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JP6736018B2 - 低摩擦被膜製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、低摩擦被膜を製造するための低摩擦被膜製造方法、および非晶質炭素系膜に対し摺動面を摺動させる摺動方法に関する。
摺動システムの摩擦低減を図るために、摺動部材の摺動面に固体潤滑膜を配置することが提案されている。このような固体潤滑膜として、たとえばDLC(Diamond Like Carbon)膜が知られており、下記特許文献1には、DLC膜を含む摺動面に、含酸素有機化合物や脂肪族アミン系化合物を含む低摩擦剤組成物を供給する低摩擦摺動機構が記載されている。
また、下記特許文献2には、第1の摺動表面を有する第1の部材と、第2の摺動表面を有する第2の部材とを含む低摩擦潤滑アセンブリが記載されている。第1の摺動表面は、O−H基との化学親和力を有している。第2の摺動表面は、O−H末端摺動表面を有している。第1および第2の摺動表面の間に含酸素化合物(液体潤滑剤)が供給されることにより、第1および第2の摺動表面の間に水素を末端とするトライボフィルムが形成される。
特開2005−98495号公報 特開2012−92351号公報
特許文献1に記載の低摩擦摺動機構および特許文献2に記載の低摩擦潤滑アセンブリでは、それぞれ、摺動部の摩擦係数の低減が図られている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、摺動表面上に液体潤滑剤が供給された状態(流体潤滑)で摺動が行われている。すなわち、特許文献1および特許文献2は、液体潤滑剤等の潤滑剤を別途使用しない(ドライ潤滑)条件での低摩擦化を提供できていない。
摺動面(摺動部)の摩擦係数を、潤滑剤を別途用いることなく低減させることが求められている。さらに、摩擦係数が低い状態が、摺動面で安定的に生じることも望まれている。
そこで、本発明の目的は、低い摩擦係数を安定的に発揮する低摩擦被膜を製造するための低摩擦被膜製造方法を提供することである。
前記の目的を達成するための請求項1の発明は、低摩擦被膜(5)を製造する方法であって、水素雰囲気環境下で水素分子を解離吸着し、活性水素(H )を発生する触媒性を有する金属またはセラミックスを用いて形成された摺動面(6)と、炭化水素分子を主成分として含む非晶質炭素系膜(9)を含む被摺動面(7)とが配置される空間(10)を、水酸基含有化合物と水素とを含むガス雰囲気に置換する置換工程と、前記空間が、水酸基含有化合物と水素とを含む前記ガス雰囲気とされている状態で、前記摺動面を前記被摺動面に対し、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で相対摺動させる摺動工程とを含み、前記摺動工程によって、前記摺動面に前記低摩擦被膜を形成する、低摩擦被膜製造方法製造方法を提供する。
なお、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2に記載の発明は、前記ガス雰囲気は、さらに炭化水素系物質を含む、請求項1に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項3に記載の発明は、前記水酸基含有化合物および前記炭化水素系物質は、アルコールを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記アルコールは、メタノール(CHOH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度が、6%〜15%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法である。なお、「前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のメタノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のメタノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のエタノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のエタノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体のアルコールおよび前記液体の水に対する当該液体のアルコールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のアルコール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のアルコール単体の体積を示す。同様に、「前記液体の1−プロパノールおよび前記液体の水に対する当該液体の1−プロパノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体の1−プロパノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体の1−プロパノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体の2−プロパノールおよび前記液体の水に対する当該液体の2−プロパノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体の2−プロパノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体の2−プロパノール単体の体積を示す。
請求項6に記載の発明は、前記アルコールは、エタノール(COH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項7に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度が、6%〜30%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項8に記載の発明は、前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対するエタノールの体積%濃度が、15%〜25%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項7に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項9に記載の発明は、前記アルコールは、1−プロパノール(CHCHCHOH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項10に記載の発明は、前記アルコールは、2−プロパノール(CHCH(OH)CH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項11は、前記水酸基含有化合物は、前記アルコールを100%の割合で含む溶液から発生する気体のアルコールである、請求項3,4,6,9,10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項12は、前記水酸基含有化合物は、水を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項13に記載の発明は、前記ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項14に記載の発明は、前記非晶質炭素系膜が、短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項15に記載の発明は、前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項16に記載の発明は、前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、高バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含み、前記非晶質炭素系膜には、水素および酸素の少なくとも一方が添加されている、請求項15に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項17に記載の発明は、前記摺動部材は、ZrOを用いて形成されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項18に記載の発明は、前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給工程と、前記摺動工程の開始後、前記水酸基含有化合物の前記空間への供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項19に記載の発明は、前記摺動工程に並行して、前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給状態と、当該空間に前記水酸基含有化合物の供給を停止する供給停止状態とを交互に繰り返す工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である
請求項20に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記メタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜15%である、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項21に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記エタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜30%である、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項22に記載の発明は、前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、15%〜25%である、請求項21に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項23に記載の発明は、前記炭化水素系物質が、エチレンを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法である。
本発明によれば、水酸基含有化合物と水素および窒素の少なくとも一方とを含む雰囲気環境下で、金属またはセラミックスを用いて形成された摺動面を被摺動面に対し、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で摺動させる。これにより、低い摩擦係数を安定的に発揮する低摩擦被膜を摺動面に形成することができる。換言すると、摩擦係数の低い状態での摺動を安定的に実現できる。
