JP6800436B2 - 細胞構造体の製造方法、細胞構造体、細胞培養器 - Google Patents
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Description
ここで、再生医療は、患者の組織から採取した細胞を、細胞培養器中で培養し、組織を形成させ、その後、その組織を患者に移植するというオペレーションを必要とする。そのため、細胞を培養して、組織等の細胞構造体を形成させる技術や、細胞構造体をそのままの状態で回収する技術が所望されている。
また、立体的な構造を有する細胞構造体を作製する手法として、U字底の低接着性培養皿を用いる手法や、ハンギングドロップ法も開発されている。
また、上記U字底の低接着性培養皿を用いる手法や、ハンギングドロップ法では、略真球状のスフェロイドしか得ることができず、敷石形態や紡錘形態といった細胞固有の形態を備えたスフェロイドを得ることができない。
本発明の細胞構造体の製造方法は、細胞培養器の培養面に、温度応答性ポリマー及び/又は温度応答性ポリマー組成物で被覆された第一被覆領域と、前記第一被覆領域の端部に設けられた、細胞接着性物質で被覆された2つの第二被覆領域とを準備する、準備工程と、
細胞を前記第一被覆領域及び前記第二被覆領域に播種し、前記細胞を培養することによって、細胞構造体を調製する、播種培養工程と
を含む、2つの前記第二被覆領域を結ぶ線の方向への配向性を備える細胞構造体の製造方法であって、前記温度応答性ポリマーが、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を含むことを特徴とする。
本発明の細胞構造体の製造方法では、前記細胞接着性物質を、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチンからなる群から選択される少なくとも1種とすることが好ましい。
本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一被覆領域及び前記第二被覆領域が占める領域を、細胞非接着性の壁で囲むことが好ましい。
本発明の細胞構造体の製造方法では、前記第一被覆領域を、所定方向に延びる形状とし、前記第一被覆領域の前記端部を、前記所定方向についての端部とすることが好ましい。
細胞培養器の培養面に、温度応答性ポリマー及び/又は温度応答性ポリマー組成物で被覆された第一被覆領域と、前記第一被覆領域の端部に設けられた、細胞接着性物質で被覆された複数の第二被覆領域とを準備する、準備工程と、
細胞を前記第一被覆領域及び前記第二被覆領域に播種し、前記細胞を培養する、播種培養工程と
を含む。
一例の製造方法では、まず、温度応答性ポリマー及び/又は温度応答性ポリマー組成物を調製する(調製工程)。
ここで、上記(A)としては、例えば、(A−1)DMAEMAを水存在下で重合する方法により得られる温度応答性ポリマー、(A−2)主としてDMAEMAを含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてDMAEMAとアニオン性モノマーとを含むコポリマーブロック(重合鎖ω末端)とを含む、温度応答性ポリマー等が挙げられる。
本実施形態において、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む混合物を調製する調製工程と、混合物に紫外線を照射する照射工程とを含み、ここで、調製工程において、混合物は重合禁止剤及び水を更に含み、照射工程において、紫外線は不活性雰囲気下において照射される、ことを特徴とする。
水の上記混合物に対する重量割合は、1.0〜50%であることが好ましく、9.0〜33%であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、側鎖の加水分解反応の反応速度と、重合するポリマー鎖の成長反応の反応速度とを、バランスよく調和させることができる。これにより、側鎖が加水分解されたDMAEMAに対する、側鎖が加水分解されていないDMAEMAの割合(共重合割合)が1.0〜20程度の温度応答性ポリマーを得ることができる。
この工程では、例えば、透明な密封バイアルに、上記混合物を加え、不活性ガスをバブリングすることによってバイアル内を不活性雰囲気とした後に、バイアルの外部から紫外線照射装置を用いて紫外線を照射する。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応時間としては、7〜24時間であることが好ましく、17〜21時間であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、(A−1)の温度応答性ポリマーを高収率で得ることができ、また、光分解反応や不要な架橋反応を抑制しながらラジカル重合を行うことができる。
この拮抗により、得られる生成物は、式(I)で表される繰り返し単位(A)
そのため、ポリマーが有するカチオン性官能基、すなわち、ジメチルアミノ基と、ポリマーが有するアニオン性官能基、すなわち、側鎖のエステル結合が加水分解されてできたカルボキシル基の両方を、バランスよく備えることができる。そして、(A−1)の温度応答性ポリマーの製造方法によれば、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を有する、ポリ(2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)由来のポリマーを、少ない工程で簡便に製造することができる。
