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JP6741555B2 - ケラチノサイト活性化剤 - Google Patents
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JP6741555B2 - ケラチノサイト活性化剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ケラチノサイト活性化剤に関する。
ナノテクノロジーの研究は、最近、局所薬物送達、創傷治癒と皮膚再生の強化、メラノーマへの標的薬物送達のためのナノキャリア、および化粧品におけるナノ粒子の適用などの、様々な皮膚用途のためのその有効性をテストするために拡大している(例えば、非特許文献1)。
R. Goyal, L. K. Macri, H. M. Kaplan, and J. Kohn. J. ControlRelease, 15, 30215 (2015)
ナノファブリックは、ナノ粒子を用いて改変された繊維であるが、ナノファブリックは、肌に密着して着用されるので、ナノ粒子のケラチノサイトへの影響を調べることは特に興味深い。
本発明の目的は、ケラチノサイトを活性化する素材を提供することにある。
本発明は、遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物からなるケラチノサイト活性化剤を提供する。少なくとも含まれる2種類のナノ粒子は、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子であることが好ましい。
銀ナノ粒子への長期曝露は、ヒトの初代ケラチノサイトにおいてカスパーゼ3/7およびDNA損傷を活性化し、おそらく遺伝毒性および細胞毒性の過程を活性化していることが示されている。それ故に、ケラチノサイトを曝露するナノ粒子のタイプを慎重に検討することが重要である。ケラチノサイトは、主に感覚ニューロンと皮膚ケラチノサイトに発現する受容体のファミリーである一過性受容体電位(TRP)チャネルを発現している。ケラチノサイトに発現するTRPチャネルは、温度、機械的ストレス、浸透圧ストレス、および化学的刺激などの各種の環境因子を感知する能力を有する。このように、表皮ケラチノサイトは、皮膚の感覚系の重要な部分をなすと考えられる。
いくつかの最近の研究により、TRPV1とTRPV4受容体は、痛みと炎症に対する身体の応答において重要な役割を果たすことが示されている。さらなる研究により、TRPV4受容体は、インビボにおいて概日体温と正常な熱応答性とも関連付けられている。本発明により、TRPVチャネルの発現、サイトカインの分泌、および神経成長因子(NGF)に関して遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物(特に、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を少なくとも含有する組成物)のケラチノサイトの調節への影響が確かめられた。以下に詳述するとおり、TRPV4、サイトカイン、およびNGFの変化により、炎症、痛み、および概日リズムが調節されることが示唆されるため、上記組成物への曝露がヒトに有益であることが明らかとなった。
このように、上記組成物は、ケラチノサイトを活性化する素材として大変有効である。
本発明は、遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物からなるIL−1β分泌促進剤、TNF−α分泌促進、PGE2分泌促進剤又はNGF分泌促進剤を提供する。
本発明によれば、ケラチノサイトを活性化する素材が提供される。
未処理のケラチノサイト(ker)とDPV576処理したケラチノサイトの、特異的ELISAでアッセイして得られた上清中のIL-1β、TNF-αおよびPGE2のレベルを示す図である。 (A)はTRPV1、TRPV3とTRPV4の発現を示す図であり、(B)は、DPV576添加後におけるケラチノサイトのカルシウムフラックスの変化を示す図である。 未処理のケラチノサイト(ker)、DPV576処理したケラチノサイト、4-αPDD処理したケラチノサイトの、特異的ELISAでアッセイした上清中のIL-1β、TNF-αおよびPGE2のレベルを示す図である。 未処理のケラチノサイト(ker)とDPV576処理したケラチノサイトの上清中のNGFのレベルを示す図である。