本発明の一実施形態に係る低摩擦被膜製造方法により得られる摺動システムの要部を拡大して示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る低摩擦被膜製造方法が実施される膜製造装置の構成を模式的に示す図である。 摺動部材と被摺動部材との摺動動作を示す断面図である。 第1の摩擦試験機の構成を示す模式的な断面図である。 第1〜第13の摩擦試験の計測対象のプレート試験片について説明するための図である。 第1の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第2の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第3の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第4の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第5の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第6の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第7の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第8の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第9の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第10の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第11の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第12の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第13の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第10の摩擦試験の終了後における、ピン試験片の外表面およびプレート試験片のPLC膜表面の光学顕微鏡写真の画像図である。 第11の摩擦試験の終了後における、ピン試験片の外表面およびプレート試験片のPLC膜表面の光学顕微鏡写真の画像図である。 第12の摩擦試験の終了後における、ピン試験片の外表面およびプレート試験片のPLC膜表面の光学顕微鏡写真の画像図である。 第13の摩擦試験の終了後における、ピン試験片の外表面およびプレート試験片のPLC膜表面の光学顕微鏡写真の画像図である。 第2の摩擦試験機の構成を示す模式的な断面図である。 第14〜第20の摩擦試験の計測対象のプレート試験片の上層について説明するための図である。 第14の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。 第14の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第15および第16の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。 第15の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第16の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第17の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。 第17の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第18、第19および第20の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。 第18の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第19の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。 第20の摩擦試験における、負荷荷重と、摩擦係数の計測値との関係を示すグラフである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る低摩擦被膜製造方法により得られる摺動システム1の要部を拡大して示す断面図である。摺動システム1は、摺動部材2と、摺動部材2にとって相手材である被摺動部材3を含む。摺動部材2は、被摺動部材3に対し、相対摺動可能に設けられている。摺動部材2および被摺動部材3は、被摺動部材3が静止している状態で摺動部材2だけを摺動(移動)させるものであってもよいし、摺動部材2が静止している状態で被摺動部材3だけを摺動(移動)させるものであってもよいし、摺動部材2および被摺動部材3の双方を移動させることにより、被摺動部材3に対し摺動部材2を相対摺動させるものであってもよい。
摺動部材2は、表面(図1の下面)を有する第1の基材4と、第1の基材4の表面の少なくとも一部を被覆する低摩擦被膜5とを含む。第1の基材4は、酸化物セラミックス(セラミックス)または金属を用いて形成されている。酸化物セラミックスは、たとえばZrO(より具体的には、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ))を含む。ZrOは、加熱処理されていてもよいし、加熱処理されていなくてもよい。金属は、たとえば、パラジウム(Pd)またはSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)の少なくとも一つを含む。これら酸化物セラミックスおよび金属は、水素雰囲気環境下で水素分子を解離吸着し、活性水素(H)を発生する触媒性を有している。
低摩擦被膜5は、非晶質炭化水素系膜である。低摩擦被膜5は、脂肪族炭化水素基(たとえばアルキル基)と、カルボニル基(−C(=O)−)と、芳香族系成分(C )と、縮合環系成分(C )とを含む。この脂肪族炭化水素基は、赤外吸収スペクトル(顕微透過法)において2900cm−1〜3000cm−1の領域にピークを示す。カルボニル基は、赤外吸収スペクトル(顕微透過法)において1650cm−1〜1800cm−1の領域にピークを示す。芳香族系成分(C )は、TOF−SIMS(飛行時間二次イオン質量分析法)により得られる正イオンスペクトルにおいて質量91.1にピークを示す。縮合環系成分(C )は、TOF−SIMSにより得られる正イオンスペクトルにおいて質量115.2にピークを示す。低摩擦被膜5は、被摺動部材3の被摺動面7に摺接する摺動面6として機能する。
低摩擦被膜5の膜厚(平均厚さ)は、2nm〜1000nmである。より好ましくは、2nm〜500nmである。
被摺動部材3は、表面(図1の上面)を有する第2の基材8と、第2の基材8の表面の少なくとも一部を被覆するPLC(Polymer−Like Carbon)膜(非晶質炭素系膜)9とを含む。第2の基材8は、たとえば、工具鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、高炭素クロム軸受鋼などの鋼材を用いて形成されている。
PLC膜9は、非晶質炭素系膜であり、短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含む。PLC膜9は、炭化水素系ガス(たとえばトルエン(toluene、C))の雰囲気環境下で、低バイアス電圧または高バイアス電圧を印加しながら、イオン化蒸着法により形成された被膜である。PLC膜9のヤング率は、200GPa〜250GPaである。PLC膜9の最表面は、赤外吸収スペクトル(顕微透過法)において3000cm−1〜4000cm−1の領域にピークを示している。高バイアス電圧を印加しながら非晶質炭素系膜を作製する場合、当該非晶質炭素系膜には、水素および酸素の少なくとも一方が添加されていてもよい。PLC膜9は、摺動部材2の摺動面6に摺接する被摺動面7として機能する。摺動面6および被摺動面7は、図1に示すような平坦平面であってもよいし、球面やその他の曲面であってもよい。
摺動面6および被摺動面7の摺動界面(すなわち、低摩擦被膜5とPLC膜9との間)には、液体潤滑剤等の潤滑剤は供給されていない。すなわち、摺動システム1は、無潤滑条件下で摺動動作が行われる。
摺動システム1として、軸受、シール、フライホイール、はさみ、プランジャポンプ、人工関節等を例示できる。また、軸受として、玉軸受、円錐ころ軸受をはじめとするころ軸受、セパレータ付軸受、すべり軸受等を例示できる。
摺動システム1として玉軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7が保持器の内面を含み、摺動面6は、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のボールの外表面を含んでいてもよい。また、保持器の外径を外輪の内周で案内する外輪案内方式の玉軸受や、保持器の内径を内輪の外周で案内する内輪案内方式の玉軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7が保持器の被案内面を含み、摺動面6は、保持器を案内する、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の内外輪の案内面を含んでいてもよい。
摺動システム1として円錐ころ軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がつばの端面を含み、摺動面6がころの外周面を含んでいてもよい。また、PLC膜9が配置される被摺動面7がころの外周面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のつばの端面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてセパレータ付軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がセパレータを含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のボールの外表面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてすべり軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がすべり軸受の内周面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の軸の外周面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてシールを採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7が軸の外周面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のシールのシール面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてはさみを採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7は一方の刃の刃面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の他方の刃の刃面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてプランジャポンプを採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がピストン(プランジャ)の外表面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の固定斜板を含んでいてもよい。
摺動システム1として人工関節を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7が受け側の接触面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の骨側の接触面を含んでいてもよい。
