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JP6688976B2 - 波長変換部材 - Google Patents
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Description

本発明は、フォトルミネッセンスを利用する波長変換部材に関し、特にハイパワーの励起光が照射された場合でも耐熱性及び放熱性に優れ、かつ低温で焼成可能な波長変換部材に関する。
従来、フォトルミネッセンスを利用する波長変換体として、励起光の照射により発光する複数個の蛍光体粒子と、これら複数個の蛍光体粒子を保持するバインダと、から構成されるものが知られている。具体的には、シリコーン樹脂に蛍光体を充填させたものが知られている。波長変換体は、例えば、金属基板上に形成された層状体や、板状体の形態をとる。なお、本明細書では、基板と波長変換体とを含む部材を波長変換部材という。
近年、波長変換部材には、光出力の向上のために励起光のハイパワー化が求められている。このため、波長変換部材には、励起光としてレーザー光源等のハイパワーな励起光が用いられるようになってきている。しかし、シリコーン樹脂等の有機バインダは耐熱性及び放熱性に乏しい。このため、有機バインダを有する波長変換部材にレーザー光源等のハイパワーな励起光が照射されると、バインダを構成する有機物質に変色や焦げが発生して光の透過率が低下することにより、波長変換部材の光出力効率が低下しやすい。また、有機バインダを有する波長変換部材にレーザー光源等のハイパワーな励起光が照射されると、有機物質の熱伝導率が通常1W/m・K未満と低いため発熱する。これにより、有機バインダを有する波長変換部材は、蛍光体の温度消光が発生しやすい。
特許第5090549号公報 特開2015−38960号公報
これに対し、特許文献1には、耐熱性、放熱性及び可視光透過率が高いセラミックス材料と、シリコーン樹脂等の有機バインダと、蛍光体とを用い焼結させて得られた波長変換体が開示されている。この波長変換体を基板上に形成すると波長変換部材が得られる。上記特許文献1の波長変換体は、例えば1200℃程度の高温で焼結することにより製造される。しかし、特許文献1の波長変換体は、高温で焼結することから波長変換体及びこれを用いた波長変換部材の生産性が低いという課題があった。また、演色性に優れ白色LED用の蛍光体として広く用いられている蛍光体であるCASN((Sr,Ca)AlSiN:Eu)蛍光体は、高温環境下で酸化反応が生じ輝度維持率が顕著に低下しやすい。このため、高温で焼結する特許文献1の波長変換体では高温環境下で酸化反応が生じるCASN蛍光体を使用できないことから、得られる波長変換部材の演色性を向上させることが困難であるという課題があった。
また、特許文献2には、蛍光体と、シリカ系材料やこの前駆体からなるバインダとを用い、500℃以下に加熱して硬化したバインダで蛍光体同士を固着することにより、波長変換体、及びこれを用いた波長変換部材や発光装置を製造する方法が開示されている。しかし、シリカは他の金属酸化物に比較して熱伝導率が通常1W/m・K未満と低いため、波長変換体、及びこれを用いた波長変換部材や発光装置の放熱性が悪いという課題があった。
なお、これらの課題を解決するために、複数個の蛍光体粒子と、平均粒径D50が1nm以上100nm未満のナノ粒子が複数個固着したナノ粒子固着体からなり隣接する前記蛍光体粒子同士を固着させるバインダ層と、を備える波長変換体が提案されている。しかし、この波長変換体を基板上に形成して得られる波長変換部材は、基板と波長変換体の蛍光体粒子とを固定するバインダ層の密着強度が不十分であるため、基板と波長変換体とが剥離するおそれがあるという課題があった。このように、従来、ハイパワーの励起光が照射された場合でも耐熱性及び放熱性に優れ、基板と波長変換体との密着性が高く、かつ低温で焼成可能な波長変換部材は、知られていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明は、ハイパワーの励起光が照射された場合でも耐熱性及び放熱性に優れ、基板と波長変換体との密着性が高く、かつ低温で焼成可能な波長変換部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る波長変換部材は、基板と、この基板の表面に設けられ、入射光を色変換する波長変換体と、を備える。前記波長変換体は、入射光を色変換する無機蛍光体粒子と、融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含み、前記無機蛍光体粒子同士を固着させるバインダ層と、を有する。前記バインダ層は、前記融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子を1種以上含む複数個のナノ粒子が固着してなるナノ粒子固着体である。前記基板と前記波長変換体とは、前記波長変換体のバインダ層により固着される。また、本発明の第2の態様に係る波長変換部材は、基板と、この基板の表面に設けられ、入射光を色変換する波長変換体と、を備える。前記波長変換体は、入射光を色変換する無機蛍光体粒子と、融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含み、前記無機蛍光体粒子同士を固着させるバインダ層と、を有する。前記バインダ層は、前記融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含むバルク体である。前記基板と前記波長変換体とは、前記波長変換体のバインダ層により固着される。
第1の実施形態に係る波長変換部材の模式的な断面図である。 図1の部分Aを拡大して示す模式的な断面図である。 図1の部分Bを拡大して示す模式的な断面図である。 第2の実施形態に係る波長変換部材の模式的な断面図である。 図4の部分Cを拡大して示す模式的な断面図である。 図4の部分Dを拡大して示す模式的な断面図である。 第3の実施形態及び実施例2に係る波長変換部材の波長変換体の破断面に表れたバインダ層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例である。 実施例3に係る波長変換部材の波長変換体の破断面に表れたバインダ層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例である。 実施例2に係る波長変換部材の波長変換体のバインダ層のXRD評価結果の一例である。 実施例3に係る波長変換部材の波長変換体のバインダ層のXRD評価結果の一例である。
[波長変換部材]
以下、実施形態に係る波長変換部材について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る波長変換部材1は、基板50と波長変換体10とを備え、波長変換体10は、無機蛍光体粒子20とバインダ層30とを有する。また、波長変換部材1において、基板50と波長変換体10とは、波長変換体10のバインダ層30により固着される。
