以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図10を用いて説明する。図1に示す燃料供給システム10には、第1実施形態による燃料噴射装置100が用いられている。燃料供給システム10は、内燃機関であるディーゼル機関20の燃焼室22に、燃料噴射装置100によって燃料を供給する。燃料供給システム10は、フィードポンプ12、高圧燃料ポンプ13、コモンレール14、機関制御装置17、および複数の燃料噴射装置100を含んで構成されている。
フィードポンプ12は、燃料タンク11内に貯留された燃料を高圧燃料ポンプ13に圧送するポンプである。フィードポンプ12は、燃料配管12aによって高圧燃料ポンプ13と接続されている。燃料タンク11には、軽油などの燃料が貯留されている。
高圧燃料ポンプ13は、ディーゼル機関20の出力軸によって駆動される。高圧燃料ポンプ13は、燃料配管13aによってコモンレール14と接続されている。高圧燃料ポンプ13は、フィードポンプ12によって供給された燃料をさらに昇圧し、コモンレール14に供給する。
コモンレール14は、燃料配管14aを介して複数の燃料噴射装置100と接続されている。図1では、1つの燃料噴射装置100を示し、他の燃料噴射装置100の図示は省略している。燃料配管14aは、燃料を各燃料噴射装置100に供給する燃料流路15を形成している。コモンレール14は、高圧燃料ポンプ13から供給される高圧の燃料を一時的に蓄え、圧力を保持したまま各燃料噴射装置100に分配する。コモンレール14において余剰となった燃料は、減圧されつつ、余剰燃料配管14bに排出される。余剰燃料配管14bは、燃料タンク11に余剰燃料を還流させる戻り流路16を形成している。
機関制御装置17は、燃料噴射制御装置であって、演算回路としてのプロセッサ、RAM、および書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を含むマイクロコンピュータ又はマイクロコントローラと、各燃料噴射装置100を駆動する駆動回路とを含む構成である。機関制御装置17は、ディーゼル機関20の稼動状態に応じて各燃料噴射装置100の作動を制御する。
機関制御装置17は、各種センサからの情報を取得し、各部を制御する。機関制御装置17は、たとえばコモンレール14の圧力を検出する圧力センサから取得した燃料圧力を用いて、コモンレール14の圧力を制御する。
燃料噴射装置100には、燃料配管14aおよび戻り配管14cが接続されている。燃料噴射装置100は、燃焼室22を形成するヘッド部材21の挿入孔に挿入された状態で、ヘッド部材21に取り付けられている。燃料噴射装置100は、燃料流路15を通じて供給される燃料を、複数の噴孔44から燃焼室22内に直接的に噴射する。燃料噴射装置100は、噴孔44からの燃料の噴射を制御する弁機構を備えている。弁機構は、機関制御装置17からの駆動信号に基づいて作動するバルブニードル54(図2参照)と、噴孔44を開閉するノズルニードル50と、を含んでいる。燃料噴射装置100は、噴孔44を開閉するために、燃料流路15を通じて供給される燃料の一部を使用する。噴孔44の開閉に用いられた燃料は、減圧されつつ、戻り配管14cに排出される。戻り配管14cは、余剰燃料配管14bと共に、燃焼に用いられなかった燃料を燃料タンク11に還流させる戻り流路16を形成している。
次に、燃料噴射装置100に関して、図2を用いて説明する。燃料噴射装置100は、図2に示すように、ノズルニードル50、弁ボデー51、駆動部52、制御プレート53およびバルブニードル54を含んで構成される。
弁ボデー51は、筒状であって、下端部に噴孔44が形成されている。弁ボデー51は、金属材料よって形成されたシリンダ等の複数の部材を組み合わせることによって構成されている。弁ボデー51には、シート部41、高圧流路42、流入流路43、噴孔44、低圧流路45、圧力制御室46、中間室47および駆動部収容室48が形成されている。
噴孔44は、燃焼室22へ挿入される弁ボデー51において、挿入方向の先端部に形成されている。先端部は、円錐状または半球状に形成されている。噴孔44は、弁ボデー51の内側から外側に向けて少なくとも1つ、本実施形態では放射状に複数設けられている。高圧の燃料は、各噴孔44から燃焼室22へ向けて噴射される。高圧の燃料は、噴孔44を通過することによって霧化され、空気と混合し易い状態となる。シート部41は、弁ボデー51の先端部の内側に、円錐状に形成されている。シート部41は、噴孔44の上流側において高圧流路42に臨んでいる。
