以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[ナノエンボス構造体の製造方法]
本発明のナノエンボス構造体の製造方法は、4〜8官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種の多官能アクリル系モノマー(A)、及び、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(B)のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70モル%以上である重合性材料を調製する工程、前記重合性材料からなる膜を形成する工程、及び、前記膜に酸素含有雰囲気下において光を照射して光重合することにより、該膜の酸素と接する表面にナノエンボス構造を形成する工程を有することを特徴とする方法である。
本発明にかかる重合性材料は、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、かつ、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70モル%以上のものである。このように、本発明にかかる重合性材料は、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び/又はモノマー(B)を含有するものであり、前記多官能アクリル系モノマー(A)及びモノマー(B)のうち、前記多官能アクリル系モノマー(A)のみを含むものであるか、あるいは、前記モノマー(B)を含む場合には、70モル%以上の前記多官能アクリル系モノマー(A)とモノマー(B)とを含むもの(前記モノマー(A)とモノマー(B)との混合物)である。このように、本発明にかかる重合性材料は、前記多官能アクリル系モノマー(A)及びモノマー(B)のうち、前記多官能アクリル系モノマー(A)のみを含む場合(前記多官能アクリル系モノマー(A)及びモノマー(B)の総モル量に対して前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が100モル%である場合)と、前記多官能アクリル系モノマー(A)と前記モノマー(B)との混合物であって前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総モル量に対して70モル%以上のものである場合とを含むものである。
このような多官能アクリル系モノマー(A)は、4〜8官能(官能基の数が4〜8)のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーである。ここにいう「アクリル系モノマー」は、官能基がアクリル基(式:CH2=CH−C(=O)−で表される基:アクリロイル基)及び/又はメタクリル基(式:CH2=C(CH3)−C(=O)−で表される基:メタクリロイル基)である化合物(単量体)をいい、アクリレート及びメタクリレートの他、アクリル基及びメタクリル基の双方を含む化合物を含む概念である。
このように、本発明にかかる多官能アクリル系モノマー(A)は、アクリル基及び/又はメタクリル基からなる官能基の総数が4〜8のモノマー(4〜8官能のアクリル系モノマー)から選択される少なくとも1種のものである。すなわち、前記多官能アクリル系モノマー(A)は、4官能のアクリル系モノマー、5官能のアクリル系モノマー、6官能のアクリル系モノマー、7官能のアクリル系モノマー、及び、8官能のアクリル系モノマーからなる郡から選択される少なくとも1種のものである。また、このような官能基の数(アクリル基及びメタクリル基の総数)は、5〜8であることがより好ましく、5〜7であることが更に好ましい。すなわち、多官能アクリル系モノマー(A)は、5〜8官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、5〜7官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。このような官能基の数(アクリル基及びメタクリル基の総数)が前記下限未満では、酸素含有雰囲気下において、光重合を行っても重合が効率よく進行しないため、重合時間を十分に経過させてもべたつきのある膜(タック性のある膜)となり、エンボス構造を有するフィルムを得ることができない。他方、重合性官能基の数が前記上限を超えると、モノマーの反応性が高くなり過ぎて、重合時に化合物が面内において拡散する前に重合が進行する傾向にあり、また、分子拡散に必要な未反応モノマーが少量となりエンボス構造を十分に形成することが困難となる傾向にある。
このような多官能アクリル系モノマー(A)として用いられる、4〜8官能のアクリル系モノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
また、このような多官能アクリル系モノマー(A)として用いられる、4〜8官能のアクリル系モノマーとしては、ナノエンボス構造を形成させる際に適度な重合反応性を示し、より効率よくナノエンボス構造を形成させることが可能となることから、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを用いることが好ましい。なお、このような多官能アクリル系モノマー(A)は、前記4〜8官能のアクリル系モノマーから選択される1種を単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。また、このような多官能アクリル系モノマー(A)として用いられる、4〜8官能のアクリル系モノマーを製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。また、このような多官能アクリル系モノマー(A)としては市販品を用いてもよい。
また、本発明にかかるモノマー(B)は、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーである。このような炭素−炭素二重結合を有する官能基としては特に制限されず、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基などが挙げられる。
このようなモノマー(B)として用いられるモノマーが有する炭素−炭素二重結合を有する官能基としては、モノマーの選択範囲の広さ、入手の容易性、酸素雰囲気化における重合反応速度の観点から、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が特に好ましい。また、このようなモノマー(B)においては、1種の官能基のみを含んでいても、異なる種類の官能基を含んでいてもよい。
また、モノマー(B)として用いられるモノマー(前記炭素−炭素二重結合を有する官能基を含むモノマー)が有する前記官能基の数は1〜3であり、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。このような官能基の数が前記上限を超えると未反応モノマーが拡散する前に重合反応が完了し、エンボス構造が形成されにくくなる傾向にある。