例えば、DMAEMA及び重合禁止剤を含む混合物と、水とを別々に準備し、次いで、混合物と水とに不活性ガスをバブリングし、その後、混合物と水とを不活性雰囲気下で混合すると同時に紫外線を照射するという、温度応答性ポリマーの製造方法も、(A−1)の温度応答性ポリマーに含めることができる。
(A−1)の温度応答性ポリマーは、上記(A−1)の製造方法により製造される。
(A−1)の温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(A−2)の温度応答性ポリマーの製造方法は、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、第一重合工程における重合物の数平均分子量が所定値以上となった時点で、第一混合物にアニオン性モノマーを添加して第二混合物を調製する添加工程と、第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、を含むことを特徴とする。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
第一混合物に含まれ得る他のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミド、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド等が挙げられ、特に、イオンバランスの調整を安定的に行うことを可能にする観点から、N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル酸やメタクリル酸のエステル、N−イソプロピルアクリルアミドが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、他のモノマーの使用量のDMAEMAの使用量に対する割合(モル割合)は、0.001〜1とすることが好ましく、0.01〜0.5とすることが更に好ましい。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。上記範囲とすれば、無用な化学結合の切断等による分解を抑制しつつ、安定的に、適切な速度(時間)で重合反応を進行させることができる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、前述の第一混合物に含まれ得る溶媒(トルエン、ベンゼン、メタノール等)等を含んでよい。
また、アニオン性モノマーは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、第一重合工程後の第一混合物中におけるポリマー化したPDMAEMAの数平均分子量は、所定の時点で重合系から少量の反応混合物を採取して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や光散乱法(SLS)等の当業者に周知の方法により、測定することができる。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
(A−2)の温度応答性ポリマーは、上記(A−2)の製造方法により製造される。
好適には、(A−2)の温度応答性ポリマーは、DMAEMAのホモポリマーブロックと、DMAEMAとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、更に好適には、これらブロックからなる。
温度応答性ポリマーの分子量は、紫外線の照射時間及び照射強度の条件により、適宜調整することができる。
(B)の温度応答性ポリマーの製造方法は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)と、カチオン性モノマー(以下、「モノマー(B)」ともいう。)と、アニオン性モノマー(以下、「モノマー(C)」ともいう。)とを重合させるものである。任意選択的に、上記3種類のモノマーにこれら以外の他のモノマーを加えて重合させてよい。
より具体的には、カチオン性モノマーとしては、生理活性物質を担持したり、アルカリ性条件下においたりしても、安定性が高いものが好ましく、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)−(メタ)アクリレート、アミノスチレン、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、特に、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にするため、好ましい。
また、アミノスチレンは、高い陽電荷強度を有することから、アニオン性物質の担持を容易にすると共に、分子内の芳香環が水溶液中において他の物質の疎水性構造と相互作用することから、担持可能なアニオン性物質のバリエーションを広げるため、好ましい。
