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JP6760779B2 - 咀嚼力向上用組成物および咀嚼力を向上させる方法 - Google Patents
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JP6760779B2 - 咀嚼力向上用組成物および咀嚼力を向上させる方法 - Google Patents

咀嚼力向上用組成物および咀嚼力を向上させる方法 Download PDF

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Description

本発明は、咀嚼力を向上させるための組成物および方法に関する。
これまで、食品の物性と、咀嚼力および咀嚼挙動との関係についての研究報告がいくつかなされている。しかし、咀嚼力の維持または向上を目的とした食品に必要な物性値を示唆するような報告は非常に少ない。
食品による咀嚼力強化を目的とした過去の研究では、たとえば非常に硬いこんにゃくマンナンを用いた咀嚼訓練が知られている(非特許文献1)。このこんにゃくマンナンの硬さは、同一サイズのたくあんと比較して2倍であり、咀嚼回数が10倍以上となる。このような咀嚼訓練は、咀嚼することに疲れてしまい、継続して広く用いられることが困難である。また、咀嚼筋は、四肢の筋肉と異なり、歯にかかる力に敏感に反応して咀嚼力を増大させたり、歯への過剰な負荷を抑制したりする歯根膜を介して活動を行う。そのため、咀嚼筋に対しては、適正な強い負荷をかけること、すなわち硬い食品を摂取させることが、必ずしも有効に機能しない場合がある。
咀嚼機能は、「咀嚼力」および「巧緻性」に大別される。従来の代表的な咀嚼機能の評価方法は、歯の欠損を義歯、金属冠および継続歯などの人工物で補って、機能を回復させる、いわゆる補綴の分野で主に構築されてきた。従来の評価方法として、たとえば咀嚼試料の粉砕状態を測る方法およびガムの咀嚼による混合状態を測る方法が知られている。これらの方法は、いずれも咀嚼機能における「巧緻性」に焦点をあてたものであり、咀嚼筋の力の発揮度を直接的に知ることはできない。咀嚼機能における「巧緻性」は、小さな筋活動による複雑な作業を要求するものである。巧緻性の向上は、食塊形成力を向上させるものの、咀嚼において最も重要な「あらゆるものを細かく砕いて噛みちぎる」という処理能力を効果的に高めることができない。従来知られている、食品を用いた咀嚼機能訓練は、基本的には巧緻性にフォーカスを当てたものであり、筋活動を発揮させることを狙ったものは非常に少ない。
特許文献1には、咀嚼機能強化用の健康食品が開示されている。この健康食品は、グルコマンナンまたはグルコマンナンに栄養物質を添加したものをアルカリ性物質で処理し、これに調味料を加えた後乾燥することにより得られた咀嚼機能強化用の口中で弾力性を有する健康食品である(請求項1)。
しかし、特許文献1には、咀嚼力を効率的に向上させることが可能な食品の大きさおよび硬さが記載されていない。また、特許文献1に記載の健康食品は、咀嚼した時に容易に噛み切れず、少なくとも10分以上の咀嚼運動に耐え、これを1日数回食することによって自然に咀嚼機能を強化するものである(第3ページ左上欄)。そのため、咀嚼機能を強化するために特許文献1に記載のような健康食品を使用した場合、咀嚼することに疲れてしまい、継続して行うことが困難である。
特許文献2には、咀嚼訓練用チューインガムが開示されている。このチューインガムは、複数の被験者に対し、硬さ、重量、寸法が各々異なる複数種のチューインガムを一種類ずつ与え、口唇を閉じたまま大臼歯で左右交互に10回ずつしっかりと噛むようにして一定時間咀嚼させ、被験者ごとに各々のチューインガムについて一定時間における咀嚼回数、並びに咬筋および口輪筋の筋活動値を測定し、次にチューインガムごとに全被験者の咀嚼回数並びに筋活動値の各全平均値を求めた結果、咬筋の平均筋活動値、口輪筋の平均筋活動値、咀嚼回数の各平均値の3つ全てが各平均値を上回るものである(請求項1)。また、特許文献2のチューインガムの寸法は、直方体状(15mm×15mm×11,25mmまたは15mm×15mm×3.75mmを3枚重ねる)および立方体状(15mm×15mm×15mmまたは15mm×15mm×3.75mmを4枚重ねる)である(請求項6および7)。
しかし、特許文献2に記載のチューインガムは、小さいため舌の上下左右運動により臼歯へガムを移動させる必要がある。また、ガムは噛み進めると軟らかくなるため継続して咀嚼することができる。これらの理由から、特許文献2に記載のチューインガムによって向上するのは、咀嚼力ではなく巧緻性である。また、特許文献2に記載のチューインガムは、チューインガムであるため咀嚼後飲み込むことができず、吐き出さなければならない。また、特許文献2には、チューインガムの物性値として最大圧縮荷重しか記載されていない。
特許文献3には、咀嚼・嚥下困難者用ゲル化剤およびこれを利用した咀嚼・嚥下困難者用ゲル状食品が開示されている。このゲル化剤は、易溶性寒天及び重量平均分子量が1.5×106g/mol以上のグァーガムを含み、易溶性寒天に対して、グァーガムの含有量が60〜700質量%である(請求項1)。
しかし、特許文献3に記載のゲル状食品は、咀嚼力を向上させる用途に用いられるものではなく、そのゲル強度は、咀嚼力の向上や維持を可能にするものではない。また、特許文献3には、咀嚼力を効率的に向上させることが可能な食品の大きさおよび硬さが記載されていない。
