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JP6712909B2 - 認知能力変化予測装置およびプログラム - Google Patents
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Description

この発明は、“Working Memory”や“Selective Attention”等、ユーザの認知的な情報処理能力(以下認知能力と呼称する)の変化を予測するための装置およびプログラムに関する。
近年、例えば従業員の労務管理のために、就業中にユーザの認知能力を推定する技術が種々提案されている。例えば、非特許文献1には、Advanced Trail Making Test(以下ATMTと呼称する)のように、実行中の作業等を中断して数分程度のタスクを実行し、当該タスクの成績からユーザの認知能力を推定する手法が記載されている。また非特許文献2には、ユーザに心電センサを装着し、心電のR波ピーク間隔(以下RRIと呼称する)を測定し、このRRIから算出される複数の特徴量を用いて現時点での認知能力を推定する手法が記載されている。
K. Mizuno et al.: Utility of an Advanced Trail Making Test as a Neuropsychological Tool for an Objective Evaluation of Work Efficiency During Mental Fatigue, Fatigue Science for Human Health, pp.47-54, 2008. 角田ほか、「心拍変動を用いた認知能力逐次推定手法」、情報処理学会グループウェアとネットワークサービスワークショップ論文集、pp. 1-10, 2015.
ところが、非特許文献1、2に記載された技術は、何れも現時点でのユーザの認知能力を推定するものとなっている。このため、推定結果を労務管理に利用しようとした場合、認知能力が低下した時点でその人を休ませるといった対応は可能であるが、認知能力が低下する前に休ませるという対応は不可能だった。従って、生産性の低下は防げず、労務管理上改善が要望されていた。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、認知能力の変化を予測できるようにしてユーザの管理をより適切に行えるようにする認知能力変化予測装置およびプログラムを提供しようとするものである。
上記課題を解決するためにこの発明の第1の態様は、予測対象ユーザの心拍間隔を表すデータを取得し、この取得された心拍間隔を表すデータをもとに、時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量をそれぞれ算出すると共に、当該算出された心拍変動の特徴量をもとにその変化量を算出する。そして、上記算出された心拍変動の特徴量およびその変化量と、予め記憶されている学習データとをもとに、上記予測対象ユーザの1つ後の時間区間t+1における認知能力の変化を、前記時間区間tにおける認知能力からの増減として予測し、その予測結果を表す情報を出力するようにしたものである。
この発明の第2の態様は、上記心拍変動の特徴量を算出する手段として、上記取得された心拍間隔を表すデータをもとに時間領域の特徴量を算出する手段と、上記取得された心拍間隔を表すデータをもとに周波数領域の特徴量を算出する手段とを備える。そして、上記時間領域の特徴量を算出する手段により、心拍間隔の平均値と、心拍間隔の標準偏差(SDNN)と、隣接した心拍間隔の差が50msecを超えた比率(pNN50)と、隣接した心拍間隔の差の二乗平均平方和(RMSSD)とのうちの少なくとも1つを算出し、上記周波数領域の特徴量を算出する手段により、心拍間隔をスペクトル解析した際の低周波成分(0.04~0.15Hz)の総パワー(LF)と、心拍間隔をスペクトル解析した際の高周波成分(0.15~0.40Hz)の総パワー(HF)と、上記低周波成分の総パワーLFと上記高周波成分の総パワーHFとの比率(LF/HF)とのうちの少なくとも1つを算出するようにしたものである。
この発明の第3の態様は、上記心拍変動の特徴量の変化量を算出する手段により、上記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量との間の変化量または変化率と、上記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量との間の相関係数の変化量または変化率とのうちの何れかを算出するようにしたものである。
この発明の第4の態様は、上記心拍変動の特徴量の変化量を算出する際に、上記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量に対し、それぞれ主成分の分析を行い、当該主成分の分析結果に基づいて、上記主成分の変化を示すT2 統計量と、次元圧縮の残差を示すQ統計量とをそれぞれ算出するようにしたものである。
