以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して本発明の第1実施の形態におけるクラッチ装置10が搭載される車両について説明する。図1は第1実施の形態におけるクラッチ装置10が搭載される車両1(自動車)のスケルトン図である。
図1に示すように車両1は、前輪5の車軸4に配設されたクラッチ装置10によって、前輪5が駆動される二輪駆動状態と、前輪5及び後輪8が駆動される四輪駆動状態とが切り換えられる自動車である。四輪駆動状態では、パワーユニット2の駆動力が差動装置3を介して前輪5の車軸4に伝達され、クラッチ装置10及びドライブシャフト6を介して車軸4の回転が後輪8の車軸7へ伝達される。二輪駆動状態では、駆動される前輪5の車軸4からドライブシャフト6への回転の伝達が、クラッチ装置10によって遮断される。
次に図2を参照してクラッチ装置10について説明する。図2はクラッチ装置10の軸方向断面図である。図2は車軸4からドライブシャフト6への動力伝達に関する部分が図示され、ドライブシャフト6の一部および車軸4の図示が省略される。矢印X1−X2は車軸4及びクラッチ装置10の軸方向を示す。
クラッチ装置10は、前輪5の車軸4と一体的に回転する第1軸(第1部材)11と、べベルギヤ9を介してドライブシャフト6に回転を伝達する第2軸(第2部材)13との間の動力の伝達または遮断を行う装置である。クラッチ装置10は、モータ30により回転部材40を回転させ、回転部材40に連係する移動部材50の軸方向(矢印X1−X2方向)の位置を変化させることで動力の伝達・遮断を切り換える。第1軸11及び第2軸13は共通の中心軸Oをもつ。第1軸11の一部および第2軸13は、第1軸11及び第2軸13の径方向外側に配置されたケース20に収容されている。本実施の形態ではケース20はアルミニウム合金製である。
第1軸11は、車軸4の外周に嵌着される円筒状の部材であり、ケース20に固定された第1軸受21及び第2軸受22によりケース20に対して回転可能に支持されている。第1軸11は外周にスプライン12が形成されている。スプライン12は、軸方向に所定の間隔をあけて複数が断続する欠歯である。第2軸13は、第1軸11の径方向外側に配置される円筒状の部材であり、第1軸11に対して相対回転可能に配置されている。
第2軸13は、小径部14、中径部15及び大径部16が軸方向に並び、それらが一体に形成されている。小径部14は、ケース20に固定された第3軸受23が外周に固定される円筒状の部位である。中径部15は、小径部14より内径および外径が大きい円筒状の部位であり、大径部16は、中径部15より内径および外径が大きい円筒状の部位である。中径部15及び大径部16の径方向内側と第1軸11との間に隙間が形成され、その隙間にばね24(本実施の形態では圧縮コイルばね)が配置される。中径部15及び大径部16の内側にばね24が配置されるので、ばね24の配置スペースを小さくできる。
中径部15は、小径部14と大径部16とを連結する部位であり、径方向(厚さ方向)に貫通する孔部18が、周方向に断続的に形成されている。孔部18は周方向に間隔をあけて中径部15の2〜4か所に形成されている。中径部15に形成された孔部18の分だけ第2軸13を軽量化できる。
大径部16は、外周にべベルギヤ9が嵌着される部位であり、軸方向に連続するスプライン17が内周に形成されている。スプライン17は、第1軸11に形成されたスプライン12の径方向外側の位置に形成される。大径部16は、べベルギヤ9を介して第4軸受25によりケース20に固定されている。
モータ30は、駆動軸31が、中心軸Oと平行になるようにケース20に固定される。モータ30はステッピングモータ又は位置検出センサによって回転角が検出される直流モータが使用され、制御装置38により正逆両方向の回転(回転速度および回転角)が制御される。制御装置38は、モータ30の回転速度のばらつきを防ぐため、回転速度のばらつきが生じる要因(モータ30の電源の温度や電源電圧など)をフィードフォワード制御で補正する。
モータ30の駆動軸31と平行に配置されるギヤ軸33,34は、それぞれケース20に両端が回転可能に支持される。ギヤ軸33は、ギヤ軸33と一体的に回転する第1ギヤ35及び第2ギヤ36が固定され、第1ギヤ35は駆動軸31と一体的に回転するギヤ32と噛み合う。ギヤ軸34は、ギヤ軸34と一体的に回転する第3ギヤ37が固定され、第3ギヤ37は第2ギヤ36と噛み合う。第1ギヤ35、第2ギヤ36及び第3ギヤ37の歯車列は、モータ30の駆動軸31の回転を減速して必要な駆動力を得るための減速機を構成する。
