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JP6730785B2 - メタルコンポジットコアの製造方法、及びリアクトルの製造方法 - Google Patents
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Description

本実施形態は、メタルコンポジットタイプと呼ばれるリアクトルに適した軟磁性複合材料、軟磁性複合材料を使用した磁性コア、及び軟磁性複合材料を使用したリアクトルに関する。
メタルコンポジットタイプと呼ばれるリアクトルは、軟磁性粉末と樹脂を混ぜた材料を用いた磁性コアと、コイルとを一体成型して製造するリアクトルのことである。このリアクトルは磁性コアにフェライトを用いた積層タイプのリアクトルと比べて高温域で磁気飽和しにくいことなどを特徴とする。
メタルコンポジットタイプのリアクトルに使用される磁性コアは、メタルコンポジットコアと呼ばれる。これは、軟磁性粉末と樹脂を混合して軟磁性複合材料を作成し、それを固化させることにより製造される。特許文献1には、所定の密度比の軟磁性粉末を用いることで、ある程度比透磁率が低く、飽和磁束密度が高い軟磁性複合材料を得る方法が開示されている。
特開2014−160828号公報
しかし、このような軟磁性複合材料は、製造後に十分な磁気特性を有していても、経年劣化により磁気特性が低下するという問題があった。経年劣化による磁気特性の低下には、透磁率の低下や損失の増加があり、その改善が求められている。
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、経年劣化による磁気特性の低下、特に、透磁率の低下及び損失の増加を抑えることができる軟磁性複合材料、軟磁性複合材料を使用した磁性コア、及び軟磁性複合材料を使用したリアクトルを提供することを目的とする。
本発明者らは、軟磁性複合材料の磁気特性と、軟磁性粉末に混合する樹脂の物性とは密接な関係があることに着目した。すなわち、軟磁性複合材料の経年劣化による磁気特性の低下には、軟磁性粉末に混合する樹脂の物性が影響していると考えられた。樹脂の物性としては、機械的性質、電気的性質、熱的性質、磁気的性質、光学的性質など様々なものが挙げられる。
本発明者らは、樹脂の物性の中でも特に、吸水率及びガラス転移点に着目した。そして、吸水率及びガラス転移点が特定の範囲にあるものを使用したときに、磁性コアの透磁率の低下及び損失の増加を抑えることができることを発見した。この発見を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
(1)本発明のメタルコンポジットコアの製造方法は、次の構成を有する。
(a)軟磁性粉末に吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上のエポキシ樹脂を混合し、軟磁性複合材料を作成する樹脂混合工程。
(b)前記樹脂混合工程の後に、容器内に前記軟磁性複合材料を注入する注入工程。
(c)前記注入工程の後に、前記軟磁性複合材料を600Pa以下で加圧する加圧工程。
(d)前記加圧工程の後に、前記エポキシ樹脂を120〜150℃の熱処理により硬化させる樹脂硬化工程。
(2)前記軟磁性粉末が平均粒子径の異なる第1粉末と第2粉末の混合粉末であっても良い。
(3)前記混合粉末に対する前記エポキシ樹脂の混合量が3〜5wt%であっても良い。
(4)前記エポキシ樹脂中にフィラーが混合されていても良い。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のメタルコンポジットコアの製造方法において、前記注入工程の前に、前記容器内にコイルを配置する工程を備えるリアクトルの製造方法も本発明の一態様である。
本発明によれば、軟磁性粉末に混合する樹脂の吸水率及びガラス転移点を特定の範囲とすることにより、軟磁性複合材料の透磁率の低下及び損失の増加を抑えることができる。その結果、経年劣化による磁気特性の低下を抑えることができる軟磁性複合材料、軟磁性複合材料を使用した磁性コア、及び軟磁性複合材料を使用したリアクトルを提供することができる。