ケラチノサイト活性化剤、IL−1β分泌促進剤、TNF−α分泌促進剤、PGE2分泌促進剤又はNGF分泌促進剤を構成する組成物は、遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物である。この組成物としては、遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を2種のみ含有するものであってもよい。また、この2種のナノ粒子は、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子であることが好ましい。
この組成物は、遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する他、媒体として水、アルコール、有機溶媒を含有していてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で分散安定剤などを含有していてもよい。媒体としては水が好ましい。
少なくとも2種含まれるナノ粒子の平均粒径は、10〜200nmが好適である。ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を用いる態様においては、ダイヤモンドナノ粒子の平均粒径は好ましくは100〜200nm、プラチナナノ粒子の平均粒径は好ましくは20〜200nm、更には100〜200nmである。
上記組成物がダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を含む場合、プラチナナノ粒子の含有量は、ダイヤモンドナノ粒子の含有量の1/1000〜1倍が好適である。
上記組成物が水等の媒体を含む場合、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子を水に添加攪拌して組成物を得ることができるが、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子の少なくとも一方を、ナノコロイドとして得て、それらを混合してもよい。ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子は以下に述べる方法により製造可能である。
ダイヤモンドナノ粒子(ナノサイズダイヤモンド)としては、爆射法によって合成された粗ダイヤモンド(以下、ブレンドダイヤモンド又はBDとも云う)、及びBDを精製することによって得られるUDD(Ultra Dispersed Diamond)を使用することができる。爆射法は、Science,Vol.133,No.3467(1961),pp1821−1822、特開平1−234311号、特開平2−141414号、Bull.Soc.Chem.Fr.Vol.134(1997),pp.875−890、Diamond and Related materials Vol.9(2000),pp861−865、Chemical Physics Letters,222(1994),pp.343−346、Carbon,Vol.33, No.12(1995),pp.1663−1671、Physics ofthe Solid State,Vol.42,No.8(2000),pp.1575−1578、K.Xu.Z. Jin,F.Wei and T.Jiang,Energetic Materials,1,19(1993)、特開昭63−303806号、特開昭56−26711報、英国特許第1154633号、特開平3−271109号、特表平6−505694号(WO93/13016号)、炭素,第22巻,No.2,189〜191頁(1984)、Van Thiei.M.&Rec.,F.H.,J.Appl.Phys.62,pp.1761〜1767(1987)、特表平7−505831号(WO94/18123号)及び米国特許第5861349号等に記載の方法を用いることができる。