高圧流路42は、図1に示すコモンレール14を通じてコモンレール14から供給される高圧の燃料を、噴孔44に供給する。流入流路43は、高圧流路42と圧力制御室46とを連通させている。流入流路43は、高圧流路42を流通する燃料の一部を圧力制御室46に流入させる。流入流路43には、流入オリフィスとしてメインインオリフィス43aが設けられている。メインインオリフィス43aは、高圧流路42から圧力制御室46に流れる燃料の流量を制限する。低圧流路45は、圧力制御室46の燃料(リーク燃料)を、燃料噴射装置100の外部の低圧側である余剰燃料配管14bに流出させる排出通路の一部である。
圧力制御室46は、弁ボデー51の内部において、ノズルニードル50を挟んで噴孔44の反対側に設けられている。圧力制御室46は、内部に制御プレート53を収容し、シリンダ57およびノズルニードル50によって区画された円柱状の空間である。圧力制御室46には、流入流路43を通じて高圧の燃料が流入する。圧力制御室46の燃料圧力は、流入流路43からの高圧の燃料の流入と、中間室47への燃料の流出と、中間室47からの流入とにより変動する。圧力制御室46における圧力変動によってノズルニードル50が往復変位する。
中間室47は、バルブニードル54を収容する円柱状の空間である。中間室47と圧力制御室46との間には、上流側連通路55が形成されている。中間室47には、上流側連通路55を通じて、圧力制御室46から排出された燃料が流入する。
また中間室47と駆動部収容室48との間には、下流側連通路56が形成されている。下流側連通路56は、中間室47から排出された燃料を主に低圧流路45に流通させる。また中間室47とノズルニードル50が収容されているニードル収容室58との間には、中間通路59が形成されている。中間室47には、中間通路59を通じて、高圧流路42から供給された燃料がニードル収容室58を経て流入する。また中間通路59には、サブインオリフィス59aが形成されている。サブインオリフィス59aは、中間通路59の流路面積を部分的に絞る絞り部である。サブインオリフィス59aは、バルブニードル54が閉弁状態である場合に、ニードル収容室58から中間室47へ流出する燃料の流量を制限する。
中間室47を区画する区画壁には、上シート部47a、下シート部47bおよび載置部47cが形成されている。下シート部47bは、バルブニードル54の下端側を着座させる領域となる。上シート部47aは、バルブニードル54の上端側を着座させる領域となる。載置部47cは、中間室47の区画壁のうちで、下シート部47bの周囲を囲む領域である。載置部47cには、後述するバルブスプリング60の一端が載置されている。
ノズルニードル50は、弁体であって、弁ボデー51の内部に収容され、噴孔44を開閉する。ノズルニードル50は、金属材料によって全体として円柱状に形成されている。ノズルニードル50は、コイル状のノズルスプリング61により、噴孔44側へ向けて付勢されている。ノズルニードル50は、弁受圧面62およびフェース部63を有している。ノズルニードル50は、圧力制御室46の燃料圧力を弁受圧面62に受けることで、円筒状に形成されたシリンダ57の内周壁面に沿って、軸方向に往復変位する。ノズルニードル50は、弁ボデー51に対して相対変位することにより、フェース部63をシート部41に離着座させる。フェース部63は、噴孔44を開閉する主弁部を、シート部41と共に形成している。
駆動部収容室48は、中間室47から排出された燃料の一部によって満たされている。駆動部52は、駆動部収容室48に収容されている。駆動部52は、バルブニードル54を駆動するための駆動力を発生させることで、圧力制御室46と低圧流路45との間を遮断状態から連通状態へと切り替える。駆動部52は、機関制御装置17によって制御される。
駆動部52は、圧電素子積層体64および伝達機構65等によって構成されている。圧電素子積層体64は、例えばPZT(PbZrTiO3)と呼ばれる層と薄い電極層が交互に積まれた積層体である。圧電素子積層体64には、機関制御装置17から出力された入力駆動信号が入力される。圧電素子積層体64は、駆動信号に応じた電圧(以下、「駆動電圧」)に従って、ピエゾ素子の特性である逆圧電効果により、駆動部収容室48の軸方向に沿って伸縮する。
