JP6736018B2 - 低摩擦被膜製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、摺動表面上に液体潤滑剤が供給された状態(流体潤滑)で摺動が行われている。すなわち、特許文献1および特許文献2は、液体潤滑剤等の潤滑剤を別途使用しない(ドライ潤滑)条件での低摩擦化を提供できていない。
そこで、本発明の目的は、低い摩擦係数を安定的に発揮する低摩擦被膜を製造するための低摩擦被膜製造方法を提供することである。
請求項2に記載の発明は、前記ガス雰囲気は、さらに炭化水素系物質を含む、請求項1に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記アルコールは、メタノール(CH3OH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度が、6%〜15%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法である。なお、「前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のメタノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のメタノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のエタノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のエタノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体のアルコールおよび前記液体の水に対する当該液体のアルコールの体積%濃度」とは、混合する前の液体のアルコール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体のアルコール単体の体積を示す。同様に、「前記液体の1−プロパノールおよび前記液体の水に対する当該液体の1−プロパノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体の1−プロパノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体の1−プロパノール単体の体積を示す。同様に、「前記液体の2−プロパノールおよび前記液体の水に対する当該液体の2−プロパノールの体積%濃度」とは、混合する前の液体の2−プロパノール単体の体積と、混合する前の液体の水単体の体積と、を合計した値に対する混合する前の液体の2−プロパノール単体の体積を示す。
請求項7に記載の発明は、前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度が、6%〜30%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項9に記載の発明は、前記アルコールは、1−プロパノール(CH3CH2CH2OH)を含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項11は、前記水酸基含有化合物は、前記アルコールを100%の割合で含む溶液から発生する気体のアルコールである、請求項3,4,6,9,10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項13に記載の発明は、前記ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項14に記載の発明は、前記非晶質炭素系膜が、短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項16に記載の発明は、前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、高バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含み、前記非晶質炭素系膜には、水素および酸素の少なくとも一方が添加されている、請求項15に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項18に記載の発明は、前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給工程と、前記摺動工程の開始後、前記水酸基含有化合物の前記空間への供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法である。
請求項23に記載の発明は、前記炭化水素系物質が、エチレンを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法である。
図1は、本発明の一実施形態に係る低摩擦被膜製造方法により得られる摺動システム1の要部を拡大して示す断面図である。摺動システム1は、摺動部材2と、摺動部材2にとって相手材である被摺動部材3を含む。摺動部材2は、被摺動部材3に対し、相対摺動可能に設けられている。摺動部材2および被摺動部材3は、被摺動部材3が静止している状態で摺動部材2だけを摺動(移動)させるものであってもよいし、摺動部材2が静止している状態で被摺動部材3だけを摺動(移動)させるものであってもよいし、摺動部材2および被摺動部材3の双方を移動させることにより、被摺動部材3に対し摺動部材2を相対摺動させるものであってもよい。
被摺動部材3は、表面(図1の上面)を有する第2の基材8と、第2の基材8の表面の少なくとも一部を被覆するPLC(Polymer−Like Carbon)膜(非晶質炭素系膜)9とを含む。第2の基材8は、たとえば、工具鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、クロムモリブデン鋼、高炭素クロム軸受鋼などの鋼材を用いて形成されている。
摺動システム1として、軸受、シール、フライホイール、はさみ、プランジャポンプ、人工関節等を例示できる。また、軸受として、玉軸受、円錐ころ軸受をはじめとするころ軸受、セパレータ付軸受、すべり軸受等を例示できる。