更に、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)−メタクリルアミドは、中性域のpHで微弱な陽電荷を有し、且つ、水への溶解性が温度に影響されないことから、一度担持したアニオン性物質の放出を容易にするため、好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、等が挙げられ、特に、化学的安定性、細胞親和性の観点から、メタクリル酸、ビニル安息香酸が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のモノマーは、電荷以外の親水性・疎水性のバランスの調整に使用可能であり、バリエーションを広げることが可能となる。
ラジカル重合としては、リビングラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合としては、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、イニファーター重合等が挙げられ、イニファーター重合が好ましい。
イオン重合としては、リビングアニオン重合が好ましい。
この製造方法の一例は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む第一混合物に紫外線を照射する第一重合工程と、第一混合物に、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを添加して第二混合物を調製する添加工程と、第二混合物に紫外線を照射する第二重合工程と、を含む。
ここで、第一混合物は、DMAEMA以外に、任意選択的に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
ここで、第二混合物は、第一重合工程後の第一混合物、カチオン性モノマー、及びアニオン性モノマー以外に、例えば、他のモノマー、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとは、不活性雰囲気下において、添加されてよい。
ここで、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
紫外線の照射強度としては、0.01〜50mW/cm2であることが好ましく、0.1〜5mW/cm2であることが更に好ましい。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。
反応時間としては、反応時間としては、10分〜48時間であることが好ましく、60分〜24時間であることが更に好ましい。
ここで、上記混合物は、例えば、溶媒、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤等を含んでよい。
また、紫外線は、不活性雰囲気下において、照射されてよい。
他の条件については、前述の一例の製造方法と同様としてよい。
(B)の温度応答性ポリマーは、上記(B)の製造方法により製造される。
好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、主としてN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)単位を含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むポリマーブロック(重合鎖α末端)と、主としてカチオン性モノマー単位と、アニオン性モノマー単位とを含み、任意選択的に他のモノマー単位を含むコポリマーブロックとを含む。更に好適には、(B)の温度応答性ポリマーは、NIPAMのホモポリマーブロックと、NIPAMとカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとのコポリマーブロックとを含み、特に好適には、これらブロックからなる。本ポリマーは、前述の一例の製造方法により製造することができる。
かかる温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずカチオン性モノマーが存在することから、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置の調整の自由度が高くはなく、また、カチオン性モノマーが主としてDMAEMAに限られることから、カチオン性サイトの陽電荷強度の調整や、温度応答性ポリマー水溶液のpHの調整も必ずしも容易とは言えなかった。
そして、上記温度応答性ポリマーを、例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。DDSの手法としては、例えば、細胞培養器に薬剤を担持させた温度応答性ポリマーを塗布して、塗布後の細胞培養器で細胞や組織を培養することによって、被覆物から細胞・組織に対して薬剤を徐放するといった手法等が挙げられる。ここで、上記従来の温度応答性ポリマーでは、陽電荷強度が小さいDMAEMAを含むため、アニオン性物質の薬剤の担持は必ずしも容易とは言えず、担持可能な薬剤の種類や量が限られる可能性があった。
(B)の温度応答性ポリマーでは、重合鎖α末端に必ずしもカチオン性モノマーが存在する必要はなく、重合鎖中におけるカチオン性サイトの位置を自由に調整することが可能であり、また、広範なカチオン性モノマーを用いることができるため、カチオン性サイトの陽電荷強度や温度応答性ポリマー水溶液のpHを容易に調整することが可能である。
