本発明による吸収性物品をテープ型使い捨ておむつに適用した一実施形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明による吸収性物品は、このようなテープ型使い捨ておむつに限らず、パンツ型使い捨ておむつや尿漏れパッドなど、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される吸収体とを有する各種吸収性物品に適用可能である。
本実施形態によるテープ型使いすておむつの使用状態における外観を図1に示し、その内側の肌当接面側を表にして展開した状態の外観を図2に示し、これをさらに分解した状態の外観を図3に示し、図2中のIV−IV矢視に沿った断面構造を模式的に図4に示す。
すなわち、本実施形態におけるテープ型おむつ10は、液不透過性のカバーシート11と、バックシート12と、吸収体13と、液透過性のトップシート14と、左右一対のサイドシート15とを有する。トップシート14が重ね合わされるバックシート12は、トップシート14とほぼ同じ寸法形状を有し、良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されたカバーシート11に接合される。吸収体13は、バックシート12と、このバックシート12に重ね合わされるトップシート14との間に配され、バックシート12とトップシート14とが直接接するこれらの外周縁部は相互に一体的に接合される。液不透過性のサイドシート15の外側部分(図2中、左右両側)は、カバーシート11の左右両側に重ね合わされ、バックシート12およびトップシート14の左右両側縁部と、カバーシート11とに対してそれぞれ一体的に接合される。カバーシート11およびサイドシート15は、バックシート12およびトップシート14の左右、すなわち幅方向両側縁から外側へ延出する前後一対のサイドフラップ部10f,10rを有する。これらサイドフラップ部10f,10rの間の股下領域10Cには、着用者に脚周り開口部10Lとなる一対の切欠き部10Nが形成されている。
本実施形態においては、トップシート14の左右両側に覆い重なる左右一対のサイドシート15の内側部分(図2中、中央側)がトップシート14に対して非接合状態となっている。この内側部分に立体ギャザー15Gを形成するため、サイドシート15の内側端縁部に糸ゴム15aが伸張状態で接合されている。
後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rの幅方向両側縁部には、着用時に前身頃領域F側のサイドフラップ部10fに重ね合わせてこれらをつなぐ左右一対のファスニングテープ16の基端部が接合されている。ファスニングテープ16を介して後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rを前身頃領域10F側のサイドフラップ部10fに重ね合わせることにより、ウエスト周り開口部10Wと脚周り開口部10Lとが形成される。このファスニングテープ16は、その幅方向に沿って伸縮性を持たせた伸縮シートで構成され、その先端部分に面ファスナー16aが取り付けられている。面ファスナー16aは、前身頃領域10F側のカバーシート11に接合された面ファスナーシート17に対して繰り返し剥離可能に接合可能である。従って、弾性力を伴ってファスニングテープ16を引き延ばしてその面ファスナー16aの部分を前身頃領域10Fの面ファスナーシート17に接合することにより、着用者のウエスト周りに対して常に適切な締め付け力を与えることができる。
また、このテープ型おむつ10の後身頃領域10R側の左右のサイドシート15には、トップシート14を跨ぐように配される横に細長いウエスト周り弾性シート18が伸長状態で接合されている。本実施形態におけるウエスト周り弾性シート18は、ベースシート18aと、このベースシート18aに伸長状態で相互に平行に接合される複数本の糸ゴム18bと、これら糸ゴム18bを覆うようにベースシート18aに接合される肌触りの良好なアッパーシート18cとで構成される。このウエスト周り弾性シート18はウエスト周り開口部10Wに沿って配設され、図示しないウエストギャザーを形成して着用者のウエスト周りのフィット性を良好にする機能を有する。同様に、吸収体13の両側縁の外側の長手方向に沿った股下領域10Cから前身頃領域10F側および後身頃領域10R側にかけて脚周り弾性部材19が配されている。本実施形態では糸ゴムにて形成した脚周り弾性部材19は、カバーシート11とサイドシート15との間に伸長状態で固定され、レッグギャザー19Gを形成して着用者の脚周りのフィット性を良好にする機能を有する。