摺動システム1としてセパレータ付軸受を採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がセパレータを含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO2等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のボールの外表面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてシールを採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7が軸の外周面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO2等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製のシールのシール面を含んでいてもよい。
摺動システム1としてプランジャポンプを採用する場合には、PLC膜9が配置される被摺動面7がピストン(プランジャ)の外表面を含み、摺動面6が、酸化物セラミックス(ZrO2等)や金属(SUJ2、パラジウム等)製の固定斜板を含んでいてもよい。
以上の摺動システム1については、摺動面6を一方の部材にかつ被摺動面7を他方の部材に設けたが、摺動面6を他方の部材にかつ被摺動面7を一方の部材に設けてもよい。
図2では、駆動機構14や荷重付与機構15を設けるとして説明したが、摺動部材2と被摺動部材3との間で荷重が付与されている状態で、摺動部材2と被摺動部材3とが摺動するように構成されていれば、駆動機構14や荷重付与機構15を設ける必要はない。
水素ガス配管20の開度が大きく設定された状態で水素ガスバルブ24が開かれると、水素ガス配管20からの大流量の水素が処理ガス導入配管19に供給される。このとき、アルコールバルブ28および/または水バルブ30が開かれることにより、小流量のアルコールガスと外部から供給されるキャリアガスである水素ガス(H2)および/または小流量の水蒸気と外部から供給されるキャリアガスである水素ガス(H2)が、処理ガス導入配管19内へと供給され、処理ガス導入配管19を流れる過程で大流量の水素ガス(H2)と十分に混合(攪拌)される。この混合によって、特殊水素ガス(水素ならびにアルコール(水酸基含有化合物)および/または水(水酸基含有化合物)を含むガス)が生成される。生成された特殊水素ガス中でアルコールおよび/または水は気化されている。生成された特殊水素ガスは、処理ガス導入配管19の先端に形成された導入口32からチャンバ12の内部空間10に導入される。これにより、内部空間10の雰囲気が特殊水素ガス雰囲気となる。なお、特殊水素ガス雰囲気は酸素を含んでいない。
膜製造装置11を用いて低摩擦被膜5を製造(形成)するときには、チャンバ12の内部空間10に、摺動部材2および被摺動部材3が搬入される。搬入された被摺動部材3は、被摺動面7が上に向けられた状態で保持台13上に載置され、保持台13に保持される。また、搬入された摺動部材2は、摺動面6が下に向けられた状態で、被摺動部材3上に載置される。なお、搬入された時点で、摺動部材2の摺動面6に低摩擦被膜5は形成されていない。すなわち、摺動面6は、酸化物セラミックスまたは金属によって形成されている。
チャンバ12の内部空間10が処理ガスの雰囲気によって満たされた後(内部空間10が処理ガスの雰囲気とされている状態で)、当該処理ガスの供給を継続しながら、制御装置16は、駆動機構14を制御して、図3Aに示すように、被摺動面7(被摺動部材3)に対し摺動面6(摺動部材2)からの押付け荷重を付与しながら、被摺動面7に対する摺動面6の摺動(摺動工程)を開始する。押付け荷重の付与に伴い、摺動時において摺動面6と被摺動面7との間に生じるヘルツ接触応力は、1.0GPa以上である。より好ましくは、当該ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである。
被摺動面7に対する摺動面6の摺動に伴い、摺動面6(ZrO2等)の触媒作用によって、被摺動面7に対する摺動面6の摺動の結果、摺動面6に低摩擦被膜5が形成される。低摩擦被膜5は、10−4オーダ(0.001未満)の著しく低い摩擦係数を示す。摺動部材2の摺動面6に低摩擦被膜5を設けることにより、摩擦係数が10−4オーダを示すFriction−Fade−Out状態(以下、「FFO」という。)を発現させることができる。換言すると、被摺動面7に対する摺動面6の摺動の結果、摩擦係数が摩擦とともに漸減し、FFOを発現させることができる。
このような低摩擦被膜5の形成(FFOの発現)のメカニズムについて、本願発明者らは次のように考えている。
摺動面6の活性水素が、PLC膜9のC=C結合を有するC2Hx〜C4Hxフラグメントと接触すると、C=C結合部のπ結合を接触還元して、摺動界面に向く2個のC−H結合(シス付加反応)を生じる。平面性が強いC=C結合がC−C結合(σ結合)になるために、フラグメントの変形自由度が増し、その結果、摩擦界面に揮発性ガス層が形成される。
摺動面6の摺動開始から予め定める期間が経過すると、制御装置16は、開いているバルブ(水素ガスバルブ24、アルコールバルブ28、水バルブ30、窒素ガスバルブ34等)を閉じて、処理ガス導入配管19からの処理ガスの導入を停止させる。その後、制御装置16は、摺動部材2および被摺動部材3を、チャンバ12の内部空間10から搬出させる。
図4は、第1の摩擦試験機41の構成を示す模式的な断面図である。図5Aは、第1〜第13の摩擦試験の計測対象のプレート試験片42の表面を拡大して示す断面図である。図5Bは、プレート試験片42の表面に形成された二層膜43の物性および膜作製手法を示す図である。
第1〜第4の摩擦試験では、第1のライン52のガス流量を8(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとした。第1のライン52には水素ガスを流した。第2のライン53にはキャリアガスとして水素ガスを流した。
<第1の摩擦試験>
