JP6690945B2 - アスファルト乳剤の分解剤 - Google Patents
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Description
アスファルトは常温では高粘度の半固体または固体であり、その粘着性の高さから取り扱い時の作業性が非常に悪い。
常温での取り扱い時の作業性を改善する手法の一つとして、乳化剤を用いてアスファルトを水に乳化させた形態での利用が知られており、該乳化物はアスファルト乳剤と呼ばれている。
アスファルト乳剤の分類の方法には主に二通りあり、一つは使用する乳化剤によりカチオン系、アニオン系、ノニオン系等に分類する方法と、もう一つは用途によって浸透用、混合用等に分類する方法がある。
浸透用アスファルト乳剤の主な用途には、アスファルト舗装後の表面仕上げ用として使用されるプライムコートと、基層と新たに舗設するアスファルト層との層間接着用として使用されるタックコートがある。
日本工業規格JIS K 2208の規定では、浸透用アスファルト乳剤「PK−4」は一般的にタックコート用に用いられている。近年、アスファルト舗装の補修、再舗装が増加しており、PK−4の利用が増加している。
アスファルト乳剤の要求特性としては、アスファルト乳剤製造後から施工現場で使用するまでの間の貯蔵安定性及び、乳剤の移送や散布時に利用するポンプ等によるせん断や圧縮等の外力がかかっても乳化が壊れない機械的安定性が挙げられる。
さらに、施工現場でアスファルト乳剤を散布した後はできるだけ短時間で分解し、速やかに水とアスファルトに分離する事が強く望まれる。
これは、アスファルト中に水分が残存すると、アスファルト本来の粘着性が得られず、接着不良となってしまうが、一般的にアスファルト乳剤散布後は剤中の水分が蒸発して十分に分解するまで待たなければならず、その間は道路の通行規制が必要で、通行開放までに時間がかかるという問題がある事に起因する。
カチオン系アスファルト乳剤の分解剤として、水酸化ナトリウムや骨材が知られている。
しかし、水酸化ナトリウムは劇物であり、実際の道路での使用には環境面や作業者の安全性の面で問題がある。骨材はその形状や含有成分によって大きく分解効果に差があり、使用するアスファルト乳剤に適した骨材を選定する為には多大な労力と時間が必要となる。
しかし、これらは完全に上記問題点を解決しうるものではなく、貯蔵安定性、機械的安定性の高いアスファルト乳剤では分解が不十分であったり、分解に時間を要するといった問題があった。
また、実際の施工場所の気温や日照、風の有無等によって十分な効果が得られない場合もある。
すなわち、本発明のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤は、含硫黄型アニオン性界面活性剤と無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩とを含み、20℃における比重が1.03〜1.15であり、20℃における粘度が0.1mPa・s以上121mPa・s以下である。
前記含硫黄型アニオン性界面活性剤が、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
前記含硫黄型アニオン性界面活性剤がジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホコハク酸塩、油脂の硫酸化物、油脂の硫酸化物の塩、硬化油脂の硫酸化物及び硬化油脂の硫酸化物の塩から選ばれる少なくとも1種をさらに含むと好ましい。
前記無機硫酸塩が硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム及び硫酸鉄から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
前記縮合リン酸塩がピロリン酸塩及びトリポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
前記分解剤100重量部に対する前記含硫黄型アニオン界面活性剤の重量割合が0.1〜30.0重量部、前記無機硫酸塩及び/又は前記縮合リン酸塩の重量割合が0.1〜50.0重量部であると好ましい。
前記カチオン系アスファルト乳剤が日本工業規格JIS K 2208に規定された「PK−4」であると好ましい。
含硫黄型アニオン性界面活性剤は、本発明のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤に必須の成分であり、アスファルト乳剤の油滴表面に存在するカチオン系乳化剤の電荷を中和するとともに、疎水基部分がアスファルト乳剤との親和性を有している為、油滴を破壊し合一を促進する役割をする。含硫黄型アニオン性界面活性剤は、後述する無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩と併用することで、カチオン系アスファルト乳剤の即時分解性に優れ、かつ、非接触の下層部分まで分解が進行するという効果を得ることができる。
アルキルスルホン酸のアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、アルキル基に分布があるものでもよい。
アルキルスルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、イコサンスルホン酸、ヘンイコサンスルホン酸等が挙げられる。
無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩は、本発明のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤に必須の成分であり、硫酸イオン、縮合リン酸イオンがアスファルト乳剤の油滴表面に存在するカチオン系乳化剤の電荷を中和するのに寄与するとともに、分解剤の比重を特定の範囲に調整することができ、先に散布したアスファルト乳剤との比重差により自然混合が促進され、散布時に接触した表層部分だけでなく、非接触の下層部分まで速やかに分解が進行するという効果を得ることができる。
中でも、入手の容易さ、安全性、及び環境への影響から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムが好ましい。
中でも、入手の容易さ、本願の効果を発揮する観点から、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムが好ましい。
本発明のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤の20℃における比重は1.03〜2.00であり、1.03〜1.80が好ましく、1.03〜1.60がより好ましく、1.03〜1.40がさらに好ましく、1.03〜1.30が特に好ましい。1.03未満では非接触の下層部分まで分解が進行しない。一方、2.00超では、分解剤溶液の安定性が低下し均一散布が困難となったり、即時分解性が劣ることがある。
好ましい下限値は0.1mPa・Sである。0.1mPa・S未満では、アスファルト乳剤と混合し難くなり、非接触の下層部分まで分解が進行しないことがある。