特許文献4には、顎の筋力強化に用いるトレーニングガムが開示されている。このトレーニングガムは、初期の剪断強度が1100〜2000gであり口中で3分間連続咀嚼したのちの剪断強度が440〜1200gである(請求項1)。
しかし、特許文献4には、咀嚼力を効率的に向上させることが可能な食品の大きさが記載されていない。また、特許文献4に記載のトレーニングガムは、3分間などの所定の時間連続して咀嚼し続けるものであり、容易に噛み切ることができない。そのため、咀嚼機能を強化するために特許文献4に記載のようなトレーニングガムを使用した場合、咀嚼することに疲れてしまい、継続して行うことが困難である。また、特許文献4に記載のトレーニングガムは、ガムであるため咀嚼後飲み込むことができず、吐き出さなければならない。また、特許文献4には、トレーニングガムの物性値として剪断強度しか記載されていない。
特許文献5には、咀嚼力トレーニング用食品セットが開示されている。この食品セットは、破断ひずみが40%以上、かつ破断時弾性率が1〜120MPa(1×106N/m2〜120×106N/m2に相当)である咀嚼力検査用食品と、破断ひずみが40%以上、かつ破断時弾性率が0.5MPa(0.5×106N/m2に相当)以上である咀嚼力トレーニング用食品とを含む(請求項2)。検査用食品は、手で持って奥歯で噛みしめることを想定し、幅5〜20mm、長さ50mm以上、厚さ1〜20mmとし(段落[0018])、トレーニング用食品は、複数個口に入れることを想定し、最大長さ2〜40mmの粒状または板状としている(段落[0024])。
しかし、特許文献5に記載の咀嚼力検査用食品および咀嚼力トレーニング用食品は非常に硬く、容易に噛み切ることができない。そのため、咀嚼機能を強化するために特許文献5に記載のような食品を使用した場合、咀嚼することに疲れてしまい、継続して行うことが困難である。
特開昭64-10961号公報 特開2011-62114号公報 特開2008-220362号公報 特開昭63-139553号公報 特開2015-146783号公報
河村洋二郎ら、「咀嚼機能強化食品による咀嚼訓練の効果」、Jpn.J.Oral Biol.、1989年、第31巻、第281-290頁 江川広子ら、「歯科用咬合力計Occlusal Force-meter GM-10の歯科口腔介護への応用の可能性」、明倫歯誌、2000年、第3巻、第1号、第43-36頁
我々は最小努力で最大の成果を得るように活動する。たとえば、硬く弾力のあるグミは、女性に非常に好まれる食品であるが、女性は咀嚼力が低いことが知られている(男性の半分以下であると報告されている;非特許文献2)。数十粒のグミをすべてしっかりと噛みしめて食べれば、相当の筋活動を要求されることが容易に推察されるが、彼女たちは無理なく楽しんで摂取できている。その理由は、硬いグミを楽に食べる方法(舌で脆い位置を特定し、そこを軽く噛むことで亀裂を入れ、小さく砕き、唾液と混ぜて溶かしながら食べるなどのスキル)を獲得しているためと考えられる。すなわち、硬い食品であっても、咀嚼機能のうち巧緻性の機能を利用することにより、楽に食べることができる。実際に、予備試験において咬合力の特に弱い女性でもグミを楽に摂取できる様子を観察した。
この観点でいえば、無理なく大きな咀嚼力を発揮するためには、ただ硬い食品ではなく、ある程度の咀嚼力を要する弾力のある物性であり、かつ、口腔内で舌を使って位置を容易に変更できない大きさが望ましいと考えられる。すなわち、咀嚼力を向上させるための食品は、口腔内での処理方法を規定することができる大きさを持つ必要がある。
従来の咀嚼力向上用の食品は、基本的に、咀嚼機能のうち「巧緻性」を向上させるものであって、「咀嚼力」を効率的に向上させることができる大きさおよび硬さではない。
本発明は、容易に継続して摂取することができ、かつ咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる組成物およびこれを用いた咀嚼力を向上させる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる組成物の大きさについて検討した。本発明者らは、様々な大きさの組成物を用いて咀嚼時の筋活動量を測定した。その結果、一口で口に入れることができ、かつ口腔内で舌を使って位置を容易に変更できない大きさであり、咀嚼力を効率的に向上または維持させることができる食品の大きさを見出した。
さらに本発明者らは、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができ、最終的に飲み込むことができ、かつ咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる組成物の物性について検討した。本発明者らは、咀嚼力向上用組成物の破断強度および破断ひずみに着目し、様々な物性の組成物を用いて咀嚼時の筋活動量を測定した。その結果、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができ、最終的に飲み込むことができ、かつ咀嚼力を向上または維持させることができる破断強度および破断ひずみの範囲を見出した。