伝達機構65は、圧電素子積層体64の伸縮を駆動ピン71に伝達する。駆動ピン71は、下流側連通路56に挿通されている。駆動ピン71の先端面は、バルブニードル54に接触している。駆動部52は、圧電素子積層体64の伸縮を伝達機構65によって軸方向に沿って伝達することで、駆動ピン71を軸方向に往復変位させる。
制御プレート53は、金属材料によって円盤状に形成されている。制御プレート53は、弁ボデー51の軸方向に沿って往復変位可能な状態で、シリンダ57の内周側に配置されている。制御プレート53は、制御プレート用スプリング72により、シリンダ57に対して上流側連通路55へ向けて付勢されている。制御プレート53には、第1アウトオリフィス53aが形成されている。第1アウトオリフィス53aは、制御プレート53を板厚方向に貫通する貫通孔に形成されている。
次に、バルブニードル54に関して説明する。バルブニードル54は、下流側連通路56が連通し、かつ中間通路59を遮断した駆動状態と、下流側連通路56を遮断し、かつ中間通路59を連通した停止状態とを切替えて、圧力制御室46の圧力を変動させる制御部材である。駆動部52が駆動力を発生させていない場合には、下流側連通路56を閉鎖させる。一方、駆動部52が駆動力を発生させている場合には、バルブニードル54は、下流側連通路56を開状態にする。
バルブニードル54は、中間室47に収容されている。バルブニードル54は、中間室47内を軸方向に沿って変位可能である。バルブニードル54は、コイルばね状に形成されたバルブスプリング60が挿入される。バルブスプリング60の一端は、載置部47cに接触し、他端がバルブニードル54に接触する。これによってバルブスプリング60は、バルブニードル54を載置部47cに対して反噴孔側である駆動部収容室48へ向けて付勢する。
バルブニードル54には、上フェース部54cが形成されている。上フェース部54cは、下流側連通路56と対向するバルブニードル54の上端面に形成されている。上フェース部54cは、バルブスプリング60の弾性力により、上シート部47aと接触する。上フェース部54cの上シート部47aへの着座により、バルブニードル54は、閉弁状態となる。このとき、中間通路59は、中間室47と連通状態にある。
またバルブニードル54には、下フェース部54dが形成されている。下フェース部54dは、中間通路59と対向するバルブニードル54の先端に形成されている。下フェース部54dは、駆動ピン71の押圧により、下シート部47bに押し付けられる。下フェース部54dの下シート部47bへの着座により、バルブニードル54は、閉弁状態となり、中間通路59を遮断する。
次に、燃料噴射装置100の噴射作動の詳細を、図3を用いて説明する。図3(1)に示すように、噴射開始前では、機関制御装置17から駆動部52への駆動電圧の印加は中断されている。この状態では、バルブニードル54は、上フェース部54cを上シート部47aに当接させた閉弁位置にて静止している。バルブニードル54が閉弁状態にあることで、中間室47の燃料圧力は、実質的に圧力制御室46の燃料圧力と同程度まで上昇している。以上の状態では、制御プレート53は、制御プレート用スプリング72の弾性力により、流入流路43の開口周囲の壁面に押し当てられている。また、ノズルニードル50は、フェース部63をシート部41に当接させた閉弁位置にて静止している。
次に、図3(2)に示すように、機関制御装置17から駆動部52への駆動電圧の印加が開始され、ピエゾ駆動がONとなる。これにより駆動部52は、駆動力を発生させる。駆動部52が駆動力を発生させている場合、駆動ピン71が変位する。駆動ピン71によって押し下げられたバルブニードル54は、開弁方向への変位により、上フェース部54cを上シート部47aから離座させる。そうしたうえで、バルブニードル54は、下シート部47bに当接させる。中間通路59が閉弁され、中間通路59から中間室47への燃料の流入が遮断される。
