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JP6792850B2 - 光刺激により形態制御可能な高分子材料 - Google Patents
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JP6792850B2 - 光刺激により形態制御可能な高分子材料 - Google Patents

光刺激により形態制御可能な高分子材料 Download PDF

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Description

本発明は、光刺激の有無によって流動状態と非流動状態を制御可能な高分子、及び当該高分子の流動性を制御する方法に関する。
光造形や接着剤において、外部刺激によって流動性が変化する材料として、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などが用いられている。しかしながら、これらの材料では、硬化処理のために専用の装置が必要であり、また一度加工すると再加工が困難であり材料のリサイクル性に乏しいという課題があった。
これに対し、溶媒を含まず、室温において外部刺激によって固体と液体の間で可逆的に流動性を切り替えられる物質は、環境にやさしいだけでなく再利用可能な樹脂や接着剤への応用が期待される。こうした試みの一つとして、光刺激によって流動化・非流動化が可能な化合物が報告されており、接着剤等への応用が検討されてきた(例えば、特許文献1や非特許文献1)。しかしながら、特許文献1における流動状態の変化は、規則的に並んだ分子の結晶性を光刺激によって低下させることで流動状態を獲得したに過ぎず、材料としての強度及び接着性の高さを期待できるものではなく、また分子構造の設計の幅も限られていた。また、特許文献1の化合物では、アゾベンゼンの光異性化反応を用いているため、流動性の制御のために照射する光の波長範囲を変える必要がある。
一方、接着剤の態様としては、一般に、反応型、溶剤型、水性型、ホットメルト型、及び感圧型などのタイプが知られているが、これらのなかでも、ホットメルト型の接着剤は、金属材料の接着に対するものとして最も広く用いられている。かかるホットメルト型接着剤は、接着剤を加熱溶融させることにより流動状態で材料に塗布し、その後冷却することで接着剤を固化し、材料同士を接着させることができる。当該ホットメルト型接着剤による接着方法は、有機溶媒を含まないため安全性が高く、溶融状態で材料に塗布できるため多彩な塗布パターンを用いることができるという長所を有する。しかしながら、接着剤を高温で溶融させて用いることから、加熱が望ましくない環境での接着や耐熱性の低い材料同士の接着には適さない等の課題があった。
特開2011−256291号公報
Adv.Mater.、2012、24、2353−2356
そこで、本発明は、光刺激によって流動状態と非流動状態を制御可能な新規な高分子、より詳細には、光刺激によって液体状態と固体状態を可逆的に繰り返すことが可能な特性を有する高分子を開発すること、及びかかる高分子の流動性を光刺激によって制御する方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、光刺激によって共有結合が切断され、光刺激の非付与時には当該結合が再形成する光応答性を有する官能基によって架橋した高分子を用いることにより、光刺激の有無によって可逆的に分子形状を変えることで当該架橋高分子の流動状態を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一態様において、
(1)前駆体高分子が架橋してなる架橋高分子であって、前記前駆体高分子は、骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した高分子であり;前記架橋高分子は、前記前駆体高分子における前記ロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有しており;前記架橋高分子は、光刺激によって前記架橋が開裂し、可逆的に固体状態から液体状態に変化し得ることを特徴とする、該架橋高分子;
(2)前記光刺激が、紫外線の照射である、上記(1)に記載の架橋高分子;
(3)前記光刺激を停止することによって再び固体状態に戻ることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の架橋高分子;
(4)前記骨格高分子は、ポリアクリレート又はポリシロキサンである、上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の架橋高分子;
(5)前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、上記(4)に記載の架橋高分子;
(6)前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、上記(5)に記載の架橋高分子;
(7)前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の分子量を有する上記(1)〜(6)のいずれか1に記載の架橋高分子;