樹脂の吸水率と、高温高湿試験後の軟磁性複合材料の透磁率(μa)の変化率の関係を示したグラフである。 樹脂のガラス転移点と、高温試験後の軟磁性複合材料の損失(pcv)の変化率の関係を示したグラフである。
[1.構成]
以下、本実施形態の軟磁性複合材料の構成要素について説明する。本実施形態の軟磁性複合材料は、軟磁性粉末に樹脂を混合してなる軟磁性複合材料であって、樹脂が硬化性樹脂であり、樹脂の吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上である。本実施形態においては2種類の軟磁性粉末を混合した混合粉末を例に説明する。ただし、必ずしも2種類の粉末を混合したものでなくてもよい。例えば、1種類の軟磁性粉末を用いてもよいし、3種類以上の軟磁性粉末を混合してもよい。
[1−1.混合粉末]
混合粉末は、軟磁性粉末である第1粉末と第2粉末とを混合したものである。第1粉末と、第2粉末は、その平均粒子径が異なる。本実施形態では、第1粉末の平均粒子径が第2粉末の平均粒子径よりも大きい。
第1粉末の平均粒子径に対する第2粉末の平均粒子径の比は、第1粉末を1とした時に第2粉末が0.025〜0.12であることが好ましい。より好ましくは、第1粉末を1とした時に第2粉末が0.04〜0.10である。平均粒子径が大きな第1粉末の粒子間の隙間に、平均粒子径が小さい第2粉末が入り込むことで、隙間内部が軟磁性粉末によって充填され、得られた軟磁性複合材料の密度が高くなるからである。上記の範囲を超えると、第2粉末が大きすぎて、第1粉末や第2粉末間に隙間が生じ、密度が低下する。
第1粉末と第2粉末の配合割合は、第1粉末が60〜80wt%、第2粉末が20〜40wt%であるのが好ましい。第1粉末と第2粉末の平均粒子径と平均円形度によると、両者の配合比率がこの範囲を大小いずれの方向に外れても、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。
第1粉末及び第2粉末とは、その混合時において全体が均質に混合されていることが好ましい。そのようにすると、混合粉末に樹脂を混合してできあがった軟磁性複合材料の密度が均質になり、透磁率などの性能のばらつきが生じない利点がある。
[1−2.第1粉末]
第1粉末としては、Fe−6.5Siを使用できる。粉末硬度が本実施形態に適しているためである。粉末硬度とは、その粉末を10%変位させるのに必要な圧力である。Fe−6.5Siの粉末硬度は390MPaである。第1粉末としては、Fe−6.5Si以外の軟磁性粉末、例えば、純鉄、Fe−Si、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−N、Fe−C、Fe−B、Fe−P、Fe−Al−SiなどのFe基合金粉末、あるいは希土類金属粉末、非晶質金属粉末、フェライト粉末なども利用できる。
第1粉末の平均粒子径は、100μm以上が好ましい。また、100〜300μmがより好ましい。第1粉末が大きすぎると、必然的に円形度が低くなり、小さすぎると透磁率が低くなる。平均粒子径が300μmを超えると、粒子間の空隙が増加して、第2粉末がその空隙を埋めきることができない可能性がある。その結果、軟磁性複合材料の密度が低下する。第2粉末を所定の大きさ以下にすることはできないため、第1粉末が100μmに満たない場合には、粒子間の空隙を埋める第2粉末との粒径差が小さくなる。そして、第1粉末と第2粉末との間の空隙が増加するため、軟磁性複合材料の密度が低下する。
第1粉末の平均円形度は0.895以上で、特に、0.94以上の粉末を使用することが好ましい。円形度がこれ以上低いと、第1粉末の表面の凹凸と、第2粉末との間に空隙が生じ、密度が低下する。円形度が高い軟磁性粉末を使用すればするほど、混合する樹脂の量を減らすことができる。これにより密度がより高くなり、高透磁率を実現することができる。
第1粉末としては、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法あるいは水ガスアトマイズ法で製造されたものを使用することができる。ガスアトマイズ法による軟磁性粉末はほぼ球状の粒子である。したがって、加工せずそのまま使用することが可能である。水アトマイズ法で製造された軟磁性粉末は、その表面に凹凸が形成された非球状の粒子である。したがって、ボールミルなどで粉砕して球状に形成した後、表面改質装置を用いて平均円形度を0.895以上とする。この点、以下に述べる第2粉末も同様である。
