図1A〜図6を用いて本発明の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に係る耐震壁、免震構造及び第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイスについて説明する。
(第1実施形態に係る耐震壁)
図1Aに示されるように、第1実施形態に係る耐震壁14は、矩形枠状に形成されたフレーム部16と、フレーム部16内に配置された長尺状の連結部材18、20及びブロック状の連結部材22と、連結部材20と連結部材22との間に設けられたエネルギ吸収デバイス50と、を含んで構成されている。
フレーム部16は、建物の水平方向Hに間隔をあけて建物の上下方向Vに延在する一対の縦材24と、一対の縦材24の上端部及び下端部を建物の水平方向Hにつなぐ一対の横材26と、を備えている。一対の縦材24及び一対の横材26としては、角形鋼管、溝形鋼、山形鋼、H形鋼及びI形鋼等の形鋼が用いられている。そして、一対の縦材24と一対の横材26とは、溶接や図示しない締結部材を介して接合されている。なお、縦材24及び横材26は、形鋼に限らず、溶接組立された鋼部材、薄板軽量形鋼による部材、木製の部材などであってもよい。また、建物の最下階に用いられる耐震壁においては、一対の縦材24の下端部を建物の基礎に接続することにより、フレーム部16の下端部に配置された横材26の機能を建物の基礎にもたせてもよい。
連結部材18は建物の水平方向H及び上下方向Vに対して傾斜された状態で延在されている。この連結部材18の下端部は建物の下方側に配置された横材26の長手方向の中間部に接合されており、連結部材18の上端部は後述する連結部材20の上端部に接合されている。また、連結部材20は建物の上下方向Vに延在されている。この連結部材20の下端部は建物の下方側に配置された横材26の長手方向の中間部に接合されており、連結部材20の上端部は建物の上方側に配置された横材26と離間している。さらに、連結部材22は、建物の上方側に配置された横材26の長手方向の略中央部に接合されている。
連結部材20の上端部と連結部材22とは、エネルギ吸収デバイス50を介して建物の水平方向Hにつながれている。これにより、エネルギ吸収デバイス50の変形軸線の軸方向と建物の水平方向Hとが一致するようになっている。ここで、エネルギ吸収デバイス50と連結部材20、22の間には、耐震壁14の構面内で回転可能なピン51が設けられ(エネルギ吸収デバイス50と連結部材20、22とがピン51を介して接合され)、エネルギ吸収デバイス50に曲げが作用しない構成となっている。なお、エネルギ吸収デバイス50は、フレーム部16の形状等に応じて、建物の上下方向Vが変形軸線の軸方向となるように配置されていてもよい。この場合、連結部材18、20、22を一対の縦材24にそれぞれ接合すればよい。
そして、図1Bに示されるように、地震による外力Qが耐震壁14に入力されて、フレーム部16が略平行四辺形状に変形されると、連結部材20の上端部と連結部材22との間隔が変化する。これにより、エネルギ吸収デバイス50の一部が軸方向に作用する力Pを受けて変形することで、耐震壁14に入力された地震エネルギを吸収することが可能となっている。
(第2実施形態に係る耐震壁)
図2Aに示されるように、第2実施形態に係る耐震壁28は、矩形枠状に形成されたフレーム部16と、フレーム部16の内部に配置された単一の斜材30と、斜材30とフレーム部16との間に設けられた一対のエネルギ吸収デバイス50と、を含んで構成されている。
斜材30は、円形鋼管等を用いて構成されており、この斜材30は、一対の縦材24及び一対の横材26との間に建物の水平方向H及び上下方向Vに対して傾斜された状態で配置されている。この斜材30の一方側の端部は、エネルギ吸収デバイス50を介して一方の縦材24と一方の横材26との接合部の近傍に接続されており、斜材30の他方側の端部は、エネルギ吸収デバイス50を介して他方の縦材24と他方の横材26との接合部の近傍に接続されている。そして、図2Bに示されるように、地震による荷重Qが耐震壁28に入力されて、フレーム部16が略平行四辺形状に変形された際に、斜材30とフレーム部16との間に設けられた一対のエネルギ吸収デバイス50の一部が変形軸線の軸方向への荷重Pを受けて変形することで、耐震壁28に入力された地震エネルギを吸収することが可能となっている。
(第3実施形態に係る耐震壁)