本発明は、弾性を有し、かつ幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mmの大きさである、咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、上記咀嚼力向上用組成物において、重量が2〜20gである、咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、上記咀嚼力向上用組成物において、使用者が口に入れてから飲み込むまでの時間が90秒以内である、咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、上記咀嚼力向上用組成物において、破断荷重が13Nより大きくかつ88N未満であり、破断ひずみが56%より大きい、咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、上記咀嚼力向上用組成物において、破断ひずみが96%以下である咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、加工食品である、上記咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、ゲル状の製剤またはゲル状の食品である、上記咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、個別に容器詰めされている、上記咀嚼力向上用組成物を提供する。
また本発明は、弾性を有し、かつ幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mmの大きさである組成物を提供することを含む、咀嚼力を向上させる方法を提供する。
本発明に係る咀嚼力向上用組成物は、一口で口に入れることができ、かつ口腔内で舌を使って位置を容易に変更できない大きさを備えている。そのため、舌の左右運動で楽に咀嚼できる位置および形状に組成物を移動あるいは回転させることが困難であり、閉口筋を使って噛む(噛みちぎる)動作が否応なく促されることとなる。さらに、本組成物は破断しにくく弾性に富む物性であり、2〜3回の咀嚼だけでは細かく砕くことはできず、飲み込むまでに多くの咀嚼回数を要する。こうした特性によって、「あらゆるものを細かく砕いて噛みちぎる」という処理能力を効果的に向上または維持することができる。したがって、本発明の咀嚼力向上用組成物は、咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる。
最大咬合時および食品摂取時に測定される咬筋の筋電図の一例を示す。 試験食品P〜Tについて測定した荷重-ひずみ曲線を示すグラフ。 試験食品P〜Tに対する前期の最大筋活動比を示すグラフ。 試験食品P〜Tに対する前期の喫食時間を示すグラフ。 試験食品P〜Tについて、官能評価と最大筋活動比(前期)との関係を示すグラフ。 試験食品A〜Dについて測定した荷重-ひずみ曲線を示すグラフ。 試験食品A〜Dについて測定した荷重-ひずみ曲線を示すグラフ。 試験食品A〜Dについて、官能評価と最大筋活動比(右咬筋、前期)との関係を示すグラフ。 試験食品Aに対する左右咬筋の正規化筋活動(%)を示すグラフ。 試験食品Bに対する左右咬筋の正規化筋活動(%)を示すグラフ。 試験食品Cに対する左右咬筋の正規化筋活動(%)を示すグラフ。 試験食品Dに対する左右咬筋の正規化筋活動(%)を示すグラフ。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、使用者の咀嚼力を向上または維持させるための組成物である。使用者は、本発明の咀嚼力向上用組成物を咀嚼することにより、咀嚼力を向上または維持させることができる。
本明細書において「咀嚼する」とは、摂取した食物を歯で噛み、粉砕することをいう。本明細書において「咀嚼力」とは、摂取した食物を歯で噛み、粉砕する能力をいい、たとえば咀嚼筋の筋活動量にて表すことができる。咀嚼筋には、咬筋、側頭筋、外側翼突筋および内側翼突筋などが含まれる。
本明細書において「咀嚼力の向上」とは、咀嚼筋の筋力の向上を意味し、たとえば噛み切れなかった硬さの食物を噛み切ることができるようにすること、およびより少ない咀嚼回数で噛み切ることができるようにすることなどを含む。また、本明細書において「咀嚼力の維持」とは、現在の咀嚼筋の筋力を維持すること、および加齢などによる咀嚼力の低下を抑制することを含む。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、弾性を有し、かつ幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mmの大きさであり、好ましくは、幅20〜40mm、長さ10〜60mmおよび高さ10〜15mmの大きさである。このような大きさであれば、一口で口に入れることができ、かつ口腔内で舌を使って位置を容易に変更できない大きさである。そのため、舌の左右運動で楽に咀嚼できる位置および形状に組成物を移動あるいは回転させることが困難であり、閉口筋を使って噛む(噛みちぎる)動作が否応なく促されることとなる。さらに、本組成物は破断しにくく弾性に富む物性であり、2〜3回の咀嚼だけでは細かく砕くことはできず、飲み込むまでに多くの咀嚼回数を要する。こうした特性によって、「あらゆるものを細かく砕いて噛みちぎる」という処理能力を効果的に向上または維持することができる。したがって、本発明の咀嚼力向上用組成物は、咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、好ましくは、幅30〜40mm、長さ30〜40mmおよび高さ10〜15mmの大きさである。このような大きさであれば、口の中に納まりが良いため、前歯で切断して口中に取り込むサイズが縮小し本来の目的を果たすことができなくなるリスクを軽減することができる。また、表面形状が正方形あるいはそれに近いため、舌によって口中に取り込んだ組成物を回転させる動作が生じたとしても、臼歯部上にある組成物の大きさが極端に小さくなることがない。こうした特性によって、喫食時間を長くすることなく効率よく咀嚼筋に負荷をかけることができるため、咀嚼力をより効果的に向上させることができる。