爆射法で製造された粗ダイヤモンド(BlendedDiamond:BD)は、数10〜数100nmの径を有するダイヤモンド及びグラフアイトからなり、1.7〜7nm径の極く小さなナノクラスターサイズのダイヤモンド単位(ナノダイヤモンド)が強固に凝集した凝集体である。つまり最低4個、通常十数個〜数百個の、場合によっては数千個のナノダイヤモンドの強固な凝集体である。BDの粒子は、ダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有していると考えられ、グラファイト系炭素の表面には−COOH、−OH等の親水性官能基が多数存在し、水、アルコール、エチレングリコール等の−OH基を有する溶媒との親和性が極めて良好であり、これらの溶媒にすみやかに分散する。中でも水に対する分散性が最も良い。BDは極少量の微小(1.5nm以下)アモルファスダイヤモンド、グラフアイト及び非グラファイト炭素超微粒子を含有する。
ナノサイズダイヤモンド粒子の比重は2.50〜3.45g/cm3であるのが好ましく、2.63〜3.38g/cm3であるのがさらに好ましく、2.75〜325 g/cm3であるのが最も好ましい。ナノサイズダイヤモンドの比重は、グラファイトとダイヤモンドとの比率によって決まり、ダイヤモンドの比重を3.50g/cm3、グラファイトの比重を2.25g/cm3として、ダイヤモンドとグラファイトの割合を計算すると、比重2.63g/cm3はダイヤモンド30容積%及びグラファイト70容積%の組成に相当し、比重3.38g/cm3はダイヤモンド90容積%及びグラファイト10容積%の組成に相当する。同様に比重が2.75 g/cm3はダイヤモンド40容積%及びグラファイト60容積%の、比重3.25g/cm3はダイヤモンド80容積%及びグラファイト20容積%の組成に相当する。なお比重2.87g/cm3はダイヤモンド50容積%及びグラファイト50容積%の組成に相当する。比重が2.63g/cm3未満であると、グラファイトに起因する着色が問題となることがあり、比重が3.38g/cm3を越えると、遠赤外線放射効果は飽和するためコスト的に不利である。
BDの不純物は、(i)水溶性電解質(ionized)、(ii)ダイヤモンド表面に化学結合した加水分解性の基及びイオン性の物質(官能性表面基の塩等)、(iii)水不溶性の物質(表面に付着した不純物、不溶性塩、不溶性酸化物)、(iv)揮発性物質、(v)ダイヤモンド結晶格子中に包含されるか又はカプセル化された物質に分けることがでる。
(i)及び(ii)は、UDDの精製過程で形成されたものである。(i)の水溶性電解質は水洗により除去できるが、より効果的に除去するにはイオン交換樹脂で処理するのが好ましい。(iii)の水不溶性の不純物は、金属、金属酸化物、金属カーバイド、金属塩(硫酸塩、シリケート、カーボネート)のような分離したミクロ粒子、分離できない表面塩、表面金属酸化物等からなる。これらを除去するには、酸によって可溶性の形に変換するのが好ましい。(iv)の揮発性不純物は、通常0.01Pa程度の真空中で、250〜400℃で熱処理することにより除去することができる。
ナノサイズダイヤモンドは、必ずしも不純物を完全に除去する必要はないが、(i)〜(iii)の不純物を40〜95%除去するのが好ましい。グラファイトとダイヤモンドとの比率は、前記爆射法の条件を変更すること、及び/又はBDの精製条件を変更することによって調節することができる。
ナノサイズダイヤモンドの分散物は、爆薬の爆射によって得られたダイヤモンド−非ダイヤモンド混合物(初期BD)を酸化処理した後、揮発性又はその分解反応生成物が揮発性となる塩基性材料を加えて中和し、ダイヤモンドを含有する相を分離することによって製造する。
酸化処理工程は、硝酸による酸化性分解処理と、その後に行う硝酸による酸化性エッチング処理とからなる。酸化性エッチング処理は1次酸化性エッチング処理と2次酸化性エッチング処理とからなり、1次酸化性エッチング処理は酸化性分解処理の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれるのが好ましく、2次酸化性エッチング処理は1次酸化性エッチング処理の圧力及び温度よりも高い圧力及び温度で行なわれるのが好ましい。酸化処理工程は、150℃〜250℃及び14〜25気圧で、少なくとも10〜30分間ずつ複数回行うのが好ましい。
酸化性エッチング処理の後に、硝酸を分解・除去させるための中和処理を行う。塩基性材料により中和した分散液は、水を加えて傾斜することによりダイヤモンドを含有する相と含有しない相とに分離する。
ダイヤモンドを含有する相を分離した後、さらに分散液に硝酸を加え洗浄処理し、生成ダイヤモンド微粒子を含む下相分散液を上相排液から分離する処理を行う。この分離する処理は、硝酸洗浄処理後の分散液を静置することによって行う。