図3Aに示されるように、第3実施形態に係る耐震壁32は、第2実施形態の耐震壁28と同様の構成のフレーム部16と、フレーム部16内に設けられた一対の第1斜材34及び一対の第2斜材36と、一対の第1斜材34の間及び一対の第2斜材36の間にそれぞれ設けられた一対のエネルギ吸収デバイス50と、を含んで構成されている。
第1斜材34及び第2斜材36は、円形鋼管等を用いて構成されている。一方の第1斜材34の一方側の端部は、一方の縦材24の上下方向の中央部の近傍に接続されており、他方の第1斜材34の一方側の端部は、他方の縦材24と他方の横材26との接合部の近傍に接続されている。また、一方の第1斜材34の他方側の端部と他方の第1斜材34の他方側の端部とは、エネルギ吸収デバイス50を介してつながれている。
また、一方の第2斜材36の一方側の端部は、一方の縦材24の上下方向の中央部の近傍に接続されており、他方の第2斜材36の一方側の端部は、他方の縦材24と一方の横材26との接合部の近傍に接続されている。また、一方の第2斜材36の他方側の端部と他方の第2斜材36の他方側の端部とは、エネルギ吸収デバイス50を介してつながれている。そして、図3Bに示されるように、地震による荷重Qが耐震壁32に入力されて、フレーム部16が略平行四辺形状に変形された際に、一対の第1斜材34の間及び一対の第2斜材36の間に設けられたエネルギ吸収デバイス50の一部が変形軸の軸線方向に作用する荷重Pを受けて変形されることで、耐震壁32に入力された地震エネルギを吸収することが可能となっている。
(免震構造)
図4Aに示されるように、本実施形態の免震構造が適用された建物38は、その基礎を構成する下部構造物40と、下部構造物40に支持部としてのアイソレータ42を介して支持された上部構造物44と、下部構造物40と上部構造物44との間に設けられたエネルギ吸収デバイス50と、を含んで構成されている。
本実施形態のアイソレータ42は、軸受鋼等を球状に形成した転がり支承であり、複数のアイソレータ42が、上部構造物44と下部構造物40との間に建物38の水平方向Hに間隔をあけて配置されている。そして、複数の転がり支障(アイソレータ42)が転動することで、上部構造物44が下部構造物40に対して建物38の水平方向Hに移動することが可能となっている。なお、アイソレータ42は、すべり支承や積層ゴムなど、他の構成のアイソレータとしてもよい。
また、上部構造物44及び下部構造物40には、エネルギ吸収デバイス50が取付けられる連結部材46及び連結部材48が固定されている。この連結部材46と連結部材48とは、エネルギ吸収デバイス50を介して建物38の水平方向Hにつながれている。これにより、エネルギ吸収デバイス50の変形軸線の軸方向と建物38の水平方向Hとが一致するようになっている。ここで、エネルギ吸収デバイス50と連結部材46、48の間には、水平面内で回転可能なピン51が設けられ(エネルギ吸収デバイス50と連結部材46、48とが、ピン51を介して接合され)、変形軸線に直交する水平な方向(図4A及び図4Bの紙面奥行き方向)の変形に対して、エネルギ吸収デバイス50に曲げが作用しない構成となっている。
そして、図4Bに示されるように、地震による外力Qが建物38に入力されて、上部構造物44が下部構造物40に対して建物38の水平方向Hに移動されることで、連結部材46と連結部材48との間隔が変化する。これにより、エネルギ吸収デバイス50の一部が軸方向に作用する力Pを受けて変形することで、建物38に入力された地震エネルギを吸収することが可能となっている。
(第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイス)
次に、前述の第1実施形態の耐震壁14、第2実施形態の耐震壁28、第3実施形態の耐震壁32及び実施形態の免震構造に用いられるエネルギ吸収デバイス50について説明する。
図5(A)〜(C)及び図6に示されるように、エネルギ吸収デバイス50は、その長手方向(変形軸線L1の方向)に作用する荷重に対してその一部が塑性変形することで、エネルギを吸収することが可能とされている。このエネルギ吸収デバイス50は、板状に形成された鋼板材に捩り加工等が施されることによりその一部が捩られたエネルギ吸収デバイス本体52と、エネルギ吸収デバイス本体52の大部分が内部に配置される座屈拘束部材としての座屈拘束管54と、を主要な要素として構成されている。