また、このようなモノマー(B)として用いられる、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーとしては、入手の容易性などの観点から、例えば、単官能又は2官能のビニル系モノマー(ビニル基を有するモノマー)を好適に利用することができる。このような単官能又は2官能のビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルアニリン、ビニル安息香酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、2−ビニルチオフェン、4−ビニルチオフェン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、アクリロニトリル、α−メチルスチレン、N−ビニルカルバゾール、1,3−ブタジエン等を挙げることができる。
また、このようなモノマー(B)として用いられる、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーとしては、入手の容易性などの観点から、例えば、単官能又は2官能の(メタ)アクリレート(ここにおいて、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの双方を含む概念である。)を用いることも可能である。このような単官能又は2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、このようなモノマー(B)として用いられる、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーとしては、入手の容易性、モノマーの粘性の観点から、スチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルアニリン、ビニル安息香酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、スチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルアニリン、ビニル安息香酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。また、このようなモノマー(B)としては、前記モノマーの1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、このようなモノマー(B)としては市販品を利用してもよい。
本発明にかかる重合性材料は、前述のように、4〜8官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種の多官能アクリル系モノマー(A)、及び、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(B)のうちの少なくとも1種を含有し(前記多官能アクリル系モノマー(A)及び/又は前記モノマー(B)を含有し)、かつ、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70モル%以上であるものである(前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)のうち、前記多官能アクリル系モノマー(A)のみを含有するものであるか、あるいは、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の混合物であって前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が70モル%以上のものである)。このように、前記重合性材料は、前記多官能アクリル系モノマー(A)をモノマーの総量(前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量)に対して70モル%以上含有するものである。また、本発明にかかる重合性材料において、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量は、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましく、85〜100モル%であることが更に好ましく、90〜100モル%であることが特に好ましく、95〜100モル%であることが最も好ましい。このようなアクリル系モノマー(A)の含有量が前記下限未満では光重合時にエンボス構造の核となるポリマーが十分に生成されず(核が十分に形成されず)、エンボス構造を十分に効率よく形成することが困難となる傾向にある。なお、本発明においては、モノマー(A)の含有量が前記下限未満となり、モノマー(B)の含有量が増加すると、モノマー(B)は官能基の数が1〜3であって反応の進行が遅いモノマーであるため、光重合時に表面近傍において十分に核を生成することが困難なものであり、面外方向への重合性材料の拡散が生じ易くなるものの、面内方向に重合性材料の拡散を生じさせることが困難となり、これに起因して、十分に凹凸構造(エンボス構造)を形成することが困難となったり、あるいは、そもそも重合が十分に進行せず、得られるフィルムがタック性のあるものとなり、十分に硬化した膜を得ることが困難となる。このように、本発明においては、モノマー(A)及び(B)のうち、反応性の高いモノマー(A)を、これらの総量に対して70モル%以上利用することによって、酸素含有雰囲気下において十分に重合を進行させつつ、面内方向への重合性材料の拡散を効率よく引き起こして、エンボス構造を形成することを可能とする。
また、本発明にかかる重合性材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記モノマー(A)及び(B)以外の他の成分を適宜含有させてもよい。この場合、重合性材料からなる膜は、前記モノマー(A)及び/又は(B)と、他の成分との組成物(重合性組成物)により構成される膜となる。
このような重合性材料に含有させることが可能な他の成分としては、各種溶媒、他のモノマー、光重合開始剤、粘度調整剤、可塑剤、重合禁止剤、界面活性剤などを挙げることができる。なお、このように重合性材料に他の成分(各種添加剤等)を含有させる場合、前記重合性材料中の溶媒以外の全化合物(前記重合性材料が溶媒を含む場合には固形分を構成する化合物の全てをいい、前記重合性材料が溶媒を含まない場合には単に該重合性材料中に含まれる全ての化合物をいう。)に対して、前記モノマー(A)及び(B)の総量がモル比で70モル%以上(より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上)となるように、他の成分を利用することが好ましい。前記重合性材料中の前記モノマー(A)及び(B)の総量(含有量)が前記下限未満では、エンボス構造の形成が不十分となる傾向にある。