この発明の第6の態様は、上記認知能力の変化を予測する手段として、上記学習データをもとに認知能力の変化を表す分類器を作成し、上記算出された心拍変動の特徴量とその変化量を上記分類器に入力することで、上記認知能力の変化を予測する手段と、上記学習データをもとに回帰モデルを作成し、上記算出された心拍変動の特徴量とその変化量を上記回帰モデルに入力することで、上記認知能力の変化量を予測する手段とのうちの何れか一方を備えるようにしたものである。
この発明の第1の態様によれば、予測対象ユーザの例えば現在の時間区間tより1つ後の時間区間t+1における認知能力の変化が、時間区間tにおける認知能力からの増減として予測されてその結果が表示される。このため、例えば認知能力が低下する以前に予測対象ユーザが自主的に休息を取ったり、管理者が予測対象ユーザに対し休息を与える等の対策を適切なタイミングで講じることが可能となる。その結果、タスクを実行中のユーザの作業効率や品質を高く維持することが可能となる。
この発明の第2の態様によれば、心拍変動の特徴量として、心拍間隔データをもとに時間領域の特徴量と周波数領域の特徴量がそれぞれ算出される。このため、ユーザの認知能力と関連性を持つ特徴量を確実に得ることが可能となる。
この発明の第3の態様によれば、心拍変動の特徴量の変化量として、時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動特徴量との間の変化量または変化率と、上記各心拍変動特徴量間の相関係数の変化量または変化率とのうちの何れかが算出される。このため、心拍変動の特徴量の変化量を時間区間単位で比較的簡易に算出することができる。
この発明の第4の態様によれば、心拍変動の特徴量の変化量として、心拍変動の特徴量の主成分の変化を示すT2 統計量と、次元圧縮の残差を示すQ統計量が算出される。このため、心拍変動の特徴量の変化量をより的確に算出することができる。
この発明の第6の態様は、ユーザの認知能力の変化を、認知能力の変化の有無として予測したり、認知能力の変化量として予測することができる。
すなわちこの発明の各態様によれば、認知能力の変化を予測できるようにしてユーザの管理をより適切に行えるようにした認知能力変化予測装置およびプログラムを提供することができる。
この発明の原理説明に使用する認知能力変化予測装置の機能構成を示すブロック図。 図1に示した認知能力変化予測装置の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 この発明の第1の実施形態に係る認知能力変化予測装置の構成を示すブロック図。 図3に示した認知能力変化予測装置による学習データ作成処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 図3に示した認知能力変化予測装置による認知能力変化予測処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 この発明の第2の実施形態に係る認知能力変化予測装置による学習データ作成処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 この発明の第2の実施形態に係る認知能力変化予測装置による認知能力変化予測処理の処理手順と処理内容を示すフローチャート。 この発明の第3の実施形態に係る認知能力変化予測装置の構成を示すブロック図。
[原理]
図1はこの発明の原理説明に使用するための図で、1は予測処理装置、2はデータ入力手段、3は結果出力手段、4は学習データ蓄積手段をそれぞれ示している。
データ入力手段2は、対象ユーザの心拍間隔データを予測処理装置1に入力するもので、例えばウェアラブル心拍センサ、脈波センサ、或いは心拍間隔データが蓄積されたデータベースからなる。結果出力手段3は、上記予測処理装置1により得られた認知能力の予測結果を出力するもので、例えばスマートフォンで使用されるアプリケーション・プログラムからなる。
学習データ蓄積手段4には、予め測定された、予測対象となる複数のユーザの、作業中における心拍変動を示す特徴量と、当該ユーザの作業中における情報処理能力に関する情報とを、時刻が同じもの同士で対応付けた学習データが記憶される。より具体的には、ユーザの認知能力変化を示す値(以下認知能力変化値と呼称する)、HRV特徴量、およびHRV特徴量の変化量を表す情報が、学習データとして記憶される。
認知能力変化値としては、例えばATMT(Advanced Trail Making Test)の成績やその変化量が挙げられる。HRV特徴量としては、例えばRRIの平均値、RRIの標準偏差、またはRRIをスペクトル解析した際の高周波帯(0.15Hz〜0.40Hz)および低周波帯(0.04Hz〜0.15Hz)それぞれのパワースペクトルの比であるLF/HFが挙げられる。HRV特徴量の変動量としては、複数のHRV特徴量に対し主成分分析を適用した後に算出される、主成分得点の変動を示すT2統計量や特徴量間の相関関係の変動を示すQ統計量が挙げられる。