図6に示されるように、エネルギ吸収デバイス本体52は、当該エネルギ吸収デバイス本体52を変形軸線L1の方向に二等分する二等分線L2をはさんで対称に形成されている。このエネルギ吸収デバイス本体52の長手方向一方側の端部は、耐震壁14、28、32のフレーム部16(図1A,図2A及び図3A参照)又は建物38の上部構造物44(図4A参照)とつながれる第1接続部56とされている。また、エネルギ吸収デバイス本体52の長手方向他方側の端部は、耐震壁14、28、32のフレーム部16又は建物38の下部構造物40とつながれる第2接続部58とされている。なお、第1接続部56及び第2接続部58には、当該第1接続部56及び第2接続部58へつながれる部材を締結するためのピンやボルトが挿通される挿通孔60が形成されている。
エネルギ吸収デバイス本体52における第1接続部56と第2接続部58との間の部位は、変形軸線L1の軸方向への荷重によって第1接続部56と第2接続部58との変形軸線L1の軸方向への相対位置が変化されることで変形されるエネルギ吸収部としての変形部62とされている。
変形部62において第1接続部56と二等分線L2との間の部分は、第1接続部56側から見て反時計回り方向(矢印F1方向)に捩れている螺旋状に形成された第1変形部64とされている。
また、変形部62において第2接続部58と二等分線L2との間の部分は、第2接続部58側から見て時計回り方向(矢印F2方向)に捩れている螺旋状に形成された第2変形部66とされている。すなわち、第2変形部66と第1変形部64とは反対方向に捩れている。
座屈拘束管54は、所定の長さの鋼管材を用いて形成されており、この座屈拘束管54は、変形軸線L1を軸方向とする円筒状に形成されている。この座屈拘束管54の長さAは、その内部に配置された変形される前のエネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64及び第2変形部66が露出しない程度の長さで、かつ第1接続部56及び第2接続部58が露出する長さに設定されている。また、座屈拘束管54の内径Cは、変形される前及び変形されたエネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64及び第2変形部66の外径D(変形軸線L1と直交する方向への幅寸法)よりも大きな内径に設定されている。また、座屈拘束管54の一方側の端部には、エネルギ吸収デバイス本体52の第1接続部56が固定部材68を介して固定されている。
図1A及び図1Bに示されるように、以上説明したエネルギ吸収デバイス50を含んで構成された耐震壁14を備えた建物に地震による荷重Qが作用すると、当該荷重が耐震壁14のフレーム部16に伝達される。また、フレーム部16に伝達された荷重は、連結部材18、20、22を介してエネルギ吸収デバイス50に伝達される。すると、エネルギ吸収デバイス50には、軸方向への引張荷重又は圧縮荷重としての荷重Pが作用する。
図6に示されるように、エネルギ吸収デバイス50に引張荷重(荷重P(図1B参照))が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64及び第2変形部66が塑性変形される。すなわち、第1変形部64と第2変形部66との境目67が矢印G1方向(捩りが解かれる方向)へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが引き延ばされるように塑性変形される。
また、エネルギ吸収デバイス50に圧縮荷重(荷重P)が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66との境目67が矢印G2方向(捩りが増す方向)へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが縮められるように塑性変形される。
以上説明したエネルギ吸収デバイス50を備えた耐震壁14では、エネルギ吸収デバイス50の第1変形部64及び第2変形部66が繰り返し変形されることで、地震エネルギを吸収することができる。
また、図2A及び図2Bに記載された第2実施形態に係る耐震壁28及び図3A及び図3Bに記載された第3実施形態に係る耐震壁32についても同様に、エネルギ吸収デバイス50の第1変形部64及び第2変形部66が繰り返し変形されることで、地震エネルギを吸収することができる。さらに、図4A及び図4Bに示された免震構造を備えた建物38についても同様に、エネルギ吸収デバイス50の第1変形部64及び第2変形部66が繰り返し変形されることで、建物38に入力された地震エネルギを吸収することができる。