生成ダイヤモンド微粒子を含む下相分散液は、好ましくはpHを4〜10、さらに好ましくは5〜8、最も好ましくは6〜7.5に調節し、ダイヤモンド微粒子濃度を好ましくは0.05〜16質量%、さらに好ましくは0.1〜12質量%、最も好ましくは1%〜10質量%に調整する。
このようにして得られるUDDは、72〜89.5%の炭素、0.8〜1.5%の水素、1.5〜2.5%の窒素、10.5〜25%の酸素の元素組成を有する。全炭素のうち90〜97%がダイヤモンド結晶であり、10〜3%が非ダイヤモンド炭素である。平均粒径(一次粒子)は2〜50 nmである。Cu、Kα線を線源とするX線回析スペクトル(XD)において、ブラッグ角(2θ±0.2°)が43.9°に最も強いピークを有し、73.5°及び95°に特徴的な強いピークを有し、17°に強く偏在したハローがあり、26.5°にピークが実質的にない。また比表面積が1.5×105m2/kg以上で、実質的に全ての表面炭素原子がヘテロ原子と結合しており、分散液は0.5 m3/kg以上の全吸収空間を有するダイヤモンド粒子を、0.05〜16質量部含有する。UDD粒子の粒径は、電気泳動光散乱光度計モデルELS−8000を用いた動的光散乱測定により得られる。
プラチナナノ粒子は、例えば、以下に記載の方法によりプラチナナノコロイドとして得ることができる。この製造方法の各種実施態様はWO2005/023468を参照できる。
すなわち、プラチナを含有する貴金属含有化合物を溶解した溶液中に、還元剤としての式(1)または(2)で表される化合物Aとしてペプチド又はグルコサミン化合物を添加する工程と、前記化合物Aの還元性を補助するアルカリを添加する工程と、貴金属含有化合物中の貴金属イオンの還元反応により貴金属微粒子(プラチナ微粒子)を形成する工程とを有する。
NR−CR−CO−R (1)
NR−CR−CR−CO−R (2)
ここで、Rは、水素、水酸基、アルコキシ基、アミノ基あるいはペプチド結合で結合する原子団を示し、RとRはそれぞれ水素、アルキル基あるいは置換されたアルキル基を示し、RとRはそれぞれ水素、アルキル基、置換されたアルキル基あるいはアセチル基を示し、R、Rはそれぞれ水素、アルキル基あるいは置換されたアルキル基を示す。
上記製造方法は、好適には、溶液が水溶液である。さらに好適には、アルカリを添加する工程において、水溶液のpHが10以上となるように添加する。さらに好適には、貴金属微粒子を形成する工程において、貴金属微粒子が水溶液中に分散された貴金属コロイドとする。またさらに好適には、貴金属微粒子を形成し、貴金属コロイドとする工程の後、水溶液を遠心分離して沈降物と上澄みに分離する工程と、前記上澄みを除去して前記沈降物を取り出す工程とをさらに有する。
上記製造方法の、他の好適な態様においては、溶液が有機溶媒の溶液である。さらに好適には、貴金属微粒子を形成する工程の後、溶液を静置して沈降物と上澄みに分離する工程と、上澄みを除去して沈降物を取り出す工程とをさらに有する。またさらに好適には、上澄みを除去して沈降物を取り出す工程の後、沈降物に対して水を加えて水系貴金属コロイドとする工程をさらに有する。またさらに好適には、貴金属コロイドとする工程の後、限外濾過あるいは超遠心分離などにより、貴金属コロイドを濃縮する工程をさらに有する。またさらに好適には、溶液中に有機溶媒用保護剤を添加する工程をさらに有し、上澄みを除去して前記沈降物を取り出す工程の後、沈降物に対して有機溶媒を加えて有機溶媒系貴金属コロイドとする工程とをさらに有する。
ペプチドである化合物Aとしては、式(1)あるいは(2)において、Rが水酸基であるαあるいはβ−アミノ酸やRがアルコキシ基であるαあるいはβ−アミノ酸エステルなどのαあるいはβ−アミノ酸化合物、アミノ基がアセチル化されたαまたはβ−アミノ酸化合物、Rがペプチド結合で結合する原子団であるN末端がα−アミノ酸であるペプチドが挙げられる。
グルコサミン化合物である化合物Aとしては、式(1)において、Rが水素であり、Rが〔−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)〕であり、R、R、Rが水素であるグルコサミン、あるいはその誘導体であるN−アセチルグルコサミンなどのグルコサミン化合物が挙げられる。
上述した組成物は、ケラチノサイト活性化剤、IL−1β分泌促進剤、TNF−α分泌促進剤、PGE2分泌促進剤又はNGF分泌促進剤として機能するが、人体に適用した場合に、痛みを止める、血管を拡張する、睡眠を促進する、筋肉を弛緩させる等の効果が得られる。