予測処理装置1は、この発明を実施するための処理機能として、特徴量算出手段11と、特徴量変化算出手段12と、認知能力変化予測手段13とを有する。
特徴量算出手段11は、上記データ入力手段2から入力された心拍間隔データから所定の時間区間ごとにHRV特徴量を算出する。特徴量変化算出手段12は、上記特徴量算出手段11により時間区間ごとに算出されたHRV特徴量をもとに、HRV特徴量の変化量(以下HRV変化量と呼称する)を算出する。認知能力変化予測手段13は、上記特徴量算出手段11により算出されたHRV特徴量および上記特徴量変化算出手段12により算出されたHRV変化量をもとに、上記学習データ蓄積手段4に記憶された学習データを参照して、認知能力の変化を予測する。
以上のような構成であるから、予測処理装置1は以下のように動作する。図2はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
予測処理装置1は、先ずステップS11において、データ入力手段2から対象ユーザの心拍間隔データを時系列で受け取り、当該心拍間隔データから所定の時間区間ごとにHRV特徴量を算出する。続いてステップS12において、上記ステップS11により時間区間ごとに算出されたHRV特徴量をもとにHRV変化量を算出する。次にステップS13において、上記ステップS11により算出されたHRV特徴量およびステップS12により算出されたHRV変化量をもとに、学習データ蓄積手段4に記憶された学習データを参照して対象ユーザの認知能力の変化量を予測する。そして、上記予測した認知能力の変化量を表す情報を結果出力手段3へ出力し、対象ユーザまたはその管理者等に提示する。
従ってこの発明によれば、対象ユーザの認知能力の変化量の予測結果が提示されるので、例えばユーザの認知能力が低下する前に当該ユーザに対し休息を与えるといった、より適切な労務管理を行うことが可能となる。
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
(構成)
図3は、この発明の第1の実施形態に係る認知能力変化予測装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
このシステムは、認知能力変化予測装置10Aを中核とし、加えて脈波センサ21,22と、ATMT入力部23と、表示部30と、学習データベース(学習DB)40とを備えている。
脈波センサ21は、学習データ測定対象ユーザに装着される。そして、学習データ測定対象ユーザの脈波を計測し、当該脈波の計測データをもとに心拍間隔を表すデータを算出して、その算出データを例えば無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aへ送信する機能を備えている。
脈波センサ22は、認知能力変化の予測対象ユーザに装着される。そして、認知能力変化の予測対象ユーザの脈波を計測し、当該脈波の計測データをもとに心拍間隔を表すデータを算出して、その算出データを例えば無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aへ送信する機能を備える。
上記各脈波センサ21,22が使用する無線インタフェースとしては、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線データ通信規格を採用した無線インタフェースが使用される。なお、脈波センサ21,22は個別に用意せず、1台の脈波センサを学習データ作成用と認知能力変化予測用として共用するようにしてもよい。
ATMT入力部23は、ATMTタスクの実施結果を表すデータを入力するためのインタフェースを備えた携帯端末(例えばノート型のパーソナルコンピュータやタブレット型端末、スマートフォン)からなる。そして、上記入力されたATMTタスクの実施結果を表すデータを、例えば無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aに向け送信する。
表示部30は、認知能力変化予測結果を表示するためのアプリケーション・プログラムを備えた携帯端末(例えばウェアラブル端末やスマートフォン、タブレット型端末)からなる。そして、認知能力変化予測装置10Aから無線インタフェースを介して送られた認知能力変化の予測結果を表す情報を受信し、当該情報をディスプレイに表示する。
学習DB40は、例えばWeb上のサーバコンピュータまたはクラウドコンピュータに設けられ、認知能力変化予測装置10Aにより作成された学習データをネットワークを介して受信し記憶する。また、認知能力変化予測装置10Aから送られる参照要求に応じて、該当する学習データを要求元の認知能力変化予測装置10Aへ送信する。なお、学習DB40は、認知能力変化予測装置10A内に設けてもよい。