ここで、本実施形態のエネルギ吸収デバイス50では、第1変形部64が捩られている方向と第2変形部66の捩られている方向とが反対方向とされている。当該構成とすることにより、第1変形部64と第2変形部66との境目67が回転されながら当該第1変形部64及び第2変形部66が変形される。これにより、第1変形部64及び第2変形部66が変形される際における当該第1変形部64及び第2変形部66の局所的な応力の高まりが、第1変形部64及び第2変形部66に対応する部位が同じ方向へ捩れている構成に比べて抑制される。その結果、第1変形部64及び第2変形部66が繰り返し変形される際のエネルギ吸収荷重(第1接続部56と第2接続部58との相対位置の変化を妨げる方向に作用する荷重)を安定させることができる。
また、本実施形態では、エネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64及び第2変形部66を覆う座屈拘束管54を設けることにより、エネルギ吸収デバイス50に圧縮荷重が作用した際に第1変形部64及び第2変形部66が座屈することを抑制することができる。これにより、エネルギ吸収デバイス50に圧縮荷重が作用した際におけるエネルギ吸収荷重を安定させることができる。また、座屈拘束管54の内径Cと第1変形部64及び第2変形部66の外径Dとのクリアランスは、変形部62(第1変形部64及び第2変形部66)の外径Dの変化量(圧縮変形に対する拡径、引張変形に対する縮径)を考慮して、例えば、変形部62の外径Dの3〜10%の範囲など、座屈拘束の効きや部品相互の干渉の程度を考慮して適宜設定すればよい。
(第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイス)
次に、図7を用いて本発明の第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイス70について説明する。なお、上記第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイス50と対応する部材や部分については上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略することがある。また、後述する第3実施形態〜第5実施形態に係るエネルギ吸収デバイスの説明においても、既に説明したエネルギ吸収デバイスの各部材や部分と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
図7に示されるように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス70は、エネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64と第2変形部66とが、円板状に形成されたつなぎ部としてのつなぎ板72を介してつながれていることに特徴がある。すなわち、第1接続部56及び第1変形部64を有する部材と第2接続部58及び第2変形部66を有する部材とが、つなぎ板72を介して接合されることで、エネルギ吸収デバイス本体52が構成されている。また、つなぎ板72は、変形軸線L1の軸方向を厚み方向とする円板状に形成されており、このつなぎ板72の外径Eは、座屈拘束管54の内径Cよりもやや小さな外径に形成されていると共に、変形される前及び変形された第1変形部64及び第2変形部66の外径Dよりも大きな外径に形成されている。また、つなぎ板72の外周部における変形軸線L1の軸方向の両端部72Aは、面取り又はラウンドエッジ加工等が施されることで湾曲されている。また、第2接続部58と第2変形部66は接続板69を介して接続されている。接続板69は、つなぎ板72と同様に、変形軸線L1の軸方向を厚み方向とする円板状に形成されており、この接続板69の外径Jは、座屈拘束管54の内径Cよりもやや小さな外径に形成されていると共に、変形される前及び変形された第1変形部64及び第2変形部66の外径Dよりも大きな外径に形成されている。図示は省略するが、接続板69の外周部における変形軸線L1の軸方向の両端部は、面取り又はラウンドエッジ加工してもよい。座屈拘束管54の内径Cとつなぎ板72の外径Eとのクリアランスおよび屈拘束管54の内径Cと接続板69の外径Jとのクリアランスのそれぞれは、例えば、つなぎ板72の外径Eおよび接続板69の外径Jの0.1〜5%の範囲など、座屈拘束の効きや部品相互の干渉の程度を考慮して適宜設定すればよい。また、変形部62(第1変形部64、第2変形部66)の外径Dとつなぎ板72の外径Eとのクリアランスおよび変形部62の外径Dと接続板69の外径Jとのクリアランスのそれぞれは、例えば、変形部62の外径Dの5〜20%の範囲など、変形部62の外径Dの変化量(圧縮変形に対する拡径、引張変形に対する縮径)を考慮して適宜設定すればよい。