また、前記重合性材料を光重合させる際に、より効率よく重合を進行せしめることが可能となるといった観点から、前記モノマー(A)及び(B)のうちの少なくとも1種とともに光重合開始剤を用いることが好ましい。このような光重合開始剤としては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のもの(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」等)を用いてもよい。また、このような光重合開始剤を用いる場合においては、その使用量は用いる重合性材料中の成分の種類や光の吸収波長等に応じて適宜設計することができ、例えば、重合性材料中の前記モノマー(A)及び(B)の総モル量の0.1〜10%のモル量としてもよい(例えば、重合性材料中の前記モノマー(A)及び(B)の総量が100モルの場合、光重合開始剤を0.1モル〜10モル用いてもよい)。なお、このような光重合開始剤の含有比率が前記下限未満では光重合開始剤を用いる効果が十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると光重合時に重合性モノマーの重合度が十分に上昇せず、光重合開始剤を用いる効果が十分に得られなくなる傾向にある。
このような重合性材料の調製方法は特に制限されず、前記各種材料を、前述の条件を満たすように適宜混合することで調製してもよく、例えば、膜を効率よく調製するために利用するといった観点からは、溶媒中に多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)のうちの少なくとも1種を添加することにより混合液として調製してもよい。
また、このような重合性材料からなる膜を形成する工程において、該膜の調製方法は特に制限されず、モノマーの塗膜を形成することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、溶媒中に前記多官能アクリル系モノマー(A)及び/又は前記モノマー(B)を添加して(場合により光重合開始剤等の他の成分を併せて添加して)、十分に撹拌して均一なコーティング液を得た後、これを基材上(例えばガラス基板など)に塗布して塗膜を形成し、その後、該塗膜から溶媒を除去することにより、重合性材料からなる膜を得る方法を利用することができる。
このような方法に用いる溶媒としては、特に制限されず、用いる重合性材料や光重合開始剤等の種類に応じて、均一な混合物を得ることが可能となるように、公知の溶媒の中から適宜選択して利用することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸2−メトキシエチル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、等などのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトンなどの複素環類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等やこれらの混合系を利用してもよい。
また、このようなコーティング液を形成する場合、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量(合計量)が1〜80質量%であることが好ましく、2〜70質量%であることがより好ましく、2〜60質量%であることが更に好ましい。このようなコーティング液中の前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量が前記下限未満ではコーティング後に十分な膜厚を確保できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)からなるモノマーの濃度が高いため、コーティング後に得られる膜の膜厚が面内で不均一となる傾向にある。
また、このようなコーティング液を基材上に塗布する方法は特に制限されず、モノマーの塗膜を形成する際に利用することが可能な公知の方法(例えばディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法等)を適宜採用することができる。
また、このようなコーティング液を塗布して得られた塗膜から溶媒を除去する方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、大気下において、重合が進行せず、かつ、溶媒が効率よく蒸発するような温度(かかる温度は、溶媒の種類や重合性材料の種類によっても異なるものであり、一概には言えないが、例えば、40〜150℃とすることが好ましい。)に加熱することにより溶媒を除去する方法や、前記塗膜に対して、室温(25℃)条件下において減圧除去する方法等を採用してもよい。なお、このような減圧乾燥工程を採用する場合の減圧条件としては15kPa以下であることが好ましく、0.1〜10kPaであることがより好ましい。また、減圧時間としては、0.1〜100時間であることが好ましい。なお、このような減圧乾燥工程は一度に行なってもよく、あるいは複数回に分けて行なってもよい。ここにおいて、複数回に分けて減圧乾燥工程を行なう場合、減圧乾燥工程を施す度に、乾燥の程度を確認することで減圧時間を適宜調整することが可能である。
また、このような重合性材料からなる膜の形態(大きさや形状など)は、特に制限されず、目的の設計に応じて適宜その形態を変更することができる。
また、このような重合性材料からなる膜の膜厚としては、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜80μmであることがより好ましく、1〜60μmであることが更に好ましい。このような膜厚が前記下限未満では、形成されるエンボス構造の凹凸最大高さの平均値を十分なものとすることが困難となり、十分な高さを有する凹凸構造を効率よく形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると面外方向での重合の進行度の変化がより大きくなり易くなる傾向にあり、これにより、面内方向の前記多官能アクリル系モノマー(A)及び/又は前記モノマー(B)の拡散を十分に引き起こすことが困難になり、エンボス構造を効率よく十分に形成することが困難となる傾向にある。
このような重合性材料からなる膜中の前記モノマー(A)及び(B)の総量としては、膜中の固形分を構成する全化合物(前記コーティング液を用いて膜を形成した場合、膜中の溶媒以外の全化合物)に対してモル比で70モル%以上(より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上)であることが好ましい。前記膜中の前記モノマー(A)及び(B)の総量(含有量)が前記下限未満では、エンボス構造の形成が不十分となる傾向にある。
また、本発明においては、前記膜を形成した後に、該膜に酸素含有雰囲気下において光を照射して光重合することにより、該膜の酸素と接する表面にナノエンボス構造を形成する。このように、本発明においては、酸素含有雰囲気下において重合性材料からなる膜に光を照射する必要がある。
このような光(X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等)の照射は、膜の全面に均一に行うこと(全面露光であること)がより好ましい。このように、膜の全面に対して一様に光を照射して全面を露光することで(光の照射領域を膜の表面の全面にすることにより)、膜内において面内方向の重合性材料の拡散を、より効率よく引き起こすことが可能となる。