回転部材40は、第1軸11の径方向外側に配置される円環状の部材である。回転部材40は、第5軸受26が内周に配置されることでケース20に対して中心軸O回りに回転可能に支持されている。回転部材40は、中心軸Oの回りに第2軸受22を軸直角方向に投影した領域と第3ギヤ37とが交わる領域に配置される。これにより、第3ギヤ37を含む歯車列、回転部材40及び第2軸受22が占有する軸方向の領域をコンパクトにできる。よって第3ギヤ37と第2軸受22とを軸方向にずらして配置する場合に比べ、クラッチ装置10の軸方向の長さを短くできる。
回転部材40は、第3ギヤ37と噛み合う歯41が外形に形成されている。モータ30が駆動軸31を回転駆動すると、ギヤ32、第1ギヤ35、第2ギヤ36、第3ギヤ37及び歯41を介して回転部材40が回転駆動される。回転部材40は、軸方向の端面にカム42が形成されている。カム42は、モータ30の回転を移動部材50の軸方向の往復運動に変換する部位である。移動部材50は、第1軸11の径方向外側、且つ、軸方向の第1端側が第2軸13(大径部16)の径方向内側に配置される円筒状の部材である。移動部材50の第1端側の軸方向の端面と第2軸13の小径部14の軸方向の端面との間に、ばね24が圧縮した状態で配置される。
図3を参照して移動部材50について説明する。図3は中心軸Oを含む平面で切断したクラッチ装置10の片側断面図であり、第1軸11と第2軸13との間から移動部材50を軸方向へ抜いた分解状態を示す図である。移動部材50は、軸方向の第1端側の内周および外周にそれぞれスプライン51,52が形成されている。スプライン51は軸方向に所定の間隔をあけて複数が断続する欠歯である。スプライン51は、欠歯の各々の軸方向の長さが、第1軸11に形成されたスプライン12の欠歯の各々の軸方向長さと略同一である。スプライン51間の距離は、第1軸11に形成されたスプライン12の各々の軸方向長さより少し大きめである。スプライン52は、軸方向の長さが、第2軸13に形成されたスプライン17の軸方向の長さより小さく設定されている。スプライン52は、軸方向の位置が、スプライン51の軸方向の位置の間にあり、軸方向の長さは各々のスプライン51の軸方向の長さと略同一である。
移動部材50は、移動部材50の軸方向の可動範囲において、第2軸13に形成されたスプライン17とスプライン52とが常に係合する。一方、移動部材50の内周に形成されたスプライン51は、移動部材50の軸方向の位置によって、第1軸11のスプライン12と係合したりしなかったりするような位置にある。その結果、第2軸13はスプライン52によって移動部材50に連れて回転する。移動部材50は、第1軸11に形成されたスプライン12にスプライン51が係合する軸方向(矢印X1側)の第1位置と、スプライン12にスプライン51が係合しない軸方向(矢印X2側)の第2位置との間をスプライン17に沿って移動する。
図2に戻って説明する。移動部材50は、外周から径方向の外側に張り出す鍔部53が、第1端と反対の軸方向の第2端側に設けられている。鍔部53は、移動部材50の外周に取り付けられた円環状の支持部材54の軸方向の移動を規制するための部位である。支持部材54は、移動部材50に対して相対回転可能に配置されている。支持部材54は、カム42の輪郭に接触する接触部55を支持するための金属製の部材である。
接触部55は、支持部材54の外周の一か所から径方向に突出する円柱状の部位であり、支持部材54と一体に形成されている。接触部55は、径方向の外側の先端が、ケース20の内面に形成された軸方向へ延びる溝部28に摺動可能に係合する。接触部55の先端が溝部28に係合するので、移動部材50の軸方向の移動を許容しつつ、移動部材50の回転に連れて中心軸O回りに支持部材54及び接触部55が回転することを防止できる。第1軸11と第2軸13との間に圧縮した状態で配置されたばね24は、移動部材50及び支持部材54を軸方向の一端側(矢印X1方向)へ押圧し、接触部55をカム42へ押し付ける。
図4を参照してカム42(端面カム)について説明する。図4はカム42の展開図(回転部材40の外周面の360°を平面に展開して示した図)である。モータ30(図2参照)による駆動軸31の第1方向の回転に伴って回転部材40は矢印R1方向へ回転し、モータ30による駆動軸31の第2方向の回転に伴って回転部材40は矢印R2方向へ回転する。