以上説明した第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイス70では、当該エネルギ吸収デバイス70に引張荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ板72が矢印G1方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが引き延ばされるように塑性変形される。また、エネルギ吸収デバイス70に圧縮荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ板72が矢印G2方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが縮められるように塑性変形される。これにより、エネルギ吸収デバイス70に入力されたエネルギを吸収することができる。
ここで、本実施形態のエネルギ吸収デバイス70では、上記つなぎ板72を有することにより、第1変形部64及び第2変形部66が変形される際に、当該第1変形部64及び第2変形部66が座屈拘束管54の内周面に当接することを抑制し、変形部62(第1変形部64及び第2変形部66)と座屈拘束管54の接触による摺動抵抗を低減することができる。また、つなぎ板72の外周部における変形軸線L1の軸方向の両端部72Aが湾曲されていることにより、つなぎ板72の外周部における変形軸線L1の軸方向の両端部72Aと座屈拘束管54との摺動抵抗を小さくすることができる。これにより、エネルギ吸収荷重のストロークに対するばらつきを抑制することができる。
(第3実施形態に係るエネルギ吸収デバイス)
次に、図8を用いて本発明の第3実施形態に係るエネルギ吸収デバイス74について説明する。
図8に示されるように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス74は、つなぎ板72が座屈拘束管54に固定されていると共に、座屈拘束管54の一方側の端部及び他方側の端部と第1接続部56及び第2接続部58とがそれぞれ固定されていないことに特徴がある。このエネルギ吸収デバイス74では、当該エネルギ吸収デバイス74に引張荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ板72が座屈拘束管54と共に矢印G1方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが引き延ばされるように塑性変形される。また、エネルギ吸収デバイス74に圧縮荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ板72が座屈拘束管54と共に矢印G2方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが縮められるように塑性変形される。これにより、エネルギ吸収デバイス74に入力されたエネルギを吸収することができる。このように、座屈拘束管54が回転されながら第1変形部64及び第2変形部66が変形される構成とすることにより、座屈拘束管54が回転されることによって生じる慣性力を利用して、エネルギ吸収デバイス74が発生させるエネルギ吸収荷重を調節することができる(第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイス70に比べてエネルギ吸収荷重を増やすことができる)。
(第4実施形態に係るエネルギ吸収デバイス)
次に、図9及び図10を用いて本発明の第4実施形態に係るエネルギ吸収デバイス76について説明する。
図9(A)、(B)及び図10に示されるように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス76は、エネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64と第2変形部66とが、円柱状(内部が中空の円筒状でもよい)に形成されたつなぎ部としてのつなぎ棒78を介してつながれていると共に、第1変形部64及び第2変形部66が、つなぎ棒78の一方側の端部及び他方側の端部に固定された2つの座屈拘束管54にそれぞれ覆われていることに特徴がある。このエネルギ吸収デバイス76では、当該エネルギ吸収デバイス76に引張荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ棒78が2つの座屈拘束管54と共に矢印G1方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが引き延ばされるように塑性変形される。