1.今回の実験のまとめ
現在ナノファブリックは、カーペット、衣類、医療用布などの皮膚に直接接触することになる広範な製品で使用されている。今回の実験では、一過性受容体電位バニロイド型(TRPV)チャネルの発現、およびサイトカインと神経成長因子(NGF) の分泌に関して、ヒト初代ケラチノサイトへのナノダイヤモンド(ND)とナノプラチナ(NP)の分散水性混合物(DPV576)の効果を調べた。ケラチノサイトを、インビトロで1:10と1:100に希釈した濃度のDPV576で24時間処理し、その活性化をサイトカインであるTNF-α、IL-1β、およびプロスタグランジン(PGE2)の産生とNGFの産生により測定した。阻害剤の実験は、ケラチノサイトをTRPV4の選択的アンタゴニストHC-067047とインキュベートすることにより行った。ケラチノサイトにおけるTRPV受容体(TRPV1、TRPV3およびTRPV4)の発現、ならびにCa2+電位の変化はフローサイトメトリーによって調べた。ケラチノサイトのDPV576処理により以下のような効果が得られた。(1) サイトカインであるIL-1β、TNF-αおよびPGE2の有意な分泌によって示されるような、ケラチノサイトの刺激。この効果は高濃度(1:10)でのみ確認された。(2) カルシウムフラックスのスパイクを伴うケラチノサイトでのTRPV4の発現において有意な低下があるが、TRPV1とTRPV3の発現に変化がないこと。(3) TRPV4阻害剤の添加がケラチノサイトからのサイトカインの分泌に有意な影響をあたえないような、TRPV4非依存的なサイトカインの分泌の誘導。(4) ケラチノサイトによるNGF分泌の誘導。これらの結果は、DPV576が炎症、痛み、および概日リズムに関連したストレスを軽減することができる複数のシグナル伝達経路を介して、ケラチノサイトを活性化させることを実証している。局部的炎症、痛み、および概日リズムの調節をターゲットとするND/NPでコーティングした生地は、ヒトに恩恵をもたらす。
2.1 液体DPV576
ダイヤモンドナノ粒子(ND)とプラチナナノ粒子(NP)水溶液の混合物(Venex株式会社製、DPV576)を用いた。DPV576は、平均粒径が20nmで、形状がRound(円形)、濃度が225ng/mLのプラチナナノ粒子と、平均粒径が120nmで、形状がOval(楕円形)、濃度が15000ng/mLのダイヤモンドナノ粒子から構成されていた。
2.2 初代ケラチノサイトの培養
ヒト初代ケラチノサイトと各培地はLonzaから入手し、製造業者のプロトコルに従って培養した。ケラチノサイトを24ウェルプレートに播種した。細胞が約80〜90%コンフルエントになったら、細胞を活性化した。ケラチノサイトの活性化に最適な範囲を決定するために、異なる濃度(1:10〜1:100)のDPV576を添加した。24時間後に上清を回収し、TNF-α、IL-1β、PGE2、およびNGFの放出をアッセイした。TNF-αと IL-1β用のELISAキットはBD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から、PGE2用のELISAキットはFisher Scientific社(フィラデルフィア州ピッツバーグ)から、NGF用のELISAキットはBiosensis社 (オーストラリア)から入手した。
2.3 阻害剤実験
阻害剤実験に関して、DPV576添加前に10 μMのTRPV4選択的阻害剤HC-067047とインキュベートしたことを除いては、上記のようにケラチノサイトを培養した。陽性対照として、細胞を選択的TRPV4リガンドである4-α-ホルボール12,13-ジデカノエート(4- αPDD)でも刺激した。
2.4 フローサイトメトリー
初代ケラチノサイトは、上記のように特定の培地(Lonza)で24ウェルプレート上で培養した。DPV576を1:10の濃度で16時間添加した。次いで、細胞を掻き取って回収し、遠心分離し、2%FBS(ウシ胎児血清)を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁し、TRPV1、TRPV3、またはTRPV4の特異的抗体(Bioss社、マサチューセッツ州ウォバーン)と1時間インキュベートした。その後細胞を洗浄し、少なくとも10,000個の細胞をFACSキャリバー(ベクトン・ディッキンソン社、カリフォルニア州サンノゼ)で得た。アイソタイプ抗体を対照として用いた。TRPVの発現の解析は、FlowJo (FlowJo社、オレゴン州アシュランド)で行った。