以上の摺動システム1については、摺動面6を一方の部材にかつ被摺動面7を他方の部材に設けたが、摺動面6を他方の部材にかつ被摺動面7を一方の部材に設けてもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る低摩擦被膜製造方法が実施される膜製造装置11の構成を模式的に示す図である。膜製造装置11は、内部空間を有する箱形のチャンバ12を備えている。チャンバ12の内部空間(空間)10に、摺動部材2と被摺動部材3とが収容される。膜製造装置11は、チャンバ12の内部空間10に設けられた保持台13をさらに含む。図2では、保持台13は被摺動部材3を保持するための保持台であり、チャンバ12の内部空間10に固定的に配置されている。チャンバ12の内部空間10に搬入された被摺動部材3は、保持台13上に載置され、保持台13に保持される。被摺動部材3の上に摺動部材2が載置される。
膜製造装置11は、摺動部材2の摺動面6を被摺動部材3の被摺動面7に対し相対的に摺動させるために、摺動部材2を駆動(移動)させる駆動機構14と、摺動部材2に対し、摺動部材2の被摺動部材3への押付け荷重を付与する荷重付与機構15とを含む。駆動機構14は、たとえば、モータを含む機構である。また、膜製造装置11は、膜製造装置11に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置16を含む。駆動機構14は、例えばモータとボールねじの組み合わせによる直動装置等がある。荷重付与機構15は、例えば錘等がある。
チャンバ12の底部には、チャンバ12の内部空間10の気体を導出するための排気ダクト17が設けられている。図2では、排気ダクト17がチャンバ12の底部に設けられた構成を示すが、チャンバ12において底部以外の位置に設けられたものであってもよい。
図2では、駆動機構14や荷重付与機構15を設けるとして説明したが、摺動部材2と被摺動部材3との間で荷重が付与されている状態で、摺動部材2と被摺動部材3とが摺動するように構成されていれば、駆動機構14や荷重付与機構15を設ける必要はない。
また、チャンバ12の壁(たとえば側壁18)を貫通して、処理ガス導入配管19が設けられている。処理ガス導入配管19には、水素ガス供給源から水素ガス(H)が供給される水素ガス配管20と、アルコール容器37から、炭化水素系物質の一例としてのアルコール(alcohol)が供給されるアルコール配管22と、水容器38から水が供給される水配管23と、窒素ガス供給源から窒素ガス(N)が供給される窒素ガス配管33とが接続されている。水素ガス配管20には、水素ガス配管20を開閉するための水素ガスバルブ24と、水素ガス配管20の開度を変更するための水素ガス流量調整バルブ25とが介装されている。アルコール配管22には、アルコール配管22を開閉するためのアルコールバルブ28と、アルコール配管22の開度を変更するためのアルコール流量調整バルブ29とが介装されている。水配管23には、水配管23を開閉するための水バルブ30と、水配管23の開度を変更するための水流量調整バルブ31とが介装されている。窒素ガス配管33には、窒素ガス配管33を開閉するための窒素ガスバルブ34と、窒素ガス配管33の開度を変更するための窒素ガス流量調整バルブ35とが介装されている。アルコール容器37において、アルコールは液体のアルコールと液体のアルコールから気化した気体のアルコールとキャリアガスとが存在する。アルコール容器37の温度は20℃±5℃に設定されている。アルコール配管22には、アルコール容器37から供給される気体のアルコールと外部から供給されるキャリアガスとが流れる。水容器38において、水は液体の水と液体の水から気化した気体の水蒸気とキャリアガスとが存在する。水容器38の温度は20℃±5℃に設定されている。水配管23には、水容器38から供給される気体の水蒸気と外部から供給されるキャリアガスとが流れる。
処理ガス導入配管19に供給されるアルコールは、メタノール(methanol。CHOH)、エタノール(ethanol。COH)、1−プロパノール(propan-1-ol。CHCHCHOH)および2−プロパノール(propan-2-ol。CHCH(OH)CH)の少なくとも一つを含む。
水素ガス配管20の開度が大きく設定された状態で水素ガスバルブ24が開かれると、水素ガス配管20からの大流量の水素が処理ガス導入配管19に供給される。このとき、アルコールバルブ28および/または水バルブ30が開かれることにより、小流量のアルコールガスと外部から供給されるキャリアガスである水素ガス(H)および/または小流量の水蒸気と外部から供給されるキャリアガスである水素ガス(H)が、処理ガス導入配管19内へと供給され、処理ガス導入配管19を流れる過程で大流量の水素ガス(H)と十分に混合(攪拌)される。この混合によって、特殊水素ガス(水素ならびにアルコール(水酸基含有化合物)および/または水(水酸基含有化合物)を含むガス)が生成される。生成された特殊水素ガス中でアルコールおよび/または水は気化されている。生成された特殊水素ガスは、処理ガス導入配管19の先端に形成された導入口32からチャンバ12の内部空間10に導入される。これにより、内部空間10の雰囲気が特殊水素ガス雰囲気となる。なお、特殊水素ガス雰囲気は酸素を含んでいない。
また、窒素ガス配管33の開度が大きく設定された状態で窒素ガスバルブ34が開かれると、窒素ガス配管33からの大流量の窒素が処理ガス導入配管19に供給される。このとき、アルコールバルブ28および/または水バルブ30が開かれることにより、小流量のアルコールガスと外部から供給されるキャリアガスである窒素ガス(N)および/または小流量の水蒸気と外部から供給されるキャリアガスである窒素ガス(N)が、処理ガス導入配管19内へと供給され、処理ガス導入配管19を流れる過程で大流量の窒素ガス(N)と十分に混合(攪拌)される。この混合によって、特殊窒素ガス(窒素ならびにアルコール(水酸基含有化合物)および/または水(水酸基含有化合物)を含むガス)が生成される。生成された特殊窒素ガス中でアルコールおよび/または水は気化されている。生成された特殊窒素ガスは、チャンバ12の内部空間10に導入される。これにより、内部空間10の雰囲気が特殊窒素ガス雰囲気となる。なお、特殊窒素ガス雰囲気は酸素を含んでいない。
また、水素ガスバルブ24および窒素ガスバルブ34が開かれた状態で、アルコールバルブ28および/または水バルブ30が開かれることにより、特殊窒素・水素ガス(窒素および水素、ならびにアルコール(水酸基含有化合物)および/または水(水酸基含有化合物)を含むガス)が生成される。生成された特殊窒素・水素ガスは、チャンバ12の内部空間10に導入される。これにより、内部空間10の雰囲気が特殊窒素・水素ガス雰囲気となる。なお、特殊窒素・水素ガス雰囲気は酸素を含んでいない。
図3Aおよび図3Bは、摺動部材2と被摺動部材3との摺動動作を示す断面図である。以下、膜製造装置11を用いて摺動部材2の摺動面6に低摩擦被膜5を形成する製造例について、図2を参照しつつ説明する。図3Aおよび図3Bについては適宜参照する。
膜製造装置11を用いて低摩擦被膜5を製造(形成)するときには、チャンバ12の内部空間10に、摺動部材2および被摺動部材3が搬入される。搬入された被摺動部材3は、被摺動面7が上に向けられた状態で保持台13上に載置され、保持台13に保持される。また、搬入された摺動部材2は、摺動面6が下に向けられた状態で、被摺動部材3上に載置される。なお、搬入された時点で、摺動部材2の摺動面6に低摩擦被膜5は形成されていない。すなわち、摺動面6は、酸化物セラミックスまたは金属によって形成されている。
摺動部材2および被摺動部材3がチャンバ12の内部空間10に搬入された後、制御装置16は、水素ガスバルブ24および/または窒素ガスバルブ34、ならびにアルコールバルブ28および/または水バルブ30を開いて、処理ガス導入配管19の導入口32からチャンバ12の内部空間10に、処理ガスを供給する(供給工程)。たとえば処理ガスは特殊水素ガスを含み、この特殊水素ガスでは、水素ガスに、微量の気体のアルコールおよび微量の気体の水蒸気がそれぞれ添加されているとする。この特殊水素ガスは、水素ガスに加えて、アルコール容器37で気体のアルコールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水を含んだキャリアガスの流量とを合計した値に対するアルコール容器37で気体のアルコールを含んだキャリアガスの流量の体積比[アルコール/(アルコール+水)]でたとえば4〜44%である気体のアルコールと気体の水蒸気とを含む。
チャンバ12内に供給された処理ガスは、チャンバ12の内部空間10の全域に行き渡る。これにより、チャンバ12の内部空間10の雰囲気(Air)が、処理ガスを含む雰囲気に置換される(置換工程)。なお、処理ガスには、酸素は含まれていない。
チャンバ12の内部空間10が処理ガスの雰囲気によって満たされた後(内部空間10が処理ガスの雰囲気とされている状態で)、当該処理ガスの供給を継続しながら、制御装置16は、駆動機構14を制御して、図3Aに示すように、被摺動面7(被摺動部材3)に対し摺動面6(摺動部材2)からの押付け荷重を付与しながら、被摺動面7に対する摺動面6の摺動(摺動工程)を開始する。押付け荷重の付与に伴い、摺動時において摺動面6と被摺動面7との間に生じるヘルツ接触応力は、1.0GPa以上である。より好ましくは、当該ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである。
摺動面6の摺動の開始から、予め定める期間(たとえば30分)が経過すると、制御装置16は、アルコールバルブ28および水バルブ30を閉じて、内部空間10に対するアルコールおよび水の供給を停止する(供給停止工程)。
被摺動面7に対する摺動面6の摺動に伴い、摺動面6(ZrO等)の触媒作用によって、被摺動面7に対する摺動面6の摺動の結果、摺動面6に低摩擦被膜5が形成される。低摩擦被膜5は、10−4オーダ(0.001未満)の著しく低い摩擦係数を示す。摺動部材2の摺動面6に低摩擦被膜5を設けることにより、摩擦係数が10−4オーダを示すFriction−Fade−Out状態(以下、「FFO」という。)を発現させることができる。換言すると、被摺動面7に対する摺動面6の摺動の結果、摩擦係数が摩擦とともに漸減し、FFOを発現させることができる。
低摩擦被膜5は、後述するFPF−2に相当する。低摩擦被膜5は、PLC膜9と同等の硬さを有し、干渉縞を示す透明膜である。低摩擦被膜5の表面および内部には、ブリスタ(気泡)が発生している。
このような低摩擦被膜5の形成(FFOの発現)のメカニズムについて、本願発明者らは次のように考えている。
すなわち、摺動面6の摺動(摩擦)に伴い、PLC膜9の最表面が摩擦により摩耗粉となって、摺動面6に移着する。すなわち、PLC膜9から移着した移着膜が摺動面6に形成される。摺動の進行に伴って、PLC膜9と移着膜とが摩擦するようになる。摺動面6を構成する金属(SUJ2、パラジウム等)または酸化物セラミックス(ZrO)は、水素分子を解離吸着して活性水素を発生できる触媒性を有している。そのため、摺動面6でPLC膜9を摺動する結果、摺動面6の触媒作用により、摺動界面に活性水素が存在するようになる。
内部空間10の雰囲気に含まれるアルコールが、摺動面6の活性水素の酸触媒作用により水素化分解され、前記の移着膜に揮発性ガスが形成される。そして、移着膜の摩擦面(摺動界面)に揮発性ガスのガス分子層が形成されると考えられる。このガス分子層厚さは数分子レベルであり、この揮発性ガス層の単分子レベルのガス潤滑により、FFOが発現するものと考えられる。すなわち、揮発性ガス層を含む移着膜を基に、低摩擦被膜5が形成される。
また、この実施形態では、摺動面6の摺動開始から所定時間経過すると、アルコールおよび水の供給が停止される。これにより、内部空間10の雰囲気から、水分(水)を除くことができる。酸化物セラミックス(ZrO)または金属(SUJ、パラジウム)の触媒作用を弱める触媒毒となり得る水分(水)を除くことにより、これらの触媒作用の安定化を達成できる。