カム42は、金属製であり、解放部43、第1切換部44、蓄積部45及び第2切換部46を1周期とする経路を有している。カム42は2周期分の経路が、回転部材40の1回転に対応して回転部材40の軸方向の端面に形成されている。解放部43は、低位(軸方向の一端側、矢印X1側)に位置し中心軸Oと直交する平坦な面である。第1切換部44は、解放部43から軸方向の他端側(矢印X2側)へ向かって上昇傾斜する勾配を有する面である。蓄積部45は、高位(軸方向の他端側、矢印X2側)に位置し中心軸Oと直交する平坦な面である。第2切換部46は、蓄積部45から軸方向の一端側(矢印X1側)へ向かって下降傾斜する勾配を有する面である。第2切換部46は、勾配角(中心軸Oと直交する基準面に対する角度)θ3が、第1切換部44の勾配角θ1より大きく設定されている。本実施の形態では、第2切換部46は勾配角θ3が90°に設定されている。
蓄積部45は、第2切換部46との境界に、蓄積部45と解放部43との高低差(軸方向の長さ)をL1だけ小さくする傾斜部60が形成されている。蓄積部45は、第1端61から傾斜部60の始端62までは中心軸Oと直交する面であり、傾斜部60は、始端62から蓄積部45の第2端63へ向かって軸方向の一端側(矢印X1側)へ傾斜する。傾斜部60は、勾配角θ2、始端62から第2端63までの軸方向の長さL1及び周方向の長さL2が適宜設定される(tanθ=L1/L2)。傾斜部60の勾配角θ2は、第2切換部46の勾配角θ3より小さい値に設定されている。
移動部材50は、ばね24(図2参照)により軸方向の一方側(矢印X1側)へ付勢されているので、接触部55が、カム42に押し付けられる。ばね24の弾性力によって接触部55とカム42とが押し付けられ、接触部55が解放部43に達するときに移動部材50が軸方向の第1位置へ移動する。単一のばね24によって、これら2つの機能が発揮されるので、クラッチ装置10の構造を簡素化できると共に部品点数を削減できる。
クラッチ装置10は、カム42の解放部43の位置に接触部55が到達すると、移動部材50(図2参照)は軸方向の一方側(矢印X1側)の第1位置に位置する。このときは第1軸11のスプライン12に移動部材50のスプライン51が係合するので、第1軸11の回転は移動部材50を介して第2軸13に伝達される。第2軸13の回転はべベルギヤ9を介してドライブシャフト6に伝達されるので、車両1(図1参照)は四輪駆動状態となる。
モータ30の第2方向の回転により回転部材40が矢印R2方向へ回転して、カム42の第1切換部44に接触部55が接触すると、移動部材50は第1軸11から第2軸13へ動力を伝達しながら、回転部材40の回転に伴い、次第に軸方向の他方側(矢印X2側)へ移動する。接触部55が第1切換部44に押され、移動部材50が軸方向の第2位置へ向かって移動することで、ばね24が圧縮されてばね24に弾性エネルギーが蓄積される。
カム42の蓄積部45に接触部55が達すると、移動部材50は軸方向の他方側(矢印X2側)の第2位置に位置する。このときは第1軸11のスプライン12と移動部材50のスプライン51との係合が解除されるので、第2軸13への回転の伝達が遮断される。その結果、車両1は第1軸11だけが回転駆動される二輪駆動状態となる。
カム42の第2切換部46は勾配角θ3が90°なので、接触部55は、回転部材40の回転に伴って蓄積部45の第2端63を超えると、瞬時に解放部43へ到達する。移動部材50は第2位置から第1位置へ瞬時に移動するので、第1軸11のスプライン12と移動部材50のスプライン51とが互いに周方向の噛合位置にきたときに、ばね24に蓄積された弾性エネルギーによりスプライン51はスプライン12と瞬時に噛み合う。よって、クラッチ装置10は二輪駆動状態から四輪駆動状態へ瞬時に応答性良く切り換えできる。
なお、解放部43へ到達する前に、接触部55はカム42の傾斜部60に接触する。カム42の傾斜部60に接触部55が接触するときには、傾斜部60の勾配角θ2に応じて移動部材50は軸方向の一端側(矢印X1側)へ僅かに移動する(移動距離は最大L1)。傾斜部60は、傾斜部60に接触部55が接触して移動部材50が軸方向へ移動したときに、第1軸11のスプライン12の端に移動部材50のスプライン51の端が当たる(噛み合い始める)ように勾配角θ2及び長さL2が設定されている。傾斜部60がない場合には、ばね24が復元して蓄積部45から解放部43へ接触部55が一気に移動するが、傾斜部60の勾配角θ2によって、第1軸11のスプライン12と移動部材50のスプライン51とが衝突する噛み合い始めの速度を抑えられる。よって、スプライン12,51が噛み合うときの歯打ち音(異音)を抑制できる。