以上のバルブニードル54の開弁により、圧力制御室46と低圧流路45との間は、遮断状態から連通状態へと切り替わる。その結果、圧力制御室46の高圧燃料は、制御プレート53の第1アウトオリフィス53a、上流側連通路55、中間室47を順に流通し、下流側連通路56を経て低圧流路45へ排出される。
このような下流側連通路56を通じた燃料の流出により、圧力制御室46の燃料圧力は、徐々に低下する。その結果、ノズルニードル50は、フェース部63に作用する高圧燃料の圧力により、圧力制御室46へ向けて徐々に加速しつつ開弁方向に変位する。以上によるノズルニードル50の開弁により、噴孔44からの燃料噴射が開始される。
次に、図3(3)に示すように、閉弁動作時に関して説明する。閉弁動作時では、機関制御装置17から駆動部52への駆動電圧の印加が中断され、ピエゾ駆動がOFFとなる。するとバルブニードル54は、バルブスプリング60の付勢力と燃料圧力とによって閉弁方向へ向けて変位する。これによって上フェース部54cを上シート部47aに当接させた閉弁状態に戻る。その結果、圧力制御室46と低圧流路45との間が連通状態から遮断状態へと切り替えられ、下流側連通路56は、閉鎖された状態に戻る。
一方、制御プレート53は、流入流路43から流入する高圧燃料の燃料圧力によって押し下げられる。これによってメインインオリフィス43aを介して、流入流路43から圧力制御室46に燃料が流入する。またバルブニードル54が閉弁方向に変位して、下シート部47bと離間すると、中間通路59のサブインオリフィス59aが開放される。その結果、ニードル収容室58の高圧燃料は、中間通路59、中間室47、上流側連通路55、圧力制御室46を順に流通する。これにより、中間室47および圧力制御室46の各燃料圧力は、一体的に回復する。
この結果、図3(4)に示すように、ノズルニードル50は、圧力制御室46の燃料圧力によって押し下げられて、閉弁位置にてフェース部63をシート部41に当接させた状態に戻る。以上のノズルニードル50の閉弁により、噴孔44からの燃料噴射は中断される。そして、圧力制御室46の燃料圧力が回復すると、制御プレート53が流入流路43のメインインオリフィス43aを塞いでいる状態となる。これによって図3(1)に示す状態となる。
このように駆動部52によってバルブニードル54を停止状態にすると、制御プレート53は流入流路43の圧力で流入流路43を連通した状態となる。したがって流入流路43およびニードル収容室58、中間通路59、中間室47および上流側連通路55を介して圧力制御室46に燃料が流入して、圧力制御室46の圧力が上昇して、ノズルニードル50が変位して噴孔44を閉状態にする。
次に、弁ボデー51の構成に関して、図4〜図10を用いてさらに詳細に説明する。弁ボデー51は、先端部が先細り上に傾斜している傾斜部51aと、傾斜部51aの上方に位置して外表面51cが断面円形状の円筒部51bを有する。したがって弁ボデー51の外表面51cは、傾斜部51aの外表面と円筒部51bの外表面によって構成されている。弁ボデー51には、周方向Yに間隔をあけて並んで、複数の噴孔44が形成されている。噴孔44は、傾斜部51aに形成されている。
本実施形態では、噴孔44の入口部から出口部までの長さである噴孔長さをL、噴孔44における最も小径部分の直径をDとしたとき、例えば、噴孔長さLは0.6mm〜1.0mm、直径Dは0.1mm〜0.2mmである。ここで、本発明では、噴孔長さLと直径Dとは、所定の噴霧の拡がり確保と噴孔のつまりの防止のために、次式(1)の関係を満たすように噴孔44の形状が選択される。
3.0≦L/D≦10.0 …(1)
そして図5に示すように、弁ボデー51の外表面51cのうち噴孔44の周囲の領域と、噴孔44の内部の少なくとも一部とに電解めっきによってめっき80が形成されている。めっき80は、たとえばクロム等の高硬度金属が電解析出されてなる薄膜状の電解めっき層である。
めっき80の膜厚tは、0.1μm以上3μm以下が選択される。また噴孔44には、他の部位よりも直径が小さい最小絞り部81が形成されている。最小絞り部81は、本実施形態では噴孔44における最も下流側に形成されている。換言すると、最小絞り部81は、最も弁ボデー51の外表面51c側に位置している。最小絞り部81が最も下流側にあるので噴孔44の出口直径Dout(上記直径Dに相当)は、噴孔44の入口直径Dinよりも小さい。また噴孔44は、下流側に向かうにつれて直径が小さくなるテーパ状に形成されている。そして最小絞り部81には、めっき80が形成されている。最小絞り部81におけるめっき80の噴孔44が延びる方向の長さLdは、50μm以上に設定される。そして図5に示すように、噴孔44の周囲の外表面51cに形成されためっき80と、噴孔44の内部のめっき80とは連続している。