本明細書において「幅」、「長さ」および「高さ」は、それぞれ直交する3つの方向のいずれかの長さであればよい。たとえば、物体の水平方向の面(上面または底面)における直交する2つの方向の一方の長さを「幅」、他方の長さを「長さ」とし、物体の垂直方向の長さ(厚み)を「高さ」としてもよい。本発明の咀嚼力向上用組成物が、たとえば全体的に丸みを帯びたような略直方体である場合、幅、長さおよび高さは、それぞれその最も長い距離を表してもよい。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、上述した幅、長さおよび高さを備えた形状であればよく、たとえば略直方体形状であってもよい。本明細書において「直方体」とは、6つの面で構成され、全ての面が長方形(正方形を含む)である多面体をいう。本明細書において、「略直方体形状」には、いわゆる直方体だけでなく、直方体に近い形状、たとえば全体的に丸みを帯びた直方体および面に凹凸のある直方体なども含まれる。
本発明の咀嚼力向上用組成物の重量は、特に限定されないが、2〜20gであれば、効率的に咀嚼力を向上させることができる。本発明の咀嚼力向上用組成物の重量は、より効率的に咀嚼力を向上させるために、好ましくは5〜18g、より好ましくは10〜16gである。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、弾性を有する組成物であればよく、好ましくはほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができる弾力性を有する。本明細書において組成物を「噛み切る」とは、組成物の少なくとも一部を分断することをいい、組成物を2つ以上の塊に分断することだけでなく、組成物に切れ込みを入れることをも含む。本発明の咀嚼力向上用組成物は、最終的に飲み込むことができる組成物であることができ、口に入れてから好ましくは90秒以内、より好ましくは60秒以内、さらに好ましくは30秒以内に飲み込むことができる。
本発明の咀嚼力向上用組成物の破断荷重は、好ましくは13Nより大きく、より好ましくは15N以上、さらに好ましくは18Nである。破断荷重が13Nより大きい場合、咀嚼するときに咀嚼筋を効果的に筋収縮させることができ、咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる。また、本発明の咀嚼力向上用組成物の破断荷重は、好ましくは88N未満、より好ましくは50N未満、さらに好ましくは30N未満、さらにより好ましくは18Nである。破断荷重が88N未満であれば、硬すぎて噛む動作を抑制することなくリズミカルな咀嚼運動が可能である。また、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができるため、飽きずに継続して食することができる。
本発明の咀嚼力向上用組成物の破断ひずみは、好ましくは56%より大きく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは64%以上、さらにより好ましくは80%以上である。破断ひずみが56%より大きい場合、咀嚼するときに咀嚼筋を効果的に筋収縮させることができ、咀嚼力を効率よく向上させることができる。また、本発明の咀嚼力向上用組成物の破断ひずみは、好ましくは96%以下である。破断ひずみが96%以下であれば、硬すぎて噛む動作を抑制することなくリズミカルな咀嚼運動が可能である。また、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができるため、飽きずに継続して食することができる。
本明細書において「破断荷重」(以下、「破断強度」ともいう。)とは、物質を圧縮させるように荷重を加えて弾性変形させ、物質が破断(破裂または内部破壊)するときの荷重値をいう。破断荷重は、物質の硬さまたは強度などを示す。また、本明細書において「破断ひずみ」とは、物質を圧縮させるように荷重を加えて弾性変形させ、物質が破断(破裂または内部破壊)するときの変化量(ひずみ)をいう。破断ひずみは、物質の弾力性を示す。
破断荷重および破断ひずみは、物質に荷重を加えて圧縮させたときの荷重値と変形量の関係を測定して荷重−変形曲線(荷重-ひずみ曲線)を作成することにより得ることができる。本発明における「破断荷重」および「破断ひずみ」は、たとえば底辺14mmおよび高さ25mmの三角形のくさび形治具を用いて対象物質を圧縮速度1mm/sで圧縮し、対象物質が破断するときの荷重値および変化量であることができる。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、破断ひずみが大きい(弾力性が高い)ため、従来の咀嚼力向上用の食品等と比較して破断荷重が小さくても、咀嚼するときに咀嚼筋を効果的に筋収縮させることができ、咀嚼力を効率よく向上させることができる。