第1粉末としては、表面に絶縁被膜を形成したものと、形成しないもののいずれも使用することができる。絶縁被膜としては、粒子径が7〜500nmのMgO、Al、TiO、CaO、SiOなどの無機絶縁粉末にシランカップリング剤を混合してなる絶縁被膜や、加熱硬化型のシリコーン樹脂被膜などが使用できる。
[1−3.第2粉末]
第2粉末としては、第1粉末と同一の材料を使用することができる。第1粉末の材料と異なる材料としても良い。第2粉末の平均粒子径は5〜12μmが好ましい。平均粒子径が12μmを超えると、100〜300μmの大きさを有する第1粉末に比較して粒径が大きすぎ、第2粉末が第1粉末間に形成される空隙を埋めきることができない。したがって、軟磁性複合材料の密度が低下する。5μmに満たない場合には、第2粉末の製造が困難になると共に、樹脂の表面張力に妨げられて樹脂との混合が困難になる。
第2粉末の平均円形度は0.895以上であるのが好ましい。平均円形度は、第1粉末と第2粉末とで等しくする必要はない。第2粉末の平均円形度がこれ以上低いと、第1粉末の表面と第2粉末との間に空隙が生じ、密度が低下する。第2粉末として、ガスアトマイズ法や水アトマイズ法あるいは水ガスアトマイズ法で製造されたものを使用することができる点は、第1粉末と同様である。
第2粉末としては、第1粉末と同様に、表面に絶縁被膜を形成したものと、形成しないもののいずれも使用することができる。絶縁被膜としては、MgO、Al、TiO、CaO、SiOなどの無機絶縁粉末にシランカップリング剤を混合してなる絶縁被膜や、加熱硬化型のシリコーン樹脂被膜などが使用できる。
[1−3.樹脂]
樹脂は、混合粉末に混合され、第1粉末と第2粉末が均質に混合された状態で保持する機能を有する。この樹脂としては、硬化性樹脂が使用できる。硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂としても良いし、例えば紫外線により硬化する光硬化性樹脂としても良い。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、などが使用できる。光硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。
上述の通り、樹脂は、吸水率が0.36%以下で、ガラス転移点が140℃以上の樹脂である。上記樹脂のうち、ガラス転移点が他の樹脂よりも高いエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を用いた場合、得られた軟磁性複合材料に熱処理を施しても分解し難く、磁気特性を高めることができる。また、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂については、エポキシ樹脂に比べて高温時に変性しやすい傾向があるが、軟磁性複合材料の使用温度が125℃以下の場合には使用することができる。
樹脂は、前記軟磁性粉末との混合時における粘度が50〜5000mPa・sであることが好ましい。粘度が50mPa・s未満であると、混合時において樹脂が軟磁性粉末に絡みつくことがなく、容器内に注入した軟磁性複合材料の低層部分に片寄ってしまい、軟磁性複合材料の密度や強度にバラツキが生じる。粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、平均粒子径が小さい第2粉末が平均粒子径の大きな第1粉末の隙間に円滑に入り込むことができなくなり、得られた軟磁性複合材料の密度が低下する。より好ましくは、100m〜1000mPa・sである。
樹脂の添加量は、第1粉末と第2粉末からなる混合粉末に対して3〜5wt%であることが好ましい。3wt%未満であると、軟磁性粉末の接合力が不足し、得られた軟磁性複合材料の強度が低下する。5wt%を超えると、第1粉末間に形成された隙間に樹脂が入り込み、その隙間を第2粉末が埋めることができなくなり、軟磁性複合材料の密度が低下する。