次に、めっき80の形成方法に関して、図6を用いて説明する。めっき80を噴孔44の周囲、すなわち噴孔44に近接する外表面51cと、噴孔44の下流側にめっき80を電解めっきによって形成するために、めっき80が形成される前の弁ボデー51を電解浴中に浸漬する。そして図6に示すように、噴孔44の周囲に電極82を配置する。そして電極82に通電するとことで、電気化学反応により電解浴中の金属が噴孔44の周囲および噴孔44内に析出されて、めっき80が形成される。
次に、めっき80による効果に関して説明する。図7に示すように、めっき80をしていない比較例では、腐食すると噴孔44の周囲の形状が変わる。これによって噴射の傾斜角度が腐食前に比べて、広がっている。したがって腐食前と噴霧形状がかわることになる。
これに対してめっき80をしている実施例では、腐食しても噴孔44の周囲の形状はめっき80によって守られている。噴孔44内のめっき80の上流側では、内壁が腐食している。しかし噴孔44の最小絞り部81によって噴孔44の傾斜角度および噴霧形状が決定されるので、腐食後であっても噴霧形状に変化がない。したがって腐食しても所定の噴霧形状を維持することができる。
次に、めっき80の膜厚tと最小絞り部81のめっき80の長さに関して説明する。図8に示すように、最小絞り部81におけるめっき80の範囲の長さと、噴射角度の変化量とは相関関係にある。そしてめっき膜厚tが3μmの場合には、めっき長さLdは、50μm以上であると傾斜角度に変化がないことがわかる。したがってめっき長さLdは、50μm以上であることが好ましい。
次に、流量の変化率と腐食量との関係に関して説明する。図9に示すように、めっき80をしていない比較例では、腐食量に比例して噴孔流量の変化率が大きくなっている。これに対してめっき80をしている実施例では、腐食量が大きくなっても変化率は小さい。これは前述の図7で示したように、めっき80によって最小絞り部81の腐食が防がれているからである。
次に、傾斜角度と腐食量との関係に関して説明する。図10に示すように、めっき80をしていない比較例では、腐食量に比例して傾斜角度が大きく異なっている。これに対して最小絞り部81に50μmのめっき80をしている実施例では、腐食量が大きくなっても傾斜角度が変わっていない。これは前述の図7で示したように、めっき80によって最小絞り部81の腐食が防がれているからである。また最小絞り部81にめっき80を20μmまたは35μmしているめっき品では、比較例と同様に腐食量に比例して傾斜角度が大きく異なっている。したがってめっき長さLdが小さいと傾斜角度の変化することがわかる。したがってめっき長さLdは、50μm以上必要である。
以上説明したように本実施形態の弁ボデー51は、噴孔長さLと噴孔における最も小径部分の直径Dとは、所定の噴霧の拡がり確保と噴孔のつまりの防止のために、3.0≦L/D≦10.0という関係に設定している。そして弁ボデー51の外表面51cのうち噴孔44の周囲の領域と、噴孔44の内部の少なくとも一部とに電解めっきによってめっき80が形成されており、めっき80の膜厚tは、0.1μm以上3μm以下である。このように噴孔44には、電解めっきによってめっき80が形成されているので、無電解めっきよりも耐食性を向上することができる。まためっき80の膜厚tは、噴孔長さLと直径Dが前述の関係を満足した状態において、前述の範囲内の値に設定している。膜厚tが3μm以下であるのでめっき80をする前の噴孔44の形状によって、めっき後の噴孔44の形状を規定することができる。膜厚tが3μmより大きくなると、めっき後のめっき形状の寸法精度が悪化する。したがって膜厚tが厚すぎて噴霧角度が変化することを抑制することができる。また0.1μm以上であるので、耐食性を確保することができる。