より具体的なFFOの発現メカニズムには、次の通りである。
摺動面6の活性水素が、PLC膜9のC=C結合を有するCHx〜CHxフラグメントと接触すると、C=C結合部のπ結合を接触還元して、摺動界面に向く2個のC−H結合(シス付加反応)を生じる。平面性が強いC=C結合がC−C結合(σ結合)になるために、フラグメントの変形自由度が増し、その結果、摩擦界面に揮発性ガス層が形成される。
また、C−H結合の水素原子同士の反発力(ファンデルワールス力による反発力)も、FFOの発現の一因だと考えられている。摩擦により容易に揮発するC−C結合フラグメントの形成も、FFOの発現の一因だと考えられている。
摺動面6の摺動開始から予め定める期間が経過すると、制御装置16は、開いているバルブ(水素ガスバルブ24、アルコールバルブ28、水バルブ30、窒素ガスバルブ34等)を閉じて、処理ガス導入配管19からの処理ガスの導入を停止させる。その後、制御装置16は、摺動部材2および被摺動部材3を、チャンバ12の内部空間10から搬出させる。
アルコールとしてメタノールを採用する場合、処理ガスに含まれる気体のメタノールおよび気体の水に関し、アルコール容器37で気体のメタノールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水蒸気を含んだキャリアガスの流量と、の合計に対するアルコール容器37で気体のメタノールを含んだキャリアガスの流量の比が、6%〜15%であることが好ましい。また、アルコール容器37で気体のメタノールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水蒸気を含んだキャリアガスの流量と、の合計に対するアルコール容器37で気体のメタノールを含んだキャリアガスの流量の比がそれ以外の値(この値は100%を含む場合もある)であっても、FFOは発現可能である。
アルコールとしてエタノールを採用する場合、処理ガスに含まれる気体のエタノールおよび気体の水に関し、アルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水蒸気を含んだキャリアガスの流量と、の合計に対するアルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量の比が、6%〜30%であることが好ましい。また、アルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水蒸気を含んだキャリアガスの流量と、の合計に対するアルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量の比がそれ以外の値(この値は100%を含む場合もある)であっても、FFOは発現可能である。しかしながら、とくに、アルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量と、水容器38で気体の水蒸気を含んだキャリアガスの流量と、の合計に対するアルコール容器37で気体のエタノールを含んだキャリアガスの流量の比が15%〜25%である場合、FFOを、安定した状態で長期間に亘って発現させることができる。
次に、第1の摩擦試験機41を用いて行われる第1〜第13の摩擦試験について説明する。
図4は、第1の摩擦試験機41の構成を示す模式的な断面図である。図5Aは、第1〜第13の摩擦試験の計測対象のプレート試験片42の表面を拡大して示す断面図である。図5Bは、プレート試験片42の表面に形成された二層膜43の物性および膜作製手法を示す図である。
第1の摩擦試験機41として、図4に示すピンオンプレート(Pin-On- Plate)型往復すべり摩擦試験機を用いた。試験対象のピン試験片44には、200℃24時間大気中加熱処理した、もしくは水素還元雰囲気で400℃3時間処理した、直径4.8mmのZrO(YSZ)球が用いられている。試験対象のピン試験片44の上方に錘71を載せ、かつ当該錘71の重さを変えることにより、ピン試験片44に付与される荷重を変えることができるようになっている。
第1の摩擦試験機41はたとえば円筒状のチャンバ45を備えており、チャンバ45内にピン試験片44が収容されている。チャンバ45は、有底円筒状のアクリル製のチャンバ本体46と、チャンバ本体46の上面を閉じるアクリル製の蓋47とを含む。蓋47には、ピン試験片44のスライド方向に長い長尺の開口48が形成されており、開口48にピン試験片44が配置されている。チャンバ45の底部には、プレート試験片42を保持するための保持台49が配置されている。チャンバ本体46の周壁50を貫通して、ガス導入配管51が設けられている。ガス導入配管51には、水素ガスが供給される第1のライン52と、気体のアルコールおよび気体の水蒸気を含有する水素ガスが供給される第2のライン53とが接続されている。第1のライン52には、第1のライン52を開閉するための第1のバルブ54と、第1のライン52における水素ガスの流量を調整するための第1の流量調整バルブ55と、第1のライン52における水素ガスの流量を検出するための第1の流量計56とが介装されている。第2のライン53には、第2のライン53を開閉するための第2のバルブ57と、第2のライン53における水素ガスの流量を調整するための第2の流量調整バルブ58と、第2のライン53における水素ガスの流量を検出するための第2の流量計59と、アルコールおよび水が溜められたアルコール/水容器60とが介装されている。アルコール/水容器60の温度は20℃±5℃に設定されている。アルコール/水容器60において、アルコールと水とは液体のアルコールと水の水溶液とこの水溶液から気化した気体のアルコールと気体の水蒸気とが存在する。第2のバルブ57を開くことにより、第2のライン53を水素ガスが流れ、アルコール/水容器60に水素ガスが供給される。アルコールおよび水が溜められたアルコール/水容器60内を、水素ガスが流通することにより、気体のアルコールおよび気体の水蒸気が水素ガスに運ばれてガス導入配管51に至る。そして、第2のバルブ57の開成と共に第1のバルブ54を開くことにより、気体のアルコールおよび気体の水蒸気を含む水素ガスが、ガス導入配管51を通して、チャンバ45内に供給される。チャンバ45では、チャンバ45内の雰囲気が制御可能に設けられている。
プレート試験片42には、図5Aに示すように、表面に二層膜43が形成されたシリコン基板61を用いた。二層膜43は、二層構造の硬質炭素系膜である。二層膜43の下層側はSi−DLC膜62である。二層膜43の上層側はPLC(Polymer−Like−Carbon)膜63である。Si−DLC膜62は、トルエンおよびトリメチルシラン(Si(CH)をガス流量比2:3の割合で混合したものを原料ガスに用いながら、イオン化蒸着法(PVD法)を行うことにより形成されている。PLC膜63は、原料ガスとしてトルエンのみを用いながら、イオン化蒸着法を行うことにより形成されている。PLC成膜時におけるバイアス電圧を、−0.4kV(低バイアス電圧)とした。
Si−DLC膜62およびPLC膜63の、成膜時の処理圧(Deposition pressure,Pa)、成膜時のバイアス電圧(Bias voltage,kV)、成膜時の処理温度(Heater temperature,K)、膜厚(Film thickness,nm)、微小押込み硬さ(Indentation hardness,GPa)、ヤング率(Young's modulus,GPa)、ラマンスペクトルのGバンドのピーク位置(G-peak position,cm−1)、ラマンスペクトルのGバンドのピーク半値幅(FWHM(G) ,cm−1)、ラマンスペクトルのDバンドとGバンドとのピーク強度比(I(D)/ I(G))、推定含有水素量(at.%)を、それぞれ図5Bに示す。
プレート試験片42を、二層膜43の形成面を試験面として第1の摩擦試験機41にセットした後、摩擦速度8.0mm/s、摩擦ストローク4.0mm、チャンバ45への供給ガス流量約2.0〜6.2(リットル/分)、無潤滑という試験条件の下、ピン試験片44を介してプレート試験片42の表面に与える荷重の大きさを19.6N 〜58.8Nの範囲で、1.96N単位で段階的に上昇させながら、以下の第1〜第13の摩擦試験(最大28200回の高荷重試験)を行い、FFOの発現状況を調べた。
まず、第1〜第4の摩擦試験について説明する。チャンバ45内の温度を20℃±5℃に設定した。第1〜第4の摩擦試験では、アルコールとしてメタノールを用い、処理ガス(この場合、アルコールおよび水を含む特殊水素ガス。以下、同じ)に含まれるメタノールの濃度を変化させた。
第1〜第4の摩擦試験では、第1のライン52のガス流量を8(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとした。第1のライン52には水素ガスを流した。第2のライン53にはキャリアガスとして水素ガスを流した。
また、第1〜第4の摩擦試験において、第2のライン53のガス流量を検出するための第2の流量計59として、フロート方式の流量計を用いた。当該第2の流量計59の検出下限は200sccmであった。そのため、第2の流量計59に基づいてフィードバック制御される第2のライン53のガス流量は一定流量に制御できない。したがって、第1〜第4の摩擦試験では、試験開始後、第2のライン53のガス流量が徐々に低下しているものと推察される。
<第1の摩擦試験>
アルコール/水容器60に20ccの水および1ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は4.8%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第2の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および1ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は9.1%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第3の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および2ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は16.7%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第4の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および10ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は50%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
図6〜図9は、第1〜第4の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。第1の摩擦試験では、図6に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFO(超低摩擦状態)は発現しなかった。
第2の摩擦試験では、図7に示すように、荷重が約50Nに達した時点で、摩擦係数が急減し、FFOが発現した。FFO発現時の摩擦係数は、5×10−4〜7×10−4であった。その後、荷重を上昇させても、FFOは発現し続けた。荷重が58.8Nに達した後、高荷重のまま一定に保ったが、FFOが安定的に発現し続けた。FFOの発現が70分間継続した後、第2の摩擦試験を終了した。
第3の摩擦試験では、図8に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFOは発現しなかった。