さらに、前記重合性材料に光を照射して光重合する際には、より効率よく重合反応を進行させることが可能となることから、紫外線又は可視光を利用することが好ましく、紫外線(紫外光)を利用することが特に好ましい。このような光を照射するための光源としては特に制限されず、光重合に利用可能な公知の光源を適宜利用することができ、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を利用してもよい。また、このような光重合の際に利用する光の照射波長としては特に限定は無く、前記重合性材料の吸収スペクトルと、光重合開始剤の推奨使用波長等を勘案して決定すればよい。
また、本発明において「酸素含有雰囲気」とは、酸素を含有するガス雰囲気であればいが、酸素を15容量%以上含有するガス雰囲気であることが好ましい。このような酸素の含有量が前記下限未満では、酸素阻害による影響が少なくなり、膜内で均一に重合が進行することから、効率よくエンボス構造を製造することが困難となる傾向にある。また、このような酸素含有雰囲気の雰囲気ガスとしては、特にガスの調製が不要であることから、空気であることが好ましい。このように、本発明においては、大気の下で光重合を行うことができ、かかる観点からも簡便な方法であるといえる。
また、このような光重合に際しては、前記膜に加熱条件下で光を照射してもよく、その加熱温度は、使用する重合性材料中のモノマーの種類、重合性材料の粘度、加熱の容易さ等を勘案して適宜選択することができるが、10〜300℃程度とすることが好ましく、20〜250℃とすることがより好ましく、20〜100℃とすることがより好ましい。このような加熱温度が前記下限未満では重合反応を効率よく進行させることが困難となり、面内方向への重合性材料中のモノマーの拡散を十分に引き起こすことができなくなって、エンボス構造を効率よく形成することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、光を照射する前に熱によって膜全体の重合が進行してしまい、エンボス構造を形成することができなくなったり、重合性材料中のモノマーが熱により分解される可能性が高くなり、安定してエンボス構造を形成することが困難となる傾向にある。なお、このような温度条件は、例えば、照射強度を低くする場合にはより効率よく重合を行うためにより高い温度とすることが好ましい傾向にあるが、重合性材料の種類や他の重合条件などに応じて適宜設定すればよい。
また、このような光重合の際には0.1μW/cm2〜30mW/cm2の照射強度で光を照射することが好ましく、0.5μW/cm2〜10mW/cm2の照射強度で光を照射することがより好ましい。このような光の照射強度が前記下限未満では反応速度が遅くなり、酸素含有雰囲気下において表面近傍に核の生成を行うことが困難となり、エンボス構造を効率よく形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合物が拡散する速度よりも重合反応速度の方が速くなり過ぎることにより、化合物の拡散が十分に起こらず、十分な凹凸高さを有するナノエンボス構造体を得ることが困難となる傾向にある。
また、このような光重合に際して光を照射する時間(多段階で光を照射する場合には光照射の合計時間)としては0.1〜30分間とすることが好ましく、0.2〜20分間とすることがより好ましい。このような光の照射時間が前記下限未満では重合反応が十分に進まず、表面近傍に生成される重合物由来の核の生成が困難となり、エンボス構造を効率よく形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合反応の進行が完了し、未反応モノマーがそれ以上拡散されず、経済性が低下する傾向にある。
また、このような光重合に際しては、用いる材料や光の照射条件などに応じて、公知の光重合の方法を適宜利用することができ、例えば、光を一定時間照射して一度の光照射で光重合を行う方法(一段階照射)を採用してもよく、あるいは、所望の照射強度の光を一定時間照射する工程を複数回実施することで光重合を行う方法(多段階照射:照射する工程ごとに適宜照射強度を変更してもよい、)を採用してもよい。
このような多段階照射による光重合の方法としては、10μW/cm2〜100mW/cm2(より好ましくは100μW/cm2〜70mW/cm2)の照射強度で0.1〜20分間光を照射(一段階目の光照射)した後、10μW/cm2〜100mW/cm2(より好ましくは100μW/cm2〜70mW/cm2)の照射強度で0.1〜10分間光を照射(二段階目の光照射)する方法(段階的に光の照射強度を変更して光重合する方法)を採用することが好ましい。このような方法を採用することにより、先ず、最初の光の照射時に重合性材料中のモノマーの光重合が開始され、酸素阻害の影響を受ける形で表面近傍にエンボス構造が成長するための核となる重合物を生成することが可能となるため、エンボス構造をより効率よく製造することが可能となり、また、二段階目の光照射に際してエンボス構造が十分に形成された後、形成されたエンボス構造を十分に固定化させることも可能となり、十分に固定化されたエンボス構造体を効率よく製造することが可能となる。また、かかる方法において、一段階目の光照射における光の照射強度が前記下限未満では反応速度が遅くなり、酸素含有雰囲気下において表面近傍に核の生成を行うことが困難となり、エンボス構造を形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合物が拡散する速度よりも重合反応速度の方が速くなり過ぎることにより、化合物の拡散が十分に起こらず、ナノエンボス構造体を効率よく得られなくなる傾向にある。また、二段階目の光照射における光の照射強度が前記下限未満では形成されたナノエンボス構造が十分に固定化できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると急速に重合反応が進行しすぎてクラック等が生じる場合もあり、所望の形状のナノエンボス構造体を効率よく得ることが困難となる傾向にある。
また、このような光重合に際しては、光の積算照射量([照射強度(照度)]×[時間(秒)])が、100mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、200mJ/cm2〜8J/cm2であることがより好ましい。このような光の積算照射量(積算光量)が前記下限未満では反応速度が遅くなり、酸素含有雰囲気下において表面近傍に核の生成を行うことが困難となり、エンボス構造を効率よく形成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合物(モノマー等)が拡散する速度よりも重合反応速度の方が速くなり過ぎることにより、化合物の拡散が十分に起こらず、ナノエンボス構造体を効率よく形成することが困難となる傾向にある。
このようにして、本発明においては、前記重合性材料からなる膜を用いて、酸素含有雰囲気下において、前記膜に光を照射して光重合することにより、該膜の酸素と接する表面(好ましくは光照射面)にナノエンボス構造を形成し、ナノエンボス構造体を得る。
このようにして形成されるナノエンボス構造は、本発明が酸素含有雰囲気下において光を照射して光重合を行うことで、位置選択的に光重合が効率よく進行する部位と、進行し難い部位とを形成して、光重合が効率よく進行する部位にポリマーを効率よく生成せしめて、重合が効率よく進行する部位と重合がほとんど進行していない部位との間で、化学ポテンシャルに差を生じさせることにより、より動き易いモノマー分子の拡散を引き起こし、これに起因してナノエンボス構造を形成する方法であることから、重合速度や重合の条件などに応じて、凹凸構造の特性を適宜変化させることが可能である。