従って、このテープ型おむつ10は、その着用時に前身頃領域10Fと後身頃領域10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成される。同様に、前身頃領域10Fおよび後身頃領域10Rと、これらの下端部をつなぐ股下領域10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成される。
次に、本実施形態における吸収体13の部分の詳細な構造を説明する。
バックシート12との間に吸収体13を包むトップシート14の平面形状を図5に示し、その表面の一部を抽出拡大して図6に示し、図5中のVII−VII矢視およびVIII−VIII矢視に沿った断面形状を図7および図8にそれぞれ示す。
本実施形態における吸収体13は、主にパルプとSAPとで構成される吸収性本体13aと、この吸収性本体13aを包むティシュペーパーなどのコアラップ13bとで構成される。しかしながら、コアラップ13bを必要としない、すなわち吸収性本体13aのみで吸収体13を構成することも可能である。この吸収体13は、おむつ10の前身頃領域10Fから股下領域10Cを通って後身頃領域10Rまで達するように、これらに対応した前身頃部分と股下部分と後身頃部分とを有する。吸収体13の股下部分には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lに合わせて、円弧状をなす一対の切欠き部13Aが形成され、股下部分の幅が前身頃部分および後身頃部分の幅に比べて狭くなっている。
なお、この切欠き部13Aを吸収体13に形成することは必須ではない。また、吸収体13の輪郭形状も本実施形態のような細長い形状以外に、楕円形や円形または正方形など、様々な形状を採用することができる。さらに、着用対象者やその用途などに応じて図5中、上下方向となる長手方向と、これに直交する図5中、左右方向となる幅方向との比率を任意に変更することが可能である。
図5および図6に示されるように、吸収体13は、トップシート14と共にその表面からバックシート12に向かってエンボス加工を規則的に施したエンボスパターン形成領域、すなわち凹部形成領域ZRを有する。この凹部形成領域ZRには、エンボス加工による複数の凹部20a〜20cの配列によって、全体として、遠視的に斜め格子状のパターンとなるエンボスパターンが形成される。具体的には、格子の交点に位置する第3の凹部20cと、これら第3の凹部20cの間にそれぞれ位置し、第1の方向D1に沿って延在する第1の凹部20aおよび第1の方向D1と異なる第2の方向D2に沿って延在する第2の凹部20bとを具えている。本実施形態では、第1の方向D1が吸収体13の幅方向に対して45度傾斜し、第2の方向D2は吸収体13の幅方向に対して第1の方向D1とは逆方向に45度傾斜し、図5において左右対称のエンボスパターンとしているが、これらに限定されない。第1および第2の方向D1,D2は、吸収体13の幅方向に対して10度以上80度未満であることが有効であり、好ましくは30度以上45度以下である。第3の凹部20cは、第1の凹部20aおよび第2の凹部20bに対して不連続であり、その周囲はエンボス加工が施されない凹部非形成領域、すなわち未変形領域ZUにて囲まれた状態となっている。