また、本発明の咀嚼力向上用組成物は、従来の咀嚼力向上用の食品等と比較して破断荷重が小さいため、硬すぎて噛む動作を抑制することなくリズミカルな咀嚼運動が可能である。また、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができるため、飽きずに継続して摂取することができる。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、食品、医薬品および化粧品などの形態であることができる。本発明の咀嚼力向上用組成物は、上述した大きさおよび物性を備えていれば、いかなる形態であってもよい。たとえば、本発明の咀嚼力向上用組成物は、上述した大きさおよび物性を備えたゲル状の製剤またはゲル状の食品であることができる。本発明の咀嚼力向上用組成物は、ゲル状の製剤またはゲル状の食品である場合には、増粘剤を含むことができる。増粘剤としては、グリセリン、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、加工デンプン、寒天、低強度寒天、プルラン、ネイティブジェランガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ローカストビーンガムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどを用いることができる。また、本発明の咀嚼力向上用組成物は、必要に応じて糖質、酸味料、香料および着色料などをさらに含んでもよい。ゲル状の製剤またはゲル状の食品としては、たとえばグミキャンディおよびゼリーなどが挙げられる。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、ゲル状の製剤またはゲル状の食品である場合には、任意の公知の方法を用いて製造することができる。たとえば、本発明の咀嚼力向上用組成物は、増粘剤と水とを混合して溶解させ、必要に応じてその他の成分を加えて混合した後、冷却することによって製造することができる。咀嚼力向上用組成物は、所定の大きさの型に充填して冷却することができ、また、冷却した後に上述したような大きさになるよう切断することができる。増粘剤の種類および濃度は、咀嚼力向上用組成物を上述したような物性とするために、適宜調整することができる。
また、本発明の咀嚼力向上用組成物は、上述した大きさおよび物性を備えた食品、特に加工食品であってもよい。加工食品とは、天然の食材に任意の加工を加えた食品をいう。本発明における加工食品は、たとえば、乳製品、小麦粉製品、魚肉成形品、おつまみおよび菓子類などであることができる。乳製品には、たとえばチーズなどが含まれる。小麦粉製品には、たとえば麺類、マカロニおよびパンなどが含まれる。魚肉成形品には、たとえばかまぼこ、スルメおよび燻製などが含まれる。おつまみには、ビーフジャーキーなどが含まれる。菓子類には、たとえばグミキャンディおよびゼリーなどが含まれる。
本明細書において、「食品」には、一般食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品およびサプリメントなどが含まれる。
本発明の咀嚼力向上用組成物は、容器詰めされてもよい。たとえば、本発明の咀嚼力向上用組成物は、個別に容器詰め(個包装)されてもよいし、複数個まとめて容器詰めされてもよい。咀嚼力向上用組成物が個包装される場合、組成物同士が互いに接触して癒着することを防止することができ、癒着を防止するための工程を省くことが可能になる。容器には、特に限定されず、食品、医薬品および化粧品を包装することが可能な公知の材質および形状の容器を用いることができる。たとえば、容器は、咀嚼力向上用組成物が一つ一つ別々に詰められるトレイ状の容器でもよく、また、トレイ状の容器は複数個連結されてもよい。
本発明はまた、咀嚼力を向上させる方法を提供する。本発明の方法は、上述したような咀嚼力向上用組成物を提供することを含む。すなわち、本発明の方法は、弾性を有し、かつ幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mmの大きさである組成物を提供することを含む。組成物は、重量が2〜20gであってもよい。また、組成物は、使用者が口に入れてから飲み込むまでの時間が90秒以内であってもよい。組成物の破断荷重は、13Nより大きくかつ88N未満であってもよい。組成物の破断ひずみは、56%より大きくてもよく、96%以下であってもよい。本発明の方法に用いる組成物の大きさ、物性および態様は、上述した咀嚼力向上用組成物と同様の大きさ、物性および態様であることができる。
本発明の方法において、「咀嚼力向上用組成物を提供する」ことは、咀嚼力の向上が望まれる対象(以下、「使用者」ともいう。)に咀嚼力向上用組成物を提供することを含む。本発明の方法はまた、使用者に咀嚼力向上用組成物を使用させることを含んでもよい。「咀嚼力向上用組成物を使用する」とは、咀嚼力向上用組成物を咀嚼することを意味し、たとえば咀嚼力向上用組成物を口に入れ、歯で噛み、粉砕し、さらに飲み込むことが含まれてもよい。本発明の方法では、咀嚼力向上用組成物を提供された使用者は、咀嚼力向上用組成物を数回〜数十回噛んでよく咀嚼した後に飲み込むことができる。