また、このようにして形成されるナノエンボス構造は、走査型プローブ顕微鏡(例えば、原子間力顕微鏡(AFM))を用いてSPM像を求めることにより確認することができる。すなわち、このようなナノエンボス構造は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)としてアサイラムリサーチ社製の商品名「Cypher」を用い、カンチレバーとして標準シリコンカンチレバー「オリンパス OMCL−AC160TS−C3」を用い、測定モードをACモード(ダイナミックモード)とし、前記硬化膜の表面上の任意の領域(例えば縦500nm、横500nmの正方形状の領域としてもよい。)のSPM像を求めることにより確認することができる。
また、このようなナノエンボス構造としては、任意の5点以上の凹凸最大高さの平均値が2〜1000nmであることが好ましく、2.5〜800nmであることがより好ましく、3.0〜800nmであることが更に好ましい。更に、このような任意の5点以上の凹凸最大高さの平均値の好適な数値範囲の上限値としては、600nmであることが好ましく、500nmであることがより好ましく、400nmであることが更に好ましい。このような任意の5点以上の凹凸最大高さの平均値が前記下限未満では光学的、表面の親水性、疎水性などの表面特性等に特異な機能が付与できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると凹凸形状が水平方向のピッチに対して急峻な高アスペクトな形状となる傾向にあり、これにより機械強度が低下する傾向にある。
なお、このような「凹凸最大高さの平均値」の測定方法としては、以下の方法を採用する。すなわち、先ず、原子間力顕微鏡(AFM)としてアサイラムリサーチ社製の商品名「Cypher」を用い、カンチレバーとして標準シリコンカンチレバー「オリンパス OMCL−AC160TS−C3」を用い、測定モードをACモード(ダイナミックモード)とし、エンボス構造体の表面上の任意の領域(例えば、測定領域を縦500nm以上、横500nm以上の正方形状又は長方形状の領域としてもよい。)について走査型プローブ顕微鏡像(SPM像)を求める。その後、該SPM像から、任意の5点以上の凹凸の断面図を求める。なお、かかる断面図により断面曲線が得られるが、かかる断面曲線の基準長さはSPM像の測定領域の縦又は横の長さのうち、より長い方の長さと同一とすることが好ましい。ここで、参照のために、図1に、縦500nm、横500nmの正方形の測定領域のSPM像に基づいて求められる、エンボス構造の断面図(水平面に対して垂直な方向の断面図)を模式的に示す。ここで、図1は、基準長さ(スキャン長さ)Lが500nmの断面曲線であり、樹脂の集積により形成された微細な凹凸構造の状態を模式的に示すものである。そして、このような基準長さの断面図を、任意の5点以上の位置において求めた後、各断面図(各断面曲線)において凸部の最大高さと凹部の最小高さ(ここにいう「高さ」とは水平面からの垂直方向の高さをいう。なお、図1中、矢印Aが水平面からの垂直方向(面外方向)を示す。)との差から、凹凸の最大高さDを求めて、その平均値を求めることにより、任意の5点以上の凹凸最大高さの平均値を求めることができる。なお、図1を参照すると、図1中の凸部のうちの最も高い位置にある凸部の頂点P1と、凹部のうちの高さが最も低い位置にある点(最下点)P2との間の垂直方向の距離(最大高さの凸部と最小高さの凹部との間の垂直な方向の最大距離)が、図1に示す断面図中の凹凸の最大高さDとなる。
また、このようなナノエンボス構造としては、上述の「凹凸最大高さの平均値」の測定方法と同様にして、任意の5点以上の凹凸の最大高さ(最大高さの凸部と最小高さの凹部との間の垂直な方向の最大距離)を測定した場合において、任意の5点以上の凹凸最大高さの分布が1.0〜2000nmの範囲にあることがより好ましく、1.0〜1000nmの範囲にあることが更に好ましい。このような任意の5点以上の凹凸最大高さの分布が前記範囲外となる場合には、まず前記下限未満では光学的、表面の親水性、疎水性などの表面特性等に特異な機能が付与できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると凹凸形状が水平方向のピッチに対して急峻な高アスペクトな形状となり、機械強度不足となる傾向にある。また、このような任意の5点以上の凹凸最大高さの分布としては、そのような特性を備えるナノエンボス構造をより効率よく調製することが可能であるといった観点からは、1.0〜600nmの範囲にあることが好ましく、1.0〜500nmの範囲にあることがより好ましく、1.5〜400nmの範囲にあることが更に好ましい。
また、このようなナノエンボス構造としては、凹凸の平均ピッチが10〜1000nmであることがより好ましく、20〜900nmであることが更に好ましく、30〜800nmであることが特に好ましい。このような凹凸の平均ピッチの好適な数値範囲の上限値としては、500nmであることが好ましく、400nmであることがより好ましく、250nmであることが更に好ましい。このような凹凸の平均ピッチが前記下限未満では凹凸形状が微細になりすぎ、所望の光学特性、表面特性が発現できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると凹凸形状がミクロンオーダーに近くなり、光学特性、表面特性が不十分となる傾向にある。なお、凹凸の平均ピッチは以下のようにして測定される値を採用する。すなわち、先ず、凹凸最大高さの平均値を求める方法で採用している方法と同様にしてSPM像を求めた後、そのSPM像から任意の5点以上の断面図(基準長さの断面曲線:なお、かかる断面曲線の基準長さはSPM像の測定領域の縦又は横の長さのうち、より長い方の長さと同一とすることが好ましい。ここで、図1では基準長さが500nmである。)を求める。その後、各断面図(各断面曲線)において、垂直方向において最も高い位置にある頂点(図1では頂点P1)を有する凸部を求め、その凸部を囲む(挟む)隣接する2つの凹部(図1では、頂点P1を有する凸部に隣接する2つの凹部)の最下点の間の水平方向(図1の矢印Aに対して垂直な方向)の距離を求めて、その平均値を求めることにより得られる値(5点以上の断面曲線からそれぞれ求められる前記凹部間の距離の平均値)を凹凸の平均ピッチとして採用する。
また、このようにして得られるナノエンボス構造体は、前記重合性材料の重合物からなるものとなるが、膜厚が0.1〜100μm(より好ましくは0.5〜80μm、更に好ましくは1〜60μm)のフィルム状のものであることが好ましい。なお、このようにして得られるナノエンボス構造体は、光重合に用いる膜が基材に積層されたものである場合には、最終的に基材から剥離して利用してもよく、あるいは、基材との積層物としてそのまま利用してもよい。