本実施形態における斜め格子状のエンボスパターンは、第1の凹部20aと第3の凹部20cとからなる第1の凹部列L1と、第2の凹部20bと第3の凹部20cとからなる第2の凹部列L2とで形成される。第1の凹部20aと第3の凹部20cとを第1の方向D1に沿って交互に配列した第1の凹部列L1は、第2の方向D2に沿って一定の間隔S2で配列している。また、第2の凹部20bと第3の凹部20cとを第2の方向D2に沿って交互に配列した第2の凹部列L2は、第1の方向D1に沿って一定の間隔S1で配列している。本実施形態では、第1の方向D1に沿った第2の凹部列L2の間隔S1および第2の方向D2に沿った第1の凹部列L1の間隔S2をそれぞれ27.0mmに設定しているが、これらの間隔S1,S2は、55.0mm以下であることが好ましい。しかしながら、間隔S1,S2を吸収体13の全域に亙って同じ値に設定する必然性はなく、これらを吸収体13の各部分によって異なる値に設定してもよい。また、格子の交点領域に第3の凹部20cを形成せず、ここを未変形領域ZUのままにしておくことも可能である。
なお、第1の凹部20a,第2の凹部20b,第3の凹部20cは、トップシート14と、コアラップ19および吸収体13とを共に一体的に圧縮して形成される。また、図5に示されるように、エンボスパターンは、吸収体13の周縁部には形成されておらず、従って凹部形成領域ZRは、このエンボスパターンが形成されない凹部非形成領域ZNによって取り囲まれた状態となっている。この凹部非形成領域ZNの存在により、エンボスパターンを構成する第1の凹部20a,第2の凹部20b,第3の凹部20cを伝って、尿などの液体が吸収体13の周縁部から漏れることを抑制することができる。なお、図5には便宜的に凹部形成領域ZRと凹部非形成領域ZNとの境界を二点鎖線で示してある。
そして、図5および図6から理解されるように、格子パターンを形成する格子のひとつのマス(マス目)は次の構成である。四辺の主要部は、各第1の凹部20a,第2の凹部20bで形成され、四隅は第3の凹部20cで形成される。ここで、第1の凹部20a,第2の凹部20bの長さUは、先の間隔S1,S2よりも短い。図5に示されるように、第1の凹部20aと第2の凹部20bとは重なり合わない。
図6中、凹部20a〜20cの周囲をそれぞれ取り囲む二点鎖線で示す領域は、凹部準形成領域ZSである。すなわち、凹部20a〜20cをエンボス加工によって形成すると、トップシート14および吸収体13とが強く圧縮され、凹部20a〜20cの周囲のトップシート14および吸収体13がこれに引き寄せられて押し縮められることになる。このように、エンボス型によって強く圧縮された第1の凹部20a,第2の凹部21bおよび第3の凹部20cに対し、これらの周囲の弱く圧縮される領域を本明細書では凹部準形成領域ZSと呼称する。従って、吸収体13がエンボス加工によってエンボス加工前の状態から実質的に変形するのは、第1の凹部20a,第2の凹部20b,第3の凹部20cに加え、これらの周囲の凹部準形成領域ZSとなる。これら凹部20a〜20cおよび凹部準形成領域ZS以外はエンボス加工によって圧縮されないので、未変形領域ZUとなる。すなわち、格子の交点領域に位置する第3の凹部20cと第1の凹部20aおよび第2の凹部20bとの間の領域および格子で囲まれた領域は、未変形領域ZUであり、尿などの液体を保持する吸収体13本来の機能を達成する部分である。
図5および図6に示されるように、本実施形態における凹部非形成領域ZNおよび未変形領域ZUは、吸収体13の厚み(高さ)がエンボス加工前後でほぼ同じである。一方、凹部形成領域ZRの第1の凹部20aおよび第2の凹部20bと第3の凹部20cは、エンボス加工によって吸収体13が圧縮された状態となっており、未変形領域ZUよりも吸収体13の厚みが薄くなっている。凹部準形成領域ZSは、この凹部形成領域ZRと未変形領域ZUとをつなぎ、吸収体13の厚みが漸次薄く変化する部分である。
次に、各凹部20a〜20cのより詳細な形状について具体的に説明する。
図6〜図8に示されるように、第1の凹部20a,第2の凹部20bは、これらの輪郭を形成する浅凹部201と、各浅凹部201内に間欠的に配され、浅凹部201よりもさらに深く凹んだ円形の深凹部202とで構成されている。細長い浅凹部201は、図7に示されるように、第1の方向D1または第2の方向D2に対向する2つの凹部準形成領域ZSの間隔SZよりも短い長さUとほぼ一定の幅Vとを持つ細長い長円形状を有している。浅凹部201の幅Vよりも小径の深凹部202は、浅凹部201の長手方向に沿って所定間隔で浅凹部201の対向する側壁部分に交互に内接状態で配されている。深凹部202は、浅凹部201よりもバックシート12側に近づくように深くくぼんでいる。
