[第1の実施形態]
(面発光レーザ素子の構造)
図1に、本発明の第1の形態による面発光レーザ素子の構造の例を示す。本実施の形態における面発光レーザは、半導体基板であるn−GaAs基板上に形成されているp側のAlAs層を選択酸化した電流狭窄構造を用いた発振波長894.6nmの面発光レーザである。
図1に示される面発光レーザは、n−GaAs基板101上に、下部から見て(基板101側から見て)、下部ブラッグ反射鏡(n−DBR)102、下部スペーサ層103、活性層104、上部スペーサ層105、上部ブラッグ反射鏡(p−DBR)106、p型の上部コンタクト層110が形成されている。下部スペーサ層103、活性層104、及び上部スペーサ層によって共振器150が形成されている。
上部ブラッグ反射鏡106の中には波長調整領域120が形成されている。この波長調整領域120は、発振波長を調整するための波長調整層を含み、波長調整層はさらに複数の調整層から構成されていてよい。調整層の層数を面発光レーザのチップ毎又は同一チップ内の発光点毎に異なるものとすることにより、波長調整層の厚さ、ひいては波長調整領域120の光学厚さの合計を、面発光レーザのチップ毎又は同一チップ内の発光点毎に変更することができる。これにより、その厚さに対応して発振波長を変更することができる。例えば、波長λ1、λ2、λ3、λ4の4つの異なる波長の面発光レーザを含む面発光レーザ素子を得ることができる。
第1の実施形態においては、波長調整領域120は、上部ブラッグ反射鏡106の高屈折率層が置き換えられた形で設けられている(図7)。
上部コンタクト層110の上には、上部電極111が形成されている。また、積層体の側面の一部はエッチングにより除去されており、光出射領域がメサ形状となっている。このメサの形成により露出した半導体層を保護するために、保護層140及び樹脂層141が形成されている。樹脂層141は、例えばポリイミドからなっていてよい。
なお、本明細書において、メサ形状とは、側面が急斜面で上面がなだらかな形状を指す。よって、エッチングにより除去されて露出した側面が、基板の延在方向に対して垂直な方向延びているか、又はその方向に対して斜めに傾いていてよい。また、積層体の厚み方向で切った面発光レーザの断面形状が、台形、長方形のような四角形となっていてよい。メサ形状が、台形を含む断面形状を有する場合、台形の上底より下底が長くてもよいし、その逆であってもよい。図1の例では、メサ形状は、側面が基板の面に対して垂直に延びている。
基板101の裏面には、下部電極112が形成されている。また、上部ブラッグ反射鏡106には、例えばAlAs層からなる電流狭窄層が形成されてよい。電流狭窄層の周囲においては、選択酸化によって選択酸化領域が形成され、選択酸化されなかった領域が電流狭窄領域となる。
(メサエッチングの終端位置の制御)
次に、本発明の一形態によって得られるメサエッチングの終端位置の制御について説明する。図2に、面発光レーザ又は発光点を4つ備えた面発光レーザ素子における積層関係を模式的に示す。
図2には、図1の面発光レーザ素子の下部ブラッグ反射鏡(n−DBR)102より上の積層部分を示す。この模式図では、4つの面発光レーザ又は発光点が形成されている領域を、それぞれ領域A〜Dとして示す。各領域においては、下部から見て(基板側から見て)、n型の下部ブラッグ反射鏡102、下部スペーサ層103、活性層104、上部スペーサ層105、p型の上部ブラッグ反射鏡106、第2の位相調整層131a、波長調整層122、第1の位相調整層131b、p型の上部ブラッグ反射鏡106が、この順で積層されている。これらの層は、同一ウェハ面上に共通に形成されたものであってよく、各層の厚さは、波長調整層122以外は同じものとなっている。図示の例では、領域Dには波長調整層122は設けられていない。
上部スペーサ層105及び下部スペーサ層103の組成はAlGaInPであり、それぞれ150nmの膜厚とすることができる。また、上部スペーサ層105及び下部スペーサ層103の膜厚は同じであっても互いに異なっていてもよい。
波長調整層122は、調整層のペア121a〜121cを有していてよい。図2の例では、調整層のペア121の数は、領域Aで最大の3となっているが、調整層の数及び調整層のペアの数はこれに限定されるものではない。波長調整領域120は、第1の位相調整層131b、波長調整層122、及び第2の位相調整層131aを含めたものである。第1の位相調整層131b及び第2の位相調整層131aは、用途又は条件によっては設けられていない。
