、以下の表2において、板厚t=0.20mmでは、鉄損W10/800は、W10/800≦30W/kgで良好と判断でき、磁束密度B50は、B50≧1.654Tで良好と判断でき、降伏応力YSは、YS≧400MPaで良好と判断できる。
更に、以下の表2において、板厚t=0.23mmでは、鉄損W10/800は、W10/800≦33W/kgで良好と判断でき、磁束密度B50は、B50≧1.658Tで良好と判断でき、降伏応力YSは、YS≧400MPaで良好と判断できる。
また、以下の表2において、板厚t=0.25mmでは、鉄損W10/800は、W10/800≦35W/kgで良好と判断でき、磁束密度B50は、B50≧1.660Tで良好と判断でき、降伏応力YSは、YS≧400MPaで良好と判断できる。
Figure 0006682853
上記表2のうち、試料10、18、23、28、29は、冷間圧延中に割れが入っており、試料製造及び測定は可能であったが、大量生産には不適な結果であることが分かった。また、試料1〜35のうち、3.5≦Si+Al≦4.1、−0.2×t(mm)+0.08≦P(%)≦0.12、−100×t(mm)+65≦D(μm)≦−100×t(mm)+105の範囲である試料2〜9、12、13、16、17、21、24〜27、31、33は、W10/800(W/kg)≦100×t(mm)+10、B50(T)≧0.11×(t)0.5(mm)+1.605、YS(MPa)≧400を満たし、良好であった。
(実施例2)
真空溶解炉を用い、質量%で、C:0.0015%、Mn:0.28%、S:0.0011%、Ti:0.0016%、Si:3.1%、Al:0.5%、P:0.07%、N:0.0015%、Sn:0.015%、Ni:0.031%、Cu:0.021%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼塊を準備した。
続いて、かかる鋼塊を1150℃で1時間加熱し、炉から出したのちに、合計6パスの熱間圧延を施し、板厚2.0mmtの熱延板とした。上記熱延板について、1000℃×60秒にて熱延板焼鈍を行った。このとき、900〜100℃までの冷却速度を種々変更して、熱延板焼鈍を行った。また、熱延板焼鈍後から冷間圧延までの待機時間についても、種々変更して行った。
得られた鋼板に対して、1回の冷間圧延を施し、最終板厚t=0.20mmの冷延板とし、その後、1000℃×20秒の仕上焼鈍を行なった。この仕上焼鈍における450〜850℃までの鋼板の昇温速度についても、種々変更して行った。更に、コーティング塗布・焼き付けを実施し、絶縁被膜を形成した。製造条件を変更した熱延板焼鈍の冷却速度、熱延板焼鈍から冷間圧延までの待機時間、仕上げ焼鈍の昇温速度は、以下の表3に示す通りである。
鋼板の評価としては、絶縁被膜形成後に得られた鋼板を55mm角に剪断し、圧延及び圧延直角方向の磁束密度を、SST法(Single Sheet Tester法)にて測定し、その平均値を算出した。このようにして、各組成においてそれぞれ6枚の平均を取り、その組成における磁束密度の値とした。磁束密度は、B50(5000A/mの磁場における磁束密度)を測定した。得られた結果を、以下の表3に併せて示した。
Figure 0006682853
上記表3のうち、試料36、43、44は、磁束密度B50が1.654Tよりも低く、良好な磁気特性を得られていなかった。熱延板焼鈍の冷却速度、熱延板焼鈍から冷間圧延までの待機時間、仕上げ焼鈍の昇温速度のそれぞれが本発明の規定する範囲にあった、試料37〜42,45〜50については、良好な磁気特性が得られており、その中でも、熱延板焼鈍冷却速度は高いほど、熱延板焼鈍から冷却までの待機時間は短いほど、仕上げ焼鈍の昇温速度は高いほど、良好な磁気特性となっていた。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    Si:2.7〜3.6%
    Al:0.5〜1.4
    n:0.1〜1.5%
    C:0.0010〜0.0040%
    N:0.0001〜0.0030%
    S:0.0001〜0.0018%
    Ti:0.0001〜0.0030%、及び、
    以下の式(1)を満足するP
    を含有し、Si+Al:3.5〜4.1%の関係を満足し、残部がFe及び不純物からなる成分を有し、
    板厚t(mm)が、0.15以上0.28以下であり、
    鉄損W10/800(W/kg)、磁束密度B50(T)、降伏応力YS(MPa)及び鋼板結晶粒径D(μm)が、下記の式(2)〜式(5)を満足する、無方向性電磁鋼板。
    Figure 0006682853
  2. 残部Feの一部にかえて、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、0.005〜0.100質量%含有する、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 残部Feの一部にかえて、Ni又はCuの少なくとも何れか一方を、0.02〜0.20質量%含有する、請求項1又は2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 前記無方向性電磁鋼板は、モータコア用の無方向性電磁鋼板である、請求項1〜3の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    所定の鋼材を熱間圧延後、焼鈍を施し、冷間圧延により最終板厚とし、その後、仕上焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法において、
    冷間圧延前に実施する焼鈍における焼鈍後の鋼板の冷却速度を20℃/s〜150℃/sとし、その後48時間以内に、圧延率85.0〜93.5%にて冷間圧延を実行し、
    仕上焼鈍における昇温速度を20〜400℃/sの範囲とし、
    前記鋼板は、質量%で、
    Si:2.7〜3.6%
    Al:0.5〜1.4
    n:0.1〜1.5%
    C:0.0010〜0.0040%
    N:0.0001〜0.0030%
    S:0.0001〜0.0018%
    Ti:0.0001〜0.0030%、及び、
    以下の式(1)を満足するP
    を含有し、Si+Al:3.5〜4.1%の関係を満足し、残部がFe及び不純物からなる成分を有し、
    最終板厚t(mm)を、0.15以上0.28以下とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
    Figure 0006682853
  6. 前記焼鈍後の鋼板の冷却速度は、100℃までの冷却速度であり、
    前記仕上焼鈍に際しての昇温速度は、850℃までの昇温速度である、請求項5に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記鋼板は、更に、残部Feの一部にかえて、Sn又はSbの少なくとも何れか一方を、0.005〜0.100質量%含有する、請求項5又は6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記鋼板は、更に、残部Feの一部にかえて、Ni又はCuの少なくとも何れか一方を、0.02〜0.20質量%含有する、請求項5〜7の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  9. 製造される前記無方向性電磁鋼板は、鉄損W10/800(W/kg)、磁束密度B50(T)、降伏応力YS(MPa)及び鋼板結晶粒径D(μm)が、下記の式(2)〜式(5)を満足する、請求項5〜8の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
    Figure 0006682853
  10. 製造される前記無方向性電磁鋼板は、モータコアに用いられる、請求項5〜9の何れか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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