(8)前記骨格高分子は、−130℃〜30℃の範囲のガラス転移温度を有する、上記(1)〜(7)のいずれか1に記載の架橋高分子;及び
(9)前記前駆体高分子が以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
Figure 0006792850
(式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
Figure 0006792850
(式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
である、上記(1)に記載の架橋高分子
を提供するものである。
また、別の態様において、本発明は、上記架橋高分子の前駆体である高分子化合物をも対象とする。すなわち、本発明は、
(10) 骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を有する化合物であって、常温で液体状態である、該化合物;
(11)前記骨格高分子が、ポリアクリレート又はポリシロキサンである、上記(10)に記載の化合物;
(12)前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、上記(11)に記載の化合物;
(13)前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、上記(12)に記載の化合物。
(14)前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の分子量を有する、上記(10)〜(13)のいずれか1に記載の化合物;
(15)前記骨格高分子は、−130℃〜30℃の範囲のガラス転移温度を有する、上記(10)〜(14)のいずれか1に記載の化合物;
(16)以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
Figure 0006792850
(式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
Figure 0006792850
(式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
である、上記(10)に記載の化合物;
を提供するものであり、及び
(17)上記(10)〜(16)のいずれか1に記載の化合物が、前記ロフィン基において分子間又は分子内で架橋してなる、架橋高分子
を提供するものである。
また、更なる態様において、本発明は、上記架橋高分子を用いた高分子材料の流動性を可逆的に制御する方法を提供するものである。すなわち、本発明は、
(18)高分子材料の流動性を可逆的に制御する方法であって、 骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した、液体状態の前駆体高分子を分子間で架橋させることによって、固体状態の架橋高分子を得る工程、ここで、前記架橋高分子は、前記前駆体高分子における前記ロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有する;及び固体状態の前記架橋高分子に光刺激を付与することにより、前記架橋を開裂させ、前記架橋高分子を固体状態から液体状態とする工程を含むことを特徴とする、該方法;
(19)前記光刺激が、紫外線の照射である、上記(18)に記載の方法;
(20)前記光刺激を停止することによって再び固体状態に戻す工程をさらに含む、上記(18)又は(19)に記載の方法;
(21)前記架橋が、塩基の存在下で行われる、上記(18)〜(20)のいずれか1に記載の方法;
(22)前記固体状態の架橋高分子を得る工程が、分子内でロフィン基が架橋している前駆体高分子に光刺激を付与し当該分子内の架橋を開裂させた後、当該前駆体高分子を分子間で架橋させることによって固体状態の架橋高分子を得る工程である、上記(18)〜(21)のいずれか1に記載の方法;
(23)前記骨格高分子は、ポリアクリレート又はポリシロキサンである、上記(18)〜(22)のいずれか1に記載の方法;
(24)前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、上記(11)に記載の化合物である、上記(23)に記載の方法;
(25)前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、上記(24)に記載の方法;
(26)前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の分子量を有する、上記(18)〜(25)のいずれか1に記載の方法;
(27)前記骨格高分子は、−130℃〜30℃の範囲のガラス転移温度を有する、上記(18)〜(26)のいずれか1に記載の方法;及び
(28)前記前駆体高分子が以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
Figure 0006792850
(式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
Figure 0006792850
(式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