アルコール/水容器60に20ccの水および1ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は4.8%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第2の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および1ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は9.1%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第3の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および2ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は16.7%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第4の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および10ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は50%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
第2の摩擦試験では、図7に示すように、荷重が約50Nに達した時点で、摩擦係数が急減し、FFOが発現した。FFO発現時の摩擦係数は、5×10−4〜7×10−4であった。その後、荷重を上昇させても、FFOは発現し続けた。荷重が58.8Nに達した後、高荷重のまま一定に保ったが、FFOが安定的に発現し続けた。FFOの発現が70分間継続した後、第2の摩擦試験を終了した。
第4の摩擦試験では、図9に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFOは発現しなかった。
第1〜第4の摩擦試験から、アルコールとしてメタノールを用いる場合、アルコールおよび水を含む特殊水素ガスに含まれる、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度が6〜15%の水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含むとき、FFOが発現し易い、とくに、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度が約9%のときFFOが発現し易いことが判る。
第5〜第9の摩擦試験では、第1のライン52のガス流量を8(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとした。
<第5の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および1ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は9.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第6の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および2ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は16.7%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第7の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第8の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および5ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は33.3%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第9の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および10ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスには、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は50%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
第5の摩擦試験では、図10に示すように、荷重が約27Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。FFO発現時の摩擦係数は、約5×10−4である。その後、荷重の増加に伴って摩擦係数は緩やかに下降したが、摩擦係数が10−5オーダに入った途端に、摩擦係数が10−4オーダと10−5オーダとの間で急激な増減を繰り返した。荷重が約42Nに達した時点で、摩擦係数が約8×10−2まで上昇したので、第5の摩擦試験を終了した。
この摩擦係数の上昇は、摺動面6(図1等参照)に形成されていた低摩擦被膜(図1の低摩擦被膜5と同等)は摺動に伴って剥離するものと考えられるが、エタノールおよび水が摺動面6(摺動界面)で枯渇したことにより、摺動面6で低摩擦被膜5の再生成が行われなかったものと推察できる。エタノールおよび水の供給量を増加させることにより、摺動面6における低摩擦被膜5の再生成が促進され、それゆえに、摩擦係数が10−5オーダまで再度下降したものと推察される。
第8の摩擦試験では、図13に示すように、いずれの負荷荷重の条件においても、摩擦係数は0.01以上であり、FFOは発現しなかった。
第9の摩擦試験では、図14に示すように、荷重が約45Nに達した時点で、摩擦係数が急減し、FFOが発現した。FFO発現時には、摩擦係数は約1×10−4と低かったが、荷重の増加に伴って摩擦係数は上昇し、10−3オーダまで上昇した。荷重が58.8Nに達した後、その高荷重で一定に保つと、摩擦係数が下降し、FFOが再び発現する。その後、摩擦係数が急激に上昇したので、第9の摩擦試験を終了した。
次に、第10〜第13の摩擦試験について説明する。チャンバ45内の温度を20℃±5℃に設定した。第10〜第13の摩擦試験では、特殊水素ガスに含まれるアルコールの種類を、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールのそれぞれとした。
第10〜第13の摩擦試験では、試験開始から摩擦回数500回までの期間(なじみ工程)は、第1のライン52のガス流量を6(リットル/分)とし、第2のライン53のガス流量を200sccmとし、摩擦回数500回経過後から試験終了までの期間は、第1のライン52のガス流量を6(リットル/分)のまま、第2のライン53のガス流量を100sccmとした。このとき、摩擦回数500回までとそれ以降との間で、特殊水素ガスに含まれる、水溶液から発生する気体のアルコールと気体の水蒸気の基となる、水溶液の液体のアルコールおよび液体の水に対する液体のアルコールの体積%濃度は変化しない。