樹脂には、フィラーが混合されていても良い。フィラーを混合することにより、樹脂のガラス転移点を上げることができる。ただし、フィラーを混合した場合、軟磁性複合材料に非磁性の物質が含まれることとなるため、透磁率が低下する場合がある。そのため、樹脂そのもののガラス転移点が140℃以上である場合には、フィラーを混合せず用いることが好ましい。一方、樹脂そのもののガラス転移点が140℃未満の場合には、ガラス転移点が140℃以上となるようにフィラーを混合して用いることができる。
フィラーは、Al、BN、AlN、SiO、Fe、ZnO、TiOなどを使用できる。フィラーを混合する場合、フィラーの平均粒子径は、第2粉末の平均粒子径以下、好ましくは第2粉末の平均粒子径の1/3以下が良い。フィラーの粒径が大きいと、得られた軟磁性複合材料の密度が低下するからである。
[2.磁性コアの製造方法]
本実施形態の磁性コアの製造方法は、次の工程を有する。
(1)軟磁性粉末からなる第1粉末と、第1粉末よりも平均粒子径が小さい第2粉末とを混ぜ合わせた混合粉末を準備する準備工程。
(2)吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上の硬化性樹脂を混合粉末に対して3〜5wt%混合して軟磁性複合材料を得る樹脂混合工程。
(3)容器内に絶縁樹脂の成型品内に埋設したコイルを配置し、軟磁性複合材料を注入する注入工程。
(4)軟磁性複合材料を、加圧する加圧工程。(5)硬化性樹脂を硬化させる樹脂硬化工程。
(1)準備工程
本実施形態の軟磁性複合材料を製造するには、まず、第1粉末と第2粉末を作製し、混ぜ合わせた混合粉末を用意する。
(2)樹脂混合工程
混合粉末に、吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上の樹脂を混合して軟磁性複合材料を作成する。
(3)注入工程
容器内に、絶縁処理を施したコイルを配置しておく。容器の上面開口部から、容器とコイルとの隙間に、軟磁性複合材料を注入する。この際、容器内に注入した軟磁性複合材料が、容器とコイルとの隙間に円滑に流入させたり、ボイドの発生を防止するため、注入時に真空引きすることも可能である。
(4)加圧工程 加圧工程では、容器内に充填された軟磁性複合材料を容器開口部分から加圧する。その場合、容器の温度は常温が好ましいが、80℃までの範囲であっても構わない。すなわち、ここでの常温とは、5℃〜35℃までの範囲をいうが、5℃〜80℃の範囲であっても構わない。加圧力は、例えば、0〜600Pa程度である。加圧することにより、軟磁性複合材料の空隙が無くなり密度が向上し、透磁率を上げることができる。
(5)樹脂硬化工程 樹脂硬化工程では、硬化性樹脂を硬化する処理を行う。熱硬化性樹脂に対しては、所定の温度で熱処理を行い、硬化させる。この熱処理は、120℃〜150℃の温度で、所定の時間程度行うことが好ましい。熱処理温度を120℃以上とすることで、磁性コア成形体の強度を確保することができる。熱処理温度を150℃以下とすることで、軟磁性粉末の絶縁破壊による損失の増加を抑制することができる。また、光硬化性樹脂を用いる場合には、所定の波長の光を照射することにより硬化させる。
[3.効果]
(1)軟磁性複合材料は、軟磁性粉末に樹脂を混合してなる軟磁性複合材料であって、樹脂が硬化性樹脂であり、樹脂の吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上である。これにより、軟磁性複合材料の透磁率の低下及び損失の増加を抑えることができる。その結果、経年劣化による磁気特性の低下を抑えることができる軟磁性複合材料と磁性コア及び、その製造方法を提供することができる。そして、その軟磁性複合材料を用いたリアクトルのインダクタンスの低下を抑えることができ、信頼性の高いリアクトルを提供することができる。
(2)軟磁性粉末が平均粒子径の異なる第1粉末と第2粉末の混合粉末である。よって、第2粉末が第1粉末の粒子間の隙間に入り込み、得られた軟磁性複合材料の密度を高くすることができる。これにより、透磁率の高い軟磁性複合材料を得ることができる。