図3に、波長調整領域120の一部を拡大した模式図を示す。図3では、互いに異なる組成を有する調整層123a及び123b、つまりp++−GaInPからなる調整層123aとp++−GaAsPからなる調整層123bとを調整層の1つのペア121としている。よって、波長調整層122は、互いに異なる組成を有する調整層123a及び123bが交互に積層された構成を有する。
調整層のペア121は、領域間の波長間隔が1nmとなるように、それぞれ約15nmの膜厚で積層することができる。この場合、領域Aは、調整層のペアを3つ有しているので、波長調整層122の厚さT2a=45nmとなる。領域Bは、調整層のペアを2つ有しているので、波長調整層122の厚さT2b=30nmとなる。領域Cは、調整層のペアを1つ有し、波長調整層122の厚さT2c=15nmとなる。領域Dにおいては、調整層が全て除去されており、波長調整層122の厚さT2d=0nmである。
なお、図3の例では、領域Aの発振波長を基準にして、領域Bでの発振波長を基準より1nm小さく(−1nm)、領域Cでの発振波長を基準より2nm小さく(−2nm)、領域Dでの発振波長を3nm小さく(−3nm)調整することができる。つまり、図3の例によれば、調整層123の層数をウェハ面内で(同一チップ内で)発光点毎に相違させることによって、互いに異なる発振波長で発光する面発光レーザを複数含む面発光レーザ素子を得ることができる。しかし、後述のように、波長調整層122の厚さを相違させることによる発振波長の調整を、ウェハ面内で発振波長を揃えられた面発光レーザ素子を製造するために利用することもできる。
このように、領域A〜Dの各領域では、調整層123の層数が異なり、それにより、波長調整層122の厚さ(波長調整領域120の厚さ)が異なっている。つまり、選択エッチングにより波長調整層122がエッチングされずに全て残った領域(領域A)、波長調整層122が一部エッチングされた領域(領域B、領域C)、及び波長調整層122が全てエッチングされた領域(領域D)で、上部ブラッグ反射鏡106の上面から上部スペーサ層の上面までの膜厚が異なっている(図2)。
ここで、メサ形状を形成するためには、領域A〜Dを含む一枚のウエハを同時にエッチングする。つまり、上部ブラッグ反射鏡106から下部ブラッグ反射鏡102の方向にエッチングを行う。上述のように、メサエッチングの終端位置が活性層104を越えない場合には隣接発光点への漏れ光による光出力特性が悪化することがある。また、下部スペーサ層103を越えてしまう場合、特に、下部スペーサ103の下にAlAsを主成分とする放熱層が設けられている場合等には、腐食による信頼性の低下を招き得る。よって、共振器150の下部スペーサ層103内でメサエッチングを止めることが重要となる。
図2で言えば、最も膜厚が大きい領域Aのエッチングが下部スペーサ層103に到達する時に、最もエッチングが進む領域Dにおいてもエッチングが下部スペーサ層103に留まることが好ましい。図2では、波長調整領域120を含む上部ブラッグ反射鏡106と、上部スペーサ層105と、活性層104と、下部スペーサ層103の一部とが除去されている。つまり、領域A〜Dのエッチング終点はいずれも下部スペーサ層103内となっている。
図4及び図5に参考形態を示す。図4では、領域A及び領域Bのエッチング終点は下部スペーサ層103を越えて、領域C及び領域Dは、下部ブラッグ反射鏡(n−DBR)102内に侵入している。そのため、n−DBRのAlAs放熱層がエッチング終点となり得る。このような場合、AlAs層がエッチングされて腐食されるため、信頼性が低下し得る。
これに対し、図5では、領域C及び領域Dのエッチング終点は下部スペーサ層103内にあるが、領域A及び領域Bでは活性層104内が終点となっている。活性層104内にエッチング終点があると、活性層104が隣接領域と繋がることで光が漏れ、所望の光出力特性から外れてしまうことがある。
よって、メサエッチング終点を下部スペーサ層103内に留めるには、下部スペーサ層103の膜厚T1と波長調整層122の膜厚T2との関係が、T1>T2となるように、波長調整層122及び下部スペーサ層103の厚さを決めることが必要である。
なお、面発光レーザ素子が複数の面発光レーザを有する場合、複数の面発光レーザの一部が上記関係を満たしている場合でも、本発明の効果を得ることができるが、全ての複数の面発光レーザが上記関係を満たしていることが好ましい。