以下に示す複数個の実施形態は、バインダ層30の構成が異なる実施形態になっている。バインダ層30の形態としては、ナノ粒子固着体及びバルク体等の形態がある。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る波長変換部材の模式的な断面図である。第1の実施形態に係る波長変換部材1は、バインダ層30がナノ粒子固着体である実施形態である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る波長変換部材1は、基板50と、この基板50の表面に設けられ、入射光を色変換する波長変換体10と、を備える。また、波長変換体10は、入射光を色変換する無機蛍光体粒子20と、無機蛍光体粒子20同士を固着させるバインダ層30と、を有する。基板50と波長変換体10とは、波長変換体10のバインダ層30により固着される。
<基板>
基板50は、波長変換体10を支持する基板である。基板50は、波長変換体10を構成するバインダ層30と固着することにより、波長変換体10と密着している。なお、基板50の表面に波長変換体10が設けられるとは、基板50の表面に波長変換体10が直接的又は間接的に設けられることを意味する。第1の実施形態では、図1及び3に示すように、基板50の表面に波長変換体10が直接的に設けられる。
しかし、他の実施形態では、基板50と波長変換体10との間に、基板50との密着性に優れるとともに波長変換体10のバインダ層30と固着する部材を備えたものとすることができる。このような部材としては、例えば、金属薄膜、酸化物薄膜、及びこれらの組み合わせからなる部材が用いられる。基板50と波長変換体10との間にこのような部材を有する他の実施形態では、基板50の表面に波長変換体10が間接的に設けられることになる。
基板50としては、特に限定されないが、例えば、ガラス基板等の透明基板や、銅基板、ステンレス基板等の金属基板、AlN基板等のセラミック基板等が用いられる。このうち、基板50が金属基板であると、セラミックに比べて一般的に熱伝導率が高い金属からなることから、セラミックからなる波長変換体10で発生する熱を効率よく放熱することができるため好ましい。また、基板50がセラミック基板であると、基板50と波長変換体10との間の熱膨張係数の差が少なくなり、基板50と波長変換体10とが剥離しにくくなるため好ましい。セラミック基板のうち、AlN基板は、耐熱性が高いためより好ましい。なお、波長変換体10は、後述のように、無機蛍光体粒子20及びバインダ層30が共にセラミックからなるため、全体がセラミックで構成されている。
ところで、金属は、通常、セラミックに比べて熱膨張係数が大きい。このため、基板50が金属基板である場合に波長変換部材1に大きい温度変化が生じると、金属基板50とセラミックからなる波長変換体10との間で熱膨張係数に差が生じ、両者を剥離させようとする力が働く。これに対し、本実施形態の波長変換体10では、波長変換体10のバインダ層30が特定のナノ粒子31を1種以上含むため、バインダ層30と基板50とが強く固着している。このため、本実施形態では、金属基板50と波長変換体10とが剥離しにくいことから、基板50として金属基板を用いることができる。
<波長変換体>
波長変換体10は、基板50の表面に設けられ、入射光を色変換する部材である。波長変換体10は、入射光を色変換する無機蛍光体粒子20と、無機蛍光体粒子20同士を固着させるバインダ層30と、を有する。波長変換体10中の無機蛍光体粒子20は、入射光により励起されて、入射光に対して色変換した光を放射する。波長変換体10は、この無機蛍光体粒子20の作用により、入射光を色変換する作用を発現する。
なお、図1に示す波長変換体10では、個々の無機蛍光体粒子20の表面がバインダ層30で被覆されることにより、無機蛍光体粒子20とバインダ層30とからなるナノ粒子被覆蛍光体粒子40が形成されている。しかし、本実施形態において、バインダ層30は、少なくとも隣接する無機蛍光体粒子20同士、及び無機蛍光体粒子20と基板50とを固着させるように形成されていればよい。このため、図1に示す波長変換体10以外の実施形態として、個々の無機蛍光体粒子20の表面の一部がバインダ層30で被覆されずに露出し、ナノ粒子被覆蛍光体粒子40が形成されない波長変換体とすることもできる。
[無機蛍光体粒子]
無機蛍光体粒子20は、入射光を色変換する無機粒子である。入射光としては、特に限定されないが、例えば、紫外線、紫色光、青色光等を用いることができる。無機蛍光体粒子20は、入射光により励起されて、入射光に対して色変換した光を放射する。
無機蛍光体粒子20は、フォトルミネッセンスが可能なものであればよく、その種類は特に限定されない。無機蛍光体粒子20としては、例えば、YAG、すなわちYAl12からなるガーネット構造の結晶の粒子や、(Sr,Ca)AlSiN:Euからなる蛍光体粒子が用いられる。
無機蛍光体粒子20は、大気中1200℃以上での蛍光体粒子の焼成後の輝度(L)を大気中1200℃以上での蛍光体粒子の焼成前の輝度(L)で除して得られる輝度維持率(L/L)が80%以下の蛍光体粒子を含むことが好ましい。無機蛍光体粒子20が、輝度維持率(L/L)が80%以下の蛍光体粒子を含むと、高い変換効率をもちながら演色性が高い波長変換体10を得ることができるため好ましい。
無機蛍光体粒子20の粒子径は、バインダ層30で固着可能な大きさである限り特に限定されない。
無機蛍光体粒子20は、同じ組成の蛍光体からなるものであってもよいし、2種以上の組成の蛍光体の粒子の混合体であってもよい。
[バインダ層]
バインダ層30は、融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含むことにより、無機蛍光体粒子20同士を固着させる部材である。バインダ層30は、融点が800℃以下の金属酸化物のみからなるものであってもよいが、融点が800℃以下の金属酸化物に加え融点が800℃以下の金属酸化物以外の物質を含んでいてもよい。
第1の実施形態に係る波長変換部材1では、バインダ層30が、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子のみからなるナノ粒子固着体になっている。なお、後述の第2の実施形態に係る波長変換部材1Aでは、バインダ層30が、融点が800℃以下の金属酸化物に加え融点が800℃以下の金属酸化物以外の物質を含むナノ粒子からなるナノ粒子固着体になっている。
ここで、ナノ粒子固着体とは、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子を1種以上含む複数個のナノ粒子が固着してなり、ナノ粒子同士が分子間力で固着したものを意味する。ナノ粒子固着体は、通常、隣接するナノ粒子間に粒界が存在するが、融点が800℃以下の金属酸化物を2種以上用いた場合、ナノ粒子間で共晶材料を生成して粒界が消失する場合がある。