認知能力変化予測装置10Aは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、記憶部、および無線インタフェース等の各種外部インタフェースを備えるパーソナルコンピュータまたはサーバコンピュータからなる。そして、本実施形態を実施するために必要な処理機能として、特徴量算出部101,104と、特徴量変化算出部102,105と、学習データ作成部103と、認知能力変化予測部106とを有している。これらの処理機能は何れも、上記記憶部に格納されたプログラムを上記プロセッサに実行させることにより実現される。
上記各処理機能のうち、特徴量算出部101、特徴量変化算出部102および学習データ作成部103は、学習データを作成するために用いられる。
特徴量算出部101は、上記脈波センサ21から時系列で送信される、学習データ測定対象ユーザの心拍間隔データを受信し、この受信された心拍間隔データをもとに所定の時間区間ごとにHRV特徴量を算出する。
特徴量変化算出部102は、上記算出されたHRV特徴量をもとに、時間的に隣接する区間のT2統計量およびQ統計量を、HRV特徴量の変化量を表すデータとして算出する。そして、この算出されたT2統計量およびQ統計量を、上記特徴量算出部101により算出されたHRV特徴量と共に学習データ作成部103に渡す。なお、上記特徴量変化算出部102では、上記異なる複数の時間区間において算出された各心拍変動の特徴量間の変化量または変化率を算出する以外に、上記各心拍変動の特徴量間の相関係数の変化量または変化率を算出するようにしてもよい。
学習データ作成部103は、上記特徴量変化算出部102から渡された、HRV特徴量、T2統計量およびQ統計量を説明変数、ATMT入力部23において学習データ測定対象ユーザが入力したATMTエラー率の増減を表すデータを被説明変数とする学習データを作成し、この作成した学習データを学習DB40へ送信し記憶させる。
一方、上記各処理機能のうち、特徴量算出部104、特徴量変化算出部105および認知能力変化予測部106は、予測対象ユーザの認知能力の変化を予測するために使用される。
特徴量算出部104は、脈波センサ22から時系列で送信される、予測対象ユーザの心拍間隔データを受信し、この受信された心拍間隔データをもとに所定の時間区間ごとにHRV特徴量を算出する。
特徴量変化算出部105は、上記算出されたHRV特徴量をもとに、時間的に隣接する区間のT2統計量およびQ統計量を、HRV特徴量の変化量として算出する。そして、この算出されたT2統計量およびQ統計量を、上記特徴量算出部104により算出されたHRV特徴量と共に認知能力変化予測部106へ出力する。なお、上記特徴量変化算出部105では、上記異なる複数の時間区間において算出された各心拍変動の特徴量間の変化量または変化率を算出する以外に、上記各心拍変動の特徴量間の相関係数の変化量または変化率を算出するようにしてもよい。
認知能力変化予測部106は、上記特徴量変化算出部105によりHRV変化量として算出されたT2統計量およびQ統計量と、学習DB40に記憶された学習データとをもとに、対象ユーザの認知能力の変化を予測する。そして、当該予測結果の表示データを生成し、表示部30へ送信する。
(動作)
次に、以上のように構成された認知能力変化予測装置10Aの動作を説明する。ここでは、予測する認知能力変化の増減を「増えたか」、「減ったか」のみの2値で予測する場合について説明を行う。
(1)学習データの作成
予測対象ユーザの認知能力変化の予測処理に先立ち、認知能力変化予測装置10Aは学習データの作成処理を以下のように実行する。図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
学習データの測定対象ユーザには脈波センサ21が装着される。脈波センサ21は測定対象ユーザの脈波を計測し、計測された脈波の波形データをもとに心拍間隔データを算出する。そして、算出された心拍間隔データを無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aに向け送信する。
また、上記心拍間隔データの計測動作と並行して学習データの測定対象ユーザは、10分間隔でATMTのタスクを実施し、ATMTのエラー率と実施時刻を自身の認知能力を表すデータとしてATMT入力部23において入力する。ATMT入力部23は、上記ATMTエラー率と実施時刻が入力されるごとに、これらを無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aに向け送信する。