である、上記(18)に記載の方法
を提供するものである。
本発明はまた、別の態様において、上記の架橋高分子を含む接着剤及びこれを用いる接着方法を提供するものである。すなわち、本発明は、
(29)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の架橋高分子を含む接着剤;
(30)ホットメルト型接着剤である、上記(29)に記載の接着剤;
(31)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の架橋高分子を表面に有する材料;
(32)上記(18)〜(28)のいずれか1に記載の方法を用いて2つ以上の材料の接着及び脱着を行うことを含む、材料の接着方法;及び
(33)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の架橋高分子を含む3Dプリンター用樹脂材料。
にも関する。
光刺激によって流動状態を制御可能な従来の物質は、分子の結晶状態の差異を流動状態の変化に利用したものであるため分子設計の幅が著しく限定される。これに対し、本発明は、光刺激による切断・再形成可能な共有結合の可逆的な切断(架橋・解架橋)が可能な官能基を導入することによって、固体−液体間の流動状態の変化を制御できる。そのため、かかる官能基を任意の骨格構造に導入することができるため、従来の材料に比べて応用可能な範囲が格段に広く、種々の用途に応じて所望の材料を提供することができる。また、本発明では、光刺激のオン−オフ操作だけで共有結合の切断・再形成が可能であるため、分子内の光異性化反応を用いる従来技術のように流動性の制御に際し照射する光の波長範囲を変化させる必要もない。
また、本発明は、加熱等を行うことなく光刺激のみによって固体から液体に流動状態を変化させることができるため、既存のホットメルト型接着剤の簡便性を損なうことなく、加熱が望ましくない環境での接着や耐熱性の低い材料同士の接着に適用できるという効果を奏するものである。さらに、本発明の架橋高分子を3Dプリンター用樹脂材料として用いる場合には、いったん成形された後であっても、光刺激を付与することで再度微調整が可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.架橋高分子
本発明の架橋高分子は、骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した前駆体高分子が、当該ロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有する。ここで、前駆体高分子は、常温において流動性を有する、すなわち液体状態の化合物であり、これが分子間で架橋することによって非流動性を有する固体の架橋高分子が得られる。
そして、当該架橋高分子に光刺激を付与することによって、前記ロフィン基における架橋(共有結合)が開裂し、固体状態から再び液体状態に変化し得ることを特徴とする。さらに、当該光刺激を停止し室温で放置することによって、自発的に再度架橋が形成されて、固体状態の架橋高分子に戻ることができる。かかる反応を利用して、架橋高分子の流動性を光刺激によって可逆的に制御することができるものである。
本発明で用いられる光刺激は、好ましくは、紫外線の照射である。紫外線の波長範囲は、10〜400nmであり、好ましくは、200〜400nm、より好ましくは315〜400nmであることができる。また、光刺激の付与は、10〜60℃の温度条件下で行うことが好ましい。
上述のように、本発明で用いられる前駆体高分子の主鎖を構成する骨格高分子は、常温で流動性の液体状態であるものが用いられる。かかる骨格高分子としては、当該技術分野において公知のものを用いることができ、例えば、ポリアクリレート系ポリマー、ポリメタクリレート系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリエチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー又はポリシロキサン系ポリマーなどを用いることができる。好ましくは、ポリアクリレート又はポリシロキサンである。より好ましくは、ポリ(アルキルアクレート)、又はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。また、かかる骨格高分子としては、直鎖状のものだけでなく、分岐構造を有する高分子を用いることができ、好ましくは、四分岐構造を有するポリアクリレートまたは四分岐構造を有するポリシロキサンを用いることができる。
また、当該骨格高分子は、常温で流動性の液体状態であるという観点から、好ましくは1,000〜500,000の範囲、より好ましくは3,000〜100,000の範囲の分子量(数平均分子量)を有する。同様に、好ましくは、−130℃〜30℃の範囲、より好ましくは、−130〜0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
本発明で用いられる前駆体高分子は、上記の骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基が導入されている。当該ロフィン基は、2,4,5−トリフェニルイミダゾール基であり、以下の構造を有する。