融点が800℃以下の金属酸化物について説明する。融点が800℃以下の金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化鉛、酸化テルル、酸化ホウ素及び酸化クロムからなる群より選択される1種以上の金属酸化物が用いられる。
酸化モリブデンとしては、例えば、MoO(融点:795℃)が用いられる。酸化バナジウムとしては、例えば、V(融点:690℃)が用いられる。酸化鉛としては、例えば、PbO(融点:290℃)、Pb(融点:500℃)等が用いられる。酸化テルルとしては、例えば、TeO(融点:733℃)が用いられる。酸化ホウ素としては、例えば、B(融点:430℃)が用いられる。酸化クロムとしては、例えば、CrO(融点:196℃)が用いられる。
第1の実施形態に係る波長変換部材1では、バインダ層30が、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子のみからなるナノ粒子固着体になっている。このバインダ層30について図2及び3を参照して説明する。図2は、図1の部分Aを拡大して示す模式的な断面図である。図3は、図1の部分Bを拡大して示す模式的な断面図である。図2及び3に示すように、バインダ層30は、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むナノ粒子固着体からなる。
なお、バインダ層30であるナノ粒子固着体は、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むものであればよく、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31以外のナノ粒子を含んでいてもよい。後述の第2の実施形態に係る波長変換部材1Aは、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31以外のナノ粒子32を含む実施形態である。
本実施形態では、バインダ層30が、融点800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むナノ粒子固着体からなるため、バインダ層30内、バインダ層30と無機蛍光体粒子20との間、及びバインダ層30と基板50との間、が強く固着される。融点800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むナノ粒子固着体からなるバインダ層30が、このように強い固着力を有する理由は、以下のとおりであると推測される。
ナノ粒子固着体からなるバインダ層30は、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31同士が分子間力で固着することにより形状を保っている。融点800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31は、融点が800℃を超える金属酸化物のナノ粒子31に比較して変形しやすい。このため、バインダ層30は、融点800℃を超える金属酸化物のナノ粒子を用いたナノ粒子固着体に比較して、ナノ粒子31同士の距離、隣接する無機蛍光体粒子20同士、及び無機蛍光体粒子20と基板50との距離が通常近くなる。これにより、波長変換部材1では、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間、で強い分子間力が働き、波長変換体10の機械的強度、及び波長変換体10と基板50との密着性が向上すると推測される。
なお、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31は、例えば400〜800℃程度の比較的低温の熱処理を行うと、熱処理をしない場合に比較して、軟化してより変形しやすくなる。このため、バインダ層30は、製造途中で400〜800℃程度の比較的低温の熱処理を行うと、ナノ粒子31同士の距離、隣接する無機蛍光体粒子20同士、及び無機蛍光体粒子20と基板50との距離をより近くすることができる。これにより、波長変換部材1では、上記比較的低温の熱処理を行うと、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間、でより強い分子間力が働くようになる。この結果、波長変換部材1に上記比較的低温の熱処理を行うと、波長変換体10の機械的強度、及び波長変換体10と基板50との密着性がより向上すると推測される。
例えば、図2に示すように、隣接する無機蛍光体粒子20同士は、バインダ層30で強く固着される。また、図3に示すように、無機蛍光体粒子20と基板50とは、バインダ層30で強く固着される。
なお、図2及び3において、符号31は融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子を示す。このため、図2及び3では、化学的組成が異なる酸化物であっても、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子である限り、同一符号31で示す。例えば、図2及び3では、ナノ粒子31が、融点800℃以下のA金属酸化物のナノ粒子と、融点800℃以下のB金属酸化物との混合物である場合に、A金属酸化物及びB金属酸化物のナノ粒子を一括してナノ粒子31として示す。
融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31の大きさは、平均粒径D50が、通常1nm以上100nm未満(10オングストローム以上1000オングストローム未満)好ましくは1nm以上95nm未満である。融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31の大きさは、平均粒径D50が、より好ましくは10nm以上50nm未満、さらに好ましくは15nm以上25nm未満である。ナノ粒子の平均粒径D50が上記範囲内にあると、ナノ粒子同士が分子間力で固着して、強固なナノ粒子固着体からなるバインダ層30が形成される。このため、ナノ粒子の平均粒径D50が上記範囲内にあると、バインダ層30内、バインダ層30と無機蛍光体粒子20との間、及びバインダ層30と基板50との間、が強く固着されやすい。ナノ粒子31の平均粒径D50は、例えば、バインダ層30を、TEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)、FE−SEM等を用いて測定することにより算出される。
バインダ層30は、有機物質をなるべく含まないことが好ましい。バインダ層30に有機物質が含まれると、レーザー光源等のハイパワーな励起光が照射されたときに、バインダ層30に含まれる有機物質に変色や焦げが発生して光の透過率が低下するおそれがある。