しかし、ばね24の復元力によって解放部43に接触部55が衝突すると、打音(異音)が生じる。また、モータ30の回転速度が大きい場合や寸法の制約を受けて傾斜部60の長さL2を確保できない場合には、傾斜部60によってスプライン12,51の歯打ち音(異音)を抑制できないことがある。そこで、異音を抑制するために、制御装置38はモータ30の回転速度や回転方向等を制御する。
図5はクラッチ装置10の電気的構成を示すブロック図である。制御装置38は、バス72にそれぞれ接続された速度検出電子制御ユニット70及びモータ電子制御ユニット71を備えている。これらの電子制御ユニットはCPU、CPUにより実行される制御プログラム(例えば図6に示すフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶するROM及びRAMを主要構成要素とするコンピュータ装置で構成されると共に、必要に応じてハードディスク等の記憶媒体を含むものである。以下、電子制御ユニットをECUと称す。
速度検出ECU70は、イグッションスイッチがオンの位置にされた後、車両1の走行速度に関するデータを繰り返し取得する。速度検出ECU70は、速度センサ73及び回転数センサ74が接続されている。速度センサ73は車両1(図1参照)の走行速度を検出するセンサである。回転数センサ74はパワーユニット2の回転数を検出するセンサである。速度センサ73及び回転数センサ74は、いずれも検出結果を速度検出ECU70へ出力する出力装置(図示せず)を備えている。速度検出ECU70は、取得したデータを車両1の走行に関する情報としてバス72上へ出力する。バス72上に出力された情報は、その情報を必要とするモータECU71内のインターフェース回路に取り込まれ、新たな情報を取り込むまで保存される。
モータECU71は、イグッションスイッチがオンの位置にされた後、モータ制御処理(図6参照)を所定時間(例えば0.2秒)ごとに繰り返し実行して、モータ30の回転を制御する。モータECU71は、切換スイッチ73及びモータ30が接続されている。本実施の形態ではモータ30はステッピングモータなので、モータECU71は、カム42(図4参照)のどこに接触部55が接触しているかを、モータ30の回転角から検出できる。
切換スイッチ73は、車両1(図1参照)を二輪駆動状態または四輪駆動状態に切り換えるために搭乗者が操作するスイッチ(SW)である。搭乗者に車両1を二輪駆動状態にする要求があるときは切換スイッチ73がオフ、車両1を四輪駆動状態にする要求があるときは切換スイッチ73がオンに切り換えられる。本実施の形態では、車両1が二輪駆動状態のときはクラッチ装置10の係合が解除され、車両1が四輪駆動状態のときはクラッチ装置10が係合する。但し、クラッチ装置10と車両1の状態との関係はこれに限定されない。
図6を参照して、モータECU71で実行されるモータ制御処理について説明する。図6はモータ制御処理のフローチャートである。モータ制御処理は、クラッチ装置10の噛み合い速度を制御しながらスプライン12,51を係合して、車両1を二輪駆動状態から四輪駆動状態に変更するための処理である。
図6に示すようにモータECU71は、モータ30の回転角を検出して、カム42(図4参照)の蓄積部45に接触部55が接触しているか否かを判定する(S1)。その結果、蓄積部45に接触部55が接触していないときは(S1:No)、クラッチ装置10のスプライン12,51は係合しているので、モータECU71はモータ制御処理を終了する。一方、蓄積部45に接触部55が接触しているときは(S1:Yes)、スプライン12,51は係合が解除されているので、モータECU71は、車両1の走行速度は所定速度(本実施の形態では0km/h)以下であるか否か(本実施の形態では停車しているか否か)を判定する(S2)。
S2の処理の結果、走行速度が所定速度以下の場合には(S2:Yes)、モータ30の制御方式を、偏差の大きさに従って出力を変化させる比例積分制御(PI制御)にする(S3)。モータECU71は、モータ30を第1方向へ回転して回転部材40を第1方向(矢印R1方向)へ回転させ、接触部55を蓄積部45の第1端61へ近づける(S4)。この状態からモータ30を第1方向へ回転させたときに、接触部55が蓄積部45を離れて第1切換部44に接触するまでの時間を短縮するためである。