図2では、波長調整層122の膜厚が最も大きい領域Aのエッチングが活性層104を越えたとき、波長調整層122の膜厚が最も小さい(波長調整層がない場合には、膜厚を「0」とする)領域Dのエッチングが下部スペーサ層103を越えていないことが好ましい。よって、膜厚が最も大きい領域Aにおける波長調整層122の膜厚T2aと、膜厚が最も小さい領域Dにおける波長調整層122の膜厚T2d(=0)との差が、下部スペーサ層の膜厚T1より小さくなっている、つまり、T1>T2aとなっていることが好ましい。
さらに、実際には、成膜の面内分布やメサエッチングの制御のばらつきといった、各プロセスの誤差(マージン)を考慮して、膜厚の関係を設定することが望ましい。例えば、膜厚の面内分布が5%の場合、T1≧(1.05*T2)となるよう膜厚を設定することができる。但し、下部スペーサ層103の膜厚を極端に厚くしてしまうと、活性層104から下部ブラッグ反射鏡102(AlAs放熱層)までの距離が過度に大きくなり、放熱効果が得られにくくなる。T1≦200nmであることが好ましい。
本発明の一形態では、メサ形成をドライエッチング法にて行っているが、ドライエッチングはウェットエッチングと比べると層材料の組成の影響を受けにくい。そのため、組成の違いを考慮しなくとも、複数の面発光レーザの波長調整層122の厚さと下部スペーサ層103の厚さとの関係を規定することで、メサエッチングの終端位置を制御することができ、これにより、面発光レーザ素子の品質を向上させることができる。
しかし、ドライエッチングでも材料によっては若干のエッチングレート(エッチング速度)の違いがある。特に、難エッチング材料と呼ばれるインジウムを含む材料などは他の材料と比べて、条件によっては2〜3割程度エッチング速度が変わり得る。
よって、エッチング終端位置をより正確に制御するには、材料によるエッチングレートの違いを考慮することが好ましい。下部スペーサ層103の膜厚をT1、下部スペーサ層のエッチングレートをαとし、波長調整層122の膜厚をT2、波長調整層122のエッチングレートをβとしたとき、(T1/α)>(T2/β)となるようにT1、T2、α、βを選定することが好ましい。
この際、エッチングレートαとエッチングレートβとは、同条件におけるエッチングレートとすることができる。同条件とは、エッチングガス、温度、及び圧力の少なくとも1つの条件を同じにすることであり、エッチングガス、温度、及び圧力の全ての条件を同じにすることが好ましい。
なお、面発光レーザ素子が複数の面発光レーザを有する場合、複数の面発光レーザの一部が上記関係を満たしている場合でも、本発明の効果を得ることができるが、全ての複数の面発光レーザが上記関係を満たしていることが好ましい。
図2で言えば、膜厚が最も大きい領域Aにおける波長調整層122の膜厚T2aと、膜厚が最も小さい領域Dにおける波長調整層122の膜厚T2d(=0)との差を波長調整層122のエッチングレートβで除した値が、下部スペーサ層103の膜厚T1をそのエッチングレートαで除した値より小さくなっている、つまり、(T1/α)>(T2a/β)となっていればよい。
なお、この場合も、成膜の面内分布やメサエッチングの制御ばらつきといった、各プロセスの誤差を考慮した関係を設定することが望ましい。例えば、膜厚の面内分布が5%の場合、(T1/α)≧(1.05*T2/β)となるよう膜厚を設定することができる。
このように、エッチングレートを考慮して、波長調整層122がエッチングされる時間と、下部スペーサ層がエッチングされる時間との関係を上記のように規定することで、メサエッチング終端位置の制御をより高い精度で行うことができる。
なお、波長調整層122を過度に薄くした場合、光学厚さが変わることで目的とする発振波長が得られないことから、波長調整層一層あたりの実際の膜厚の値は5nm程度より薄くすることは難しい。下部スペーサ層103は一層からなっていてもよいが、同種の又は異なる2種類以上の層を積層して用いてもよい。
図2及び図3では、面発光レーザを4つ有する面発光レーザ素子について説明したが、面発光レーザ素子に含まれる面発光レーザの数はこれに限られない。また、面発光レーザ素子に複数の面発光レーザが含まれている場合、その複数の面発光レーザの発振波長がそれぞれ互いに異なっていてもよいし、全ての面発光レーザの発振波長が揃えられていてもよいし、また発振波長が揃えられた複数の面発光レーザのグループが複数あって、1つのグループの面発光レーザの発振波長と、別のグループの面発光レーザの発振波長とが異なるように構成されていてもよい。