図1において、バインダ層30は、無機蛍光体粒子20の表面の全面を被覆している。しかし、本実施形態において、バインダ層30は、無機蛍光体粒子20の表面の全面を被覆する必要はなく、無機蛍光体粒子20の表面のうち、隣接する無機蛍光体粒子20間に介在する部分のみの無機蛍光体粒子20の表面を被覆していればよい。すなわち、バインダ層30は、無機蛍光体粒子20の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
なお、無機蛍光体粒子20の表面の全面がバインダ層30で被覆された場合は、無機蛍光体粒子20の内外の屈折率段差をバインダ層30が抑制するため、無機蛍光体粒子20の変換効率が高くなりやすい。一方、無機蛍光体粒子20の表面の一部のみがバインダ層30で被覆された場合は、部分的に形成されたバインダ層30が光の散乱源となるため、波長変換体10から外部への光取出し効率が向上しやすい。
図1及び2に示すように、波長変換体10には、バインダ層30間に形成される空隙35やバインダ層30の一部が凹んだ空隙35が形成されていてもよい。後者の空隙35は、バインダ層30の形成時において、隣接する無機蛍光体粒子20間へのナノ粒子31の不充填により形成されたものと考えられる。バインダ層30にバインダ層30の一部が凹んだ空隙35があると、光が散乱され、波長変換体10から外部への光取出し効率を向上させやすい。
波長変換体10の厚さは、特に限定されないが、例えば40〜400μm、好ましくは80〜200μmとする。波長変換体10の厚さが上記範囲内であると、放熱性を比較的高く維持できるため好ましい。
<波長変換部材の製造方法>
波長変換部材1は、例えば以下の方法により製造することができる。はじめに、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を含むナノ粒子が分散されたナノ粒子分散液と、無機蛍光体粒子20とを混合して混合液を作製する。
なお、ナノ粒子分散液又は混合液には、必要により、分散剤を添加する。分散剤は、通常、有機成分からなる。混合液は、例えばペースト状になるように粘度を調整する。混合液の粘度の調整は、例えば、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を含むナノ粒子や無機蛍光体粒子20等の固形分の濃度の調整により行う。
次に、このペースト状の混合液を金属基板等の基板50上に塗布する。ペースト状の混合液の塗布は、例えば、バーコータを具備したアプリケータを用いた塗布、スクリーン印刷等の常圧環境下での種々の公知の塗布方法が用いられる。
[乾燥工程]
さらに、基板50上のペースト状の混合液を乾燥させ固化させる乾燥工程を行う。乾燥工程は、ペースト状の混合液を固化させて波長変換体10を得る工程である。得られる波長変換体10は、無機蛍光体粒子20と、無機蛍光体粒子20同士を固着させるバインダ層30とを有する。また、基板50上に波長変換体10が形成されると、基板50と、波長変換体10とを備える波長変換部材1が形成される。
乾燥工程における加熱温度は、例えば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃である。また、乾燥工程における加熱時間は、例えば、30〜120分、好ましくは40〜80分である。乾燥工程における加熱温度や加熱時間が上記範囲内にあると、波長変換体10を効率よく形成することができる。
[焼成工程]
波長変換体10のバインダ層30中には有機物質が残存することがある。また、バインダ層30は、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31同士の固着強度が十分に高くない場合もあり得る。このため、乾燥工程の後は、バインダ層30中に有機物質が残存しないようにするとともに、バインダ層30を構成するナノ粒子31同士を強く固着させるために、波長変換部材1に対しさらに焼成工程を行うことが好ましい。
波長変換部材1にさらに焼成工程を行うと、通常、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間が、焼成工程前の波長変換部材1よりも強く固着したものになる。
焼成工程における加熱温度は、例えば、400℃以上、好ましくは400〜800℃、より好ましくは400〜500℃、さらに好ましくは430〜470℃である。また、焼成工程における加熱時間は、例えば、60〜180分、好ましくは100〜150分である。焼成工程における加熱温度や加熱時間が上記範囲内にあると、焼成工程前のバインダ層30中に仮に有機物質が含まれていても、バインダ層30中の有機物質を焼失させることができ、かつバインダ層30のナノ粒子固着体の固着強度が高くなる。
なお、バインダ層30中には有機物質が残存することがある理由、及び有機物質を除去すべき理由は以下のとおりである。
上記ナノ粒子分散液又は混合液に必要により添加される分散剤は、通常、有機物質を含む。この有機物質は、上記の乾燥工程を行っても焼失せずにバインダ層30中に残存することがある。このようなバインダ層30中に有機物質が残存する波長変換体10に、入射光の色変換のために高出力の励起光照射を行うと、バインダ層30中の有機物質が熱で変質して波長変換体10の光学特性を低下させるおそれがある。また、有機物質は一般的に無機物質よりも熱伝導率が低いため、バインダ層30中に残存する有機物質により、波長変換体10の熱伝導率が低下するおそれがある。このため、本製造方法では、仮にバインダ層30中に有機物質が残存していてもこの有機物質を熱分解によって焼失させることができるように焼成工程を行うことが好ましい。
焼成工程は、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31が、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化鉛、酸化テルル、酸化ホウ素及び酸化クロムからなる群より選択される1種以上の金属酸化物からなるナノ粒子である場合に好適である。
焼成工程を行うと、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31同士の固着強度が高くなる理由は以下のとおりである。
波長変換部材1では、乾燥工程の加熱処理で、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間に存在する溶媒が除去される。すると、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間の距離が小さくなり分子間力が増大するために、無機蛍光体粒子20や基板50と固着するナノ粒子固着体が得られると推測される。しかし、上記乾燥工程の加熱処理ではナノ粒子31自体の形状はあまり変化しないため、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間の距離は、比較的大きいまま残存する。このため、乾燥工程後に得られた波長変換部材1では、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間の分子間力が比較的小さいままであり、これらの間の固着力を向上させる余地が残されていると推測される。