次に、モータECU71は切換スイッチ75がオンであるか否かを判定する(S5)。その結果、切換スイッチ75がオフであるときは(S5:No)、車両1を四輪駆動状態にする要求がなく、クラッチ装置10は既に係合しているので、モータECU71はモータ制御処理を終了する。一方、切換スイッチ75がオンであるときは(S5:Yes)、車両1を四輪駆動状態にする要求があるので、クラッチ装置10を係合するため、モータECU71は、モータ30を第1方向へ回転して回転部材40を第1方向(矢印R1方向)へ回転させ、接触部55を、第1切換部44を経て解放部43へ到達させる(S6)。このときのモータ30の第1方向の回転数は、モータ30の第2方向(後述する)の回転数より低くする。
このモータ制御処理によれば、第2切換部46の勾配角θ3より勾配角θ1が小さい第1切換部44を経て、接触部55が蓄積部45から解放部43へ到達するので、移動部材50が軸方向の第1位置へ移動する速度を遅くすることができる。スプライン12,51の噛み合い始めの速度を低下できるので、スプライン12,51の噛み合いに伴う歯打ち音(異音)を抑制できる。
制御装置38は、速度検出ECU70が取得した情報に基づいて車両1の走行速度が所定速度(0km/h)以下であるか判断する。判断の結果、車両1が停止のときにモータ30を第1方向へ回転させ、回転部材40を第1方向(矢印R1方向)へ回転させて第1切換部44を経て接触部55を解放部43へ到達させる。車両1が停止のときは、パワーユニット2は回転数が低いか停止しているので、走行中に比べて一般に車両1の騒音は小さい。車両1の騒音が小さいときに生じる異音(歯打ち音)を目立ち難くできるので、搭乗者に違和感を覚えさせ難くできる。
モータ30の第1方向の回転数は、モータ30の第2方向(後述する)の回転数より低いので、スプライン12,51の噛み合い始めの速度をさらに低下させることができる。スプライン12,51の噛み合いに伴う衝撃をより小さくできるので、歯打ち音(異音)を抑制できる。
制御装置38は、接触部55を第1切換部44へ移動させる前に、接触部55を蓄積部45の第1端61へ近づけるので、この状態からモータ30を第1方向へ回転させたときに、接触部55が蓄積部45を離れて第1切換部44に接触するまでの時間を短縮できる。モータ30の第1方向の回転数を低くしたり第1切換部44を接触部55が通過したりしても、接触部55を蓄積部45の第1端61へ近づけない場合に比べ、接触部55が第1切換部44に接触するまでの時間を短縮できるので、スプライン12,51が噛み合い始めるまでの時間を短縮し、スプライン12,51が係合する時間を短縮できる。
モータ30を第1方向に回転するときはモータ30の制御方式がPI制御によるので、偏差の大きさに従ってモータ30への出力を変化させることができる。偏差に対してモータ30が過度に反応しないようにできるので、スプライン12,51の噛み合い始めの速度が一時的に増加して歯打ち音が生じる等の不具合を防止できる。なお、モータ30を第1方向に回転するときの制御方式はPI制御に限るものではなく、P制御、ON−OFF制御等を採用できる。
これに対しS2の処理の結果、走行速度が所定速度を超える(車両1が走行中である)場合には(S2:No)、モータ30の制御方式を、偏差の時間変化に比例する微分制御を組み合わせたPID制御にする(S7)。モータECU71は、モータ30を第2方向へ回転して回転部材40を第2方向(矢印R2方向)へ回転させ、接触部55を傾斜部60の始端62へ近づける(S8)。この状態からモータ30を第2方向へ回転させたときに、接触部55が蓄積部45を離れて第2切換部46に到達するまでの時間を短縮するためである。
次に、モータECU71は切換スイッチ75がオンであるか否かを判定する(S9)。その結果、切換スイッチ75がオフであるときは(S9:No)、車両1を四輪駆動状態にする要求がなく、クラッチ装置10は既に係合しているので、モータECU71はモータ制御処理を終了する。一方、切換スイッチ75がオンであるときは(S9:Yes)、車両1を四輪駆動状態にする要求があるので、クラッチ装置10を係合するため、モータECU71は、モータ30を第2方向へ回転して回転部材40を第2方向(矢印R2方向)へ回転させ、接触部55を傾斜部60へ到達させ(S10)、次いで接触部55を解放部43へ到達させる(S11)。このときのモータ30の第2方向の回転数は、モータ30の第1方向の回転数より高くする。