2.5 細胞内Ca 2+ の検出
TRPチャネルはCa2+チャネルなので、我々はDPV576の存在下および非存在下でのCa2+電位の変化をフローサイトメトリーで測定した。すなわち、細胞(ウェルあたり1×106細胞)をカルシウム含有DMEM中で終夜培養した。Fluo-3AM(10μM; Invitrogen社)をケラチノサイトに37℃で15分間充填した。蛍光の変化をフローサイトメトリーで調べた。
結果
3.1 DPV576はケラチノサイトからのサイトカインの分泌を誘導する
ケラチノサイトを1:10または1:100の濃度のDPV576存在下24時間培養し、サイトカイン分泌を特異的なELISAによって決定した。サイトカインであるTNF-α、IL-1βおよびPGE2を文献30,31からの以前の報告に基づいて選択した。図1に示すように、DPV576はケラチノサイトを刺激し、IL-1βおよびTNF-αの高レベルの分泌を誘導した。 DPV576は有意なレベルのPGE2も誘導した。DPV576のすべてのサイトカインに対する影響は、より高い濃度(1:100と比較して1:10)の方がより明らかであった。
なお、図1は、DPV576はケラチノサイトからのサイトカインの分泌を誘導することを示すものである。ケラチノサイトをDPV576存在下24時間培養した。図1の棒グラフは、未処理のケラチノサイト(ker)とDPV576処理したケラチノサイトの、特異的ELISAでアッセイして得られた上清中のIL-1β、TNF-αおよびPGE2のレベルを示す。データは、各濃度における6つの実験の平均値+/-標準誤差を表す。
図2は、DPV576はケラチノサイトのTRPV4の発現を減少させることを示すものである。ケラチノサイトをDPV576存在下24時間培養した。(A)ヒストグラムは、DPV576に曝露したケラチノサイト(1で示す)、非曝露のケラチノサイト(2で示す)、およびアイソタイプ対照(3で示す)のTRPV1、TRPV3とTRPV4の発現を示す。(B)グラフは、DPV576添加後におけるケラチノサイトのカルシウムフラックスの変化を示す。データは、5回の実験の代表的な結果を表す。
3.2 DPV576のTRPV発現に対する影響
ケラチノサイトにおけるTRPVチャネルは、ストレスのための感覚受容体である。したがって我々は、DPV576がケラチノサイトのTRPV受容体発現に及ぼす影響を、フローサイトメトリーを使用して決定した。図2(A)に示すように、ケラチノサイトをDPV576とインキュベートすると、TRPV1とTRPV3の発現に有意な影響はなかったが、TRPV4の発現は有意に減少した。さらに、カルシウムフラックスに対するDPV576の影響を調べた。TRPV4はCa2+チャネルなので、我々はFluo-3を使用してDPV576処理後のカルシウムフラックスの変化を決定した。図2(B)に示す結果は、DPV576処置により誘導されたカルシウムフラックスの低レベルのスパイクを示している。図2(AとB)をまとめると、DPV576はTRPV4を介してシグナル伝達することが示唆される。
3.3 DPV576により誘導されるサイトカイン分泌はTRPV4非依存的である
次に、DPV576による刺激後にケラチノサイトによって分泌されるサイトカインはTRPV4の活性化に起因するかどうかを決定した。ケラチノサイトを特異的TRPV4阻害剤であるHC-067047に曝露し、サイトカイン分泌を測定した。特異的TRPV4リガンドである4-α-ホルボール12,13-ジデカノエート(4-αPDD)を陽性対照として使用した。図3から明らかなように、TRPV4阻害剤(TRPV4 in)の添加により、ケラチノサイトからのサイトカイン産生は有意な影響を受けなかった。阻害剤存在下では特異的TRPV4リガンドである4-αPDDに応答したケラチノサイトからのサイトカイン分泌が大幅に減少したので、阻害剤はTRPV4を遮断できていた。これらのデータは、DPV576により誘導されるサイトカイン分泌がTRPV4非依存的であることを実証しており、DPV576は複数のシグナル伝達経路を介してケラチノサイトを活性化することを示唆している。さらに、DPV576がPGE2の分泌を誘導した一方で、4-αPDDはしなかったことが判明した。このことからも、このナノ材料がTRPV4を含む複数の受容体を介してシグナル伝達することが確認された。