これに対し、バインダ層30に対して乾燥工程よりも高温の焼成工程を行うと、バインダ層30を構成するナノ粒子31が軟化して変形しナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間の距離がより近くなる。このため、焼成工程後に得られたバインダ層30の状態では、ナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間で、分子間力が大きくなり、これらの間の固着力がより強くなるものと推測される。
なお、焼成工程を行う対象である波長変換部材1のうち、波長変換体10は、無機蛍光体粒子20と金属酸化物を主成分とするバインダ層30とからなるためセラミックスである。一方、基板50としては金属基板50が用いられることもある。セラミックスと金属とを比較すると、セラミックスは金属に比較して、通常、熱膨張率及び熱伝導率が小さい。このため、基板50が金属基板50である場合は、焼成工程時に、金属基板50と波長変換体10との間で熱膨張率差が大きく生じ、金属基板50と波長変換体10との間の剥離を生じさせる力が働くと推測される。
しかし、本実施形態に係る波長変換部材1では、焼成工程後に、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31同士、ナノ粒子31と無機蛍光体粒子20との間、及びナノ粒子31と基板50との間が、強く固着した波長変換部材1が得られる。このため、本実施形態では、焼成工程により、仮に基板50と波長変換体10との間で熱膨張率差が大きく生じても、バインダ層30の強い固着力により金属基板50と波長変換体10とが強く固着され、剥離が抑制される。このため、本実施形態に係る波長変換部材1では、金属基板50と波長変換体10との間に剥離が生じることは実質的にない。
(作用)
波長変換部材1の作用を説明する。本実施形態の波長変換部材1は、励起光が照射されることにより、波長変換体10中の無機蛍光体粒子20が励起され二次光を放射する。なお、無機蛍光体粒子20の表面には、ナノ粒子31が複数個固着したナノ粒子固着体からなるバインダ層30が形成されている。しかし、ナノ粒子31は励起光の透過性の高い材質からなるため、励起光は、バインダ層30を透過して無機蛍光体粒子20に照射され、無機蛍光体粒子20が励起され二次光を放射することができる。
基板50が光透過性の低い基板50である場合、波長変換体10で発生した二次光は波長変換体10の表面側から放射される。また、基板50が光透過性の高い基板50である場合、波長変換体10で発生した二次光は波長変換体10の表面側及び基板50の表面側から放射される。
(発明の効果)
波長変換部材1において、波長変換体10のバインダ層30は、耐熱性及び放熱性が高い無機材料である、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むナノ粒子固着体である。このため、波長変換部材1は、励起光としてレーザー光源等のハイパワーな励起光を用いた場合でも耐熱性及び放熱性が高い。また、バインダ層30の放熱性が高いため、波長変換部材1は、レーザー光源等のハイパワーな励起光を用いた場合でも、無機蛍光体粒子20の高温化による温度消光が発生しにくい。
また、波長変換体10のバインダ層30中に含まれる有機物質量はせいぜい不純物程度の量であり、実質的に含まれない。このため、波長変換部材1は、レーザー光源等のハイパワーな励起光を用いた場合でも、有機物質の熱劣化に基づくバインダ層30の変色やバインダ層30の焦げが実質的に発生しないことから、耐熱性が高い。
さらに、波長変換部材1は、800℃以上の高温での焼結を行わずにバインダ層30を形成することができるため、耐熱性が低い無機蛍光体粒子20を用いることができる。例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体は、演色性に優れるものの高温環境下で酸化反応が生じる。このため、バインダ層を形成するために高温で焼結する必要がある従来の波長変換体では、高温での焼結時に(Sr,Ca)AlSiN:Eu蛍光体に酸化反応が生じて演色性が低下しやすい。これに対し、波長変換部材1では、高温での焼結を行わずにバインダ層30を形成することができるため、このような蛍光体も無機蛍光体粒子20として用いることができ、波長変換体10の演色性を向上させることができる。
また、波長変換体10は、バインダ層30中の有機物質の焼失のために焼成工程を行う場合に、400℃以上程度の低温での焼成工程で足りる。これは、バインダ層30が融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含むナノ粒子固着体からなるためである。波長変換部材1は、このように高温での焼結工程を行わずに製造することができるため、生産性が高い。
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る波長変換部材の模式的な断面図である。第2の実施形態に係る波長変換部材1Aは、バインダ層30がナノ粒子固着体である実施形態である。図4に第2の実施形態として示す波長変換部材1Aは、図1に第1の実施形態として示す波長変換部材1の波長変換体10を波長変換体10Aに変えたものであり、これ以外の構成は同じである。また、第2の実施形態の波長変換体10Aは、第1の実施形態の波長変換体10のバインダ層30及びナノ粒子被覆蛍光体粒子40を、それぞれバインダ層30A及びナノ粒子被覆蛍光体粒子40Aに変えたものであり、これ以外の構成は同じである。このため、図4に第2の実施形態として示す波長変換部材1Aと、図1に第1の実施形態として示す波長変換部材1とで、同じ部材に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
<波長変換体>
波長変換体10Aは、第1の実施形態に係る波長変換部材1のバインダ層30をバインダ層30Aに変えたものである。バインダ層30Aは、バインダ層30に比較して、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31に加えて、ナノ粒子31以外のナノ粒子32を含むものである。
バインダ層30Aについて図5及び6を参照して説明する。図5は、図4の部分Cを拡大して示す模式的な断面図である。図6は、図4の部分Dを拡大して示す模式的な断面図である。図5及び6に示すように、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aでは、バインダ層30Aは、融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31を1種以上含みかつナノ粒子31以外のナノ粒子32も含むナノ粒子固着体になっている。ナノ粒子31以外のナノ粒子32は、例えば、融点が800℃を超える金属酸化物からなるナノ粒子32である。