使用者が咀嚼力向上用組成物を使用する頻度および期間等は、特に限定されず、使用者の年齢および咀嚼力などに応じて適宜設定することができる。たとえば、本発明の方法において、咀嚼力向上用組成物を口に入れて咀嚼し、飲み込むまでの作業(以下、「咀嚼力向上用組成物の使用」という。)は、たとえば1日1回行ってもよく、1日2回以上行ってもよい。また、咀嚼力向上用組成物の使用は、連続して複数回行ってもよい。また、本発明の方法は、たとえば1週間、数週間、数ヶ月またはそれ以上の期間、継続して行うことができる。本組成物は破断しにくく弾性に富む物性であり、2〜3回の咀嚼だけでは細かく砕くことはできず、飲み込むまでに多くの咀嚼回数を要する。そのため、本組成物の使用を1日1回以上かつ継続して行うことによって、咀嚼力を効果的に向上または維持させることができる。
本発明の方法に用いる組成物は、幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mm、好ましくは、幅20〜40mm、長さ10〜60mmおよび高さ10〜15mmの大きさであるため、一口で口に入れることができ、舌の左右運動で楽に咀嚼できる位置および形状に組成物を移動あるいは回転させることが困難であり、閉口筋を使って噛む(噛みちぎる)動作が否応なく促されることとなる。さらに、本組成物は破断しにくく弾性に富む物性であり、2〜3回の咀嚼だけでは細かく砕くことはできず、飲み込むまでに多くの咀嚼回数を要する。こうした特性によって、「あらゆるものを細かく砕いて噛みちぎる」という処理能力を効果的に向上または維持することができる。また、本発明の方法に用いる組成物は、破断荷重が88N未満である場合、硬すぎて噛む動作を抑制することなくリズミカルな咀嚼運動が可能である。また、ほぼ1回の咀嚼により噛み切ることができる。そのため、使用者が組成物を口に入れてから飲み込むまでの時間は、好ましくは90秒以内、より好ましくは60秒以内、さらに好ましくは30秒以内である。また、本発明の方法に用いる組成物は、最終的に飲み込むことができるため、本発明の方法は連続して複数回行うことが容易である。したがって、本発明の方法であれば、楽に継続して行うことができるため、咀嚼力を効率よく向上または維持させることができる。
本発明の方法は、医師が行う治療的方法および医師以外の者が行う非治療的方法を含む。
本発明の咀嚼力向上用組成物および方法は、特に限定されず、子供から大人まで、咀嚼力の向上が望まれる対象に適用することができる。本発明の咀嚼力向上用組成物は、たとえば子供の咀嚼力の向上のために使用してもよい。また、本発明の咀嚼力向上用組成物は、咀嚼力が低下し始める年齢または咀嚼力が低下した年齢、たとえば50〜60歳代の人を対象にしてもよい。このような世代が本発明の咀嚼力向上用組成物を日常的に摂取することにより、咀嚼力を維持または向上させることができ、老後において硬いものを噛む力を維持することができる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、組成物の大きさが咀嚼時の筋活動量に与える影響について調べた。
(試験食品P〜Tの調製)
試験食品P〜Tの原材料の配合割合を表1に示す。試験食品P〜Tは、以下のように調製した。
タマリンドガムと水を撹拌しながら混合し、90℃10分以上で加温しながら溶解させた。その後、トレハロース、砂糖、クエン酸、グリセリン、着色料および香料を加え、pH3.8となるようにpH調整剤を加え、90℃5分以上で撹拌しながら原材料を溶解した後、型(幅20mm、長さ60mm、高さ13mmまたは幅40mm、長さ30mm、高さ10mm)に充填した。充填後に冷蔵庫(4℃)で一晩保管し、下記のサイズとなるようにカットした。
試験食品は、P(幅10mm×長さ5mm×高さ10mm)、Q(幅20mm×長さ10mm×高さ10mm)、R(幅20mm×長さ20mm×高さ10mm)、S(幅40mm×長さ30mm×高さ10mm)、T(幅20mm×長さ60mm×高さ10mm)を準備した。いずれも高さ(厚み)は10mmであり、表面積が異なる。各重量は、Pが1.25±0.25g、Qが2.75±0.25g、Rが5.75±0.25、Sが15±0.5g、Tが15±0.5gであった。
Figure 0006760779
〔測定方法〕
(破断ひずみおよび破断強度)
破断ひずみ(弾力性)および破断強度(硬さ)は、クリープメータ(山電社;REONER II RE2-3305B形、幅30mm)を用いて測定した。具体的には、くさび形治具(底辺14mmおよび高さ25mmの三角形)の間に試験食品1個をセットして、圧縮速度1mm/sで圧縮し、破断ひずみおよび破断強度を測定した。
(咀嚼力)
咀嚼力は、咬筋の最大筋活動比として測定した。被験者の左右の咬筋には、表面電極として、皿型表面電極EL258S(バイオパック社製)を1箇所につき2個貼り付けた。さらにアース電極を前額に貼付し、喉には、喉頭マイクロフォンを設置した。そして、筋電図用アンプEMG100C(バイオパック社製)に筋電図を取り込み、波形分析ソフトAcqKnowledge(バイオパック社製)を用いて解析した。被験者に、5秒間以上、最大の力(最大咬合に相当する)で噛みしめてもらい(クレンチング)、その際に得られる筋電位情報を最大咬合とした。図1は、最大咬合時および食品摂取時に測定される咬筋の筋電図の一例を示す。
次に、被験者が試験食品を各4個、1粒ずつ自由に咀嚼した時の左右の咬筋の筋電位を測定した。喫食時間は、筋電図より、試料の食べ始めから食べ終わり(最後の嚥下まで)の時間を選択した。喫食時間を前期・中期・後期に3分割し、各々の時間帯について、以下の式を用いて筋活動量より咬筋の最大筋活動比(%筋活動)を算出した(図1を参照)。