このように、厚さを相違させた波長調整層を備えることで発振波長を制御する面発光レーザ素子において、波長調整層の厚さと下部スペーサ層の厚さとの関係を規定することによって、ウエハ面内での波長を均一にしつつ、メサエッチングの深さを制御することができる。これにより、レーザ品質を安定化しながら、信頼性も確保することができる。
(波長調整領域の形成)
本発明の一態様による面発光レーザ素子における、領域によって異なる厚さを有する波長調整領域(波長調整層)の製造例を、図6を参照しながら以下に説明する。
本発明の一形態では、半導体各層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、またはMBE(Molecular Beam Epitaxy)法等を用いたエピタキシャル結晶成長により形成することができる。このようなエピタキシャル結晶成長においては、成長の条件によって、ウェハの膜厚が不均一になり得る。例えば、MOCVDであれば、ガス分布やウェハの加熱分布等によって、DBRや共振器の光学的膜厚が不均一になり、発振波長がウェハ面内で不均一となり得る。
図6では、上記のような結晶成長の条件によって膜厚のばらつきが生じた場合でも、ウェハ面内での波長をより均一にすることを可能にした面発光レーザ素子における波長調整層122の形成を示す。
まず、下部ブラッグ反射鏡102から波長調整領域120内の波長調整層122に至る層を含む構造を、結晶成長により形成する。図6(a)の積層体は、後に複数の別々の面発光レーザとして機能する領域A〜領域Cを含む。この際、領域A〜領域Cのそれぞれにおいて共振波長を計測する。図示の例では、領域Aの発振波長を基準とした場合、領域Bの発振波長は領域Aより1nm大きく、領域Cの発振波長は領域Cより2nm大きくなっている。
次に、レジストパターニング及び選択エッチングを繰り返して、ウェハ上の面発光レーザ素子全体において共振波長が所望の波長(狙いの波長)となるように、波長調整領域の厚み(波長調整層の層数)を変更する。
具体的には、領域Aの発振波長を狙いとして、狙いの波長より1nmだけ長い波長(+1nm)で発光する領域Bと、狙いの波長2nmだけ長い波長(+2nm)で発光する領域Cとにおいてレジストが形成されないようにレジストをパターニングする(領域A上にレジストを形成する)。さらに、調整層(GaAsP層)122bの選択エッチング1を行い、その後、レジスト除去する。選択エッチング1では、調整層(GaAsP層)122bをエッチングすることができるが、調整層(GaInP層)123aをエッチングすることができないエッチング液を用いる。
続いて、領域B及び領域Cにレジストが形成されないようにレジストをパターニングする(領域A上にレジストを形成する)(図6(b))。さらに、調整層(GaInP層)123aに対して選択エッチング2を行うことにより、図6(c)に示す構造が得られる。選択エッチング1では、調整層(GaInP層)122aをエッチングすることができるが、調整層(GaAsP層)123bをエッチングすることができないエッチング液を用いる。続いて、レジスト除去することによって、図6(d)に示す構造が得られる。
次に、領域Cのみにおいてレジストが形成されないようにパターニングし(領域A及び領域B上にレジストを形成し)、同様の工程を繰り返し行う。つまり、選択エッチング1、選択エッチング2を行い、続いて、領域A及び領域Bに設けられていたレジストを除去する。これにより、図6(e)に示す構造が得られる。
上記の選択エッチング1及び選択エッチング2は、ウェットエッチングであることが好ましい。ウェットエッチングでは、例えば、GaAsP(GaAsの場合も同様)のエッチング液には、硫酸、過酸化水素、水の混合液を用い、GaInPのエッチング液には、塩酸、水の混合液を用いることができる。
図6の構成においては、波長調整層のペア1つあたり1nmの波長の変化が生じるように設計されている。図示のように、選択エッチング前は、領域Aを基準として領域Bが1nmだけ大きく(+1nm)、領域Cが2nmだけ大きい(+2nm)波長を有しているような場合でも(図6(a))、波長調整層の厚さを領域毎に相違させることによって、領域A〜Cにおいて均一な波長が得られる(図6(e))。