また、エネルギ吸収デバイス76に圧縮荷重が作用することにより、第1変形部64及び第2変形部66に生じる応力が降伏応力を超えると、第1変形部64と第2変形部66とをつなぐつなぎ棒78が2つの座屈拘束管54と共に矢印G2方向へ回転されながら第1変形部64と第2変形部66とが縮められるように塑性変形される。これにより、エネルギ吸収デバイス76に入力されたエネルギを吸収することができる。また、本実施形態では、つなぎ棒78の長さを調節することにより、エネルギ吸収デバイス76の長さを容易に調節することができる。なお、一例として、図2Aに示された斜材30としての機能をつなぎ棒78に持たせることもできる。
(第5実施形態に係るエネルギ吸収デバイス)
次に、図11及び図12を用いて本発明の第5実施形態に係るエネルギ吸収デバイス80について説明する。
図11(A)、(B)及び図12に示されるように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス80は、エネルギ吸収デバイス本体52の第1変形部64と第1接続部56との間及び第2変形部66と第2接続部58との間に延長棒82がそれぞれ設けられていることに特徴がある。このエネルギ吸収デバイス80は、前述の第4実施形態のエネルギ吸収デバイス76と同様に延長棒82の長さを調節することにより、エネルギ吸収デバイス80の長さを容易に調節することができる。なお、一例として、図3Aに示された第1斜材34及び第2斜材36としての機能を延長棒82に持たせることもできる。
なお、以上説明したエネルギ吸収デバイス50、70、74、76及び80では、座屈拘束管54を設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、座屈拘束管54を設けない構成としてもよいし、第1変形部64及び第2変形部66の座屈を抑制する他の構成の座屈拘束部材を設けてもよい。また、建物の壁や基礎等に形成された筒状の孔の内部に第1変形部64及び第2変形部66を配置することで、第1変形部64及び第2変形部66の座屈を抑制してもよい。
また、以上説明したエネルギ吸収デバイス50、70、74、76及び80では、変形軸線L1上において一対の第1変形部64と第2変形部66を設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、変形軸線L1上において複数対の第1変形部64と第2変形部66を設けた構成でもよい。また、第1変形部64と第2変形部66は捩れの向きのみが異なる鏡面対称の形状に限らず、第1変形部64と第2変形部66は厚み、幅、長さ、捩り角度、降伏点などが異なる非対称な形状、仕様とすることもできる。
(CAE解析結果の説明)
次に、図13〜図22を用いて、本実施形態のエネルギ吸収デバイス及び対比例に係るエネルギ吸収デバイスに変形軸線の軸方向への荷重が入力された際に生じるエネルギ吸収荷重の特性等のCAE解析による評価結果について説明する。
前述のように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス50、70、74、76及び80では、第1変形部64における第2変形部66側の端部及び第2変形部66における第1変形部64側の端部の回転が拘束されない構成とすることで、入力された荷重に対するエネルギを安定して吸収する。当該構成の効果を確認するために、以下の解析条件によりCAE解析を行った。
図13に示す第1変形部64単体を対象に、厚肉シェル要素を用いた有限要素解析モデルを作成し、当該第1変形部64に引張り及び圧縮荷重Pを加えた際のエネルギ吸収荷重の特性、各部に生じる応力、及び寸法変化を評価した。なお、第1変形部64の一方側の端部は、変形軸線L1の回りに回転しないように固定された固定点64Aに締結し、第1変形部64の他方側の端部は、変形軸線L1回りへの回転が拘束された状態で荷重が入力される、或いは、変形軸線L1回りへの回転が拘束されない状態で荷重が入力される載荷点64Bに締結した。また、引張り及び圧縮荷重Pが入力される前の第1変形部64の厚みをt(mm)、幅をB(mm)、長さをL(mm)とした。なお、第1変形部64を形成する鋼板のヤング率は205GPa、ポアソン比は0.3、降伏点は200MPaとし、降伏後の加工硬化特性はマルチリニアの曲線で近似した。