Figure 0006792850
当該ロフィン基における各フェニル基は、それぞれ独立に置換されていてもよく、例えば、ハロゲン原子、それぞれ置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、スルホ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基よりなる群から選択される1〜5の同一又は異なる置換基で置換されていてもよい。本明細書中において、「アルキル」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20個(C1〜20)、炭素数3〜15個(C3〜15)、炭素数5〜10個(C5〜10)である。本明細書中において、「アリール」は単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子など)を1個以上含む芳香族複素環であってもよい。この場合、これを「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」と呼ぶ場合もある。アリールが単環及び縮合環のいずれである場合も、全ての可能な位置で結合しうる。
当該ロフィン基は、上記骨格高分子の少なくとも1つの末端に導入されるが、2以上であることが好ましい。例えば、四分岐構造を有するポリアクリレートの場合には、4つの分岐鎖のそれぞれの末端にロフィン基を導入することができる。かかるロフィン基の数は、架橋高分子における所望の物性等に応じて変更することができる。
本発明で用いられる前駆体高分子の非限定的な具体例としては、末端にロフィン基を有する以下の四分岐型ポリアクリレートを挙げることができる。
Figure 0006792850
式中、Rは、カルボン酸エステル基であり、好ましくは、−COOMe、−COOEt、−COOBu、−COOHexであり、より好ましくは−COOBuである。nは、2〜200の整数であり、好ましくは、2〜20である。なお、式中4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有しているが、上述のように、必ずしも全ての分岐鎖の末端にロフィン基を有する必要はない。また、分岐鎖の長さ、すなわちnの値も各分岐鎖において必ずしも同一である必要はなく、異なるものとすることもできる。
かかる四分岐型ポリアクリレートを前駆体高分子として用い、ロフィン基において分子間で架橋した架橋分子は以下の構造を有する。
Figure 0006792850
また、本発明で用いられる前駆体高分子の更なる非限定的な具体例としては、末端にロフィン基を有する以下の四分岐型ポリシロキサンを挙げることができる。
Figure 0006792850
式中、Rは、水素又はアルキル基であり、好ましくはメチルである。nは、2〜200の整数であり、好ましくは、2〜20である。なお、式中4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有しているが、上述のように、必ずしも全ての分岐鎖の末端にロフィン基を有する必要はない。また、分岐鎖の長さ、すなわちnの値も各分岐鎖において必ずしも同一である必要はなく、異なるものとすることもできる。
2.流動性の制御方法
本発明は、別の実施態様において、上述の前駆体高分子と架橋高分子における光刺激による架橋形成及び開裂の反応を利用した、高分子材料の流動性を可逆的に制御する方法にも関する。
より詳細には、本発明の方法は、
<工程1>骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した、液体状態の前駆体高分子を分子間で架橋させることによって、固体状態の架橋高分子を得る工程、及び
<工程2>固体状態の前記架橋高分子に光刺激を付与することにより、前記架橋を開裂させ、前記架橋高分子を固体状態から液体状態とする工程
を含むことを特徴とする。
上記工程1において、架橋高分子は、上述のとおり前駆体高分子における末端のロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有する。前駆体高分子は、常温において流動性を有する液体状態の化合物であり、これが分子間で架橋することによって非流動性を有する固体の架橋高分子が得られる。その後、工程2において、光刺激によって前記ロフィン基における架橋(共有結合)が開裂し、固体状態から再び液体状態に変化させることができる。
工程1における架橋反応は、当該技術分野において通常の条件において進行させることができるが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の塩基、およびフェリシアン化カリウム等の酸化剤の存在下で行われる。
工程2における光刺激については、好ましくは、紫外線の照射であり、その詳細は上述のとおりである。
また、本発明の方法は、
<工程3>前記光刺激を停止することによって再び固体状態に戻す工程
を更に含むことができる。
工程3では、光刺激を停止し室温で放置することによって、自発的に再度架橋が形成されて、固体状態の架橋高分子に戻ることができる。これら工程2と工程3を繰り返すことによって、架橋高分子の流動性を可逆的に制御することが可能となる。