ナノ粒子32を構成する、融点が800℃以下の金属酸化物以外の金属酸化物は、通常、融点が800℃を超える金属酸化物である。融点が800℃を超える金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、融点:2072℃)、二酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛(分解温度:1975℃)、酸化セシウム、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等のナノ粒子が用いられる。酸化アルミニウムとしては、例えば、Alが用いられる。酸化亜鉛としては、例えば、ZnOが用いられる。これらの融点が800℃を超える金属酸化物は、上記の融点が800℃以下の金属酸化物との間で共晶材料を生成しやすい。また、窒化ホウ素は、バインダ層の放熱性を向上させるため好ましい。
例えば、ナノ粒子32の材質が酸化亜鉛ZnOである場合に、ナノ粒子31の材質が酸化モリブデン(融点795℃)であると、ナノ粒子32とナノ粒子31との界面において、融点よりも低い710℃付近で共晶材料であるZnMoOが生成する。このように、ナノ粒子32とナノ粒子31との間では、それぞれの材質の融点よりも低い温度でナノ粒子間に共晶材料が生じ、ナノ粒子32とナノ粒子31とが強く固着される。共晶材料は、ナノ粒子31やナノ粒子32を構成する材質と異なるため、共晶材料からなる部分が、ナノ粒子31とナノ粒子32との粒界を形成する。
このように、バインダ層30Aが酸化亜鉛のナノ粒子32をさらに含むと、ナノ粒子32とナノ粒子31とが強く固着されやすい。具体的には、バインダ層30Aのナノ粒子固着体における隣接するナノ粒子31、32間の固着部が、融点が800℃以下の金属酸化物と、融点が800℃を超える金属酸化物と、からなる共晶材料を含むと、ナノ粒子31とナノ粒子32とが強く固着されやすい。ナノ粒子31、32間の固着部を形成する共晶材料としては、例えば、ZnMoOが挙げられる。
バインダ層30Aにおける、融点800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31の含有率は、通常50〜99質量%、好ましくは80〜95質量%、好ましくは90〜95質量%である。融点800℃以下の金属酸化物のナノ粒子31の含有率が上記範囲内にあると、バインダ層30A内、バインダ層30Aと無機蛍光体粒子20との間、及びバインダ層30Aと基板50との間が強く固着される。これにより、波長変換体10Aの機械的強度が向上しやすく、かつ波長変換体10Aと基板50との密着性が向上しやすい。
(作用)
波長変換部材1Aの作用は、バインダ層30A内、バインダ層30Aと無機蛍光体粒子20との間、及びバインダ層30Aと基板50との間が、共晶材料等の生成により、より強く固着されやすい以外は、波長変換部材1の作用と同じである。このため、波長変換部材1Aの作用の説明を省略する。
(発明の効果)
波長変換部材1Aの発明の効果は、バインダ層30A内、バインダ層30Aと無機蛍光体粒子20との間、及びバインダ層30Aと基板50との間が、共晶材料等の生成により、より強く固着される以外は、波長変換部材1の発明の効果と同じである。このため、波長変換部材1Aの発明の効果の説明を省略する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る波長変換部材は、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aのナノ粒子固着体からなるバインダ層30Aを、ナノ粒子固着体以外の構成にしたものである。具体的には、第3の実施形態に係る波長変換部材のバインダ層は、融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含むバルク体からなる。ここで、バルク体とは、融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含む塊状物質であって、ナノ粒子固着体以外の形態のものを意味する。
バルク体としては、例えば、ナノ粒子よりも大きい結晶粒からなる多結晶体、アモルファス体等が用いられる。ここで、ナノ粒子よりも大きい結晶粒とは、平均粒径D50が100nm以上の結晶粒を意味する。上記多結晶体は、加熱処理等により隣接するナノ粒子同士が融着等を行い、結晶組織が大きくなることにより生成すると考えられる。また、アモルファス体とは、融点が800℃以下の金属酸化物がアモルファス状態にある固体を意味する。
バルク体からなるバインダ層の組成は、第1の実施形態に係る波長変換部材1のナノ粒子固着体からなるバインダ層30を構成する融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子の材質と同じである。具体的には、融点が800℃以下の金属酸化物は、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化鉛、酸化テルル、酸化ホウ素及び酸化クロムからなる群より選択される1種以上の金属酸化物である。
また、バルク体からなるバインダ層の組成は、融点が800℃以下の金属酸化物に加え、融点が800℃を超える金属酸化物を含んでいてもよく、また、融点が800℃以下の金属酸化物と融点が800℃を超える金属酸化物とからなる共晶材料を含んでいてもよい。融点が800℃を超える金属酸化物、及び共晶材料は、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aで述べたものと同じであるため、説明を省略する。なお、バルク体からなるバインダ層が、融点が800℃以下の金属酸化物に加え、窒化ホウ素をさらに含むと、バインダ層の放熱性が高くなるため好ましい。窒化ホウ素は、バインダ層中において、単独で存在していてもよいし、融点が800℃以下の金属酸化物との間で共晶材料を形成していてもよい。また、バルク体からなるバインダ層の共晶材料がZnMoOであると、710℃程度の低温で生成されるため、低温でバルク体を形成でき、バインダ層の熱伝導率が高くなるため好ましい。
図7は、第3の実施形態及び後述の実施例2に係る波長変換部材の波長変換体の破断面に表れたバインダ層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例である。図7に表される全体がバインダ層になっている。図7に示すバインダ層は多結晶体からなるバルク体になっており、バインダ層の表面には直径が数十nm程度の空隙が形成されている。