なお、図3は、DPV576により誘導されるサイトカイン分泌はTRPV4非依存的であることを示すものである。ケラチノサイトをTRPV4阻害剤(TRPV4 in)の存在下または非存在下で、DPV576とともに24時間培養した。TRPV4アゴニスト4-αPDDを陽性対照として使用した。図3の棒グラフは、未処理のケラチノサイト(ker)、DPV576処理したケラチノサイト、4-αPDD処理したケラチノサイトの、特異的ELISAでアッセイした上清中のIL-1β、TNF-αおよびPGE2のレベルを示す。TRPV4阻害剤を含有している場合は、“TRPV4 in”と示している。データは、各濃度における4つの実験の平均値+/-標準誤差を表す。
3.4 DPV576はケラチノサイトからの神経成長因子(NGF)の分泌を刺激する
NGFはケラチノサイトにより分泌され、炎症、痛み、概日リズムの調節において主要な役割を果たす。そこで、DPV576がケラチノサイトによるNGF産生に及ぼす影響を調べた。図4は、DPV576処理したケラチノサイトが、未処理の細胞と比較して有意な(p <0.05)NGFを分泌したことを示している。
なお、図4は、DPV576はケラチノサイトからの神経成長因子の分泌を誘導することを示すものである。ケラチノサイトをDPV576存在下24時間培養した。図4の棒グラフは、未処理のケラチノサイト(ker)とDPV576処理したケラチノサイトの上清中のNGFのレベルを示す。データは、各濃度における5つの実験の平均値+/-標準誤差を表す。
4. 考察
ナノファブリックの分野の研究が急速に成長している。ナノファブリックは現在、カーペット、衣類、医療用布などの皮膚に直接接触することになる広範な製品で、装着性、耐久性、撥水性、および汚れや臭いの除去を向上させるために使用されている。これらの製品における使用の増加により、ナノ粒子がケラチノサイトに及ぼす影響を研究する必要がある。そこで、液体状のND/NPの超分散混合物(DPV576)について、TRPVチャネルの発現、サイトカインの分泌、および神経成長因子(NGF)に関してケラチノサイトを調節する能力を調べることが興味深いと考えた。結果は、DPV576処理によりTRPV4の発現が減少し、IL-1β、TNF-α、PGE2およびNGFの分泌が増加することを示している。さらに、DPV576のサイトカイン分泌に対する刺激効果は、TRPV4選択的アンタゴニストであるHC-067047による影響を受けず、TRPV4がDPV576誘発性のサイトカイン産生に関与していないことが示唆された。
ケラチノサイトは、痛み、ストレス、安定性、および概日リズムなどのさまざまな身体機能への関与について以前に検討されている。最近の研究では、分子時計タンパク質が表皮に存在することが示された。二成分のND/NPの超分散混合物でコーティングした生地(DPV576-C)および液体(DPV576)が、インビボ、インビトロにおいて強力な生物学的反応改質剤(BRM)として使用するためのユニークなナノベースのシステムを代表するものとなることが実証されている。DPV576-Cがインビボで免疫調節を誘導するメカニズムには、後根神経節(DRG)ニューロンが関与しているかもしれない。これらの細胞は、感覚情報を中枢神経系(CNS)に運ぶ。この研究は、NDとNPの溶液での処理が、インビボでDRGニューロンからのCa2+放出と侵害受容性P2X3 受容体の発現に影響すること示しており、DPV576-CがDRGに影響を及ぼし、次に免疫応答に影響を及ぼす可能性を示唆している。
以前の研究で、TRPチャネルは環境の変化に対する応答を調節する重要な細胞センサーであることが示されている。TRPV1受容体は、多くの場合痛みと炎症に応答して、侵害受容情報と伝達の調節に重要な役割を果たす可能性がある。また、TRPV4も後根神経節で発現しており、温度および浸透圧の変化に感受性であることが知られている。最近の研究では、TRPV4の活性化が正常な侵害受容に必要であり、これらの受容体が炎症と痛みを伴う状態で役割を担うと考えられることが示されている。また別の研究により、TRVP4受容体は、インビボにおいて概日体温と正常な熱応答性にも関連することが示されている。今回の結果は、DPV576処理はケラチノサイトにおけるTRPV4の発現を有意に減少させるが、TRPV1とTRPV3の発現は減少させないことを示した。また、DPV576によるTRPV4の発現調節はカルシウムフラックスのスパイクを伴っていたが、これはTRPV4がCa2+インフラックスを仲介することを示す最近の研究と一致している。図3のデータは、TRPV4阻害剤の添加がケラチノサイトからのサイトカイン産生に有意な影響を与えなかったことを示している。これらのデータは、DPV576により誘導されるサイトカイン分泌はTRPV4非依存的であることを示唆しており、DPV576が複数のシグナル伝達経路を介してケラチノサイトを活性化することを示している。