認知能力変化予測装置10Aは、先ず特徴量算出部101の制御の下、ステップS21により上記脈波センサ21から時系列的に送信される心拍間隔データを受信して取り込み、図示しない記憶部に順次保存する。またステップS22により、上記ATMT入力部23から送信されたATMTエラー率および実施時刻を受信し、この受信したATMTエラー率および実施時刻を学習データ作成部103に、また実施時刻を特徴量算出部101に入力する。
続いて特徴量算出部101は、ステップS23において、上記記憶部に保存されている心拍間隔データを、上記ATMTタスクの実施時刻に同期して10分間隔(区間t (t =1,2,…,n)に分割する。そして、上記区間t ごとに、5分の時間窓を6秒のスライド幅でスライドさせながらそれぞれHRV特徴量を算出し、算出したHRV特徴量を特徴量変化算出部102に渡す。
算出されるHRV特徴量には、時間領域の特徴量と周波数領域の特徴量がある。
時間領域の特徴量には、例えば
(1) 心拍間隔の平均値
(2) 心拍間隔の標準偏差(SDNN)
(3) 隣接した心拍間隔の差が50msecを超えた比率(pNN50)
(4) 隣接した心拍間隔の差の二乗平均平方和(RMSSD)
がある。
これに対し周波数領域の特徴量には、例えば
(5) 心拍間隔をスペクトル解析した際の低周波成分(0.04~0.15Hz)の総パワー(LF)
(6) 心拍間隔をスペクトル解析した際の高周波成分(0.15~0.40Hz)の総パワー(HF)
(7) 低周波成分の総パワーLFと、高周波成分の総パワーHFとの比率(LF/HF)
がある。
特徴量算出部101は、HRV特徴量として、例えば上記時間領域の特徴量のうちのSDNNと、周波数領域の特徴量のうちのLF/HFを算出するが、時間領域の特徴量および周波数領域の特徴量のそれぞれにおいて他の特徴量を算出してもよく、また複数の特徴量を同時に算出してもよい。
認知能力変化予測装置10Aは、次に特徴量変化算出部102の制御の下、ステップS24において、上記特徴量算出部101から渡されたHRV特徴量をもとに、区間t (t>1)ごとにHRV変化量を算出する。HRV変化量はT2 統計量およびQ統計量からなる。そして、この算出されたHRV変化量を、上記特徴量算出部101により算出されたHRV特徴量と共に、学習データ作成部103に渡す。
上記T2 統計量およびQ統計量の算出方法は以下の通りである。
Step1 ;区間t-1におけるHRV特徴量のベクトルX∈RA×B (A=窓数、B=特徴量数)に主成分数Rとして主成分分析を適用し、主成分得点ベクトルS∈RA×Bと主成分の負荷量行列VR を算出する。
Step2 ;区間t におけるHRV特徴量のベクトルX′∈RA×Bに対し、Step1 により算出された負荷量行列VR を用いて主成分得点ベクトルS′∈RA×Bを算出する。
Step3 ;主成分得点ベクトルS′における各主成分得点Srと、主成分得点ベクトルS′における各主成分得点S′rより、区間t のT2統計量を、
により算出する。なおσSrは主成分得点Srの標準偏差である。
Step4 ;主成分得点ベクトルS′および主成分の負荷量行列VRより、上記HRV特徴量のベクトルX′を主成分より再構成した再構成特徴量ベクトルX`′を、
X`′=S′VT R
により算出する。
Step5 ;Q統計量を、次元圧縮の残差を示す値、つまり上記再構成特徴量ベクトルX`′と特徴量ベクトルX′との二乗誤差の総和として、
Q=Σ(X`′−X′)2
により算出する。
認知能力変化予測装置10Aは、最後に学習データ作成部103の制御の下、ステップS25において、区間t (1<t <n)ごとに、区間t ,t-1 におけるHRV特徴量と、区間t-1 をもとに算出された区間t におけるHRV変化量(T2統計量およびQ統計量)を説明変数とし、かつ区間t+1 と区間t のATMTエラー率の増減を被説明変数とする学習データを作成し、当該学習データを学習DB40に保存する。
なお、以上述べた学習データの作成処理は、認知能力変化の予測対象となるユーザが複数の場合にはこれらの各ユーザについてそれぞれ行われる。
なお、以上の説明では特定の一人の対象ユーザについて学習データを作成する場合を例にとって述べた。しかし、認知能力変化の予測対象として想定される複数のユーザについても同様に学習データを作成し、学習DB40に記憶する。
(2)ユーザの認知能力変化の予測処理
上記学習データの作成が終了すると、認知能力変化予測装置10Aは予測対象ユーザについて認知能力の変化を予測するための処理を以下のように実行する。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
対象ユーザには脈波センサ22が装着される。脈波センサ22は対象ユーザの脈波を計測し、計測された脈波の波形データをもとに心拍間隔データを算出する。そして、算出された心拍間隔データを無線インタフェースを介して認知能力変化予測装置10Aに向け送信する。