図7に示す、後述の実施例2に係る波長変換部材のバルク体からなるバインダ層は、融点が800℃以下の金属酸化物と、融点が800℃を超える金属酸化物と、の共晶材料であるZnMoOが形成されている一例である。なお、図7に示すバインダ層は、ナノ粒子固着体からなるバインダ層を加熱処理して得られたものであるが、加熱処理により隣接するナノ粒子間にネッキング等が生じることにより、ナノ粒子よりも大きい結晶粒からなる多結晶体になっている。
<波長変換部材の製造方法>
第3の実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、バルク体からなるバインダ層の生成以外は、第1の実施形態に係る波長変換部材と同様である。このため、以下、第3の実施形態に係る波長変換部材のバルク体からなるバインダ層の生成方法について説明する。
[バインダ層の生成方法]
バインダ層の生成方法は、第1の実施形態に係る波長変換部材において生成したナノ粒子固着体からなるバインダ層を、より加熱することにより、ナノ粒子固着体からなるバインダ層をバルク体からなるバインダ層に変化させる方法である。ナノ粒子固着体からなるバインダ層を、より加熱する方法としては、例えば、基板として熱伝導のよいAlN基板を用いたり、ナノ粒子固着体の生成のための熱処理よりも高い温度や長い時間で熱処理する方法が挙げられる。
(作用)
第3の実施形態に係る波長変換部材の作用は、バインダ層の構造の差異に基づく作用の相違以外は、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aの作用と同じである。このため、以下、バインダ層の構造の差異に基づく作用の相違について説明し、その他の作用については説明を省略する。第3の実施形態に係る波長変換部材のバインダ層はバルク体からなるため、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aのナノ粒子固着体からなるバインダ層30Aに比較して、バインダ層内に、熱伝導を阻害する粒界がないか又は少ない。このため、第3の実施形態に係る波長変換部材のバインダ層は、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aのバインダ層30Aに比較して、バインダ層内の熱伝導率が高くなる。
(発明の効果)
第3の実施形態に係る波長変換部材の効果は、バインダ層がバルク体からなるためバインダ層内の熱伝導率が高くなること以外は、第2の実施形態に係る波長変換部材1Aの発明の効果と同じである。このため、第3の実施形態に係る波長変換部材の発明の効果の説明を省略する。
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、ナノ粒子31、ナノ粒子31以外のナノ粒子32、ナノ粒子31及び32以外のナノ粒子、又は無機蛍光体粒子20の1種以上に対して、波長変換体10の放熱性を阻害しない範囲内で表面処理を行ってもよい。この表面処理は、例えば、バインダ層30、30Aの緻密性や、無機蛍光体粒子20又は基板50に対するバインダ層30、30Aの密着性を向上させるために行う。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、基板のバインダ層側の表面に、金属薄膜層及び酸化物薄膜層の1種以上が形成されていてもよい。例えば、基板のバインダ層側の表面に、金属薄膜層と酸化物薄膜層とがこの順番に積層され、酸化物薄膜層の表面にバインダ層が形成されていてもよい。基板のバインダ層側の表面に、金属薄膜層及び酸化物薄膜層の1種以上が形成されていると、基板よりも高反射率の材料を用いることにより、反射率を高めることができるため好ましい。なお、この構成の波長変換部材では、バインダ層は、酸化物薄膜層を介して間接的に、基板と固着する。
また、第1の実施形態において、バインダ層30に代えてナノ粒子32のみを含むナノ粒子固着体からなるバインダ層を形成し、このバインダ層と基板50との間に、ナノ粒子31を含む層を設けてもよい。この構成の波長変換部材によれば、バインダ層とナノ粒子31を含む層との間で、共晶が生成し、バインダ層とナノ粒子31を含む層との密着強度が高くなる。
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(混合溶液の調製)
はじめに、蛍光体粒子として、平均粒径D50が約20μmのYAG粒子を用意した。また、ナノ粒子として、粒径10〜50nmの三酸化モリブデンのナノ粒子、および粒径約10〜50nmの酸化亜鉛のナノ粒子が分散された分散溶液を用意した。次に、上記ナノ粒子分散液に上記YAG粒子を添加、混練して、ナノ粒子混合溶液を作製した。
(ナノ粒子混合溶液の塗布)
金属基板(アルミニウム合金からなる基板)上にテープを貼付して段差を形成し、段差で囲まれた部分にナノ粒子混合溶液を滴下し、バーコータを具備したアプリケータを用いてナノ粒子混合溶液を塗布した。
(波長変換体の形成)
ナノ粒子混合溶液が塗布された金属基板を100℃で60分間加熱したところ、金属基板上に膜厚100μmの乾燥体が得られた。この乾燥体は、YAG粒子と、三酸化モリブデンのナノ粒子と、酸化亜鉛のナノ粒子とが固着したナノ粒子固着体からなり隣接するYAG粒子同士をナノ粒子固着体で固着するバインダ層と、を有する波長変換体になっていた。これにより、金属基板上に厚さ100μmの膜状の波長変換体が形成された波長変換部材が得られた。その後、この波長変換部材を、450℃で2時間加熱する焼成工程を行ったところ、金属基板と波長変換体とが剥離せず強固に固着した波長変換部材が得られた。波長変換体中に有機物質は残存していなかった。
[比較例1]
(混合溶液の調製)
はじめに、蛍光体粒子として、平均粒径D50が約20μmのYAG粒子を用意した。また、ナノ粒子として、平均粒径D50が約20nmの酸化アルミニウムのナノ粒子分散液を用意した。次に、上記ナノ粒子分散液に上記YAG粒子を添加、混練して、ナノ粒子混合溶液を作製した。
(ナノ粒子混合溶液の塗布)
金属基板上にテープを貼付して段差を形成し、段差で囲われた部分にナノ粒子混合溶液を滴下し、バーコータを具備したアプリケータを用いてナノ粒子混合溶液を塗布した。
(波長変換体の形成)
ナノ粒子混合溶液が塗布された金属基板を100℃で60分間加熱したところ、金属基板上に膜厚100μmの乾燥体が得られた。この乾燥体は、YAG粒子と、酸化アルミニウムのナノ粒子が固着したナノ粒子固着体からなり隣接するYAG粒子同士をナノ粒子固着体で固着するバインダ層と、を有する波長変換体になっていた。これにより、金属基板上に厚さ100μmの膜状の波長変換体が形成された波長変換部材が得られた。その後、この波長変換部材を、450℃で60分間加熱する焼成工程を行ったところ、金属基板と波長変換体とが剥離した。
実施例1及び比較例1の結果より、バインダ層を構成するナノ粒子が特定種類であると、バインダ層中の有機物質を焼失させる焼成工程を行っても、金属基板と波長変換体とが剥離しないことが分かった。また、実施例1の波長変換体は、450℃程度の低温で焼成可能であることが分かった。
[実施例2]
金属基板に代えてAlN基板を用いる以外は実施例1と同様にして、波長変換部材を作製した。