換言すると、めっき80は膜厚tが厚すぎたり、めっき範囲が短すぎたりすると、狙った噴孔形状でも、初期の噴霧角度に影響してしまうので、膜厚tおよびめっき長さの選定が重要である。そこで本実施形態では、噴孔長Lと直径Dの関係がL/D=3.0以上10.0以下の弁ボデー51において、噴孔44の周囲のめっき膜厚tを径方向0.1μm以上3μm以下として、めっき長さLdをL/D×7μmの長さが好ましい。さらにめっき長さは、50μm以上が好ましい。
噴射性能、たとえばノズル流量および傾斜角度に最も影響が大きい部位は、噴孔44の最小絞り部81、すなわち最小断面部である。したがって最小絞り部81に集中して耐食用のめっき80を施せば必要かつ最低限の噴霧性能を維持できるという効果を得ることができる。
したがって最小絞り部81に電解めっきを施すことで、非めっき部が腐食しても噴孔44の整流効果を維持することができる。これによって噴射性能、たとえばノズル噴孔流量、傾斜角度を確保することができる。また薄い膜厚tにすることによって、噴孔加工時の形状変化による噴射性能への影響をなくせる。このようにめっき80の膜厚tおよびめっき長さについて性能とコストと作業性をすべて満足させられる値を選び得ることを、前述のように実験データより得ることができる。
また本実施形態では、最小絞り部81は、噴孔44における最も下流側に形成されている。したがってめっき80は最小絞り部81に設けられ、さらに外表面51cのめっき80と連続している。連続しているめっき80によって外表面51cと最小絞り部81との腐食をより確実に防止することができる。
さらに本実施形態では、クロムめっきによってめっき80が形成される。これによって耐食性を確保しつつ、電解めっきによって所定の形状のめっき80を形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図11および図12を用いて説明する。本実施形態では、最小絞り部812の位置が噴孔44の最も上流側に位置している点に特徴を有する。また弁ボデー51の内表面51dにもめっき80が形成されている。最小絞り部812が最も上流側にあるので噴孔44の出口直径Doutは、噴孔44の入口直径Dinよりも大きい。この入口直径Dinが噴孔における最も小径部分の直径Dに相当する。
図11に示すように、弁ボデー512の外表面51cおよび内表面51dにめっき80が形成される。さらに噴孔44の最も上流側にもめっき80が形成されるので、内表面51dのめっき80と最小絞り部812とのめっき80は連続している。
次に、めっき80の形成方法に関して、図12を用いて説明する。めっき80を噴孔44に近接する外表面51cに形成する方法は、前述の第1実施形態と同様である。さらに本実施形態では、噴孔44に近接する内表面51dと、噴孔44の下流側にめっき80を電解めっきによって形成するために、めっき80が形成される前の弁ボデー512を電解浴中に浸漬する。そして図12に示すように、弁ボデー512の内部から噴孔44の上流側の周囲に電極82を配置する。そして電極82に通電するとことで、電気化学反応により電解浴中の金属が内表面51dおよび噴孔44内に析出されて、めっき80が形成される。
このように本実施形態では、弁ボデー512の外表面51cだけでなく内表面51dにもめっき80が形成されるので、内表面51dから腐食を進行することを抑制することができる。また最小絞り部812は、噴孔44の最も上流側に形成されているがめっき80によって保護されているので、前述の第1実施形態と同様の作用および効果を奏することができる。
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
前述の第1実施形態では、最小絞り部81は噴孔44の下流側に設けられ、第2実施形態では噴孔44の上流側に設けられるテーパ状の噴孔44であったが、このような構成に限るものではない。最小絞り部81を噴孔44の中間部に設け、いわゆるラバール噴孔にしてもよい。
前述の第1実施形態では、燃料として軽油を噴射する燃料噴射装置100に適用しているが、軽油以外の燃料、例えばジメチルエーテル等の液化ガス燃料を噴射する燃料噴射装置100にも適用可能である。また第1実施形態の燃料噴射装置100では、駆動部52として圧電素子を用いているが、ソレノイドなどの電磁アクチュエータであってもよく、その他の構成であってもよい。また燃料噴射装置100は、燃焼室22に燃料を噴射する直噴に限るものではなく、ポート噴射であってもよい。