なお、本発明のナノエンボス構造体の製造方法は、上述のように、酸素含有雰囲気下において、前記重合性材料からなる膜に光を照射することで、膜内において空間的に不均一な光重合を進行させて、自発的かつ位置選択的にポリマーの集積を引き起こすことにより、ナノスケールのエンボス構造(例えば1.0〜2000nm(ポリマーの種類などに応じて場合により500〜1000nm)程度の範囲に、任意の5点以上の凹凸最大高さの分布を有する凹凸構造)を高分子膜の表面(酸素と接する表面)に形成することが可能な方法であり、酸素含有雰囲気下において光を照射するといった簡便な方法で、ナノスケールのエンボス構造を自発的に形成することが可能な方法である。また、このようにして得られるナノエンボス構造体は、そのエンボス構造(凹凸構造)に起因して、超撥水性、超親水性、構造色、構造複屈折性、偏光変換性、反射防止性、接着性等といった様々な機能を発現し得るため、エレクトロニクスからフォトニクス、医療材料まで幅広い分野での利用が可能である。そのため、本発明のナノエンボス構造体の製造方法は、エレクトロニクスからフォトニクス、医療材料等の分野において利用する凹凸構造を形成するための方法等として特に有用である。なお、本発明のナノエンボス構造体の製造方法は、形成するナノエンボス構造体の用途に応じて、重合条件を適宜変更して、ナノエンボス構造の特性を変更することが可能である。
以上、本発明のナノエンボス構造体の製造方法について説明したが、以下、本発明のナノエンボス構造体製造用の重合性材料及びナノエンボス構造体について説明する。
[ナノエンボス構造体製造用の重合性材料及びナノエンボス構造体]
本発明のナノエンボス構造体製造用の重合性材料は、4〜8官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種の多官能アクリル系モノマー(A)、及び、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(B)のうちの少なくとも1種(前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)のうちの少なくとも1種)を含有し、かつ、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70モル%以上であることを特徴とするものである。
このようなナノエンボス構造体製造用の重合性材料は、上記本発明のナノエンボス構造体の製造方法において説明した「重合性材料」と同様のものである(その好適なものも同様である)。このように、ナノエンボス構造体製造用の重合性材料に関する4〜8官能の多官能アクリル系モノマー(A)、モノマー(B)、その含有量等はいずれも上記本発明のナノエンボス構造体の製造方法において説明したものと同様である。
また、本発明のナノエンボス構造体は、4〜8官能のアクリル系モノマーから選択される少なくとも1種の多官能アクリル系モノマー(A)、及び、炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1〜3のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(B)のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記多官能アクリル系モノマー(A)の含有量が前記多官能アクリル系モノマー(A)及び前記モノマー(B)の総量に対して70モル%以上である重合性材料の重合物からなり、表面の少なくとも1部にナノエンボス構造が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のナノエンボス構造体は、前記重合性材料の重合物からなるものであり(前記重合性材料の重合物を含むものであればよく)、表面の少なくとも1部にナノエンボス構造が形成されてなるものである。ここにいう「重合性材料」も、上記本発明のナノエンボス構造体の製造方法において説明した「重合性材料」と同様のものである(その好適なものも同様である。)。また、本発明のナノエンボス構造体において形成されている「ナノエンボス構造」としては、上記本発明のナノエンボス構造体の製造方法により形成されるナノエンボス構造と同様のものであることが好ましい(その好適な条件も同様であることが好ましい。)。そのため、本発明のナノエンボス構造体としては、上記本発明のナノエンボス構造体の製造方法を採用することにより得られたものであることが好ましい。なお、本発明のナノエンボス構造体は、前記重合性材料の重合物からなるものであればよいため、前記多官能アクリル系モノマー(A)及び/又は前記モノマー(B)の重合物とともに前記他の成分を含むものとなっていてもよい。
また、このような本発明のナノエンボス構造体は、その凹凸構造に起因して、超撥水性、超親水性、構造色、構造複屈折性、偏光変換性、反射防止性、接着性等といった様々な機能を発現させることが可能である。そのため、本発明のナノエンボス構造体は、その凹凸構造に起因して、エレクトロニクスからフォトニクス、医療材料まで幅広い分野に応用することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
〈コーティング液の調製工程(A)〉
褐色のサンプル管の中に、下記一般式(1):
で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:東京化成工業社製、6官能アクリレート)5.79gと、光重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」)0.13gとを添加して混合物を得た。なお、前記混合物中の前記6官能アクリレートと光重合開始剤のモル比([6官能アクリレート]:[光重合開始剤])は100:5であった。次に、このようにして得られた混合物の全量を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)9.14mL(8.87g)中に添加して溶解した後、30分間撹拌することにより、前記6官能アクリレート(DPHA)の含有量が40質量%となるコーティング液を得た。
〈ガラス基板の準備工程〉
縦50mm、横50mm、厚さ1.3mmのガラス基板(武藤化学株式会社製、品名:スライドグラス、型番:1201(水切放)、アズワン商品コード:1−6723−01)を準備し、かかるガラス基板に対して超音波洗浄機(株式会社エスエヌディ製の商品名「US−205」)を用いた超音波洗浄を行った。なお、このような超音波洗浄に際しては、洗浄液として、中性洗剤(関東化学社製の商品名「シカクリーンLX−II」の水溶液(濃度:1質量%)、蒸留水、イソプロピルアルコール(IPA)を、それぞれ記載の順で用いて、各洗浄液ごとに3回ずつ、各回ごとに周波数:38kHzで30分間の条件で超音波洗浄を行った。次いで、このような超音波洗浄後のガラス基板を室温(25℃)で乾燥させた後、オゾン処理機(竹田理化工業株式会社製の「UVオゾンクリーナー(引き出し式タイプ、NL−UV42)」)を用いて10分間オゾン処理を行った。このようにしてコーティング液塗工用のガラス基板(オゾン処理後のガラス基板)を準備した。
〈膜の調製工程〉
前述のようにして得られたオゾン処理後のガラス基板上に、前記コーティング液をパスツールピペットを用いて5滴滴下した。次いで、滴下したコーティング溶液を前記パスツールピペットの側面を用いてガラス基板全体へ広げた後、スピンコーターを用いて、回転速度400rpmで5秒間、次いで、回転速度1200rpmで30秒間の条件でスピンコートを行い、ガラス基板上に塗膜を得た。次いで、前記塗膜の形成されたガラス基板を120℃に加熱したホットプレート上に静置し、大気下、120℃で5分間保持することにより、前記塗膜から溶媒を除去し、ガラス基板上に、前記6官能アクリレートと光重合開始剤との混合物よりなる膜(重合性材料(6官能アクリレート)からなる膜:縦50mm、横50mm、厚み:1.3μmの膜)を形成した。