また、工程1における別の実施態様として、分子内でロフィン基が架橋している前駆体高分子に光刺激を付与し当該分子内の架橋を開裂させた後、当該前駆体高分子を分子間で架橋させることによって固体状態の架橋高分子を得る工程とすることもできる。
すなわち、複数の末端にロフィン基を有する前駆体高分子を低濃度条件下で架橋させると分子内架橋構造を有する化合物が生成するが、当該化合物は常温で流動性を有する液体であるため、これを上述の前駆体高分子(単量体)の代わりに用いることができる。かかる分子内架橋構造の化合物は、本発明の架橋高分子を非流動状態で提供したい場合に好ましい。非限定的な例として、前駆体高分子が四分岐型ポリアクリレートの場合には、前記分子内架橋構造の化合物から(分子間で架橋した)架橋高分子への反応は以下のとおりである。
Figure 0006792850
3.用途
本発明の架橋高分子は、光刺激によって固体−液体の流動状態を制御することができるという特性を有するため、接着剤や3Dプリンター用樹脂材料として好適である。したがって、本発明は、上記架橋高分子を含む接着剤又は3Dプリンター用樹脂材料も対象とする。接着剤としては、ホットメルト型接着剤が好ましい。本発明の架橋高分子を含む接着剤は、加熱が望ましくない環境での接着や耐熱性の低い材料同士の接着に適用できるという利点を有する。
また、上述の工程1〜3を含む方法を用いて、2つ以上の材料の接着及び脱着を行うことを含む、材料の接着方法も本発明の対象である。かかる接着剤として用いる際、固体状態の接着剤としての提供が好ましい場合には、分子間で架橋した架橋高分子をそのまま提供することができる。この場合、使用時には、光照射を行い、いったん液体状態としたうえ所望の材料に塗布し、その後、固化させることで複数の材料を接着することができる。輸送中の接着剤の流出を避けたり、手に持って扱う簡便性が好ましい場合には、かかる態様が好適である。
一方、液体状態での提供が好ましい場合には、上記の前駆体高分子が分子内で架橋した化合物の形態で提供し、当該分子内架橋化合物を所望の材料に塗布し、固化させることで複数の材料を接着することもできる。狭い場所に流し込む必要がある場合や、型に流し込む用途の場合には、かかる態様が好適である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.前駆体高分子の合成
末端にロフィン基を有する四分岐型ポリアクリレートを以下に示すとおり合成した。
工程a:末端臭素型ポリ(ブチルアクリレート)(化合物1)
Figure 0006792850
ペンタエリスリトールテトラキス(2−ブロモイソブチレート)(5.0 g)、アクリル酸ブチル(12.3mL)、臭化銅(I)(390mg)、4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジル(2.23g)、及びトルエン(12mL)を混合し、80℃で4時間、原子移動ラジカル重合を行った。反応混合物のアルミナカラムカラムクロマトグラフィによる精製を経て四分岐構造を有する末端臭素型ポリ(ブチルアクリレート)を10.7g得た。分子量(Mn)は、2300であった。
重合に用いるモノマー量を変化させ、分子量が異なる末端臭素型ポリ(ブチルアクリレート)同様に合成した。
Figure 0006792850
工程b:末端アジド型ポリ(ブチルアクリレート)(化合物2)
工程aで得た化合物1に、アジ化ナトリウムをエンドキャッピング剤として作用させ、化合物2を得た。
Figure 0006792850
四分岐構造を有する末端臭素型ポリ(ブチルアクリレート)(5.4g)、アジ化ナトリウム(2.3g)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(15mL)を混合し、室温で14時間攪拌した。反応混合物を多量の水に加え、クロロホルムによる抽出を経て、四分岐構造を有する末端アジド型ポリ(ブチルアクリレート)を5.2g得た。
工程c:末端ロフィン型ポリ(ブチルアクリレート)(化合物3)
工程bで得た化合物2とロフィン誘導体とのヒュスゲン環化付加反応により末端にロフィン基を導入した化合物3を得た。
Figure 0006792850
四分岐構造を有する末端アジド型ポリ(ブチルアクリレート)(3.8 g)、2−(4’−プロピニルオキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール(2.2g)、臭化銅(I)(889mg)、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(1.3mL)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)を混合し、室温で3時間攪拌した。反応混合物のアルミナカラムカラムクロマトグラフィによる精製を経て四分岐構造を有する末端ロフィン型ポリ(ブチルアクリレート)を3.0g得た。
2.架橋高分子の合成
工程cで得た化合物3を分子間で架橋させ、架橋高分子(化合物4)を得た。
Figure 0006792850