認知能力変化予測装置10Aは、先ず特徴量算出部104の制御の下、ステップS31により上記脈波センサ22から時系列的に送信される心拍間隔データを受信して取り込み、図示しない記憶部に一旦保存する。そして、先ず現時点から最新の10分間に上記脈波センサ22から受信される心拍間隔データについて、5分の時間窓を6秒のスライド幅でスライドさせながらそれぞれHRV特徴量を算出する。このとき算出されるHRV特徴量は、先に述べた学習データ作成時に特徴量算出部101で算出された(1) 〜(7) の値と同じである。そして、上記算出された最新の10分間のHRV特徴量を特徴量変化算出部105に渡す。以後、10分ごとに上記HRV特徴量の算出処理を繰り返す。
認知能力変化予測装置10Aは、次に特徴量変化算出部105の制御の下、ステップS32によりHRV変化量を以下のように算出する。すなわち、上記特徴量算出部104から渡されたHRV特徴量を順次記憶部に保存する。そして、先ず現時点から10分前までの区間におけるHRV特徴量を上記記憶部から読み込み、10分前から20分前の区間に測定・算出されたHRV特徴量をもとに、HRV変化量を算出する。具体的には、上記10分前から20分前の区間に測定・算出されたHRV特徴量に主成分分析を適用した際の負荷量行列VRおよび主成分得点ベクトルS′より、上記現時点から10分前までのHRV特徴量を用いて、T2統計量およびQ統計量を算出する。
なお、各心拍変動の特徴量間の変化量または変化率を算出する以外に、前記各心拍変動の特徴量間の相関係数の変化量または変化率を算出するようにしてもよい。
認知能力変化予測装置10Aは、最後に認知能力変化予測部106の制御の下、ステップS33において、先ず学習DB40からATMTエラー率の増減を表すデータを読み込んで、SVM(Support Vector Machine)により予測用回帰モデルの分類器を作成する。そして、上記特徴量変化算出部105により算出されたHRV特徴量と、その変化量(T2 統計量およびQ統計量)を上記分類器に入力することで、ATMTエラー率の増減、つまり「増えるか」または「減るか」を予測する。そして、当該予測結果を示す表示データを生成し、表示部30へ送信する。この結果、表示部30には、例えば「今後10分間は直前10分間に比べて認知能力が低下すると予測される」といったメッセージが表示される。
(効果)
以上詳述したように第1の実施形態では、事前に学習データ作成部103において、区間t (1<t <n)ごとに、特徴量算出部101により算出された、区間t ,t-1 におけるHRV特徴量と、特徴量変化算出部102により算出された、区間t-1 をもとに算出された区間t におけるHRV変化量(T2統計量およびQ統計量)を説明変数とし、かつATMT入力部23により入力された、区間t+1 と区間t との間のATMTエラー率の増減を表す2値データを被説明変数とする学習データを作成し、学習DB40に保存する。そして、この状態で予測対象ユーザの心拍間隔データをもとに特徴量算出部104により所定の時間分ごとにHRV特徴量を算出し、当該HRV特徴量をもとに特徴量変化算出部105によりHRV変化量を示すT2統計量およびQ統計量を算出する。そして、認知能力変化予測部106により、学習DB40からATMTエラー率の増減を表すデータを読み込んで分類器を作成し、上記算出されたHRV特徴量と、その変化量(T2 統計量およびQ統計量)を上記分類器に入力することでATMTエラー率の増減を予測して、その結果を表示部30に表示するようにしている。
従って、予測対象ユーザの認知能力の変化が予測されてその結果が表示されることで、例えば認知能力が低下する前に予測対象ユーザが自主的に休息を取ったり、管理者が予測対象ユーザに対し休息を与える等の対策を適切なタイミングで講じることが可能となる。その結果、例えばパーソナルコンピュータを使用してタスクを実行しているユーザの作業効率や品質を高く維持することが可能となる。
[第2の実施形態]
この発明の第2の実施形態は、予測する認知能力変化の増減を、2値ではなく連続値である増減量として予測するようにしたものである。
(1)学習データの作成
図6は、認知能力変化予測装置10Aによる学習データ作成処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。なお、同図において前記図4と処理内容が同一のステップには同一符号を付して説明を行う。
第2の実施形態において前記第1の実施形態と異なるところは、ATMTエラー率の変化量を被説明変数として学習DB40に保存している点である。すなわち、認知能力変化予測装置10Aの学習データ作成部103は、学習データを作成する際に、ステップS26において、区間t (1<t <n)ごとに、区間t ,t-1 におけるHRV特徴量と、区間t-1 をもとに算出された区間t におけるHRV変化量(T2統計量およびQ統計量)を説明変数とし、かつ区間t+1 と区間t のATMTエラー率の変化量、つまりATMTエラー率そのものを被説明変数とする学習データを作成する。そして、この作成した学習データを学習DB40に保存する。