第4の摩擦試験では、図9に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFOは発現しなかった。
第1〜第4の摩擦試験から、アルコールとしてメタノールを用いる場合、アルコールおよび水を含む特殊水素ガスに含まれる、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度が6〜15%の水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含むとき、FFOが発現し易い、とくに、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度が約9%のときFFOが発現し易いことが判る。
次に、第5〜第9の摩擦試験について説明する。チャンバ45内の温度を20℃±5℃に設定した。第5〜第9の摩擦試験では、アルコールとしてエタノールを用い、特殊水素ガスに含まれるエタノールの濃度を変化させた。
第5〜第9の摩擦試験では、第1のライン52のガス流量を8(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとした。
また、第5〜第9の摩擦試験において、第2のライン53のガス流量を検出するための第2の流量計59として、フロート方式の流量計を用いた。当該第2の流量計59の検出下限は200sccmであった。そのため、第2の流量計59に基づいてフィードバック制御される第2のライン53のガス流量は一定流量に制御できない。したがって、第5〜第9の摩擦試験では、試験開始後、第2のライン53のガス流量が徐々に低下しているものと推察される。
<第5の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および1ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は9.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第6の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および2ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は16.7%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第7の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第8の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および5ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は33.3%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第9の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および10ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は50%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
図10〜図14は、第5〜第9の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第5の摩擦試験では、図10に示すように、荷重が約27Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。FFO発現時の摩擦係数は、約5×10−4である。その後、荷重の増加に伴って摩擦係数は緩やかに下降したが、摩擦係数が10−5オーダに入った途端に、摩擦係数が10−4オーダと10−5オーダとの間で急激な増減を繰り返した。荷重が約42Nに達した時点で、摩擦係数が約8×10−2まで上昇したので、第5の摩擦試験を終了した。
第6の摩擦試験では、図11に示すように、荷重が約50Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が58.8Nに達した後、その高荷重で一定に保つと、摩擦係数は10−5オーダまで下降する。その後、摩擦係数が緩やかに上昇するという不安定な状態がみられたので、荷重を段階的に下降させたが、摩擦係数の不安定さは解消されなかった。その後、摩擦係数が0.02まで上昇したので、第6の摩擦試験を終了した。
第7の摩擦試験では、図12に示すように、荷重が約40Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、摩擦係数は、10−3オーダと10−5オーダとの間で大きく増減を繰り返したが、荷重が約50Nに達した時点でその急激な増減がみられなくなり、摩擦係数が10−5オーダで安定するようになった。荷重が58.8Nに達した後高荷重のまま一定に保っても、摩擦係数は10−5オーダで安定していた。すなわち、第7の摩擦試験では、FFO発現時の摩擦係数の値が、極めて小さくなった。
荷重が58.8Nに達してから25分間が経過すると摩擦係数が10−4オーダまで上昇した。そのため、エタノールおよび水を含む水素ガスの量を増加させた。すると、摩擦係数は、10−5オーダまで再度下降した。
この摩擦係数の上昇は、摺動面6(図1等参照)に形成されていた低摩擦被膜(図1の低摩擦被膜5と同等)は摺動に伴って剥離するものと考えられるが、エタノールおよび水が摺動面6(摺動界面)で枯渇したことにより、摺動面6で低摩擦被膜5の再生成が行われなかったものと推察できる。エタノールおよび水の供給量を増加させることにより、摺動面6における低摩擦被膜5の再生成が促進され、それゆえに、摩擦係数が10−5オーダまで再度下降したものと推察される。
荷重が58.8Nに達してから90分間が経過した後に摩擦係数が急上昇したので、第7の摩擦試験を終了した。
第8の摩擦試験では、図13に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFOは発現しなかった。
第9の摩擦試験では、図14に示すように、荷重が約45Nに達した時点で、摩擦係数が急減し、FFOが発現した。FFO発現時には、摩擦係数は約1×10−4と低かったが、荷重の増加に伴って摩擦係数は上昇し、10−3オーダまで上昇した。荷重が58.8Nに達した後、その高荷重で一定に保つと、摩擦係数が下降し、FFOが再び発現する。その後、摩擦係数が急激に上昇したので、第9の摩擦試験を終了した。
また、第5〜第9の摩擦試験から、アルコールとしてエタノールを用いる場合、特殊水素ガスに含まれる、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度が約6〜約30%の水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含むとき、FFOが発現し易い、とくに、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度が約15〜約25%の水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含むとき、FFOが発現し易いことが判った。この濃度範囲であれば、耐荷重性を有していることも判った。
また、第7の摩擦試験から、FFOの発現のためには、摺動面6および被摺動面7への「エタノール+水」の供給が必要であることが判る。これにより、発現したFFOを維持しておくためには、摺動面6および被摺動面7に、アルコールおよび水を常時供給し続ける必要があることが判る。
次に、第10〜第13の摩擦試験について説明する。チャンバ45内の温度を20℃±5℃に設定した。第10〜第13の摩擦試験では、特殊水素ガスに含まれるアルコールの種類を、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールのそれぞれとした。
また、第10〜第13の摩擦試験において、第2のライン53のガス流量を検出するための第2の流量計59として、マスフロメーター((株)フジキンTM39)を用いた。
第10〜第13の摩擦試験では、試験開始から摩擦回数500回までの期間(なじみ工程)は、第1のライン52のガス流量を6(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとし、摩擦回数500回経過後から試験終了までの期間は、第1のライン52のガス流量を6(リットル/分)のまま、第2のライン53のガス流量を100sccmとした。このとき、摩擦回数500回までとそれ以降との間で、特殊水素ガスに含まれる、水溶液から発生する気体のアルコールと気体の水蒸気の基となる、水溶液の液体のアルコールおよび液体の水に対する液体のアルコールの体積%濃度は変化しない。
<第10の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第11の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第12の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccの1−プロパノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体の1−プロパノールおよび液体の水に対する液体の1−プロパノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体の1−プロパノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第13の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccの2−プロパノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体の2−プロパノールおよび液体の水に対する液体の2−プロパノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体の2−プロパノールと気体の水蒸気とが含まれる。
図15〜図18は、第10〜第13の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第10の摩擦試験では、図15に示すように、荷重が19.6Nの条件で、FFOが一旦発現したが、このFFOは直ちに消失した。その後、荷重を増加させたところ、荷重が33.3Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が56.8Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第10の摩擦試験を終了した。
第11の摩擦試験では、図16に示すように、荷重が35.3Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が63.7Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第11の摩擦試験を終了した。FFOの発現時間は15分間であった。
第12の摩擦試験では、図17に示すように、荷重が35.3Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が63.7Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第12の摩擦試験を終了した。FFOの発現時間は15分間であった。