(3)樹脂がエポキシ樹脂である。ガラス転移点が高く耐熱性に優れるエポキシ樹脂を使用することで、得られた軟磁性複合材料に熱処理を施した際にも樹脂が分解しにくくなる。その結果、軟磁性複合材料の磁気特性を高めることができる。
(4)混合粉末に対する樹脂の混合量が3〜5wt%である。これにより、機械的強度及び磁気特性の優れた軟磁性複合材料を得ることができる。樹脂の混合量が3wt%より少ないと、混合粉末に対して樹脂が浸透しきれず、粉末同士の接合力を高めることができない。樹脂の混合量が3wt%以上であると、軟磁性粉末の接合力を高めることができ、成形体に割れが発生することを防止できる。また、5wt%以下であると、軟磁性複合材料の密度が高まり、最大磁束密度の低下及びヒステリシス損失の増加を抑え、磁気特性を上げることができる。
(5)樹脂中にフィラーが混合されている。これにより、樹脂のガラス転移点を上げ、耐熱性を高めることができる。よって、ガラス転移点が140℃以下の樹脂であっても本実施形態の樹脂として用いることができる。
[4.実施例]
以下、本実施形態の軟磁性複合材料及びその製造方法の具体的な実施例について説明する。なお、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
(混合粉末の準備)
第1粉末としてガスアトマイズ法により作成された平均粒子径が123μm、平均円形度が0.943のFe−6.5Siを用いた。第2粉末としてガスアトマイズ法により作成された平均粒子径が5.1μm、平均円形度が0.908のFe−6.5Siを用いた。第1粉末と第2粉末とを70:30の割合で混合して、混合粉末を作成した。平均粒子径及び平均円形度については粒子画像分析装置(Malvern社:morphologi G3s)を用いて測定した。平均粒子径及び平均円形度は、それぞれ粒子5000個について測定した。
(吸水率及びガラス転移点の測定)
吸水率及びガラス転移点が異なる5種類の樹脂A〜Eを用意した。樹脂の吸水率については、以下の方法により測定した。樹脂の吸水率は、サンプルの寸法によって異なるため、比較する樹脂のサンプルの寸法は統一する必要がある。本実施例では、サンプルの寸法を「縦50×横50×厚み5(mm)」として吸水率を計測した。
(1)吸水率の測定方法
(a)試験片の準備
所定の寸法の硬化物を金型などで直接、もしくは切削加工により用意した。本実施例では、所定の寸法を「縦50×横50×厚み5(mm)」とした。また、サンプル作成の際の樹脂A〜Eの乾燥温度及び乾燥時間は以下のとおりである。樹脂A…120℃(1H)、樹脂B…150℃(4H)、樹脂C…120℃(1H)、樹脂D…150℃(4H)、樹脂E…150℃(4H)。
(b)吸水前の質量測定
用意した試験片の質量を1mgまで計測した。この値をM0とした。
(c)吸水試験
常温にコントロールした水に試験片を24時間浸漬した。常温とは25℃が好ましいが、25℃でなくてもよい。
(d)吸水後の質量測定
試験片を水から取り出し、速やかに表面に付着した水を拭き取り、質量を1mgまで計測した。この値をM1とした。
(e)吸水率の計算
以下の式により、吸水率を計算した。
(M1−M0)÷M0×100=吸水率(%)
(2)ガラス転移点の測定方法
樹脂のガラス転移点は、JIS−K−7121に規定の方法により測定可能である。また、熱重量測定方法(Thermogravimetry:TG)や、示差熱分析法(Differential thermal analysis:DTA)により測定することもできる。
(磁性コアの作製)
本実施例では、吸水率及びガラス転移点の異なる熱硬化性樹脂AからEを用いた磁性コアを5種類作製した。そして、第1粉末と第2粉末を作製し、混ぜ合わせた混合粉末を用意し、混合粉末に対して樹脂AからEを4wt%混合し、軟磁性複合材料を作製した。容器内にコイルを配置し、軟磁性複合材料を注入した。軟磁性複合材料を加圧した。その後、下記に示す条件で樹脂A〜Eの種類に応じて熱処理を行い硬化させ、磁性コアを作製した。樹脂A…120℃(1H)、樹脂B…150℃(4H)、樹脂C…120℃(1H)、樹脂D…150℃(4H)、樹脂E…150℃(4H)。なお、樹脂A〜Eの25℃における粘度(mPa・s)は以下の通りである。樹脂A…100mPa・s、樹脂B…80mPa・s、樹脂C…50mPa・s、樹脂D…80mPa・s、樹脂E…465mPa・s。