〈エンボス構造体の調製工程〉
前述のようにして得られたガラス基板上の膜に対して、UV光照射装置(岩崎電気株式会社製の商品名「UVLED照射装置(LHPUV365/2501)」)を用いて、膜側(ガラス基板側からではなく、膜の外表面側)から、該膜の表面の全面に亘って均一な照射強度で紫外光を照射することにより(全面露光することにより)、該膜膜中の重合性材料(6官能アクリレート)を光重合し、硬化膜を形成した。なお、このような紫外光の照射の条件としては、雰囲気ガス:空気、圧力:大気圧(1atm)、温度(重合時の温度):室温(25℃)の条件(環境)下において、波長:365nmの紫外光を照射強度(照度):2.6mW/cm2で10分間照射した後、照射強度:14.8mW/cm2で5分間照射する条件とした。このようにして得られた硬化膜の表面(光照射面:空気と接する面)には、エンボス構造が形成されていた。
このようにして得られた硬化膜の表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。なお、このような測定に際しては、原子間力顕微鏡(AFM)としてアサイラムリサーチ社製の商品名「Cypher」を用い、カンチレバーとして標準シリコンカンチレバー「オリンパス OMCL−AC160TS−C3」を用い、測定モードをACモード(ダイナミックモード)として前記硬化膜の表面上の任意の縦500nm、横500nmの領域のSPM像を求めた。得られたSPM像を図2に示す。また、該SPM像の任意の箇所の断面図を図3に示す。図3中の高さ(Height)の0.00nmの位置は水平方向に断面を500nm切り取った際の深さ方向に最大となる凸部と最小となる凹部の平均となる位置である。なお、図3に示す断面図中のスキャン長さ0〜500nmの領域が、該断面図の基となるSPM像が測定された領域である。
図2及び図3からも明らかなように、実施例1で得られた硬化膜は、膜の表面に微細な凹凸構造からなるエンボス構造が形成されていることが確認された。また、SPM像(図2)に基づいて、長さ500nmの範囲について任意の凹凸断面図(基準長さが500nmの断面曲線)を5点求めて、各断面図中の凸部の最大高さ(ガラス基板から最も高い位置にある頂点の高さ)と、凹部の最大深さ(ガラス基板からの最小高さ)の差の平均値から凹凸最大高さの平均値を測定したところ、任意の5点の凹凸最大高さの平均値は10.5nmであった。更に、任意の5点の凹凸断面図(基準長さが500nmの断面曲線)から凹凸最大高さの分布を求めたところ、凹凸最大高さの分布は8.3〜13.1nmの範囲にあることが分かった。また、SPM像(図2)に基づいて、長さ500nmの任意の凹凸断面図(基準長さが500nmの断面曲線)を5点求めて、各断面図中の凹凸最大高さを求めた際の凸部(最も高い位置にある頂点を有する凸部)を囲む2つの凹部(前記凸部を挟む2つの隣接する凹部)の最下点間の水平方向の距離(ガラス基板と平行な方向の距離)をそれぞれ測定して、その距離の平均値(5点の前記距離の平均値)を求めることにより凹凸の平均ピッチを求めたところ、凹凸の平均ピッチは41.9nmであった(なお、凹凸の平均ピッチを求める際に観測した凸部の総数は5個であった)。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
コーティング液の調製工程(A)により得られたコーティング液を用いる代わりに、下記コーティング液の調製工程(B)により得られたコーティング液を用い、かつ、エンボス構造体の調製工程における紫外光の照射の条件を、雰囲気ガス:空気、圧力:大気圧、温度(重合時の温度):70℃の条件(環境)下において、波長:365nmの紫外光を照射強度(照度):0.32mW/cm2で40分間照射する条件に変更した以外は実施例1と同様にして硬化膜を得た。
〈コーティング液の調製工程(B)〉
先ず、褐色のサンプル管の中に、上記一般式(1)で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:東京化成工業社製、6官能アクリレート)5.21gと、スチレン(C6H5−CH=CH2:炭素−炭素二重結合を有する官能基の数が1のモノマー(1官能のモノマー))0.10gと、光重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」)0.13gとを添加して混合物を得た。なお、前記混合物中のモノマーの総モル量(6官能アクリレートと1官能のモノマーの総モル量)と光重合開始剤のモル比([モノマーの総モル量]:[光重合開始剤])は100:5であり、前記混合物中のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとスチレンのモル比([ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート]:[スチレン])は90:10であった。次に、このようにして得られた混合物の全量を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)8.41mL(8.16g)中に添加して溶解した後、30分間撹拌することにより、前記モノマーの含有量(総量)が40質量%となるコーティング液を得た。
このような実施例2において得られた硬化膜の表面(光照射面:空気と接する面)上の任意の縦500nm、横500nmの領域のSPM像を求め、実施例1と同様にして、凹凸最大高さの平均値、分布及び凹凸の平均ピッチを求めたところ、凹凸最大高さの平均値は4.0nmであり、凹凸最大高さの分布は3.0〜5.6nmの範囲にあり、凹凸の平均ピッチは32.5nmであった(なお、凹凸の平均ピッチを求める際に観測した凸部の総数は5個であった)。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
コーティング液の調製工程(A)により得られたコーティング液を用いる代わりに、下記コーティング液の調製工程(C)を実施して得られたコーティング液を用い、かつ、エンボス構造体の調製工程における紫外光の照射の条件を、雰囲気ガス:空気、圧力:大気圧、温度(重合時の温度):室温(25℃)の条件(環境)下において、波長:365nmの紫外光を照射強度(照度):5mW/cm2で60分間照射する条件に変更した以外は実施例1と同様にして、硬化膜の形成を試みた。
〈コーティング液の調製工程(C)〉
先ず、褐色のサンプル管の中に、下記一般式(2):
で表される1,6−へキサンジオールジメタクリレート(HDDMA:東京化成工業社製、2官能メタアクリレート)2.54gと、光重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」)0.13gとを添加して混合物を得た。なお、前記混合物中の前記6官能アクリレートと光重合開始剤のモル比([6官能アクリレート]:[光重合開始剤])は100:5であった。次に、このようにして得られた混合物の全量を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)4.13mL(4.01g)中に添加して溶解した後、30分間撹拌することにより、前記2官能アクリレートの含有量が40質量%となるコーティング液を得た。