(B)の温度応答性ポリマーによれば、例えば、温度応答性ポリマーを薬物送達(DDS)に用いた場合、担持可能な薬剤の種類を拡大しつつ、その量を増加させることが可能となり、ひいては、温度応答性ポリマーの応用範囲を拡大することができる。
他のモノマーも用いた場合には、他のモノマー単位の、NIPAM単位、カチオン性モノマー単位、アニオン性モノマー単位の合計に対する割合(モル)が、0.001〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。
温度応答性ポリマーの分子量は、重合条件により、適宜調整することができる。
(C)の温度応答性ポリマー組成物の製造方法は、まず、混合型温度応答性ポリマー組成物を調製する(混合物調製工程)。具体的には、(C1)2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)及び/又はその誘導体の重合体と、(C2)2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス)と、(C3)核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを混合する。なお、(C2)トリスは任意選択的な成分である。
(C)の温度応答性ポリマー組成物は、上記の通り、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及び/又はその誘導体の重合体と、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールと、核酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、硫酸化多糖類、カードラン及びポリアルギン酸並びにこれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される一種以上のアニオン性物質とを含む。
上記組成物では、DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体の側鎖とトリスとが、互いに相互作用(例えば、架橋する作用)して、上記重合体が凝集しやすくなっていると推定される。
分子量を上記範囲とすれば、アニオン性物質は、カチオン性物質とイオン結合して、カチオン性物質を、長時間捕捉する役割を果たすことができ、安定したイオン複合体微粒子を形成させることがでる。また、一般的にカチオン性物質が有する、細胞の細胞膜表面に対する静電的相互作用に起因する細胞傷害性を緩和することもできる。
なお、割合((C2)/(C1))は、重量割合であるものとする。
この組成物によれば、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にすることができる。そして、この好適なバランスが、培養面への細胞の接着性を好適に調整し、細胞の遊走や配向を活性化していると推定される。
上記割合を0.1以上とすることにより、曇点を低減させるという上記効果が得られやすい。また、細胞構造体を形成しやすくするという上記効果が得られやすい。
なお、本願明細書では、C/A比とは、組成物中に含まれる物質が有する正電荷の、組成物中に含まれる物質が有する負電荷に対する割合を指す。具体的には、C/A比は、(C1)DMAEMA及び/又はその誘導体の重合体のモル数をN1、(C3)アニオン性物質のモル数をN3としたときに、{(重合体1分子当たりの正電荷)×N1}/{(アニオン性物質1分子当たりの負電荷)×N3}という式で表される。
またなお、本願明細書では、アニオン性物質をDNAとした場合、アニオン性物質1分子当たりの負電荷数は、DNAの塩基対の数(bp数)×2で計算し、分子量(Da)は、bp数×660(ATペア及びCGペアの平均分子量)で計算するものとする。
上記組成物中の正電荷と負電荷とのバランスを好適にして、正電荷による細胞傷害性を抑制することができると推定される。また、上記組成物の親水性と疎水性とのバランスを更に好適にして、細胞の遊走や配向を生じやすくすることができると推定される。
一例の製造方法では、次いで、細胞培養器の培養面に、温度応答性ポリマー及び/又は温度応答性ポリマー組成物で被覆された第一被覆領域と、第一被覆領域の端部に設けられた、細胞接着性物質で被覆された複数の第二被覆領域とを準備する(準備工程)(図1(i)〜(iii)参照)。
細胞非接着性の培養面の調製方法は、特に限定されることなく、例えば、細胞非接着性の培養面を備える細胞培養器、例えば、SUMILON社製のPrimeSurface(登録商標)を用いてもよく、細胞非接着性のシートや中敷き等を用いてもよく、未処理のポリスチレン製の培養面を備える細胞培養器を用いてもよい。
中でも、上記形状は、細胞の凝集様式を制御する観点から、所定方向に延びる形状、より具体的には、長軸方向及び短軸方向が存在する形状、外輪郭線上の任意の2点間の距離に最大及び最小が存在する形状が好ましく、長方形が更に好ましい。
また、ゼータ電位を上記範囲とすることにより、細胞を適切な培養条件で培養するだけで、塊状(ペレット状)の構造を有する細胞構造体を一層簡便に作製させることができる。これは、表面ゼータ電位を上記範囲とすることによって、第一被覆領域表面に細胞毒性を惹起しない微弱な陽電荷を与えることができ、また、播種した細胞の速やかな接着を確保し、細胞の活性の向上及び細胞外マトリックスの分泌を促進し、更には、細胞遊走を適度に抑制して、細胞間の結合を強くすることができることによるものと推測される。