図14に示されるように、対比例の解析条件T1及びT2に係る第1変形部64の厚みt、幅B、長さLは、それぞれ6.0(mm)、60(mm)、180(mm)であり、この第1変形部64の載荷点64Bの回転拘束をした状態で引張り及び圧縮荷重Pを載荷点64Bに入力した。また、解析条件T1に係る第1変形部64の捩り角度θは、360degであり、解析条件T2に係る第1変形部64の捩り角度θは、540degである。ここで、捩り角度θとは、第1変形部64の固定点64Aに対して載荷点64B側の部分が変形軸線L1回りに捩られた角度、すなわち、長さLの範囲において変形部を構成する板が変形軸線L1回りに捩られた角度のことである。なお、幅B及び長さLが異なる第1変形部64のエネルギ吸収荷重の特性等を評価する場合には、上記回転角度θを(L/B)で割ることにより算出されたねじり角度を解析条件の一つとして採用することもできる。
これに対して、本実施形態のエネルギ吸収デバイス50等を模擬した解析条件N1及びN2に係る第1変形部64の厚みt、幅B、長さLは、解析条件T1及びT2と同様にそれぞれ6.0(mm)、60(mm)、180(mm)であり、この第1変形部64の載荷点64Bの回転拘束をしない状態で引張り及び圧縮荷重Pを載荷点64Bに入力した。また、解析条件N1に係る第1変形部64の捩り角度θは、解析条件T1と同様に360degであり、解析条件N2に係る第1変形部64の捩り角度θは、解析条件T2と同様に540degである。
図15Aには、引張荷重又は圧縮荷重Pを加えた際における変形量δ(固定点64Aに対する載荷点64Bの変位量)とエネルギ吸収荷重P(引張及び圧縮荷重Pに対応)の関係が示されている。この図に示されるように、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64では、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64に比べて、変形量に対するエネルギ吸収荷重が小さくなっていることがわかる。なお、図15Bに示されるように、本実施形態の構成を模擬した解析条件N2に係る第1変形部64と対比例の解析条件T2に係る第1変形部64との比較においても、変形量に対するエネルギ吸収荷重が同様の傾向となっている。
図16Aには、引張及び圧縮荷重Pを繰り返し加えながら引張及び圧縮方向の変形量δの値を徐々に大きくした際における変形量δ(固定点64Aに対する載荷点64Bの変位量)とエネルギ吸収荷重P(引張及び圧縮荷重Pに対応)の関係が示されている。この図に示されるように、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64では、解析を行った変形量の範囲内において耐力低下のほとんどない安定した繰返し履歴となっていることがわかる。これに対して、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64では、エネルギ吸収荷重が約130kNを超えた領域において急激に耐力低下する不安定な繰返し履歴となっていることがわかる。すなわち、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64は対比例の解析条件T1に係る第1変形部64に比べて、繰返し変形に対してより安定したエネルギ吸収性能を得られることがわかる。なお、図16Bに示されるように、本実施形態の構成を模擬した解析条件N2に係る第1変形部64と対比例の解析条件T2に係る第1変形部64との比較においても、引張及び圧縮荷重Pを繰り返し加えながら引張及び圧縮方向の変形量δの値を徐々に大きくした際の変形量δに対するエネルギ吸収荷重Pの特性が同様の傾向となっている。
図17(A)及び図18(A)には、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64を20mm圧縮変形させた際に当該第1変形部64に生じる板厚中心のミーゼス応力の等応力線が示されていると共に、図17(B)及び図18(B)には、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64を20mm引張変形させた際に当該第1変形部64に生じる板厚中心のミーゼス応力の等応力線が示されている。なお、各等応力線を指示した数字は応力の値を示しており、単位はMPaである。