このように、上記構成では、ウェハ面内で均一な発振波長で発光する面発光レーザを複数含む面発光レーザ素子であって、ブラッグ反射鏡内に波長調整層を含む波長調整領域を備えた面発光レーザを含み、波長調整層が、異なる2種の材料を含む層を積層したものであり、上記のウェハ面内で均一な発振波長を発光することを、波長調整層の厚さを変更することによって実現している。
このような発振波長を揃えた面発光レーザを複数備えている構成では、不良や故障等によって1つの面発光レーザが発光しなくなったとしても、それ以外のレーザを用いることができるという利点がある。これにより、面発光レーザ素子の耐用年数を長くすることができる。
なお、ウェハ面内の領域によって異なる厚さを有する波長調整層122の構成は、図3にも示したが、図3の例は、調整層123の層数をウェハ面内で(同一チップ内で)発光点毎に相違させることによって、領域毎に1nmずつ発振波長の異なるものである。つまり、図3の例で得られる面発光レーザ素子は、異なる波長のレーザビームを出射する複数の面発光レーザを含むものである点で、図6の構成によって得られる面発光レーザ素子とは異なる。しかし、図3の構成を形成する場合も、上述の例と同様にレジストパターニングと選択エッチングとを繰り返すことによって形成することができる。
(面発光レーザの製造)
上記のように図6(e)に示す構造が得られた後は、調整層のペア121より上部の層、すなわち第1の位相調整層131b、残りの上部ブラッグ反射鏡106、コンタクト層110(図1及び図2)を、MOCVD法またはMBE法による再結晶成長により形成する。
その後、下部スペーサ層103の深さまで半導体層をエッチングすることによりメサを形成する(図1及び図2)。エッチングの終端は、下部スペーサ層103に留まっていることが好ましい。さらに、上述のように、電流狭窄層を選択的に酸化して選択酸化領域と電流狭窄領域とを形成することができる。
メサを形成する際のエッチングは、ドライエッチング法を用いたが、他の方法を用いてもよい。例えば、Cl2ガスを用いたECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチング法、RIE(Reactive Ion Etching)反応性イオンエッチングなどがある。本発明の一形態では、メサは、素子の上から見て円形の形状を有しているが、楕円形、正方形、長方形の矩形等の任意の形状とすることができる。
上記のメサエッチング工程によって電流狭窄層(AlAs層)の側面が露出するが、水蒸気中で熱処理し周辺を酸化することによって選択酸化領域を形成することにより、その周辺の領域をAlxOyからなる絶縁物に変化させる。これにより、電流狭窄構造が得られる。つまり、駆動電流の経路を、酸化されていないAlAsからなる電流狭窄領域に制限することができる。
次に、SiNからなる保護層140を設け、さらに、半導体層がエッチングされている部分を樹脂層(ポリイミド層)141により埋め込むことにより平坦化する。この後、コンタクト層110の上の保護層140及び樹脂層141を除去し、コンタクト層110上の所定領域にp側の個別電極となる上部電極111を形成する。なお、基板(n−GaAs層)101の裏面には、n側共通電極となる下部電極112を形成する(図1)。
保護層140は、メサを形成する際のエッチングにより露出した腐食されやすいAlを含む層の側面や底面を誘電体で保護しているため、面発光レーザ素子の信頼性を向上させることができる。なお、本実施の形態においては、面発光レーザは、基板101と反対側にレーザ光を出射するよう構成されている。
本発明の一形態によれば、面発光レーザ素子の製造方法は、半導体基板の上に、下部ブラッグ反射鏡、下部スペーサ層、活性層、上部スペーサ層、及び上部ブラッグ反射鏡を順に形成する工程と、前記上部ブラッグ反射鏡と、前記上部スペーサ層と、前記活性層と、前記下部スペーサ層の一部とを除去してメサ形状を形成する工程とを含み、前記上部ブラッグ反射鏡内に、波長調整層を含む波長調整領域が形成されており、前記波長調整層の厚さをT2とし、前記下部スペーサ層の厚さをT1としたとき、T1>T2であることを特徴とする。
また、前記下部スペーサ層の膜厚をT1とし、前記下部スペーサ層のエッチングレートをαとし、前記波長調整層の膜厚をT2とし、前記波長調整層のエッチングレートをβとしたとき、T1/α>T2/βであることを特徴とする。