なお、ゼータ電位とは、ポリスチレンラテックスをヒドロキシプロピルセルロースで被覆した粒子(ゼータ電位:−5〜+5mV)を標準のモニター粒子として、ゼータ電位計(例えば、型番「ELSZ」、大塚電子社製等)で測定した、Smoluchowski式により算出される値をいう。
なお、第一被覆領域に対する水の接触角とは、被覆領域内の任意の数点において、JIS R 3257に準拠して測定される接触角の平均値をいう。
また、上記列挙の細胞接着性物質を含む試薬も好適に用いることができ、かかる試薬としては、血清等が挙げられる。
上記細胞接着性物質は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
中でも、上記形状は、細胞が凝集する際に第二被覆領域に接着した細胞にかかる力を緩和する観点から、円形が好ましい。
なお、第一被覆領域の培養面における位置、及び第二被覆領域の培養面における位置は、それぞれの重心の位置としてよい。
図2(a)(i)及び図1(i)〜(viii)に示す例では、第一被覆領域を平面視で円形とし、第二被覆領域を、円形の第一被覆領域の両端部に、第一被覆領域と重ねながら、配置している。
本実施形態では、円形の第一被覆領域の端部に、第二被覆領域を、第一被覆領域と重ねながら、3箇所配置してもよく(図2(a)(ii)参照)、4箇所配置してもよい(図2(a)(iii)参照)。
また、本実施形態では、図2(b)に示すように、角が丸みを帯びた長方形の第一被覆領域の両端部に、第二被覆領域を、第一被覆領域と重ねながら、配置してもよい。
更に、本実施形態では、図2(c)に示すように、所望の形状の第一被覆領域の複数(図では5箇所)の端部に、第二被覆領域を、第一被覆領域と重ねながら、配置してもよい。
中でも、培養面に均一に被覆しやすく、また、温度応答性ポリマーの溶解性に優れるという観点から、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、アリルアルコール等のアルコール;アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、メチルビニルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸tert−ブチル、酢酸ビニル等のエステル;クロロホルム;ベンゼン;トルエン;ジエチルエーテル;ジクロロメタンが好ましい。また、短時間で乾燥させることができ、培養面に一層均一に塗布しやすいという観点から、沸点が低い有機溶媒(例えば、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数3〜5の低級ケトン、及び炭素数1〜4のアルキル基を有する酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種、特に、水より沸点が低い、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数3〜5の低級ケトン、及び炭素数1〜4のアルキル基を有する酢酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種)がさらに好ましく、コスト、操作性にも優れる観点から、メタノール、エタノールが特に好ましい。
上記溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒は、温度応答性ポリマーの溶解性に優れるため、曇点以上の温度(例えば、室温や37℃など)にしても、温度応答性ポリマーが不溶化して沈殿しにくい。そのため、温度応答性ポリマーを塗布する際に、温度応答性ポリマー溶液の温度管理をする手間が省け、簡易に被覆細胞培養器を準備することができる。
なお、水の重量割合は、ガスクロマトグラフィー、カールフィッシャー法など当業者に周知の方法により測定可能である。
塗布した温度応答性ポリマー溶液は、例えば、細胞培養器を37℃のインキュベーター中で静置することによって乾燥させてもよい。
なお、細胞非接着性とは、付着細胞が接着しない又は接着しにくいことをいう。
かかる態様によれば、後述の播種培養工程において、播種される細胞と凹部の壁面との接着を抑制して、細胞の凝集様式を制御することが容易となり、所望の配向性を有する細胞構造体をより精密に製造することが可能となる。
準備工程の変形例では、細胞培養器の培養面に、図1における第一被覆領域及び第二被覆領域の形状をなすような平面視形状(大サイズの円、及びその端部2箇所に配置された小サイズの円)の凹部を彫り込む(図3参照)。
そして、この変形例の準備工程では、彫り込んだ凹部の底面のみに温度応答性ポリマー及び/又は上記温度応答性ポリマー組成物、並びに細胞接着性物質を配置し、凹部の底面以外の面、すわわち、凹部の壁面の表面には、上記ポリマー及び/又は上記ポリマー組成物、並びに細胞接着性物質を配置していない(図3(i)参照)。
かかる変形例によれば、所望の配向性を有する細胞構造体をより精密に製造することができる(図3(ii)参照)。
本実施形態における一例の製造方法では、次いで、細胞を第一被覆領域及び第二被覆領域に播種し、細胞を培養することによって、細胞構造体を調製する(播種培養工程)。