第13の摩擦試験では、図18に示すように、荷重が19.6Nの条件で、FFOが一旦発現したが、このFFOは直ちに消失した。その後、荷重を増加させたところ、荷重が23.5Nに達した時点でFFOが発現した。このFFOは荷重が23.5Nに達した時点で消失したが、その後の荷重の増加に伴い、荷重が31.4Nに達した時点でFFOが再度発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が63.7Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第13の摩擦試験を終了した。31.4N〜63.7Nの荷重範囲における、FFOの発現時間は20分間であった。
第10〜第13の摩擦試験から、アルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールのいずれを用いる場合であっても、FFOが発現することが判る。
また、アルコールは、炭化水素の分子量(すなわち、炭素数)の増加に従って(メタノール<エタノール<1−プロパノール=2−プロパノール)、FFOが安定して発現することが判る。
また、1−プロパノールよりも、その異性体である2−プロパノ―ルの方が、FFOが安定して発現した。FFOの発現の安定性には、分子構造のOH基の存在の影響もあると考えられる。
前述の第1〜第13の摩擦試験では、第2、第5〜第7および第9〜第13の摩擦試験において、FFOの発現が認められた。このFFOの発現状況を、図3Bを参照しながら説明する。
被摺動面7に対する摺動面6の摺動に伴い、ZrO等からなる摺動面6の触媒作用によって、比較的厚い摩擦ポリマーフイルム(Frictional polymer Film。 以下、「FPF」という)が摺動面6に形成される。摺動初期(なじみ初期と同じ。)のFPFを、「FPF−1」と定義する。FPF−1の摩擦係数は、10−1オーダーである。FPF−1は、黒色膜であり、PLC膜9よりも軟らかい膜である。FPF−1は、アルコールおよび水を含む水素ガス雰囲気下で形成される。
押付け荷重の増加に伴って、被摺動面7の最大ヘルツ接触応力も増加する。押付け荷重が所定の値を超えると、FPFが変質する。このFPFを、「FPF−2」と定義する。FPF−2(「低摩擦被膜5」に相当)は、干渉縞を示す透明膜であり、PLC膜9と同等の硬さを有している。FPF−2の表面およびFPF−2内部には、ブリスタ(気泡)が形成されている。第1〜第13の実施形態から、FPF−1がFPF−2に変質する荷重は、約12N前後であると推察される。荷重が12Nであるときの最大ヘルツ接触応力は、1.3GPaである。最大ヘルツ接触応力が1.0GPa程度から、FPF−1からFPF−2への変質が開始可能であると考えられる。最大ヘルツ接触応力が1GPa未満の摺動では、安定したFFOを発現できない。なお、荷重が60Nであるときの最大ヘルツ接触応力は、2.4GPaである。
図19〜図22は、第10〜第13の摩擦試験の終了後における、ピン試験片44の外表面およびプレート試験片42表面のPLC膜9表面の光学顕微鏡写真の画像図である。図19A、図20A、図21Aおよび図22Aに、PLC膜9表面の光学顕微鏡写真の画像図を示し、図19B、図20B、図21Bおよび図22Bに、プレート試験片42表面の光学顕微鏡写真の画像図を示す。
図19〜図22から、アルコールの種類が異なると、ピン試験片44の外表面に異なる種類のフィルムが形成されることが判った。
また、アルコールとして1−プロパノールを用いた場合には、図21Aに示すように、ピン試験片44の外表面にブリスタ(気泡)の発生が認められた。このことから、ピン試験片44の外表面の摺動界面付近に揮発性物質(揮発性ガス)が存在していることが推察できる。
次に、第2の摩擦試験機141を用いて行われる第14〜第20の摩擦試験について説明する。チャンバ45内の温度を20℃±5℃に設定した。
図23は、第2の摩擦試験機141の構成を示す模式的な断面図である。第2の摩擦試験機141が第1の摩擦試験機41と共通する部分には、図4の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。すなわち、第2の摩擦試験機141のチャンバ45の構成、およびピン試験片44等の構成は、特段説明がない限り第1の摩擦試験機41と同等である。第2の摩擦試験機141が第1の摩擦試験機41と相違する点は、主としてその給気系にある。
給気系のガス導入配管51には、水素ガスが供給される第1のライン52と、窒素ガスが供給される第3のライン101と、気体のアルコールおよび気体の水蒸気を含有するキャリアガスとしての水素ガスが供給される第4のライン102と、気体のアルコールを含有するが気体の水蒸気を含有しないキャリアガスとしての水素ガスが供給される第5のライン103と、気体の水蒸気(蒸留水を基とする)を含有するが気体のアルコールを含有しないキャリアガスとしての水素ガスが供給される第6のライン104とを含む。
第3のライン101には、第3のライン101を開閉するための第3のバルブ105と、第3のライン101における窒素ガスの流量を調整するための第3の流量調整バルブ106と、第3のライン101における窒素ガスの流量を検出するための第3の流量計107とが介装されている。
第4のライン102には、第4のライン102を開閉するための第4のバルブ108と、第4のライン102における水素ガスの流量を調整するための第4の流量調整バルブ109と、第4のライン102における水素ガスの流量を検出するための第4の流量計110と、液体のアルコール(エタノール)および液体の水(蒸留水)が溜められた、気体のアルコールと気体の水蒸気の存在するアルコール/水容器111とが介装されている。アルコール/水容器111の温度は20℃±5℃に設定されている。アルコール/水容器111において、アルコールと水とは液体のアルコールと液体の水の水溶液とこの水溶液から気化した気体のアルコールと気体の水蒸気とが存在する。アルコール/水容器111には、液体のエタノールと液体の水が3:10の体積比で混合されている。第4のライン102を流れる処理ガスに含まれる「エタノール+水」は混合する前の液体のエタノール単体の体積=3と、混合する前の液体の水単体の体積=10と、の体積比で混合されている水溶液から気化した気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む。このような処理ガスを、以降、「エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)」と呼ぶ場合がある。
第5のライン103には、第5のライン103を開閉するための第5のバルブ112と、第5のライン103における水素ガスの流量を調整するための第5の流量調整バルブ113と、第5のライン103における水素ガスの流量を検出するための第5の流量計114と、液体のアルコール(エタノール)のみが溜められた、気体のアルコールの存在するアルコール容器115とが介装されている。アルコール容器115には、エタノールから除去できない水分を除き、水が含まれないため、第5のライン103を流れる処理ガスには気体のエタノールが含まれる一方水はほぼ含まれない。このような処理ガスを、以降、「エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)」と呼ぶ場合がある。
第6のライン104には、第6のライン104を開閉するための第6のバルブ116と、第6のライン104における水素ガスの流量を調整するための第6の流量調整バルブ117と、第6のライン104における水素ガスの流量を検出するための第6の流量計118と、液体の水(蒸留水)のみが溜められた、気体の水蒸気の存在する水容器119とが介装されている。水容器119には、アルコールが含まれないため、第6のライン104を流れる処理ガスには気体の水蒸気が含まれる一方エタノールは含まれない。このような処理ガスを、以降、「水を含有する水素ガス」と呼ぶ場合がある。
第1のバルブ54と第3のバルブ105とを選択的に切り換えることによりチャンバ45内の雰囲気の主成分を水素と窒素との間で切り換えることができる。また、第4〜第6のバルブ108,112,116のうち1つ以上のバルブを開くことにより、チャンバ45内の雰囲気に含まれるアルコールと水との成分比を制御できる。これらのバルブ108,112,116の開成に加え、流量調整バルブ109,113,117の開度を調整することにより、チャンバ45内の雰囲気に含まれるアルコールと水との成分比をさらに細かく制御できる。
図24は、第14〜第20の摩擦試験の計測対象のプレート試験片の上層について説明するための図である。
計測対象のプレート試験片42は、図5Aを用いて説明したように二層構造の硬質炭素系膜からなる二層膜43を表層側に含む。第15〜第20の摩擦試験では、二層膜43のうち下層を構成するSi−DLC膜は、Si−DLC膜62(図5A参照)と同等の構成であるが、二層膜43のうち上層(Surface layer)を構成するPLC(Polymer−Like−Carbon)膜163は、その作製手法がPLC膜63(図5A参照)と一部異なっている。
PLC膜163の作成手法がPLC膜63の作成手法と主として相違する点は、イオン化蒸着法(PVD法)におけるバイアス電圧(Bias voltage)として、高バイアス電圧(−4.0kV)を採用した点にある。
第14〜第20の摩擦試験では、PLC膜として、第1のPLC膜163A、第2のPLC膜163Bおよび第3のPLC膜163Cという3種の膜を用意した。第1のPLC膜163Aには添加物はないが(単に「PLC」)、第2のPLC膜163Bは水素が添加されており(H−PLC)、また、第3のPLC膜163Cは酸素が添加されている(O−PLC)。これらの膜の作成手法について、図26に示す通りである。
プレート試験片42を、二層膜43の形成面を試験面として第2の摩擦試験機141にセットした後、摩擦速度8.0 mm/s、摩擦ストローク4.0mm、無潤滑という試験条件の下、ピン試験片44を介してプレート試験片42の表面に与える荷重の大きさを19.6N〜63.7Nまで、1.96N単位で段階的に上昇させながら、第14〜第20の摩擦試験(最大28200回の高荷重試験)を行い、FFOの発現状況を調べた。
第14〜第20の摩擦試験のうち第14〜第17の摩擦試験では、試験開始からFFOが発現するまでのなじみ環境(Run−in environment)とFFOの発現後のFFO環境(FFO environment)との間で、チャンバ45内に供給される処理ガスの種類および/またはその流量を変化させている。
<第14の摩擦試験>
図25は、第14の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
図25に示すように、第14の摩擦試験においてなじみ環境(Run−in environment)では、チャンバ45内にメインフローとして窒素ガスを大流量(5slm)で供給すると共に、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)を、サブフローとして中流量(180sccm)で供給する。また、FFO環境(FFO environment)では、チャンバ45内にメインフローとして窒素ガスを大流量(5slm)で供給し、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)をサブフローとして小流量で供給すると共に、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)をサブフローとして微量で供給した。具体的には、水分を多く含むエタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)の供給流量は、供給開始時には80sccmとしその後17sccmまで徐々に低減させた。また、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)の供給流量は、供給開始時には0.1sccmとしその後0.3sccmまで徐々に増加させた。すなわち、FFOを発現するFFO環境(FFO environment)は、なじみ環境(Run−in environment)よりも、チャンバ45内の雰囲気中のアルコール濃度および水分濃度が低い状態に制御する。このようにFFOを容易に発現させるには、アルコール濃度と水分濃度を低く制御する方法が効果的である。なお、第14の摩擦試験では、プレート試験片42(図5A参照)として、第2のPLC膜163B(H−PLC)を用いた。ただし、第1〜第13の摩擦試験に用いたプレート試験片と同等のプレート試験片を用いてもよい。