図8に示されるように、未変形領域ZUにあるトップシート14の表面からバックシート12側に向けて最も遠い(深い)所に深凹部202が位置し、未変形領域ZUにあるトップシート14の表面と深凹部202との間に浅凹部201が位置する。浅凹部201の底面から深凹部202の底面までの深さ、すなわち未変形領域ZUにあるトップシート14の表面から深凹部202の底面までの深さ(以下、単に深凹部202の深さと記述する)Q1と、未変形領域ZUにあるトップシート14の表面から浅凹部201の底面までの深さ(以下、単に浅凹部201の深さと記述する)Q2との差Q3は、深凹部202の深さQ1の約3.5〜15%程度である。また、未変形領域ZUにおけるトップシート14からバックシート12までの距離、すなわち吸収体13の厚みをQ4とすると、深凹部202の深さQ1は、この厚みQ4の42.5%〜97.5%程度である。同様に、浅凹部201の深さQ2は、厚みQ4の37.5%〜95.0%程度である。このように、本実施形態における第1の凹部20a,第2の凹部20bは、吸収体13をかなり深くまで圧縮して形成されている。そして、2段階の深さを有する形状となっている。
一方、図8に示されるように、未変形領域ZUにあるトップシート14の表面から格子の交点領域に位置する第3の凹部20cの底面までの深さ(以下、第3の凹部20cの深さと記述する)は、浅凹部201の深さQ2と同じになるように設定されている。
より具体的には、吸収体13の未変形領域ZUの厚みQ4は8.0mmであるが、これは5.0mm〜20.0mmの範囲にあることが好ましい。図8に示されるように、深凹部202の深さQ1は7.8mmであるが、3.0mm〜8.0mmの範囲にあることが好ましい。そして、浅凹部201の深さQ2は7.5mm、浅凹部201の深さQ2と深凹部202の深さQ1との差Q3は、0.1mm〜0.5mmの範囲にあることが好ましい。
第1の凹部20a,第2の凹部20bおよび第3の凹部20cを形成するエンボス加工は、トップシート14と吸収体13との間に接着剤を介在させ、トップシート14表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮するものである。第1の凹部20a,第2の凹部20b、第3の凹部20cは、エンボスロールに形成された所定の型によって、トップシート14の表面からトップシート14と吸収体13とを共に圧縮して形成されたものである。
そして、第1の凹部20a,第2の凹部20bにおいては、深凹部202は、小さな円であり、その面積は小さい。従って、エンボスロールによる押圧において、深凹部202に圧力が集中し、吸収体13とトップシート14は強く圧縮される。この圧縮の際に、吸収体13のパルプ繊維とトップシート14の繊維とがしっかりと絡み合い、両者が一体となった状態で接合される。次に、浅凹部201においても圧縮の際に同じ押圧力が加わるが、面積が広い分、圧力は深凹部202ほど集中しない。このため、吸収体13とトップシート14との接合は深凹部202に比べるとわずかに弱いが、その凹部形状を形成するには十分である。このように、深凹部202において吸収体13が強く圧縮されているとともに、吸収体13とトップシート14とがしっかりと接合することにより、第1の凹部20a,第2の凹部20bの形状が維持される。例えば、このおむつ10の着用者が着座するなどして、吸収体13表面に着用者の体重による圧力が加わった際にも、この第1の凹部20a,第2の凹部20bはへたることなく、その形状が維持される。そして、脚の様々な動きによって、おむつ10が強く引っ張られたりしても、トップシート14と吸収体13とがしっかりと接合しているため、第1の凹部20a,第2の凹部20bはその形状を維持することができる。