また、図19(A)及び図20(A)には、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64を20mm圧縮変形させた際に当該第1変形部64に生じる板厚中心のミーゼス応力の等応力線が示されていると共に、図19(B)及び図20(B)には、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64を20mm引張変形させた際に当該第1変形部64に生じる板厚中心のミーゼス応力の等応力線が示されている。これらの図に示されるように、対比例の構成を模擬した解析条件T1に係る第1変形部64では、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に比べて、固定点64A及び載荷点64B側における板幅方向の縁部(等応力線を指示した数字に下線を設けた箇所)において局所的に生じる応力が大きくなっていることがわかる。一方で、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64では、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64に比べて、固定点64A及び載荷点64B側における板幅方向の縁部に生じる応力が小さくなっていることがわかる。
以上の解析結果をまとめると、載荷点64Bの回転の拘束をした対比例の解析条件T1,T2に係る第1変形部64は、載荷点64Bの回転の拘束をしていない本実施形態の構成を模擬した解析条件N1、N2に係る第1変形部64に比べて、引張及び圧縮に対する変形抵抗(エネルギ吸収荷重)が増加し、第1変形部64の固定点64A及び載荷点64B側の局所において応力が上昇するため、エネルギ吸収時の構造的な安定性を確保し難くなる。その結果、繰返しの引張及び圧縮荷重に対する変形性能が低下してしまう。
これに対して、載荷点64Bの回転の拘束をしていない本実施形態の構成を模擬した解析条件N1,N2に係る第1変形部64では、引張及び圧縮に対する変形抵抗を抑えることができるため、第1変形部64の固定点64A及び載荷点64B側の局所における応力上昇を抑制でき、エネルギ吸収時の構造的な安定性を確保し易くなる。これにより、繰返しの引張及び圧縮荷重に対する変形性能を確保することができる
図21(A)には、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64を20mm圧縮変形させた際の当該第1変形部64の外径D(変形軸線L1と直交する方向への幅寸法)の最大変化量D1(=D×6%)が示されており、図21(B)には、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64を20mm圧縮変形させた際の当該第1変形部64の外径Dの最大変化量D3(=D×3%)が示されている。また、図22(A)には、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64を20mm引張変形させた際の当該第1変形部64の外径Dの最大変化量D2(=D×6%)が示されており、図22(B)には、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64を20mm引張変形させた際の当該第1変形部64の外径Dの最大変化量D4(=D×3%)が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1に係る第1変形部64の幅の最大変化量D3、D4は、対比例の解析条件T1に係る第1変形部64の幅の最大変化量D1、D2に比べて2分の1に低減されていることがわかる。これにより、本実施形態の構成を模擬した解析条件N1では、第1変形部64の伸縮に伴う幅方向の形状変化が抑制され、第1変形部64と座屈拘束管54(図6参照)の隙間の変化を抑制できる。その結果、座屈拘束管54と第1変形部64の干渉を抑制しやすくなり、座屈拘束管の隙間を小さく抑えることで座屈拘束管を小径化することにもつながる。
以上説明したCAE解析の結果等を踏まえて、所望のエネルギ吸収荷重の特性が得られるエネルギ吸収デバイスを設計すればよい。
また、以上説明したCAE解析では、第1変形部64を形成する素材は降伏点が200MPaの鋼とされた例について説明したが、本発明はこれに限定されず、より降伏点が低い低降伏点鋼や、降伏点や引張強さが大きな高強度鋼であってもよい。エネルギ吸収デバイスの材質は鋼に限らず、ステンレスやアルミなど可塑性の金属や合金であってもよく、樹脂などのその他の素材であってもよい。また、エネルギ吸収デバイスに用いる素材の強度も任意に選択することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。