四分岐型構造を有する末端ロフィン型ポリ(ブチルアクリレート)(1.95g)のトルエン溶液(20mL)に、水(30mL)、水酸化ナトリウム(1.12g)、及びフェリシアン化カリウム(6.58g)を加え、0℃で30分間激しく攪拌した。反応混合物の有機層を水で洗浄したのちに濃縮し、減圧で乾燥させることで架橋高分子を1.44g得た。
3.接着及び剥離試験
架橋高分子(化合物4)10mgを2枚のスライドガラスの間に挟み、紫外線(365 nm)を1分間照射した。紫外線照射により架橋高分子は液状に変化したが、5分間静置したところ、2枚のスライドガラスは固化した架橋高分子を介して良好に接着していることを確認した。
さらに、当該スライドガラスの接着部分に紫外線を1分間照射したところ、架橋高分子が再び液状となり、2枚のスライドガラスは剥離した。
4.前駆体高分子(PDMS)合成
また、末端にロフィン基を有する四分岐型ポリシロキサンを以下に示すとおり合成した。
工程a:末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物5)
Figure 0006792850
ペンタエリスリトール(255mg)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(3.34g)、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)、テトラヒドロフラン(10mL)を混合したのちに、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(10mg)のTHF溶液(1mL)を加え、室温で30分攪拌した。次いで、反応混合物にヘキサメチルシクロトリシロキサン(13.4g)のトルエン溶液(40mL)を加え22時間攪拌した。反応混合物にトリエチルアミン(11mL)を加えて3分間攪拌した後に、クロロジメチルシラン(4.17mL)を加えてさらに30分間攪拌した。反応混合物の抽出操作による精製を経て四分岐構造を有する末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)を11.2g得た。分子量(Mn)は、10500であった。
工程b:末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物6)
工程aで得た化合物5に、4−アリルオキシベンズアルデヒドを作用させ、化合物6を得た。
Figure 0006792850
四分岐構造を有する末端水素型ポリ(ジメチルシロキサン)(5.8g)、4−アリルオキシベンズアルデヒド(1.7mL)、トルエン(20mL)を混合した後に、白金(0) −1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(50μL)を加え70℃で2.5時間攪拌した。反応混合物の抽出操作による精製を経て四分岐構造を有する末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)を4.9g得た。
工程c:末端ロフィン型ポリ(ジメチルシロキサン)(化合物7)
工程bで得た化合物6とベンジルとの反応により末端にロフィン基を導入した化合物8を得た。
Figure 0006792850
四分岐構造を有する末端アルデヒド型ポリ(ジメチルシロキサン)(4.0 g)、ベンジル(3.1g)、酢酸アンモニウム(3.4g)、トルエン(10mL)、及びメタノール(10mL)を混合し、70℃で4時間攪拌した。反応混合物の抽出操作による精製を経て四分岐構造を有する末端ロフィン型ポリ(ジメチルシロキサン)を2.5g得た。
5.架橋高分子の合成
工程cで得た化合物8を分子間で架橋させ、架橋高分子(化合物9)を得た。
Figure 0006792850
四分岐型構造を有する末端ロフィン型ポリ(ジメチルシロキサン)(1.35g)のヘキサン溶液(10mL)に、水(30mL)、水酸化ナトリウム(1.26g)、及びフェリシアン化カリウム(7.41g)を加え、室温で60分間激しく攪拌した。反応混合物の有機層を水で洗浄したのちに濃縮し、減圧で乾燥させることで架橋高分子を1.32g得た。

Claims (31)

  1. 前駆体高分子が架橋してなる架橋高分子であって、
    前記前駆体高分子は、骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した高分子であり;
    前記架橋高分子は、前記前駆体高分子における前記ロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有しており;
    前記架橋高分子は、光刺激によって前記架橋が開裂し、可逆的に固体状態から液体状態に変化し得ることを特徴とする、該架橋高分子。
  2. 前記光刺激が、紫外線の照射である、請求項1に記載の架橋高分子。
  3. 前記光刺激を停止することによって再び固体状態に戻ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋高分子。
  4. 前記骨格高分子は、ポリアクリレート又はポリシロキサンである、請求項1〜3のいずれか1に記載の架橋高分子。
  5. 前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、請求項4に記載の架橋高分子。