図26は、第14の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第14の摩擦試験では、図26に示すように、荷重を9.8Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。荷重が63.7Nに達してから暫く経過した時点でアルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を63.7Nを保っても、FFOの発現が維持された。FFO発現中の摩擦係数は、1×10−4以下であった。FFOの発現時間は4時間以上であった。FFO環境(FFO environment)の前半(前半のおよそ2時間)では、摩擦係数の瞬間的な上昇が繰り返し見られたものの、さらに水分濃度を低く制御するとFFO環境(FFO environment)の後半(後半のおよそ2時間)ではFFOの発現が安定して維持された。
第14の摩擦試験から、メインフローとして窒素を用いる場合、つまり、チャンバ45内の雰囲気の主成分が窒素である場合にも、FFOが発現し、しかも、その摩擦係数は非常に低く、かつFFOの発現状態も良いことが判った。
<第15および第16の摩擦試験>
図27Aおよび図27Bは、第15および第16の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
図27Aおよび図27Bに示すように、第15および第16の摩擦試験においてなじみ環境(Run−in environment)では、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給すると共に、水を含有する水素ガスを、サブフローとして小流量で供給する。また、FFO環境(FFO environment)では、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給した。
第15の摩擦試験と第16の摩擦試験とは、次に述べる点で相違する。すなわち、なじみ環境(Run−in environment)において、第15の摩擦試験では、水を含有する水素ガス供給流量を、試験開始時には40(sccm)としその後0(sccm)まで徐々に減少させたのに対し、第16の摩擦試験では、水を含有する水素ガス供給流量を40(sccm)のまま保ち続けた。また、FFO環境(FFO environment)において、第15の摩擦試験では、メインフローとして水素ガスのみを供給したのに対し、第16の摩擦試験では、水を含有する水素ガス供給流量を40(sccm)から10(sccm)まで徐じょに減少させて併せて供給した。
第15および第16の摩擦試験では、プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第1のPLC膜163A(PLC)を用いた。また、ピン試験片44の材質として加熱処理されていないジルコニアではなく、加熱処理されたジルコニアを用いた。加熱処理がされたジルコニアを用いて形成されたピン試験片44は、結晶構造が熱により正方晶から単斜晶に相転移し,結晶格子が長くなるため,水素分子や水分子の解離がより効果的に発現し、ジルコニアからなるピン試験片44による触媒作用を、より一層高めることができる。
図28および図29は、それぞれ、第15の摩擦試験および第16の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第15の摩擦試験では、図28に示すように、試験開始から荷重を19.6Nとし、荷重大きさを19.6Nのまま保った。水を含有する水素ガス供給を停止すると、試験の開始から45分経過した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。FFOの発現開始から、しばらくの間は摩擦係数が増減を繰り返していたが、その後、FFOの発現状態が安定するようになった。FFO発現中の摩擦係数は、6×10−4であった。FFOの発現時間は約1時間であった。
第16の摩擦試験では、図29に示すように、試験開始は荷重を19.6Nとし、試験の開始から29分経過した時点で荷重を29.4Nに上昇させ、さらに32分経過した時点で荷重を39.2Nに上昇させ、その後39.2Nのまま保った。水を含有する水素ガス供給流量が10(sccm)でも、荷重を39.2Nまで上昇させた後FFOが安定的に発現するようになった。FFOの発現時間は約1時間であった。FFO発現中の摩擦係数は、5×10−4であった。FFOの発現時間は約1時間であった。
第15および第16の摩擦試験から、チャンバ45内の雰囲気にエタノール(アルコール)が含まれていなくてもFFOが発現することが判る。また、なじみ環境(Run−in environment)における雰囲気にエタノール(アルコール)が含まれていなくても、FFO環境(FFO environment)における雰囲気に水分が少量含まれていれば、膜(第1のPLC膜163A)の耐荷重性が高まることが判る。
<第17の摩擦試験>
図30Aおよび図30Bは、第17の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
図30Aおよび図30Bに示すように、第17の摩擦試験においてなじみ環境(Run−in environment)では、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給すると共に、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)を、サブフローとして微小流量(2sccm)で供給する。また、FFO環境(FFO environment)では、チャンバ45内にメインフローとして窒素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)を、サブフローとして微小流量(1sccm)で供給する。第17の摩擦試験では、プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第1のPLC膜163A(PLC)を用いた。
図31は、第17の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第17の摩擦試験では、図31に示すように、試験開始から40分までは荷重を19.6Nに維持していたが、その後荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。荷重が約50Nに達した前後で摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、摩擦係数の値の大きな上下動が見られたが、荷重が63.7Nに達した後は、FFOの発現が安定して維持された。FFO発現中の摩擦係数は、概ね1×10−4以下であった。FFOの発現時間は約1時間であった。
第17の摩擦試験から、チャンバ45内の雰囲気が水(HO)を含まない場合、すなわち水酸基含有化合物としてエタノールが用いられている場合であっても、FFOは良好に発現することが判る。なお、第17の摩擦試験では、アルコールとしてエタノールを用いたが、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の他のアルコールを用いても同様の結果が得られるものと推察される。
次に、第18〜第20の摩擦試験について説明する。第18〜第20の摩擦試験では、プレート試験片42の上層(Surface layer)を異ならせた。
<第18の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第3のPLC膜163C(O−PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)および水を含有する水素ガスを小流量(それぞれ40sccmおよび10sccm)で供給した。
<第19の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第1のPLC膜163A(PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)を中流量(180sccm)で供給し、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)を微小流量(2sccm)で供給した。
<第20の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第2のPLC膜163B(H−PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)を中流量(180sccm)で供給した。
図33〜図35は、第18〜第20の摩擦試験における、負荷荷重(Load)と、摩擦係数(Friction coefficient)の計測値との関係を示すグラフである。
第18の摩擦試験では、図33に示すように、荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。アルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、荷重を19.6Nから29.4Nに上げるとFFOが発現、荷重を63.7Nに上げてもFFOを維持した。荷重が63.7NでのFFOの初期の摩擦係数は、約5×10−4であったが、時間の経過に従って摩擦係数は低下し、1×10−4 以下程度まで下がった。その後、摩擦係数は緩やかに増大した。FFOの発現時間は2時間以上であった。
第19の摩擦試験では、図34に示すように、荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。アルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、試験開始後23分が経過した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。荷重を39.2Nに上げるとFFOが安定して発現、荷重を63.7Nでも安定して発現した。FFOの発現中の摩擦係数は、約1×10−4以下と低値を呈した。FFOの発現時間は2時間以上であった。
第20の摩擦試験では、図35に示すように、荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。アルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、試験開始後30分が経過した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。FFOの初期の摩擦係数は、約1×10−4であったが、摩擦力測定センサーの温度ドリフトのため時間の経過に従って摩擦係数は緩やかに増大した。摩擦センサーの温度ドリフトがない場合は、FFOの摩擦係数は1×10−4〜4×10−4の範囲であったと推察した。FFOの発現時間は4時間以上であった。