(加速試験)
本実施形態では、軟磁性複合材料の経年劣化を調べるため、樹脂AからEを使用した磁性コアごとに加速試験を行った。以下に、その詳細を記載する。
加速試験では、吸水率及びガラス転移点が異なる5種類の樹脂A〜Eを使用した磁性コアに対して、高温試験と高温高湿試験を行った。高温試験では、磁性コアを180℃の温度環境で100時間放置した。高温高湿試験では、磁性コアを85℃の温度環境かつ、95%の湿度環境で100時間放置した。
(透磁率及び損失の測定)
加速試験前後の軟磁性複合材料について、透磁率μa及び損失Pcvを次のような手法により測定し、変化率を算出した。なお、以下の記述において、透磁率μaを単にμaと呼び、損失Pcvを単にPcvと呼ぶことがある。透磁率μaは、BH曲線の振幅透磁率である。
透磁率μa、損失Pcvについては、各磁性コアに1次巻線(40ターン)及び2次巻線(4ターン)を施し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=30mTの条件下で損失を算出した。
(加速試験の結果)
(1)吸水率との関係
樹脂の吸水率と、加速試験後のμa変化率及びPcv変化率との関係について以下の表1に基づき考察した。なお、本明細書においては樹脂の吸水率として説明するが、樹脂の吸湿率としても同じ意味である。両者とも、表面乾燥飽水状態の樹脂に含まれている全水量の、絶対乾燥状態の樹脂質量に対する百分率を示す。
μa変化率及びPcv変化率とは、加速試験前の数値に対する加速試験前後の数値の差の比率を示している。
μa変化率={(加速試験後のμa−加速試験前のμa)/加速試験前のμa}×100
Pcv変化率={(加速試験後のPcv−加速試験前のPcv)/加速試験前のPcv}×100
Figure 0006730785
表1に記載の通り、樹脂の吸水率と、高温試験または高温高湿試験後のμa変化率及びPcv変化率とは一定の相関関係があることが判明した。特に、樹脂の吸水率と、高温高湿試験後のμa変化率とは、比例関係があることが判明した。図1は、樹脂の吸水率(横軸)と、高温高湿試験後のμa変化率(縦軸)との関係を示したグラフである。図1によれば、高温高湿試験後において、樹脂の吸水率が低いほどμa変化率が低く抑えられている。
加速試験の結果から、吸水率が0.36%以下であると、高温高湿試験後のμa変化率が、−0.8%以下という数値となった。高温高湿試験後において、吸水率が高い樹脂ほど透磁率μaが低下しているが、それは、磁性コアが水蒸気を吸収して膨張し、成形体密度が低下することによると考えられた。以上より、樹脂は、吸水率が0.36%以下であることが好ましいと判明した。
(2)ガラス転移点との関係
樹脂のガラス転移点と、加速試験後のμa変化率及びPcv変化率との関係について考察した結果を以下に示す。
表1に記載の通り、樹脂のガラス転移点と、高温試験後または高温高湿試験後のμa変化率及びPcv変化率とは一定の相関関係があることが判明した。特に、樹脂のガラス転移点と、高温試験後のPcv変化率とは、比例関係があることが判明した。図2は樹脂のガラス転移点(横軸)と、高温試験後のPcv変化率(縦軸)との相関関係を示したグラフである。図2によれば、高温試験後において、樹脂のガラス転移点が高いほどPcv変化率が低く抑えられている。
加速試験の結果から、ガラス転移点が140℃以上であると、高温試験後のPcv変化率が、6.3%以下という数値となった。樹脂のガラス転移点が低いと、高温状態において樹脂のガラス転移による重合反応が起こり、磁性粉末間が絶縁破壊されるため損失が増加するものと考えられた。以上より、樹脂は、ガラス転移点が140℃以上であることが好ましいと判明した。
(結論)
以上のように、吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上である樹脂D、Eを用いた磁性コアは、加速試験後のμa変化率及びPcv変化率が小さかった。よって、樹脂は、吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上であることが好ましいと判明した。