上記方法においては、メサエッチングの際には、エッチングの終端位置を下部スペーサ層内に留めるようにエッチングを行う。複数の面発光レーザを有する面発光レーザ素子においては、少なくとも1つの面発光レーザの周囲のエッチング終端位置を下部スペーサ層内に留めるようにエッチングを行う。
また、面発光レーザ素子が複数の面発光レーザを含む場合、複数の面発光レーザのうち最も波長調整層の厚さが大きい面発光レーザが、上記の関係式を満たしていることによって、メサエッチング工程において、全てのメサエッチングを共振器の下部スペーサ層で止めることが可能になる。
(面発光レーザの積層構造)
特許文献1に記載のように、波長調整層より上部に位置するブラッグ反射鏡が誘電体の場合、半導体の波長調整層より誘電体層の方が大幅に低屈折率となるため、波長調整層と誘電体との界面を縦モードの腹位置に配置する必要がある。節位置となるように設計すると、波長調整層と誘電体ブラッグ反射鏡との界面において、逆相で光が反射することとなる。しかしながら、波長調整層より上部に位置するブラッグ反射鏡が半導体の場合、図7のように、波長調整領域120内において縦モードの節位置に波長調整層122を配置する(波長調整層122の中央が縦モードの節位置に来る)ことで、波長調整機能は損なわれずに、閾値電流の低減等、さらなる特性改善ができることが実験から分かった。これは、波長調整層122に用いられる2つの材料、GaInPおよびGaAsPの屈折率がそれぞれ3.3および3.5と異なっていることに起因する。この材料の組合せは、波長調整層122を縦モードの腹位置に配置した場合には散乱損失の要因になるが、波長調整層122を節位置に配置した場合には、この影響は低減する。
さらに、波長調整層122より上部のブラッグ反射鏡106が半導体の場合、波長調整領域120に電気伝導性を持たせるためにドーピングが必要だが、波長調整層122のバンド構造に生じるヘテロスパイク等のため、電気抵抗が大きくなってしまう。そこで、電気抵抗を低減するため、波長調整層122のみ高濃度ドーピングする必要がある。しかしながら、波長調整領域120内の縦モードの腹位置に高濃度ドーピングすると光吸収が大きくなり、発振閾値電流の増加やスロープ効率の低下などの弊害がある。そこで、波長調整層を節位置に配置することで、波長調整層に高濃度ドープしても、発振閾値の増加やスロープ効率の低下が起きずに、電気抵抗を低減させることができる。電気抵抗が低減することにより、最高光出力も増加する。
本実施の形態における面発光レーザ素子は、n−GaAs基板上に、各層λ/4の光学厚さで35.5ペアのn−Al0.1Ga0.9As高屈折率層/n−Al0.9Ga0.1As低屈折率層からなる下部ブラッグ反射鏡(n−DBR)102が形成されている。下部ブラッグ102反射鏡の上には、GaInAs量子井戸層/GaInPAs障壁層からなる活性層の上下に、Al0.2Ga0.8Asにより下部スペーサ層及び上部スペーサ層が形成されている。上部スペーサ層の上には各層λ/4の光学厚さで5ペアのp−Al0.1Ga0.9As高屈折率層/p−Al0.9Ga0.1As低屈折率層からなる上部ブラッグ反射鏡106が形成されている。この上部ブラッグ反射鏡106の中に波長調整領域が形成されている。
図8に示されるように、本実施の形態においては、波長調整領域120は、下部から見て、第2の位相調整層131a、波長調整層122、第1の位相調整層131bにより形成されている。なお、第2の位相調整層131a及び第1の位相調整層131bは、p−Al0.1Ga0.9Asにより形成されている。波長調整層122は、p++−GaInP/p++−GaAsP/p++−GaInPの計3層で構成されている。
上部ブラッグ反射鏡106中の波長調整領域120全体の光学厚さは略3λ/4となっている。その中で、波長調整領域120の下端から、波長調整層122p++−GaInP/p++−GaAsP/p++−GaInPの中央のp++−GaAsPの中心までがλ/2となっている。なお、波長調整領域120の全体の光学長が5λ/4である場合、波長調整層の位置は波長調整領域下部からλ/2又はλの位置とすることができる。また、波長調整領域120の全体の光学長が7λ/4である場合、波長調整層の位置は波長調整領域下部からλ/2、λ、又は3λ/2のいずれかを取ることができる。