このモータ制御処理によれば、車両1の走行中のときに、蓄積部45に接触する接触部55が第2切換部46から解放部43へ達するようにモータ30を第2方向へ回転させる。車両1が走行するときは、停車中に比べて一般に車両1の騒音は大きいので、接触部55が解放部43へ達したときに生じる異音(接触部55が解放部43に衝突する打音やスプライン12,51の歯打ち音)を目立ち難くできる。一方、第2切換部46は第1切換部44の勾配角θ1より勾配角θ3が大きいので、接触部55が第1切換部44から解放部43へ達する場合に比べて、スプライン12,51が係合する応答性を向上できる。よって、応答性を確保しつつ異音を目立ち難くできる。
モータ30の第2方向の回転数は、モータ30の第1方向の回転数より高いので、スプライン12,51を迅速に噛み合わせることができる。よってスプライン12,51が係合する応答性を向上できる。
制御装置38は、接触部55を解放部43へ移動させる前に、接触部55を蓄積部45の第2端63(本実施の形態では傾斜部60の始端62)へ近づけるので、この状態からモータ30を第2方向へ回転させたときに、接触部55が蓄積部45を離れて第2切換部46を経て解放部43に到達するまでの時間を短縮できる。
モータ30を第2方向に回転するときはモータ30の制御方式がPID制御によるので、モータECU71は、過渡応答を考慮して、オーバーシュートを防ぎつつモータ30の回転数を高くできる。スプライン12,51が係合する時間を短縮できるので、応答性を向上できる。
なお、制御装置38は、傾斜部60の始端62から第2端63までを接触部55が移動するときのS11におけるモータ30の第2方向の回転数を、傾斜部60の始端62へ接触部55を近づけるときのS10におけるモータ30の回転数より低くすることができる。接触部55と傾斜部60とが接触する位置でモータ30を減速することにより、傾斜部60によって接触部55(移動部材50)が軸方向へ移動する速度を確実に遅くできる。第1軸11のスプライン12と移動部材50のスプライン51とが衝突する噛み合い始めの速度を抑えられるので、スプライン12,51の噛み合いに伴う歯打ち音(異音)を抑制できる。
なお、図6に示すフローチャートにおいて、請求項1記載の第1回転手段としてはS6の処理が、請求項1記載の速度判断手段としてはS2の処理が、請求項1記載の第2回転手段としてはS11の処理が、請求項4記載の待機手段としてはS4の処理がそれぞれ該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態では、モータ30によって回転される回転部材40にカム42を形成し、移動部材50に接触部55を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。これとは逆に、回転部材40に接触部55を設け、移動部材50にカム42を設けることは当然可能である。モータ30によって回転部材40を回転させ、接触部55を回転させることにより、接触部55が押し付けられたカム42の輪郭に応じて移動部材50を軸方向へ移動させることができるからである。この場合も、移動部材50が移動することでばね24に弾性エネルギーが蓄積され、その弾性エネルギーを解放して移動部材50を軸方向へ移動させることができる。
上記実施の形態では、カム42の輪郭に接触する接触部55が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。円柱状の接触部55に代えて、径方向の外側へ向かって突出する軸を支持部材54に設け、その軸に嵌めたローラを接触部とすることは当然可能である。ローラによりカム42との摩擦を軽減できる。この場合には、ケース20に形成された溝部28に軸の先端を係合させる。
上記実施の形態では、第2切換部46の勾配角θ3が90°の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、勾配角θ3は適宜設定できる。勾配角θ3は第1切換部44の勾配角θ1よりも大きければ良い。また、上記実施の形態では、カム42に傾斜部60が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、傾斜部60を省略することは当然可能である。