上記細胞は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記範囲であると、各細胞がそれぞれコロニーを形成せずに、均質分散した状態を維持して凝集して細胞構造体を形成することができる。また、細胞の密度が高いと、播種した細胞が増殖しにくくなり、細胞が増殖する前に塊状の細胞構造体を形成することができる。また、播種した細胞は、増殖する際の性質が変化する場合があるが、細胞が増殖しにくいと、播種時と同じ性質の細胞を含む細胞構造体を形成することができる。
この工程においては、まず、播種された細胞が、第一被覆領域及び第二被覆領域上に、沈降する。このとき、第一被覆領域及び第二被覆領域上に沈降した細胞は、被覆領域上に接着して、生存する一方、非被覆領域上に沈降した細胞は、非被覆領域上に接着することなく、死滅する(図1(v)参照)。
次いで、培地交換により、培養面に接着しなかった細胞が細胞培養器から除去される(図1(vi)参照)。
そして、第一被覆領域及び第二被覆領域に接着した細胞を更に培養すると、第一被覆領域と非被覆領域との境界付近に位置する細胞が、該細胞よりも第一被覆領域の中央部分側に位置する細胞をも伴いながら、中央部分に向かって凝集し始める(図1(vii)参照)。言い換えると、接着していた細胞が、第一被覆領域から遠ざかるように剥離し、第一被覆領域の中央部分に向かって反り返る。
一方で、第二被覆領域に接着した細胞は、第二被覆領域から剥離することなく、当初の位置に接着し続ける(図1(vii)参照)。
最終的に、第一被覆領域に接着していた細胞は、第二被覆領域に接着し続ける2つの細胞集団の間を繋げるように、第一被覆領域の中央部分で、直線状の構造を有する細胞構造体を形成する(図1(viii)参照)。
本実施形態の細胞構造体の製造方法によれば、前述の通り、大きなサイズの細胞構造体を、生来の配向性を備えた状態で得ることができるため、生体内で生きている心筋細胞を模倣した検体を得ることができる。このため、心筋細胞に関する創薬試験の精度を高めることが可能となる。
(試験A)温度応答性ポリマーの調製
容量50mLの軟質ガラス製の透明なバイアル瓶に、2−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)10.0g、及び水5,000μLを加えて、磁気撹拌器を用いて撹拌した。そして、この混合物(液体)に対してG1グレードの高純度(純度:99.99995%)の窒素ガスを10分間パージ(流速:2.0L/分)することにより、この混合物を脱酸素した。なお、用いたDMAEMAには、重合禁止剤であるメチルヒドロキノン(MEHQ)が0.5重量%含まれていた。
その後、この反応物に対して、丸型ブラック蛍光灯(NEC社製、型番:FCL20BL、18W)を用いて、22時間紫外線照射することにより、上記反応物を重合させた。反応物は、5時間後に粘性を帯び15時間後に固化して、重合体が反応生成物として得られた。この反応生成物を2−プロパノールに溶解させ、溶液を透析チューブに移した。そして、透析を72時間行い、反応生成物を精製した。
反応生成物を含む溶液を、セルロース混合エステル製の0.2μmフィルター(東洋濾紙社製、型番:25AS020)で濾過し、得られた濾液を凍結乾燥させることにより、分子内イオン複合体型の温度応答性ポリマーが得られた(収量:6.8g、転化率:68%)。このポリマーの数平均分子量(Mn)を、GPC(島津社製、型番:LC−10vpシリーズ)を用いて、ポリエチレングリコール(Shodex社製、TSKシリーズ)を標準物質として測定し、Mn=100,000(Mw/Mn=10.0)と決定した。
1H-NMR (in D2O) δ 0.8-1.2 (br, 3H, -CH2-C(CH3)-), 1.6-2.0 (br, 2H, -CH2-C(CH3)-), 2.2-2.4 (br, 6H, -N(CH3)2), 2.5-2.7 (br, 1.9H,-CH2-N(CH3)2), 4.0-4.2 (br, 1.9H, -O-CH2-).
ここで、α位に結合したメチル基(δ 0.8-1.2)のプロトン数(DMAEMAユニットの場合もメタクリル酸ユニットの場合も3個)Aと、側鎖のエステル結合の酸素に結合しているエチル基(δ 4.0-4.2)のメチルプロトン数(DMAEMAユニットの場合は2個で、メタクリル酸ユニットの場合は0個)Bとから、DMAEMAの側鎖が有するアミノ基の官能基数と、メタアクリル酸の側鎖のカルボキシル基の官能基数との比を算出した。
その結果、得られたポリマー1の場合94:6となった。これは、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを含む2成分混合系におけるイオン複合体で言うC/A比に換算すると、C/A比=15.6となる。
細胞培養器として、Φ35mmプレート(PrimeSurface(登録商標)、SUMILON社製)(細胞低吸着性プレート)を用いた。
上記プレートの培養面上の6箇所に、室温条件下において、前述の試験Aで調製したポリマーの水溶液(濃度:15ng/μL)を4.0μLずつスポットして、その後、この水溶液を37℃で30分間乾燥させて、それぞれ円形の第一被覆領域(面積4.5mm2)を準備した。