(2)ユーザの認知能力変化の予測処理
上記学習データの作成が終了すると、認知能力変化予測装置10Aは予測対象ユーザについて認知能力の変化を予測するための処理を以下のように実行する。図7はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。なお、同図において前記図5と処理内容が同一のステップには同一符号を付して説明を行う。
認知能力変化予測装置10Aの認知能力変化予測部106は、ステップS34において、先ず学習DB40からATMTエラー率の変化量を表すデータを読み込み、SVR(Support Vector Regression)モデルによって推定用回帰モデルを作成する。そして、上記特徴量変化算出部105により算出されたHRV特徴量と、その変化量(T2 統計量およびQ統計量)を上記推定用回帰モデルに入力することでATMTエラー率の変化量を予測し、当該予測結果を示す表示データを生成して表示部30へ送信する。なお、推定に用いる回帰モデルとしては、SVRに限らず、PLS(Partial Least Square)回帰モデルなど他の重回帰モデルを用いてもよい。
以上のような処理を実行することで、ATMTエラー率の増減に加え、その増加量または減少量を予測することができる。そして、当該予測結果を示す表示データを生成し、表示部30へ送信することで、表示部30に例えば「今後10分間は直前10分間に比べて認知能力が20%低下すると予測される」といったメッセージを表示することができる。従って、予測対象ユーザに対し、休息させるか否かに止まらず、どの程度の時間休息させればよいか、さらには適当な休息の種類(仮眠、体操、軽食等)を指示することが可能となる。
[第3の実施形態]
この発明の第3の実施形態は、対象ユーザの認知能力変化の予測処理後に、当該予測対象期間において実際に計測・算出されたHRV特徴量をもとに上記対象ユーザの認知能力変化を推定し、この認知能力変化の推定結果をもとに新たな学習データを作成して学習DBに追加するようにしたものである。
図8は、この発明の第3の実施形態に係る認知能力変化予測装置の構成を示すブロック図である。なお、同図において前記図3と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
本実施形態の認知能力変化予測装置10Bは、認知能力変化推定部107をさらに備えている。この認知能力変化推定部107は、対象ユーザの認知能力変化の予測処理後に、当該予測対象期間において特徴量算出部104により実際に算出されたHRV特徴量を読み込む。そして、この算出されたHRV特徴量をもとに上記予測対象期間における対象ユーザの認知能力を推定し、その推定結果を学習データ作成部103に渡して新たな学習データを作成させる。
このような構成であるから、認知能力変化予測装置10Bでは、認知能力変化予測部106により例えば今後10分間における対象ユーザの認知能力変化の予測処理が終了すると、続いて認知能力変化推定部107により上記今後10分間における実際の認知能力の推定が行われる。
この認知能力の推定処理は以下のように行われる。すなわち、先ず特徴量算出部により、脈波センサ22から受信した最新の10分間の心拍間隔データについて、5分の時間窓を6秒のスライド幅でスライドさせながらそれぞれHRV特徴量を算出する。次に認知能力変化推定部107により、上記算出されたHRV特徴量をもとに、上記10分間における対象ユーザの実際の認知能力変化を推定する。具体的には、認知能力変化の推定結果に基づくATMTエラー率の変化量を推定する。なお、上記HRV特徴量を用いた認知能力変化の推定処理法方については、非特許文献2に詳しく記載されている。
認知能力変化推定部107は、上記算出されたATMTエラー率の変化量の推定結果を、認知能力変化の予測処理過程において特徴量算出部104および特徴量変化算出部105によりそれぞれ算出されたHRV特徴量およびHRV変化量(T2 統計量とQ統計量)と共に、学習データ作成部103に渡す。学習データ作成部103は、上記認知能力変化推定部107から渡された、HRV特徴量およびHRV変化量(T2 統計量とQ統計量)を説明変数とし、かつATMTエラー率の変化量の推定結果を被説明変数とする新たな学習データを作成し、この作成した学習データを学習DB40に書き込む。
以上述べたように第3の実施形態では、対象ユーザの認知能力変化の予測処理後に、当該予測対象期間において実際に計測・算出されたHRV特徴量をもとに上記対象ユーザの認知能力変化を推定し、この認知能力変化の推定結果をもとに新たな学習データを作成して学習DBに追加するようにしている。従って、対象ユーザの最新の期間における認知能力変化の推定結果に基づく学習データを記憶することができ、これによりそれ以降の認知能力変化の予測をより一層精度良く行うことが可能となる。