ここで、浅凹部201と深凹部202の二段階構造とするのではなく、第1の凹部20a,第2の凹部20b全体に強い圧縮力を加えて形成することも考えられる。すなわち、エンボス加工において、浅凹部201に合わせた略楕円状の突起の内部にさらに、深凹部202に合わせた丸い突起を突出させた型を用いるのではなく、表面が平らな略楕円状の突起のみの型を用いて圧縮することも考えられる。しかしながら、そのような型では圧力が集中する箇所が作られていないので、全体的に強く圧力を加えないと、トップシート14と吸収体13との繊維が強く絡み合った状態で接合する箇所を作り出せない。結果として、必要な押圧力は大変強くなり、トップシート14が破れてしまう場合がある。また、全体に弱い押圧力での圧縮では、着用者の体重や様々な動きに耐えられる第1の凹部20a,第2の凹部20bを形成することが難しい。本実施形態では、エンボス加工の型において深凹部202に対応する突起を設けて、部分的に強く圧縮することにより、トップシート14と吸収体13とがしっかりと接合する箇所を作るとともに、製造時にトップシート14が破れるなどの不良発生を防ぐことができる。
さらに、格子の交点領域に配される第3の凹部20cは、上述したように、エンボスロールによって吸収体13が浅凹部201と同じ程度押圧されて圧縮されることで形成される。この押圧の強さはトップシート14が破れることなく、トップシート14と吸収体13との一体的な接合を実現する程度の強さである。
図7,図8に示されるように、吸収体13において、深凹部202の底面部分は、吸収体13の密度が最も高い高密度部13Hであり、先の未変形領域ZUは、吸収体13の密度が最も低い低密度部13Lである。また、浅凹部201の底面部分および第3の凹部20cの底面部分は、密度が高密度部13Hと低密度部13Lの中間の中密度部13Mである。さらに凹部準形成領域ZSは、未変形領域ZUに向けて密度がしだいに低くなっていく密度変化部13Vとなる。
前述したように、吸収体13は主にSAPとパルプとからなるものであり、密度は主にパルプ繊維密度が関与している。従って、高密度部13Hはパルプが圧縮され、パルプ間の隙間が少ない状態である一方、低密度部13Lは、パルプ間の隙間が高密度部13Hに比べて多い状態である。
加えて、凹部20a〜20cは、合成樹脂であるトップシート14と主成分がパルプの吸収体13とを共に圧縮接合して形成されているので、凹部20a〜20cの底面から高密度部13Hへと尿などの液体があまり吸収されない傾向を持つ。従って、凹部20a〜29cに流れ込む液体は、凹部20a〜20cの側壁を通って密度変化部13Vへと吸収され、さらに未変形領域ZUの低密度部13Lへと流動する。
本実施形態では、第1および第2の凹部列L1,L2を形成する上で、凹部20a〜20cを連続させることなく、間欠的に凹部20a〜20cを形成している。特に、この斜め格子の交点領域に第3の凹部20cを設け、これを取り囲む第1の凹部20a,第2の凹部20bを第3の凹部20cから離して位置させている。第3の凹部20cを取り囲むこのような隙間、すなわち未変形領域ZUを形成する理由について以下に説明する。
上述したように、斜め格子の第1および第2の凹部列L1,L2は、各凹部20a〜20cに対して相補的形状のエンボスパターンを表面に形成したエンボスロールを回転させながら押し当てることにより形成される。図5に示されるように、エンボスロールを回転させながら吸収体13をその長手方向に送り込むと、吸収体13の搬送方向(図5中、上方向)に対して直交する吸収体13の幅方向に並ぶ第1の凹部20aおよび第2の凹部20bの部分が同時にエンボスロールに押圧される。本実施形態では、エンボスロールの円周長は、切断されるべきバックシート12およびトップシート14の長さに対応するように、エンボスロールの径が設定されているが、これに限らない。
なお、本実施形態では吸収体13を一定間隔で配したバックシート12およびトップシート14の連続体の搬送方向に対し、エンボスロールの回転軸線を直交させている。上述したように、トップシート14と吸収体13とを共にエンボスロールで圧縮した後、カバーシート11やサイドシート15などを重ね合わせて接合し、所定の寸法のおむつ10へと切断される。
第1の凹部20aは、吸収体13の搬送方向に対して右45度傾斜し、第2の凹部20bは左45度傾斜することとなる。このため、エンボスロールに対して吸収体13への送り込みが進むにつれて、格子の交点に向かって吸収体13の幅方向に隣接する第1の凹部20aと第2の凹部20bと間の距離が短くなって行く。