  6. 前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、請求項5に記載の架橋高分子。
  7. 前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項1〜6のいずれか1に記載の架橋高分子。
  8. 前記骨格高分子は、−130℃〜0℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1〜7のいずれか1に記載の架橋高分子。
  9. 前記前駆体高分子が以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    である、請求項1に記載の架橋高分子。
  10. 骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を有する常温で液体状態の化合物であって、前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、該化合物。
  11. 前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、請求項10に記載の化合物。
  12. 前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項10又は11に記載の化合物。
  13. 前記骨格高分子は、−130℃〜0℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項10〜12のいずれか1に記載の化合物。
  14. 以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    である、請求項10に記載の化合物。
  15. 請求項10〜14のいずれか1に記載の化合物が、前記ロフィン基において分子間又は分子内で架橋してなる、架橋高分子。
  16. 高分子材料の流動性を可逆的に制御する方法であって、
    骨格高分子の少なくとも1つの末端にロフィン基を導入した、液体状態の前駆体高分子を分子間で架橋させることによって、固体状態の架橋高分子を得る工程、ここで、前記架橋高分子は、前記前駆体高分子における前記ロフィン基が共有結合によって分子間で架橋した構造を有する;及び
    固体状態の前記架橋高分子に光刺激を付与することにより、前記架橋を開裂させ、前記架橋高分子を固体状態から液体状態とする工程
    を含むことを特徴とする、該方法。
  17. 前記光刺激が、紫外線の照射である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記光刺激を停止することによって再び固体状態に戻す工程をさらに含む、請求項16又は17に記載の方法。
  19. 前記架橋が、塩基の存在下で行われる、請求項16〜18のいずれか1に記載の方法。
  20. 前記固体状態の架橋高分子を得る工程が、分子内でロフィン基が架橋している前駆体高分子に光刺激を付与し当該分子内の架橋を開裂させた後、当該前駆体高分子を分子間で架橋させることによって固体状態の架橋高分子を得る工程である、請求項16〜19のいずれか1に記載の方法。
  21. 前記骨格高分子は、ポリアクリレート又はポリシロキサンである、請求項16〜20のいずれか1に記載の方法。
  22. 前記骨格高分子が、四分岐構造を有するポリアクリレート又は四分岐構造を有するポリシロキサンである、請求項21に記載の方法。
  23. 前記四分岐構造を有するポリアクリレートの全ての末端にロフィン基を有する、請求項22に記載の方法。
  24. 前記骨格高分子は、1,000〜100,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項16〜23のいずれか1に記載の方法。
  25. 前記骨格高分子は、−130℃〜0℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項16〜24のいずれか1に記載の方法。
  26. 前記前駆体高分子が以下の構造を有する四分岐型ポリアクリレート
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、カルボン酸エステル基であり;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    又は、以下の構造を有する四分岐型ポリシロキサン
    Figure 0006792850

    (式中、Rは、水素またはアルキル基;nは、2〜200の整数であり;4つの分岐鎖はいずれも同じ構造を有している。)
    である、請求項16に記載の方法。
  27. 請求項1〜9のいずれか1に記載の架橋高分子を含む接着剤。
  28. ホットメルト型接着剤である、請求項27に記載の接着剤。
  29. 請求項1〜9のいずれか1に記載の架橋高分子を表面に有する材料。
  30. 請求項16〜26のいずれか1に記載の方法を用いて2つ以上の材料の接着及び脱着を行うことを含む、材料の接着方法。
  31. 請求項1〜9のいずれか1に記載の架橋高分子を含む3Dプリンター用樹脂材料。
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