[5.他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態は例として提示したものであって、その他の様々な形態で実施されることが可能である。発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲、要旨、その均等の範囲に含まれる。
(1)軟磁性複合材料を構成する粉末は、2種類の粉末を混合したものに限られない。例えば、1種類の粉末とすることができ、また、3種類以上の粉末とすることができる。このようにした場合でも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。1種類の粉末とする場合、本実施形態の第1粉末の粒径に近いものを使用する。3種類以上の粉末とする場合、3つ以上の粉末の粒径をそれぞれ変えたものを使用する。これにより、粉末間の隙間をなくし、密度を上げることができる。3種類以上の粉末を使用する場合、同じ種類の軟磁性粉末を使用しても良いし、別の種類の軟磁性粉末を使用しても良い。言い換えると、軟磁性粉末の粒度分布のピークが2つあると良く、3つ以上あっても良い。この場合、第1粉末と第2粉末の粒径は、前記の平均粒子径の範囲に限定されない。3つ以上の粉末を混合させた場合に、最も密度が高くなる平均粒子径を選択することが望ましい。
(2)軟磁性複合材料の作成後、樹脂の種類に応じた硬化法により樹脂を硬化させることができる。本実施形態では、熱硬化性樹脂を熱処理により硬化させたが、溶剤蒸発硬化性樹脂を用いた場合には、所定の時間乾燥させることで硬化させることができる。化学反応硬化性樹脂を用いた場合には、所定の化学反応材料を添加することで、あるいは、所定の時間経過後に化学反応が起こることで硬化させることができる。
(3)軟磁性粉末に混合する樹脂は、1種類の材料で硬化する1液性のものであってもよいし、主剤と硬化剤とを混合して硬化する2液性のものでもよい。また、3液性のものを使用することもできる。
(4)磁性コアは、本実施形態では軟磁性粉末と樹脂とを予め混合した軟磁性複合材料を容器に流し込むことにより作成したが、以下の方法により作成してもよい。容器内に第1粉末と第2粉末との混合粉末を充填した後、容器全体を振動させることで、容器内の混合粉末の密度を高める。その後、振動により密度を高めた混合粉末に対して樹脂を浸透させ、樹脂の種類による硬化法により硬化させる。振動の方法としては、容器全体をモータやカムなどを利用して上下または/及び前後左右に振動させたり、タッピングしたり、容器をハンマー状の部材で細かく叩く方法でも良い。容器全体を超音波振動子で振動させても良い。

Claims (5)

  1. 軟磁性粉末に吸水率が0.36%以下、ガラス転移点が140℃以上のエポキシ樹脂を混合し、軟磁性複合材料を作成する樹脂混合工程と、
    前記樹脂混合工程の後に、容器内に前記軟磁性複合材料を注入する注入工程と、
    前記注入工程の後に、前記軟磁性複合材料を600Pa以下で加圧する加圧工程と、
    前記加圧工程の後に、前記エポキシ樹脂を120〜150℃の熱処理により硬化させる樹脂硬化工程と、
    を備えることを特徴とするメタルコンポジットコアの製造方法。
  2. 前記軟磁性粉末が平均粒子径の異なる第1粉末と第2粉末の混合粉末であること、
    を特徴とする請求項1に記載のメタルコンポジットコアの製造方法。
  3. 前記混合粉末に対する前記エポキシ樹脂の混合量が3〜5wt%であること、
    を特徴とする請求項2に記載のメタルコンポジットコアの製造方法。
  4. 前記エポキシ樹脂中にフィラーが混合されていること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のメタルコンポジットコアの製造方法。
  5. 前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のメタルコンポジットコアの製造方法において、
    前記注入工程の前に、前記容器内にコイルを配置する工程を備えることを特徴とするリアクトルの製造方法。
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