得られた波長変換部材は、AlN基板と波長変換体とが剥離せず強固に固着していた。
[実施例3]
450℃で2時間加熱する焼成処理を行わなかった以外は実施例2と同様にして、波長変換部材を作製した。
得られた波長変換部材は、AlN基板と波長変換体とが剥離せず強固に固着していた。
(評価)
<顕微鏡観察>
波長変換部材を構成する波長変換体の破断面を走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察した。図7は実施例2に係る波長変換部材の波長変換体の破断面に表れたバインダ層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例である。図8は、実施例3に係る波長変換部材の波長変換体の破断面に表れたバインダ層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の一例である。
図7に示されるように、実施例2の波長変換体のバインダ層は、バルク体になっていた。具体的には、実施例2のバインダ層は、原料であるナノ粒子の粒界が存在せず、粒径数十nm程度の結晶組織が連続した構造のバルク体になっていることが分かった。一方、図8に示されるように、実施例3の波長変換体のバインダ層は、複数個のナノ粒子が固着してなるナノ粒子固着体になっており、また、1000nm程度の長さのクラックが形成されていることが分かった。
<結晶性評価>
XRD装置を用いて、実施例2及び実施例3のバインダ層のX線回折(XRD)を行った。図9は、実施例2に係る波長変換部材の波長変換体のバインダ層のXRD評価結果の一例である。図10は、実施例3に係る波長変換部材の波長変換体のバインダ層のXRD評価結果の一例である。
図9に示されるように、実施例2のバインダ層では、共晶であるZnMoOに帰属されるピークが確認された。一方、図10に示されるように、実施例3のバインダ層では、共晶であるZnMoOに帰属されるピークは確認されなかった。
<波長変換部材へのレーザー光照射試験>
実施例2及び実施例3に係る波長変換部材を、金属製のヒートシンクに貼り付けた。次に、ヒートシンク上の波長変換体の表面側に、中心波長λが450nmのレーザー光を照射し、波長変換体の表面温度をサーモビューワで測定した。そして、実施例2の波長変換体の表面温度T(℃)を、実施例3の波長変換体の表面温度T(℃)で除して相対値を算出した。結果を表1に示す。
表1より、実施例2の波長変換体は、実施例3の波長変換体に比較して放熱性が高いことが分かった。また、実施例2の波長変換体は、450℃程度の低温で焼成可能であることが分かった。
特願2016−079354号(出願日:2016年4月12日)の全内容は、ここに援用される。
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
本発明の波長変換部材は、ハイパワーの励起光が照射された場合でも耐熱性及び放熱性に優れ、基板と波長変換体との密着性が高く、かつ低温で焼成可能である。
1 波長変換部材
10 波長変換体
20 無機蛍光体粒子(YAG粒子)
30 バインダ層
31 ナノ粒子(融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子)
32 ナノ粒子(融点が800℃以下の金属酸化物以外のナノ粒子)
35 空隙
40 ナノ粒子被覆蛍光体粒子
50 基板

Claims (12)

  1. 基板と、
    この基板の表面に設けられ、入射光を色変換する波長変換体と、を備え、
    前記波長変換体は、
    入射光を色変換する無機蛍光体粒子と、
    融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含み、前記無機蛍光体粒子同士を固着させるバインダ層と、
    を有し、
    前記バインダ層は、前記融点が800℃以下の金属酸化物のナノ粒子を1種以上含む複数個のナノ粒子が固着してなるナノ粒子固着体であり、
    前記基板と前記波長変換体とは、前記波長変換体のバインダ層により固着されることを特徴とする波長変換部材。
  2. 基板と、
    この基板の表面に設けられ、入射光を色変換する波長変換体と、を備え、
    前記波長変換体は、
    入射光を色変換する無機蛍光体粒子と、
    融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含み、前記無機蛍光体粒子同士を固着させるバインダ層と、
    を有し、
    前記バインダ層は、前記融点が800℃以下の金属酸化物を1種以上含むバルク体であり、
    前記基板と前記波長変換体とは、前記波長変換体のバインダ層により固着されることを特徴とする波長変換部材。
  3. 前記バルク体は、前記融点が800℃を超える金属酸化物からなるナノ粒子と、金属イオン又は金属アルコキシドと、の混合物を、乾燥し、焼成することにより得られたものであることを特徴とする請求項に記載の波長変換部材。
  4. 前記融点が800℃以下の金属酸化物は、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化鉛、酸化テルル、酸化ホウ素及び酸化クロムからなる群より選択される1種以上の金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
  5. 前記バインダ層は、酸化亜鉛のナノ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項又はに記載の波長変換部材。
  6. 前記バインダ層は、酸化亜鉛をさらに含むことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の波長変換部材。
  7. 前記バインダ層のナノ粒子固着体における隣接する前記ナノ粒子間の固着部は、前記融点が800℃以下の金属酸化物と、融点が800℃を超える金属酸化物と、からなる共晶材料を含むことを特徴とする請求項又はに記載の波長変換部材。
  8. 前記バルク体は、前記融点が800℃以下の金属酸化物と、融点が800℃を超える金属酸化物と、からなる共晶材料を含むことを特徴とする請求項及びのいずれか1項に記載の波長変換部材。
  9. 前記共晶材料は、ZnMoOであることを特徴とする請求項又はに記載の波長変換部材。
  10. 前記ナノ粒子固着体は、窒化ホウ素のナノ粒子をさらに含むことを特徴とする請求項又はに記載の波長変換部材。
  11. 前記バルク体は、窒化ホウ素をさらに含むことを特徴とする請求項2、3、4又はに記載の波長変換部材。
  12. 前記基板が金属基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の波長変換部材。
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