[その他の実施形態]
認知能力の指標としては、ATMTのエラー率以外に、ATMTの正解数やエラー数を用いてもよく、さらにはタスク中のキーボードの打鍵数やアクティブウィンドウの切換数等のパーソナルコンピュータの操作ログを用いてもよい。
また、前記各実施形態では認知能力変化予測装置をサーバコンピュータ等に設けた場合を例にとって説明したが、対象ユーザが所持するスマートフォンやタブレット型端末等の携帯端末に設けてもよい。
その他、認知能力変化予測装置の構成や予測処理の手順、処理内容等については、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…処理装置、2…データ入力手段、3…結果出力手段と、4…学習データ蓄積手段、11…特徴量算出手段と、12…特徴量変化算出手段、13…認知能力変化予測手段と、21,22…脈波センサ、23…ATMT入力部、30…表示部、40…学習データベース、101,104…特徴量算出部、102,105…特徴量変化算出部、103…学習データ作成部、106…認知能力変化予測部、107…認知能力変化推定部。

Claims (6)

  1. 予測対象ユーザの心拍間隔を表すデータを取得する手段と、
    前記取得された心拍間隔を表すデータをもとに、時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量をそれぞれ算出する手段と、
    前記算出された各心拍変動の特徴量をもとに、当該各心拍変動の特徴量の変化量を算出する手段と、
    前記算出された各心拍変動の特徴量およびその変化量と、予め記憶されている学習データとをもとに、前記予測対象ユーザの1つ後の時間区間t+1における認知能力の変化を、前記時間区間tにおける認知能力からの増減として予測する手段と、
    前記予測対象ユーザの認知能力の変化の予測結果を表す情報を出力する手段と
    を具備することを特徴とする認知能力変化予測装置。
  2. 前記心拍変動の特徴量を算出する手段は、
    前記取得された心拍間隔を表すデータをもとに時間領域の特徴量を算出する手段と、
    前記取得された心拍間隔を表すデータをもとに周波数領域の特徴量を算出する手段と
    を備え、
    前記時間領域の特徴量を算出する手段は、心拍間隔の平均値と、心拍間隔の標準偏差(SDNN)と、隣接した心拍間隔の差が50msecを超えた比率(pNN50)と、隣接した心拍間隔の差の二乗平均平方和(RMSSD)とのうちの少なくとも1つを算出し、
    前記周波数領域の特徴量を算出する手段は、心拍間隔をスペクトル解析した際の低周波成分(0.04~0.15Hz)の総パワー(LF)と、心拍間隔をスペクトル解析した際の高周波成分(0.15~0.40Hz)の総パワー(HF)と、前記低周波成分の総パワーLFと前記高周波成分の総パワーHFとの比率(LF/HF)とのうちの少なくとも1つを算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の認知能力変化予測装置。
  3. 前記心拍変動の特徴量の変化量を算出する手段は、前記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量との間の変化量または変化率と、前記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量との間の相関係数の変化量または変化率とのうちの何れかを算出する
    ことを特徴とする請求項1に記載の認知能力変化予測装置。
  4. 前記心拍変動の特徴量の変化量を算出する手段は、前記時間区間tにおける心拍変動の特徴量と、1つ前の時間区間t−1における心拍変動の特徴量に対し、それぞれ主成分の分析を行い、当該主成分の分析結果に基づいて、前記主成分の変化を示すT2 統計量と、次元圧縮の残差を示すQ統計量とをそれぞれ算出することを特徴とする請求項3に記載の認知能力変化予測装置。
  5. 前記認知能力の変化を予測する手段は、
    前記学習データをもとに認知能力の変化を表す分類器を作成し、前記算出された各心拍変動の特徴量とその変化量を前記分類器に入力することで、前記認知能力の変化を予測する手段と、
    前記学習データをもとに回帰モデルを作成し、前記算出された各心拍変動の特徴量とその変化量を前記回帰モデルに入力することで、前記認知能力の変化量を予測する手段と
    のうちの何れか一方を備えることを特徴とする請求項1に記載の認知能力変化予測装置。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載の認知能力変化予測装置の前記各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。
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