最大筋活動比=試料喫食時の筋活動量/処理時間/クレンチング(最大の力での噛みしめ)1秒当たり活動量×100(%)。
なお、筋活動量は、試料喫食時の咬筋の筋電図について、波形を正方向に原波形のマイナスの部分をプラスに折り返して積分波形に変換し、波形の面積を求めて筋活動量とした。筋活動量は、左右それぞれの筋について、被験者ごとに最大値を示した試料の筋活動量を基準として正規化した。咬筋活動量は、左右の平均値とした。
食べ始めが最も試料の原型を残し、負荷が大きいと考えられることから、喫食時間を3分割して前期、中期および後期とし、そのうち前期の最大筋活動比を、「最大筋活動比」として評価した。
(官能評価)
試験食品を喫食した被験者にアンケートを行い、試験食品の喫食時の硬さについて官能評価を行った。官能評価は、「楽に噛める」場合を「1」、「硬いが噛める」場合を「2」、「とても硬い」場合を「3」および「噛むのをためらうほど硬く感じる」場合を「4」として4段階にて評価した。各試験食品の評価結果として、各被験者の評価の平均値を算出した。
〔試験結果〕
(破断ひずみおよび破断強度)
試験食品P〜Tについて、上述した方法を用いて破断ひずみおよび破断強度を測定した。その結果、いずれの試験食品も、最大の破断荷重が18N、破断ひずみが64%であった。図2は、試験食品P〜Tについて測定した荷重-ひずみ曲線を示す。
(最大筋活動比および官能評価)
上述した方法により、健常な女性2名を被験者とし、試験食品P〜Tに対する前期の最大筋活動比および喫食時間を測定するとともに、官能評価を行った。図3は、試験食品P〜Tに対する前期の最大筋活動比を示すグラフである。図4は、試験食品P〜Tに対する前期の喫食時間を示すグラフである。図3に示すように、左右咬筋の前期の最大筋活動比は、試験食品の重量および表面積が大きいほど高値であった。また、図4に示すように、各試験食品の前期の喫食時間は、重量および表面積が大きいほど長かった。
試験食品Sおよび試験食品Tは、重量および表面積は同じであるが形が異なる(S:40mm×30mm×10mm、T:20mm×60mm×10mm)。図3および図4に示すように、試験食品Sは、試験食品Tと比較して、喫食時間は短いが最大筋活動比は高値であった。したがって、試験食品Sは、口の中に収まりが良いためすぐに最大の力で噛むことができ、効率よく咀嚼筋に負荷をかけることができたといえる。一方、試験食品Tは、長細く口の中の収まりが悪いため噛みやすい食塊まで咀嚼しなければならず、無駄な力がかかったといえる。
一般的に、筋力は、最大筋力の20〜30%の筋収縮(筋活動)を行うことによって維持され、最大筋力の30%以上の筋収縮を行うことにより徐々に増加すると言われている。この点を考慮すれば、試験食品Q、RおよびTは咀嚼力の維持効果があり、試験食品Sは咀嚼力の向上効果があることが示された。
図5は、試験食品P〜Tについて、官能評価と最大筋活動比(前期)との関係を示すグラフである。図5に示すように、官能評価と最大筋活動比は概ね比例関係であった。官能評価の結果、咀嚼力の維持および向上効果が高い試験食品SおよびTであっても、被験者が「硬いが噛める」と感じる硬さであり、使用者が容易に噛むことができ、飽きずに継続して食することができる硬さであることが示された。また、物性(破断強度および破断ひずみ)および高さ(厚み)が同じでも、重量および大きさ(表面積)の違いにより、官能評価が異なることが示された。
[実施例2]
本実施例では、組成物の物性が咀嚼時の筋活動量に与える影響について調べた。
〔試験食品の調製〕
(試験食品Aの調製)
試験食品Aの原材料の配合割合を表2に示す。試験食品Aは、以下のように作製した。
ゼラチンに等量の水を加え、65℃で30分間湯煎して膨潤させた。一方、砂糖に1/4量の水を加え、水あめおよびペクチンと共に混合して加温し、Brix値が90程度になるまで煮詰めた。これに、膨潤したゼラチン、クエン酸、果汁および香料を加え、最終Brix値が82となるように調整した。型に注ぎ、室温で1週間静置し、試験食品Aとした。
(試験食品Bの調製)
試験食品Bの原材料の配合割合を表2に示す。試験食品Bは、以下のように作製した。
ゼラチンに等量の水を加え65℃で30分間湯煎して膨潤させた。一方、砂糖に1/4量の水を加え、異性化糖および加工デンプンと共に混合して加温し、Brix値が90程度になるまで煮詰めた。これに、膨潤したゼラチンおよびpH調整剤を加え、最終Brix値が82となるように調整した。型に注ぎ、室温で1週間静置し、試験食品Bとした。
(試験食品CおよびDの調製)
試験食品Cおよび試験食品Dの原材料の配合割合を表2に示す。試験食品Cおよび試験食品Dは、以下のように作製した。
まず、タマリンドガムと水を撹拌しながら混合し、90℃10分以上で加温しながら溶解させた。その後、トレハロース、砂糖、クエン酸、乳酸カルシウム、グリセリン、着色料および香料を加え、90℃で5分以上で撹拌しながら原材料を溶解した後、型(タテ13mm、ヨコ20mm、長さ60mm)に充填した。充填後に冷蔵庫(4℃)で一晩保管し、試験食品Aおよび試験食品Bと同等のサイズ(2cm×1.5cm×1cm、2.75±0.25g)となるようにカットして、試験食品Cおよび試験食品Dを作製した。
Figure 0006760779
〔試験結果〕
(破断ひずみおよび破断強度)
試験食品A〜Dについて、実施例1と同様の方法を用いて破断ひずみおよび破断強度を測定した。その結果を表3に示す。また、図6および図7に荷重-ひずみ曲線を示す。
Figure 0006760779