<第10の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのメタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体のメタノールおよび液体の水に対する液体のメタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第11の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccのエタノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体のエタノールおよび液体の水に対する液体のエタノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第12の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccの1−プロパノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体の1−プロパノールおよび液体の水に対する液体の1−プロパノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体の1−プロパノールと気体の水蒸気とが含まれる。
<第13の摩擦試験>
アルコール/水容器60に10ccの水および3ccの2−プロパノールを入れた。すなわち、チャンバ45に供給される特殊水素ガスにおいて、当該特殊水素ガスは、液体の2−プロパノールおよび液体の水に対する液体の2−プロパノールの体積%濃度は23.1%である水溶液から発生する気体の2−プロパノールと気体の水蒸気とが含まれる。
第10の摩擦試験では、図15に示すように、荷重が19.6Nの条件で、FFOが一旦発現したが、このFFOは直ちに消失した。その後、荷重を増加させたところ、荷重が33.3Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が56.8Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第10の摩擦試験を終了した。
第12の摩擦試験では、図17に示すように、荷重が35.3Nに達した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を増加させても、FFOの発現が維持された。荷重が63.7Nに達した時点で、摩擦係数の急激な上昇がみられたので、第12の摩擦試験を終了した。FFOの発現時間は15分間であった。
また、アルコールは、炭化水素の分子量(すなわち、炭素数)の増加に従って(メタノール<エタノール<1−プロパノール=2−プロパノール)、FFOが安定して発現することが判る。
前述の第1〜第13の摩擦試験では、第2、第5〜第7および第9〜第13の摩擦試験において、FFOの発現が認められた。このFFOの発現状況を、図3Bを参照しながら説明する。
また、アルコールとして1−プロパノールを用いた場合には、図21Aに示すように、ピン試験片44の外表面にブリスタ(気泡)の発生が認められた。このことから、ピン試験片44の外表面の摺動界面付近に揮発性物質(揮発性ガス)が存在していることが推察できる。
図23は、第2の摩擦試験機141の構成を示す模式的な断面図である。第2の摩擦試験機141が第1の摩擦試験機41と共通する部分には、図4の場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。すなわち、第2の摩擦試験機141のチャンバ45の構成、およびピン試験片44等の構成は、特段説明がない限り第1の摩擦試験機41と同等である。第2の摩擦試験機141が第1の摩擦試験機41と相違する点は、主としてその給気系にある。
第4のライン102には、第4のライン102を開閉するための第4のバルブ108と、第4のライン102における水素ガスの流量を調整するための第4の流量調整バルブ109と、第4のライン102における水素ガスの流量を検出するための第4の流量計110と、液体のアルコール(エタノール)および液体の水(蒸留水)が溜められた、気体のアルコールと気体の水蒸気の存在するアルコール/水容器111とが介装されている。アルコール/水容器111の温度は20℃±5℃に設定されている。アルコール/水容器111において、アルコールと水とは液体のアルコールと液体の水の水溶液とこの水溶液から気化した気体のアルコールと気体の水蒸気とが存在する。アルコール/水容器111には、液体のエタノールと液体の水が3:10の体積比で混合されている。第4のライン102を流れる処理ガスに含まれる「エタノール+水」は混合する前の液体のエタノール単体の体積=3と、混合する前の液体の水単体の体積=10と、の体積比で混合されている水溶液から気化した気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む。このような処理ガスを、以降、「エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)」と呼ぶ場合がある。
計測対象のプレート試験片42は、図5Aを用いて説明したように二層構造の硬質炭素系膜からなる二層膜43を表層側に含む。第15〜第20の摩擦試験では、二層膜43のうち下層を構成するSi−DLC膜は、Si−DLC膜62(図5A参照)と同等の構成であるが、二層膜43のうち上層(Surface layer)を構成するPLC(Polymer−Like−Carbon)膜163は、その作製手法がPLC膜63(図5A参照)と一部異なっている。
第14〜第20の摩擦試験では、PLC膜として、第1のPLC膜163A、第2のPLC膜163Bおよび第3のPLC膜163Cという3種の膜を用意した。第1のPLC膜163Aには添加物はないが(単に「PLC」)、第2のPLC膜163Bは水素が添加されており(H−PLC)、また、第3のPLC膜163Cは酸素が添加されている(O−PLC)。これらの膜の作成手法について、図26に示す通りである。
<第14の摩擦試験>
図25は、第14の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