ここで、凹部20a〜20cを形成するエンボスロールの押圧の際、トップシート14は凹部20a〜20c内に引き込まれることになる。特に、第1の凹部20aと第2の凹部20bは、吸収体13の幅方向に隣接して配された状態となるため、これらを形成する上で同時に左右からトップシート14が引き込まれることになる。つまり、吸収体13の幅方向(図6中、左右方向)の引き込み力が隣接する第1の凹部20aと第2の凹部20bとの間で左右同時にトップシート14に加わることになる。隣接する第1の凹部21aと第2の凹部21bとの距離が短くなるほど、すなわち格子の交点に近づくほどこれらの間のトップシート14に強い引っ張り力が作用する。
例えば、同じ大きさの格子パターンを形成する際に第3の凹部20cを省略して第1の凹部20aおよび第2の凹部20bを格子の交点直近にまで延在させた場合、つぎのような問題が生ずる。すなわち、格子の交点近傍においては、吸収体13自体の密度が高く、硬い状態であるところに加え、近接する左右の凹部20a,20bのエンボス加工の際に発生する引き込み力によって、トップシート14が強く吸収体13に押し付けられた状態となる。このため、格子の交点近傍においては、吸収体13に含まれるSAPがトップシート14に強く当たり、ざらざらとした手触りとなる。これは、着用者の肌に対して刺激となるため、好ましくない。
従って、本実施形態では、吸収体13の幅方向に隣接する第1の凹部20aと第2の凹部20bとの距離をある程度以上に保ち、それ以上、トップシート14が強く引っ張られる状態としないようにする。すなわち、トップシート14が塑性変形を伴う伸びではなく、弾性変形を伴う伸びに留まるように、余裕を持たせた状態で吸収体13の圧縮および吸収体13とトップシート14との接合を行う。これにより、SAPによるざらざらとした手触りおよび格子の交点領域が硬くなることを抑制する。
このような状態を満たす吸収体13の幅方向に沿った第1の凹部20aと第2の凹部20bとの最短距離を以下、便宜的にTと表記する。吸収体13の幅方向に沿った第1の凹部20aと第2の凹部20bとの最短距離をT以上にすることにより、トップシート14には強い引っ張り力が掛からない状態で吸収体13に固定されることとなり、硬い手触りを回避することができる。上述したトップシート14の過大な引っ張り力についての問題は、吸収体13の長手方向に関しては発生しないけれども、吸収体13が硬くなるという問題については解消できない。従って、吸収体13の長手方向に沿った第1の凹部20aと第2の凹部20bとの最短距離もT以上とすることが有効である。
言い換えると、エンボスパターンの設定時に、第1および第2の凹部列L1,L2によって仕切られる格子の対角線と平行な方向において、隣接する第1および第2の凹部20a,20bの距離がT以上となるように、凹部20a,20bの長さUが設定される。
一例として、吸収体13の厚みが8mm、第3の凹部の深さQ2が6mmの場合、上述したTは7mm程度である。この値は、吸収体13におけるSAPの量とパルプ繊維量との関係や、トップシート14の厚みによっても変化する。本発明において重要な点は、斜め格子状など斜めの成分を有するエンボスパターンを用いる際に、隣接する凹部間の間隔が狭くなる部分にはエンボスパターンを形成しないということである。
一方で、格子の交点自体は、近接して左右両方から同時に押圧される場所でないため、トップシート14が強く引っ張られることがない。トップシート14に作用する張力を考慮して凹部20a〜20cが形成されない未変形領域ZUを広く取りすぎると、第1および第2の凹部列L1,L2が列として識別されなくなり、格子パターンとして認識されない可能性がある。また、あまりに第1の凹部20aおよび第2の凹部20bと第3の凹部20cとの間隔、つまり未変形領域ZUが広いと、吸収体13が体の動きに追従して斜めに折れ曲がりやすいという作用を発揮させにくくなる。従って、トップシート14に作用する張力に関して影響のない格子の交点領域に第3の凹部20cを形成し、格子としての認識性を高めてその視覚的効果をより向上させることができる。また、格子の交点領域を硬質化させることなく、着用者の体の動きに吸収体13が追従し、折れ曲がりやすくすることができる。