なお、p++−GaInP/p++−GaAsP/p++−GaInPの計3層で構成される波長調整層122の各調整層の光学厚さは0.05λとなっており、これにより、波長調整層を1層変更することで変化させることのできる面発光レーザの発振波長の間隔が1nmとなる。
また、本実施形態のようにブラッグ反射鏡の高屈折率層を波長調整領域に置き換えた場合、第2の実施の形態に記載されているように低屈折率層を波長調整領域に置き換えた場合と比較して、Alを含む混晶を波長調整層の材料として使わずに済むという利点がある。このことで、後述の波長調整層の選択エッチング時に、波長調整層表面の酸化や腐食を防ぐことができ、信頼性を向上させることができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態による面発光レーザ素子の構造は、第1の形態と同様に図1で表される。本実施の形態における面発光レーザは、第1の形態と同様、半導体基板であるn−GaAs基板上に形成されているp側のAlAs層を選択酸化した電流狭窄構造を用いた発振波長894.6nmの面発光レーザである。第1の形態では、波長調整領域が、上部ブラッグ反射鏡の高屈折率層が置き換えられた形で設けられていたが(図7)、第2の形態では、図9に示すように、波長調整領域120が上部ブラッグ反射鏡106の低屈折率層に置き換えられた形で設けられている。それ以外の点では、第2の実施態様は、第1の実施態様と同様である。
図10に示されるように、本実施の形態においては、波長調整領域120は、下部から見て、第2の位相調整層131a、波長調整層122、第1の位相調整層131bにより形成されている。第2の位相調整層131a及び第1の位相調整層131bは、p−Al0.7Ga0.3Asにより形成されている。波長調整層122は、p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/p++−Al0.7Ga0.3As/p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの計3層で構成されている。上部ブラッグ反射鏡106中の波長調整領域120全体の光学厚さは略3λ/4となっている。その中で、波長調整領域120の下端から、波長調整層122p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/p++−Al0.7Ga0.3As/p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの中央のp++−Al0.7Ga0.3Asの中心までがλ/4となっている。なお、波長調整領域120の全体の光学厚さが5λ/4である場合、波長調整層122の位置は波長調整領域120下部から見てλ/4または3λ/4を取ることが出来る。また、波長調整領域の全体の光学長が7λ/4である場合、波長調整層の位置は波長調整領域下部から見てλ/4、λ、3λ/4、5λ/4のいずれかを取ることができる。
なお、p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/p++−Al0.7Ga0.3As/p++−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの計3層で構成される波長調整層122の各調整層の光学厚さは0.05λとなっており、これにより、波長調整層を1層変更することで変化させることのできる面発光レーザの発振波長の間隔が1nmとなる。
第1の形態のようにブラッグ反射鏡の高屈折率層を波長調整領域に置き換えた場合、選択可能な材料の組み合わせとしては、例えばGaInP/GaAsPがある。これらの材料の屈折率はそれぞれ3.3と3.5であるため、屈折率差が大きく、波長調整領域において散乱損失を引き起こしやすい。一方で、本形態のように、低屈折率層と置き換えた場合には、上述のようにAl0.7Ga0.3As/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pを使用することができる。これらの屈折率はいずれも3.1と同程度であるため、波長調整領域における散乱損失を少なくすることができる。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。本実施の形態は、原子発振器に上記の第1及び第2の実施形態における面発光レーザ素子を用いたものである。図11に示すように、原子発振器は、CPT方式の小型原子発振器であり、光源410、コリメートレンズ420、λ/4波長板430、アルカリ金属セル440、光検出器450、変調器460を有している。