第14の摩擦試験では、図26に示すように、荷重を9.8Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。荷重が63.7Nに達してから暫く経過した時点でアルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、荷重を63.7Nを保っても、FFOの発現が維持された。FFO発現中の摩擦係数は、1×10−4以下であった。FFOの発現時間は4時間以上であった。FFO環境(FFO environment)の前半(前半のおよそ2時間)では、摩擦係数の瞬間的な上昇が繰り返し見られたものの、さらに水分濃度を低く制御するとFFO環境(FFO environment)の後半(後半のおよそ2時間)ではFFOの発現が安定して維持された。
<第15および第16の摩擦試験>
図27Aおよび図27Bは、第15および第16の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
第15の摩擦試験では、図28に示すように、試験開始から荷重を19.6Nとし、荷重大きさを19.6Nのまま保った。水を含有する水素ガス供給を停止すると、試験の開始から45分経過した時点で、摩擦係数が急減しFFOが発現した。FFOの発現開始から、しばらくの間は摩擦係数が増減を繰り返していたが、その後、FFOの発現状態が安定するようになった。FFO発現中の摩擦係数は、6×10−4であった。FFOの発現時間は約1時間であった。
<第17の摩擦試験>
図30Aおよび図30Bは、第17の摩擦試験の試験条件を説明するための図である。
第17の摩擦試験では、図31に示すように、試験開始から40分までは荷重を19.6Nに維持していたが、その後荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。荷重が約50Nに達した前後で摩擦係数が急減しFFOが発現した。その後、摩擦係数の値の大きな上下動が見られたが、荷重が63.7Nに達した後は、FFOの発現が安定して維持された。FFO発現中の摩擦係数は、概ね1×10−4以下であった。FFOの発現時間は約1時間であった。
<第18の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第3のPLC膜163C(O−PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)および水を含有する水素ガスを小流量(それぞれ40sccmおよび10sccm)で供給した。
<第19の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第1のPLC膜163A(PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)を中流量(180sccm)で供給し、エタノール体積濃度100%液から発生するエタノールを含有する水素ガス(100%@)を微小流量(2sccm)で供給した。
<第20の摩擦試験>
プレート試験片42の上層(Surface layer)として、第2のPLC膜163B(H−PLC)が採用されている。なじみ環境(Run−in environment)およびFFO環境(FFO environment)の別を問わず、チャンバ45内にメインフローとして水素ガスを大流量(4.3slm)で供給し、エタノール体積濃度23%水溶液から発生するエタノールを含有する水素ガス(23%@)を中流量(180sccm)で供給した。
第18の摩擦試験では、図33に示すように、荷重を19.6Nから9.8N刻みに段階的に上昇させ、荷重が63.7Nに達した後は63.7Nのまま保った。アルコール濃度および水分濃度を低く制御すると、荷重を19.6Nから29.4Nに上げるとFFOが発現、荷重を63.7Nに上げてもFFOを維持した。荷重が63.7NでのFFOの初期の摩擦係数は、約5×10−4であったが、時間の経過に従って摩擦係数は低下し、1×10−4 以下程度まで下がった。その後、摩擦係数は緩やかに増大した。FFOの発現時間は2時間以上であった。
以上によりこの実施形態によれば、イオン化蒸着法によりバイアス電圧を印加しながら形成された被膜であるPLC膜9を含む被摺動面7に対し、アルコールおよび/または水を微量に含む水素ガスおよび/または窒素ガスの雰囲気環境(さらに言えば、酸素を含まない環境)下で、金属(SUJ2、パラジウム等)または酸化物セラミックス(ZrO2)を用いて形成された摺動面6を、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で摺動させる。摺動面6を構成する金属(SUJ2、パラジウム等)または酸化物セラミックス(ZrO2)は、水素分子を解離吸着して活性水素を発生できる触媒性を有している。摺動面6でPLC膜9を摺動する結果、摺動面6の触媒作用により、摺動界面に活性水素が存在するようになる。内部空間10の雰囲気に含まれるアルコールが、摺動面6の活性水素の酸触媒作用により水素化分解される。これにより、FFOを発現させることができる。また、水が存在しているので、この水により、摺動面6の触媒作用を安定化を図ることができる。
また、潤滑剤を別途用いることなく、摺動面6の摩擦係数の低減を図ることができる。
さらに、摺動面6の摩擦係数を著しく低減できる結果、潤滑剤を別途用いることなく、摺動面6と被摺動面7との間に発生する摩擦力の低減を図ることができる。これにより、摺動システム1の摺動に伴う摩擦損失を大幅に低減することができ(摩擦トルクを大幅に低減することができ)る。したがって、摺動システム1の小型化および軽量化を図ることができると共に、摺動システム1の信頼性の向上を図ることができる。
たとえばまた、PLC膜9が短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含むが、それ以外の炭化水素分子を主成分として含むものであってもよい。
また、PLC膜9は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、低バイアス電圧または高バイアスを印加しながらイオン化蒸着法により形成されるとして説明したが、PLC膜9はそれ以外の手法により形成される被膜であってもよい。
アルコールおよび水のチャンバ12内への供給を停止することにより、チャンバ12内の雰囲気から、前述のような触媒毒となり得る水分(水)を除くことが可能である。その半面、アルコールおよび水の供給停止により、エタノールおよび水が摺動面6(摺動界面)で枯渇するおそれがある。