乾燥後、6箇所の円形の第一被覆領域のうちの一つにおいて、第一被覆領域の中心を通る直線上に位置し、第一被覆領域の端部に位置する2箇所に、第一被覆領域と重なり合うように、フィブロネクチン溶液(ヒト血漿由来)(濃度:200ng/μL)(BDバイオサイエンス社製、ロット番号3353563)を0.2μLずつスポットして、その後、この溶液を37℃で5分間乾燥させて、それぞれ円形の第二被覆領域(面積0.8mm2)を準備した(図4(a)参照)。
その結果、温度応答性ポリマーにより被覆された第一被覆領域の表面のゼータ電位は、+20mVであった。なお、当業者に周知の通り、上記ゼータ電位の測定値は、±10%程度のバラツキを有するものである。
上記試験Bで準備した細胞培養器を用いた。
GFP組換えルイスラットの脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC(Adipose−derived vascular stromal cell))を、培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+10%ウシ胎児血清(FBS);DMEM:ギブコ社製、型番11965;FBS:バイオロジカルインダストリー社製、ロット番号715929)中に浮遊させて、細胞懸濁液を調製した。
上記プレートに、室温条件下で、細胞密度2.5×105個/cm2)となるように、細胞懸濁液を加えた(95%コンフルエント)。
そして、この細胞を、37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーター中で2時間培養した。
培養開始から2時間後、前述の培地で培地交換を行い、死滅した細胞を除去した。
図4(a)に、試験Cにおいて、試験Bで準備した第一被覆領域及び第二被覆領域においてGFP組換えルイスラットのADSCを2時間培養した後の様子を、顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
そして、細胞を、37℃、5%CO2の細胞培養インキュベーター中で更に18時間培養した。
更なる18時間の培養中、第一被覆領域に接着していた細胞は、中央部分に向かって凝集し、一方、第二被覆領域に接着した細胞は、当初の位置に接着し続けた。播種された細胞の成熟による細胞間のネットワークの結合力が、細胞の第一被覆領域に対する接着力を上回るようになり、細胞の凝集現象が生じた。このとき、長軸方向への凝集・収縮は制限される一方、短軸方向への凝集・収縮が優先された。最終的に、第二被覆領域に接着し続ける2つの細胞集団と、これらの細胞集団の間を連結するスティック状の細胞集団とからなる、直線状の構造を有する細胞構造体が形成した。
図4(b)に、試験Cにおいて、試験Bで準備した第一被覆領域及び第二被覆領域においてGFP組換えルイスラットのADSCを20時間培養した後の様子を、顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
試験Cにおいて得られた細胞構造体のうちスティック状の細胞集団においては、細胞が細胞構造体の延在方向に沿って伸びる形状をなし、第二被覆領域に接着し続ける2つの細胞集団を結ぶ線の方向に沿う方向への配向性を備えることがわかった。
用いる細胞接着性物質を、フィブロネクチン溶液から、ラミニン(濃度:50ng/μL)(ニッピ社製)に代えて、前述の実施例1の試験Bと同様の試験を行った。
そして、用いる細胞を、GFP組換えルイスラットのADSCから、心筋細胞(生後1日目の新生ルイス系ラットから定法に従って分離)に代えて、前述の実施例1の試験Cと同様の試験を行った。
この場合においても、前述の図4に示す細胞構造体と同様の構造を備える細胞構造体が得られた。
Claims (6)
- 細胞培養器の培養面に、
温度応答性ポリマー及び/又は温度応答性ポリマー組成物で被覆された第一被覆領域と、
前記第一被覆領域の端部に設けられた、細胞接着性物質で被覆された2つの第二被覆領域と
を準備する、準備工程と、
細胞を前記第一被覆領域及び前記第二被覆領域に播種し、前記細胞を培養することによって、細胞構造体を調製する、播種培養工程と
を含むことを特徴とする、2つの前記第二被覆領域を結ぶ線の方向への配向性を備える細胞構造体の製造方法であって、
前記温度応答性ポリマーが、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を含む、細胞構造体の製造方法。 - 前記培養面を、細胞非接着性とする、請求項1に記載の細胞構造体の製造方法。
- 前記細胞接着性物質を、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチンからなる群から選択される少なくとも1種とする、請求項1又は2に記載の細胞構造体の製造方法。
- 前記第一被覆領域及び前記第二被覆領域が占める領域を、細胞非接着性の壁で囲む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法。
- 前記第一被覆領域を、所定方向に延びる形状とし、前記第一被覆領域の前記端部を、前記所定方向についての端部とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞構造体の製造方法により製造されたことを特徴とする、細胞構造体。
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