このような比較例1においては、膜に対して十分な照射強度で十分に長時間光を照射したにもかかわらず、光重合が十分に進行せず、べたつきのある膜となっており、十分に硬化した膜を形成できず、凹凸構造(エンボス構造)を形成できなかった。
(比較例2)
コーティング液の調製工程(A)により得られたコーティング液を用いる代わりに、下記コーティング液の調製工程(D)を実施して得られたコーティング液を用い、かつ、エンボス構造体の調製工程における紫外光の照射の条件を、雰囲気ガス:空気、圧力:大気圧、温度(重合時の温度):室温(25℃)の条件(環境)下において、波長:365nmの紫外光を照射強度(照度):15.5mW/cm2で15分間照射する条件に変更した以外は実施例1と同様にして硬化膜を得た。
〈コーティング液の調製工程(D)〉
先ず、褐色のサンプル管の中に、スチレン(C6H5−CH=CH2:1官能のモノマー)1.04gと、光重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」)0.13gとを添加して混合物を得た。なお、前記混合物中の前記スチレンと光重合開始剤のモル比([スチレン]:[光重合開始剤])は100:5であった。次に、このようにして得られた混合物の全量を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)1.81mL(1.75g)中に添加して溶解した後、30分間撹拌することにより、前記スチレンの含有量が40質量%となるコーティング液を得た。
このような比較例2において得られた硬化膜の表面(光照射面:空気と接する面)上の任意の縦500nm、横500nmの領域のSPM像を求め、実施例1と同様にして、凹凸最大高さの平均値、分布及び凹凸の平均ピッチを求めたところ、凹凸最大高さの平均値は0.5nmであり、凹凸最大高さの分布は0.2〜2.0nmの範囲にあり、凹凸の平均ピッチは20.5nmであった(なお、凹凸の平均ピッチを求める際に観測した凸部の総数は5個であった)。得られた結果を表1に示す。
(比較例3)
コーティング液の調製工程(A)により得られたコーティング液を用いる代わりに、下記コーティング液の調製工程(E)を実施して得られたコーティング液を用い、かつ、エンボス構造体の調製工程における紫外光の照射の条件を、雰囲気ガス:空気、圧力:大気圧、温度(重合時の温度):室温(25℃)の条件(環境)下において、波長:365nmの紫外光を照射強度(照度):15.5mW/cm2で15分間照射する条件に変更した以外は実施例1と同様にして硬化膜を得た。
〈コーティング液の調製工程(E)〉
先ず、褐色のサンプル管の中に、上記一般式(1)で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA:東京化成工業社製、6官能アクリレート)2.89gと、スチレン(C6H5−CH=CH2:1官能のモノマー)0.52gと、光重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」)0.13gとを添加して混合物を得た。なお、前記混合物中のモノマーの総モル量(6官能アクリレートと1官能のモノマーの総モル量)と光重合開始剤のモル比([モノマーの総モル量]:[光重合開始剤])は100:5であり、前記混合物中のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとスチレンのモル比([ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート]:[スチレン])は50:50であった。次に、このようにして得られた混合物の全量を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)5.48mL(5.31g)中に添加して溶解した後、30分間撹拌することにより、前記モノマーの含有量(総量)が40質量%となるコーティング液を得た。
このような比較例3において得られた硬化膜の表面(光照射面:空気と接する面)上の任意の縦500nm、横500nmの領域のSPM像を求め、実施例1と同様にして、凹凸最大高さの平均値、分布及び凹凸の平均ピッチを求めたところ、凹凸最大高さの平均値は1.4nmであり、凹凸最大高さの分布は0.8〜2.8nmの範囲にあり、凹凸の平均ピッチは22.7nmであった(なお、凹凸の平均ピッチを求める際に観測した凸部の総数は5個であった)。得られた結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、実施例1及び比較例2〜3はいずれも総重合時間(光の照射時間の合計)が15分となっているが、実施例1で得られたエンボス構造体においては、凹凸最大高さの平均値が10.5nmとなり、かつ、凹凸最大高さの分布が8.3〜13.1nmの範囲となるような十分な凹凸高さのエンボス構造が形成されているのに対して、実施例1よりも光の積算照射量(照射強度×時間)が大きい比較例2〜3においては、そもそも凹凸最大高さの平均値が1.4nm以下となり、凹凸最大高さの平均値が2.0nm以上とはならず、かつ、凹凸最大高さの分布が0.2〜2.8nmの範囲(比較例2:0.2〜2.0nm、比較例3:0.8〜2.8nm)となっており、凹凸の最大高さの分布が1.0nm以上の範囲とはならず、必ずしも十分な凹凸高さを有するエンボス構造を形成することができなかった。このように、表1に示す結果から、4〜8官能の多官能アクリル系モノマーを重合性材料に利用した本発明のナノエンボス構造体の製造方法(実施例1)によれば、簡便な方法で、十分な凹凸高さを有するナノエンボス構造体を効率よく形成できることが分かった。
また、4〜8官能の多官能アクリル系モノマーを70モル%以上含有する重合性材料からなる膜を利用した実施例2(本発明のナノエンボス構造体の製造方法)においては、凹凸最大高さの平均値が4.0nmとなり、かつ、凹凸最大高さの分布が3.0〜5.6nmの範囲となるような、十分な凹凸高さのエンボス構造が形成されているのに対して、4〜8官能の多官能アクリル系モノマーの含有量が50モル%の重合性材料からなる膜を利用した比較例3においては、凹凸最大高さの平均値が1.4nmとなり、かつ、凹凸最大高さの分布が0.8〜2.8nmの範囲となっており、必ずしも十分な凹凸高さを有するエンボス構造を形成することができなかった。
なお、比較例1は、2官能のアクリル系モノマーを重合性材料として利用した例であるが、上記結果からも明らかなように、紫外光の積算照射量(照射強度×時間)を他の実施例や比較例と比較して最大としているにも拘わらず、酸素含有雰囲気下においては重合が十分に進行せず、重合後に得られる膜がタック性のあるものとなっていた。
以上のような実施例1〜2及び比較例1〜3の結果から、4〜8官能の多官能アクリル系モノマーを70モル%以上含有する重合性材料を利用することによって、酸素含有雰囲気下において、十分な凹凸高さを有するナノエンボス構造体を効率よく製造することが可能となることが分かった。