また、処理ガス導入配管19の導入口32からチャンバ12の内部空間10に供給される処理ガスは、窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方をメインフローとして含んでいる。また、この処理ガスは、アルコールおよび水の少なくとも一方を微量に含んでいる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
Claims (23)
- 低摩擦被膜を製造する方法であって、
水素雰囲気環境下で水素分子を解離吸着し、活性水素(H + )を発生する触媒性を有する金属またはセラミックスを用いて形成された摺動面と、炭化水素分子を主成分として含む非晶質炭素系膜を含む被摺動面とが配置される空間を、水酸基含有化合物と水素とを含むガス雰囲気に置換する置換工程と、
前記空間が、水酸基含有化合物と水素とを含む前記ガス雰囲気とされている状態で、前記摺動面を前記被摺動面に対し、1.0GPa以上のヘルツ接触応力で相対摺動させる摺動工程とを含み、
前記摺動工程によって、前記摺動面に前記低摩擦被膜を形成する、低摩擦被膜製造方法。 - 前記ガス雰囲気は、さらに炭化水素系物質を含む、請求項1に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物および前記炭化水素系物質は、アルコールを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記アルコールは、メタノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
前記液体のメタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のメタノールの体積%濃度が、6%〜15%である水溶液から発生する気体のメタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記アルコールは、エタノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対する当該液体のエタノールの体積%濃度が、6%〜30%である水溶液から発生する気体のエタノールと気体の水蒸気とを含む、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記液体のエタノールおよび前記液体の水に対するエタノールの体積%濃度が、15%〜25%である水溶液から発生する気体のエタノールと水蒸気とを含む、請求項7に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記アルコールは、1−プロパノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記アルコールは、2−プロパノールを含む、請求項3に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物は、前記アルコールを100%の割合で含む液から発生する気体のアルコールである、請求項3,4,6,9,10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物は、水を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記ヘルツ接触応力は、1.3GPa〜2.4GPaである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記非晶質炭素系膜が、短鎖ポリアセチレン系分子を主成分として含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記非晶質炭素系膜は、炭化水素系ガスの雰囲気環境下で、高バイアス電圧を印加しながらイオン化蒸着法により形成された被膜を含み、
前記非晶質炭素系膜には、水素および酸素の少なくとも一方が添加されている、請求項15に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記摺動部材は、ZrO2を用いて形成されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給工程と、
前記摺動工程の開始後、前記水酸基含有化合物の前記空間への供給を停止する供給停止工程とを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記摺動工程に並行して、前記空間に前記水酸基含有化合物を供給する供給状態と、当該空間に前記水酸基含有化合物の供給を停止する供給停止状態とを交互に繰り返す工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
前記メタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、
前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、
前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のメタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜15%である、請求項4に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記水酸基含有化合物は、水をさらに含み、
前記エタノールは気体状態で第1のキャリアガスによって流動し、
前記水は気体状態で第2のキャリアガスによって流動し、
前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、6%〜30%である、請求項6に記載の低摩擦被膜製造方法。 - 前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量と、前記気体の水を含んだ第2のキャリアガスの流量と、の合計に対する前記気体のエタノールを含んだ第1のキャリアガスの流量の比が、15%〜25%である、請求項21に記載の低摩擦被膜製造方法。
- 前記炭化水素系物質は、エチレンを含む、請求項2に記載の低摩擦被膜製造方法。
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