本発明のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤に占める無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩の重量割合は、0.1〜50.0重量%が好ましく、1.0〜40.0重量%がより好ましく3.0〜35.0重量%がさらに好ましく、5.0〜30.0重量%が特に好ましい。0.1重量%未満では非接触の下層部分まで分解が進行しないことがある。50.0重量%超では分解剤溶液の安定性が低下し均一散布が困難となることがある。
本発明の分解剤の製造方法としては、未溶解・未分散の成分の残存がなく、均一に溶解・分散していれば良く、特に限定はないが、たとえば、次の各方法が挙げられる。
(1)攪拌下、水及び/又は溶媒中に含硫黄型アニオン性界面活性剤、無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩を少量ずつ添加し混合する方法
(2)無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩を攪拌しながら水及び/又は溶媒に溶解した後、充分攪拌しながら含硫黄型アニオン性界面活性剤を少量ずつ添加し混合する方法
(3)硫黄型アニオン性界面活性剤を水及び/又は溶媒に高濃度で溶解したもの(A)と、無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩を水に高濃度で溶解したもの(B)を別々に作製し、(A)を充分攪拌しながら(B)を少量ずつ添加し混合する方法
本発明のアスファルト乳剤の分解剤の散布方法は、前記カチオン系アスファルト乳剤に本発明の分解剤を接触させる散布方法である。
アスファルト乳剤の分解剤はアスファルト乳剤と同時に散布してもよく、アスファルト乳剤散布後に、その上から分解剤を散布してもよい。
アスファルト乳剤は道路路盤や基層、表層に散布される他、法面や壁面等の吹き付け防水等にも利用されるが、本発明のアスファルト乳剤の分解剤は即時分解性に優れることから、これらの用途にも利用することが可能である。
散布の際は斑なく均一にする為、霧状にして散布することが好ましく、たとえば小規模の舗装であれば、エンジンスプレーヤ、ギアスプレーヤ、エア−スプレーヤ、ハンドスプレーヤ、エアレスポンプスプレーヤー等を用いてもよく、大規模舗装では、アスファルトスプレーヤ、アスファルトディストリビュータ、乳剤散布機能付きアスファルトフィニッシャ等のアスファルト乳剤を散布する装置を用いてもよい。
分解剤の散布量は、乳剤100部に対して10部以上が好ましい。10部未満ではアスファルト乳剤全体に分解剤が行き渡らず、即時分解性が劣ることがある。
表1〜3に示す質量比となるように、実施例1〜20及び比較例1〜12のカチオン系アスファルト乳剤の分解剤を上記(3)の方法で製造した。
実施例1〜20及び比較例1〜12の各カチオン系アスファルト乳剤の分解剤の比重及び粘度を次のように測定した結果を表1〜3に示す。
アスファルト乳剤の分解性試験を次のように行った。その試験結果を表4に示す。
JIS−Z8804−9記載の方法に準拠し、温度20℃に於けるカチオン系アスファルト乳剤の分解剤の比重を測定した。
密度比重計:京都電子工業製 DA−200
ブルックフィールド型粘度計を用いて、温度20℃に於けるカチオン系アスファルト乳剤の分解剤の粘度を測定した。
アスファルト上にカチオン系アスファルト乳剤PK−4を、2水準の乳剤量(0.3L/m2 1.2L/m2)を塗布した。
その上部よりスプレーでアスファルト乳剤量の20wt%の分解剤を散布した。
直後から1分後、5分後、10分後、15分後の乳剤の状態を目視観察した。
○ 下層まで分解して分離した分解水が透明
△1 表面は分解し皮膜化しているが、下層は未分解
△2 下層まで分解しているが皮膜化せず、凝集物が沈降
× 分解しない
15分以内に下層まで分解しアスファルトが皮膜化すれば合格、15分を超えてもアスファルト乳剤が分解せず残存する場合や、分離したアスファルトが皮膜化しない場合を不合格とした。
一方、含硫黄型アニオン性界面活性剤を含むが無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩を含まない場合(比較例1及び3〜5)、無機硫酸塩を含むが含硫黄型アニオン性界面活性剤を含まない場合(比較例2、11)、リン酸塩でも縮合リン酸塩でない場合(比較例6)、アニオン性界面活性剤であっても含硫黄型でない場合(比較例7〜10)、含硫黄型アニオン性界面活性剤も含まず無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩も含まない場合(比較例12)には、本願の課題が解決できていない。
Claims (9)
- 含硫黄型アニオン性界面活性剤と無機硫酸塩及び/又は縮合リン酸塩とを含み、20℃における比重が1.03〜1.15であり、20℃における粘度が0.1mPa・s以上121mPa・s以下である、カチオン系アスファルト乳剤の分解剤。
- 20℃における比重が1.04〜1.15であり、20℃における粘度が11.1以上121mPa・s以下である、請求項1に記載の分解剤。
- 前記含硫黄型アニオン性界面活性剤が、アルキルスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の分解剤。
- 前記含硫黄型アニオン性界面活性剤がジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホコハク酸塩、油脂の硫酸化物、油脂の硫酸化物の塩、硬化油脂の硫酸化物及び硬化油脂の硫酸化物の塩から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の分解剤。
- 前記無機硫酸塩が硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム及び硫酸鉄から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の分解剤。
- 前記縮合リン酸塩がピロリン酸塩及びトリポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の分解剤。
- 前記分解剤100重量部に対する前記含硫黄型アニオン性界面活性剤の重量割合が0.1〜30.0重量部、前記無機硫酸塩及び/又は前記縮合リン酸塩の重量割合が0.1〜50.0重量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の分解剤。
- 前記カチオン系アスファルト乳剤が日本工業規格JIS K 2208に規定された「PK−4」である、請求項1〜7のいずれかに記載の分解剤。
- カチオン系アスファルト乳剤に請求項1〜8のいずれかに記載の分解剤を接触させる、アスファルト乳剤の散布方法。
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