本実施の形態は、面発光レーザ素子より出射したサイドバンドを含む光のうち、2つの異なる波長の光をアルカリ金属セル440に入射させることにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性によって発振周波数を制御する原子発振器である。
光源410としては、第1及び第2の実施形態による面発光レーザ素子を用いることができる。アルカリ金属セル440には、アルカリ金属としてCs(セシウム)原子ガスが封入されており、D1ラインの遷移を用いるものである。光検出器450には、フォトダイオードが用いられている。
原子発振器では、光源410より出射された光をセシウム原子ガスが封入されたアルカリ金属セル440に照射し、セシウム原子における電子を励起する。アルカリ金属セル440を透過した光は光検出器450において検出され、光検出器450において検出された信号は変調器460にフィードバックされ、変調器460により光源410における面発光レーザ素子を変調する。
図12に、CPTに関連する原子エネルギー準位の構造を示す。二つの基底準位から励起準位に電子が同時に励起されると光の吸収率が低下することを利用する。面発光レーザは搬送波波長が894.6nmに近い素子を用いている。搬送波の波長は面発光レーザの温度、又は出力を変化させてチューニングすることができる。図13に示すように、変調をかけることで搬送波の両側にサイドバンドが発生し、その周波数差がCs原子の固有振動数である9.2GHzに一致するように4.6GHzで変調させている。図14に示すように、励起されたCsガスを通過するレーザ光はサイドバンド周波数差がCs原子の固有周波数差に一致した時に最大となるので、光検出器450の出力が最大値を保持するように変調器460においてフィードバックする。これにより、光源410における面発光レーザ素子の変調周波数を調整する。原子の固有振動数が極めて安定なので変調周波数は安定した値となり、この情報がアウトプットとして取り出される。なお、波長が894.6nmの場合では、±1nmの範囲、より望ましくは±0.3nmの範囲の波長の光源が必要となる。
本実施の形態では、原子発振器において、第1及び第2の実施形態による面発光レーザ素子を用いる。メサエッチングの終端位置が制御されており、面発光レーザ素子の品質が安定しているので、信頼性の高い原子発信器を得ることができる。
この場合、図3で説明したような、領域毎に異なる発振波長で発光する面発光レーザ素子を用いてもよいし、図6で説明したような、各領域からの発振波長が揃えられた面発光レーザ素子を用いてもよい。前者の場合には、所望の波長に最も近い波長の光を出射するものを選択することにより、所望の発振波長を得ることができる。一方、後者の場合には、結晶成長での膜厚のバラツキ(発振波長のバラツキ)があっても、上記のような±1nmの範囲の均一な発振波長を得るようウェハ面内で発振波長を揃えることができ、894.6nmに近い発振波長を得ることができる。これにより、発振波長に関する歩留まりを向上させることができ、また原子発振器を低コストで作製し提供することができる。
また、本実施の形態においては、アルカリ金属としてCsを用い、そのD1ラインの遷移を用いるために波長が894.6nmの面発光レーザを用いたが、CsのD2ラインを利用する場合852.3nmを用いることもできる。また、アルカリ金属としてRb(ルビジウム)を用いることもでき、D1ラインを利用する場合は795.0nm、D2ラインを利用する場合は780.2nmを用いることができる。活性層の材料組成などは波長に応じて設計することができる。また、Rbを用いる場合の変調周波数は、87Rbでは3.4GHz、85Rbでは1.5GHzで変調させる。なお、これらの波長においても、±1nmの範囲の波長が必要となる。
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。また、本発明の実施に係る形態では、面発光レーザ素子を原子発振器に用いた場合について説明したが、第1及び第2の実施の形態における面発光レーザ素子は、ガスセンサー等の所定の波長の光が必要な他の装置等に用いることができる。この場合、これらの装置等においても、用途に応じた所定の波長の面発光レーザ光を用いることにより、同様の効果を得ることができる。