このように、本実施形態では、隣接する凹部21間の最短距離がT未満とならないようにする。つまり、凹部21を距離T以上離して配置したエンボスパターン、すなわち、格子の交点近傍26はエンボス加工しないエンボスパターンとすることにより、肌当接面の肌触りが硬くなることを防ぐ。そして、格子の交点領域は吸収体13の未変形領域ZUと同様にふんわりとした状態であるので、斜め格子状のエンボスパターンを用いても、格子の交点領域が硬く尖った手触りとならず、着用者にふんわりとした肌触りを与えることができる。
また、第1の凹部列L1と第2の凹部列L2の交点には、第3の凹部20cを設けることにより、格子の交点(マスの頂点)を視覚的に明確化させ、美観性、デザイン性を向上させる。また、この斜めに伸びる凹部列L1,L2によって、製造不良によるしわや、不規則に並んだヨレ等と混同されないようにすることができる。また、体の動きに追従した吸収体13の斜め方向にも変形しやすくなる。しかしながら、第3の凹部20cを省略することも可能であり、この場合には、第1の凹部20aおよび第2の凹部20bを格子の交点領域により近接するように、これらの長さを増大させることが好ましい。
本実施形態における第1の凹部20a,第2の凹部20bの長手方向の長さUは19.0mmであるが、第2の凹部列L2の間隔S1および第1の凹部列L1の間隔S2の55%から85%であることが好ましい。また、第1の凹部20a,第2の凹部20bの幅Vは、3.0mmであるが、2.0mm以上4.0mm以下であることが好ましい。また、第1の方向D1または第2の方向D2に沿った第3の凹部20cの幅V1は、第1の凹部20a,第2の凹部20bの幅Vと同じか、それよりも狭い。本実施形態では幅V1を2.0mmに設定しているが、1.0mm以上4.0mm以下であることが好ましい。一方、第1および第2の凹部20a,20bと、第3の凹部20cとの間の隙間、すなわち未変形領域ZUの長さは、4.4mmであるが、2.0mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
各凹部20a〜20cをこのような深さおよび間隔で形成することにより、体重が加わっても、その溝を維持することができるとともに、おむつの股下部の肌当接面において、柔らかい肌触りを維持することができる。従って、斜め格子状のエンボスパターンにより、脚の様々な動きに対しておむつがよれるなど変形を抑制できるとともに、その肌触りを柔らかいものとして、肌への刺激を極力抑えることができる。
なお、本実施形態において、第1の凹部20a,第2の凹部20bは、細長い略楕円形の浅凹部201によってその外形が確定されるものとしたが、本発明はこれに限らず、斜め格子状の圧縮列を複数のドットや平行四辺形などの凹部を間欠的に配置して形成してもよい。すなわち、本実施形態において、凹部を形成しない交点近傍26を所定の大きさだけ設けることが重要であり、格子の各辺を構成する第1の凹部20a,第2の凹部20bで画定している部分の凹部の形状はこの実施形態に限るものではない。上述の複数のドット等を配列しても同様の効果を得ることができる。この場合においても、前記格子のマスの対角線に平行な方向における隣接する凹部間の距離はT以上となるように凹部は配置されることとなる。
また、本実施形態において、一つの第1の凹部20a,第2の凹部20bではなく、長手方向の長さを短くした2つ以上の第1の凹部20a,第2の凹部20bによって、マスの一辺を形成するようにしてもよい。また、浅凹部201内の深凹部202の配置は、互い違いとなるように、幅方向外側に振り分けているが、本発明はこれに限らず、中央に一列に並べる構成などいかなるものであってもよい。また、深凹部202の形状は本実施形態に示した形状に限らず、四角形、楕円形、三角形など様々な形状を取り得る。
また、本実施形態において、第3の凹部は四角形の糸巻き形状としたが、本発明はこれに限らず、樽形の四角形や円形などでもよい。すなわち、格子パターンにおける格子の交点と認識させる上で適当な形であれば、いかなるものであってもよい。
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のない構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。