試験食品Aは、他の3つの試験食品と比較して破断強度が最も大きかった。これは、試験食品Aが試験食品B〜Dと比較して硬いことを意味する。試験食品Bおよび試験食品Cは、破断強度が同程度であった。一方、試験食品Bは、試験食品Cと比較して破断ひずみが大きく、試験食品Aと同程度の破断ひずみを有することが分かった。これは、試験食品Bの弾力性が試験食品Cと比較して大きいことを示す。試験食品Dは、他の3つの試験食品と比較して破断強度および破断ひずみが最も小さかった。
(最大筋活動比および官能評価)
実施例1と同様の方法を用いて、健常な女性22名を被験者として、試験食品A〜Dに対する筋活動量を測定し、最大筋活動比を算出した。また、試験食品A〜Dについて、官能評価を行った。なお、各被験者が試験食品A〜Dそれぞれを食べ始めてから飲み込むまでの時間(摂取時間)は、全て1分以内であった。摂取時間の平均は、最も硬い試験食品Aでも30秒程度であった。
図8は、試験食品A〜Dについて、官能評価と最大筋活動比(右咬筋、前期)との関係を示すグラフである。図8に示すように、官能評価と最大筋活動比とは、概ね比例関係を示した。
一般的に、筋力は、最大筋力の20〜30%の筋収縮(筋活動)を行うことによって維持され、最大筋力の30%以上の筋収縮を行うことにより徐々に増加すると言われている。図8に示すように、試験食品AおよびBは、最大筋力の30%以上の筋活動を起こすため、咀嚼力の向上効果を有することが示された。また、試験食品Cは、最大筋力の20〜30%の筋活動を起こすため、咀嚼力を維持する効果を有することが示された。試験食品Dが起こすことができる筋活動量は、咀嚼力を維持するために必要な筋活動量(最大筋力の20%)を若干下回った。
また、官能評価の結果から、試験食品Aは、被験者の多くが「とても硬い」と感じる硬さであることが分かった。一方、試験食品BおよびCは、試験食品Aと比較して、容易に噛むことができる硬さであることが分かった。これは、試験食品BおよびCの破断荷重が試験食品Aよりも小さいからであると考えられる。
また、試験食品Bの官能評価(被験者が感じる硬さ)は試験食品Cと同程度であるにもかかわらず、試験食品Bに対する最大筋活動比は、試験食品Cよりも高かった。すなわち、試験食品Bは、試験食品Cと同程度の噛みやすさを有するにもかかわらず、試験食品Cよりも咀嚼筋に高い負荷を与えることができることが分かった。この結果から、破断ひずみ(弾力性)が大きい食品は、試験食品Bのように破断強度(硬さ)がそれほど大きくなくても咀嚼の筋力の発揮が要求され、咀嚼力の維持または向上に有効であることが示された。試験食品Dは、楽に噛める硬さであるが、最大筋活動比もまた低かった。
以上の結果から、咀嚼力を効率よく向上または維持させるために、破断荷重および破断ひずみは、試験食品Dよりも高いことが望ましいことが示された。また、硬すぎることなく、飽きずに継続して食するために、破断荷重は、試験食品Aよりも小さいことが望ましいことが示された。
(正規化筋活動)
被験者が各試験食品を4回喫食した時のそれぞれの筋活動量を、各被験者の全期(前期・中期・後期)における左右の筋活動量の最大値を100として正規化した(正規化筋活動)。図9〜12は、各試験食品に対する左右咬筋の正規化筋活動を示すグラフである。
図9および図10のグラフに示すように、試験食品Aおよび試験食品Bの前期において、右咬筋と左咬筋の筋活動量に有意な差があった。これは、試験食品AおよびBが硬いため、虫歯や治療された歯がなく、より筋力を発揮できる側(今回の被験者では、右側)で強く噛んだことを意味する。このように、左右の筋活動量に差が見られるような場合には、咀嚼するための筋肉に負荷がかかっている状態であり、咀嚼力の向上に有効であるといえる。
本発明は、咀嚼力を向上させるための医薬、食品および化粧品などに好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. 弾性を有し、
    幅15〜50mm、長さ7〜65mmおよび高さ7〜20mmの大きさであり、
    底辺14mmおよび高さ25mmの三角形のくさび形治具を用いて圧縮速度1mm/sで圧縮したときの破断荷重が13Nより大きくかつ88N未満であり、破断ひずみが56%より大きく、
    最終的に飲み込むことができ、かつ
    使用者が口に入れてから飲み込むまでの時間が90秒以内である、咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
  2. 破断ひずみが96%以下である、請求項1に記載の咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
  3. 重量が2〜20gである、請求項1または2に記載の咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
  4. 加工食品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
  5. ゲル状の製剤またはゲル状の食品である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
  6. 個別に容器詰めされている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の咀嚼力を向上または維持させるための組成物。
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