上記実施の形態では、第1軸11の径方向外側に配置された第2軸13と第1軸11との間の動力の伝達または遮断を切り換えるクラッチ装置10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、軸方向の端面を互いに対向させた状態に配置される第1軸と第2軸との間の動力の伝達または遮断を切り換えるクラッチ装置とすることは当然可能である。この場合のクラッチ装置は、例えば、パワーユニットによって駆動される車両の前輪の車軸(第1軸および第2軸)に配置される。車両は、前輪の車軸に配設されたクラッチ装置によって後輪が駆動される二輪駆動状態と、前輪および後輪が駆動される四輪駆動状態とが切り換えられる。四輪駆動状態では、クラッチ装置によって前輪の車軸が連結されることで、トランスファ及びドライブシャフトを介して後輪を駆動するパワーユニットの駆動力が、クラッチ装置を介して前輪の車軸に伝達される。二輪駆動状態では、トランスファの出力を切り換えると共にクラッチ装置によって前輪の車軸の連結が解除されることで、前輪の車軸への駆動力の伝達が遮断される。
このクラッチ装置は、第1軸および第2軸の外周に形成されたスプラインに、円筒状の移動部材の内周に形成されたスプラインを係合して動力を伝達する。動力の伝達を遮断するには、第1軸または第2軸のスプラインと移動部材のスプラインとの係合を解除する。この場合もモータによって回転部材を回転させ、カムによって回転部材の回転運動を移動部材の軸方向の往復運動に変換することにより、第1実施の形態で説明したクラッチ装置10と同様の作用効果を実現できる。
上記実施の形態では、2つの部材(第1軸11及び第2軸13)の同軸上に配置された移動部材(伝達機構が移動部材に形成されている)によって動力を伝達し遮断するクラッチ装置について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。動力を伝達し遮断する2つの部材は、移動部材と同軸上に配置されるものに限らない。例えば、軸に沿って移動する移動部材にアームを設け、そのアームによって移動するスリーブを設けることができる。軸方向の端面が突き合わされる第1軸および第2軸(2つの部材)の外周にスプライン(伝達機構)を形成し、そのスプラインに噛み合うスプライン(伝達機構)をスリーブの内周に形成することができる。移動部材の移動に伴って第1軸および第2軸に沿ってスリーブが移動すると、スリーブのスプライン(伝達機構)が係合して動力の伝達と遮断とが切り換えられる。この場合も第1実施の形態で説明したクラッチ装置10と同様の作用効果を実現できる。
上記実施の形態では、第2軸13に直交するドライブシャフト6に動力を出力するため、第2軸13にべベルギヤ9が取り付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。動力が出力される軸の位置関係に応じて、べベルギヤ以外の他の機構を採用することは当然可能である。他の機構としては、平歯車、はすば歯車等のギヤ、チェーンが係合するスプロケット等が挙げられる。
上記実施の形態では、車両1が停止しているときにモータECU71がモータ制御処理を実行する場合(所定速度=0km/h)について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、モータ制御処理を実行する所定速度は0〜20km/h程度の間で適宜設定できる。車両1は停止していなくても低速走行をしているときは、一般に車両1の騒音は小さいからである。
上記実施の形態では、車両1の走行に関する情報として走行速度を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。車両1の走行に関する他の情報としては、例えば、車両1の加速度、パワーユニット2の回転数が挙げられる。車両1の加速度は、車両1に搭載した加速度センサ(図示せず)の検出結果や、速度センサ73の検出結果を時間微分して求めることができる。加速度が小さいときには一般に車両1の騒音は小さいので、車両1の加速度が小さいときのスプライン12,51が係合する速度を低下させることにより、歯打ち音を抑制して車両1の静粛性を確保できる。
パワーユニット2の回転数は回転数センサ74によって検出できる。パワーユニット2の回転数が低いとき或いはパワーユニット2がアイドルストップ等によって停止しているときは、一般に車両1の騒音は小さいので、パワーユニット2による騒音が小さいときのスプライン12,51が係合する速度を低下させることによって、歯打ち音を抑制して車両1の静粛性を確保できる。