今回の実験において、ケラチノサイトのDPV576処理により、サイトカインであるIL-1β、TNF-α、およびPGE2の有意な分泌が起こることも示している。IL-1βは、活性化されたマクロファージによって前駆タンパク質として産生される。これは炎症応答の重要な調節因子であり、細胞の増殖、分化、およびアポトーシスなどの様々な細胞の活動に関与している。以前の研究により、ストレスによって誘導される睡眠の変化は昼間と夜間のIL-1βの血漿中への分泌に影響を与える可能性があることと、IL-1βレベルの夜間の上昇は正常な睡眠パターンと関連していることが示されている。以前の報告で、TNF-αがインビトロにおいて視交叉上核(SCN)アストロサイトの分子時計を調節することが示唆されている。SCNは、哺乳類の概日リズムを調節する部位である。プロスタグランジンは、ほとんどの組織や臓器において見出される。これらは、ほとんどすべての有核細胞によって産生される。それらはオートクリンおよびパラクリン脂質メディエーターである。PGE2は、覚醒の開始と概日リズムの維持を調節することが示されている。本研究において我々は、DPV576処理後のケラチノサイトのPGE2分泌が有意に増加していることに気づいた。
神経成長因子(NGF)は、主に神経細胞の成長、維持、増殖、および生存に関与する神経ペプチドである。NGF受容体は、SCNならびに脳の視床下部領域に高密度で見出され、いずれも概日リズムに関与している。さらに、ニューロトロフィンは、ケラチノサイトを含む他の組織においてその効果を発揮することが見出されている。ケラチノサイトは、TRPVチャネルおよびNGFを含むいくつかの異なる機構を介してストレスと痛みを感知することができる。ケラチノサイトによって分泌されるNGFは、皮神経の維持および再生に重要である。NGFは、常時暗条件で飼われたハムスターにおける短時間の光のパルスと同様な変化を誘導し、NGFが概日リズムの破綻により引き起こされるストレスを軽減できることを示唆している。さらにPizzioらは、NGFはMAPキナーゼの活性化が関与する機構によって、哺乳動物の概日時計の透光層同調において役割を果たしていることを見出した。本研究の結果は、ケラチノサイトのDPV576処理によりNGFの有意な分泌が起こることを示す。
ND/NPファブリックの概日リズムへの影響は、さらに体温に影響を与える潜在能力と関連している可能性がある。研究により概日リズムが体内温度に関連することが示唆されていることから、本発明は概日リズムの調節に有用である。
5. 結論
DPV576は、TRPV4を含む複数のシグナル伝達経路を介してケラチノサイトを活性化させる。DPV576は、発熱性サイトカインであるIL-1β、TNF-α、およびPGE2、ならびにNGFのケラチノサイトによる分泌も誘導する。これらの結果は、ヒトに恩恵をもたらす。局所炎症、痛み、概日リズムの調節を目的とした将来のナノダイヤモンドファブリックの設計を容易にする。
1…DPV576に曝露したケラチノサイト、2…非曝露のケラチノサイト、3…アイソタイプ対照。

Claims (1)

  1. 遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子を少なくとも2種含有する組成物からなる、ケラチノサイトからのPGE2、サイトカイン又は神経成長因子の分泌促進剤であって、
    前記遠赤外線及びイオンを発するナノ粒子の少なくとも2種は、ダイヤモンドナノ粒子及びプラチナナノ粒子であり、
    前記サイトカインが、IL−1β及びTNF−αからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記神経成長因子が、NGFである、分泌促進剤
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