第18〜第20の摩擦試験から、プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第1のPLC膜163A(PLC)、第2のPLC膜163B(H−PLC)および第3のPLC膜163C(O−PLC)のいずれを用いた場合であっても、FFOが良好に発現することが判る。
以上によりこの実施形態によれば、イオン化蒸着法によりバイアス電圧を印加しながら形成された被膜であるPLC膜9を含む被摺動面7に対し、アルコールおよび/または水を微量に含む水素ガスおよび/または窒素ガスの雰囲気環境(さらに言えば、酸素を含まない環境)下で、金属(SUJ2、パラジウム等)または酸化物セラミックス(ZrO)を用いて形成された摺動面6を、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で摺動させる。摺動面6を構成する金属(SUJ2、パラジウム等)または酸化物セラミックス(ZrO)は、水素分子を解離吸着して活性水素を発生できる触媒性を有している。摺動面6でPLC膜9を摺動する結果、摺動面6の触媒作用により、摺動界面に活性水素が存在するようになる。内部空間10の雰囲気に含まれるアルコールが、摺動面6の活性水素の酸触媒作用により水素化分解される。これにより、FFOを発現させることができる。また、水が存在しているので、この水により、摺動面6の触媒作用を安定化を図ることができる。
これにより、10−4オーダ(0.001未満)の著しく低い摩擦係数を有する低摩擦被膜5を、摺動面6に形成することができる。低摩擦被膜5は、著しく低い摩擦係数を、安定的に発揮する。
また、潤滑剤を別途用いることなく、摺動面6の摩擦係数の低減を図ることができる。
さらに、摺動面6の摩擦係数を著しく低減できる結果、潤滑剤を別途用いることなく、摺動面6と被摺動面7との間に発生する摩擦力の低減を図ることができる。これにより、摺動システム1の摺動に伴う摩擦損失を大幅に低減することができ(摩擦トルクを大幅に低減することができ)る。したがって、摺動システム1の小型化および軽量化を図ることができると共に、摺動システム1の信頼性の向上を図ることができる。
また、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえばまた、PLC膜9が短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含むが、それ以外の炭化水素分子を主成分として含むものであってもよい。
また、PLC膜9は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、低バイアス電圧または高バイアスを印加しながらイオン化蒸着法により形成されるとして説明したが、PLC膜9はそれ以外の手法により形成される被膜であってもよい。
また、被摺動面7に対する摺動面6の摺動に並行して、内部空間10にアルコールおよび水を供給するアルコール/水供給状態と、内部空間10へのアルコールおよび水の供給を停止する供給停止状態とを交互に繰り返してもよい。
アルコールおよび水のチャンバ12内への供給を停止することにより、チャンバ12内の雰囲気から、前述のような触媒毒となり得る水分(水)を除くことが可能である。その半面、アルコールおよび水の供給停止により、エタノールおよび水が摺動面6(摺動界面)で枯渇するおそれがある。
アルコール/水供給状態と、供給停止状態とを交互に繰り返すことにより、水が触媒毒となるのを抑制しながら、エタノールおよび水を摺動面6(摺動界面)に供給し続けることができる。
また、処理ガス導入配管19の導入口32からチャンバ12の内部空間10に供給される処理ガスは、窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方をメインフローとして含んでいる。また、この処理ガスは、アルコールおよび水の少なくとも一方を微量に含んでいる。
すなわち、主体ガス(窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方)がアルコールおよび水の双方を含むものであってもよいし、アルコールを含むが水を含まないものであってもよいし、水を含むがアルコールを含まないものであってもよい。 また、炭化水素系物質の一例としてアルコールを例示したが、アルコールに代えて他の炭化水素系物質(たとえば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレン、エチレン、カルボン酸(酢酸、ギ酸等))を採用してもよい。
また、チャンバ12の内部空間10の雰囲気を、水素ガスを主体としてもよいし、窒素ガスを主体としてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…摺動システム、5…低摩擦被膜、6…摺動面、7…被摺動面、9…PLC膜(非晶質炭素系膜)、10…内部空間(空間)

Claims (23)

  1. 低摩擦被膜を製造する方法であって、
    水素雰囲気環境下で水素分子を解離吸着し、活性水素(H )を発生する触媒性を有する金属またはセラミックスを用いて形成された摺動面と、炭化水素分子を主成分として含む非晶質炭素系膜を含む被摺動面とが配置される空間を、水酸基含有化合物と水素とを含むガス雰囲気に置換する置換工程と、
    前記空間が、水酸基含有化合物と水素とを含む前記ガス雰囲気とされている状態で、前記摺動面を前記被摺動面に対し、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で相対摺動させる摺動工程とを含み、
    前記摺動工程によって、前記摺動面に前記低摩擦被膜を形成する、低摩擦被膜製造方法。
  2. 前記ガス雰囲気は、さらに炭化水素系物質を含む、請求項1に記載の低摩擦被膜製造方法。
  3. 前記水酸基含有化合物および前記炭化水素系物質は、アルコールを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法。
  4. 前記アルコールは、メタノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
  5. 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
    前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度が、6%〜15%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法。
  6. 前記アルコールは、エタノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
  7. 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
    前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度が、6%〜30%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法。
  8. 前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対するエタノールの体積%濃度が、15%〜25%である水溶液から発生する気体のエタノールと水蒸気とを含む、請求項7に記載の低摩擦被膜製造方法。
  9. 前記アルコールは、1−プロパノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
  10. 前記アルコールは、2−プロパノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
  11. 前記水酸基含有化合物は、前記アルコールを100%の割合で含む液から発生する気体のアルコールである、請求項3,4,6,9,10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  12. 前記水酸基含有化合物は、水を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  13. 前記ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  14. 前記非晶質炭素系膜が、短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  15. 前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  16. 前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、高バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含み、
    前記非晶質炭素系膜には、水素および酸素の少なくとも一方が添加されている、請求項15に記載の低摩擦被膜製造方法。
  17. 前記摺動部材は、ZrOを用いて形成されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  18. 前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給工程と、
    前記摺動工程の開始後、前記水酸基含有化合物の前記空間への供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  19. 前記摺動工程に並行して、前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給状態と、当該空間に前記水酸基含有化合物の供給を停止する供給停止状態とを交互に繰り返す工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
  20. 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
    前記メタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、
    前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、
    前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜15%である、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法。
  21. 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
    前記エタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、
    前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、
    前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜30%である、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法。
  22. 前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、15%〜25%である、請求項21に記載の低摩擦被膜製造方法。
  23. 前記炭化水素系物質は、エチレンを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法。
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